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特許7008122光半導体装置および光半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】光半導体装置および光半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20220118BHJP
   H01S 5/0222 20210101ALI20220118BHJP
   H01S 5/02257 20210101ALI20220118BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 23/20 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01L33/48
H01S5/0222
H01S5/02257
H01L31/02 B
H01L23/02 F
H01L23/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020212290
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2021-07-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真也
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3002833(JP,U)
【文献】特開平04-028279(JP,A)
【文献】特開平06-138352(JP,A)
【文献】特表2013-516076(JP,A)
【文献】特開2007-067373(JP,A)
【文献】特開2012-094922(JP,A)
【文献】特開平04-028280(JP,A)
【文献】特開2017-045936(JP,A)
【文献】特開2006-086985(JP,A)
【文献】国際公開第2010/010721(WO,A1)
【文献】特開平3-78265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0185881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 3/00 - 3/30
H01S 5/00 - 5/50
H01L 31/02
H01L 23/02
H01L 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子と、
前記光半導体素子が収容される光源室を区画し、前記光半導体素子の前面に開口が設けられる筐体と、
前記開口を塞ぐように設けられる窓部材と、
前記筐体に取り付けられ、前記窓部材を前記筐体との間に挟み込んで固定する窓固定部材と、
前記筐体と前記窓部材の間を封止するシール部材と、を備え、
前記筐体は、前記窓部材の厚み方向に前記窓固定部材と重なる本体部と、前記本体部から前記厚み方向と直交する方向に延在する延長部とを含み、
前記延長部は、前記厚み方向に開口し、前記光源室内の雰囲気ガスを交換するためのガス交換孔を有し、
前記光源室は、前記ガス交換孔を密閉することにより密閉可能である光半導体装置。
【請求項2】
前記光半導体素子と電気的に接続される外部コネクタをさらに備え、
前記外部コネクタは、前記延長部において前記厚み方向に貫通する取付孔に挿通される、請求項1に記載の光半導体装置。
【請求項3】
前記ガス交換孔は、前記筐体の前面側に配置され、前記外部コネクタは、前記筐体の背面側に配置される、請求項2に記載の光半導体装置。
【請求項4】
前記本体部は、前記光半導体素子を冷却するための放熱機構を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項5】
前記光源室内の雰囲気ガスの酸素濃度は、30体積%以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項6】
前記光源室内の雰囲気ガスの水分濃度は、0.1体積%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項7】
前記窓部材と前記窓固定部材の間を封止するシール部材をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の光半導体装置。
【請求項8】
光源室を区画する筐体に設けられる開口が光半導体素子の前面に位置するように前記光源室内に前記光半導体素子を収容するステップと、
前記開口を塞ぐ窓部材と、前記窓部材を前記筐体との間に挟み込んで固定する窓固定部材と、前記筐体と前記窓部材の間を封止するシール部材と、を用いて前記開口を密閉するステップと、
前記窓部材の厚み方向に前記窓固定部材と重なる前記筐体の本体部から前記厚み方向と直交する方向に延在する前記筐体の延長部において前記厚み方向に開口するように設けられるガス交換孔にノズルを挿入し、前記ノズルを通じて前記光源室内の雰囲気ガスを交換するステップと、
