(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】蓄電装置、及び、蓄電素子の管理方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20220118BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220118BHJP
G01R 31/36 20200101ALI20220118BHJP
B60R 16/04 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
H02J7/00 P
G01R31/36
B60R16/04 Z
(21)【出願番号】P 2018079104
(22)【出願日】2018-04-17
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-164378(JP,A)
【文献】特開2017-152333(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094311(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0076316(KR,A)
【文献】国際公開第2010/109885(WO,A1)
【文献】特開2004-320946(JP,A)
【文献】特開2019-46644(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135663(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-17/02
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置であって、
外装体と、
前記外装体に収容されている蓄電素子と、
前記蓄電素子の用途を判断可能な情報を取得する取得部と、
前記外装体に収容されており、設定されている管理態様で前記蓄電素子を管理する管理部と、
を備え、
前記管理部は、前記取得部によって取得された前記情報に応じて前記蓄電素子の管理態様を設定する、蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置であって、
前記情報は前記蓄電素子の出力状況または入出力状況に関する情報である、蓄電装置。
【請求項3】
蓄電装置であって、
蓄電素子と、
前記蓄電素子の用途を判断可能な情報を取得する取得部と、
設定されている管理態様で前記蓄電素子を管理する管理部と、
を備え、
前記蓄電素子は車両に搭載されるものであり、
前記取得部は前記蓄電素子の放電電流の電流値を計測する電流計測部であり、
前記管理部は、前記電流計測部によって第1の基準値以上の電流値が計測された場合は、前記車両のエンジンを始動させるための始動用の蓄電素子に応じた管理態様を設定する、蓄電装置。
【請求項4】
請求項2に記載の蓄電装置であって、
前記蓄電素子は車両に搭載されるものであり、
前記取得部は、前記蓄電素子に流れる電流の電流値を計測する電流計測部と、
前記車両からエンジンの始動及び停止を判断可能な信号を受信する通信部とを有し、
前記電流計測部が第1の基準値以上の電流値を計測し、その後に前記エンジンが始動した場合は、前記管理部は前記エンジンを始動させるための始動用の蓄電素子に応じた管理態様を設定する、蓄電装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電装置であって、
前記電流計測部が前記第1の基準値以上の電流値を計測することなく前記エンジンが始動した場合は、前記管理部は前記車両の補機に電力を供給する補機用の蓄電素子に応じた管理態様を設定する、蓄電装置。
【請求項6】
請求項4に記載の蓄電装置であって、
前記電流計測部が前記第1の基準値以上の電流値を計測することなく前記エンジンが始動した後、前記エンジンが停止する前に前記第1の基準値より小さい第2の基準値以上の電流値が計測された場合は、前記管理部は前記車両の補機に電力を供給する補機用の蓄電素子に応じた管理態様を設定し、前記第2の基準値以上の電流値が計測されることなく前記エンジンが停止した場合は、前記管理部はバックアップ用の蓄電素子に応じた管理態様を設定する、蓄電装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記蓄電素子の管理は前記蓄電素子の内部抵抗値の推定であり、
前記管理部は前記内部抵抗値を推定するタイミングを前記情報に応じて設定する、蓄電装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記蓄電素子の管理は推定用データを用いた前記蓄電素子の状態の推定であり、
前記管理部は前記情報に応じて前記推定用データを設定する、蓄電装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記管理部は当該蓄電装置の異常を検出する処理を前記情報に応じて設定する、蓄電装置。
【請求項10】
請求項1に記載の蓄電装置であって、
前記取得部は外部の機器から前記情報を受信する通信部
、又は、前記情報の入力操作を受け付ける操作部である、蓄電装置。
【請求項11】
請求項1乃至
請求項10のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記管理部は、前記情報に応じた管理態様を設定するとき、設定後の用途が、設定前の用途からの切り替えが禁止されている用途である場合は、当該蓄電装置を使用不能にする、蓄電装置。
【請求項12】
請求項1に記載の蓄電装置であって、
前記情報は、前記蓄電装置の電圧帯を示す情報、及び、前記蓄電素子の並列数を示す情報の少なくとも一方である、蓄電装置。
【請求項13】
請求項2に記載の蓄電装置であって、
前記入出力状況に関する情報は、前記蓄電素子の温度を示す情報、前記蓄電素子の充電状態の変化を示す情報、及び、前記蓄電素子の開放電圧の変化を示す情報の少なくとも一つである、蓄電装置。
【請求項14】
請求項8に記載の蓄電装置であって、
前記推定用データは、前記蓄電素子の充電容量を推定するための容量推定用テーブル、前記蓄電素子の開放電圧から前記蓄電素子の充電状態を推定するためのテーブル、前記蓄電素子のSOHを推定するためのSOH推定テーブル、及び、いずれかの前記蓄電素子の温度から複数の前記蓄電素子の平均的な温度を推定するための温度推定テーブルの少なくとも一つである、蓄電装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記管理部は前記情報に応じて管理パラメータを設定し、
当該蓄電装置は前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断器を備え、前記管理部は前記蓄電素子の充電状態が上限値以上になると前記電流遮断器を開いて前記蓄電素子を過充電から保護し、前記管理パラメータは前記上限値である、
又は、
当該蓄電装置は前記蓄電素子と直列に接続されている電流遮断器を備え、前記管理部は前記蓄電素子の充電状態が下限値以下になると前記電流遮断器を開いて前記蓄電素子を過放電から保護し、前記管理パラメータは前記下限値である、
