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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】経口摂取素材の免疫賦活活性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/15 20060101AFI20220203BHJP
   A23L 33/125 20160101ALN20220203BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
A23L33/125
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019229435
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021094001
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2020-02-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】596082703
【氏名又は名称】九鬼産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136113
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寿浩
(72)【発明者】
【氏名】太田 美里
(72)【発明者】
【氏名】牧野 利明
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲金▼
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】田渕 圭章
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】Journal of Ethnopharmacology,2019年01月,228,pp.11-17
【文献】Scientific Reports,10,2020年,Article number: 15178,https://www.nature.com/articles/s41598-020-71993-w.pdf,[Online]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A61K,A61P
CAPlus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口摂取素材中のイソマルトースの含有量を測定し、その含有量を指標として前記経口摂取素材を150~200℃に加熱した加熱産物の免疫賦活活性の程度を評価する、経口摂取素材の免疫賦活活性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の消化管における産生を誘導する作用を持つ物質であるイソマルトース加熱産物を指標とする経口摂取素材の免疫賦活活性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人を含む動物の体内は、細菌やウィルス等の外因性の微生物や、腫瘍細胞等の内因性の異物的自己物質などによって常に疾病罹患の危険性に晒されているが、これらに起因する各種の疾病に対抗するための本来的生体防御機構として、免疫系を備えている。この免疫系の機能を強化できれば、疾病に罹患に難くなるばかりか、罹患した疾病を自己免疫機能によって症状軽減ないし治療することが期待できる。
【0003】
そのため、従来から生体の免疫機能を強化、すなわち免疫の賦活を活性する研究が種々行われてきた。例えば特許文献1では、アスコフィラムノドサムから抽出されるアスコフィランを有効成分として含む免疫賦活物質が開示されている。特許文献2には、オゴノリ属に属する海藻の水性溶媒抽出画分にマクロファージ活性化作用があることが開示されている。特許文献3には、紅藻類に属する海藻から抽出した酸性多糖を酵素処理したものにマクロファージ活性化作用があることが開示されている。特許文献4には、ポルフィラン酵素分解物に活性化型インターロイキン12の産出誘導能があることが開示されている。特許文献5には、アマノリ由来の水溶性画分であるポルフィランが腸間膜リンパ節リンパ球のIgAの産出能および血清中IgA濃度を向上させることが開示されている。特許文献6には、アルギン酸分解物であるアルギン酸オリゴマーがヒト末血白血球に作用し腫瘍壊死因子を産出誘導することが開示されている。特許文献7には、海藻由来の不飽和脂肪酸である4,7,10,13-ヘキサデカテトラエン酸、6,9,12,15-オクタデカテトラエン酸、5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸、9,12,15-オクタデカトリエン酸が、好酸球を活性化させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-120707号公報
【文献】特開平5-139988号公報
【文献】特開平6-256208号公報
【文献】特開2002-193828号公報
【文献】特開2005-126429号公報
【文献】特開2005-145885号公報
