(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】殺ダニ剤及びその応用
(51)【国際特許分類】
A01N 25/30 20060101AFI20220118BHJP
A01N 55/10 20060101ALI20220118BHJP
A01N 41/04 20060101ALI20220118BHJP
A01P 7/02 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A01N25/30
A01N55/10 500
A01N41/04 Z
A01P7/02
(21)【出願番号】P 2020531807
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2018114804
(87)【国際公開番号】W WO2019140990
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-02-25
(31)【優先権主張番号】201810043269.6
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520064757
【氏名又は名称】重▲慶▼▲嶺▼石▲農▼▲業▼科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING LINGSHI AGRICULTURAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 302, Building 34, Citrus Village, Xiema Town, Beibei District Chongqing 400712, China
(73)【特許権者】
【識別番号】520064768
【氏名又は名称】王▲樹▼良
【氏名又は名称原語表記】WANG, Shuliang
【住所又は居所原語表記】Citrus Research Institute, Xiema District, Beibei District,Chongqing 400712,China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】王▲樹▼良
(72)【発明者】
【氏名】李振▲輪▼
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103355288(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0221223(US,A1)
【文献】特開平07-206612(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107136062(CN,A)
【文献】特開昭51-088626(JP,A)
【文献】米国特許第06103763(US,A)
【文献】特開平10-324601(JP,A)
【文献】特開2009-275036(JP,A)
【文献】J. Econ. Entomol.,2003年,Vol.96, No.1,pp.246-250
【文献】J. Econ. Entomol.,2000年,Vol.93, No.2,pp.180-188
【文献】LankropolTM 4500, AkzoNobel Surface Chemistry,2015年03月07日,[online]、(検索日:2021年2月21日), <URL://https://int2-stella.an-basc.com/globalassets/inriver/resources/pds-lankropol-4500-9116.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリシロキサンエトキシレート及びスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムからなることを特徴とする殺ダニ剤。
【請求項2】
トリシロキサンエトキシレート及びスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムの質量比は1:0.5~2であることを特徴とする請求項1に記載の殺ダニ剤。
【請求項3】