前記ガス交換孔を密閉するステップと、を備える光半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ガス交換孔から前記光源室内に高圧の雰囲気ガスを導入し、前記ガス交換孔にて前記光源室内の雰囲気ガスの圧力を計測することにより、前記光源室の密閉性を確認するステップをさらに備える、請求項8に記載の光半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置および光半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子は、外部環境から素子を保護するためのパッケージ内に収容される。窒化物半導体の場合、酸素を含む雰囲気ガス中に封止することで半導体層の劣化を抑制できることが知られている。パッケージ内に酸素を封入しつつ、パッケージと窓部材の間を接合する金属材料が接合時に酸化する影響を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-093137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光半導体素子の長寿命化を図るには、パッケージ内に高濃度(例えば20%以上)の酸素を封入することが好ましい。しかしながら、パッケージ内に高濃度の酸素を封入しようとする場合、パッケージと窓部材の間を接合する金属材料の酸化防止が困難である。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、光半導体素子の長寿命化を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の光半導体装置は、光半導体素子と、光半導体素子が収容される光源室を区画し、光半導体素子の前面に開口が設けられる筐体と、開口を塞ぐように設けられる窓部材と、筐体に取り付けられ、窓部材を筐体との間に挟み込んで固定する窓固定部材と、筐体と窓部材の間を封止するシール部材と、を備える。光源室は、密閉可能である。
【0007】
本発明の別の態様は、光半導体装置の製造方法である。この方法は、光源室を区画する筐体に設けられる開口が光半導体素子の前面に位置するように光源室内に光半導体素子を収容するステップと、開口を塞ぐ窓部材と、窓部材を筐体との間に挟み込んで固定する窓固定部材と、筐体と窓部材の間を封止するシール部材と、を用いて開口を密閉するステップと、筐体に設けられるガス交換孔を通じて光源室内の雰囲気ガスを交換するステップと、ガス交換孔を密閉するステップと、を備える。
【0008】
本発明のある態様によれば、光半導体素子を長寿命化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る光半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。
図2図1の光半導体装置の構成を概略的に示す上面図である。
図3図1の光半導体装置の構成を概略的に示す下面図である。
図4】雰囲気ガスに含まれる酸素濃度と光半導体素子の光出力変化の関係性を示すグラフである。
図5】実施の形態に係る光半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の寸法比と一致しない。
【0011】
図1は、実施の形態に係る光半導体装置10の構成を概略的に示す図である。光半導体装置10は、光半導体素子12と、筐体14と、窓部材16と、窓固定部材18と、第1シール部材20とを備える。
【0012】
光半導体素子12が収容される光源室24は、筐体14、窓部材16、窓固定部材18、第1シール部材20によって密閉される。本実施の形態では、光源室24をOリングなどのシール部材で密閉することで、光源室24内の雰囲気ガスとして高濃度(例えば20%以上)の酸素を封入することが容易となる。光源室24内に高濃度の酸素を封入することで、光半導体素子12の使用に伴う性能低下を抑制でき、光半導体素子12の長寿命化を実現できる。
【0013】
図面において、窓部材16の厚み方向をz方向とし、z方向と直交する方向をx方向およびy方向としている。z方向の向きについて、光半導体素子12から窓部材16に向かう+z方向を前面側ということがあり、前面側とは反対側の-z方向を背面側ということがある。また、筐体14の本体部14aと延長部14bが隣接する方向をx方向としている。本体部14aは、窓固定部材18が取り付けられる部分であり、筐体14と窓固定部材18がz方向に重なる部分である。延長部14bは、筐体14と窓固定部材18がz方向に重ならない部分である。
【0014】
光半導体素子12は、窒化物半導体材料を含み、In1-x-yAlGaN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1、)の組成で表されるGaN系半導体材料を含む。光半導体素子12は、例えば、波長360nm以下の深紫外光を出力するよう構成されるLED(Light Emitting Diode)チップである。光半導体素子12は、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)から構成される活性層を含む。