又は、
前記管理パラメータは前記蓄電素子の異常を判定する基準となる閾値である、蓄電装置。
【請求項16】
外装体と、前記外装体に収容されている蓄電素子と、前記外装体に収容されており、前記蓄電素子を管理する管理部と、を備える蓄電装置における蓄電素子の管理方法であって、
前記管理部が、前記蓄電素子の用途を判断可能な情報を取得するステップと、
前記管理部が、前記ステップで取得された前記情報に応じて前記蓄電素子の管理態様を設定するステップと、
前記管理部が、設定されている管理態様で前記蓄電素子を管理するステップと、
を含む、蓄電素子の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、蓄電装置、及び、蓄電素子の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池などの蓄電素子と、その蓄電素子を管理する管理部(BMS:Battery Management System)とを備える蓄電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような蓄電装置の用途には、車両のエンジンを始動させるスタータに電力を供給する始動用(例えば、特許文献1参照)、電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載されている補機類(ヘッドライト、エアコン、オーディオ、ドアのロック機構など)に電力を供給する補機用(例えば、特許文献2参照)、始動用あるいは補機用の蓄電装置の充電状態(SOC:State Of Charge)が低下した場合にそれらに替わって電力を供給するバックアップ用などの様々な用途がある。補機用の蓄電装置は補機類への電力の供給に加えてハイブリッド自動車のハイブリッドシステムの起動に用いられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-216879号公報
【文献】特開2018-018801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に蓄電素子は用途によって適切な管理の仕方(言い換えると管理態様)が異なる。このため従来は用途ごとに管理部を用意しており、管理部に係るコスト(開発コストや管理コストなど)の増加を招いていた。
【0005】
本明細書では、同一仕様の管理部を多用途で使用可能とし、もって管理部に係るコストを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
蓄電装置であって、蓄電素子と、前記蓄電素子の用途を判断可能な情報を取得する取得部と、設定されている管理態様で前記蓄電素子を管理する管理部と、を備え、前記管理部は、前記取得部によって取得された前記情報に応じて前記蓄電素子の管理態様を設定する。
【発明の効果】
【0007】
管理部は蓄電素子の用途を判断可能な情報に応じて蓄電素子の管理態様を設定するので、蓄電素子を用途に応じて管理できる。これにより同一仕様の管理部を多用途で使用可能となり、管理部に係るコストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る蓄電装置が搭載されている車両の模式図
【
図3】(A)は
図2に示す蓄電素子の平面図、(B)はそのA-A線の断面図
【
図4】
図1の本体内に蓄電素子を収容した状態を示す斜視図
【
図5】
図4の蓄電素子にバスバーを装着した状態を示す斜視図
【
図7】(A)は始動用の蓄電素子の放電電流の変化を示すグラフ、(B)は補機用の蓄電素子の放電電流の変化を示すグラフ
【
図8】(A)はエンジンの始動持(クランキング時)の電圧の変化を示すグラフ、(B)はエンジンの始動持(クランキング時)の電流の変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
蓄電装置であって、蓄電素子と、前記蓄電素子の用途を判断可能な情報を取得する取得部と、設定されている管理態様で前記蓄電素子を管理する管理部と、を備え、前記管理部は、前記取得部によって取得された前記情報に応じて前記蓄電素子の管理態様を設定する。
【0010】
上記の蓄電装置によると、蓄電素子の用途を判断可能な情報に応じて蓄電素子の管理態様を設定するので、蓄電素子を用途に応じて管理できる。これにより同一仕様の管理部を多用途で使用可能となり、管理部に係るコストを抑制できる。
例えば、車両に搭載される蓄電装置の場合、蓄電素子の用途には前述した始動用、補機用、バックアップ用などの様々な用途がある。このため、用途に応じて管理部を用意するとその分だけ開発コストがかかる。上記の蓄電装置によると、蓄電装置の管理部が蓄電素子の用途に応じた管理態様を設定するので、用途ごとに管理部を開発する場合に比べて開発コストを抑制できる。
用途に応じて管理部を用意すると、ある用途についてはその用途に用いる管理部を備えた蓄電装置の在庫があっても、別の用途については在庫が不足するといったことが起こり得る。このため在庫の管理が煩雑になる。これに対し、上記の蓄電装置によると、用途に応じた管理態様を設定するので、用途ごとの販売計画が変更になっても柔軟に対応でき、在庫の管理が格段に容易になる上、在庫減にも寄与する。このため、蓄電装置の管理コストを抑制でき、用途の汎用性も増す。
車両に搭載される蓄電装置の場合は、さらに電圧帯(12V、24V、48V、数百V(電気自動車の駆動用))に応じて管理態様を設定することや、蓄電素子の並列数に応じて管理態様を設定することもできる。蓄電装置が余ったなどの理由で蓄電装置を売却する場合でも用途を限定せずに売却できるので、売却できる可能性が高くなる。このように、用途に応じた管理態様を設定することには多数の利点がある。
【0011】
前記情報は前記蓄電素子の出力状況または入出力状況に関する情報であってもよい。
【0012】
蓄電素子の出力状況とは例えば蓄電素子の放電状況であり、入出力状況とは例えば蓄電素子の放電状況及び充電状況である。蓄電素子の出力状況や入出力状況は用途によって異なる。このため、蓄電素子がどのような用途に用いられているかを蓄電装置が知ろうとする場合、出力状況や入出力状況は有用な手掛りとなる。上記の蓄電装置によると、蓄電素子の出力状況または入出力状況に関する情報を取得するので、蓄電素子を用途に応じて管理できる。
【0013】
前記蓄電素子は車両に搭載されるものであり、前記取得部は前記蓄電素子の放電電流の電流値を計測する電流計測部であり、前記管理部は、前記電流計測部によって第1の基準値以上の電流値が計測された場合は、前記車両のエンジンを始動させるための始動用の蓄電素子に応じた管理態様を設定してもよい。
【0014】
エンジンの始動時には大電流(例えば300A以上の電流)が流れる。エンジンの始動が完了した場合、その後のエンジンの動作中において、故障などの異常状態でない限り大電流が流れることはないので、大電流が流れた場合は始動用であると判断できる。このため、大電流(すなわち第1の基準値以上の電流値)が計測された場合は始動用の蓄電素子に応じた管理態様を設定することにより、蓄電素子を用途に応じて管理できる。
【0015】