トリシロキサンエトキシレート及びスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムの質量比は1:0.8~1:1.2であることを特徴とする請求項1に記載の殺ダニ剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の殺ダニ剤を、散布する肥料、農薬、植物成長調節剤、又は、除草剤に混合させて用いる殺ダニ剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は界面活性剤を特徴とする殺虫剤技術分野に属し、具体的には殺ダニ剤及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ダニは節足動物門クモガタ綱マダニ亜綱動物で、形態、構造、習性及び生息場所などに非常に多様性に富み、分布は広く、繁殖周期が短い、単為生殖が可能、生活様式が多様、環境への適応力が高く、さまざまな環境に生息している(「応用▲ピ▼▲マン▼学」、忻介六、上海復旦大学出版社、1998年、163-205頁、公開日1998年12月31日)。
【0003】
経済的な意義から、ダニは農林業ダニ、医薬畜産業ダニ、環境ダニの3種類に分けられる。農林業ダニは、植物体とや動植物製品に生息するダニを含み、食性によって植食性ダニと肉食性ダニに分けられる。植食性ダニは主にハダニ、フシダニ、コナダニ、ホコリダニ、シラミダニ、ヒナダニ、ムギダニ、プコウダニ、ネダニ及びササラダニなどがある。刺咬の危害があり、人類生産にとって大多数は破壊者として、人類の疾病を引き起こし、緑色が色落ちする斑、葉の黄化や脱落、枝葉の奇形を引き起こし、貯蔵品を噛んで真菌を伝播し、貯蔵物を変質させる。肉食性ダニは主に、カブリダニ、ナガヒシダニ、カザリダニ、ハエダニ、ハーフヒゼンダニ、オソイダニ、テングダニ、ツメダニ、ナミケダニ、ハモリダニなどがある。他のダニや昆虫などの節足動物を捕食又は寄生し、多くが生物学的退治要素である。医薬畜産業ダニとは、動物の疾病を引き起こすあらゆる種類のダニをいい、人間と飼育動物の身体に寄生するダニと、人間と飼育動物の住む場所に生息するダニがある。例えば、マダニ、ヒゼンダニ、ニキビダニ、ツツガムシ、チリダニ、ミツバチヘギイタダニ、ケダニ、羽毛ダニ、イエダニ及びササラダニなどである。皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性喘息、出血熱、ライム病、Q熱、ダニ媒介脳炎、ペスト、かゆみ、にきび、ニキビダニ性酒さ、ニキビダニ性外耳炎、ニキビダニ性眼瞼縁炎などの疾患を引き起こし、細菌、ウイルス、リケッチアなどの病原微生物を伝播し、ツツガムシ病、ツツガムシ性皮膚炎、ツツガムシ性発熱、Q熱、発疹チフス及び紅斑熱などの疾患を伝播する。環境ダニ類とは土壌に生息し分解作用を果たすダニ類をいい、主にササラダニ、コナダニを含み、多くは腐食性のダニとして腐敗した動植物を餌とし、土壌生態環境における重要な分解者である(「我が国のダニ類研究の最近の進展」、吾馬爾阿布力牧など、生物学通報、2009年第44巻第4期、12~13頁、公開日2009年12月31日)。
【0004】
農林業ダニは農林作物の有害生物であり、畑でよく発生し、局地的な災害につながり、農業生産に影響を及ぼす世界的な課題となっている(「キュウリカブリダニの若ダニと卵に対する9種の農薬の影響」、陳霞ら、中国生物防治学報、2011年第27巻第1号、44頁、公開日2011年2月28日)。長年にわたって柑橘、ワタ、野菜などの作物を栽培する地域での被害により、面積30%以上、収量が大幅に減少したり、収穫が皆無になる。農林業ダニは主に成ダニや若ダニが植物上部の若葉と中部の成葉の裏に集まり、ダニの最盛期には植物上に薄い膜を形成させ、膜に大量の卵、若ダニ、幼ダニが付着するため、植物の成長発育に深刻な影響を与える。ダニは主に葉組織内に口器を挿入し、柵状組織細胞の葉緑体と細胞液を吸い取りことによって植物に危害を与え、植物細胞の破壊は植物の生理機能の変化につながるため、水分バランスの崩れ、光合成過程の損傷及び毒素又は成長調整物質の影響など、植物有機体に一連の損害を与える。被害の初期には宿主の葉面に緑色が抜けて少ない斑点ができ、その後葉全体がかすり状になり、作物の光合成作用に厳重に影響し、宿主植物の正常な生理機能を破壊し、その生長の勢いを弱める。軽度の場合は、落花、落果或いは果実奇形、植物の早期な枯れ落ち、大幅な減収になり、重度の場合は、株全体が枯死し、重大な経済的損失をもたらす。