【文献】特開2005-23028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヒトの体内で産生される免疫力を高める作用を持つサイトカインの1つとして、顆粒球コロニー刺激因子(Granulocyte Colony Stimulating Factor:G-CSF)がある。G-CSFは、骨髄中の顆粒球系幹細胞に作用して分化を促進し、産出された顆粒球の骨髄からの流出を促し、好中球の機能を高める作用を有している。遺伝子組換えヒトG-CSF製剤は、がん化学療法による好中球減少症や再生不良性貧血に伴う好中球減少症に用いられている。例えば、抗ガン剤治療時にみられる白血球減少にはG-CSFなどが投与され臨床効果をあげ、感染症のときの白血球増加症、ガン化学療法後や再生不良性貧血のときの白血球減少症などにおけるG-CSFの効果が研究されているが、生産(精製)に高いコストや技術が必要となる。
【0006】
そこで、本発明者らが鋭意検討の結果、入手が容易な原料から容易に顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の消化管における産生を誘導する作用を持つ、従来にはなかった新たな物質を得られることを知見し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明はG-CSFの消化管における産生を誘導する作用を持つ物質を有効成分とする免疫賦活活性組成物及び免疫賦活活性剤と、当該物質の製造方法、並びに経口摂取素材の免疫賦活活性評価方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明としては、次のものが提案される。
)経口摂取素材中のイソマルトースの含有量を測定し、その含有量を指標として前記経口摂取素材を150~200℃に加熱した加熱産物の免疫賦活活性の程度を評価する、経口摂取素材の免疫賦活活性評価方法。
【発明の効果】
【0008】
イソマルトース加熱産物を経口摂取すると、消化管においてG-CSFの産生が誘導促進される。これにより、消化管における免疫の賦活が活性化され、消化管に起因する種々の疾病の治療や予防等が期待できる。なお、本発明において「消化管からのG-CSF産生誘導作用」とは、伝統医学で言えば「消化管の機能を高める、エネルギー代謝を改善する」ということを意味するものである。
【0010】
生薬や食材などの経口摂取素材の中には、元々イソマルトースを含有しているものがある。そこで、当該経口摂取素材中のイソマルトース含有量を測定することで、その経口摂取素材を加熱調理等して摂取した場合の、G-CSFによる免疫賦活活性に寄与する程度を予め予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】各糖の賦活活性の程度を示す棒グラフである。
図2】温度別活性効果を示す棒グラフである。
図3】イソマルトースの含有量と免疫賦活活性効果との関係性を示すグラフである。
図4】経口摂取素材の賦活活性効果を示すグラフである。
図5】天然ハチミツの効果確認試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の免疫賦活活性組成物ないし免疫賦活活性剤の有効成分は、イソマルトース加熱産物である。イソマルトース加熱産物とは、イソマルトースを所定温度で加熱することで、免疫力を高める作用を持つサイトカインである顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の消化管上皮細胞からの産生を誘導する作用を持つ物質に変化した物質である。ここでの消化管とは、小腸(十二指腸、空腸、回腸)および大腸(盲腸、結腸、直腸)を意味する。
【0013】
当該イソマルトースから変化した物質は、詳細は定性できていないが、質量平均分子量約84万の高分子化合物である。この高分子化合物の特徴を調べるためにトリフルオロ酢酸で加水分解したところ、グルコース、フルクトース以外の単一の糖類が含まれていた。
【0014】
イソマルトース加熱産物は、トール様受容体(TLR)のTLR2、TLR4のいずれか一方又は双方を刺激し得る。トール様受容体とは、免疫系を担う細胞の表面にある受容体タンパク質で、さまざまな病原体を認識して自然免疫を作動させる作用がある。1型から11型まで知られており、2型がグラム陽性菌の細胞壁に存在するリポテイコ酸など、4型がグラム陰性菌の細胞壁に存在するリポ多糖などを認識する。
【0015】
イソマルトース加熱産物は、イソマルトースを150~200℃で加熱することで得られる。加熱温度が低いと物質変化が生じず、免疫の賦活活性効果が得られない。一方、加熱温度が高すぎると、イソマルトースの炭化が進行して免疫賦活活性効果が失効してしまう。150~200℃の範囲において、加熱温度はできるだけ高いことが好ましい。加熱時間を短縮できるからである。例えば150℃で加熱する場合は、4時間以上の加熱時間を要するが、200℃であれば15分以上の加熱でよい。できるだけ短時間で、且つ炭化を防いで高い賦活活性効果を得るためには、加熱温度は170~190℃とすることが好ましい。
【0016】
本発明のイソマルトース加熱産物を有効成分とする免疫賦活活性組成物は、そのままもしくは他の添加物等と混合して、懸濁状、エマルジョン状、シロップ状、エキス状、液状などの経口組成物とすることができる。又は、これらの免疫賦活活性組成物を適宜常法により加工して、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの経口免疫賦活活性剤とすることもできる。
