(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0583 20100101AFI20220118BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220118BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220118BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220118BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220118BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20220118BHJP
【FI】
H01M10/0583
H01M10/052
H01M10/04 Z
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01G11/24
(21)【出願番号】P 2017175029
(22)【出願日】2017-09-12
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 丈
【審査官】菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-045474(JP,A)
【文献】特開平10-326627(JP,A)
【文献】特開2004-319348(JP,A)
【文献】特開2011-146219(JP,A)
【文献】実開昭61-124965(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00-10/34
H01M 4/00-4/62
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極を含む長尺な第一の部材と、前記第一の電極と極性が異なる第二の電極を含む第二の部材と、を有する電極体を備え、
前記第一の部材は、第一の面及び該第一の面と反対側の第二の面をそれぞれ有し且つ前記第一の面同士を対向させた一対の平坦部と、前記一対の平坦部の端部同士を接続するターン部と、を含む折り返し部を少なくとも一つ有し、
前記第二の部材は、前記一対の平坦部の間に配置され、
前記ターン部は、前記折り返し部の内側の面の一部が他の部位より外側の面に向けて凹
むとともに、該折り返し部の外側の面の一部が他の部位より内側に向けて凹んでいる薄肉の部位を有し、
該ターン部と前記第二の部材との間に隙間が形成され
、
前記第一の電極は、前記折り返し部に相当する領域において、金属箔と、該金属箔における内側の面及び外側の面のそれぞれに重ねられる活物質層と、を有し、
前記第一の電極における前記金属箔の前記内側の面に重ねられる活物質層において、前記薄肉の部位に相当する領域の活物質層が、前記薄肉の部位以外の部位に相当する領域の活物質層より薄く、且つ、前記第一の電極における前記金属箔の前記外側の面に重ねられる活物質層において、前記薄肉の部位に相当する領域の活物質層が、前記薄肉の部位以外の部位に相当する領域の活物質層より薄い、蓄電素子。
【請求項2】
第一の電極を含む長尺な第一の部材と、前記第一の電極と極性が異なる第二の電極を含む第二の部材と、を有する電極体と、該電極体を収容するケースと、を備え、
前記第一の部材は、第一の面及び該第一の面と反対側の第二の面をそれぞれ有し且つ前記第一の面同士を対向させた一対の平坦部と、前記一対の平坦部の端部同士を接続するターン部と、を含む折り返し部を少なくとも一つ有し、
前記第二の部材は、前記一対の平坦部の間に配置され、
前記ターン部は、前記折り返し部の内側の面の一部が他の部位より外側の面に向けて凹んでいる薄肉の部位を有し、
該ターン部と前記第二の部材との間に隙間が形成され、
前記電極体は、前記ケースに収容されることで該ケースによって前記一対の平坦部が並ぶ方向の両側から押圧され、
前記第二の部材は、該第二の部材のうち前記一対の平坦部が並ぶ方向から見て前記薄肉の部位と重なる位置にある部位と、前記平坦部に挟持される部位と、を有し、
前記第二の部材のうち前記薄肉の部位と重なる位置にある部位の前記一対の平坦部が並ぶ方向における厚みは、前記第二の部材のうち前記平坦部に挟持されている部位の前記一対の平坦部が並ぶ方向における厚みよりも大きい、蓄電素子。
【請求項3】
前記第二の部材のターン部側の端縁は、前記一対の平坦部が並ぶ方向から見て、前記薄肉の部位と重なる位置にある、請求項1
又は2に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記電極体を収容するケースを備え、
前記電極体は、前記一対の平坦部が並ぶ方向から見て、前記薄肉の部位の端部位置と重なる領域が、前記一対の平坦部が並ぶ方向の両側から押圧された状態で前記ケースに収容されている、請求項1
又は2に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記第一の電極は、前記薄肉の部位に相当する領域に、金属箔と、該金属箔における内側の面に重ねられる活物質層と、を有する、請求項
2~
4のいずれか1項に記載の蓄電素子。
【請求項6】
電解液と、
前記電解液及び前記電極体を収容するケースと、を備え、
前記第一の電極は、前記折り返し部において長尺方向の全域に配置される前記金属箔と、該金属箔の前記折り返し部の内側を向いた面の前記長尺方向の全域に重ねられる前記活物質層と、を有し、
前記長尺方向において、前記活物質層の前記薄肉の部位に相当する部位の密度は、他の部位の密度より高い、請求項
5に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り返された第一の電極の間に第二の電極が配置された電極体を備える蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、負極電極板及び正極電極板の一方の電極板がつづら折り状に積層されているリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」と称する)が知られている(特許文献1参照)。具体的に、この電池は、
