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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】アブレーション治療計画システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021516785
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019075578
(87)【国際公開番号】W WO2020064659
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】18197435.3
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ホートファスト フイラウム レオポルト テオドルス フレデリク
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0185087(US,A1)
【文献】特表2005-532868(JP,A)
【文献】特表2012-507324(JP,A)
【文献】特表2013-512748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0335413(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0318804(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーション治療計画システムであって、
-患者の医用画像を受信し、皮膚位置に対する一つ又はそれより多くの熱アプリケータのための意図される治療位置と、一つ又はそれより多くの意図される治療パラメータとを定義する入力を受信するステップと、
-前記患者の皮膚の位置を決定するステップと、
-前記意図される治療位置及び一つ又はそれより多くの前記意図される治療パラメータからもたらされる前記皮膚位置での温度又は熱線量を推定するステップと、
-前記皮膚位置における前記計算される温度又は熱線量が、加熱治療に関しては閾値を上回る場合又は冷却治療に関しては閾値を下回る場合、警報を発するステップと
を前記アブレーション治療計画システムに実行させるためのプログラムコード手段を有する、アブレーション治療計画システム。
【請求項2】
前記治療パラメータは、異なるアブレーションゾーン、等温線又は等線量をエンコードするためのパラメータ構成の固定セットである、請求項1に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項3】
前記アブレーション治療計画システムは、所定の等温線又は等線量線が前記皮膚位置と交差しているか、又は前記皮膚位置から所定の距離内にあるとき、警報を発するように構成される、請求項2に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項4】
前記皮膚の前記温度は、熱モデルによって推定される、請求項1に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項5】
前記皮膚位置は、前記医用画像と同一の患者及び標的の第2の医用画像とのレジストレーションから導出され、前記第2の医用画像は、前記医用画像と異なる撮像モダリティによって取得される、請求項1乃至4の何れか一項に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項6】
前記一つ又はそれより多くの熱アプリケータに対する前記皮膚位置は、前記皮膚位置に対して既知の位置を有する装置の位置から導出されることができ、前記位置は、追跡システム又はプレプロシージャ較正の使用を通じて既知である、請求項1乃至5の何れか一項に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項7】
前記アブレーション治療中の使用のために構成される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項8】
前記一つ又はそれより多くの熱アプリケータ又は前記一つ又はそれより多くの治療パラメータの前記位置が所定の値を超えて変更されるとき、前記皮膚温度計算を繰り返すように構成される、請求項7に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項9】
前記皮膚温度は、部分的に温度測定に基づく、請求項7乃至8の何れか一項に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項10】
