(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】クッションを備えた介護用具
(51)【国際特許分類】
A47C 7/18 20060101AFI20220118BHJP
A47C 27/14 20060101ALI20220118BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A47C7/18
A47C27/14 D
A61G5/12 707
(21)【出願番号】P 2021104070
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2021-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】中谷 誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 沙織
(72)【発明者】
【氏名】岩本 楓
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-023544(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220661(JP,U)
【文献】特開2019-024569(JP,A)
【文献】登録実用新案第3124213(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-7/74,27/00-27/22
A61G 1/00-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料からなる座部を備え、
前記座部には、樹脂発泡体からなるクッションのみが
固定配置された介護用具であって、
前記クッションの特性は、クッションの厚みt(mm)と、厚み20mmの前記クッションをJIS K6767:1999に準じて測定した25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)を乗ずることにより求められる柔軟性指数Ptが500kPa・mm以上10000kPa・mm以下であることを特徴とする介護用具。
【請求項2】
厚み20mmの前記クッションの25%ひずみ時の圧縮応力Pが35kPa以上250kPa以下である、請求項1に記載の介護用具。
【請求項3】
前記クッションの厚みtが5mm以上100mm以下である、請求項1又は2に記載の介護用具。
【請求項4】
前記樹脂発泡体はオレフィン系樹脂発泡成形体である、請求項1から3のいずれか1項に記載の介護用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッションを備えた介護用具に関し、特に高度な柔軟性を有することにより使用者の荷重の分散に適しているが、柔らか過ぎることによる底付きがなく、適度な反発力を有する樹脂発泡体からなるクッションを備えた浴室用・浴槽用の椅子や浴槽用手摺りなどの介護用具に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会の到来により、高齢者や身体障害者などの姿勢や動作等を補助するために、例えば特開2007-61509号公報(特許文献1)や特開2018-15418号公報(特許文献2)に記載されているように、座部、背もたれ部および/または肘掛けの表面にクッションを取り付けた浴室用・浴槽用の椅子や、特開2019-180676号公報(特許文献3)に記載されているように手摺りのグリップ部にクッションを取り付けた浴槽用手摺りなど介護用具が知られている。また、一般にクッションの材料としては、椅子や手摺りの主要な骨格を形成する本体部分の材料とは異なり、柔軟性を有し且つ水に強い発泡体の樹脂が使用される。
【0003】
ところで、介護用具においてクッションを取り付ける目的は、使用者が当該介護用具へ腰を掛ける際の座り心地や、手の平で掴んで自己の体重を支える際の握り易さなどを向上させるためである。このため、介護用具に用いられるクッションには、一般のクッションと同様に、体重など使用者により負荷される荷重を分散させて低い圧力で支えるために、高い柔軟性、低い反発力が求められる。
【0004】
しかし、一方で介護用具に用いられるクッションが柔らか過ぎたり反発力が低過ぎたりすると、使用者の体重などの荷重負荷により、その下部でクッションを支持するために配置される硬質部材の硬さを感じるまで沈み込んで圧縮されてしまい、使用者に底付きを感じさせることがある。この場合、底付きを感じた身体部分には局部的に高い圧力を生じていることが多く、また介護用具の使用者は臀部などの筋肉や皮下脂肪もやせていることもあり、皮膚や骨に擦過や内出血や打撲などのダメージを与えてしまうという問題がある。
【0005】
また、介護用具を使用する者は筋力などが衰えて足腰などが弱っていることも多いため、クッションが柔らか過ぎたり反発力が低過ぎたりすると、例えば使用者が座位から立位へ移る際など、クッションの反発力を利用して使用者の動作を補助することができないという問題もあった。
【0006】
一方、使用者に底付き感を与えないようにするためには、クッションの厚みを厚くすることも考えられるが、介護用具は、通常使用者および使用者が使用する時間が限られていることから、使用されない長期の時間は邪魔とならないようにコンパクトに折り畳み、そして収納できることが求められ、クッションの厚みもあまり厚くできないという制約があった。
