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特許7008325放射線透視非破壊検査方法及び放射線透視非破壊検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】放射線透視非破壊検査方法及び放射線透視非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20220118BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20220118BHJP
   A61B 6/02 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01N23/04
A61B6/00 350A
A61B6/02 351Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017220630
(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2019090740
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】711010529
【氏名又は名称】土橋 克広
(74)【代理人】
【識別番号】100176164
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 州志
(72)【発明者】
【氏名】土橋 克広
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-064906(JP,A)
【文献】特開2009-186271(JP,A)
【文献】特開2003-004666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0103546(US,A1)
【文献】特開2013-217773(JP,A)
【文献】特表2017-509891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - A61B 6/14
G01N 23/00 - G01N 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線を用いた透過画像から前記電離放射線の被照射体の内部に含まれる被検査体の大きさ、像の拡大率及び放射線源と前記被検査体との位置関係を推定するための非破壊検査方法であって、
前記放射線源及び前記被照射体の何れかを直線移動させ、両者の位置関係を変えることにより、それぞれの位置の放射線透視画像の2個以上を取得し、前記放射線透視画像上の像の大きさ又は径、及び位置の変化に伴う前記放射線源及び前記被照射体の何れかの移動距離の測定データと、前記放射線源及び前記放射線透視画像が作られる受像器の2位置間において最初の位置における前記2位置間の距離の既知データとを用いて、前記放射線源及び前記被照射体の何れかを一方向に直線移動させる操作を1回又は間欠的に2回以上繰り返すだけで、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を、数量間の関係として表した連立式から幾何的に算出して推定することを特徴とする放射線透視非破壊検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線透視非破壊検査方法において、前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を変えた2個以上の放射線透視画像を取得する際の前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸に沿って前記放射線源を移動させることによって変化させ、
下記式(1)及び下記式(2)の1以上の連立式を用いて、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を幾何的に算出して推定することを特徴とする放射線透視非破壊検査方法。
=d(b/a) (1)
=d(b+L)/(a+L) (2)
(式中、a、b、及びDは、最初の位置において、それぞれ放射線源の位置から被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、前記放射線源からの受像器までの2位置間の距離として入力される既知データ、及び前記受像器で前記被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データである。iは1~mの整数であり、D及びLは、前記放射線源を放射線照射軸に平行な軸に沿ってm回移動するときに、それぞれ前記放射線源(焦点)がi番目の位置に配置されるときの前記被検査体が前記受像器に作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、及び前記放射線源の最初の位置からi番目の位置までの移動距離として入力される測定データである。Lは、前記放射線源が前記受像器の側に移動するときは負の値をとり、前記放射線源が前記受像器の側と反対側に移動するときは正の値をとる。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期及びi番目の位置における像の拡大率は、それぞれD/d及びD/dによって算出される物理量である。)
【請求項3】
請求項1に記載の放射線透視非破壊検査方法において、前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を変えた2個以上の放射線透視画像を取得する際の前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸に沿って前記被照射体を移動させることによって変化させ、
下記式(1)及び下記式(3)の1以上の連立式を用いて、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を幾何的に算出して推定することを特徴とする放射線透視非破壊検査方法。
=d(b/a) (1)
i=db/(a+M) (3)
(式中、a、b、及びDは、最初の位置において、それぞれ放射線源の位置から被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、前記放射線源からの受像器までの2位置間の距離として入力される既知データ、及び前記受像器で前記被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データである。iは1~nの整数であり、D及びMは、前記被検査体が含まれる被照射体を放射線照射軸に平行な軸に沿ってn回移動するときに、それぞれ前記被照射体がi番目の位置に配置されるときの前記被検査体が前記受像器に作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、及び前記被照射体の最初の位置からi番目の位置までの移動距離として入力される測定データである。Mは、前記被照射体が前記受像器側に移動するときは正の値をとり、前記被照射体が前記受像器側と反対側に移動するときは負の値をとる。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期及びi番目の位置における像の拡大率は、それぞれD/d及びD/dによって算出される物理量である。)
【請求項4】
請求項1に記載の放射線透視非破壊検査方法において、前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を変えた2個以上の放射線透視画像を取得する際の前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿って前記被照射体を移動させることによって変化させ、
下記式(1)及び下記式(4)の1以上の連立式を用いて、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を幾何的に算出して推定することを特徴とする放射線透視非破壊検査方法。
=d(b/a) (1)
d=D(H/H’) (4)
(式中、D,a、及びbは、最初の位置において、それぞれ受像器での被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、放射線源の位置から前記被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、及び前記放射線源からの前記最初の位置における受像器までの2位置間の距離として入力される既知データである。jは1~sの整数であり、D,H、及びH’は、前記被検査体が含まれる被照射体を放射線照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿ってs回移動するときに、それぞれ前記被照射体のj番目の位置に配置されるときの前記被検査体が前記受像器に作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、前記被照射体の最初の位置からj番目の位置までの移動距離として入力される測定データ、及び前記受像器に作られる像の最初の位置からj番目の位置までの移動距離として入力される測定データである。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期及びi番目の位置における像の拡大率は、それぞれD/d及びD/dによって算出される物理量である。)
【請求項5】
請求項1に記載の放射線透視非破壊検査方法において、前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を変えた2個以上の放射線透視画像を取得する際の前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿って前記放射線源を移動させることによって変化させ、
下記式(1)及び下記式(5)の1以上の連立式を用いて、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を幾何的に算出して推定することを特徴とする放射線透視非破壊検査方法。
=d(b/a) (1)
d=D/(G’+G) (5)
