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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ボールジョイントを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
F16C11/06 A
F16C11/06 R
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019556601
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018056810
(87)【国際公開番号】W WO2018192728
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】102017206706.3
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ジーヴェ・マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】パプスト・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ナハバール・フランク
(72)【発明者】
【氏名】グルーベ・フォルカー
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-013740(JP,A)
【文献】特表2016-525199(JP,A)
【文献】実開平05-022831(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールジョイント(1)を製造する方法であって、該ボールジョイントは、外側ハウジングスタッド開口部(2)を備えた外側ハウジング(3)と、該外側ハウジング(3)内に配置され、内側ハウジングスタッド開口部(4)を備えた内側ハウジング(5)と、ジョイントボール(6)を含むボールスタッド(7)とを備えており、該ボールスタッドが、その前記ジョイントボール(6)でもって前記内側ハウジング(5)において可動に支持されているとともに、前記内側ハウジングスタッド開口部(4)を貫通して前記内側ハウジング(5)から外側へ延在しており、
-前記ボールスタッド(7)が、前記外側ハウジング(3)へ挿入され、その前記ジョイントボール(6)で前記外側ハウジングにおいて位置決めされ、その結果、前記外側ハウジング(3)と前記ボールスタッド(7)の間に前記ジョイントボール(6)及び/又は前記ボールスタッド(7)を包囲する自由空間が残り、前記ボールスタッド(7)が前記外側ハウジングスタッド開口部(2)を貫通して前記外側ハウジング(3)から外側へ延在し、
-その後、前記自由空間が合成樹脂材料で充填され、このとき、前記ジョイントボール(6)が合成樹脂材料で包囲され、該合成樹脂材料は、つづいて硬化されるとともに、硬化された状態で前記内ハウジング(5)を形成する、前記方法において、
-前記合成樹脂材料の硬化時に前記外側ハウジング(3)と前記内側ハウジング(5)の間に形成される隙間(19)が、硬化後、前記外側ハウジング(3)の圧縮によって閉鎖されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填する前に、前記外側ハウジングスタッド開口部(2)を画定する前記外側ハウジング(3)の端部(8)が内方へ曲げられ、その後、該端部(8)が、前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填するときに、該合成樹脂材料へ埋入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填する前に、前記外側ハウジングスタッド開口部(2)とは反対側の前記外側ハウジング(3)の端部(9)が内方へ曲げられ、その後、該端部(9)が、前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填するときに、該合成樹脂材料へ埋入されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ボールスタッド(7)が、前記外側ハウジング(3)における前記外側ハウジングスタッド開口部(2)とは反対側の前記端部(9)を通して