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特許7008340配線接続検査方法および配線接続検査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】配線接続検査方法および配線接続検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/55 20200101AFI20220118BHJP
   H01R 13/641 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G01R31/55
H01R13/641
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019038491
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020143913
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390025623
【氏名又は名称】共立電気計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】弓山 直樹
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-006916(JP,A)
【文献】特開平08-293374(JP,A)
【文献】特開2012-255712(JP,A)
【文献】米国特許第06462555(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/55
H01R 13/641
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活電線と中性線と接地線を含む商用電力ラインの基端側と、該商用電力ラインの屋内引込配線側とにおける配線接続の正誤を検査する配線接続検査方法において、
前記商用電力ラインで供給される商用交流電源電圧波形におけるゼロクロス点を基準として、該商用交流電源の周波数とは異なる周波数の基準クロック信号を生成し、該基準クロック信号に同期した交流電圧信号を検査用信号として生成する検査用信号生成ステップと、
前記検査用信号を、当該商用電力ラインの基端側における前記中性線または前記接地線の何れか一方に注入する検査用信号注入ステップと、
前記商用電力ラインで供給される前記商用交流電源電圧波形におけるゼロクロス点を基準として、前記基準クロック信号と同期した同期クロック信号を生成する同期クロック信号生成ステップと、
前記屋内引込配線側における前記中性線と前記接地線との間の電圧信号から前記商用交流電源の周波数を除去して、前記検査用信号に基づく周波数成分を抽出した抽出信号を取得する抽出信号取得ステップと、
前記抽出信号取得ステップにて取得した前記抽出信号と、前記同期クロック信号生成ステップにて生成した前記同期クロック信号との極性が、同一サイクル内で一致しているか否かに基づいて、前記中性線と前記接地線との配線接続の正誤を判定する配線接続判定ステップと、
前記配線接続判定ステップによる判定結果を報知する検査結果報知ステップと、
を行うことを特徴とする配線接続検査方法。
【請求項2】
活電線と中性線と接地線を含む商用電力ラインの基端側と、該商用電力ラインの屋内引込配線側とにおける配線接続の正誤を検査する配線接続検査システムにおいて、
前記商用電力ラインの基端側にて用いる第1装置と、当該商用電力ラインの屋内引込配線側にて用いる第2装置とから成り、
前記第1装置は、前記商用電力ラインで供給される商用交流電源電圧波形におけるゼロクロス点を基準として、該商用交流電源の周波数とは異なる周波数の基準クロック信号を生成し、該基準クロック信号に同期した交流電圧信号を検査用信号として、当該商用電力ラインの前記中性線または前記接地線の何れか一方に注入する検査用信号注入手段を備え、
前記第2装置は、
前記商用電力ラインで供給される前記商用交流電源電圧波形におけるゼロクロス点を基準として、前記基準クロック信号と同期した同期クロック信号を生成する同期クロック信号生成手段と、
前記屋内引込配線側における前記中性線と前記接地線との間の電圧信号から前記商用交流電源の周波数を除去して、前記検査用信号に基づく周波数成分を抽出した抽出信号を取得する抽出信号取得手段と、
