(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】紡績繊維および医療用途向けたて編生地およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20220118BHJP
D04B 21/10 20060101ALI20220118BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61F2/08
D04B21/10
D04B21/00 A
(21)【出願番号】P 2019517190
(86)(22)【出願日】2017-06-12
(86)【国際出願番号】 US2017037023
(87)【国際公開番号】W WO2017214620
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-02-27
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】518438254
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステイト ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】レヴィンソン ハワード
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィス ジェイムズ ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウォード ドン
(72)【発明者】
【氏名】ラスト ジョン
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-507025(JP,A)
【文献】実開昭62-015591(JP,U)
【文献】米国特許第04074543(US,A)
【文献】特表2012-512000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0224703(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103590177(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0208360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F2/00
2/02-2/80
3/00-4/00
D04B1/00-39/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たて編機によって形成されたたて編生地であって、前記たて編生地は、
第1の編成順序を用いて縦方向に形成された第1の編成部分を有し、前記第1の編成部分は、幅を有し、
第2の編成順序を前記縦方向に形成された第2の編成部分を有し、前記第2の編成部分は、前記縦方向において長さ方向に延びる少なくとも2枚のストリップを有し、前記少なくとも2枚のストリップは、該ストリップの長さ方向縁に沿って互いに取り外され、
前記第2の編成部分は、前記第1の編成部分と同一の幅を有し、
前記第1の編成部分と前記第2の編成部分は、前記縦方向に順次交互に位置するとともに1組の連続した紡織ストランドで形成さ
れ、
前記たて編生地は、組織を再建する際に使用できる生体適合性植え込み型メッシュを形成する、たて編生地。
【請求項2】
前記第1の編成順序と前記第2の編成順序は、少なくとも2つの案内筬に関して同一であり、少なくとも2つの案内筬について互いに異なる、請求項1に記載のたて編生地。
【請求項3】
前記第2の編成順序は、各ストリップの前記長さ方向縁のところを除き前記第1の編成順序と同一である、請求項1または2に記載のたて編生地。
【請求項4】
前記第2の編成順序は、2つの案内筬についてのみ前記第1の編成順序とは異なっている、請求項1~3のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項5】
前記たて編生地は、少なくとも4つの案内筬を有するラッシェルたて編機で形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項6】
前記第1の編成部分および前記第2の編成部分は、ダイヤモンド形の開口部を備えた筬ラッシェルたて編メッシュから成る、請求項1~5のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項7】
前記第1の編成順序は、次の順序、すなわち、
GB2(3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2)//
GB3(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB4(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB5(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
GB6(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
から成り、前記第2の編成順序は、次の順序、すなわち、
GB2(3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2)//
GB3(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB4(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1)//
GB5(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
GB6(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3)//
