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特許7008296逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/08 20060101AFI20220118BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20220118BHJP
   F02C 7/057 20060101ALI20220118BHJP
   F02C 9/16 20060101ALI20220118BHJP
   F01D 17/04 20060101ALI20220118BHJP
   F01D 17/10 20060101ALI20220118BHJP
   F02G 5/02 20060101ALI20220118BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F02C7/08 B
F01D17/00 Q
F02C7/057
F02C9/16 A
F01D17/00 A
F01D17/04
F01D17/10 G
F02G5/02 B
F02C7/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017193063
(22)【出願日】2017-10-02
(65)【公開番号】P2019065786
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591245185
【氏名又は名称】丸和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079164
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 勇
(72)【発明者】
【氏名】二階 勲
(72)【発明者】
【氏名】立石 仁
(72)【発明者】
【氏名】谷口 学
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 康司
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-066422(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02914011(FR,A1)
【文献】仏国特許出願公開第03032747(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/08
F01D 17/00
F02C 7/057
F02C 9/16
F01D 17/04
F01D 17/10
F02G 5/02
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧の空気を導入する加熱管と、
燃焼用の空気を用い燃料を燃焼させることにより、前記加熱管に導入された前記大気圧の空気を加熱する燃焼器と、
前記加熱管で加熱された空気を膨張させることにより回転運動を生成するタービンと、
前記タービンで生成された回転運動によって動作し、前記タービンで膨張しかつ冷却された空気を圧縮して排出する圧縮機と、
前記タービンで膨張した空気を高温側とし、前記圧縮機から排出された空気を低温側とし、前記高温側から前記低温側へ熱を移動させることにより、前記タービンで膨張した空気を冷却するとともに、前記圧縮機から排出された空気を加熱して前記燃焼用の空気として前記燃焼器へ供給する再生熱交換器と、
前記タービンで生成された回転運動によって動作する負荷と、
前記圧縮機から排出される空気の流量を調整する流量調整弁と、
前記圧縮機と前記流量調整弁との間に設けられ、前記圧縮機から排出される空気を大気中に放出する排気弁と、
大気圧の空気を前記燃焼用の空気として前記燃焼器へ供給する吸気弁及び空気ブロワーと、
を備えた逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置。
【請求項2】
前記タービンは、前記加熱管で加熱された空気を膨張させることにより回転運動を生成する第一のタービンと、この第一のタービンで膨張した空気を更に膨張させることにより回転運動を生成する第二のタービンとからなり、
前記負荷は前記第一のタービン及び前記第二のタービンの一方で生成された回転運動によって動作し、前記圧縮機は前記第一のタービン及び前記第二のタービンの他方で生成された回転運動によって動作する、
請求項記載の逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置。
【請求項3】
前記負荷が発電機である、