【0007】
また、介護用具の中には、浴室内、浴槽内など中温多湿の環境下で使用されるものがあり、さらに免疫力の弱い高齢者などの使用者を感染等から守るため、使用毎に次亜塩素酸ナトリウム、アルコールなどの薬剤や石鹸などの洗剤を用いて頻繁に消毒され、また洗浄後に天日干し等により乾燥されるなど、介護用具に用いられるクッションには高い耐薬品性、高い耐久性、および高い耐候性(耐光性)や高い耐熱性が求められるという課題もあった。
【0008】
上述したような課題に対して、例えば特開2004-323603号公報(特許文献4)にはジェル状の低反発素材をクッションや座布団に使用する技術が開示されており、特開2009-091541号公報(特許文献5)には低反発素材のクッションを介護用具に用いる技術が開示されている。また、特開2012-10921号公報(特許文献6)には異なる発泡体からなるクッションを少なくとも2層積層することにより、着座した際の使用者のずれ力を緩和したクッションが開示されている。
【0009】
しかし、特許文献4,5,6に記載のクッションはいずれも、上述したようにクッションの厚みは薄ければ薄いほど好ましいという設計上の制約がある中、使用者により負荷される荷重を分散させるのに足りる十分な柔軟性を有しながら、底付きを起こさず、使用者が立ち上がる際などにおいてその動作を補助する高度な反発力を有しており、そして高い耐薬品性なども有しているという介護用具に求められる特有の課題を解決するものではなかった。また、特許文献6に記載のクッションは、異なる発泡体からなるクッションを少なくとも2層積層しなければならないために製造工程が煩雑になりコスト高となるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-61509号公報
【文献】特開2018-15418号公報
【文献】特開2019-180676号公報
【文献】特開2004-323603号公報
【文献】特開2009-091541号公報
【文献】特開2012-10921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、高度な柔軟性を有することにより使用者による負荷される荷重の分散に適しているが、柔らか過ぎることによる底付きがなく、適度な反発力を有することにより使用者の動作を補助することも可能なクッションを備えた介護用具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、介護用具のクッションに用いられる素材、クッションの構成およびクッションの特性などについて鋭意研究を重ねた結果、荷重分散に適した柔軟性、底付きの防止および使用者の動作を補助する反発性などを満足するクッションは、厚み20mmのクッションをJIS K6767:1999に準じて測定した25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)や、クッションの厚みtに前記圧縮応力P(kPa)を乗じて求められる柔軟性指数Pt(kPa・mm)により整理されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明によれば、樹脂発泡体からなるクッションを備えた介護用具であって、クッションの特性は、クッションの厚みt(mm)と、厚み20mmの当該クッションをJIS K6767:1999に準じて測定した25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)を乗ずることにより求められる柔軟性指数Ptが好ましくは500kPa・mm以上であり、より好ましくは900kPa・mm以上である介護用具が提供される。柔軟性指数Pt(kPa・mm)が、500kPa・mm未満ではクッションが柔らかすぎ、もしくはクッションの厚みが薄すぎるため、クッションが底付きし、使用者が不快に感じたり、擦過や内出血や打撲などのダメージを与える恐れがある。
【0014】
ただし、柔軟性指数Pt(kPa・mm)は、クッションの厚みt(mm)が厚いほど大きくなり、底付き感は改善され、座り心地を向上させるが、設計上の観点からはクッションの厚みを50mm程度以下に抑えてコンパクトにしなければならないという制約があることから、上限としては10000kPa・mm以下であることが好ましく、8000kPa・mm以下であることがより好ましい。さらに7000kPa・mm以下であることが最も好ましい。
【0015】
本発明の介護用具では、クッションの特性は、さらに厚み20mmのクッションをJIS K6767:1999に準じて測定したクッションの25%ひずみ時の圧縮応力Pが好ましくは35kPa以上250kPa以下であり、より好ましくは40kPa以上200kPa以下であり、最も好ましくは40kPa以上100kPa以下であることがよい。前述の圧縮応力Pが、35kPa未満では、底付き感を解消するためにクッションの厚みを厚くする必要があり、コンパクトな設計が困難となる。一方、前述の圧縮応力Pが、250kPaを超えると、底付き感は改善されるが、クッションの柔軟性が硬くなるために、不快な座り心地となる。
【0016】
本発明の介護用具は、クッションの柔軟性指数Pt(kPa・mm)や25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)が上述したような特性を有することにより、クッションが単層からなる場合においても、体重など使用者による負荷される荷重の分散に適した柔軟性を確保することが可能となり、それでいて使用者に柔らか過ぎることによる底付きを感じさせることがなく、適度な反発力を有することにより使用者の動作を補助することも可能になる。