から成り、前記第1の編成順序は、前記第1の編成部分を作るために少なくとも2回繰り返され、前記第2の編成順序は、前記第2の編成部分を作るために少なくとも2回繰り返される、請求項1~6のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項8】
前記第2の編成部分は、前記縦方向に延びる少なくとも3枚の互いに平行なストリップを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項9】
前記第2の編成部分は、前記縦方向に延びる少なくとも4枚の互いに平行なストリップを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項10】
前記第2の編成部分は、前記縦方向に延びる少なくとも5枚の互いに平行なストリップを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項11】
各ストリップは、2cm以下の幅を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項12】
前記紡織ストランドは、合成マルチフィラメント糸である、請求項1~11のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項13】
前記紡織ストランドは、合成シングルフィラメントである、請求項1~11のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項14】
前記紡織ストランドは、紡績糸である、請求項1~11のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項15】
たて編生地を製造する方法であって、
たて編機で縦方向において第1の編成順序で1組の紡織ストランドを編成して第1の編成部分を形成するステップを含み、前記第1の編成部分は、幅を有し、
前記たて編機で前記縦方向において第2の編成順序で1組の紡織ストランドを編成して第2の編成部分を形成するステップを含み、前記第2の編成部分は、前記第1の編成部分と同一の幅を有し、
前記第2の編成部分は、前記縦方向において長さ方向に延びる少なくとも2枚のストリップを有し、前記少なくとも2枚のストリップは、該ストリップの長さ方向縁に沿って互いに取り外され、
前記第1の編成順序と前記第2の編成順序を前記縦方向において順次交互に編成するステップを含
み、
各第2の編成部分の前記ストリップをそれぞれの第1の編成部分相互間で幅方向に裁断して少なくとも2つのメッシュ片を形成するステップを含む、方法。
【請求項16】
前記第1の編成順序と前記第2の編成順序は、少なくとも2つの案内筬について互いに異なる、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の編成順序と前記第2の編成順序は、少なくとも1つの案内筬について同一である、請求項
15または
16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の編成順序は、少なくとも2つの案内筬について前記第1の編成順序とは異なる、請求項
15~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記たて編生地は、少なくとも4つの案内筬を有するラッシェルたて編機で形成される、請求項
15~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の編成部分および前記第2の編成部分は、ダイヤモンド形開口部を備えたラッシェルたて編メッシュから成る、請求項
15~
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の編成部分は、前記縦方向に延びる少なくとも3枚のストリップを有する、請求項
15~
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の編成部分は、前記縦方向に延びる少なくとも4枚の互いに平行なストリップを有する、請求項
15~
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の編成順序は、次の順序、すなわち、
GB2(3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2)//
GB3(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB4(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB5(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
GB6(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
から成り、前記第2の編成順序は、次の順序、すなわち、
GB2(3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2)//
GB3(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB4(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1)//
GB5(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
GB6(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3)//
から成り、前記第1の編成順序は、前記第1の編成部分を作るために少なくとも2回繰り返され、前記第2の編成順序は、前記第2の編成部分を作るために少なくとも2回繰り返される、請求項
15~
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記紡織ストランドは、合成マルチフィラメント糸である、請求項
15~
