(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】不動産情報提供装置、不動産情報提供方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20220118BHJP
【FI】
G06Q50/16
(21)【出願番号】P 2021091286
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2021-06-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513248382
【氏名又は名称】横田 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100205648
【氏名又は名称】森田 真一
(72)【発明者】
【氏名】横田 幸一
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-185777(JP,A)
【文献】特開2018-072868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0057410(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動産情報として所定の不動産の需給バランスに係る情報を提供する装置であって、
前記所定の不動産の需要を示す第一座標軸と、前記所定の不動産の売却希望額を示す第二座標軸と、からなる座標系と、
前記座標系において、前記第一座標軸により、前記所定の不動産の具体的な需要を成分として示す第一標示部と、
前記座標系において、前記第二座標軸により、前記所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す第二標示部と、を表示する、
不動産情報提供装置。
【請求項2】
前記座標系における前記第一標示部と前記第二標示部の交点の位置に基づき、需給バランスの評価を表示する、
請求項1記載の不動産情報提供装置。
【請求項3】
前記所定の不動産の具体的な需要、又は前記所定の不動産の具体的な売却希望額の経時的な変化を表示する、
請求項1又は2記載の不動産情報提供装置。
【請求項4】
前記第一標示部と前記第二標示部とをそれぞれ、前記第一座標軸又は前記第二座標軸上において操作可能に表示する、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の不動産情報提供装置。
【請求項5】
前記第一標示部は、前記座標系において、前記第一座標軸により、所定の業種における前記所定の不動産の具体的な需要を成分として示す、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の不動産情報提供装置。
【請求項6】
前記所定の業種の指定を受け付ける業種指定欄、を表示する、
請求項5記載の不動産情報提供装置。
【請求項7】
不動産情報として所定の不動産の需給バランスに係る情報を提供する方法であって、
コンピュータが、
前記所定の不動産の需給バランスに係る情報を示すチャートを作成する工程として、
前記所定の不動産の需要を示す第一座標軸と、前記所定の不動産の売却希望額を示す第二座標軸と、からなる座標系を生成する工程と、
前記第一座標軸により、前記所定の不動産の具体的な需要を成分として示す第一標示部を前記座標系に表示させる工程と、
前記第二座標軸により、前記所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す第二標示部を前記座標系に表示させる工程と、を実行する、
不動産情報提供方法。
【請求項8】
不動産情報として所定の不動産の需給バランスに係る情報を提供するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに対し、
前記所定の不動産の需給バランスに係る情報を示すチャートを作成する工程として、
前記所定の不動産の需要を示す第一座標軸と、前記所定の不動産の売却希望額を示す第二座標軸と、からなる座標系を生成する工程と、
前記第一座標軸により、前記所定の不動産の具体的な需要を成分として示す第一標示部を前記座標系に表示させる工程と、
前記第二座標軸により、前記所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す第二標示部を前記座標系に表示させる工程と、を実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の不動産の需給バランスを表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、建設業界では、消費増税や円安による資材費の高騰といったマイナス要因を抱えつつも、各種の補助金や過去最低水準を記録する住宅ローン金利など、戸建住宅や住宅用土地の販売はなお、後押しされている。