前記皮膚温度は、患者特有の熱モデルを使用して計算される、請求項4乃至9の何れか一項に記載のアブレーション治療計画システム。
【請求項11】
前記警報設定は、ユーザによって構成可能である、請求項1乃至10の何れか一項に記載のアブレーション治療計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アブレーションの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的熱アブレーションは、過去10年間で採用される大幅な増加を見た介入的癌治療選択肢である。熱アブレーションは、高周波(RF)、マイクロ波(MW)、高強度集束超音波(HIFU)、焦点レーザアブレーション(FLA)、不可逆エレクトロポレーション(IRE)、凍結アブレーションなどを含む様々なアブレーションモダリティを使用して送達することができる。
【0003】
臨床現場では、これらのアブレーションプロシージャは、画像誘導の助けを借りて、標的領域の内部又は近くに一つ又はそれより多くのアブレーションアプリケータを配置することから成る。典型的には、臨床医は、製造業者から提供される情報、臨床試験における結果及び個人的経験に基づいて、リアルタイム超音波又はインターベンショナルラジオロジー画像(CT/MR)を検査しながら、これらの針状アプリケータを配置する。近接照射療法手技で用いられる放射線治療計画システム(RTPS)と同様に、アブレーションを計画し、針位置をガイドするためのより高度なアブレーション治療計画システム(ATPS)の使用は、その利用可能性が限られているため、広く普及していない。
【0004】
臨床的な熱アブレーション治療は非常に複雑であり、最適な治療結果を保証するためには、全て綿密にモニタリングする必要がある臨床手技の組み合わせに頼っている。アブレーションアプリケータの配置及びアブレーションの実行の次に、これは、
-術中(リアルタイム)撮像、
-患者の麻酔、
-温度プローブの配置、
-尿道カテーテルの配置、
-リスクのある器官(OAR)を保護するための保温器/冷却器の配置、
-OARを保護するためのハイドロ/ニューモ解離の実施
を含む。
【0005】
米国特許出願公開第2016/0335413号明細書には、最小侵襲性熱アブレーション治療計画のためのシステム及び方法が記載されている。記載されるシステムは、治療の有効性を決定するために熱線量分布を分析するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱アブレーション中の患者の安全性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載のアブレーション治療計画システムによって達成される。温熱焼灼療法を実施する臨床医はプロシージャのあらゆる面を監視するために注意をめぐらす必要があるため、有害作用が晩期に発見されることもあれば、手技終了後まで全く発見されないことさえある。これらの悪影響は、誤って不正確な位置決め又は誤った治療パラメータを選択することによって引き起こされることがある。加えて、治療部位におけるアプリケータの位置決め及びアブレーションパラメータの変化が皮膚の温度にどのように影響するかを監視することは複雑であるように思われる。その結果、皮膚刺激及び/又は皮膚熱傷が、熱アブレーションプロシージャの有害事象として報告されている。熱モデルを適用することによって、アブレーションの適用前に皮膚位置における温度を予測することができる。皮膚の温度が温かすぎると予測されるとき(例えば、標的を加熱するとき)、又は冷すぎると予測されるとき(例えば、皮膚を冷却するとき)に警報を発することによって、有害な皮膚効果を防止することができ、患者の安全性を改善することができる。
【0008】
皮膚位置は例えば、セグメンテーションを使用する場合に、医用画像から直接導出されてもよい。しかしながら、皮膚は、全ての撮像モダリティからの全ての画像において見ることができない場合がある。例えば、直腸内超音波プローブを使用する場合、皮膚の位置は、超音波画像では見えない可能性が最も高い。これらの状況では、皮膚位置は、同じ患者及び標的の第2の医用画像と前記医用画像との画像レジストレーションを実行することによって決定されてもよく、第2の医用画像は医用画像とは別の撮像モダリティによって取得される。この第2の医用画像は例えば、CT画像又はMRI画像とすることができる。これは、多くの場合、患者のCT画像又はMRI画像が標的の位置の決定のためにいずれにしても取得されるため、有利である。例えば、前立腺がんは、超音波画像のみによって位置を特定することが困難である。従って、MRI及び/又は(コントラスト強調される)CT画像をその目的のために取得することができる。皮膚の位置を第2の医用画像から導出することができる場合、超音波画像との画像レジストレーションは、第2の医用画像内の皮膚の座標を超音波画像空間内の座標に変換する。
