(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】激越の治療のための舌下デクスメデトミジンの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4174 20060101AFI20220203BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220203BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220203BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220203BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220203BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61K31/4174
A61P25/14
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/20
A61P25/28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021067080
(22)【出願日】2021-04-12
(62)【分割の表示】P 2019534837の分割
【原出願日】2017-12-29
【審査請求日】2021-05-12
(32)【優先日】2016-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518014933
【氏名又は名称】バイオエクセル セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ナンダバラン,クリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】ヨッカ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,サミーア
【審査官】一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/061413(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/061554(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0098981(US,A1)
【文献】米国特許第06716867(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0021588(US,A1)
【文献】Minerva Anestesiol, 2014;80:167-175
【文献】Journal of ECT, Volume 29, Number 2, e18
【文献】Pharmacotherapy, 2015;35(3):251-259
【文献】Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia, Vol.30, No.6, 2016:pp 1509-1515
【文献】Pediatric Anesthesia 25(2015) 468-476
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における激越を治療するための口腔粘膜接着性組成物であって、約3マイクログラム~約100マイクログラムの範囲での投与量でデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩と1以上の薬学上許容できるキャリア/賦形剤とを含み、激越が前記対象における認知症に関連している、前記組成物。
【請求項2】
前記組成物が、フィルム、ウエハー、貼付剤、トローチ剤、ジェル、噴霧剤、錠剤、及び液状滴剤から成る群から選択される剤形である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記剤形がフィルムであり、フィルムが薄膜である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記フィルムが速やかな作用の発現を提供する、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記投与量が約5マイクログラム~約90マイクログラムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記投与量が約5マイクログラム~約60マイクログラムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記投与量が約5マイクログラム~約40マイクログラムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記投与量が約5マイクログラム~約30マイクログラムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記対象が、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(DLB)及び血管性認知症から成る群から選択される認知症を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記激越が攻撃性を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記激越が急性激越である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記激越が慢性激越である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記激越が重度の激越である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬、さらに詳しくはデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を舌下に投与することを含む、対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を開示する。本発明はまた、その調合物と併せて1以上の薬学上許容できるキャリア及び/または賦形剤と一緒に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む、激越または激越の兆候を治療するための舌下組成物も開示する。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、その開示があらゆる目的で全体として参照によって本明細書に組み入れられる2016年12月31日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/441,164、2017年3月15日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/471,393及び2017年8月8日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/542,323に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
激越は、攻撃性、闘争性、多動性及び脱抑制を含む様々な行動異常または行動障害を指すことができる包括的な用語である。激越は、普通、変動する経過を提示する幾つかの異なる臨床状態で見ることができる相対的に無関係な行動の非特異的な群である。激越は、幾つかの異なる医学的条件及び薬剤の相互作用によって、またはヒトの思考能力を悪化させる何らかの状況によって引き起こされ得る。複数の根底にある病態生理学的な異常には、ドーパミン作動系、セロトニン作動系、ノルアドレナリン作動系及びGABA作動系の調節異常が介在する。激越は、運動(静座不能)及び認知の双方での非生産的な、広範性の及び過剰な活動亢進を特徴とし、表に出ない不快な緊張を伴う。安全性への鍵は、早期に介入し、激越の攻撃性や暴力への進行を防ぐことである。
【0004】
激越は神経変性障害と関連することができる。長期の進行性の神経変性過程の重要な兆候の1つは臨床的には認知症として知られる。認知症には、アルツハイマー型認知症(AD)、前頭側頭型認知症(FTD)、血管性認知症、レビー小体病(LBD)及びダウン型認知症が含まれる。成人における認知症は、ヒトの記憶、ならびに学習する、論理的に考える、判断を下す、情報を伝える及び日常活動を行う能力を徐々に破壊する。後期では、患者は人格及び行動における変化、たとえば、不安、疑念、激越及び攻撃性を経験し得る。
【0005】
Sebastiaan Engelborghs,et al.,in Neurochemistry International,2007,Nov,52(6):1052-60は、前頭側頭型認知症では、ドーパミン作動性神経伝達の高い活性及びドーパミン作動性神経伝達のセロトニン作動性調節の変化がそれぞれ激越性行動及び攻撃性行動に関連することを開示した。Pia Jul,et al.,in Journal of Alzheimer’s disease,2015,Sep,49(3):783-95は、rTg4510マウスがP301L-tau依存性の活動亢進を示し、これらのマウスにおける激越様の表現型は進行性アルツハイマー病(AD)及び前頭側頭型認知症(FTD)で観察される行動異常の幾つかとの相関を形成し得ることを開示した。Nathan Hermannet.al.,in Journal of Neuropsychiatry,2004,Aug,16(3):261-276は、ノルアドレナリン作動系内での活性の代償性の上昇がアルツハイマー病における激越及び攻撃性の行動的な及び精神的な症状に寄与し得ることを開示した。
【0006】
激越はまた、統合失調症、たとえば、双極性障害もしくは双極性躁病のような双極性疾患、うつ病、せん妄、等のような神経精神病状態にも関連し、またはアルコールや薬物の乱用離脱に関連することができる。運動性不穏状態及び付随する精神的な緊張によって表される急性激越は、統合失調症及び双極性躁病を含む一部の精神障害に存在することができ、攻撃的行動に急激に発展し得る深刻な医学的問題である。急性激越は、ペーシング、手をもむこと、手を握ったり開いたりすること、談話心迫、怒鳴ること、及び激化した激越で人々を脅かすことを含む兆候を特徴とする。
【0007】
今日まで、認知症または統合失調症の患者における激越を治療するための「標準治療」と見なされる単一の薬物はない。激越の重症度に応じて、一般に3つのクラスの薬物、すなわち、経口で、筋肉内にまたは静脈内に投与される第1世代の抗精神病薬、第2世代の抗精神病薬及びベンゾジアゼピン類が最も頻繁に使用されている。単独でまたは組み合わせで与えられる典型的な抗精神病薬及びベンゾジアゼピンの筋肉内注射は過去数十年にわたって激越の最適な治療法であった。急性激越について現在好まれている治療パラダイムは補完的なベンゾジアゼピンの有無にかかわらず投与される非定型の抗精神病薬剤を使用することである。
【0008】
さらに具体的には、激越の患者は普通、たとえば、プロプラノロール及びピンドロールのようなβブロッカー、たとえば、ブスピロンのような抗不安薬、たとえば、ロラゼパムのようなベンゾジアゼピン、たとえば、バルプロエート及びラモトリギンのような抗けいれん剤、たとえば、ハロペリドール、ドロペリドール、ジプラシドン及び他の高効力のドーパミン遮断剤のような抗精神病薬、ならびに、たとえば、オランザピンのような非定型抗精神病薬を処方されている。しかしながら、ブスピロン、バルプロエート、ハロペリドール、ドロペリドール及びジプラシドンは潜在的な有害効果を有し、認知症における慢性激越の管理での最適な投与量及び長期的な有効性は非常に限定される。ロラゼパムは内科的治療の前に使用される場合、患者における激越を治療するのに唯一有効である。ロキサピン(抗精神病薬)は吸入を介して激越の患者を治療するためにFDAで認可されているが、気管支けいれん及び認知症関連の精神病の高齢患者での死亡率の上昇について黒枠付きの警告文に関連する(FDAラベル、ロキサピンまたはアダスヴェ(登録商標))。オランザピン、ジプラシドンまたはハロペリドールとのその併用はQT延長とも関連性があり、錐体外路副作用は入院の状況で非常に慎重に見張られるべきである。筋肉内のオランザピンに関連する有害事象(8つの命にかかわることを含む)の報告は、厳重な処方指針に従い、他のCNS抗うつ剤との同時使用を回避する必要性を強調している。
【0009】
行動上の急患の治療についてのエキスパートコンセンサスガイドラインは、薬剤及びその投与経路を選択することにおける最も重要な因子の1つとして発症の速度を引用している。しかしながら、抗精神病薬は強固な抗精神病効果を有する前に数日から数週間を要し得る。にもかかわらず、それらは一般に、激越患者にて数分以内に平穏効果を有する。たとえば、ベンゾジアゼピンまたは即効性の鎮静剤は重度の激越患者を速やかに平穏化するが、これらの薬剤による継続した治療は耐性をもたらす。
【0010】
従って、神経精神病状態(たとえば、統合失調症または双極性躁病)及び神経変性疾患の患者における激越の治療は、現在使用されている薬剤に関連する重大な副作用の可能性、投与の経路(静脈内/筋肉内)及びこれらの薬剤を投与するための結果として生じる入院の必要性のために、未だに限定されている。理想的な状況では、統合失調症または認知症の患者のための抗激越薬は、鎮静状態なしで平穏化の迅速な開始を有し、上手く認容され、高い安全性限界で投与しやすいものであるべきである。
【0011】
アルファ-2アドレナリン作動薬は、高血圧、うっ血性心不全、狭心症、痙縮、緑内障、下痢を含む多数の状態のために及びアヘン剤の離脱症状の抑制のために治療上使用されている。アルファ-2アドレナリン作動薬の例には、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオンが挙げられる。本発明の発明者らは、アルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩の舌下投与が激越の治療のための特に効果的で且つ安全な介入であることを思いがけなく見いだした。
【0012】
(S)-4-[1-(2,3-ジメチルフェニル)エチル]-3H-イミダゾール(デクスメデトミジン)は、集中治療室での治療の間に当初挿管され、人工呼吸器を装着された患者の鎮静のための、及び外科手術及び他の処置に先立って及び/またはその最中に挿管されていない患者のための注射製剤として市販されている。
【0013】