(式中、D,a、及びbは、最初の位置において、それぞれ受像器での被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、放射線源の位置から前記被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、及び前記放射線源からの前記最初の位置における受像器までの2位置間の距離として入力される既知データである。jは1~tの整数であり、D,G、及びG’は、前記放射線源を放射線照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿ってt回移動するときに、それぞれ前記放射線源のj番目の位置に配置されるときの前記被検査体が前記受像器に作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、前記放射線源の最初の位置からj番目の位置までの移動距離として入力される測定データ、及び前記受像器に作られる像の最初の位置からj番目の位置までの移動距離として入力される測定データである。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期及びi番目の位置における像の拡大率は、それぞれD/d及びD/dによって算出される物理量である。)
【請求項6】
前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を変えた2個以上の放射線透視画像を取得する際の前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸の2つの軸方向に沿って前記放射線源及び前記被照射体の少なくともいずれかを移動することによってそれぞれ独立に変化させることにより、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を幾何的に算出して推定することを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の放射線透視非破壊検査方法。
【請求項7】
請求項1に記載の放射線透視非破壊検査方法において、前記放射線源を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸で形成される面の面内斜め方向に移動させることにより、それぞれの位置で取得する前記放射線透視画像の中心が前記放射線照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の前記任意の一軸に沿って移動する距離の測定データと、前記放射線源及び前記受像器の位置関係の2位置間において前記放射線照射軸に対して平行な軸方向及び垂直に位置する面内径方向の前記任意の一軸に沿って移動する距離データとから、下記式(1)及び下記式(6)の1以上からなる連立式を用いて、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を幾何的に算出して推定することを特徴とする放射線透視非破壊検査方法。
=d(b/a) (1)
d=D(b+a’)/b(I+I’) (6)
(式中、a、b、及びDは、最初の位置において、それぞれ放射線源の位置から被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、前記放射線源からの受像器までの2位置間の距離として入力される既知データ、及び前記受像器で前記被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データである。kは1~pの整数であり、a、I及びI’は、前記放射線源を放射線照射軸に水平な軸及び垂直な軸で形成される面の面内斜め方向にp回移動するときに、それぞれ前記放射線源の最初の位置からk番目の位置までの移動距離を放射線照射軸に平行な軸に投影したときの値として入力される測定データ、前記被検査体の最初の位置からk番目の位置までの移動距離を放射線照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の前記任意の一軸に投影したときの値として入力される測定データ、及び前記受像器に作られる像の中心の最初の位置からk番目の位置までの前記任意の一軸方向の移動距離として入力される測定データである。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期の位置における拡大率は、D/dによって算出される物理量である。)
【請求項8】
放射線源及び被照射体の何れかを一方向に直線移動させる操作を1回又は間欠的に2回以上繰り返すだけで、電離放射線を用いた透過画像から、前記被照射体の内部に含まれる被検査体の大きさ(d)、像の拡大率(D/d)及び前記放射線源と前記被検査体との距離(a)を推定するための放射線透視非破壊検査装置であって、
前記電離放射線を照射するための放射線源と、
前記被検査体の画像面を写しだす受像器と、
前記画像面に対して前記被照射体の位置関係を、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸方向及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の少なくとも何れか一方向、又は前記平行な軸と垂直に位置する面内径方向の任意の一軸とによって形成される面の面内斜め方向にそれぞれ独立に一方向だけに沿って変えるため、前記放射線源及び前記受像器の少なくとも一つを手動又は自動で移動するための移動機構と、
前記画像面と前記放射線源との間に配置し、前記画像面に対して一定の距離で配置させるための移動機構を有する、前記被照射体を支持するための試料ホルダーと、
次の(A)及び(B)、すなわち、
(A)前記放射線源及び前記被照射体の何れかを前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸方向及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の何れか一方向、又は前記平行な軸と前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸とによって形成される面の面内斜め方向にそれぞれ独立に直線移動させるときの前記平行な軸方向及び前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の少なくとも何れかの方向の移動距離と、前記放射線源と前記画像面との間の距離(b)に応じて前記受像器に写しだされる前記被検査体画像の大きさ又は径(D)と、をそれぞれ計測及び算出する手段、
(B)前記放射線源と前記画像面との距離(b)を一定にして前記受像器に写しだされる前記被検査体画像が前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向へ移動する場合は、前記被検査体画像の移動距離を測定及び算出する手段、
によって得られる測定データ、及び前記放射線源と前記画像面との2位置間の距離(b)において最初の位置における前記2位置間の距離として入力される既知データを用いて、前記被検査体の大きさ(d)、前記像の拡大率(D/d)及び前記放射線源と前記被検査体との距離(a)を、数量間の関係として表した連立式から計算して求める演算処理手段を備える撮像制御装置と、
を有する放射線透視非破壊検査装置。
【請求項9】
前記放射線源の移動機構が、さらに放射線源移動の距離、方向及び角度の少なくとも何れかを自動制御するための放射線源移動制御装置を有することを特徴とする請求項8に記載の放射線透視非破壊検査装置。
【請求項10】
前記放射線源が2以上の放射線源から構成され、且つ、前記2以上の放射線源は、前記画像面に対して平行方向及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の少なくとも何れか一方向にそれぞれ独立に移動するときの前記各移動距離に相当する距離だけ離して配置することを特徴とする請求項8又は9に記載の放射線透視非破壊検査装置。
【請求項11】
前記演算処理手段において、前記放射線源を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行方向に移動する場合は、下記式(1)及び下記式(2)の1以上の連立式を用いて、前記被検査体の大きさ(d)、前記像の拡大率(D/d)及び前記放射線源と被検査体との距離(a)を求めることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の放射線透視非破壊検査装置。
=d(b/a) (1)
=d(b+L)/(a+L) (2)
(式中、a、b、及びDは、最初の位置において、それぞれ放射線源の位置から被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、前記放射線源からの受像器までの2位置間の距離として入力される既知データ、及び前記受像器で前記被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データである。iは1~mの整数であり、D及びLは、前記放射線源を放射線照射軸に平行な軸に沿ってm回移動するときに、それぞれ前記放射線源(焦点)がi番目の位置に配置されるときの前記被検査体が前記受像器に作る像の大きさとして入力される測定データ、及び前記放射線源の最初の位置からi番目の位置までの移動距離として入力される測定データである。Lは、前記放射線源が前記受像器の側に移動するときは負の値をとり、前記放射線源が前記受像器の側と反対側に移動するときは正の値をとる。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期及びi番目の位置における像の拡大率は、それぞれD/d及びD/dによって算出される物理量である。)
【請求項12】
前記演算処理手段において、前記被照射体を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行方向に移動する場合は下記式(1)及び下記式(3)の1以上の連立式を用いて、前記被検査体の大きさ(d)、前記像の拡大率(D/d)及び前記放射線源と被検査体との距離(a)を求めることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の放射線透視非破壊検査装置。
=d(b/a) (1)
=db/(a+M) (3)