【0017】
免疫賦活活性組成物ないし免疫賦活活性剤に添加する添加剤としては、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、大豆レシチン、脂肪酸エステルなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いることができる。
【0018】
また、免疫の賦活活性と共に他の栄養素も補給するため、砂糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等の酸味料、ビタミンA群:レチノール、レチナール(ビタミンA1)、デヒドロレチナール(ビタミンA2)、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB群:チアミン塩酸塩、チアミン硫酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ピリドキシン(ビタミンB6)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸類、ニコチン酸類、パントテン酸類、ビオチン類、コリン、イノシトール類、ビタミンC群:ビタミンC酸又はその誘導体、ビタミンD群:エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ジヒドロタキステロール、ビタミンE群:ビタミンE又はその誘導体、ユビキノン類、ビタミンK群:フィトナジオン(ビタミンK1)、メナキノン(ビタミンK2)、メナジオン(ビタミンK3)、メナジオール(ビタミンK4)、その他、必須脂肪酸(ビタミンF)、カルニチン、フェルラ酸、Γ-オリザノール、オロト酸、ビタミンP類(ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン)、ビタミンU等のビタミン類、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、リン、マンガン、ヨウ素等のミネラル類、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等や、それらのクエン酸塩、或いはピロリドンカルボン酸のごときアミノ酸類、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサペンタエン酸(DPA)、トコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等の脂肪酸、脂質、塩分、タンパク質などから選ばれる1種又は2種以上を添加することもできる。
【0019】
さらに、嗜好性を向上するために、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、プルラン等の増粘多糖類(トロみ成分)、カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカルシウム等のミネラル吸収補助剤、ソルビトール、キシリトール、ラフィノース、グルコース、マルチトール等の糖アルコールなどから選ばれる1種又は2種以上を添加することもできる。
【0020】
また、公知の食品・飲料・ハーブ・生薬などの経口摂取素材にイソマルトース加熱産物を添加することで、免疫を活性する機能性食品や機能性飲料とすることもできる。
【0021】
食品としては、例えばサラダなどの生鮮調理品;ステーキ、ピザ、ハンバーグなどの加熱調理品;野菜炒めなどの炒め調理品;トマト、ピーマン、セロリ、ニガウリ、ニンジン、ジャガイモ、及びアスパラガスなどの野菜及びこれら野菜を加工した調理品;クッキー、パン、ビスケット、乾パン、ケーキ、煎餅、羊羹、プリン、ゼリー、アイスクリーム類、チューインガム、クラッカー、チップス、チョコレート及び飴等の菓子類;うどん、パスタ、及びそば等の麺類;かまぼこ、ハム、及び魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品;チーズ、クリーム、及びバターなどの乳製品;みそ、しょう油、ドレッシング、ケチャップ、マヨネーズ、スープの素、麺つゆ、カレー粉、みりん、ルウ、シーズニングスパイス等の調味料類;豆腐などの大豆食品;こんにゃく;並びにサプリメントなどを挙げることができる。食品は、好ましくは、ルウ(例えばカレー用若しくはシチュー用のもの)、シーズニングスパイス、又はサプリメント等が挙げられる。
【0022】
飲料としては、例えばコーヒー飲料;ココア飲料;前記の野菜から得られる野菜ジュース;グレープフルーツジュース、オレンジジュース、ブドウジュース、及びレモンジュース等の果汁飲料;緑茶、紅茶、煎茶、及びウーロン茶等の茶飲料;ビール、ワイン(赤ワイン、白ワイン、又はスパークリングワインなど)、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、及びリキュール類等のアルコール飲料;乳飲料;豆乳飲料;流動食;並びにスポーツ飲料などを挙げることができる。
【0023】