図19に示すように、負極電極板101と、正極電極板104と、両電極板101、104間に挿入されたセパレータ107とが、交互に積層されて構成された電極積層体である。
【0003】
負極電極板101は、両面でセパレータ107と密着しており、長手方向に所定間隔で交互に折り畳まれてつづら折り状に積層された長尺の可撓性材料からなる電極板(長尺電極板と称する)である。負極の長尺電極板101は、銅箔102の両面に形成された負極活物質層103をもつ。
【0004】
セパレータ107は、長尺の絶縁膜からなり、その厚さ方向に電荷の移動が可能な電池用セパレータである。このセパレータ107は、負極の長尺電極板101の両面に接して折り畳まれている。具体的に、セパレータ107は、長尺電極板101の銅箔102のうち、負極活物質層103の形成されている部分を両面から包み込んでいる。即ち、長尺電極板101とその両面を包むセパレータ107とは一体化して一体長尺物108を形成している。
【0005】
正極電極板104は、両面でセパレータ107に密着しており、多数の互いに独立した短冊形状の電極板(短冊状電極板と称する)である。正極の各短冊状電極板104は、アルミニウム箔105の両面に形成された正極活物質層106をもつ。
【0006】
そして、長尺電極板101とセパレータ107とからなる一体長尺物108に対し、その両側から多数の短冊状電極板104が交互に積層されて電池100が構成されている。即ち、一枚の一体長尺物108と多数の短冊状電極板104との積層に際し、一体長尺物108はつづら折りに折り畳まれ、その間に短冊状電極板104が両側から挿入されて一体長尺物108に挟持された構造を電池100は持っている。
【0007】
以上の電池100では、つづら折りに折り畳まれた一体長尺物108のターン部において、応力が生じ易い。具体的には、活物質の膨張等に伴って長尺電極板101の体積が大きくなるが、ターン部においては、この体積が大きくなった長尺電極板101の逃げ代が少ないため、応力が生じやすい。特に、一体長尺物108の厚みが大きい程、ターン部に生じる応力の大きさが顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本実施形態は、第一の電極を含む第一の部材の折り返し部におけるターン部に生じる応力を抑えることができる蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の蓄電素子は、
第一の電極を含む長尺な第一の部材と、前記第一の電極と極性が異なる第二の電極を含む第二の部材と、を有する電極体を備え、
前記第一の部材は、第一の面及び該第一の面と反対側の第二の面をそれぞれ有し且つ前記第一の面同士を対向させた一対の平坦部と、前記一対の平坦部の端部同士を接続するターン部と、を含む折り返し部を少なくとも一つ有し、
前記第二の部材は、前記一対の平坦部の間に配置され、
前記ターン部は、前記折り返し部の内側の面の一部が他の部位より外側の面に向けて凹んでいる薄肉の部位を有し、
該ターン部と前記第二の部材との間に隙間が形成されている。
【0011】
かかる構成によれば、第一の部材において、折り返し部のターン部が薄肉の部位を有することで、ターン部において生じる応力が抑えられる。
【0012】
前記蓄電素子では、
前記第二の部材のターン部側の端縁は、前記一対の平坦部が並ぶ方向から見て、前記薄肉の部位と重なる位置にあってもよい。
【0013】
このように、薄肉の部位と厚肉の部位(薄肉の部位以外の部位)とが形成された折り返し部の間において、一対の平坦部が並ぶ方向から見て第二の部材の端縁が薄肉の部位と重なる位置にあることで(例えば、
図11参照)、第二の部材において、厚肉の部位に圧迫(挟持)されている部位の端部位置、即ち、折り返し部の厚肉の部位と薄肉の部位との境界位置に僅かな段差が生じ、これにより、折り返し部の間での第二の部材の位置ずれが効果的に抑えられる。
【0014】
また、前記蓄電素子は、
前記電極体を収容するケースを備え、
前記電極体は、前記一対の平坦部が並ぶ方向から見て、前記薄肉の部位の端部位置と重なる領域が、前記一対の平坦部が並ぶ方向の両側から押圧された状態で前記ケースに収容されてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、第二の部材において、折り返し部の厚肉の部位によって圧迫(挟持)されている部位の端部位置(即ち、薄肉の部位の端部位置)により大きな力が加わるため、折り返し部の間での第二の部材の位置ずれがより確実に抑えられる。
【0016】
前記蓄電素子では、
前記第一の電極は、前記薄肉の部位に相当する領域に、金属箔と、該金属箔における内側の面に重ねられる活物質層と、を有してもよい。
【0017】
薄肉の部位において第二の部材に対向するように金属箔が露出していると、金属箔において電流集中に伴うデンドライトの発生及びその成長等が生じ易い。しかし、上記構成によれば、薄肉の部位に相当する領域において金属箔の内側を向いた面が活物質層で覆われているため、該部位における前記電流集中が防がれ、これにより、金属箔での前記デンドライトの発生及びその成長等を抑えることができる。
【0018】
また、ターン部と第二の部材との間に隙間があるため、第二の部材に含まれる第二の電極の充放電に伴う膨張収縮によって第二の部材がターン部の奥に向けて伸びたり移動したりする可能性がある。薄肉の部位に相当する領域において金属箔の第二の部材側を向いた面を活物質層で覆うことで、前記電流集中を抑制することができる。
【0019】
また、前記蓄電素子では、
電解液と、
前記電解液及び前記電極体を収容するケースと、を備え、
前記第一の電極は、前記折り返し部において長尺方向の全域に配置される前記金属箔と、該金属箔の前記折り返し部の内側を向いた面の前記長尺方向の全域に重ねられる前記活物質層と、を有し、
