(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/16 20060101AFI20220118BHJP
G01K 7/22 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01K1/16
G01K7/22 J
G01K7/22 A
G01K7/22 L
(21)【出願番号】P 2018059201
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 文夫
(72)【発明者】
【氏名】飯田 照幸
(72)【発明者】
【氏名】西澤 薫
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-015430(JP,A)
【文献】特開2014-182086(JP,A)
【文献】実開平07-002938(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱素子部と、
測定対象物に固定可能なネジ取り付け部を先端側に有すると共に後端側に前記感熱素子部が取り付けられる素子取り付け部を有した圧着端子とを備え、
前記感熱素子部が、前記素子取り付け部の上に接着剤で接着された絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの表面に設けられたサーミスタ素子と、前記絶縁性フィルムの表面に形成され一端が前記サーミスタ素子に接続されていると共に他端が一対の外部配線に接続される一対の基板上配線とを備え、
前記絶縁性フィルムの裏面に、前記絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱部が設け
、
前記集熱部が、前記絶縁性フィルムの裏面に金属膜でパターン形成された集熱膜であることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記集熱部が、前記絶縁性フィルムの裏面の略全面に設けられていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記集熱部が、前記絶縁性フィルムの裏面の外周縁よりも隙間を空けて内側に形成された集熱膜であり、
前記集熱部の外周縁と前記絶縁性フィルムの裏面とで段差部が形成され、
前記段差部における前記圧着端子と前記絶縁性フィルムとの間の前記接着剤の厚さが、前記集熱部の直下の前記接着剤よりも厚いことを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物への取り付けが容易な温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサとして、チップ状やフレーク状のサーミスタ素子にリード線を取り付けて、リード線の接続部と共にサーミスタ素子を樹脂モールドし、この部分を圧着や接着等で圧着端子に取り付けたものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
この温度センサでは、圧着端子にネジ止め取り付けが可能な円環部が設けられているので、この部分にネジを挿通させた状態で測定対象物の雌ネジ部等に螺着させることで、温度センサを測定対象物に容易にネジ止めすることができる。
【0003】
特許文献1に記載の温度センサでは、ガラスで封止されたサーミスタ素子の周囲をさらに封止樹脂で覆っている。このガラス封止のサーミスタ素子を樹脂で封止した構造では、製造上素子の位置が安定しないため、応答性がばらついてしまう不都合があった。
これに対して特許文献2に記載の温度センサでは、感熱素子部が、圧着端子に取り付けた絶縁性フィルムと、絶縁性フィルム上に形成された薄膜サーミスタ部と、薄膜サーミスタ部に接続され絶縁性フィルム上に形成されたパターン電極とを備えている。すなわち、この温度センサは、圧着端子からの熱をガラスや封止樹脂を介さずに絶縁性フィルムで直接受けることで、より高い応答性が安定して得られるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-141164号公報
【文献】特開2016-161434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、絶縁性フィルムにサーミスタ素子を設けて圧着端子に実装した従来の構造では、測定対象物からの熱をさらに効率的に集めて応答性をより高めたいとの要望があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、測定対象物からの集熱効果を高めて応答性をさらに向上させることができる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、感熱素子部と、測定対象物に固定可能なネジ取り付け部を先端側に有すると共に後端側に前記感熱素子部が取り付けられる素子取り付け部を有した圧着端子とを備え、前記感熱素子部が、前記素子取り付け部の上に接着剤で接着された絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの表面に設けられたサーミスタ素子と、前記絶縁性フィルムの表面に形成され一端が前記サーミスタ素子に接続されていると共に他端が一対の外部配線に接続される一対の基板上配線とを備え、前記絶縁性フィルムの裏面に、前記絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この温度センサでは、絶縁性フィルムの裏面に、絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱部が設けられているので、圧着端子から絶縁性フィルムへ熱伝導率の高い集熱部を介して早く熱が伝わることで、応答性を向上させることができる。
【0009】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記集熱部が、前記絶縁性フィルムの裏面の略全面に設けられていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、集熱部が、絶縁性フィルムの裏面の略全面に設けられているので、絶縁性フィルムの裏面の略全面で集熱させることができ、全体でより高い応答性を得ることができる。
【0010】