前記外側ハウジング(3)へ挿入されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記外側ハウジングスタッド開口部(2)を画定する前記外側ハウジング(3)の前記端部が、前記外側ハウジングスタッド開口部(2)が前記ジョイントボール(6)の直径よりも小さな直径を有するように内方へ曲げられることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記外側ハウジング(3)が底部(21)を備え、該底部には充填開口部(22)が設けられ、該充填開口部を通して前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ボールスタッド(7)が、前記外側ハウジング(3)における前記外側ハウジングスタッド開口部(2)を画定する前記端部(8)を貫通して前記外側ハウジング(3)へ挿入されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填するときに、前記ジョイントボール(6)が、前記ボールスタッド(7)を包囲するスタッド開口部範囲に至るまで前記合成樹脂材料によって包囲され、前記スタッド開口部範囲が、硬化することで前記内側ハウジングスタッド開口部(4)を形成することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填するときに、前記スタッド開口部範囲を包囲し前記外側ハウジングスタッド開口部(2)を貫通して前記外側ハウジング(3)から外側へ延びる接続範囲(12)が前記合成樹脂材料で形成されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記接続範囲(12)が、その外周部においてリング溝(13)を備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填する前に、前記ジョイントボール(6)が、前記外側ハウジングスタッド開口部(2)とは反対側の極範囲(14)において極キャップ(15)によって覆われ、該極キャップが、前記自由空間を前記合成樹脂材料で充填するときに前記合成樹脂材料へ埋入されることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記外側ハウジング(3)がジョイント収容部材(17)のジョイント収容部(18)へ圧入され、前記外側ハウジング(3)の圧縮が前記ジョイント収容部(18)への前記外側ハウジング(3)の圧入によってなされることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ボールスタッド(7)を前記外側ハウジング(3)へ挿入する前に、前記外側ハウジング(3)が、該外側ハウジング(3)の外周部にリングつば部(16)を形成しつつ変形され、その後、前記外側ハウジング(3)が、前記リングつば部(16)が前記ジョイント収容部材(17)に密接するまで前記ジョイント収容部(18)へ圧入されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールジョイントを製造する方法であって、該ボールジョイントは、外側ハウジングスタッド開口部を備えた外側ハウジングと、該外側ハウジングに配置され、内側ハウジングスタッド開口部を備えた内側ハウジングと、ジョイントボールを含むボールスタッドとを備えており、該ボールスタッドが、その前記ジョイントボールにおいて前記内側ハウジングにおいて可動に支持されているとともに、前記内側ハウジングスタッド開口部を貫通して前記内側ハウジングから延在しており、前記ボールスタッドが、前記外側ハウジングへ挿入され、その前記ジョイントボールと共に前記外側ハウジングにおいて位置決めされ、その結果、前記外側ハウジングと前記ボールスタッドの間に前記ジョイントボール及び/又は前記ボールスタッドを包囲する自由空間が残り、前記ボールスタッドが前記外側ハウジングスタッド開口部を貫通して前記外側ハウジングから延在し、その後、前記自由空間が合成樹脂材料で充填され、このとき、前記ジョイントボールが合成樹脂材料で包囲され、該合成樹脂材料は、つづいて硬化されるとともに、硬化された状態で前記内ハウジングを形成する、前記方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、例えば特許文献1から知られている。