全世界では毎年ダニによる損失は計り知れない。例えば、綿苗が被害を受けた時、すべての葉が落ちて、茎だけになり、綿花の中後期には被害が深刻の場合、実の数が減少し、コットンボール形成期間が延長し、綿花の生産量は下がり、繊維の長さが短縮する。トウモロコシの被害の場合、初期には葉っぱに針先のような斑点が出現し、ひどくなる場合には葉全体が黄化し、しわしわになり、最後に枯れて脱落してしまい、また子実が小さくなり減収又は収穫が皆無になる。茶樹の被害の場合、葉っぱの緑色が失われて褐色になり、葉の質が硬くなり、製造後の茶葉に焦げた味が強く、できたお茶が濁って異臭があり、生産量と品質が著しく低下する。ダニによる柑橘の被害の場合、若梢、葉っぱ、果実の表皮に壊死斑が生じ、果樹の栄養が破壊され、果樹の栄養成長が制限され、柑橘の生産量と品質が著しく低下する。したがって、ダニの防除は農業生産にとっての重要な任務の一つとなっている。現在、農業におけるダニの防除は主に化学薬剤の防除方法を採用している。 例えば、イベルメクチン製剤、ピレスロイド製剤、特製殺ダニ剤、ブロモプロピレート、ピリダベン、安息香酸ベンジル及び燻蒸剤などである(「我が国ダニ類研究の最新進展」、吾瑪爾・阿布力牧ら、生物学通報、2009年第44卷第4期、第15頁、公開日2009年12月31日)。しかしながら、化学殺虫剤は長期にわたり大量と頻繁に使用すると、ダニは多くの殺ダニ剤に対して抵抗性や交差抵抗性を発達しやすく、しかも薬剤耐性の発展が早く、薬剤耐性の問題は深刻化している。
【0005】
現在の研究により、農林業ダニはすでに有機リン系、有機塩素系、ピレスロイド系、ミトコンドリア電子伝達系阻害剤系及び新型テトロン酸系などの殺ダニ剤に対してある程度の薬剤抵抗性を持っていることが明らかになった。ダニの被害を防ぐために、薬剤の使用濃度、用量と頻度を増加させ、使用回数は10~30回/年に達した。例えば、中国南方の実る時期の柑橘園では、ダニの防除について年間30回実施し、防除費用は農業の防除費用全体の80%以上を占め、農業の生産コストを大幅に増加させた。それに加えて、化学農薬はダニの天敵であるものも大量に殺傷したため、ダニの被害が大きくなり、とめどなく悪化し、深刻な食品安全問題を引き起こし、また残留農薬問題が発生し、深刻な食品安全リスクを引き起こし、周囲の自然環境に深刻な汚染をもたらすことで、人間の生存環境を損ない、生態の安全性にも極めて大きな影響を及ぼし、食糧、綿、果物や野菜などの産業の持続可能で健全な発展を長らく制約した。
【0006】
以上の問題を解決するためには、微生物源を使用した殺ダニ剤が開発された。現在、既存の生物源を用いた殺ダニ剤には、アベルメクチン、アルカロイド、フラボノイド類、シトリン類及び植物精油などがあり、これらの生物源を用いた殺ダニ剤は無毒、無公害、汚染が少なく、薬剤抵抗性を発達しにくく、効率が高いなど、多くの利点があることから、高く評価され、多くの注目を集めている。しかし、化学農薬と比べ、生物源を用いた殺虫剤は望ましい殺ダニ効果がなく、即効性が悪く、有効期間が短く、効果の安定性が悪く、かつ防除範囲が小さく、長期に散布した場合、ダニの薬剤抵抗性は向上する。その結果、近年、高頻度にアビオチンを使用することで、ダニのアビオチンに対する抵抗性も高まり、防除効果は次第に低下している。
【0007】
このため、韓国SK社はダニ駆除剤として鉱物乳剤を開発した。この鉱物乳剤は虫体に油膜を形成させ、気門を封鎖し、害虫を窒息死させることができる。また害虫は薬剤抵抗性を発達しにくく、他の農薬と混用することで薬効を高め、有効期間を延長し、散布薬液が早く蒸発しないことを保証し、その飛散を低減させ、害虫の表面を覆うクチクラ層を溶解することを促し、さらに天敵昆虫を効果的に守りながら、一部の小さい害虫や有害なダニに対して直接殺虫と退治の役割を果たす。しかし、この鉱物乳剤のダニ駆除範囲は限られており、果樹花期、幼果期及び果実成熟期に使用することはできず、その応用範囲を大きく制限している。
【発明の概要】
【0008】
そのため、本発明は応用範囲の広い殺ダニ剤を提供することを目的とする。
【0009】
発明者はまた、韓国SK社が開発した鉱物乳剤を用いてダニを殺す場合、よいダニ駆除効果を実現するためには、高い濃度(100~200倍希釈)を施さなければならず、コストが高いことを発見した。
【0010】
