(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】シクロデキストリン及びブデソニド誘導体組成物ならびに方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/58 20060101AFI20220203BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20220203BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220203BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220203BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220203BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220203BHJP
A61K 31/724 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61K31/58
A61K47/61
A61P11/00
A61P29/00
A61K9/08
A61K9/10
A61K31/724
(21)【出願番号】P 2020032976
(22)【出願日】2020-02-28
(62)【分割の表示】P 2017501502の分割
【原出願日】2015-03-30
【審査請求日】2020-03-26
(32)【優先日】2014-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500029925
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ド・リエージュ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LIEGE
【住所又は居所原語表記】Avenue Pre-Aily,4,B-4031 Angleur,Belgium
(73)【特許権者】
【識別番号】516290874
【氏名又は名称】マエ,ポール
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マエ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】カタルド,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】エブラール,ブリジット
(72)【発明者】
【氏名】デュフール,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ド・トゥリオ,パスカル
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509709(JP,A)
【文献】特表2007-517067(JP,A)
【文献】特表2007-517068(JP,A)
【文献】特表2009-542649(JP,A)
【文献】特表2009-526860(JP,A)
【文献】特表2008-515847(JP,A)
【文献】特表2008-506674(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01894559(EP,A1)
【文献】特表2009-537569(JP,A)
【文献】特表2009-520823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0249572(US,A1)
【文献】国際公開第2007/095339(WO,A2)
【文献】日呼吸会誌,2004年,Vol. 42, No. 8,pp. 700-704
【文献】高野 泰宏,学位論文「炎症性肺疾患における好中球浸潤抑制作用を有する新規ビタミンD3誘導体の創薬研究」,千葉大学大学院薬学研究院,2013年,第1-76頁
【文献】COPD FRONTIER,2007年,Vol. 6, No. 1,pp. 26-28
【文献】Powder Technology,2014年04月02日,Vol. 260,pp. 36-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びブデソニドを含む、肺炎症性疾患患者の
肺組織中のインターロイキン13(IL13)又はインターロイキン17(IL17)を減少させるための組成物。
【請求項2】
前記組成物は1日当たり50~200mcgの範囲で投与される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ブデソニドと前記
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのモル比が1:1~
1:100である、請求項
1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が溶液または懸濁液中に存在する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が微粉化粉末である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
100μg/mlのブデソニド及び
20mMのヒドロキシプロピル-
β-シクロデキストリンを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
250μg/mlのブデソニド及び
20mMのヒドロキシプロピル-
β-シクロデキストリンを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
100μg/mlのブデソニド及び
10mMのヒドロキシプロピル-
β-シクロデキストリンを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
250μg/mlのブデソニド及び
10mMのヒドロキシプロピル-
β-シクロデキストリンを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記
ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンが、
1:1の化学量論比でブデソニドとの複合体を形成する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記肺組織中のCXCL-1レベルを減少させる際に使用するための、請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記肺炎症性疾患が慢性閉塞性疾患である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
米国特許のための本出願は、2014年3月28日に出願された米国仮特許出願第61/972,209号、表題「Compositions of Cyclodextrin with Budesonide Derivatives and Methods」、及びUniversite de Liegeによって寄託され、公開番号EP14162158.1を割り当てられた欧州出願第EP14132158 BE号 28.03.2014、表題「Composition of cyclodextrin with budesonide derivatives for treatment and prevention of pulmonary inflammatory disease」に関連し、また参照により、本明細書に完全に記載されているかのように、その全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、肺炎症性疾患の治療及び/または予防のためにシクロデキストリン化合物及びブデソニド誘導体を用いて調合される新規かつ有用な薬学的組成物に関する。本発明はまた、溶液中のHP-β-CDの検出及び定量化のための新規かつ有用な分析技術にも関する。より具体的には、本発明は、液体製剤のためのいずれの抽出または分離ステップも用いることなく、薬学的製剤中のシクロデキストリンを直接的に検出及び定量化するための有効な1H NMR分析の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
肺炎症性疾患(PID)は、完全に可逆性ではない気流制限によって特徴付けられる病態である。気流制限は、例えば、有害な粒子(直径2.5マイクロメートル以下の、タバコ及び煙霧中に見られるもの等の微粒子)に対する肺の異常な炎症反応を伴う。
【0004】
肺炎症性疾患は、炎症性の喘息(すなわち、重症の喘息)、慢性閉塞性疾患(COPD)、例えば、慢性気管支炎、閉塞性細気管支炎、肺気腫、肺線維症、嚢胞性線維症等を含む。
【0005】
PID患者には、プロテアーゼ及び酸化体(活性酸素種)の繰り返し生成によって気道構造の進行性破壊をもたらす著しい好中球性炎症が気管支壁に認められる。現在までのところ、市販の治療薬は、PID患者においてこの好中球性炎症を十分に軽減または予防することができていない。特に、吸入または経口ステロイドが好中球性炎症に対して有効性を示さないということは周知である。例えば、S.Culpittらによって実施された研究(COPD患者において行われた)Am J Respir Crit Care Med.160:1635-1639(1999)において、COPD関連性の好中球性炎症における高用量吸入ステロイド、及び好中球(ヒトでは主にIL-8)に対する走化性物質の有効性の欠如が報告されている。
【0006】
PID患者における現在のステロイド治療の無効性を考慮すると、PID患者において好中球性炎症を十分に軽減または予防するための効果的なステロイド治療の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
手短に述べると、本発明は、肺炎症性疾患の治療処置及び/または予防のような処置を必要とする宿主哺乳動物における肺炎症性疾患の治療処置及び/または予防に効果的な使用のための新規かつ有用な薬学的組成物の発見を通して、PID患者における現在のステロイド療法の使用に関連する上記欠点及び短所を克服する。
【0008】
一般的に、本発明は、肺炎症性疾患の治療及び/または予防のためにシクロデキストリン化合物及びブデソニド誘導体を用いて調合される新規かつ有用な薬学的組成物に関する。本発明はまた、溶液中のHP-β-CDの検出及び定量化のための新規かつ有用な分析技術にも関する。より具体的には、本発明は、液体製剤のためのいずれの抽出または分離ステップも用いることなく、薬学的製剤中のシクロデキストリンを直接的に検出及び定量化するための有効な1H NMR分析の使用に関する。
【0009】
本発明の新規組成物及び方法は、シクロデキストリン化合物及び式(I)のブデソニド誘導体を用いて調合される組成物を含み、
【0010】
【化1】
ならびに、PIDの治療を必要とする宿主哺乳動物においてPIDを治療及び/または予防するためのその使用を含み、式中、「Rl」及び「R2」は、各々独立して、水素原子、ハロゲン、C
1-5-アルキル、C
3-8-シクロアルキル、ヒドロキシ、C
1-5-アルコキシ、C
1-5-アルコキシ、C
1-5-アルキル、任意選択的にハロゲン原子で単置換もしくは多置換されたC
1-5-アルキル、C
1-5-アルコキシカルボニル、またはC
1-5-アルコキシカルボニル-C
1-6-アルキルを表し;
「R3」、「R4」、「R5」、及び「R6」は、各々独立して、水素、ヒドロキシル部分、C
1-5-アルコキシ、C
1-5-アルコキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル、任意選択的にハロゲン原子で単置換もしくは多置換されたC
1-5-アルキルカルボニル、C
1-5-アルキルカルボニルオキシ、C
3-8-シクロアルキルカルボニルオキシ、C
1-5アルキルチオ、C
1-5アルキルスルホニル、C
1-5-アルキルスルフィニル、フラン、フランカルボニルオキシ、任意選択的にハロゲン原子で単置換もしくは多置換されたC
1-5-アルキチオカルボニル、またはプロピオニルオキシメチルカルボニルを表し;
「R4」及び「R5」は、任意選択的に一緒になって3~5個の原子の炭化水素環を形成し、2つの炭素原子は、任意選択的に酸素原子によって置換され、環は、任意選択的にC
1-5-アルキル基によって置換される。例えば、肺炎症性疾患の治療処置及び/または予防処置のような処置を必要とする宿主哺乳動物における肺炎症性疾患の治療処置及び/または予防処置における使用のための、2個の炭素原子が酸素原子によって置換され、任意選択的にプロピル基等のアルキル基によって置換された、3~5個の原子のビス-オキシ炭化水素環;あるいは、薬学的に許容される酸もしくは塩基とのその塩、またはそのラセミ混合物もしくは任意の互変異性形態を含む任意の光学異性体もしくは光学異性体の混合物である。
【0011】
「C1-5-アルキル」は、本明細書で使用される場合、1~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和の炭化水素基、例えば、メチル、プロピル、ブチル、イソペンチル、1-メチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2-エチルブチル等を意味する。