デクスメデトミジンは、外科的処置及び集中治療室(ICU)での間、静脈内にまたは頬内に投与されると激越抑制効果を有することが報告されている。たとえば、Ibacache,et.al.,in Anesthesia & Analgesia,2004,Jan;98(1):60-3は、小児にてセボフルラン麻酔に続く激越を軽減するための静脈内単回用量のデクスメデトミジンの投与を開示している。他の静脈内投与は、Jeanne Boyer,et al.,in Nursing Critical care,2010,Jan,5(1):30-34,Yahya Shehabi,et.al.,in Anesthetic Intensive Care,2010,Jan,38(1):82-90,及びJoseph D.Tobias,in Journal of Pediatric Pharmacology Therapeutic,Jan-Mar,2010,15(1):43-48によって報告されている。NCT02720705(clinicaltrials.govに由来する臨床試験の特定番号)は、集中治療室の設定でのセボフルランで治療された就学前小児における覚醒時激越の予防のための経頬デクスメデトミジンの投与を開示している。
【0014】
デクスメデトミジンの舌下での使用はWO2016/061413にて開示されている。しかしながら、WO2016/061413の焦点は睡眠障害を治療するのに適した用量での舌下でのデクスメデトミジンの投与であり、顕著な鎮静状態を誘導する。我々は今や驚くべきことに、舌下に投与されたデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、神経変性疾患(たとえば、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症及びアルツハイマー病/認知症における日没症候群)に関連する激越、神経精神病状態(たとえば、双極性障害、統合失調症、双極性躁病、せん妄及びうつ病)に関連する激越、アルコール及び薬物の乱用離脱に関連する激越、またはOPD/IPDの処置(たとえば、MRI、CTまたはCATスキャン、腰椎穿刺、骨髄吸引/生検、抜歯または他の歯科処置)のような他の状態に関連する激越を含む激越を効果的に治療することができることを見いだしている。舌下で投与される用量は激越を治療するのに効果的であるが、顕著な鎮静状態を引き起こすには不十分であるように選択されてもよい。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供し、その際、前記激越は、認知症、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症もしくはパーキンソン病のような神経変性疾患に関連し、または統合失調症、双極性障害、双極性躁病、せん妄もしくはうつ病のような神経精神病状態に関連し、またはOPD/IPDの処置(たとえば、MRI、CTまたはCATスキャン、腰椎穿刺、骨髄吸引/生検、抜歯または他の歯科処置)に関連し、またはアルコール及び薬物の乱用離脱に関連する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0016】
好まれる態様では、本発明は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0017】
本発明の別の態様は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供し、その際、前記激越は神経変性疾患に関連する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供し、その際、前記激越は認知症、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、パーキンソン病または他の神経変性疾患に関連する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0019】
本発明の別の目的は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供し、その際、前記激越は統合失調症、双極性障害、双極性躁病、せん妄、うつ病または別の関連する神経精神病状態に関連する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0020】
本発明のさらなる目的は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する、予防するまたは軽減する方法を提供し、その際、前記激越はアルツハイマー病/認知症における日没症候群に関連する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越に関連する兆候を治療する方法を提供し、その際、前記激越はOPD/IPDの処置(たとえば、MRI、CTまたはCATスキャン、腰椎穿刺、骨髄吸引/生検、抜歯または他の歯科処置)に関連する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0022】
本発明のさらに別の目的は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越に関連する兆候を治療する方法を提供し、その際、前記激越はアルコール及び薬物の乱用離脱に関連する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0023】
本発明のさらなる態様は、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療するための舌下組成物を提供し、その際、前記激越は神経変性疾患に関連し、前記舌下組成物は1以上の薬学上許容できるキャリア及び/また賦形剤と一緒に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む。
【0024】
本発明の別の態様は、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療するための舌下組成物を提供し、その際、前記激越は統合失調症、双極性障害、双極性躁病、せん妄、うつ病または別の関連する神経精神病状態に関連し、前記舌下組成物は1以上の薬学上許容できるキャリア及び/また賦形剤と一緒に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む。
【0025】
本発明の追加の態様は、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療するための舌下組成物を提供し、その際、前記激越はアルツハイマー病/認知症における日没症候群に関連し、前記舌下組成物は1以上の薬学上許容できるキャリア及び/また賦形剤と一緒に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む。
【0026】
本発明のさらに別の態様は、治療を必要とする対象にて激越または激越に関連する兆候を治療するための舌下組成物を提供し、その際、前記激越はOPD/IPDの処置(たとえば、MRI、CTまたはCATスキャン、腰椎穿刺、骨髄吸引/生検、抜歯または他の歯科処置)に関連し、前記舌下組成物は1以上の薬学上許容できるキャリア及び/また賦形剤と一緒に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、治療を必要とする対象にて激越または激越に関連する兆候を治療するための舌下組成物を提供し、その際、前記激越はアルコール及び薬物の乱用離脱に関連し、前記舌下組成物は1以上の薬学上許容できるキャリア及び/また賦形剤と一緒に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む。
【0028】
本発明の別の目的は、1以上の薬学上許容できるキャリア及び/また賦形剤と一緒に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む舌下組成物を提供し、前記舌下組成物は、フィルム、ウエハー、貼付剤、トローチ剤、ジェル、噴霧剤、錠剤、液状滴剤、等から成る群から選択される。
【0029】
本発明のさらなる目的は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象の口腔粘膜に舌下で投与して、顕著な鎮静状態を引き起こさない投与量で激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。
【0030】
本発明の特定の態様では、舌下に投与される投与量は便宜上、約3マイクログラム~約100マイクログラムの間の範囲であり得る。好適な投与量の例には、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(たとえば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラムが挙げられる。用量は1日に1回以上投与されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】攻撃行動及び激越行動の累積持続時間に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で舌下投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図1B】攻撃行動及び激越行動の頻度に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で舌下投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図1C】攻撃行動及び激越行動の累積持続時間に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で静脈内投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定。溶媒対照(溶媒)に対して
**p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図1D】攻撃行動及び激越行動の頻度に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で静脈内投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図2A】攻撃までの待ち時間に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で舌下投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。データは平均値±SEMとして表す。統計的解析は一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定によって行った。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図2B】攻撃までの待ち時間に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で静脈内投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。データは平均値±SEMとして表す。統計的解析は一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定によって行った。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図3A】毛繕い及び探索のような中立行動の累積持続時間に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で舌下投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。データは平均値±SEMとして表す。統計的解析は一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定によって行った。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図3B】毛繕い及び探索のような中立行動の頻度に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で舌下投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。データは平均値±SEMとして表す。統計的解析は一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定によって行った。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図3C】不動時/平穏時のような中立行動に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で舌下投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。データは平均値±SEMとして表す。統計的解析は一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定によって行った。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図3D】毛繕い及び探索のような中立行動の累積持続時間に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で静脈内投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。データは平均値±SEMとして表す。統計的解析は一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定によって行った。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図3E】毛繕い及び探索のような中立行動の頻度に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で静脈内投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。データは平均値±SEMとして表す。統計的解析は一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定によって行った。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図3F】不動時/平穏時のような中立行動に対する様々な用量(0.5~3μg/kg)で静脈内投与したデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果を示す図である。平均値±SEMとして表したデータ。データは平均値±SEMとして表す。統計的解析は一元配置ANOVAとその後のDunnettの事後検定によって行った。溶媒対照(溶媒)に対して
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。