【0017】
また、本発明の介護用具において、より高い柔軟性による荷重の分散性、より高い底付きの防止、より高い反発力による使用者の動作の補助を求める場合、クッションの厚みが好ましくは5mm以上100mm以下、より好ましくは7mm以上50mm以下であることがよい。また、発泡体を形成する樹脂材料は特に限定されるものではないが、特にオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、樹脂発泡体からなるクッションを備えた介護用具であって、クッションの特性は、クッションの厚みt(mm)と、厚み20mmの当該クッションをJIS K6767:1999に準じて測定した25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)を乗ずることにより求められる柔軟性指数Ptが500kPa・mm以上10000kPa・mm以下である介護用具が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、厚み20mmのクッションをJIS K6767:1999に準じて測定した25%ひずみ時の圧縮応力Pが35kPa以上250kPa以下である介護用具が提供される。
【0020】
本発明の介護用具によれば、クッションは、体重など使用者による負荷される荷重の分散に適した柔軟性を有しているので、使用者が介護用具へ腰を掛ける際の座り心地や、手の平で掴んで自己の体重を支える際の握り易さなどを向上させる。
【0021】
また、本発明の介護用具によれば、クッションは柔らか過ぎることにより生じる底付きが防止されているので、臀部などの筋肉や皮下脂肪がやせている高齢者、身体障害者、要介護者などの使用者であっても、底付きを生じた身体部分に高い圧力を発生させて皮膚や骨に擦過や内出血や打撲などのダメージを与えることがない。さらに、本発明の介護用具によれば、クッションは適度な反発力を有しているので、筋力などが衰えて足腰などが弱っている使用者であっても、座位から立位へ移る際など、クッションの反発力を利用して使用者の動作を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】発泡体からなるクッションの圧縮量と荷重の関係におけるヒステリシスを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る介護用具について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0024】
本実施形態の介護用具は、樹脂発泡体からなるクッションを備えている。本発明に適合する介護用具としては、例えば特許文献1,2に示される浴室用・浴槽用の椅子、特許文献3に示される浴槽用手摺りの他、浴槽台、バスボード、ポータブルトイレ、歩行補助車などが挙げられる。
【0025】
本実施形態の介護用具が使用される環境としては、主に高齢者、身体障害者、要介護者などの臀部などの筋肉や皮下脂肪がやせている者、または筋力などが衰えて足腰などが弱っている者などにより使用されることが想定される。また、介護用具の使用場所としては、通常の屋内/屋外環境のみならず、浴室内、浴槽内など中温多湿の環境下でも使用されることが想定されるものである。さらに、介護用具は通常使用されない時間帯の方が長いことから、コンパクトである又は折り畳む等によりコンパクトにできることが求められ、また免疫力の弱い高齢者などの使用者を感染等から守るため、頻繁に次亜塩素酸ナトリウム、アルコールなどの薬剤や石鹸などの洗剤により消毒されることが想定されるものである。
【0026】
<発泡体の樹脂成分>
本実施形態の介護用具に用いられるクッションは、樹脂発泡体から形成されている。本実施形態において好適に用いられる発泡体の樹脂材料としては、例えばオレフィン系樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体またはエチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリエチレン系樹脂、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリプロピレン樹脂、オレフィン系樹脂以外のポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。
【0027】
これらの樹脂材料の中で、耐水性、強度、衛生性、滑り止めなどの観点からはオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。耐薬品性の観点からは、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体またはエチレン-アクリル酸共重合体等のポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。耐候性の観点からは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体またはエチレン-アクリル酸共重合体等のポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。柔軟性の観点からは、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体またはエチレン-アクリル酸共重合体等のポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。外気温による硬さの変化を少なくする観点からは、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。また、上述したオレフィン系樹脂、ポリエチレン系樹脂は、これらの1種または2種以上を混合しても用いてもよい。