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記紡織ストランドは、合成シングルフィラメントである、請求項
15~
23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ストリップを幅方向に裁断
するステップは、前記第1の編成部分および2つの組をなす少なくとも2つの延長部で形成されたメッシュ本体を有するメッシュ片を形成
し、少なくとも2つの延長部の各組は、前記第1の編成部分の各側でそれぞれの第2の編成部分によって形成される、請求項
15~
25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ストリップを幅方向に裁断するステップは、各第2の編成部分の前記ストリップをそれぞれの第1の編成部分相互間の幅方向中間で裁断す
る、請求項
15~
26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記たて編生地は、組織を再建する際に使用できる生体適合性植え込み型メッシュを形成する、請求項
15~
27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記紡織ストランドは、紡績糸である、請求項
15~
23または
26~
28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
組織を再建する際に使用できる生体適合性植え込み型メッシュであって、
縦方向において第1の編成順序を用いて形成されたメッシュ本体を有し、前記メッシュ本体は、幅を有し、
前記メッシュ本体の第1の側から前記縦方向において互いに平行に延びる少なくとも2つのメッシュ延長部から成る第1の組を有し、前記少なくとも2つのメッシュ延長部は、第2の編成順序を用いて形成され、
前記第1の編成部分と前記第2の編成部分は、単一の組をなす紡織ストランドから連続的に形成されている、
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項31】
前記第2の編成順序は、各メッシュ延長部の前記長手方向縁に沿ってのみ前記第1の編成順序とは異なっている、請求項
30に記載の
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項32】
前記第2の編成順序は、2つの案内筬についてのみ前記第1の編成順序とは異なっている、請求項
30または
31に記載の
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項33】
前記メッシュ本体の第2の側から互いに平行に延びるとともに少なくとも前記少なくとも2つのメッシュ延長部から成る第1の組から見て前記縦方向に沿って逆に延びる前記少なくとも2つのメッシュ延長部から成る第2の組を更に有し、少なくとも2つのメッシュ延長部から成る前記第2の組は、前記第2の編成順序を用いて形成されている、請求項
30~
32のいずれか一項に記載の
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項34】
前記たて編み生地は、少なくとも4つの案内筬を有するラッシェルたて編機で形成されている、請求項
30~
33のいずれか一項に記載の
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項35】
前記メッシュ本体および前記メッシュ延長部は、ダイヤモンド形開口部を備えたラッシェルたて編メッシュから成る、請求項
30~
34のいずれか一項に記載の
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項36】
前記第1の編成順序は、次の順序、すなわち、
GB2(3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2)//
GB3(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB4(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB5(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
GB6(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
から成り、前記第2の編成順序は、次の順序、すなわち、
GB2(3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2/3‐2)//
GB3(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/3‐3/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/0‐0)//
GB4(2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1/2‐2/1‐1)//
GB5(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/1‐1/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/4‐4)//
GB6(2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3/2‐2/3‐3)//
から成り、前記第1の編成順序は、前記第1の編成部分を作るために少なくとも2回繰り返され、前記第2の編成順序は、前記第2の編成部分を作るために少なくとも2回繰り返される、請求項
30~
35のいずれか一項に記載の
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項37】
前記メッシュ延長部から成る第1の組および前記メッシュ延長部から成る第2の組は各々、少なくとも3つのメッシュ延長部を含む、請求項
