(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】胆汁酸吸着剤およびアディポネクチン分泌促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/737 20060101AFI20220203BHJP
A23L 17/60 20160101ALI20220203BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20220203BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220203BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
A61K 36/03 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61K31/737
A23L17/60 Z
A23L33/125
A61P1/16
A61P43/00 111
A61K36/03
(21)【出願番号】P 2017204913
(22)【出願日】2017-10-24
【審査請求日】2020-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2016208170
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】室田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】鬘谷 要
(72)【発明者】
【氏名】本 三保子
(72)【発明者】
【氏名】仲村 麻恵
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 一泰
(72)【発明者】
【氏名】上岡 秀也
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0063112(KR,A)
【文献】特開2006-320320(JP,A)
【文献】特開2005-110675(JP,A)
【文献】日本水産學會誌,68巻4号,2002年07月,p.579-581
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 36/00-36/9068
A61P 1/00- 1/18
A61P 43/00
A23L 17/00-17/60
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻に由来する多糖類の加水分解物を含む胆汁酸吸着剤であって、該加水分解物が、18000Daの重量平均分子量を有するヒジキ由来精製脱アルギン酸多糖類加水分解物である、胆汁酸吸着剤。
【請求項2】
胆汁酸吸着剤の製造方法であって、
二酸化炭素ガスの存在下で
、海藻または該海藻に由来する多糖類を含有する水性媒体を加圧および加熱して、該海藻に由来する多糖類の加水分解物を得る工程を含み、
該加水分解物が、18000Daの重量平均分子量を有するヒジキ由来精製脱アルギン酸多糖類加水分解物である、
方法。
【請求項3】
胆汁酸吸着剤の製造方法であって、
海藻または該海藻に由来する多糖類を食酢媒体中で加熱、あるいは加圧および加熱して、該海藻に由来する多糖類の加水分解物を得る工程を含み、
該加水分解物が、18000Daの重量平均分子量を有するヒジキ由来精製脱アルギン酸多糖類加水分解物である、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の胆汁酸吸着剤を含む食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁酸吸着剤およびアディポネクチン分泌促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
胆汁酸は、肝臓内でコレステロールから合成され、腸内において脂質の消化および吸収を助けた後、約95%は腸管の回腸下部より再吸収されて、門脈を介して再び肝臓へ戻り、再利用されている。そして、胆汁酸を吸着しその再吸収を抑制することで、胆汁酸の腸管循環が阻害され、コレステロールから胆汁酸の新規合成を亢進させるため、胆汁酸が肝臓中・血中コレステロール値を減少させることはよく知られている。
【0003】
しかしながら、近年の研究により、胆汁酸の機能として脂質やコレステロールの消化吸収機能以外に、胆汁酸が胆汁酸特異的な受容体に結合することで、胆汁酸自身の合成吸収を制御しているだけでなく、糖・脂質代謝、エネルギー代謝の制御を行っていることが分かってきた。このエネルギー代謝亢進能によりエネルギー消費を高めることが可能になれば、副作用が少なく、肥満や糖尿病の治療が進むことが期待されている。
【0004】
胆汁酸の排泄に効果的に働く成分の代表的な食品としては、食物繊維がある。食物繊維は、水溶性と不溶性に分類されるが、特に水溶性食物繊維には、胆汁酸吸着剤と同様に胆汁酸と結合し、胆汁酸を排泄させる作用をもつ。特に、海藻には食物繊維が豊富に含まれている。ワカメやコンブに含まれる代表的な水溶性食物繊維であるアルギン酸は、胆汁酸の排泄を促進し、さらに血糖値の上昇抑制、コレステロール抑制および肥満細胞抑制の効果を生じ、糖尿病改善が期待されることが報告されている(非特許文献1)。
【0005】
非特許文献2には、ワカメ、ヒジキ、マコンブ、スサビノリの水溶性および不溶性食物繊維によるコール酸、ケノデオキシコール酸、デオキシコール酸のグリシンまたはタウリン抱合型の吸着作用の検討結果が示されている。非特許文献3には、ワカメ、コンブ、ヒジキ、ノリなどの海藻を試料として胆汁酸との結合を調べたところ、コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸との結合の実験で、水溶性食物繊維が不溶性食物繊維に比べ、いずれの胆汁酸の吸着も全般的に大きかった旨が記載されている。
【0006】
アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるサイトカイン(アディポサイトカイン)の一種であり、脂肪細胞の肥大化に伴って分泌量が減少する。その結果引き起こされる低アディポネクチン血症は、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームなどの発症または進展に深く関与し得る。アディポネクチン分泌を増大させる食材として、食物繊維が含まれる海藻類が挙げられる。
【0007】
例えば、ポルフィランは、紅藻類スサビノリ由来の水溶性食物繊維であり硫酸化多糖の一種でもある。非特許文献4において、II型糖尿病モデルのKK-Ayマウスにポルフィランを供餌した場合、セルロースを含む飼料を供餌させた対照群に対し、血中インスリン濃度およびインスリン抵抗性指数の有意な低下とアディポネクチン分泌量の有意な増加とが示された。本文献では、インスリン抵抗性指数の低下と、ポルフィラン分泌量の増加については、マウスの腸内細菌の種類と量の変化との関連で考察されている。
【0008】
ところで、海藻に含まれる食物繊維は多糖類であり、多糖類の生理作用は、分子量と相関関係がみられることが報告されている(非特許文献5および非特許文献6)。
【0009】
特許文献1には、海藻類を二酸化炭素の共存する水性媒体中で、加圧下、高温に加熱することで、海藻高温抽出組成物を製造する方法が記載され、そして該方法により、海藻類に含まれるアルギン酸などの多糖類が低分子量化されること、ならびにそのような方法で得られた産物(低分子量化された多糖類)は粘性が低くなり、その生理活性として血圧降下作用が確認されたことがさらに記載されている。特許文献2には、コンドロイチン硫酸を二酸化炭素の共存する水性媒体中で、加圧下、高温に加熱して加水分解すること、および加水分解により低分子量化されたコンドロイチン硫酸がα-グルコシダーゼ阻害活性を示すことが記載されている。特許文献3には、アルギン酸が海藻(褐藻類)から得られることが好ましいこと、アルギン酸を二酸化炭素の共存する水性媒体中で、加圧下、高温に加熱して加水分解すること、ならびにそのように加水分解したアルギン酸で抗糖尿病作用が確認されたことが記載されている。
【0010】
胆汁酸吸着作用について、さらに良好な材料の探索がなされている。また、アディポネクチン分泌促進作用についても、さらに良好な材料の探索がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2006-320320号公報
【文献】特開2012-12430号公報
【文献】特開2015-33372号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】New Diet Therapy,30(4),45-51頁,2015年
【文献】日本水産学会誌,68(4)巻,579-581頁,2002年
【文献】海藻食物繊維と胆汁酸の結合および脂質の消化吸収への影響(https://kaken.nii.ac.jp/d/p/08660247.ja.html)
【文献】J. Nutr. Sci. Votaminol,58巻,14-19頁,2012年
【文献】International Journal of Biological Macromolecules,45巻,42-47頁,2009年
【文献】Carbohydrate Polymers,87巻,1206-1210頁,2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、食品に利用可能な胆汁酸吸着作用を示す材料および該材料を含む食品を提供することを目的とする。
【0014】
本発明はまた、食品に利用可能なアディポネクチン分泌促進作用を示す材料および該材料を含む食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、海藻に由来する多糖類の加水分解物を含む胆汁酸吸着剤を提供する。