【0015】
光半導体素子12は、筐体14によって区画される光源室24に収容される。光半導体素子12は、光半導体素子12の前面に窓部材16が位置するように配置される。光半導体素子12の出力光は、筐体14に設けられる第1開口26と、窓部材16と、窓固定部材18に設けられる第2開口28とを通じて光源室24の外部に取り出される。光半導体素子12は、基板30上に設けられる。図示する例では、基板30上に複数の光半導体素子12が設けられる。複数の光半導体素子12は、例えば、基板30上に二次元アレイ状に配置される。光半導体素子12は、基板30上に一つだけ設けられてもよい。
【0016】
筐体14は、第1部材32と、第2部材34とを含む。光源室24は、第1部材32と第2部材34の間に区画される。第1部材32および第2部材34は、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料から構成される。第1部材32および第2部材34の少なくとも一方は、樹脂材料から構成されてもよい。
【0017】
第1部材32は、光半導体素子12の前面側に配置され、第1開口26を有する。第1開口26は、円形開口である。第2部材34は、光半導体素子12の背面側に配置される。第2部材34は、光半導体素子12を冷却するための放熱機構36を有する。放熱機構36は、例えばヒートシンクを有する。放熱機構36は、光源室24の外部において空冷または水冷される。基板30は、放熱機構36の上面38に取り付けられ、放熱機構36と熱的に接続される。放熱機構36の上面38は、光源室24内に露出する。
【0018】
窓部材16は、筐体14の第1開口26を塞ぐように設けられる。窓部材16は、筐体14と窓固定部材18の間に挟み込まれて固定される。窓部材16は、円板形状の部材である。窓部材16は、光半導体素子12から出力される深紫外光を透過する材料から構成され、例えば、石英ガラス(SiO)やサファイア(Al)から構成される。
【0019】
窓固定部材18は、筐体14に取り付けられ、筐体14と窓固定部材18の間に窓部材16を挟み込んで固定する。窓固定部材18は、光半導体素子12から出力される深紫外光が通過する第2開口28を有する。第2開口28は、円形開口であり、例えば、第1開口26と同じ大きさである。窓固定部材18は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素樹脂材料から構成される。窓固定部材18は、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料から構成されてもよい。
【0020】
第1シール部材20は、筐体14と窓部材16の間に設けられ、筐体14と窓部材16の間を封止する。第1シール部材20は、例えばOリングであり、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム(FEPM)、テトラフルオロエチレン-パープルオロビニルエーテル系ゴム(FFKM)といったフッ素ゴムから構成される。第1シール部材20は、ゴムや金属材料から構成されるガスケットであってもよい。
【0021】
光半導体装置10は、第2シール部材22をさらに備えてもよい。第2シール部材22は、窓部材16と窓固定部材18の間に設けられ、窓部材16と窓固定部材18の間を封止する。第2シール部材22は、第1シール部材20と同様、フッ素ゴムから構成されるOリングであってもよいし、ゴムや金属材料から構成されるガスケットであってもよい。光半導体装置10は、第2シール部材22を備えなくてもよい。
【0022】
筐体14は、本体部14aと、延長部14bとを有する。本体部14aは、窓固定部材18が取り付けられる部分であり、窓固定部材18とz方向に重なる部分である。本体部14aには、第1開口26および放熱機構36が設けられる。延長部14bは、窓固定部材18とz方向に重ならない部分であり、本体部14aからx方向に延在する部分である。延長部14bには、ガス交換孔40および外部コネクタ46が設けられる。
【0023】
ガス交換孔40は、延長部14bに設けられ、筐体14の前面側に配置される。ガス交換孔40は、第1部材32を貫通して光源室24の内部と外部を連通する。ガス交換孔40は、z方向に延在する。ガス交換孔40は、窓部材16および窓固定部材18が筐体14に取り付けられた状態のまま光源室24内の雰囲気ガスを交換するために設けられる。ガス交換孔40の入口には密閉栓42が着脱可能に取り付けられる。ガス交換孔40の入口に密閉栓42を取り付けることで、ガス交換孔40が塞がれて光源室24が密閉される。密閉栓42は、例えば雄ねじで構成され、ガス交換孔40内面に形成されるねじ切り構造と係合する。筐体14と密閉栓42の間にはOリングなどのシール部材44が設けられる。
【0024】