上記の目的に達成するため、本発明の技術的解決手段は以下通りである。
【0011】
殺ダニ剤を提供し、当該殺ダニ剤は界面活性剤及び浸透剤を含む。
【0012】
ダニ駆除ことは、特定の物質を使用してクモガタ綱マダニ亜綱に属する体外寄生虫の死亡率又はその成長率を抑制する能力を高めることである。
【0013】
発明者は、界面活性剤と浸透剤を組み合わせて調製した薬剤をダニ駆除に使用すると、即効性が良く、有効期間が長く、応用範囲が広く、薬物の残留がないか残留が少なく、ダニ駆除効果の安定性が良いことを発見した。
【0014】
本発明の殺ダニ剤は応用範囲が広く、果樹の花期、幼果期、果実の成熟期に使用されるほかに、農林業ダニだけでなく、医薬畜産業ダニにも使用されることができる。
【0015】
さらに、前記界面活性剤はトリシロキサンエトキシレートである。
【0016】
前記トリシロキサンエトキシレートは噴霧改良剤や共力剤として広く使用され、高濃度(含有量0.667~1.0g/L)でのみダニ駆除作用を果たし、72時間のダニ駆除率は30%程度であるため、それだけで殺ダニ剤として使用できない。またこの濃度を使用すると植物に重篤な薬害が発生しやすい。
【0017】
さらに、前記浸透剤はスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムである。
【0018】
さらに、前記殺ダニ剤はトリシロキサンエトキシレート及びスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムを含む。
【0019】
さらに、界面活性剤と浸透剤の質量比は1:0.5~2である。
【0020】
界面活性剤と浸透剤を以上の配合比で再調製することで、殺ダニ効果をさらに高めることができる。
【0021】
さらに、界面活性剤と浸透剤の質量比は1:0.7~1:1.5である。
【0022】
さらに、界面活性剤と浸透剤の質量比は1:0.8~1:1.2である。
【0023】
本発明に係る殺ダニ剤では、当業者が具体的な使用要求により、本発明の殺ダニ剤にグリセロール、植物油、鉱物油及びメチル化植物油などの蒸散抑制剤を添加することもできる。上記の蒸散抑制剤は当業者にとって明確な概念である。
【0024】
さらに、本発明は殺ダニ剤のダニ駆除への応用を保護することも目的とする。
【0025】
前記殺ダニ剤は単独で使用でき、含有量が0.05wt%~0.10wt%の場合、ダニの卵、幼ダニ、若ダニ、成ダニのいずれにも、迅速かつ良好な退治効果がある。
【0026】
前記殺ダニ剤もそのままアミトラズ、アベルメクチン、エトキサゾール、フェンピロキシメート、ピリダベン、ヘキシチアゾクス、スピロテトラマト、スピロジクロフェン、フェンプロパトリン、ビフェントリンなどの薬剤に加えることで、強い殺ダニ効果を示し、特に含有量0.02wt%~0.05wt%で、ダニを迅速に殺すことができる。
【0027】
さらに、本発明は前記殺ダニ剤の散布する肥料、農薬、植物成長調節剤及び除草剤における応用を保護することも目的とする。
【0028】
前記殺ダニ剤は含有量0.02wt%~0.10wt%の場合、散布する肥料、農薬、植物生長調整剤及び除草剤に使用されることで、肥効と薬効を著しく高めることができる。
本発明の好適な効果は次の通りである。
【0029】
本発明に係る殺ダニ剤は即効性が良く、散布後10分間以内にダニの活動能力を失う。
【0030】
本発明に係る殺ダニ剤は保持期間が長く、1000倍希釈液を1回散布すると30日間以内にダニが爆発的に繁殖しない。本発明に係る殺ダニ剤は応用範囲が広く、農林業ダニだけでなく、医薬畜産業ダニにも使用され、果樹の花期、幼果期、果実の成熟期に使用され、即効性が高く、有効期間が長く、薬物残留がないか残留が少なく、ダニ駆除効果の安定性が高い。
【0031】
本発明に係る殺ダニ剤は安全で環境に優しく、薬物残留がないか残留が少ない。
【0032】
本発明に係る殺ダニ剤は効果の安定性が高い。
【0033】
本発明に係る殺ダニ剤は使いやすく、単独で使用でき、ダニの卵、幼ダニ、若ダニ、成ダニのいずれにも迅速かつ良好な退治効果があり、また他の薬剤に直接加えて、速やかにダニを殺すことができる。
【0034】
本発明に係る殺ダニ剤は散布する肥料、農薬、植物生長調整剤及び除草剤に使用されることで、肥効と薬効を著しく高めることができる。
【0035】
考案を実施するための形態