【0016】
上記胆汁酸吸着剤について、1つの実施形態では、上記海藻に由来する多糖類は硫酸化多糖類を含む。
【0017】
上記胆汁酸吸着剤について、1つの実施形態では、上記加水分解物は、
アラメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~306000Daの範囲内である加水分解物;
ガゴメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~860000Daの範囲内である加水分解物;
ヒジキ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である加水分解物;
ホンダワラ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~332000Daの範囲内である加水分解物;
マコンブ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~713000Daの範囲内である加水分解物;
ワカメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~564000Daの範囲内である加水分解物;
アカモク由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~272000Daの範囲内である加水分解物;
ツルモ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~112000Daの範囲内である加水分解物;
マツモ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~180000Daの範囲内である加水分解物;
メカブ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~501000Daの範囲内である加水分解物;
モズク由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~192000Daの範囲内である加水分解物;
キリンサイ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~276000Daの範囲内である加水分解物;
クロバラノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~291000Daの範囲内である加水分解物;
トサカノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~196000Daの範囲内である加水分解物;
オゴノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~328000Daの範囲内である加水分解物;
ヒトエグサ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~280000Daの範囲内である加水分解物;あるいは
これらの2つ以上の組合せである。
【0018】
上記胆汁酸吸着剤について、1つの実施形態では、上記海藻はヒジキであり、かつ上記加水分解物の重量平均分子量は10000Da~268000Daの範囲内である。
【0019】
本発明は、胆汁酸吸着剤の製造方法であって、二酸化炭素ガスの存在下で、海藻または該海藻に由来する多糖類を含有する水性媒体を加圧および加熱して、該海藻に由来する多糖類の加水分解物を得る工程を含む、方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、胆汁酸吸着剤の製造方法であって、海藻または該海藻に由来する多糖類を食酢媒体中で加熱、あるいは加圧および加熱して、該海藻に由来する多糖類の加水分解物を得る工程を含む、方法を提供する。
【0021】
本発明はさらに、海藻に由来する多糖類の加水分解物を含むアディポネクチン分泌促進剤を提供する。
【0022】
上記アディポネクチン分泌促進剤について、1つの実施形態では、上記海藻に由来する多糖類は硫酸化多糖類を含む。
【0023】
上記アディポネクチン分泌促進剤について、1つの実施形態では、上記海藻はヒジキであり、かつ上記加水分解物の重量平均分子量は10000Da~268000Daの範囲内である。
【0024】
本発明は、アディポネクチン分泌促進剤の製造方法であって、二酸化炭素ガスの存在下で、海藻または該海藻に由来する多糖類を含有する水性媒体を加圧および加熱して、該海藻に由来する多糖類の加水分解物を得る工程を含む、方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、アディポネクチン分泌促進剤の製造方法であって、海藻または該海藻に由来する多糖類を食酢媒体中で加熱、あるいは加圧および加熱して、該海藻に由来する多糖類の加水分解物を得る工程を含む、方法を提供する。
【0026】
本発明はなおさらに、上記胆汁酸吸着剤を含む食品を提供する。
【0027】
本発明はなおさらに、上記アディポネクチン分泌促進剤を含む食品を提供する。
【0028】
本発明はなおさらに、ヒジキに由来する多糖類の加水分解物を含み、かつ該加水分解物の重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である、糖尿病改善剤を提供する。
【0029】
本発明はなおさらに、ヒジキに由来する多糖類の加水分解物を含み、かつ該加水分解物の重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である、便秘改善剤を提供する。
【0030】
また、本発明は、上記糖尿病改善剤を含む、糖尿病の予防または治療用の食品を提供する。
【0031】
また、本発明は、上記便秘改善剤を含む、便秘改善用食品を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、食品にも利用可能な胆汁酸吸着効果を示す材料が提供される。また、本発明によれば、食品にも利用可能なアディポネクチン分泌促進効果を示す材料が提供される。さらに、本発明によれば、胆汁酸吸着効果、アディポネクチン分泌促進効果、糖尿病改善効果および便秘改善効果を示す材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】胆汁吸着試験における各種海藻粉末試料の吸着率を、コレスチラミンの吸着率を100%とした場合の相対値で示したグラフである。
【
図2】コール酸ナトリウム(コール酸Na)吸着試験における各種海藻粉末試料の吸着率を、コレスチラミンの吸着率を100%とした場合の相対値で示したグラフである。
【
図3】低分子化ヒジキ群および未処理ヒジキ群についての投与24時間後に排泄された糞の乾燥重量を示すグラフである。
【
図4】低分子化ヒジキ群および未処理ヒジキ群についての投与24時間後に排泄された糞の乾燥糞中の胆汁酸量を示すグラフである。
【
図5】低分子化ヒジキ群および未処理ヒジキ群についての投与3週目のアディポネクチン値を示すグラフである。
【
図6】低分子化ヒジキ群および未処理ヒジキ群についての投与3週目のヘモグロビンA1c値を示すグラフである。
【
図7】低分子化ヒジキ群および未処理ヒジキ群についての投与終了時の血糖値を示すグラフである。
【
図8】低分子化ヒジキ群および未処理ヒジキ群についての投与終了時のインスリン値を示すグラフである。
【
図9】低分子化ヒジキ群および未処理ヒジキ群についての投与終了時の血糖値およびインスリン値から算出されたインスリン抵抗性指数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明について、詳細に説明する。なお、本明細書において、分子量の単位として示す「Da」は「ダルトン」を意味する。
【0035】
本明細書において「海藻に由来する多糖類」とは、海藻に含まれる任意の多糖類およびその塩をいい、例えば、アルギン酸、フコイダン、アガロース、カラギーナン、ポルフィラン、およびラムナン硫酸、ならびにそれらの塩が挙げられる。「海藻に由来する多糖類」は、単独の多糖類のみであっても、または異なる多糖類の混合物であってもよい。
【0036】
本明細書において「アルギン酸」とは、カルボキシル基を有する酸性多糖類であり、β-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸とが1,4グリコシド結合した直鎖ポリマーおよびその塩であり、このようなものであれば特に限定されない。β-D-マンヌロン酸は、その少なくとも一部がC-5エピマーであってもよい。
【0037】
本明細書において「フコイダン」とは、L-フコース(6-デオキシ-L-ガラクトース)を主構成糖とする硫酸化多糖類である。フコイダンは、L-フコース4硫酸の1,2グリコシド結合を主体として含み、1,3結合および/または1,4結合を含んでいてもよい。フコイダンの構成糖の組成は由来する海藻の種類に依存するが、その構成糖には、ウロン酸およびガラクトース、ならびに少量のキシロース、マンノース、ラムノースなども含まれ得る。
【0038】
フコイダンの構造に関して、構成糖および硫酸含有量のモル比は、例えば、モズク由来フコイダン(例えば、沖縄産モズクフコイダン、タングルウッド社製:AHフコイダン85)の糖組成では、L-フコース:D-ガラクトース:D-グルコース:D-マンノース:D-キシロース、D-アセチル化グルコース:硫酸=5:1:1:0.5:0.5:2:7とされている。本明細書においてヒジキの一例として示す「神奈川県三浦沖産ヒジキ」に含まれる硫酸化多糖類は、フコイダンの一種である。このようなヒジキに含まれるフコイダンは、ヒジキフコイダンと称され得る。
【0039】