請求項1又は2記載の逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置。
【請求項4】
請求項記載の逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置を制御する方法であって、
当該空気ガスタービン装置の起動時には、前記排気弁及び前記吸気弁を開放状態にし、前記流量調整弁を閉鎖状態にし、前記負荷としての発電機を電動機として作動させることにより前記圧縮機の回転数を上げて駆動し、同時に前記空気ブロワーの回転数を徐々に上げながら送られる前記燃焼用の空気の流量に見合う前記燃料を供給し、その後、前記排気弁及び前記吸気弁を徐々に閉め、前記空気ブロワーの回転数を徐々に下げて当該空気ブロワーで送られる前記燃焼用の空気の流量を減じ、同時に前記流量調整弁を徐々に開いて、通常運転への移行を成し、
更に、前記排気弁及び前記吸気弁を閉鎖状態にし、前記流量調整弁を開放状態にした通常運転中に前記発電機の出力を変動させるときには、前記流量調整弁及び前記排気弁の開度を調整することにより、前記圧縮機及び前記タービンの最大効率を得る流量及び圧力比を設定するとともに、前記吸気弁の開度と前記空気ブロワーの回転数とを調整することにより、適正な前記燃焼用の空気の流量を得る、
逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン装置に関し、詳しくは、逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置に関する。以下、各図において、実質的に同一の部分は同一の符号を付すことにより、重複説明を省略する。また、関連技術及び実施形態では、空気ガスタービン装置の一例として、負荷に発電機を用いた空気ガスタービン発電装置を採り上げる。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン装置は、一般に、燃料などの燃焼エネルギーを用い、熱力学サイクルの原理に従い、熱エネルギーを動力に変換する熱機関である。主流となるガスタービン装置は、空気を圧縮する圧縮機と、圧縮された空気を用いて燃料を燃焼させる燃焼器と、燃焼ガスを膨張させるタービンと、を組み合わせたものである。以下に、負荷として発電機を用いたガスタービン発電装置の関連技術1、2について説明する。
【0003】
<関連技術1>図6は、関連技術1のガスタービン発電装置を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0004】
本関連技術1のガスタービン発電装置60は、圧縮機61、再生熱交換器62、燃焼器63、タービン64及び発電機65を備えており、オープンサイクル再生型ガスタービン発電装置とも呼ばれる。ガスタービン発電装置60は、次のように動作する。圧縮機61は、外気601を圧縮し、高圧になった空気を燃焼器63へ送る。燃焼器63は、高圧になった空気を用いて燃料602を燃焼させ、得られた高圧かつ高温の燃焼ガス603をタービン64へ送る。タービン64は、燃焼ガス603を膨張させることによって動力を得る。タービン64には、同軸又は多軸で圧縮機61及び発電機65が連結されている。そのため、タービン64で発生した動力は、一部が圧縮機61の駆動に充てられ、残りが発電機65の駆動に充てられる。
【0005】
タービン64からの排気604は、高温を保っていて、熱エネルギーを有している。この熱エネルギーを有効に利用するため、再生熱交換器62を配することにより、圧縮機61から燃焼器63へ供給される空気の温度を上昇させる。これにより、燃料602の供給量を削減できるので、システム全体の省エネルギーが図れる。
【0006】
<関連技術2>図7は、関連技術2のガスタービン発電装置を示すブロック図である。図8は関連技術2のガスタービン発電装置における動作を示し、図8[A]はP(圧力)-V(体積)線図であり、図8[B]はT(温度)-s(エントロピー)線図である。以下これらの図面に基づき説明する。
【0007】
関連技術1では、圧縮機61→燃焼器63→タービン64の順(ブレイトンサイクル)に作動ガスである外気(空気)601と燃焼ガス603が流れる。これに対して、本関連技術2のガスタービン発電装置70は、燃焼器63→タービン64→圧縮機61の順(逆ブレイトンサイクル)に燃焼ガス603が流れ、再生型逆ブレイトンサイクル発電装置とも呼ばれる(例えば特許文献1参照)。ガスタービン発電装置70は、次のように動作する。燃焼器63は、外気601(大気圧の空気)を用いて燃料602を燃焼させ、得られた大気圧かつ高温の燃焼ガス603をタービン64へ送る。タービン64は、燃焼ガス603を膨張させることによって動力を得る。圧縮機61は、大気圧以下になったタービン64の排気を、再生熱交換器62で燃焼器602に導く外気を加熱した後、これを圧縮して大気圧に戻して排気604として排出する。