【0028】
本実施形態のクッションに用いられる発泡体の樹脂材料は、発泡体を形成後、適度な硬さと40~50℃の温水等に耐えられる耐熱性を有することが必要となる。例えば、樹脂材料自体の硬さが硬過ぎると、得られた樹脂発泡体も適度な柔軟性を失うほどに硬くなるからである。一方、樹脂材料自体の硬さが柔らかく、同時に温水等に対する耐熱性が低過ぎると、浴室・浴槽内で使用する際、得られた樹脂発泡体が収縮するなどの状態変化が起き、その結果、硬さが硬くなるといった問題を生じるからである。
【0029】
このため、例えば本実施形態のクッションを形成する発泡用の樹脂としてエチレン-酢酸ビニル樹脂を用いる場合、柔軟性および耐熱性の観点より、エチレン-酢酸ビニル樹脂に対する酢酸ビニルの含有量を3~50質量%とすることが好ましく、5~40質量%とすることがより好ましく、7~35質量%とすることがさらに好ましく、10~30質量%とすることが最も好ましい。
【0030】
エチレン-酢酸ビニル樹脂は、酢酸ビニルの含有量の違いに応じてエチレン-酢酸ビニル樹脂自体の硬さや融点(耐熱性)が変化する。具体的には、エチレン-酢酸ビニル樹脂中の酢酸ビニル含有量が多くなるに従い柔軟性が高まり且つ低融点となる。なお、エチレン-酢酸ビニル樹脂中の酢酸ビニル含有量は、JIS K7192:1999に準じる方法により測定することができる。
【0031】
また、クッションを形成する発泡用の樹脂としてエチレン-酢酸ビニル樹脂を用いる場合、エチレン-酢酸ビニル樹脂の分子量の指標となるメルトフローレイトは、発泡成形性の観点より、0.1~30(g/10分)であることが好ましく、0.5~20(g/10分)であることがより好ましく、1~10(g/10分)であることがさらに好ましく、1.5~5(g/10分)であることが最も好ましい。
【0032】
メルトフローレイトは、成形温度まで加熱溶融した樹脂の流動性(粘度)を示すものである。メルトフローレイトの値は低いほど高粘度であるため、メルトフローレイトの値が低いエチレン-酢酸ビニル樹脂は、分子量が高いエチレン-酢酸ビニル樹脂であると判断される。
【0033】
発泡成形において、メルトフローレイトが高過ぎると、すなわち溶融した樹脂の粘度が低過ぎると、発泡時に気泡が抜けて所望の発泡倍率を得ることができなくなる。一方、メルトフローレイトが低過ぎると、すなわち溶融した樹脂の粘度が高過ぎると、発泡時の気泡の成長が不十分となり、やはり所望の発泡倍率を得ることができなくなる。このため、適切なメルトフローレイト範囲に調整したエチレン-酢酸ビニル樹脂を用いることは、得られる樹脂発泡体の柔軟性等に大きな影響を及ぼすことから、発泡成形において考慮すべき重要な因子となる。なお、エチレン-酢酸ビニル樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210に準じて、温度190℃、荷重21.18Nの条件にて測定することができる。
【0034】
<発泡体の樹脂の他の成分>
本実施形態のクッションを形成する発泡体の樹脂材料には、必要に応じて、軟化剤、フィラー、酸化防止剤、離型剤、耐候性付与剤、難燃剤、滑剤、抗菌剤、防カビ剤、抗ウィルス剤、発泡促進剤などを配合することができる。また、樹脂発泡体の成形には架橋反応を利用してもよく、その場合は過酸化物系架橋剤、硫黄系架橋剤などの架橋剤を配合してもよい。
【0035】
<発泡体の製造方法>
本実施形態のクッションを構成する樹脂発泡体の成形方法に特に制限はなく、ビーズ発泡成形方法、バッチ発泡成形方法、プレス発泡成形方法、常圧二次発泡成形方法、射出発泡成形方法、押出発泡成形方法、発泡ブロー成型方法など広く公知の発泡体成形方法を使用することができる。
【0036】
<発泡体の構造>
本実施形態のクッションを構成する樹脂発泡体の構造として、樹脂発泡体の気泡の形態に特に制限はなく、独立気泡、連続気泡またはそれらの混合した気泡など必要に応じて任意の形態を採用することができる。ただし、本実施形態に用いられるクッションは、高い柔軟性を有しながら使用者の動作を補助できる適度な反発力も必要であることから、クッションを構成する樹脂発泡体の気泡は主として独立気泡から構成されていることが好ましい。
【0037】
また、樹脂発泡体中の気泡は、クッションの厚み方向、すなわち表面層、中間層によって気泡のサイズ、気泡の形状、気泡の密度などが異なっていてもよい。本実施形態に用いられるクッションは、上述したように高い柔軟性を有しながら適度な反発力も必要であることから、表面層の気泡のサイズは、中間層よりも小さくて緻密である方が好ましい。
【0038】
本実施形態のクッションを構成する樹脂発泡体の発泡倍率は、JIS K7112で求めた発泡前のソリッドの密度ρ0を、JIS K7222で求めた発泡体の密度ρ1で除した値(ρ0/ρ1)として求められる。樹脂発泡体の柔軟性は発泡倍率と相関性があり、発泡倍率が高いほど樹脂発泡体は柔軟になる。本実施形態に用いられるクッションには高い柔軟性と適度な反発性が必要になることから、樹脂発泡体の発泡倍率は5倍以上50倍以下であることが好ましく、7倍以上30倍以下であることがより好ましく、9倍以上25倍以下であることがさらに好ましく、10倍以上20倍以下であることが最も好ましい。