【0003】
これに応じて不動産の取引も活発に行われているが、不動産の査定は一般人には不透明で分かりにくかった。
この点、特許文献1、2では、客観的な指標に基づいて不動産を評価するシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-22481号公報
【文献】特開2003-233662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献記載のシステムは、公示価格などの静的な情報に基づいて不動産を評価するが、不動産の取引価格は、実際には需給に応じて決定される。即ち、資産として不動産を評価する場合には、公示価格などの情報に基づいた評価がなされればそれで十分であるが、実際に不動産を売買したり活用したりしたい者からすると、資産としての評価よりも、実需に沿った価格を把握したいという要求がある。
【0006】
また現状では、一般人が不動産の査定額を知りたい場合には、不動産業者に問い合わせるよりほかない場合が少なくなく、気軽に把握できる状況にはない。また、不動産業者に問い合わせた場合でも、不動産業者が自身の業務で培った経験や把握している情報などに基づいて査定額を提示するため、その査定額をどの程度、信頼してよいのかわからない。そのため、一般人が不動産に興味をもってもその後の具体的な行動につながらず、不動産業者も潜在的な顧客を失っていると考えられる。
【0007】
そこで本発明は、不動産に対する現実の購入希望や売却希望に基づき、所定の不動産に対する需給バランス、さらには適正価格を把握可能に表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る不動産情報提供装置は、不動産情報として所定の不動産の需給バランスに係る情報を提供する装置であって、前記所定の不動産の需要を示す第一座標軸と、前記所定の不動産の売却希望額を示す第二座標軸と、からなる座標系と、前記座標系において、前記第一座標軸により、前記所定の不動産の具体的な需要を成分として示す第一標示部と、前記座標系において、前記第二座標軸により、前記所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す第二標示部と、を表示する。
【0009】
前記座標系における前記第一標示部と前記第二標示部の交点の位置に基づき、需給バランスの評価を表示するものとしてもよい。
【0010】
前記所定の不動産の具体的な需要、又は前記所定の不動産の具体的な売却希望額の経時的な変化を表示するものとしてもよい。
【0011】
前記第一標示部と前記第二標示部とをそれぞれ、前記第一座標軸又は前記第二座標軸上において操作可能に表示するものとしてもよい。
【0012】
また、前記第一標示部は、前記座標系において、前記第一座標軸により、所定の業種における前記所定の不動産の具体的な需要を成分として示すものとしてもよい。
【0013】
前記所定の業種の指定を受け付ける業種指定欄、を表示するものとしてもよい。
【0014】
本発明の別の観点に係る不動産情報提供方法は、不動産情報として所定の不動産の需給バランスに係る情報を提供する方法であって、コンピュータが、前記所定の不動産の需給バランスに係る情報を示すチャートを作成する工程として、前記所定の不動産の需要を示す第一座標軸と、前記所定の不動産の売却希望額を示す第二座標軸と、からなる座標系を生成する工程と、前記第一座標軸により、前記所定の不動産の具体的な需要を成分として示す第一標示部を前記座標系に表示させる工程と、前記第二座標軸により、前記所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す第二標示部を前記座標系に表示させる工程と、を実行する。
【0015】
本発明のさらに別の観点に係るコンピュータプログラムは、不動産情報として所定の不動産の需給バランスに係る情報を提供するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに対し、前記所定の不動産の需給バランスに係る情報を示すチャートを作成する工程として、前記所定の不動産の需要を示す第一座標軸と、前記所定の不動産の売却希望額を示す第二座標軸と、からなる座標系を生成する工程と、前記第一座標軸により、前記所定の不動産の具体的な需要を成分として示す第一標示部を前記座標系に表示させる工程と、前記第二座標軸により、前記所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す第二標示部を前記座標系に表示させる工程と、を実行させる。
【0016】