【0008】
図8において、各線は損失の無い理想的な逆ブレイトンサイクルを示し、「1」は外気601、「2」は燃焼器63の出口(すなわちタービン64の入口)、「3」はタービン64の出口、「4」は圧縮機61の入口、「5」は圧縮機61の出口の各点である。図8からわかるように、ガスタービン発電装置70によれば、作動媒体が大気圧Po以下の燃焼ガス603であることから、圧縮機61、再生熱交換器62、燃焼器63及びタービン64に耐圧性が要求されないので、構造を簡素化できるとともに、安価で信頼性のある材質を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第4619563号公報(図2等)「ウルトラタービン」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、関連技術2のガスタービン発電装置70では、燃焼器63で発生した高温の燃焼ガス603がタービン64内に導かれることにより、燃焼ガス603に含まれる高温の酸性物質等が燃焼器63、タービン64、再生熱交換器62及び圧縮機61の材質を腐食させるので、耐久性及び安全性に不具合を生ずるという問題があった。これに加え、関連技術2のガスタービン発電装置70には、熱効率の更なる向上が求められていた。
【0011】
そこで、本発明の目的は、耐久性及び安全性を向上し、かつ熱効率をも向上し得る、逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン装置は、
大気圧の空気を導入する加熱管と、
燃焼用の空気を用い燃料を燃焼させることにより、前記加熱管に導入された前記大気圧の空気を加熱する燃焼器と、
前記加熱管で加熱された空気を膨張させることにより回転運動を生成するタービンと、
前記タービンで生成された回転運動によって動作し、前記タービンで膨張しかつ冷却された空気を圧縮して排出する圧縮機と、
前記タービンで膨張した空気を高温側とし、前記圧縮機から排出された空気を低温側とし、前記高温側から前記低温側へ熱を移動させることにより、前記タービンで膨張した空気を冷却するとともに、前記圧縮機から排出された空気を加熱して前記燃焼用の空気として前記燃焼器へ供給する再生熱交換器と、
前記タービンで生成された回転運動によって動作する負荷と、
前記圧縮機から排出される空気の流量を調整する流量調整弁と、
前記圧縮機と前記流量調整弁との間に設けられ、前記圧縮機から排出される空気を大気中に放出する排気弁と、
大気圧の空気を前記燃焼用の空気として前記燃焼器へ供給する吸気弁及び空気ブロワーと、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加熱管→タービン→再生熱交換器(高温側)→圧縮機→再生熱交換器(低温側)→燃焼器と流れる作動媒体が酸性物質等を含まない空気であることにより、高温又は低温の空気が触れる加熱管、タービン、再生熱交換器及び圧縮機の材質に耐食性が要求されないので、高温耐久性及び安全性を向上できる。更に、高温にさらされる加熱管とタービンの高温腐食耐久性が向上するので、燃焼ガスの温度をより高くして燃焼器の発熱温度を上げられるので、熱効率と動力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1の空気ガスタービン発電装置を示すブロック図である。
図2】実施形態2の空気ガスタービン発電装置を示すブロック図である。
図3】実施形態1の空気ガスタービン発電装置の実施例1を示すブロック図である。
図4】実施形態1の空気ガスタービン発電装置の実施例2を示すブロック図である。
図5】実施形態1の空気ガスタービン発電装置の実施例3を示すブロック図である。
図6】関連技術1のガスタービン発電装置を示すブロック図である。
図7】関連技術2のガスタービン発電装置を示すブロック図である。
図8】関連技術2のガスタービン発電装置における動作を示し、図8[A]はP(圧力)-V(体積)線図であり、図8[B]はT(温度)-s(エンタルピー)線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書及び特許請求の範囲における「備える」とは、明示した構成要素以外の構成要素を備える場合も含まれる。「有する」や「含む」なども同様である。本明細書及び特許請求の範囲における「接続する」とは、明示した構成要素以外の構成要素を介して接続する場合も含まれる。例えば、要素Aに接続するとは、要素Aに直接接続する場合の他に、要素Aに要素B等を介して接続する場合も含まれる。「連結する」なども同様である。以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。