【0012】
「C3-8-シクロアルキル」は、本明細書で使用される場合、3個以上の炭素、好ましくは3~8個の炭素原子を環に有する、飽和または部分不飽和のヒドロカルビル基を意味する。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等である。
【0013】
C1-5-アルキルオキシとも示される「C1-5-アルコキシ」は、本明細書で使用される場合、エーテル酸素からその自由原子価結合を有し、かつ1~5個の炭素原子を有する、エーテル酸素を介して結合されたC1-5-アルキル基を含む直鎖または分岐鎖の一価の置換基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロポキシ、ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、ter-ブチルオキシ、2-メチルブトキシ、ペンチルオキシ等を意味する。
【0014】
「C1-5-アルコキシ-C1-5-アルキル」は、本明細書で使用される場合、酸素原子によって中断された2~10個の炭素原子、例えば、-CH2-O-CH3、-C H2C H2O-C H3、-C H2-O-C H2C H3、-C H2-O-CH(C H3)2、-C H2C H2-O-CH(C H3)2、-CH(C H3)C H2-O-C H3等を意味する。
【0015】
「C1-5-アルキルチオ」は、単独でまたは組み合わせて、本明細書で使用される場合、硫黄原子からその自由原子価結合を有し、かつ1~5個の炭素原子を有する、二価の硫黄原子を介して結合されたC1-5-アルキル基を含む直鎖または分岐鎖の一価の置換基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、3-メチルペンチルチオ等を指す。
【0016】
「C1-5-アルキルスルホニル」は、本明細書で使用される場合、スルホニル基(-S(=O)2-)を介して結合されたC1-5-アルキル基を含む一価の置換基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、2-メチルペンチルスルホニル等を指す。
【0017】
「C1-5-アルキルスルフィニル」は、本明細書で使用される場合、スルフィニル基(-S(=O))を介して結合されたC1-5-アルキル基を含む一価の置換基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、tert-ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、2-エチルブチルスルフィニル等を指す。
【0018】
「フラン」は、本明細書で使用される場合、以下を意味する。
【0019】
【0020】
「フランカルボニルオキシ」は、本明細書で使用される場合、以下を意味する。
【0021】
【0022】
「ハロゲン」は、本明細書で使用される場合、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0023】
「R4」及び「R5」は、任意選択的に一緒になって3~5個の原子の炭化水素環を形成してもよく、その内の2個の炭素原子は、任意選択的に酸素原子によって置換されてもよく、環は、任意選択的にC1-5アルキル基で置換されてもよく、例えば、その内の2個の炭素原子が酸素原子で置換されてもよく、また任意選択的にアルキル基、例えば1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピルで置換されてもよい、3~5個の原子のビスオキシ炭化水素環、または
【0024】
【0025】
本発明による好ましいブデソニド誘導体は、これ以降に示されるように、R3またはR4にそれぞれフランカルボニルオキシ基を有し、一般式(I)によって表されるフロ酸モメタゾンまたはフロ酸フルチカゾンである。
【0026】
【0027】
フロ酸モメタゾンはPfizer及びMerckから市販されており、フロ酸フルチカゾンはGSKから市販されている。
【0028】
本発明による他の好ましいブデソニド誘導体は、以下のように、R4に少なくともプロピルカルボニルオキシ基またはプロピオネート基を有し、一般式(I)によって表されるプロピオン酸フルチカゾンまたはジプロピオン酸ベクロメタゾンである。
【0029】
【0030】
プロピオン酸フルチカゾンは、Flixotideの商品名でGSKから市販されており、ジプロピオン酸ベクロメタゾンは、QVAR、Ecobec、及びBeclopharの商品名でUCB、SANDOZ、TEVA、及びCHIESIから市販されている。
【0031】
本発明によれば、最も好ましいブデソニド誘導体はブデソニドである。ブデソニドは、副腎皮質ステロイドであり、一般式(I)によって表される。
【0032】
【0033】
ブデソニドはまた、ブチルアルデヒドを有する(R,S)-11(3,16a,17,21-テトラヒドロキシプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン環状16,17-アセタール、または16,17-(ブチリデンビス(オキシ))-11,21-ジヒドロキシ-、(11-β,16-α)-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオンとも称される。ブデソニドの化学式、分子量、及びCAS番号は、それぞれ、C25H3406、MW:430.5、及び51333-22-3である。
【0034】
ブデソニドは、2つのジアステレオマー22R及び22Sの混合物からなるラセミ体であり、2つの異性体(22R及び22S)の混合物として商業的に提供されている。
【0035】
溶液としてのブデソニドの市販製剤は、AstraZeneca LP(Wilmington,Del.)によって、Pulmicort Respules(登録商標)、Rhinocort(登録商標)Aqua、Rhinocort(登録商標)の商品名で、またNasal Inhaler及びPulmicort(登録商標)Turbuhalerの商品名で粉末として、及びそのジェネリック名で提供されている。粉末形態のブデソニド(原材料)は、Indis(Belgium)によって提供されている。
【0036】
ベタメタゾンもまた、本発明によって企図される。ブデソニドと同様に、ベタメタゾンは副腎皮質ステロイドであり、以下のような一般式によって表される。
【0037】
【0038】
ベタメタゾンのIUPAC名は、(8S,9R,10S,11S,13S,14S,16S,17R)-9-フルオロ-11,17-ジヒドロキシ-17-(2-ヒドロキシアセチル)-10,13,16-トリメチル-6,7,8,11,12,14,15,16-オクタヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3-オンである。ブデソニドの化学式、分子量、及びCAS ID番号は、それぞれ、C22H29FO5、392.461063g/mol、及び378-44-9である。
【0039】
ベタメタゾンの代替の化学名は、セレストン、リンデロンベタメタゾン、及びフルベニソロンを含む。
【0040】
フルチカゾンは、本発明によって企図される別の副腎皮質ステロイドであり、以下のような一般式によって表される。
【0041】
【0042】
フルチカゾンのIUPAC名は、(6α,11β,16α,17α)-6,9-ジフルオロ-17-{[(フルオロ-メチル)チオ]カルボニル}-11-ヒドロキシ-16-メチル-3-オキソアンドロスタ-1,4-ジエン-17-イル2-フランカルボキシレートである。フルチカゾンの化学式、分子量、及びCAS ID番号は、それぞれ、C27H29F3O6S、538.576g/mol、及び80474-14-2である。
【0043】
シクロデキストリンは、デンプンから細菌分解によって生成される環状オリゴ糖であることが知られている。シクロデキストリンは、6、7、または8個のα-D-グルコピラノシド単位からなり、それに応じてα、β、またはγシクロデキストリンと称される。
【0044】
【0045】
本発明によるシクロデキストリン化合物は、シクロデキストリン自体、「R」がメチル、エチル、プロピル、もしくはブチルであるアルキル-シクロデキストリン(R-CD);カルボキシアルキル-シクロデキストリン(CR-CD)、エーテル化シクロデキストリン(RO-CD)、ヒドロキシアルキル-シクロデキストリン(HR-CD)、グルコシル-シクロデキストリン、ジ及びトリグリセリド-シクロデキストリン、またはそれらの組み合わせ及びそれらの薬学的に許容される塩を含むが、これらは、約25℃で少なくとも約0.5gr/100mlの量で水溶性である。
【0046】
本発明において好ましく使用される水溶性シクロデキストリン化合物は、少なくともB-シクロデキストリンの水溶性(約1.85g/100ml)を有するシクロデキストリン化合物を指す。そのような水溶性シクロデキストリン化合物の例は、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、及びそれらの塩を含む。特に、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、及びそれらの誘導体が好ましい。
【0047】
本発明による他の好ましいシクロデキストリン化合物は、メチルシクロデキストリン(シクロデキストリンのメチル化生成物)、例えば、2-O-メチルβ-シクロデキストリン;ジメチルシクロデキストリン(DIMEB)(好ましくは2位及び6位で置換される)、トリメチルシクロデキストリン(好ましくは2位、3位、及び6位で置換される)、「ランダムメチル化」シクロデキストリン(RAMEBまたはRM)(好ましくは2位、3位、及び6位でランダムに置換されるが、グルコピラノース単位によって1.7位から1.9位に多くのメチルを有する)、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン(HPCD)、好ましくは、主に2位及び3位でランダムに置換されたヒドロキシプロピル化シクロデキストリン(HP-βCD、HP-γCD)、ヒドロキシエチル-シクロデキストリン、カルボキシメチルエチルシクロデキストリン、エチルシクロデキストリン、ヒドロキシル基の炭化水素鎖をグラフト化することによって得られ、ナノ粒子を形成することができる両親媒性シクロデキストリン、コレステロールシクロデキストリン、及びCritical Review in Therapeutic drug Carrier Systems,Stephen D.Bruck Ed,Cyclodextrin-Enabling Excipient;their present and future use in Pharmaceuticals,D.Thomson,Volume 14,Issue 1 p1-114(1997)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、(スペーサーアームで)モノアミノ化シクロデキストリンをグラフト化することによって得られるトリグリセリド-シクロデキストリンを含む。
【0048】
本発明による最も好ましいシクロデキストリン化合物は、グルコピラノース単位上にグラフト化された化学官能基を任意選択的に有するβ-シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(HPβCD)、-βシクロデキストリン(SBEβCD)、ランダムメチル化-βシクロデキストリン(RMβCD)、ジメチル-βシクロデキストリン(DIMEβCD)、トリメチル-βシクロデキストリン(TRIMEβCD)、ヒドロキシブチル-βシクロデキストリン(HBβCD)、グルコシルβシクロデキストリン、マルトシルβシクロデキストリン2-O-メチルβシクロデキストリン(Crysmeb)、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0049】
本発明による好ましいシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(これ以前またはこれ以降、HP-β-CDまたはHPBCDとも称される)である。
【0050】
本発明によるシクロデキストリン化合物は、「Cyclodextrin Technology,J Szejtli,Kluwer Academic Publishers 1998,pp1-78」(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載される方法等の周知のデンプンの酵素分解と、その後の適切な化学基のグラフト化によって生成される。それらはRoquette(France)から市販されている。
【0051】
最も好ましい薬学的組成物は、約1-1~約1-100、好ましくは約1:75、及び最も好ましくは約1:50のモル比でブデソニド誘導体及びシクロデキストリン化合物を含む。ブデソニド/ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリンの濃度比は、好ましくは約1:50のモル比である。
【0052】