これについての欠点は、合成樹脂材料がそのすべり特性について最適化可能でないことである。このことは、内側ハウジングとジョイントボールの間の最適なすべり摩擦をもたらす合成樹脂材料が硬化中に強く収縮することを示唆しており、その結果、硬化後、内側ハウジングはもはや外側ハウジングに不動に設置されない。この理由から、実際には、収縮しないか、又はわずかにのみ収縮する合成樹脂材料が選択される。しかし、このような合成樹脂材料は、内側ハウジングとジョイントボールの間のすべり摩擦に関して最適な結果をもたらすものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願公開第3023652号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これを基礎として、本発明の課題は、内側ハウジングとジョイントボールの間のすべり特性を改善し、それにもかかわらず外側ハウジングにおける内側ハウジングの不動の設置を保証することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
当該課題は、請求項1による方法によって解決される。方法の好ましい発展形成は、従属請求項及び以下の説明に記載されている。
【0006】
冒頭に挙げたボールジョイントを製造する方法であって、該ボールジョイントは、外側ハウジングスタッド開口部を備えた外側ハウジングと、該外側ハウジングに配置され、内側ハウジングスタッド開口部を備えた内側ハウジングと、ジョイントボールを含むボールスタッドとを備えており、該ボールスタッドが、その前記ジョイントボールにおいて前記内側ハウジングにおいて可動に支持されているとともに、前記内側ハウジングスタッド開口部を貫通して前記内側ハウジングから延在しており、
-前記ボールスタッドが、前記外側ハウジングへ挿入され、その前記ジョイントボールと共に前記外側ハウジングにおいて位置決めされ、その結果、前記外側ハウジングと前記ボールスタッドの間に前記ジョイントボール及び/又は前記ボールスタッドを包囲する自由空間が残り、前記ボールスタッドが前記外側ハウジングスタッド開口部を貫通して前記外側ハウジングから延在し、
-その後、前記自由空間が合成樹脂材料で充填され、このとき、前記ジョイントボールが合成樹脂材料で包囲され、該合成樹脂材料は、つづいて硬化されるとともに、硬化された状態で前記内ハウジングを形成する、前記方法は、
-特に、前記合成樹脂材料の硬化時に前記外側ハウジングと前記内側ハウジングの間に形成される隙間が、硬化後、前記外側ハウジングの圧縮によって特に永続的に閉鎖されることで発展形成される。
【0007】
外側ハウジングは、圧縮によって、外側ハウジングと内側ハウジングの間の隙間が閉鎖されるように成形又は変形される。したがって、内側ハウジングは、不動に外側ハウジングに設置される。硬化後の隙間の閉鎖により、硬化中の合成樹脂材料の収縮が許容されるため、内側ハウジングとジョイントボールの間のわずかなすべり摩擦を可能とする合成樹脂を合成樹脂材料のために用いることが可能である。好ましくは、外側ハウジングは、圧縮によって可塑的に及び/又は永続的に変形される。
【0008】
好ましくは、本発明の範囲では、硬化は冷却と理解され、及び/又は硬化された状態とは冷却された状態と理解される。特に、硬化及び/又は冷却は、同一の温度において合成樹脂材料が硬化することと理解され得る。好ましくは、硬化は、合成樹脂材料の冷却によりなされる。したがって、加熱された合成樹脂材料又は高温の合成樹脂材料を冷却することができ、これにより、合成樹脂材料の硬化を達成することが可能である。
【0009】
好ましくは、外側ハウジングが軸方向において延在している。特に、軸方向に延在する中心軸線が外側ハウジングに割り当てられている。有利には、外側ハウジングは、中心軸線を包囲する外側ハウジング壁部を含んでいる。好ましくは、外側ハウジングは、中心軸線に関して、回転対称又は本質的に回転対称に形成されている。有利には、外側ハウジング壁部は、特にその内周部において円筒状又は本質的に円筒状に形成されている。好ましくは、外側ハウジングの圧縮は、外側ハウジング壁部の直径低減によってなされる。
【0010】