【0016】
<実施形態1>図1は、実施形態1の空気ガスタービン発電装置を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0017】
本実施形態1の逆ブレイトンサイクルによる空気ガスタービン発電装置10は、大気圧の空気(外気101)を導入する加熱管11と、燃焼用の空気(燃焼空気102)を用い燃料103を燃焼させることにより、加熱管11に導入された大気圧の空気を加熱する燃焼器12と、加熱管11で加熱された空気を膨張させることにより回転運動を生成するタービン13と、タービン13で生成された回転運動によって動作し、タービン13で膨張しかつ冷却された空気を圧縮して排出する圧縮機14と、タービン13で膨張した空気を高温側とし、圧縮機14から排出された空気を低温側とし、高温側から低温側へ熱を移動させることにより、タービン13で膨張した空気を冷却するとともに、圧縮機14から排出された空気を加熱して燃焼用の空気(燃焼空気102)として燃焼器12へ供給する再生熱交換器15と、タービン13で生成された回転運動によって動作する負荷(発電機16)と、を備えたものである。
【0018】
本実施形態1によれば、加熱管11→タービン13→再生熱交換器15(高温側)→圧縮機14→再生熱交換器15(低温側)→燃焼器12と流れる作動媒体が酸性物質等を含まない空気であることにより、高温又は低温の空気が触れる加熱管11、タービン13、再生熱交換器15及び圧縮機14の材質に耐食性が要求されないので、耐久性及び安全性を向上できる。特に高温の空気が触れるタービン13の材質に高温腐食耐食性が要求されないことは、その効果が大きい。更に、高温にさらさせる加熱管とタービンの高温腐食耐久性が向上するので、燃焼ガスの温度をより高くして燃焼器12の発熱温度を上げられるので、熱効率を向上できる。
【0019】
また、空気ガスタービン発電装置10は、作動媒体が大気圧以下の空気であることから、加熱管11、タービン13、再生熱交換器15及び圧縮機14に耐圧性が要求されないばかりか、作動媒体が酸性物質等を含まない空気であることから耐食性も要求されないので、構造をより簡素化できるとともに、より安価でより信頼性のある材質を用いることができる。
【0020】
次に、本実施形態1の空気ガスタービン発電装置10について、更に詳しく説明する。
【0021】
空気ガスタービン発電装置10は、燃焼器12による間接加熱再生型逆ブレイトンサイクル発電装置であり、燃焼器12内に設置した加熱管11に外気101を導き、燃焼器12で得られる燃焼ガス104で加熱管11を加熱し、高温化した空気をタービン13へ導くことにより、動力を発生させる。
【0022】
タービン13で動力を得るには、タービン13の出口の空気圧力をタービン13の入口の空気圧力より低く保つ必要がある。そのため、タービン13の出口側に圧縮機14を設ける。圧縮機14は、タービン13から排出される空気を低圧に保つとともに、吸引圧縮した空気を流量調整弁17を経由して燃焼空気102として燃焼器12へ送る。
【0023】
タービン13に導かれた高温の空気は、タービン13で断熱膨張による仕事をして、温度が低下するものの、まだ高温を維持している。この熱エネルギーを有効に利用するために、タービン13と圧縮機14との間に再生熱交換器15を設ける。再生熱交換器15では、タービン13から排出された高温の空気と、圧縮機14から流量調整弁17を経由して排出された空気(排気105)とを、熱交換させる。これにより、排気105は高温化して燃焼空気102となり、タービン13から排出された高温の空気は低温となって圧縮機14に導かれる。
【0024】
高温化した燃焼空気102が燃焼器12に導かれて燃料103を燃焼させることにより、更に高温の燃焼ガス104が発生する。燃焼ガス104は、加熱管11内の空気に熱を与えて温度が低下し、排気ガス106となって大気中に排出される。このように高温化した燃焼空気102によって燃焼ガス104が更に高温化されることにより、ガスタービン発電装置10の熱効率が向上するので、燃料消費率を低下できる。
【0025】
タービン13には、同軸又は多軸を介して圧縮機14が連結され、同軸又は歯車装置を介して発電機16が連結されている。タービン13で発生する動力は、一部が圧縮機14の駆動に供され、その残りが発電機16を駆動して電力を発生させる。
【0026】
空気ガスタービン発電装置10には、圧縮機14の排気105を大気に放出するための排気弁18と、外気101を燃焼器12に供給するための吸気弁19とが、設置されている。空気ガスタービン発電装置10の通常運転時では、排気弁18及び吸気弁19を閉鎖状態にし、流量調整弁17を開放状態にする。
【0027】