前記長尺方向において、前記活物質層の前記薄肉の部位に相当する部位の密度は、他の部位の密度より高くてもよい。
【0020】
このように、ターン部に活物質層が配置されると、蓄電素子の充放電に伴って該活物質層が膨張収縮することで該膨張収縮に伴う応力がターン部において発生するが、ターン部の薄肉の部位の活物質層の密度を高くして電解液の液浸透性を低下させることで前記充放電に伴う活物質層の膨張収縮量を抑え、これにより、ターン部での前記膨張収縮に伴う応力の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上より、本実施形態によれば、第一の電極を含む第一の部材の折り返し部におけるターン部に生じる応力を抑えることができる蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
【
図5】
図5は、電極体を説明するための斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI位置における断面模式図である。
【
図7】
図7は、負極の構成を説明するための図である。
【
図8】
図8は、負極の構成を説明するための図である。
【
図9】
図9は、つづら折り状態の負極の構成を説明するための斜視図である。
【
図10】
図10は、折り返し部を説明するための斜視図である。
【
図11】
図11は、電極体のターン部及びその周辺の拡大断面図である。
【
図12】
図12は、正極及びセパレータを含む第二の部材の構成を説明するための図である。
【
図13】
図13は、正極及びセパレータを含む第二の部材の構成を説明するための図である。
【
図14】
図14は、電極体において圧迫され易い領域を説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、他実施形態に係る電極体における平坦部とターン部との境界部を示す図である。
【
図16】
図16は、他実施形態に係る電極体における平坦部とターン部との境界部を示す図である。
【
図17】
図17は、前記蓄電素子を備える蓄電装置の斜視図である。
【
図19】
図19は、従来の電池の積層構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、
図1~
図14を参照しつつ説明する。蓄電素子には、一次電池、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0024】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0025】
蓄電素子は、
図1~
図4に示すように、電極体2を備える。また、蓄電素子1は、電極体2を収容するケース3と、少なくとも一部が外部に露出した状態でケース3に取り付けられる外部端子4と、電極体2と外部端子4とを接続する集電体5と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材6等も備える。尚、各図においては、構造を示すために、電極体2を構成する電極等の厚さを誇張して表す等、電極体2の構成を模式的に表している。
【0026】
電極体2は、
図5及び
図6にも示すように、第一の電極21を含む長尺な第一の部材と、第一の電極21と極性が異なる第二の電極22を含む第二の部材26と、を有する。本実施形態の電極体2では、第一の電極21は、負極であり、第二の電極22は、正極である。また、第一の部材は、負極21のみを含み、第二の部材26は、正極22とセパレータ25とを含む。
【0027】
負極21は、
図7及び
図8にも示すように、金属箔211と、金属箔211の両面のそれぞれに重ねられる負極活物質層212と、を有する。即ち、負極21は、一つの金属箔211と一対の負極活物質層212とを有する。本実施形態の金属箔211は、例えば、銅箔である。この負極21は、
図9にも示すように、長尺な帯状であり、ターン部234で折り返されている少なくとも一つの折り返し部23を有する。具体的には、以下の通りである。
【0028】
負極活物質層212は、負極活物質と、バインダーと、を有する。
【0029】
負極活物質は、例えば、グラファイト、難黒鉛化炭素、及び易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極活物質は、グラファイトである。
【0030】
負極活物質層212に用いられるバインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0031】
負極活物質層212は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層212は、導電助剤を有していない。
【0032】
折り返し部23は、
図10に示すように、谷折り側の面である第一の面231及び山折り側の面(即ち、第一の面231と反対側の面)である第二の面232をそれぞれ有し且つ第一の面231同士を対向させた一対の平坦部233と、一対の平坦部233の端部同士を接続するターン部234と、を含む。本実施形態の負極21は、ターン部234を反対に向けた状態で隣り合う折り返し部23同士がその一部(平坦部233)を共通させた状態で連続するつづら折り状態(蛇腹状)である。
【0033】
換言すると、負極21は、所定方向(
図9の左右方向)の一方側が開放されるように折り返された折り返し部(第一の折り返し部)23Aと、前記所定方向の他方側が開放されるように折り返された折り返し部(第二の折り返し部)23Bとが交互に配置されたつづら折り状態である。そして、一つの折り返し部(第一折り返し部)23Aに着目したときに、第一折り返し部23Aと、その隣(
図9における後ろ側)の折り返し部(第二折り返し部)23Bとでは、第一折り返し部23Aのターン部234Aと、第二折り返し部23Bのターン部234Bとの間の平坦部233A、233Bを共通させている。
【0034】