【0039】
<クッションの形状等>
上述したような樹脂発泡体により構成される本実施形態のクッションは、形状などに特に制限はなく、クッションが取り付けられる介護用具に応じて平板形状、臀部の形状に対応した凹凸形状など任意の形状を採用することができる。また、クッションの表面部分は、水はけ性の向上、滑り止め防止の観点等からシボ形状などを施してもよい。また、樹脂発泡体を用いたクッション材は、その意匠性や衛生性等を高める観点から、他のカバー材で覆われていてもよい。さらに、クッション材を介護用具へ取り付ける固定方法に特に制限はなく、凸部とそれと嵌合する凹部とを組み合わせる固定方法など公知の固定方法を用いることができる。
【実施例】
【0040】
A.各発泡体の特性が座り心地等に及ぼす影響
1.発泡体の作製
本発明の一実施形態に係るクッションを構成する発泡体1~8の発泡用樹脂組成物は、以下の原料を用いて、下記の条件および下記表1に示す配合にて作製した。
<発泡用樹脂組成物の作製>
発泡体1~8を形成するための発泡用樹脂組成物は、下記に示す(a)発泡用樹脂、(b)発泡剤、(c)発泡助剤、(d)架橋剤および(e)安定剤を表1に示す配合比にて配合し、ロール混錬機にて85℃、15分混錬することにより、厚み2mmのシート状発泡用樹脂組成物として作製した。
(a)発泡用樹脂:
・EVA-1:エチレン-酢酸ビニル樹脂E(製品名「ウルトラセン630」、東ソー株式会社製、酢酸ビニル含有量15質量%)
・EVA-2:エチレン-酢酸ビニル樹脂E(製品名「ウルトラセン634」、東ソー株式会社製、酢酸ビニル含有量26質量%)
(b)発泡剤:アゾジカルボンアミド(製品名「ユニフォームAZ」、大塚化学株式会社製)
(c)発泡助剤:活性亜鉛華(製品名「META-Z」、井上石灰工業株式会社製)
(d)架橋剤:ジクミルパーオキサイド(製品名「パークミルD」、日油株式会社製)
(e)安定剤:フェノール系抗酸化剤(製品名「イルガノックス1010」、BASF株式会社製)
【0041】
【0042】
<発泡体の成形>
上述の発泡用樹脂組成物の作製工程で得られたシート状発泡用樹脂組成物を、目標とする各発泡体の厚みに応じて積層枚数を変え(表1参照)、プレス成型機にて温度85℃の条件下で10分間加熱圧縮することにより、表1に示されるサイズの発泡体1~8の発泡用シートを作製した。
次に、上記発泡体1~8の発泡用シートをそれぞれオーブンにて温度140℃の条件下で40分間加熱し予備発泡を行った後、各発泡用シート幅30cm×長さ25cm×深さ2,5,10,15,20,30,50mmの型枠の中に入れ、オーブンにて温度190℃の条件下で20分間加熱することにより、表2に示される発泡倍率(倍)、密度(g/cm3)を有する幅30cm×長さ25cm×厚み2,5,10,15,20,30,50mmの発泡体1~8を作製した。得られた発泡体1~8のそれぞれを実施例1~4、参考例5、比較例1~3の発泡体として以下の評価試験を行った。
なお、各発泡体の密度ρ1は、JIS K7222に準じる方法により測定した。また、各発泡体1~8の発泡倍率は、JIS K7112で求めた発泡前のソリッドの密度ρ0を、JIS K7222で求めた発泡体の密度ρ1で除した値(ρ0/ρ1)として求めた。
【0043】
【0044】
2.発泡体の特性評価
<各発泡体の圧縮荷重F10、ヒステリシスロス率、圧縮-回復荷重比(Fb/Fa)>
実施例1~4、参考例5および比較例1~3の厚み20mmの各発泡体を10mm圧縮するために必要な圧縮荷重F10(N)、圧縮-回復サイクルにおけるヒステリシスロス率(%)、同じ変形量における圧縮荷重Fa(N)に対する回復荷重Fb(N)の比(Fb/Fa)は、JIS K6400-2:2012に準じて、以下に示す圧縮子を備えた試験装置を用いて各発泡体について圧縮-回復サイクル試験を行うことにより測定した。
【0045】
[圧縮子]
圧縮子の形状は、直径30mm×長さ50mmのステンレス製円柱形状であり、発泡体試験片の圧縮面の円周角はR=5mmで面取りされているものを使用した。この圧縮子を下記試験機のロードセルに装着・固定した。
[試験機]
株式会社島津製作所製、オートグラフ精密万能試験機 AG-50kND型およびロードセル容量 5kNを使用した。
試験条件としては、株式会社島津製作所製、オートグラフ用ソフトウェア「TRAPEZIUM X」を用いて、圧縮速度15mm/sec、回復速度15mm/sec、圧縮-回復間の保持時間0秒、データ取り込み頻度100回/secとした。
最大値やヒステリシスロス率は、同ソフトウェアより得た。
<試験環境>
温度23℃、湿度50%RHに管理された恒温恒湿室に試験片を24時間以上放置することにより試験片の温度を安定化させた後、試験を実施した。
【0046】
すなわち、実施例1~4、参考例5および比較例1~3の厚み20mmの各発泡体を試験片とし、当該試験片を、その変形量が0mmから10mmになるまで温度23℃、30mmφの円柱形の圧縮子を用いて圧縮速度15mm/secで圧縮した後、直ちに回復速度15mm/secで回復させることにより、
図1に示すような各発泡体の荷重-変形量曲線を測定した。各発泡体の荷重-変形量曲線より、各発泡体を10mm圧縮するために必要な圧縮荷重F