なお、コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークを介したダウンロードによって提供したり、コンピュータ読み取り可能な各種の記録媒体に記録して提供したりすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、不動産に対する現実の購入希望や売却希望に基づき、所定の不動産に対する需給バランス、さらには適正価格を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る不動産情報提供装置のハードウェア構成を示したブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る不動産情報提供装置のソフトウェア構成を示したブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る不動産情報提供装置において、購入希望情報記憶部に記憶されるデータの一例を示した図である。
【
図4】本実施形態に係る不動産情報提供装置において、購入希望を登録する際の入力項目の一例を示した図である。
【
図5】本実施形態に係る不動産情報提供装置において、売却希望情報記憶部に記憶されるデータの一例を示した図である。
【
図6】本実施形態に係る不動産情報提供装置において、売却希望を登録する際の入力項目の一例を示した図である。
【
図7】本実施形態に係る不動産情報提供装置において、所定の不動産の需給バランスを示すチャートの一例を示した図である。
【
図8】本実施形態に係る不動産情報提供装置において、需給バランスを判別する際に参照される参照用テーブルの一例を概念的に示した図である。
【
図9】本実施形態に係る不動産情報提供装置によって作成されるチャートの他の例を示した図である。
【
図10】本実施形態に係る不動産情報提供装置において、業種ごとの需要バランスをあらわすチャートの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る不動産情報提供装置について、図を参照して説明する。
本実施形態に係る不動産情報提供装置は、所定の不動産の実需を反映したチャートにより、当該所定の不動産の需給バランス、さらには当該所定の不動産の適正価格に係る情報をユーザに提供する装置である。
なお、本実施形態において、不動産とは、土地やその定着物たる建物などであって、売買の取引対象となるものをいう。
また、本実施形態に係る不動産情報提供装置は、不動産の購入希望者や売却希望者のほか、自らが所有する不動産の評価を単に知りたい者など、幅広く不動産の客観的な評価を把握したいユーザに対し、所定の不動産の需給バランスや適正価格に係る情報等を提供する。
【0020】
●ハードウェア構成
図1に示されるように、不動産情報提供装置1は所謂コンピュータ等によって実現され、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、入出力部を備える。
【0021】
CPUは、ROMやSSDなどの記憶装置からプログラムやデータをRAM上に読み出し、処理を実行することで、不動産情報提供装置1の制御や機能を実現する演算装置である。
RAMは、コンピュータプログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
ROMは、不揮発性の記憶装置であり、不動産情報提供装置1の起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)、OS設定、及びネットワーク設定などのプログラムやデータが格納されている。
SSDは、コンピュータプログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置であり、不動産情報提供装置1を制御するOS(Operating System)や、OS上において各種機能を提供するアプリケーションソフトウェアなどが格納されている。なお、不動産情報提供装置1は、SSDに代えて、あるいはSSDと併せてHDD(Hard Disk Drive)等を備えてもよい。
【0022】
入出力部は、各種のデータの入力を受け付けたり、不動産情報提供装置1が保持するデータや当該データに基づいた演算処理の結果を出力したりする。この入出力部は、互いに独立した入力部と出力部から構成される場合には、ディスプレイ、キーボード、ポインティングデバイス等によって実現される。また、一体的に構成される場合には、タッチパネルディスプレイ等によって実現される。
【0023】
●ソフトウェア構成
図2に示されるように、不動産情報提供装置1はCPUが実行するコンピュータプログラムとして構成されるソフトウェア資源として、購入希望情報記憶部1A、売却希望情報記憶部1B、査定情報記憶部1C、適正需要者数情報記憶部1D、履歴情報記憶部1E、抽出処理部11、作成処理部12、表示処理部13からなる機能ブロックを構成する。