前記抽出信号取得手段により取得した前記抽出信号と、前記同期クロック信号生成手段により生成した前記同期クロック信号との極性が、同一サイクル内で一致しているか否かに基づいて、前記中性線と前記接地線との配線接続の正誤を判定する配線接続判定手段と、
前記配線接続判定手段による判定結果を報知する検査結果報知手段と、
を備える、
ことを特徴とする配線接続検査システム。
【請求項3】
前記配線接続判定手段は、
前記同期クロック信号を用いて前記抽出信号を同期整流することにより整流信号とする同期整流回路と、
前記整流信号を積分して判定用直流電圧信号を生成する積分回路と、
前記判定用直流電圧信号による測定電圧値と、予め定めた判定基準電圧値とを対比することに基づいて、前記中性線と前記接地線との配線接続の正誤を判定する判定回路と、
で構成したことを特徴とする請求項2に記載の配線接続検査システム。
【請求項4】
前記第1装置の前記検査用信号注入手段は、前記商用電力ラインの前記中性線より前記検査用信号を注入するものとし、
前記第2装置の前記抽出信号取得手段は、前記接地線の電位を基準とした前記中性線の電位レベル変化を前記抽出信号として取得するものとし、
前記第2装置の前記同期整流回路は、前記同期クロック信号のオフ時またはオン時に前記抽出信号を反転させる全波整流により、正極側もしくは負極側が反転された前記整流信号にするものとし、
前記第2装置の前記判定回路は、前記判定用直流電圧信号による前記測定電圧値が前記判定基準電圧値よりも高い場合に前記中性線と前記接地線との配線接続を正常と判定し、前記判定用直流電圧信号による前記測定電圧値が前記判定基準電圧値よりも低い場合に前記中性線と前記接地線との配線接続を誤りと判定するものとしたことを特徴とする請求項3に記載の配線接続検査システム。
【請求項5】
前記第2装置の前記配線接続判定手段は、前記中性線と前記接地線との配線接続の正誤を判定不能であった場合、前記同期クロック信号生成手段により、前記同期クロック信号の位相を90度進ませた、または90度遅らせた補正同期クロック信号を生成させるようにしたことを特徴とする請求項2~請求項4の何れか1項に記載の配線接続検査システム。
【請求項6】
検査する配線対象は、前記屋内引込配線側の前記中性線と前記接地線が接続される接地線極E付きコンセントへの接続配線とし、
前記第2装置には、前記接地線極E付きコンセントの中性線極Nと接地線極Eに、それぞれ差し込まれる栓刃を設けたことを特徴とする請求項2~請求項5の何れか1項に記載の配線接続検査システム。
【請求項7】
検査する配線対象は、前記屋内引込配線側の前記中性線と前記接地線が接続される分電盤とし、
前記第2装置には、前記分電盤内の配線と接触可能な一対の接触端子を設けたことを特徴とする請求項2~請求項6の何れか1項に記載の配線接続検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活電線と中性線と接地線を含む商用電力ラインの基端側と、該商用電力ラインの屋内引込配線側とにおける配線接続の正誤を検査する配線接続検査方法およびこの方法を適用した配線接続検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
社団法人日本電気協会より発行の内線規程によれば、電気洗濯機,電子レンジ,電気冷蔵庫等の水気を帯びる家電製品の電源コンセントについて、接地線極E付きコンセントの使用が義務的事項として明記されている。
【0003】
接地線極E付きコンセントは、一般的に、商用電源ラインに含まれる柱上トランスTRの二次側と接続される活電線極L及び中性線極Nと、アースに接続される接地線極Eの3つの端子を備えている。接地線の露出導電性部分を大地に直接接続するT-T接地の場合、中性線極NにはB種接地(系統接地)工事が適用され、接地線極EにはD種接地(機器接地)工事が適用される。
【0004】
また、高層ビル等のように階ごとの独立接地が困難な状況では、接地線の露出導電性部分を電力系統の接地点へ接接続するT-N接地方式が採られる。このT-N接地方式の場合、接地線極E付きコンセントは、商用電源ラインに含まれる柱上トランスTRの二次側と接続される活電線極L及び中性線極Nと、中性極Nの基端側と共用接地極にて大地に接続されている接地線極Eとの3つの端子を備えている。この場合、共用接地工事及び構造体利用接地工事が適用される。