10(N)を求め、原点o-圧縮曲線X-点a-点b-原点oで囲まれる面積に対する、原点o-圧縮曲線X-点a-回復曲線Y-点cで囲まれる面積の割合(百分率)からヒステリシスロス率(%)を求め、そして同じ変形量における圧縮荷重Fa(N)に対する回復荷重Fb(N)の比(Fb/Fa)を求めた。
【0047】
実施例1~4、参考例5および比較例1~3の各発泡体について、圧縮サイクルにおける発泡体の変形量が0,2,4,5,6,8(mm)の時の圧縮荷重Fa(N)と、発泡体の変形量が10(mm)の時の圧縮荷重F10(N)と、そして回復サイクルにおける発泡体の変形量が8,6,5,4,2(mm)の時の回復荷重Fb(N)の測定結果を表3に示す。
【0048】
【0049】
表3の測定結果より、実施例1~4、参考例5および比較例1~3の各発泡体について求めた、同じ変形量における圧縮荷重Fa(N)に対する回復荷重Fb(N)の比(Fb/Fa)およびヒステリシスロス率(%)を表4に示す。
【0050】
【0051】
<各発泡体の官能評価>
実施例1~4、参考例5および比較例1~3の各発泡体について、モニター5人による官能試験により評価を行った。具体的には、表2に示される実施例1~4、参考例5および比較例1~3の厚み20mmの各発泡体を試験片とし、実施例1~4、参考例5および比較例1~3の各試験片を浴室用椅子(製品名「楽らく開閉シャワーベンチSフィット」、アロン化成株式会社製)の座部本体の表面に敷き、モニターが座った際に臀部に感じる「柔軟性」及び「底付き感」(座り心地)と、モニターが座った後、両肘掛けに手を掛けて立ち上がる際に腕に感じる「立上り動作のサポート感」(立上り負荷軽減度合)を以下の基準で評価し、その平均値を算出することにより行った。
[評価の基準]
5点:非常に優れている、底付き感が全くない。
(立上り動作時、肘掛けで支持した腕にほぼ力を必要としない)
4点:優れている、底付き感がない。
(立上り動作時、肘掛けで支持した腕に多少の力を必要とする)
3点:普通
(立上り動作時、肘掛けで支持した腕に力を必要とする)
2点:劣る、底付き感がある。
(立上り動作時、肘掛けで支持した腕に強い力を必要とする)
1点:非常に劣る、強い底付き感がある。
(立上り動作時、肘掛けで支持した腕に非常に強い力を必要とする)
【0052】
実施例1~4、参考例5および比較例1~3の各発泡体の総合評価は、上述した「柔軟性」、「底付き感」および「立上り動作の補助感」の3つの項目の評価点がすべて3.5以上であるものを「○」、3つの項目の評価点のいずれか1つが3.0以上3.5未満であり且つ他の項目の評価点がすべて3.5以上である場合を「△」、3つの項目の評価点のいずれか1つが3.0未満であるものを「×」と評価した。
【0053】
実施例1~4、参考例5および比較例1~3の各発泡体の官能試験による評価結果を表5に示す。
【0054】
【0055】
<各発泡体の劣化促進試験前後の圧縮荷重の比(Fc/Fa)、ヒステリシスロス率>
劣化促進試験前後の実施例2,3の発泡体および参考例5の各発泡体の同じ変形量における圧縮荷重の比(試験後の圧縮荷重Fc/試験前の圧縮荷重Fa)、ヒステリシスロス率(%)は、JIS K6400-2:2012に準じて、上述のオートグラフ精密万能試験機を用いて各発泡体について圧縮サイクル試験を行い、上述のオートグラフ用ソフトウェアを用いて算出した。
【0056】
すなわち、実施例2,3の発泡体および参考例5の厚み20mmの発泡体を試験片とし、劣化促進試験前の当該試験片を、その変形量が0mmから10mmになるまで温度23℃、30mmφの円柱形の圧縮子を用いて圧縮速度15mm/secで圧縮することにより、劣化促進試験前の各発泡体の圧縮荷重Fa-変形量曲線を測定した。
【0057】
一方、劣化促進試験については以下の手順により実施した。すなわち、実施例2,3の発泡体および参考例5の厚み20mmの発泡体を試験片とし、当該試験片の全面に次亜塩素酸ナトリウム系洗剤(商品名「カビキラー」、ジョンソン株式会社製)を塗布し、塗布液が乾燥しないように樹脂シート(商品名「サランラップ(登録商標)30cm×50m」、旭化成ホームプロダクト株式会社製)で包装した当該試験片を、温度23℃、湿度50%RHに保たれた恒温恒湿室の中に7時間放置した。
次いで、樹脂シートから取り出した各試験片を水洗し、塗布液を洗い流した後、温度60℃、湿度98%RHに保たれた恒温恒湿槽(商品名「コスモピア EC-85MHHP」型、日立アプライアンス株式会社製)の中に16時間放置した。
次いで、上述の次亜塩素酸ナトリウム系洗剤を用いた恒温恒湿試験と、温度60℃、湿度98%RHの暴露環境下での恒温恒湿試験との組み合わせを1サイクルとして5サイクル繰り返した後、紫外線照射装置(装置名「アイスーパーUVテスター SUV-W151」型、 ランプ名「UVテスター用マルチメタルランプ ME06-L31WX/SUV」型、岩崎電気株式会社製)を用いて、照度70mW、温度63℃、湿度50%RHの条件で各試験片を5時間照射した。
【0058】
次いで、各試験片を温度23℃、湿度50%RHの恒温恒湿室の中に24時間以上放置して、各試験片の温度を安定化させた後、劣化促進試験後の各試験片を、その変形量が0mmから10mmになるまで温度23℃、30mmφの円柱形の圧縮子を用いて圧縮速度15mm/secで圧縮することにより、劣化促進試験後の各発泡体の圧縮荷重Fc-変形量曲線を測定した。
【0059】