30~
36のいずれか一項に記載の
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項38】
前記メッシュ延長部から成る第1の組および前記メッシュ延長部から成る第2の組は各々、少なくとも4つのメッシュ延長部を含む、請求項
30~
37のいずれか一項に記載の
生体適合性植え込み型メッシュ。
【請求項39】
前記少なくとも2枚のストリップは、該ストリップの長さ方向縁に沿って互いに取り外され、前記たて編生地は、前記ストリップ相互間に位置していて前記縦方向において長さ方向に延びるスリットを有し、前記スリットの長さは、前記第2の編成部分の長さとほぼ同じである、請求項1~14のいずれか一項に記載のたて編生地。
【請求項40】
前記第2の編成順序は、前記第2の編成順序における隣り合う前記紡織ストランドの接合部の数が、前記第1の編成順序における隣り合う前記紡織ストランドの接合部の数よりも少ない点で、前記第1の編成順序と異なる、請求項1~14のいずれか一項に記載のたて編生地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容、すなわち本発明は、たて編生地および医療用途向きおよび種々の工業用布用途向きのたて編生地の種々の実施形態を製造する関連方法に関する。一用途では、本発明は、引張り応力を植え込み型メッシュと周りの組織との間の広い領域に分散させ、それにより耐久性を増大させるとともに現在利用可能な装置および方法と比較して患者にとって良好な手術結果または外科的成果をもたらすラッシェルたて編構造の植え込み型メッシュに関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2016年6月10日に出願された米国特許仮出願第62/348,211号の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
メッシュは、多くの医療用途で用いられており、かかる医療用途としては、組織、例えば皮膚、脂肪、筋膜および/または筋を修復しまたは再建するためのインプラントとしての用途が挙げられる。かかるメッシュに関する共通の一用途は、ヘルニアの修復、例えば腹壁ヘルニア修復における用途である。ヘルニアは、通常は臓器または組織を限定されたスペース内に保持する壁に生じた開口部または弱体部を通る臓器または組織の突出である。最も一般的には、ヘルニアは、腹部領域で起こるが、ヘルニアは、体全体にわたって多くの場所で起こることがあり、かかる場所としては、頭部、胸郭/胸部、骨盤、鼠径部、腋窩、ならびに上肢および下肢が挙げられるが、これらには限定されない。伝統的に、外科的ヘルニア修復には2つの主要な形式、すなわち、開放式ヘルニア根治手術と腹腔鏡下ヘルニア根治手術が存在する。両方の形式では、ヘルニア欠陥部が閉じられて周囲の組織によって補強される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要は、詳細な説明において以下に更に説明される一通りの技術的思想を紹介するために提供されている。この発明の概要は、特許請求の範囲に記載された本発明の重要なまたは必須の特徴を特定するものではなく、また特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定する際の助けとして用いられるものでもない。
【0005】
一実施形態では、たて編機によって形成されたたて編生地は、第1の編成順序を用いて縦方向に形成された第1の編成部分と、第2の編成順序を縦方向に形成された第2の編成部分とを有し、第2の編成部分は、縦方向において長さ方向に延びる少なくとも2枚のストリップを有し、少なくとも2枚のストリップは、これらのストリップの長さ方向縁に沿って互いに取り外される。第2の編成部分は、第1の編成部分と同一の幅を有し、第1の編成部分と第2の編成部分は、縦方向に順次交互に位置するとともに単一の組をなす連続した紡織ストランドで形成されている。
【0006】
一実施形態では、たて編生地を製造する方法は、たて編機で縦方向において第1の編成順序で1組の紡織ストランドを編成して第1の編成部分を形成するステップを含み、第1の編成部分は、幅を有し、この方法は、たて編機で縦方向において第2の編成順序で1組の紡織ストランドを編成して第2の編成部分を形成するステップを更に含み、第2の編成部分は、第1の編成部分と同一の幅を有する。第2の編成部分は、縦方向において長さ方向に延びる少なくとも2枚のストリップを有し、少なくとも2枚のストリップは、これらストリップの長さ方向縁に沿って互いに取り外される。第1の編成順序と第2の編成順序は、縦方向において順次交互に編成されてある長さの生地を形成する。
【0007】
一実施形態では、植え込み型メッシュは、縦方向において第1の編成順序を用いて形成されたメッシュ本体を有し、メッシュ本体は、幅を有する。植え込み型メッシュは、メッシュ本体の第1の側から縦方向において互いに平行に延びる少なくとも2つのメッシュ延長部から成る第1の組を更に有するのが良く、少なくとも2つのメッシュ延長部は、第2の編成順序を用いて形成され、第1の編成部分と第2の編成部分は、単一の組をなす紡織ストランドから連続的に形成される。
【0008】
以下の図を参照して本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のたて編生地の例示の実施形態を示す図である。
【
図2A】
図1の実施形態を製造するために実行可能な例示の編成順序を示す図である。
【
図2B】
図1の実施形態を製造するために実行可能な例示の編成順序を示す図である。
【
図2C】
図1の実施形態を製造するために実行可能な例示の編成順序を示す図である。
【
図3】
図2A~
図2Cに示された編成順序を用いて製造されたたて編生地の別の実施形態を示す図である。
【
図5】たて編生地から成る植え込み型メッシュの一実施形態を示す図である。
【
図6A】本発明のたて編生地の別の実施形態を製造する別の例示の編成順序を示す図である。
【