好ましくは、内側ハウジングは軸方向において延在している。有利には、内側ハウジングは、中心軸線を包囲する内側ハウジング壁部を含んでいる。有利には、内側ハウジングは、中心軸線に関して、回転対称又は本質的に回転対称に形成されている。好ましくは、内側ハウジング壁部は、特にその内周部において球状若しくは部分球状又は本質的に球状若しくは部分球状に形成されている。好ましくは、内側ハウジング壁部は、特にその外周部において円筒状又は本質的に円筒状に形成されている。特に、内側ハウジング壁部の外周面と外側ハウジング壁部の内周面の間に隙間が形成される。有利には、特に圧縮後、内側ハウジング壁部がその外周面において外側ハウジング壁部の内周面に密接する。好ましくは、外側ハウジングの圧縮によって、外側ハウジング壁部がその内周面において内側ハウジング壁部の外周面に密接する。
【0011】
軸方向及び/又は中心軸線に対して横方向に延びる1つ又は全ての方向は、特に径方向と呼ばれる。外側ハウジングの圧縮は、好ましくは径方向の圧縮であり、及び/又は好ましくは径方向になされる。外側ハウジングの直径低減は、好ましくは径方向の直径低減であり、及び/又は好ましくは径方向になされる。圧縮前には、隙間は特に径方向に延在している。例えば、圧縮前の隙間は、中心軸線及び/又は内側ハウジングの周囲で延びるリング空間を形成する。
【0012】
外側ハウジングは、特に製造及び/又は提供される。好ましくは、外側ハウジングは金属で構成されている。好ましくは、外側ハウジングは金属から製造されている。特に、当該金属は鋼又はアルミニウムである。有利には、外側ハウジングは薄板で構成されている。好ましくは、外側ハウジングは薄板から製造されている。当該薄板は、好ましくは例えば鋼薄板又はアルミニウム薄板のような金属薄板である。
【0013】
ボールスタッドは、特に製造及び/又は提供される。好ましくは、ボールスタッドは金属で構成されている。好ましくは、ボールスタッドは金属から製造されている。特に、当該金属は鋼、特殊鋼又はチタンである。ボールスタッドは、特にスタッドを備えている。好ましくは、スタッドは、ジョイントボールに固定して及び/又は強固に結合されている。有利には、ジョイントボールはスタッドの端部に配置されており、及び/又はジョイントボールはボールスタッドの端部を形成している。好ましくは、ボールスタッドにボールスタッド長手軸線が割り当てられており、当該ボールスタッド長手軸線は、特にジョイントボールの中心点を通って延びている。好ましくは、ボールスタッドは、ボールスタッド軸線に関して、回転対称又は本質的に回転対称となっている。ジョイントボールにおける、特にボールスタッド軸線の方向においてスタッドとは反対の端部は、好ましくは極又は極範囲と呼ばれる。例えば、ジョイントボールは、極範囲において平坦であり、及び/又はボール状に形成されていない。好ましくは、ボールスタッドは、外側ハウジングスタッド開口部を貫通して外側ハウジングから延在している。特に、ボールスタッドは、スタッド開口部を貫通してハウジングから延在している。中心軸線は、好ましくはジョイントボールの中心点を通って延びている。特に、ボールスタッドは、外側ハウジングへ挿入され、そのジョイントボールにおいて外側ハウジングにおいて支持され、その結果、中心軸線は、ジョイントボールの中心点を通って延びている。
【0014】
内側ハウジングは、好ましくは合成樹脂で構成されている。好ましくは、内側ハウジングは、合成樹脂及び/又は合成樹脂材料から製造される。特に、合成樹脂及び/又は合成樹脂材料は、ポリアミド(PA)又はポリオキシメチレン(POM)である。有利には、合成樹脂及び/又は合成樹脂材料は、繊維と混合され、及び/又は繊維で強化されているか、繊維と混合され、及び/又は繊維で強化される。繊維は、例えばガラス繊維又は炭素繊維である。
【0015】
発展形成によれば、自由空間を合成樹脂材料で充填する前に、外側ハウジングスタッド開口部を画定する外側ハウジングの端部が内方へ曲げられるか、又は径方向内方へ曲げられ、その後、該端部が、自由空間を合成樹脂材料で充填するときに、該合成樹脂材料へ埋入される。好ましくは、これにより、内側ハウジングが特に軸方向において外側ハウジングにおいて、及び/又は外側ハウジング内で係合式に固定される。外側ハウジングスタッド開口部を画定する外側ハウジングの端部は、特に外側ハウジングの軸方向の端部である。
【0016】