【0009】
代替的に又は追加的に、皮膚の位置は、皮膚の位置に対して既知の位置を有する装置によって決定することができる。装置は例えば、皮膚上に配置することができるが、例えば、皮膚に対して固定位置を有することもできる。装置の位置は追跡によって決定することができ、及び/又は標的の座標に対する皮膚の位置が決定される、プレプロシージャ較正によって決定することができる。
【0010】
本発明の実施形態によれば、アブレーション治療計画システムは等温線又は等線量線を計算するように構成され、アブレーション治療計画システムは、所定の等温線又は等線量線が皮膚位置を横切っているか、又は皮膚位置から所定の距離内にあるときに警報を発するように構成される。熱線量は時間積分される温度を反映し、例えば、42又は43度で等価な数で表すことができる。場合によっては、熱線量が温度よりも皮膚の傷害をより良く予測することができる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、治療パラメータは異なるアブレーションゾーンをエンコードするためのパラメータ構成の固定セットであり、等温線又は等線量を使用して、皮膚位置における温度又は熱線量を推定する。これらの構成は、アブレーションゾーンのサイズ及び形状、又は異なる等温線又は等線量線を記述することができる。この実施形態は、計算時間を短縮することができるので、特に治療中に有利である。
【0012】
代わりに、皮膚の位置での熱線量の温度を推定するための熱モデルを使用することができる。このようなモデルは、組織パラメータについての文献又は平均値に基づくことができる。値は例えば、年齢、性別、及び/又は特定の医学的状態に基づいて、患者群を層別化することによって改善することができる。また、幾つかのパラメータの値は、例えばMRIのような医用撮像によって個々の患者について測定されてもよい。このような医用画像は例えば、血管密度に関する情報を提供することができる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、警報の設定は、ユーザによって構成可能である。例えば、ユーザは、警報が発せられる皮膚温度、又は等線量線又は等温線からの距離を選択することができる。この実施形態は異なる治療タイプに適応するだけでなく、温度誘発性皮膚毒性に関するユーザの好み又は最新の科学的洞察に適応するために、システムの柔軟性を増大させるので有利である。
【0014】
本発明の実施形態によるアブレーション治療計画システムは、治療計画段階中に使用することができる。この段階では、標的の位置と大きさ、及びリスクのある近くの器官の位置に基づいて、患者に対する治療計画が作成される。このような計画は、治療中に使用される一つ又はそれより多くの経皮熱アプリケータのための意図される治療標的位置を含んでもよい。本発明の実施形態によるアブレーション治療計画システムは、計算される治療計画が実行されるときに、潜在的な皮膚損傷についてユーザに警告するために、この計画段階で使用することができる。
【0015】
代替的に又は追加的に、アブレーション治療計画システムは、実際のアブレーション治療中、すなわち、アプリケータ位置決めと治療送達とを含むステップ及びアプリケータ位置決めと治療送達との間のステップの何れかの間に使用されてもよい。臨床医が治療装置を挿入した後、熱アプリケータの位置はアブレーション治療計画システムによって(半)自動的に検出されてもよいが、ユーザによってシステムに挿入されてもよい。この位置に基づいて、アブレーション治療計画システムは温度計算を実行し、意図される治療パラメータと組み合わせて現在の熱アプリケータ位置を使用するときに、皮膚の温度を予測することができる。これらの温度計算は以前に挿入されるアプリケータの位置及び治療パラメータを含むことができ、後者の情報が利用可能である場合、依然として挿入されなければならない熱アプリケータの意図される位置及び治療パラメータをさらに含むことができる。皮膚位置で、計算される温度が特定の閾値を上回るか、又は下回る場合、警報が発せられる。実際のアブレーション治療中にアブレーション治療計画システムを使用することは、皮膚損傷を引き起こす誤ったアプリケータ配置に対する余分な安全対策を提供する。しかしながら、それはまた、臨床医が処置中に計画から逸脱することを決定する処置中に役立ち得る。計画から逸脱する場合、ユーザは、潜在的な皮膚効果に常に気付くとは限らない。そのため、警報を上げると安全性が向上する場合がある。