ハーブとしては、例えばアーティチョーク、アニス、アルファルファ、アロエ、アンジェリカ、イブニングプリムローズ、エキナセア、エルダーフラワー、オートムギ、オレガノ、カモミール、ガラナ、カルダモン、キャラウェイ、クランベリー、クローブ、ゴールデンシール、ゴツコラ、コリアンダー、シナモン、ジャスミン、ジンジャー、ジンセン、スペアミント、セントジョーンズワート、タイム、ティー、ディル、ハイビスカス、バジル、パッションフラワー、バレリアン、ビルベリー、フェンネル、ペパーミント、ベルガモット、ホップ、ボリジ、マカ、マテ、マリーゴールド、ミント、ユーカリ、ヨヒンベ、ラベンダー、ローズヒップ、ローズマリー、リコリス、ルイボス、レモンバーム、レモングラス、レモンピール等が挙げられる。
【0024】
生薬としてはアキョウ(阿膠)、インヨウカク(淫羊かく)、オウギ(黄耆)、オウセイ(黄精)、カイクジン(海狗腎)、カシュウ(何首烏)、カンゾウ(甘草)、カントウカ(款冬花)、カンレンソウ(旱蓮草)、キバン(亀板)、キバンキョウ(亀板膠)、キュウシ(韮子)、ギョクチク(玉竹)、キンオウシ(金櫻子)、クコシ(枸杞子)、クセキ(狗脊)、コウイ(膠飴)、ゴウカイ(蛤かい)、コクズ(黒豆)、コツサイホ(骨砕補)、コトウニク(胡桃肉)、ゴマ(胡麻)、コロハ(胡蘆巴)、サヨウ(鎖陽)、サンヤク(山薬)、ジオウ(地黄)、シカシャ(紫河車)、シャクヤク(芍薬)、シャジン(沙参)、ジョテイシ(女貞子)、シオン(紫苑)、セイヨウジン(西洋参、花旗参)、セッコク(石斛)、センプクカ(旋復花)、センボウ(仙茅)、ソウキセイ(桑寄生)、ソウジン(桑椹)、ソウハクヒ(桑白皮)、ゾクダン(続断)、タイシジン(太子参)、タイソウ(大棗)、テンモンドウ(天門冬)、トウキ(当帰)、トウシツリ(潼しつ藜)、トウジン(党参)、トウチュウカソウ(冬虫夏草)、トシシ(菟絲子)、トチュウ(杜仲)、ナンシャジン(南沙参)、ニクジュヨウ(肉じゅ蓉)、ニンジン(人参)、バクモンドウ(麦門冬)、ハゲキテン(巴戟天)、ビャクゴウ(百合)、ビャクジュツ(白朮)、ビャクゼン(白前)、ビャクブ(百部)、ビワヨウ(枇杷葉)、ベッコウ(鼈甲)、ベッコウキョウ(鼈甲膠)、ホコツシ(補骨脂)、マオウ(麻黄)、ヤクチニン(益智仁)、リュウガンニク(竜眼肉)、ロクジョウ(鹿茸)、ロッカク(鹿角)、ロッカクキョウ(鹿角膠)、ロッカクソウ(鹿角霜)等が挙げられる。
【0025】
免疫賦活活性組成物、免疫賦活活性剤、及び機能性食品や機能性飲料中のイソマルトース加熱産物の含有量は特に制限されず、1~100重量%、好ましくは5~90重量%、より好ましくは10~80重量%とすればよい。イソマルトース加熱産物の含有量が多いほど、免疫賦活活性機能は高くなる。
【0026】
また、イソマルトースを本来的に含有している経口摂取素材であれば、これを150~200℃で加熱することで、そのまま機能性食品等とすることもできる。このときの免疫賦活活性効果も、その本来的に含有しているイソマルトースの含有量に比例する。したがって、経口摂取素材のイソマルトース含有量を測定することで、免疫賦活活性用の機能性食品としての有効性の程度を推量評価することができる。
【0027】
イソマルトースを本来的に含有している代表的な経口摂取素材としては、例えばハチミツ、発酵食品(味噌・醤油・酒・酒粕・甘酒・酢・チーズ・ヨーグルト)、シラップ、オリゴ糖などが挙げられる。中でも、身近で入手し易く、且つイソマルトースの含有量が比較的多いハチミツ、シラップ、オリゴ糖が好ましく、オリゴ糖としてはイソマルトオリゴ糖がより望ましい。
【実施例
【0028】
(糖別比較試験)
先ず、賦活活性の有効成分として糖に着目し、糖の種類別に活性効果を比較検討した。糖として、フルクトース、グルコース、スクロース、ツラノース、マルトース、トレハロース、イソマルトース、メレジトースを用い、それぞれ賦活活性の程度を次の方法で測定した。
【0029】
予め秤量した試験管(15mL)に、各種糖類の水溶液100mg/mLを100μL入れ、80℃で一晩乾固した。180℃に温めた恒温機の中にサンプルの入った試験管を立てたまま置き、再度温度が180℃に上がった時点で60分加熱した。加熱後の試験管の重さを測定し、加熱後の重さの減少量を算出した。その後、試験管に熱水4mLを加え、沸騰水中に立てて加熱産物を溶かし、凍結乾燥した。加熱産物熱水100mg/mLとなるように水を添加して、使用時まで-20℃に保存した。
【0030】
免疫賦活活性評価試験用として、マウス結腸上皮由来MCE301細胞(富山大学生命科学研究センター、田渕圭章 教授より供与)を使用した。培養は底面積75 cm2のフラスコを用いて、37℃、5% CO条件下で培養した。5%ウシ胎児血清(FBS、Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、USA)、100U/mL penicillin+100μg/mL streptomycin (ナカライテスク) を含むDulbecco’s modified Eagle medium/Ham’s F-12 (1: 1) (DMEM/F-12) 培地 (Sigma) を増殖培地として使用し、細胞が80~90%コンフルエントにまで増殖したところで、0.25% trypsin (Sigma) /0.02% EDTA・2Naを用いて細胞を剥離し、継代を行った。
【0031】
MCE301細胞を96穴プレートに4×10個/wellの密度で播種し、37℃、5% COで24時間インキュベートした。無血清培地に交換し39℃、5% COで72時間培養した。各種サンプル含有培地に交換し、39℃、5% COで24時間培養した。その後、poly-L-lysine (Sigma) でコートした別の96穴プレートに培地を50 μL/wellずつ移し、38℃で乾固させた。
