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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
E02B7/20 109
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017248129
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019112860
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594148645
【氏名又は名称】株式会社協和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 道博
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-001627(JP,U)
【文献】実開昭53-120435(JP,U)
【文献】特開2005-200973(JP,A)
【文献】実開昭60-096432(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自重により閉鎖状態となる強制開放型ゲートの油圧制御装置であって、
作動油の供給と排出に連動して動くロッドを有する両ロッド式油圧シリンダと、
前記ロッドの動きに連動して開閉する扉体と、
前記両ロッド式油圧シリンダの一方側から作動油を供給する作動油供給管と、
前記両ロッド式油圧シリンダの他方側から作動油を排出する作動油排出管と、
前記作動油供給管に設けられた第2のストップ弁、供給用バルブ及び油圧ポンプと、
前記作動油排出管に設けられた排出用バルブと、
前記油圧ポンプ、前記供給用バルブ及び前記第2のストップ弁を介して作動油を供給するとともに、前記排出用バルブを介して排出される作動油を受け入れる油圧タンクと、
前記第2のストップ弁より前記供給用バルブに近い箇所前記作動油排出管の前記排出用バルブより前記両ロッド式油圧シリンダに近い箇所とを連通させる第1の連通管と、
前記第2のストップ弁の前後を連通させる第2の連通管と、
前記第1の連通管に設けられた第1のストップ弁と、
前記第2の連通管に設けられ、前記強制開放型ゲートより下流側の水位が所定水位以上となった時に開状態となり、それ以外の時には一方向のみへ作動油の移動を許容するフロート弁を備えている
ことを特徴とする強制開放型ゲートの油圧制御装置。
【請求項2】
記供給用バルブ、前記油圧ポンプ、前記排出用バルブ及び前記油圧タンクが、前記作動油供給管及び前記作動油排出管に対して着脱自在に接続可能である
ことを特徴とする請求項1記載の油圧制御装置。
【請求項3】
前記強制開放型ゲートが、上ヒンジ式フラップゲート及びマイターゲートのいずれかである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な樋門又は流水路の出口に設置される逆流防止ゲートや、防潮堤の水門に設置され、高波又は津波が来襲した時に緊急閉鎖する昇降式ゲート設備の開閉装置として用いることのできる強制開放型ゲートの油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な樋門又は流水路の出口には下流側からの逆流防止を目的としてフラップゲート等が設置され、防潮堤の水門には高波や津波の来襲を予測して閉鎖する昇降式ゲートが設置されている。
しかしながら、従来のフラップゲートは扉体が吊り金物に懸垂された状態で設置されることから、通常時は通水部を閉鎖しているため排水性能が低い、塵芥等が挟まり易く不完全閉鎖障害が発生する、波浪等によって扉体が揺れ動くため確実な止水が難しいといった問題点があった。
また、高波や津波の来襲を予測して閉鎖する昇降式ゲートは、予報や地震波の検知によって予めゲートを閉鎖するが、高波や津波が発生するとは限らないため、無駄な閉鎖動作及びその後の開放動作が行われる場合がある。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1(特許第4989032号公報、特に段落0007を参照)に記載されているように、水路の水位状態によって自動倒伏、自動起立作動の実施を可能とした起伏型自動ゲート設備の自動作動制御回路を開発し、特許文献2(特許第5672559号公報、特に段落0010及び0035を参照)に記載されているように、自動作動状態から強制開閉作動状態へ切替えられるようにするとともに、油圧操作装置や操作用油圧配管が損傷・流失した場合でも自動作動制御機能を保持することが可能な起伏型自動ゲート設備の油圧制御回路を開発した。