光源室24内の雰囲気ガスは、光半導体素子12の劣化を抑制するために20体積%以上の酸素を含み、好ましくは30体積%以上の酸素を含む。光源室24内の雰囲気ガスの酸素濃度は、40~50体積%程度であってもよい。光源室24内の雰囲気ガスは、酸素以外に窒素や希ガスを含んでもよい。光源室24内の雰囲気ガスは、光源室24内での結露を防ぐため、乾燥気体で構成される。光源室24内の雰囲気ガスの水分濃度は、0.1体積%以下であり、好ましくは10ppm以下または1ppm以下である。光源室24内の雰囲気ガスは、実質的に酸素と窒素のみを含んでもよい。光源室24内には、雰囲気ガス中の水分を吸着するためのゼオライトなどの乾燥剤(不図示)が設けられてもよい。
【0025】
外部コネクタ46は、延長部14bに設けられ、筐体14の背面側に配置される。外部コネクタ46は、第2部材34を貫通する取付孔48に挿通される。外部コネクタ46は、光半導体素子12に制御信号や駆動電流を供給するための電気コネクタである。外部コネクタ46は、光源室24の外部に露出する外部端子を有する。外部コネクタ46は、接続ケーブル52、内部コネクタ54および基板30を介して光半導体素子12と電気的に接続される。内部コネクタ54は、例えば基板30上に設けられる。接続ケーブル52は、光源室24内に設けられ、外部コネクタ46と内部コネクタ54の間を電気的に接続する。
【0026】
窓固定部材18は、第1締結部材56によって筐体14に固定される。第1部材32および第2部材34は、第1締結部材56および第2締結部材58によって固定される。第1締結部材56および第2締結部材58は、ねじやボルトなどである。第1締結部材56は、本体部14aに設けられ、第1部材32、第2部材34および窓固定部材18を固定する。第2締結部材58は、延長部14bに設けられ、第1部材32および第2部材34を固定する。
【0027】
図2は、図1の光半導体装置10の構成を概略的に示す上面図であり、光半導体装置10の前面側の構成を示す。図1は、図2のA-A線断面を示す。窓固定部材18は、図2の平面視において、四隅が隅切りまたは面取りされた矩形の外形を有する。第2開口28は、円形開口であり、窓固定部材18の中央に設けられる。複数の光半導体素子12は、第2開口28と重なる領域内に二次元アレイ状に配置されている。図2の例では、複数の光半導体素子12が三角格子状に配置されている。
【0028】
本体部14aは、窓固定部材18と同様、四隅が隅切りまたは面取りされた矩形の外形を有する。延長部14bは、本体部14aおよび窓固定部材18からx方向に突出している。延長部14bは、図2の平面視において、角部が面取りされた矩形の外径を有する。延長部14bには密閉栓42が取り付けられている。
【0029】
図3は、図1の光半導体装置10の構成を概略的に示す下面図であり、光半導体装置10の背面側の構成を示す。本体部14aの四隅などには第1締結部材56が取り付けられる。延長部14bには第2締結部材58が取り付けられる。本体部14aの中央には放熱機構36が設けられる。延長部14bの中央には外部コネクタ46が設けられる。
【0030】
図4は、雰囲気ガスに含まれる酸素濃度と光半導体素子12の光出力の時間変化の関係性を示すグラフである。グラフの縦軸は、光半導体素子12の光出力の変化割合を示し、点灯開始時の光出力を基準としている。グラフの横軸は、光半導体素子12の点灯時間である。グラフの各曲線B~Gは、光半導体素子12の雰囲気ガスに含まれる酸素濃度の体積割合を0%~50%の範囲で異ならせている。雰囲気ガスには酸素以外に実質的に窒素のみが含まれる。
【0031】
図4のグラフに示されるように、雰囲気ガスに含まれる酸素濃度が高いほど、光半導体素子12の光出力の低下速度が遅いことが分かる。酸素濃度0%の曲線Bでは、グラフの右端まで経過したときに光出力が約24%低下している。同じ経過時間を基準とすると、酸素濃度10%の曲線Cでは光出力が約19%低下し、酸素濃度20%の曲線Dでは光出力が約13%低下している。一方、酸素濃度30%の曲線Eでは光出力の低下が約10%であり、酸素濃度40%の曲線Fおよび酸素濃度50%の曲線Gでは光出力の低下が約8%である。したがって、標準的な大気に含まれる酸素濃度(約21%)よりも高濃度である30%以上の酸素を雰囲気ガスに含めることで、光半導体素子12の光出力が低下する速度を顕著に遅らせることができる。その結果、光半導体素子12を長寿命化できる。
【0032】
つづいて、光半導体装置10の製造方法について説明する。図5は、実施の形態に係る光半導体装置10の製造方法を示すフローチャートである。事前に、光半導体素子12、筐体14、窓部材16、窓固定部材18および第1シール部材20を用意する。つづいて、筐体14の光源室24内に光半導体素子12を収容する(S10)。光半導体素子12は、光半導体素子12の前面に第1開口26が位置するように配置される。光半導体素子12は、基板30上に実装された状態で光源室24に収容されてもよい。基板30は、例えば、放熱機構36の上面38に取り付けられる。基板30を光源室24に収容する際、外部コネクタ46と内部コネクタ54の間を接続ケーブル52で接続してもよい。
【0033】