本明細書において「アガロース」とは、紅藻類のテングサ等に含まれており、その化学構造は、1,3結合β-D-ガラクトースと1,4結合3,6-アンヒドロ-α-L-ガラクトースとが繰り返し連なっているものである。アガロースは、一般的には中性多糖類であるが、少量のエステル硫酸を有していてもよい。
【0040】
本明細書において「カラギーナン」とは、D-ガラクトースがα-1,3結合またはβ-1,4結合を交互に繰り返して連なっているものである。カラギーナンは硫酸化多糖類であり、カラギーナン分子上のほとんどのガラクトース単位がエステル硫酸を有するものであり得る。
【0041】
本明細書において、「ポルフィラン」は、ガラクトースの誘導体からなる硫酸化多糖類である。すなわち、L-ガラクトース-6-硫酸、6位の水酸基のメチル化糖、3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースおよびD-ガラクトースがα-1,3とβ-1,4で交互に結合し、部分的にD-ガラクトース-6-O-メチルガラクトースに置換されている。ポルフィランは、寒天の主要多糖であるアガロースと構造は似ているが、硫酸化多糖類である。
【0042】
本明細書において「ラムナン硫酸」とは、L-ラムノースを主構成糖とする多糖であり、構造の一部にエステル硫酸を有している。ラムナン硫酸の構成糖と硫酸基のモル比は、例えば、L-ラムノース:D-アセチル化グルコース:D-キシロース:D-グルコース:D-ガラクトース:硫酸=7:1:0.5:0.1:0.5:5とされている。
【0043】
本明細書において「硫酸化多糖類」とは、糖の水酸基の少なくとも一部がエステル硫酸により修飾されている糖の総称を示す。例えば、糖の主骨格がフコースの場合、一般的にフコイダンと総称される。
【0044】
「海藻に由来する多糖類」の塩とは、多糖類中のカルボキシ基(-COOH)、水酸基(-OH)等の水素イオン(H+)が解離し得る基の1個以上において、水素イオンがその他のカチオンに置換されて塩を形成しているものであり、塩の形成部位の数は、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、水素イオンが解離し得る基のすべてが塩を形成していてもよい。多糖類の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。多糖類の塩の形成部位が複数個である場合には、これら複数個の塩はすべて同じでもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみが異なっていてもよい。例えば、多糖類中のカルボキシ基および水酸基が共に塩を形成していてもよい。塩を形成しているカチオンは、一種のみでもよいし、二種以上でもよく、二種以上である場合、その組み合わせおよび比率は、特に限定されない。例えば、多糖類分子中に存在する複数のカルボキシ基において、ナトリウム塩を形成しているものとカリウム塩を形成しているものとが共存していてもよい。
【0045】
本明細書において「海藻」とは、海産種群の藻類の総称であり、例えば、容易に肉眼で判別することができる藻類が挙げられる。海藻には、褐藻類、紅藻類および緑藻類が包含される。海藻は、その収穫地または収穫時期に限定されるものではない。本明細書における「海藻」としては、例えば、褐藻類として、アラメ、ガゴメコンブ(本明細書中において「ガゴメ」ともいう)、ヒジキ、ホンダワラ、マコンブ、ワカメ、アカモク、ツルモ、マツモ、メカブ、モズクなど;紅藻類として、キリンサイ、クロバラノリ(別名を「スサビノリ」ともいう)、トサカノリ、オゴノリなど;ならびに緑藻類として、ヒトエグサ(別名を「アオサ」ともいう)などが挙げられる。1つの実施形態では、海藻は、アラメ、ガゴメ、ヒジキ、ホンダワラ、マコンブ、ワカメ、アカモク、ツルモ、マツモ、メカブ、モズク、キリンサイ、クロバラノリ、トサカノリ、オゴノリおよびヒトエグサからなる群から選択される海藻である。1つの実施形態では、海藻はヒジキである。本明細書中の実施例においては「神奈川県三浦沖産ヒジキ」を一例として用いているが、ヒジキの産地はこれに限定されない。
【0046】
海藻に由来する多糖類の「加水分解物」(本明細書中において「分解物」ともいう)は、加水分解を生じる任意の方法によって得られ得る。加水分解方法は特に限定されない。原料の海藻の乾燥、粉砕および抽出操作等における加熱、撹拌等によって、海藻由来多糖類の加水分解物が生じ得る。特定の実施形態においては、加水分解方法として、例えば、(1)二酸化炭素ガスの存在下で、海藻または該海藻に由来する多糖類を含有する水性媒体を加圧および加熱する方法、および(2)海藻または該海藻に由来する多糖類を食酢媒体中で加熱、あるいは加圧および加熱する方法が挙げられる。
【0047】
上記(1)および(2)の方法における「海藻」は、好ましくは粉末であり、その粉末の平均粒径は、例えば、1μm~10mm、好ましくは10μm~1mmである。このような粉末は、当業者が通常用いる粉砕技術(例えば、以下の調製例1に記載の方法)により調製され得る。上記(1)および(2)の方法において、「海藻に由来する多糖類」として、海藻から予め抽出した多糖類画分、または単離した多糖類もしくは単離および精製した多糖類が用いられ得る。このような多糖類画分または多糖類は、海藻をエタノール沈殿後の熱水抽出(例えば、以下の調製例2に記載の方法)によって得られ得る。多糖類画分または多糖類は、必要に応じて、乾燥等により粉末化され得る。
【0048】
なお、本明細書において用語「海藻または該海藻に由来する多糖類」とは、「海藻」または「該海藻に由来する多糖類」のいずれか一方の場合に加えて、「海藻」と「該海藻に由来する多糖類」とが組み合わされた場合も包含することが意図される。
【0049】
上記(1)の方法において「二酸化炭素ガスの存在下」とは、水性媒体(例えば、水)に海藻または該海藻に由来する多糖類を添加する前に、水性媒体に二酸化炭素ガスを吹き込む(バブリングする)ことにより行われ得る。「二酸化炭素ガスの存在下」は、水性媒体に二酸化炭素ガスを飽和させた状態にあることが好ましい。
【0050】
上記(1)の方法において、水性媒体に対し、海藻または該海藻に由来する多糖類は、水性媒体重量と該多糖類重量との合計に対する該多糖類の重量の割合(すなわち、海藻に由来する多糖類の濃度)が、好ましくは、0.05~20重量%、より好ましくは、0.1~10重量%であるように添加され得る。海藻に由来する多糖類の濃度が0.05重量%以上であることで、加水分解物の収率が向上し、海藻に由来する多糖類の濃度が20重量%以下であることで、水性媒体中に海藻に由来する多糖類がより均一に分散または溶解し、それにより加水分解反応がより効率的に進行し、分子量をより精密に制御し得る。
【0051】
上記(2)の方法において「食酢媒体」は、水性媒体(例えば、水)と食酢とが混合した媒体をいい、例えば、水性媒体(例えば、水)に海藻に由来する多糖類を添加する前に、水性媒体に食酢を添加して調製され得る。食酢とは、食用にする酢をいい、日本農林規格(JAS)に規定されるもの、または消費者庁が告示する食酢品質表示基準に定義されるもののいずれかに該当するものを指して言う。食酢は醸造酢および合成酢を包含し、これら醸造酢および合成酢についても食酢品質表示基準に定義されている。醸造酢としては、例えば、穀物酢(例えば、米酢、米黒酢、大麦黒酢など)および果実酢(例えば、リンゴ酢、ブドウ酢など)が挙げられる。食酢の酸度は、好ましくは、4~5%の範囲内であり、一例として、穀物酢にみられるような酸度4.2%が挙げられる。例えば酸度4.2%の食酢の場合、水性媒体中の食酢の濃度は、0.1~30容量%であることが好ましく、2~20容量%であることがより好ましい。そのような酸度および濃度であることで、加水分解物の収率および加水分解反応による分子量制御の精密さを向上させ得る。
【0052】
上記(2)の方法において、食酢媒体に対し、海藻または該海藻に由来する多糖類は、食酢媒体重量と該多糖類重量との合計に対する該多糖類の重量の割合(すなわち、海藻に由来する多糖類の濃度)が、好ましくは、0.05~20重量%、より好ましくは、0.1~10重量%であるように添加され得る。海藻に由来する多糖類の濃度が0.05重量%以上であることで、加水分解物の収率が向上し、海藻に由来する多糖類の濃度が20重量%以下であることで、水性媒体中に海藻に由来する多糖類がより均一に分散または溶解し、それにより加水分解反応がより効率的に進行し、分子量をより精密に制御し得る。
【0053】
上記(1)および(2)の方法において、加水分解反応での加熱時の温度は、80℃以上であることが好ましく、80℃~130℃であることがより好ましく、90℃~120℃であることがさらに好ましい。上記(2)の方法においては、加水分解反応での加熱時の温度は加熱時間に依存し得るが、食酢媒体に対し、加圧を行うことなく、例えば、80℃以上100℃未満の温度を付与してもよく、あるいは、加圧下、100℃以上(例えば100℃~130℃)の温度を付与してもよい。上記(1)の方法においては、加水分解反応での加熱時の温度として、加圧下、100℃以上(例えば100℃~130℃)の温度を水性媒体に付与することが好ましい。加熱時の温度が80℃以上であることで、加水分解反応の速度が向上し、加熱時の温度が130℃以下であることで、副生成物の量が抑制されて、分解物の収率が向上し得る。
【0054】
上記(1)および(2)の方法において、例えば、加熱時の温度を105℃~130℃とし、より好ましくは110℃から120℃とする場合、加圧時の圧力は、0.05MPa以上であることが好ましく、0.12MPa~0.27MPaであることがより好ましく、0.14MPa~0.2MPaであることがさらに好ましい。加圧時の圧力が0.05MPa以上であることで、加水分解反応の速度が向上し、加圧時の圧力が0.27MPa以下であることで、副生成物の量が抑制されて、分解物の収率が向上する。