(式中、a、b、及びDは、最初の位置において、それぞれ放射線源の位置から被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、前記放射線源からの受像器までの2位置間の距離として入力される既知データ、及び前記受像器で前記被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データである。iは1~nの整数であり、D及びMは、前記被検査体が含まれる被照射体を放射線照射軸に平行な軸に沿ってn回移動するときに、それぞれ前記被照射体がi番目の位置に配置されるときの前記被検査体が前記受像器に作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、及び前記被照射体の最初の位置からi番目の位置までの移動距離として入力される測定データである。Mは、前記被照射体が前記受像器側に移動するときは正の値をとり、前記被照射体が前記受像器側と反対側に移動するときは負の値をとる。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期及びi番目の位置における像の拡大率は、それぞれD/d及びD/dによって算出される物理量である。)
【請求項13】
前記演算処理手段において、前記被照射体を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向に移動する場合は下記式(1)及び下記式(4)の1以上の連立式を用いて、前記被検査体の大きさ(d)、前記像の拡大率(D/d)及び前記放射線源と被検査体との距離(a)を求めることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の放射線透視非破壊検査装置。
=d(b/a) (1)
d=D(H/H’) (4)
(式中、D,a、及びbは、最初の位置において、それぞれ受像器での被検査体が作る像の大きさとして入力される測定データ、放射線源の位置から前記被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、及び前記放射線源からの受像器までの2位置間の距離として入力される既知データである。jは1~sの整数であり、D,H、及びH’は、前記被検査体が含まれる被照射体を放射線照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿ってs回移動するときに、それぞれ前記被照射体のj番目の位置に配置されるときの前記被検査体が前記受像器に作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、前記被照射体の最初の位置からj番目の位置までの移動距離として入力される測定データ、及び前記受像器に作られる像の最初の位置からj番目の位置までの移動距離として入力される測定データである。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期及びi番目の位置における像の拡大率は、それぞれD/d及びD/dによって算出される物理量である。)
【請求項14】
前記演算処理手段において、前記放射線源を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内方向の任意の一軸方向に移動する場合は下記式(1)及び下記式(5)の1以上の連立式を用いて、前記被検査体の大きさ(d)、前記像の拡大率(D/d)及び前記放射線源と被検査体との距離(a)を求めることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の放射線透視非破壊検査装置。
=d(b/a) (1)
d=D/(G’+G) (5)
(式中、D,a、及びbは、最初の位置において、それぞれ受像器での被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、放射線源の位置から前記被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、及び前記放射線源からの前記受像器までの2位置間の距離として入力される既知データである。jは1~tの整数であり、D,G、及びG’は、前記放射線源を放射線照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿ってt回移動するときに、それぞれ前記放射線源のj番目の位置に配置されるときの前記被検査体が前記受像器に作る像の大きさ又は径として入力される測定データ、前記放射線源の最初の位置からj番目の位置までの移動距離として入力される測定データ、及び前記受像器に作られる像の最初の位置からj番目の位置までの移動距離として入力される測定データである。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期及びi番目の位置における像の拡大率は、それぞれD/d及びD/dによって算出される物理量である。)
【請求項15】
前記演算処理手段において、前記放射線源を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸で形成される面の面内斜め方向に移動させる場合は下記式(1)及び下記式(6)の1以上からなる連立式を用いて、前記被検査体の大きさ(d)、前記像の拡大率(D/d)及び前記放射線源と被検査体との距離(a)を幾何的に算出して推定することを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の放射線透視非破壊検査装置。
=d+(b/a) (1)
d=D(b+a)/b(I+I’) (6)
(式中、a、b、及びDは、最初の位置において、それぞれ放射線源の位置から被検査体までの距離として幾何的に算出される物理量、前記放射線源からの受像器までの2位置間の距離として入力される既知データ、及び前記受像器で前記被検査体が作る像の大きさ又は径として入力される測定データである。kは1~pの整数であり、a、I及びI’は、前記放射線源を放射線照射軸に水平な軸及び垂直な軸で形成される面の面内斜め方向にp回移動するときに、それぞれ前記放射線源の最初の位置からk番目の位置までの移動距離を放射線照射軸に平行な軸に投影したときの値として入力される測定データ、前記被検査体の最初の位置からk番目の位置までの移動距離を放射線照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の前記任意の一軸に投影したときの値として入力される測定データ、及び前記受像器に作られる像の中心の最初の位置からk番目の位置までの前記任意の一軸方向の移動距離として入力される測定データである。dは前記被検査体の大きさ又は径として幾何的に算出される物理量である。初期の位置における像の拡大率は、D/dによって算出される物理量である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(準)点線源の電離放射線源を用いた放射線透視非破壊検査方法及び放射線透視非破壊検査に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野や産業分野では、電離放射線を用いた人体の透視や構造物の非破壊検査が行われている。電離放射線のうち、特にX線やガンマ線が、非破壊検査に多用される。
【0003】
電離放射線を用いた非破壊検査は単純透視や二方向からの透視によって行われることが多いが、コンピューター断層撮影(CT) も多く行われている。この透視は、電離放射線を被照射体に照射し、被照射体を透過した放射線の強度(透過率) 等から被照射体内部の情報を得るというものである。
【0004】
単純透視や二方向からの透視の場合、X線検出器は二次元検出器であることが多い。二次元検出器としてはX 線フィルムやイメージングプレートが用いられるが、画像を電磁的にコンピューターへ転送してオンラインで可視化及び保存することが可能なフラットパネル検出器(FPD) も用いられる。これらX線検出器は、一般的に受像器と呼ばれる。受像器においてX線を感知する面を受像面と呼ぶ。
【0005】
一般的に、電離放射線を照射する対象を被照射体と呼ぶ。また、一般的な表現では無いが、ここでは、被照射体の内部の検査すべき領域等を、被検査体と呼ぶことにする。
【0006】
一般的に、X線等の電離放射線は、コリメーター等を使用して照射野を制限し、受像器の受像面の中心と照射野の中心を合わせる。便宜上、放射線源と照射野の中心とを結ぶ線若しくは利用線錐の頂点から底面に下ろした垂線を照射軸と呼ぶことにする。利用線錐とは、X線等が照射されている空間であって、錐体状となる。錐体の底面の形状は、コリメーター等の形状に依存し、任意の形状を取りうる。利用線錐の頂点は放射線源の位置(焦点) と一致する。また、利用線錐の底面は、受像面を含むか若しくは含まれると考えられる面を意味する。
【0007】
CT を適用すれば、人体や構造物の内部構造を定量的に評価可能である。しかし、CT は再構成画像を得るための透視画像情報を大量に必要とするため、撮影時間や被曝の点で問題がある。また、被照射体の回りをX線発生装置とX線検出器を円状に移動させるか、被照射体を回転させる必要がある。医療用のCT 装置では、患者を回転させることは望ましくないので、ドーナツ状の回転ステージにX線管とX線検出器が配置され、患者の回りをスキャンするようになっている。
【0008】
このように、CTは非常にコストの掛かる手法であり、CTを適用する必要がないのであれば、単純透視を行うのが通例である。ここで言うコストとは、装置の価格のみならず、撮影に必要な労力や時間的なものや、患者の被曝等も含まれる。非破壊検査では、作業者の被曝も無視出来ない。単純透視により必要な情報が得られるのであれば、高コストのCT を適用する必要は無い。
【0009】
しかし、単純透視の場合は、X線源は通常は(準) 点光源であるために、拡大率の問題が存在する。
【0010】
X線源(焦点) の位置から検査対象物までの距離をa、X線源からX線検出器までの距離をbとすると、拡大率はb/a で表される。例えば検査対象物の大きさをdとすると、受像器の受像面で得られる画像上の像の大きさDはd×b/aで求められる。
【0011】
a及びbが判明している状況であれば、Dからdを推定することが出来る。しかし、低密度物質である被照射体に内在する高密度物質である被検査体、例えば、人体内の骨や鉄筋コンクリート内の鉄筋など、厳密な位置が不明な場合、bは判明していてもaは不明であり、dを求めることは出来ない。例えば、図10に示すように、同じ大きさの高密度物質が低密度物質に内在していても、X線源からの距離によって、X線検出器で得られる像の大きさは異なる。このため、前記高密度物質の正確な大きさdを求めることは出来ない。その場合は、aがある範囲に収まると仮定して、dが取りうる値の範囲を求めることになる。
【0012】
また、図11に示すように、大きさの異なる高密度物質部分がX線の照射軸方向同一線上の異なる位置に存在する場合は、X線検出器にて同じ大きさの像を作ることがある。この場合も正確な大きさdを推定することは出来ない。
