(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】患者インターフェース用自動調節式ヘッドギア
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020074777
(22)【出願日】2020-04-20
(62)【分割の表示】P 2016510641の分割
【原出願日】2014-04-24
【審査請求日】2020-05-14
(32)【優先日】2013-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513259285
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】マクラーレン マーク アルヴィンド
(72)【発明者】
【氏名】ハマー イェルーン
(72)【発明者】
【氏名】カペレヴィチ ヴィタリー
(72)【発明者】
【氏名】ハダート ブレット ジョン
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0074845(US,A1)
【文献】米国特許第3416521(US,A)
【文献】米国特許第3792702(US,A)
【文献】英国特許出願公開第2478305(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクと、前記マスクを使用者の顔に固定するためのヘッドギアと、を有する患者インターフェースであって、
前記ヘッドギアは、
後退力を提供するように構成された弾性部分と、
前記弾性部分に比べて非弾性となるように構成された非弾性部分と、
前記非弾性部分及び前記弾性部分に結合された制限機構であって、
前記ヘッドギアの伸長を可能にするための第1の抵抗力を必要とするように構成され、前記ヘッドギアの後退に応じた第2の抵抗力を有する、制限機構と、を含み、
前記第1の抵抗力は前記第2の抵抗力よりも大きく、
前記制限機構は、方向ロック機構を有し、
前記非弾性部分は、コア部材を有し、前記弾性部分が弾性ストラップを有し、
前記コア部材は、前記弾性ストラップに連結され、かつ、第1の部分と、第2の部分と、前記方向ロック機構を通る部分と、を有し、
前記弾性部分は、前記コア部材が前記方向ロック機構を通り移動する傾向のある力を提供し、
前記ヘッドギア又は前記マスクは、それぞれ前記ヘッドギア又は前記マスク内に存在する、前記ヘッドギア又は前記マスクによりそれぞれ搬送される、又は、前記ヘッドギア又は前記マスクによりそれぞれ形成される導管又はチューブを有し、
前記第1の部分は、前記コア部材又は前記マスク以外の前記ヘッドギアの部分に取り付けられ、前記第2の部分は前記導管又はチューブの内部に全体として保持された自由端である、
患者インターフェース。
【請求項2】
前記方向ロック機構は、前記ヘッドギアのサイドストラップを形成する、
請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項3】
前記弾性ストラップ及び前記コア部材の少なくとも一部は、前記サイドストラップの少なくとも一部を形成する、
請求項2に記載の患者インターフェース。
【請求項4】
前記コア部材は、前記弾性ストラップの一端に結合され、前記方向ロック機構を通る、
請求項1~3の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項5】
使用中、前記第1の抵抗力は、CPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成力よりも大きい、
請求項1~
4の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項6】
使用中、前記第2の抵抗力は、CPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成力よりも小さい、
請求項1~
5の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項7】
前記コア部材の断面は、約0.1mm~約8mmの範囲内である、
請求項1~
6の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項8】
前記ヘッドギア内に存在する、前記ヘッドギアにより搬送される、又は、前記ヘッドギアにより形成される導管又はチューブを有する、
請求項1~7の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項9】
前記マスクは、フレームを有し、前記ヘッドギアは、前記フレーム上に又は前記フレーム内に留まる、
請求項
8に記載の患者インターフェース。
【請求項10】
前記方向ロック機構は、第1及び第2のロック部材構造を有し、
前記弾性ストラップは伸展シースを有し、前記コア部材の中間セクションは、前記伸展シースの内側に収容され、
前記伸展シースは、前記導管又はチューブに結合されている、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項11】
前記第1又は第2のロック部材構造は、前記コア部材に対して、約0°~45°の間の角度の範囲を通じて移動可能である、
請求項
10に記載の患者インターフェース。
【請求項12】
前記伸展シース又は前記弾性ストラップは、非弾性要素を含む編組であり、これにより、前記非弾性要素が、前記編組が組成変形する前に伸長に対する物理的エンドストップを提供する、
請求項
10又は11に記載の患者インターフェース。
【請求項13】
前記方向ロック構造は機械的な方向ロックであり、
当該機械的な方向ロックは、ハウジングと、当該ハウジング内の移動可能ロック部材と、コア部材と、を有し、
前記ハウジングは、前記コア部材の移動を案内し、前記ハウジング及び前記ロック部材の両方が、単一の一体型モジュールにより形成されている、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項14】
前記方向ロック構造は、機械的な方向ロックであり、当該機械的な方向ロックは、ロックモジュールを含み、
前記ロックモジュール、前記非弾性部分、及び、弾性部分は、モジュール式調整アセンブリを形成する、
請求項1~
8の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項15】
前記モジュール式調整アセンブリは、前記マスクのフレームに結合されている、
請求項
14に記載の患者インターフェース。
【請求項16】
前記ヘッドギアは、前記フレーム上に又は前記フレーム内に留まる、
請求項
15に記載の患者インターフェース。
【請求項17】
前記フレームは、前記ロックモジュールを受け入れる空間を規定する一又はそれ以上の壁を有する、
請求項
15又は16記載の患者インターフェース。
【請求項18】
前記モジュール式調整アセンブリは、前記ヘッドギアの後部に結合され、当該ヘッドギアの後部は、下後部ストラップ及び頭頂部ストラップの少なくとも1つを含む、
請求項
14~17の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項19】
前記第1及び第2のロック部材構造は、第1ロック力を提供する第1ロック段階及び第2ロック力を提供する第2ロック段階を有し、前記第2ロック力が前記第1ロック力よりも大きい、
請求項
10に記載の患者インターフェース。
【請求項20】
前記第1ロック段階は、前記第2ロック段階に比べて小さい伸長動作を有する前記略非伸長型の挙動へと転換する、
請求項1に記載の患者インターフェース。
【請求項21】
前記方向ロック機構は、異なる二つのロック段階を有する二段階方向ロックを有し、
前記二つのロック段階は、互いに異なる挙動及び性質を有する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項22】
前記第1ロック段階は、前記第2ロック段階よりも迅速に解放位置とロック位置との間を移動する迅速作動ロックである、
請求項
21に記載の患者インターフェース。
【請求項23】
前記第2ロック段階は、第1ロック段階よりも高いロック力又は降伏力を提供する高力ロックである、
請求項
21又は22に記載の患者インターフェース。
【請求項24】
前記方向ロック機構は、機械的な方向ロックであり、当該機械的な方向ロックはハウジングを含み、
前記ハウジングは2つのロック筐体を画成し、
それぞれのロック筐体は、その内部に位置するロック部材を有し、
各ロック部材は開口部と、前記ハウジング及びそれぞれのロック部材の前記開口部を通るコア部材と、を含む、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項25】
前記ロック部材は、前記コア部材の移動に対する抵抗が増加するロック位置と、前記コア部材の移動に対する抵抗が減少する解放位置との間で移動可能である、
請求項
24に記載の患者インターフェース。
【請求項26】
第1ロック部材が、前記コア部材の移動に対する抵抗が増加する第1ロック位置と、前記コア部材の移動に対する抵抗が減少する第1解放位置との間で移動可能であり、
第2ロック部材が、前記コア部材の移動に対する抵抗が増加する第2ロック位置と、前記コア部材の移動に対する抵抗が減少する第2解放位置との間で移動可能である、
請求項
24又は25に記載の患者インターフェース。
【請求項27】
前記第1ロック位置と前記第1解放位置との間の角度又は距離の差は、前記第2ロック位置と前記第2解放位置との間の角度又は距離の差よりも小さい、
請求項
26に記載の患者インターフェース。
【請求項28】
前記方向性ロック構造は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、ハウジングと、ローラボールと、スイッチと、コア部材とを有する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項29】
前記ロック筐体及び前記スイッチは、磁石及び磁性部材を含む、
請求項
28に記載の患者インターフェース。
【請求項30】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、ハウジングと、曲げられるカーブを有するS字形摩擦部材と、前記曲げられるカーブに隣接するワッシャと、前記S字形摩擦部材のオリフィス及びワッシャを通過するコア部材と、を有する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項31】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、ハウジング、及び、前記ハウジングを通るコア部材を有し、前記ハウジングは、ばね式クリップを有し、コア部材は、鋸歯状の縁を有し、前記クリップは、前記鋸歯状の縁と相互作用するように構成されている、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項32】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、ハウジングと、ワッシャと、コア部材とを含み、前記ハウジングは、前記コア部材により画成される長手方向軸線に実質的に垂直であり且つ直交する自由運動面と、前記コア部材により画成される長手方向軸線に対して整列したロック表面とを有するように構成された内部キャビティを有し、前記ワッシャは前記内部キャビティ内に位置し、コア部材は、前記ハウジングのオリフィス及びワッシャを通過する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項33】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、ハウジングと、ワッシャと、コア部材を有し、前記ハウジングは、内部キャビティを有し、前記ワッシャは、角度をなす表面を有し、かつ、前記内部キャビティ内に配置され、コア部材は、前記ハウジングのオリフィス及び前記ワッシャを通過する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項34】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、ワッシャと、ハウジング内に配置された回転部材とを有し、コア部材は、前記ハウジングのオリフィス、前記ワッシャ、及び、回転部材を通過する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項35】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、内部キャビティ内にC字型断面の弾性ロック部材を含むハウジングを有し、コア部材は前記ハウジングのオリフィス及び弾性ロック部材を通過する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項36】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、内部キャビティ内に押しつぶすことが可能なコア部材を含むハウジングを有し、コア部材は前記ハウジングのオリフィス及び押しつぶすことが可能なコア部材を通過する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項37】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、第2の端部よりも第1の端部で大きくなるように傾斜する内部チャンバと、前記内部チャンバ内のローラボールと、前記ハウジングのオリフィスを通過するコア部材とを有し、前記ローラボールは、前記傾斜する内部チャンバの壁面と、前記コア部材との間に位置している、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項38】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、円錐形の内部チャンバを有するハウジングと、コア部材と、前記コア部材の周りの可逆圧縮コレット部材と、を有する、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【請求項39】
前記方向ロック機構は、機械式方向ロックであり、前記機械式方向ロックは、ハウジングと、前記ハウジングに一体成形ヒンジにより結合されたロック部材と、コア部材とを有し、前記ハウジング及びロック部材は、前記コア部材が通過する開口部を有し、前記ロック部材は、解放位置と、ロック位置との間で移動可能である、
請求項1~
9の何れか1項に記載の患者インターフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先出願の参照による組み込み
海外又は国内優先権の主張が本願とともに提出される出願データシートに記載される一切の出願は参照により本明細書に組み込まれ、且つ本開示の一部を成す。
【0002】
本発明は、概して、呼吸マスクインターフェースを頭部に固定するために使用される構造に関する。より具体的には、本発明は、調節機構と、既定の着用長さ及びより長い少なくとも1つの装着用の長さを提供する構成とのうちの少なくとも1つを有する全般的に自動の調節式構造に関する。
【背景技術】
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:obstructive sleep apnea)は、睡眠中に喉の後部が気道を狭窄したり更には気道を完全に閉塞したりするほど大きく弛緩する睡眠状態である。気道の狭窄又は閉塞により、呼吸が数秒間以上停止したり非常に浅くなったりする場合がある。
【0004】
OSAの治療には持続性陽圧呼吸法(CPAP:continuous positive airway pressure)が使用される。CPAPでは気道を広げる加圧空気の流れを送る。加圧空気の流れは呼吸マスクインターフェースを用いて使用者に送ることができる。呼吸マスクインターフェースは非弾性ストラップ又は弾性ストラップなどのマスク及びヘッドギアを含み得る。
【0005】
弾性ストラップを有するインターフェースを装着する場合、弾性ストラップが伸張してヘッドギアを使用者の頭部上でスライドさせることが可能になる。弾性ストラップは解放されると使用者の顔に対しインターフェースを引こうとする。
【0006】
弾性ストラップを使用する場合、マスクを顔に固定しているストラップが弾性であることから、マスク内の圧力が増加する(例えば、約4cmH2O~約12cmH2O)につれてマスクは使用者の顔から離れようとする。マスクを顔から離そうとする力は「吹出力(blow-off force)」と定義され得る。
【0007】
いくつかのマスクでは、吹出力により弾性ストラップが伸展すると、マスクによって使用者の顔にかかる力が低下する。したがって、これらのマスクでは圧力が増加するにつれて漏洩が発生する場合がある。また、より高い圧力(例えば、約12cmH2O)で適切に密閉されている場合、ストラップの弾性は、圧力が高い圧力レベルでないときに低い治療圧力(例えば、約4cmH2O)において望ましくない高い圧力を使用者の顔にかける原因となる。調節可能な非弾性ストラップを有するインターフェースは漏洩の発生を低減することができるが、そのようなヘッドギアは、多くの場合、過度に締め付けるものであり、不必要な力が使用者の顔及び/又は頭部に印加されることとなる。
【0008】
CPAP以外の治療用インターフェースにおいて同様の問題が生じる場合がある。例えば、呼吸マスクインターフェースは病院環境で非侵襲的換気療法(NIV:non-invasive ventilation)に使用される。一般に、NIVは約20~50cmH2Oの圧力範囲を提供する。したがって、NIV治療においては下限治療圧力と上限治療圧力との間の差が大きくなることでCPAPに関する上記の問題が悪化する可能性がある。別の一般的な呼吸障害治療は、患者に吸気圧(IPAP)及び呼気圧(EPAP)が供給されるバイレベル気道陽圧(Bi-level PAP)と呼ばれるものである。IPAPとEPAPとの間の差は約1cmH2O~約10cmH2Oにおいて変化し得るものであり、これもまた周期的な吹出力を発生させる。
【0009】
弾性ストラップは、また、一般に、ハイフロー療法(HFT:High Flow Therapy)での使用のために鼻カニューレと併せて使用される。HFTでは、多くの場合、増加させた酸素量を含む高流量の呼吸ガスを送達するためにカニューレが用いられる。
【0010】
鼻カニューレの使用時に経験する共通の課題は、ヘッドギアの伸展によりガス供給チューブが強く引っ張られ、カニューレプロングが患者の鼻から脱落するというものである。プロングが鼻から脱落すると治療の喪失が発生するおそれがある。脱落がない場合であっても、ホースがチューブを引っ張るとカニューレが曲がった状態で患者の顔に載ることになる場合がある。これにより、患者に不快感を生じさせる場合があり、且つ有効性が低下する外観となる場合がある。従来、カニューレは側方水平チューブ接続を有する。この接続では、チューブにかかる張力がある場合、カニューレが患者の鼻から不均一に引き離される場合があるが、これはカニューレの片側に力が直接伝達されることが理由である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、業界及び使用者に少なくとも有用な選択肢を提供するインターフェースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のいくつかの態様は、呼吸マスクインターフェース又は他の種類の密閉された若しくは実質的に密閉されたインターフェース(例えば、鼻ピロー)を、平衡フィットを実現しつつ、使用者の顔に固定する自動調節機構を提供することに関する。本明細書で使用する場合、「平衡フィットの実現」とは、ヘッドギアが「吹出力」及びいくつかの構成においては、予想ホース引張り力(anticipated hose pull forces)又は他の外力の一部又は全てに打ち勝つのに十分な力のみを印加することを意味する。「吹出力」はCPAP圧力にマスクの密閉面積を乗じたものと定義され得る。平衡フィットを実現する自動調節機構により、インターフェースマスクによって使用者の顔にかかる力が最小限となり、この最小限のレベルの力によりインターフェースマスクを使用者の顔に対して密閉するのに十分なレベルの力が維持される。したがって、使用者の快適性を増加することができる。好ましくは、インターフェースアセンブリが装着されると、漏洩に対処するための任意の調節はヘッドギアアセンブリのバックル、クリップ、ストラップ等を操作するのではなくマスクインターフェースを緩やかに揺り動かす、押す又は引くことによって実施することができる。本発明の態様がカニューレデバイスなどの密閉されない又は実質的に密閉されないインターフェースに適用される場合、「平衡フィット」は、ヘッドギアカニューレループの長さが使用者の頭部の周囲に一致し、伸長に対するいくらかの抵抗を提供する場合に実現される。カニューレシステムは加圧されないことから「吹出力」はないため、ヘッドギアにはカニューレを所定の位置に保持し、任意の予想ホース引張り力に対処することのみが求められる。調節はCPAPマスク又は他の加圧若しくは密閉インターフェースにおいて用いられる用途と同様に実施され得る。
【0013】
自動調節機構は伸展ヘッドギアアセンブリと実質的に非伸展のヘッドギアアセンブリの利点のいくつかを併せ持つ一方で、いくつかの構成においては、個々の使用者に合うようにヘッドギアアセンブリを手動調節する必要がなくなる。本明細書で使用する場合、「ヘッドギアアセンブリの手動調節」は、ヘッドギアアセンブリによって画定される周方向長さなど、ヘッドギアアセンブリに大きな調節を行うためにヘッドギアアセンブリを直接操作することを意味する。
【0014】
伸展ヘッドギアアセンブリは装着が容易なことで知られているが、これは、伸展ヘッドギアアセンブリは使用者の頭部に装着するのに必要な長さへと弾性的に伸展させることができ、その後、使用者の頭部の周囲に合うより短い長さへと戻すことができることが理由である。その一方で、非伸展ヘッドギアアセンブリは、インターフェースマスクを所定の位置に固定するのに必要な最小限の力のみを印加し、これにより、使用者の頭部の周囲に装着する間に伸展ヘッドギアアセンブリがある程度伸展したままになるときに生じる予荷重を低減又は排除する。換言すると、広範囲の頭囲にフィットしようとするため、考え得る最小頭囲及び考え得る最大CPAP圧力を使用者が有する場合、伸展ヘッドギアアセンブリは、伸展ヘッドギアアセンブリがマスクインターフェースを所定の位置に固定するのに十分な力を提供するように設計されている。残念ながら、そのような設計は、伸展ヘッドギアアセンブリの伸長から生じる予荷重により、考え得る最大頭囲及び考え得る最低CPAP圧力を有する使用者の顔には大きな力を印加する。カニューレシステムでは、伸展ヘッドギア装置は、従来、手動で調節可能である及び/又は考え得る最小頭囲に適合するように設計されている。これにより、使用者の複数反復調節及び/又は大きな頭囲を有する使用者にとってはきついフィット性となる場合がある。
【0015】
一態様は、使用者の頭部にフィットするように伸長及び後退するように構成されたヘッドギアを含み、ヘッドギアはヘッドギアを伸長させるために第1の負荷力の印加を必要とし、ヘッドギアが使用者の頭部にフィットするとヘッドギアは第2の負荷力を示し、伸長しない。
【0016】
いくつかの構成においては、第1の負荷力は、第2の負荷力及び/又は呼吸療法時にヘッドギアに印加される予想負荷力よりも大きい。予想負荷力は、CPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成力を含み得る。第1の負荷力は予想負荷力よりも予備量だけ大きくすることができる。第1の負荷力はヘッドギアの様々な伸長長さ全体における予想負荷力よりも大きくすることができ、及び/又は第2の負荷力はヘッドギアの伸長長さの範囲全体において予想負荷力よりも小さくすることができる。
【0017】
一態様は、使用者の顔にマスクを固定するためのヘッドギアを含み、ヘッドギアは、後退力を提供するように構成された弾性部分と、弾性部分に比べて非弾性となるように構成された非弾性部分と、非弾性部分及び弾性部分に結合された制限機構とを含み、制限機構は、ヘッドギアの伸長を可能にするための第1の抵抗力と、ヘッドギアの後退に応じた第2の抵抗力とを必要とするように構成されている。
【0018】
いくつかの構成においては、第1の抵抗力は第2の抵抗力よりも大きい。第1の抵抗力はCPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成抵抗力よりも大きいものとされ得る。第2の抵抗力はCPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成力よりも小さいものとされ得る。
【0019】
一態様は、使用者の頭部にフィットするように伸長及び後退するように構成されたヘッドギアを含み、ヘッドギアは、半径方向の引張りがない場合の第1の伸長抵抗力及び半径方向の引張りに応じた第2の伸長抵抗力を有する。
【0020】
いくつかの構成においては、第1の伸長抵抗力は第2の伸長抵抗力よりも小さい。いくつかの構成においては、第2の伸長抵抗力はヘッドギアの2つの部分の係合の結果として発生する。第2の伸長抵抗力はCPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成力よりも大きいものとされ得る。
【0021】
一態様は、使用者の顔にマスクを固定するためのヘッドギアを含み、ヘッドギアは、後退力を提供するように構成された弾性部分と、弾性部分に比べて非弾性となるように構成された非弾性部分と、非弾性部分及び弾性部分に結合された制限機構とを含み、制限機構は、ヘッドギアに半径方向の張力がかかると伸長抵抗力を印加するように構成されている。
【0022】
一態様は、使用者の鼻及び/又は口を取り囲むようなサイズ及び形状であり、且つ使用者の顔と少なくとも実質的なシールを形成するように構成されたインターフェース部分を含む患者インターフェースシステムを含む。システムは、また、患者インターフェースシステムをガス送達システムに結合することを可能にするカップリングを含む。システムは、また、インターフェース部分が使用者の頭部に配置及び保持されることを可能にするヘッドギアシステムであって、患者インターフェースシステムの使用時、弾性型伸長挙動から略非伸長型の挙動へと変形する機能を備えた変形ロック挙動を提供するヘッドギアシステムを含む。
【0023】
いくつかの構成においては、変形ロック挙動は機械に基づく方向ロックによって提供される。
【0024】
いくつかの構成においては、ヘッドギアシステムは約0.5N~約65Nの範囲の非伸長型挙動を提供する。
【0025】
いくつかの構成においては、変形ロック挙動は、ロック筐体と、可動ロック部材と、コア部材とを含む機械的な方向ロックによって提供される。コアの断面寸法は約0.1mm~約8mmの範囲とされ得る。ロック部材はコア部材に対して約0°~約45°の角度範囲にわたり移動可能とされ得る。付勢機構はロック部材に作用し、且つロック保持力を制御し得る。方向ロックはロックの作動を促進するための摩擦促進部を組み込み得る。