次の実施例では、本発明の内容をよりよく説明するためのものであるが、本発明の内容をこれらの実施例に限定するものではない。したがって、当業者が上記の発明内容に基づいて実施手段を非本質的に改善又は調整しても本発明の保護範囲に該当する。
【0036】
以下のトリシロキサンエトキシレートは浙江新農化工股▲ふん▼有限公司(農用有機ケイ素248、有効成分含有量>99%)、スルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム(有効成分含有量は50wt%<含水率50wt%>又は75wt%<含水率17wt%、エタノール含有率8wt%>)は桑達化工(南通)有限公司、1.8%ECアベルメクチン薬剤は山東鄒平農薬有限公司、20%WPピリダベンは江蘇克勝集団股▲ふん▼有限公司、22.4%SCスピロテトラマトはバイエル作物科学(中国)有限公司、110g/LSCエトキサゾールは住友化学上海有限公司、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤(フェンプロパトリン5.0%、ヘキシチアゾクス2.5%)は青島凱源祥化工有限公司、アベルメクチン・フェンプロパトリン水和剤(アベルメクチン0.1%,フェンプロパトリン1.7%)は済南賽普実業有限公司、アミトラズ(200g/L)は青島海納生物科技有限公司、72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤は上海デュポン農化有限公司から購入した。
【本発明を実施するための形態】
【0037】
実施例1
殺ダニ剤:有効成分含有量50wt%のスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムを140℃雰囲気に入れ、4時間真空乾燥(真空度10kPa)後、室温まで冷却する。その後、トリシロキサンエトキシレートと冷却後に得られた固体を質量比1:0.5で混合し、固体物が溶解するまで撹拌したものを前記殺ダニ剤とする。
【0038】
実施例2
殺ダニ剤:有効成分含有量75wt%のスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムを140℃雰囲気に入れ、2時間真空乾燥(真空度4kPa)後、室温まで冷却する。その後、トリシロキサンエトキシレートと冷却後に得られた固体を質量比1:0.7で混合し、50℃固体物が溶解するまで撹拌したものを前記殺ダニ剤とする。
【0039】
実施例3
殺ダニ剤:有効成分含有量75wt%のスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムを140℃雰囲気に入れ、3時間真空乾燥(真空度6kPa)後、室温まで冷却する。その後、トリシロキサンエトキシレートと冷却後に得られた固体を質量比1:0.9で混合し、60℃固体物が溶解するまで撹拌したものを前記殺ダニ剤とする。
【0040】
実施例4
殺ダニ剤:トリシロキサンエトキシレートと有効成分含有量75wt%のスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムを質量比1:2で混合し、均一に混和するまで撹拌したものを前記殺ダニ虫剤とする。
【0041】
実施例5
殺ダニ剤:トリシロキサンエトキシレートと有効成分含有量75wt%のスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウムを質量比1:2.67で混合し、均一に混和するまで撹拌したものを前記殺ダニ虫剤とする。
【0042】
ダニ駆除効果性能試験
農薬圃場薬効試験法により、同一の果樹園内の処理群ごとに開花期の柑橘の木2株を無作為に選定し、処理群ごとに4回繰り返し測定し、4回測定した圃場で統計されたダニ数の平均値を最終結果とする。実施例1~5で得られた殺ダニ剤を1000倍希釈し、1.8%ECアビオチンを2000倍希釈し、20%WPピリダベンを2000倍希釈し、22.4%SCスピロテトラマトを4000倍希釈し、110g/LSCエトキサゾールを5000倍希釈し、水を対照とし、散布前と散布後の3日目、10日目、15日目、20日目、30日目にエリアごとに25枚の葉を無作為抽出し、各処理群の生きているダニ数を統計し、SPSS 19.0を使用してデータの分散分析とLSDの多重比較分析を行い、結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