図6B】本発明のたて編生地の別の実施形態を製造する別の例示の編成順序を示す図である。
【
図6C】本発明のたて編生地の別の実施形態を製造する別の例示の編成順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
腹壁ヘルニア修復に関する現在における推奨策は、メッシュの使用を含む。種々の要因がヘルニアの再発の原因になっているが、本発明者は、メッシュの破損―劣化によるか機械的破損によるかのいずれか―が顕著な問題のままであることを認識した。本発明者は、ヘルニア修復失敗の問題の1つの原因は、メッシュの構成であるということを認識したが、と言うのは、先行技術のメッシュは、典型的には、修復野に縫合糸で縫い込まれる織物材料片であるからである。これは、問題を生じさせる。と言うのは、この材料は、ほどけるようになる場合がありかつ/あるいは縫合糸相互間の結び部と材料が滑る場合があるからである。同様な問題は、他形式のメッシュまたは布インプラントについて生じる。
【0011】
関連分野における問題および課題を認識して、本発明者は、一体構造の植え込み型メッシュを作ることができる素材としてのたて編生地を開発した。本発明の植え込み型メッシュは、生地中の別々のかつ/あるいは切断されたストランドの数を最小限に抑えるとともに縫合糸がメッシュを患部に締結する必要性をなくすことによって可能性のある破損箇所を最小限に抑える。本発明者は、開発したたて編生地が多数の考えられる実施形態および考えられる用途を有することを更に認識しており、かかる用途としては、種々の医療用途および工業用布用途が挙げられる。例示の工業用布用途としては、輸送および/または貨物拘束用途向きの工業用網、船舶または水産用途、農業用途および水耕用途向きの網などが挙げられるが、これらには限定されない。
【0012】
図示のように、たて編生地100は、合理的に互いに異なる編成順序を用いて作られた2つの互いに異なる編成部分21,22を有し、各編成部分21,22は、生地100の幅Wにわたって延びている。第1の編成部分21は、第1の編成順序31を用いて形成され、第2の編成部分22は、第2の編成順序32を用いて形成されており、同じ紡織ストランドが第1の順序31と第2の順序32の両方に用いられている。2つの編成部分は、生地100の長さLに沿う縦方向に交互に配置されるとともに生地100の特定の利用用途に基づく必要に応じて生地に沿う種々の間隔長さを置いたところに交互に配置されるのが良い。第1の編成部分21は、幅Wにわたって連続的に連結された生地部分を形成するよう構成されているが、第2の編成部分22は、たて方向において互いに平行にかつ長さ方向に延びる少なくとも2枚のストリップ23を形成することによって特徴付けられる。ストリップ23は、これらの長さL''に沿って互いに取り外され、その結果、生地100は、ストリップ23相互間に位置していてストリップ23の長さL''にわたって延びるスリット26または穴を有し、この長さL''は、第2の編成部分22の長さとほぼまたはほとんど同じである。
【0013】
ストリップ23は、第1の編成部分21から延びており、これらストリップは、第1の編成部分21の編成順序またはパターンを全体として続けるのが良く、但し、ストリップ23の長さ方向縁27に沿ってパターンにのみ変化がある。かくして、第2の編成順序32の幾つかの部分は、第1の編成順序31と同一であるのが良く、すなわち、ある特定の案内筬によって実行されるパターンは、第1の編成順序31と第2の編成順序32の両方について同一のままであるのが良い(
図2Bおよび
図2C)。かくして、ストリップ23の中間部分28(
図3参照)は、第1の編成部分21について用いられた同一のパターンを途切れない状態で続けるのが良い。ある特定の実施形態では、第1の編成順序31と第2の編成順序32との間の移行の際に作られる変化だけ(またこの逆の関係が成り立つ)がストリップ23の長手方向縁27を編成する案内筬に関している。一実施形態では、第1の編成順序31は、ストリップ23を作るのに必要な案内筬の数だけについて第2の編成順序32とは異なっている。かくして、ストリップ23相互間のスリット26を横断するパターンを実行する案内筬が変更される。さらに、変わる紡織ストランド17の数は、第2の編成部分22のストリップ23の数で決まる。
【0014】
たて編生地100は、単一の組をなす紡織ストランドから編成されるとともにストランドはこれらの長さに沿うどの場所においても切断されないので、開示する生地100は、優れた耐久性を有するとともにたて編生地100が一定の幅を有するところから2枚または3枚以上のストリップ23を形成するところまで変化する編成部分21,22相互間の接合部のところを含むほつれまたは破損を回避する。意図した利用用途に応じて、開示するたて編生地100は、任意の数のたて編パターンまたは順序を用い、任意のフィラメント、フィラメント糸(シングルフィラメントまたはマルチフィラメント糸を含む)または紡績糸を含む任意形式の紡織ストランドを用いて構成できる。同様に、紡織ストランドは、合成材料のものであっても良く天然材料のものであっても良い。例えば、医療用途向きのたて編生地100のある特定の実施形態では、紡織ストランド17は、合成生体適合性材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートポリエステル、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリグラクチン、ポリグリコール酸、トリメチレンカーボネート、ポリ‐4‐ヒドロキシブチレート(P4HB)、ポリグリコリド、ポリアクチド、およびトリメチレンカーボネート(TMC)のものであるのが良いが、これらには限定されない。他の実施形態では、紡織ストランド17は、生体適合性および生物学的材料でつくられるのが良く、かかる材料としては、ヒトの真皮、ブタの真皮、ブタの腸、ウシの真皮、およびウシの心膜が挙げられるが、これらには限定されない。紡織ストランド17はまた、合成および生物学的材料の組み合わせから成っていても良い。
【0015】