シクロデキストリン化合物及びブデソニド誘導体を含む本発明による薬学的組成物は、粉末形態の過剰なブデソニド誘導体を、溶液中の適切な量のシクロデキストリンに加えることによって調製され得る。シクロデキストリン溶液は、水または水-アルコールまたはアルコール系の溶液、例えばエタノールである。ブデソニド誘導体及びシクロデキストリン化合物は、室温で連続撹拌下で混合される。過剰な量のブデソニド誘導体は、濾過によって除去される。
【0053】
両方の構成成分は、結果として生じるブデソニド誘導体とシクロデキストリンとの混合物を約1:1500~約1:2の重量濃度比、好ましくは1:60の比で得るように重み付けされている。
【0054】
次いで、液体混合物は、微粒子化された乾燥粉末を生成するために、当該技術分野で周知の適切な技術によって噴霧化する間に乾燥させることができる。そのような場合、薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤、例えば、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ポリオール、ロイシン誘導体等の担体等も含むことができる。
【0055】
また液体混合物は、溶液としての薬学的組成物を生成するように、混合ステップの溶液中のシクロデキストリンの濃度の1つと同じ濃度で等張緩衝液中のシクロデキストリンに加えられてもよい。
【0056】
溶液としての薬学的組成物はまた、等張緩衝液、防腐剤、溶媒または粘度調整剤、及び補助物質等の周知の薬学的に許容される賦形剤も含有し得る。適切な等張緩衝液系は、http://bio.lonza.com/uploads/tx_mwaxmarketingmaterial/Lonza_BenchGuides_Phosphate_Buffered_Saline_PBS.pdfに報告されるように、リン酸ナトリウム(PBS)、酢酸ナトリウム、またはホウ酸ナトリウムに基づいている。
【0057】
防腐剤は、使用中に薬学的組成物の微生物汚染を防止するために含まれてもよい。好適な防腐剤は、例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、ソルビン酸である。そのような防腐剤は、典型的には約0.01~約1重量/体積%の量で使用される。
【0058】
好適な補助物質及び薬学的に許容される塩は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th ed.,1980,Mack Publishing Co.(Osloらによる編集)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0059】
典型的には、組成物を等張性にするために適切な量の薬学的に許容される塩が本発明の薬学的組成物に使用される。薬学的に許容される物質の例は、生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液を含む。本発明によれば、溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは7~約7.5である。
【0060】
本発明による薬学的組成物は、肺炎症性疾患、好ましくは慢性閉塞性肺疾患、例えば、慢性気管支炎、閉塞性細気管支炎、肺気腫、肺線維症、嚢胞性線維症等、また最も好ましくはタバコ誘発性の慢性閉塞性肺疾患及び嚢胞性線維症疾患の治療を必要とする宿主哺乳動物におけるそれらの治療及び/または予防に有用である。
【0061】
本発明の薬学的組成物は、経口、非経口、または局所剤形、特に、エアロゾルまたは鼻腔吸入投与のための投与形態、局所投与形態に製剤化され得る。本発明の薬学的組成物は、溶液、懸濁液として、微粉化粉末混合物等として送達され得る。さらに、本発明の薬学的組成物は、例えば、ネブライザー、定量吸入器、もしくは乾燥粉末吸入器、またはそのような局所投与のために設計された任意の他のデバイスによって投与され得る。
【0062】
本発明による薬学的組成物は、約0.05~約1000mcgの範囲、好ましくは約0.1~約500mcg、特に、1日当たり約50~約200mcgの範囲の分子用量として投与されてもよい。
【0063】
本発明によって企図される好ましい薬学的組成物は、溶液中にブデソニド及びシクロデキストリン、最も好ましくはブデソニド及びHP-β-シクロデキストリンを含む。
【0064】
本発明によって企図される最も好ましい薬学的組成物は、等張緩衝液中約20mMのHP-β-シクロデキストリンの溶液中に約100μg/mlのブデソニドの濃度で、溶液としてブデソニド及びシクロデキストリンを含有する。
【0065】
本発明による薬学的組成物中のシクロデキストリン化合物とブデソニド誘導体との組み合わせは、好ましくは、約1:1または約2:1の化学量論比のブデソニド誘導体-シクロデキストリン化合物の複合体である。ブデソニド及びHP-β-シクロデキストリンの複合体は、約1:1の化学量論比である。
【0066】
本発明はさらに、以下を対象とする。
【0067】
(1)炎症性疾患の治療処置及び/または予防処置のような処置を必要とする宿主哺乳動物における肺炎症性疾患の治療処置及び/または予防処置における使用のための、シクロデキストリン化合物及び式Iのブデソニド誘導体を含む薬学的組成物であって、
【0068】
【化11】
式中、R1及びR2は、各々独立して、水素原子、ハロゲン、C
1-5-アルキル、C
3-8-シクロアルキル、ヒドロキシ、C
1-5-アルコキシ、C
1-5-アルコキシ-C
1-5-アルキル、任意選択的にハロゲン原子で単置換または多置換されたC
1-5-アルキル、C
1-5-アルコキシカルボニル、C
1-5-アルコキシカルボニル-C
1-6-アルキルを表し;
R3、R4、R5、及びR6は、各々独立して、水素、ヒドロキシル、C
1-5-アルコキシ、C
1-5-アルコキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル、任意選択的にハロゲン原子で単置換または多置換されたC
1-5-アルキルカルボニル、C
1-5-アルキルカルボニルオキシ、C
3-8-シクロアルキルカルボニルオキシ、C
1-5アルキルチオ、C
1-5アルキルスルホニル、C
1-5-アルキルスルフィニル、フラン、フランカルボニルオキシ、任意選択的にハロゲン原子で単置換または多置換されたC
1-5-アルキチオカルボニルを表し;
R4及びR5は、任意選択的に一緒になって3~5個の原子の炭化水素環を形成し、2つの炭素原子は、任意選択的に酸素原子によって置換され、環は、C
1-5アルキル基によって任意選択的に置換される、薬学的組成物、あるいは、薬学的に許容される酸もしくは塩基とのその塩、またはそのラセミ混合物もしくは任意の互変異性形態を含む任意の光学異性体もしくは光学異性体の混合物。
【0069】
(2)ブデソニド誘導体/及びシクロデキストリン化合物は、約1:1500~約1:2の重量濃度比である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【0070】
(3)ブデソニド誘導体/及びシクロデキストリン化合物は、約1:60の重量濃度比である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【0071】
(4)ブデソニド誘導体は、フロ酸モメタゾン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ベタメタゾン、プロピオン酸ベタメタゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、またはそれらの組み合わせ及びそれらの薬学的に許容される塩もしくはエステルからなる群から選択される、請求項1~3に記載の薬学的組成物。
【0072】
(5)ブデソニド誘導体を含み、式中、R1、R2、R6は水素であり、R3はヒドロキシエタノン基であり、R4はR5と一緒になって1,3-ジオキソラン-2-イル)プロピルまたは
【0073】
【化12】
(ブデソニド)を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【0074】
(6)ブデソニド誘導体を含み、式中、R1は水素であり、R2はClであり、R3はフランカルボキシルであり、R4はクロロメチルカルボニルであり、R5及びR6は水素(フロ酸モメタゾン)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【0075】
(7)ブデソニド誘導体を含み、式中、R1及びR2はFluorであり、R3はフルオロメチルチオカルボニルであり、R4はフランカルボキシルであり、R5及びR6は水素(フロ酸フルチカゾン)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【0076】
(8)ブデソニド誘導体を含み、式中、R1及びR2はFluorであり、R3はフルオロメチルチオカルボニルであり、R4はプロピルカルボキシルであり、R5及びR6は水素(プロピオン酸フルチカゾン)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【0077】
(9)ブデソニド誘導体を含み、式中、R2は塩素であり、R1、R5、及びR6は水素であり、R3はプロピオニルオキシメチルカルボニルであり、R4はプロピルカルボニルオキシ基
【0078】
【化13】
(ジプロピオン酸ベクロメタゾン)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【0079】
(10)ブデソニド誘導体は、シクロデキストリン化合物と一緒になって約1:1の化学量論比で複合体を形成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【0080】
(11)シクロデキストリン化合物は、少なくとも約1.85g/100mlの水溶性を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【0081】
(12)シクロデキストリン化合物は、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン、ランダムメチル化-βシクロデキストリン、ジメチル-βシクロデキストリン、トリメチル-βシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、ヒドロキシブチルβシクロデキストリン、グルコシル-βシクロデキストリン、マルトシル-βシクロデキストリン、2-O-メチル-βシクロデキストリン、またはそれらの組み合わせ及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【0082】
(13)シクロデキストリン化合物は、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【0083】
(14)肺炎症性疾患は、慢性閉塞性疾患である、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【0084】
(15)肺炎症性疾患の予防処置のための方法であって、そのような処置を必要とする患者に対する有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物の投与を含む、方法。
【0085】
(16)肺炎症性疾患の治療処置のための方法であって、そのような処置を必要とする患者に対する有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物の投与を含む、方法。
【0086】
(17)シクロデキストリン化合物及びブデソニド誘導体は、約0.1mg及び約25mg/用量の名目投与量でそれぞれ投与される、請求項15または16に記載の処置の方法。
【0087】
(18)肺炎症性疾患の治療を必要とする患者において、肺炎症性疾患を治療するための吸入システムであって、請求項1~14に記載の薬学的組成物を含む、吸入システム。
【0088】
(19)約250μg/mlのブデソニド及び約20mMのHP-β-CDを含む、薬学的組成物。
【0089】
(20)約100μg/mlのブデソニド及び約20mMのHP-β-CDを含む、薬学的組成物。
【0090】
(21)約250μg/mlのブデソニド及び約10mMのHP-β-CDを含む、薬学的組成物。
【0091】
(22)約100μg/mlのブデソニド及び約10mMのHP-β-CDを含む、薬学的組成物。
【0092】
(23)約100μg/mlのフルチカゾン及び約10mMのHP-β-CDを含む、薬学的組成物。
【0093】
(24)約40μg/mlのフルチカゾン及び約10mMのHP-β-CDを含む、薬学的組成物。
【0094】
(25)約40μg/mlのベクロメタゾン及び約10mMのHP-β-CDを含む、薬学的組成物。
【0095】
(26)薬学的組成物は、溶液である、請求項19~25に記載の薬学的組成物。
【0096】
(27)溶液は、約5~約8のpHを有する、請求項26に記載の薬学的組成物。
【0097】
(28)溶液は、約7~約7.5のpHを有する、請求項26に記載の薬学的組成物。
【0098】
(29)薬学的組成物は、溶液であり、溶液は、粉末を生成するために噴霧乾燥される、請求項26に記載の薬学的組成物。
【0099】
(30)粉末は、約3ミクロンの粒子を含む、請求項29に記載の薬学的組成物。
【0100】
(31)ブデソニド誘導体を約0.05~約1000mcgの範囲の分子用量で送達するようにブデソニド誘導体及びシクロデキストリンを含む、薬学的組成物。