【0004】
また、特許文献3(特許第6147591号公報)に記載される防潮扉の油圧式開閉装置は、海側の水位が上昇しフロートが上昇することで、フロート式切換弁が閉扉位置に切り換えられ、アキュムレータの油圧が油圧シリンダの往動側に供給され、防潮扉が自動的に閉扉されるようになっている(特に段落0013~0014を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4989032号公報
【文献】特許第5672559号公報
【文献】特許第6147591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2に記載されている起伏型自動ゲート設備は、いずれも下ヒンジ式の浮体式起伏ゲート型式を用いているため、従来のフラップゲートよりも大きな河床落差高(段差)が必要である、小型設備には適用が難しく設備設置条件が厳しい、設備設置費用が高価になり易いという問題点があった。
また、特許文献3に記載されている防潮扉の油圧式開閉装置は、アキュムレータの油圧が油圧シリンダに供給されることによって防潮扉が閉扉されるため、何らかの原因で油圧が供給されない場合には、閉扉されない危険性があった。
本発明の課題は、このような問題点を解決し、通常は扉体を開放状態に保持して高い排水性能が得られるようにするとともに、下流側が所定水位以上になった時にはフロート式切換弁が閉扉位置に切り換わることで、扉体が自重により閉鎖状態となって確実に止水することのできる強制開放型ゲートの油圧制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
自重により閉鎖状態となる強制開放型ゲートの油圧制御装置であって、
作動油の供給と排出に連動して動くロッドを有する両ロッド式油圧シリンダ()と、
前記ロッドの動きに連動して開閉する扉体()と、
前記両ロッド式油圧シリンダ()の一方側から作動油を供給する作動油供給管と
前記両ロッド式油圧シリンダ()の他方側から作動油を排出する作動油排出管と
前記作動油供給管に設けられた第2のストップ弁(13)、供給用バルブ(15)及び油圧ポンプ(17)と、
前記作動油排出管に設けられた排出用バルブ(15)と、
前記油圧ポンプ(17)、前記供給用バルブ(15)及び前記第2のストップ弁(13)を介して作動油を供給するとともに、前記排出用バルブ(15)を介して排出される作動油を受け入れる油圧タンク(18)と、
前記第2のストップ弁(13)より前記供給用バルブ(15)に近い箇所前記作動油排出管の前記排出用バルブ(15)より前記両ロッド式油圧シリンダ(3)に近い箇所とを連通させる第1の連通管と
前記第2のストップ弁(13)の前後を連通させる第2の連通管と、
前記第1の連通管に設けられた第1のストップ弁(12)と、
前記第2の連通管に設けられ、前記強制開放型ゲートより下流側の水位が所定水位以上となった時に開状態となり、それ以外の時には一方向のみへ作動油の移動を許容するフロート弁(4b)を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の油圧制御装置において、前記供給用バルブ(15)、前記油圧ポンプ(17)、前記排出用バルブ(15)及び前記油圧タンク(18)が、前記作動油供給管及び前記作動油排出管に対して着脱自在に接続可能であることを特徴とする。
【0010】
請求項に係る発明は、請求項1又は2に記載の油圧制御装置において、前記強制開放型ゲートが、上ヒンジ式フラップゲート及びマイターゲートのいずれかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、油圧シリンダ()の状態を扉体()が開状態となるように作動油を供給及び排出したところで、供給用バルブ(15)、排出用バルブ(15)及び第2のストップ弁(13)を全て閉状態とすることにより、扉体()を開状態に保持することができるので、水位が低くても高い排水性能を得ることができる。
また、フロート弁(4b)は、第2のストップ弁(13)の前後を連通させる第2の連通管に設けられ、強制開放型ゲートより下流側の水位が所定水位以上となった時に開状態となるので、格別の操作をしなくても扉体()は閉鎖状態となって確実に止水することができる。