たて編生地100は、緊密に編成された固体のように見える生地であっても良くあるいは全体を通じて開口部または細孔のあるオープンワークニット、例えばメッシュであっても良い。
図1~
図3は、ダイヤモンド形開口部を有するオープンワークメッシュであるたて編生地100の一実施形態を例示している。
図6A~
図6Cは、互いに異なる編成順序が用いられて第1および第2の編成部分21,22を形成するたて編生地100の別の実施形態を例示している。種々の他の実施形態のうちのどれもが可能であり、図示の編成パターンは、第1および第2の編成部分21,22を形成する単なる例示の仕方であり、第2の編成部分は、2枚または3枚以上のストリップを有する。
【0016】
図1を参照すると、たて編生地100が示されており、第1の編成部分21は、ストリップ23を有する第2の部分22の長さL''と比較して比較的短い長さ方向寸法を有する。生地は、幅Wを有し、第1の編成部分21と第2の編成部分22の両方は、同一の幅Wにまたがっておりまたはこの幅を少なくともほぼ同じようにまたいでいる。図示の実施形態では、第2の編成部分22は、7枚のストリップ23を有し、各ストリップは、W''として表された同一の幅を有する。他の実施形態では、第2の編成部分22は、2枚または3枚以上の多くのストリップ23、例えば3枚のストリップ、4枚のストリップ、5枚のストリップなどで形成されるのが良い。例えば、第2の編成部分22は、ちょうど2枚のストリップに分割されるのが良く、したがって、たて編生地100の各第2の編成部分22にはちょうど1つのスリット26を有する。ストリップは、幅Wよりも小さい任意の幅W''を有しても良い。ストリップは、互いに等しい幅W''のものであっても良く、あるいは、ストリップ23の幅は、生地の端から端まで様々であって良い。
図3は、第2の編成部分22がW
1''の幅の狭いストリップおよび幅W
2''の幅の広いストリップを含む様々な幅のストリップ23から成る実施例を提供している。
【0017】
第1の編成部分21および第2の編成部分22の長さは、様々であって良い。
図1の実施形態では、第1の編成部分21の長さL'は、第2の編成部分22の長さL''よりも比較的短い。しかしながら、長さL,L'は、任意の値のものであって良くかつ互いに対して任意の比率を有していても良い。かくして、他の実施形態では、第1の編成部分21の長さL'は、第2の編成部分22の長さL''よりも比較的長くても良く、あるいは、第1および第2の編成部分21,22のそれぞれの長さL'および長さL''は、互いに同一であっても良い。同様に、長さL'と長さL''は、生地全体の長さLに沿って変化していても良い。
【0018】
図2A~
図2Cは、
図1の例示の実施形態を形成するために使用できる編成順序を例示している。
図2A~
図2Cに示された例示の実施形態は、少なくとも4つの案内筬を有するラッシェルたて編機を用いて構成されている。
図6A~
図6Cに示された例示の実施形態もまた、少なくとも4つの案内筬を有するラッシェルたて編機を用いて構成されている。例えば、実施形態は、1列針筬または2列針筬ラッシェルたて編機またはトリコット編機で編成されるのが良い。ある特定の実施形態では、電子案内筬制御機が2つの交互に位置する編成部分の長さのゆえに好ましいと言える。たて編機は、図示の第1の編成順序31と第2の編成順序32を所定の間隔で交互に配置するよう構成されている。
【0019】
図2Bおよび
図2Cは、第1の編成順序31および第2の編成順序32を示す順序図であり、これら順序の各々は、他の編成順序への移行前に縦方向において任意の回数繰り返されるのが良い。例えば、
図2Cでは、第1の編成順序31は、2回繰り返され、次に第2の編成順序が続き、例えば8回繰り返される。各編成順序31,32は、5つの案内筬(GB2~GB6)を含む繰り返し可能な10ステッチパターンを含む。
図2Bは、各案内筬GB2~GB6についての順序を示している。
図2Bおよび
図2Cから理解できるように、第1の編成順序31と第2の編成順序32は、5つの案内筬のうちの3つについて同一である。GB2、GB3、およびGB5は、第1の編成順序31と第2の編成順序32の両方において同一のパターンを実行する。パターンは、案内筬のうちの2つGB4およびGB6について変化する。すなわち、第1の編成順序31では、GB4およびGB6が5つ目のステッチごとに隣りの針を横切り、その目的は、隣りの列のストランドと繋がりまたは接合部を作ることにある。これは、メッシュの幅全体にわたってメッシュ結び部を形成する。第2の編成順序32では、案内筬GB4、GB6によって作られた横結び目は、落とされ、ステッチは、第2の編成順序32の長さについて同一の針列上に留まる。
【0020】
図2Cは、案内筬ステッチパターンの繰り返しを示す編成順序31,32を図示したもう1つの図である。種々の実施形態では、各案内筬によって作られたステッチは、生地100の任意の幅Wを作るために任意の回数にわたって繰り返されるのが良い。さらに、縁のステッチは、縁をどのように仕上げるかに応じて図示のステッチとは異なっていても良い。
図1の実施形態に示されているように、生地縁19は、第1の編成部分21および第2の編成部分22について同一のままである一定かつ連続のステッチ順序によって形成されるのが良く、かかるステッチ順序は、ステップ23の長さ方向縁27を形成するために用いられるのと同一のまたは類似のステッチ順序であって良い。
【0021】
図2Cの底部のところに示されたカラーレッジャ(color ledger)は、上記において示したステッチ順序に対応しており、この場合、案内筬レッジャの中の色付きボックスは、このレッジャの上方の針列中にステッチと垂直方向に整列しており、このステッチの存在を示している。案内筬GB2上の紡織ストランドは、緑色で示され、案内筬GB3上の紡織ストランドは、濃い青色で示され、案内筬GB4上の紡織ストランドは、黄色で示され、案内筬GB5上の紡織ストランドは、明るい青色で示され、案内筬GB6上の紡織ストランドは、紫色で示されている。国際的用途の目的のため、これらの色は、ディファレンシャルハッチング(differential hatching )としてレッジャ中に示されている。分かりやすくするために、