【0013】
前述の通り、CTを適用すれば、被検査体の断面積を求めることは可能であるが、CTは高コストである。例えば、鉄筋コンクリート構造物において鉄筋の断面積を正確に知ることは理想であるが、単に径(直径、半径) が推定出来るだけでも重要な情報となり得る。
【0014】
また、2方向以上から同一被照射体を撮影するステレオ撮像を適用すれば、図10の被検査体の位置を推定可能であるが、X線源及びX線検出器と被照射体の位置関係を把握していないと、被検査体の部分の位置を推定することは出来ない。実際の非破壊検査においては、これは容易ではなくコストが掛かる。
【0015】
別の解決策として、電離放射線(X線等) による透視以外の、被検査体の位置を測定可能な手法(例えば超音波や赤外線若しくは電磁波) により被照射体の表面からの深さを求めるという方法も考えられる。しかし、この場合、他の手法による測定を待つ必要があり、X線だけで被検査体の位置を推定できる方が簡便であると思われる。
【0016】
X線での撮像範囲内に複数の鉄筋が隣接しているような場合、例えば、超音波を用いる測定では鉄筋の深さ方向の位置が、どの鉄筋のものであるかを判別するのが不可能な場合が考えられる。
【0017】
さらに、コンクリート内の空洞や、金属鋳物の空洞や亀裂など、高密度物質である被照射体の内部の低密度部分である被検査体の位置について、上記の場合と同一の手法で位置を推定出来るとは限らない。
【0018】
図10では、低密度物質物体である被照射体に内在する高密度物質である被検査体を想定していたが、高密度物質物体である被照射体内に内在する低密度部分である被検査体でも同様である。
【0019】
所謂ペンシルビームX線を用いて被照射体を一次元或いは二次元的にスキャンする方法を適用すれば、像の拡大率を考慮する必要はないが、検査に膨大な時間が必要となる。
【0020】
X線をファンビーム(扇型) とし、受像機としてラインセンサーを用いる方法もある。その場合、ラインセンサーのスキャン方向については拡大率を考慮する必要がない。しかし、スキャン軸に対して垂直な方向すなわちセンサーが並んでいる方向に関しては、拡大率の問題が発生する。また、一軸とはいえスキャンする必要があるので、二次元画像を得るためには時間が掛かる。
【0021】
原理的には、X線は、X線源(焦点) から十分距離が離れると平行線とみなせるため、拡大率の問題は無視出来る。しかし、一般的なX線源は(準) 点光源であり、距離の二乗に反比例して単位面積当たりのX線照射量が低下する。従って、X線源を被照射体から離して撮像することは撮像時間の面で不利である。これは、作業者の被曝にも繋がる問題となる。また、X線源と被照射体を内包する相応の空間を要する。
【0022】
特許文献1は、人体の厚さから内臓等の像の拡大率を推定しようとするものであるが、測定対象部位と受像面との間の距離を測定する距離推定手段を併用する必要があり、線撮像で得られた像のみから直接的に位置や拡大率を推定するものではないため、誤差が含まれる可能性を否定できない。また、内臓の位置という前提条件があるので、この前提条件が満たされない場合は正確な値を得ることが出来ず、改善の余地がある。
【0023】
また、非特許文献1では、幾何学的手法により拡大率を求める方法が示されている(式2.6)。しかし、X線源からX線検出器までの距離bが既知である必要があり、計算式もやや複雑であるため、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】特許公開2013-255700号公報
【非特許文献】
【0025】
【文献】武文晶, 東京大学大学院工学系研究科博士課程学位論文(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、X線等の放射線源の位置及び受像機と被検査体との位置の関係が不明な場合において、撮像された拡大像から、被検査体の大きさや、放射線源等と被検査体の位置関係(距離) を推定することができる放射線透視非破壊検査方法及び放射線透視非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、前記放射線源及び前記被照射体の何れかを直線移動させ、両者の位置関係を変えることにより、それぞれの位置の放射線透視画像の2個以上を取得し、前記放射線透視画像上の像の大きさ又は径及び位置の変化に伴う前記放射線源及び前記被照射体の何れかの移動距離の測定データと、前記放射線源及び前記放射線透視画像が作られる受像器の2位置間において最初の位置における前記2位置間の距離の既知データとを用いて、前記放射線源及び前記被照射体の何れかを一方向に直線移動させる操作を1回又は間欠的に2回以上繰り返すだけで、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を、数量間の関係として表した連立式から幾何的に算出して推定することを特徴とする放射線透視非破壊検査方法を提供する。
【0028】
本発明は、また、前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を変えた2個以上の放射線透視画像を取得する際の前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を下記の(a)~(f)に示す6つの手段のいずれかの手段で変え、各手段に応じて成立する連立式に基づいて、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を幾何的に算出して推定することを特徴とする放射線透視非破壊検査方法を提供する。
(a)前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸に沿って前記放射線源を移動させる手段、
(b)前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸に沿って前記被照射体を移動させる手段
(c)前記放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿って前記被照射体を移動させる手段
(d)前記放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿って前記放射線源を移動させる手段
(e)前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸の2つの軸方向に沿って前記放射線源及び前記照射体の少なくともいずれかをそれぞれ独立に移動させる手段、及び
(f)前記放射線源を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸で形成される面の面内斜め方向に移動させる手段。
【0029】
本発明は、放射線源及び被照射体の何れかを一方向に直線移動させる操作を1回又は間欠的に2回以上繰り返すだけで、電離放射線を用いた透過画像から、前記被照射体の内部に含まれる被検査体の大きさ(d)、の拡大率(D/d)及び前記放射線源と前記被検査体との距離(a)を推定するための放射線透視非破壊検査装置であって、
前記電離放射線を照射するための放射線源と、
前記被検査体の画像面を写しだす受像器と、
前記画像面に対して前記被照射体の位置関係を、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸方向及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の少なくとも何れか一方向、又は前記平行な軸と垂直に位置する面内径方向の任意の一軸とによって形成される面の面内斜め方向にそれぞれ独立に一方向だけに沿って変えるため、前記放射源及び前記受像器の少なくとも一つを手動又は自動で移動するための移動機構と、
前記画像面と前記放射線源との間に配置し、前記画像面に対して一定の距離で配置させるための移動機構を有する、前記被照射体を支持するための試料ホルダーと、
次の(A)及び(B)、すなわち、
(A)前記放射源及び前記被照射体の何れかを前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸方向及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の何れか一方向、又は前記平行な軸と前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸とによって形成される面の面内斜め方向にそれぞれ独立に直線移動させるときの前記平行な軸方向及び前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の少なくとも何れかの方向の移動距離、前記放射源と前記画像面との間の距離(b)に応じて前記受像器に写しだされる前記被検査体画像の大きさ又は径(D)と、をそれぞれ計測及び算出する手段、
(B)前記放射源と前記画像面との距離(b)を一定にして前記受像器に写しだされる前記被検査体画像が前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向へ移動する場合は、前記被検査体画像の移動距離を測定及び算出する手段、
によって得られる測定データ、及び前記放射線源と前記画像面との2位置間の距離(b)において最初の位置における前記2位置間の距離として入力される既知データを用いて、前記被検査体の大きさ(d)、前記の拡大率(D/d)及び前記放射線源と前記被検査体との距離(a)を、数量間の関係として表した連立式から計算して求める演算処理手段を備える撮像制御装置と、を有する放射線透視非破壊検査装置を提供する。
【0030】
本発明は、また、前記放射線透視非破壊検査装置において、前記放射線源の移動機構が、さらに放射線源移動の距離、方向及び角度の少なくとも何れかを自動制御するための放射線源移動制御装置を有することを特徴とする放射線透視非破壊検査装置を提供する。
【0031】
本発明は、前記放射線透視非破壊検査装置において、さらに、前記放射線源が2以上の放射線源から構成され、且つ、前記2以上の放射線源は、前記画像面に対して平行方向及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の少なくとも何れか一方向にそれぞれ独立に移動するときの前記各移動距離に相当する距離だけ離して配置することを特徴とする放射線透視非破壊検査装置を提供する。
【0032】