さらに、扉体()は自重により閉鎖する方向に動くので、高波や地震等の影響により作動油の供給ができなくなったり、作動油供給管、作動油排出管、第1の連通管及び第2の連通管が破損したりした場合においても、扉体()は閉鎖状態となり、高波や津波による逆流水を止めることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明による効果に加えて、供給用バルブ(15)、油圧ポンプ(17)、排出用バルブ(15)及び油圧タンク(18)が、作動油供給管及び作動油排出管に対して着脱自在に接続可能であるので、供給用バルブ(15)、油圧ポンプ(17)、排出用バルブ(15)及び油圧タンク(18)が地震や津波等によって破壊されることを防止できる。
【0014】
請求項に係る発明によれば、請求項1又は2に係る発明による効果に加えて、強制開放型ゲートが、上ヒンジ式フラップゲート及びマイターゲートのいずれかであるため、自重により閉鎖状態となる強制開放型ゲートを容易に調達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の概要を示す図。
図2】実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートの斜視図(開放時)。
図3】実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートの斜視図(閉鎖時)。
図4】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(開放時)。
図5】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(閉鎖時)。
図6】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(自動開作動時)。
図7】実施例1において扉体1を開放させるゲート操作状態を示す図。
図8】実施例2に係る上ヒンジ式フラップゲートを設置した防潮堤防。
図9】実施例2に係る上ヒンジ式フラップゲート付近の拡大図。
図10】実施例2に係る油圧操作装置等の状態を示す図(開放時)。
図11】実施例2に係る油圧操作装置等の状態を示す図(閉鎖時)。
図12】実施例2において扉体1を開放させるゲート操作状態を示す図。
図13】実施例3に係る昇降式ゲート付近の拡大図。
図14】実施例3に係る油圧操作装置等の状態を示す図(開放時)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の概要を示す図である。
図1に示すように、本発明は自重により閉鎖状態となる上ヒンジ式フラップゲートの扉体(G)と、扉体(G)の開閉を操作する油圧操作装置よりなっている。
そして、油圧操作装置は、作動油の供給と排出に連動して動くロッド(R)を有する両ロッド式の油圧シリンダ(S)と、油圧シリンダ(S)の一方側から作動油を供給する作動油供給管(K1)と、油圧シリンダ(S)の他方側から作動油を排出する作動油排出管(K2)と、作動油供給管(K1)に設けられた供給用バルブ(B1)と、作動油排出管(K2)に設けられた排出用バルブ(B2)と、作動油供給管(K1) の供給用バルブ(B1)より油圧シリンダ側及び作動油排出管(K2)の排出用バルブ(B2)より油圧シリンダ側とを連通させる連通管(K3)と、連通管(K3)に設けられ、上ヒンジ式フラップゲートより下流側の水位が所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁(B3)を備えている。
なお、作動油供給管(K1)及び作動油排出管(K2)には、作動油供給管(K1)に作動油を供給するとともに、作動油排出管(K2)から排出される作動油を受け入れるための、ポンプ及び油圧タンクからなる操作用油圧装置(D)が接続されている。
また、図1では操作用油圧装置(D)、供給用バルブ(B1)及び排出用バルブ(B2)を油圧シリンダ(S)の近くに配置しているが、これらは従来と同様に堤防上又は堤防より陸側の安全な位置に配置しても良い。
【0017】
図1(1)は、閉鎖している扉体(G)を開放させる際における、ゲート開放操作状態を示している。
この状態においては、供給用バルブ(B1)及び排出用バルブ(B2)は開状態、フロート弁(B3)は閉状態にセットされ、操作用油圧装置(D)から油圧シリンダ(S)の一方側へ作動油を供給されるとともに、油圧シリンダ(S)の他方側から操作用油圧装置(D)へ作動油が排出される。
そうすると、ロッド(R)は他方側へ移動するので、リンク機構によって扉体(G)は引き上げられ開放状態となる。
開放状態となった後に、供給用バルブ(B1)及び排出用バルブ(B2)を閉状態にセットすれば、作動油は移動できなくなるためロッド(R)は動かなくなり、図1(2)に示すゲート開放保持状態となる。
【0018】
通常時においては、図1(2)に示す状態を保持しているので、上流側からの排水は何の抵抗も受けずに下流側に流れることとなる。