【
図4A】ラットにおけるデクスメデトミジン塩酸塩の舌下(SL)投与に続く平均血漿濃度を示す図である。平均値±SDとして表したデータ。
【
図4B】ラットにおけるデクスメデトミジン塩酸塩の静脈内(IV)投与に続く平均血漿濃度を示す図である。平均値±SDとして表したデータ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
I.略記
本明細書の全体を通して以下の略記が使用される:
AD:アルツハイマー病
AUC:曲線下面積
BZDs:ベンゾジアゼピン類
CNS:中枢神経系
CT/CATスキャン:コンピュータ断層撮影スキャン
Cmax:特定された区画で薬剤が達成する最大(またはピーク)の血清濃度
EPS:錐体外路副作用
FD & C:連邦食品、医薬品、化粧品
FTD:前頭側頭型認知症
GABA:ガンマ-アミノ酪酸
5-HT:5-ヒドロキシトリプタミン
ICU:集中治療室
IPD:入院患者部門
MRI:磁気共鳴画像診断
Mg:ミリグラム
NE:ノルエピネフリン
OPD:外来患者部門
PTSD:心的外傷後ストレス障害
RSS:Ramsay鎮静スコア
RIT:ラット侵入者試験
SLOS:Smith-Lemli Opitz(スミス・レムリ・オピッツ)症候群
Tmax:Cmaxが観察される時間
【0033】
II.定義
本明細書で使用されている専門用語は実施形態を説明するのみの目的のためであって、限定であることを意図するものではないことが理解されるであろう。本明細書で使用されるとき、単数形態「a」、「an」及び「the」には、文脈が明瞭に指示しない限り、複数の指示対象が含まれる。従って、たとえば、「溶媒」には1以上のそのような溶媒等が含まれる。
【0034】
定義されない限り、本明細書で使用されている専門用語及び科学用語すべては本発明が関係する当該技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものに類似する、またはそれと同等である他の方法及び物質を本発明の実践で使用することができるが、好まれる物質及び方法が本明細書に記載されている。
【0035】
用語「治療すること」及び「治療」は本明細書で使用されるとき、治癒的療法、予防的療法及び/または予防療法を指し、相互交換可能に使用することができる。
【0036】
本明細書で使用されるとき、指示されない限り、用語「医薬組成物」、「組成物」、「製剤」及び「本発明の組成物」は相互交換可能に使用される。言及されない限り、その用語は原薬、すなわち、デクスメデトミジンを含有する医薬組成物を包含することを意味し、それらに限定されない。組成物は、医薬活性を欠いている、または疾患の診断、治癒、軽減、治療もしくは予防での、もしくはヒト身体の構造もしくは機能に影響を及ぼす他の直接効果を欠いている「不活性成分」または化合物である1以上の「賦形剤」も含有してもよい。
【0037】
本明細書で使用されるとき、用語「有効量」は「治療上有効な用量」または「治療上有効な量」と相互交換可能であり、所望の効果を生じるのに十分な量を指す。有効量は対象の臨床的に有意な状態にて改善を引き起こすのに十分である。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「薬学上許容できる塩」は毒性ではないことが知られ、薬学の文献で一般に使用されている塩を指す。そのような塩を形成するのに使用される典型的な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸、等が挙げられる。たとえば、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換のアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸及びヒドロキシアルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸のような有機酸に由来する塩も使用されてもよい。好まれる塩は塩酸塩である。
【0039】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」は好ましくはヒト患者を指す。一部の実施形態では、対象は、たとえば、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマまたは霊長類のような非ヒト哺乳類を含む任意の動物であることができる。
【0040】
用語「激越」は本明細書で使用されるとき、たとえば、前頭葉のような脳の特定の領域の機能不全のせいで、またはたとえば、ドーパミン及びノルエピネフリンのような神経伝達物質系の機能不全のせいで発生し得る興奮性、感情的爆発、損傷した思考、または多動性及び過剰な言語活動を意味する。本発明では、激越には心的外傷後ストレス障害における攻撃性及び過覚醒も含まれる。激越は急性であってもよいし、または慢性であってもよい。
【0041】
用語「激越の兆候」には、過剰な運動活動(例には、ペーシング、ロッキング、表示行為、指差し、情動不安、型にはまったことを繰り返し行うことが挙げられる)、口頭での攻撃性(たとえば、怒鳴ること、過剰に大声で話すこと、口汚い罵りを使用すること、金切り声をだすこと、叫ぶこと、他の人々を脅かすこと)、身体的な攻撃性(たとえば、つかむこと、押しのけること、押すこと、拳を固めること、抵抗すること、他を打つこと、物体または人々を蹴ること、引っ掻くこと、咬むこと、物体を投げること、自身をぶつけること、ドアをバタンと閉めること、物を引き裂くこと、及び所有物を壊すこと)が挙げられる。
【0042】
用語「急性激越」は、迅速に発生し、発症が激しくかつ突然である激越を意味する。急性激越は、特に神経精神病状態で存在してもよいが、たとえば、神経変性疾患及び神経精神病状態に関連してもよい。急性激越は治療しないままであれば、慢性激越につながり得る。
【0043】
用語「慢性激越」は長時間かけて発症し、急性激越ほど激しくない激越を意味する。慢性激越は、特に神経変性疾患で存在してもよいが、たとえば、神経変性疾患及び神経精神病状態に関連してもよい。
【0044】
用語「神経変性疾患」には、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(またはピック病)、認知症、レビー小体型認知症、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、進行性核上麻痺または他の関連する神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
用語「神経精神病状態」には、統合失調症、双極性疾患(双極性障害、双極性躁病)、うつ病、せん妄または他の関連する神経精神病状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
「日没症候群」は認知症の一部の形態の患者で一般的に混乱状態の増大と情動不安の夕暮れ概日症候群である。それはアルツハイマー型認知症の中期の間で発生することがさらに多いと思われる。それは患者の認知症の進行と共に治まると思われる。アルツハイマー型患者の約20~45%がある種の夕暮れ時兆候の混乱状態を経験するであろう。混乱状態及び激越は夕方近く及び夕方に、または太陽が沈むにつれて悪化する。
【0047】
用語「周術期激越」は外科的処置の前、最中または後での激越、または神経変性疾患もしくは神経精神病状態とは関連しないICU激越を意味する。
【0048】
用語「舌下で」は文字通り「舌の下」を意味し、物質が消化管ではなく舌の下での血管を介して速やかに吸収されるような方法で口を介して物質を投与する方法を指す。舌下吸収は、高度に脈管化された舌下粘膜を介して生じ、物質を直接血液循環にアクセスさせ、それによって消化器の影響とは無関係に直接的な全身投与を提供し、望ましくない肝臓の初回通過代謝を回避する。従って、製剤におけるデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の総量が減らされてもよく、それによって有害な副作用の可能性を減らし、且つ製造元に費用便益を提供する。
【0049】
「鎮静状態」は本明細書で使用されるとき、患者または対象が、気道確保と規則的な呼吸パターンを独立して且つ連続して維持する能力、及び物理的刺激や口頭での指令に適宜且つ合理的に反応する能力を保持する意識低下を意味する。本明細書で使用されるとき、「顕著な鎮静状態を引き起こすことなく」は、患者がRamsay鎮静スケールにおけるレベル3未満の鎮静状態のレベルを経験することを意味する。レベル3は鎮静化されているが、指令に応答することを意味する。
【0050】
III.方法
本発明は、有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、対象における激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0051】
一実施形態では、アルファ-2アドレナリン作動薬には、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、または薬学上許容できるそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
好まれる一実施形態では、本発明は、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。特定の態様では、激越は顕著な鎮静状態を引き起こすこともなく抑制される。
【0053】
激越は、舌下の経路を介して相対的に低用量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を用いて効果的に治療されてもよい。その結果、顕著な鎮静状態を引き起こすことなく激越の緩和を提供することに加えて、治療は少ない副作用(たとえば、心臓または呼吸器の副作用)でまたは副作用なしでも効果的である。
【0054】
さらなる実施形態では、本発明は、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与してデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の実質的な部分が患者の肝臓に入ることなく即効型の緩和を提供することを含む、対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を指向する。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、舌下組成物を介して有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に投与することを含む、対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供し、その際、舌下組成物は、フィルム、ウエハー、貼付剤、トローチ剤、ジェル、噴霧剤、錠剤、液状滴剤から選択される。
【0056】
さらなる実施形態では、本発明は、舌下組成物を介して1以上の薬学上許容できるキャリア及び/または賦形剤と一緒に有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供し、その際、舌下組成物は舌下フィルムである。特定の態様では、激越は神経変性疾患または神経精神病状態に関連する。別の特定の態様では、治療は顕著な鎮静状態を引き起こすことなく効果的である。
【0057】
さらなる実施形態では、本発明は、舌下組成物を介して1以上の薬学上許容できるキャリア及び/または賦形剤と一緒に有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供し、その際、舌下組成物は舌下フィルムである。特定の態様では、激越は神経変性疾患または神経精神病状態に関連する。別の特定の態様では、治療は顕著な鎮静状態を引き起こすことなく効果的である。
【0058】
さらに他の実施形態では、本発明は、顕著な鎮静状態を引き起こさない投与量で有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩を対象に投与することを含む、治療を必要とする前記対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。好適なアルファ-2アドレナリン作動薬には、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、または薬学上許容できるそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の態様では、組成物にて使用されるアルファ-2アドレナリン作動薬の投与量は約3マイクログラムから約100マイクログラムまでである。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、顕著な鎮静状態を引き起こさない投与量で有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする前記対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。本発明の特定の態様では、舌下組成物にて使用されるデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の投与量は約3マイクログラムから約100マイクログラムまでである。好適な投与量の例には、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(たとえば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラムが挙げられる。用量は1日に1回以上投与されてもよい。
【0060】