【0026】
いくつかの構成においては、コア部材はコードである。いくつかの構成においては、コア部材はストラップである。
【0027】
いくつかの構成においては、変形ロック挙動は機械的接着を用いる方向ロックによって提供され、機械的接着は、ナノファイバー材料の使用によるファンデルワールス(Van der Waals)力によって提供される。
【0028】
いくつかの構成においては、変形ロック挙動は機械的接着を用いる方向ロックによって提供され、機械的接着は微細構造によって提供される。
【0029】
いくつかの構成においては、弾性型伸長は、組み込まれた弾性要素を有する布バネを含む弾性型伸長システムによって提供される。布バネは、弾性要素が塑性変形する前に非弾性要素が伸長に対する物理的エンドストップを提供するように弾性要素と非弾性要素とが組み合わされる編組として構成され得る。編組内の弾性要素の量は布バネの所望の力対伸長特性を実現するように選択され得る。
【0030】
いくつかの構成においては、変形ロック挙動は、ハウジングと、ハウジング内の可動ロック部材と、コア部材とを含む機械的な方向ロックによって提供され、ハウジングはコア部材の動きを案内し、ハウジング及びロック部材の両方は単一の一体型モジュールによって形成される。
【0031】
いくつかの構成においては、変形ロック挙動は、ロックモジュールと、非弾性部分と、弾性部分とを含む機械的な方向ロックによって提供され、ロックモジュールと、非弾性部分と、弾性部分とはモジュール式調整アセンブリを形成する。
【0032】
いくつかの構成においては、インターフェース部分はマスクであり、及びモジュール式調整アセンブリはマスクのフレームに結合されている。フレームは、ロックモジュールを受け入れるスペースを画定する1つ又は複数の壁を含み得る。
【0033】
いくつかの構成においては、モジュール式調整アセンブリはヘッドギアシステムの一部に結合される。ヘッドギアシステムの一部は、下後部ストラップ及び頭頂部ストラップの少なくとも1つを含み得る後部部分である。
【0034】
いくつかの構成においては、ヘッドギアシステムは後頭隆起上又はその下方を通る部分を含み、この部分は、頭部の後部部分に不均一な荷重を付与する特徴を組み込む。
【0035】
いくつかの構成においては、後頭隆起上又はその下方を通る部分は断続ストラップを含む。断続ストラップは、カップリングによって結合された第1ストラップセクション及び第2ストラップセクションを含み得る。カップリングは、第1ストラップセクションと、第2ストラップセクションとの間の相対運動を可能にし得る。相対運動は断続ストラップの長手方向軸線を中心とした回転運動を含み得る。
【0036】
いくつかの構成においては、ヘッドギアシステムは後頭隆起の上方を通る部分を含み得る。この部分は、頭部の頂部部分に不均一な荷重を付与する特徴を組み込む。
【0037】
いくつかの構成においては、ヘッドギアシステムは後頭隆起上又はその上方を通る部分を含み、この部分は、頭部に不均一な荷重を付与する特徴を組み込む。
【0038】
いくつかの構成においては、ヘッドギアシステムは、後部部分と、インターフェースシステムの各側部にある、後部部分をインターフェース部分に結合する少なくとも1つのサイドストラップとを含む。使用時、少なくとも1つのサイドストラップは使用者の外耳の上部分の前方及び使用者の外耳の上部分又はその近傍に位置する箇所においてヘッドギアシステムの後部部分に結合され得る。ヘッドギアシステムの後部部分は上ストラップ及び下ストラップを含み得る。少なくとも1つのサイドストラップの後方突起は上ストラップと下ストラップとの間を通る。少なくとも1つのサイドストラップは三角形構成で配置されたサイドストラップの対を含み得る。
【0039】
いくつかの構成においては、変形挙動は、ヘッドギアシステム内に収容された1つ又は複数の非伸長要素に作用し、ヘッドギアシステムの弾性部分を実質的に分離するロック機構によって提供される。
【0040】
いくつかの構成においては、ヘッドギアシステムは、様々な頭部サイズにフィットすることを可能にする機構を組み込み、この機構は、互いに並列に構成される弾性要素及び略非伸長要素の両方を含む。
【0041】
いくつかの構成においては、ヘッドギアシステムは、様々な頭部サイズにフィットすることを可能にする機構を組み込み、この機構は、使用者の頭部を実質的に取り囲む1つ又は複数の略非伸長要素を含む。いくつかの構成においては、非伸長要素の第1部分はヘッドギアシステムの長手方向において非伸長要素の第2部分に重なる。第1部分及び第2部分は非伸長要素の第1端部及び第2端部とされ得る。第1部分及び第2部分は非伸長要素の一端の一部とされ得る。
【0042】
いくつかの構成においては、変形ロック挙動は、手動式ロック、空気圧作動式ロック、電気作動式ロック、圧電作動式ロック、油圧作動式ロック又は熱機械作動式ロックによって提供される。
【0043】
いくつかの構成においては、変形ロック挙動は第1ロック力を提供する第1ロック段階及び第2ロック力を提供する第2ロック段階を有し、第2ロック力は第1ロック力よりも大きい。いくつかの構成においては、第1ロック段階は第2ロック段階に比べて小さい伸長動作を有する略非伸長型の挙動へと転換することができる。
【0044】
一態様は、使用者の頭部にフィットするように伸長及び後退するように構成された呼吸療法用のヘッドギアを含む。ヘッドギアはヘッドギアを伸長させるために第1の負荷力の印加を必要とする。ヘッドギアが使用者の頭部にフィットすると、ヘッドギアは、呼吸療法時にヘッドギアに印加される負荷力に等しい平衡保持力を提供する。第1の負荷力は平衡保持力よりも大きい。
【0045】
いくつかの構成においては、呼吸療法時にヘッドギアに印加される負荷力はCPAP圧力による力及びホース抗力を含む。いくつかの構成においては、第1の負荷力は、呼吸療法時にヘッドギアに印加される負荷力よりも予備量だけ大きい。いくつかの構成においては、ヘッドギアを後退させようとする後退力を弾性要素が印加する。後退力は、呼吸療法時にヘッドギアに印加される負荷力よりも小さいものとされ得る。
【0046】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「含む(comprising)」は、「少なくとも部分的に~からなる(consisting at least in part of)」を意味する。「含む(comprising)」が含まれる本明細書及び特許請求の範囲の記載を解釈する場合には、この用語に先行するもの以外の特徴も存在し得る。「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの関連用語も同様とみなされる。
【0047】
本明細書で特許明細書、他の外部文献、又はその他の情報源を参照する場合、これは一般に本発明の特徴について論じるための状況を提供するためである。特に明示されない限り、このような外部文献の参照はこのような文献若しくはこのような情報源があらゆる管轄権において先行技術である、又は当技術分野における共通の一般知識の一部を成すことを許可するものと解釈すべきではない。
【0048】
本発明の特定の特徴、態様及び利点に従い配置及び構成された種々の実施形態を参照し、これら及び他の特徴、態様及び利点について記載する。実施形態は単に説明のために使用され、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明の特定の特徴、態様及び利点に従い配置及び構成された、ヘッドギアとともに利用可能な使用者インターフェースの斜視図である。
【
図2】ヘッドギア装着及び調節の3つのフェーズの概略図であり、各フェーズに関連する力プロファイルも示す。
【
図3】ヘッドギア装着及び調節の第1のフェーズの概略図であり、第1のフェーズに関連する力プロファイルも示す。
【
図4】ヘッドギア装着及び調節の第2のフェーズの概略図であり、第2のフェーズに関連する力プロファイルも示す。
【
図5】ヘッドギア装着及び調節の第3のフェーズの概略図であり、第3のフェーズに関連する力プロファイルも示す。
【
図6】需要機構(demand mechanism)に対し抵抗を有するヘッドギアに関連する力プロファイルのグラフ図である。
【
図7A】需要機構に対し抵抗を有するヘッドギアの一実施形態の概略図である。
【
図8】需要機構に対し抵抗を有するヘッドギアの第2の実施形態の概略図である。
【
図9】需要機構に対し抵抗を有するヘッドギアの第3の実施形態の概略図である。
【
図10】需要機構に対し抵抗を有するヘッドギアの第4の実施形態の概略図である。
【
図11A】需要機構に対し抵抗を有するヘッドギアの第5の実施形態の概略図である。
【
図12】需要機構に対し抵抗を有するヘッドギアの第6の実施形態の概略図である。
【
図13】需要機構に対し抵抗を有するヘッドギアの第7の実施形態の概略図である。
【
図14】伸長機構の始動に対して高い抵抗を有するヘッドギアに関連する力プロファイルのグラフ図である。
【
図15A】伸長機構の始動に対して高い抵抗を有するヘッドギアの一実施形態の概略図である。
【
図15B】伸長機構の始動に対して高い抵抗を有するヘッドギアの第2の実施形態の概略図である。
【
図16】伸長機構の始動に対して高い抵抗を有するヘッドギアの第3の実施形態の概略図である。
【
図17】伸長機構に対して反復する高い抵抗を有するヘッドギアに関連する力プロファイルのグラフ図である。
【
図18A】伸長に抵抗する機構とともに示される、伸長機構に対して反復する高い抵抗を有するヘッドギアの一実施形態の概略図である。
【
図18B】後退を可能にする機構とともに示される、
図18Aに示される、伸長機構に対して反復する高い抵抗を有するヘッドギアの実施形態の概略図である。
【
図20】大ヒステリシス機構(large hysteresis mechanism)を有するヘッドギアに関連する力プロファイルのグラフ図である。
【
図21A】自由運動を可能にする機構とともに示される、大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの一実施形態の概略図である。
【
図21B】運動に対する高摩擦抵抗を提供する機構とともに
図21Aに示されるヘッドギアの実施形態の概略図である。
【
図23】大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの第2、第3及び第4の実施形態の概略図である。
【
図24】大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの第5の実施形態の概略図である。
【
図25A】大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの第6の実施形態の概略図である。
【
図25B】自由運動を可能にする機構とともに示される、
図25Aに示されるヘッドギアの実施形態の別の概略図である。
【
図25C】運動に対する高摩擦抵抗を提供する機構とともに示される、
図25Aに示されるヘッドギアの実施形態の第3の概略図である。
【
図26A】大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの一実施形態の図である。
【
図27A】大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの第7の実施形態の概略図である。
【
図27C】伸長を制限するモードにある、
図27Aに示される実施形態の第2の図である。
【
図28A】大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの第8の実施形態の概略図である。
【
図28C】大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの第9の実施形態の概略図である。
【
図29】大ヒステリシス機構を有するヘッドギアの第10の実施形態の概略図である。
【
図30】緩い又はきついフィット性への調節を可能にするヘッドギアの力プロファイルのグラフ図である。
【
図31A】本明細書中に記載される平衡フィット機構の1つを有するヘッドギアによって使用者の頭部に種々のCPAP圧力で印加される力のグラフ図である。
【
図31B】本明細書中に記載される平衡フィット機構の1つを有しないヘッドギアによって使用者の頭部に種々のCPAP圧力で印加される力のグラフ図である。
【
図31C】本明細書中に記載される平衡フィット機構の1つを有するヘッドギアと、本明細書中に記載される平衡フィット機構の1つを有しないヘッドギアとの間における、種々のCPAP圧力で使用者の頭部に印加される力の差のグラフ図である。
【
図32】ハウジングのロックチャンバ内の可動ロック部材と、ロック部材によって係合されたコア部材とを用いる方向ロックの局部断面図である。
【
図33】
図32のロックに類似する方向ロックの局部断面図を示す。
図33の方向ロックは、スリップ力に作用し、ロックに二次ロック位置を提供する解放機構を含む。
【
図34】ロック部材のロック角度と、
図32及び
図33の方向ロックなどの方向ロックのスリップ力との間の関係を示すグラフである。
【
図35】
図33の方向ロックなどの二次ロック位置を有する方向ロックの解放要素の変化に起因し得るスリップ力の変化を示すグラフである。
【
図36】微細構造を用いた方向ロック機構を有するインターフェースアセンブリの断面図である。
【
図37】微細構造を含むインターフェースアセンブリの2つの部分を示す
図36のインターフェースアセンブリの一部の拡大図である。
【
図38】
図36及び
図37のインターフェースアセンブリの微細構造として用いられ得るマイクロファイバー又はナノファイバーの図である。
【
図39】
図36及び
図37のインターフェースアセンブリの微細構造として用いられ得る複数の突起の図である。
【
図40】平坦ストラップと、ハウジングによって支持されるロックプレートとを用いる方向ロックの側面図である。ロックプレートは解放位置にある。
【
図41】ロックプレートがロック位置にある
図40の方向ロックの側面図である。
【
図42】ロックプレートとストラップとの間の係合を強化する作動機構を示す
図40の方向ロックのロックプレート及びストラップの断面図である。
【
図43】使用者に取り付けられている、少なくとも1つの方向ロック機構を組み込んだインターフェースアセンブリの斜視図である。
【
図44】完全装着位置に近い位置にある
図43のインターフェースアセンブリの斜視図である。
【
図45】使用者に装着された
図43のインターフェースアセンブリの斜視図である。
【
図46】弛緩位置にある
図43のインターフェースアセンブリの方向ロック機構の側面図である。
【
図47】伸長位置にある
図46の方向ロック機構の側面図である。
【
図48】動作位置にある
図46の方向ロック機構の側面図である。
【
図49】
図46~48の方向ロック機構の弾性ストラップを形成する編組の一部を示す。
【
図53】弾性線維を組み込んだ編組の断面図である。
【
図55】使用者に装着された断続ストラップ配置を有するヘッドギアアセンブリの後部部分の後部斜視図である。
【
図56】ストラップの一部が関節式カップリングによって結合されている、使用者に装着された断続ストラップ配置を有するヘッドギアアセンブリの後部部分の後部斜視図である。
【
図57】使用者に装着された、ヘッドギアアセンブリの後部部分と使用者インターフェースとの間にサイドストラップを有するインターフェースアセンブリの側面図である。
【
図58】使用者に装着された、ヘッドギアアセンブリの後部部分と使用者インターフェースとの間に一対のサイドストラップを三角形配置で有するインターフェースアセンブリの側面図である。
【
図59】モジュール式方向ロック機構の一部を形成し得る
図46~48のものに類似するロック機構の側面図である。
【
図60】マスクに組み付けられた
図59のロック機構の斜視図である。
【
図61】弾性部分及び非弾性部分を有し、完全なループを画定するヘッドギア機構の斜視図である。
【
図63】比較的後退した位置にある
図61のヘッドギア機構の頂面図である。
【
図64】比較的伸長した位置にある
図61のヘッドギア機構の頂面図である。
【
図65】方向ロックの第1の配置例を示す
図61のヘッドギア機構の頂面図である。
【
図66】方向ロックの第2の配置例を示す
図61のヘッドギア機構の頂面図である。
【
図67】弾性部分及び非弾性部分を有し、断続ループを画定するヘッドギア機構の斜視図である。
【
図69】比較的後退した位置にある
図67のヘッドギア機構の頂面図である。
【
図70】比較的伸長した位置にある
図67のヘッドギア機構の頂面図である。
【
図71】方向ロックの第1の配置例を示す
図67のヘッドギア機構の頂面図である。
【
図72】方向ロックの第2の配置例を示す
図67のヘッドギア機構の頂面図である。
【
図73】CPAP平衡フィット、カニューレ平衡フィット、CPAP動作エンベロープに対する高力弾性ストラップ及び低力弾性ストラップの力プロファイルを示すグラフである。
【
図75】多段式方向ロックの力プロファイルを示すグラフである。
【
図76】密閉式患者インターフェースを含む特定タイプの呼吸療法に伴う力の図表である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
まず
図1を参照すると、インターフェースアセンブリ100が示される。インターフェースアセンブリ100は任意の適切な構成を有することができる。示されるインターフェースアセンブリ100は鼻マスクであるが、いくつかの構成においては、本発明の特定の特徴、態様及び利点は、フルフェイスマスク、鼻マスク、鼻ピロー、鼻口マスク、口マスク及びカニューレを含むが、これらに限定されない任意の種類のインターフェースにおいて使用され得る。
【0051】
示されるインターフェースアセンブリ100は、全般的に、シール104を支持するフレーム102を含む。フレーム102及び/又はシール104は供給導管106に結合され得る。いくつかの構成においては、供給導管106はエルボ110によってフレームに結合され得る。供給導管106はシール104を介して使用者に呼吸ガスを供給するために使用され得る。シール104又はシール104とフレーム102との組み合わせは、供給導管106から呼吸ガスを受け取るチャンバを画定し得る。
【0052】
インターフェースアセンブリ100は取付箇所112を含む。取付箇所112は、フレーム102、シール104、導管106及びエルボ110の少なくとも1つに形成され得る。任意の適切な取付箇所112がインターフェースアセンブリ100と1つ又は複数のヘッドギアアセンブリとの間の結合を容易にするために使用され得る。これについては以下に記載する。いくつかの構成においては、取付箇所112により、ヘッドギアアセンブリとインターフェースアセンブリ100との結合及び分離が容易になる。いくつかの構成においては、ヘッドギアアセンブリとインターフェースアセンブリ100は、ヘッドギアアセンブリがインターフェースアセンブリ100の1つ又は複数の構成要素から一般に取り外すことができないように接合され得る。いくつかの構成においては、ヘッドギアアセンブリとインターフェースアセンブリ100と一体形成され得る。
【0053】
図76を参照すると、密閉式患者インターフェースを用いる特定タイプの陽圧呼吸療法に伴う力の説明を容易にするための図表2300が提供される。使用者の顔上で密閉する患者インターフェースに関しては、ブロック2302に示されるように、インターフェース(例えばマスク)は使用者の顔と協働して密閉チャンバを作製する。加圧呼吸ガスが密閉チャンバに送られ、使用者の顔から離そうとする力を発生させる。この力は(投影)密閉面積に陽圧を乗じたものに略等しく、多くの場合、ブロック2304に示されるように、「吹出」力と呼ばれる。ヘッドギアの機能は、ブロック2306に示されるように、吹出力に応答してマスクを拘束し、マスクを使用者の顔に対して平衡密閉状態に維持することである。ブロック2308に示されるように、吹出力はヘッドギアに応力を加え、それを伸長しようとし、ヘッドギアに張力をかける。加えて、ブロック2310に示されるように、ヘッドギアは、使用者の頭部の、ヘッドギアが接触している領域に力を印加する。
接触領域に印加される力はヘッドギアの「皮膚圧力(skin pressure)」と呼ばれ得る。シール104又はシール104とフレーム102との組み合わせによって画定されるチャンバ内の空気圧が上昇するにつれて、ヘッドギアによって印加される力はインターフェースアセンブリ100が顔から持ち上がるのを抑制しようとする。したがって、ヘッドギアによって印加される力は全般的に増加し、マスク内の増加する圧力によって生じる増加する力に抗する。吹出力は任意の特定の圧力の種々のタイプ及びサイズのインターフェースで異なる。それでも、低い圧力が低い場合、あるいは、カニューレの場合で圧力がかからない場合、吹出力に抗するために必要な力は低下する。
【0054】
したがって、及び説明するように、本明細書中に記載されるヘッドギアアセンブリは、「平衡フィット(balanced fit)」を実現するように設計され得ることが好ましい。いくつかの構成においては、ヘッドギアアセンブリは、全般的に、例えば、伸展構成要素(弾性体とも呼ばれる)と、非伸展構成要素(非弾性体又は弾性でないものとも呼ばれる)と、ヘッドギアの伸長を制限する機構と、ヘッドギアアセンブリを取付箇所112に結合し得るカップリングとを含むが、これに限定されるものではない。少なくともいくつかの構成においては、平衡フィットは、実質的に非伸展経路を作製し、使用時の又は通常動作上の力(例えば、吹出力及び/又はホース引張力、所望の場合はそれに加えて予備力)に応じたヘッドギア内の応力を分散させることによって実現され得る。使用時に示される力よりも高い力において、ヘッドギアは装着のための伸展様の挙動を呈し得る。いくつかの構成においては、ヘッドギアアセンブリは伸展構成要素を含まなくてもよい。例えば、ヘッドギアは手動で伸長及び後退され得る。ヘッドギアの種々の実施形態については以下に記載する。
【0055】
伸展構成要素がある場合は任意の適切な構成を有することができる。伸展構成要素は約30MPa未満の引張係数を有する任意の構成要素とされ得る。引張係数は、力が軸線に沿って印加されるときにその軸線に沿って弾性的に変形される(すなわち非永久的に)傾向を数学的に記述したものであり、引張係数は材料が弾性的に挙動する場合の応力と対応するひずみとの比率である。いくつかの構成においては、伸展構成要素はコーティングされた紡績糸材料とすることができ、伸展構成要素は、ゴム及びスパンテックス又はエラスタン(例えば、LYCRA)などであるが、これらに限定されない材料を含み得る。いくつかの構成においては、伸展構成要素はストラップ又はストラップの組み合わせとされ得る。いくつかの構成においては、伸展構成要素は伸縮可能又は弾性材料で形成され得る。いくつかの構成においては、伸展構成要素により、ヘッドギアを伸張又は延長することが可能になり、伸展構成要素は、また、ヘッドギアを収縮又は短縮する機能を果たす後退力を提供する。収縮又は短縮は伸展構成要素の弾性特性により生じ得る。収縮又は短縮により、ヘッドギアを使用者の頭囲(加えてマスクのサイズ)によりぴったりと合わせることが可能になる。一般に、ヘッドギア長さは弛緩長さによって画定され、ヘッドギアはその長さに復帰しようとする。他に断りのない限り、収縮を意味するのはこの伸長後の弛緩長さへの復帰である。
【0056】
非伸展構成要素は伸展制限部として機能し得る。非伸展構成要素は任意の適切な構成を有し得る。いくつかの構成においては、非伸展構成要素は伸展構成要素に比べてより高い弾性係数を有する。伸展構成要素は約30MPaを超える引張係数を有する任意の構成要素とすることができる。いくつかの構成においては、非伸展構成要素は指定降伏力よりも低い力によるヘッドギアの伸長を制限する。いくつかの構成においては、非伸展材料の降伏点はヘッドギアに印加されることが予想される任意の荷重よりも高い。いくつかの構成においては、ヘッドギアが頭部に取り付けられると、非伸展構成要素はヘッドギアの伸長に抵抗する。いくつかの構成においては、ヘッドギアが頭部に取り付けられ、CPAP圧力がマスクに印加されると、非伸展構成要素はヘッドギアの伸長に抵抗する。したがって、いくつかの構成においては、非伸展構成要素(場合によっては以下に記載する機構との組み合わせにおいて)は、少なくともCPAP圧力が印加されているときには伸展構成要素の伸長を妨げる又は伸展構成要素の伸長に抵抗することができる。カニューレの場合、非伸展構成要素はホースの引張りなどの外力の作用下でのカニューレの動きに抵抗することができる。
【0057】
機構は、指定降伏力よりも低い力がヘッドギアに印加されたときにはヘッドギアの伸張又は伸長を制限することができる任意の適切な機構とされ得る。いくつかの構成においては、機構は使用者によって労力なく動作される(例えば、機構は自動である)。つまり、少なくともいくつかの構成においては、機構は、自動的に動かすことも、指定降伏力未満において伸長又は伸張が制限されるモードへと切り換えることもできる。しかしながら、マスクの着用にはヘッドギアを伸長させるために降伏力を超える労力などの使用者の労力が求められてもよい。いくつかの構成においては、機構は、指定降伏力よりも低い力がヘッドギアに印加されたときにはヘッドギアの伸長又は伸張を制限することが可能な運動抵抗力(motion resistance force)を印加することができる。いくつかのそのような構成においては、運動抵抗力は摩擦力とされ得る。指定降伏力、つまり、ヘッドギア機構の運動抵抗力に打ち勝ち、ヘッドギアの伸長が可能になる力は、(1)約4~20cmH2Oの範囲が予想される場合に使用時に特定のマスクに生じ得る最大吹出力、並びに(2)CPAPホースの任意の引張りを可能にする予備力及び使用者のフィット性の好みの差によって決定されてもよい。一般に、延長又は伸長力と最大平衡フィット力との間の差と定義される予備力は、バランスフィット力(balanced fit force)を超える、実質的なヘッドギアの伸長を起こすことなく追加の力がヘッドギアに印加され得るバッファを提供することができる。予備力成分は、使用者の頭部からヘッドギアを引くように機能し得るホースの引張りなどの任意の追加の力を補償することができる。いくつかの構成においては、運動抵抗力は、弛緩してヘッドギアの後退又は収縮を可能にする一方で、ヘッドギアの伸長を制限するために印加され得る。いくつかの構成においては、機構はヘッドギア長さを固定する、又はそうでなければ固定するために一方向摩擦を用いることができる。例えば、長さは、最小伸長による吹出力を超える力によってのみ打ち勝つことができる摩擦力を用いて固定することができる。そのような機構は、本明細書中では、方向ロック機構又は方向ロックと呼ばれ得る。本明細書で使用する場合、用語「ロック(lock)」は吹出力及び/又はホース引張り力などの特定の力に応答してヘッドギア長さを固定する機構を含むことを意図する。「ロック」は必ずしも全ての力に応答してヘッドギア長さを固定する必要はない。好ましくは、いくつかの構成においては、ロックの保持力(「ロック力」)には装着プロセスの取り付け部分の間に手動で印加される力などによって打ち勝つことができる。
【0058】