しかし、高波や津波等によって下流側の水位が所定水位以上となった時においては、図1には図示していないフロートが上昇することで、フロート弁(B3)が開状態となるようになっている。
そして、フロート弁(B3)が開状態になると、油圧シリンダ(S)の一方側と他方側が連通管(K3)を介してつながった状態となり、両側の作動油が移動可能となるため、扉体(G)は自重によって下降し、図1(3)に示すゲート閉鎖状態となる。
【実施例1】
【0019】
図2はゲート開放保持状態における上ヒンジ式フラップゲートの斜視図であり、図3はゲート開放保持状態が解除され扉体1が閉鎖した状態における上ヒンジ式フラップゲートの斜視図である。
実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートは、図2、3に示すように、扉体1が上流側の水路2aと下流側の水路2bとの境界部に、ヒンジ金物6によって回動自在に懸垂されており、外力が働かない状態においては、自重により水路2aの出口を閉鎖するようになっている。
また、扉体1の上部には扉体駆動アーム1aが設けてあり、両ロッド式油圧シリンダ3のロッドの先端に設けてある先端金物3cとヒンジ接続されているので、両ロッド式油圧シリンダ3を駆動することで、扉体1を開閉操作できるようになっている。
なお、両ロッド式油圧シリンダ3は、トラニオン式軸受7に揺動自在に取り付けられ、後述する油圧操作装置によって、先端金物3cの位置を制御することができる。
【0020】
図4はゲート開放保持状態における油圧操作装置及びゲートの状態を示す図である。
両ロッド式油圧シリンダ3の前方油口3aは、第2のストップ弁13、フローレギュレータ14、パイロットチェックバルブ15、流量方向制御バルブ16及び油圧ポンプ17を介し、作動油供給管によって油圧タンク18と接続され、両ロッド式油圧シリンダ3の後方油口3bは、フローレギュレータ14、パイロットチェックバルブ15、流量方向制御バルブ16を介し、作動油排出管によって油圧タンク18と接続されている。
また、作動油供給管は第2のストップ弁13の前後が、フロート弁4bを介して連通管によって接続されるとともに、第2のストップ弁13よりフローレギュレータ14に近い箇所と作動油排出管のフローレギュレータ14より両ロッド式油圧シリンダ3に近い箇所が、流量制御弁11と第1のストップ弁12を介して連通管によって接続されている。
そして、ゲート開放保持状態においては、両ロッド式油圧シリンダ3のロッドは最も縮んだ状態、第1のストップ弁12は開いた状態、第2のストップ弁13及びパイロットチェックバルブ15は閉じた状態となっている(流量方向制御バルブ16は中立)。
ゲート開放保持状態においては、第2のストップ弁13及びパイロットチェックバルブ15が閉じており、フロート弁4bは図4の左側から右側への作動油の移動を阻止するため、前方油口3aから後方油口3bへ作動油が移動することはできず、扉体1は閉鎖方向には移動しない。
しかし、第1のストップ弁12は開いており、フロート弁4bは図4の右側から左側への作動油の移動を阻止しないため、作動油は後方油口3bから前方油口3aへ移動でき、扉体1が開放方向に移動することは可能である。
【0021】
図5はゲート開放保持状態が解除され扉体1が閉鎖した状態における油圧操作装置及びゲートの状態を示す図である。
ゲート開放保持状態の解除は、図4の状態から水路2bの水位19bが上昇し、フロート4aが上昇してフロート弁4bが開くことによってなされ、その後扉体1が自重によって下降し閉鎖して図5の状態となる。
すなわち、フロート4aが矢印エの方向に上昇してフロート弁4bが開くと、前方油口3aから作動油が流れ出すことができるようになり、ゲート開放保持状態が解除される。
そして、ゲート開放保持状態が解除されると、扉体1の自重によって先端金物3cが右側に引っ張られ、前方油口3aから矢印ア、矢印ウ、フロート弁4b、矢印ウ、流量制御弁11、第1のストップ弁12、矢印イの経路で両ロッド式油圧シリンダ3の後方油口3bに作動油が流入することにより、先端金物3cが移動して扉体1が下降し、水路2aの出口が閉鎖されることとなる。
なお、図5の状態において、水路2aの水位が水路2bの水位を超え、扉体1が水圧で下流側に押された場合、上述のとおり、作動油は後方油口3bから前方油口3aへ移動することができるので、扉体1は開放方向に移動し、排水することができる。
【0022】
図6図5の状態(ゲート閉鎖状態)から水路2bの水位19bが下がり、フロート弁4bが閉じてゲート閉鎖状態が解除され、扉体1が自動開作動している状態における油圧操作装置及びゲートの状態を示す図である。