この場合、
図9に示すように、第一折り返し部23Aに着目したときの平坦部233Aでは、第一折り返し部23Aにおける谷折り面側の面が第一の面231Aであり、その反対側の面(山折り側の面)が第二の面232Aである。一方、第二折り返し部23Bに着目したときの平坦部233B(第一折り返し部23Aの平坦部233Aと共通させた平坦部233B)では、第二折り返し部23Bにおける谷折り面側の面が第一の面231Bであり、その反対側の面(山折り側の面)が第二の面232Bである。即ち、第一折り返し部23Aと第二折り返し部23Bとで共通させている平坦部233A、233Bでは、第一折り返し部23Aに着目したときと、第二折り返し部23Bに着目したときとで、第一の面(折り返し部23において向かい合う面)231と第二の面(折り返し部において反対方向を向く面)232とが逆になる。
【0035】
具体的には、
図9に示すように、負極21では、帯状の負極21が長尺方向において所定間隔で交互に折り返されることによって、平坦部233とターン部234とが交互に形成されている。即ち、長尺な負極21が、
図7に示す長手方向に所定間隔で交互に設定された山折り線21Aの位置と谷折り線21Bの位置とで山折りと谷折りとが交互に繰り返されることによって、つづら折り状態となる。これにより、負極21は、複数の平坦部233と複数のターン部234とを有し、複数の平坦部233のそれぞれは、平行若しくは略平行に並び、複数のターン部234のそれぞれは、隣り合う平坦部233の前記長尺方向の一端側の端部同士と他端側の端部同士とを交互に接続している。
【0036】
また、この帯状の負極21では、
図7及び
図8に示すように、山折り線21Aを含む領域(折り返されたときにターン部234となる領域)210と谷折り線21Bを含む領域(折り返されたときにターン部となる領域)210とにおいて、折り返されたときに内側となる面側の負極活物質層212には、負極21の短手方向に延びる溝が形成されている。即ち、折り返し部23のターン部234は、折り返し部23の内側の面の一部(領域210)が他の部位より外側の面に向けて凹んでいる薄肉の部位を有する。本実施形態の負極21では、ターン部234の全体が薄肉の部位である。
【0037】
また、本実施形態の負極21では、領域210において、負極21の両面(即ち、金属箔211の両面に重ねられた負極活物質層212のそれぞれ)に、前記溝が形成されている(
図7及び
図8参照)。この溝は、金属箔211に負極活物質が塗布されて一定の厚さの負極活物質層212が形成された後、負極活物質層212の領域210を厚さ方向に圧縮することによって形成されている。即ち、負極活物質層212において、ターン部(薄肉の部位)234に相当する部位(即ち、領域210)の密度は、他の部位(平坦部233に相当する部位)の密度より高くなっている。そして、負極21の領域210に設けられた溝に第二の部材26の端縁部を当接させた状態で負極21を該溝の位置で折り返すことで、折り返し部23が形成される。このとき、第二の部材26のターン部234側の端縁は、
図11に示すように、ターン部234の内側に位置する。そして、ターン部234と第二の部材26の端部との間には、隙間γが形成される。
【0038】
以下では、平坦部233が並ぶ方向を直交座標系におけるX軸方向とし、平坦部233に対してターン部234が配置されている方向(
図9における左右方向)を直交座標系におけるY軸方向とし、ターン部234の旋回軸Sの延びる方向(
図9参照)を直交座標系のZ軸方向とする。
【0039】
複数の平坦部233のそれぞれは、
図7、
図9、及び
図10に示すように、矩形状の平坦部本体2331と、平坦部本体2331の矩形状の輪郭を構成する一辺から突出する(本実施形態の例では、Z軸方向の端縁からZ軸方向に延びる)負極タブ2332と、を有する。本実施形態の平坦部本体2331は、Y軸方向に長い矩形状である。平坦部本体2331では、金属箔211の両面が負極タブ2332側の端部を残して負極活物質層212に覆われ、負極タブ2332では、金属箔211が露出している。即ち、負極タブ2332は、負極活物質層212を有しない。
【0040】
つづら折り状態の負極21において、各平坦部233の負極タブ2332は、X軸方向から見て重なっている。本実施形態の負極21では、各負極タブ2332は、平坦部本体2331のZ軸方向の一方(
図9における上側)の端縁におけるY軸方向の一方(
図9における右側)の端部からZ軸方向に延びている。この複数の平坦部本体2331のそれぞれから延びている負極タブ2332は、束ねられ、外部端子4と集電体5を介して接続されている(
図3参照)。本実施形態の負極タブ2332の束は、溶接によって集電体5に接続されている。
【0041】
複数のターン部234のそれぞれは、つづら折り状態の負極21において、Z軸方向に延びる軸を旋回軸S(
図9参照)として帯状の負極21が旋回(方向転換)している(換言すると、旋回軸S周りに湾曲している)部位である。ターン部234においても、金属箔211の両面が負極活物質層212に覆われている。即ち、ターン部234において、金属箔211のターン部234の内側(第二の部材26側)を向いた面に、負極活物質層212が重ねられている。また、金属箔211のターン部234の外側を向いた面にも、負極活物質層212が重ねられている。
【0042】
このターン部234は、平坦部233より薄い(厚み寸法が小さい)。即ち、ターン部234は、負極21(折り返し部23)における薄肉の部位であり、平坦部233は、負極21(折り返し部23)における厚肉の部位である(
図8参照)。
【0043】
正極22は、
図5、
図6、
図12、及び
図13にも示すように、金属箔221と、金属箔221の両面のそれぞれに重ねられる正極活物質層222と、を有する。即ち、正極22は、一つの金属箔221と一対の正極活物質層222とを有する。本実施形態の金属箔221は、例えば、アルミニウム箔である。この正極22は、つづら折り状態の負極21において、X軸方向に隣り合う平坦部233間のそれぞれに配置されている。このため、本実施形態の電極体2は、複数の正極22を有している。
