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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20220118BHJP
【FI】
E05B85/16 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021559562
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2021019767
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2020094614
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000192914
【氏名又は名称】株式会社神菱
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】特許業務法人森脇特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新川 和秀
(72)【発明者】
【氏名】向野 努
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/001263(WO,A1)
【文献】特開2004-324057(JP,A)
【文献】特開2017-214728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部とカバー部とを備え、
前記本体部は、幅方向中央に第1のネジ孔と、第1の係止部と、ガイド受部とを備え、
前記カバー部は、前記第1のネジ孔に対応した第2のネジ孔と、前記第1の係止部と係合する第1の係止受部と、前記ガイド受部と協働するガイド部とを備え、
前記ガイド部は、高さ方向に対して傾斜面を有すると共に、
前記本体部は、幅方向の両端部に第2の係止部とアーム部とを備え、
前記第2の係止部は、前記本体部の長手方向の第1の端部側に位置し、
前記カバー部は、前記第2の係止部と係合する第2の係止受け部を備え、
前記アーム部は、前記第1のネジ孔と前記第2の係止部との間に位置する支持部により支持され、
前記支持部は、前記カバー部のアーム受部と面接触することを特徴とする車両用ドアハンドル。
【請求項2】
前記第1の係止部は、前記本体部の幅方向の両端部に位置し、
前記第1の係止部と前記第1の係止受部とは、高さ方向に対して傾斜する傾斜面で接触することを特徴とする請求項1記載の車両用ドアハンドル。
【請求項3】
前記カバー部は第3の係止部を備え、
前記本体部は、前記第3の係止部と係合する第3の係止受部を備え、
前記第3の係止部は、前記第1の係止受部より長手方向の前記第1の端部に対向する第2の端部側に位置し、
前記第3の係止受部は、前記第1の係止部より前記第2の端部側に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアハンドル。
【請求項4】
前記第3の係止部は、前記ガイド部と一体に形成されていることを特徴とする請求項記載の車両用ドアハンドル。
【請求項5】
前記本体部の前記カバー部側表面に、前記カバー部の内壁面と接する摺動面が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用ドアハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用のドアハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアの開閉時に使用されるドアハンドルとしては、ハンドルカバーと本体部の2つの構成部品を組合わせたものが知られている。例えば特許文献1及び特許文献2は、2つの構成部品を係止部材とネジとにより固定するドアハンドルを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-324106号公報
【文献】特開2007-177472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたドアハンドルは複数の係止爪と係止溝のそれぞれを正確に位置合わせを行い組合わせる必要がある。また、特許文献2に開示されたドアハンドルは、本体部をハンドルカバーに対して所定の角度傾けた状態で互いの係止片を係合させる必要がある。いずれのドアハンドルも、その組立作業には熟練を必要とする。
【0005】
上記課題を鑑み、本発明は、組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用ドアハンドルは、