第3の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記集熱部が、前記絶縁性フィルムの裏面の外周縁よりも隙間を空けて内側に形成された集熱膜であり、前記集熱部の外周縁と前記絶縁性フィルムの裏面とで段差部が形成され、前記段差部における前記圧着端子と前記絶縁フィルムとの間の前記接着剤の厚さが、前記集熱部の直下の前記接着剤よりも厚いことを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、段差部における圧着端子と絶縁フィルムとの間の接着剤の厚さが、集熱部の直下の接着剤よりも厚いので、集熱部の直下は薄い接着剤であることで熱伝導性が向上すると共に、絶縁性フィルムの外周部分の段差部では厚い接着剤によって高い接着性を確保することができる。したがって、高い集熱効果と接着性とを両立させることが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、絶縁性フィルムの裏面に、前記絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱部が設けられているので、圧着端子から絶縁性フィルムへ熱伝導率の高い集熱部を介して早く熱が伝わることで、応答性を向上させることができる。
したがって、本発明の温度センサは、測定対象物に取り付ける必要がある装置等において、高い応答性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る温度センサの一実施形態を示す要部の拡大断面図である。
【
図2】本実施形態において、温度センサを示す平面図である。
【
図4】本実施形態において、絶縁性フィルムを示す平面図(a)及び裏面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、
図1から
図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0014】
本実施形態の温度センサ1は、
図1から
図3に示すように、感熱素子部2と、測定対象物Sに固定可能なネジ取り付け部3Aを先端側に有すると共に後端側に感熱素子部2が取り付けられる素子取り付け部3Bを有した圧着端子3とを備えている。
上記感熱素子部2は、素子取り付け部3Bの上に接着剤4で接着された絶縁性フィルム5と、絶縁性フィルム5の表面に設けられたサーミスタ素子6と、絶縁性フィルム5の表面に形成され一端がサーミスタ素子6に接続されていると共に他端が一対の外部配線7に接続される一対の基板上配線8とを備えている。
【0015】
上記絶縁性フィルム5の裏面には、絶縁性フィルム5よりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱部9が設けられている。
上記集熱部9は、絶縁性フィルム5の裏面の略全面に設けられている。すなわち、集熱部9は、長方形状の絶縁性フィルム5の裏面より若干小さい長方形状にパターン形成されている。
【0016】
この集熱部9は、
図4に示すように、絶縁性フィルム5の裏面の外周縁よりも隙間を空けて内側に形成された集熱膜であり、
図5に示すように、集熱部9の外周縁と絶縁性フィルム5の裏面とで段差部9aが形成されている。
段差部9aにおける圧着端子3と絶縁性フィルム5との間の接着剤4の厚さD2は、集熱部9の直下の接着剤4の厚さD1よりも厚くなっている。
【0017】
また、本実施形態の温度センサ1は、絶縁性フィルム5上でサーミスタ素子6と共に外部配線7の接続部を覆う封止樹脂部10を備えている。
上記素子取り付け部3Bは、絶縁性フィルム5が接着される底面部3cと、底面部3cの両側に立設された一対の壁面部3dと、一対の壁面部3dの先端側に底面部3cから立設された前面部3eとを備えている。
すなわち、底面部3c上における一対の壁面部3dと前面部3eとによる平面視コ字状の領域が、感熱素子部2を三方向から囲んだ感熱素子部2用の設置領域とされている。
【0018】
上記封止樹脂部10は、例えばエポキシ樹脂が採用され、底面部3c上の一対の壁面部3d及び前面部3eで囲まれた部分に、サーミスタ素子6、絶縁性フィルム5及び外部配線7の先端部を覆って充填されている。
上記絶縁性フィルム5は、例えば金属フィラーを含有した接着剤4で底面部3c上に接着されている。
絶縁性フィルム5は、例えば厚さ7.5~125μmのポリイミド樹脂シート等で形成されている。
【0019】
上記一対の基板上配線8の先端には、一対の素子実装部8bが形成され、一対の素子実装部8bにサーミスタ素子6の両端電極部が接続されている。
一対の基板上配線8及び集熱部9は、例えばCu膜等の金属膜でパターン形成されている。
上記サーミスタ素子6は、例えばチップ状やフレーク状のサーミスタ素子等が採用可能である。
【0020】
上記一対の外部配線7は、先端が一対の基板上配線8の他端にあるパッド部8aに半田材等で接合され接続されている。なお、外部配線7と基板上配線8とを、溶接又は導電性接着剤で接合しても構わない。また、外部配線7としてリードフレームを採用しても構わない。
上記ネジ取り付け部3Aは、先端側にネジ取付孔3aを有している。なお、図中において、ネジ取り付け部3Aにネジは取り付けていない。
【0021】
このように本実施形態の温度センサ1では、絶縁性フィルム5の裏面に、絶縁性フィルム5よりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱部9が設けられているので、圧着端子3から絶縁性フィルム5へ熱伝導率の高い集熱部9を介して早く熱が伝わることで、応答性を向上させることができる。
【0022】
また、集熱部9が、絶縁性フィルム5の裏面の略全面に設けられているので、絶縁性フィルム5の裏面の略全面で集熱させることができ、全体でより高い応答性を得ることができる。
さらに、段差部9aにおける圧着端子3と絶縁性フィルム5との間の接着剤4の厚さD2が、集熱部9の直下の接着剤の厚さD1よりも厚いので、集熱部9の直下は薄い接着剤4であることで熱伝導性が向上すると共に、絶縁性フィルム5の外周部分の段差部9aでは厚い接着剤4によって高い接着性を確保することができる。したがって、高い集熱効果と接着性とを両立させることが可能になる。
【0023】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0024】
例えば、上記実施形態では、いわゆる丸形端子の圧着端子を採用したが、ネジ止め可能なネジ取り付け部であればY端子等の他の形状のネジ取り付け部としても構わない。
また、上記サーミスタ素子は、チップ状やフレーク状のサーミスタ素子を採用しているが、サーミスタ素子として、薄膜サーミスタ等を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0025】
1…温度センサ、2…感熱素子部、3…圧着端子、3A…ネジ取り付け部、3B…素子取り付け部、4…接着剤、5…絶縁性フィルム、6…サーミスタ素子、7…外部配線、8…基板上配線、9…集熱部、9a…段差部、S…測定対象物