一形態によれば、自由空間を合成樹脂材料で充填する前に、外側ハウジングにおける、外側ハウジングスタッド開口部とは反対側の端部が内方へ曲げられるか、又は径方向内方へ曲げられ、その後、該端部が、自由空間を合成樹脂材料で充填するときに、該合成樹脂材料へ埋入される。好ましくは、これにより、内側ハウジングが特に軸方向において外側ハウジングにおいて、及び/又は外側ハウジング内で係合式に固定される。外側ハウジングにおける外側ハウジングスタッド開口部とは反対側の端部は、特に外側ハウジングの軸方向の端部である。有利には、外側ハウジングにおける外側ハウジングスタッド開口部とは反対側の端部は、外側ハウジングの取付開口部を画定している。
【0017】
好ましくは、外側ハウジングスタッド開口部は、ジョイントボールの直径よりも小さな直径を有している。好ましくは、外側ハウジングスタッド開口部がジョイントボールの直径よりも小さな直径を有するように、外側ハウジングが製造され、及び/又は外側ハウジングスタッド開口部を画定する外側ハウジングの端部が内方へ、若しくは径方向内方へ曲げられる。有利には、これにより、ジョイントボールの軸方向の重なりが、内方へ、又は径方向内方へ曲げられた、外側ハウジングスタッド開口部を画定する外側ハウジングの端部によって達成される。当該軸方向の重なりにより、特にボールスタッドの引抜き抵抗が高められる。
【0018】
好ましくは、取付開口部は、ジョイントボールの直径以上の直径を有している。好ましくは、取付開口部がジョイントボールの直径以上の直径を有するように、外側ハウジングが製造され、及び/又は外側ハウジングにおける、外側ハウジングスタッド開口部とは反対側の端部が内方へ、若しくは径方向内方へ曲げられる。したがって、ボールスタッドは、取付開口部を貫通して外側ハウジングへ挿入可能である。好ましくは、ボールスタッドは、取付開口部を貫通して、及び/又は外側ハウジングにおける、外側ハウジングスタッド開口部とは反対側の端部を貫通して外側ハウジングへ挿入される。
【0019】
一形態によれば、外側ハウジングは、特に外側ハウジングスタッド開口部とは反対側の端部において底部を備えている。特に、底部には充填開口部が設けられ、当該充填開口部を通して自由空間が合成樹脂材料で充填される。好ましくは、外側ハウジングスタッド開口部は、ジョイントボールの直径以上の直径を有している。好ましくは、外側ハウジングスタッド開口部がジョイントボールの直径以上の直径を有するように、外側ハウジングが製造され、及び/又は外側ハウジングスタッド開口部を画定する外側ハウジングの端部が内方へ、若しくは径方向内方へ曲げられる。したがって、ボールスタッドは、外側ハウジングスタッド開口部を貫通して外側ハウジングへ挿入可能である。好ましくは、ボールスタッドは、外側ハウジングスタッド開口部を貫通して、及び/又は外側ハウジングスタッド開口部を画定する外側ハウジングの端部を貫通して外側ハウジングへ挿入される。
【0020】
自由空間への合成樹脂材料の充填は、特に鋳造又は射出成形によってなされる。例えば、合成樹脂材料が自由空間へ鋳込まれるか、又は射出される。好ましくは、合成樹脂材料でのジョイントボールのオーバーモールド又はインサート成形によって、合成樹脂材料でのジョイントボールの包囲がなされる。特に、ジョイントボールは、合成樹脂材料でオーバーモールド又はインサート成形される。好ましくは、合成樹脂材料での自由空間の充填前に、外側ハウジング及びボールスタッドが、好ましくは鋳造工具又は射出成形工具である工具へはめ込まれるか、又は挿入される。特に、自由空間への合成樹脂材料の充填は、鋳造工具又は射出成形工具においてなされる。
【0021】
一発展形成によれば、自由空間を合成樹脂材料で充填するときに、ジョイントボールが、ボールスタッドを包囲するスタッド開口部範囲に至るまで合成樹脂材料によって包囲され、スタッド開口部範囲が、硬化後、内側ハウジングスタッド開口部を形成する。スタッド開口部範囲は、特に工具によって覆われるか、又は被覆され、したがって、合成樹脂材料の侵入から保護される。
【0022】
好ましくは、自由空間への合成樹脂材料の充填時には、スタッド開口部範囲及び/又はボールスタッドを包囲し外側ハウジングスタッド開口部を通過して外側ハウジングから延在する接続範囲が合成樹脂材料で形成される。有利には、接続範囲は、その外周部にリング溝を備えている。接続範囲及び/又はリング溝は、特にシールベローズの固定に用いられる。好ましくは、接続範囲及び/又はリング溝若しくはリング溝内には、ボールスタッドを包囲するシールベローズが固定され、当該シールベローズは、好ましくは接続範囲及び/又はリング溝からボールスタッドまで延在し、特に当該ボールスタッドに密に接触する。