【0055】
加熱時間は、加熱時の温度などの条件を考慮して適宜設定すればよい。加熱時の温度が上記範囲内である場合には5分間~6時間であることが好ましく、10分間~4時間であることがより好ましく、15分間~2時間であることが特に好ましい。より具体的には、海藻の種類および加水分解方法により得られる分解物の分子量に依存して、加熱時間を決定することができる。
【0056】
海藻に由来する多糖類の加水分解反応の速度は、特に加熱時の温度と、加水分解を開始してから初期の圧力(初期圧力)との影響を受け易いので、これらの条件を適宜調節することで、分解物の分子量を容易に調節できる。
【0057】
加水分解終了時の反応液のpHは、4.0~6.8であることが好ましく、4.5~5.5であることがより好ましい。
【0058】
加水分解反応は、バッチ式または連続式のいずれで行ってもよい。
【0059】
本発明の1つの実施形態では、上記加水分解物は、脱アルギン酸(アルギン酸除去)の処理が施されたものであってもよい。脱アルギン酸処理は、海藻に由来する多糖類の加水分解反応の前または後のいずれに行ってもよい。脱アルギン酸処理は、例えば、以下の調製例2に記載の手順に従って行われ得る。
【0060】
海藻に由来する多糖類の加水分解物は、例えば、加水分解反応前に、粉末化海藻試料からの色素除去および水溶性多糖類抽出;塩酸酸性下でのアルギン酸除去;および脱色、エタノール沈殿および透析による精製により、精製多糖類を得た後に、加水分解反応を施すことによって製造され得る。海藻に由来する多糖類の加水分解物はまた、加水分解反応を行った後、塩酸酸性下でのアルギン酸除去;および脱色、エタノール沈殿および透析による精製を施しても得られ得る。上記の各々の手順は、例えば、以下の調製例2に記載に従い得る。
【0061】
脱アルギン酸処理が施された場合、海藻に由来する多糖類の加水分解物は、アルギン酸以外の多糖類、例えば、硫酸化多糖類(例えば、フコイダン(例えば、ヒジキフコイダン))の加水分解物となり得る。
【0062】
海藻に由来する多糖類の分子量は、由来する海藻の種類、採取時期および産地等に依存するが、海藻に由来する多糖類の加水分解物は、例えば、下記の表1に示す重量平均分子量を有する。表1は、海藻由来の脱アルギン酸多糖類の高分子、中分子および低分子の重量平均分子量である。表1に示した「高分子」は、海藻の乾燥、粉砕および抽出操作等における加熱、撹拌等によって得られる脱アルギン酸多糖類(例えば、調製例2に準拠して調製される)の重量平均分子量を示す。「中分子」および「低分子」はそれぞれ、例えば、分子量調整での目安として、重量平均分子量として100000Da以下で50000Daまでの範囲とする中分子量区域と、重量平均分子量として50000Da以下の低分子量区域になるように、各海藻につき反応温度および反応時間を調整して得た、上記「高分子」脱アルギン酸多糖類からさらに加水分解した試料の重量平均分子量に基づき得る(中分子量区域多糖類を単に「中分子」および低分子量区域多糖類を単に「低分子」ともいう)。
【0063】
【0064】
1つの実施形態では、海藻に由来する多糖類の加水分解物は、その重量平均分子量が、その未加水分解物(すなわち、海藻に天然に存在し得る多糖類)の重量平均分子量に対して約80%以下の値となる。また、海藻に由来する多糖類の加水分解物の重量平均分子量の下限は、10000Daであり得る。海藻に由来する多糖類が硫酸化多糖類を含む場合、加水分解物は、加水分解反応の制御の観点から、10000Da以上であることが好ましい。
【0065】
1つの実施形態では、海藻に由来する多糖類の加水分解物は、下記のとおりである:
アラメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~306000Daの範囲内である加水分解物;
ガゴメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~860000Daの範囲内である加水分解物;
ヒジキ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である加水分解物;
ホンダワラ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~332000Daの範囲内である加水分解物;
マコンブ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~713000Daの範囲内である加水分解物;
ワカメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~564000Daの範囲内である加水分解物;
アカモク由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~272000Daの範囲内である加水分解物;
ツルモ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~112000Daの範囲内である加水分解物;
マツモ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~180000Daの範囲内である加水分解物;
メカブ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~501000Daの範囲内である加水分解物;
モズク由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~192000Daの範囲内である加水分解物;
キリンサイ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~276000Daの範囲内である加水分解物;
クロバラノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~291000Daの範囲内である加水分解物;
トサカノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~196000Daの範囲内である加水分解物;
オゴノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~328000Daの範囲内である加水分解物;
ヒトエグサ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~280000Daの範囲内である加水分解物;あるいは
これらの2つ以上の組合せ。1つの実施形態では、上記海藻がヒジキであり、かつ上記加水分解物の重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である。
【0066】
1つの実施形態では、海藻に由来する多糖類の加水分解物は、ヒジキ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である加水分解物である。
【0067】
本発明の胆汁酸吸着剤、アディポネクチン分泌促進剤、糖尿病改善剤または便秘改善剤は、海藻に由来する多糖類の加水分解物を含む。「海藻に由来する多糖類の加水分解物を含む」とは、当該加水分解物を含む限り、その様式は限定されない。例えば、加水分解方法によって生じた産物の液状物そのもの、または当該液状物から水分を除去して得られる粉末(例えば、凍結乾燥物、または加熱で水分を蒸発して得られた粉末)、あるいは当該液状物または当該粉末から抽出された海藻由来多糖類の加水分解物が含有され得る。「海藻に由来する多糖類の加水分解物を含む」によって、海藻に対して、加水分解反応に加えて、必要に応じて上述したような脱アルギン酸(アルギン酸除去)、脱色、精製などの処理が施されたものを含む場合も包含される。
【0068】
本発明の胆汁酸吸着剤は、例えば、下記検討例1に説明する胆汁吸着試験およびコール酸ナトリウム吸着試験またはこれらと実質的に同等の試験において、吸着効果を示す物質または材料である。本発明の胆汁酸吸着剤は、胆汁酸吸着効果が高いことが知られるコレスチラミンの効果に対して、例えば70%以上の胆汁酸吸着効果、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、よりさらに好ましくは90%以上の胆汁酸吸着効果を有する。本発明の胆汁酸吸着剤はまた、胆汁酸排泄効果を奏し得る。胆汁酸吸着剤に関して、海藻由来多糖類の加水分解物の海藻は、好ましくは、アラメ、ガゴメ、ヒジキ、ホンダワラ、マコンブ、ワカメ、アカモク、ツルモ、マツモ、メカブ、モズク、キリンサイ、クロバラノリ、トサカノリ、オゴノリおよびヒトエグサである。1つの実施形態では、海藻に由来する多糖類の加水分解物は、下記のとおりである:
アラメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~306000Daの範囲内である加水分解物;
ガゴメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~860000Daの範囲内である加水分解物;
ヒジキ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である加水分解物;
ホンダワラ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~332000Daの範囲内である加水分解物;
マコンブ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~713000Daの範囲内である加水分解物;
ワカメ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~564000Daの範囲内である加水分解物;
アカモク由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~272000Daの範囲内である加水分解物;