上述のように、ヘッドギアは、マスクを使用者の頭部周囲にフィットさせるために伸展又は伸長され得る。機構は、ヘッドギアの伸展又は伸長を可能にしつつも、CPAP圧力が印加されたときにシールが全般的に所定の位置に保持され、ヘッドギアが実質的に伸長しないようにヘッドギアの長さを固定するための手段を提供する。いくつかの構成においては、機構が係合している間に少量の伸長が生じてもよい。
【0059】
いくつかの構成においては、一方向摩擦式ヘッドギアは、手動調節がほとんどない既存の伸展ヘッドギアと同様の使用の容易さとともに、非伸展ヘッドギアの利点の全てを使用者に提供するように設計された機構を組み込むことができる。
【0060】
弾性ヘッドギアの伸展は、一般に、シールの維持において有用ではない。顔を密閉するマスクは常に吹出力を発生させ、更にはヘッドギアの反力を発生させる。この力によりヘッドギアが伸展し、シールのフィット性に影響を及ぼす。伸展ヘッドギアは、したがって、ヘッドギアに調節を施すことなく高い圧力において平衡フィットが得られる場合は、この変化を予見し且つ補償するために過度に締め付けねばならず、低い圧力では非平衡なフィット性となる。
【0061】
一方向摩擦機構は、シールが設けられると、ヘッドギアの非伸展ストラップ構成要素がその長さを変えるのを停止することができる。CPAP機械がオンにされ、シールが設けられると、フィット性の好み、顔の形状等のような各使用者の変動要素により、使用者の顔から離れる方にマスクを押そうとする吹出力が生成される。この吹出力は、非伸展ストラップがその長さを変える可能性を低減又は排除し、様々な圧力において平衡フィットを生じる一方向摩擦機構によって打ち消してもよい。
【0062】
顔に対して密閉されたマスクは実質的に圧力容器である。マスクは、気密性を維持し、シールを形成するために顔に押し付ける必要がある。必要な絶対最小力は、(投影)密閉面積に陽圧を乗じたものに等しい。この力は、方向が顔から離れる方に向いているため吹出力である。この力を平衡させることがヘッドギアの主な機能である。平衡フィットはヘッドギアの反力が吹出力に実質的に一致したときに実現される。カニューレ実施形態では、一般に、患者とカニューレとの間にシールがないため、吹出力がない。平衡フィットは、したがって、ヘッドギアアセンブリ周長が使用者の頭囲に一致し、伸長又は伸張に対するいくらかの抵抗を提供する場合に実現され得る。カニューレシステムにおいては、本明細書中に記載される自己フィット式ヘッドギアにより、それぞれ手動調節式及び伸縮自在なヘッドギアにおいて生じ得る過度な締め付け及び過度の力なしに迅速且つ容易な装着が可能になる。
【0063】
投影密閉面積(同じ特定圧力であっても)は人によって異なり、顔の特徴及び個人のフィット性の好みに依存する。平らな顔の人とより「凹凸のある」顔との間の差を考慮されたい。平らな顔にシールを設けることは、密閉面積が狭く、対応する吹出力が低いためにより簡単であると思われる。同様に、同じ人に同じ圧力で、緩い又はきついフィット性のいずれかなどの異なるフィット性のシールを施し且つ維持することができる。これは膨張式シールを有するマスクにおいて特に当てはまる。緩いフィット性により、面積が狭くなり、対応するより吹出力が低くなる。
【0064】
平衡フィットによって、ヘッドギアと使用者の頭部との間の力はシールを得るために必要な力の量に等しくなる。標準的なヘッドギア設計を用いる場合、使用者に快適性を付与するために圧力を夜通し変化させるCPAPの特徴により状況が複雑になる場合がある。圧力を夜通し変化させることにより、吹出力の量が夜通し変化する。平衡フィット機構を組み込むヘッドギアによって、反力はCPAP圧力の低下と協調して低下する。
【0065】
ホースの引張りは、使用者が睡眠姿勢を変えるときのCPAP又はカニューレホースの引きずりに起因する付加的な力である。ホース抗力により、ヘッドギアにかかる力が一時的に増加する。この力が機構の伸長に対する抵抗を超えた場合にフィット性が変化し、これにより漏洩及び/又は不快感が生じる場合がある。
【0066】
以下に記載するヘッドギアを着用している間に使用者が睡眠姿勢を変えるため、ヘッドギアのフィット性を変えることが必要な場合がある。この時点で、シールを顔の方に押す又は揺り動かす自然の相互作用により、ストラップが自動的に任意の余分な長さ後退し、新たなフィット性を維持することとなる。いくつかの状況においては、ヘッドギアの長さを増加するためにマスク又はシールを顔から引き離してもよい。
【0067】
以下に記載するヘッドギアを着用中にインターフェースを取り外すため、シールは機構の最大保持力よりも大きな力によって前方に引っ張ることができる。これにより、ヘッドギアが延びて、シールを使用者の顔及び頭部上から引き離すことが可能になる。取り外されると、ヘッドギアにかかる力の不足によりヘッドギアはその弛緩サイズへと自動的に後退する。
【0068】
いくつかの構成においては、ヘッドギアは3フェーズ力伸長装着プロファイル(three phase force extension fit profile)を適用する。この概要については
図2に示す。取付フェーズ200では、ヘッドギアを使用者の頭部に渡すように伸展させる。グラフは伸長時の抵抗を示す。負荷曲線202は、ヘッドギアの伸長の初期の間は負荷の急な上昇を示し、その後、ヘッドギアがより大きな頭囲に適応するために更に伸張するにつれて略一定の平らな伸展曲線へと移行する。調節フェーズ204では、ヘッドギアは後退し、所望のフィット性が得られるまで伸張状態から復帰する。負荷曲線206は、ヘッドギアが後退して使用者の頭部上にフィットする際の初期の負荷減少を示し、また、ヘッドギアが更に後退して使用者の頭囲にフィットする際の低い負荷力を示す。第3のフェーズである平衡フィットフェーズ208では、ヘッドギアは、CPAP圧力が印加される際、使用者の頭部上でその位置を保持するように調節される。負荷曲線210は、CPAP圧力によりヘッドギアの負荷力の上昇が吹出力と平衡し、また、ホースの引張りなどの更なる力に抵抗することを示す。カニューレ実施形態の場合、平衡フィットはフェーズ2の終わりに得られるものであり、フェーズ3は、一般に、ホースの引張りなどの外力がかけられた場合にのみ開始される。平衡フィットの成分の更なる詳細については以下に説明する。
【0069】
ここで
図3を参照すると、取付フェーズ200の更なる詳細及び関連する負荷曲線202が示される。上述のように、負荷曲線202は急な上昇220を示すが、これは、使用者の頭部に取り付けるためにヘッドギアが伸展される際に伸展に対する初期抵抗を有するからである。初期抵抗は伸長に抵抗する抵抗に打ち勝つことに関連し得る。負荷がヘッドギアの機構の降伏力に達すると、負荷曲線はヘッドギアが更に伸展するにつれて実質的に平らな略一定の伸展曲線222へと移行し、ヘッドギア伸長の大部分において負荷力の増加がほとんどなくなる。
【0070】
図4は、第2のフェーズ、すなわち調節フェーズ204をより詳細に示す。このフェーズでは、ヘッドギアは十分に伸展又は伸長されて使用者の頭部上にフィットしており、ヘッドギアは解放されて所定の位置にある。所望の位置に達すると、ヘッドギアは伸展状態(例えば、過度に伸長された位置)から復帰し、負荷力は、負荷曲線206に示すように急激に低下する224。この、使用者の頭部にフィットさせるためにヘッドギアを後退させることによる力の低下後、ヘッドギアは使用者の頭部にフィットしたままであるため負荷曲線は低いまま226である。示されるように、本発明の多くの特徴、態様及び利点を典型的に表すヘッドギアは、伸長を生じさせるのに必要な第1の高負荷及びヘッドギアが収縮する第2の低負荷を特徴として備える。換言すると、ヘッドギアは伸長を生じさせるのに必要な負荷よりも低負荷で収縮し、提供される効果はヒステリシスである。いくつかの構成においては、伸長モードから収縮モードへと変化する際に力が大幅に変化する間、ヘッドギアには長さ変化の遅れがある。いくつかの構成においては、インターフェース長さが伸長から収縮へと変化する際、インターフェース周囲(ヘッドギアアセンブリを含む)の長さの変化は負荷(すなわち力)の変化に遅れる。更に、いくつかの構成においては、伸長時、力が増加するにつれて、長さは力の減少時の長さの減少を超えて増加する(例えば、傾きは220の方が224よりも小さい)。
【0071】
図5では、ヘッドギアの力がCPAP圧力の吹出力と平衡する平衡フィットフェーズ208において平衡フィットが達成される。上に言及したように、CPAP圧力が印加される際、ヘッドギアはその長さを保持するように調節される。負荷曲線210は、吹出力に平衡する負荷力の上昇を示す。詳細な負荷曲線210の平衡フィットセクション230に示すように、平衡フィットはヘッドギアの後退力226よりも高い負荷を生成する。平衡フィット成分は、ヘッドギアのストラップ内において増加する力であり、吹出力に等しく且つ反対の力を提供する。しかしながら、この力は、また、延長又は伸展曲線222よりも小さい。いくつかの構成においては、平衡フィットセクション230の傾きは、ヘッドギアの後退時の負荷力224の上昇220及び/又は低下に関連する、影響される、又は実質的に同じとなり得る。いくつかの構成においては、平衡フィットセクション230の傾きは負荷力224の低下の傾きよりも急である。いくつかの構成においては、平衡フィットセクション230の傾きはヘッドギアの延長時における初期の上昇220の傾きよりも大きい。
【0072】
延長又は伸長力222と、瞬間又は現在の平衡フィット力234との間の差と定義される予備力成分232は、バランスフィット力を超える、実質的なヘッドギアの伸長を起こすことなく追加の力がヘッドギアに印加され得るバッファである。予備力成分は、使用者の頭部からヘッドギアを引くように機能し得るホースの引張りなどの任意の追加の力を補償することができる。ホースの引張りなどの外力が上昇するにつれてヘッドギアの反力も上昇する。外力が降伏点を超えた場合にのみヘッドギアが伸長し、これにより、漏洩に至る可能性がある。予備力成分は通常使用時に引っ張られるホースによってマスクに印加され得る実際の外力に適応するほど十分に大きいことが好ましい。この予備力成分又はバッファは、また、よりきつい又はより緩いフィット性などの、マスクのシールの使用者の顔との係合における使用者の好みを考慮する。カニューレシステムとともに使用した場合、フェーズ3の全体が予備力に配分され得る。吹出力がないため、平衡フィットはフェーズ2の終わりに得られるものであり、したがって、フェーズ3は、一般に、ホースの引張りなどの任意の外力及びフィットのきつさの点における使用者の好みのみとなる必要がある。その結果、カニューレ装置の降伏力はCPAP装置の降伏力よりも大幅に低くなり得る。一般に、平衡フィットが得られたときのヘッドギア内の力もまた、カニューレ装置の方がCPAP装置よりも低くなり得る。
【0073】
図3~5のグラフは、また、ある領域を取り囲み且つ画定する周長を含む。示される周長は形状が略矩形であり、使用者の頭囲(伸長)、及びホースの引張りなどの外力を含み得るが必ずしも含む必要はない、CPAPシステムによって印加された力(負荷)に関連する、インターフェースアセンブリの動作エンベロープを示す。x軸に沿った領域の長さ又は周長の左端部212と右端部214との間の距離は、使用者頭部サイズの所望の又は使用可能範囲を示す。つまり、左端部212はより小さな頭部サイズ(周囲又は伸長)に位置付けられ、右端部214はより大きな頭部サイズに位置付けられる。より小さな及びより大きな頭部サイズは、万人にフィットする、あるいは頭部サイズの特定の部分集合(例えば、小、中、大)又は使用者(例えば、小児、成人)を意図し得る特定のインターフェースアセンブリの最小及び最大頭部サイズとすることができる。
【0074】
y軸に沿った領域の長さ又は周囲の下端部216と上端部218との間の距離は、使用時、インターフェースアセンブリに印加される力又は負荷の所望の若しくは使用可能範囲を示す。周囲の下端部216はより低い力(例えば、低CPAP値から生じる力)に位置付けられ、周囲の上端部218はより高い力(例えば、高CPAP値から生じる力)に位置付けられる。頭部サイズと同様に、より低い力及びより高い力は一般にCPAPシステム又はプロトコル用とされ得る、あるいは、CPAPシステム又はプロトコルの特定の部分集合用とされ得る。上述のように、力範囲はCPAP力のみに基づくものとすることも、例えば、ホースの引張り力などの外力を含むこともできる。好ましくは、瞬間又は現在の平衡フィット力234は動作エンベロープの範囲内である。
【0075】
伸展又は弾性システムが動作エンベロープ全体において十分な性能を提供するためには、システムは、インターフェースアセンブリがCPAP圧力による力及び外力の1つ又は両方により得られるものよりも大きな抵抗力を提供する必要がある。したがって、伸展又は弾性システムの力伸展曲線は動作エンベロープ上方に配置されるべきであり、必要であれば、外力に対処する及び/又は異常な若しくは予期せぬ力に対処するための予備力を提供するのに十分な距離だけ動作エンベロープ上方に間隔を空けて配置されるべきである。したがって、伸展又は弾性システムは使用者に対し、インターフェースアセンブリに印加される実際の力(例えば、CPAP及び外力)に対処するために必要なレベルよりも高いレベルの力を印加する。この必要な力よりも大きな力は使用者の快適性を低下させる傾向にある。
【0076】
ヘッドギアアセンブリの様々な力プロファイル構成が可能であり、力プロファイル構成は平衡フィット領域を含むことが好ましい。本明細書中に記載される力プロファイルはCPAPシステムとカニューレシステムとの両方に適用可能であるが、平衡フィットが達成される点は通常異なる。インターフェースのフィット性を維持するのに関連する力レベルは、一般に、カニューレシステムにおいても著しく低い。加えて、ヘッドギア実施形態のいくつか又は全ては、カニューレシステムにおいて機能する又は機能するように修正を施すことができ、ヘッドギア周囲が頭囲に一致し、且つ好ましくは、ヘッドギアの伸長に対しある程度の量の抵抗が提供されたときに平衡フィットが達成される。増加するCPAP圧力及び/又は吹出力は一般にカニューレシステムに印加される外力に相関する。
図6は、ヘッドギアストラップの抵抗が要求に応じて生じる1つの力プロファイル240を示す。この構成では、ヘッドギアを伸張させてフィットさせるために最小の労力しか必要ない。この構成では、使用者は曲線242によって示されるヘッドギアの弾性に打ち勝つだけでよく、これには、通常、約1.5N未満の力が必要である。曲線244によって示されるこの構成の平衡フィット成分は吹出力に等しく且つ反対の力を提供し、また、使用者の頭部からヘッドギアを引くように機能し得る任意の更なる外力を補償する。曲線246は平衡フィット部244にバッファを加えたものである。
【0077】
図7A~Bは、
図6に示される、要求に応じた抵抗のプロファイルを有するヘッドギアの一実施形態を示す。示される構成は、層状伸展アセンブリ304を含む。
図7Aに示される層状伸展実施形態304では、2つのストラップ306及び308を、それぞれ伸展セクション310、316、320と非伸展セクション312、314、318とを交互させ順に重ねて積層することができる。示されるように、2つのストラップ306及び308は、1つのストラップの非伸展セクションが他方のストラップの少なくとも伸展セクションに重なるように矢印324によって示されるように互いに折り返されてもよい。示されるように、ストラップ306の非伸展セグメント314はストラップ308の伸展セグメント316に重なる。非伸展セグメント314の少なくとも一部が非伸展セグメント312の少なくとも一部に重なり、連続的な非伸展経路を形成するように、非伸展セグメント314は伸展セグメント316よりも長いことが好ましい。同様の非伸展セグメント312の非伸展セグメント318との重なりも示す。加えて、ストラップ306及び308はゴムウェビング又は他の粘着性を持つ物質などの「グリップ」の形態を非伸展セクション上に有し得る。重なったグリップセクション322によって示されるように互いに重ねて配置されると、グリップセクションは重なって引っかかり、ストラップ間の運動抵抗力を超えるまでヘッドギアストラップの更なる伸長の可能性を低減又は排除する。ヘッドギアが使用者の頭部に配置されると、伸展層と非伸展層との間の半径方向力によりグリップセクションが係合して完全な非伸展セクションを形成し、ヘッドギアストラップの更なる伸長を制限する。
図7Bは、
図7Aに示される層状ストラップ実施形態の2つの写真を示す。
【0078】
層状伸展ストラップ構成の別の実施形態が
図8に示される。層状グリップストラップ構成400は2つのストラップを含み、そのうちの1つが1つ又は複数の位置にグリップパターンを有し、もう一方のストラップが、
図7Aに示される構成と同様に、一連の交互する伸展セグメント又はセクション414と、非伸展セグメント又はセクション412、416とを有する。1つの伸展セグメント及び2つの非伸展セグメントを示すが、他の数の伸展セグメント及び非伸展セグメントを設けることもできる。第1の、すなわち内ストラップ406は2つのグリップパターンセグメント410がストラップ406の両端部に配置された状態で示されるが、ストラップ406の実質的に全長にグリップパターンを含む異なる数のグリップパターンセグメント410を設けることもできる。グリップセグメント410は第2の、すなわち外ストラップ408の非伸展セグメント412、416と重なり、ストラップ406、408の少なくとも一部に選択的に結合する双方向のグリッピングセクションを提供する。しかしながら、この配置は内ストラップ406と外ストラップ408との間において反転することもできる。いくつかの構成においては、内ストラップ406は、ストラップ406、408が結合されるとヘッドギアが完全な非伸展セクションを形成することを可能にし、上述のようにヘッドギアの更なる伸長を制限する非伸展部材である。しかしながら、他の構成においては、内ストラップ406は弾性又は伸縮可能な材料から作製され得る。このような構成においては、ヘッドギアはストラップ406、408が結合された場合であっても伸展セクションを含み、その長さは外ストラップ408の弾性部分414によって画定され得る。好ましくは、伸展セクションは使用者の頭部の背後に提供され、非伸展セクションは使用者の頭部の側部に配置される。伸展セクションを使用者の頭部の背後に配置すると伸展セクションを使用者の頭部の側部に設けるよりも特定の力に対する伸展運動が少なくなる可能性がある。吹出力又は外力などによりヘッドギアに負荷がかかると、使用者の頭部の背後のセクションが使用者の頭部に対して引っ張られ、それによって、ヘッドギアと使用者の頭部との間の摩擦が増加する。いくつかの構成においては、摩擦はヘッドギアの伸展セクションの伸展運動を実質的に妨げるのに十分なものとすることができる。例えば、シリコーン又は他の種類のグリップ要素などの、ヘッドギアと使用者の頭部との間の摩擦を高めるための特徴を用いることができる。伸縮可能な内ストラップ406により装着前のヘッドギアの伸展を容易にすることができる。内ストラップ406の略全体が伸縮可能な場合などのいくつかの構成においては、外ストラップ408のセクション414の材料は、内ストラップ406の長さよりも大幅に短い伸展セクション414の長さに対応するために、内ストラップ406の材料に比べて大幅に低い伸長弾性率を有する。内ストラップ406は、グリッピングパターンがストラップ406の片面又は両面に適用された細いストラップであってもよい。ストラップ408には非伸展セグメント412及び416に類似のグリッピングパターンを適用することができる。いくつかの構成においては、グリッピングパターンは、ストラップの、使用者とは逆側に面した部分に適用される。示される構成においては、第2のストラップ408は、ストラップのアライメントを維持するため、及びヘッドギアアセンブリの使用を容易にするために内ストラップ406が取り付けられるスロットを有してもよい。例えば、第2のストラップ408は第1のストラップが延在する通路を含んでもよい。通路は第2のストラップの長さの大部分に形成され得る。あるいは、通路は複数のループ(例えば、衣服に使用されるベルトループに類似する)によって画定され得る。
【0079】
図9は、層状ストラップ構成の第3の実施形態を示す。この構成では、層状ストラップ500は、上記実施形態と同様に、交互する伸展セグメント及び非伸展セグメントを含む。
図9に示される構成では、ストラップのセグメントは折り返される。折り返されると、非伸展セグメントのグリップ部分を揃えることができ、これにより、ヘッドギアの更なる伸長の可能性を低減する又は排除する。いくつかの構成においては、ストラップセグメントは、ヘッドギアを伸展させて使用者の頭部にフィットさせ、使用者がインターフェースアセンブリの所望の張力を得た後に折り返される。いくつかの構成においては、ストラップセグメントは圧力を用いた処理の開始前に折り返される。
【0080】
更なる層状ストラップ構成が
図10に示される。この構成では、層状ストラップ600は非伸展セグメント610上に積層された伸展セグメント614を有する。伸展セグメント614は、示されるように非伸展セグメント610と重なる2つの非伸展セグメント612(1つが示される)を連結する。非伸展セグメント612は、中心すなわち後部非伸展セグメント610が挿入され得る巻かれたセグメント又はループ又はポケットの形態とってもよい。上述のように、各非伸展セグメントは、揃えられると、ヘッドギアの更なる伸長の可能性を低減又は排除するグリップ部分を有してもよい。
【0081】
図7A~B及び8~10に示される非伸展経路ヘッドギアなどの、要求に応じた抵抗の力プロファイルを有するヘッドギアを伸長しようとする力が印加されると、ヘッドギアが保持されている位置以外の2つのストラップ層の間に最小限の力が印加される。したがって、グリップセクションは互いに相互作用せず、伸展構成要素は大きな抵抗なく伸長することができる。ヘッドギアが伸長位置から解放されると、伸展構成要素はヘッドギアが使用者の頭囲に実質的に一致するまで緩められる。この時点で、非伸展構成要素と、2つのストラップ層のグリップセクションは重なっているはずである。使用者の頭部によってヘッドギアに印加された半径方向力によりグリップが互いに相互作用することができ、ヘッドギアの長さを固定し、大きな力をかけることなく更に伸長又は後退するのを制限する。グリップの相互作用及び重なった伸展/非伸展セクションにより、ヘッドギアに連続的な非伸展経路が形成される。この経路はCPAP圧力が印加されたときのヘッドギアの更なる伸長を制限する。ヘッドギアは使用者の顔に印加されたCPAP圧力に等しく且つ反対の力を印加するため、平衡フィットが形成される。マスクのフィット性を調節するために、グリッピングセクションの相互作用は解除又は低減され得る。
【0082】
別の要求に応じた抵抗の構成が
図11A~Dに示され得る。
図11Aを参照すると、この構成では、トンネルストラップ構成700が2つの比較的非伸展のストラップセグメント704を有する。いくつかの構成においては、非伸展ストラップセグメントはBreath-o-Preneなどの熱成形圧縮材料で形成され得る。各ストラップセグメント704は可撓性シャトル712に結合され得る。各可撓性シャトル712はセグメント704と低力弾性部材714とに結合され得る。可撓性シャトル712及び弾性部材714は、軟質非伸展(少なくとも周囲/長さにおいて)材料で作製された滑らかな内部表面を有する湾曲した頭部の形状のトンネル706によって全体的に取り囲まれ得る。いくつかの滑り止めパッド708(2つが示される)が使用者に最も近いシャトル712の表面に配置されてもよい。滑り止めパッドは、シリコーン又は別の滑り止め材料若しくは粘着性を持つ材料から作製してもよい。弾性体が各シャトル712の長さ全体の上に載るように各シャトル712の一端は弾性部材714の端部と整列され得る。層状の弾性体714及びシャトル712構成は端部と端部とを合わせて比較的非伸展のストラップセグメント704に取り付けられ得る。ストラップアセンブリはトンネル内部に収容され得るが、他の構成においては、トンネルは1つの開放側を有し得る。
【0083】
可撓性シャトル712はヘッドギアの平衡フィットを設ける把持力を提供する。
図11Bに示すように、シャトル712はストラップの伸長又は後退及び印加された力の量に応じて形状を変化させる。ストラップ704が引っ張られると、シャトル712はトンネル706及びグリップの形状に合致し、ヘッドギアの更なる伸長の可能性を低減又は排除する。ストラップ704が解放されるか縮退すると、シャトル712はトンネル706の表面から剥がれ、グリップを破断し、ストラップの後退を可能にする。
図11C及びDは、
図11A及びBに示されるトンネルコンセプト700の一実施形態の更なる図を提供する。
図11Cは、トンネルストラップ構成自体を示し、
図11Dは、マスクに取り付けられたトンネルストラップ構成の別の実施形態を示す。
図11Dには、第2のストラップが示される。第2のストラップ(又はストラップ一式)はトンネル706及び/又はストラップ704の下又は上に配置され得る。いくつかの構成においては、第2のストラップはストラップ704に結合され得る。第2のストラップは使用者が把持することができ、したがって、ヘッドギアの着脱時のハンドルとなり得る。いくつかの構成においては、第2のストラップは装着時にヘッドギアを特定の方向に向けるのを補助する。いくつかの構成においては、第2のストラップは全般的に最大後頭点よりも下に配置されてもよい。
【0084】
更なる要求に応じた抵抗の構成が
図12に示される。この構成では、別のトンネルストラップ構成800は、ある程度の手動での干渉及びフィット性の調節を可能にするために2つのシャトル804を露出させるように構成されたトンネル802を有する。シャトル804を露出させることによって、使用者はヘッドギアの初期のフィット性に対し更なる制御を行うことができる。タブ806(1つが示される)もまた、使用者がヘッドギアのフィット性を調節するための便利な手法を提供するように構成され得る。いくつかの構成においては、例えば、タブを引くとストラップが短縮され得る。いくつかの構成においては、タブ806はトンネル802の端部近傍に配置され得る。
【0085】
図11A~D及び
図12に示されるヘッドギアなどの、トンネル機構を有し、且つ要求に応じた抵抗の力プロファイルを示すヘッドギアを伸長させるために力が印加されると、弾性部材は機構に半径方向力が印加されるまで自由に伸長する。半径方向力が印加されるまで、印加される軸力は弾性ストラップの強度に打ち勝つほど十分に大きいことのみを必要とする。ヘッドギアが伸長位置から解放されると、弾性ストラップはヘッドギアが使用者の頭囲に一致するまで後退し、半径方向(例えば、ストラップを横断する)力がその後印加される。この時点で、使用者の頭部はヘッドギアに半径方向力を印加する。半径方向力はトンネルの湾曲と合わせて、シャトルの裏面の滑り止めパッドをトンネルの内壁に接触させ、グリップを形成してヘッドギアの長さを固定し、更なる伸長又は後退を制限する。シャトルは好ましくは平らなプラスチック片であるため、その自然な反応は使用者の頭部のカーブに正接して配置されるものである。これにより、弾性体が永久的に取り付けられ、トンネルの内壁から離れて配置される性質を有するヘッドギアの前端部が、最小半径方向張力がヘッドギアに印加された場合に滑り止めパッドを解放する。滑り止めパッドとトンネルとの間の摩擦は、通常、弾性部材がトンネル内で縮退することを妨げるほど十分なものではない。
【0086】