本体部4とカバー部5とを備え、
前記本体部4は、幅方向中央に第1のネジ孔46と、第1の係止部41と、ガイド受部44とを備え、
前記カバー部5は、前記第1のネジ孔46に対応した第2のネジ孔56と、前記第1の係止部41と係合する第1の係止受部51と、前記ガイド受部44と協働するガイド部54とを備え、
前記ガイド部54は、高さ方向に対して傾斜面を有することを特徴とする。
【0007】
このような構成とすることにより、ガイド部54の傾斜面上に沿ってガイド受部44が移動し、組立手順に従った本体部4の移動を誘導することができ、作業者の熟練を要することなく、組立作業負担を軽減することができる。
【0008】
また、本発明に係る車両用ドアハンドルは、
前記第1の係止部41は、前記本体部4の幅方向の両端部に位置し、
前記第1の係止部41と前記第1の係止受部51とは、高さ方向に対して傾斜する傾斜面で接触することを特徴とする。
【0009】
このような構成によると、カバー部5に対して本体部4を長手方向に移動させることで本体部4とカバー部5を高さ方向に密着させることができる。そして、第1及び第2のネジ孔46、56を用いたネジ固定及び第1の係止部41と第1の係止受部51とからなる係止部材による係合によって、容易に強固に本体部4とカバー部5とを固定することができ、作業者の熟練を要することなく、組立作業負担を軽減することができる。
【0010】
また、本発明に係る車両用ドアハンドルは、
前記本体部4は、幅方向の両端部に第2の係止部42とアーム部48とを備え、
前記第2の係止部42は、前記本体部4の長手方向の第1の端部側に位置し、
前記カバー部5は、前記第2の係止部42と係合する第2の係止受け部52を備え、
前記アーム部48は、前記第1のネジ孔46と前記第2の係止部42との間に位置する支持部49により支持され、
前記支持部は、前記カバー部5のアーム受部59と面接触することを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることで、回動運動の軸となるアーム部48を支持する支持部49が、カバー部5のアーム受部59と面接触することで、2重構造となり、支持部49がアーム受部59により補強される。その結果、支持部49の薄厚化が可能となり、ドアハンドル100の薄厚化に寄与する。
【0012】
また、本発明に係る車両用ドアハンドルは、
前記カバー部5は第3の係止部53を備え、
前記本体部4は、前記第3の係止部53と係合する第3の係止受部43を備え、
前記第3の係止部53は、前記第1の係止受部51より長手方向の前記第1の端部に対向する第2の端部側に位置し、
前記第3の係止受部43は、前記第1の係止部41より前記第2の端部側に位置することを特徴とする。
【0013】
このような構成とすることで、本体部4とカバー部5とを、長手方向(前後方向)の両端部及び幅方向の両端部において連結固定することができる。それにより応力をそれぞれの係止部に分散することができ、安定して本体部4とカバー部5とを固定することができる。
【0014】
また、本発明に係る車両用ドアハンドルは、
前記第3の係止部53は、前記ガイド部54と一体に形成されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成とすることで、カバー部5の製造を容易にするとともに、ドアハンドル100の小型化に寄与する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、ドアハンドル100を車のドアパネル3に取り付けた状態を示す斜視図、図1(b)はドアハンドル100の裏面側を示す平面図、図1(c)は本体部4を示す斜視図、図1(d)はカバー部5を示す斜視図である。
図2図2(a)はドアハンドル100の断面図、図2(b)は本体部4の断面図、図2(c)はカバー部5の断面図、図2(d)、(e)はカバー部5の拡大断面図である。
図3図3(a)はドアハンドル100の断面図、図3(b)は本体部4の断面図、図3(c)はカバー部5の断面図、図3(d)は中爪41の拡大図、図3(e)はカバー部5の第1の係止受部51の拡大図である。
図4図4は、ドアハンドル100の、特にグリップ部1の主要な組立工程を示す断面図である。
図5図5は、ドアハンドル100の、特にグリップ部1の主要な組立工程を示す断面図である。
図6図6(a)、(b)、(c)は、組立工程における幅方向における本体部4及びカバー部5の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0019】
(実施形態1)