【0101】
(32)ブデソニド誘導体を約0.1~約500mcgの範囲の分子用量で送達するようにブデソニド誘導体及びシクロデキストリンを含む、薬学的組成物。
【0102】
(33)ブデソニド誘導体を1日当たり約50~約200mcgの範囲の分子用量で送達するようにブデソニド誘導体及びシクロデキストリンを含む、薬学的組成物。
【0103】
(34)ブデノシド誘導体はブデノシドであり、シクロデキストリン化合物はHP-β-CDである、請求項31~33に記載の薬学的組成物。
【0104】
(35)ブデノシド誘導体はベタメタゾンであり、シクロデキストリン化合物はHP-β-CDである、請求項31~33に記載の薬学的組成物。
【0105】
(36)ブデノシド誘導体はフルチカゾンであり、シクロデキストリン化合物はHP-β-CDである、請求項31~33に記載の薬学的組成物。
【0106】
(37)ブデノシド誘導体はベクロメタゾンであり、シクロデキストリン化合物はHP-β-CDである、請求項31~33に記載の薬学的組成物。
【0107】
(38)約1:1~約2:1の化学量論比のブデソニド誘導体及びシクロデキストリン化合物の複合体を含む、薬学的組成物。
【0108】
(39)約1:1の化学量論比のブデソニド誘導体及びシクロデキストリン化合物の複合体を含む、薬学的組成物。
【0109】
(40)ブデノシド誘導体はブデノシドであり、シクロデキストリン化合物はHP-β-CDである、請求項38~39に記載の薬学的組成物。
【0110】
(41)ブデノシド誘導体はフルチカゾンであり、シクロデキストリン化合物はHP-β-CDである、請求項38~39に記載の薬学的組成物。
【0111】
(42)ブデノシド誘導体はベクロメタゾンであり、シクロデキストリン化合物はHP-β-CDである、請求項38~39に記載の薬学的組成物。
【0112】
(43)肺炎症性疾患の治療を必要とする宿主哺乳動物において、肺炎症性疾患を治療する方法であって、
請求項1~14、19~42、及び58のいずれか一項に記載の薬学的組成物を宿主哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0113】
(44)肺組織中の炎症細胞を減少させる治療を必要とする宿主哺乳動物において、肺組織中の炎症細胞を減少させる方法であって、
請求項1~14、19~42、及び58のいずれか一項に記載の薬学的組成物を宿主哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0114】
(45)肺組織中のオゾン誘発性KC産生を低下させる治療を必要とする宿主哺乳動物において、肺組織中のオゾン誘発性KC産生を低下させる方法であって、
請求項1~14、19~42、及び58のいずれか一項に記載の薬学的組成物を宿主哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0115】
(46)アレルゲン曝露後に肺組織中のIL13を減少させる治療を必要とする宿主哺乳動物において、肺組織中のIL13を減少させる方法であって、
請求項1~14、19~42、及び58のいずれか一項に記載の薬学的組成物を宿主哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0116】
(47)気管支過敏症を軽減する治療を必要とする宿主哺乳動物において、気管支過敏症を軽減する方法であって、
請求項1~14、19~42、及び58のいずれか一項に記載の薬学的組成物を宿主哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0117】
(48)IL17レベルを減少させる治療を必要とする宿主哺乳動物において、IL17レベルを減少させる方法であって、
請求項1~14、19~42、及び58のいずれか一項に記載の薬学的組成物を宿主哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0118】
(49)CXCL-1レベルを減少させる治療を必要とする宿主哺乳動物において、CXCL-1レベルを減少させる方法であって、
請求項1~14、19~42、及び58のいずれか一項に記載の薬学的組成物を宿主哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0119】
(50)タバコ煙曝露後に肺組織中の好中球を減少させる治療を必要とする宿主哺乳動物において、肺組織中の好中球を減少させる方法であって、
請求項1~14、19~42、及び58のいずれか一項に記載の薬学的組成物を宿主哺乳動物に投与することを含む、方法。
【0120】
(51)組成物に対していずれの分離または抽出ステップも用いずに、活性成分及びHP-β-CDを含有する組成物中のHP-β-CDを検出及び定量化するための方法であって、HP-β-CDは、その上にヒドロキシプロピル基を含有し、方法は、
組成物中のHP-β-CDを検出及び定量化するために、HP-β-CDに対してヒドロキシプロピル基の1H NMR分析を使用することを含む、方法。
【0121】
(52)組成物は、溶液である、請求項51に記載の方法。
【0122】
(53)活性成分は、ブデノシド誘導体である、請求項51または52に記載の方法。
【0123】
(54)ブデノシド誘導体は、ブデソニドである、請求項51または52に記載の方法。
【0124】
(55)ブデノシド誘導体は、フルチカゾンである、請求項51または52に記載の方法。
【0125】
(56)ブデノシド誘導体は、ベクロメタゾンである、請求項51または52に記載の方法。
【0126】
(57)ブデノシド誘導体は、ベタメタゾンである、請求項51または52に記載の方法。
【0127】
(58)ブデノシド誘導体は、ベタメタゾンであり、シクロデキストリン化合物は、HP-β-CDである、請求項38~39に記載の薬学的組成物。
【0128】
以下の実施例、参考文献、及び図は、本発明の理解を助けるために提供される。本発明から逸脱することなく、記載される手順に変更を加えることができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0129】
上記及び他の本発明の目的、利点、及び特徴、ならびにそれらが達成される様式は、下記の図及び例を考慮するとより容易に明らかになるであろう。
【0130】
【
図1】漸増濃度のHP-β-シクロデキストリン(HPβCD)を用いた、水溶液中のブデソニドの溶解度図に関する。
【
図2】気道閉塞及び炎症のモデルに関する:組織診で測定された気管支周囲炎症スコア。
【
図3】肺タンパク質抽出物中で測定されたIL13レベルに関する。
【
図4】COPDモデルに関する:組織診で測定された気管支周囲炎症スコア。
【
図5】気道反応性測定に関する:プラセボまたは治療を受けた後のマウスにおいてエンハンスドポーズ(Penh)を測定した。
【
図6】オゾン曝露マウスの肺タンパク質抽出物におけるIL17のELISA測定に関する。
【
図7】オゾン曝露マウスの肺タンパク質抽出物におけるIL13のELISA測定に関する。
【
図8】オゾン曝露マウスの肺タンパク質抽出物におけるKC(CXL1)のELISA測定に関する。
【
図9】ブデソニド-シクロデキストリンがBALF好中球の割合に与える影響に関する。
【
図10】ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン単独の基準
1H-RMNスペクトル(
図10b)と比較した、ブデソニド-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体の
1H-NMRスペクトルによるブデソニド誘導体及びシクロデキストリンを含む包接複合体の図である(
図10a)。
【
図11】ブデソニド-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン複合体の1D-COSY-NMRスペクトルによるブデソニド誘導体及びシクロデキストリンを含む包接複合体の図である。
【
図13】水中のHP-β-CD(δ0.6~1.5)の1H NMRスペクトルに関する。
【
図14】重み付け(1/X)した二次回帰を考慮することによって得られた正確度プロファイルに関する。
【
図15】プラセボ、ブデソニド懸濁液、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン-ブデソニド複合体で処理したLPS曝露動物からのBALF中の好中球カウントの測定である。
【
図16】LPS曝露マウスにおける炎症スコアの測定である。
【
図17】LPS曝露マウスにおける炎症スコアの測定である。
【
図18】プラセボ、Crysmeb-ジプロピオン酸ベタメタゾン複合体、及びベタメタゾン100μg/ml懸濁液で処理したLPS曝露動物からのBALF中の好中球カウント(%)の測定である。
【
図19】プラセボ、Crysmeb-ジプロピオン酸ベタメタゾン複合体、及びベタメタゾン懸濁液で処理したLPS曝露動物からのBALF中の好中球カウントの測定である。
【
図20】プラセボ、ジプロピオン酸ベタメタゾン、または2つの濃度のジプロピオン酸ベタメタゾン-Crysmeb複合体で処理したLPS曝露マウスにおける炎症スコアの測定である。
【
図21】プラセボ、プロピオン酸フルチカゾン懸濁液、及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン-プロピオン酸フルチカゾン複合体で処理したLPS曝露動物からのBALF中の好中球カウントの測定である。
【0131】
本発明を例証するために本発明の種々の実施形態の例を次に提供するが、それは本発明を限定することを意図するものではない。別途指定のない限り、部及び割合は重量によるものとする。
【0132】
実施例1
溶液としてのHPβ-シクロデキストリンとブデソニドとの薬学的組成物
ブデソニドはIndis(Belgium)から購入し、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンはRoquette(France)から購入する。約250μg/mlの市販のブデソニド懸濁液(Pulmicort(登録商標))は、AstraZeneca(Sweden)から購入する。
【0133】
図1において、粉末形態の過剰なブデソニドを、水中で約5、約10、約25、約50、及び約100mMの正確な濃度のシクロデキストリン溶液に加えることによって溶液としての薬学的組成物を調製する(カールフィッシャー滴定装置を使用してモル濃度を算出することにより、シクロデキストリンの計算量及び正確に計測した量を含水量に対して補正する)。混合プロセスは、約350rpmの連続撹拌下、室温で約24時間かかる。得られた混合物を0.22μmフィルタユニットを用いて濾過することにより、過剰な量のブデソニドを除去する。溶液中のブデソニド濃度を有効なHPLC法により確認し、次いで、インビボ試験に必要なブデソニド濃度に達するようにPBS-シクロデキストリン溶液(以前と同じ約5、約10、約25、約50、及び約100mMの正確な濃度)で混合物を希釈する。
【0134】
そのような濃度、例えば、約100μg/mlまたは約250μg/mlでは、ブデソニドは水/PBS中で溶解するため、薬学的組成物は澄んだ透明な吸入液に見える。
【0135】
実施例1a:約100μg/mlのブデソニド及び約10mMのHP-β-CD
吸入液のための好ましい薬学的製剤は、約100μg/mlのブデソニド及び約10mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを含む。約0.6979gのHP-β-CD(5%水)(その含水量に対して補正した)を50mlの精製した発熱物質不含水(または滅菌PBS)に溶解させ、過剰なブデソニドを加え、約350rpmで約24時間室温で撹拌することによって溶液を調製する。0.22μmフィルタユニットを通した濾過によって過剰なブデソニドを除去し、得られた溶液を有効なHPLC法により分注する。次いで、約100μg/mlのブデソニド濃度に達するように、得られた溶液を約10mMのHP-β-CD溶液(PBS中または水中)で希釈する。等張性は、NaClを加えることによって達成される。好ましくは、最終溶液は、0.22μmポリプロピレン膜を通した濾過によって、または蒸気滅菌プロセスによって滅菌される。
【0136】
実施例1b:約100μg/mlのブデソニド及び約20mMのHP-β-CD
吸入液のための第2の好ましい薬学的製剤は、約100μg/mlのブデソニド及び約20mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを含む。約1.3958gのHP-β-CD(約5%水)(その含水量に対して補正した)を約50mlの精製した発熱物質不含水(または滅菌PBS)に溶解させ、過剰なブデソニドを加え、約350rpmで約24時間撹拌することによって溶液を調製する。0.22μmフィルタユニットを通した濾過によって過剰なブデソニドを除去し、得られた溶液を有効なHPLC法により分注する。次いで、約100μg/mlのブデソニド濃度に達するように、得られた溶液を約20mMのHP-β-CD溶液(PBS中または水中)で希釈する。等張性は、NaClを加えることによって達成される。好ましくは、最終溶液は、0.22μmポリプロピレン膜を通した濾過によって、または蒸気滅菌プロセスによって滅菌される。