本発明は、前記放射線透視非破壊検査装置の前記演算処理手段において、前記(a)~(f)に示す6つの手段のいずれかの手段で測定を行うときに成立する連立式に基づいて、前記被検査体の大きさ、前記像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離を求めることを特徴とする放射線透視非破壊検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0033】
X線(電離放射線) 源若しくは被照射体を、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸方向及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の少なくとも何れか一方向、又は前記平行な軸と垂直に位置する面内径方向の任意の一軸とによって形成される面の面内斜め方向に、それぞれ独立させて単純な直線移動を行うときに撮影して取得される撮像のみで、直接測定出来ない状況にある被検査体(例えばコンクリート内の鉄筋や、人体の骨) の大きさを推定することが出来る。その際、他の非破壊検査手法の補助を必要としないため、従来の方法に比べて測定が簡便であるだけでなく、測定精度の大幅な向上を係ることができる。
【0034】
また、最低2回の撮像で目的を達成できるため、X線CT 等に比べて低コストで測定を行うことができる。
【0035】
さらに、3回以上の撮像を行うことにより、X線源(焦点)、被検査体、撮像面の位置関係を把握することが出来る。そのため、他の方法による位置関係の測定を行う必要が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の第一の方法の例を示す模式図である。
図2】本発明の第一の方法の変形例を示す模式図である。
図3】本発明の第二の方法において、放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸を示す模式図である。
図4】本発明の第二の方法の例を示す模式図である。
図5】本発明の第二の方法の変形例を示す模式図である。
図6】本発明の第三の方法の例を示す模式図である。
図7】本発明を実施するための代表的な装置の機能及び動作の例を示すブロック図である。
図8】本発明を実施するための代表的な装置の機能及び動作の変形例を示すブロック図である。
図9】ラインセンサーを用いた本発明の実施例を示す模式図である。
図10】従来のX線透視撮像における拡大率の問題を示した模式図である。
図11】従来のX線透視撮像における、異なる大きさの被検査体が同じ大きさの像を作るという、拡大率の別の問題を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の実施形態について説明する。
【0038】
本発明は、放射線源(焦点) と被照射体の位置関係を変化させて複数回の撮像を行い、放射線源(焦点) と被照射体の位置関係に対する像の位置や大きさの相関関係から、像の拡大率若しくは被検査体の大きさや放射線照射軸方向の位置を推定する。
【0039】
この時、放射線源(焦点) と被照射体の位置関係の変化の方法は、基本的に次の三通りが考えられる。
【0040】
第一の方法は、放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸に沿って、放射線源と被照射体の位置関係を変化させる方法である。第二の方法は、放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿って、前記放射線源と被照射体の位置関係を変化させる方法である。そして、第三の方法は、前記放射線源を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸で形成される面の面内斜め方向に、放射線源と被照射体の位置関係を変化させる方法である。ここで、放射線の照射軸とは、前記でも述べたように、放射源と照射野の中心とを結ぶ線、若しくは錐体状の利用線錐において頂点(照射線源の焦点)と受像面に形成される底面の中心とを結ぶ線を意味する。以下、第一、第二及び第三の各方法について説明する。
【0041】
<第一の方法>
図1及び図2は、第一の方法を説明する模式図である。放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸に沿って、放射線源と被照射体の位置関係を変化させる方法において、図1は放射線源を移動させる方法であり、図2は被検査体が内在する被照射体を移動させる方法である。図1及び図2に示す方法は、基本的には電離放射線全般に適応可能であるが、X線を例にとって説明する。簡単のため、X線照射の中心を含むX線照射軸上に被検査体があるものとする。ここで言う被検査体とは、低密度物質に内在される高密度部分或いは高密度物質に内在する低密度部分等、X線透視で像として認識できるものを指す。
【0042】
図1に示すように、X線源の焦点1はX線の照射軸上を移動するものとする。F、Fは、X線源の焦点1の位置である。a、aは、X線源の焦点1の位置(F、F) から被検査体2までの距離であり、未知である。b、bは、X線源から受像器の受像面3までの距離である。dは、被検査体の大きさであり、D、Dは、受像器での被検査体が作る像の大きさである。各々の変数の下つき数字は、X線源の位置がその数字に対応する場所にある場合を示す。
【0043】
の位置にX線源の焦点1があった場合、X線源の焦点1と被検査体2との距離はaであり、X線源の焦点1の位置から受像面3までの距離はbである。そして、受像面上の像の大きさはDである。
【0044】
の位置にX線源の焦点1があった場合、X線源の焦点1と被検査体2との距離はaであり、X線源の焦点1の位置から受像面3までの距離はbである。そして、受像面上の像の大きさはDである。
【0045】
ここで、X線源をFからFまで移動させるときの距離をLとする。便宜上、放射線照射軸に平行なX軸を定義する。この時のLはa<aなら正の値である。すなわち、X軸は、被照射体から離れる方向を正となる。これは定義の問題であって、L軸を被照射体から離れる方向を負として定義し、a>aの時Lを負の値としても良い。
【0046】
図1に示す方法は、以下のように(1)式及び(2)式で表される。
【数1】
【0047】
ここで、aとaには、以下の関係がある。
【数2】
この関係を用いると、(1)式及び(2)式は、以下のような連立方程式となる。
【数3】
この連立方程式は、aを消去してdについて解くことが出来、
【数4】
或いは、dを消去してaについて解き、
【数5】
となる。
【0048】
従って、Fの位置にX線源を設置して撮像し、さらにFの位置にX線源を移動させて撮像し、その時得られる像の大きさD及びD、X線源(焦点) の移動距離L及び、X線源と受像面との距離b、bを上式に代入すれば、被検査体の大きさdを求めることが出来る。予めa及びaを知る必要は無い。
【0049】
X線源の焦点1のみを移動させ、被検査体と受像面の距離が変わらないのであれば、b=b+Lとすることも出来る。すなわち、(4)式に代えて、下記(7)式によってX線源の移動距離Lだけでd及びaを求めることができる。
【数6】
【0050】
或いは、X線源の焦点1と受像面3を有する受像器とを一体として具備した装置を用い、被写体に対して該装置をX線照射軸に沿って移動させることによっても実現出来る。
【0051】
dが推定できれば、X線源の位置Fから被検査体までの距離a は、(1)式を変形することにより、下記(8)式で表される。
【数7】
この(8)式に、b、D、dの値を代入してaの値を求めることが出来る。aからdを求めることも然りである。
【0052】
上記は撮像回数が2回であったが、撮像を3回以上(X線源の位置が3箇所以上) 行うことができる。
【0053】
X線源(焦点) の位置が3箇所以上である場合、連立方程式を構成する方程式も3個以上となる。この場合の効果の一つとしては、X線源のみの移動を伴う場合、bはLとbで表されるので、上記(7)式と同じようにbを消去することが出来る。そのため、X線源と受像面との距離bを別途測定若しくは規定する必要が無くなる。これは、後述の被検査体のみを移動する場合にも当てはまる。
【0054】
X線源の焦点のみの位置を変化させる場合、X線源の焦点1の位置の変化量L、Lを用いて、a=a+L、a=a+L及びb=b+L、b=b+Lと置ける。従って、
【数8】
の様な連立方程式を得ることが出来、d、a、bの其々について、
【数9】
と解ける。
【0055】
次に、X線源の焦点のみの位置を変化させるときの一般化した場合について説明する。
【0056】
その場合、X線源(焦点) の位置F(i=0,1・・・、m) に対し
【数10】
と表すことが出来る。但し、a=a+L 又はa=ai-1+Lとなる。通常L=0であるが、任意の値でも良い。
【0057】
の符号については、X線源の移動の向きを受像器側の向きに取るのか、或いはその逆に取るのかで変わる。図1に示すように、後者の場合は、a=a+L 又はa=ai-1+Lとなり、前者の場合は、a=a-L 又はa=ai-1-Lとすることができる。
【0058】
また、bに対しても、Lを用いて、後者の場合はb=b+L、又はb=bi-1+Lとなり、前者の場合はb=b-L、又はb=bi-1-Lとすることが出来る。
【0059】
さらに、bを、X線源の焦点と受像器とを一体として具備した装置を使用する場合のように、Lに依存しない値とすることも考えられる。
【0060】
X線源の位置が3箇所以上である場合の別の効果としては、誤差の評価が挙げられる。自由度に対して式の数が多い場合は、連立方程式は解を持たないが、連立方程式を構成する式について、最小二乗法等の未知数推定法(フィッティング) を用いることにより、未知数dの推定及び誤差の評価を行うことが可能となる。
【0061】
X線源のみの移動若しくは被検査体のみの移動を伴う場合、X線源の位置が4箇所以上であれば、bを消去した上で、dの推定及び誤差の評価が可能である。
【0062】
上記(15)式は、実際の測定を考慮して離散化した式となっているが、連続した関数式として扱っても良い。その場合、上述の式の下つき文字iを取り除き、a及びbをLの関数で表す。これにより、LとDの関係をグラフにプロットするなどし、該式にフィッティングして未知数d及びその誤差を求めることが出来る。前述の通り、X線源の焦点Fは、位置が原点である必要は無い。ある所定の位置を原点に設定するときに、Fの位置を、原点からの座標(X)で表してもよい。通常は、L=0を原点とするのがよい。
【0063】