表1より、実施例1~5で得られた殺ダニ剤は散布後3日以内、柑橘ハダニの防除効果が100%で、かつ散布後30日間の防除効果が明らかに低下しない。このことから、本発明に係る殺ダニ剤はダニ駆除の即効性と効果の安定性に優れ、有効期間が長いことが明らかになる。
【0045】
実施例3で得られた殺ダニ剤をそれぞれ1000倍と1500倍に希釈したものの柑橘ハダニへの防除効果、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤(フェンプロパトリン5.0%、ヘキシチアゾクス2.5%)を1000倍希釈したものの柑橘ハダニへの防除効果、及び、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤(フェンプロパトリン5.0%、ヘキシチアゾクス2.5%)を1000倍希釈したもの及び実施例3で得られた殺ダニ剤を3000倍希釈したものからなる薬剤と、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤(フェンプロパトリン5.0%、ヘキシチアゾクス2.5%)を1000倍希釈したもの及び実施例3で得られた殺ダニ剤を4000倍希釈したものからなる薬剤と、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤(フェンプロパトリン5.0%、ヘキシチアゾクス2.5%)を1000倍希釈したもの及び実施例3で得られた殺ダニ剤を5000倍希釈したものからなる薬剤の、柑橘ハダニへの防除効果を測定する。具体的な試験方法は、同一の果樹園内の処理群ごとに果実の成熟期にある柑橘の木2株を無作為に選定し、処理群ごとに4回繰り返し測定し、4回測定した柑橘ハダニの平均値を最終結果とする。また水を対照とし、散布前と散布後の3日目、10日目に各エリアの柑橘の木の異なる部位から25枚の葉を無作為選定し、処理群ごとの生きている柑橘ハダニの数を統計し、SPSS 19.0を使用してデータの分散分析とLSDの多重比較分析を行い、結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
表2によれば、実施例3で得られた殺ダニ剤を1000倍と1500倍に希釈したものの柑橘ハダニへの防除効果は、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤を1000倍希釈したものより明らかに優れる。また、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤(フェンプロパトリン5.0%、ヘキシチアゾクス2.5%)を1000倍希釈したもの及び実施例3で得られた殺ダニ剤を3000倍希釈したものからなる薬剤と、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤(フェンプロパトリン5.0%、ヘキシチアゾクス2.5%)を1000倍希釈したもの及び実施例3で得られた殺ダニ剤を4000倍希釈したものからなる薬剤と、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤(フェンプロパトリン5.0%、ヘキシチアゾクス2.5%)を1000倍希釈したもの及び実施例3で得られた殺ダニ剤を5000倍希釈したものからなる薬剤の柑橘ハダニへの防除効果はフェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤を1000倍希釈したものより明らかに優れる。このことから、本発明に係る殺ダニ剤は柑橘ハダニの優れたダニ駆除効果があり、かつ、フェンプロパトリン・ヘキシチアゾクス水和剤の1000倍希釈液にも明らかな増効作用を果たすことが証明される。
【0048】