CPAP圧力の印加によってヘッドギアに引張力が印加されると、シャトルの前部が引っ張られてトンネルの内壁に接触する。シャトルは引っ張られてトンネルの内壁に接触する。この構成では、ヘッドギアに印加される張力が増加するにつれて滑り止めパッドがトンネルと相互作用し、ヘッドギアを伸長させるために必要な力が増加する。これによりヘッドギアの長さを効果的に固定し、特定の印加力よりも大きな力が印加されない限りは更なる伸長及び後退を制限する。
【0087】
図13は、要求に応じた抵抗の構成の更に別の実施形態を示す。この構成では、空気作動式ロックストラップ900が平衡フィットヘッドギアを提供する。1つ又は複数の空気作動式ロックアセンブリ902がマスク914の各側に1つずつ提供され得る。空気作動式ロックアセンブリは弾性ストラップ等に結合され得る、又は弾性ストラップ等内に若しくは弾性ストラップ等に沿って配置され得る。いくつかの構成においては、弾性ストラップはマスク、マスクのシール及び/又はマスクのフレームに結合され得る。いくつかの構成においては、弾性ストラップは空気作動式ロックに結合され得る。各空気作動式ロックアセンブリはロックケーシング906によって収容される空気作動式ロック904を有し得る。給気チューブ908がマスク914から各空気作動式ロックアセンブリ902まで延びている。空気作動式ロックアセンブリ902の1つの拡大
図910は、コアストラップ912各空気作動式ロックアセンブリ902の中心に延びていることを示す。上述のように、ヘッドギアの保持力はCPAP圧力の存在下でのみ必要とされる。この実施形態では、空気作動式ロックを維持するための空気圧はマスクの空気圧から提供される。フィット性が得られた後などにヘッドギアの保持力を提供するために空気作動式ロックアセンブリ902が作動されると、マスク914から各空気作動式ロック904に空気が供給される。この空気圧により、空気作動式ロック904が膨張してコアストラップ912を把持し、ヘッドギアストラップの更なる伸長の可能性を低減又は排除する。空気ロックアセンブリ902はマスクのチャンバと流体連通しているため、マスク内の圧力が増加するにつれて空気ロックアセンブリ902内の圧力が増加する。したがって、力の増加により顔からマスクが持ち上がろうとするとストラップの伸長に抗する力も増加する。この要求に応じた抵抗の実施形態は、一般に、カニューレ装置には適用不能である。この理由は、空気ロックを作動するためには空気圧の存在が必要とされ、一般に、シールされないカニューレシステムでは空気圧を提供することができないからである。外力によるヘッドギアの伸長を妨げるのに必要な保持力を提供するために、空気ロックに対し手動作動式の外部空気圧源を提供することができる。
【0088】
図14は、平衡フィットを組み込んだ第2の力プロファイルを示す。この図では、動作に対する高い抵抗のプロファイル250が示される。この力プロファイルを用いて構成されるヘッドギアは所定の力で解除されるロッキング機構を有し得る。ヘッドギアが伸長して使用者の頭部上に装着され、フィット性のために後退される際、ヘッドギアストラップを伸長させるために力が再度印加されるまで、負荷力は低いままである。示されるように、負荷伸長曲線252は、最初、少ない伸長で上向きの傾きを有し得るが、これはヘッドギアの初期の伸長に対する高い抵抗を示す。所定の力に到達後は、ヘッドギアを更に伸長させるのに必要な力は大幅に少ない量となる。上述の要求に応じた抵抗の力プロファイルと同様に、伸長動作の開始に対する高い抵抗の力プロファイルもまた、2つの成分を有する平衡フィットを含む。まず、平衡フィット成分254は、伸長の狭い範囲において、CPAP圧力の吹出力を相殺するために更なる伸長に対する高い抵抗を提供する。伸長に対する更なる抵抗は、ヘッドギアを伸長する又は緩めるように機能し得るホースの引張りなどの任意の外力を相殺する予備力成分256によって提供される。示される構成においては、曲線の初期伸長部分の傾きは曲線の平衡フィット成分254の傾きと実質的に同じである。いくつかの構成においては、曲線の初期伸長部分の傾き及び平衡フィット部分の傾きは
図14の同じ機構に打ち勝とうとすることにより生じることから、傾きは同じか実質的に同じである。
【0089】
伸長開始に対する高い抵抗のプロファイルを組み込む構成の一実施形態が
図15A~Bに示される。
図15Aは、ローラボールロック機構1000の断面を示す。この構成では、ロッキングチャンバ1002はローラボール1004及びスイッチ1006を含む。スイッチ1006は、スイッチがコアストラップ1010に係合するとロッキングチャンバ1002の上内部表面に隣接して配置される頂面1012を有するくさび形の部材であってもよい。スイッチ1006がコアストラップ1010に係合すると、
図15Aに示すように、ローラボール1004とコアストラップ1010との間の摩擦がコアストラップ1010の更なる伸長を実質的に妨げる。所定の力において、ローラボール1004及びスイッチ1006は、スイッチ1006が枢動箇所1008の周りを枢動してコアストラップ1010を解放し、コアストラップ1010がいずれの方向にも自由に動くことを可能とし、ヘッドギアが自由に伸長又は後退することを可能にする状態で位置を変化する。ヘッドギアがより小さな周長へと戻るときなど、コアストラップ1010の動きの方向が反転すると、ローラボール1004はロッキングチャンバ1002の自由側に(
図15Aでは左に)移動し、スイッチ1006がリセットされる。コアストラップ1010がその後引っ張られる場合、機構1000は、再度、上述のようにヘッドギアの更なる伸長に抵抗するためのローラボールロックとして機能する。
【0090】
別のローラボールロック機構1020のロック位置及び解放位置が
図15Bに示される。この構成では、ロッキングチャンバはローラボール1024及びスイッチ1026を含む。スイッチ1026は、ロッキングチャンバ1022の上内部表面1038に隣接して配置される頂面1036を有するくさび形の部材であってもよい。スイッチ1026は、また、ローラボール1024をロッキングチャンバ1022内に閉じ込めるような形状の部分1040を含んでもよい。いくつかの構成においては、ローラボールロック機構1020がロック位置にあるとき、部分1040は、また、コアストラップ1030に係合してヘッドギアの更なる伸長の可能性を低減又は排除するように構成され得る。いくつかの構成においては、機構1020は磁石1032及び磁性部材1034を含んでもよい。磁石1032はローラボールロック機構1020のハウジング内に配置してもよく、その一方で、磁性部材1034は表面1036に隣接してスイッチ1026の一端に配置してもよい。
【0091】
図15Bの下図に示すように、スイッチ1026がコアストラップ1030に係合すると、スイッチ1026のローラボール1024とコアストラップ1030との間の摩擦がコアストラップ1030の更なる伸長に実質的に抵抗する。
図15Aを参照して記載した構成と同様に、ヘッドギアを伸長させるように作用する、スイッチ1026のローラボール1024とコアストラップ1030との間の摩擦に打ち勝つ所定の力において、スイッチ1026は、枢動箇所1028の周りを枢動してコアストラップ1030を解放し、コアストラップ1030が自由に動くことを可能にすることによって位置を変化する。スイッチがこの位置にあることにより、ヘッドギアは実質的に自由に伸長又は後退する。ヘッドギアが小さな周長に戻るときなど、コアストラップ1030の動きの方向が反転すると、ローラボール1024はロッキングチャンバ1022の自由側に(
図15Bでは左に)移動し、スイッチ1026がリセットされる。コアストラップ1030がその後引っ張られる場合、機構1020は再度、上述のようにヘッドギアの更なる伸長に抵抗するためのローラボールロックとして機能する。磁石1032及び磁性部材1034はスイッチ1026を保持及びリセットするように機能してもよい。
【0092】
動きの開始に対する高い抵抗の構成の第2の実施形態が
図16に示される。この実施形態では、摩擦に打ち勝ち、コアストラップが解放されて低い負荷力により伸長又は後退するまで、自己制御式ワッシャ摩擦がコアストラップを保持し、更なる伸長の可能性を低減又は排除する。
図16は、コンセプトを上述した平衡フィットを提供する自己制御式ワッシャ機構1100を含む。自己制御式ワッシャ機構1100は、曲げられるカーブ1110を有するS字形摩擦部材1104と、S字形部材1104の曲げられるカーブ1110部分に隣接する自己制御式ワッシャ1106とを含む。摩擦部材1104及びカーブ1110はハウジング1111内に配置することができ、例えば、伸展構成要素1113がハウジング1111に固定され得るが、これに限定されない。ヘッドギアのコアストラップ1108はS字形部材1104のオリフィス及びワッシャ1106も通過する。コアストラップ1108は伸展構成要素1113の少なくとも一部を通過することもその横に配置することもできる。
【0093】
ワッシャ1106及びS字形部材1104がコアストラップ1108の長手方向軸線に対し角度α(
図16に1112で示される)にある場合、コアストラップ1108は、ワッシャ1106とコアストラップ1108との間、及びS字形部材1104とコアストラップ1108との間の摩擦力により伸長に耐える。コアストラップ1108に印加される更なる負荷力によってこれら摩擦力に打ち勝ってもよい。S字形部材に十分な力が印加されると、S字形部材1104のオリフィス及びワッシャ1106のオリフィスがS字形部材のたわみのためより良好に整列される。たわみによって、自己制御式ワッシャ機構1100は
図16の下パネルに示すような形状をとる。この構成では、曲げられるカーブ1110及びワッシャ1106は長手方向軸線に対し角度β(
図16に1114で示される)にある。角度1114は角度1112よりも90度に近く、コアストラップ1108がS字形部材1104及びワッシャ1106の開口部をより容易に通過することが可能になる。この構成では、コアストラップ1108に作用する摩擦力は小さくなり、コアストラップ1108がより小さな必要負荷力で伸長及び後退することが可能になる。コアストラップ1108を引っ張る方向が反転すると、S字形摩擦部材1104の曲げられる部材1110及びワッシャ1106は
図16の上パネルの配向に類似する配向に戻る。上述のように、この構成では、十分に高負荷が印加されるまでコアストラップ1108にかかる摩擦力によりコアストラップ1108の伸長が制限される。この負荷は、通常、CPAPデバイスの通常の治療での使用時に発生する負荷よりも大きい。
【0094】
図17は、平衡フィット機能を組み込んだ第3の力プロファイルを示す。この図では、伸長負荷に対する反復する高い抵抗のプロファイル270が示される。この力プロファイルを用いて構成されるヘッドギアはリセット前に所定の力で解除されるロッキング機構を有する。この解除及びリセットのシーケンスはヘッドギアの伸長する間全体にわたり反復される。
図17に示すように、負荷曲線272はヘッドギアが伸長する際の一連の高負荷力ピークの反復からなる。曲線272の下部により示されるように、負荷曲線272では後退に要する力は小さくなる。上述の力プロファイルと同様に、平衡フィット成分274及び予備力成分276はそれぞれ吹出力を補償し、ホースの引張りなどの外力によるヘッドギアの更なる伸長を妨げる。更に、示されるように、平衡フィット成分274は負荷曲線272の増加負荷部分の負荷伸長傾きに近似する負荷伸長傾きを有し得る。
【0095】
伸長に対する反復する高い抵抗を提供するラチェット機構1200が
図18A~Bに示される。示されるラチェット機構1200は、ばね式クリップ1208を収容する内部キャビティ1206を有するハウジング1204を含む。クリップ1208は、ハウジング1204内に延びている非伸展コアストラップ1212の鋸歯状の縁と相互作用するように構成されている。コアストラップ1212が引っ張られるか伸長すると、クリップ1208はコアストラップ1212の鋸歯状の縁に係合して更なる伸長に抵抗する。クリップ1208によるストラップ1212の把持に打ち勝つのは、クリップ1208が離れる方に曲がり、その単一歯の把持を解放したときである。ばね式クリップ1208は、その後、鋸歯状コアストラップ1212の次の歯に係合する準備ができる。再び、十分な負荷力が印加されると、クリップ1208はコアストラップ1212の次の鋸歯を解放し、次の鋸歯を捕える。このようにして、
図17に示されるものなどの伸長に対する反復する高い抵抗の力プロファイルが得られる。示されるクリップ1208は、鋸歯状コアストラップ1212の伸長時にはコアストラップ1212に対して垂直であり、コアストラップ1212の後退時には角度を成すことができる。
【0096】
コアストラップ1212は伸展シース(不図示)内に収容することができ、シースの両端を越えてプラスチックチューブ内に延びることができる。プラスチックチューブには自由端部(loose ends)が収容される。伸展シースは、ヘッドギアを使用者の頭部のサイズに戻すための後退力を提供する。伸展シースのヤング率は、シースが初期平衡力を提供するようにシースが使用者の頭部に、最小予想吹出力以下の力を印加するように調整されることが好ましい。より高い吹出力では、非伸展構成要素は更なる平衡力を提供してもよい。
【0097】
コアストラップ1212は、ストラップ1212の端部がハウジングチューブから引き出される可能性を低減又は排除するために端部にストッパを有することが好ましい。コアストラップ1212はハウジングとともに閉ループを形成する。管状ハウジングはマスクフレームに留めることができる。クリップハウジング(不図示)は伸展シースとハウジングとを一緒に結合することができる。
【0098】
伸長力がヘッドギアに印加されると、コアストラップ1212はクリップ1208を引いてハウジング1204の矩形内壁に対して面一にする。これにより、クリップ1208はコアストラップ1212の歯に更に係合する。この係合に打ち勝つのは、クリップ1208が離れる方に曲がり、その単一歯の把持を解放し、次の歯に係合する準備ができたときである。コアストラップの各歯に打ち勝ち、ヘッドギアを伸長させるために必要な力は特定の印加力以上である。
【0099】
ヘッドギアが伸長位置から解放されると、クリップ1208はそのハウジング1204内で回転し、ハウジング1204の角度を成した壁と面一になる。これにより、クリップ1208がコアストラップ1212の歯を係脱することが可能になり、これにより更には、ヘッドギアが自由に後退することが可能になる。
【0100】
まず、弾性要素により使用者の頭部に印加された低い力によってCPAP圧力が平衡する。CPAP圧力によって印加される力が増加するにつれて、非伸展コアストラップ1212が伸長に対する更なる抵抗を付与し、ばねクリップ1208を垂直なハウジング壁に対し押して歯に係合させるため、残りの平衡力が提供される。CPAP圧力によって印加される力がコアストラップ1212の歯に打ち勝つための指定降伏力を超えないことが好ましいため、ヘッドギアの長さは使用者により変更されない限り実質的に一定のままである。
【0101】
コアストラップ1212の後退が
図18Bに示される。この図では、コアストラップ1212はハウジング1204内に後退し、これによりクリップ1208がハウジング1204内で回転するため、クリップ1208がコアストラップ1212の歯から係脱することが可能になる。この構成では、ストラップ1212は非常に小さな抵抗で後退することができる。
【0102】
図19A及びBは、ストラップ設計1218の一実施形態に組み込まれたラチェット機構を示す。弾性スリーブ1220が、ヘッドギアを自動的に後退させるためのラチェット機構を取り囲む。
【0103】
平衡フィットを組み込んだ第4の力プロファイルが
図20に示される。この図では、大ヒステリシス負荷プロファイル290が示される。この力プロファイルを用いて構成されるヘッドギアは伸長又は伸張に対する高負荷力抵抗を有する。
図20を参照すると、力の大きな蓄積が負荷曲線の伸長セクション292に示される。このヘッドギアの伸長フェーズの間、伸長力は、吹出力と推定3Nのホース引張り力との合計により決定される約7~8Nであってもよい。ヘッドギアが後退すると、負荷曲線の後退セクション294に示すように、復帰力(returning force)は約2.5N以下であることが好ましい。この復帰力は、主としてヘッドギアの弾性要素によって使用者の顔に作用する力である。
【0104】
ヘッドギアの平衡フィットには、上述のように2つの成分、つまり、平衡フィット成分及び予備力成分を含んでもよい。
図20に示される負荷曲線の平衡フィット成分296はCPAP圧力によって印加された吹出力を補償する。負荷曲線の予備力成分298は伸展曲線292の大ヒステリシスセクション時の負荷力にまで及ぶ様々な負荷力を含んでもよい。いくつかの実施形態では、平衡フィットフェーズ時の伸長量は約10mm以下である。示されるように、いくつかの構成においては、平衡フィット成分296は初期の伸長傾きに類似する又は同じ傾きをとる。いくつかの構成においては、平衡フィット成分296は後退セクション294の傾きよりも小さな傾きを有する。他の構成も可能である。
【0105】
図21A及びBは、上述の大ヒステリシス負荷プロファイルを組み込んだヘッドギア機構の一実施形態の断面を示す。この実施形態では、ワッシャコンセプトヘッドギア機構1300は、内部キャビティ1306を有するハウジング1304を含む。内部キャビティ1306は、コアストラップ1316によって画定される長手方向軸線に対し実質的に垂直であり且つ直交する自由運動面1310を有するように構成されている。内部キャビティ1306は、また、コアストラップ1316によって画定される長手方向軸線に対して角度を成すロッキング面1312を有するように構成されている。ワッシャ1308が内部キャビティ1306内に配置されている。ハウジング1304及びワッシャ1308の両方を通るオリフィスにより、非伸展コアストラップ1316をオリフィス内に通すことが可能になる。ハウジング1304は、非伸展コアストラップ1316の端部を収容するチューブの端部を形成する。いくつかの構成においては、チューブは略弾性である。このチューブによりヘッドギアが閉ループになり、マスクフレーム(不図示)に留めることができる。
【0106】
図21Aを参照すると、コアストラップ1316の自由運動が示される。ワッシャ1308がハウジング1304の自由運動面1310と整列する場合、ワッシャ1308及びハウジング1304とコアストラップ1316との間の摩擦はほとんどない。したがって、この構成では、コアストラップ1316はワッシャ1308及びハウジング1304内を通る実質的に直線の経路を有し、矢印1318によって示される自由運動方向に実質的に自由に動く。
【0107】
ここで
図21Bを参照すると、コアストラップ1316の運動に対する高摩擦抵抗が示される。コアストラップ1316が、矢印1320によって示される自由運動方向の反対方向に引っ張られると、ワッシャ1308は強制的に倒され、ハウジング1304の角度を成したロッキング面1312に隣接して配置される。このハウジング1304内におけるワッシャ1308の配向により、コアストラップ1316の角度を成した経路が形成される。この角度を成した経路により、ワッシャ1308とコアストラップ1316との間の摩擦が増加する。増加した摩擦によりコアストラップ1316の動きが制限され、ヘッドギアの伸長に抵抗する。
図22は、ヘッドギアアセンブリ内に組み込まれたワッシャコンセプトヘッドギア機構の一実施形態を示す。
図22に示すように、各ヘッドギアアセンブリは非伸展コアストラップ上に2つのワッシャ機構を含み得る。コアストラップの中間セクションは伸展シース内部に収容され得る。コアストリングがハウジングチューブから引き出される可能性を低減又は排除するためにコアストリングは端部にストッパを有することが好ましい。伸展シースは両端がハウジングチューブに結合されることが望ましい。
図22は、また、自由運動構成を1330で示す。
図22では、高摩擦運動構成を1332で示す。
【0108】
コアストラップの運動に対する高摩擦抵抗を提供するワッシャコンセプトの3つの更なる実施形態が
図23に示される。各コンセプト1340、1350及び1360に示されるように、ワッシャ形状は、ハウジングの構造に応じて平ワッシャ1342から角度を成したワッシャ1352又は角度を成したワッシャ1362へと変更してもよい。いずれの場合においても、ハウジングの自由運動面1344、1354又は1364に沿ったワッシャ1342、1352又は1362のアライメントにより、コアストラップ1348、1358又は1368がワッシャ及びハウジング内を実質的に自由に動くことが可能になる。しかしながら、ワッシャ1342、1352又は1362がハウジング内において回転してハウジングのロッキング面1346、1356又は1366と整列すると、コアストラップが曲がり、ヘッドギアの更なる伸長を制限する動きの角度を成した高摩擦経路が形成される。
【0109】
ワッシャコンセプト機構の更なる実施形態が
図24に示される。この実施形態では、機構1370はハウジング1374内に配置されたワッシャ1372を含む。回転可能な部材1376もまたハウジング1374内に配置されている。他のワッシャ実施形態に関して上述したように、ハウジングの一端から他端へのワッシャ1372の動きは自由運動又は高摩擦運動状態が存在するかどうかに影響する。ワッシャ機構1370内の回転可能な部材1376は機構1370がコアストラップ1378を引く角度の変化にあまり左右されないような追加の利点をもたらす。
【0110】
上記実施形態のいずれにおいても、ハウジングは1つ又は複数の部品で製造してもよい。ハウジング及びワッシャは同じ又は異なる材料で製造してもよい。いくつかの構成においては、ハウジング及び/又はワッシャは略硬質材料で形成され得る。いくつかの構成においては、ハウジング及び/又はワッシャは硬質プラスチックで形成され得る。いくつかの構成においては、ハウジング及び/又はワッシャはポリカーボネート、ポリプロピレン、アセチル又はナイロン材料で形成され得る。いくつかの構成においては、ハウジング及び/又はワッシャは金属で形成してもよい。
【0111】
図21A~B、22、23及び24を参照して上述したワッシャ機構のいずれかを有するヘッドギアが伸張すると、ワッシャとコアストラップとの間の少量の摩擦により、ワッシャがハウジングの角度を成した端部壁へと引っ張られる。これにより、ワッシャが角度を成してハウジング内に配置され、コアストラップが通過するための曲がった経路が形成される。この曲がった経路により、コアストラップ内に引張力が生成され、コアストラップとワッシャ機構との間の動きに対する抵抗が増加する。抵抗はヘッドギアを伸長させるために指定降伏力よりも大きな力が必要となるような程度である。
【0112】
ワッシャ機構を含むヘッドギアにかかる引張力がない場合、ワッシャは垂直な端部壁に隣接するその中立位置に戻る。この位置では、ワッシャはコアストラップに最小の摩擦力をかける。ヘッドギアが解放されると、コアストラップはハウジング及びワッシャ内において自由に引き込むことができる。弾性シースはヘッドギアを短縮するのに必要な後退力を提供する。
【0113】
指定降伏力よりも大きな力が印加されると、弾性シースは、また、ヘッドギアの伸長を可能にする。弾性シースのヤング率はシースが使用者の頭部に、最小予想吹出力以下の力のみを印加することができるように調整されることが好ましい。したがって、これら構成では、弾性体が低いCPAP圧力の初期平衡力を提供する。
【0114】
まず、CPAP圧力は弾性要素によって使用者の頭部に印加された低レベルの力により平衡する。CPAP圧力によって印加される力が増加するにつれて、非伸展コアストラップはワッシャ機構とともに更なる伸長を制限する。増加するCPAP圧力に対するヘッドギアの自然な反応は圧力増加に適応するために伸長することであるが、これにより、ハウジングの角度を成した端部に向かってワッシャが押され、増加した摩擦のために非伸展コアストラップが所定の位置に固定される。コアストラップの動きが制限されると、コアストラップは残りの平衡力を提供する。CPAP圧力によって印加される力は、一般に、コアストラップに対するワッシャの抵抗に打ち勝つための指定降伏力を超えないため、ヘッドギアの長さは使用者により変更されない限り実質的に一定のままである。
【0115】
大ヒステリシス機構の別の実施形態が
図25A~Cに示される。Cリング機構1400の断面が
図25Aに示される。機構1400は、ストラップ部材1410と連続的に形成しても別個の部品であってもよい硬質管状ハウジング1404を含む。ハウジング1404は、コアストラップ1408の非伸展セクションが通過してもよいオリフィスを含む。ハウジング1404は、また、コアストラップ(不図示)の自由端部を含む。ハウジング内にはC字形の断面1406を持つ弾性ワッシャがある。ワッシャ1406はワッシャ1406の開口部がマスクの方に向くように配向される。可撓性のC字形ワッシャ1406はシリコン又はゴムで作製してもよい。
図25Aを参照すると、C字形の部材1406内に画定される開口部はコアストラップ1408の長手方向軸線と実質的に同様の方向に配向される。各C字形の部材1406の少なくとも1つの脚はコアストラップ1408に隣接する。ワッシャ1406のC字形セクションは、ハウジング1404内を通過するコアストラップ1408の非伸展セクションの表面上において引きずられる。以下により詳細に説明するように、ハウジング1404及びワッシャ1406は、コアストラップ1408が1つの方向に動くときにワッシャ1406が大きな摩擦をかけ、もう一方の方向へのコアストラップ1408の動きが実質的に自由となるように構成されている。
【0116】
ここで
図25B及びCを参照すると、コアストラップ1408の自由運動及び高摩擦運動が示される。運動の方向に応じて、ワッシャ1406は異なるように反応する。コアストラップ1408が自由運動方向1414に動くと、
図25Bに示すようにワッシャ1406の中心は「広がる(unroll)」傾向にある。ワッシャ1406の中心が広がると、コアストラップ1408にかかる摩擦は減少する。コアストラップ1408がもう一方の方向である高摩擦運動方向1416に動くと、
図25Cに示すように、コアストラップ1408に接しているワッシャ1406の中心が窄まる又は圧縮される。この変形によりコアストラップ1408にかかる摩擦が増加し、ヘッドギアを伸長させるために必要な力が増加する。
図26A及びBは、上述のようなCリング機構を有するヘッドギアアセンブリの一実施形態の2つの図を示す。コアストラップ1408の中間セクションは伸展シース内に収容されている。伸展シースは両端がハウジング1404に結合され得る。伸展シースは、ヘッドギアを使用者の頭部のサイズに戻すための後退力を提供する。伸展シースのヤング率は、シースが使用者の頭部に、最小予想吹出力以下の力を印加することができるように調整され得る。これは、伸展シースが初期平衡力を提供することを意味する。カニューレシステムでは、快適性を最大にするために、ヤング率は、カニューレを使用者の頭部に保持するのに必要なもののうち可能な限り又は実施可能な限り最も低いものとなるように調整され得る。高い吹出力(又はカニューレシステムの外力)では、非伸展構成要素は更なる平衡力を提供する。コアストラップ1408は端部がハウジング1404から引き出される可能性を低減又は排除するために端部にストッパを有することが好ましい。コアストラップ1408の端部を収容することによって、ヘッドギアは閉ループを形成する。ヘッドギアをマスクに結合するためにハウジング1404はマスクフレームに留められることが好ましい。