各発泡体の荷重-変形量曲線より、劣化促進試験前後の同じ変形量における圧縮荷重の比(試験後の圧縮荷重Fc/試験前の圧縮荷重Fa)を求め、そして、
図1に示すように原点o-劣化促進試験前の圧縮曲線X-点a-点b-原点oで囲まれる面積に対する、原点o-劣化促進試験前の圧縮曲線X-点a-点d-劣化促進試験後の回復曲線Z-原点oで囲まれる面積の割合(百分率)からヒステリシスロス率(%)を上述したオートグラフ用ソフトウェア(商品名「TRAPEZIUM X」、株式会社島津製作所製)により求めた。
【0060】
劣化促進試験後の実施例2,3の発泡体および参考例5の発泡体について、圧縮サイクルにおける発泡体の変形量が2,4,5,6,8(mm)の時の圧縮荷重Fc(N)の測定結果を表6に示す。
【0061】
【0062】
表3及び表6の測定結果より、劣化促進試験前後の実施例2,3の発泡体および参考例5の発泡体について求めた、同じ変形量における圧縮荷重の比(試験後の圧縮荷重Fc/試験前の圧縮荷重Fa)および劣化促進試験後のヒステリシスロス率(%)を表7に示す。
【0063】
【0064】
3.考察
表5に示される官能試験による評価結果により、実施例1~4および参考例5の発泡体からなるクッションは、高い柔軟性を有しながら底付きを生じず優れた座り心地を提供することが可能であり、さらに適度な反発力を有することにより使用者の動作を補助することもできることが確認された。一方、比較例1~3の発泡体からなるクッションは、柔軟性、底付き防止および/または立上り動作のサポート感のいずれかの特性において欠けており、介護用具に用いるクッションとしては適当でないことが確認された。
【0065】
介護用具に用いる発泡体からなるクッションが高い柔軟性を有しながら底付きを生じず、適度な反発力を有するためには、表3に示される実施例1~4および参考例5の発泡体と比較例1~3の発泡体の特性より、発泡体を10mm圧縮するために必要な圧縮荷重F10(N)が50N以上250N以下であることが好ましく、90N以上150N以下であることがより好ましいことが判った。
【0066】
また、上述したような介護用具に用いるのに適した発泡体からなるクッションを得るためには、表4に示される実施例1~4および参考例5の発泡体と比較例1~3の発泡体の特性より、ヒステリシスロス率(%)が40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましいことが判った。また同様に、同じ変形量における圧縮荷重Fa(N)に対する回復荷重Fb(N)の比(Fb/Fa)については0.4以上1.0以下であることが好ましく、0.6以上1.0以下であることがより好ましことが判った。
【0067】
表7に示す実施例2,3の発泡体および参考例5の発泡体の劣化促進試験前後の同じ変形量における圧縮荷重の比(試験後の圧縮荷重Fc/試験前の圧縮荷重Fa)の比較より、実施例2,3の発泡体は劣化促進試験前後の圧縮荷重の比(Fc/Fa)が1.0に近いことから劣化促進試験による劣化の進行が殆どみられず、次亜塩素酸ナトリウム、アルコールなどの薬剤による消毒や石鹸などの洗剤による洗浄などに対して極めて高い耐薬品性、高い耐久性を有することが判った。一方、参考例5の発泡体は、劣化促進試験により劣化の進行がみられる原因が定かでないが、表1に示されるように架橋剤量が実施例2の発泡体よりも多い点のみが異なっている。このことより、参考例5の発泡体の方が、実施例2の発泡体よりも発泡成形時の架橋度の割合がより高くなっており、発泡成形後の成形残留ひずみが高くなっていることが推測される。このため、参考例5の発泡体は、劣化促進試験によって残留ひずみ等が解放されて何らかの状態変化を起こし、劣化促進試験により劣化が進行してしまったのではないかと推察される。
【0068】
また、上述のような高い耐薬品性、高い耐久性を有するためには、表7に示される劣化促進試験前後の実施例2,3の発泡体および参考例5の発泡体の特性より、同じ変形量における圧縮荷重の比(Fc/Fa)が0.9以上1.4以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましいことが判った。また同様に、ヒステリシスロス率(%)については26%以下であることが好ましく、24%以下であることがより好ましことが判った。
【0069】
B.発泡体の形状(厚み)が座り心地等に及ぼす影響
1.発泡体の作製
本発明の一実施形態に係るクッションを構成する発泡体の形状(厚み)が座り心地等に及ぼす影響を調べるため、以下に示す性状を有する発泡体を作製して評価試験を行った。
すなわち、各発泡体の成形に用いた発泡用樹脂組成物、成形された発泡体は、発泡体5を作製しなかったこと以外、上記『A.各発泡体の特性が座り心地等に及ぼす影響』の中で説明したのと同じ組成の樹脂材料、同じ工程、同じ条件にて作製し、上記表2に示される発泡倍率(倍)、密度(g/cm3)を有する幅30cm×長さ25cm×厚み2,5,10,15,20,30,50mmの発泡体1~4および6~8を作製した。得られた発泡体1~4および6~8のそれぞれを実施例1~4、比較例1~3の発泡体として以下の評価試験を行った。
【0070】
2.発泡体の特性評価
<25%ひずみ時の圧縮応力P、厚みの違いによる各発泡体の柔軟性指数Pt>
実施例1~4の発泡体および比較例1~3の発泡体の座り心地(硬さ)については、JIS K6767:1999に準じて、以下に示す試験装置を用いて厚み20mmの各発泡体の25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)を用いて評価した。