図1(a)は、ドアハンドル100を車のドアパネル3に取り付けた状態を示す斜視図であり、図1(b)はドアハンドル100の裏面側(ドアパネル3への取付側)を示す平面図である。図1(b)において、X軸(図中左右方向)はドアハンドル100の長手方向(以下単に「前後方向」と称することがある)であり、車両の前後方向に相当し、Y軸はドアハンドル100の幅方向(以下単に「幅方向」と称することがある)であり、車両の上下方向に相当する。
また、長手方向の一端部(第1の端部)と、一端部と対向する他端部(第2の端部)に対して、車両の進行方向側を前方側、後退方向側を後方側と称することがある。
「前後方向」、「上下方向」「前方側」、「後方側」等の表記は、理解のため、一般的なドアハンドル100の取付方向に基づいて記載した表記であるが、相対的位置関係を示すものであり、ドアハンドル100の取付方向を限定するものではない。例えば、「前方側」、「後方側」を反対に取り付けること等を排除するものではない。
【0020】
ドアハンドル100は、ドアの開閉操作の際に把持されるグリップ部1と、ドアハンドル100を車のドアパネル3に取り付けるための第1ベース部2aと第2ベース部2bを備えている。
図1(a)、(b)に示すようにグリップ部1は、本体部4とカバー部5を備えている。
【0021】
図1(c)は、本体部4を示す斜視図であり、図1(d)はカバー部5を示す斜視図である。
図1(c)に示すように本体部4は、第1の爪部(第1の係止部)41及び第2の爪部(第2の係止部)42を、その幅方向両端部に備えている。従って、第1の爪部41及び第2の爪部42は、本体部4にそれぞれ2個備えられている。また、第2の爪部42は、第1の爪部41に対し前後方向の前方側(長手方向の一端部側(第1の端部側))に位置し、さらに本体部4の前後方向の前方端部に位置している。
L字状のアーム部48は、グリップ部1の回動運動を支える軸を構成し、本体部4の前方側に位置し、本体部4の支持部49(アーム部48の根元部分)により支持されている。第2の爪部42は、支持部49の幅方向両端部のさらに前方側に位置する。
【0022】
図1(d)に示すように、カバー部5は第3の爪部(第3の係止部)53を、カバー部5の幅方向の中央に備えている。第3の爪部53はカバー部5の内壁面Sw(内側面)から突出している。また、第3の爪部は、第1の爪部に対し前後方向の後方側(長手方向の他端部側(第1の端部に対向する第2の端部側))に位置している。
なお、簡単のため第1の爪部41を中爪41、第2の爪部42を前爪42、第3の爪部53を後爪53と称することがある。
【0023】
図2は、図1(b)のA-A線での断面図を示し、図2(a)はドアハンドル100の断面図、図2(b)は本体部4の断面図、図2(c)はカバー部5の断面図、図2(d)はカバー部5の拡大断面図を示す。
本体部4の前爪42はカバー部5の第2の係止受部52(前爪受部と称することがある。)と嵌合し、カバー部5の後爪53は本体部4の第3の係止受部43(後爪受部と称することがある。)と嵌合する。
本体部4及びカバー部5は、それぞれネジ6が貫通する第1のネジ孔46及び第2のネジ孔56を備えており、少なくとも第2のネジ孔56にはネジ山が形成されている。ネジ固定部(第1のネジ孔46及び第2のネジ孔56)により、前爪42と第3の係止受部43との間(前爪受部52と後爪53との間)においてネジ固定される。
また、アーム部48(又は、それを支持する支持部49)は、第1のネジ孔46及び第2のネジ孔56と2組の前爪42及び前爪受部52との間に位置する。
【0024】
図2(c)、(d)に示すように、カバー部5には、ドアハンドル100の組立時に使用するガイド部54(係止ガイド部)が設けられており、ガイド部54はカバー部5の内壁面Swから本体部4側に突出している。ガイド部54にはZ方向に対して傾斜する傾斜面が設けられている。
後述するように、傾斜角度θ1は、好適には略45[度](40~50[度])であるが、これに限定するものではない。なお、Z方向に対する傾斜角度は90-θ1[度]となる。
また、本体部4は、ガイド部54に対応し、ガイド部54と相互に協働するガイド受部44(係止ガイド受部)が備えられており、ガイド受部44にはZ方向に対して傾斜する傾斜面が設けられている。ガイド受部44のガイド部54の傾斜面と接する箇所は、好適には同様に傾斜角度θ1を有するが、ガイド受部44の断面形状は図示するように曲面であってもよい。
また、図2(e)に示すように、ガイド部54の斜面はカバー部5の内壁面Swまで達していてもよい。ガイド部54の斜面は、本体部4がスムーズにカバー部5と接するようにガイド受部44の移動を誘導するものであり、斜面の形状はガイド受部44の形状に合わせて適宜設定すればよい。