ツルモ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~112000Daの範囲内である加水分解物;
マツモ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~180000Daの範囲内である加水分解物;
メカブ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~501000Daの範囲内である加水分解物;
モズク由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~192000Daの範囲内である加水分解物;
キリンサイ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~276000Daの範囲内である加水分解物;
クロバラノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~291000Daの範囲内である加水分解物;
トサカノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~196000Daの範囲内である加水分解物;
オゴノリ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~328000Daの範囲内である加水分解物;
ヒトエグサ由来でありかつ重量平均分子量が10000Da~280000Daの範囲内である加水分解物;あるいは
これらの2つ以上の組合せ。また、1つの実施形態では、加水分解物は、上記の表1の中分子または低分子に示す重量平均分子量を有する加水分解物であり、その2つ以上の混合物であってもよい。1つの実施形態では、海藻がヒジキであり、加水分解物が、ヒジキ由来でありかつ重量平均分子量は、例えば、10000Da~268000Daの範囲内であり、好ましくは、11000Da~174000Daの範囲内であり、より好ましくは、12000Da~112000Daの範囲内である。
【0069】
本発明の胆汁酸吸着剤は、その胆汁酸吸着効果に基づき、食品添加剤として用いられ得る。本発明はまた、胆汁酸吸着剤を含む食品を提供する。「胆汁酸吸着剤を含む」食品とは、本発明の胆汁酸吸着剤が食品中に配合されたもの、および胆汁酸吸着剤自体を食品としたもののいずれであってもよい。本発明の「胆汁酸吸着剤を含む食品」は、肝臓中・血中コレステロール値を減少させるための食品であり得る。また、本発明の「胆汁酸吸着剤を含む食品」は、メタボリックシンドローム予防または改善用の食品、糖尿病の予防または改善用の食品などであってもよい。本発明の胆汁酸吸着剤は、医薬品に含有されてもよい。このような医薬品としては、例えば、コレステロール値低下用の医薬品、糖尿病などの生活習慣病の予防または改善用の医薬品などが挙げられる。
【0070】
本発明のアディポネクチン分泌促進剤は、血中へのアディポネクチン分泌促進効果を奏する物質または材料である。アディポネクチン分泌促進効果は、従来法により測定され得る。アディポネクチン分泌促進剤に関して、海藻由来多糖類の加水分解物の由来の海藻は、好ましくは、ヒジキである。海藻がヒジキである場合、加水分解物の重量平均分子量は、例えば、10000Da~268000Daの範囲内であり、好ましくは、11000Da~174000Daの範囲内であり、より好ましくは、12000Da~112000Daの範囲内である。
【0071】
本発明のアディポネクチン分泌促進剤は、そのアディポネクチン分泌促進効果に基づき、食品添加剤として用いられ得る。本発明はさらに、アディポネクチン分泌促進剤を含む食品を提供する。「アディポネクチン分泌促進剤を含む」食品とは、本発明のアディポネクチン分泌促進剤が食品中に配合されたもの、およびアディポネクチン分泌促進剤自体を食品としたもののいずれであってもよい。本発明の「アディポネクチン分泌促進剤を含む食品」は、糖尿病改善用の食品であり得る。本発明の「アディポネクチン分泌促進剤を含む食品」は、肝臓中・血中コレステロール値を減少させるための食品であり得る。また、本発明の「アディポネクチン分泌促進剤を含む食品」は、肥満予防または改善用の食品、メタボリックシンドローム予防または改善用食品、高脂血症の予防または改善用食品、高血圧の予防または改善用食品、動脈硬化の予防または改善用食品、癌の予防用食品などであってもよい。本発明のアディポネクチン分泌促進剤は、医薬品に含有されてもよい。このような医薬品としては、例えば、肥満症、高脂血症、高血圧症、糖尿病、動脈硬化、癌などの予防または改善用の医薬品が挙げられる。
【0072】
さらに、本発明はまた、ヒジキに由来する多糖類の加水分解物を含み、かつこの加水分解物の重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である、糖尿病改善剤を提供する。この加水分解物の重量平均分子量は、好ましくは、11000Da~174000Daの範囲内であり、より好ましくは、12000Da~112000Daの範囲内である。本発明の糖尿病改善剤は、その糖尿病改善効果に基づき、食品添加剤として用いられ得る。本発明はまた、糖尿病改善剤を含む糖尿病の予防または治療用の食品を提供する。「糖尿病改善剤を含む」食品とは、本発明の糖尿病改善剤が食品中に配合されたもの、および糖尿病改善剤自体を食品としたもののいずれであってもよい。本発明の糖尿病改善剤は、医薬品に含有されてもよい。このような医薬品としては、例えば、糖尿病の予防または改善用の医薬品などが挙げられる。このように、本発明の糖尿病改善剤は、それ自体が糖尿病の予防または治療を用途とする食品添加剤、食品および医薬品などのいずれの形態でも提供され得、あるいはこの改善剤が、食品添加剤、食品および医薬品の成分として含有され得る。
【0073】
なおさらに、本発明はまた、ヒジキに由来する多糖類の加水分解物を含み、かつこの加水分解物の重量平均分子量が10000Da~268000Daの範囲内である、便秘改善剤を提供する。この加水分解物の重量平均分子量は、好ましくは、11000Da~174000Daの範囲内であり、より好ましくは、12000Da~112000Daの範囲内である。本発明の便秘改善剤は、その便秘改善効果に基づき、食品添加剤として用いられ得る。本発明はまた、便秘改善剤を含む便秘改善用食品を提供する。「便秘改善剤を含む」食品とは、本発明の便秘改善剤が食品中に配合されたもの、および便秘改善剤自体を食品としたもののいずれであってもよい。本発明の便秘改善剤は、医薬品に含有されてもよい。このような医薬品としては、例えば、便秘改善用の医薬品などが挙げられる。このように、本発明の便秘改善剤は、便秘の予防または改善用を用途とする食品添加剤、食品および医薬品などのいずれか形態でも提供され得、あるいはこの改善剤が、食品添加剤、食品および医薬品の成分として含有され得る。
【0074】
海藻がヒジキであり、加水分解物の重量平均分子量が、例えば、10000Da~268000Daの範囲内であり、好ましくは、11000Da~174000Daの範囲内であり、より好ましくは、12000Da~112000Daの範囲内である実施形態では、胆汁酸吸着効果、アディポネクチン分泌促進効果、糖尿病改善効果および便秘改善効果が奏され得る。この実施形態では、上記のそれぞれの効果に基づく用途の食品添加剤、食品および医薬品が得られ得る。
【0075】
上述したような食品添加剤、食品および医薬品は、製剤化する場合、その製剤の形態は特に限定されない。例えば、目的に応じて、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、細粒剤、液剤(水薬等)等の経口剤とすることができ、これらはいずれも公知の方法で製剤化することができる。また、製剤の製造で通常使用される各種添加剤を、当業者が適宜選択可能な量にて配合してもよい。このような製剤添加剤としては、賦形剤、滑沢剤、可塑剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、安定剤、矯味剤、着色剤、香料等が例示できる。製剤添加剤は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、その組み合わせおよび比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0076】
本発明の胆汁酸吸着剤、アディポネクチン分泌促進剤、糖尿病改善剤または便秘改善剤の摂取量は年齢、状態等により適宜調節され得る。例えば、胆汁酸吸着剤、アディポネクチン分泌促進剤、糖尿病改善剤または便秘改善剤の摂取量は、マウス投与量として、加水分解反応後のヒジキ海藻(例えば、重量平均分子量18000Daのヒジキ由来多糖類加水分解物を含み得る)換算で一日当たりマウスの食餌量4.5gに対して7.6重量%であることが好ましい。ヒトへの摂取量の換算は当業者に通常用いる方法によりなされ得る。
【0077】
上記のように、本発明の胆汁酸吸着剤、アディポネクチン分泌促進剤、糖尿病改善剤または便秘改善剤は、医薬品だけでなく食品でも利用され得るため、より汎用性が高く、年齢、性別を問わず、多くの者が簡便に摂取することができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0079】
(調製例1:粉末化海藻試料の調製)
ミキサーを用いて海藻を粉砕し、ふるい(メッシュサイズ(#)=250μm)にかけ、250μm以下の粒径の粉末化海藻試料を得た。
【0080】
(検討例1:胆汁酸吸着試験)
<用いた試料>