図2Cの最も左側の部分は、案内筬GB2上の紡織ストランドから隔てられた案内筬GB4、GB6だけの紡織ストランド17を示しており、したがって、案内筬GB4、GB6によって実行されるパターンをより明確に見ることができるようになっている(と言うのは、その部分が第1の編成順序31と第2の編成順序32との間で変化するからである)。当業者であれば理解されるように、実際の具体化例では、案内筬GB4、GB6上の紡織ストランドは各々、案内筬GB2上のパターンに続く紡織ストランドと織り合わされているが、その案内筬GB2は、分かりやすく目的で最も左側の2つの列上には示されておらず、したがって、順序31,32の観点または特徴が一層視認できるようになっている。
【0022】
図3は、第1および第2の編成順序の別の実施形態または実行例を示している。図示の実施形態では、第2の編成部分22は、様々な幅W
1''およびW
2''のストリップ23を含み、第2の編成順序は、所定の回数(図示の実施形態では、少なくとも3回の繰り返しである)について順次繰り返され、これに対し、第1の編成順序21は、第2の編成順序32に戻る前に2回しか繰り返されない。かくして、第1の編成部分21の長さは、ストリップを有する第2の編成部分22よりも非常に短い。上述したように、長さのこの関係は、第1の編成部分21と第2の編成部分22が任意の長さを有するとともに互いに対して任意の間隔で繰り返されるよう変更可能である。
【0023】
図4は、第1の編成部分21と第2の編成部分22が交互に並んだ順序を示すたて編生地100の一部分を示している。上述したように生地は、任意の医療、工業および/または工業用布用途向きに使用できる。一実施形態では、たて編生地100は、植え込み型メッシュ1として使用できる。すなわち、ストリップ23は、メッシュ本体7から延びるメッシュ延長部3を形成するよう使用されるのが良く、メッシュ本体7は、第1の編成部分21によって形成される。たて編生地100は、例えば
図4に示されている患者の体内において生体適合性でありかつ外科的に植え込み可能である個々の植え込み型生地片またはメッシュインプラントを形成するようその長さWに沿って裁断されるのが良い。
図4の実施形態では、破線36a,36bは、たて編生地100が植え込み型メッシュ1を作るために裁断できる例示の裁断場所を示しており、この植え込み型メッシュの実施形態が
図5に示されている。
【0024】
図5は、たて編生地100から成る植え込み型メッシュ1の一実施形態を示している。植え込み型メッシュ1は、メッシュ本体7およびメッシュ本体7の互いに反対側から延びる多数のメッシュ延長部3を有する。各メッシュ延長部3の端のところには固定器具5が設けられ、この固定器具は、図示の実施形態では、外科用針である。各メッシュ延長部3は、メッシュ本体7の一部であってかつこれから延びる第1の端11を有する。各メッシュ延長部3は、固定器具5に取り付けられた第2の端12を更に有する。各メッシュ延長部3は、第1の端11と第2の端12との間の長さL''および幅W''を有する。
【0025】
植え込み型メッシュは、生地100を第2の編成部分22に沿って、例えば、破線36a,36bに沿って幅方向に裁断することによって形成される。例えば、生地100の幅W全体にわたって切れ目が入れられ、それによりストリップ23の各々を裁断する。例えば、切れ目は、例えば加熱状態のナイフによって各第2の編成部分21の長さL''に沿う中間で作られても良く、その結果、各延長部の端12は、ほつれることがない。それにより、生地100は、数枚の植え込み型メッシュ1に裁断される。
【0026】
メッシュ本体7は、周囲縁9を有し、この周囲縁からメッシュ延長部3が延びている。少なくとも2つのメッシュ延長部3がメッシュ本体7から延びており、種々の実施形態では、植え込み型メッシュ1は、任意の数の追加のメッシュ延長部3を有することができる。
図5の実施形態では、植え込み型メッシュ1は、メッシュ本体7の周囲縁9から互いに逆に延びる互いに反対側に一対ずつ配置されたメッシュ延長部3を有する。
図5では、メッシュ延長部3は、周囲縁9のうちの2つのみから延びている。
【0027】
植え込み型メッシュ1のメッシュ延長部3は、植え込み時に周囲の組織との多数の固着箇所の実現を可能にするのに十分な長さL’を有する。固着箇所は、メッシュ延長部が移動または離開に対して止める力をもたらすために周囲の組織のある部分を通過する位置である。多数の固着箇所は、2つ以上の固着箇所を意味している。例えば、メッシュ延長部3を固定器具5により組織中に織り込みまたは縫い込むことによって各メッシュ延長部3を多数回にわたって周囲の組織に通すことができる。加うるに、幾つかの実施形態では、メッシュ延長部3の遠位端12は、骨に固定されるのが良い。それにより、本発明の植え込み型メッシュ1は、植え込み時、これが破損しないで引張り応力を含む相当大きな力に耐えることができるよう構成されている。この器具および植え込み方法は、組織欠陥部の耐久性のある再建または修復、例えば腹部ヘルニアまたは乳房再建を可能にするのに特に利用できる。
【0028】
適正に植え込み可能なメッシュ1は、従来型固着方法によって周囲組織に縫着される先行技術の器具と比較して大きな引張り応力に耐えることができる。効果を出す一力分散機構は、摩擦抵抗であり、これは、植え込み型メッシュ1と周囲組織との多くの接触箇所全体に分布される。植え込み型メッシュ1と組織との間の摩擦抵抗の大きさは、多くの要因で決まる場合があり、かかる要因としては、引張り応力の分布面積、メッシュを組織に押し込む力、メッシュと組織の相対粗さ、固定方法、および組織中へのメッシュの生体内組み込み度が挙げられるが、これらには限定されない。摩擦抵抗が固着箇所または接触箇所の各々のところで引張り応力よりも大きい限り、メッシュは、移動しまたは離開することはない。
【0029】