さらなる実施形態では、本発明は、約0.05マイクログラム/対象の体重kgから約1.5マイクログラム/対象の体重kgまでの投与量で有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする前記対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。好適な投与量の例には、約0.1マイクログラム/kg~約1マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.5マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.4マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.3マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.2マイクログラム/kg、約0.07マイクログラム/kg、約0.05マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg、約0.2マイクログラム/kg、約0.3マイクログラム/kg、約0.4マイクログラム/kg、約0.5マイクログラム/kg、約0.6マイクログラム/kg、約0.7マイクログラム/kg、約0.8マイクログラム/kg、約0.9マイクログラム/kg、約1.0マイクログラム/kg、約1.1マイクログラム/kg、約1.2マイクログラム/kg、約1.3マイクログラム/kg、約1.4マイクログラム/kg、約1.5マイクログラム/kgが挙げられる。用量は1日に1回以上投与されてもよい。
【0061】
さらに他の実施形態では、本発明は、顕著な鎮静状態を引き起こさない投与量で有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩を対象に投与することを含む、治療を必要とする前記対象にて神経変性疾患に関連する激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。好適なアルファ-2アドレナリン作動薬には、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、または薬学上許容できるそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。組成物にて使用されるアルファ-2アドレナリン作動薬の投与量は便宜上約3マイクログラムから約100マイクログラムまでである。
【0062】
その上さらなる実施形態では、本発明は、望まれていない(たとえば、顕著な)鎮静状態を引き起こさない投与量で有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする前記対象にて神経変性疾患に関連する激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。使用されるデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の投与量は便宜上、約3マイクログラムから約100マイクログラムまで、たとえば、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満、約5マイクログラム、約6マイクログラム、約7マイクログラム、約8マイクログラム、約9マイクログラム、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラムであってもよい。用量は1日に1回以上投与されてもよい。
【0063】
さらに他の実施形態では、本発明は、顕著な鎮静状態を引き起こさない投与量で有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩を対象に投与することを含む、治療を必要とする前記対象にて神経精神病状態に関連する激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。好適なアルファ-2アドレナリン作動薬には、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、または薬学上許容できるそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。組成物にて使用されるアルファ-2アドレナリン作動薬の投与量は便宜上約3マイクログラムから約100マイクログラムまでである。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、顕著な鎮静状態を引き起こさない投与量で有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を対象に舌下で投与することを含む、治療を必要とする前記対象にて神経精神病状態に関連する激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。舌下組成物にて使用されるデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の投与量は便宜上、約3マイクログラムから約100マイクログラムまで、たとえば、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満、約5マイクログラム、約6マイクログラム、約7マイクログラム、約8マイクログラム、約9マイクログラム、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラムであってもよい。用量は1日に1回以上投与されてもよい。
【0065】
本発明の方法に従って対象を治療する場合、許容できる鎮静状態のレベルはRamsay鎮静スコア(RSS)システムに従って好ましくはレベル3であり、またはレベル3を下回る。従って、本発明の特定の実施形態は、約3マイクログラム~約100マイクログラムの範囲での用量でデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩をヒト対象に舌下で投与し、それによってレベル3でのまたはレベル3を下回る(たとえば、レベル2またはレベル3)RSSを達成することを含む、治療を必要とする前記対象にて激越または激越の兆候を治療する方法を提供する。
【0066】
IV.医薬組成物
本発明はまた有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩、好ましくはデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む舌下医薬組成物も提供する。
【0067】
本発明の舌下医薬組成物はまた薬学上許容できるキャリア及び/または賦形剤も含んでもよい。好適な薬学上許容できるキャリアには、水、塩化ナトリウム、結合剤、浸透促進剤、希釈剤、潤滑剤、香味剤、着色剤、等が挙げられる。
【0068】
本発明の舌下医薬組成物は、対象に単独で投与されてもよく、または1以上の他の好適な有効成分との併用で投与されてもよい。
【0069】
一実施形態では、本発明は、対象における激越、たとえば、神経変性疾患、アルツハイマー病または認知症における日没症候群に関連する激越の治療のために有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む舌下医薬組成物を提供する。特定の態様では、舌下医薬組成物は顕著な鎮静状態を引き起こすことなく対象にて激越を効果的に治療する。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、対象にて統合失調症、双極性障害、双極性躁病、他の双極性疾患、うつ病、せん妄または他の関連する神経精神病状態に関連する、対象における激越の治療のために有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む舌下医薬組成物を提供する。特定の態様では、舌下医薬組成物は顕著な鎮静状態を引き起こすことなく対象にて激越を効果的に治療する。
【0071】
本発明の舌下医薬組成物は、たとえば、フィルム、ウエハー、貼付剤、トローチ剤、ジェル、噴霧剤、錠剤、液状滴剤、等であってもよい。
【0072】
本発明の一実施形態では、舌下医薬組成物は錠剤または充填粉末の形態である。
【0073】
本発明の別の実施形態では、舌下医薬組成物は貼付剤またはフィルム(たとえば、薄膜)の形態である。貼付剤は接着特性を有して貼付剤の移動または嚥下を妨げてもよい。貼付剤は、偶発的な嚥下の場合には摂取可能であってもよく、もしくは容易な廃棄を可能にしてもよく、または貼付剤は処方された時間の後、舌下から取り出されてもよい。
【0074】
本発明のさらに別の実施形態では、舌下医薬組成物はペースト、ジェルまたは軟膏の形態である。ペースト、ジェルまたは軟膏の粘度を調整して舌下での保持を可能にすることができる。
【0075】
本発明のさらなる実施形態では、舌下医薬組成物は液体(たとえば、溶液、懸濁液またはエマルションとして)であり、たとえば、噴霧剤または滴剤として提示されてもよい。溶液には、たとえば、水、生理食塩水、塩化ナトリウム溶液のような希釈液、またはたとえば、プロピレングリコール、グリセロール、エチルアルコール等のような他の好適な溶媒と一緒に有効成分が含まれる。溶液のための希釈剤は特に、生理食塩水溶液または水であってもよい。投与される溶液の量は便宜上、約0.01mL~約1mL(たとえば、約0.025~0.5mL)であってもよい。
【0076】
本発明の非固形組成物は、舌下に組成物を噴霧すること、滴らせること、塗り付けることまたは吹き掛けることによって便宜上投与されてもよい。
【0077】
本発明の特定の実施形態では、液体の形態にて、たとえば、風味付けされたまたは風味付けされない生理食塩水溶液にてデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が舌下に投与される。液状組成物は滴剤としてまたは噴霧剤として便宜上、舌の下に投与されてもよい。
【0078】
デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩は便宜上、組成物全体の約0.001%から99.99%まで、たとえば、約0.01%~約90%、さらに詳しくは約0.01%~約30%を表してもよい。
【0079】
組成物が液体またはジェルである場合、第1の単位用量を適用し、舌下の適所で所定の時間、たとえば、少なくとも約30秒間、さらに詳しくは約60秒間以上保持する。次いで第2の単位用量を適用し、適所で類似の時間量保持する。驚くべきことに、この処置は激越または激越の兆候の治療において本発明の組成物の効果を顕著に高める。
【0080】
別の実施形態では、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の舌下組成物は硬質錠剤または圧縮粉末錠剤である。参照によって本明細書に組み入れられるKhankari,et al.への米国特許第6,221,392号にて開示されたように、錠剤は便宜上、約30~120秒で舌の下にて溶解するように設計されてもよい。特定の実施形態では、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の舌下組成物は、感覚刺激的に心地よい口当たりのために粗さの少ない成分を有する硬質錠剤である。錠剤(または、圧縮されて錠剤を形成することができる有効成分を含有するその粒子)はまた、保護的な外膜、たとえば、微粒子、マトリクス型微粒子及びマイクロカプセルの形成で便宜上使用されるポリマーも含んでもよい。
【0081】
さらなる実施形態では、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の舌下組成物は、硬質の、圧縮された、速やかに溶解できる錠剤である。錠剤は便宜上、マトリクス内に有効成分を含む。マトリクスは、たとえば、少なくとも1つの充填剤及び潤滑剤で構成されてもよい。充填剤には、たとえば、ラクトースまたはマンニトールが挙げられ、好適な潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、二酸化珪素及びタルクが挙げられる。マトリクスはまた、結合剤(たとえば、ポビドン、糖またはカルボキシメチルセルロース)、崩壊剤(たとえば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、甘味剤(たとえば、スクラロース)、等の1以上も含んでもよい。錠剤は便宜上、約2%以下の摩損度及び約15~約50ニュートンの硬度を有してもよい。
【0082】
本発明の別の態様は、包装された舌下錠を作製する方法を提供する。方法は、(a)デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩と、少なくとも非直接圧縮の充填剤及び潤滑剤を含むマトリクスとを含む混合物を形成する工程と、(b)混合物を圧縮して、舌下で溶解できるマトリクスに分配された有効成分を含む、複数の硬質で、圧縮された、速やかに崩壊できる粒子(たとえば、ビーズ)を形成する工程と、(c)包装に先立って一括して生成物を保存する工程とを含む。別の実施形態では、次いで、包装当たり1を超えて存在するように包装の内腔に剤形を包装する。直接圧縮は剤形を形成する好まれる方法である。上記に記載されているように直接的な経口投薬に適合させた複数の硬質で、圧縮された、速やかに溶解する錠剤を含有する開けられ、且つ再び密閉できる包装も本明細書で提供される。
【0083】
別の実施形態では、本発明は発泡剤を含む舌下錠である。発泡剤は便宜上、完成した錠剤の重量をもとにして約95重量%までの量で、さらに詳しくは約30重量%~約80重量%の間の量で存在してもよい。十分な発泡物質が錠剤組成物に含まれて錠剤が水性環境にさらされると、約5cm3を超えるが、約30cm3未満の気体を生成する。発泡剤を含む舌下組成物は、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6,200,604号にて開示されている。
【0084】
特定の一実施形態では、発泡剤は、たとえば、可溶性酸供給源のアルカリ性炭酸塩または重炭酸塩との反応の結果、二酸化炭素を遊離する。酸供給源には便宜上、たとえば、クエン酸、酒石酸、アマリン酸、フマル酸、アジピン酸、及びコハク酸のような食用酸及び酸が挙げられてもよい。炭酸塩及び重炭酸塩の供給源には、たとえば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、等のような無水固形の炭酸塩及び重炭酸塩が挙げられる。
【0085】
舌下投与用の本発明の噴霧組成物は、1以上の薬学上許容できる液体(たとえば、組成物の約30重量%~約99.99重量%の量で存在する)を含んでもよい。そのような液体は、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩のための溶媒、共溶媒または非溶媒であってもよい。薬学上許容できる液体の例には、水、エタノール、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、薬学上許容できる油(たとえば、ダイズ、ヒマワリ、ピーナッツ、ペパーミント等)、等が挙げられる。薬学上許容できる液体を選択して、活性のある医薬成分を溶解し、その安定で均質な懸濁液もしくは溶液を生成する、または懸濁液もしくは溶液の組み合わせを形成する。