この自動開作動状態においては、図4の状態と同じく、第2のストップ弁13及びパイロットチェックバルブ15が閉じているため、油圧ポンプ17によって作動油を前方油口3aへ供給することはできない。
しかし、図6の状態においても、作動油は後方油口3bから矢印ア、第1のストップ弁12、流量制御弁11、矢印オ、フロート弁4b、矢印オ、矢印イの経路で前方油口3aに移動できるので、水路2aの水位19aが水路2bの水位19bを超え扉体1が下流側に押されると、扉体1は押された分だけ開いた状態となる。
そして、図4の状態と同様に、前方油口3aから後方油口3bへ作動油が移動することはできないので、一旦開いた扉体1が閉鎖方向には移動することはなく、水圧によって押されて扉体1が開いた状態は保持されることとなる。
そのため、フロート弁4bが作動した後に扉体1の開放操作を行わなかったとしても、排水されにくい状態が続くことはなく、安定的かつ継続的な排水が可能である。
【0023】
図7は油圧ポンプ17、油圧タンク18及び各種のバルブ等でなる操作用油圧装置によって、扉体1を開放させるゲート操作状態を示す図である。
このゲート操作状態においては、第1のストップ弁12は閉じ、第2のストップ弁13及びパイロットチェックバルブ15は開けられている。
そのため、油圧ポンプ17を動かして油圧タンク18から作動油を供給すると、矢印カ、流量方向制御バルブ16、パイロットチェックバルブ15、フローレギュレータ14、第2のストップ弁13、矢印カ、矢印アの経路で前方油口3aに作動油が流入するとともに、後方油口3bから矢印イ、フローレギュレータ14、パイロットチェックバルブ15、流量方向制御バルブ16、矢印キの経路で油圧タンク18に作動油が排出されるので、先端金物3cは左側に移動し、扉体1が上昇して開放状態となる。
扉体1が全開状態となった時点で、第2のストップ弁13及びパイロットチェックバルブ15を閉め、第1のストップ弁12を開けると図4の状態となる。
【実施例2】
【0024】
図8は実施例2に係る上ヒンジ式フラップゲートを設置した防潮堤防21を示す図、図9は上ヒンジ式フラップゲート付近の拡大図、図10はゲート開放保持状態における油圧操作装置及びゲートの状態を示す図、図11はゲート開放保持状態が解除され扉体1が閉鎖した状態における油圧操作装置及びゲートの状態を示す図、図12は油圧ポンプ17、油圧タンク18及び各種のバルブ等でなる操作用油圧装置10を供給用接続口14a及び排出用接続口14bに接続し、操作用油圧装置10を用いて扉体1を開放させるゲート操作状態を示す図である。
実施例2においても、扉体1が上流側の水路2aと下流側の水路2bとの境界部に、ヒンジ金物6によって回動自在に懸垂されている点、トラニオン式軸受7に取り付けた両ロッド式油圧シリンダ3を駆動することで扉体1を開閉操作できるようになっている点、フロート4a及びフロート弁4bを有し、海側の水位19cが上昇すると、フロート4aが上昇してフロート弁4bが開き、扉体1が自重によって下降して水路2aの出口を閉鎖する点等は実施例1と同じである。
また、実施例1と相違しているのは、作動油を供給及び排出するためのパイロットチェックバルブ15、流量方向制御バルブ16、油圧ポンプ17及び油圧タンク18等からなる操作用油圧装置10を着脱自在にするとともに、その操作用油圧装置10を接続するための供給用接続口14a及び排出用接続口14bを有する油圧循環装置9を、両ロッド式油圧シリンダ3の近くに設けてある点である。
そのため、実施例1と共通する部材等には同じ番号を付し、以下では、主として実施例1と異なる点について説明する。
【0025】
図9に示すとおり、上ヒンジ式フラップゲートの上方にフロート4a、フロート弁4b及び油圧循環装置9が設置され、フロート弁4b及び油圧循環装置9は支持構造体22に設けられた穴及び凹部の内部に収容されている。
また、その穴及び凹部の上には、支持構造体22の上でフロート弁4b及び油圧循環装置9を点検したり、油圧循環装置9に操作用油圧装置10を接続したりする時に開けることのできる蓋23及び24が取り付けられている。
なお、図示はしていないが、支持構造体22の内部には、両ロッド式油圧シリンダ3の作動油を移動させるための配管が施されている。
【0026】
ゲート開放保持状態における油圧操作装置及びゲートの状態は図10に示すとおりであり、前方油口3aから両ロッド式油圧シリンダ3に作動油を供給し、後方油口3bから両ロッド式油圧シリンダ3内部の作動油を排出して扉体1を全開させた後、第2のストップ弁13を閉め、第1のストップ弁12を開けた状態となっている。