本検討例では、アラメ、ガゴメ、ヒジキ、ホンダワラ、マコンブ、ワカメ、アカモク、マツモ、ツルモ、メカブ、モズク、キリンサイ、クロバラノリ、トサカノリ、オゴノリ、およびヒトエグサの計16種類の海藻を用いて、吸着剤としての作用を調べた。吸着質として、胆汁および生体内の代表的な胆汁酸であるコール酸ナトリウムを用いた。吸着剤の比較試料として、胆汁酸吸着薬であるコレスチラミンを用いた。コレスチラミンは、強塩基性の陰イオン交換樹脂である。生化学用試薬であるコール酸ナトリウムおよびコレスチラミンは、真空デシケータ内で保管し、使用に供した。
【0081】
<粉末化海藻試料の精製>
調製例1で得た粉末化海藻試料8gを純水400mLと混合し、粉末化海藻混合溶液を得た。この混合溶液を4本の40mm×30cmの透析セルロースチューブ(エーディア株式会社製、品名:UC30-32、分画分子量:MWCO12,000~16,000:以下、特に明記しない限り同じチューブを使用)内に入れ、膜外に純水3000mLを入れて、24時間撹拌しながら透析した。その際に、透析開始から2時間後と4時間後に膜外の純水を交換した。膜内の混合溶液を回収し、凍結乾燥して精製海藻粉末を得た。
【0082】
<胆汁粉末の精製操作>
胆汁粉末(和光純薬工業株式会社製)2gと純水200mLを混合し、胆汁粉末混合溶液を得た。この混合溶液を2本の40mm×30cmの透析セルロースチューブ内に入れ、膜外に純水1000mLを入れて24時間撹拌しながら透析した。その際に、透析開始から2時間後と4時間後に膜外の純水を交換した。膜外に出た胆汁粉末溶液を回収し、凍結乾燥して精製胆汁粉末を得た。
【0083】
<コレスチラミンの精製操作>
コレスチラミン(SIGMA-ALDRICH社製)5gを純水250mLと混合し、コレスチラミン混合溶液を得た。この混合溶液を40mm×40cmの透析セルロースチューブ内に入れ、膜外に純水800mLを入れて24時間撹拌しながら透析した。その際に、透析開始から2時間後と4時間後に膜外の純水を交換した。膜内の混合溶液を回収し、凍結乾燥して精製コレスチラミンを得た。
【0084】
<胆汁吸着試験>
吸着試験で使用する純水は、あらかじめインキュベータ内で、37℃になるまで加温し、以後の試験にはこの加温済みの純水を用いた。精製海藻粉末1gと精製胆汁粉末0.2gを純水200mL中に入れ、37.0℃の振とう器付き恒温槽内で80rpmにて2時間振とうした。次いで、この溶液を3本の40mm×35cmの透析セルロースチューブ内に入れ、膜外に純水350mLを入れて、37.0℃の振とう器付き恒温槽内で65rpmにて2時間振とうした。膜内と膜外の溶液をそれぞれ凍結乾燥し、収量を測定した。
【0085】
膜内の溶液より海藻に吸着した胆汁量、膜外の溶液より海藻に吸着しなかった胆汁量を秤量し、下記の式(式中の「開始時胆汁量」は0.2gである)に基づき、吸着しなかった胆汁量から吸着率を求めた。
【0086】
【0087】
<コール酸ナトリウム吸着試験>
精製海藻粉末1gとコール酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)0.2gとを純水200mL中に入れ、37.0℃の振とう器付き恒温槽内で80rpmにて2時間振とうしたこと、および胆汁量の代わりにコール酸ナトリウム量を測定した以外は、精製胆汁粉末を用いた吸着試験と同様の手順にて吸着率を求めた。
【0088】
<精製コレスチラミンによる胆汁吸着試験およびコール酸ナトリウム吸着試験>
精製コレスチラミン1gを用いたこと以外は、上記のそれぞれの吸着試験と同様の手順にて吸着率を求めた。
【0089】
<胆汁酸吸着試験の結果>
結果を下記の表2に示す。表2は、各種粉末化海藻試料の吸着率を、コレスチラミンの吸着率を100%とした場合の相対値(%)で示したものである。
【0090】
【0091】
また、
図1および
図2はそれぞれ、胆汁吸着試験(
図1)およびコール酸ナトリウム吸着試験(
図2)における各種海藻粉末試料の吸着率を、コレスチラミンの吸着率を100%とした場合の相対値で示したグラフである。
図1および
図2とも、縦軸は、コレスチラミンの吸着率を100%とした場合の相対値(%)を示す。
【0092】
本検討例の結果より、胆汁吸着試験およびコール酸ナトリウム吸着試験において、コレスチラミンの吸着率に対する海藻試料の吸着率の割合は、用いた全ての海藻において約70%の程度またはそれを上回り、高い吸着率が確認された。胆汁吸着試験およびコール酸ナトリウム吸着試験において、例えば、共に80%以上の高吸着率を示した海藻は、以下のとおりである:アラメ、ガゴメ、ヒジキ、マコンブ、ワカメ、アカモク、ツルモ、マツモ、キリンサイ、クロバラノリ、トサカノリ、オゴノリ、ヒトエグサ(表2ならびに
図1および
図2)。また、本検討例に用いた胆汁は牛の胆汁由来のものであることから、生体内において同様の作用がみられることが期待される。
【0093】
本検討例の結果より、胆汁酸単体においても生体由来の胆汁混合物であっても、コレスチラミンに並ぶ胆汁酸吸着作用が示される海藻が存在した。特に、コレスチラミンの胆汁酸吸着率に対して約80%以上の高吸着率を示す海藻は、胆汁酸吸着剤としてより高い機能性が期待される。
【0094】
(調製例2:海藻に由来する多糖類の加水分解物の調製)
下記の検討例2のα-グルコシダーゼ活性阻害試験には、上記の検討例1の胆汁酸吸着試験と同じ16種類の海藻を採用し、かつ海藻類に含まれる多糖類のうち、アルギン酸を除去した多糖類を用いた。酵素阻害性を有する物質である色素、アルギン酸等を海藻試料から除去し、透析により精製して脱アルギン酸多糖類を得、α-グルコシダーゼ活性阻害試験用材料として供した。
【0095】
<粉末化海藻試料からの色素除去および水溶性多糖類抽出>
調製例1で調製した粉末化海藻試料に海藻の乾燥重量の3倍量のエタノールを添加し、室温で24時間撹拌して海藻含有の色素類を抽出除去し、遠心分離機により沈殿物と色素含有エタノール溶液とを分離した。分離後の沈殿物をエバポレーターに供してエタノールを除去後、凍結乾燥した。凍結乾燥後の海藻試料に10倍量の純水を加え、80℃で4時間の間熱水抽出を行った。次いで、この熱水抽出液を遠心分離機にかけ、固液分離した。分離した液体を凍結乾燥して、水溶性食物繊維である多糖類粉末を得た。
【0096】
<塩酸酸性下でのアルギン酸除去>
上記抽出操作により得られた多糖類粉末は、アルギン酸と、フコイダン、カラギーナン等の混合物を含む硫酸化多糖類と、アガロース等からなるものであり得る。アルギン酸の除去は、アルギン酸の酸解離定数を利用するpH調整法により行った。アルギン酸の構成糖であるグルクロン酸の酸解離定数は3.38で、マンヌロン酸のそれは3.65である。アルギン酸が溶解している溶液の水素イオン濃度をpH=1.0以下にすると、アルギン酸の酸解離定数から、高分子のアルギン酸はイオンとして解離できずに沈殿する。しかしながら、フコイダン等の硫酸化多糖類の硫酸基は、エステル結合のため、溶液中の水素イオン濃度に依存せず、溶解したままなのでアルギン酸と硫酸化多糖類の分離が可能となる。
【0097】
上記抽出操作により得られた多糖類粉末を少量の純水に溶かし、溶液を撹拌しながら塩酸を滴下し、溶液のpHを1.0以下に調整した後、24時間冷蔵庫中に静置し、アルギン酸を沈殿させた。沈殿したアルギン酸を遠心分離機により固液分離し、沈殿物を凍結乾燥してアルギン酸粉末を得た。遠心分離後の溶液を20w/v%炭酸ナトリウム水溶液で中和し、凍結乾燥することで、中和により生じた塩類と脱アルギン酸多糖類との混合粉末を得た。
【0098】
オゴノリおよびヒトエグサについては、塩酸を添加しても白濁するだけで、明確な沈殿物を生じなかった。また、トサカノリは24時間冷蔵庫に静置した後、溶液全体がゲル化していたため、完全にアルギン酸を分離することがやや困難であった。しかしながら、上記と同様の操作をすることで、アルギン酸粉末および塩類と脱アルギン酸多糖類との混合粉末を得た。
【0099】
各海藻についてのアルギン酸含有量の結果を表3に示す。アルギン酸含有量は、下記の式に基づいて求めた。なお、表中の「試料」は熱水抽出により得た多糖類粉末(アルギン酸除去前)を、「アルギン酸」はpH調整法で沈殿して回収したアルギン酸粉末を示す。
【0100】
【0101】
【0102】
<脱色、エタノール沈殿および透析による精製>
塩類と脱アルギン酸多糖類との混合粉末を少量の純水に溶かし、酢酸酸性条件下、70℃の湯浴中で撹拌しながら、試料溶液が薄い黄色になるまで、5w/v%亜塩素酸ナトリウム溶液を滴下した。脱色が終了した後、20w/v%炭酸ナトリウム溶液を加え、溶液の水素イオン濃度を約pH=9.5付近とした。しばらくの間撹拌した後、エタノール濃度が80v/v%になるまでエタノールを滴下し、冷蔵庫中にて24時間静置した。静置後のエタノール溶液を遠心分離機により、固液分離した。分離後の沈殿物をエバポレーターに供して、エタノールを除去後、凍結乾燥し、中和により生成した塩類と脱アルギン酸多糖類の脱色済み混合粉末を得た。
【0103】
得られた混合粉末を少量の純水に溶かし、この溶液を透析膜(フナコシ株式会社製、品名:Spectra/Por 3、分画分子量:3500;以下、特に明記しない限り同じ透析膜を使用)に入れ、24時間撹拌しながら透析した。その際に、透析開始から2時間後と4時間後に膜外の純水を交換し、24時間後に膜内の溶液を回収した。回収した溶液を凍結乾燥し、脱アルギン酸多糖類粉末を得た。ここで得られた精製脱アルギン酸多糖類を、本調製例において「高分子」とした。
【0104】
<脱アルギン酸多糖類の二酸化炭素ガス下の加圧および加温による分子量調整>
純水250mLを耐圧反応容器に投入し、30℃に昇温した。30℃になった時点で二酸化炭素ガスを吹き込み、200rpmで撹拌しながら15分間バブリングを行った。脱アルギン酸多糖類粉末を5g投入後、反応容器全体を密閉して二酸化炭素ガスで装置圧力を0.30MPaに調整し、回転数200rpmで所定の温度まで昇温した。所定の温度に達した時点を反応開始時間とし、所定の時間反応させた。反応終了後、直ちに氷水によって反応容器を冷却した。試料溶液が冷却された後、pHを測定し凍結乾燥した。
【0105】