【0016】
承認される治療計画が利用可能であるとき、治療が計画に従って実行される場合、安全性の問題は予想されないことが知られているため、治療中にアプリケータが挿入された後に、温度計算を実行することが常に必要であるとは限らない。しかしながら、この状況は、計画段階と比較して状況が変化した場合に変化する。例えば、患者の解剖学的構造は変化しているかもしれないが、アプリケータは想定したほど正確に位置決めされていないかもしれない。したがって、本発明の実施形態によれば、皮膚温度計算は、一つ又はそれより多くの熱アプリケータ又は一つ又はそれより多くの治療パラメータの位置が所定の値を超えて変更される場合にのみ実行される。この実施形態は、治療中の計算が治療プロセスを遅くする可能性があるため、有利である。
【0017】
本発明のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかになり、それを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態が使用され得る臨床ワークフローを図式的に示す。
図2】本発明の実施形態によるアブレーション治療計画システムを図式的に示す。
図3】凍結アブレーション針及び対応する等温線を図式的に示す。
図4】警報が発せられない状況、及び発せられる状況を図式的に示す。
図5】警報が発せられない他の状況、及び発せられる他の状況を図式的に示す。
図6】皮膚の位置を決定するために装置がどのように使用され得るかを図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態を使用することができる臨床ワークフローを概略的に示す。一つ又はそれより多くの医用画像(例えば、CT又はMRI)を取得して、アブレーション治療が予定されるか、又は予定され得る患者における治療標的を識別することができる。以下、このような医用画像を第2の医用画像と呼ぶことがある。この医用画像は治療のための標的(例えば、ある不確定マージンを含む腫瘍)101をセグメント化するために使用されてもよい。また、一つ又はそれより多くのリスクのある器官をセグメント化することができる(101)。このセグメンテーションは、手動で、又は(半)自動的に実行されてもよい。
【0020】
治療を開始する前に、患者は治療台上に配置される。また、治療中に使用される装置は、セットアップされ、較正されてもよい。画像誘導は例えば、超音波撮像によって達成することができるが、他の医用撮像モダリティも考えられる。第2の医用画像への画像レジストレーションは超音波(又は他の撮像モダリティ)撮像フレームに対する皮膚の位置を決定するために、及び場合によっては標的の位置の決定のためにも使用することができる。画像レジストレーションアウトプットによって、第2の医用画像における皮膚及び標的の座標は、アブレーションプロシージャの間に使用される画像の画像空間における座標に変換され得る。
【0021】
また、皮膚は、アブレーションプロシージャ中に使用される医用画像から直接導出されてもよい。皮膚の位置が医用画像から導出される実装の例は、肝臓又は腎臓に関するMR/CTガイド介入ラジオロジープロシージャにある。この場合、皮膚は、患者の胴体とボア内の周囲空気との境界に容易に自動的に配置することができる。
【0022】
また、皮膚の位置は、標的領域及び一つ又はそれより多くのアプリケータに対する皮膚の位置を決定するために、皮膚上に配置され、又は皮膚から、固定される距離に配置される装置から導出されてもよい。これは、例えば、追跡される装置によって達成することができる。皮膚の位置が皮膚に対して配置される、追跡される装置から導出される実施例は、患者トラッカによってサポートされる治療であり得る。このような患者トラッカは患者の動きを追跡するために使用されるが、本発明に記載されるように、皮膚保護警報の目的のために使用することもできる。Philips PercuNavシステムは、このような患者トラッカを含む。
【0023】
さらに、標的及びアプリケータ位置に対する皮膚位置は、多かれ少なかれ固定される位置を有する装置の相対によって決定され得る。一例は、グリッドテンプレートが患者の会陰に対して配置される泌尿器科的介入である。このようにして、プレプロシージャ較正によって皮膚位置が分かる。
【0024】
さらに、皮膚位置は例えば、一つ又はそれより多くのカメラによって直接的に決定することができる。較正は、一つ又はそれより多くのカメラで決定される皮膚の位置を、医用撮像システムによって決定される標的の位置に関連付けるために必要とされてもよい。