また、図10の状態から海側の水位19cが上昇し、フロート4aが上昇してフロート弁4bが開いてゲート開放保持状態が解除され、扉体1が閉鎖した状態における油圧操作装置及びゲートの状態は図11に示すとおりである。
そして、ゲート開放保持状態及びゲート閉鎖状態における作動油の動き、すなわち扉体1や両ロッド式油圧シリンダ3の動作については、実施例1の図4及び図5についての説明と同様であり、ゲート閉鎖状態(図11の状態)から海側の水位19cが下がり、フロート弁4bが閉じてゲート閉鎖状態が解除され、扉体1が自動開作動している状態となった場合における作動油の動き等も実施例1の図6についての説明と同様である。
【0027】
実施例2において図11の状態から扉体1を開放させる場合には、蓋24を開け油圧循環装置9の上部に設置されている供給用接続口14a及び排出用接続口14bに操作用油圧装置10を接続し、第1のストップ弁12を閉め、第2のストップ弁13を開けて図12の状態とした後に、油圧ポンプ17を作動させる。
油圧ポンプ17の作動により作動油が供給されると、矢印カ、流量方向制御バルブ16、パイロットチェックバルブ15、フローレギュレータ14、矢印カ、供給用接続口14a、第2のストップ弁13、矢印アの経路で前方油口3aに作動油が流入するとともに、後方油口3bから矢印イ、排出用接続口14b、矢印キ、フローレギュレータ14、パイロットチェックバルブ15、流量方向制御バルブ16、矢印キの経路で油圧タンク18に作動油が排出されるので、先端金物3cは上方に移動し、扉体1が矢印Uの方向に上昇して開放状態となる。
扉体1が全開状態となった時点で、第2のストップ弁13を閉め、第1のストップ弁12を開けた後、操作用油圧装置10を外すと図10の状態となる。
【実施例3】
【0028】
図13は実施例3に係る昇降式ゲートを設置した防潮堤防の昇降式ゲート付近の拡大図、図14はゲート開放保持状態における油圧操作装置及びゲートの状態を示す図である。
実施例3は実施例2の扉体1を昇降式ゲートの扉体31に置き換えたものであり、扉体31がヒンジ金物6によって懸垂されておらず、扉体駆動アーム1aと先端金物3cとのヒンジ接続によって懸垂されている点、扉体31を案内するガイド金物32が設けてある点のみで異なっている。
そのため、各状態における作動油の動き、すなわち扉体1や両ロッド式油圧シリンダ3の動作については説明を省略するが、昇降式ゲートは一旦閉鎖してしまうと、水圧で自動的に開くことがないため、図示はしないが、扉体31の一部に排水の圧力で開くヒンジ式のゲートを設けてある。
【0029】
実施例1~3の変形例を列記する。
(1)実施例1では作動油供給管と作動油排出管のフローレギュレータ14及びパイロットチェックバルブ15より油圧シリンダ側に連通管を設け、実施例2及び3では作動油供給管と作動油排出管の供給用接続口14a及び排出用接続口14bより油圧シリンダ側に連通管を設けたが、作動油供給管及び作動油排出管とは別に直接前方油口3aと後方油口3bとを連通させる連通管を設けても良い。
(2)実施例1及び2では上ヒンジ式フラップゲートを用い、実施例3では昇降式ゲートを用いたが、いずれの実施例においても自重により閉鎖状態となる強制開放型ゲートであればマイターゲート等どのようなゲートを用いても良い。
【0030】
(3)実施例2及び3の作動油供給管及び作動油排出管には、油圧操作装置を切り離すためのバルブは設けられていないが、油圧循環装置9に設置してある供給用接続口14a及び排出用接続口14bが同じ役割を果たしているので、特許請求の範囲における供給用バルブ及び排出用バルブは、それぞれ供給用接続口14a及び排出用接続口14bを含むものとする。
【符号の説明】
【0031】
1 扉体 2a 上流側の水路 2b 下流側の水路
3 両ロッド式油圧シリンダ 3a 前方油口 3b 後方油口
3c 先端金物 4a フロート 4b フロート弁
5 戸当金物 6 ヒンジ金物 7 トラニオン式軸受
9 油圧循環装置 10 操作用油圧装置
11 流量制御弁 12 第1のストップ弁 13 第2のストップ弁
14 フローレギュレータ 14a 供給用接続口 14b 排出用接続口
15 パイロットチェックバルブ 16 流量方向制御バルブ
17 油圧ポンプ 18 油圧タンク 19a 水路2aの水位
19b 水路2bの水位 19c 海側の水位 21 防潮堤防
22 支持構造体 31 昇降式ゲートの扉体 32 ガイド金物
B1 供給用バルブ B2 排出用バルブ B3 フロート弁
D 操作用油圧装置 G 扉体
K1 作動油供給管 K2 作動油排出管 K3 連通管
R ロッド S 油圧シリンダ
図1
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