各種海藻について、分子量調整の目安として、中分子量区域(「中分子」ともいう)として、重量平均分子量が100000Da以下で50000Daまでの範囲、低分子量区域(「低分子」ともいう)として、重量平均分子量が50000Da以下になるように、各海藻由来の脱アルギン酸多糖類粉末につき、反応のための温度、圧力および時間を設定し、加水分解を行った。表4は、各種海藻由来の脱アルギン酸多糖類粉末につき、中分子量区域および低分子量区域のために、それぞれ設定した加水分解反応のための温度、圧力および時間を示す。
【0106】
【0107】
ただし圧力は、大気圧を0.0Mpaとするゲージ圧で示した。上記加水分解反応実験においては二酸化炭素存在下、30℃で0.30Mpaを初期圧としたので、反応圧力は水蒸気圧+0.30Mpaとなるが、二酸化炭素の溶解度の関係から、実験時でのゲージ圧での表示は110℃で0.53Mpaを示した。
【0108】
各種海藻について得られた高分子、中分子、および低分子を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析に供し、GPC計算ソフトにより重量平均分子量(Mw[Da])を求めた。ただし、分析カラムの排除限界の上限は400000Daで、下限は10000Daであることから、これらの範囲外の重量平均分子量については、外挿値で示した。HPLC分析装置、分析カラム、分析諸条件および重量平均分子量計算のソフトウェア名を以下に示す。
(HPLC装置および分析諸条件)
Agilent製 1100バイナリーポンプ
Agilent製 1100デガッサ
RI検出器:JASCO製 示差屈折計 2031 plus
カラム:SHODEX製 KS-804(排除限界:400000)、
SHODEX製 KS-802(排除限界:10000)、
SHODEX製 KS-G(ガドカラム)
サンプルループ:PHEOMYNE 500μLループ
溶離液:0.1mol/L NaCl
流速:0.700mL/分
カラム温度:40.0℃
重量平均分子量計算ソフトウェア:Chromato-PRO-GPC(ランタイムインスツルメント社製)
【0109】
各種海藻について得られた高分子、中分子、および低分子についてのGPC分析による重量平均分子量を表5に示す。
【0110】
【0111】
分子量調整後の脱アルギン酸多糖類を、少量の純水に溶かし、この溶液を透析膜に入れ、24時間撹拌しながら透析した。その際に、透析開始から2時間後と4時間後とに膜外の純水を交換し、24時間後に膜内の溶液を回収した。回収した溶液を凍結乾燥し、精製脱アルギン酸多糖類を得た。この精製脱アルギン酸多糖類を下記の検討例2(α-グルコシダーゼ阻害活性試験)に供した。
【0112】
(検討例2:α-グルコシダーゼ阻害活性試験)
本検討例での標準物質には、一般的なα-グルコシダーゼ活性阻害剤として知られているトリス塩基(和光純薬工業株式会社製:Trizma Base)を用いた。
【0113】
14.75mgの精製脱アルギン酸多糖類(高分子、中分子、および低分子につき)粉末をリン酸バッファー(和光純薬工業株式会社製:中性リンpH標準液、pH=6.8)溶液に添加し、0.5w/v%となるように濃度調整し、完全に溶解させた。この脱アルギン酸多糖類溶液を基に、種々の濃度に再調整し、反応促進剤であるGSH(SIGMA社製:3mM L-Glutathione,reduced)0.100mLおよびα-グルコシダーゼ酵素液(5.1mg/100mL α-Glucosidase from Saccharomyces cerevisiae(SIGMA))0.100mLを加えてボルテックスミキサーにて撹拌後、これらの混合物を37℃で10分間予備加熱した。
【0114】
予備加熱後、基質として10mMのp-ニトロフェニルα-D-グルコシド(SIGMA社製)0.250mLを加えてボルテックスミキサーにて撹拌後、これらの混合物を37℃で20分インキュベートした。インキュベート後、100mM炭酸ナトリウム(キシダ化学社製溶液)8.00mLを加えて反応を停止させ、400nmにて吸光度を測定した。脱アルギン酸多糖類を加えないで測定したものを対照(活性100%)とした。また、酵素液の代わりにバッファーを加えて測定したものをブランク値とした。下記の式に基づいて、脱アルギン酸多糖類のα-グルコシダーゼの酵素活性の阻害率(Activity Inhibition:(%))を求めた。
【0115】
【0116】
表6は、各海藻についての高分子、中分子および低分子のα-グルコシダーゼ活性の阻害率[%]を、当該阻害率を示した濃度[mg/mL]と併せて示す。ただし、マコンブ、ならびにマツモの中分子および低分子については、脱アルギン酸多糖類の結晶構造が変化し、溶液が白濁したり、または試料が溶解しなかったために、阻害率データが得られなかった。
【0117】
【0118】
表6に示されるように、高分子、中分子および低分子のうちいずれかにおいて50%以上の阻害率を示したのは、アラメ、ヒジキおよびホンダワラであった。約80%以上の阻害率を示したのはアラメおよびヒジキであり、これらは95%以上の数値を示した。
【0119】
濃度によらず50%以上の高い阻害率を示したアラメ、ヒジキおよびホンダワラについては、α-グルコシダーゼ阻害活性試験での50%阻害濃度(IC50値:[mg/mL])を表7に示す。
【0120】
【0121】
表7におけるIC50値から、ヒジキのIC50値[mg/mL]は、低分子で0.0831と低い値を示した。他にIC50値が1.00[mg/mL]以下を示したのは、アラメの高分子の0.524、ヒジキの中分子の0.210およびホンダワラの低分子の0.944であった。これら海藻類の当該分子領域での、脱アルギン酸多糖類は、α-グルコシダーゼ阻害剤として高い機能性が期待される。
【0122】
上記のように、検討例1の胆汁酸吸着試験および検討例2のα-グルコシダーゼ阻害活性試験において、いずれでも好成績を示したのは、アラメおよびヒジキであった。また、ホンダワラは、検討例1の胆汁酸吸着試験結果では、当該検討例における基準の1つとした80%には届かないものの、70%程度の十分高い吸着率を示しており、そして検討例2のα-グルコシダーゼ阻害活性試験では好成績を示した。このことから、ホンダワラも、アラメおよびヒジキの好成績に準じるものと判断した。
【0123】
(検討例3:脱アルギン酸多糖類の元素分析)
調製例2で得られた脱アルギン酸多糖類について、主成分が硫酸化多糖類であるヒトエグサ、ヒジキ、ガゴメコンブおよびモズクの4種については、元素分析(Elementer社製、全自動元素分析装置vario EL III)によって炭素、水素、酸素、窒素、硫黄に関して元素分析を行った。内標準物質としてスルファニックアシッド(Sulfanilic acid/Merck Millipore社製)、そして比較物質として沖縄産モズクフコイダン(タングルウッド社製:AHフコイダン85)を用いた。この市販のAHフコイダンについては、前処理としてエタノール沈殿法による精製を行い元素分析に供した。元素分析試料(脱アルギン酸多糖類)の硫酸化度(SO3Na[%])を、元素分析値から下記の式に従って求めた。
【0124】
【0125】
元素分析の結果を表8に示す。
【0126】
【0127】
この元素分析によって、調製例2で調製したモズクの脱アルギン酸多糖類の硫酸化度の平均が16.3%であるのに対して、沖縄産モズクフコイダンの硫酸化度の平均値もほぼ同様な約16.6%を示した。この元素分析データから、調製例2で用いた原藻から精製脱アルギン酸硫酸化多糖類までの精製工程が、概ね正しく行われていると判断した。海藻からの抽出・精製工程が概ね正しく行われていることから、硫酸化度分析値から、ヒジキ由来の精製脱アルギン酸多糖類がヒジキフコイダンであることが示唆された。
【0128】
<硫酸化多糖類の低分子量化に伴うエステル硫酸の脱離限界>
硫酸化多糖類のエステル硫酸の結合はエステル結合であり、糖と糖との結合であるグルコシド結合と結合力で比較すると、一段と弱い。このため、グルコシド結合が切断し、低分子量化が進行するよりも、エステル結合の切断のほうがやや優勢に進行し得る。
【0129】
AHフコイダン85を試料として、長時間の加水分解実験をすることで、エステル硫酸の脱離限界を確認した。AHフコイダン5gと純水500mLとを用いた以外は、二酸化炭素による分子量調整に準拠して加水分解反応を行った。反応温度および反応時間は表9および10に示した通りである。反応時間および反応温度ごとの重量平均分子量の結果を表9に、溶液のpH値を表10に示す。
【0130】
【0131】
【0132】
表9および表10より、重量平均分子量が10000Da未満になると、それに対応する溶液のpH値は4.0より低くなることが示された。反応溶液のpH値の変化は、硫酸化多糖類のエステル硫酸でのエステル結合が切断され、硫酸基が脱離し溶液中の水と反応することにより、硫酸が生成することを意味している。硫酸の生成が進行すると、加水分解反応が急速に進行し、さらなる硫酸基の脱離を誘引し、反応制御が困難となる。これらのことから、硫酸化多糖類の低分子量化の限界は、概ね10000Daであると推測した。
【0133】
(調製例3)
乾燥ヒジキ(神奈川県三浦沖産:有限会社三浦海藻)を調製例1に従って粉砕し、ヒジキ粉末試料を得た(調製例1および2においても、ヒジキ材料として、同じ神奈川県三浦沖産の乾燥ヒジキを用いた)。
【0134】
<未処理ヒジキ粉末試料の調製>
得られたヒジキ粉末試料より、調製例2の<粉末化海藻試料からの色素除去および水溶性多糖類抽出>、<塩酸酸性下でのアルギン酸除去>、および<脱色、エタノール沈殿および透析による精製>の手順に従って精製脱アルギン酸多糖類を得た。この精製脱アルギン酸多糖類を「未処理ヒジキ」として、マウス試験(以下の実施例1)に供した。
【0135】
<低分子化ヒジキ粉末試料の調製>