なお、Z方向はドアハンドル100の高さ方向(又は厚さ方向)であり、ドアハンドル100を取り付ける車両の車幅方向に相当する。
【0025】
なお、後爪53とガイド部54とはそれぞれ別個に設けてもよいが、図2に示すように、両者を一体で形成することにより、カバー部5の製造を容易にするとともに、ドアハンドル100の小型化に寄与する。
【0026】
図3は、図1(b)のB-B線での断面図を示し、図3(a)はドアハンドル100の断面図、図3(b)は本体部4の断面図、図3(c)はカバー部5の断面図、図3(d)は中爪41の拡大図、図3(e)はカバー部5の第1の係止受部51の拡大図である。
本体部4の中爪41はカバー部5の第1の係止受部51(中爪受部と称することがある。)と嵌合する。中爪41及び中爪受部51には、それぞれ傾斜面が設けられており、傾斜面はZ方向(高さ方向)に対して傾斜している。
【0027】
中爪受部51の傾斜面は、カバー部5の内壁面Swと対向しており、内壁面Swに対して傾斜している。すなわち、ドアハンドル100をドアパネル3に取り付けた場合、中爪受部51の表面はドアパネル3に対して外方に向いている。
【0028】
一方、中爪41の傾斜面は、カバー部5の内壁面Swに対して傾斜し(図3(d)、(e))、ドアハンドル100をドアパネル3に取り付けた場合、中爪41の傾斜面はドアパネル3側に向いている。従って、中爪受部51の傾斜面と中爪41の傾斜面とは対向し、接触する。その結果図3(a)に示すように、内壁面Swと中爪受部51とにより中爪41が挟持されることになる。
以上より、本体部4とカバー部5とは、前爪42(と前爪受部52)、ネジ6、中爪41(と中爪受部51)及び後爪53(と後爪受部43)により固定され得ることが理解できる。
中爪受部51と中爪41の傾斜面の傾斜角度θ2は、中爪41を内壁面Swと中爪受部51との間に嵌め合わせるため、好適にはX方向に対して比較的低い角度、好適には30~45[度]であるが、これに限定するものではない。
なお、Z方向に対する傾斜角度は90-θ2[度]である。
【0029】
図4は、ドアハンドル100の、特にグリップ部1の主要な組立工程を示す断面図であり、図1(b)のA-A線での断面図である。
図4(a)に示すように、本体部4とカバー部5とを対向させ、本体部4のガイド受部44をカバー部5側に向けて配置し、カバー部5のガイド部54を本体部4側に向けて配置する。
また、本体部4のカバー部5側表面には、カバー部5の内壁面Swと接する摺動面47が設けられている。摺動面47に沿って、本体部4は前後方向(X方向)に摺動することができる。
なお、摺動面47は図4(c)に示す部分に限定するものではない。本体部4のカバー部5側表面の全体(又は少なくとも一部の領域)が摺動面47であってもよい。
【0030】
本体部4を、カバー部5の内壁面Swに垂直な方向(図中Z方向)に外力を加え押し込むことにより、(図4(b)及びその拡大図である図4(c)に示すように、)カバー部5のガイド部54と本体部4のガイド受部44とが当接する。
ガイド部54の表面とガイド受部44の表面は、Z方向(高さ方向)に対して傾斜する傾斜面が設けられているため、図中Z方向の外力の成分が分解され、本体部4は、図中X方向、すなわち前爪受部52側に進みながらカバー部5に接近する。
Z方向に加えられた力の一部の成分をX方向に変換し、ガイド受部44のX方向へのスムーズな移動を誘導するためにはガイド部54の傾斜面の傾斜角度θ1は大きい方がよい。一方、ガイド部54は、ガイド受部44が当接する領域を広くする目的のためには、Z方向から見たガイド部54の幅が長くなるよう傾斜角度θ1は小い方が良い。そのため、傾斜角度θ1は、好適にはZ方向に対して略45[度](40~50[度])に設定するがこれに限定するものではない(図2(d)参照)。
【0031】
さらにZ方向の力が加えられると、摺動面47がカバー部5の内壁面Swと接触する。その後、図中X方向に外力を加え、本体部4を前爪受部52側に移動させることで、図4(d)に示すように、後爪53と後爪受部43とを嵌合(係合)させる。このとき、図4(e)に示すように第1のネジ孔46とそれに対応した第2のネジ孔56とを整列させる。
その後、第1のネジ孔46と第2のネジ孔56にネジ6を螺合させることで、本体部4とカバー部5とが連結され、固定される(図2(a)参照)。
【0032】
また、図4(f)に示すように、本体部4を前爪受部52側に移動させることで、前爪受部52と前爪42とが互いに嵌合する。その結果、本体部4は前方側で、ネジ6と前爪42により、3箇所で固定される。