【0137】
実施例1c:約250μg/mlのブデソニド及び約20mMのHP-β-CD
吸入液のための第3の好ましい薬学的製剤は、約250μg/mlのブデソニド及び約20mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを含む。約1.3958gのHP-β-CD(約5%水)(その含水量に対して補正した)を約50mlの精製した発熱物質不含水(または滅菌PBS)に溶解させ、過剰なブデソニドを加え、約350rpmで約24時間撹拌することによって溶液を調製する。0.22μmフィルタユニットを通した濾過によって過剰なブデソニドを除去し、得られた溶液を有効なHPLC法により分注する。次いで、約250μg/mlのブデソニド濃度に達するように、得られた溶液を約20mMのHP-β-CD溶液(PBS中または水中)で希釈する。等張性は、NaClを加えることによって達成される。好ましくは、最終溶液は、0.22μmポリプロピレン膜を通した濾過によって、または蒸気滅菌プロセスによって滅菌される。
【0138】
実施例1d:約100μg/mlのフルチカゾン及び約10mMのHP-β-CD
吸入液のための第4の好ましい薬学的製剤は、約100μg/mlのフルチカゾン及び約10mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを含む。約0.6979gのHP-β-CD(約5%水)(その含水量に対して補正した)を約50mlの精製した発熱物質不含水(または滅菌PBS)に溶解させ、過剰なフルチカゾンを加え、約350rpmで約24時間室温で撹拌することによって溶液を調製する。0.22μmフィルタユニットを通した濾過によって過剰なフルチカゾンを除去し、得られた溶液を有効なHPLC法により分注する。次いで、約100μg/mlのフルチカゾン濃度に達するように、得られた溶液を約10mMのHP-β-CD溶液(PBS中または水中)で希釈する。等張性は、NaClを加えることによって達成される。好ましくは、最終溶液は、0.22μmポリプロピレン膜を通した濾過によって、または蒸気滅菌プロセスによって滅菌される。
【0139】
実施例1e:約40μg/mlのフルチカゾン及び約10mMのHP-β-CD
吸入液のための第5の好ましい薬学的製剤は、約40μg/mlのフルチカゾン及び約10mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを含む。約0.6979gのHP-β-CD(約5%水)(その含水量に対して補正した)を約50mlの精製した発熱物質不含水(または滅菌PBS)に溶解させ、過剰なフルチカゾンを加え、約350rpmで約24時間室温で撹拌することによって溶液を調製する。0.22μmフィルタユニットを通した濾過によって過剰なフルチカゾンを除去し、得られた溶液を有効なHPLC法により分注する。次いで、約40μg/mlのフルチカゾン濃度に達するように、得られた溶液を約10mMのHP-β-CD溶液(PBS中または水中)で希釈する。等張性は、NaClを加えることによって達成される。好ましくは、最終溶液は、0.22μmポリプロピレン膜を通した濾過によって、または蒸気滅菌プロセスによって滅菌される。
【0140】
実施例1f:40μg/mlのベルコメタゾン及び約10mMのHP-β-CD
吸入液のための第7の好ましい薬学的製剤は、約40μg/mlのベクロメタゾン及び約10mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを含む。約0.6979gのHP-β-CD(約5%)(その含水量に対して補正した)を約50mlの精製した発熱物質不含水(または滅菌PBS)に溶解させ、過剰なベクロメタゾンを加え、約350rpmで約24時間室温で撹拌することによって溶液を調製する。0.22μmフィルタユニットを通した濾過によって過剰なベクロメタゾンを除去し、得られた溶液を有効なHPLC法により分注する。次いで、約40μg/mlのベクロメタゾン濃度に達するように、得られた溶液を約10mMのHP-β-CD溶液(PBS中または水中)で希釈する。等張性は、NaClを加えることによって達成される。好ましくは、最終溶液は、0.22μmポリプロピレン膜を通した濾過によって、または蒸気滅菌プロセスによって滅菌される。
【0141】
実施例2
粉末形態のフルチカゾンとHP-β-シクロデキストリンとの薬学的組成物
吸入液のための好ましい薬学的製剤は、ECICからの約40μg/mlのフルチカゾン及び約10mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを含む。約0.6979gのHP-β-CD(約5%水)(その含水量に対して補正した)を約50mlの精製した発熱物質不含水に溶解させ、過剰なフルチカゾンを加え、約350rpmで約24時間撹拌することによって溶液を調製する。0.22μmフィルタユニットを通した濾過によって過剰なフルチカゾンを除去し、得られた溶液を有効なHPLC法により分注する。次いで、約40μg/mlのフルチカゾン濃度に達するように、得られた溶液を約10mMのHP-β-CD溶液で希釈する。最適化条件において、ProCept噴霧乾燥器-冷却器を用いて最終溶液を噴霧乾燥し、約3ミクロンの粒子を有する妥当な粉末収率(約>90%)を得る。噴霧乾燥の技術は、当業者に周知である。噴霧乾燥器-冷却器及びその乾燥プロセスは、Proceptデータシートまたは(http://www.procept.be/spray-dryer-chiller)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に報告されている。
【0142】
実施例3
気道閉塞及び炎症のモデルにおける実施例1の薬学的組成物の評価
3a:感作、アレルゲン曝露、及び処理プロトコル
【0143】
【化14】
IPは腹腔内注射を意味し、BHRは気管支過敏症を意味する。
【0144】
気道炎症の調節を調査するために、0日目(D0)及び7日目(D7)に、水酸化アルミニウム(AlumInject;Perbio,Erembodegem,Belgium)中に乳化した約10μgの卵白アルブミン(OVA)(Sigma Aldrich、Schnelldorf,Germany)の腹腔内注射により約6~約8週齢のBALB/cマウスを感作する。その後、21日目~25日目に、超音波ネブライザー(Devilbiss 2000)によって発生させた約1%OVAのエアロゾルを毎日約30分間吸入することによってマウスをアレルゲンに曝露する。18日目~24日目に、マウスを約50μlの鼻腔内滴下注入に供し、Cataldo et al.:Am.J.Pathol.161(2):491-498(2002)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)によって以前に報告されたように、26日目に屠殺する。プラセボマウスにはPBSを鼻腔内注入する。
【0145】
材料及び方法
6~8週齢の雄マウスC57B1/6をCharles River(Koln,Germany)から購入し、我々の施設で飼育する。全ての動物実験手順は、University of Liegeの倫理委員会によって承認されている。飼料及び水は自由に摂取させる。
【0146】
材料
リン酸緩衝食塩水(PBS)はLonza(Verviers、Belgium)から購入し、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル基による置換度:0.62)はRoquette(France)から購入し、ブデソニドはIndis(Belgium)から購入し、250μg/mlの市販のブデソニド懸濁液(Pulmicort(登録商標))はAstraZeneca(Sweden)から購入する。メタコリンはSigma-Aldrich(Germany)からである。マウスへの投与のために、上記実施例1aに従ってヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(約20mM)をブデソニド(約250μg/ml)及びブデソニド懸濁液(約250μg/ml)と混合する。全ての他の材料は分析グレードである。滅菌した非発熱性及び等張性のシクロデキストリン誘導体-副腎皮質ステロイド溶液を種々の濃度で調製する。吸入用の滅菌水(<約0.5USP単位のエンドトキシン/ml)のためのLimulus Amebocyte Lysate(LAL)を使用して、FDAのエンドトキシン試験法のガイドライン35 2012に従って溶液を試験する。
【0147】
気管支肺胞洗浄液(BALF)
気道反応性評価の直後及び最後のアレルゲン曝露の約24時間後にマウスを屠殺し、Cataldo DD,Tournoy KG,Vermaelen K et al.:Am J Pathol.161(2):491-498(2002)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)によって以前に記載されたように、4×約1mlのPBS-EDTA(約0.05mM)(Calbiochem、Darmstadt,Germany)を使用して気管支肺胞洗浄を行う。
【0148】
タンパク質評価のためにBALF上清が収集され、細胞分画算定のために細胞が用いられる。ヘマトキシリン-エオジン(Diff-Quick、Dade、Belgium)で染色した後、細胞遠心分離調製物に対して形態学的基準に基づく細胞分画算定を行う。細胞は、穏やかに手で吸引することにより回収する。気管支肺胞液(BALF)の遠心分離(約4℃で、約1200rpmで約10分間)後、タンパク質評価のために上清を約-80℃で凍結し、細胞ペレットを約1mlのPBS-EDTA(約0.05mM)中に再懸濁した。Diff-Quick(Dade、Belgium)で染色した後、細胞遠心分離調製物(Cytospin)に対して細胞分画算定を行う。
【0149】
肺組織診及び組織プロセシング
BAL後、胸郭を開いて、左主気管支をクランプする。左肺を切除し、タンパク質抽出のために-80℃で直ちに凍結する。右肺に約4%のパラホルムアルデヒド4mlを注入し、パラフィンに包埋し、組織診に用いる。厚さ約5μmの切片をパラフィンから切断し、ヘマトキシリン-エオジンで染色する。Cataldo DD,Tournoy KG,Vermaelen K et al.:Am J Pathol.161(2):491-498(2002)によって以前に記載されたように、気管支周囲の炎症細胞の定量化によって算出されるスコアにより気管支周囲の炎症の程度を推定する。炎症が検出不能な場合は値を0と見なし、時々炎症細胞が存在する場合は値を1、ほとんどの気管支が炎症細胞の薄い層(約1~約5個の細胞)によって取り囲まれている場合は値を2、またほとんどの気管支が炎症細胞の厚い層(>約5個の細胞)によって取り囲まれている場合は値を3と見なす。マウス1匹当たり6~8個の無作為に選択された組織切片がスコア化されるため、炎症スコアは平均値として表され、群間で比較され得る。
【0150】
前述のように、左肺を切除して約-80℃で直ちに凍結し、次いで、Mikro-Dismembrator(Braun Biotech International、Gmbh Melsungen,Germany)を使用して液体N2中で破砕し、均質な粉末を形成する。この破砕した肺組織を、タンパク質抽出のために、約2Mの尿素、約1MのNaCl、及び約50mMのトリス(約pH7.5)を含有する溶液中で約4℃で一晩インキュベートし、その後、約16 000×gで約15分間遠心分離する。
【0151】
製造者の指示に従って、ELISA(duoset kit、R&D Systems、Abingdon,United Kingdom)により非プール肺タンパク質試料中のIL13レベルを測定する。
【0152】
気管性反応性測定
ケタミン(約10mg/ml、Merial、Brussels,Belgium)とキシラジン(約1mg/ml、VMD、Arendonk,Belgium)の混合物の腹腔内注射(約200μl)によってマウスを麻酔する。20ゲージのポリエチレンカテーテルを気管に挿入し、漏出及び脱落を避けるためにカテーテルの周りに連結することによって気管切開術を行う。1分当たり約250呼吸及び約10ml/kgの1回換気量でflexiVent(登録商標)小動物用人工呼吸器(SCIREQ、Montreal,Canada)を用いてマウスの換気を行う。呼気終末陽圧換気は約2hPaに設定する。機械的換気の約2分後に測定を開始する。次いで、気管チューブに約1Hzの正弦波振動を加え、多重線形回帰により気道の動的抵抗、弾性、及びコンプライアンスの算出が可能となる。約0.5~約19.6Hzに及ぶ周波数の約8秒の強制振動信号からなる第2の操作は、組織減衰、組織弾性、及び組織ヒステリシス性を評価するためにインピーダンスの測定を可能にする。ベースライン肺機能の測定後、生理食塩水エアロゾル(PBS)、続いて漸増用量(約3、約6、約9、約12g/l)のメタコリン(ICN Biomedicals、Asse Relegem,Belgium)を含有するエアロゾルにマウスを曝露する。エアロゾルは、超音波ネブライザー(SYST’AM,LS 2000、Dupont Medical、Rhode-Saint-Genese,Belgium)によって発生させ、製造者の指示に従って、医療用空気のバイアス流を用いてflexiVent(登録商標)の吸気ラインに送達させる。各エアロゾルは、約2分間で送達され、前述の測定期間は各エアロゾルの後に1分間隔で行われる。メタコリン負荷後の平均気道抵抗は、曝露中に測定される主なパラメータである。