上記の調製例1に従って粉砕して得たヒジキ粉末試料の約40gを純水1.5Lに加え、80℃~90℃にて2時間加熱し、抽出液を得た。抽出液全体を遠心分離機に供して固液分離を行い、上澄み液(アルギン酸、フコイダン等の多糖類を含み得る)を得て、これを凍結乾燥し、ヒジキ由来多糖類を得た。予備実験では、これらの手順を2回行った。その場合、多糖類の収率は23重量%であった。
【0136】
得られたヒジキ由来多糖類10gと、表11に示す食酢濃度の食酢液(純水および食酢(米酢:酸度4.2%)より調製)250mLとを、高圧反応装置に入れ、表11に示す所定の条件で加水分解反応を行った。得られた加水分解物を、0.5w/v%炭酸ナトリウム水溶液によりpHが6.6から6.8の範囲になるように中和し、凍結乾燥によりヒジキ由来多糖類の加水分解物粉末を得た。
【0137】
得られた加水分解物を、調製例2の<塩酸酸性下でのアルギン酸除去>および<脱色、エタノール沈殿および透析による精製>の手順に従って、精製および脱アルギン酸処理を施した。
【0138】
得られた「未処理ヒジキ」と、食酢液中で加水分解し精製および脱アルギン酸処理した多糖類(ヒジキ由来精製脱アルギン酸多糖類加水分解物)とについて、GPCによる分子量分析を行った。GPC分析法は、調製例2のGPC分析方法に準拠して測定した。GPC分析によるヒジキ由来精製脱アルギン酸多糖類加水分解物の分子量を精製脱アルギン酸多糖類(「未処理ヒジキ」)の分子量と共に、表11に併せて示す。
【0139】
【0140】
検討例2のα-グルコシダーゼ阻害活性試験について、海藻がヒジキである場合、重量平均分子量が12000Daの低分子において顕著な結果が見られた。食酢での加水分解では、食酢濃度10容量%、反応温度および反応時間120℃、2時間での分子量が11000Daであり、この分子量に近い。上述したように、加水分解反応が進行すると、反応溶液のpH(水素イオン濃度)が低下し、徐々に硫酸エステル基が脱離する傾向がある。さらに、マウス投与試験用飼料調製のために加水分解を要する原料量は、検討例2のようなα-グルコシダーゼ阻害活性試験用の量からすれば仕込み量が多い。これらのことから、マウス試験での加水分解反応では、エステル硫酸の脱離が懸念される。従って触媒に用いる食酢量がより少ない5容量%で、反応温度を120℃で得られる18000Daの加水分解試料を、マウス飼料として供した(以下の実施例1では、このヒジキ由来精製脱アルギン酸多糖類加水分解物を「低分子化ヒジキ」と称した)。
【0141】
(実施例1:II型糖尿病モデルマウスにおける連続投与)
調製例3にて調製した低分子化ヒジキ粉末試料および未処理ヒジキ粉末試料を用いて、II型糖尿病モデルマウスへの投与により胆汁酸吸着作用として糞重量および糞中排泄胆汁酸量を調べた。さらに、アディポネクチンへの作用等も調べた。
【0142】
<実験動物、飼料および飼育条件>
II型糖尿病モデルマウスであるKK-Ay/Ta Jcl雄性マウス(日本クレア:4週齢)を市販固形飼料(CE-2、日本クレア)にて1週間の予備飼育を行い、低分子化ヒジキ群(8匹)および未処理ヒジキ群(9匹)に群分けを行った。KK-Ayマウスは、高脂肪食を摂取させることで高インスリン血症、インスリン感受性低下(インスリン抵抗性)が惹起され、さらなる病態悪化を引き起こすことが知られている。
【0143】
1週間の予備飼育後、低分子化ヒジキ群には、高脂肪・高ショ糖食(F2HFHSD、オリエンタル酵母社製)に低分子化ヒジキ粉末試料を7.6%混餌したものを一日一回4.5gで、3週間摂取させた。未処理ヒジキ群には、高脂肪・高ショ糖食(F2HFHSD、オリエンタル酵母社製)に未処理ヒジキ粉末試料を7.6%混餌させたものを一日一回4.5gで、3週間摂取させた。飼料は毎日17:00に与え、翌日9:00まで摂取させ、摂食量を秤量した。飲料は水道水を自由飲用させた。この間、マウスはケージに個別に入れ、室温23±2℃、湿度55±5%、12時間明暗サイクル(明期7:00~19:00、暗期19:00~7:00)の環境下で飼育した。摂取の開始時および終了時にマウスの体重を測定した。
【0144】
低分子化ヒジキ群および未処理ヒジキ群の実験動物を、以下の項目について調べた。実験結果は各群の平均値で示し、未処理ヒジキ群に対してt-検定を行い、有意差検定を行った。
【0145】
<飼料摂取量および体重の増減>
実験開始後から終了時間でのマウスの飼料摂取量および終了時のマウスの体重は、以下の表12に示すように、低分子化ヒジキ群と未処理ヒジキ群との間で特に大きな差は認められなかった。
【0146】
【0147】
<糞重量および糞中排泄胆汁酸量>
24時間おきに排泄された糞を回収し、乾燥重量を秤量した。さらに、乾燥糞を粉砕後、ねじ口試験管に乾燥粉末糞を0.1g量り取った。それに、99.5v/v%エタノール2mLを加えてタッチミキサーでよく混和し、80℃で1時間加温した後、上清のみを別試験管に回収した。この操作を2回行い、上清を約6mL回収した。85℃で1mL以下になるまで蒸発させた後、エタノールを用いて1mLに定容し、抽出液として得た。この抽出液の総胆汁酸濃度を、総胆汁酸テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて測定した。
【0148】
24時間おきに排泄された糞の乾燥重量および乾燥糞中の胆汁酸量を
図3および
図4に示した。
【0149】
糞重量[g/24時間]は、低分子化ヒジキ群の平均値が0.662を示し、未処理ヒジキ群の平均値の0.613よりも高い値を示した(
図3)。
【0150】
さらに、糞中排泄胆汁酸量[μmol/24時間]は、低分子化ヒジキ群の平均値が0.827を示し、未処理ヒジキ群の平均値の0.671よりも高い値を示した(
図4)。
【0151】
<アディポネクチンの測定>
投与最終週(3週目)に尾静脈より採血を行い、従来法を用いて血中のアディポネクチン値を測定した。
【0152】
投与3週目のアディポネクチン値[ng/mL]を
図5に示した。アディポネクチン値は、低分子化ヒジキ群の平均値が3182を示し、未処理ヒジキ群の平均値の2328よりも高い値を示した。
【0153】
<ヘモグロビンA1c(HbA1c)値の測定>
投与最終週(3週目)に尾静脈より採血を行い、ヘモグロビンA1c値を測定した。ヘモグロビンA1c値の測定は、小型迅速ヘモグロビンA1c、Malb/Cアナライザー(DCA2000システム、バイエルメディカル社製)およびカートリッジ(シーメンス社製)を用いて行った。
【0154】
投与3週目のヘモグロビンA1c値[%]を
図6に示した。ヘモグロビンA1c値では、低分子化ヒジキ群の平均値が7.19を示し、未処理ヒジキ群の平均値の7.24よりも低い値を示した。
【0155】
<終了時血糖値およびインスリン値の測定>
投与終了時、絶食2~4時間後に、イソフルラン吸引麻酔下で腹部大動脈から全採血し、安楽死させた。採取した血液は、遠心分離(3000rpm,10分)を行い、得られた血清中のグルコース濃度を生化学自動分析装置(富士ドライケム 4000、富士フィルムメディカル株式会社製)および検体スライド(富士フィルムメディカル株式会社製)を用いて測定した。血清インスリン濃度の測定は、市販の測定キット(レビスインスリンマウスHタイプ、株式会社シバヤギ製)を用いて測定した。
【0156】
投与終了時の血糖値[mg/dL]を
図7に示した。終了時血糖値では、低分子化ヒジキ群の平均値が432を示し、未処理ヒジキ群の平均値の505よりも低い値を示した。
【0157】
投与終了時のインスリン値[μU/mL]を
図8に示した。終了時インスリン値では、低分子化ヒジキ群の平均値が0.156を示し、未処理ヒジキ群の平均値の0.369よりも低い値を示した。
【0158】
さらに、インスリン抵抗性指数(HOMA-R)を、血糖値およびインスリン値を用いて算出した。インスリン抵抗性指数(HOMA-R)はホメオスタシスモデルアセスメント比(homeostasis model assessment ratio)であり、下記式により算出することができる:
【0159】
【0160】
血糖値およびインスリン値から算出されるインスリン抵抗性指数を
図9に示した。インスリン抵抗性指数では、低分子化ヒジキ群の平均値が0.180を示し、未処理ヒジキ群の平均値の0.470よりも低い値を示した。
【0161】
本実施例によれば、低分子化ヒジキ群が、未処理ヒジキ群に対して、糞乾燥重量では8.1%の増加と10%での有意性が、胆汁酸排泄量では23%の増加と10%での有意性が、アディポネクチン値では37%の増加と5%での有意性が、それぞれ示された。また、ヘモグロビンA1cでは0.79%の低減が、血糖値では14%の低減と5%での有意性が、インスリン値では58%の低減と20%での有意性が、インスリン抵抗性指数では62%の低減と20%での有意性が、それぞれ低分子量化ヒジキ群で示された。
【0162】
マウス実験での糞重量、糞中排泄胆汁酸量、アディポネクチン値、血糖値、インスリン値およびインスリン抵抗性指数の実測値(平均値)および標準偏差を表13に、未処理ヒジキ群を分母とする群間での増減率[%]、増減率の判定、有意差検定でのp値およびp値から導かれる有意水準とを表14に示す。
【0163】
【0164】
【0165】
このように、II型糖尿病モデルマウスは調製例3の低分子化ヒジキ試料(ヒジキ由来精製脱アルギン酸多糖類(ヒジキフコイダン)加水分解粉末)を摂取することにより、胆汁酸排泄促進傾向と10%での有意性と共に、アディポネクチン分泌量の大幅な増大傾向と5%での有意性を有していることが示された。
【0166】
さらに、本実施例においては、II型糖尿病モデルマウスの低分子量化ヒジキ試料の摂取では、低いインスリン抵抗性指数の大幅な低減傾向が示され、インスリン抵抗性悪化を抑制する効果もまた示された。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、例えば、食品添加剤、食品およびその材料、ならびに医薬品およびその材料に関する製造分野において有用である。