具体的には、図1(c)、(d)に示されるように、支持部49に近接して配置された前爪42とネジ6とによって、支持部49を囲むように3箇所でアーム部48が固定されている。
そのため、本体部4のアーム部48は、カバー部5と強固に固定されており、支持部49と面接触する領域(アーム受部59)が補強板として機能し、アーム受部59と支持部49とが互いに面で接触した2重構造を構成する。その結果、アーム部48近傍の本体部4の肉厚を薄くしても、カバー部5により強化されるため、ドアハンドル100の小型化、薄厚化に寄与することができる。
従来、ドアパネル3からの車幅方向の最大厚みを14[mm]以下とすることは、ドアハンドルの強度点で困難であったが、本構造により最大厚みが14mm以下のドアハンドル100を製造することも可能となる。
【0033】
上述のように、ガイド部54とガイド受部44との協働作用により、Z方向の外力を加えることで、本体部4のX方向の移動が誘導される。Z方向に外力を加えた後に、本体部4に加える外力の方向がX方向に誘導されるため、組立作業の手順が自動的に誘導され、組立作業が容易になる。
また、ガイド部54とガイド受部44とが存在しない場合には、本体部4にZ方向の外力を加え、一旦本体部4をカバー部5に当接させた後に、X方向に外力を加えて本体部4を移動させることになる。動摩擦係数よりも静止摩擦係数の方が大きいため、本体部4とカバー部5との間で大きな静止摩擦が働き、滑らかなX方向の移動が阻害される。
しかし、ガイド部54とガイド受部44とを設置した場合、Z方向に外力を加えることで、本体部4をX方向に移動させることができるため、(本体部4とカバー部5との動摩擦係数は小さいため)滑らかなX方向への移動が促進され、組立作業の熟練を要せず、作業負担が軽減する。
【0034】
同様に図5は、ドアハンドル100の、特にグリップ部1の主要な組立工程を示す断面図であり、図1(b)のB-B線における、中爪41及び中爪受部51近傍の拡大図である。
図5(a)は、本体部4にZ方向の外力を加え、本体部4をカバー部5に押しつけた状態(図4(c)に示す工程)における断面図である。この状態では、必ずしも中爪41及び中爪受部51近傍で本体部4とカバー部5とが接する必要はない。
なお、図5(a)、(b)においては、本体部4とカバー部5とが接していない状況を示すが、本体部4とカバー部5とが接していてもよいことは言うまでもない。
【0035】
その後、図4(d)に示すように、X方向の外力が本体部4に加えられると、本体部4の中爪41がX方向に移動し、カバー部5の中爪受部51に当接する(図5(b))。
【0036】
さらに、X方向の外力が本体部4に加えられると、中爪41と中爪受部51の接触面はZ方向(高さ方向)に対して傾斜しているため、本体部4はX方向に移動するとともにZ方向に力が加わり、本体部4がカバー部5に押しつけられる。中爪41が、カバー部5の内壁面Swと中爪受部51とを押圧し、(楔効果によって、)中爪41及び中爪受部51近傍において、本体部4とカバー部5とが互いに密着し、係止される。中爪41及び中爪受部51は互いに傾斜面で接触しているため、接触面積が広くなり応力が分散されるため、係止部の強度が向上する。
その後、ネジ6により本体部4とカバー部5とが固定されることにより、中爪受部51が中爪41からX方向に沿って隔離することがなく、本体部4とカバー部5との密着が維持される。
【0037】
グリップ部1の前方側ではネジ6により本体部6とカバー部5との密着力を強化することができ、グリップ部1の後方側では中爪41と中爪受部51とにより本体部6とカバー部5との密着力を強化している。このように1本のネジ6により、本体部4とカバー部5とを密着させる力を、2箇所で与えることができる。
このように、本体部4を、カバー部5に対して、単にX方向に移動することにより、中爪41と中爪受部51とを嵌合させ、さらに、本体部4とカバー部5とを(高さ方向に)密着させることができ、ドアハンドル100の組立作業の熟練を要せず、作業負担を軽減することができる。
【0038】
また、本体部4をX方向に誘導するガイド受部44(及びガイド部54)は、本体部4の幅方向中央部に配置されている。これに対して中爪41と中爪受部51とは、幅方向の両端部に配置されている。そのため、本体部4をX方向に移動させる際にZ方向のふらつきを防止する効果もある。
【0039】
本体部4とカバー部5とは、前後方向の両端部では、前爪42と前爪受部52との組み合わせ及び後爪53と後爪受部43との組み合わせにより固定され、幅方向の2つの両端部においては、(前方側において)前爪42と前爪受部52との組み合わせ及び(後方側において)中爪41と中爪受部51との組み合わせにより固定されている。このように、ネジ6により1箇所、前爪42と前爪受部52との組み合わせにより2箇所、中爪41と中爪受部51との組み合わせにより2箇所、後爪53と後爪受部43との組み合わせにより1箇所、合計6箇所で、本体部4及びカバー部5の前後方向の両端部及び幅方向の両端部が連結固定されているため、応力をそれぞれに分散することで強度を補う構造となっている。