【0044】
正極活物質層222は、正極活物質と、バインダーと、を有する。
【0045】
本実施形態の正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、LiaMebOc(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(LiaCoyO2、LiaNixO2、LiaMnzO4、LiaNixCoyMnzO2等)、LiaMeb(XOc)d(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(LiaFebPO4、LiaMnbPO4、LiaMnbSiO4、LiaCobPO4F等)である。本実施形態の正極活物質は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2である。
【0046】
正極活物質層222に用いられるバインダーは、負極活物質層212に用いられたバインダーと同様のものである。本実施形態のバインダーは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0047】
正極活物質層222は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の正極活物質層222は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
【0048】
具体的に、複数の正極22のそれぞれは、正極本体(電極本体)223と、正極本体223の周縁から延びる正極タブ(延出片)224と、を有する。詳しくは、複数の正極22のそれぞれは、矩形状の正極本体(電極本体)223と、正極本体223の矩形状の輪郭を構成する一辺から突出する(本実施形態の例では、Z軸方向の端縁からZ軸方向に延びる)正極タブ224と、を有する。本実施形態の正極本体223は、Y軸方向に長い矩形状である。正極本体223では、金属箔221の両面の全域が正極活物質層222に覆われ、正極タブ224では、金属箔221が露出している。即ち、正極タブ224は、正極活物質層222を有しない。
【0049】
正極本体223における正極活物質層222は、X軸方向に対向する(詳しくは、セパレータ25を介して対向する)平坦部233の負極活物質層212よりZ軸方向において小さい。
【0050】
電極体2において、各正極22の正極タブ224は、X軸方向から見て重なっている。本実施形態の正極22では、各正極タブ224は、正極本体223のZ軸方向の一方(
図5における上側)の端縁におけるY軸方向の他方(平坦部本体2331に対する負極タブ2332の位置とは反対側:
図5における左側)の端部からZ軸方向に延びている。この複数の正極本体223のそれぞれから延びている正極タブ224は、束ねられ、外部端子4と集電体5を介して接続されている。本実施形態の正極タブ224の束は、負極タブ2332の束と同様に、溶接によって集電体5と接続されている(
図3参照)。
【0051】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、負極21と正極22との間に配置される。これにより、電極体2において、負極21と正極22とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ25を挟んで対向する負極21と正極22との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0052】
このセパレータ25は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、SiO2粒子、Al2O3粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含んだ無機層を、多孔質膜によって形成された基材の上に設けることで形成されている。本実施形態のセパレータ25の基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0053】
本実施形態のセパレータ25は、正極22を覆っている。具体的に、セパレータ25は、正極本体223全体をX軸方向に挟み込むように覆っている。このセパレータ25は、
図5、
図12及び
図13に示すように、矩形状のものを、間に正極22を挟み込むようにして長尺方向の中央部で折り返し、ターン部を除いた三辺(各縁部)を接合(接着、溶着等)されている。このとき、正極タブ224は、折り返されたセパレータ25から突出し(
図5参照)、前記接合は、正極タブ224を避けて行われている。
【0054】
この正極22を挟み込んだ状態のセパレータ25は、X軸方向から見て矩形状であり、Z軸方向の寸法は、負極21の平坦部233の寸法より大きく、Y軸方向の寸法も、平坦部233の寸法より大きい。上述のように、本実施形態の電極体2では、正極22と、この正極22を挟み込んだ状態のセパレータ25とが、第二の部材26を構成している。
【0055】
複数の第二の部材26のそれぞれは、上述のように、Y軸方向の一方の端縁(ターン部234側の端縁)がターン部(薄肉の部位)234の内側(Y軸方向の奥)に位置するように、各折り返し部23の間に配置されている。換言すると、各第二の部材26のターン部234側の端縁は、X軸方向(第二の部材26が折り返し部23に挟まれている方向)から見て、薄肉の部位(本実施形態の例では、ターン部234)と重なる位置にある。
【0056】
図1~
図4に戻り、ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。このケース3では、ケース本体31と蓋板32とによって内部空間が画定される。ケース3は、この内部空間に、電極体2と共に電解液を収容する。
【0057】