【0024】
購入希望情報記憶部1Aは、不動産の購入を希望する購入希望者及び当該購入希望者による購入希望の内容に関する情報を記憶した記憶部である。
この購入希望情報記憶部1Aには例えば、
図3に示されるように、購入希望者ごとに購入希望内容に係る情報が記憶されている。
購入希望内容は、購入希望者が購入を希望する不動産の具体的な条件であって、不動産の種類、用途、所在地(エリア)、土地形状、面積、購入希望額などの項目が含まれる。この購入希望内容に係る情報を構成する項目は、後述する売却希望情報記憶部1Bに記憶されている売却希望情報を構成する項目に対応しており、所定の購入希望内容を検索条件とすることで、売却希望情報記憶部1Bに登録されている不動産から、当該所定の購入希望内容に合致する不動産を検索することができる。
【0025】
なお、上記した購入希望内容の項目は一例であり、他に、土地のみ又は建物付きの土地のいずれを希望するか、築年数など、不動産を選ぶ際に条件となり得るものを適宜に含めることができる。
また、購入希望内容は、特定の不動産を指定するものであってもよい。
また、購入希望内容は例えば、
図4に示されるような入力画面から、不動産の購入希望者が各項目を入力することで登録される。
【0026】
売却希望情報記憶部1Bは、不動産の売却を希望する売却希望者及び当該売却希望者による売却希望の内容に関する情報を記憶した記憶部である。
この売却希望情報記憶部1Bには例えば、
図5に示されるように、売却希望者ごとに、売却を希望する不動産に係る不動産情報、売却希望額といった情報が記憶されている。
不動産情報には例えば、不動産の種類に応じて、土地であれば土地形状、広さ、建物の有無、用途、所在地といった情報が含まれ、建物であれば築年数、広さ、間取り、用途、所在地といった情報が含まれる。
【0027】
なお、上記した売却希望内容の項目は一例であり、売却希望内容に応じて、不動産の特徴を示すものを適宜に含めることができる。
また、本例にかかわらず、売却希望がない不動産であっても、不動産情報提供装置1の管理者等が実在する不動産を登録してもよい。この場合、売却希望額等は相場による査定額など、仮の価格を設定してもよい。
また、売却希望内容は例えば、
図6に示されるような入力画面から、不動産の売却希望者が各項目を入力することで登録される。
【0028】
査定情報記憶部1Cは、所定の不動産の査定額に係る情報を記憶した記憶部である。
査定額は、不動産情報提供装置1の管理者等が検討して設定するものであってもよいし、所定の情報に基づいて自動的に算出されるものであってもよい。
【0029】
査定額が所定の情報に基づいて自動的に算出されるものである場合には例えば、査定額を算出するための基礎情報を予め保持した記憶部を保持しておき、所定の処理部により、当該記憶部に記憶されている基礎情報に基づいて、所定の不動産の査定額を算出する。
ここで、査定額を算出するための基礎情報には例えば、所定の住所地における土地の公示価格、過去の取引事例に基づく事例価格、周辺単価等、不動産の査定額を算出するための基礎となる価格のほか、地域の年齢別人口割合や平均世帯収入、不動産の面積や住所、所定の不動産で店舗等を運営等して収益を図った場合の予想収益、必要経費、還元利回り等、査定額に影響を及ぼす要因と各要因が査定額に影響する度合いを示す係数等が含まれる。これにより、所定の不動産について該当する価格や係数を所定の計算式に当てはめ、査定額を算出できる。
【0030】
なお、上記した査定額に影響する要因は一例であり、このほかに例えば、局所的又は特定の不動産の価格変動要因に係る情報などが含まれていてもよい。不動産の価格変動要因としては例えば、Facebook(登録商標)に代表されるSNSサイト上での書き込みやニュースに基づく注目度、災害情報、環境情報などがあり、これらの要因は価格を押し上げる肯定的なものである場合もあれば、価格を押し下げる否定的なものである場合もある。
【0031】
また、査定額の算出にAI(artificial intelligence:人工知能)による機械学習を組み入れてもよい。例えば、算出した査定額と、その後の実際の不動産取引による成立価格との差額を学習させることにより、査定額と実際の成立価格との乖離を小さくさせるとよい。
【0032】
適正需要者数情報記憶部1Dは、所定の不動産について、適正な需要者の人数、即ち適正需要者数に係る情報を記憶した記憶部である。需要者数とは、所定の不動産の購入を希望する者の人数である。また、適正需要者数とは、所在地や不動産の種類等に応じて、通常であればこのくらいの数の需要者がいるであろうと推測される需要者の数であり、一般的には繁華街や都心部などでは多く、郊外や地方などでは少ない。
【0033】