実施例3で得られた殺ダニ剤はそれぞれ1000倍、1500倍、2000倍及び3000倍を希釈したものの柑橘ハダニへの防除効果、アベルメクチン・フェンプロパトリン水和剤を1000倍希釈したものの柑橘ハダニへの防除効果、アミトラズを1000倍希釈したものの柑橘ハダニへの防除効果、及び、アベルメクチン・フェンプロパトリン水和剤を1000倍希釈したもの及び実施例3で得られた殺ダニ剤を3000倍希釈したものからなる薬剤、アミトラズを1000倍希釈したもの及び実施例3で得られた殺ダニ剤を3000倍希釈したものからなる薬剤のミカンハダニへの防除効果を測定する。具体的な試験方法は、同一の果樹園内の処理群ごとに幼果期にある柑橘の木2株を無作為に選定し、処理群ごとに4回繰り返し測定し、その平均値を最終結果とする。また水を対照とし、散布前と散布後の1日目、3日目、14日目に柑橘の木の異なる部位から50枚の葉を無作為選定し、処理群ごとの生きているミカンハダニの数を統計し、SPSS 19.0を使用してデータの分散分析とLSDの多重比較分析を行い、結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
表3によれば、実施例3で得られた殺ダニ剤の1000倍、1500倍及び2000倍液の柑橘ハダニへの防除効果は、アベルメクチン・フェンプロパトリン水和剤1000倍液とアミトラズ1000倍液より明らかに優れる。またアベルメクチン・フェンプロパトリン水和剤1000倍液及び実施例3で得られた殺ダニ剤を3000倍希釈したものからなる薬剤の柑橘ハダニへの防除効果はアベルメクチン・フェンプロパトリン水和剤1000倍液より明らかに優れる。またアミトラズ1000倍液及び実施例3で得られた殺ダニ剤を3000倍希釈したものからなる薬剤の柑橘ハダニへの防除効果はアミトラズ1000倍液より明らかに優れる。このことから、本発明に係る殺ダニ剤は柑橘ハダニの優れたダニ駆除効果があり、かつ、アベルメクチン・フェンプロパトリン水和剤1000倍液とアミトラズ1000倍液にも明らかな増効作用を果たすことが証明される。
【0050】
実施例1~5で得られた殺ダニ剤を1500倍希釈したもののササゲ若苗10株を無作為に選定し、処理群ごとに4回繰り返し測定し、その平均値を最終結果とする。また水を対照とし、散布前と散布後の1日目、3日目、14日目にエリアごとにササゲの異なる部位から50枚の葉を無作為選定し、処理群ごとの生きているハダニの数を統計し、SPSS 19.0を使用してデータの分散分析とLSDの多重比較分析を行い、結果を表4に示す。
【0051】
【表4】
表4によれば、本発明に係る殺ダニ剤1500倍液を散布した後3日、ナミハダニへの防除効果が99.42~100%に達する。このことから、本発明に係る殺ダニ剤はナミハダニの即効性があり、優れたダニ駆除効果があることが証明される。
【0052】
実施例1~5で得られた殺ダニ剤を1000倍希釈した液のヤギダニへの防除効果を測定し、同一の養殖場内で臨床症状の観察と鏡検を経た典型的なダニ症の臨床症状を持つヤギ60頭を選定し、すべての試験用ヤギの毛刈りを行い、処理群ごとにヤギ10頭を無作為に選定し、対応する希釈倍数の殺ダニ剤をヤギの全身に均一に塗布し、水を対照とし、個別飼育し、投与後3日目、7日目、30日目に消毒した刃付きナイフでヤギの背部、臀部と頭部からフケを取り、処置と鏡検を行い、検体を顕微鏡下で観察し、若虫体肢が動かないか虫体が変形した場合は死亡とみなし、陰性と判定する。そうでなければ陽性と判定する。生きている虫体を認めず、かつヤギの背部、臀部と頭部にかゆみや不安の症状を認めない場合、治癒とみなす。虫体陰性化率=虫体陰性化羊の数/同群実験羊数×100%。ダニ病治癒率=ダニ病治癒羊数/同群実験羊数×100%。結果を表5に示す。
【0053】
【表5】
表5によれば、本発明に係る殺ダニ剤1000倍液を塗布後30日目に、ヤギダニ虫体陰性化率は7日目で100%となり、30日目の治癒率は平均90%~100%となることから、本発明に係る殺ダニ剤がヤギダニに対して優れたダニ駆除効果があることが明らかである。
【0054】
72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤600倍希釈液をそれぞれ1回、2回と、3回散布する時、及び実施例1~5で得られた殺ダニ剤(共力剤)を3000倍希釈した液及び72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤を600倍希釈した液からなる薬剤を1回散布する時のレタスべと病への防除効果を測定する。同一の菜園で各処理群ごとにエリア面積3×3m2を処理し、5回繰り返し、その平均値を最終結果とする。また水を対照とし、72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤600倍希釈液で処理群に1回、2回、3回散布し、間隔時間を7日間とする。