【0153】
統計学的分析
肺組織診レベルの結果を平均+/-SEMとして表し、一元配置分散分析、続いてチューキー試験後解析を用いて群間の比較を行う。試験は、GraphPad Prism 5を使用して行われる。有意水準:α=約0.05(95%信頼性区間)。
【0154】
薬理学的結果
図2は、プラセボ、約100μg/mlのブデソニド、実施例1aによる薬学的組成物、及び約250μg/mlのブデソニドを用いた組織診で測定された気管支周囲炎症スコアを示す。
【0155】
卵白アルブミン曝露マウス(プラセボ)は、肺組織中の炎症細胞数の有意な増加を示す。約100μg/mlのブデソニド及び約10mMのHP-β-CDの複合体への曝露は、プラセボと比較して炎症細胞数の有意な減少を引き起こし、示す。ブデソニド(約100μg/ml)-HP-β-CD(約10mM)複合体は、より高い濃度(約250μg/ml)のブデソニド単独の場合と同じ炎症の減少を引き起こし、同じ濃度(約100μg/ml)のブデソニド単独の場合よりも有意に有効である。
【0156】
図3は、肺タンパク質抽出物中で測定されたIL13レベルを示す。
【0157】
Mikro-Dismembrator(Braun Biotech International、Gmbh Melsungen,Germany)を使用して肺を破砕する。破砕した肺組織を、タンパク質抽出のために、約1Mの尿素を含有する溶液中で約4℃で一晩インキュベートする。ELISA試験のために上清を約-80℃で保存する。
【0158】
マウスは、約250μg/mlのブデソニドで処理された場合、約250μg/mlのブデソニド-約10mMのシクロデキストリンの複合体で処理したマウスと比較して、アレルゲン曝露後にそれらの肺組織中により高いレベルのIL13を示す。約100μg/mlのブデソニドで処理したマウスは、同様に、約100μg/mlのブデソニド-約10mMのシクロデキストリンで処理したマウスよりも高いIL13レベルを示す。
【0159】
実施例4
COPDモデルにおける実施例1a、実施例1b、及び実施例1cの薬学的組成物の評価
慢性閉塞性肺疾患(COPD)を模倣するために2つの異なるマウスモデルを用いる。第1のモデルにおいて、高反応性の酸化体大気汚染物質である高濃度のオゾン(O3)にC57BL/6マウスを曝露する。動物モデルにおいて吸入されたO3は、気道炎症(好中球細胞による)及び反応性亢進の原因となる。タバコがCOPDの主な推進要因であることが知られているため、第2のモデルは、タバコ煙を使用している。またタバコ煙曝露は、好中球細胞によって媒介される気道炎症も引き起こす。)オゾン及びタバコは、酸化ストレスの強力な誘導因子であり、このストレスが長期試験において観察されるような慢性炎症を引き起こし得る。
【0160】
4.A オゾンモデル
オゾン曝露及び処理プロトコル
これ以降、オゾン曝露下の実験の模式図を報告する。
【0161】
【0162】
この模式図では、C57BL/6マウスを、高濃度のオゾン(約2ppm)に約3時間の間曝露する前に、最初に前処理として約501μlの鼻腔内注入によって処理し(0日目~1日目)、その後、約3時間前に約501μlの治療薬を鼻腔内注入する(2日目~4日目)。5日目にマウスを屠殺する。プラセボマウスにはPBSを注入する。
【0163】
気管支肺胞洗浄液(BALF)分析、肺組織診、気管支反応性測定、及び統計学的分析は、実施例1に以前に記載したものと同じである(気道炎症及び反応性亢進)。製造者の指示に従って、ELISA(duoset kit、R&D Systems、Abingdon,United Kingdom)により非プール肺タンパク質試料中のIL17及びKC(CXCL1)レベルを測定する。
【0164】
薬理学的結果
図4は、プラセボ、実施例1aによる組成物、及び約250μg/mlのブデソニドについて組織診で測定された気管支周囲炎症スコアを示す。
【0165】
オゾン曝露マウス(プラセボ)は、他の群と比較して、肺組織中の炎症細胞数の有意な増加を示す。約100μg/mlのブデソニド及び10mMのHP-β-CDを含む複合体への曝露は、プラセボと比較した場合に、炎症細胞数の有意な減少を引き起こす。ブデソニド(約100μg/ml)-HP-β-CD(約10mM)の複合体は、より高い濃度(約250μg/ml)のブデソニド単独の場合と同じ炎症の減少を引き起こす。
【0166】
図5は、気道反応性測定を示す:プラセボまたは実施例1aに従って調製した薬学的組成物を用いた処理を受けた後のマウスにおいてエンハンスドポーズ(Penh)を測定する。
【0167】
他の群と比較した場合、オゾン曝露は、メタコリン負荷を受けたマウスにおいて、予想された気管支過敏症の有意な増悪を誘導する。プラセボ群と比較した場合、約100μg/mlのブデソニド及び10mMのHP-β-CDを含む複合体は、約48g/Lのメタコリンで気管支過敏症の有意な軽減を引き起こす。ブデソニド(約100μg/ml)-HP-β-CD(10mM)複合体は、より高い濃度(約250μg/ml)のブデソニド単独の場合と同じ気管支過敏症の軽減を引き起こす。
【0168】
図6は、オゾン曝露マウスの肺タンパク質抽出物におけるIL17のELISA測定である。
【0169】
HPBCD及びブデソニドを単独でまたは組み合わせて用いた異なる処理を比較する。薬学的組成物は、同じPBS緩衝液中に、組み合わせ混合物(ブデソニド-HPBCD)として、または各活性化合物を単独で用いて(約250μg/mlのブデソニドまたは約10mMのHPBCD)、実施例1aに従って調製する。
【0170】
ブデソニド処理群(約250μg/ml)と比較した場合、約250μg/mlまたは約100μg/mlまたは約10μg/mlのブデソニド及び10mMのHP-β-CDを含む複合体は、IL17レベルの有意な減少を引き起こす。
【0171】
IL17レベルは、オゾン曝露後に増加したことから、オゾン誘発性の好中球炎症の病態形成に関与する可能性がある。これは、吸入によって与えられたブデソニド-シクロデキストリン複合体がオゾン誘発性のIL17レベルを減少させることができるという最初の証拠である。
【0172】
図7は、オゾン曝露マウスの肺タンパク質抽出物におけるIL13のELISA測定を示す。
【0173】
HPBCD及びブデソニドを単独でまたは組み合わせて用いた異なる処理を比較する。薬学的組成物は、同じPBS緩衝液中に、組み合わせ混合物(ブデソニド-HPBCD)として、または各活性化合物を単独で用いて(約250μg/mlのブデソニドまたは約10mMのHPBCD)、実施例1aに従って調製する。
【0174】
ブデソニド処理群(約250μg/ml)と比較した場合、約250μg/mlまたは約100μg/mlまたは約10μg/mlのブデソニド及び約10mMのHP-β-CDを含む複合体は、IL17レベルの減少を引き起こす。
【0175】
IL13は、オゾン曝露後に調節されること、及びオゾン曝露に続く気道機能不全に関与すること以前に示されている。例えば、Williams S.,Nath P,Leung S,et al.:Eur Respir J.32(3):571-8(Sep.2008)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。ブデソニドを含む化合物の吸入によってオゾン誘発性IL13レベルが有意に減少されることが示されたのは、これが初めてである。ブデソニド処理群(約250μg/ml)と比較した場合、約250μg/mlまたは約100μg/mlまたは約10μg/mlのブデソニド及び約10mMのHP-β-CDを含む複合体は、IL13レベルの減少を引き起こす。このように、ブデソニド-シクロデキストリン複合体の吸入は、吸入された約250μg/mlのブデソニドと比較してIL13レベルを減少させる。
【0176】
図8は、オゾン曝露マウスの肺タンパク質抽出物におけるKC(CXCL1)のELISA測定を示す。
【0177】
HPBCD及びブデソニドを単独でまたは組み合わせて用いた異なる吸入処置を比較する。薬学的組成物は、同じPBS緩衝液中に、組み合わせ混合物(ブデソニド-HPBCD)として、または各活性化合物を単独で用いて(約250μg/mlのブデソニドまたは約10mMのHPBCD)、実施例1aに従って調製する。
【0178】
ブデソニド処理群(約250μg/ml)と比較した場合、約250μg/mlまたは約100μg/mlのブデソニド及び約10mMのHP-β-CDを含む複合体は、KCレベルの減少を引き起こす。
【0179】
これは、刺激物質または酸化体への曝露後に気管支壁の好中球において重要な役割を果たすサイトカインであるCXCL-1が、吸入されたブデソニド誘導体によって減少され得るという最初の証拠である。これは、オゾン誘発性KC産生を減少させる唯一のブデソニド-シクロデキストリン複合体である。
【0180】
4.B タバコ煙曝露モデル
タバコ曝露及び処理プロトコル
Inexpose(登録商標)システム(Scireq、Montreal,Canada)を使用して、C57BL/6マウスを6週間の間、1週間に5日10本のタバコに曝露する。6週間の間、1週間に5日約50μlの鼻腔内注入によりマウスを処理する。43日目にマウスを屠殺する。偽曝露マウスとも称されるプラセボマウスには、PBSを注入する。
【0181】
気管支肺胞洗浄液(BALF)分析は、実施例3に以前に記載したものと同じである(気道閉塞及び炎症のモデル)。
【0182】
統計学的分析
気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞数の結果を平均+/-SEMとして表し、マン・ホイットニーの検定を用いて群間の比較を行う。試験は、GraphPad Prism 5を使用して行われる。P価<0.05を有意であると見なす。
【0183】
薬理学的結果
この実験では、約500μg/mlのブデソニド単独の溶液と比較するために、
・約100μg/mlのブデソニド及び約20mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(実施例1b)
・約250μg/mlのブデソニド及び約20mMのヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(実施例1c)
を含む特定の吸入液として、実施例1b及び1cによる薬学的組成物が使用される。
【0184】
図9は、ブデソニド-シクロデキストリン混合物がBALFの好中球の割合に与える影響を示す。
【0185】
【0186】
タバコ煙曝露マウスは、偽曝露マウスと比較して、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好中球数の有意な増加を示す。全ての試験濃度のブデソニド-HP-β-CD(約20mM)複合体への曝露が、タバコ煙曝露マウスと比較した場合、好中球数の有意な減少を引き起こす。全てのブデソニド-HP-β-CD(約20mM)複合体が、より高い濃度(約500μg/ml)のブデソニド単独の場合よりも大きな減少を引き起こす。ブデソニド単独では、処理マウスのBALF中の炎症レベルを減少させるのに有意に効率的ではない。
【0187】
実施例5
ブデソニド誘導体-シクロデキストリン複合体
HP-β-CD炭水化物は発色団を含有しないため、UV検出は実行不可能である。これまで、薬剤水溶液中のHP-β-CDの定量化に関する技術は記載されていない。CDと薬物との間の相互作用を理解するため、及び置換グルコピラノース単位の数を評価するため(モル置換)に核磁気共鳴分光法が広く用いられていることから、水中のHP-β-CDの検出及び定量化のために1H核磁気共鳴分析が適用される。
【0188】
材料
HP-β-CD(モル置換=0.64)は、Roquette(France)からご厚意で寄付されたものである。トリメチルシリル-3-プロピオン酸-d4(TMSP)及び重水(約99.96% D)は、Eurisotop(Gif-sur-Yvette,France)から購入する。マレイン酸は、Sigma-Aldrichから入手する。
【0189】
試料の調製
検証プロセスのために、HP-β-CDの標準溶液をMilli-Q(登録商標)水中に希釈し、約0.05mg/ml~約5mg/mlの範囲内で6つの濃度レベルの較正標準を得る。これらの溶液の約500μlで、NMR分析のために約100μlのD20緩衝液、約100μlのマレイン酸(約5mM)、及び約10μlのTMSPを加える。
【0190】
等張緩衝液がD2Oに置き換えられたことを除いて、実施例1aに従って好ましい薬学的組成物であるブデソニド-HP-β-CDを調製する。
【0191】
NMR測定
プロトン信号取得のために、約500.13MHzで動作するBruker Avance分光計において、約298KでD2O中のブデソニドHP-β-CDを記録する。この機器は、Z勾配付きの5mm TCIクライオプローブを装備している。水信号を最小限に抑えるために1D NOESY-presatシーケンス(64走査)を用いる。定量化のためにマレイン酸を内部標準として使用し、ゼロ較正のためにTMSPを使用する。
【0192】
HP-β-CDを特異的に検出するために、ヒドロキシプロピル基に焦点が置かれる。よって、メチル基からの二重線のピーク面積は約1.1ppmで測定されるが、これはヒドロキシプロピル基の一部である(