X線源のみの位置を座標軸上で変化させる場合、図1の下段に示すX軸座標系において、照射源及び受像面の最初の位置(a’、b’)が、それぞれa’=X+a及びb0’=X+bとなる。一方、Dは、照射源の最初の位置と、該最初の位置から移動した後の照射源の位置の差分とから計算されるため、上記(15)式をLの関数による連続式で表す場合と同じようにして、下記(16)式を使って求めることができる。下記(16)式に示すb(L)及びa(L)は、それぞれLを変数とする関数である。
【数11】
【0064】
一方で、2回の撮像のうち1 回を被照射体の反対側から行うことも考えられる。直観的には、被写体が照射軸上のどちらかに偏って位置していれば、偏った位置に対応して拡大率は変化する。一見すると、本発明とは異なる手法のように見えるが、L及びbの定義の仕方により、本発明と同等に扱えることが判る。
【0065】
つまり、Fに対しFが被照射体の反対側に位置しても構わない。その場合は位置関係が図1に示すものと逆になり、aとLとの関係がa=-a+Lとなる、そのため、Dを求めるときの式が上記(4)式とは異なり、D=db/(L-a)となる。
【0066】
X線源の位置と被照射体の位置と受像器の位置を、どのような関係で変化させるかについては、いくつかの方式がある。
【0067】
例えば、図2に示すように、被検査体2を内在する被照射体を移動させる方法を採用することができる。図2に示す方法においては、D及びaを求めるときの式が、以下のように図1の場合と異なる。
【0068】
図2に示すように、例えば、被検査体2を内在する被照射体の移動を最初の位置から受像器側にMだけ1回移動するものとすると、下記の(17)式及び(18)式からなる連立方程式が与えられる。
【数12】
この連立方程式を解くと、d及びaをそれぞれ下記の(19)式及び(20)式から求めることができる。
【数13】
【0069】
従って、X線源の焦点1の位置FにX線源を設置して撮像し、被照射体をFo位置から受像器側にM1だけ移動させて撮像し、その時得られる像の大きさD及びD、非照射体に含まれる被検査体2の移動距離M、及びX線源の焦点1と受像面3との間の一定の距離bを上式に代入すれば、被検査体の大きさdを求めることが出来るため、予めa及びaを知る必要は無い。このように、被照射体に含まれる被検査体1の移動距離Mだけでd及びaを求めることができる。
【0070】
上記は撮像回数が2回であったが、撮像を3回以上(被照射体の位置の移動が3箇所以上)でも測定を行うことができる。被照射体のみの位置を変化させるときの一般化した場合は、被照射体に内在する被放射体2の位置Mi(i=0,1・・・、n) に対し
【数14】
と表すことが出来る。但し、a=a+M 又はa=ai-1+Mとなる。通常L=0であるが、任意の値でも良い。
【0071】
このように、被照射体 の位置が3箇所以上である場合、上記(17)式を含めて、連立方程式を構成する方程式が3個以上となる。Mの符号については、被照射体の移動の向きを受像器側の向きに取るのか、或いはその逆に取るのかで変わる。図2に示すように、前者の場合は、a=a+M 又はa=ai-1+Mとなり、後者の場合は、a=a-M 又はa=ai-1-Mと表すことができる。
【0072】
図2に示す方法においても、図1に示す方法と同様に、X線源の焦点F、被照射体及び受像面の各位置を、ある所定の場所を原点に設定する座標系で表し、被照射体に含まれる被検査体の位置2の移動量Mの関数とする下記(22)式を使って、D及びaを求めてもよい。
【数15】
【0073】
上記の方式を含め、X線源の位置と被照射体の位置と受像器の位置を、どのような関係で変化させるかについては、いくつかの方式があり、それらをまとめて次に示す。
【0074】
一つは、図1に示すように、X線源を移動させ、被照射体と受像器は移動させないという方式である。
【0075】
一つは、X線源は移動させず、被照射体と受像器の位置関係を保ったまま移動させるという方式である。
【0076】
一つは、図2に示すように、X線源と受像器の位置関係及び位置は相対的に変えず、被照射体を移動させるという方式である。
【0077】
一つは、X線源と受像器の位置関係を保ったまま位置を移動させるが、被照射体は移動させないという方式である。
【0078】
一つは、X線源と受像器と被照射体の位置をそれぞれ変えるという方式である。
【0079】
いずれにせよ、X線源と被照射体の位置関係を変化させることが必須である。但し、上記のようにX線源と受像機と被照射体の全ての位置を変化させる場合、2変数以上の多変数での未知数推定を行うことになる。したがって、X線源と受像機の位置関係若しくは被照射体と受像機の位置関係は変化させないことが望ましい。
【0080】
<第二の方法>
放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸に沿って、X線源と被照射体の位置関係を変化させる第二の方法について説明する。本発明において、放射線源からの放射線の照射軸に対して垂直に位置する面内径方向の任意の一軸とは、図3に示すように、放射線源からの放射線の照射軸4に対して垂直に位置する面5において、径方向に伸ばした矢印(→)で表される軸のいずれか一つを意味する。矢印(→)で表される軸としては、基本的に面5において360度の角度で任意の方向を選ぶことができる。ここでは、説明を簡略するため、面5の垂直方向(図において上下方向)の軸6に沿ってX線源と被照射体の位置関係を変化させる場合について、図4及び図5を用いて説明する。
【0081】
図4及び図5は第二の方法を説明する模式図であり、図4は被検査体2を含む被照射体を移動させる方法を示し、図5は放射線源(焦点)1を移動させる方法である。図4及び図5に示す方法は、基本的には電離放射線全般に適応可能であるが、X線を例にとって説明する。
【0082】
図4において、Aの位置に被照射体に内在する被検査体2があるとすると、その像の受像面3での位置はA’である。次に、被検査体2をX線の照射軸とは垂直な方向へAからHだけ移動させてAの位置にあるとすると、その像の位置をA’とする。このA’の位置において撮像される被検査体2の画像は、X線の照射軸からH’だけ移動する。また、X線焦点Fから被検査体2までの距離をa、X線の焦点1の位置Fから受像面3までの距離をbとする。A’とA’の距離H’は、下記の(23)式で表される。
【数16】
は被照査体2を放射線の照射軸4に対して垂直方向に移動させる距離そのものである。この関係を逆手に取り、aを求めることが出来る。すなわち、bが既知であるとすれば、
【数17】
として、aを求めることが出来る。
【0083】
が求められるのであれば、A’の位置にある受像面3上での被検査体2の像の大きさをDとして、被検査体の大きさd は、(25)式で表すことができる。
【数18】
のように求めることが出来る。
【0084】
図4には、H’をA’とA’の位置でそれぞれ撮像される画像の中心部分間の距離として示しているが、本発明においては画像の中心間距離に限定されず、画像の端部を選んでH’の測定点としてもよい。また、中心と、中心以外の所定の地点との2箇所以上を選んでH’の測定とすることもできる。要は、撮像される画像において、移動距離H’が正確に測定できるように鮮明な1又は2以上の地点を選択して測定することが必要である。
【0085】
図4において、A’は照射軸上にあるように作図されているが、実施の際にA’が照射軸上にあることを要求するものではない。しかし、受像面が平面である場合、像は照射の中心から離れる程歪むことが知られているので、この歪みを補正するか、なるべく照射野中心に近い位置で撮像を行い像の大きさを測定するのが望ましい。
【0086】
また、A’とA’の位置が判別可能であればX線源の焦点1 と受像器の受像面位置3との関係が、二回の撮像の間で同じである必要は無い。例えば、被照射体がH移動する際に、受像器も同じ方向にH移動しても良い。被照射体及び受像器がH移動した際の受像器上の像の移動距離H”はH’-Hになるため、H’=H”+Hのように容易に求めることが出来る。受像器を任意の距離を移動させても、その移動距離からHを求めることができる。また、オンラインで画像を取得表示できるような受像機であれば、位置Aと位置Aにおいて、像が受像器の中心になるように受像器を移動させれば、その移動距離はH’に相当する。
【0087】
但し、被照射体である鉄筋コンクリート内部に水平に配置されている被検査体である鉄
筋等の場合、X線源若しくは被照射体を水平に移動させても像の位置が変わったことを識
別出来ない。そのため、水平に配置された鉄筋の拡大率を知るには、X線源若しくは被照
射体を鉛直方向に移動させなければならない。すなわち、鉄筋等の配筋方向に対し水平でない方向(可能な限り垂直)に移動させる必要があるということになる。披検査体の測定すべき輪郭の2点を結ぶ直線に垂直でない(可能な限り並行な)軸にそってX線源若しくは被照射体を移動させる。一方、縦に配置されている鉄筋の場合は、水平に移動させることになる。そのため、縦横(一般的には直交)に鉄筋が配置されている場合は、水平方向と鉛直方向に其々移動させて撮像する方法が考えられるが、最低でも3回の撮像が必要となる。2回の撮像で済ませるには、水平でもない鉛直でもない斜め方向に移動させ、水平方向と鉛直方向の位置関係が同時に変化するようにすることが好ましい。
【0088】
第二の方法についても、第一の方法と同様に、一方向について回以上の移動と3回以上の撮像を行っても良い。
【0089】
具体的には、上記(23)式を一般化し、被照射体に含まれる被検査体の位置2がその移動によって変化した後の各位置A(j=0,1,・・・,s)に対し
【数19】
のように、複数のHとH’についての連立方程式をたて、第一の方法と同様に、最小二乗法等の未知数推定法(フィッティング) を用いてaを推定する。aが推定できれば、dも評価可能となる。
【0090】
もし、a及びbが未知であっても、(26)式を基に3点以上のHで評価すれば、a及びbを推定することが可能であり、(1)式若しくは(26)式によりdの評価が可能になる。
【0091】
(26)式を用いてdを求める場合に、下記(27)式のように一般化が可能であり、同様に、3点以上のHにてa、b及びdを推定することができる。
【数20】
【0092】
X線源の位置と被照射体の位置と受像器の位置を、どのような関係で変化させるかについては、第1の方法と同じように、被照射体だけを移動させる方法以外にもいくつかの方式がある。
【0093】
例えば、図5に示すように、放射線源を移動させることにより、その焦点Fを垂直方向に移動させる方法を採用することができる。図5に示す方法は、D及びaを求めるときの式が、図4の場合と異なり、以下のようになる。
【0094】
図5は放射線源を最初の位置から移動させる例であるが、図5に示す軸6に沿って下方にGだけ1回移動するものとすると、移動後に測定される被検査体2の像中心の位置は、受像面3においてG’だけ上方に移動する。ここで、X線焦点Fから被検査体2までの距離をa、X線焦点Fから受像面3までの距離をbとすると、G’は下記(28)式で表される。