空気ガスタービン発電装置10の起動時には、通常運転とは逆に、排気弁18及び吸気弁19を開放状態にし、流量調整弁17を閉鎖状態にする。これに伴い、発電機16を電動機として作動させるなどして圧縮機14の回転数を上げて駆動し、この作動過程で得られる燃焼空気102の流量に見合う燃料103を供給する。その後、排気弁18及び吸気弁19を徐々に閉め、同時に流量調整弁17を徐々に開いて、通常運転に移行する。
【0028】
通常運転中に発電機16の出力を変動させるには、流量調整弁17及び排気弁18の開度を調整することにより、圧縮機14及びタービン13の最大効率を得る流量及び圧力比を設定するとともに、吸気弁19の開度を調整することにより、適正な燃焼空気102の流量を得る制御を実施する。つまり、流量調整弁17、排気弁18及び吸気弁19を設けることによって、スタートアップ制御、圧縮機14とタービン13のマッチング制御、及び、最適燃焼空気流量制御が可能になるので、様々な作動条件で高効率な運転を実現できる。
【0029】
<実施形態2>図2は、実施形態2の空気ガスタービン発電装置を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0030】
本実施形態2の空気ガスタービン発電装置20では、実施形態1におけるタービン13(図1)が、加熱管11で加熱された空気を膨張させることにより回転運動を生成する第一のタービン(パワータービン21)と、第一のタービンで膨張した空気を更に膨張させることにより回転運動を生成する第二のタービン(タービン22)とからなる。そして、負荷(発電機16)は、第一のタービン及び第二のタービンの一方(パワータービン21)で生成された回転運動によって動作する。圧縮機14は、第一のタービン及び第二のタービンの他方(タービン22)で生成された回転運動によって動作する。
【0031】
換言すると、本実施形態2の空気ガスタービン発電装置20は、実施形態1におけるタービン13を二基に分離して、加熱管11で加熱された空気が流入し断熱膨張するパワータービン21、及び、パワータービン21の排気が流入し断熱膨張するタービン22としたものである。パワータービン21は、同軸又は歯車装置を介して連結された発電機16を駆動する。タービン22は、同軸又は多軸で連結された圧縮機14を駆動する。
【0032】
空気ガスタービン発電装置20によれば、パワータービン21とタービン22とが同軸でないため、それぞれの回転数を発電機16及び圧縮機14の特性に合わせて設定できるので、要求電力に合致させた高効率の作動が可能となる。
【0033】
なお、本実施形態2では、第一のタービンをパワータービン21、第二のタービンをタービン22としたが、これとは逆に、第一のタービンをタービン22、第二のタービンをパワータービン21としてもよい。すなわち、作動媒体である空気の流れに沿って、タービン22、パワータービン21の順に配置してもよい。この場合も前述と同様の効果を奏する。
【0034】
<実施例1>図3は、実施形態1の空気ガスタービン発電装置の実施例1を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0035】
本実施例1は、石炭火力発電設備である微粉炭燃焼発電装置であり、空気ガスタービン発電装置10における燃焼器12(図1)として、石炭を燃焼する微粉炭燃焼ボイラーシステム30を用いている。微粉炭燃焼ボイラーシステム30は、微粉炭機31、微粉炭ボイラー32等を備えている。
【0036】
石炭301は、微粉炭機31で粉砕されて微粉炭302となり、微粉炭ボイラー32へ送られる。微粉炭302は、微粉炭ボイラー32内で燃焼し、石炭灰303及び高温の燃焼ガス104となる。燃焼ガス104は、微粉炭ボイラー32内に設置された加熱管11を加熱する。これにより、加熱管11内に導入された外気101は、高温の空気となって、タービン13に送られる。その高温の空気がタービン13内で膨張することによって、動力が得られる。タービン13の排気は、再生熱交換器15を経て、タービン13と同軸で連結されている圧縮機14に吸引かつ圧縮される。圧縮機14で圧縮された空気は、流量調整弁17を経て再び再生熱交換器15に送られることにより、タービン13の排気で加熱されて高温の燃焼空気102となる。燃焼空気102は、微粉炭ボイラー32に送られ、微粉炭302の燃焼に用いられる。
【0037】
タービン13には、圧縮機14に加えて、同軸又は歯車装置(図示せず)を介して発電機16が連結されている。タービン13で得られる動力から圧縮機14の駆動に必要な動力を差し引いた残りの動力で、発電機16を駆動して電力を得る。起動時や通常運転中で発電機16の出力を変動させる時は、実施形態1の説明で述べたように、流量調整弁17、排気弁18及び吸気弁19を操作する。
【0038】