【0025】
セグメント化される標的及び一つ又はそれより多くのリスクのある器官に基づいて、治療計画を作成することができる(102)。治療計画の作成は、治療効果の最適化であってもよく、治療効果は毒性レベルを特定の限界内に保ちながら、標的を首尾よく治療する尤度の組み合わせによって定義される。
【0026】
治療計画の結果は、一つ又はそれより多くの治療アプリケータの位置及び各アプリケータに使用される治療パラメータである。これらの治療パラメータは例えば、加熱又は冷却の持続時間、使用される電力、又は治療が提供される方向であり得る。これらの治療パラメータは図3で説明されるように、アプリケータに対する等温線又は等線量線の形状であってもよく、一つ又はそれより多くのアプリケータの位置は、それらの治療パラメータと組み合わせて、実際の治療送達中に特定の温度分布をもたらす。この温度分布は、熱モデルによって推定することができる。この温度分布はまた、皮膚に影響を及ぼし得る。皮膚温度が高すぎる場合も低すぎる場合も、皮膚の損傷を引き起こすことがある。また、特定の温度への皮膚の曝露の持続時間も重要であり得る。温度分布は、実際の治療103の間の皮膚温度を推定するために使用することができる。皮膚の温度が高すぎる、又は低すぎると推定される場合(治療が加熱治療であるか冷却治療であるかに応じて)、警報が発せられる。この警報は、計画に対する変更が必要とされる可能性が高いことをユーザに通知する。また、ユーザは、治療から生じる皮膚の温度変化に対抗する対策の使用を考慮することができる。例えば、外部皮膚冷却を適用することができる。
【0027】
一旦、計画されるアプリケータ位置が計算されると、これらの計画される位置は、医療画像上に投影され得る。さらに、例えば、前立腺を標的とする処置において、これらの位置にどのようにアクセスするかに関する情報を臨床医に提供することができ、グリッド内の挿入孔を示すことができる。これは、臨床医がアプリケータを正しい位置107に配置するのを助ける。しかしながら、実際には、臨床医が例えばリアルタイム撮像に基づいて、計画から逸脱したい場合がある。また、アプリケータは、計画通りに正確に配置されなくてもよい。これは、異なる温度分布をもたらし、したがって、皮膚の温度にも影響を及ぼし得る。アプリケータの位置決めの後、温度分布は再計算されてもよく、代わりにアプリケータの位置が計画位置108から一定値以上ずれている場合にのみ再計算されてもよい。温度分布は、既に配置されるアプリケータの位置を使用することによって計算することができる。また、残りのアプリケータの位置は、それらがそれらの計画される位置に配置されると仮定することによって考慮に入れることができる。随意に、残りのアプリケータを配置するためのいくらかの誤差マージンを考慮に入れることができる。再計算される温度分布に基づいて、治療の結果としての皮膚温度の推定を繰り返すことができる(109)。推定皮膚温度が(加熱治療に関して)ある閾値を上回る場合又は(冷却治療に関して)ある閾値を下回る場合、警報110は発せられ、システムは、アプリケータ107を再配置するか、又は治療パラメータを変更することを臨床医に提案する。警報が発せられない場合、臨床医は、全てのアプリケータが位置決めされるかを評価する(111)。もしそわなければ(112)、次のアプリケータが配置される(107)。全てのアプリケータが配置され、皮膚損傷に対する(残りの)危険が決定されないと、熱治療を開始することができる(113)。
【0028】
図2は、本発明の実施形態によるアブレーション治療計画システム200を概略的に示す。アブレーション療法治療システムは、患者201aの医用画像を受け取る。さらに、それは、皮膚位置に対する一つ又はそれより多くの熱アプリケータ201bのための意図される治療位置を規定する入力を受け取る。この意図される治療位置は、アブレーション治療のために配置されるアプリケータの位置又は計画される位置の何れかであり得る。アブレーション治療計画システムはまた、一つ又はそれより多くの意図される治療パラメータ201cを受け取る。医用画像に基づいて、標的又は意図される治療位置に対する患者202の皮膚の位置を決定することができる。これは医用画像から直接導出することができるが、上述したように、別の方法も可能である。それから、システムは、熱モデルを使用して、意図される治療位置及び一つ又はそれより多くの意図される治療パラメータ204から皮膚位置における温度を推定する。
【0029】
例えば、このような熱モデルは、3つの要素を含むことができる
-熱源が与えられた時間における温度の変化を記述する熱方程式である。
-適用モダリティを記述し、熱方程式のための適切な熱源を導出する方程式(又は方程式のセット)である。