適正需要者数は、不動産情報提供装置1の管理者等が検討して設定するものであってもよいし、所定の情報に基づいて自動的に算出されるものであってもよい。
【0034】
適正需要者数が所定の情報に基づいて自動的に算出されるものである場合には例えば、適正者需要者数を算出するための基礎情報を予め保持した記憶部を保持しておき、所定の処理部により、当該記憶部に記憶されている基礎情報に基づいて、所定の不動産の適正な需要者数を算出する。ここで、適正需要者数を算出するための基礎情報には例えば、不動産の種類、用途、面積、住所等、不動産の需要者数に影響する要因と、各要因が需要者数に影響する度合いを示す係数とが含まれる。これにより、所定の不動産について該当する係数を所定の計算式に当てはめ、適正需要者数を算出できる。
【0035】
履歴情報記憶部1Eは、購入希望情報記憶部1A及び売却希望情報記憶部1Bに記憶される情報の履歴を記憶する。
履歴情報を蓄積することにより、購入希望や売却希望の経時的な変化や傾向を把握することができ、例えば、購入希望や売却希望が前日よりも増減したか、あるいは変わらないのか、といったことがわかる。
【0036】
抽出処理部11は、後述する作成処理部12、あるいは作成処理部12によって作成されたチャートを参照するユーザの求めに応じて、各記憶部を参照して要求された情報を抽出する。
【0037】
作成処理部12は、所定の不動産の需給バランスを示すチャートを作成する。
このチャートは例えば、所定のウェブサイト等において、不動産情報提供装置1によって提供されるサービスのユーザから、所定の不動産の指定を受け付け、これに応じて作成される。所定の不動産の指定の受け付け方は特に限定されないが、例えば、売却希望情報記憶部1Bに登録されている不動産をリスト化あるいは検索可能にし、ユーザが指定できるように提供する。また、他の例では、売却希望情報記憶部1Bに登録されているか否かに関わらず、所定の不動産の所在やエリアを把握可能な地図を表示し、当該地図上において、ユーザから所定の不動産の指定を受け付けるようにしてもよい。
【0038】
作成処理部12によって作成されるチャートは、
図7に示されるように、所定の不動産に対する需要と売却希望情報を対比したものであり、目盛りが付された一対の弧状の座標軸G11、G12からなる座標系を構成している。
【0039】
このチャートを作成する作成処理部12は、座標系を生成する第一機能部121、需要と売却希望額の成分を示す標示部を座標系に設定する第二機能部122、需給バランスを判定する第三機能部123、需要と売却希望額の経時的変化を算出する第四機能部124から構成される。
【0040】
<第一機能部121>
第一機能部121は、第一座標軸G101と第二座標軸G102から構成された座標系を生成する。
第一座標軸G101は、所定の円を分割した四分円の弧状に構成され、所定の不動産の需要を示している。第一座標軸G101が示す需要は、所定の不動産の購入希望者の人数によって構成される。購入希望者の人数は、購入希望情報記憶部1Aに記憶されている情報に基づいている。
【0041】
本例において、第一座標軸G101に設定される数値は、下限が「0」、中心が所定の不動産の適正需要者数、上限が適正需要者数の倍の値に設定されている。ただし、これにかかわらず、中心を所定の不動産の適正需要者数とする限り、その上限と下限の値はそれぞれ、適正需要者数より一定割合だけ多い又は少ない数値に設定してもよい。また、下限はマイナスの値になっていてもよく、この場合、マイナスの値は、売却希望者が金銭を支払う必要があることを意味する。
また、第一座標軸G101に設定されている数値は、図示、上方を下限値(本例では「0人」)、下方を上限値(本例では「10人」)としている。
【0042】
第二座標軸G102は、所定の円を分割した四分円の弧状に構成され、所定の不動産の売却希望額を示している。
第二座標軸G102が示す売却希望額は、売却希望情報記憶部1Bに記憶されている情報に基づいている。
【0043】
本例において、第二座標軸G102に設定されている数値は、下限を「0」、中心を所定の不動産の査定額、上限を査定額の倍の値に設定されている。ただし、これにかかわらず、中心を所定の不動産の査定額とする限り、その上限と下限の値はそれぞれ、査定額より一定割合だけ高い又は安い数値に設定してもよい。
また、第二座標軸G102に設定されている数値は、図示、上方を上限値(本例では「5000万円」)、下方を下限値(本例では「0円」)としている。
【0044】
チャートを構成する座標系には、第一座標軸G101により、所定の不動産の具体的な需要を成分として示す第一標示部G111と、第二座標軸G102により、所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す第二標示部G112が表示される。
【0045】
<第二機能部122>