図10B)。この特異的ピークはまた、HP-β-CDがブデソニドの存在下にある場合にも定量化することができる。約1.1ppmのピークは、依然として定量化可能であり、ブデソニドを含まない場合と同じ面積を維持した(
図10A)。約5.2ppmのピークを含む他のピークも、HP-β-CDの定量化のために用いられ得る。
【0193】
方法の検証
方法の検証は、一連の3つの実験に対して行われる。以下の基準を検査する:選択性、特異性((3-シクロデキストリンと比較)、応答関数(較正曲線)、直線性、精度(繰り返し精度及び中間精度)、忠実度、検出限界(LOD)、定量限界(LOQ)、マトリックス効果、及び正確度。総合誤差は、検証プロセスの決定基準として用いられる。許容限界を約+/-7.5%に設定し、これらの限界内で将来の結果を得るための最小確率をβ=約95%(β-予想限界)に設定する。したがって、上記範囲内でこの技術の正当性が認められる。
【0194】
図11は、HP-β-CD-ブデソニド複合体の1D-COSYスペクトルを示す。
【0195】
K.A.Connors:Chem.Rev.97:1325-1357(1997)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)によれば、HP-β-CDからのH-3及びH-5プロトンがシクロデキストリン空洞内に位置することは周知であり、これらのプロトンとの相関関係から、ブデソニドまたはブデソニドの一部がHP-β-CD内に包まれることが示唆される。
【0196】
実際、2つの相関点(約7.4~7.5ppm及び約5.8~6.1ppm)は、ブデソニド芳香環とH-5 HP-β-CDプロトンとの間の相互作用を示しており、包含によって水溶性複合体がもたらされることが示唆される。
【0197】
実施例6
品質管理のためのツールとして1H 核磁気共鳴分光法を用いた溶液中の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの検出及び定量化
シクロデキストリン(CD)は、疎水性空洞を含む切断された円錐状構造を形成する、結合したa-1,4-グルコピラノース単位から構成される環状オリゴ糖である。最も使用されている天然のシクロデキストリンは、6、7、または8個のグルコピラノース単位で構成され、それぞれ、α-、β-、及びy-シクロデキストリンと一般的に称される。毒性を減少させ、かつ水溶性を高めるために、いくつかの誘導体が開発されている。それらの中でも、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)(
図12)は、水溶性の包接複合体を形成することによって疎水性薬物の水溶性、安定性、及び生物学的利用能を高めるために、薬学的製剤に広く使用されている。
【0198】
USP及びEPのガイドラインによれば、薬学的賦形剤の特性評価及び定量化の方法が定義されているはずである。HP-β-CD炭水化物が発色団を含有しないことを考慮すると、UV検出は実行不可能である。したがって、CDの定量化に関するいくつかの技術が記載されているが、それらのいずれも薬剤水溶液中のHP-β-CDの定量化のためには開発されていない。CDと薬物との間の相互作用を理解するため、及び置換グルコピラノース単位の数を評価するため(モル置換)に核磁気共鳴分光法が広く用いられていることから、本試験では、水中のHP-β-CDの検出及び定量化のために1H核磁気共鳴分析が適用される。
【0199】
実験方法
材料
HP-β-CD(モル置換=0.64)は、Roquette(France)からご厚意で寄付されたものである。トリメチルシリル-3-プロピオン酸-d4(TMSP)及び重水(約99.96% D)は、Eurisotop(Gif-sur-Yvette,France)から購入する。マレイン酸は、Sigma-Aldrichから入手する。統計学的分析は、e-novalソフトウェア(Arlenda、Liege,Belgium)を使用して行われる。
【0200】
試料の調製
検証プロセスのために、HP-β-CDの標準溶液をMilli-Q(登録商標)水中に希釈し、約0.05mg/ml~約5mg/mlの範囲内の6つの濃度レベルの較正標準を得た。これらの溶液の約500μlで、NMR分析のために約100μlのD20緩衝液、約100μlのマレイン酸(約5mM)、及び約10μlのTMSPを加えた。
【0201】
NMR測定
プロトン信号取得のために、約500.13MHzで動作するBruker Avance分光計において、約298Kで全ての試料を記録する。この機器は、Z勾配付きの5mm TCIクライオプローブを装備している。水信号を最小限に抑えるために1D NOESY-presatシーケンス(64走査)を用いる。定量化のためにマレイン酸を内部標準として使用し、ゼロ較正のためにTMSPを使用する。
【0202】
結果及び考察
水中のHP-β-CDの検出及び定量化(1H-NMR)
HP-β-CDを特異的に検出するために、ヒドロキシプロピル基に焦点が置かれる。よって、約1.1ppmのメチル基から二重線のピーク面積が測定されるが、これはヒドロキシプロピル基の一部である(
図13)。この特異的ピークはまた、HP-β-CDが水溶液中に単独で存在しない場合にも定量化することができる。実際、シクロデキストリン中に含まれるHP-β-CD及び副腎皮質ステロイドを含む溶液が実現されており、約1.1ppmのピークは依然として定量化可能であり、副腎皮質ステロイドを含まない場合と同じ面積を維持した。
【0203】
方法の検証
方法の検証は、一連の3つの実験に対して行われる。以下の基準を検査する:選択性、特異性(β-シクロデキストリンと比較)、応答関数(較正曲線)、直線性、精度(繰り返し精度及び中間精度)、忠実度、検出限界(LOD)、定量限界(LOQ)、マトリックス効果、及び正確度(
図3)。総合誤差は、検証プロセスの決定基準として用いられる。許容限界を約+/-7.5%に設定し、これらの限界内で将来の結果を得るための最小確率をβ=約95%(β-予想限界)に設定する。
【0204】
図14に示すように、緑色の点によって表される逆算された濃度の相対誤差は、相対バイアス(赤色の線)の周りに広がっており、破線によって表されるβ期待許容限界間に含まれる。したがって、上記範囲内でこの技術の正当性が認められる。
【0205】
この試験において、初めて、溶液中のHP-β-CDの検出及び定量化のための新規かつ有用な分析技術が開発された。この技術は、非経口溶液等の薬剤溶液としての投薬に用いることができる。この方法は、迅速さ及び容易さの少なくとも2つの主な利点を提示する。実際、NMR測定は、わずか約8分しかかからず、試料の調製は、水信号を抑制し、ヒドロキシプロピルのピーク面積を定量化するために、単純な分子の添加を必要とするのみである。したがって、測定は、いずれの抽出または分離ステップも用いることなく、(活性成分を含有する)薬剤溶液中で直接実現することができる。
【0206】
実施例7
ブデソニドがLPS/COPD動物モデルに与える影響
材料及び方法
マウス
6~8週齢の雄C57B1/6をCharles River(Koln,Germany)から購入し、我々の施設で飼育する。全ての動物実験及び手順は、University of Liegeの倫理委員会によって承認されている。飼料及び水は自由に摂取させる。
【0207】
材料
http://bio.lonza.comitiploads/tx_waxmarketingmaterial/Lonza_BenchGuides_Phosphate_Buffered_Saline_PBS.pdfに報告されるように、リン酸緩衝食塩水(PBS)は、Lonza(Verviers,Belgium)から購入し、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンはRoquette(France)から購入し、ブデソニドはIndis(Belgium)から購入し、約250μg/mlの市販のブデソニド懸濁液(Pulmicort(登録商標))はAstraZeneca(Sweden)から購入する。マウスへの投与のために、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(約20mM)と、ブデソニド(約250μg/ml)及び市販製剤としてのブデソニド懸濁液(約250μg/ml)との複合体を形成する。
【0208】
リポ多糖(LPS)曝露アッセイ及びシクロデキストリン-ブデソニド処理
毎日の注入前に、約2.5%イソフルラン/酸素の混合物でマウス(n=7/群)を麻酔する。0、1、2、3日目に、約50μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)(プラセボ群)、または約50μlのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン-ブデソニド複合体、または約50μlの市販のブデソニド懸濁液(約250μg/ml)(Pulmicort(登録商標))をマウスに注入する。4日目にマウスを屠殺する。1日目及び3日目に2回、処理投与の6時間後にLPS(約1μg/100μlPBS、大腸菌由来の超高純度リポ多糖(InvivoGen、San Diego,CA,USA))をマウスの気管内に注入する。
【0209】
肺細胞診及び組織診
実験プロトコルの終了時に、動物を屠殺し、4×1mlのPBS-EDTA溶液(約0.05mM)(Calbiochem、Darmstadt,Germany)の気管内注入により気管支肺胞洗浄液(BALF)を行う。タンパク質評価のためにBALF上清が収集され、細胞分画算定のために細胞が用いられる。ヘマトキシリン-エオジン(Diff-Quick、Dade、Belgium)で染色した後、細胞遠心分離調製物に対して形態学的基準に基づく細胞分画算定を行う。
【0210】
BALF後、左主気管支をクランプし、左肺を切除して約80℃で保存する。右肺に約4%のパラホルムアルデヒドを約25cmの圧力で注入し、パラフィンに包埋する。約5μmの6つの切片を無差別に収集し、切断してヘマトキシリン-エオジン(H.E)で染色する。後続の各切片を前の切片から約50μm離間させる。Hamamatsu nanozoomer HT 2.0を使用してスライドを走査し、前述の炎症スコアシステムを適用することにより、デジタル化したスライド上で炎症を定量化する。例えば、Cataldo et al.:Am J Pathol(2002)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0211】
結果
気管支肺胞洗浄細胞診
動物実験からのBALF中で測定された好中球の数は、ブデソニド懸濁液及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン-ブデソニド複合体による処理後に、プラセボ処理動物と比較して有意に減少した。
図15を参照されたい。
【0212】
肺実質における炎症の測定
驚いたことに、LPSに曝露し、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン-ブデソニド複合体で処理した動物は、プラセボ及びブデソニド懸濁液で処理した動物と比較して、LPS誘導性の炎症の有意な軽減を示す。
図16を参照されたい。
【0213】
実施例8
ジプロピオン酸ベタメタゾン(微粒子化出発材料)
溶液を、PBS緩衝液中の約20mMのCrysmeb溶液として調製する。約5.08gのCrysmebをリン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液中に溶解させる。
http://bio.lonza.cominploads/tx_mwaxmarketingrnaterial/Lonza_BenchGuides_Phosphate_Buffered_Saline_PBS.pdf(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)に報告されるように、PBSはLonza(Verviers、Belgium)から購入する。
【0214】
約25~約30mgのジプロピオン酸ベタメタゾン(過度)を加えて溶液を飽和させ、約25℃で約48時間穏やかに混合する。
【0215】
0.22ミクロンを通して飽和溶液を濾過し、有効なHPLC法により濾液中のジプロピオン酸ベタメタゾン含有量をアッセイする。
【0216】
調製されたジプロピオン酸ベタメタゾン溶液の濃度は、約147g/mlである。
【0217】
実施例8a:100μg/mlのジプロピオン酸ベタメタゾン溶液
上で調製したような、約34mlの147μg/mlの溶液を、約20mMのCrysmeb PBS溶液で約50mlに希釈する(HPLCアッセイ=約99.00μg/ml)。
【0218】
層流下で0.22μ濾過に溶液を通すことにより希釈溶液を滅菌する。滅菌されたジプロピオン酸ベタメタゾン溶液の濃度は、約100μg/mlである。
【0219】
実施例8b:50μg/mlのジプロピオン酸ベタメタゾン溶液
上で調製したような、約17mlの147μg/mlの溶液を、約20mMのCrysmeb PBS溶液で約50mlに希釈する(HPLCアッセイ=約49.64μg/ml)。
【0220】
層流下で0.22μ濾過に溶液を通すことにより溶液を滅菌する。滅菌されたジプロピオン酸ベタメタゾン溶液の濃度は、約50μg/mlである。