-温度変化を熱線量、すなわち細胞の熱損傷の確率の予測に変換する追加の方程式(又は方程式のセット)である。
これらの方程式は一般に、温度及び細胞損傷確率に対する組織の特性の強い依存性のために、結合される。
【0030】
温度変化は、古典的なPennesの式(したがって、潅流は分布潅流速度ωbとしてモデル化される)を使用してモデル化することができ、治療装置の熱源(又はヒートシンク)分布は源の項Qでモデル化される。
ここで、Cpは熱容量(0°における融解の比熱を含む)であり、ρは密度であり、λは熱伝導率である。右側の第2項は、血液を表す添字bを有する潅流項である。潅流は、分布潅流速度ωbとしてモデル化される。Tbは血中の温度であり、Tは、周囲の組織の温度である。
【0031】
このモデル内では、空間内の潅流レートが均一であっても不均一であってもよく、例えば、取得される画像内で見えるように血管内の方が高くてもよい。それから、この方程式を時間的に積分して、細胞損傷モデルに供給される温度場を導出する。
【0032】
熱方程式は、有限差分時間領域(FDTD)及び有限要素法(FEM)アプローチを含む異なる数値法で解くことができる。有限要素アプローチでは、アブレーションに関連した偏微分方程式の弱形式を離散化し、続いて直接又は反復的に解く。
【0033】
FDTDアプローチでは、偏微分形式の時間依存方程式を空間及び時間偏微分への中心差分近似を用いて離散化した。得られた有限差分方程式をリープフロッグ積分法を用いて解いた。
【0034】
熱モデルの代替として、アプリケータのアブレーションゾーンをエンコードするためのパラメータ構成の固定セットが、皮膚温度又は皮膚における熱線量を推定するために使用されてもよい。
【0035】
熱モデルによって行われる温度計算に基づいて、皮膚の位置で計算される温度がある閾値206を上回るか、又は下回る場合、システムは警報を発する。
【0036】
図3は、凍結切除針300及び対応する等温線302を概略的に示す。304は、アブレーションゾーンの高さをミリメートルで示すスケールである。図3には、アプリケータに最も近い-40oCのアイソサーモ線が表示される。さらに、-20oCアイソ線(中央)と0oCアイソ線が表示される。等温線の位置に関するこの情報は、利用可能なほとんど全てのアブレーション針について提供される。この情報は警報を発するべきかを決定するために、熱モデルの代替として、アブレーション治療計画システムによって使用することができる。
【0037】
図4は、(A)警報が発せられない状況、及び(B)警報が発せられる状況を図式的に示す。図4は、アプリケータが配置される患者203を図式的に示す。アプリケータの使用の結果として、局所的な温度が変化する。これは、等線量線又は等温線404、405の存在によって見ることができる。図4による実施態様では、ある等線量又は等温線405が皮膚402と交差する場合、警報が発せられる。図4Aでは、等線量線405aは皮膚402と交差しないので、警報は発生しない。図4Bにおいて、等線量線405は皮膚402と交差する。そのため、警報が上がる。
【0038】
本発明の実施形態によれば、警報は、ユーザによって構成可能であり得る。例えば、ユーザは、任意の領域(アブレーションゾーン、特定の等温線又は特定の等線量線)の距離を指定することができる。例えば、50度の等温線が皮膚に5mmより近い場合、警報を発することができる。
【0039】
図5は、(A)警報が発せられない状況、及び(B)警報が発せられる他の状況を図式的に示す。この実施態様では、等線量線又は等温線505が皮膚502からある距離内にある場合、警報が発せられる。501は、線が皮膚502からこの特定の距離を有することを示す。図5Aでは、等線量線505aが線501と交差していないので、警報は発せられない。図5Bでは、線505bは501と交差している。したがって、警報が発せられる。
【0040】
図6は、皮膚の位置を決定するためにどのように装置が使用され得るかを図式的に示す。図6は、グリッド606が会陰の皮膚602の近くに配置されている前立腺プロシージャを概略的に示している。グリッドは、皮膚位置602の代用として取られる。等線量線605がグリッドと交差するとき(図6A)、又は等線量線605がグリッド607からある距離内にあるとき(図6B)、警報が発せられる。
【0041】
本発明は図面及び前述の説明において詳細に図示され、説明されてきたが、そのような図示及び説明は例示的又は例示的であり、限定的ではないと考えられるべきであり、本発明は開示される実施形態に限定されない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B