この電解液は、非水溶液系電解液である。この電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO4、LiBF4、及びLiPF6等である。本実施形態の電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF6を溶解させたものである。
【0058】
ケース3は、上記の電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。
【0059】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0060】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁部となる)部位である。本実施形態の閉塞部311は、矩形状である。
【0061】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状を有する。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314とを有する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、X軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0062】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0063】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ部材である。この蓋板32の輪郭形状は、ケース本体31の開口周縁部310(
図2参照)に対応した形状である。即ち、蓋板32は、Y軸方向に長い矩形状の板材である。
【0064】
以上のように構成されるケース3には、負極21の各平坦部233が長壁部313と平行(略平行)となる(即ち、各ターン部234が短壁部314と対向する)ように、絶縁部材6に覆われた状態の電極体2が収容される(
図2~
図4参照)。このとき、ケース3は、電極体2の全体をX軸方向に圧迫(押圧)した状態で該電極体2を収容する。
【0065】
つづら折り状態の負極21の各折り返し部23では、ターン部234及びその近傍のX軸方向の厚さ寸法が、一対の平坦部233のX軸方向の厚さ寸法より若干大きくなっている。このため、電極体2がケース3に収容されることで該ケース3(一対の長壁部313)からX軸方向に圧迫(押圧)されると、各折り返し部23の間において、第二の部材26のY軸方向の両端部(即ち、各折り返し部23のターン部234に近い部位、及びターン部234がX軸方向に隣り合う部位:
図14の領域α参照)がX軸方向に圧迫される。即ち、電極体2は、X軸方向から見て、負極21の長尺方向におけるターン部234の端部位置(詳しくは、負極21の長尺方向において(即ち、長尺な負極21に沿った方向において)折り返し部23の厚さ寸法が小さくなり始める位置)と重なる領域αがX軸方向の両側から押圧された状態でケース3に収容される。
【0066】
外部端子4は、他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。このため、外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。また、外部端子4は、溶接性の高い金属材料によって形成される。例えば、正極の外部端子4は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成され、負極の外部端子4は、銅又は銅合金等の銅系金属材料によって形成される。本実施形態の外部端子4は、少なくとも一部がケース3の外部に露出した状態で蓋板32に取り付けられる。
【0067】
絶縁部材6は、絶縁性を有する樹脂によって形成されている。具体的に、絶縁部材6は、
図2~
図4に示すように、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成されている。本実施形態の絶縁部材6は、ケース3に沿った形の袋状である。
【0068】
以上の蓄電素子1によれば、負極21(第一の部材)において、折り返し部23のターン部234が薄肉の部位を有することで、ターン部234において生じる応力が抑えられる。しかも、ターン部(薄肉の部位)234の内側の負極活物質層212が平坦部233の負極活物質層212より薄いことで、ターン部234において負極21と第二の部材26との間に隙間γが形成される(
図11参照)。これにより、充放電時に生じたガスが該隙間γを通って外部に抜け易く、且つ、電解液が該隙間γを通ってターン部234の内側に位置する第二の部材26の部位や、ターン部234の負極活物質層212に供給され易くなる。
【0069】
また、本実施形態の蓄電素子1では、薄肉の部位(ターン部234)と厚肉の部位(他の部位(本実施形態の例では、平坦部233))とが形成された折り返し部23の間において、X軸方向から見て第二の部材26の端縁がターン部(薄肉の部位)234と重なる位置にあることで(例えば、
図11参照)、第二の部材26において、厚肉の部位(平坦部233)に圧迫(挟持)されている部位の端部位置、即ち、折り返し部23の厚肉の部位(平坦部233)と薄肉の部位(ターン部234)との境界位置に僅かな段差が生じる(
図11の符号β参照)。これにより、折り返し部23の間での第二の部材26の位置ずれが効果的に抑えられる。尚、
図11の部分拡大図は、境界位置の段差を強調して模式的に表している。
【0070】
この場合、X軸方向から見て、第二の部材26のうち薄肉の部位(本実施形態の例ではターン部234)と重なる位置にある部位の厚みT1は、第二の部材26のうち厚肉の部位(本実施形態の例では平坦部233)に圧迫されている部位の厚みT2よりも大きいとよい。これにより、折り返し部23の間での第二の部材26の位置ずれがより効果的に抑えられる。
【0071】