第二機能部122は、需要の成分を示す第一標示部G111と売却希望額の成分を示す第二標示部G112を座標系に設定する。
第一座標軸G101は所定の円を分割した四分円の弧をなすところ、第一標示部G111は、当該所定の円の中心にあたる位置から第一座標軸G101上の所定の数値に向かって伸びる矢印線によって構成されている。この第一標示部G111は、第一座標軸G101との交点において、所定の不動産の具体的な需要を成分として示す。なお、本例において、上記した所定の円の中心にあたる位置は、第二座標軸G102を四分円の弧とする円の中心と重なる。
【0046】
第一標示部G111が示す具体的な需要の数は、購入希望情報記憶部1Aに登録されている購入希望情報のうち、チャートの作成対象となっている不動産が当該購入希望情報の条件に合致するものの数によって構成される。即ち、第二機能部122はここで、チャートの作成対象となっている不動産の情報に基づき、当該不動産の情報が合致する条件を購入希望内容とする購入希望情報を検索し、その数を求めている。
【0047】
第二座標軸G102についても第一座標軸G101と同様、所定の円を分割した四分円の弧をなすところ、第二標示部G112は、当該所定の円の中心にあたる位置から第二座標軸G102上の所定の数値に向かって伸びる矢印線によって構成されている。この第二標示部G112は、第二座標軸G102との交点において、所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す。なお、本例において、上記した所定の円の中心にあたる位置は、第一座標軸G101を四分円の弧とする円の中心と重なる。
第二標示部G112が示す具体的な売却希望額は、売却希望情報記憶部1Bに記憶されいている情報に基づいている。ただし、売却希望情報記憶部1Bに登録されていない不動産についてチャートを表示する場合には、第二標示部G112は例えば、査定情報記憶部1Cに登録されている当該不動産の査定額を示した上、その旨を表示するとよい。
【0048】
<第三機能部123>
第三機能部123は、所定の不動産の需給バランスを判定し、第一機能部121によって作成された座標系に判定結果を表示させる。
第三機能部123は、
図8に示すように、チャートを構成する座標系を所定の領域G201、G202、G203に分け、各領域G201、G202、G203について、「売り急ぎ」、「適正」、「買い急ぎ」等の需給バランスを関連付けた参照用テーブルを保持する。そして、所定の不動産のチャートにおいて、第一標示部G111と第二標示部G112が交差する位置がどの領域G201、G202、G203に位置するかによって、需給バランスを「売り急ぎ」、「適正」、又は「買い急ぎ」といったように判定する。
【0049】
本例では、第一座標軸G101と第二座標軸G102の中心がそれぞれ適正需要者数又は査定額であるため、第一標示部G111と第二標示部G112が交差する位置が領域G202に収まる場合、需給バランスは「適正」と判定される。また、第一標示部G111と第二標示部G112が交差する位置が領域G201に収まる場合、即ち、需要が多い一方で売却希望額が安い領域G201に収まる場合、需給バランスは「売り急ぎ」と判定される。また、第一標示部G111と第二標示部G112が交差する位置が領域G203に収まる場合、即ち、需要が少ない一方で売却希望額が高い場合、需給バランスは「買い急ぎ」と判定される。なお、
図8では、全体のうちの三つの領域G201、G202、G203に判定結果を対応付けているが、他の領域についても、何かしらの判定結果を対応付けるようにしてもよい。
【0050】
需給バランスの判定結果は例えば、
図7に示されるようにして座標系に表示される。即ち、第一標示部G111と第二標示部G112が交差する位置の近傍に判定結果の表示欄G121が設けられ、当該表示欄G121に「適正」という判定結果が表示されている。また、表示欄G121に表示された「適正」という判定結果が維持される判定結果標示領域G122が表示され、どの範囲までが適正なのかを把握できるようになっている。
【0051】
なお、本例においては、表示欄G121に需給バランスの判定結果を表示するものとしたが、これに加えて、あるいはこれに代えて、三つの領域G201、G202、G203を色分け表示するなどし、需給バランスの判定結果を視覚的にわかりやすくユーザに提示するようにすることもできる。
【0052】
<第四機能部124>
第四機能部124は、所定の不動産について、需要と売却希望額の経時的変化を算出し、その結果を座標系に表示させる。
第四機能部124は、履歴情報記憶部1Eを参照し、チャートの作成対象である所定の不動産の過去における需要及び売却希望額と、現時点における需要及び売却希望額とを対比する。その上で、需要又は売却希望額の増減値を算出する。