【0086】
さらに、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の舌下噴霧製剤は1以上のキャリア及び/または賦形剤を含んでもよい。キャリア/賦形剤の例には粘度調節物質(たとえば、ポリマー、糖、糖アルコール、ガム、粘土、シリカ、等)が含まれてもよい。便宜上使用されてもよい特定のポリマーの1つはポリビニルピロリドン(PVP)である。粘度調節物質は便宜上、噴霧製剤の約0.01重量%~約65重量%の量で存在してもよい。キャリア/賦形剤の他の例には防腐剤(たとえば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン及びメチルパラベン)が挙げられる。防腐剤は便宜上、噴霧製剤の約0.001重量%~約10重量%の量で存在してもよい。キャリア/賦形剤は、便宜上、噴霧製剤の約0.001重量%~約65重量%の量で存在する香味剤、甘味剤(たとえば、スクロース、グルコース、デキストロース、マルトース、フルクトース等のような糖類)、人工甘味剤(たとえば、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファム、スクラロース、等)、または糖アルコール(たとえば、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトールシロップ、等)であってもよい。キャリア/賦形剤の他の例には便宜上、噴霧製剤の約0.01重量%~約5重量%の量で存在する緩衝液及びpH調整剤(たとえば、水酸化ナトリウム、クエン酸塩及びクエン酸)が挙げられる。着色剤(たとえば、噴霧製剤の約0.001重量%~約5重量%の量で存在する)、香料(たとえば、噴霧製剤の約0.001重量%~約1重量%の量で存在する)、EDTAのようなキレート剤(たとえば、噴霧製剤の約0.001重量%~約1重量%の量で存在する)、UV吸収剤(たとえば、噴霧製剤の約0.001重量%~約10重量%の量で存在する)、及び便宜上、噴霧製剤の約0.001重量%~約5重量%の量で存在する消泡剤(たとえば、低分子量のアルコール、ジメチコン)も本発明の噴霧製剤における適当なキャリア/賦形剤として含まれてもよい。
【0087】
本発明の特定の態様の1つは激越の治療のために1以上のキャリア及び/または賦形剤と一緒にデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む舌下フィルムを提供する。
【0088】
本発明の舌下フィルムに組み込まれてもよい賦形剤には、以下:成膜剤、口当たり改良剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤、防腐剤、甘味剤、着色剤、香味剤、乳化剤、崩壊剤、唾液分泌剤、抗酸化剤、透過促進剤、溶媒、等の1以上が挙げられる。
【0089】
成膜剤は一般に、本発明のフィルムに化学構造を提供する作用物質を意味する。成膜剤の有効量は組成物の約10重量%から約99重量%に及び、さらに好ましくは約50重量%から約90重量%に及ぶ。本発明のフィルム組成物の一部として利用することができる成膜剤には、セルロースエーテル、修飾デンプン、天然ガム、食用ポリマー、海藻抽出物、陸生植物抽出物、プルラン、ポリビニルピロリドン、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
セルロースエーテルの例には、メチルヒドロキシセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
修飾デンプンには、酸及び酵素で加水分解したコーンスターチ及びポテトスターチ、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
天然ガムの例には、アラビアガム、グアーガム、イナゴマメガム、カラーギーナンガム、アカシアガム、カラヤガム、ガティガム、トラガカント寒天、タマリンドガム、キサンタンガム、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
食用ポリマーの例には、微細結晶セルロース、セルロースエーテル、キサンタン、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
海藻抽出物の例には、アルギン酸ナトリウム、カラーギーナン、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
陸生植物抽出物には、コンニャク、ペクチン、アラビノガラクタン、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
特定の成膜剤には、プルラン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース及びメチルヒドロキシセルロース(MHC)が挙げられる。
【0097】
用語「溶媒」は一般に、溶質を溶解するであろう液体を指す。溶媒を用いて成膜剤及び他の賦形剤を溶解して本発明の成膜組成物を調製してもよい。溶媒には、脱塩した/蒸留した水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、酢酸メチルエーテル、ジメチルアセトアミド、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及びトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の舌下フィルムは便宜上、約1%w/wまでの量で溶媒を含んでもよい。
【0098】
用語「安定剤」は一般に、保存可能期間の間、製剤に安定性を付与するであろう作用物質を指す。本発明の安定剤には、たとえば、油/水乳化剤及び風味固定剤を挙げることができる。本発明の組成物における安定剤の有効量は、たとえば、組成物の約0重量%~約45重量%、さらに詳しくはは約4重量%~約25重量%の範囲であってもよい。本発明の好適な安定剤の例には、アラビアガム、微細結晶セルロース、カラーギーナン、キサンタンガム、イナゴマメガム、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の安定剤には、アラビアガム及び微細結晶セルロースが挙げられる。
【0099】
「崩壊剤」は、食用フィルムの溶解を助けこれにより、フィルムの有効性をより早く実感することができる。本発明の食用フィルムで使用するのに好適な崩壊剤には、アルギン酸、微細結晶セルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。超崩壊剤として知られる特定の崩壊剤も本発明の食用フィルムで使用するのに好適である。超崩壊剤には、架橋ポリマー(たとえば、クロスポビドン)、架橋デンプン(たとえば、デンプングリコール酸ナトリウム)、及び架橋セルロース(たとえば、クロスカルメロースのような修飾されたカルボキシメチルセルロース)が挙げられる。これらの超崩壊剤は、水及びほとんどの他の溶媒に不溶性であり、迅速に膨潤する特性を有し、高い毛管作用で良好な水吸収性を有し、迅速な崩壊を生じる。多数の溶媒におけるそれらの不溶性は、それらが費用のかかる複数工程の過程とは対照的に単一工程の過程にて本発明の舌下組成物の製造を可能することを意味している。
【0100】
崩壊剤または超崩壊剤は便宜上、組成物の約1重量%から約10重量%に、さらに詳しくは約1重量%から約5重量%に及ぶ量で本発明の舌下組成物(たとえば、食用フィルム)に存在する。
【0101】
本発明の食用フィルムで使用するのに好適な「乳化剤」には、アラビアガム、カラーギーナン、ステアリン酸トリエタノールアミン、四級アンモニウム化合物、アカシアガム、ゼラチン、レシチン、ベントナイト、ビーガム、それらの誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤は、組成物の約40重量%まで、さらに詳しくは約25重量%までの量で本発明の組成物にて使用することができる。乳化剤は、揮発油及び香味剤を被包する油/水エマルションを作り出し、それによって風味固定剤として本質的に作用する安定剤であることができる。本発明の食用フィルムで使用するための特定の乳化剤はアラビアガムである。
【0102】
「可塑化剤」または「可塑剤」は本発明の食用フィルム組成物の柔軟性を改善し、脆弱性を低減するのに利用されてもよい。可塑化剤は便宜上、組成物の約30重量%まで、たとえば、15重量%までを構成してもよい。好適な可塑化剤の例には、グリセリン、ソルビトール、トリアセチン、モノアセチン、ジアセチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水素化デンプン加水分解物、コーンシロップ、低分子量プロピレングリコール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル及びフタル酸ジブチルのようなフタル酸誘導体、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルのようなクエン酸誘導体、及びそれらのヒマシ油誘導体及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特定の可塑化剤にはソルビトール及びグリセリンが挙げられる。
【0103】
用語「防腐剤」は一般に、微生物を殺傷するのに使用される賦形剤を指し、またはその増殖及び繁殖を防ぎ、抑制し、もしくは遅延させ、且つ不注意に加えられる微生物の汚染もしくは増殖を防ぐのに十分な濃度でのみ生成物に含められる。好適な防腐剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン及び安息香酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。防腐剤は便宜上、組成物の約0.001%w/w~約10%w/wで組成物に存在してもよい。
【0104】
用語「甘味剤」は一般に医薬組成物に甘味を付与するのに使用される賦形剤を指す。本発明の組成物で使用するのに好適な甘味剤には、アスパルテーム、デキストロース、グリセリン、マンニトール、サッカリンナトリウム、ソルビトール及びスクロースが挙げられるが、これらに限定されない。甘味剤は便宜上、組成物の約5%w/w~約20%w/wの量で組成物に存在してもよい。
【0105】
用語「着色剤」または「着色料」は一般に、医薬組成物に色彩を付与するのに使用される賦形剤を指す。好適な着色料には、FD&C赤No.3、FD&C赤No.20、FD&C黄No.6、FD&C青No.2、D&C緑No.5、D&C橙No.5、D&C赤No.8、他のF.D.&C.染料、カラメル、赤色酸化鉄、及びたとえば、ブドウ皮抽出物、ビート赤色粉、ベータ-カロテン、アナトー、カーマイン、ターメリックまたはパプリカのような天然の着色剤が挙げられるが、これらに限定されない。着色料は便宜上、組成物の約0.001重量%~約10重量%の量で組成物に存在してもよい。
【0106】
用語「香味剤」または「香味料」は一般に医薬組成物に心地よい風味(匂いであることも多い)を付与するのに使用される賦形剤を指す。好適な香味料には、合成芳香油、香味性芳香物質、天然油、植物全体からの抽出物または、たとえば、葉、花、果実のような植物の一部からの抽出物またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例には、シナモン油、冬緑油、ペパーミント油、丁子油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、タイム油、ニオイヒバ油、ナツメグ油、セージ油、苦扁桃油、及びカッシア油が挙げられる。他の有用な香味料には、バニラ、たとえば、レモン、オレンジ、ブドウ、ライムまたはグレープフルーツのような柑橘類の果実油、及び、たとえば、リンゴ、西洋ナシ、モモ、イチゴ、ラズベリー、サクランボ、プラム、パイナップルまたはアプリコットの精油のような果物の精油が挙げられる。本発明の組成物で使用するための特定の対象とする香味料には、市販のオレンジ、ブドウ、サクランボ及び風船ガムの風味、及びそれらの混合物が挙げられる。使用される香味剤の量は所望の感覚刺激性の効果を含む多数の因子に左右されるであろう。特定の香味料には、ブドウ及びサクランボの風味、たとえば、オレンジ風味のような柑橘類の風味が挙げられる。香味料は便宜上、組成物の約0.001%w/w~約10%w/wの量で組成物に存在してもよい。
【0107】
用語「唾液分泌剤」は本発明の組成物の使用中にさらに多くの唾液分泌を促進する作用物質である。組成物が、患者の胃への組成物の輸送に役立つ水の助けを借りずに患者によって服用されることが意図されるのであれば、これは重要な特徴である。唾液分泌剤は、たとえば、患者の口中で唾液分泌を開始させる乳化剤または食用酸であることができる。唾液分泌剤として有用な乳化剤には、スルホン酸アルキルアリール、硫酸アルキル、スルホン化アミド及びアミン、硫酸化及びスルホン化エステル及びエーテル、スルホン酸アルキル、ポリエトキシ化エステル、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、ポリグリセロールエステル、ソルビタンエステル及びエトキシレート、ラクチル化エステル、レシチンのようなリン脂質、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、スクロースエステル、及びそれらの混合物が挙げられる。乳化剤は飽和されてもよいし、または不飽和であってもよい。唾液分泌剤である乳化剤の一部は結合剤としても機能してもよいことが言及されるべきである。唾液分泌剤として有用な食用酸の例には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、たとえば、塩化ナトリウム及び塩置換物、塩化カリウムのような食用塩、及びそれらの混合物が挙げられる。本発明の舌下フィルムに存在する唾液分泌剤の量は便宜上、最終組成物の約15重量%まで、たとえば、組成物の約0.3重量%~約0.4重量%の範囲であってもよい。
【0108】
用語「抗酸化剤」は一般に、酸化を阻害するので酸化過程による活性剤の劣化を防ぐのに使用される賦形剤を指す。好適な抗酸化剤には、たとえば、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、EDTA及びエデト酸ナトリウムが挙げられる。抗酸化剤は便宜上、組成物の約0.001%w/w~約2%w/wの量で組成物に存在してもよい。
【0109】