【0117】
図25A~Cに示される実施形態では、伸長力がヘッドギアに印加されると、コアストラップ1408はハウジング1404の内壁に対してワッシャ1406の丸いセクションを引く。これにより、ワッシャ1406が押しつぶされ、コアストラップ1408にかかる摩擦が増加する。ワッシャ1406によって提供される摩擦はヘッドギアを伸長させるために必要な力が指定降伏力よりも大きい程度である。ヘッドギアが伸長位置から解放されると、ワッシャ1406はその自然な形状に戻り、コアストラップ1408が大幅に低い抵抗でハウジング1404及びワッシャ1406を通過することが可能になる。ワッシャ1406の開放側がハウジング1404の壁に対して引っ張られると、ワッシャ1406はつぶれたり変形したりせず、コアストラップ1408にかかる摩擦は低いままになる。
【0118】
まず、CPAP圧力は弾性又は伸展構成要素によって使用者の頭部に印加された低レベルの力によって平衡する。CPAP圧力によって印加される力が増加するにつれて、非伸展コアストラップ1408は更なる伸長を制限するように機能する。ヘッドギアの自然な反応は、増加したCPAP圧力に適応するために伸長することであるが、これにより、ワッシャ1406の丸みのある側がハウジング1404の壁に対して押され、摩擦が増加し、非伸展コアストラップ1408を所定の位置に「固定する」。コアストラップ1408の動きが制限されると、残りの平衡力が提供される。CPAP圧力によって印加される力は、一般に、コアストラップ1408にかかるワッシャ1406の摩擦に打ち勝つための指定降伏力を超えないため、ヘッドギアの長さは使用者により変更されない限り実質的に一定のままである。
【0119】
大ヒステリシス機構の別の実施形態が
図27A~Cに示される。
図27Aでは、代替的なワッシャ機構1500は、押しつぶすことが可能なコア部材1506を組み込んだハウジング1504を含む。押しつぶすことが可能なコア部材1506は、円錐が押しつぶされるか変形してコアストラップ1508にかかる摩擦を増加し得るように円錐形状に構成してもよい。コアストラップ1508が矢印1510によって示される自由運動方向に動くと、コアストラップ1508にかかる摩擦は最小となり、
図27Bに示すように、押しつぶすことが可能なコア部材1506はコアストラップ1508の自由運動に実質的に抵抗しない。コアストラップ1508が矢印1512によって示される高摩擦運動方向に動くと、押しつぶすことが可能なコア部材1506は
図27Cに示すように変形されるか左へと「窄まる」。
【0120】
引き続き
図27Aを参照すると、グラフ1520は、押しつぶすことが可能なコア部材1506の変形により抵抗が増加するにつれてコアストラップ1508の動きに対する抵抗が急激に増加することを示す。コアストラップ1508が更に伸長する間、動きに対する抵抗は高いままであり、これは
図20を参照して記載したものなどの大ヒステリシス力プロファイルに合致する。
【0121】
大ヒステリシス機構の更に別の実施形態は
図28A及び
図28Bに示される。
図28Aでは、ローラボールロック機構1600は、内部チャンバ1608を有する硬質管状ハウジング1604を含む。内部チャンバ1608は一端が他端よりも大きくなるように傾斜している。内部傾斜チャンバ1608はローラボール1606を収容する。ローラボール1606は内部傾斜チャンバ1608の壁と非伸展コアストラップ1610との間に収容される。ハウジング1604はコアストラップ1610がハウジングを通過してもよいようにオリフィスを更に含み、且つコアストラップ1610の自由端部を更に収容し閉ループを形成する。コアストラップ1610は、端部がハウジング1604から引き出されることを妨げるために、端部にストッパを有することが好ましい。ハウジング1604は、その後、マスクフレームに留めることができる。この構成では、ローラボール1606が内部キャビティ1608の一端にある場合、ローラボール1606はコアストラップ1610に押し付けられ、摩擦及びコアストラップ1610を更に伸張するのに必要な負荷力が増加する。引き続き
図28Aを参照すると、コアストラップ1608が矢印1612によって示される方向に引っ張られたとき、ローラボール1606は内部キャビティ1608の小さい方の端部へと追いやられる。内部キャビティ1608の傾斜した形状により、コアストラップ1608が反対方向に動くと、ローラボール1606は、ローラボール1606のためのより広いスペースがある内部キャビティ1608の「高天井(high ceiling)」端部に追いやられる。したがって、ローラボール1606はコアストラップ1608との干渉が最小となり、それによってボールによってかかる摩擦を低減する。ヘッドギアアセンブリ内に組み込まれるこのローラボールロック機構の一例が
図28Bに示される。コアストラップ1610の中間セクションは伸展シース1612内に収容されている。伸展シース1612は両端がハウジング1604に結合され得る。伸展シース1612はヘッドギアを使用者の頭部のサイズに戻すための後退力を提供する。伸展シース1612のヤング率は、シース1612が使用者の頭部に、最小予想吹出力以下の力のみを印加することができるように調整されることが好ましい。これは、伸展シース1612が初期平衡力を提供することを意味する。カニューレシステムでは、快適性を最大にするために、ヤング率は、カニューレを使用者の頭部に保持するのに必要なもののうち可能な限り又は実施可能な限り最も低いものとなるように調整され得る。より高い吹出力では、非伸展構成要素は更なる平衡力を提供する。
【0122】
図28A~Cを参照して上述したローラボール機構を有するヘッドギアに伸長力が印加されると、コアストラップ1610はハウジング1604の傾斜チャンバの狭い端部に向かってローラボール1606を引く。これが、その後、ローラボール1606をコアストラップ1610へと追いやり、コアストラップ1610にかかる摩擦が増加する。増加した摩擦はヘッドギアを伸長させるために必要な力が指定降伏力よりも大きい程度である。
【0123】
ヘッドギアが伸長位置から解放されると、ローラボール1606はハウジング1604の傾斜チャンバの広い方の端部に向かって追いやられ、したがって、コアストラップ1610にかかる摩擦が低下し、コアストラップ1610がチャンバ内を大幅に低い抵抗で通過することが可能になる。
【0124】
まず、CPAP圧力は伸展シース構成要素1612によって使用者の頭部に印加された低レベルの力によって平衡する。CPAP圧力によって印加される力が増加するにつれて、非伸展コアストラップ1610は更なる伸長に抵抗するように機能する。ヘッドギアはCPAP圧力に適応するために自然に伸長しようとするが、これにより、ローラボール1606が傾斜チャンバ1608の狭い端部に向かって押され、コアストラップ1610を所定の位置に「固定する」。コアストラップ1610の動きに抵抗すると、残りの平衡力が提供される。CPAP圧力によって印加される力は、一般に、コアストラップ1610にかかるローラボール1606の摩擦に打ち勝つための指定降伏力を超えないため、ヘッドギアの長さは使用者により変更されない限り実質的に一定のままである。
【0125】
大ヒステリシス力プロファイルを有する第2のローラボールロック機構1620が
図28Cに示される。この図では、機構1620は、別個のくさび又はスイッチ部材1632を含む内部チャンバ1628を有するハウジング1624を含む。くさび部材1632は、ローラボール1626とチャンバ1628との間に収容されたヒンジ式解放スイッチとして機能する。この実施形態では、くさび部材1632は、コアストラップ1630からのローラボール1626の迅速な解放を向上させるために含まれる。くさび部材1632は、係合しているときには傾斜チャンバ、解放されると矩形チャンバを形成する角度を成した表面を有する。コアストラップ1630の中間セクションは
図28Bに示されるシース1612に類似する伸展シース内に収容される。伸展シースは両端がハウジング1624に結合され得る。伸展シースは、ヘッドギアを使用者の頭部のサイズに戻すための後退力を提供する。伸展シースのヤング率は、シースが使用者の頭部に、最小予想吹出力以下の力のみを印加することができるように調整されることが好ましい。これは、伸展シースが初期平衡力を提供することを意味する。カニューレシステムでは快適性を最大にするために、ヤング率は、カニューレを使用者の頭部に保持するのに必要なもののうち可能な限り又は実施可能な限り最も低いものとなるように調整され得る。より高い吹出力では、非伸展構成要素は更なる平衡力を提供する。
【0126】
矢印1634によって示されるような自由運動方向への方向の反転時、くさび1632がキャビティ1628内で外れる前にくさび1632及びローラボール1626はわずかな距離をともに移動し、コアストラップ1630とローラボール1626との間の把持を即座に解放する。コアストラップ1630はその後自由に動くことが可能となる。
【0127】
スイッチ1632は自然に係合位置にあり、傾斜チャンバを形成する。伸長力がヘッドギアに印加されると、コアストラップ1630は、スイッチ1632によって狭くなったチャンバ1628の端部に向かってローラボール1626を引く。ボール1626がスイッチ1632へと追いやられるにつれて、スイッチ1632が解放される箇所であるスイッチ1632の回転軸線の真上にローラボール1626が来るまで圧縮力が増加する。スイッチ1632の解放により、矩形チャンバ1628が形成され、スイッチ1632とボール1626とコアストラップ1630との間の抵抗が減少し、ボール1626がチャンバ1628内で動くことが可能になり、且つ弾性伸展シースに打ち勝つのに必要な力及び機構の構成要素間のいくらかの摩擦力のみでヘッドギアが容易に伸張することが可能になる。
【0128】
スイッチ1632が解放され、ボール1626がチャンバ1628の伸長端部まで転がると、コアストラップ1630は機構1620内を最小の抵抗で両方向に動くことができる。コアストラップ1630がその移動方向を反転し、ボール1626をチャンバ1628のもう一方の(後退)端部に戻した後、スイッチ1632のリセットが行われる。ボール1626がスイッチ1632の回転軸線を越えて転がり戻されると、スイッチ1632はリセットされ、チャンバ1628は再び傾斜する。
【0129】
ヘッドギアが伸長位置から解放され、後退が可能とされると、ローラボール1626はチャンバ1628の伸長側すなわちより開かれた側に向かって押し戻される。ローラボール1626の位置の変化によりスイッチ1632に再係合するが、また、構成要素間の低い抵抗レベルは維持され、コアストラップ1630がチャンバ1628を少ない抵抗で通過することが可能になる。
【0130】
まず、CPAP圧力は弾性シース構成要素によって使用者の頭部に印加された低レベルの力によって平衡する。CPAP圧力によって印加される力が増加するにつれて、非伸展コアストラップ1630は伸長に対する更なる抵抗を提供する。ヘッドギアの自然な反応はCPAP圧力に適応するために伸長することであるが、これにより、ローラボール1626が角度を成したスイッチ1632表面に向かって押され、これにより、ボール1626、コアストラップ1630及びスイッチ1632間の摩擦が増加する。空気圧によって印加される力は、摩擦に打ち勝ちスイッチ1632の解放を生じさせるのに十分でないことが好ましく、したがって、ヘッドギアの更なる伸長が制限される。スイッチ力は指定降伏力に略等しいことが好ましい。
【0131】
図29は、大ヒステリシス用のローラボール機構の代替的実施形態を示す。コレット機構1700は、一端が円錐形の2部品ハウジング1704、1706を含む。硬質管状ハウジングの端部のためのハウジング部材1704、1706は、非伸展コアストラップ1710の自由端部を収容する。ハウジングはコアストラップ1710の周りにカラーを形成するコレット部材1708を収容する。コレット部材1708は図示される実施形態のように切頭円錐形状を有することが好ましく、その長手方向に、コレット部材1708の拡張及び収縮を可能にするための1つ又は複数の切り溝を有してもよい。コレット部材1708が矢印1712によって示される方向、つまり、ハウジング内に形成された円錐形チャンバ内に引き込まれると、コレット部材1708は非伸展コアストラップ1710に強いクランプ力をかける。上述のローラボール機構と同様に、コレット部材1708がハウジングの円錐形チャンバに引き込まれると、コアストラップ1710は高い摩擦力を受ける。反対方向に引っ張られる場合、コアストラップ1710は実質的に自由に動く。
【0132】
他の実施形態を参照して上述したように、コアストラップ1710の中間セクションは、両端がハウジングに結合された伸展シース内に収容されている。非伸展コアストラップ1710は、自由端部がハウジングから引き出される可能性を低減又は排除し、閉ループヘッドギアアセンブリを形成するために、端部にストッパを有することが好ましい。ハウジングチューブはマスクフレームに留めることができる。
【0133】
伸長力がヘッドギアに印加されると、コアストラップ1710はハウジングの円錐形の端部内にコレット部材1708を引き込む。これにより、コレット部材1708がコアストラップ1710上に圧迫され、2つの構成要素間の摩擦が増加する。圧迫されたコレット部材1708によって提供される摩擦はヘッドギアを伸長させるために必要な力が特定の印加力よりも大きくなる程度である。
【0134】
ヘッドギアが伸長位置から解放されると、コレット部材1708は、コアストラップ1710がコレット部材1708をより自由に通過することを可能にするその中立位置に戻る。弾性シースはヘッドギアを使用者の頭部のサイズに戻すための後退力を提供する。弾性シースのヤング率はシースが使用者の頭部に、最小予想吹出力以下の力のみを印加することができるように調整してもよい。この構成では、弾性体は初期平衡力を提供する。より高い吹出力では、非伸展構成要素は更なる平衡力を提供する。
【0135】
まず、CPAP圧力は弾性要素によって使用者の頭部に印加された低レベルの力により平衡する。CPAP圧力によって印加される力が増加するにつれて、非伸展コアストラップ1710は更なる伸長を制限する。ヘッドギアの自然な反応はCPAP圧力に適応するために伸長することであるが、これにより、コレット部材1708がハウジングの円錐形の端部に向かって押されるため、非伸展コアストラップ1710は所定の位置に固定される。コアストラップ1710の動きが制限されると、残りの平衡力が提供される。CPAP圧力によって印加される力はコアストラップ1710にかかるコレット部材1708の摩擦に打ち勝つための指定降伏力を超えないことが好ましいため、ヘッドギアの長さは使用者により変更されない限り一定のままである。
【0136】
マスクと併せて大ヒステリシス力伸張プロファイルを提供するヘッドギアでは、装着のためヘッドギアを伸張させるのに必要な力は使用者が調整機能を簡単に認識することを可能にするために指定降伏力に比べてあまり高くないことが好ましい。非常に高い伸長力は使用者の混乱を引き起こすおそれがあるが、これは、使用者にはこの要求される大きな力が不自然に感じられる場合があり、ヘッドギアの構成要素の破壊する恐れがあり得ることが理由である。
【0137】
ヘッドギアは、また、フィット性を使用者の好みに合わせて調整できることが好ましい。
図30は、マスクのシールがどのようにフィットして欲しいかを使用者が選択することを可能にするセクションを含む大ヒステリシス機構ヘッドギアの力プロファイルを示す。この力プロファイルは使用者間の異なる顔面形状も考慮している。ストラップの更なる後退により、使用者はマスクを顔に押し付けてより広い接触面積及びシールとのよりきついフィット性を形成することができる。これにより、ヘッドギアによって印加される力は増加するが、上述のような摩擦機構に打ち勝つため及びヘッドギアを伸長させるために必要な力を超えることはない。緩いフィット性の方を好む使用者に対しては、ヘッドギアの非伸展又は低伸展構成要素によりマスクを所定の位置に保持することが可能になり、吹出力を相殺しつつもなお使用者の顔との密閉を維持するのに、あるいは、カニューレの重量を相殺し、カニューレを所定の位置に保持するのに最小限の力しか必要としない。
【0138】
種々の圧力における力プロファイルが
図31A及びBに示される。
図31Bは、Pilairo弾性ストラップヘッドギアの力プロファイルを示す。力は略一定であり、CPAP圧力にほとんど影響されないことは明らかである。この図は、また、各被験使用者の異なる頭部サイズに起因する被験者間の広い分散を示す。
【0139】
これに対し、
図31Aに示されるグラフは一方向摩擦ヘッドストラップ(one-way-friction head strap)を用いて得られる。この例では、トンネルコンセプトを用いたヘッドギアが用いられるが、上述したような本発明者の他のコンセプトでも同様の結果が得られる。この図は、平衡フィットの利点を示す。低圧では、Pilairo弾性ストラップヘッドギアと比較すると、低い圧力では、このヘッドギアにより生成される、使用者の頭部にかかる力は大幅に小さい。
図31Aは、また、様々な使用者の測定においてより小さな分散を示す。ある人は他の人よりもより強い係合を必要とするあるいは強い係合の方を好むため、分散はシールが形成される手法に起因するものである。
【0140】
図31Cは、
図31A及びBに示される最初の2つのグラフの各平均間の差を示す。このグラフでは、CPAP圧力スケールの下端部における大きな力の差が明らかである。上述の機構の1つを含むヘッドギアは使用者の快適性を向上させることができる。これは、圧力ランピング(pressure ramping)又は圧力変化技術などのCPAPのインテリジェント供給(intelligent supply)との組み合わせの場合に特に当てはまる。
【0141】
図31Cは平均値を示すことに留意されたい。しかしながら、平衡フィット機構はそれぞれ個々の使用者の効果を最適化するように設計されている。
【0142】
図32は、自己フィット式インターフェースアセンブリに用いられる可変方向特性を有する調節機構1800を示す。示される調節機構1800は方向ロック機能を提供し、ゆえに、方向ロッキング機構又は単に方向ロックと呼ばれ得る。方向ロック1800は第1のレベルの抵抗での第1の方向における2つの構成要素間の相対運動を可能にし、且つ第2の方向における相対運動(又は相対運動の試み)に応じて第2の、好ましくはより高いレベルの抵抗を提供し、これにより、少なくともいくつかの荷重条件に応じた第2の方向における相対運動を阻止する又は妨げる。いくつかの構成においては、方向ロック1800は、CPAP生成吹出力及び外力(例えばホース引張り力)の1つ又は複数などの、通常動作上の力に応じた第2の方向における相対運動を妨げる。方向ロック1800は、また、上述のような、予想又は通常吹出力及び/又は予備力を提供するためのホース引張り力を超える更なる力に応じた第2の方向における相対運動を妨げることができる。したがって、方向ロック1800は通常動作上の力(及び所望であれば予備力)に応じてのみロック機能を提供するように構成することができ、且つ通常動作上の力(及び所望であれば予備力)を超える大きさの力に応じて2つの構成要素間の相対運動を可能にすることができ、例えば、装着プロセスの取付フェーズ時におけるインターフェースアセンブリのヘッドギア部分の伸長を可能にする。したがって、そのような方向ロック1800を組み込んだヘッドギア機構は伸展挙動から非伸展挙動へと、又は弾性伸長型挙動から非伸長型挙動へと「転換」することができる。本明細書で使用する場合、伸長は伸張方向の動きを意味することに必ずしも限定されず、一般に、非伸展又は弾性でない/非弾性挙動と対照的な伸展又は弾性挙動を意味し得る。方向ロック1800(及び本明細書中に記載される他の方向ロック)は変形ロック挙動を提供する変形ロックとも呼ばれ得る。
【0143】
図32の方向ロック1800は、一般に、浮動又は可動ロック構成要素又は部材1802(例えば、ロックワッシャ又はロックプレート)が第1の、低抵抗すなわち解放位置と、第2の、高抵抗すなわちロック位置との間において可動であるという点で動作原理が
図16及び
図21の配置に類似している。
図32の方向ロック1800に関して記載されない特徴又は詳細は
図16及び
図21の配置の対応する特徴と同じ又は類似とされ得る、あるいは、別の適切な構成とされ得る。示される方向ロック1800は、ロックワッシャ1802の開口部を通過するコアストラップ又はコアワイヤ/コードなどのコア部材1804を含む。ロックワッシャ1802は第1の位置と第2の位置との間の動きのため筐体又はハウジング1806内で支持される。好ましくは、ハウジング1806は、ロックワッシャ1802を第1の位置で支持する第1の停止面1812を有する第1の壁1810を含む。第1の位置は好ましくは低抵抗すなわち解放位置である。ハウジング1806は好ましくは、また、ロックワッシャ1802を第2の位置で支持する第2の停止面1816を有する第2の壁1814を含む。第2の位置は好ましくは高抵抗すなわちロック位置である。好ましくは、停止面1812、1816はロックワッシャ1802を所望の位置で支持するようなサイズ、形状、又は配置にされる。したがって、停止面1812、1816は示されるように、ロックワッシャ1802の協働面の全体又は実質的に全体に接する連続的な表面とされ得る。あるいは、停止面1812、1816は断続的な又は不連続な面とされ得るか、例えば、ロックワッシャ1802の上及び下端部部分などのロックワッシャ1802の1つ又は複数の部分に接し得る。
【0144】
好ましくは、ロックワッシャ1802は、ワッシャ1802の開口部又は穴がコア部材1804に略平行に又は整列して配置されるようにハウジング1806のロックキャビティ内において第1の、低抵抗すなわち解放位置に配置されたコア部材1804の部分の長手方向軸線に対し略垂直に配置されている。好ましくは、ロックワッシャ1802は、ワッシャ1802の開口部又は穴がコア部材1804に対して傾角で配置されるようにハウジング1806のロックキャビティ内において、第2の、高抵抗すなわちロック位置に配置されるコア部材1804の部分の長手方向軸線に対して傾角で配置される。したがって、いくつかの構成においては、第1の停止面1812はハウジング1806のロックキャビティ(及び/又はコア部材1804が通過するハウジング1806の開口部)内に配置されたコア部材1804の部分に対して略垂直とすることができ、第2の停止面1816は、ハウジング1806のロックキャビティ(及び/又はコア部材1804が通過するハウジング1806の開口部)内に配置されたコア部材1804の部分に対して傾角Θで配置することができる。以下に記載されるように、第2の停止面1816に接しているときの第2の停止面1816又はロックワッシャ1802の角度はロックワッシャ1802がロック位置にあるときに所望のロック若しくは降伏力又は抵抗の大きさを得るように選択することができる。
【0145】
装着プロセス時におけるインターフェースアセンブリのヘッドギア部分の伸長又は後退時にハウジング1806とコア部材1804との間の相対運動が生じるように、ハウジング1806はインターフェースアセンブリの1つの構成要素に結合することができ、コア部材1804はインターフェースアセンブリの別の構成要素に結合することができる。コア部材1804とロックワッシャ1802との間の摩擦係合により、ロックワッシャ1802がコア部材1804とハウジング1806との間の相対運動の方向に応じて第1の位置と第2の位置との間において動く、あるいは、コア部材1804及び/又はハウジング1806に力が印加される方向に応じて第1の位置及び第2の位置の1つにロックワッシャ1802を保持する。したがって、本明細書中に記載される他の実施形態と同様に、そのような配置によって、自己フィット式インターフェースアセンブリの可変方向抵抗特性を提供するために方向ロック1800を用いることができる。
【0146】
図33は、方向ロック1800に類似する方向ロック1820を示す。したがって、同じ又は対応する構成要素又は特徴を示すために同じ参照符号又は文字が使用される。方向ロック1820は、方向ロック1820のロック力を制限するためにコア部材1804に特定の力が印加されると、コア部材1804を解放するか、コア部材1804の動きに対する抵抗を低減する解放機構1822を組み込む。つまり、解放機構1822により、ロックワッシャ1802は、ロック位置から、コア部材1804に対し垂直な状態に近い又は解放位置に近い二次ロック位置へと動くことが可能となるが、これはロックワッシャ1802をロック位置へと動かす傾向にある方向に印加された力に応答するものである。したがって、解放機構1822は方向ロック1802のロック機能のロック力又は降伏力にある程度影響を及ぼす。
【0147】
示される配置においては、解放機構1822はばね1824などの付勢部材又は機構を含む。ばね1824はロックワッシャ1802を(ハウジング1806の第2の表面1816の一部とともに)ロック位置にて支持し、予想される力又は通常動作上の力に応じてコア部材1804とハウジング1806との間の相対運動を阻止する又は妨げる。好ましくは、ばねの特性(例えば、ばね定数、予圧等)は、ロックワッシャ1802が所望の力の大きさに応じ、ばね1824の付勢力に反して二次ロック位置の方に又は二次ロック位置へと動くことができるように選択される。力の大きさは、予想される力又は通常動作上の力(吹出力、ホース引張り力及び予備力の1つ又は複数を含む)よりも大きくすることができる。示される配置においては、ロックワッシャ1802は、ロック位置にあるばね1824の実質的に逆側のハウジング1806の第2の表面1816に接しており、二次ロック位置の方に動く際にその枢動面又は枢動箇所1826を中心に枢動する。枢動箇所1826とばね1824の位置(又は任意の他の付勢機構の有効位置)との間の距離は、ロックワッシャ1802のレバー長と呼ぶことができ、ロックワッシャ1802をロック位置から二次ロック位置に向かって動かすのに必要な負荷を左右し得る。第2の表面1816の部分1828は二次ロック位置に向かう方向のロックワッシャ1802の動きを制限する停止部を画定し得る(及びいくつかの構成においては、二次ロック位置を画定し得る)。示される配置においては、停止部分1828は枢動箇所1826の実質的に逆側及び/又はばね1824の近傍に配置されている。
【0148】
方向ロック機構1800の作動長、ロック強度及び耐久性に影響するいくつかの特性、特徴又は寸法(例えば、材料又は幾何学的形状/比率)がある。これらのいくつかとしては、相対的な構成要素間の離間距離(例えば、ロックワッシャ1802からコア部材1804まで又はコア部材1804からハウジング1806までなど)、ロックワッシャ1802とコア部材1804との間の接触面積、ロック壁1814若しくはロック表面1816の角度、又は解放機構1822に関連する力及びレバー長が挙げられ得る。いくつかの構成においては、ロックワッシャ1802とコア部材1804との初期係合を促進するために摩擦促進部が用いられる。摩擦促進部は初期ロック作動を向上するために用いられ得る。摩擦促進部は、ロックワッシャ1802とコア部材1804との間の増加した摩擦を提供するための軟質材料の使用、ハウジング1806内のロックチャンバの解放壁1810上のわずかに角度を成した解放表面1812の使用、又はロックワッシャ1802の穴とコア部材1804との間の精密公差の使用を含むが、これらに限定されない任意の適切な技法を用いて得られるいずれかとすることができる。いくつかの構成においては、コア部材1804は約0.1mm~約8mmの直径若しくは断面寸法又は任意の値若しくはその範囲内の部分範囲を有し得る。いくつかの構成においては、コア部材1804は8mmを超える直径又は断面寸法を有してもよい。