[試験機]
株式会社島津製作所製、オートグラフ精密万能試験機 AG-50kND型およびロードセル容量 5kNを使用した。
試験条件としては、株式会社島津製作所製、オートグラフ用ソフトウェア「TRAPEZIUM X」を用いて、圧縮速度15mm/sec、回復速度15mm/sec、圧縮-回復間の保持時間0秒、データ取り込み頻度100回/secとした。
25%ひずみ時の圧縮応力は、同ソフトウェアより得た。
<試験環境>
温度23℃、湿度50%RHに管理された恒温恒湿室に試験片を24時間以上放置することにより試験片の温度を安定化させた後、試験を実施した。
【0071】
上述の試験結果より、実施例1~4の発泡体および比較例1~3の発泡体について、厚み20mmの各発泡体の25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)、厚みt(mm)と厚み20mmの発泡体の25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)を乗ずることにより求めた柔軟性指数Pt(kPa・mm)の計算結果を表8に示す。
【0072】
【0073】
<各発泡体の厚みの違いによる座り心地の評価>
実施例1~4の発泡体および比較例1~3の発泡体の厚みt(mm)の違いによる座り心地(柔軟性、底付き感)について、モニター5人による官能試験により評価を行った。
具体的には、上述した表2に示される実施例1~4の発泡体および比較例1~3の下記表9に示す厚みを有する発泡体を試験片とし、実施例1~4および比較例1~3の各試験片を浴室用椅子(製品名「楽らく開閉シャワーベンチSフィット」、アロン化成株式会社製)の座部本体の表面に敷き、モニターが座った際に臀部に感じる「柔軟性」及び「底付き感」(座り心地)を以下の基準で評価し、その平均値を算出することにより行った。
[評価の基準]
5点:非常に優れている(底付き感が全くない)
4点:優れている(底付き感がない)
3点:普通
2点:劣る(底付き感がある)
1点:非常に劣る(強い底付き感がある)
【0074】
実施例1~4の発泡体および比較例1~3の発泡体の座り心地の総合評価は、上述した「柔軟性」および「底付き感」の2つの項目の評価点がいずれも3.5以上であるものを「○」、2つの項目の評価点のいずれか1つが3.0以上3.5未満であり且つ他の項目の評価点が3.0以上である場合を「△」、2つの項目の評価点のいずれか1つが3.0未満であるものを「×」と評価した。
【0075】
実施例1~4の発泡体および比較例1~3の発泡体の官能試験よる座り心地の評価結果を表9に示す。
【0076】
【0077】
3.考察
表9に示される官能試験による発泡体の厚みの違いによる座り心地の評価結果により、実施例1~4の発泡体からなるクッションは、好ましくは5mm以上100mm以下の範囲、より好ましくは7mm以上50mm以下の範囲において、高い柔軟性と高度な底付き防止を両立させながら適度な硬さを有する優れた座り心地を提供できることが確認された。一方、比較例1~2の発泡体からなるクッションは、2mm以上100mm以下の広い範囲において底付きを防止できるが、硬過ぎることにより柔軟性に欠けて座り心地の総合評価が低く、一方、比較例3は柔軟性に優れているが、底付きを防止することができず、介護用具に用いるクッションとしては適当でないことが確認された。
【0078】
介護用具に用いる発泡体からなるクッションが高い柔軟性と高度な底付き防止を両立させながら適度な硬さを有するためには、表8に示される実施例1~4の発泡体および比較例1~3の発泡体の特性より、厚み20mmの発泡体の25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)が35kPa・mm以上250kPa・mm以下であることが好ましく、40kPa・mm以上200kPa・mm以下であることがより好ましく、40kPa以上100kPa以下が最も好ましいことが判った。また同様に、クッションの底突きを防止するためには、厚みt(mm)に、厚み20mmの発泡体の25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)を乗じて求めた柔軟性指数Pt(kPa・mm)は500kPa・mm以上であることが好ましく、900kPa・mm以上であることがより好ましいことが判った。ただし、柔軟性指数Pt(kPa・mm)は、発泡体からなるクッションの厚みtが厚いほど大きくなり座り心地を向上させるが、設計上の観点からはクッションの厚みを50mm程度以下に抑えてコンパクトにしなければならないという制約があることから、上限としては10000kPa・mm以下であることが好ましく、8000kPa・mm以下であることがより好ましい。さらに7000kPa・mm以下であることが最も好ましい。
【要約】
【課題】高度な柔軟性を有するが柔らか過ぎることによる底付きを生じず、使用者の動作を補助する適度な反発力を有するクッションを備えた介護用具を提供する。
【解決手段】本発明によれば、樹脂発泡体からなるクッションを備えた介護用具であって、クッションの特性は、クッションの厚みt(mm)と、厚み20mmの前記クッションをJIS K6767:1999に準じて測定した25%ひずみ時の圧縮応力P(kPa)を乗ずることにより求められる柔軟性指数Ptが500kPa・mm以上10000kPa・mm以下である介護用具が提供される。
【選択図】 なし