前記蓄電素子は車両に搭載されるものであり、前記取得部は、前記蓄電素子に流れる電流の電流値を計測する電流計測部と、前記車両から前記エンジンの始動及び停止を判断可能な信号を受信する通信部とを有し、前記電流計測部が第1の基準値以上の電流値を計測し、その後に前記エンジンが始動した場合は、前記管理部は前記エンジンを始動させるための始動用の蓄電素子に応じた管理態様を設定してもよい。
【0016】
蓄電素子には外部短絡によって大電流が流れる可能性もある。このため、大電流が流れただけで始動用の蓄電素子に応じた管理態様を設定すると誤った管理態様を設定してしまう場合がある。上記の蓄電装置によると、大電流(第1の基準値以上の電流値)が流れた後にエンジンが始動しなかった場合は始動用の蓄電素子に応じた管理態様を設定しないので、電流値だけで判断する場合に比べて設定の誤りを低減できる。
【0017】
前記電流計測部が前記第1の基準値以上の電流値を計測することなく前記エンジンが始動した場合は、前記管理部は前記車両の補機に電力を供給する補機用の蓄電素子に応じた管理態様を設定してもよい。
【0018】
補機用の蓄電素子の場合はその蓄電素子から大電流(第1の基準値以上の電流値)が流れることなくエンジンが始動する。上記の蓄電装置によると、大電流が流れることなくエンジンが始動した場合は補機用の蓄電素子に応じた管理態様を設定するので、蓄電素子を用途に応じて管理できる。
【0019】
前記電流計測部が前記第1の基準値以上の電流値を計測することなく前記エンジンが始動した後、前記エンジンが停止する前に前記第1の基準値より小さい第2の基準値以上の電流値が計測された場合は、前記管理部は前記車両の補機に電力を供給する補機用の蓄電素子に応じた管理態様を設定し、前記第2の基準値以上の電流値が計測されることなく前記エンジンが停止した場合は、前記管理部はバックアップ用の蓄電素子に応じた管理態様を設定してもよい。
【0020】
補機用の蓄電素子の場合はその蓄電素子から大電流(第1の基準値以上の電流)が流れることなくエンジンが始動し、エンジンが停止する前に中電流(第2の基準値以上第1の基準値未満の電流)が流れる。中電流が流れる理由は蓄電素子から補機類に電力を供給するためである。これに対し、バックアップ用の蓄電素子の場合はその蓄電素子から大電流が流れることなくエンジンが始動し、その後に中電流が流れることなくエンジンが停止する。このため上記の蓄電装置によると、蓄電素子を用途に応じて管理できる。
【0021】
前記蓄電素子の管理は前記蓄電素子の内部抵抗値の推定であり、前記管理部は前記内部抵抗値を推定するタイミングを前記情報に応じて設定してもよい。
【0022】
内部抵抗値を推定する適切なタイミングは蓄電素子の用途によって異なる。上記の蓄電装置によると、内部抵抗値を推定するタイミングを、蓄電素子の用途を判断可能な情報に応じて設定するので、蓄電素子の用途に応じて適切なタイミングで内部抵抗値を推定できる。
【0023】
前記蓄電素子の管理は推定用データを用いた前記蓄電素子の状態の推定であり、前記管理部は前記情報に応じて前記推定用データを設定してもよい。
【0024】
蓄電素子の状態の推定に用いる推定用データは蓄電素子の用途によって異なる。上記の蓄電装置によると、用途によらず同じ推定用データを用いる場合に比べて蓄電素子の状態を精度よく推定できる。
【0025】
前記管理部は当該蓄電装置の異常を検出する処理を前記情報に応じて設定してもよい。
【0026】
蓄電装置は用途によって検出する異常が異なる。上記の蓄電装置によると、蓄電装置の異常を用途に応じて適切に検出できる。
【0027】
前記取得部は外部の機器から前記情報を受信する通信部であってもよい。
【0028】
上記の蓄電装置によると、外部の機器から情報を受信することにより、蓄電素子の用途に応じた管理態様を設定できる。
【0029】
前記取得部は前記情報の入力操作を受け付ける操作部であってもよい。
【0030】
上記の蓄電装置によると、蓄電素子の用途に関する情報の入力操作を受け付けることにより、蓄電素子の用途に応じた管理態様を設定できる。
【0031】
前記管理部は、前記情報に応じた管理態様を設定するとき、設定後の用途が、設定前の用途からの切り替えが禁止されている用途である場合は、当該蓄電装置を使用不能にしてもよい。
【0032】
上記の蓄電装置は用途に応じて管理態様を設定するので、ある用途に用いられていた蓄電装置をその後に別の用途にリサイクル(再利用)することが可能である。しかしながら、ある特定の用途に用いられていた蓄電装置は、その後に別のある特定の用途にリサイクルされることが望ましくない場合もある。このため、その場合はある特定の用途から別のある特定の用途への切り替えが禁止される。上記の蓄電装置によると、禁止された用途に蓄電装置がリサイクルされることを防止できる。
【0033】
本明細書によって開示される技術は、装置、方法、これらの装置または方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0034】
<実施形態1>
実施形態を
図1ないし
図9によって説明する。
【0035】
(1)蓄電装置の構成
図1に示すように、実施形態1に係る蓄電装置1は車両2に搭載される。車両2はガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのエンジンを備えるエンジン自動車であってもよいし、電気自動車やハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車などであってもよい。エンジン自動車は所謂アイドリングストップ車であってもよい。蓄電装置1は車両2において様々な用途に選択的に用いることができる。以降の説明では蓄電装置1の用途として始動用、補機用及びバックアップ用を例に説明する。
【0036】
図2に示すように、蓄電装置1は外装体10と、外装体10の内部に収容される複数の蓄電素子12とを備える。外装体10は合成樹脂材料からなる本体13と蓋体14とで構成されている。本体13は有底筒状であり、平面視矩形状の底面部15とその4辺から立ち上がって筒状となる4つの側面部16とで構成される。4つの側面部16によって上端部分に上方開口部17が形成されている。
【0037】
蓋体14は平面視矩形状であり、その4辺から下方に向かって枠体18が延びている。蓋体14は本体13の上方開口部17を閉鎖する。蓋体14の上面には平面視略T字形の突出部19が形成されている。蓋体14の上面には突出部19が形成されていない2箇所のうち一方の隅部に正極外部端子20が固定され、他方の隅部に負極外部端子21が固定されている。
【0038】
蓄電素子12は繰り返し充電可能な二次電池であり、具体的には例えばリチウムイオン電池である。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、蓄電素子12は直方体形状のケース22内に電極体23を非水電解質と共に収容したものである。ケース22はケース本体24と、その上方の開口部を閉鎖するカバー25とで構成されている。
【0039】
電極体23は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状であり、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらせた状態で、ケース本体24に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0040】