【0149】
図34は、角度を成したロック部材(例えば、ロックプレート又はロックワッシャ1802)を用いる方向ロック(例えば、方向ロック1800及び1820)のスリップ力とロック角度との間の関係を示す。示されるように、他の要素が等しければ、コア部材1804とハウジング1806との間の相対運動を得るのに必要なスリップ力はロック位置にあるロックワッシャ1802の角度Θが増加するにつれて増加する。少なくともいくつかの構成においては、この関係は略線形である。例として、
図34のグラフは、10度~25度のロック角度に対するスリップ力の変化を示す。スリップ力は10度での約2~2.5ニュートンから25度での約9ニュートンまで変化し、それら端点間には略線形の関係がある。ロック角度とスリップ力との間の関係は方向ロックの望ましいロック特性及び/又はスリップ特性を得るために用いることができる1つの要素である。
図34に示されるロック角度は単に例示である。いくつかの構成においては、ロック角度はちょうどゼロ度を超える角度から約45度以上まで変化させることができる。いくつかの構成においては、ロック角度は
図34のグラフに示されるように約10度~約25度であるか、その範囲内の任意の特定の値又は部分範囲である。方向ロック1800又は本明細書中に記載される任意の他の類似の機構のスリップ力又は最大ロック力は(例えば、吹出力又は通常の若しくは予想外力に起因する)ロックの望ましくないスリップ動作を阻止するほど十分なものとすることができるが、(例えば、インターフェースアセンブリの取り付けを可能にするための)ロックの所望のスリップ動作が妨げられるほど大きなものではない。本明細書中に記載されるように、スリップ力はヘッドギア取り付けの特定の動作エンベロープを超えるように選択され得るが、動作エンベロープは数ある要素の中でも特に、使用されるインターフェースの種類及び/又は治療の種類に関連し得る。いくつかの構成においては、スリップ力は動作エンベロープを予備量だけ超える。いくつかの構成においては、スリップ力は約65ニュートン以下、約45ニュートン以下、約25ニュートン以下、約9若しくは10ニュートン以下、又はこれら範囲内の任意の特定の値若しくは部分範囲とすることができる。いくつかの構成においては、スリップ力は少なくとも約0.5ニュートンとされ得る。いくつかの構成においては、スリップ力は少なくとも約0.5ニュートン、及び約9、10、25、45若しくは65ニュートン以下、又はこれら範囲内の任意の特定の値若しくは部分範囲とすることができる。いくつかの構成においては、スリップ力は約0.5ニュートン~約65ニュートン、約1ニュートン~約45ニュートン、約2ニュートン~約25ニュートン、又は約2.5ニュートン~約9若しくは10ニュートン、又はこれら範囲内の任意の特定の値若しくは部分範囲とすることができる。
【0150】
図35は、付勢機構1824の変化により得られるスリップ力の変化を示す。他の特性が等しければ、スリップ力は、ロック位置から二次ロック位置に向かって動くロックワッシャ1802に対する抵抗を増加又は減少する付勢機構1824の特性を変えることによって変化させることができる。例えば、付勢機構がばね1824を含む場合、ばね定数及び/又は予圧は方向ロック1800、1820のスリップ力を変化させるように選択することができる。
図35は、4つの異なるスリップ力(例えば、約2ニュートン、約4ニュートン、約8ニュートン及び約10~11ニュートン)を生じる付勢機構1824の4つの異なる変化を示す。このようなスリップ力は単に例であり、任意の適切なレベルに調整することができる。
図33には圧縮コイルばねを示すが、他の適切な種類のばね又はばね様要素(付勢機構の中でも特に)もまた使用され得る。加えて、使用者の好みに適応させるなどのためにスリップ力の製造後の調節を可能にするために付勢機構1824は製造後に(例えば、介護者又は使用者によって)調節可能とされ得る。例えば、ばね1828にかかる予圧を調節する調節機構が提供され得る。
【0151】
図36及び
図37は、要求に応じた抵抗を示す自己フィット式インターフェースアセンブリ1850を示す。示されるインターフェースアセンブリ1850はアセンブリの第1部分とアセンブリの第2部分との間の機械的接着を用いた方向ロック機能を提供する。好ましくは、インターフェースアセンブリ1850は、
図7及び
図8のものなど、インターフェースアセンブリ1850の2つの部分が相互作用し、インターフェースアセンブリ1850の伸長に応じた第1の力と、第2の、好ましくは、より低い後退力とを提供するという点で本明細書中に記載されるインターフェースと類似の手法で構成される。しかしながら、
図36及び
図37のインターフェースアセンブリ1850は、1つ又は両部分に、機械的接着、機械的インターロック、ファンデルワールス(Van der Waals)力又は他の分子間力を提供する微細構造を用いてそのような方向ロッキングを提供することが好ましい。
【0152】
図36を参照すると、インターフェースアセンブリ1850は、好ましくは、インターフェース又はマスク部分1852と、ヘッドギア部分1854とを含む。マスク部分1852は、好ましくは、使用者の顔に接し、使用者の顔と少なくとも実質的なシールを形成する。ヘッドギア部分1854は使用者の頭部の周りに延在し、使用者の顔上でマスク部分1852を支持する。
図37を参照すると、ヘッドギア部分1854の長さを変えられるように互いに対して可動である第1部分1856及び第2部分1858を有するインターフェースアセンブリ1850の一部が示される。部分1856及び部分1858はそれぞれ、マスク部分1852若しくはヘッドギア部分1854の1つ若しくは複数、又はインターフェースアセンブリ1850の任意の他の構成要素によって画定され得る。いくつかの構成においては、部分1856及び部分1858は両方ともヘッドギア部分1854の一部によって画定される。
【0153】
好ましくは、部分1856及び部分1858の1つ又は両方は、部分1856、1858が互いに対して選択的に係合し、方向ロック力を提供することを可能にする微細構造1860を含む(
図38及び
図39)。好ましくは、ロック力は、吹出力、ホース引張り力、他の外力及び予備力の1つ又は複数などの予想される力又は通常動作上の力F
Nに応じ、部分1856、1858の相対運動を阻止する又は妨げる、あるいは、ヘッドギア部分1854の現在の長さを維持するのに十分なものである。ロック力は、インターフェースアセンブリ1850が(使用者に装着されたときなど)一般的な円形とみなされる又は一般的な円形である場合に、部分1856と部分1858との間の相対運動の方向に略垂直な方向に、又は略半径方向に印加される力F
Pに左右され得る。したがって、ロック力は使用者の頭部が部分1856、1858のうち内側のものに対し外向きの力を印加した場合に増加され得る。
【0154】
他のインターフェースアセンブリとともに上記したように、インターフェースアセンブリ1850は、部分1856、1858にかかる垂直力又は半径方向力がない場合に伸長に対する第1のレベルの抵抗を示し、部分1856、1858にかかる垂直力又は半径方向力の存在下で伸長に対する第2の、好ましくはより高いレベルの抵抗を示し得る。したがって、ヘッドギア部分1854は第1のレベルの抵抗にて伸展させることができ、その後、使用者の頭部にフィットさせることができる。フィットすると、ヘッドギア部分1854は伸長に対する第2の、より高いレベルの抵抗を提供することができる。この抵抗は、ヘッドギア部分1854を伸張しようとする吹出力又は他の力に抵抗するように機能する。好ましくは、ヘッドギア部分1854の後退に抵抗しようとする力(ゆえに、使用者の頭部に印加される力)は少なくとも第2のレベルの抵抗よりも低く、且つ使用者の快適性を向上させるため、伸長に対する第1のレベルの抵抗よりも低くてもよい。
【0155】
微細構造1860は伸長及び後退のいずれか又は両方における部分1856、1858の相対運動に対し所望のレベルの抵抗を提供するための任意の適切な配置のものとすることができる。好ましくは、いくつかの構成においては、微細構造1860は方向性を有するか、相対運動の方向に応じて異なるレベルの抵抗を生じる。
図38に示されるように、1つの好適な微細構造配置1860は、マイクロファイバー又はナノファイバーなどの、エレクトロスピニング法及び高分子材料のような任意の適切な材料を用いて作製され得る複数の繊維を含み得る。他の適切な方法及び/又は材料も使用してよい。繊維は所望であれば、方向性特性を提供するような適切な手法で配向され得る。
【0156】
図39に示されるように、別の適切な微細構造は、例えば、複数の隆起、歯又は鱗状の突起1862などの複数の幾何学的形状を含み得る。突起1862はそれぞれ、基部1864と、基部1864の略反対側の縁端1866と、を有し得る。各部分1856、1858ではそのような突起1862を用いることができる。あるいは、1つの部分1856、1858で突起1862を用いることができ、他の部分1856、1858では突起1862への係合に適した他の種類の相補的構造を用いることができる。好ましくは、突起1862は部分1856、1858に対し、相対運動に対する方向ロック又は方向性抵抗を提供するように配向される。例えば、突起1862は、突起1862が支持される表面に対して及び/又は動きの方向に対して傾角で配向され得る。したがって、1つの方向の動きに応じて、突起1862は低いレベルの抵抗を有して互いの上をスライドすることができ、もう一方の方向への動きに応じて、突起1862は互いに係合して相対運動を阻止するか妨げ、ロック機能を提供することができる。突起1862は任意の適切な手法(例えば、1つ又は複数の列)で配置され得る。突起1862は、任意の適切な材料(例えば、ポリマー)から、任意の適切なプロセス(例えば、微細加工技術又は微細成形技術)によって作製され得る。
【0157】
図40~42は、自己フィット式インターフェースアセンブリに用いることができる可変方向特性を有する別の調節機構1900を示す。示される調節機構1900は方向ロック機能を提供するため、方向ロッキング機構、又は単に、方向ロックと呼ぶことができる。
図40~42の方向ロック1900は、一般に、ロック構成要素又は部材1902(例えば、ロックプレート)が第1の、低抵抗すなわち解放位置と、第2の、高抵抗すなわちロック位置との間において可動であるという点で
図16、21、32及び33の機構の動作原理に類似する。
図40~42の方向ロック1900に関して記載されない特徴又は詳細は
図16、21、32及び33の機構の対応する特徴と同じ又は類似とされ得る。あるいは、別の適切な構成のものとすることができる。
【0158】
方向ロック1900は好ましくは、上記機構のコア部材と同様に機能する平坦ストラップ1904の形態のコア部材を含む。方向ロック1900は、好ましくは、また、上記機構のハウジングに構造及び機能が類似し得る筐体又はハウジング1906を含む。したがって、ロックプレート1902は第1の位置と第2の位置との間で動くためにハウジング1906内で支持される。好ましくは、ハウジング1906は、ロックプレート1902を第1の位置で支持する第1の停止面1912を有する第1の壁1910を含む。第1の位置は好ましくは低抵抗すなわち解放位置である。ハウジング1906は好ましくは、また、ロックプレート1902を第2の位置で支持する第2の停止面1916を有する第2の壁1914を含む。第2の位置は好ましくは高抵抗すなわちロック位置である。
【0159】
好ましくは、ロックプレート1902は、ロックプレート1902の開口部又は穴がストラップ1904に略平行に又は整列して配置されるようにハウジング1906のロックキャビティ内において、第1の、低抵抗すなわち解放位置に配置されるストラップ1904の長手方向軸線に対し略垂直に配置される。好ましくは、ロックプレート1902は、ロックプレート1902の開口部又は穴がストラップ1904に対して傾角で配置されるようにハウジング1906のロックキャビティ内において、第2の、高抵抗すなわちロック位置に配置されるストラップ1904の部分の長手方向軸線に対して傾角で配置される。したがって、いくつかの構成においては、第1の停止面1912はハウジング1906のロックキャビティ(及び/又はストラップ1904が通過するハウジング1906の開口部)内に配置されたストラップ1904に対し略垂直とすることができ、第2の停止面1916はストラップ1904(及び/又はコア部材1904が通過するハウジング1906の開口部)に対して傾角Θで配置することができる。以下に記載されるように、第2の停止面1916に接しているときの第2の停止面1916又はロックプレート1902の角度は、ロックワッシャ1902がロック位置にあるときに所望の最大ロック力又は抵抗の大きさを得るように選択することができる。所望であれば、
図33の解放機構1822に類似する解放機構が設けられ得る。
【0160】
上記機構と同様に、ストラップ1904とハウジング1906との相対運動によってインターフェースアセンブリの長さ又は周囲を調節できるように、ストラップ1904は、関連インターフェースアセンブリの第1部分に結合され得るか、関連インターフェースアセンブリの第1部分を形成することができ、ハウジング1906はインターフェースアセンブリの第2部分に結合され得るか、インターフェースアセンブリの第2部分を形成することができる。有利には、ストラップ1904は1つ又は複数の特性に関して異方性である。例えば、ストラップ1904は、幅方向に曲がる又は曲げる場合の方が高さ方向に曲げる場合に比べてより可撓性がある。したがって、インターフェースアセンブリに支持を提供し、マスク部分の望ましくない動きを阻止するために、ストラップ1904は使用者の頭部に合致する方向に曲がることができるが、高さ方向に曲がることには抵抗する。加えて、ストラップ1904を含む方向ロック1900は、例えば、ヘッドギアストラップの側部、後部又は頂部部分などの、インターフェースアセンブリの、使用者の頭部に接する部分への使用に好適であり、おそらくは略円筒状コア部材を有するインターフェースに比べてより高い快適性を有する。しかしながら、方向ロック1900は、使用者の頭部及びマスク部分に接する部分の間のヘッドギアの1つ又は両方の側部などのインターフェースアセンブリの他の部分又は位置にも使用され得る。
【0161】
示される方向ロック1900は、方向ロック1900の感度を増加するためにロックプレート1902の動作を容易にする作動機構1920を含む。このような作動機構1920により、ロック位置若しくは解放位置への又はロック位置若しくは解放位置からのロックプレート1902の動作を速め、方向ロック1900のロック位置と解放位置との間における移行に必要な相対運動の時間又は距離を向上することができる。加えて又は代替的に、作動機構1920では、望ましいレベルの機能性を維持しつつも構成要素の公差を大きくすることができ、それによって方向ロック1900のコストが低減されるように、構成要素寸法(例えば、ロックプレート1902又はストラップ1904の相互作用部分の寸法)の変化に対する方向ロック1900の感度を低下させることができる。
【0162】
いくつかの構成においては、ロックプレート1902及びストラップ1904の1つは、ロックプレート1902及びストラップ1904のもう一方との係合を容易にする係合機能部1922を含み得る。示される配置においては、ストラップ1904は、ロックプレート1902との摩擦係合を容易にする係合機能部1922を含む。係合機能部1922は、ロックプレート1902との係合を強化する特定の寸法、表面特徴又は材料を有する、ストラップ1904の部分を含み得る。例えば、
図42を参照すると、係合機能部1922の幅はストラップ1904の残部の幅よりも大きくすることができる。加えて又は代替的に、係合機能部1922は、ロックプレート1902とストラップ1904との間の摩擦係合を強化するために摩擦特性をストラップ1904の残部に対して向上させた異なる材料又は表面仕上げを含み得る。示される配置においては、係合機能部1922は、適切なプラスチック材料で作製され得るストラップ1904の残部に対して固定されたシリコーン材料部分である。しかしながら、他の適切な材料もまた係合機能部1922又はストラップ1904の残部に用いられ得る。係合機能部1922の相互作用ローブとストラップ1904の残部との間の機械的干渉により異なる材料の分離が阻止される。係合機能部1922を有するストラップ1904の他の適切な配置、材料又は構造もまた用いられ得る。
【0163】
好ましくは、係合機能部1922は、ロックプレート1902の、主要ロック機能を提供する表面とは異なる表面に作用する。例えば、係合機能部1922はストラップ1904の残部に対して増加した幅を有するため、実質的な又は主要ロック機能が頂部表面及び底部(幅)表面によって得られる一方で係合機能部1922は実質的に又は主としてストラップ1904の側部(高さ)表面に作用する。ロック機能性と係合機能性との少なくとも一部分離により、それぞれを別個に最適化することが可能となる。したがって、方向ロック1900の感度は所望のレベルの感度を得るために変えることができ、且つロック力は互いに大きな負の影響を及ぼすことなく所望のレベルのロックを得るために別個に変えることができる。
【0164】
図43~45は、本明細書中に記載される他のインターフェースアセンブリに類似する自己フィット機能を有するインターフェースアセンブリ1950を示す。
図43~45は、装着プロセス内の種々の位置にあるインターフェースアセンブリ1950を示す。
図43は、使用者に一部フィットしたインターフェースアセンブリ1950を示す。
図45は、使用者に完全にフィットしたインターフェースアセンブリ1950を示し、
図44は、
図43及び
図45の位置の間にあるインターフェースアセンブリ1950を示す。
【0165】
一般に、インターフェースアセンブリ1950は、マスクなどのインターフェース部分1952及びヘッドギア部分1954を含む。ヘッドギア部分1954は、使用者の頭部に接し、且つ1つ又は複数のストラップを含む後部部分1956を含み得る。示される配置においては、後部部分1956は、複数のストラップ、つまり、頭部の後部周囲を通るストラップと、頭部の頭頂部を通るストラップとを含む。しかしながら、任意の適切な数のストラップを提供することができる。ヘッドギア部分1954は、また、後部部分1956とマスク1952との間に延在し、且つ好ましくは後部部分1956とマスク1952とを結合する一対のサイドストラップ1958を含む。示される配置においては、各サイドストラップ1958は、自己フィット機能を提供するかそうでなければ容易にする方向ロック機構1960の一部又は全てを含む。マスク1952は方向ロック機構1960の一部を担持するか、又は含んでもよい。他の配置においては、インターフェースアセンブリ1950の他の部分(例えば、ヘッドギア部分1954の後部部分1956及び/又はマスク1952)はサイドストラップ1958に加えて又はサイドストラップ1958の代わりに方向ロック機構の一部又は全体を含み得る。各サイドストラップ1958は構造及び動作が実質的に類似し得る又は同一とされ得る。
【0166】
他のインターフェースアセンブリに関して上述したように、好ましくは、インターフェースアセンブリ1950は、インターフェースアセンブリ1950が適用のため伸張し、特定使用者の頭部サイズに合わせて調節するために後退し、その後、CPAP吹出力、ホース引張り力及び予備力の1つ又は複数などの予想される力又は通常の力に応じた伸長を阻止する又は妨げるためにロックを可能にするという点で自己フィット機能又は方向機能を提供する。好ましくは、インターフェースアセンブリ1950によって使用者の頭部に印加される保持力がインターフェースアセンブリ1950の伸張を阻止するロック力よりも低くなるように、方向ロック1960は、インターフェースアセンブリ1950、ヘッドギア部分1954又はサイドストラップ1958を後退させようとする力に対してはより低い抵抗を有し、インターフェースアセンブリ1950、ヘッドギア部分1954又はサイドストラップ1958を伸張しようとする力に対してはより高い抵抗を有する。本明細書中に
図2~5を参照して記載したように、いくつかの構成においては、インターフェースアセンブリ1950では保持力は動作エンベロープを下回り、ロック力は動作エンベロープを上回る。
【0167】
図46~48は、
図43~45のインターフェースアセンブリ1950から分離されたサイドストラップ1958を組み込む方向ロック機構1960を示す。方向ロック機構1960は、全般的に、ロック部又はロック1962と、コア部材1964と、弾性ストラップ1966とを含む。弾性ストラップ1966及びコア部材1964の少なくとも一部はサイドストラップ1958の少なくとも一部を形成する。ロック1962はサイドストラップ1958の一部を形成することができ、好ましくは、マスク1952に取り付けられるか、マスク1952の一部とされ得る。
【0168】
コア部材1964は一端が弾性ストラップ1966に結合され得る。好ましくは、コア部材1964はロック1962内を通る。コア部材1964の自由端は導管又はチューブ1968内に配置され得る。導管又はチューブ1968はマスク1952内に配置され得るか、マスク1952によって支持され得るか、マスク1952によって形成され得るかである。弾性スリーブ1966は、好ましくは、ロック1962内において、コア部材1964の大きい方の部分がチューブ1968内に配置されるような方向にコア部材1964を押そうとする力を提供する。したがって、弾性スリーブ1966(又は一対のサイドストラップ1958を想定する一対の弾性スリーブ1966)は、好ましくは、インターフェースアセンブリ1950を後退させようとする力の一部又は全てを提供する。好ましくは、コア部材1964はロック1962内において大きな座屈なしで押されるのに十分な剛性又は柱強度を有する。いくつかの構成においては、弾性ストラップ1966に加えて又は弾性ストラップ1966の代わりに後退力を提供するための他の後退機構を提供することもできる。例えば、ロック1962内においてコア部材1964を引くために、コア部材1964の自由端に付勢要素を結合することができる。これにより、全ての後退力を提供することができる(この場合、ストラップ1966は省略され得る又は弾性でないものとされ得る)、あるいは、弾性ストラップ1966と組み合わせて動作することができる。いくつかの構成においては、サイドストラップ1958の両方に後退力の一部又は全体を付与するため、付勢要素は両コア部材1964の自由端を結合することができる。更に別の構成においては、関連するヘッドギアは後退力を付与しなくてもよい。例えば、ヘッドギアは使用者の頭部にフィットさせるために所望の周囲へと手動で後退させてもよい。
【0169】
ロック1962は
図16、21、32、33及び40~42のものなどの他の方向ロック機構を参照して上述した一般原理に従い動作する。したがって、
図46~48とともに記載されない詳細についてはそれら機構の同じ又は対応する特徴に類似する又は同一であると想定され得るか、任意の他の適切な機構のものとされ得る。
【0170】
ロック1962は、好ましくは、ハウジング1970及びロック部材又はロック要素1972を含む。示される機構においては、ロック要素1972は、ハウジング1970の少なくとも一部、及び好ましくは、コア部材1964がハウジング1970内を通る開口部を画定する部分を有する単一部品の一体構造として形成される。ハウジング1970は、ロック要素1972を、例えば、収容若しくは保護するための、又はマスク1952及び/若しくは弾性ストラップ1966への取り付けを容易にするための更なる部分を有してもよい。
【0171】
ロック要素1972は本明細書中の別の箇所に記載されているロック部材(例えば、ロックワッシャ及びロックプレート)と類似の手法で機能する。つまり、好ましくは、ロック要素1972はコア部材1964が通る開口部を画定する。ロック要素1972は、ハウジング1970に対するコア部材1964の動きに対する抵抗を変えるために解放位置とロック位置との間において動くことができる。好ましくは、弾性ストラップ1966の長さを伸張しようとするコア部材1964の動きに対する抵抗は弾性ストラップ1966の長さを後退させようとするコア部材1964の動きに対する抵抗よりも大きい。したがって、弾性ストラップ1966(又はインターフェースアセンブリ1950の他の構成要素)によって提供される後退力は患者の快適性を向上させるために比較的小さい又は比較的低規模のものとすることができ、ロック要素1972により、弾性ストラップ1966によって生成される力に依存することなくインターフェースアセンブリ1950が伸張に対し抵抗するのを可能にすることができる。したがって、弾性ストラップ1966の保持力は吹出力又はインターフェースアセンブリ1950を伸張しようとする他の外力に対処する必要なく患者の快適性に合わせて調整することができる。
【0172】
本明細書中の別の箇所に記載されている機構と同様に、好ましくは、コア部材1964が通る開口部を画定する又は取り囲むロック要素1972の表面はロック位置においてコア部材1964に係合し、コア部材1964の動きに対し、弾性ストラップ1966の伸張を阻止する又は妨げるようなレベルの抵抗を提供する。しかしながら、ハウジングの表面によって制御される代わりに、ロック要素1972は湾曲部又は一体成形ヒンジ1974によってハウジング1970に結合され、ロック要素1972の動きは一体成形ヒンジ1974の特性によって制御される。つまり、ロック要素1972及び一体成形ヒンジ1974はハウジング1970から延出し、自由端を有する湾曲アーム部によって画定される。ロック要素1972の弛緩位置は解放位置を画定し得る。解放位置はロック要素1972を通過するコア部材1964の存在によって影響される場合がある。つまり、解放位置はコア部材1964のない組み立てられていない状態にあるロック要素1972の弛緩位置と同じにならない場合がある。弾性ストラップ1966の長さを伸張しようとする方向への(示される向きでは左)コア部材1964の動き又は動きの試みにより、ロック要素1972はロック位置に向かって方向を変え、弾性ストラップ1966の伸張を阻止する又は妨げる。一体成形ヒンジ1974の寸法、材料特性又は他の特徴はロック1962のロック力に影響する。いくつかの構成においては、本明細書中の別の箇所に記載されるように(例えば、
図34及び関連の開示を参照のこと)ロック力はロック要素1972の角度に関係する。
【0173】
いくつかの構成においては、ロック要素1972が解放位置からロック位置へと移行するにつれてコア部材1964の限定された動きが生じ得る。したがって、弾性ストラップ1966(又は他の付勢要素)によって提供される後退力は、好ましくは、ロック要素1972がロック位置に移動したことによりコア部材1964が動いたのち、マスク1952又は他のインターフェースの少なくとも実質的なシールを維持するのに十分な力を提供する。好ましくは、ロック1962はコア部材1964が移動できる距離が比較的短くなるように構成される。