用語「透過促進剤」は一般に、活性剤の細胞膜への透過を高める、または活性剤の局所/全身性の吸収を高めるのに使用される賦形剤を指す。本発明で使用されてもよい透過促進剤には、たとえば、アルコール、ポリエチレングリコールのような可溶化剤、キレート剤(たとえば、シクロデキストリン)、ラウリン酸スクロース、またはオレイン酸スクロースが挙げられるが、これらに限定されない。透過促進剤は便宜上、組成物の約0.1%w/w~約5%w/wの量で組成物に存在してもよい。
【0110】
本発明の一実施形態では、本発明の舌下医薬組成物は、組成物の粘膜吸収を高めるのに適する粘膜透過促進剤を含む。
【0111】
舌下デクスメデトミジン製剤(たとえば、噴霧剤、滴剤、等)は、標準の医薬品適正製造基準に従って適量の前述の成分を混合することによって作製されてもよい。各成分の相対量は得られる製剤の望ましい薬理学的な及び薬物動態の特性に干渉すべきではない。
【0112】
本発明の舌下デクスメデトミジンフィルムは便宜上、PharmFilm(登録商標)の技術(MonoSolが所有する)またはARx LLCが所有する技術を用いて調製されてもよい。種々の特許及び特許出願が全体として本明細書に組み入れられるが、それらには、ARx LLCに譲渡された米国特許または特許公開番号9585961、7470397、7727466、92481469545376、2017-0087084、96622979662301、2017-0246108、2017-0252294、9441142及びMonosol Rx譲渡された米国特許または特許公開番号7425292、7357891、86636878685437、7897080、8241661、8617589、8936825、9561191、9303918、9346601、8282954、7972618、9073294が挙げられる。
【0113】
本発明の舌下フィルムを調製することにおいて、活性剤、たとえば、デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩と、成膜剤と、任意で口当たり改良剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤、防腐剤、甘味剤、着色料、香味料、乳化剤、崩壊剤、唾液分泌剤、抗酸化剤、透過促進剤を含む群から選択される1以上のキャリア及び/または賦形剤とを相溶性の溶媒にて溶解し、成膜組成物を形成する。相溶性の溶媒には水、エタノールのようなアルコール、酢酸エチル、アセトン、及びそれらの混合物が挙げられる。成膜組成物を離型性キャリア上に流し込み、乾燥させてシート/フィルムを形成する。キャリア材は、浸してフィルムキャリア基材間で破壊的な結合を形成することなく、フィルム溶液を対象とするキャリア幅にわたって均一に広げることができる表面張力を有さなければならない。好適なキャリア材の例には、ガラス、ステンレス鋼、テフロン(登録商標)及びポリエステル含侵紙が挙げられる。フィルムの乾燥は、乾燥オーブン、乾燥端末機、真空乾燥機、またはフィルムを構成する成分に有害効果を与えない他の好適な乾燥器具を用いて高温で行われてもよい。本発明の舌下フィルムは、他の確立された方法、たとえば、押出(たとえば、加熱溶融型押出、固体分散型押出)、流延成形(たとえば、固体流延または半固体流延)、圧延法、等によっても調製することができる。
【0114】
V.投与
態様では、本発明は、激越を効果的に治療するのに十分な量で対象に投与されるアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩を含む舌下組成物を提供する。アルファ-2アドレナリン作動薬の量は、顕著な鎮静状態を引き起こすことなく激越を効果的に治療するのに十分である。アルファ-2アドレナリン作動薬は便宜上、1日当たり1用量、2以上の用量で「必要に応じて」動物(たとえば、ヒト)対象に送達されてもよい。組成物はまた単一の剤形を介して、または複数の剤形を介して投与されてもよい。
【0115】
別の態様では、本発明は、激越を効果的に治療するのに十分な量で対象に投与されるデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を含む舌下組成物を提供する。特定の態様では、使用されるデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の量は顕著な鎮静状態を引き起こすことなく激越を効果的に治療するのに十分である。デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩は便宜上、1日当たり1用量、2以上の用量で「必要に応じて」動物(たとえば、ヒト)対象に送達されてもよい。組成物はまた単一の剤形を介して、または複数の剤形を介して投与されてもよい。
【0116】
本発明の組成物の対象への投与に続いて、治療(すなわち、激越抑制)効果は投与後約60分(たとえば、約30、20、15、10、5、3、2または1分)以内に、または投与後約30秒以内に始まってもよい。激越の兆候も投与後約1~約60分以内に、さらに典型的には、約5~約30分以内に緩和されてもよい。激越の兆候が約60分以内に緩和されなければ、本発明の組成物の第2の投薬が対象に投与されてもよい。
【0117】
治療のプロトコールは1以上の投与間隔(たとえば、2以上の投与間隔、5以上の投与間隔、または10以上の投与間隔)を含んでもよい。対象の生理機能及び所望の治療効果に応じて、本発明の実施形態に係る投与間隔の持続時間及び治療プロトコールは変化してもよい。
【0118】
デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩は舌下組成物として単独でまたは1以上のさらなる活性剤と併用して投与されて激越または激越の兆候を治療してもよい。併用で使用される場合、活性剤は、単一組成物として、または同時に、順次、もしくは適当な時間によって分離されて投与することができる1以上の別々の組成物として製剤化することができる。
【0119】
デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が第2の活性剤と共に投与されて激越または激越の兆候を治療する場合、それぞれデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の第2の活性剤に対する重量比は一般に約1:2~約1:2.5;約1:2.5~約1:3;約1:3~約1:3.5約1:3.5~約1:4;約1:4~約1:4.5;約1:4.5~約1:5;約1:5~約1:10;及び約1:10~約1:25の範囲であってもよい。たとえば、重量比は特に約1:1~約1:5;約1:5~約1:10;約1:10~約1:15;または約1:15~約1:25の間であってもよい。或いは、それぞれ第2の活性剤のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩に対する重量比は約2:1~約2.5:1;約2.5:1~約3:1;約3:1~約3.5:1;約3.5:1~約4:1;約4:1~約4.5:1;約4.5:1~約5:1;約5:1~約10:1;及び約10:1~約25:1の範囲であってもよい。たとえば、それぞれ第2の活性剤のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩に対する重量比は特に約1:1~約5:1;約5:1~約10:1;約10:1~約15:1;または約15:1~約25:1の範囲であってもよい。引用されている範囲の間での範囲はすべて本明細書でも取り扱われ、本発明のさらなる特定の態様を構成することが理解されるべきである。
【0120】
VI.投薬計画
採用されている投薬計画は、たとえば、治療される激越の種類、兆候の重症度、激越が根底にある内科的疾患によるのかどうか、のような幾つかの因子に左右されてもよい。
【0121】
デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩は適当な用量で動物(たとえば、ヒト)に舌下で投与されてもよい。特定の実施形態では、ヒトへの用量は、約3マイクログラムから約100マイクログラムまで(たとえば、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(たとえば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラム)であってもよい。用量は1日に1回以上投与されてもよい。
【0122】
デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩は、適当な用量でヒトに舌下で投与されてもよい。一部の変形では、ヒトへの用量は約0.05マイクログラム/対象の体重のkgから約1.5マイクログラム/対象の体重のkgまでであってもよい。好適な投与量の例には、約0.1マイクログラム/kg~約1マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.5マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.4マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.3マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg~約0.2マイクログラム/kg、約0.07マイクログラム/kg、約0.05マイクログラム/kg、約0.1マイクログラム/kg、約0.2マイクログラム/kg、約0.3マイクログラム/kg、約0.4マイクログラム/kg、約0.5マイクログラム/kg、約0.6マイクログラム/kg、約0.7マイクログラム/kg、約0.8マイクログラム/kg、約0.9マイクログラム/kg、約1.0マイクログラム/kg、約1.1マイクログラム/kg、約1.2マイクログラム/kg、約1.3マイクログラム/kg、約1.4マイクログラム/kg、約1.5マイクログラム/kgが挙げられる。用量は1日に1回以上投与されてもよい。
【0123】
VII.本発明の具体的な実施形態
実施形態1.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法であって、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を前記対象に舌下で投与することを含む、前記方法。
【0124】
実施形態2.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法であって、有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を前記対象に投与することを含み、前記デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、顕著な鎮静状態を引き起こすことなく激越または激越の兆候を治療する投与量で舌下に投与される、前記方法。
【0125】
実施形態3.デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の前記投与量が、約3マイクログラムから約100マイクログラムまで(たとえば、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(たとえば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラム)の範囲である、実施形態1または2に記載の方法。
【0126】
実施形態4.前記対象が、哺乳類、好ましくはヒトである、実施形態1、2または3に記載の方法。
【0127】
実施形態5.前記激越が神経変性疾患に関連する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態6.前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、及び進行性核上麻痺から選択される、実施形態5に記載の方法。
【0129】
実施形態7.前記激越が神経精神病状態に関連する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態8.前記神経精神病状態が、統合失調症、双極性疾患(たとえば、躁病、障害)、せん妄及びうつ病から選択される、実施形態7に記載の方法。
【0131】
実施形態9.前記激越が、認知症またはアルツハイマー病における日没症候群に関連する、実施形態5に記載の方法。
【0132】
実施形態10.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療するのに使用するための舌下組成物であって、前記激越が周術期激越ではなく、前記舌下組成物が有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩と、1以上の薬学上許容できるキャリア/賦形剤とを含む、前記舌下組成物。
【0133】
実施形態11.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療するのに使用するための舌下組成物であって、前記激越が神経変性疾患に関連し、前記舌下組成物が有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩と、1以上の薬学上許容できるキャリア/賦形剤とを含む、前記舌下組成物。
【0134】
実施形態12.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療するのに使用するための舌下組成物であって、前記激越が神経精神病状態に関連し、前記舌下組成物が有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩と、1以上の薬学上許容できるキャリア/賦形剤とを含む、前記舌下組成物。
【0135】
実施形態13.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療するのに使用するための舌下組成物であって、前記激越が認知症またはアルツハイマー病における日没症候群に関連し、前記舌下組成物が有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩と、1以上の薬学上許容できるキャリア/賦形剤とを含む、前記舌下組成物。
【0136】
実施形態14.前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、及び進行性核上麻痺から成る群から選択される、実施形態11に記載の舌下組成物。
【0137】
実施形態15.前記神経変性疾患が、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病及びパーキンソン病から選択される、実施形態14に記載の舌下組成物。
【0138】
実施形態16.前記神経精神病状態が、統合失調症、双極性疾患(たとえば、躁病、障害)、せん妄及びうつ病から成る群から選択される、実施形態12に記載の舌下組成物。