【0005】
商用電力ラインにおいて、配線間や対接地間、あるいは配電線に接続された電気機器等に漏電が生じると、人体等に対する安全性の確保が困難になるだけでなく、火災等の発生原因にも繋がり、危険である。そこで、分電盤内の漏電遮断機(ELCB:Earth Leakage Circuit Breaker、GFCI:Ground-Fault Circuit Interrupter等)を介して、活電線極L及び中性線極Nを屋内に引き込むことで漏電の検出を行い、漏電検出時には活電線極L及び中性線極Nを遮断して、安全を図れるようになっている。
【0006】
上述したような商用電力ラインの活電線極L、中性線極N、接地線極Eからなる3種類の配線を、受配電盤や分電盤を介して電源コンセントまで敷設配線する工事において、中性線極Nと接地線極Eとの逆接続、中性線極Nと接地線極Eとを一緒に結線する等の電源配線の接続ミスをすることがある。
【0007】
このような電源配線の接続ミスを見過ごしたまま使用すると、分電盤に設けられている漏電遮断機による電源遮断が発生するおそれがある。漏電遮断器が作動すると、配線への給電が即座に断たれるため、これによる停電は需要家に大きな影響(例えば操業の停止等)を及ぼすことになる。よって、商用電力ラインにおいて、電源配線の接続確認や完成検査を行うときに、漏電遮断器の遮断を招かないことが極めて重要である。
【0008】
また、商用電力ラインにおいて敷設確認や完成検査を行うために、商用電力ラインの基端側(柱上トランスTRの二次側など)の配線設備と、屋内引込配線末端側の電源コンセントとの電気的導通を確認する方法を用いる場合がある。この場合、基端側と末端側(電源コンセント側)、両方の状態を確認する必要がある。例えば、電源コンセント側で敷設確認や完成検査を行う場合、基端側の測定状態を知っておく必要があるので、基端側測定器に無線送信機能等を設けておき、基端側の測定結果を電源コンセント側へ送信して、作業者に知らせるといった工夫が必要になる。しかし、高層ビル等では基端側が地下にあると共に各階がコンクリート等で遮断されている状態のため、無線送信機能等では基端側の測定状態を電源コンセント側の作業者へ知らせることが困難な場合もある。
【0009】
また、昨今は、電力線を通信回線として用いる電力線搬送通信も実用化されているので、基端側から電源コンセント側へ電力線を介して通信を行うことも可能である。しかしながら、電力線搬送通信を行うには、電源配線の敷設そのものが正しく行われていることが前提となるため、電源配線の接続ミスがあった場合、基端側の測定状態を電源コンセント側の作業者へ知らせることはできない。
【0010】
そのため、このような現場では基端側と電源コンセント側との両方に作業者を配置して検査を行っており、作業性及び効率が大幅に低下してしまう。
【0011】
そこで、電源コンセント側のみで配線の検査を行える敷設検査器が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この敷設検査器は、電力ラインの活電線、中性線及び接地線を接続したコンセントの活電線極Lに対して直流パルスを印加し、中性線極Nと接地線極Eとの間に、活電線極Lに印加した直流パルスに対応した電圧が出力されたか否かに基づいてコンセントの配線が正敷設であるか誤敷設であるかを判定するものである。
【0012】
また、誤配線の有無を判定する配線チェッカーも提案されている(例えば、特許文献2を参照)。この配線チェッカーは、活電線極Lに接続されるべき電圧側栓刃、中性線極Nに接続されるべき中性極栓刃及び接地線極Eに接続されるべき接地線栓刃の3つの栓刃を備える。そして、電圧側栓刃と中性極栓刃との間に、高抵抗素子RHと低抵抗素子RLとを直列に含む抵抗回路を接続するとともに低抵抗素子RLの両端間に電圧計を接続し、接地線栓刃をスイッチSW1を介して低抵抗素子RLの低電位側に接続する。スイッチSW1をオンにしたときの電圧計の測定電圧Vonと、スイッチSW1をオフにしたときの電圧計の測定電圧Voffとにより(即ち、接地抵抗の差分の電圧が発生するか否かにより)、誤配線の有無を判定できる。
【0013】