図6に示されるように、算出された増減値は、増加あるいは減少のいずれかが分かる態様により、需要に係るものが第一座標軸G101の近傍に設けられた表示欄G131に表示され、売却希望額に係るものが第二座標軸G102の近傍に設けられた表示欄G132に表示される。
【0053】
表示処理部13は、各種の情報や処理結果を入出力部上に出力させる。
例えば、作成処理部12によって作成されたチャート、ユーザから要求された場合には、所定の不動産の基本情報や需給に関する情報などを出力させる。
【0054】
なお、本実施形態では、所定の不動産について、実在する購入希望情報及び売却希望情報に基づいた需給バランスを示すチャートを作成し、
図7に示す態様でユーザに提供するものとしたが、ユーザがこのチャートの第一標示部G111又は第二標示部G112を操作可能なものとしてもよい。
【0055】
このように構成する場合の一例では、第一標示部G111と第二標示部G112を連動させることなく、ユーザが適宜に第一標示部G111を操作して需要を変えたり、第二標示部G112を操作して売却希望額を変えたりすることができるようにする。この例においても、第一標示部G111と第二標示部112の交差位置の変更に応じて、変更後の交差位置における需給バランスの判定結果を表示することよい。また、このとき、需要と売却希望額の経時的変化についても、操作後の需要と売却希望額に基づいたものを表示欄G131、G132に表示してもよい。
これにより、例えば実際の需給バランスが適正でない場合でも、どのような需要と売却希望額になれば適正なものとなるかを把握することができるなど、ユーザは様々なシミュレーションを行い、仮想的な需給バランスを直感的に且つ容易に認識できる。
【0056】
また、他の例では、第二標示部G112を操作可能とし、ユーザが第二標示部G112を操作して第二標示部G112が示す売却希望額が変わった場合に、購入希望情報記憶部1Aに記憶されている情報に基づき、変更後の売却希望額における需要に応じた位置に第一標示部G111を動かす。
これにより例えば、所定の不動産の売却希望者は、第二標示部G112を操作して、どのような売却希望価格であれば十分な需要が見込めるのかを把握することができる。
【0057】
●GUIの例示
不動産情報提供装置1によって提供されるチャートについて、
図7の例とは異なる需要と売却希望額に基づいたものの例を
図9に示す。
図9(a)は、需要が少ない一方、売却希望額が高いケースであり、売買が成立する見込みが少ない状況をあらわしている。この状況で購入希望者が購入しようとしている場合、購入希望者が買い急いでいる状況にある可能性がある。
図9(b)は、需要が多い一方、売却希望額が安いケースであり、売買は成立しやすい状況をあらわしている。この状況は、売却希望者が売り急いでいる状況であり、売却希望者は、売却希望額をもう少し高くしても売買の成立余地があると考えることができる。
図9(c)は、需要が適正である一方、売却希望額が高いケースであり、売却希望額が上昇気配にあるときにあらわれやすい。
図9(d)は、需要が少ない一方、売却希望額が安いケースであり、売却希望額が下降気配にあるときにあらわれやすい。
【0058】
●業種に応じた情報提供の例
また、不動産を購入等し、所定の業種での店舗の出店することを検討している購入希望者としては、当該店舗の業種に合った不動産であるか、出店要項に即した不動産であるかを把握したいとの要望がある。そのため、所定の不動産について、業種に応じた需給バランスや出店の適否に係る情報を提供できるようにしてもよい。
【0059】
この例では、購入希望情報記憶部1Aに、購入希望者の業種や出店要項に係る情報を登録しておく。出店要項には、周辺人口、交通量、交通機関、前面道路、面積、道路幅員など、出店の際の判断指標となる情報が各種含まれ、業種に係る情報や購入希望額に係る情報も出店要項に含まれるようになっていてもよい。
なお、登録できる業種の種類は特に限られず、例えば、外食FC、コンビニエンスストア、クリーニング店、スーパーマーケット、ホームセンター、賃貸ビル、住宅、駐車場などが挙げられる。
【0060】
本例において作成処理部12が作成するチャートの一例を
図10に示す。
このチャートは、所定の不動産について、所定の業種に応じた需給バランスを表示しており、
図10(a)は所定の業種として「外食FC」が指定された場合をあらわし、
図10(b)は所定の業種として「スーパー」が指定された場合をあらわしている。
【0061】
ここで、チャートの近傍には、業種指定欄G301と業種別評価表示欄G302が設けられている。業種指定欄G301では、ドロップダウンリストから所望の業種をの指定を受け付けることができる。また、業種別評価表示欄G302には、チャートの作成対象となっている不動産について、業種指定欄G301で指定された業種に応じた評価が表示されるようになっている。
【0062】