更に、空気ガスタービン発電装置10には、空気ブロワー33が吸気弁19の上流に設置されている。流量調整弁17を閉鎖し、排気弁18及び吸気弁19を開放することにより、圧縮機14から大気圧の排気105を放出するとともに、空気ブロワー33で外気101を取り込んで燃焼空気102として微粉炭ボイラー32へ供給することができる。その場合は、逆ブレイトンサイクルの作動媒体である空気と燃焼に供する空気(燃焼空気102)との系統が分離されているため、前者の空気流量を圧縮機14の回転数で、後者の空気流量を空気ブロワー33の回転数で、それぞれ独立して制御できるので、広範囲な運転領域を実現できる。
【0039】
微粉炭ボイラー32の燃焼ガス104の温度を、現在のタービン温度の限界と考えられている1400℃の空気を供給できる程度に上昇できれば、微粉炭ボイラー効率=98%、タービン断熱効率=90%、圧縮機断熱効率=85%、機械効率=98%、発電機効率=98%、再生熱交換器の熱伝達温度差=50℃、タービンの膨張比を1.8~2.2としたとき、在来の微粉炭ボイラー発電装置の熱効率40%を超える、54%の高い熱効率を達成できる。
【0040】
本実施例1における空気ガスタービン発電装置10は、実施形態2の空気ガスタービン発電装置20(図2)に置き換えることもできる。また、空気ガスタービン発電装置10は、本実施例1に示す石炭火力発電に限らず、石油火力発電や天然ガス火力発電など、あらゆるボイラー発電に適用できる。
【0041】
<実施例2>図4は、実施形態1の空気ガスタービン発電装置の実施例2を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0042】
本実施例2は、廃棄物処理発電装置であり、空気ガスタービン発電装置10における燃焼器12(図1)として、乾留ガス化焼却システム40を用いている。乾留ガス化焼却システム40は、乾留ガス化炉41、燃焼炉42(バーナー部と燃焼部とからなる)、サイクロン43、薬剤サイロ44、バグフィルター45、誘引ファン46、煙突47等を備えている。
【0043】
廃棄物401は、乾留ガス化炉41でガス化して乾留ガス402となり、燃焼炉42へ送られる。乾留ガス402は、燃焼炉42内で燃焼し、高温の燃焼ガス104となる。燃焼ガス104は、燃焼炉42内に設置された加熱管11を加熱する。これにより、加熱管11内に導入された外気101は、高温の空気になってタービン13に送られる。その高温の空気がタービン13内で膨張することによって、動力が得られる。タービン13の排気は、再生熱交換器15を経て、タービン13と同軸で連結されている圧縮機14によって吸引かつ圧縮される。圧縮機14で圧縮された空気は、流量調整弁17を経て再び再生熱交換器15に送られることにより、タービン13の排気で加熱されて高温の燃焼空気102となる。燃焼空気102は、燃焼炉42に送られ、乾留ガス402の燃焼に用いられる。
【0044】
排気ガス106は、誘引ファン46によってサイクロン43、薬剤サイロ44、バグフィルター45に導かれ、煙突47から排気403となって排出される。サイクロン43では粒子が分離され、薬剤サイロ44では酸化物などを中和するために中和剤が加えられ、バグフィルター45では微粒子が除去される。
【0045】
なお、タービン13と圧縮機14及び発電機16との関係、並びに、流量調整弁17、排気弁18、吸気弁19及び空気ブロワー33の操作による作用及び効果は、実施例1で説明したとおりである。本実施例2における空気ガスタービン発電装置10は、実施形態2の空気ガスタービン発電装置20(図2)に置き換えることもできる。
【0046】
<実施例3>図5は、実施形態1の空気ガスタービン発電装置の実施例3を示すブロック図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0047】
本実施例3は、バイオマス燃焼発電装置であり、空気ガスタービン発電装置10における燃焼器12(図1)として、バイオマス燃焼システム50を用いている。バイオマス燃焼システム50は、木質チップ供給装置51、木質チップ供給コンベアー52、木質燃焼ボイラー53、サイクロン54、バグフィルター55、誘引ファン56、煙突57、灰運搬コンベアー58等を備えている。
【0048】
木質チップ501は、木質チップ供給装置51及び木質チップ供給コンベアー52によって木質燃焼ボイラー53に送られる。木質チップ501は、木質燃焼ボイラー53内で燃焼し、高温の燃焼ガス104となる。燃焼ガス104は、木質燃焼ボイラー53内に設置された加熱管11を加熱する。これにより、加熱管11内に導入された外気101は、高温の空気になってタービン13に送られる。その高温の空気がタービン13内で膨張することによって、動力が得られる。タービン13の排気は、再生熱交換器15を経て、タービン13と同軸で連結されている圧縮機14によって吸引かつ圧縮される。圧縮機14で圧縮された空気は、流量調整弁17を経て再び再生熱交換器15に送られることにより、タービン13の排気で加熱されて高温の燃焼空気102となる。燃焼空気102は、木質燃焼ボイラー53に送られ、木質チップ501の燃焼に用いられる。