【0023】
一形態によれば、自由空間を合成樹脂材料で充填する前に、ジョイントボールが、外側ハウジングスタッド開口部とは反対側の極範囲において極キャップによって覆われ、該極キャップが、自由空間を合成樹脂材料で充填するときに合成樹脂材料へ埋入される。特に、極範囲におけるジョイントボールは球形とは異なっている。このことは、例えば製造に起因する場合である。この場合、極キャップなしに合成樹脂材料はジョイントボールに極範囲においても接触し、したがって、硬化された状態では、内側ハウジングにおけるジョイントボールの可動性が阻害され、及び/又は損なわれる。例えば、ジョイントボールは、外側ハウジングスタッド開口部とは反対側のその極範囲において平坦に形成されている。極キャップは、特に製造及び/又は提供される。好ましくは、極キャップは金属及び/又は合成樹脂で構成されている。好ましくは、極キャップは、金属及び/又は合成樹脂で製造される。好ましくは、合成樹脂材料での自由空間の充填前に、極キャップは、外側ハウジング及び/又は工具へはめ込まれるか、若しくは挿入され、及び/又は位置決めされる。
【0024】
一発展形成によれば、外側ハウジングは、ジョイント収容部材のジョイント収容部へ圧入される。このとき、好ましくは、ジョイント収容部への外側ハウジングの圧入によって外側ハウジングの圧縮がなされる。したがって、別々の、ジョイント収容部へのジョイントの取付の前に設定された圧縮ステップを省略することが可能である。ジョイント収容部材は、好ましくは車輪支持部又はトレーリングアーム又はコントロールアームのようなシャシリンクである。好ましくは、ジョイント収容部は、ベアリングラグ、又は例えば貫通した、ジョイント収容部材に設けられた孔によって形成されているか、又は形成される。ジョイント収容部材は、特に製造及び/又は提供される。有利には、ジョイント収容部材は、合成樹脂及び/又は金属で構成されている。好ましくは、ジョイント収容部材は、合成樹脂及び/又は金属から製造される。
【0025】
一形態によれば、好ましくは、ボールスタッドを外側ハウジングへ挿入する前に、外側ハウジングが、該外側ハウジングの外周部にリングつば部を形成しつつ変形され、その後、外側ハウジングが、リングつば部がジョイント収容部材に接触し、及び/又は接触に至るまでジョイント収容部へ圧入される。この場合、リングつば部はストッパを形成する。例えば、リングつば部は、特に軸方向において、外側ハウジングの押し当てによって形成される。
【0026】
以下に、本発明を、図面を参照しつつ好ましい実施形態に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1の実施形態による、ジョイント収容部へ圧入されたボールジョイントの長手断面図である。
図2】ジョイント収容部へのボールジョイントの圧入前の、図1においてAで示された範囲を示す図である。
図3】第2の実施形態による、ジョイント収容部へ圧入されたボールジョイントの長手断面図である。
図4】ジョイント収容部へのボールジョイントの圧入前の、図3においてAで示された範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から、第1の実施形態によるボールジョイント1の長手断面が見て取れ、当該ボールジョイントは、外側ハウジングスタッド開口部2を備えた、薄板から成る外側ハウジング3と、外側ハウジング3に配置され、内側ハウジングスタッド開口部4を備えた、合成樹脂から成る内側ハウジング5と、ジョイントボール6を含むボールスタッド7とを備えており、当該ボールスタッドは、そのジョイントボール6において内側ハウジング5において可動に支持されているとともに、内側ハウジングスタッド開口部4を貫通して内側ハウジング5から延在している。
【0029】
外側ハウジングスタッド開口部2を画成する外側ハウジング3の端部8は、内方へ曲げられているとともに、内側ハウジング5の合成樹脂へ埋設されている。また、外側ハウジング3における外側ハウジングスタッド開口部2とは反対側の端部9は、内方へ曲げられているとともに、内側ハウジング5の合成樹脂へ埋設されている。このとき、端部9は、外側ハウジング3の取付開口部20を画成している。したがって、内側ハウジング5は、軸方向xで外側ハウジング3において係合式に固定されている。また、外側ハウジングスタッド開口部2の直径はジョイントボール6の直径よりも小さいため、外側ハウジングスタッド開口部2を画成する外側ハウジング3の端部8は、軸方向xにおいてジョイントボール6を覆っている。これに対して、取付開口部20の直径はジョイントボール6の直径以上である。