【0139】
実施形態17.前記組成物が、フィルム、ウエハー、貼付剤、トローチ剤、ジェル、噴霧剤、錠剤、液状滴剤、等から選択される、実施形態10~16のいずれか1つに記載の舌下組成物。
【0140】
実施形態18.前記組成物がフィルムである、実施形態17に記載の舌下組成物。
【0141】
実施形態19.前記フィルムが粘膜接着性の性質であり、速やかな作用の発現を提供する、実施形態18に記載の舌下組成物。
【0142】
実施形態20.デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、顕著な鎮静状態を引き起こすことなく激越または激越の兆候を治療する投与量で投与される、実施形態10~19のいずれか1つに記載の舌下組成物。
【0143】
実施形態21.鎮静状態の観察されるレベルがRamsay鎮静スケールで3を超えない、実施形態20に記載の舌下組成物。
【0144】
実施形態22.デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、約3マイクログラムから約100マイクログラムまで(たとえば、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(たとえば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラム)の範囲での投与量で前記対象(たとえば、ヒト)に投与される、実施形態10~21のいずれか1つに記載の舌下組成物。
【0145】
実施形態23.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法であって、前記方法が有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を前記対象に舌下で投与することを含み、前記激越が周術期激越ではない、前記方法。
【0146】
実施形態24.前記激越が神経変性疾患及び/または神経精神病状態に関連する、実施形態23に記載の方法。
【0147】
実施形態25.前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、進行性核上麻痺、または他の関連する神経変性障害から成る群から選択される、実施形態24に記載の方法。
【0148】
実施形態26.前記神経精神病状態が、統合失調症、双極性疾患(たとえば、双極性障害または双極性躁病)、せん妄及びうつ病から成る群から選択される、実施形態24に記載の方法。
【0149】
実施形態27.激越または激越の兆候が顕著な鎮静状態を引き起こすことなく効果的に治療される、実施形態23~26のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態28.デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、フィルム、ウエハー、貼付剤、トローチ剤、ジェル、噴霧剤、錠剤、液状滴剤、等の形態で投与される、実施形態23~27のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態29.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法であって、前記激越が、OPD/IPDの処置(たとえば、MRI、CTまたはCATスキャン、腰椎穿刺、骨髄吸引/生検、抜歯または他の歯科処置)に関連し、前記方法が有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を前記対象に舌下で投与することを含む、前記方法。
【0152】
実施形態30.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法であって、前記激越が、アルコール及び薬物の乱用離脱に関連し、前記方法が有効量のデクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩を前記対象に舌下で投与することを含む、前記方法。
【0153】
実施形態31.前記デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、顕著な鎮静状態を引き起こすことなく前記激越または激越の兆候を治療する投与量で舌下に投与される、実施形態29または30に記載の方法。
【0154】
実施形態32.デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩の前記投与量が、約3マイクログラムから約100マイクログラムまで(たとえば、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(たとえば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラム)の範囲である、実施形態31に記載の方法。
【0155】
実施形態33.デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が1日に1回、2回もしくは3回、または「必要に」応じて投与される、いずれかの先行実施形態に記載の組成物または方法。
【0156】
実施形態34.デクスメデトミジンまたは薬学上許容できるその塩が、約60分未満で、特に約30秒~約30分の範囲内で治療効果を生じる方法で投与される、いずれかの先行実施形態に記載の組成物または方法。
【0157】
実施形態35.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法であって、有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩を前記対象に舌下で投与することを含む、前記方法。
【0158】
実施形態36.治療を必要とする対象にて激越または激越の兆候を治療する方法であって、有効量のアルファ-2アドレナリン作動薬または薬学上許容できるその塩を前記対象に投与することを含み、前記アルファ-2アドレナリン作動薬が顕著な鎮静状態を引き起こすことなく激越または激越の兆候を治療する投与量にて舌下に投与される、前記方法。
【0159】
実施形態37.アルファ-2アドレナリン作動薬の前記投与量が、約3マイクログラムから約100マイクログラムまで(たとえば、約5マイクログラム~約100マイクログラム、約5マイクログラム~約90マイクログラム、約5マイクログラム~約85マイクログラム、約5マイクログラム~約80マイクログラム、約5マイクログラム~約75マイクログラム、約5マイクログラム~約70マイクログラム、約5マイクログラム~約65マイクログラム、約5マイクログラム~約60マイクログラム、約5マイクログラム~約55マイクログラム、約5マイクログラム~約50マイクログラム、約5マイクログラム~約45マイクログラム、約5マイクログラム~約40マイクログラム、約5マイクログラム~約35マイクログラム、約5マイクログラム~約30マイクログラム、約5マイクログラム~約25マイクログラム、約5マイクログラム~約20マイクログラム、約5マイクログラム~約15マイクログラム、約5マイクログラム~約10マイクログラム、10マイクログラム未満(たとえば、約5、6、7、8、または9マイクログラム)、約10マイクログラム、約12マイクログラム、約14マイクログラム、約15マイクログラム、約16マイクログラム、約18マイクログラム、約20マイクログラム、約30マイクログラム、約50マイクログラム)の範囲である、実施形態35または36に記載の方法。
【0160】
実施形態38.前記対象が哺乳類、好ましくはヒトである、実施形態35、36または37に記載の方法。
【0161】
実施形態39.前記激越が神経変性疾患に関連する、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
実施形態40.前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症(FTD)、認知症、レビー小体型認知症(DLB)、心的外傷後ストレス障害、パーキンソン病、血管性認知症、血管性認知機能障害、ハンチントン病、多発性硬化症、クロイツフェルト-ヤコブ病、多系統萎縮症、及び進行性核上麻痺から選択される、実施形態39に記載の方法。
【0163】
実施形態41.前記激越が神経精神病状態に関連する、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
実施形態42.前記神経精神病状態が、統合失調症、双極性疾患(たとえば、躁病、障害)、せん妄及びうつ病から選択される、実施形態41に記載の方法。
【0165】
実施形態43.前記激越が認知症またはアルツハイマー病における日没症候群に関連する、実施形態39に記載の方法。
【0166】
実施形態44.前記激越が、OPD/IPDの処置(たとえば、MRI、CTまたはCATスキャン、腰椎穿刺、骨髄吸引/生検、抜歯または他の歯科処置)に関連する、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
実施形態45.前記激越がアルコール及び薬物の乱用離脱に関連する、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
実施形態46.前記アルファ-2アドレナリン作動薬には、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、グアノキサベンズ、グアネチジン、キシラジン、チザニジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、メチルドパ、メチルノルエピネフリン、ファドルミジン、ヨードクロニジン、アプラクロニジン、デトミジン、ロフェキシジン、アミトラズ、ミバゼロール、アゼペキソール、タリペキソール、リルメニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、タリペキソール、ロミフィジン、プロピルヘキセドリン、ノルフェネフリン、オクトパミン、モキソニジン、リダミジン、トロニジン、UK14304、DJ-7141、ST-91、RWJ-52353、TCG-1000、4-(3-アミノメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオン、及び4-(3-ヒドロキシメチル-シクロヘキサ-3-エニルメチル)-1,3-ジヒドロ-イミダゾール-2-チオンまたは薬学上許容できるそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
上文における実施形態は限定することを意図するものではなく、本発明の実践では、代替のまたは追加の実施形態が提供されてもよい。
【実施例】
【0170】
VIII.実施例:
以下の実施例は説明に例示であることを意図するものであって、限定を意図するものではない。
【0171】
実施例1
製剤1:舌下錠
【表1】
製造方法
デクスメデトミジン塩酸塩と結合剤や甘味剤のような賦形剤とを薬学上許容できる溶媒(好ましくは水)に溶解し/分散し、この溶液を用いて、好適なミキサー/造粒器にて潤滑剤及び流動促進剤を除く他の成分すべてのふるいにかけた混合物を造粒する。次いで顆粒を流動床乾燥機またはたとえば、トレイ乾燥機のような他の好適なものにて乾燥させる。次いで、乾燥させた顆粒をクワドロコミルまたはマルチミルにて適当なサイズにする。サイズを決定した顆粒を次いでVブレンダーのような好適なブレンダーに装填し、ステアリン酸マグネシウム及びタルクによって滑らかにし、次いで、最終的な滑らかにしたブレンドを使用して、適当な工具を用いて特定の直径の錠剤に圧縮する。
【0172】
製剤2:舌下フィルム
【表2】
製造方法
デクスメデトミジン塩酸塩を成膜ポリマー及び他の賦形剤と共に薬学上許容できる溶媒(好ましくは水)に溶解し/分散し、得られた溶液を次いで不活性の裏打ち層にコーティングする(広げる/流延する)。デクスメデトミジン塩酸塩を含有する高分子層をさらに乾燥させ、適当な金型/工具を用いて好適なサイズに切断し、次いで要求どおりに梱包する。
【0173】
製剤3:舌下噴霧剤
【表3】
製造方法
デクスメデトミジン塩酸塩を他の賦形剤すべてと共に好適な順序で混合する。得られた溶液/分散液を次いで適当な工具を用いて噴霧用容器に充填する。規定量のデクスメデトミジンが作動のたびに送達されるようにそれらをさらに定量ノズルで処理する。
【0174】
製剤4:舌下液状滴剤
【表4】
製造方法
1mg/mLの濃度の舌下滴剤を得るためにデクスメデトミジン塩酸塩(カタログ番号SML0956)を生理食塩水に溶解した。
【0175】
実施例2
激越または攻撃性についてのラット「居住者-侵入者」モデルにおける種々の投与量でのデクスメデトミジン塩酸塩の舌下投与及び静脈内投与の効果を評価する。
【0176】
居住者-侵入者モデルは、攻撃性及び激越についての確立された前臨床モデルであり、半自然の実験室設定にて実験用齧歯類における攻撃側の攻撃性/激越及び防御側の行動の双方の自然発生的で自然な表現を可能にする。齧歯類が自分のケージ環境で新規のオスにさらされると、彼らは新規のオスを「侵入者」と認識し、たとえば、肛門と性器の臭い嗅ぎ、追い回し、咬みつき、及び攻撃のような広い範囲の防御行動を実際に示す(Nelson,et al.,ILAR Journal,(2000),41(3):153-162)。
【0177】
材料及び方法
動物:体重380~400gの12~13週齢のオスWisterラットを居住者オスとして使用した。体重280~300gの7~8週齢のオスのラットを「侵入者」として使用した。居住者ラットをメスのラットと8日間同居させ、縄張りを確立した。侵入者ラットは類似の週齢/体重の3匹の他のオスラットと群で飼育した。動物はすべて、22±3℃の温度、50±20%の湿度、12時間の明暗周期及び1時間当たり15~20回の新鮮な空気の交換での制御された環境で維持し、餌及び水は自由摂取とした。動物実験はすべて、インド政府の動物実験管理監督委員会(CPCSEA)、国際実験動物施設認定協会(AAALAC)の指針に従って実施した。
【0178】
調べた製剤:デクスメデトミジン塩酸塩の製剤4の必要量を秤量し、連続希釈を作製して表5のとおりに各用量を得た。試験全体について、希釈は製剤4から0.9%の生理食塩水を用いて投薬に先立って毎日新しく調製した。
【0179】