【0174】
図46~48は、種々の位置にある方向ロック機構1960を示す。
図46は、弾性ストラップ1966が後退し、コア部材1964の最大量がチューブ1968内に押し込まれている、弛緩位置又は静止位置にある方向ロック機構1960を示す。ロック要素1972は解放位置にある。
【0175】
図47は、装着プロセスの取付フェーズ時に生じ得る伸長位置にある方向ロック機構1960を示す。弾性ストラップ1966の伸長により、ロック要素1972がロック位置に又はロック位置の方に移動することによりロック1962によって提供される抵抗に反して、最小量のコア部材1964がチューブ1968内に配置されるようにコア部材1964の一部がチューブ1968から引き出されている。伸長位置に到達し、ハウジング1970とコア部材1964との間の相対運動が終了すると、ロック要素1972は、一体成形ヒンジ1974のばね力、コア部材1964とロック要素1972の開口部との相対的な比率、及びコア部材1964とロック要素1972との間の摩擦力などの種々の要素に応じて、ロック位置に留まっても、解放位置に戻っても、ロック位置と解放位置との間のどこかに配置されてもよい。
【0176】
図48は、使用者の頭部に装着されたときなどの、弛緩位置と伸長位置との間の長さを有する、動作位置にある方向ロック機構1960を示す。伸長位置と比較すると、動作位置においては、弾性ストラップ1966の保持力により、解放位置にあるロック要素1972によって提供される、好ましくは伸長に対する抵抗よりも大幅に低い抵抗に反し、より大きな量のコア部材1964がチューブ1968に押し込まれている。上述のように、ロック要素1972はロック位置、解放位置にあり得る、あるいは、ロック位置と解放位置との間のどこかに配置してもよい。しかしながら、方向ロック機構1960の伸長又は方向ロック機構1960を伸長しようとする力に応じて、ロック要素1972はロック位置へと移動するかロック位置に留まり(初期位置に応じて)、予想される力又は通常動作上の力による、伸長に対する抵抗を提供する。方向ロック機構1960は、例えば、インターフェースアセンブリ1950の取り外しを可能とするために使用者が印加した力に応じて更に伸長することができる。
【0177】
図49~51は、
図46~48の方向ロック機構1960の弾性ストラップ1966の一部を示す。示される弾性ストラップ1966は管状構造のものであり、且つコア部材1964を収容することができる内部通路を含む。したがって、コア部材1964は使用者又は他の物体を摩擦することなく弾性ストラップ1966内において移動することができる。好ましくは、弾性ストラップは任意の好適な種類の織り方の任意の適切な材料でできた複数の個々のより糸又は糸(繊維)の編組である。個々の繊維は、
図49に示されるように、隣接する繊維又は繊維の群が互いに特定の初期角度を成した配向を有するように織られ得る。好ましくは、初期角度を成した配向により、
図50及び
図51にそれぞれ示されるように、編組が初期角度を成した配向に対して圧縮及び伸長可能とすることができる。したがって、初期角度を成した配向は中間角度を成した配向と表することができる。初期配向に対する圧縮及び伸長の量は同じとすることも、互いに異なるものとすることもできる。
【0178】
好ましくは、上述のように、ストラップ1966は、圧縮位置に向かって又は圧縮位置へとストラップ1966を付勢する付勢機構を含む。したがって、ストラップ1966は弾性ストラップ1966と呼ばれる。付勢機構は、1つ又は複数の弾性線維を編組内に組み込んだものなどの任意の適切な構造のものとすることができる。好ましくは、最大伸長時における付勢機構の破損を回避するために編組の最大伸長量は付勢機構の最大伸長量(又は他の動作範囲)よりも小さくなるように選択される。いくつかの構成においては、編組により、付勢機構の最大伸長量が塑性変形に達するのを制限し、弾性線維の弾性伸長などの付勢機構の動作の弾性範囲内に伸長動作範囲が維持される。編組により、コア部材1964の動きに対するエンドストップを提供し、コア部材1964がロック1962内に引き込まれるのを防止することもできる。つまり、好ましくは、編組が完全に伸長した状態において、コア部材1964の一部はロック1962内に留まる。
【0179】
図52~54を参照すると、いくつかの構成においては、製織工程時に1つ又は複数の弾性線維1980を編組に組み込むことができる。
図52は、編組弾性ストラップ1966を作製するための機械及びプロセスの概略図である。機械は、半径方向突起物又は歯間に画定される複数のキャビティを有する複数のスピンドル1982を含む。隣接するスピンドル1982は矢印によって示されるように反対方向に回転し、好ましくは比較的非弾性繊維又は繊維の群1984を1つのスピンドル1982から次のスピンドル1982へと送る。別の繊維又は繊維の群1984は1つのスピンドル1982から次のスピンドル1982へと反対方向に移動し、2本の繊維又は繊維の群1984を織り合わせる。
図53に示されるように、弾性線維1980が編組に組み込まれるように弾性線維1980はスピンドル1982の中心に挿通され得る。
図54は、管状部材を長手方向に切断し、平らに置いた場合の弾性ストラップ1966を示す。
【0180】
図55は、インターフェースアセンブリ1950、本明細書中に開示される他のインターフェースアセンブリ、又は任意の他の適切なインターフェースとともに使用され得るヘッドギアアセンブリ1954の後部部分1956を示す。
図55に示されるヘッドギアアセンブリ1954の後部部分1956は、ストラップの長さ全体に負荷をかける区分化されていないストラップとは対照的に、負荷を分離する又は使用者の頭部に作用する不均一負荷を提供する断続した又は区分化されたストラップの形態の下後部セクション1990を含む。つまり、下後部セクション1990は、好ましくは断続している及び/又は間隔を空けて配置され、1つ若しくは複数のストラップ又はレース又はセクション1990の弱い部分などの、カップリング1992によって結合することができる第1部分1990a及び第2部分1990bを有する。セクション1990の長手方向軸線(セクション1990の長さ)に対する第1部分1990a及び第2部分1990bの相対的位置を実質的に固定するが、第1部分1990a及び第2部分1990bの、長手方向軸線に対する垂直方向又は回転方向の相対運動を可能とし得るために、カップリング1992は比較的又は実質的に非弾性とすることができる。そのような機構は関節式コネクタと呼ばれ得る。好ましくは、第1部分1990a及び第2部分1990bは使用者の頭部の後頭骨上又はその近傍に係合する後頭パッドを形成する。第1部分1990aと第2部分1990bとの間のスペースは全般的に後頭隆起に周方向に配置することができ、下後部セクション1990は高さ方向において後頭隆起にあり得るかその下方にあり得る。好ましくは、後部部分1956は、また、使用者の頭部の頭頂部上に延在する上後部セクション1994を含む。下後部セクション1990の端部と上後部セクション1994の端部は使用者の各耳の略上の位置で互いに結合する。
【0181】
図56は、
図55の後部部分1956に類似するヘッドギアアセンブリの後部部分1956を示す。したがって、記載されない
図56の後部部分1956の詳細については
図55の後部部分1956の対応する要素と同じであるか類似すると想定され得る、あるいは、任意の他の適切な配置のものとされ得る。
図56の後部部分1956のカップリング1992は、弾性とすることも実質的に非弾性とすることもできる材料ストラップなどの関節式コネクタを含む。好ましくは、カップリング1992は、ストラップの長手方向軸線を中心とした第1部分1990aと第2部分1990bとの間の相対的な回転運動を可能にし、下後部セクション1990が使用者の頭部の形状、特に後頭骨形状により良く合うことが可能になる。
【0182】
有利には、
図55及び
図56の後部部分1956は使用者の快適性を提供する一方で、また、マスク又は他の患者インターフェースを使用者の頭部の所定の位置に固定する。断続的な下後部セクション1990により、後頭隆起に過度の圧力がかかることが回避される。そのような断続的な配置は同様に又は代替的に上後部セクション1994に設けることができる。
図55及び
図56のどちらの後部部分1956も、また、本明細書中に開示されるもののいずれかなどの1つ又は複数の方向ロックアセンブリを組み込むことができる。例えば、カップリング1992は方向ロックアセンブリとして構成され得る。方向ロックアセンブリは、また、下後部セクション1990及び上後部セクション1994のいずれか又は両方に組み込まれ得る。例えば、
図40~42の平坦ストラップ配置を第1部分1990a及び第2部分1990bのいずれか又は両方に組み込むことができる。
【0183】
図57及び
図58は、インターフェースアセンブリ1950及び
図43~56とともに記載した関連構成要素に実質的に類似し得るインターフェースアセンブリの2つの様式を示す。したがって、記載されない
図57及び
図58のインターフェースアセンブリ1950の後部部分の詳細についてはインターフェースアセンブリ1950の対応する要素及び
図43~56とともに記載した関連構成要素と同じであるか類似すると想定され得る。あるいは、任意の他の適切な配置のものとすることができる。各インターフェースアセンブリ1950においては、各サイドストラップ1958(方向ロックを組み込むことができる、又は固定された長さとされ得る)は、使用者の耳の近傍に位置する箇所1996においてヘッドギアアセンブリ1954の後部部分1956に結合されている。好ましくは、箇所1996は、耳の前方に、且つ外耳が頭部に接合される上方位置(外耳の基部の頂部)に(例えば、略並んで)又はその近傍にある。サイドストラップ1958は箇所1996からマスク1952又は他のインターフェースまで延在する。
図57のインターフェースアセンブリ1950では、インターフェースアセンブリ1950の各側にある単一サイドストラップ1958は箇所1996からマスク1952まで延在する。
図58のインターフェースアセンブリ1950では、インターフェースアセンブリ1950の各側にある一対のサイドストラップ1958が箇所1996からマスク1952上の離間した位置まで延在して三角形配置を提供する。三角形配置は少なくともいくつかの場合においてマスク1952の安定性を増加する。好ましくは、上ストラップと下ストラップとの間で負荷が分離されるようにサイドストラップ1958の後方突起はヘッドギアアセンブリ1954の後部部分1956の上ストラップと下ストラップとの間を通る。このような配置の例及び更なる詳細については全体が参照により本明細書中に組み込まれる本出願人の米国特許出願公開第2013/0074845号明細書に開示されている。上述のように、所望であれば、本明細書中に記載されるものなどの
図57及び
図58のインターフェースアセンブリ1950の任意の適切な位置に1つ又は複数の方向ロックが組み込まれ得る。
【0184】
上述のヘッドギア実施形態のいずれにおいても、更なる安定性を提供するために、頭頂部ストラップ又は更なるバックストラップなどであるがこれらに限定されない更なるストラップが含まれ得る。
【0185】
図59は、
図46~48のロック機構1962に実質的に類似するロック機構1962を示す。したがって、記載されない
図59のロック機構1962の詳細は
図46~48のロック機構1962の対応する要素と同じであるか類似すると想定され得る。あるいは、任意の他の適切な配置のものとされ得る。
図59のロック機構1962は、方向ロック技術を様々な呼吸マスク又は他の使用者インターフェースに容易に組み込むことを可能にするモジュール式の設計である。
【0186】
ロック機構1962は、ハウジング又は本体部分1970と、ロッキング要素1972と、ロッキング要素1972を本体部分1970に結合する一体成形ヒンジ1974とを含む。本体部分1970は、第1端部部分2000及び第2端部部分2002を含む。第1端部部分2000と第2端部部分2002との間に略U字形連結ブリッジ2004が延在し、第1端部部分2000と第2端部部分2002との間に、ロッキング要素1972を収容するためのスペースを提供する。好ましくは、各端部部分2000、2002は略管状又は円筒状の形状であり、コア部材を収容する長手方向の通路を画定する。ロッキング要素1972は、また、コア部材の通路を可能とする穴2006を含む。好ましくは、端部部分2000、2002、連結ブリッジ2004、ロッキング要素1972及び一体成形ヒンジ1974は一体構造のものである。
【0187】
図60は、マスク1952などの患者インターフェースアセンブリに組み込まれた
図59のロック機構1962を示す。示されるマスク1952は、ロック機構1962を受け入れるポケット2012を画定する壁2010を含む。壁2010は、雄/雌カップリングなどの、ロック機構1962の端部部分2000、2002を受け入れる凹部又は開口部を含み得る。示される配置においては、端部部分2000、2002は、マスク1952のメス部分(例えば、凹部又は開口部)に受け入れられ得る雄部分を画定する。したがって、壁2010及び/又はポケット2012はロック機構1962を所定の位置に保持することができ、且つ本体部分1970に更なる支持を提供することができる。換言すると、壁2010はロック機構1962の構造上のハウジング又は筐体として機能し得る。第1端部部分2000、マスク1952又はその双方は弾性ストラップなどのストラップ1966に結合するように構成され得る。第2端部部分2002、マスク1952又はその双方は、コア部材1964の自由端部を収容するチューブ1968を支持するように構成され得る。好ましくは、マスク1952はチューブ1968を収容するように構成されているが、これには、チューブ1968を受け入れる(又は一体型チューブを有する)ように特に構成されること、あるいは、単にチューブ1968の存在に適応すること(チューブ1968を受け入れるための十分な開放空間又は利用可能な空間を持つなど)が含まれ得る。
【0188】
本明細書中に開示されるインターフェースアセンブリでは略弾性部分及び略非弾性部分を用いることができ、略弾性部分及び略非弾性部分は協働してインターフェースアセンブリのループ又は周縁の少なくとも一部を画定する。弾性部分によりインターフェースアセンブリのサイズを変化させることが可能になる。非弾性部分はループ又は周縁の構造部分を形成し得る、あるいは、単に方向ロック目的で用いられ得る、あるいはその両方である。それにもかかわらず、多くの場合、インターフェースアセンブリの伸長又は伸張を可能とし、その後、後退時における非弾性部分の蓄積を可能とすることが必要である又は望ましい。例えば、
図43~54のインターフェースアセンブリでは、コア部材1964は弾性ストラップ1966の伸長とともに移動し、チューブ1968は伸長の瞬間量に応じてコア部材1964の余剰部分を受け入れるためのアキュムレータとして機能する。
【0189】
弾性/非弾性インターフェースアセンブリ又はヘッドギア機構を組み合わせたものの伸張及び蓄積を提供するための他の配置も可能である。
図61及び
図62は、ヘッドギア機構2050のループ又は周縁の一部を画定し、且つ第1端部2054及び第2端部2056を有する管状弾性要素2052を含むヘッドギア機構2050を示す。示される管状弾性要素2052はループの長さの約2分の1を成すが、他の構成においては、弾性管状要素2052はループのより小さな又は大きな割合を成すことができる。
【0190】
ヘッドギア機構2050は、また、ループの少なくとも一部を成し、好ましくは、弾性要素2052と並列で配置される略非弾性要素2060を含む。示される配置においては、非弾性要素2060はループの長さ全体を超えて延在する。つまり、好ましくは、非弾性要素2060の第1端部2062は弾性要素2052の第1端部2054に固定され、非弾性要素2060の第2端部2064は弾性要素2052の第2端部2056に固定されている。第1端部2062から、非弾性要素2060は弾性要素2052の外側を弾性要素2052の第2端部2056へと延在し、弾性要素2052の内部を通り、弾性要素の第1端部2054から出て、その後、上述のように、非弾性要素2060の第2端部2064が弾性要素2052の第2端部2056に固定される。したがって、非弾性要素2060の2つの重なった長さ又はセクションが弾性要素2052の外側に提供される。ヘッドギア機構2050は好ましくはヘッドギア機構2050をマスクなどのインターフェースに結合するコネクタ2066を含む。示される配置においては、コネクタ2066は管状部材であり、この管状部材内に、非弾性要素2060の両外部セクションが延在する。コネクタ2066は、例えば、マスクに留めること又は組み込むことを含む任意の適切な手法でマスクに結合することができる。
【0191】
長さを伸長するためには、非弾性要素2060のより多くを弾性要素2052の内部に引き込む(又は別の観点では、弾性要素2052が伸展して非弾性要素2060のより多くの部分を覆う)。その結果、非弾性要素2060(及びヘッドギア機構2050)の周囲の有効長が増加するように、非弾性要素2060の重なったセクションの長さが減少する。長さを後退させるためには、非弾性要素2060のより少ない部分が弾性要素2052内に配置され、非弾性要素2060の重なったセクションの長さが増加するように反対の動作を行う。比較的後退した位置及び比較的伸長した位置が
図63及び
図64に示される。
【0192】
方向ロックを所望する場合、本明細書中に記載されるもののいずれかなどの1つ又は複数の方向ロックをヘッドギア機構2050に組み込むことができる。
図65は、弾性要素2052の1つ又は両方の端部2054、2056にある方向ロックの1つの配置例を示す。方向ロックは端部2054、2056と非弾性要素2060との間の相対運動に作用し得る。
図66は、コネクタ2066のいずれかの端部にあり、非弾性要素2060とコネクタ2066との間の相対運動に作用するなどの、方向ロックの代替的な又は更なる配置を示す。
【0193】
図67及び
図68は、弾性要素2052及び非弾性要素2060を含む別のヘッドギア機構2070を示す。しかしながら、ヘッドギア機構2050が無端状のループ又はとぎれのない輪である一方で、ヘッドギア機構2070は、マスク2076などの患者インターフェースの各側部に結合され得る第1端部部分2072及び第2端部部分2074を有する断続設計である(
図68)。したがって、第1端部部分2072及び第2端部部分2074はそれぞれ、端部部分2072又は2074をマスク2076又は他のインターフェースに結合することを可能にする、例えば、フック又はクリップなどの係合部を画定し得る。しかしながら、断続設計の端部は患者インターフェースによって相互連結されているため、これら配置のそれぞれは使用者の頭部を実質的に取り囲むと考えられ得る。
【0194】
図67及び
図68のヘッドギア機構2070では、非弾性要素2060の外部セクションは、
図61及び
図62のヘッドギア機構2050と同様に互いに重なり、弾性要素2052の両側に固定される代わりに、折り返され、弾性要素2052の同じ側に固定されている。端部部分2072、2074のそれぞれは、固定することも自由(回転可能)な状態とすることもできるプーリ、又は非弾性要素2060の外部セクションの方向を反転するための別の適切な機構を含み得る。ヘッドギア機構2070の動作は、外部セクションの長さが、
図69に示されるように増加されてヘッドギア機構2070の長さが低減される、又は
図70に示されるように低減されてヘッドギア機構2070の長さが増加するという点でヘッドギア機構2050に実質的に類似する。加えて、ヘッドギア機構2070の全体的な長さが変化したことにより、より多くの又はより少ない非弾性要素2060が露出する又は弾性要素2052によって被覆される。
【0195】
方向ロッキングが所望される場合、本明細書中に記載されるもののいずれかなどの1つ又は複数の方向ロックをヘッドギア機構2070に組み込むことができる。
図71は、弾性要素2052の1つ又は両方の端部2054、2056にある方向ロックの1つの配置例を示す。方向ロックは端部2054、2056と非弾性要素2060との間の相対運動に作用し得る。
図72は、第1端部部分2072及び第2端部部分2074の1つ又は両方のいずれかなどにある方向ロックの代替的な又は更なる配置を示す。このような配置では、方向ロックは非弾性要素2060と、第1端部部分2072又は第2端部部分2074との間の相対運動に作用し得る。
【0196】
本明細書中に記載したように、平衡フィット特性を備えた本インターフェースアセンブリの実施形態は、カニューレ又は使用者の顔とのシールを形成せず、ゆえに、吹出力が発生しない他の類似のインターフェースとともに使用され得る、又はそれらとの使用のために修正され得る。
図73は、いくつかの力プロファイルを比較し、一方向摩擦力プロファイル2098内におけるカニューレ2090の平衡フィット点対CPAPマスク2092の平衡フィット点を示す。一方向摩擦力プロファイル2098は、本明細書中に記載されるインターフェースアセンブリによって提供され得る例示的な力プロファイルである。示されるように、平衡フィットは、一般に、CPAPシステムとカニューレシステムとでは異なる力において生じる。カニューレ又は類似の非密閉システムでは、平衡フィット点2090は頭囲に一致すると発生するが、これは、吹出力が全く発生しないか、少なくとも大きな吹出力が発生しないことが理由である。CPAPシステムでは、平衡フィット点2092は頭囲と吹出力とが一致すると発生する。CPAPシステムでは、ヘッドギアはCPAPマスクシステム動作エンベロープ2080内のどこにでも発生し得る平衡フィット点2092を提供することが好ましい。カニューレシステムでは、平衡フィット点2090は、一方向摩擦力プロファイル2098のより低い力の線によって画定されるカニューレ平衡フィット線2082のどこかに発生することが好ましい。カニューレ平衡フィット線2082は、使用者の顔の所定の位置にカニューレを保持するのに必要な力が好ましくはCPAPマスクを所定の位置に保持するのに必要な最小の力よりも小さく、吹出力がないために全般的により狭い範囲内にあることを示す。
【0197】
図73は、また、高力弾性ストラップ2094及び低力弾性ストラップ2096の力プロファイルを、高ヒステリシス一方向摩擦力プロファイル2098と比較する。低力弾性ストラップは、カニューレの重量のみに打ち勝つことが可能な快適なフィット性を使用者に提供するためにカニューレとともに使用され得る。しかしながら、そのような配置は一般にホースの引張りなどの任意の大きな外力に適応することはできない。外力又はCPAP治療の場合には吹出力に適応するために高力弾性ストラップが一般に必要とされる。高力弾性ストラップヘッドギアによって印加される力は一般にマスクに印加されることが予想される予想最大力に適応する一方で、予想最小頭部サイズ(マスクシステム動作エンベロープ2080によって示される)に適応するほど十分なものとすべきである。しかしながら、これには、吹出力が低い及び/又は力がない場合に必要とする力よりも高い最小力を印加するという欠点があり、使用者が不快になる可能性がある。一方向摩擦力プロファイル2098は、高力弾性ストラップ及び低力弾性ストラップ両方の利点を提供することを示す。つまり、一方向摩擦力プロファイル2098は吹出力又は外力がない場合、伸長に対する高い抵抗及び低い力を提供する。
【0198】
図74は、例えば、
図16、21、32、33、40~42及び43~51の方向ロックなどであるがこれらに限定されない、本明細書中に開示される他の方向ロックに類似する動作原理を組み込む方向ロック2100を示す。しかしながら、
図74に示される方向ロック2100は2つの異なるロック段階2102、2104を組み込んだ二段階方向ロックである。好ましくは、2つのロック段階2102、2104は互いに異なるロック挙動又は特性を有する。例えば、第1ロック段階2102は、第2ロック段階2104よりも迅速に解放位置とロック位置との間を移動する迅速作動ロックとされ得る。第2ロック段階2014は第1ロック段階2102よりもより強いロック力又は降伏力を提供する高力ロックとされ得る。このような配置により、方向ロック2100の作動力特性及びロック力特性双方の最適化を可能にすることができる。方向ロック2100に関して記載されない特徴又は詳細については
図16、21、32、33、40~42又は43~51の配置の対応する特徴又は詳細に同じであるか類似し得る。あるいは、別の適切な構成のものとすることができる。
【0199】
示される方向ロック2100は、任意の適切な筐体又はハウジング2112とされ得るロック本体を通るコア部材2110(例えばコアワイヤ)を含む。ハウジング2112は2つのロックチャンバ2114及び2116を画定する。各ロックチャンバ2114、2116はその内部に配置されたロック部材2120、2122(例えば、ロックワッシャ)を有する。上述のように、コア部材2110はロック部材2120、2122の開口部を通る。各ロックチャンバ2114、2116は第2の停止面2114b、2116bからコア部材2110が動く方向に間隔を空けて配置された、各ロック部材2120、2122の動きを制限するための第1の停止面2114a、2116aを有する。停止面2114a、2116a、2114b、2116bは、ハウジング2112の壁又はロック部材2120、2122の動きを制限するのに適した任意の他の構造によって画定され得る。
【0200】
ロック部材2120、2122は、コア部材2110の動きに対する抵抗が増加されるロック位置と、コア部材2110の動きに対する抵抗が減少する解放位置との間において移動可能である。いくつかの構成においては、コア部材2110の動きにより、ロック部材2120、2122がロック位置と解放位置との間において移動する。示される配置においては、前述の配置とは異なり、停止面2114a、2116a、2114b、2116bは平ら又は平坦であり、ロック部材2120、2122は前述の配置に類似する手法で機能する効果的なロック角度を画定するために曲げられている。特に、コア部材2110が通るロック部材2120、2122の開口部は解放位置においてコア部材2110の軸線と略整列し、摩擦、ゆえにロック力を低減することができ、開口部はロック位置において傾斜するか角度を成して摩擦、ゆえにロック力を増加することができる。示される配置においては、ロック位置とは、ロック部材2120、2122が左に移動し、ロック部材2120、2122の一部が停止面2114a、2116aに対して平らな場合であり、解放位置とは、ロック部材2120、2122が右に移動し、ロック部材2120、2122の縁端が停止面2114b、2116bに接している場合である。しかしながら、この配置は反転することもできる。
【0201】