【0049】
排気ガス106は、誘引ファン56によってサイクロン54、バグフィルター55に導かれ、煙突57から排気503となって排出される。サイクロン54では粒子が分離され、バグフィルター55では微粒子が除去される。サイクロン54で分離された粒子からなる灰502は、灰運搬コンベアー58によって集積される。
【0050】
なお、タービン13と圧縮機14及び発電機16との関係、並びに、流量調整弁17、排気弁18、吸気弁19及び空気ブロワー33の操作による作用及び効果は、実施例1で説明したとおりである。本実施例3における空気ガスタービン発電装置10は、実施形態2の空気ガスタービン発電装置20(図2)に置き換えることもできる。
【0051】
<総括>本発明の構成、作用及び効果については、上記各実施形態及び各実施例で述べたとおりであるが、ここで言葉を換えて総括する。
【0052】
本発明に係る空気ガスタービン発電装置は、次の効果を奏する。[1]逆ブレイトンサイクルの作動媒体が不純物を含まない空気(外気)であるため、高温で高速回転するタービンや高温の再生熱交換器の構成材料が腐食して破壊に至ることがなく、装置の安全性と耐久性が向上する。[2]燃焼器を用いた間接加熱による逆ブレイトンサイクル発電装置であるため、高温化によってサイクル効率を向上できるので、在来の逆ブレイトンサイクル発電装置と同様に燃料消費を小さくできる。[3]作動媒体である大気を燃焼器で加熱することにより、排気ガスが低温になるので、熱利用率及び熱効率が向上する。[4]圧縮機の圧力比を低減できることにより、圧縮機の断熱効率が向上するので、圧縮機動力の低減によって、発電装置の省エネルギーに資する。[5]発電装置の全体を負圧にすることにより、構造部品の耐圧強度を低減できるので、装置製作のコストを削減できる。[6]火力発電所に適用すると、ボイラーの燃焼温度を上昇させることにより、熱効率を大幅に向上できるので、燃料消費を低減できる。併せて、単位発電電力当たりの炭酸ガス発生量を低下できるので、地球温暖化抑制に寄与する。
【0053】
以上、上記各実施形態及び各実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態及び各実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態及び各実施例の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る空気ガスタービン装置は、発電用のみならず、機械駆動用にもなり得る。また、本発明に係る間接加熱逆ブレイトンサイクル発電装置は、低圧でクリーンな作動媒体で稼働するので、種々の圧力下で作動する燃焼器で生成する熱エネルギーを熱源とする発電設備に供することができる。特に500℃以上の広範囲な温度レベルの熱エネルギーを、高効率で電力や動力更には同時に発生する熱エネルギーにも変換することができるので、その適用範囲は広い。
【符号の説明】
【0055】
<実施形態>
10,20 空気ガスタービン発電装置(空気ガスタービン装置)
11 加熱管
12 燃焼器
13 タービン
14 圧縮機
15 再生熱交換器
16 発電機(負荷)
17 流量調整弁
18 排気弁
19 吸気弁
21 パワータービン(第一のタービン)
22 タービン(第二のタービン)
101 外気
102 燃焼空気
103 燃料
104 燃焼ガス
105 排気
106 排気ガス
<実施例>
30 微粉炭燃焼ボイラーシステム
31 微粉炭機
32 微粉炭ボイラー
33 空気ブロワー
301 石炭
302 微粉炭
303 石炭灰
40 乾留ガス化焼却システム
41 乾留ガス化炉
42 燃焼炉
43 サイクロン
44 薬剤サイロ
45 バグフィルター
46 誘引ファン
47 煙突
401 廃棄物
402 乾留ガス
403 排気
50 バイオマス燃焼システム
51 木質チップ供給装置
52 木質チップ供給コンベアー
53 木質燃焼ボイラー
54 サイクロン
55 バグフィルター
56 誘引ファン
57 煙突
58 灰運搬コンベアー
501 木質チップ
502 灰
503 排気
<関連技術>
60,70 ガスタービン発電装置
61 圧縮機
62 再生熱交換器
63 燃焼器
64 タービン
65 発電機
601 外気
602 燃料
603 燃焼ガス
604 排気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8