【0032】
プレートをリン酸緩衝生理食塩水(PBS、0.15M、pH7.4)で洗浄し、ブロックエース(DSファーマバイオメディカル、大阪)を60 μL/well添加し、室温で2時間静置した。Rabbit anti-G-CSF抗体(Boster Biological Technology、Pleasanton、CA、USA)を、ブロックエースをPBSで10倍に希釈した溶液で500倍に希釈し、50μL/well添加し室温で2時間静置した。PBSで5回洗浄した後、donkey anti-rabbit IgG(HRP) (ab205722、Abcam、Cambridge、UK) を、ブロックエースをPBSで10倍に希釈した溶液で2000倍に希釈した液50 μL/well添加し室温で2時間静置した。PBSで5回洗浄後、ABTS Solution (Roche Applied Science、Upper Bavaria、Germany) を加え、マイクロプレートリーダーで405nmにおける吸光度を測定した。なお、G-CSF濃度は本方法による405nmの吸光度と相関することが確認されている。
【0033】
その試験結果を図1に示す。なお、各図におけるゼロ指標とは、各糖サンプルを含まない培地を意味し、免疫賦活活性効果がゼロの指標として用いている。一方、陽性指標(ポジティブコントロール)とは、ヤマゴボウマイトジェン(Pokeweed mitogen:PWM、100μg/mL、Sigma)をサンプルとして用いたものである。ヤマゴボウマイトジェンは免疫系細胞を刺激する活性を持つことが従来から知られており、本発明のポジティブ効果を比較するための指標として用いている。
【0034】
図1の結果から明らかなように、イソマルトース加熱産物のみが405nmにおける吸光度、すなわちG-CSF濃度が高く、他の糖ではG-CSFの消化管における産生誘導作用が得られないことが確認された。
【0035】
(加熱温度評価)
そこで、イソマルトースの加熱温度を種々変更して、活性効果の発現温度について評価した。具体的には、イソマルトース加熱産物水(以下、サンプルと称す)の濃度を250μg/mLとして表1に示す条件で加熱した以外は、上記糖別比較試験と同様の方法で405nmにおける吸光度を測定した。その結果を図2に示す。なお、本試験では各サンプルを別日程で行ったため、賦活活性の程度を直接対比できるように、各サンプル結果におけるゼロ指標の値を0、陽性指標の値を100として、吸光度を力価(%)に換算している。
【0036】
【表1】
【0037】
図2の結果から明らかなように、イソマルとースを120℃で加熱してもG-CSFは殆ど生産されておらず、賦活活性効果が得られないことが分かった。一方、150℃以上で加熱すれば、賦活活性効果が得られることが分かった。特に、180℃で加熱した場合にG-CSF濃度が高かった。これにより、170~190℃で加熱することが好ましいことがわかった。
【0038】
(濃度依存評価)
続いて、イソマルトースの含有量と免疫賦活活性効果との関係性について評価した。具体的には、各サンプルを表2に示す濃度とした以外は、上記糖別比較試験と同様の方法で405nmにおける吸光度を測定した。その結果を図3に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
図3の結果から、イソマルトースの含有量と免疫賦活活性効果とは比例関係にあることが確認された。
【0041】
(経口摂取素材試験)
続いて、本来的にイソマルトースを含有している食材(経口摂取素材)における免疫賦活活性効果について確認した。具体的には、表3に示す組成の模擬ハチミツを調製し、上記糖別比較試験と同様の方法で405nmにおける吸光度を測定した。その結果を図4に示す。なお、表3に示す数値は重量%である。
【0042】
【表3】
【0043】
図4の結果から、イソマルトースを含有している経口摂取素材をそのまま加熱しても、免疫賦活活性効果が得られることが確認された。一方、イソマルトースを含有していない経口摂取素材では免疫賦活活性効果が得られないことも確認された。
【0044】
(イソマルトース含有量依存性試験)
そこで、種々の天然ハチミツ(アカシア、キバナオウギ、メハジキ、リュウガン、ボダイジュ、クコ、レンゲ、ヒマワリ、ナツメ由来の各天然ハチミツ)を用いて、その賦活活性効果について評価した。その結果を図5に示す。評価方法は上記糖別比較試験と同様である。
【0045】
なお、各天然ハチミツの糖類含有量は、次のように測定した。ハチミツ熱水抽出エキスをそれぞれ30%アセトニトリルにより100mg/mLに調製し、0.45μmのフィルターで濾過したものを以下のHPLC条件で測定した。
カラム:COSMOSIL Sugar-D column 4.6×250mm(ナカライテスク)
移動相:水:アセトニトリル (15:85);1.0mL/min
温度:35℃
検出:示差屈折率
サンプル注入量:10μL
【0046】
図5の結果から、イソマルトースの含有量が多いほど、免疫賦活活性効果が高くなる傾向が確認された。これにより、経口摂取素材のイソマルトース含有量を測定することで、免疫賦活活性用の機能性食品としての有効性の程度を推量評価することができることがわかった。



図1
図2
図3
図4
図5