正極要素には正極集電体26を介して正極端子27が接続されている。負極要素には負極集電体28を介して負極端子29が接続されている。正極集電体26及び負極集電体28は平板状の台座部30と、台座部30から延びる脚部31とを有している。台座部30には貫通孔が形成されている。脚部31は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子27及び負極端子29は、端子本体部32と、その下面中心部分から下方に突出する軸部33とを有している。そのうち正極端子27の端子本体部32と軸部33とはアルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子29においては、端子本体部32がアルミニウム製であり、軸部33が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子27及び負極端子29の端子本体部32はカバー25の両端部に絶縁材料からなるガスケット34を介して配置され、このガスケット34から外方へ露出されている。
【0041】
図4に示すように、蓄電素子12は複数個(例えば12個)が幅方向に並設された状態で本体13内に収容されている。ここでは本体13の一端側から他端側(矢印Y1からY2方向)に向かって3つの蓄電素子12を1組として、同一組では隣り合う蓄電素子12の端子極性が同じになり、隣り合う組同士では隣り合う蓄電素子12の端子極性が逆になるように配置されている。最も矢印Y1側に位置する3つの蓄電素子12(第1組)では矢印X1側が負極、矢印X2側が正極となっている。第1組に隣接する3つの蓄電素子12(第2組)では矢印X1側が正極、矢印X2側が負極となっている。さらに第2組に隣接する第3組では第1組と同じ配置となっており、第3組に隣接する第4組では第2組と同じ配置となっている。
【0042】
図5に示すように、正極端子27及び負極端子29には導電部材としての端子用バスバー(接続部材)36~40が溶接により接続されている。第1組の矢印X2側では正極端子27群が第1バスバー36によって接続されている。第1組と第2組の間では矢印X1側で第1組の負極端子29群と第2組の正極端子27群とが第2バスバー37によって接続されている。第2組と第3組の間では矢印X2側で第2組の負極端子29群と第3組の正極端子27群とが第3バスバー38によって接続されている。第3組と第4組の間では、矢印X1側で第3組の負極端子29群と第4組の正極端子27群とが第4バスバー39によって接続されている。第4組の矢印X2側では、負極端子29群が第5バスバー40によって接続されている。
【0043】
図2を併せて参照すると、電気の流れの一端に位置する第1バスバー36は第1の電子機器42A(例えばヒューズ)、第2の電子機器42B(例えばリレー)、バスバー43及びバスバーターミナル(図示せず)を介して正極外部端子20に接続されている。電気の流れの他端に位置する第5バスバー40はバスバー44A,44B及び負極バスバーターミナル(図示せず)を介して負極外部端子21に接続されている。これによりそれぞれの蓄電素子12は正極外部端子20及び負極外部端子21を介して充電と放電とが可能になっている。電子機器42A,42Bと電気部品接続用バスバー43、43A及び44Bとは、積層配置した複数の蓄電素子12の上部に配置された回路基板ユニット41に取り付けられている。バスバーターミナルは、蓋体14に配置されている。
【0044】
(2)蓄電素子の電気的構成
図6に示すように、蓄電装置1は前述した複数の蓄電素子12と、それらの蓄電素子12を管理する電池管理装置50(BMS:Battery Management System)とを備えている。
【0045】
BMS50は
図2に示す回路基板ユニット41に実装されている。BMS50は電流センサ51(取得部、電流計測部の一例)、電圧センサ52、温度センサ53、リレー54及び管理部55を備えている。
電流センサ51は蓄電素子12と直列に接続されている。電流センサ51は蓄電素子12に流れる電流の電流値I[A]を計測するとともに、その電流の向きを検出し、計測した電流値I及び検出した向きを管理部55に出力する。
【0046】
電圧センサ52は各蓄電素子12に並列に接続されている。電圧センサ52は各蓄電素子12の端子電圧である電圧値V[V]を計測して管理部55に出力する。
温度センサ53はいずれか一つの蓄電素子12に設けられている。温度センサ53はその蓄電素子12の温度を計測して管理部55に出力する。温度センサ53は2以上の蓄電素子12にそれぞれ設けられてもよい。
リレー54は蓄電素子12と直列に接続されている。リレー54は蓄電素子12を過充電や過放電から保護するためのものであり、管理部55によって開閉される。
【0047】
管理部55は蓄電素子12から供給される電力によって動作するものであり、CPU55A、ROM55B、RAM55C、通信部55Dなどを備えている。通信部55Dは車両2のECU(Engine Control Unit)と通信するためのものである。CPU55AはROM55Bに記憶されている各種の管理プログラムを実行することによって蓄電装置1の各部を管理する。
【0048】
管理部55はCPU55Aに替えて、あるいはCPU55Aに加えてASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などを備えていてもよい。
【0049】
(3)蓄電素子の管理態様の設定
管理部55は蓄電素子12の管理態様を設定可能であり、蓄電素子12の用途を判断可能な情報(以下、用途情報という)に応じて蓄電素子12の管理態様を設定する。管理態様についての説明は後述する。以降の説明では蓄電素子12の用途のことを蓄電装置1の用途という場合もある。
【0050】
用途情報としては種々の情報を用いることができる。ここでは用途情報として蓄電素子12の出力状況に関する情報を例に説明する。出力状況に関する情報は、具体的には例えば蓄電素子12から車両2に流れる放電電流(言い換えると負荷電流)の電流値や、蓄電素子12の温度である。ここでは出力状況に関する情報として放電電流の電流値を例に説明する。以下、単に電流値というときは放電電流の電流値のことをいう。
【0051】
図7(A)は蓄電装置1(言い換えると蓄電素子12)を始動用として用いた場合の放電電流の変化を示している。
図7(B)は蓄電装置1を補機用として用いた場合の放電電流の変化を示している。
図7(A)に示すように、蓄電装置1を始動用として用いる場合は、車両2のエンジンを始動させるとき、エンジンのクランクシャフトを回転させるために蓄電素子12からスタータに大電流(例えば300A以上の電流)が流れる。通常、蓄電素子12から車両2に流れる放電電流はスタータに電力を供給するときに最も大きくなる。
【0052】
図7(B)に示すように、補機用の場合はスタータに電力を供給しないので蓄電素子12に流れる放電電流は300Aを超えない(200A以下が一般的)。図では示していないが、バックアップ用の場合も蓄電素子12に流れる放電電流は300Aを超えない。このため、300A以上の放電電流が流れたか否かにより、蓄電装置1が始動用であるか否かを判断できる。300Aは第1の基準値の一例である。
【0053】