実験手順:3~5日の期間の馴化に続いて、各居住者オスラットをメスラットと8日間同居させた。8日目に「侵入者ラット」にそれらを10分間さらすことによって居住者ラットにおける基本攻撃性を調べた。この基本攻撃性試験で攻撃性を実際に示した動物のみを試験に使用した。体重階層化法を用いて次いでこれらの動物を無作為化した。動物の体重の変動は無作為化の時点で群における平均体重の20%を超えなかった。動物をメスラットとさらに1日同居させた。9日目に居住者の体重が侵入者よりも常に大きくなるように居住者動物を適当な体重の侵入者動物とペアリングさせた。これは居住者動物における優勢な攻撃行動を促すことになった。無作為化の後、動物に永久番号を割り当てた。ケージは、試験番号、試験コード、群番号、性別、用量、ケージ番号及び動物番号の詳細を示すケージカードによって特定した。
【0180】
居住者オスラットに行動試験の15分前に舌下または静脈内のいずれかで様々な用量のデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)を投与した(表5)。舌下投与については、一方の手でラットを保持し、先のとがっていない舌圧子を用いて舌を口の片側に動かした。次いでマイクロピペットを用いて特定の濃度での液状滴剤としてデクスメデトミジン塩酸塩を舌下に投与し、50~60秒の持続時間で吸収させた。ジアゼパムを参照化合物として用い、腹腔内に投与した。溶媒対照は舌下または静脈内で投与される0.9%生理食塩水で処理した。正常対照(NC)は処理を受けなかった。
【0181】
居住者ラットの行動はオーバーヘッドビデオカメラを用いて15分間記録し、Noldus Ethovision XTソフトウェアを用いてオフライン行動解析を行った。ビデオの記録にて侵入者ラットから居住者ラットを区別するために、侵入者ラットに非毒性塗料で印をつけた。激越に対するデクスメデトミジン塩酸塩の潜在的効果を解析するために、我々は、たとえば、肛門と性器の臭い嗅ぎ、追い回し、咬みつき、攻撃及び攻撃までの待ち時間のような種々の行動パラメーターと同様に、たとえば、探索毛繕い及び不動の平穏時のような中立行動パラメーターを定量した。
【表5】
【0182】
統計的解析
検証された統計ソフトウェア(GraphPad Prism6)を用いて統計的解析を行った。データは平均値±SEMとして表す。一元配置ANOVA(分散分析)とその後の95%信頼区間での「Dunnett多重比較検定」を各群の比較に適用した。p<0.05を有意と見なした。
【0183】
結果
本試験は、攻撃行動と激越行動についてのラット居住者-侵入者モデルにおける激越行動に対する舌下/静脈内で投与された様々な用量のデクスメデトミジン塩酸塩の効果を評価するために行われた。
【0184】
ラット居住者-侵入者モデルにおける攻撃/激越行動に対する舌下/静脈内で投与されたデクスメデトミジン塩酸塩の効果:
ラットは、自分のケージ環境で新規のオスにさらされると、たとえば、肛門と性器の臭い嗅ぎ、追い回し、咬みつき、及び攻撃(激越行動及び攻撃行動の指標)のような種々の防御的な激越行動を実際に示す。非居住者オスは侵入者として認識され、居住者オスは侵入者オスに激越し、それを攻撃し、自分の縄張りを守る。本実験では、溶媒処理したラットは様々な攻撃行動を実際に示し、侵入者ラットは居住者ラットまたは優勢ラットによる肛門と性器の臭い嗅ぎ、攻撃、追い回し、及び咬みつきにさらされた。
【0185】
舌下に投与されたデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)は用量に関連してこれらの行動の頻度及び持続時間を減らした(
図1A及び
図1B)。有意な減少は、溶媒対照群と比べて追い回し及び攻撃で観察された。同様に、デクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の静脈内投与は、攻撃行動及び激越行動の指標すべてを減らした(
図1C及び
図1D)。溶媒対照と比べた肛門と性器の臭い嗅ぎ、咬みつき及び攻撃における有意な減少は0.5μg/kgを上回る用量で観察された(
図1C及び
図1D)。参照化合物であるジアゼパム(3mg/kg、i.p.)もこの試験で評価された攻撃行動及び激越行動の指標すべてで有意な減少を生じた(
図1A~1D)。
【0186】
攻撃までの待ち時間に対する舌下/静脈内で投与されたデクスメデトミジン塩酸塩の効果
居住者オスによる攻撃の頻度及び持続時間における変化に加えて、我々はまた、侵入者ラットを攻撃する待ち時間に対するデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の効果も評価した。我々が用量に関連してデクスメデトミジン塩酸塩(Dex)の舌下投与に続いて侵入者ラットを攻撃する待ち時間の増加を観察したということは、攻撃性及び激越の減少を示している(
図2A)。デクスメデトミジン塩酸塩(Dex)を静脈内で投与した場合、侵入者ラットを攻撃する待ち時間で類似の増加が用量に関連して生じ、それは3μg/kgの用量で溶媒対照と比べて有意だった(
図2B)。ジアゼパムで処理した動物は攻撃行動の完全な欠如を示した(
図2A及び2B)。
【0187】
中立行動に対する舌下/静脈内で投与されたデクスメデトミジン塩酸塩の効果
毛繕い、探索及び不動/平穏時のような中立行動をデクスメデトミジン塩酸塩による処理に続いて評価した。溶媒対照と比べて、1.5μg/kg及び3μg/kg(
図3A及び3B)の用量で観察された探索の減少を除いてデクスメデトミジン塩酸塩の舌下投与に続く毛繕い及び探索では有意な変化は生じなかった。同様に、静脈内で投与したデクスメデトミジン塩酸塩は、3μg/kgの用量を除いて溶媒対照との比較では毛繕い及び探索に有意に影響を及ぼさなかった。不動/平穏時の場合、溶媒対照と比べて舌下に投与されたデクスメデトミジン塩酸塩の有意な効果はなかったが、静脈内で投与したデクスメデトミジン塩酸塩は3μg/kgの用量で不動/平穏時を有意に増やした(
図3C及び
図3F)。参照化合物であるジアゼパム(3mg/kg、ip)はこの試験で評価された中立行動すべての頻度及び持続時間を有意に減らした。
【0188】
解釈
本試験では、我々は、ラット居住者-侵入者モデルにて攻撃性及び激越を減らすことにおけるデクスメデトミジン塩酸塩の潜在力を検討した。居住者-侵入者モデルは、攻撃性及び激越についての確立された前臨床モデルであり、半自然の実験室設定にて実験用齧歯類における攻撃側の攻撃性/激越及び防御側の行動の双方の自然発生的で自然な表現を可能にする。
【0189】
1.デクスメデトミジン塩酸塩の舌下投与は、たとえば、肛門と性器の臭い嗅ぎ、追い回し、攻撃、及び咬みつきのような攻撃性と激越の幾つかの行動的指標にて用量に関連する減少を生じた。
【0190】
2.侵入者ラットを攻撃する待ち時間での有意な増加は、溶媒対照群と比べたときデクスメデトミジン塩酸塩による事前の処理によって用量に関係して観察された。
【0191】
3.舌下に投与されたデクスメデトミジン塩酸塩で処理した齧歯類ラットにおいて明らかな不安様行動の欠如を示す、動物の中立行動での変化は観察されなかった。
【0192】
4.試験で使用された用量(0.5~3μg/kg)のうちで、1~1.5μg/kgの用量(舌下にまたは静脈内に投与された用量)は、中立行動に大きく影響を及ぼさないで攻撃性及び激越の行動的指標を効果的に減らした。
【0193】
結論
デクスメデトミジン塩酸塩はラット居住者-侵入者モデルにて激越及び攻撃性の種々の指標を効果的に減らす。1~1.5μg/kgの用量は中立行動に大きく影響を及ぼさないで攻撃性及び激越の行動的指標を効果的に減らした。本試験では、舌下に投与されたデクスメデトミジン塩酸塩の有効性はこれらの用量で静脈内に投与されたデクスメデトミジン塩酸塩と相関する(表6)。
【表6】
表6.1μg/kg及び1.5μg/kgの用量でのデクスメデトミジン塩酸塩投与の舌下経路と静脈内経路との間で比較すると、攻撃性及び激越の行動的指標(追い回し、咬みつき、攻撃、肛門と性器の臭い嗅ぎ、攻撃までの待ち時間)の持続時間には有意差は観察されなかった(すなわち、舌下経路及び静脈内経路を介した類似する効果)。スチューデントt検定を用いて統計的解析を行った。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001及び
****p<0.0001。投与の静脈内経路に対する舌下経路。
【0194】
1~1.5μg/kgのラットでの有効用量に基づいて、ヒトでの同等の舌下用量は0.161μg/kg及び0.242μg/kgであると算出される。60kgのヒトについてのヒトでの同等の総用量は10μg及び15μgということになる(https://www.fda.gov/downloads/drugs/guidances/ucm078932.pdf)。
【0195】
実施例3:LC-MS/MSによるラット血漿試料におけるデクスメデトミジン(0.5~3μg/kg)の推定
目的:0.5、1、1.5及び3μg/kgの用量で静脈内経路及び舌下経路を介して動物に投与した後、得られる血漿試料におけるデクスメデトミジンのレベルを推定すること。
【0196】
採血:デクスメデトミジンの血漿濃度を決定するために、デクスメデトミジン塩酸塩を様々な用量(0.5、1、1.5、3μg/kgに調整した製剤4)でラット(n=3)にて舌下にまたは静脈内に投与した。投与の0、5、15、30、60及び120分後、軽いイソフルラン麻酔下で眼窩後神経叢から血液を採取した。血漿を分離し、デクスメデトミジン濃度が分析されるまで-80℃で保存した。
【0197】
材料及び方法
標準溶液の調製
1.358mgのデクスメデトミジン塩酸塩を1358μLのミリQ水に溶解し、829.071mg/mLの濃度を達成することによってデクスメデトミジン塩酸塩の標準ストック溶液を調製した。希釈液(メタノール:水(50:50)%v/v)を用いて様々な濃度の希釈標準溶液を調製した。
【0198】
トルブタミドを内部標準として使用し、そのストック溶液は25mgのトルブタミドを1000μLのDMSOに溶解して25mg/mLの濃度を達成することによって調製した。様々な濃度の希釈標準溶液は希釈液(アセトニトリル:水(50:50)%v/v)を使用することによって調製した。
【0199】
SPE及びクロマトグラフィーのための溶液の調製:移動相A(10mmのギ酸アンモニウム、pH3.50):0.6306gのギ酸アンモニウムを秤量し、1000mLの試薬ビンに移した。これに、1000mLのミリQ水を加え、得られた溶液のpHをギ酸を用いて3.5に合わせた。
【0200】
移動相B:100%アセトニトリル
【0201】
希釈液(メタノール:水(50:50)%v/v):50mLのメタノールを50mLのミリQ水と混合した。得られた溶液を希釈液として使用した。
【0202】
洗浄溶液:100μLのアンモニアを100mLのミリQ水と混合した。得られた溶液を洗浄溶液として使用した。
【0203】
溶離溶媒:100μLのギ酸を100mLのアセトニトリルと混合した。得られた溶液を溶離溶媒として使用した。
【0204】
分析法:AB Sciex Triple Quad機器(API-5000)に連結したAgilent1290 Infinity II HPLCシステムを用いて試料を分析した。クロマトグラフィーによる分離は、勾配方式にてAgilent Zorbax EclipseプラスC18カラム(50×2.1mm,1.8μm)を用いて行った。移動相は、pH3.5での10mMのギ酸アンモニウム(移動相A)と100%アセトニトリル(移動相B)とから成った。カラム温度は40℃であり、流速は0.35mL/分だった。MS機器は正イオンモード(ESI+)で操作した。分析については、2μLの試料をLC-MS/MS機器に注入した。自動試料採取機の温度は7℃だった。
【0205】
品質管理(QC)試料は表7のとおりに以下のように調製した。
【表7】
【0206】
試料の調製
試料の調製にはWCX SPE96穴プレートを使用した。50μLの血漿試料を抽出に使用した。試験試料と共に1セットの線形性及び2セットの品質管理(QC)も処理した。
試料の前処理:50μLの血漿に10μLのトルブタミド希釈標準溶液を加えた(トルブタミド250ng/mL)。混合した後、50μLの緩衝溶液(10mMのギ酸アンモニウム、pH3.5)を加えた。内容物をボルテックスで混合し、予め調整したSPEプレートに装填した。
【0207】
LC-MS/MS分析
陰圧のSPEユニットにてカートリッジを設置した後、200μLの100%メタノールとその後200μLの水を通すことによってそれらを調整した。次いで、前処理した血漿試料を予め調整したカートリッジに装填した。
前処理した血漿試料を装填した後、カートリッジを100μLの0.1%アンモニア溶液で洗浄した。最終的に、結合した検体をアセトニトリル中50μLの0.1%ギ酸で溶出した。完全な溶出のためにこの工程を2回繰り返した。最終的な溶離液の体積は100μLだった。100μLの溶離液に、50μLの10mMギ酸アンモニウム(pH3.5)を加え、試料をボルテックスで混合し、96穴HPLC試料プレート(Agilent)に移し、LC-MS/MS分析に供した。LC-MS/MS分析については、2μLの試料を注入した。較正標準及びQCは試験試料で行ったのと同じ方法で処理した。
種々の時点での種々のラット血漿試料におけるデクスメデトミジンの平均血漿濃度は、ブランクのラット血漿マトリクスで調製された0.011~53.061ng/mLの範囲での較正曲線と共にAnalyst1.6.2ソフトウェア(表8及び
図4A及び4B)を用いてLC-MS/MS法によって決定した。較正曲線は線形回帰によって適合させた。QC試料及び試験試料における濃度(pg/mL)は較正曲線に基づいたAnalystソフトウェアから得られた。較正曲線及びQCについての受け入れ基準は以下:(1)ゼロではない較正基準の少なくとも75%が名目濃度からの±20%偏差の範囲内で逆算した濃度すべてによる較正曲線に含まれなければならない(±20%の偏差が許容できるレベルの低い定量LLOQを除く)。(2)較正曲線の相関係数(r)が0.99以上でなければならない。(3)少なくとも3分の2(6のうち4)のQC試料が±20%の相対誤差の範囲内でなければならない(精度)、のとおりである。
【0208】
【0209】
解釈及び結論
デクスメデトミジン塩酸塩の舌下投与に続いて、0.5から3μg/kgに及ぶ用量で血漿濃度に対する用量関連の効果が観察された(
図4A、表8)。
【0210】
デクスメデトミジン塩酸塩の静脈内投与に続いて、0.5から3μg/kgに及ぶ用量で血漿濃度に対する用量依存性の効果が観察された(
図4B、表8)。
【0211】
1及び1.5μg/kgの用量は、中立行動に大きく影響を及ぼさないで激越及び攻撃性の種々の指標を効果的に減らした。15分~30分の間(有効性試験で観察された行動反応の時間に相当する時間;激越行動試験の15分前に薬剤が投与され;動物を15分間観察した)1μg/kgの用量の投与(舌下経路及び静脈内経路)に続く血漿濃度は43±13.5から90±12.1pg/mLに及ぶ(表8)。同様に、15分~30分の間1.5μg/kgの用量の投与(舌下経路及び静脈内経路)に続く血漿濃度は27±7.1から114±1.7pg/mLに及ぶ(表8)。