【数21】
【0095】
(28)式の関係を逆手に取り、aを求めることが出来る。すなわち、bが既知であるとすれば、下記(29)式からaを求めることが出来る。
【数22】
【0096】
図5に示す方法においても、図4に示す方法と同じように、照射線源を2回以上移動させ、その都度、被検査体の撮像を行うことができる。もし、a及びbが未知であっても、(29)式を基に3点以上のGで評価すれば、a及びbを推定することが可能であり、(1)式及び(29)式によりdの評価が可能になる。
【0097】
また、(29)式は、(1)式から下記(30)式に示すように一般化が可能であり、同様にして、3点以上のGにてa、b及びdを推定することができる。具体的には、被照射体に含まれる放射線源の焦点1の位置がその移動によって変化した後の各位置G(j=0,1,・・・,t)に対し
【数23】
となる。
【0098】
本発明の検査方法は、前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を変えた2個以上の放射線透視画像を取得する際の前記放射線源及び前記被照射体の位置関係を変える場合、上記第一の方法及び第二の方法のどちらかの方法に限定されるものではない。1回の測定時に両者の方法を併用し、前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸の2つの軸に沿って前記放射線源及び前記照射体の少なくともいずれかを移動する方法を採用してもよい。例えば、上記で述べたようにコンクリート内部に縦横に鉄筋が配置されている場合等のように、被放射体に被検査体が画像面に対して3次元的に複数個所で散在した状態で内在するときは、2つの軸に沿って前記放射線源及び前記照射体の少なくともいずれかを移動させながら、その都度、被検査体の画像を取得する方法により、複数の被検査体について像の拡大率及び前記放射線源と被検査体との距離の少なくとも何れか一つを幾何的に算出して推定することができる。
【0099】
第一の方法及び第二の方法を併用する場合、2つの軸の移動方向と移動距離、及び画像面における像の大きさと移動距離を、測定ごとにそれぞれデータとして蓄積し、そのデータを用いて上記に例示した各方程式によって詳細な解析を行うことができる。この方法は被照射体に複数個所で存在する被検査体の存在位置を明確にできるため、被照射体中の被検査体マッピング処理を行うために有効な方法となる。
【0100】
<第三の方法>
放射線源を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸で形成される面の面内斜め方向に、放射線源と被照射体の位置関係を変化させる第三の方法について図6を用いて説明する。ここで、放射線源を前記放射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸で形成される面とは、図3において、放射線の照射軸4と、該照射軸4に対して垂直に位置する面5の径方向に伸ばした軸、例えば、軸6とで形成される面を意味する。
【0101】
図6は、照射線源1を面内斜めに移動させる第三の方法を説明する模式図であり、基本的には電離放射線全般に適応可能であるが、X線を例にとって説明する。
【0102】
図6において、Aの位置に被照射体に内在する被検査体2があるとすると、その像の受像面3での位置はA’である。次に、照射源1をX線の照射軸に対して平行な軸及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸で形成される面の面内斜め方向にFからF’まで移動させる。このとき、X線の照射軸と平行な移動距離はaであり、垂直な移動距離はIとする。また、X線照射源1の焦点Fから被検査体2までの距離をa、X線照射源1の焦点Fから受像面3までの距離をbとする。そして、照射源1を斜めに移動した後に得られる被検査体2の像が、Aの位置から上方に距離I’で移動した後のAo’の地点にあるとすると、次の(31)式及び(32)式が成立する。
[数24]
=d(b/a) (31)
=d(b-a)/( -a) (32)
図6においては、画像の歪みが最も小さいと考えられる画像の中心を、便宜上、A及びA’の位置に設定している。
【0103】
また、IとI’との間には、下記(33)式が成立する。
【数25】
【0104】
したがって、a及びdは、次の(34)式及び(35)式からそれぞれ求めることができる。
【数26】
【0105】
第三の方法についても、第一及び第二の方法と同様に、一方向について回以上の移動と3回以上の撮像を行っても良い。
【0106】
具体的には、上記(33)式を一般化し、放射線源の焦点1の位置がその移動によって変化した後の各位置I(k=0,1,・・・,p)に対し
【数27】
のように、複数のIとI’についての連立方程式をたて、第一及び第二の方法と同様に、最小二乗法等の未知数推定法(フィッティング) を用いてaを推定する。aが推定できれば、dも評価可能となる。
【0107】
もし、a及びbが未知であっても、下記(37)式を基に3点以上のIで評価すれば、a及びb及びdを推定することが可能である。
【数28】
【0108】
本発明は、放射線源1及び被検査体2を含む被照射体の位置関係を変えることにより、それぞれの位置の放射線透視画像の2個以上を画像面3で取得するとともに、前記画像上の像の大きさ又は径及び位置の変化の少なくともいずれか一つの測定データと、前記放射線源及び前記受像器の2位置間の距離データとを用いて解析を行うことを基本思想とする。そのため、上記の第一、第二及び第三の方法で説明した方法には限定されず、それら以外にも、放射線源1、被検査体2を含む被照射体及び画像面3の位置関係から幾何的に算出して解析できる方法を採用してもよい。また、本発明における像の大きさの測定は、従来の単純撮像の際の像の大きさの測定方法を適用することが出来る。照射軸と受像面が垂直に交わらない場合についても、様々な補正方法が提案されており、既存の補正方法を本発明に適用することが出来る。
【0109】
<放射線透視非破壊検査装置>
次に、本発明による放射線透視非破壊検査装置の構成を説明する。図7に、本発明の第一の方法を実施するための代表的な装置の機能及び動作を示すブロック図を示す。第二の方法及び第三の方法についても放射線源又は被検査体を含む被照射体の移動方向又は移動角度が異なるだけで、基本的な構成はほぼ同様である。
【0110】
図7に示す検査装置は、電離放射線を照射するための放射線源と、放射線源を移動させるための移動機構と、被検査体の画像面を写しだす受像器と、該受像器を移動させるための移動機構と、被照射体を支持するための試料ホルダーと、該試料ホルダーを移動させるための移動機構と、それらを統括制御するため演算処理手段を有する撮像制御装置と、を有する。ここで、放射線源の移動機構、試料ホルダー及び受像器のそれぞれの移動は手動又は自動で行うが、それら各機構と電気的に繋がる移動機構駆動装置によってそれぞれ独立に方向と距離を自動的に制御することが実用的である。また、受像器を移動させるための移動機構は、受像器と放射線源(又は被検査体)との位置関係を相対的に変えるために駆動されるものであるため、両者の一方は設置位置を変えないで固定した状態で使用してもよい。
【0111】
図7に示す撮像制御装置は、次の(A)及び(B)、すなわち、(A)前記放射源及び前記被照射体の少なくとも何れかを、前記照射線源からの放射線の照射軸に対して平行な軸方向及び垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の少なくとも何れか一方向、又は前記平行な軸と前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸とによって形成される面の面内斜め方向にそれぞれ独立に移動するときの前記平行な軸方向及び/又は前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向の移動距離、及び前記放射源と前記画像面との間の距離(b)に応じて前記受像器に写しだされる前記被検査体画像の大きさ又は径(D)をそれぞれ計測及び算出する手段、及び(B)前記放射源と前記画像面との距離(b)を一定にして前記受像器に写しだされる前記被検査体画像が前記垂直に位置する面内径方向の任意の一軸方向へ移動する場合は、前記被検査体画像の移動距離を測定及び算出する手段を備えており、前記演算処理手段によって前記被検査体の大きさ(d)、前記画像の拡大率(D/d)及び前記放射線源と被検査体との位置関係(a)の少なくとも何れか一つが計算して求められる。
【0112】
上記撮像制御装置は、基本的にはコンピューターであり、画像取得後の算出等の画像処理等も行う。該コンピューターは、ディスプレイ(画像表示装置) 及びヒューマンインターフェース(キーボード、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル等) を具備する一般的なものが考えられる。図7は、放射線源の焦点の移動のみを行う方法を実施するための装置を例として示す図であるが、放射線源の焦点、被照射体及び受像器の移動方法の他の組み合わせでも、基本的な考え方は同様である。
【0113】
撮像制御装置は、放射線源の移動機構駆動装置に指示を出し、放射線源の移動機構を駆動してX線などの放射線源の焦点をFの位置に移動させ、撮像を行う。受像器がFPD 等であれば、取得された画像は直接撮像制御装置に送られ保存される。X線フィルムやイメージングプレートの場合は、人の手でカセッテを取り出し、スキャナーにより画像を読み取り撮像制御装置に保存する。X線フィルムの種類によっては、現像が必要である。
【0114】
放射線の照射のタイミングは、検査員(装置の操作者) が都度照射の指示を与えることが通常であるが、撮像制御装置により自動的に照射指示を放射線源に出して放射線の照射を行うこともある。
【0115】
次に、放射線の焦点をFの位置に移動させ、撮像を行う。
【0116】
上記の撮像の順番は任意であるが、どの画像がどの焦点位置で撮像されたかどうかを記録しておく必要がある。方法はいくつか考えられるが、予め決められたファイルまたはメモリー領域に画像を保存するという方法がある。また、画像データそのものに焦点の情報あるいは移動距離(L)の値を埋め込むことも考えられる。さらに、取得された画像データのファイル若しくはメモリー領域と、焦点位置若しくはLを、テーブルに記録しておく方法もある。これらは、コンピューターのデータの取扱いの問題であって、本発明では本質的な問題ではない。
【0117】