ただし、蓄電装置1は外部短絡によって300A以上の大電流が流れることもある。このため、始動用であるか否かを電流値だけで判断すると誤判断する場合がある。外部短絡によって300A以上の大電流が流れる可能性がある場合は、電流値だけでなく車両2のECUから受信する信号も用いることによって始動用であるか否かをより正確に判断できる。
【0054】
具体的には、蓄電装置1は車両2のECUからエンジンの動作状態を示す状態信号を一定時間間隔で受信する。状態信号は例えば1ビットの信号であり、エンジンが動作中のときは1、停止中のときは0が送信される。このため、管理部55は状態信号が0から1に変化した場合はエンジンが始動したと判断でき、1から0に変化した場合はエンジンが停止したと判断できる。状態信号は車両2のエンジンの始動及び停止を判断可能な信号の一例である。
【0055】
蓄電装置1からスタータに300A以上の放電電流が流れてエンジンが始動した場合は、300A以上の放電電流が流れた時から一定時間以内に状態信号が0から1に変化する。このため、300A以上の放電電流が流れた時から一定時間以内に状態信号が0から1に変化した場合は始動用であると判断できる。一方、300A以上の大電流が流れてもその後の一定時間以内に状態信号が0から1に変化しなかった場合は外部短絡であると判断できる。
【0056】
蓄電装置1が補機用又はバックアップ用の場合は、車両2のエンジンが始動して状態信号が0から1に変化したとき、その直前の一定時間以内に300A以上の放電電流が計測されない。このため、状態信号が0から1に変化したとき、直前の一定時間以内に300A以上の放電電流が計測されていなかった場合は補機用又はバックアップ用のどちらかであると判断できる。
【0057】
蓄電装置1が補機用又はバックアップ用のどちらであるかは、エンジンが始動した後、エンジンが停止するまでの間に計測された電流値から判断できる。具体的には、蓄電素子12が補機用である場合は蓄電素子12から補機に電力を供給するためにある程度大きい放電電流が流れる。ある程度大きい放電電流は例えば100A以上300A未満の電流である。これに対し、バックアップ用の場合は100A以上の放電電流が流れることは稀であり、エンジンの始動時、始動後、車両2の走行中を含めて放電電流はほとんど流れない。
【0058】
このため、300A以上の放電電流が計測されることなくエンジンが始動した場合(すなわち状態信号が0から1に変化した場合)に、その後にエンジンが停止する前(すなわち状態信号が1から0に変化する前)に100A(第2の基準値の一例)以上の放電電流が計測された場合は補機用であると判断でき、100A以上の電流値が計測されることなくエンジンが停止した場合はバックアップ用であると判断できる。
【0059】
(4)蓄電素子の管理
蓄電素子12の管理には種々の管理があるが、ここでは内部抵抗値の推定、及び、充電容量の推定について説明する。
【0060】
(4-1)内部抵抗値の推定
図8(A)はエンジンのクランクシャフトを回転させるクランキング時(すなわちエンジンの始動時)の蓄電素子12の電圧の変化を示している。
図8(A)においてΔVはクランキング直前の蓄電素子12の電圧とクランキング中の最低電圧との差である。
図8(B)はクランキング時の放電電流の変化を示している。
図8(B)においてΔIはクランキング直前の放電電流とクランキング中の最大放電電流との差である。
【0061】
図8(A)に示すように、蓄電素子12は放電すると電圧が低下する。これは蓄電素子12が内部に抵抗(以下、内部抵抗という)を有していると仮定することで説明できる。内部抵抗は蓄電素子12の劣化に伴って大きくなるので、蓄電素子12の劣化と相関がある。このため、管理部55は蓄電素子12の劣化を判断する指標の一つとして蓄電素子12の内部抵抗の抵抗値(内部抵抗値)を推定する。内部抵抗値は以下の式1によって推定される。
【0062】
内部抵抗値[Ω]=ΔV/ΔI ・・・式1
例えば
図8(A)及び
図8(B)に示す例の場合は、内部抵抗値の推定値は3.63[mΩ](=|12V-10V|/|50A-600A|)となる。
【0063】
内部抵抗値は推定に用いる電圧・電流によって推定値が異なるため、蓄電素子12の用途に応じたタイミングの電圧・電流を用いて推定することが望ましい。
例えば、始動用の場合はクランキングの際に大電流が放電される。蓄電素子12が劣化していると大電流を放電したときの電圧降下が大きくなり、車両システムの許容電圧を下回る可能性がある。このため、始動用の場合はその主目的であるクランキング時(言い換えるとエンジンの始動時)の電圧・電流を用いることが望ましい。前述したようにクランキング直前の蓄電素子12の電圧とクランキング中の最低電圧との差をΔVとして用い、クランキング直前の放電電流とクランキング中の最大放電電流との差をΔIとして用いることが望ましい。
【0064】
補機用のような比較的放電電流が小さい用途の場合は始動用のような電圧降下が見られないため、車両システムの許容電圧(蓄電素子12の電圧降下)を基に内部抵抗値を推定することは適しておらず、単純に初期の値からの上昇率で推定することが望ましい。例えば、蓄電素子12の放電電流が最小となるときの電圧・電流を用いることが望ましい。例えば
図7(B)に示す例では放電電流が最小となるときの電流値は50Aである。このため、電流値が50Aから変化したとき、変化前の蓄電素子12の電圧と変化中の最低電圧との差をΔVとして用い、変化前の電流値(すなわち50A)と変化中の最大放電電流との差をΔIとして用いることが望ましい。
バックアップ用の場合は電圧や電流の変化がほぼないので、内部抵抗値を推定するタイミングは任意に設定できる。
【0065】
以上の理由から、管理部55は、始動用の場合はエンジンの始動時(言い換えるとエンジンを始動させるタイミング)の電圧・電流を用いて内部抵抗値を推定し、補機用の場合は放電電流が所定値となったタイミングの電圧・電流を用いて内部抵抗値を推定する。バックアップ用の場合は、管理部55は予め設定されている所定のタイミングで内部抵抗値を推定する。すなわち、管理部55は内部抵抗値を推定するタイミングを蓄電素子12の用途に応じて設定する。内部抵抗値を推定するタイミングは管理態様の一例である。
【0066】
(4-2)蓄電素子の充電容量の推定
蓄電素子12の充放電パターン及びSOCの制御範囲は用途によって異なる。例えば車両2がアイドリングストップ車の場合、始動用の蓄電素子12はSOCの制御範囲を80%前後として使用されることが多い。これに対し、補機用やバックアップ用の場合はSOCの制御範囲をほぼ100%として使用されることが一般的である。アイドリングストップ車の場合、始動用の蓄電素子12はSOCが概ね0%~80%の範囲で大きく変動する。これに対し、補機用の場合は始動用に比べて供給する電力が小さいので、始動用に比べてSOCの変動幅は小さい。バックアップ用の場合はSOCがほぼ100%に維持される。このように、蓄電素子12の充放電パターン及びSOCの制御範囲は用途によって異なる。
【0067】
前述したように始動用の場合は300A以上の放電電流が流れるのに対し、補機用の場合は100A以上300A未満であり、バックアップ用の場合は100A未満である。この意味でも蓄電素子12の充放電パターンは用途によって異なるといえる。
【0068】