次に、窓部材16、窓固定部材18および第1シール部材20を用いて筐体14の第1開口26を密閉する(S12)。例えば、筐体14の上に第1シール部材20、窓部材16および窓固定部材18を順に重ねて配置した後、第1締結部材56を用いて筐体14と窓固定部材18を互いに固定することで第1開口26が密閉される。なお、窓部材16と窓固定部材18の間に第2シール部材22を配置し、窓部材16と窓固定部材18の間を密閉してもよい。
【0034】
つづいて、ガス交換孔40を通じて光源室24内の雰囲気ガスを交換する(S14)。例えば、ガス交換孔40から密閉栓42を取り外し、ガス交換孔40にノズルを挿入することでノズルから雰囲気ガスを供給する。光源室24内に供給される雰囲気ガスは、酸素濃度が30体積%以上であり、水分濃度が0.1体積%以下であることが好ましい。
【0035】
つづいて、ガス交換孔40を通じて光源室24の密閉性を確認する(S14)。例えば、ガス交換孔40から光源室24に高圧の雰囲気ガスを導入し、ガス交換孔40の入口で雰囲気ガスの圧力を計測することでガス漏れの有無を検知できる。ガス漏れが検知される場合、つまり、密閉性がNGである場合(S18のN)、S12~S16のステップをやり直す。S12において筐体14、窓部材16、窓固定部材18および第1シール部材20に異常がないかを確認してもよいし、異常があった部品を交換してもよい。S18にてガス漏れが検知されない場合、つまり、密閉性がOKである場合(S18のY)、ガス交換孔40に密閉栓42を取り付けてガス交換孔40を密閉する(S20)。
【0036】
本実施の形態によれば、光源室24がシール部材によって密閉されるため、光源室24を密閉するために金属材料を加熱して接合するといった加熱処理を用いなくて済む。光源室24に封入される雰囲気ガスは高濃度の酸素を含む場合、金属材料を加熱して接合しようとすると金属材料が酸化してしまう。金属接合部が酸化すると、金属接合部による封止性が低下してしまい、雰囲気ガスを長期にわたって封入できなくなる。一方、本実施の形態では、金属接合部を使用せずに筐体14と窓部材16の間を封止できるため、光源室24に高濃度の酸素を容易に封入できる。
【0037】
本実施の形態によれば、筐体14にガス交換孔40が設けられるため、光半導体装置10を組み立てた後に光源室24の雰囲気ガスを容易に交換できる。筐体14にガス交換孔40が設けられない場合、光半導体装置10を組み立てるS12の工程を高濃度の酸素を含む雰囲気ガス中で実行しなければならない。高濃度の酸素を含む環境下では、標準的な大気中に比べて火災が発生しやすいため、作業の安全性を確保するために特別な配慮が必要となる。一方、本実施の形態によれば、光半導体装置10を組み立てた後に事後的に高濃度の酸素を含む雰囲気ガスを封入するため、光半導体装置10を組み立てるS12の工程自体は標準的な大気中で実行できる。その結果、光半導体装置10の製造時の安全性を高めることができる。
【0038】
本実施の形態によれば、本体部14aの側方に延長部14bを設け、延長部14bにガス交換孔40を設けることで、光半導体装置10の組み立て後に雰囲気ガスを交換する作業が容易となる。また、延長部14bに外部コネクタ46を設けることで、本体部14aに大型の放熱機構36を設けることができ、光半導体素子12の冷却性能を高めることができる。
【0039】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0040】
上述の実施の形態では、ガス交換孔40が筐体14の前面側に配置され、外部コネクタ46が筐体14の背面側に配置される場合について示した。別の実施の形態では、ガス交換孔40が筐体14の背面側に配置され、外部コネクタ46が筐体14の前面側に配置されてもよい。その他、ガス交換孔40および外部コネクタ46の双方が筐体14の前面側に配置されてもよいし、ガス交換孔40および外部コネクタ46の双方が筐体14の背面側に配置されてもよい。
【0041】
上述の実施の形態では、筐体14が第1部材32と第2部材34から構成される場合について示した。別の実施の形態では、第1部材32と第2部材34が一体化された部材によって筐体14が構成されてもよい。また、第1部材32と第2部材34の間は、第1締結部材56および第2締結部材58によって固定されるのではなく、接着剤などによって固定されてもよい。別の実施の形態では、第1部材32および第2部材34の少なくとも一方が二以上の部材から構成されてもよい。
【0042】
上述の実施の形態では、筐体14と窓固定部材18の間を第1締結部材56で固定する場合について示した。別の実施の形態では、筐体14と窓固定部材18の間を接着剤で固定してもよい。
【0043】
上述の実施の形態では、ガス交換孔40に密閉栓42を取り付けて密閉する場合について示した。別の実施の形態では、ガス交換孔40を開閉可能とする封止弁がガス交換孔40の入口に設けられてもよい。
【0044】
上述の実施の形態では、光半導体素子12が発光素子である場合について示した。別の実施の形態では、光半導体素子12が受光素子であってもよい。光半導体素子12は、例えば、深紫外光を受光するフォトダイオードであってもよい。