次に、取得した画像から像の大きさ又は径(D及びD)を測定する。具体的には、放射線源の焦点位置(F及びF)での取得画像の其々を交互または同時にディスプレイに表示し、検査員に、測定すべき部分若しくは範囲をカーソル等により与えさせる。多くの場合、像のエッジからエッジまでをカーソルで線分を引き、その線分の画像上の長さを以って測定値とすることがある。与えられた測定範囲から自動的に輪郭を抽出することも技術的には可能である。
【0118】
及びDが測定できたなら、焦点の移動距離Lと既定値である、放射線源の焦点から受像面までの距離(b)より、(5)式及び(6)式を用いて、被検査体の大きさ又は径(d)若しくは放射線源の焦点と被検査体との距離(a)を算出し、メモリー若しくはファイルに保存するか、ディスプレイに画像(文字情報等) として表示する。
【0119】
図8に、本発明の第一の方法を実施するための代表的な装置の機能及び動作を示すブロック図の変形例を示す。図7と異なる部分としては、Lの情報を各取得画像と関連付け、演算処理を行う際に、LとDiの関連を示すテーブルを作成することである。これにより、測定点が3点(取得画像が3枚) 以上の場合についても、最小二乗法等の未知数推定方法(フィッティング) を用いてd若しくはaを推定することが出来る。勿論この例は測定点が2点の場合でも機能する。また、測定点が3点の場合でbが未知である場合にも適用出来る。
【実施例
【0120】
以下において、本発明に基づく実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0121】
(実施例1)
本発明を実施する方法としては、図1に示すように、単純に放射線発生装置等(X線源) を人力で移動させるという方法が考えられる。逆に、図2に示すように、被照射体(被検査体) 側を移動させても良い。発明者は、本発明の実証試験の際、被照射体とX線検検出器を荷台に載せて人力で移動させることによりX線源と被検査体の距離L又はMを与え、L又はMを巻尺にて測定した。dの評価は手計算や電卓で可能であり、表計算ソフトに計算式を予め入力しておいて、検査現場で測定値を表計算ソフトに入力してdを評価することも出来る。
【0122】
(実施例2)
被照射体が大型の場合、被照射体の移動は困難である。従って、X線源を移動させることが現実的となる。実施例1のように人力でX線源を移動させることも考えられるが、X
線源をX線源移動機構に設置する。X線源移動機構は、手動直線移動ステージ若しくは自
動直線移動ステージ上に設置する。X線源移動機構を撮像制御装置(コンピューター) により制御し、X線源を自動で位置決めして、その都度、画像を取得することが出来る。画像の取得がFPD のように電子的に行われるものであれば、コンピューターにより各画像とX線源の位置を関連付けることにより、dの算出を自動化することが出来る。
【0123】
(実施例3)
医療用のレントゲン装置においては、受像器としてX線フイルムやイメージングプレートが多く用いられている。FPDの利用も始まっている。X線フィルムやイメージングプレートはカセッテに入れられた状態で使用されるが、カセッテの設置位置は、ベッドの上面など、おおよそ決まっている場合が多い。レントゲン装置では、X線管をX線源とし、自在アーム先端にX線管を内蔵したX線ヘッドが具備されているので、X線の照射位置及び方向を手動で自由に設定できるようになっている。アームの関節に角度センサー等を具備若しくは伸縮部分にリニアスケールを具備すれば、手動で移動されたX線ヘッドの位置と照射方向を算出することが出来る。X線ヘッドの位置と照射方向がわかれば、カセッテの位置はほぼ変わらないと仮定して、本発明を適用することが出来る。例えば、ベッド上の患者の場合は、カセッテの高さはどの撮像でも一定であり、水平方向に設置される。X線ヘッドの高さがわかれば、bを規定出来る。水平照射の場合も、カセッテをセットする台があり、そこに患者が位置して撮像を行うので、同様にbを規定出来る。
【0124】
診断に用いる画像(診断用画像) と拡大率等の算出に用いる画像(拡大率算出用画像)が同じ線明度である必要は無い場合も考えられるので、診断用画像は通常の線量で撮像し、さらに拡大率算出用画像を低線量で撮像するという方法も考えられ、これにより、患者の被曝を抑えることが出来る。
【0125】
勿論、X線源の位置とX線照射方向を知る他の方法を適用することも考えられる。レーザーによる三次元位置測定器や超音波による距離測定器、壁に複数個のカメラを設置してX線源(焦点) を内蔵するX線ヘッドの位置をカメラの画像より割出す等の方法が考えられる。
【0126】
X線ヘッドを手動で移動させる場合については、図7若しくは図8のX線源移動機構の部分がアームに相当し、位置情報を上述の方法で割り出して撮像制御装置に送ることになる。
【0127】
2回の撮像を行う時に、2回目の撮像の際にX線ヘッドを移動させずに、該X線ヘッドに内蔵されたX線管の位置を移動させるようにしてX線源(焦点) の位置を変化させることも考えられる。つまり、X線ヘッドにX線源移動機構及びX線管を具備するということである。
【0128】
受像器としてFPD等の電子的に画像を取得するものを使用するのであれば、X線源の位置と撮像した画像の関連付けを行い、被検査体の大きさdの推定時に該関連付け情報を利用することが出来る。
【0129】
(実施例4)
所謂マイクロフォーカスX線源を用いたイメージングでは、高拡大率を謳う製品も見受けられる。しかし、拡大率が高いということは、X線源と被写体の距離が非常に小さいということでもある。このような場合、拡大率は被写体の位置が僅かに変化するだけで大きく変化する可能性がある。拡大率を規定するための被写体の位置決めは容易ではなく、拡大率に大きな誤差を含む可能性がある。
【0130】
上記マイクロフォーカスX線イメージングについては、既知の大きさの校正用被検査体を用いて拡大率の校正を行うことも考えられるが、校正用被検査体と全く同じ場所に検査対象物を設置するのは容易ではないと想像できる。
【0131】
本発明を適用すれば、この問題を解決出来る。例えば、被照射体を精密に位置決め出来る被照射体移動機構を具備するX線検査装置が存在する。このような装置を用い、本発明による方法で複数回撮像する。移動機構はX線の照射軸の方向に被照射体を移動させるものとする。X線源と被照射体と撮像面の絶対位置関係の誤差は工作精度に依るが、被照射体の相対的移動の誤差は被照射体移動機構の相対位置決め誤差に依る。
【0132】
所謂マイクロフォーカスCT装置においても、CT再構成中心とX線源と撮像面の位置関係で得られる再構成画像の拡大率が決まる。一般的にCT再構成中心とX線源と撮像面の位置関係の誤差は工作精度で決まるが、上記マイクロフォーカスX線イメージングの場合と同様に、CT再構成中心をX線照射軸方向に移動させて複数のCT再構成画像を得ることにより、各々の再構成中心位置での被検査体の再構成画像上の大きさについて第一の方法若しくは第二の方法にて、拡大率及び再構成画像上の被検査体の大きさを推定出来る。
【0133】
(実施例5)
前述の通り、ラインセンサーのスキャン方向については拡大率の問題は発生しないが、センサー軸方向については、拡大率の問題が発生する。
【0134】
一般に、ラインセンサーは空港での手荷物検査や港湾での検疫で用いられることが多いが、X線源とラインセンサーは固定され、X線源とラインセンサーの間を被検査体がベルトコンベアー等の被検査体を移動させる手段により通過するようになっている。
【0135】
通常は、X線源とラインセンサーの組は1個であるが、これを複数個とすることも考えられる。具体的には、図9に示すように、X線管とラインセンサーの複数の組を、ベルトコンベアーに沿って設置する。その場合、X線源とベルトコンベアーの距離を変えて設置することでLを規定でき、X線源と被検査体の距離をLだけ変えて撮像を行うことが出来る。
【0136】
当然ながら、被検査体がX線源とラインセンサーの組を通過するタイミングはベルトコンベアーの送り速度で決まるため、一番目のラインセンサーの組で得られた画像と、二番目のラインセンサーの組で得られた画像は、ベルトコンベアーの送り速度及び一番目の組と二番面の組の距離を勘案して、取得画像の時間軸をずらして位置関係を補正するのが望ましい。
【0137】
本実施例においては、X線源とラインセンサーの組を3組以上で用いても良い。
【0138】
(実施例6)
第二の方法の実施方法として簡単なのは、X線フィルム若しくはイメージングプレートを一度設置して一度目の撮像を行い、X線フィルム若しくはイメージングプレートはそのまま設置したままX線源若しくは被照射体の位置を変更し、前記のX線フィルム若しくはイメージングプレート上の別の場所で二度目の撮像を行うと言う方法である。つまり、重ね録りを行う。X線フィルムは撮像の度に現像が必要でありその都度新しいX線フィルムが必要であるが、重ね録りを行うことによって、この手間と使フィルムの枚数を節約することができる。また、イメージングプレートであっても、カセッテの設置と取り外し及び読み取り等の作業が必要となるが、重ね録りによりこの手間を省くことが可能となる。
【0139】
(実施例7)
非破壊検査では、X線発生装置の他に、放射性物質から放射されるガンマ線を用いることもある。ガンマ線照射装置のうち、線源送り出し方式のものを用いれば、線源の位置を容易に変更可能である。この場合、第一の方法に従って伝送管を照射軸に一致するように設置し、第二の方法に従って伝送管を照射軸に垂直になるように設置する。このようにして、第一の方法と第二の方法を併用して測定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
医療分野において、内臓等の患部の大きさや骨の太さを、CTに依らず推定可能とする。
【0141】
また、コンクリート等の構造物の健全性の検査において、コストを抑えながら鉄筋等の主要部分の健全性をCT 等に依らず容易に定量化出来る。
【0142】
また、マイクロフォーカスX線イメージング等において、拡大率を正確に求めることが出来る。本発明の放射線透視非破壊検査方法及び放射線透視非破壊検査装置は、これら医療及び建築・土木の分野だけでなく、産業及び民生の用途として各分野で利用される製品や部品にも適用することが可能であり、従来に比べて簡便であるだけでなく、測定精度の向上を図ることができるため、その有用性は極めて高い。
【符号の説明】
【0143】
1・・・放射線源の焦点、
2・・・検査体
3・・・画像面
4・・・放射線の照射軸
5・・・照射軸に対して垂直に位置する面
6・・・面内垂直方向の軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11