充放電パターン及びSOCの制御範囲は蓄電素子12の充電容量の低下に影響する。例えば蓄電素子12がSOC80%で放置される場合と100%で放置される場合とでは蓄電素子12の充電容量の低下の度合いが異なり、100%の方が一般的には充電容量が大きく低下する。前述したように蓄電素子12の充放電パターン及びSOCの制御範囲は用途によって異なる。このため、蓄電素子12の用途は充電容量の低下に影響するといえる。このため、管理部55は蓄電素子12の充電容量を用途に応じて推定する。
【0069】
蓄電素子12の充電容量の推定の一例について説明する。管理部55は蓄電素子12の初期容量の内部データ(初期容量内部値)をnAh単位で持つので、蓄電素子12の初期容量を60Ahとした場合、初期容量内部値は60000000000[nAh]となる。
管理部55のROM55Bには以下の表に示すような容量推定用テーブル(推定用データの一例)が記憶されている。容量推定用テーブルは蓄電素子12の温度毎に容量減算値が対応付けられているテーブルである。管理部55は所定の時間間隔(例:10分間隔)で温度センサ53によって蓄電素子12の温度を計測し、計測した温度に対応する容量減算値を初期容量内部値から減算していくことによって蓄電素子12の充電容量を推定する。
【0070】
【0071】
管理部55のROM55Bには、蓄電装置1が始動用として用いられる場合の容量推定用テーブル、補機用として用いられる場合の容量推定用テーブル、及び、バックアップ用として用いられる場合の容量推定用テーブルが記憶されている。管理部55は蓄電装置1の用途に応じた容量推定用テーブルを、蓄電素子12の充電容量の推定に用いる容量推定用テーブルとして設定する。容量推定用テーブルは管理態様の一例である。
【0072】
(5)管理態様の設定処理
図9を参照して、管理部55によって実行される管理態様の設定処理について説明する。本処理は蓄電素子12から管理部55に電力が供給されている間、連続的に又は一定時間間隔で繰り返し実行される。
【0073】
S101では、管理部55は蓄電素子12に流れる電流の電流値を電流センサ51によって計測するとともに、その電流の向きを検出する。
S102では、管理部55は電流の向きが放電方向であるか充電方向であるかを判断し、放電方向である場合(すなわち放電電流の場合)はS103に進み、充電方向である場合(すなわち充電電流の場合)は本処理を終了する。
【0074】
S103では、管理部55は放電電流の電流値が300A以上であるか否かを判断し、300A以上である場合はS104に進み、300A未満である場合はS107に進む。
S104では、管理部55は一定時間が経過するまで待機し、一定時間が経過するとS105に進む。一定時間が経過する前にエンジンが始動した場合は、管理部55は一定時間が経過するのを待たずにS105に進んでもよい。
【0075】
S105では、管理部55は上述した一定時間が経過するまでの間にエンジンが始動したか否かを判断し、始動した場合はS106に進み、始動しなかった場合(すなわち外部短絡によって大電流が計測された場合)は本処理を終了する。
S106では、管理部55は始動用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定する。
【0076】
S107では、管理部55は一定時間待機し、一定時間が経過するとS108に進む。一定時間が経過する前にエンジンが始動した場合は、管理部55は一定時間が経過するのを待たずにS108に進んでもよい。
S108では、管理部55は上述した一定時間が経過するまでの間にエンジンが始動したか否かを判断し、始動した場合はS109に進み、始動しなかった場合は本処理を終了する。
【0077】
S109では、管理部55はエンジンが停止(すなわち状態信号が1から0に変化)するまで待機し、エンジンが停止するとS110に進む。エンジンが停止する前に100A以上の電流値が計測された場合は、管理部55はエンジンが停止するのを待たずにS110に進んでもよい。
S110では、管理部55はエンジンが停止するまでの間に100A以上の放電電流が計測されたか否かを判断し、計測された場合はS111に進み、計測されなかった場合はS112に進む。
【0078】
S111では、管理部55は補機用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定する。
S112では、管理部55はバックアップ用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定する。
【0079】
(6)実施形態の効果
蓄電装置1によると、用途情報に応じて蓄電素子12の管理態様を設定するので、蓄電素子12を用途に応じて管理できる。これにより同一仕様の管理部55を多用途で使用可能となり、管理部55(蓄電装置1)に係るコストを抑制できる。
【0080】
蓄電装置1によると、例えば始動用として用いられていた蓄電装置1を補機用としてリサイクルすることもできる。補機用は始動用に比べて求められる出力電力が小さいので、始動用として用いられていた蓄電素子12が寿命によって使用できなくなっても補機用であれば未だ使用できる場合がある。始動用と補機用とでは蓄電素子12の管理態様が異なるので、従来は始動用として用いられていた蓄電装置1を補機用としてリサイクルできなかった。これに対し、蓄電装置1によると、蓄電素子12の管理態様を用途に応じて設定するので、始動用として用いられていた蓄電装置1を補機用としてリサイクルできる。これにより蓄電装置1を有効利用でき、環境保護にも寄与する。
【0081】
蓄電装置1によると、始動用の蓄電装置1と補機用の蓄電装置1とを間違えることによって蓄電素子12が不適切に管理されてしまうことを抑制できる。具体的には、従来のように始動用の蓄電装置と補機用の蓄電装置とを別々に用意すると、補機用の蓄電装置を始動用に用いてしまうといった間違いが起こり得る。これは一般のユーザが自身で蓄電装置を交換する場合に起き易い。このような間違いが起きると蓄電素子12が不適切に管理されてしまう。これに対し、蓄電装置1は蓄電素子12の用途に応じて管理態様を設定するので、蓄電素子12が不適切に管理されることを抑制できる。
【0082】
蓄電装置1によると、蓄電装置1が搭載される車種を選ばないという利点もある。例えば、蓄電素子12の用途を判断する方法としては、蓄電素子12がどのような用途に用いられているかを示す情報を車両2のECUから受信することによって判断する方法が考えられる。しかしながら、そのような情報を送信しない車両2の場合は用途を判断できない。これに対し、蓄電装置1によると、車両2からそのような情報を受信しなくても用途に応じた管理態様を設定できるので、蓄電装置1が搭載される車種を選ばない。
【0083】
蓄電装置1によると、用途情報は蓄電素子12の出力状況に関する情報(ここでは放電電流の電流値)である。蓄電素子12の出力状況は用途によって異なるので、蓄電素子12がどのような用途に用いられているかを知ろうとする場合、出力状況に関する情報は有用な手掛りとなる。このため出力状況に関する情報を取得すると、蓄電素子12を用途に応じて管理できる。
【0084】
蓄電装置1によると、300A以上の電流値が計測されてもその後にエンジンが始動しなかった場合は外部短絡であると判断して始動用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定しないので、電流値だけをみて設定する場合に比べて設定の誤りを低減できる。