実施例1~5で得られた殺ダニ剤の共力剤を3000倍を希釈した液及び72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤を600倍希釈した液からなる薬剤は1回散布し、毎回レタスの葉の表裏を均一に湿らせ、そして清水を対照とする。1回目散布後21日、各エリアごとからレタス5本を無作為に選定し、各株の下から上まで5枚の葉を調べ、各葉は葉の面積に占める病斑の割合で格付け、発病指数と防除効果を計算する。格付け基準:0級は無病斑、1級は病斑面積が葉面積全体の5%以下、3級は病斑面積が葉面積全体の6%~10%、5級は病斑面積が葉面積全体の11~25%、7級は病斑面積が葉面積全体の26%~50%、9級は病斑面積が葉面積全体の50%以上を占める。発病指数=(Σ発病等級葉数×当該発病等級数値)/(調査総葉数×最高発病等級数値)。相対的防除効果/(%)=[(対照領域発病指数-処理領域指数)/対照領域発病指数]×100%。SPSS 19.0を用いてデータの分散分析とLSD多重比較分析を行った結果を表6に示す。
【0055】
【表6】
表6によれば、実施例1~5で得られた共力剤3000倍液及び72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤600倍希釈液からなる薬剤は1回散布だけで、そのレタスべと病への防除効果について、72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤600倍希釈液の3回散布による防除効果が得られるため、72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤600倍希釈液の1回又は2回の防除効果よりも優れることが明らかである。このことから、本発明に係る共力剤は殺菌剤(72%シモキサニル・マンコゼブ水和剤など)のレタスべと病への防除効果を明らかに高めることができることが証明される。
【0056】
スライドグラス法により、実施例3で得られた殺ダニ剤1500倍と3000倍希釈液、トリシロキサンエトキシレート1500倍希釈液、及び実施例1で得られたスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム固体1500倍希釈液によるミカンハダニの成ダニへの影響を測定する。処理群ごとにミカンハダニ50匹を設定し、4回繰り返し測定し、水を対照とする。散布後10分と72時間に各処理群の生きている成ダニ数を統計し、その平均値を最終結果とする。SPSS 19.0を用いてデータの分散分析とLSD多重比較分析を行った結果を表7に示す。
【0057】
【表7】
表7によれば、トリシロキサンエトキシレート1500倍希釈液及び実施例1で得られたスルホこはく酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム1500倍希釈液を比較し、実施例3で得られた殺ダニ剤1500倍希釈液と3000倍希釈液を用いて10分と72時間処理後、ミカンハダニの成ダニの死亡率が著しく向上することがわかる。このことから、本発明に係る殺ダニ剤はダニ駆除効果を著しく高めることが証明される。
【0058】
実施例1~5で得られた殺ダニ剤1200倍希釈液によるミカンハダニへの影響を測定する。柑橘葉のイン・ビトロ培養法を用いて同一株の健康な柑橘の木からの葉を採取し、柑橘の葉各枚に雌成ダニ20匹を人工接種し、1匹ごとに葉5枚を処理し、4回繰り返し、その平均値を最終結果とする。培養1週間後に実施例1~5で得られた殺ダニ剤1200倍液に3秒間浸漬し、水を対照とする。また葉の表面は乾燥後、培養を1週間継続し、解剖鏡下でミカンハダニの数と卵数を統計し、SPSS 19.0を用いてデータの分散分析とLSD多重比較分析を行った結果を表8に示す。
【0059】
【表8】
表8によれば、本発明に係る殺ダニ剤はミカンハダニ及びその卵に対して優れた退治効果を示していることがわかる。
【0060】
また、本明細書を実施形態により記述するが、各実施形態にはただ1つの独立した技術的手段が含まれるわけではなく、明細書のこのような記述方式は単なる明瞭な説明に過ぎず、当業者は明細書を1つの全体としてみなし、各実施例における技術的手段も適切に組み合わせて、当業者が理解できるその他の実施方式を形成できると、理解すべきである。