【0045】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0046】
本発明の第1の態様は、光半導体素子と、前記光半導体素子が収容される光源室を区画し、前記光半導体素子の前面に開口が設けられる筐体と、前記開口を塞ぐように設けられる窓部材と、前記筐体に取り付けられ、前記窓部材を前記筐体との間に挟み込んで固定する窓固定部材と、前記筐体と前記窓部材の間を封止するシール部材と、を備え、前記光源室は、密閉可能である光半導体装置である。第1の態様によれば、光源室がシール部材によって密閉されるため、密閉時に金属材料を加熱して接合する加熱処理を用いなくて済む。その結果、金属接合材を酸化させて封止性を低下させる可能性のある酸素を光源室の雰囲気ガスに含めることが容易となる。
【0047】
本発明の第2の態様は、前記筐体は、前記光源室内の雰囲気ガスを交換するためのガス交換孔を有し、前記ガス交換孔は、密閉可能である、第1の態様に記載の光半導体装置である。第2の態様によれば、ガス交換孔を設けることで、窓部材を筐体に取り付けたまま光源室の雰囲気ガスを交換できるため、光源室に雰囲気ガスを封入する作業を容易にできる。
【0048】
本発明の第3の態様は、前記筐体は、前記窓部材の厚み方向に前記窓固定部材と重なる本体部と、前記本体部から前記厚み方向と直交する方向に延在する延長部とを含み、前記ガス交換孔は、前記延長部に設けられる、第2の態様に記載の光半導体装置である。第3の態様によれば、本体部の側方に延長部を設け、延長部にガス交換孔を設けることで、光源室の雰囲気ガスを交換する作業が容易になる。
【0049】
本発明の第4の態様は、前記本体部は、前記光半導体素子を冷却するための放熱機構を含む、第3の態様に記載の光半導体装置である。第4の態様によれば、本体部に放熱機構を設けることで、光半導体素子の冷却性能を高めることができる。
【0050】
本発明の第5の態様は、前記光源室内の雰囲気ガスの酸素濃度は、30体積%以上である、第1から第4のいずれか一つの態様に記載の光半導体装置である。第5の態様によれば、雰囲気ガスの酸素濃度を30体積%以上にすることで、光半導体素子の性能低下を抑制し、光半導体素子を長寿命化できる。
【0051】
本発明の第6の態様は、前記光源室内の雰囲気ガスの水分濃度は、0.1体積%以下である、第1から第5のいずれか一つの態様に記載の光半導体装置である。第6の態様によれば、雰囲気ガスの水分濃度は、0.1体積%以下にすることで、窓部材の結露を防ぐことができ、光半導体素子の性能低下を抑制できる。
【0052】
本発明の第7の態様は、前記窓部材と前記窓固定部材の間を封止するシール部材をさらに備える、第1から第6のいずれか一項に記載の光半導体装置である。第7の態様によれば、窓部材と窓固定部材の間にシール部材をさらに設けることで、密閉性をさらに高めることができる。
【0053】
本発明の第8の態様は、光源室を区画する筐体に設けられる開口が光半導体素子の前面に位置するように前記光源室内に前記光半導体素子を収容するステップと、前記開口を塞ぐ窓部材と、前記窓部材を前記筐体との間に挟み込んで固定する窓固定部材と、前記筐体と前記窓部材の間を封止する第1シール部材と、前記窓部材と前記窓固定部材の間を封止する第2シール部材と、を用いて前記開口を密閉するステップと、前記筐体に設けられるガス交換孔を通じて前記光源室内の雰囲気ガスを交換するステップと、前記ガス交換孔を密閉するステップと、を備える光半導体装置の製造方法である。第8の態様によれば、光半導体装置を組み立てた後にガス交換孔を通じて雰囲気ガスを交換することで、所望の雰囲気ガスを光源室内に封入する作業を容易化できる。
【0054】
本発明の第9の態様は、前記ガス交換孔から前記光源室内に高圧の雰囲気ガスを導入して前記光源室の密閉性を確認するステップをさらに備える、第8の態様に記載の光半導体装置の製造方法である。ガス交換孔を通じて密閉性を確認することで、光半導体装置の信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0055】
10…光半導体装置、12…光半導体素子、14…筐体、14a…本体部、14b…延長部、16…窓部材、18…窓固定部材、20…第1シール部材、22…第2シール部材、24…光源室、26…第1開口、28…第2開口、36…放熱機構、40…ガス交換孔、46…外部コネクタ。
【要約】
【課題】光半導体素子を長寿命化する。
【解決手段】光半導体装置10は、光半導体素子12と、光半導体素子12が収容される光源室24を区画し、光半導体素子12の前面に開口が設けられる筐体14と、開口を塞ぐように設けられる窓部材16と、筐体14に取り付けられ、窓部材16を筐体14との間に挟み込んで固定する窓固定部材18と、筐体14と窓部材16の間を封止する第1シール部材20と、を備える。光源室24は、密閉可能である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5