【0085】
蓄電装置1によると、300A以上の電流値が計測されることなくエンジンが始動した後、エンジンが停止するまでの間に100A以上の電流値が計測された場合は補機用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定し、100A以上の電流値が計測されることなくエンジンが停止した場合はバックアップ用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定するので、蓄電素子12を用途に応じて管理できる。
【0086】
蓄電装置1によると、内部抵抗値を推定するタイミングを用途情報に応じて異ならせるので、蓄電素子12の用途に応じて適切なタイミングで内部抵抗値を推定できる。
【0087】
蓄電装置1によると、用途情報に応じて容量推定用テーブルを設定するので、用途によらず同じ容量推定用テーブルを用いる場合に比べて蓄電素子12の充電容量を精度よく推定できる。
【0088】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0089】
(1)上記実施形態では300A以上の電流値が計測された後にエンジンが始動した場合に始動用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定する。これに対し、外部短絡が起きる可能性が低い場合は、300A以上の電流値が計測されるとその後にエンジンが始動するか否かによらず始動用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定してもよい。
【0090】
(2)上記実施形態では蓄電素子12が始動用、補機用又はバックアップ用のいずれかとして用いられる場合を例に説明したが、蓄電素子12が始動用又は補機用のどちらかにしか用いられない場合もある。その場合は、300A以上の電流値が計測されることなくエンジンが始動するとその後に100A以上の電流値が計測されるか否かによらず補機用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定してもよい。
【0091】
(3)上記実施形態では出力状況に関する情報として放電電流の電流値を例に説明したが、出力状況に関する情報はこれに限られない。例えば、出力状況に関する情報は蓄電素子12の温度であってもよい。具体的には、始動用の蓄電素子12の場合は300A以上の大電流が流れるので蓄電素子12が高温になる。これに対し、補機用の場合は100A以上300A未満の中電流が流れるので温度がある程度高くなるが、始動用ほど高温にはならない。バックアップ用の場合はほぼ放電されないので温度は低くなる。このように蓄電素子12の温度は蓄電素子12の出力状況と相関があるので、蓄電素子12の温度は蓄電素子12の出力状況に関する情報であるといえる。出力状況に関する情報として温度を用いる場合は、温度センサ53が取得部の一例である。
【0092】
(4)上記実施形態では用途情報として蓄電素子12の出力状況に関する情報を例に説明したが、用途情報は蓄電素子12の入出力状況に関する情報であってもよい。例えばSOCは蓄電素子12の充電(すなわち入力)及び放電(すなわち出力)の両方によって変化するので、SOCの変化は蓄電素子12の入出力状況に関する情報であるといえる。このため、SOCの変化を用途情報として用いてもよい。
【0093】
具体的には例えば、前述したように始動用の蓄電素子12はSOCが概ね0%~80%の範囲で大きく変動する。補機用の場合は始動用に比べて供給する電力が小さいので始動用に比べてSOCの変動幅が小さい。バックアップ用の場合はSOCがほぼ100%に維持される。このため、SOCを時系列で記録し、記録したSOCの変化パターンがいずれの用途のSOCの変化パターンと合致するかによって蓄電素子12の管理態様を設定してもよい。
【0094】
入出力状況に関する情報は、蓄電素子12の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の変化であってもよい。OCVは回路が開放されているときの電圧に限らず、蓄電素子12に流れる電流の電流値が所定の基準値未満のときの電圧であってもよい。OCVとSOCとには高い相関があるので、OCVの変化は蓄電素子12の入出力状況に関する情報であるといえる。OCVを用いる場合は電圧センサ52が取得部の一例である。
【0095】
(5)上記実施形態では管理態様として内部抵抗値の推定のタイミングや容量推定用テーブルを例に説明したが、管理態様はこれに限られない。
例えば、管理部55は管理パラメータを用いて蓄電素子12を管理し、その場合に、用途情報に応じて管理パラメータを設定してもよい。具体的には例えば、管理部55はSOCが所定の上限値(管理パラメータの一例)まで上昇するとリレー54を開いて蓄電素子12を過充電から保護し、SOCが所定の下限値(管理パラメータの一例)まで低下するとリレー54を開いて蓄電素子12を過放電から保護する。これらの上限値や下限値は用途によって適切な値が異なる場合がある。このため用途に応じて下限値や上限値を設定してもよい。
【0096】
例えば、蓄電装置12が始動用である場合は、車両2には始動用の蓄電装置12以外の蓄電装置が搭載されていないことが多い。このため、車両2の制御電源の確保(安全確保)の観点から、過充電や過放電が予見されてもリレー54を開くタイミングをできる限り遅くしたいことがある。この場合は上限値をより高圧側にし、下限値をより低電圧側にすることが考えられる。一方で、補機用の場合はハイブリッド車両のようにモータ駆動用の高電圧の蓄電装置が搭載されているので、始動用に比べると制御電源喪失のリスクは低い。このため、過充電や過放電からより確実に保護する観点から、上限値をより低圧側に設定し、下限値をより高圧側に設定することが考えられる。
【0097】
管理パラメータは蓄電素子12の異常を判定する基準となる閾値であってもよい。例えば蓄電素子12の温度が閾値以上まで上昇すると異常であると判断する場合に、蓄電素子12の用途によって適切な閾値が異なる場合は、管理部55は用途情報に応じて閾値を設定してもよい。
【0098】
(6)管理部55は蓄電装置1の異常を検出する処理を用途情報に応じて設定してもよい。例えば、始動用の場合はエンジンを始動させるために300A以上の大電流が流れるはずであるが、蓄電装置1の内部の回路に接続不良が生じていることによって300A以上の大電流が流れないこともあり得る。このため、始動用の場合に300A以上の大電流が流れないときは異常として検出してもよい。
これに対し、補機用の場合は300A以上の大電流が流れないはずであるが、外部短絡によって300A以上の大電流が流れることもあり得る。このため、補機用の場合に300A以上の大電流が流れたときは異常として検出してもよい。
【0099】
(7)上記実施形態では蓄電素子12の状態として蓄電素子12の充電容量を例に説明したが、蓄電素子12の状態はこれに限られない。例えば、蓄電素子12の状態は充電状態(SOC)であってもよい。一般に管理部55は蓄電素子12を管理するためにSOCを推定している。SOCを推定する方法としては、OCVとSOCとの相関関係を表すOCV-SOCテーブル(推定用テーブルの一例)から、計測したOCVに対応するSOCを特定することによって推定する方法が知られている。この場合、蓄電素子12の用途によって適切なOCV-SOCテーブルが異なる場合は、用途情報に応じてOCV-SOCテーブルを設定してもよい。