また、本実施形態の蓄電素子1では、電極体2は、X軸方向(第二の部材26の法線方向)から見て、負極21の長尺方向におけるターン部234の端部位置(即ち、本実施形態の例では、薄肉の部位の端部位置)と重なる領域α(
図14参照)がX軸方向の両側から押圧された状態でケース3に収容されている。このため、第二の部材26において、折り返し部23の厚肉の部位(平坦部233)によって圧迫(挟持)されている部位の端部位置により大きな力が加わり、その結果、折り返し部23の間での第二の部材26の位置ずれがより確実に抑えられる。
【0072】
ターン部234において第二の部材26に対向するように金属箔211が露出していると、金属箔211において電流集中に伴うデンドライトの発生及びその成長等が生じ易い。そこで、本実施形態の蓄電素子1では、負極21が、ターン部234に相当する領域に、金属箔211と、該金属箔211における第二の部材25側(折り返し部23の内側)を向いた面に重ねられる負極活物質層212と、を有している、即ち、金属箔211の第二の部材26側を向いた面を負極活物質層212で覆うことで、前記電流集中を抑制し、これにより、金属箔211での前記デンドライトの発生及びその成長等を抑えている。
【0073】
より詳細には、本実施形態の蓄電素子1では、ターン部234と第二の部材26との間に隙間γがあるため(
図11参照)、第二の部材26に含まれる正極22の充放電に伴う膨張収縮によって第二の部材26がターン部234の奥に向けて(
図11における上側に向けて)伸びたり移動したりする可能性がある。このため、第二の部材26がターン部234の金属箔211に近づき、電流集中に伴うデンドライトの発生及びその成長等の新たな課題が発生し得る。しかし、本実施形態のターン部234のように、金属箔211の第二の部材26側を向いた面を負極活物質層212で覆うことで、前記電流集中を抑制し、これにより、金属箔211での前記デンドライトの発生及びその成長を抑えている。さらには、本実施形態のターン部234において、金属箔211に重ねられる負極活物質層212によって隙間γを小さくすることで、第二の部材26の伸びや移動をも抑えられる。
【0074】
本実施形態の負極21のように、ターン部234に負極活物質層212が配置されると、蓄電素子1の充放電に伴って該負極活物質層212が膨張収縮することで該膨張収縮に伴う応力がターン部234において発生する。そこで、本実施形態の蓄電素子1では、負極21の長尺方向(長尺な負極21に沿った方向)において、負極活物質層212のターン部(薄肉の部位)234に相当する部位の密度を、他の部位(本実施形態の例では、平坦部233)の密度より高くしている。このように、ターン部234の負極活物質層212の密度を高くして電解液の液浸透性を低下させることで前記充放電に伴う負極活物質層212の膨張収縮量を抑えることができる。これにより、本実施形態の蓄電素子1では、ターン部234での前記膨張収縮に伴う応力の発生を抑えることができる。
【0075】
また、上記のように、ターン部234の負極活物質層212の密度を平坦部233の負極活物質層212の密度より高くする場合、本実施形態の蓄電素子1のように、負極活物質層212におけるバインダーをポリフッ化ビニリデンとすることが好ましい。これは、バインダーにポリフッ化ビニリデンを用いることで、負極活物質層212と金属箔211との結着力が高まり、これにより、負極活物質層212の剥がれが防がれ、その結果、電極体2において負極活物資層212の剥がれに起因する電流集中が生じ難くなるからである。
【0076】
尚、ターン部234の負極活物質層212の密度を平坦部233の負極活物質層212の密度より高くしない場合には、負極活物質層212のバインダーに、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SBR)-スチレンブタジエンコポリマー(CMC)を用いることが好ましい。これは、バインダーをSBR-CMCとすることで、ターン部234の負極活物質層212の密度を平坦部233の負極活物質層212の密度より高くしなくても、負極活物質層212と金属箔211との結着力の低下が生じず、これにより、負極活物質層212の剥がれに起因する電流集中が生じ難いからである。
【0077】
また、本実施形態の蓄電素子1において、ターン部234では、金属箔211の内側の負極活物質層212がZ軸方向の全域に配置され、ケース3内には、電解液(余剰電解液:セパレータ25が保持しきれずにケース3の下部に溜まっている電解液)が貯留されている。このため、ターン部234が重力方向に延びる姿勢で蓄電素子1が配置される、即ち、蓄電素子1が外部端子4を上方に向けた状態で配置されると、ターン部234の下端で負極活物質層212に接触して電解液(余剰電解液)が該負極活物質層212によって吸い上げられる。これにより、電解液が浸透し難いターン部234の内周側の負極活物質層212に対して電解液が好適に供給される。
【0078】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0079】
上記実施形態の折り返し部23では、薄肉の部位(折り返し部23の内側の面の一部が他の部位より外側の面に向けて凹んでいる部位)が負極21の長尺方向においてターン部234の全域に設けられているが、この構成に限定されない。薄肉の部位は、負極21の長尺方向においてターン部234の一部に設けられていてもよい。かかる構成によれば、ターン部234において生じる応力が抑えられる。
【0080】
また、上記実施形態のターン部234では、金属箔211の両面の負極活物質層212が、平坦部233の負極活物質層212より薄いが、この構成に限定されない。例えば、ターン部234において、金属箔211より内側の負極活物質層212のみが、平坦部233の負極活物質層212より薄くてもよい。
【0081】
かかる構成によっても、負極21(第一の部材)において、折り返し部23のターン部234が、他の部位(平坦部233)より薄肉となる、即ち、金属箔211の両面の負極活物質層212が平坦部233の負極活物質層212と同じ厚さ寸法である場合に比べて薄肉となるため、ターン部234において生じる応力が抑えられる。