【0040】
グリップ部1の内部、すなわち本体部4とカバー部5とで囲まれた空間には、例えば、アンテナ、センサ、ハーネス、マイコン等の電子部品等の構成物を収容することがある。
これらの固定用の係止部材(前爪42、前爪受部52、中爪41、中爪受部51、後爪53、後爪受部43)に囲まれた領域に、電子部品等の構成物を収容する空間を確保することができる。
また、本体部4とカバー部5とで囲まれた空間と係止部材とが干渉しないため、予め本体部4又はカバー部5に、電子部品等の構成物を設置した後に本体部4とカバー部5とを組立て、ドアハンドル100を製造することができる。
【0041】
図6(a)、(b)、(c)は、組立工程における図1(b)、(d)のC-C線(幅方向)における本体部4及びカバー部5の断面図である。
カバー部5の(内側の)側壁面(又は本体部4に対向する側壁面)に整列ガイド部55(突起部)、及び整列ガイド部55に対応して本体部4の(外側の)側壁面(又はカバー部5に対向する側壁面)に整列ガイド受部45(側壁当接部)が設けられてもよい。
図6(a)は図4(a)に示す状態に相当し、本体部4とカバー部5とを対向させ配置する。
図6(b)に示すように、本体部4を図中Z方向に移動し、本体部4とカバー部5とカバー部5とを接近させると、整列ガイド部55と整列ガイド受部45の端部が当接する。
整列ガイド部55と整列ガイド受部45の端部は傾斜面を有しており、本体部4は幅方向中央に整列させるようにガイドされる。その結果、本体部4とカバー部5の幅方向の位置合わせが可能となる。
さらに本体部4を図中Z方向に移動すると、図6(c)に示すように本体部4の外側側壁面とカバー部5の内側側壁面とが対向し本体部4とカバー部5とが組み合わさる。この場合、本体部4はカバー部5に対して入れ子状態となる。
従って、本体部4をカバー部5に対して容易に幅方向中央に整列することができ、作業負担を軽減することができる。
【0042】
なお、上記実施形態においては、カバー部5に対して本体部4を移動させる例について説明したが、本体部4に対してカバー部5を移動させてもよいことが言うまでもない。
また、本体部4又はカバー部5の移動は、手動で行っても自動で行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することができる。また、係止部材とネジの特別な配置により、アーム部の支持を強化し、ドアハンドルの小型化、薄厚化を可能にし得る。
また、係止ガイド受部及び係止ガイド部、さらには整列ガイド部及び整列ガイド受部を用いることにより、組立作業の負担を軽減し、さらに組立の自動化も可能にすることができる。その結果、ドアハンドルの生産性を向上させることができ、産業上利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0044】
100 ドアハンドル
1 グリップ部
2a 第1ベース部
2b 第2ベース部
3 ドアパネル
4 本体部
41 第1の爪部(第1の係止部)、中爪
42 第2の爪部(第2の係止部)、前爪
43 第3の係止受部、後爪受部
44 ガイド受部(係止ガイド受部)
45 整列ガイド受部(側壁当接部)
46 第1のネジ孔
47 摺動面
48 アーム部
49 支持部
5 カバー部
51 第1の係止受部、中爪受部
52 第2の係止受部、前爪受部
53 第3の爪部(第3の係止部)、後爪
54 ガイド部(係止ガイド部)
55 整列ガイド部(突起部)
56 第2のネジ孔
59 アーム受部
6 ネジ
Sw 内壁面
【要約】
【課題】 ドアハンドルの組立作業の負担を軽減することができるドアハンドルを提供することを課題とする。
【解決手段】
ドアハンドルは、本体部とカバー部とを備え、本体部は、幅方向中央に第1のネジ孔と、第1の係止部と、ガイド受部とを備えており、カバー部は、第2のネジ孔と、第1の係止部と係合する第1の係止受部と、ガイド受部と協働するガイド部を備えている。ガイド部は、高さ方向に対して傾斜面を有している。また、第1の係止部本体部の幅方向の両端部に位置し、第1の係止部と前記第1の係止受部とは、高さ方向に対して傾斜する傾斜面で接触する。
その結果、ドアハンドルの組立作業の負担が軽減され、ドアハンドルの生産性の向上に寄与する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6