【0100】
管理部55は蓄電素子12の状態としてSOH(State Of Health)を推定してもよい。その場合に、推定に用いるテーブル(SOH推定テーブル)が用途によって異なる場合は、用途情報に応じてSOH推定テーブルを設定してもよい。
【0101】
管理部55はいずれかの蓄電素子12に設けられている温度センサ53によって計測された温度から複数の蓄電素子12の平均的な温度を推定してもよい。その場合に、推定に用いるテーブル(温度推定テーブル)が用途によって異なる場合は、用途情報に応じて温度推定テーブルを設定してもよい。
【0102】
(8)上記実施形態では蓄電素子12の用途として始動用、補機用及びバックアップ用を例に説明したが、蓄電素子12の用途はこれらに限られない。例えば、電気モータで走行するフォークリフトや無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などに搭載されてその電気モータに電力を供給する移動体用であってもよいし、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)に設けられて電力を蓄えるUPS用であってもよい。
【0103】
移動体用の場合は始動用と同様にSOCが0%~100%の範囲で大きく変動する。UPS用の場合はバックアップ用と同様にSOCがほぼ100%に維持される。このため、移動体用であるかUPS用であるかに応じて管理態様を設定する場合は、SOCやOCVの変化パターンを用途情報として取得し、その用途情報に応じて管理態様を設定してもよい。
【0104】
(9)上記実施形態では電流センサ51によって放電電流の電流値を計測することによって用途情報を取得する場合を例に説明したが、用途情報として取得する情報やその取得の方法はこれに限られない。
例えば、蓄電装置1に操作部を設け、操作部を介して作業者から用途(例えば始動用、補機用又はバックアップ用)の指定を受け付けることによって用途情報を取得してもよい。操作部としては例えばディップスイッチを用いることができる。
【0105】
蓄電装置1に用途情報(例えば始動用、補機用又はバックアップ用を示す情報)を受信するための通信部を設け、外部から送信された用途情報を受信することによって取得してもよい。通信は有線通信であってもよいし無線通信であってもよい。無線通信の場合は専用のリモートコントローラから受信してもよいし、携帯端末(所謂スマートフォンやタブレットコンピュータなど)から受信してもよい。また、通信部をインターネットに接続し、インターネットを介して受信してもよい。
【0106】
(10)上記実施形態で説明した設定処理は一例である。設定処理は上記実施形態で説明した処理に限られるものではない。例えば、管理部55はエンジンが始動すると(すなわち状態信号が0から1に変化すると)、エンジンが始動した時から遡って一定時間以内に300A以上の電流値が計測されていたか否かを判断し、計測されていた場合は始動用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定してもよい。すなわち、この場合は一定時間間隔で設定処理が実行されるのではなく、エンジンが始動したことをトリガとして設定処理が開始される。
【0107】
(11)上記実施形態で説明した蓄電装置1は用途に応じて管理態様を設定するので、ある用途に用いられていた蓄電装置1をその後に別の用途にリサイクルできる。しかしながら、ある特定の用途に用いられていた蓄電装置1は、その後に別のある特定の用途にリサイクルされることが望ましくない場合もある。このため、その場合はある特定の用途から別のある特定の用途へのリサイクルを禁止してもよい。
【0108】
例えば、補機用から始動用へのリサイクル(言い換えると用途の切り替え)を禁止してもよい。これは、始動用は補機用に比べて求められる出力電力が高いので、寿命によって補機用に求められる電力を出力できなくなった蓄電装置1を始動用にリサイクルすることはできないからである。このため、補機用から始動用へのリサイクルを禁止する旨の情報をROM55Bに記憶させておいてもよい。
【0109】
そして、管理部55は、用途情報に応じた管理態様を設定したときに常に設定後の管理態様に対応する用途を現在の用途としてRAM55Cに記憶させておき、その後に用途情報に応じた管理態様を設定するとき、設定後の用途が、設定前の用途(すなわちRAM55Cに記憶されている現在の用途)からのリサイクルが禁止されている用途である場合は蓄電装置1を使用不能にしてもよい。蓄電装置1を使用不能にすることは例えば蓄電素子12と直列に接続されているリレー54を開くことによって行うことができる。これにより、禁止された用途に蓄電装置1がリサイクルされることを防止できる。
【0110】
(12)上記実施形態ではエンジンの始動及び停止を判断可能な信号として0また1の状態信号を一定時間間隔で受信する場合を例に説明した。これに対し、車両2はエンジンが始動したときに始動信号を送信し、エンジンが停止したときに停止信号を送信してもよい。蓄電装置1は始動信号及び停止信号を、エンジンの始動及び停止を判断可能な信号として受信してもよい。
【0111】
(13)上記実施形態では300A以上の大電流が流れた後に状態信号が0から1に変化する場合を例に説明した。これに対し、車両2は、運転者がエンジンの始動を指示したとき、エンジンの始動を開始する前に始動開始信号を蓄電装置1に送信してもよい。この場合は管理部55が始動開始信号を受信した後に300A以上の電流が流れる。このため、管理部55は始動開始信号を受信した後、一定時間以内に300A以上の電流値が計測された場合は始動用の蓄電素子12に応じた管理態様を設定してもよい。300A以上の電流値が計測された場合に、直前の一定時間以内に始動開始信号を受信していなかった場合は、管理部55は外部短絡であると判断してもよい。
【0112】
(14)上記実施形態では車両2に搭載される蓄電装置1を例に説明したが、蓄電装置1は車両2に搭載されるものに限られない。例えば蓄電装置1は船舶や航空機に搭載されてもよいし、二輪車に搭載されてもよい。
【0113】
(15)管理部55は、外部から用途情報を受信し、受信した用途情報に応じて制御プログラムを書き換えることによって管理態様を設定してもよい。
【0114】
(16)上記実施形態では蓄電素子12としてリチウムイオン電池を例に説明したが、蓄電素子12は鉛蓄電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0115】
(17)蓄電装置1にAIを実装し、そのAI(Artificial Intelligence)が蓄電素子12の用途を判断して管理態様を設定してもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…蓄電装置、2…車両、12…蓄電素子、51…電流センサ(取得部、電流計測部の一例)、52…電圧センサ(取得部の一例)、53…温度センサ(取得部の一例)、55…管理部、55D…通信部(取得部の一例)