本例において、第二機能部122によって設定される第一標示部G111は、所定の不動産について、購入希望情報記憶部1Aに記憶されている情報に基づき、業種指定欄G301で指定された業種に応じた需要の成分を示す。即ち、第一標示部G111が示す具体的な需要の数は、購入希望情報記憶部1Aに登録されている購入希望情報のうち、業種指定欄G301で指定された業種と同一の業種に係る購入希望情報であって、チャートの作成対象となっている不動産の条件が出店要項に合致する購入希望情報の数によって構成される。
【0063】
図10の例では、
図10(a)が所定の不動産に対する「外食FC」としての需要を示し、
図10(b)が当該所定の不動産に対する「スーパー」としての需要を示している。ここで、所定の不動産の需要について、業種が「外食FC」の場合には5人、「スーパー」の場合には8人となっており、業種によって需要が異なっていることがわかる。
【0064】
本例において、業種別評価表示欄G302に表示される評価は、業種指定欄G301で指定された業種について、一般的に求められる条件と、チャートの作成対象となっている不動産の条件とを対比した結果である。対比結果は、所定の項目ごとに、評価を示す星印の多寡によってあらわされる。
本例でみると、
図10に示すチャートの作成対象となっている不動産は、
図10(a)に示されるように「外食FC」としては「面積」に係る条件が星印二つ分の評価しか得られていないが、
図10(b)に示されるように「スーパー」としては「面積」に係る条件が星印四つ分の評価を得られており、「スーパー」により適した不動産であることが把握される。
【0065】
なお、本例においては、第一機能部121によって座標系を生成する際、購入希望者が出店を考えている店舗の業種に応じた査定額を算出し、当該査定額に基づいて、座標軸G102の数値を設定してもよい。
また、業種別評価表示欄G302に出力される評価情報に基づき、業種ごとの適否のランク付けを表示するようにしてもよい。
また、本例においても、チャートの第一標示部G111又は第二標示部G112を操作可能なものとしてもよい。
【0066】
なお、以上の本発明の実施形態においては、不動産売買を例にとったが、これに関わらず、建物の賃貸などにも適用が可能であり、この場合には購入を賃借、売却を賃貸として捉えればよい。
【0067】
また、以上の本発明の実施形態において、チャートを表示した所定の不動産に関する購入希望情報や売却希望情報を参照することができるよう、ユーザからの参照要求を受付可能としてもよい。この場合、参照要求の受け付けに応じて、購入希望情報や売却希望情報を購入希望情報記憶部1Aや売却希望情報記憶部1Bから抽出してユーザに提供する。
また、所定の不動産と条件あるいは特徴が似通った不動産に関する情報を検索して提供するようにしてもよい。
【0068】
また、所定の不動産について、不動産の需要や価格に影響する個別要因に関する情報を不動産に関連付けて記憶しておき、ユーザの求めに応じてかかる情報を提供するようにしてもよい。このような情報は例えば、合筆することによって所定の面積を満たすことのできる隣地が売りに出されているといった情報である。このような情報は所定の土地の需給バランスに大きく影響するため、チャート上にそのような情報があることを示すとよい。
【0069】
なお、本実施形態にかかわらず、ハードウェア資源は、各種のネットワークを介して通信可能に構成された複数のハードウェア資源によって構成されていてもよいし、ソフトウェア資源は複数のハードウェア資源に分散されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 不動産情報提供装置
1A 購入希望情報記憶部
1B 売却希望報記憶部
1C 査定情報記憶部
1D 適正需要者数情報記憶部
1E 履歴情報記憶部
11 抽出処理部
12 作成処理部
121 第一機能部
122 第二機能部
123 第三機能部
124 第四機能部
13 表示処理部
G101 第一座標軸
G102 第二座標軸
G111 第一標示部
G112 第二標示部
G122 判定結果表示領域
G131 表示欄
G132 表示欄
【要約】
【課題】不動産に対する現実の購入希望や売却希望に基づき、所定の不動産に対する需給バランス、さらには適正価格を把握可能に表示する。
【解決手段】不動産情報提供装置は、不動産情報として所定の不動産の需給バランスに係る情報を提供する装置であって、所定の不動産の需要を示す第一座標軸G101と、所定の不動産の売却希望額を示す第二座標軸G102と、からなる座標系と、座標系において、第一座標軸G101により、所定の不動産の具体的な需要を成分として示す第一標示部G111と、座標系において、第二座標軸G102により、所定の不動産の具体的な売却希望額を成分として示す第二標示部G112とを表示する。
【選択図】
図7