例示の実施形態では、メッシュ延長部3の長さL'は、少なくとも10cmである。別の実施形態では、メッシュ延長部3の長さL''は、少なくとも16cm、少なくとも18cmまたは少なくとも20cmであり、これは、最高25cm、30cm、35cmまたは40cmまでであるのが良く、更に別の実施形態では、メッシュ延長部3は、ある特定の組織への固定またはメッシュ延長部3の遠位端12を骨に固定することができるよう40cmを超える長さのものであっても良い。しかしながら、ある特定の用途では、メッシュ延長部は、例えば植え込み型メッシュ1が小さくかつ/あるいは大きな力に耐えない組織の修復または再建向きである場合、10cm未満であるのが良い。植え込み型メッシュのメッシュ延長部3は、全てが同一の長さである必要はない。一実施形態では、少なくとも1つのメッシュ延長部は、長さが少なくとも18cm、少なくとも20cmまたは少なくとも22cmであるが、植え込み型メッシュは、長さが18cm未満または長さが22cmを超える追加のメッシュ延長部を有しても良い。
【0030】
メッシュ延長部3は、種々の幅のうちの任意のものを有することができる。
図5の実施形態の場合、各メッシュ延長部3の幅W''は、0.2cm~3cm以上であるのが良い。例えば、腹部ヘルニア修復に関して本発明による実験および研究結果により判明したこととして、0.5cm~2cmの幅W''を有するメッシュ延長部3が有利であり、これらメッシュ延長部は、ヘルニア修復に使用可能な望ましい耐久性結果をもたらし、かかるメッシュ延長部は、0.5cm、0.75cm、および1cmの幅W''を有するメッシュ延長部3を含む。当業者であれば理解されるように、様々な幅W''を有する多くの延長部3が使用可能であり、延長部3の数は、各延長部の幅W''および生地100の全体幅Wで決まることになる。
【0031】
図5では、植え込み型メッシュ1は、10個のメッシュ延長部3を有するものとして示されており、5つのメッシュ延長部3がメッシュ本体7の互いに反対側で周囲縁9から延びている。上述したように、メッシュ延長部3は、メッシュ本体7の周囲縁9のうちの1つまたは2つ以上から延びるのが良い。加うるに、種々の実施形態は、種々の数のメッシュ延長部3を有することができる。例えば、植え込み型メッシュは、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、10個、12個、14個またはそれ以上のメッシュ延長部を有することができる。必要なメッシュ延長部の数および幅は、当業者に知られている特性、例えば組織欠陥または再建部位のサイズおよび場所ならびに組織欠陥または再建部位に対する周囲組織の利用可能性または近接性で決まる場合がある。
【0032】
図6A~
図6Cは、生地100を形成するために使用できる第1および第2の編成順序31,32の別の例示の実施形態を示している。
図6Bおよび
図6Cに示されているように、第1および第2の編成順序31,32は、一般に、4つの案内筬GB2~GB5を採用する。案内筬のうちの2つGB2およびGB4により形成されるステッチパターンは、第1の編成順序31と第2の編成順序32との間では同一のままである。残りの2つの案内筬GB3およびGB5のステッチパターンは、第1の編成順序31から第2の編成順序32に変化する。すなわち、案内筬GB3およびGB5上で実行されるステッチパターンは、第1の編成順序31中の2つの隣り合う針列相互間で前後に交互に位置する状態から第2の編成順序32中の単一の針列に沿ってのみ縫う状態に移る。それにより、GB3およびGB5は、
図6Aおよび
図6Cに示されているそれぞれのストリップ23の長さ方向縁27を形成する。
図6Cは、生地の幅全体にわたって案内筬ステッチパターンの繰り返し状態を示す編成順序31,32の色分け絵画図である。国際的用途の目的上、これらの色は、ディファレンシャルハッチングとしてレッジャ内に示されている。種々の実施形態では、各案内筬により作られるステッチは、生地100の任意の幅Wを作るために任意の回数にわたって繰り返し可能である。
図6Cの底部のところのカラーレッジャは、上記において示したステッチ順序に対応しており、この場合、案内筬レッジャ内の色付きボックスは、このレッジャの上方の針列中にステッチと垂直方向に整列している。案内筬GB2上の紡織ストランドは、赤色で示され、案内筬GB3上の紡織ストランドは、緑色で示され、案内筬GB4上の紡織ストランドは、青色で示され、案内筬GB5上の紡織ストランドは、黄色で示されている。図示のように、第1の編成順序31と第2の編成順序32との間の案内筬GB2およびGB3に関する変化は、第2の編成部分中にストリップ23を形成する。かくして、スリットが案内筬GB3およびGB5によって形成された隣り合うステッチ相互間に形成され、これらスリットは、それぞれのストリップ23の長さ方向縁27を形成する。
【0033】
本明細書に対応した原文英文明細書における“including”(訳文では「~を含む」としている場合が多い)、“comprising”(「~を有する」)、または“having”(「~を備える」)およびこれらの変形語は、その後に列記する要素およびその均等例ならびに追加の要素を含むことを意味している。ある特定の要素を「含む」、「有する」または「備える」とのように記載された実施形態はまた、ある特定の要素について“consisting essentially of”(「本質的にある特定の要素から成る」)および“consisting of”(「ある特定要素から成る」)と見なされる。
【0034】
本明細書における値の範囲の記載は、もし別段の指定がなければ、その範囲に含まれる別々の値の各々を個別的に参照する簡潔にした方法として役立つに過ぎず、別々の値の各々は、あたかもこれが個別的に本明細書に記載されているかのように明細書に組み込まれる。例えば、濃度範囲が1%~50%と記載されている場合、例えば2%~40%、10%~30%、または1%~3%などの値が本明細書において明示的に列挙されているということが意図されている。これらは、具体的に意図されている内容の例であるに過ぎず、記載された最も小さい値と最も大きな値との間(この最も小さな値と最も大きな値を含む)の数値の考えられるあらゆる組み合わせは、本明細書に明示的に記載されているものと見なされるべきである。