【0082】
また、かかる構成によっても、ターン部234の内側の負極活物質層212が平坦部233の負極活物質層212より薄いため、ターン部234において負極21と第二の部材26との間に隙間γが形成される。これにより、充放電時に生じたガスが該隙間を通って外部に抜け易く、且つ、電解液が該隙間を通ってターン部234の内側に位置する第二の部材26の部位や、ターン部234の負極活物質層212に供給され易くなる。
【0083】
上記実施形態の電極体2では、第二の部材26のターン部234側の端縁がターン部234の内側面に当接しているが、この構成に限定されない。第二の部材26のターン部234側の端縁は、ターン部234の内側面と接触していなくてもよい。
【0084】
上記実施形態の負極21(折り返し部23)では、平坦部233とターン部234との境界が段差形状であるが、この構成に限定されない。例えば、
図15や
図16に示すように、ターン部234は、平坦部233とターン部234との境界から厚さ寸法が漸減する構成であってもよい。この場合、負極21の長尺方向において、折り返し部23の厚さ寸法が小さくなり始める位置(薄肉端部位置)が平坦部233とターン部234との境界位置である。
【0085】
上記実施形態の蓄電素子1では、ケース3は、電極体2の全体をX軸方向に圧迫するが、この構成に限定されない。電極体2は、ケース3の内部において、少なくとも、X軸方向から見てターン部234の端部位置と重なる領域αがX軸方向の両側から押圧されていればよい(
図14参照)。この圧迫は、ケース3によって行われてもよく、ケース3の内部に配置される部材によって行われてもよい。
【0086】
例えば、ケース3にエンボス加工が施される等により、ケース3の内面から電極体2に向かって突出する凸部が形成され、当該凸部により電極体2を圧迫してもよい。また、ケース3に収容される絶縁部材6のうち、電極体2を圧迫したい部分に対応する領域の厚みを大きくすることにより、電極体2を圧迫してもよい。さらに、電極体2の外周に絶縁テープを貼りつけることにより電極体2を圧迫してもよい。この場合、電極体2の外周寸法が、絶縁テープを貼りつける前よりも絶縁テープを貼りつけた後のほうが小さくなるように絶縁テープを貼りつけるとよい。
【0087】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0088】
上記実施形態の蓄電素子(例えば電池)1は、例えば
図17及び
図18に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。この蓄電装置11は、複数の蓄電素子1と、蓄電素子1と隣接する複数の隣接部材12と、複数の蓄電素子1及び複数の隣接部材12をひとまとめに保持する保持部材13と、異なる蓄電素子1の外部端子4同士を導通可能に接続するバスバ14と、を備える。また、この蓄電装置11は、複数の蓄電素子1と保持部材13との間に配置されるインシュレータ15等も備える。この蓄電装置11では、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【0089】
保持部材13は、X軸方向に隣接部材12を介して並ぶ複数の蓄電素子1をX軸方向の両側から挟み込む一対の終端部材131と、一対の終端部材131を連結する連結部材132と、を有する。この保持部材13は、各蓄電素子1において少なくとも電極体2の所定領域がX軸方向の両側からケース3を介して押圧(圧迫)されるように複数の蓄電素子1を保持する。ここで、電極体2の所定領域とは、X軸方向から見て、各折り返し部23の薄肉の部位(上記実施形態の例ではターン部234)の端部を含む領域(詳しくは、負極21の長尺方向において折り返し部23の厚さ寸法が小さくなり始める位置と重なる領域、換言すると、ターン部(薄肉の部位)234と厚肉の部位(折り返し部23における薄肉の部位以外の部位)との境界を含む領域)αである(
図14参照)。
【0090】
この電極体2への押圧(圧迫)は、保持部材13によって複数の蓄電素子1が保持されることで加えられる構成でもよく、隣接部材12が蓄電素子1間に配置された状態で蓄電素子1と隣接部材12とが一緒に保持部材13に保持されることで加えられる構成でもよい。
【0091】
かかる構成によっても、複数の蓄電素子1のそれぞれの負極21の各折り返し部23の間に挟まれる第二の部材26において、厚肉の部位に圧迫(挟持)されている部位の端部位置、即ち、折り返し部23の厚肉の部位と薄肉の部位との境界位置に僅かな段差が生じ、これにより、各折り返し部23の間での第二の部材26の位置ずれが効果的に抑えられる。
【符号の説明】
【0092】
1…蓄電素子、2…電極体、21…負極(電極)、21A…山折り線、21B…谷折り線、210…折り返されたときにターン部となる領域、211…金属箔、212…負極活物質層、22…正極(電極)、221…金属箔、222…正極活物質層、223…正極本体、224…正極タブ、23…折り返し部、23A…第一折り返し部、23B…第二折り返し部、231、231A、231B…第一の面、232、232A、232B…第二の面、233、233A、233B…平坦部、2331…平坦部本体、2332…負極タブ、234、234A、234B…ターン部、25…セパレータ、26…第二の部材、3…ケース、31…ケース本体、310…開口周縁部、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、4…外部端子、5…集電体、6…絶縁部材、11…蓄電装置、12…隣接部材、13…保持部材、131…終端部材、132…連結部材、14…バスバ、15…インシュレータ、100…電池、101…負極電極板(長尺電極板)、102…銅箔、103…負極活物質層、104…正極電極板(短冊状電極板)、105…アルミニウム箔、106…正極活物質層、107…セパレータ、108…一体長尺物、S…旋回軸、α…ターン部の端部位置と重なる領域、β…セパレータの段差、γ…隙間