【0221】
実施例8c:基準懸濁液
市販のジプロピオン酸ベタメタゾンは存在しないため、以下のレシピに従って基準ジプロピオン酸ベタメタゾン溶液を調製する。
【0222】
【表2】
層流下で懸濁液を調製する。
注)ジプロピオン酸ベタメタゾンはオートクレーブ下で分解するため、調製物は使用前に調製されるべきである。
【0223】
実施例9
プロピオン酸フルチカゾン(微粒子化出発材料)
HPβCD及びCrysmebの両方が、以下の調製方法に従ってプロピオン酸フルチカゾン(FP)を可溶化することが可能である。
【0224】
実施例9a:共蒸発させた中間生成物
約1.5gのHPβCDを100mlの純粋なエタノールに溶解させる。その後、約25mgのプロピオン酸フルチカゾンを50mgの純粋なエタノールに溶解させる。いったん溶解してから溶を合わせ、真空下で乾燥するまで蒸発させる。
【0225】
実施例9b:250pg/mlのプロピオン酸フルチカゾン溶液
実施例8aにおいて上で調製したような、共蒸発物を約100mlのPBS緩衝液中に分散させて懸濁液を作製する。懸濁液をオートクレーブにより滅菌し、濃度約250μg/mlのFP及び約10mMのHPβCDを有するFP溶液を生成する(HPLCアッセイFP、約238μg/ml)。
【0226】
実施例9c:100μg/mlのプロピオン酸フルチカゾン溶液
実施例8bにおいて上で調製したような、250μg/mlの溶液を、約10mMのHPβCD溶液で希釈する(PBS中、約8.4mlの238μg/ml+約11.6mlのHPβCD)。懸濁液をオートクレーブにより滅菌し、濃度約100μg/mlのFP及び約10mMのHPβCDを有するFP溶液を生成する。
【0227】
実施例9d:50μg/mlのプロピオン酸フルチカゾン溶液
実施例8bにおいて上で調製したような、250μg/mlの溶液を、約10mMのHPβCD溶液で希釈する(PBS中、約4.2mlの約238μg/ml+約15.6mlのHPβCD)。懸濁液をオートクレーブにより滅菌し、濃度約50μg/mlのFP及び約10mMのHPβCDを有するFP溶液を生成する。
【0228】
実施例9の基準生成物は、Flixotide懸濁液である。
【0229】
実施例10
ジプロピオン酸ベタメタゾンがLPS/COPD動物モデルに与える影響
材料及び方法
マウス
6~8週齢の雄C57B1/6をCharles River (Koln, Germany)から購入し、我々の施設で飼育する。全ての動物実験及び手順は、University of Liegeの倫理委員会によって承認されている。飼料及び水は自由に摂取させる。
【0230】
材料
http://bio.lonza.com/uploads/tx_mwaxmarketingrnatelial/Lonza_BenchGuides_Phosphate_Buffered_Saline_PBS.pdfに報告されるように、リン酸緩衝食塩水(PBS)はLonza(Verviers、Belgium)から購入し、crysmebはRoquette(France)から購入し、ジプロピオン酸ベタメタゾンはACIC(Canada)から購入し、tween 80はSigma Aldrichを通してICIから購入する。マウスへの投与のために、実施例8の下で生成された生成物を試験する。
【0231】
リポ多糖(LPS)曝露アッセイ及びシクロデキストリン-ジプロピオン酸ベタメタゾン処理
毎日の注入前に、約2.5%イソフルラン/酸素の混合物でマウス(n=10/群)を麻酔する。0、1、2、3日目に、実施例8に従って調製されたように、約50μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)(プラセボ群)、または約50μlのCrysmeb-ジプロピオン酸ベタメタゾン複合体、または約50μlのベタメタゾン懸濁液をマウスに注入する。4日目にマウスを屠殺する。1日目及び3日目に2回、処理投与の6時間後にLPS(約1μg/100μlPBS、大腸菌由来の超高純度リポ多糖(InvivoGen、San Diego,CA,USA))をマウスの気管内に注入する。
【0232】
肺細胞診及び組織診
実験プロトコルの終了時に、動物を屠殺し、4×1mlのPBS-EDTA 0.05mM溶液(Calbiochem、Darmstadt,Germany)の気管内注入により気管支肺胞洗浄液(BALF)を行う。タンパク質評価のためにBALF上清が収集され、細胞分画算定のために細胞が用いられる。ヘマトキシリン-エオジン(Diff-Quick、Dade、Belgium)で染色した後、細胞遠心分離調製物に対して形態学的基準に基づく細胞分画算定を行う。
【0233】
BALF後、左主気管支をクランプし、左肺を切除して-80℃で保存する。右肺に約4%のパラホルムアルデヒドを約25cmの圧力で注入し、パラフィンに包埋する。約5μmの6つの切片を無差別に収集し、切断してヘマトキシリン-エオジン(H.E)で染色する。後続の各切片を前の切片から約50μm離間させる。Hamamatsu nanozoomer HT 2.0を使用してスライドを走査し、前述の炎症スコアシステムを適用することにより、デジタル化したスライド上で炎症を定量化する。例えば、Cataldo et al.:Am J Pathol(2002)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0234】
結果
気管支肺胞洗浄細胞診
動物実験からのBALF中で測定された好中球の数は、ジプロピオン酸ベタメタゾン懸濁液及びCrysmeb-ジプロピオン酸ベタメタゾン複合体による処理後に、プラセボ処理動物と比較して減少するが、有意ではない。
図18及び
図19を参照されたい。
【0235】
肺実質における炎症の測
驚いたことに、LPSに曝露し、Crysmeb-ジプロピオン酸ベタメタゾン複合体(約100μg/ml)で処理した動物は、プラセボ及びベタメタゾン(約100μg/ml)懸濁液で処理した動物と比較して、LPS誘導性の炎症の有意な軽減を示す。
図17を参照されたい。
【0236】
また、LPSに曝露し、約50及び約100μg/mlのCrysmeb-ジプロピオン酸ベタメタゾン複合体ならびに約50μg/mlのベタメタゾン懸濁液で処理した動物は、プラセボ処理動物と比較してLPS誘導性の炎症の有意な軽減を示す。フルチカゾン基準物質(約100μg/ml)もまた、プラセボと比べて軽減効果を示すが、有意ではない。また、約100μg/mlのCrysmeb-ジプロピオン酸ベタメタゾン複合体は、約100μg/mlのフルチカゾン基準物質の炎症スコアと比較した場合、炎症を有意に軽減する。
図20を参照されたい。
【0237】
実施例11
プロピオン酸フルチカゾンがLPS/COPD動物モデルに与える影響
材料及び方法
マウス
6~8週齢の雄C57B1/6をCharles River(Koln,Germany)から購入し、我々の施設で飼育する。全ての動物実験及び手順は、University of Liegeの倫理委員会によって承認されている。飼料及び水は自由に摂取させる。
【0238】
材料
http://biolonza.comluploads/tx_mwaxmarketingmaterial/Lonza_BenchGuides_Phosphate_Buffered_Saline_PBS.pdfに報告されるように、リン酸緩衝食塩水(PBS)はLonza(Verviers、Belgium)から購入し、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンはRoquette(France)から購入し、プロピオン酸フルチカゾンはACIC(Canada)から購入し、市販のプロピオン酸フルチカゾン懸濁液(約250μg/ml)(Pulmicort(登録商標))はGlaxo SmithKline(UK)から購入する。マウスへの投与のために、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(約10mM)と、実施例9によるプロピオン酸フルチカゾン(約250μg/ml)及び市販製剤としてのプロピオン酸フルチカゾン懸濁液(約250μg/ml)との複合体を形成する。
【0239】
リポ多糖(LPS)曝露アッセイ及びシクロデキストリン-プロピオン酸フルチカゾン処理
毎日の注入前に、約2.5%イソフルラン/酸素の混合物でマウス(n=10/群)を麻酔する。0、1、2、3日目に、約50μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)(プラセボ群)、または約50μlのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン-プロピオン酸フルチカゾン複合体、または約50μlの市販のプロピオン酸フルチカゾン懸濁液(約250μg/ml)(Flixotide(登録商標))をマウスに注入する。4日目にマウスを屠殺する。1日目及び3日目に2回、処理投与の6時間後にLPS(約1μg/100μlPBS、大腸菌由来の超高純度リポ多糖(InvivoGen、San Diego,CA,USA))をマウスの気管内に注入する。
【0240】
肺細胞診及び組織診
実験プロトコルの終了時に、動物を屠殺し、4×1mlのPBS-EDTA 0.05mM溶液(Calbiochem、Darmstadt,Germany)の気管内注入により気管支肺胞洗浄液(BALF)を行う。タンパク質評価のためにBALF上清が収集され、細胞分画算定のために細胞が用いられる。ヘマトキシリン-エオジン(Diff-Quick、Dade、Belgium)で染色した後、細胞遠心分離調製物に対して形態学的基準に基づく細胞分画算定を行う。
【0241】
BALF後、左主気管支をクランプし、左肺を切除して-80℃で保存する。右肺に約4%のパラホルムアルデヒドを約25cmの圧力で注入し、パラフィンに包埋する。約5μmの6つの切片を無差別に収集し、切断してヘマトキシリン-エオジン(H.E)で染色する。後続の各切片を前の切片から約50μm離間させる。Hamamatsu nanozoomer HT 2.0を使用してスライドを走査し、前述の炎症スコアシステムを適用することにより、デジタル化したスライド上で炎症を定量化する。例えば、Cataldo et al.:Am J Pathol(2002)(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0242】
結果
気管支肺胞洗浄細胞診
動物実験からのBALF中で測定された好中球の数は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン-プロピオン酸フルチカゾン複合体(約250μg/ml)による処理後に、プラセボ処理動物と比較して驚くほど有意に減少した。プロピオン酸フルチカゾン懸濁液(約250μg/ml)の場合、好中球数は、プラセボと比較して減少するが、有意ではない。
図21を参照されたい。
【0243】
刊行物
Frederick G.Vogt and Mark Strohmeier:"2D Solid-State NMR Analysis of Inclusion in Drug-Cyclodextrin Complexes",Molecular Pharmaceutics.9:3357-3374(2012).
Agiieros,M.,Campanero,M.A.,Irache,J.M.:"Simultaneous quantification of different cyclodextrins and Gantrez by HPLC with evaporative light scattering detection",J.Pharm.Biomed.Anal.39:495-502(2005).
Thorsteinn Loftsson and Marcus E.Brewster:"Pharmaceutical applications of cyclodextrins: basic science and product development",J.Pharm.Pharmacol.62:1607-1621 (2010).
Szeman,J.,Gerloczy,A.,Csabai,K.,Szejtli,J.,Kis,G.L.,Su,P.,Chau,R.Y.,Jacober,A.:"High-performance liquid chromatographic determination of 2-hydroxypropyl-γ-cyclodextrin in different biological fluids based on cyclodextrin enhanced fluorescence".J.Chromatogr.B.774:157-164(2002).
【0244】
本明細書に引用される全ての刊行物の完全な開示は、各々が個々に、完全に本明細書に記載され、かつ組み込まれたかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0245】
本発明に対する種々の修正例及び変形例は、本発明の範囲及び主旨から逸脱することなく、当業者に明白となるであろう。例示的な実施形態及び実施例は、例として提供されるに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の範囲は、以下に記載される請求項によってのみ限定される。