【0030】
外側ハウジング3には中心軸線10が割り当てられており、当該中心軸線に関して外側ハウジング3が回転対称に形成されている。内側ハウジング5も、中心軸線10に関して回転対称である。また、ボールスタッド7にはボールスタッド軸線11が割り当てられており、当該ボールスタッド軸線に関してボールスタッド7が回転対称となっている。図1に図示されたボールジョイント1の状態によれば、ボールスタッド軸線11が中心軸線10と一致している。
【0031】
内側ハウジング5は、内側ハウジングスタッド開口部4を包囲し、外側ハウジングスタッド開口部2を貫通して外側ハウジング3から延在する接続範囲12を含んでおり、当該接続範囲の外周部には、リング溝13が設けられている。当該リング溝13は、シールベローズ(不図示)の固定に用いられる。また、ジョイントボール6は、外側ハウジングスタッド開口部2とは反対側の極範囲14において、内側ハウジングへ埋入された極キャップ15によって覆われている。ジョイントボール6は、極範囲14において平坦に形成されている。
【0032】
外側ハウジング3はその外周部においてリングつば部16を備えており、当該リングつば部はジョイント収容部材17に接触しており、当該ジョイント収容部材は、外側ハウジング3が圧入された凹部の形態のジョイント収容部18を備えている。
【0033】
以下に、ボールジョイント1の製造について説明する。まず、外側ハウジング3及びボールスタッド7が製造される。そして、外側ハウジング3及びボールスタッド7が工具(不図示)へはめ込まれ、ボールスタッド7は、外側ハウジング3へ挿入され、そのジョイントボール6と共に外側ハウジングにおいて位置決めされ、その結果、外側ハウジング3とボールスタッド7の間にジョイントボール6及び/又はボールスタッド7を包囲する自由空間が残り、ボールスタッド7が外側ハウジングスタッド開口部2を貫通して外側ハウジング3から延在する。このとき、ボールスタッド7は、特に矢印xの方向に取付開口部20を貫通して外側ハウジング3へはめ込まれる。また、好ましくは極キャップ15は、外側ハウジング3へはめ込まれ、及び/又は外側ハウジングで位置決めされる。つづいて、自由空間が合成樹脂材料で充填され、このとき、ジョイントボール6は合成樹脂材料で包囲され、当該合成樹脂材料は、つづいて硬化されるとともに、硬化された状態で内ハウジング5を形成する。工具は、例えば鋳造工具又は射出成形工具である。また、工具は、特に、合成樹脂材料が内側ハウジング5の型又は当該型に近似するものが受け入れるように形成されている。
【0034】
図2から、ジョイント収容部18への外側ハウジング3の圧入前の、図1においてAで示された範囲の図示が明らかである。外側ハウジング3と内側ハウジング5の間には隙間19が存在することが分かり、当該隙間は、合成樹脂材料の硬化時及び/又は冷却時に形成される。このことは、特に、合成樹脂材料及び/又は内側ハウジング5及び/又は合成樹脂材料により形成された物体が合成樹脂材料の硬化中あるいは冷却中に収縮することにある。
【0035】
つづいて、ボールジョイント1は、その外側ハウジング3と共にジョイント収容部材17のジョイント収容部18へ圧入される。外側ハウジング3は、圧入によって、隙間19が閉鎖されるように変形される。
【0036】
図3から、第2の実施形態によるボールジョイント1の長手断面が見て取れ、当該ボールジョイントは、外側ハウジングスタッド開口部2を備えた、薄板から成る外側ハウジング3と、外側ハウジング3に配置され、内側ハウジングスタッド開口部4を備えた、合成樹脂から成る内側ハウジング5と、ジョイントボール6を含むボールスタッド7とを備えており、当該ボールスタッドは、そのジョイントボール6において内側ハウジング5において可動に支持されているとともに、内側ハウジングスタッド開口部4を貫通して内側ハウジング5から延在している。
【0037】
外側ハウジングスタッド開口部2を画成する外側ハウジング3の端部8は、内方へ曲げられているとともに、内側ハウジング5の合成樹脂へ埋設されている。したがって、内側ハウジング5は、軸方向xで外側ハウジング3において係合式に固定されている。このとき、外側ハウジングスタッド開口部2の直径はジョイントボール6の直径以上である。また、外側ハウジング3における外側ハウジングスタッド開口部2とは反対側の端部9は底部21を備えており、当該底部には、充填開口部22が設けられている。