いずれの配置においても、角度α及びβはそれぞれ、ロック部材2120、2122の解放位置とロック位置との間の差によって画定される。好ましくは、角度αは角度βと異なる。いくつかの構成においては、角度αは角度βよりも小さい。上述のように、いくつかの構成においては、コア部材は、単一ロックの場合はロック部材が解放位置からロック位置に移動する間に、又はロック部材がロック位置から解放位置に移動するときにハウジングに対して動くことができる。場合によっては、コア部材の移動は解放位置とロック位置との間におけるロック部材の角度に関係する。同じく上に述べたように、いくつかの構成においては、ロック力はロック角度に関係し、ロック力はロック角度とともに増加する。したがって、高いロック力を提供することと、解放位置とロック位置との間において小さなコア部材の移動を提供することとの間にはトレードオフが存在し得る。解放位置とロック位置との間を移動するのに必要なコア部材の移動量は、コア部材を移動しようとする力(例えば、ヘッドギアの後退力)に左右され得るロックの作動長(コアの移動量)又は作動速度(解放位置とロック位置との間の移行に必要な時間)の点において適用され得る。
【0202】
示される配置においては、第1ロック段階2102は、解放位置とロック位置との間を第2ロック段階2104に比べてより少ないコア部材2110の移動で又はより迅速に移動する迅速作動ロックである。解放位置とロック位置との間におけるロック部材2120又はコア部材2110の移動は
図74に距離「a」で示される。比較的小さな移動距離により、第1ロック段階2102が関連インターフェースアセンブリの小さな調整移動に応じて解放位置とロック位置との間を移動することが可能になる。いくつかの用途においては、解放位置からロック位置への移動に焦点を当てるが、これは、ロック2100により、ロック2100がロック位置に移動するまでコア部材2110の移動(及び関連のヘッドギアの伸長)が可能になるからである。しかしながら、他の方向への移動にもコア部材の移動が必要となる場合があり、いくつかの用途においては関心の高い特徴となり得る。
【0203】
使用時、使用者は、マスク/インターフェースを揺り動かしたり押したりしてシールに与圧し、それによってヘッドギアを後退させる、あるいは、ロック部材2120を解放位置に向かって(
図74では右)移動しようとする方向にコア部材2110を移動させることによってインターフェースアセンブリを微調整しようとしてもよい。第1ロック段階2102は、使用者がマスク/インターフェースから押力を排除して、好ましくは対応するヘッドギアの少量の伸張を可能にすると、ロック位置へと迅速に移動する。その結果、方向ロック2100はマスク/インターフェースの小さな動きに応動し、マスク/インターフェースを所望の調整位置のかなり近傍にてロックする。上述のように、第1ロック段階2102は比較的小さなロック角度αによりロック位置に迅速に移動することができる。しかしながら、第1ロック段階2102は所望のロック力よりも低い最大ロック力を提供してもよく、これもまた比較的小さなロック角度αによるものであってもよい。
【0204】
しかしながら、第2ロック段階2104は、方向ロック2100に所望の最大ロック力を提供することができる高力ロックとされ得る。第2ロック段階2104は、
図74に距離「b」で示される、解放位置とロック位置との間におけるロック部材2122又はコア部材2110の移動を有し得る。いくつかの構成においては、距離「b」は第1ロック段階2102の距離「a」よりも大きい。上述のように、第2ロック段階2104のロック角度βはロック角度αよりも大きくすることができ、これにより、いくつかの構成においては第1ロック段階2102よりも強いロック力を有する第2ロック段階2104となる可能性がある。第1ロック段階2102と第2ロック段階2104とを組み合わせると、対応するヘッドギア/インターフェースの小さな調整移動に応動する一方で、通常動作力又は予想動作力に対処するのに十分なロック力又は降伏力も提供する方向ロック2100となり得る。
【0205】
いくつかの構成においては、対応するヘッドギア/インターフェースの微調整を提供するための距離「a」は約1ミリメートル以下である。しかしながら、いくつかの構成においては、距離「a」は1ミリメートルよりも長くすることができる。距離「a」は特定の用途に耐え得るロック距離に基づき選択され得る。換言すると、距離「a」は特定の用途に必要な又は望ましい微調整のレベルに基づき選択され得る。上述のように、インターフェースアセンブリは、例えば、インターフェースアセンブリの各側に1つずつなどの、1つより多い方向ロックを含み得る。したがって、総ロック距離は単一方向ロックのロック距離よりも長くすることができ、場合によっては、個々のロック距離の合計とすることができる。距離「b」は所望の最大ロック力を実現するように選択することができる。いくつかの構成においては、距離「b」は、距離「a」の少なくとも約2倍の大きさ、少なくとも約5倍の大きさ、少なくとも約10倍の大きさ、又は少なくとも約20倍の大きさとすることができる。角度αと角度βの比率は距離「a」と距離「b」の比率と同じ又は類似とされ得る。
【0206】
図75は、
図74の方向ロック2100などの少なくとも1つの二段階方向ロックを含むヘッドギア又はインターフェースアセンブリの力プロファイル2200を示す。力プロファイル2200は
図2~5とともに記載した力プロファイルに全般的に類似し得る。したがって、力プロファイル2200は初期の伸展に対する抵抗を示す初期の急な上昇2220を含む。力プロファイルは、また、ヘッドギアの更なる伸展を示す実質的に平らな略一定の伸展曲線2222及びヘッドギアが使用者の頭にフィットさせるために後退する際の減少2224を含む。しかしながら、
図2~5の力プロファイルとは対照的に、力プロファイル2200は、第1ロック段階2102と第2ロック段階2104との間の移行を示す階段状平衡フィットセクション2230を含む。
【0207】
特に、平衡フィットセクション2230は第1部分2230a及び第2部分2230bを含み得る。第1部分2230aは第1ロック段階2102の特性に関連し得るものであり、第2部分2230bは第2ロック段階2104の特性に関連し得るものである。第2部分2230bは、また、第2ロック段階2104と併せた第1ロック段階2102により提供される抵抗に影響され得る。示されるように、第2部分2230bは第1部分2230aから、第1ロック段階2102から第2ロック段階2104への移行を反映し得る移行部2230cだけずれている。つまり、このずれは、
図74の距離「b」と距離「a」との間の差を反映し得るものである。
【0208】
バランスフィットセクション2230は、平衡フィット点2234までのヘッドギアの伸長を示す実線部を含む。平衡フィット点2234上方の破線部は、更なる力に応じてヘッドギアに生じ得る更なる伸長を示す。示される配置においては、平衡フィット点2234は第1ロック段階2102の性能範囲内にある。つまり、平衡フィット点2234は第1ロック段階2102の最大ロック力よりも小さい。しかしながら、高い治療圧力などの場合においては、バランスフィット点2234は第1ロック段階2102の最大ロック力を超えてもよく、且つ平衡フィットセクション2230の第2部分2230b内にあってもよい。好ましくは、バランスフィット点2234は第2ロック段階2104の最大ロック力を下回る。降伏点2236は平衡フィットセクション2230と一定伸展曲線2222との交点によって画定され得る。
【0209】
初期作動長2240は平衡フィットセクション2230の始端と平衡フィット点2234との間の伸長距離と定義される。初期作動長2240は第1ロック段階2102の距離「a」に関連し得る。二次作動長2242は平衡フィット点2234と移行部2230cの終端/平衡フィットセクション2230の第2部分2230bの始端との間の伸長距離と定義され得る。二次作動長2242は第2ロック段階2104の距離「b」に関連し得る。力プロファイル2200は単にロック2100などの二段階方向ロックによって提供され得る力プロファイルの例である。特定の用途又は所望の性能基準に合うような種々の異なる力プロファイルを有する方向ロックを本開示の教示に基づき実現することができる。例えば、本明細書中に開示される任意のタイプの複数の個々のロックを組み合わせて作成した二段式又は多段式ロックを作製することができる。個々のロックは同じタイプのものとすることも、単一、二段式又は多段式ロックの範囲内の異なるタイプのものとすることもできる。
【0210】
特定の機械的な方向ロック機構を本明細書中に具体的に示すが、自己フィット、大ヒステリシス又は方向ロックを実現するための他の機械的及び非機械的方法及び装置もまた使用され得る。本明細書中に開示されるインターフェースアセンブリに類似する機能を提供するために、例えば、電気式、圧電式、空気式、油圧式又は熱機械式装置が構成され得る。いくつかの構成においては、そのような方法又は装置は本明細書中に開示される装置と同様に非弾性コアを選択的に把持又は解放することができる。
【0211】
電気式装置の一例では、方向ロック機能を提供するためにソレノイドクラッチが用いられ得る。例えば、プランジャ周囲の電気コイルは通電されるとプランジャを動かすことができる。この動きを利用して自己調節ヘッドギアの非伸展部材を直接的又は間接的に挟むか把持し、非伸展部材を保持することができる。保持機構は非伸展部材を解放して伸長を可能にすることができる。ソレノイドクラッチはボタンなどの任意の適切な装置によって制御され得る。あるいは、ヘッドギアが配置されるとき、及び/又はCPAP圧力が作動され、保持機構が作動され得るときをセンサが決定することができる。
【0212】
あるいは、非伸展部材などの、ヘッドギアの調節可能な部材の位置を能動的に保持するためにステッパモータ又はサーボモータが用いられ得る。後退及び/又は伸長はモータによって実施することができる。いくつかの構成においては、磁気セクション又は特性を有するヘッドギアの調節可能な部材に作用するための電磁力発生器が用いられ得る。後退はリニアモータによって実施され得る。いくつかの構成においては、ヘッドギアの調節可能な部材に作用し且つ保持する電流に応答してクラッチ又はピンチング機構を作製するために電場応答性高分子(electro-active polymer)が用いられ得る。あるいは、磁性液体に電磁力を作用し、ヘッドギアの調節可能な部材を保持することができるクラッチ又はピンチング機構を作製し得る。
【0213】
圧電式装置の一例においては、非伸展ヘッドギアの自由運動を解除するために圧電式クラッチ又はクランプを用いることができる。ピエゾ式機構の例としては、ピエゾ膜(ブザー)、ディーゼルエンジン用バルブ及びインクジェットノズルが挙げられる。これら機構のそれぞれでは、ピエゾ素子を用いて動き/変位を生成する。そのようなピエゾ機構は直接使用することも、自己フィット式ヘッドギアの調節可能な部材を選択的に保持するための保持クラッチを駆動するために使用することもできる。いくつかの圧電式構成要素がいわゆるインチワームモータ(inchworm motor)を作製するように構成され得る。インチワームモータ(又は類似の)装置は直線運動に対して特に有用である。そのような運動は自己フィット式ヘッドギア機構の調節に利用することができる。
【0214】
空気式装置では、CPAP圧力又は補助空気/ガス供給によって作動されるクラッチ又は把持機構を空気圧シリンダ又は空気式ベローにより動作することができる。クラッチ又は把持機構は自己フィット式ヘッドギアの調節可能な部材を直接的又は間接的に保持することができる。同様に、油圧式装置においては、油圧シリンダ又はブラダを用いて自己フィット式ヘッドギアの調節可能な部材を保持することができる。例えば、CPAP圧力を用いて作動液を加圧することができる。あるいは、ピストンを機械的に動作させて作動液を加圧することができる。
【0215】
熱機械式装置においては、感熱性物質(例えば、ワックス)を用いてクラッチ又は保持機構を駆動し、自己フィット式ヘッドギアの調節可能な部材を保持することができる。クラッチ又は保持機構の作動は、使用者の皮膚若しくはCPAPシステムの加熱されたブリーザチューブなどの別の適切な熱源との接触により、又は使用者の皮膚の暖かさ若しくはCPAPシステムの加熱されたブリーザチューブなどの別の適切な熱源に近接することにより実施され得る。自動温度調節弁の動作には一般にワックスが充填されたカートリッジが使用される。ワックスは温度変化により膨張又は収縮し、これがその後、例えばプランジャの動きに変換される。十分な熱がない場合、クラッチはその把持を解除してヘッドギアを使用者にフィットさせることができる。ヘッドギアが所定の位置にあり、熱機械式クラッチが熱源に曝されると、クラッチは係合してヘッドギアの伸張を抑制することができる。感熱性物質の別の例は、熱の影響下で変形し、この変位を用いて自己フィット式ヘッドギアの保持クラッチ又はロックを作動させることができるバイメタル部材である。
【0216】
種々の実施形態を記載してきたが、いずれの調節機構も他のいずれのアセンブリと組み合わせることもできることに留意されたい。加えて、調節機構はブレークフィットアセンブリ(break-fit assembly)なしで使用することができ、ブレークフィットアセンブリは調節機構なしで使用することができる。更に、任意のインターフェース(すなわちマスク及びヘッドギア)は本明細書中に記載される調節機構及び/又はブレークフィットアセンブリのいずれか又は両方とともに使用することができる。ブレークフィットアセンブリには、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2012年8月8日に出願の米国仮特許出願第61/681,024号明細書に記載されているものを含み得るが、これに限定されない。
【0217】
本発明を特定の実施形態の観点から記載してきたが、当業者に明らかな他の実施形態もまた本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変更形態及び修正形態を施してもよい。例えば、種々の構成要素を所望のように位置変更してもよい。更に、特徴、態様及び利点の全てが本発明の実施に必ずしも必要なわけではない。したがって、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ定義されるものとする。
[項1]
使用者の頭部にフィットするように伸長及び後退するように構成された呼吸療法用ヘッドギアであって、前記ヘッドギアを伸長させるために印加される第1の負荷力と、前記ヘッドギアを後退させて前記使用者の頭部にフィットさせるために印加される第2の負荷力とを必要とし、前記第1の負荷力が呼吸療法時に前記ヘッドギアに印加される予想負荷力よりも大きく、及び前記第2の負荷力が前記予想負荷力よりも小さい、ヘッドギア。
[項2]
前記予想負荷力が、CPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成力を含む、項1に記載のヘッドギア。
[項3]
前記第1の負荷力が前記予想負荷力よりも予備量だけ大きい、項1又は2に記載のヘッドギア。
[項4]
前記ヘッドギアに後退力を印加する弾性要素を更に含み、前記後退力が前記第2の負荷力よりも大きい、項1~3のいずれか一項に記載のヘッドギア。
[項5]
使用者の顔にマスクを固定するためのヘッドギアであって、後退力を提供するように構成された弾性部分と、前記弾性部分に比べて非弾性となるように構成された非弾性部分と、前記非弾性部分及び前記弾性部分に結合された制限機構であって、前記ヘッドギアの伸長を可能にするための第1の抵抗力と、前記ヘッドギアの後退に応じた第2の抵抗力とを必要とするように構成されている、制限機構とを含む、ヘッドギア。
[項6]
前記第1の抵抗力が前記第2の抵抗力よりも大きい、項5に記載のヘッドギア。
[項7]
前記第1の抵抗力がCPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成抵抗力よりも大きい、項5又は6に記載のヘッドギア。
[項8]
前記第2の抵抗力がCPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成力よりも小さい、項5~7のいずれか一項に記載のヘッドギア。
[項9]
使用者の頭部にフィットするように伸長及び後退するように構成されたヘッドギアであって、半径方向の引張りがない場合の第1の伸長抵抗力及び半径方向の引張りに応じた第2の伸長抵抗力を有する、ヘッドギア。
[項10]
前記第1の伸長抵抗力が前記第2の伸長抵抗力よりも小さい、項9に記載のヘッドギア。
[項11]
前記第2の伸長抵抗力が前記ヘッドギアの2つの部分の係合の結果として発生する、項9又は10に記載のヘッドギア。
[項12]
前記第2の伸長抵抗力がCPAP圧力による力及びホース抗力を含む合成力よりも大きい、項9~11のいずれか一項に記載のヘッドギア。
[項13]
使用者の顔にマスクを固定するためのヘッドギアであって、後退力を提供するように構成された弾性部分と、前記弾性部分に比べて非弾性となるように構成された非弾性部分と、前記非弾性部分及び前記弾性部分に結合された制限機構であって、前記ヘッドギアに半径方向の張力がかかると伸長抵抗力を印加するように構成されている、制限機構とを含む、ヘッドギア。
[項14]
患者インターフェースシステムであって、
使用者の鼻及び/又は口を取り囲むようなサイズ及び形状であり、且つ前記使用者の顔と少なくとも実質的なシールを形成するように構成されたインターフェース部分と、
前記患者インターフェースシステムをガス送達システムに結合することを可能にするカップリングと、
前記インターフェース部分が前記使用者の頭部に配置及び保持されることを可能にするヘッドギアシステムであって、前記患者インターフェースシステムの使用時、弾性型伸長挙動から略非伸長型の挙動へと変形する機能を備えた変形ロック挙動を提供する、ヘッドギアシステムと
を含む、患者インターフェースシステム。
[項15]
前記変形ロック挙動が機械に基づく方向ロックによって提供される、項14に記載の患者インターフェースシステム。
[項16]
前記ヘッドギアシステムが約0.5N~約65Nの範囲の非伸長型挙動を提供する、項14又は15に記載の患者インターフェースシステム。
[項17]
前記変形ロック挙動が、ロック筐体と、可動ロック部材と、コア部材とを含む機械的な方向ロックによって提供される、項14~16のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項18]
前記コア部材の断面寸法が約0.1mm~約8mmの範囲である、項17に記載の患者インターフェースシステム。
[項19]
前記ロック部材が前記コア部材に対して約0°~約45°の角度範囲にわたり移動可能である、項17又は18に記載の患者インターフェースシステム。
[項20]
前記ロック部材に作用し、且つロック保持力を制御する付勢機構を更に含む、項17~19のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項21]
前記方向ロックがロックの作動を促進するための摩擦促進部を組み込む、項17~20のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項22]
前記コア部材がコードである、項17~21のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項23]
前記コア部材がストラップである、項17~21のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項24]
前記変形ロック挙動が機械的接着を用いる方向ロックによって提供され、前記機械的接着が、ナノファイバー材料の使用によるファンデルウォールス力によって提供される、項14に記載の患者インターフェースシステム。
[項25]
前記変形ロック挙動が機械的接着を用いる方向ロックによって提供され、前記機械的接着が微細構造によって提供される、項14に記載の患者インターフェースシステム。
[項26]
前記弾性型伸長が、組み込まれた弾性要素を有する布バネを含む弾性型伸長システムによって提供される、項14~25のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項27]
前記弾性要素が塑性変形する前に前記非弾性要素が伸長に対する物理的エンドストップを提供するように前記弾性要素と前記非弾性要素とが組み合わされる編組として前記布バネが構成される、項26に記載の患者インターフェースシステム。
[項28]
前記編組内の弾性要素の量が前記布バネの所望の力対伸長特性を実現するように選択される、項27に記載の患者インターフェースシステム。
[項29]
前記変形ロック挙動が、ハウジングと、前記ハウジング内の可動ロック部材と、コア部材とを含む機械的な方向ロックによって提供され、前記ハウジングが前記コア部材の動きを案内し、前記ハウジング及び前記ロック部材の両方が単一の一体型モジュールによって形成される、項14に記載の患者インターフェースシステム。
[項30]
前記変形ロック挙動が、ロックモジュールと、非弾性部分と、弾性部分とを含む機械的な方向ロックによって提供され、前記ロックモジュールと、前記非弾性部分と、前記弾性部分とがモジュール式調整アセンブリを形成する、項14に記載の患者インターフェースシステム。
[項31]
前記インターフェース部分がマスクであり、及び前記モジュール式調整アセンブリが前記マスクのフレームに結合されている、項30に記載の患者インターフェースシステム。
[項32]
前記フレームが、前記ロックモジュールを受け入れるスペースを画定する1つ又は複数の壁を含む、項31に記載の患者インターフェースシステム。
[項33]
前記モジュール式調整アセンブリが前記ヘッドギアシステムの一部に結合されている、項30に記載の患者インターフェースシステム。
[項34]
前記ヘッドギアシステムの一部が、下後部ストラップ及び頭頂部ストラップの少なくとも1つを含む後部部分である、項31に記載の患者インターフェースシステム。
[項35]
前記ヘッドギアシステムが後頭隆起上又はその下方を通る部分を含み、前記部分が、前記頭部の後部部分に不均一な荷重を付与する特徴を組み込む、項14~34のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項36]
前記後頭隆起上又はその下方を通る前記部分が断続ストラップを含む、項35に記載の患者インターフェースシステム。
[項37]
前記断続ストラップが、カップリングによって結合された第1ストラップセクション及び第2ストラップセクションを含む、項36に記載の患者インターフェースシステム。
[項38]
前記カップリングが、第1のストラップ第2と、セクションストラップセクションとの間の相対運動を可能にする、項37に記載の患者インターフェースシステム。
[項39]
前記相対運動が前記断続ストラップの長手方向軸線を中心とした回転運動を含む、項38に記載の患者インターフェースシステム。
[項40]
前記ヘッドギアシステムが前記後頭隆起の上方を通る部分を更に含み、前記部分が、前記頭部の頂部部分に不均一な荷重を付与する特徴を組み込む、項35~39のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項41]
前記ヘッドギアシステムが後頭隆起上又はその上方を通る部分を含み、前記部分が、前記頭部に不均一な荷重を付与する特徴を組み込む、項14~34のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項42]
前記ヘッドギアシステムが、後部部分と、前記インターフェースシステムの各側部にある、前記後部部分を前記インターフェース部分に結合する少なくとも1つのサイドストラップとを含む、項14~34のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項43]
使用時、前記少なくとも1つのサイドストラップが前記使用者の外耳の上部分の前方及び前記使用者の外耳の上部分又はその近傍に位置する箇所において前記ヘッドギアシステムの前記後部部分に結合されている、項42に記載の患者インターフェースシステム。
[項44]
前記ヘッドギアシステムの前記後部部分が上ストラップ及び下ストラップを含み、前記少なくとも1つのサイドストラップの後方突起が前記上ストラップと前記下ストラップとの間を通る、項42又は43に記載の患者インターフェースシステム。
[項45]
前記少なくとも1つのサイドストラップが三角形構成で配置されたサイドストラップの対を含む、項42~44のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項46]
前記変形ロック挙動が、前記ヘッドギアシステム内に収容された1つ又は複数の非伸長要素に作用し、前記ヘッドギアシステムの弾性部分を実質的に分離するロック機構によって提供される、項14に記載の患者インターフェースシステム。
[項47]
前記ヘッドギアシステムが、様々な頭部サイズにフィットすることを可能にする機構を組み込み、前記機構が、互いに並列に構成される弾性要素及び略非伸長要素の両方を含む、項14~46のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項48]
前記ヘッドギアシステムが、様々な頭部サイズにフィットすることを可能にする機構を組み込み、前記機構が、前記使用者の頭部を実質的に取り囲む1つ又は複数の略非伸長要素を含む、項14~46のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項49]
前記非伸長要素の第1部分が前記ヘッドギアシステムの長手方向において前記非伸長要素の第2部分に重なる、項48に記載の患者インターフェースシステム。
[項50]
前記第1部分及び前記第2部分が前記非伸長要素の第1端部及び第2端部である、項49に記載の患者インターフェースシステム。
[項51]
前記第1部分及び前記第2部分が前記非伸長要素の一端の一部である、項49に記載の患者インターフェースシステム。
[項52]
前記変形ロック挙動が、手動式ロック、空気圧作動式ロック、電気作動式ロック、圧電作動式ロック、油圧作動式ロック又は熱機械作動式ロックによって提供される、項14に記載の患者インターフェースシステム。
[項53]
前記変形ロック挙動が第1ロック力を提供する第1ロック段階及び第2ロック力を提供する第2ロック段階を有し、前記第2ロック力が前記第1ロック力よりも大きい、項14~52のいずれか一項に記載の患者インターフェースシステム。
[項54]
前記第1ロック段階が、前記第2ロック段階に比べて小さい伸長動作を有する前記略非伸長型の挙動へと転換する、項53に記載の患者インターフェースシステム。
[項55]
使用者の頭部にフィットするように伸長及び後退するように構成された呼吸療法用ヘッドギアであって、前記ヘッドギアを伸長させるために第1の負荷力の印加を必要とし、前記ヘッドギアが前記使用者の頭部にフィットすると、前記ヘッドギアが、呼吸療法時に前記ヘッドギアに印加される負荷力に等しい平衡保持力を提供し、前記第1の負荷力が前記平衡保持力よりも大きい、ヘッドギア。
[項56]
呼吸療法時に前記ヘッドギアに印加される前記負荷力がCPAP圧力による力及びホース抗力を含む、項55に記載のヘッドギア。
[項57]
前記第1の負荷力が、呼吸療法時に前記ヘッドギアに印加される前記負荷力よりも予備量だけ大きい、項55又は56に記載のヘッドギア。
[項58]
前記ヘッドギアを後退させようとする後退力を印加する弾性要素を更に含む、項55~57のいずれか一項に記載のヘッドギア。
[項59]
前記後退力が、呼吸療法時に前記ヘッドギアに印加される前記負荷力よりも小さい、項58に記載のヘッドギア。