【0038】
外側ハウジング3には中心軸線10が割り当てられており、当該中心軸線に関して外側ハウジング3が回転対称に形成されている。内側ハウジング5も、中心軸線10に関して回転対称である。また、ボールスタッド7にはボールスタッド軸線11が割り当てられており、当該ボールスタッド軸線に関してボールスタッド7が回転対称となっている。図3に図示されたボールジョイント1の状態によれば、ボールスタッド軸線11が中心軸線10と一致している。
【0039】
内側ハウジング5は、内側ハウジングスタッド開口部4を包囲し、外側ハウジングスタッド開口部2を貫通して外側ハウジング3から延在する接続範囲12を含んでおり、当該接続範囲の外周部には、リング溝13が設けられている。当該リング溝13は、シールベローズ(不図示)の固定に用いられる。また、ジョイントボール6は、外側ハウジングスタッド開口部2とは反対側の極範囲14において、内側ハウジングへ埋入された極キャップ15によって覆われている。ジョイントボール6は、極範囲14において平坦に形成されている。
【0040】
外側ハウジング3はその外周部においてリングつば部16を備えており、当該リングつば部はジョイント収容部材17に接触しており、当該ジョイント収容部材は、外側ハウジング3が圧入された凹部の形態のジョイント収容部18を備えている。
【0041】
以下に、ボールジョイント1の製造について説明する。まず、外側ハウジング3及びボールスタッド7が製造される。そして、外側ハウジング3及びボールスタッド7が工具(不図示)へはめ込まれ、ボールスタッド7は、外側ハウジング3へ挿入され、そのジョイントボール6と共に外側ハウジングにおいて位置決めされ、その結果、外側ハウジング3とボールスタッド7の間にジョイントボール6及び/又はボールスタッド7を包囲する自由空間が残り、ボールスタッド7が外側ハウジングスタッド開口部2を貫通して外側ハウジング3から延在する。このとき、ボールスタッド7は、特に矢印xとは反対方向に外側ハウジングスタッド開口部2を貫通して外側ハウジング3へはめ込まれる。また、好ましくは極キャップ15は、外側ハウジング3へはめ込まれ、及び/又は外側ハウジングで位置決めされる。つづいて、自由空間が合成樹脂材料で充填され、このとき、ジョイントボール6は合成樹脂材料で包囲され、当該合成樹脂材料は、つづいて硬化され、及び/又は冷却されるとともに、硬化あるいは冷却された状態で内ハウジング5を形成する。このとき、合成樹脂材料は、特に充填開口部22を貫通して自由空間へもたらされる。工具は、例えば鋳造工具又は射出成形工具である。また、工具は、特に、合成樹脂材料が内側ハウジング5の型又は当該型に近似するものが受け入れるように形成されている。
【0042】
図4から、ジョイント収容部18への外側ハウジング3の圧入前の、図3においてAで示された範囲の図示が明らかである。外側ハウジング3と内側ハウジング5の間には隙間19が存在することが分かり、当該隙間は、合成樹脂材料の硬化時に形成される。このことは、特に、合成樹脂材料及び/又は内側ハウジング5及び/又は合成樹脂材料により形成された物体が合成樹脂材料の硬化中及び/又は冷却中に収縮することにある。
【0043】
つづいて、ボールジョイント1は、その外側ハウジング3と共にジョイント収容部材17のジョイント収容部18へ圧入される。外側ハウジング3は、圧入によって、隙間19が閉鎖されるように変形される。
【符号の説明】
【0044】
1 ボールジョイント
2 外側ハウジングスタッド開口部
3 外側ハウジング
4 内側ハウジングスタッド開口部
5 内側ハウジング
6 ボールスタッドのジョイントボール
7 ボールスタッド
8 外側ハウジングの軸方向端部
9 外側ハウジングの軸方向端部
10 外側ハウジングの中心軸線
11 ボールスタッドのボールスタッド軸線
12 内側ハウジングの接続範囲
13 接続範囲におけるリング溝
14 ジョイントボールの極範囲
15 極キャップ
16 外側ハウジングのリングつば部
17 ジョイント収容部材
18 ジョイント収容部材のジョイント収容部
19 隙間
20 外側ハウジングの取付開口部
21 外側ハウジングの底部
22 外側ハウジングの底部における充填開口部
x 軸方向
図1
図2
図3
図4