さらに、基端側に検査用機器を用いるものの、基端側の測定状態を電源コンセント側へ知らせることなく配線接続状態を判定できる配線接続判定装置も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。この配線接続判定装置は、電源配線の基端側で接地線Gに短絡された中性線に発信器からの単発正負のパルス性電圧信号をトランス接続部を介して注入し、末端側の三端子コンセントの中性端子nと接地端子gとの間の信号を判定器で検出する。検出した信号の極性が注入した信号と同一なら端子n,gに配線N,Gが正しく接続されていると判定でき、逆の場合には各々の接続が逆であると判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2014-209058号公報
【文献】特開2012-173023号公報
【文献】特開平6-6916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の敷設検査器は、装置としてコンパクトな形状に収めることが難しい。商用電源ラインに含まれる柱上トランスTRの二次側に接続されている電源コンセントの活電線極Lに対して直流パルスを印加する必要があるため、直流パルスの電力源として用いるコンデンサ、トランジスタ、直流パルス放電制限抵抗等の部品形状が大きくなってしまう。加えて、接続端子を活線状態の活電線極Lに直接接続するため、保護回路も別途必要となる。よって、本引用文献1に記載の敷設検査器を実施する場合、本体が相当大型になってしまい、携帯には適さないことから、敷設検査作業が煩雑になると考えられる。
【0016】
また、検査対象となる商用電源ラインに対し、比較的電源ノイズに影響されやすいインバータ及びマトリクスコンバータ等の電気機器が接続されていた場合、本引用文献1に記載の敷設検査器を使うことは危険である。敷設検査器から印加する直流パルスによって、瞬停に近い状態が作り出されると、電気機器の異常動作や故障の原因となる可能性があるため、需要家に思わぬ不利益を与えかねず、検査の安全性を担保できない点で問題である。
【0017】
さらに、中性線極NにはB種接地(系統接地)工事が適用され、接地線極EにはD種接地(機器接地)工事が適用され、中性線極Nと接地線極Eとの間に接地抵抗ReがあるT-T接地方式の商用電源ラインに対して、本引用文献1に記載の敷設検査器は有効でない。商用電源ラインに電気機器が繋がれ駆動されていた場合、中性線極Nと接地線極Eとの間の電圧信号には、配電システムからの漏洩電流等により、広い周波数帯域に及ぶ地電圧Veが常に発生している。また、接地抵抗Reが小さい場合には、活電線極Lから中性線極Nと活電線極Lから接地線極Eとの間の抵抗差が小さくなるために、現れる直流パルス振幅もそれに合わせて小さくなる。さらに、中性線と接地線とを隣接させて配線すると、前記2線間には寄生容量Ceが生じるために、直流パルス信号のように瞬間的な電圧変動は吸収されるか、振幅が低下した状態になる。
【0018】
つまり、引用文献1に記載の敷設検査器によってT-T接地方式の商用電源ラインの検査を行う場合、中性線極Nと接地線極Eとの間の電圧信号から直流パルスと同周波数帯域の地電圧Veの影響を除去することは困難である。地電圧Veの影響を受けると、活電線極Lから印加した単発の短い幅でかつ微小電圧値になり得る直流パルス信号を正確に検出することは困難である。したがって、引用文献1に記載の敷設検査器では、コンセントの中性線極Nと接地線極Eとの配線が正敷設であるか誤敷設であるかを、精度よく正確に判定することができるとは考え難い。
【0019】
また、共用接地及び構造体利用接地が適用され、中性線極Nと接地線極Eとの間に接地抵抗Reがなく線材抵抗のみのT-N接地方式の商用電源ラインに対して、引用文献1に記載の敷設検査器によって検査を行うことも有効ではない。T-N接地方式の商用電源ラインの場合には、活電線極Lから中性線極Nの間と、活電線極Lから接地線極Eの間との抵抗差はほぼ無くなるため、引用文献1に記載の敷設検査器で直流パルス信号を検出することが困難になる。したがって、引用文献1に記載の敷設検査器では、コンセントの中性線極Nと接地線極Eの配線が正敷設であるか誤敷設であるかを正確に判定することはできない。
【0020】
さらに、大規模工場や高層ビルのように中性線と接地線とを隣接させて長距離配線した場合には、中性線と接地線との間に寄生容量Ceが生じるため、中性線極Nと接地線極Eとの間にコンデンサを接続した状態と等価となる。このような長距離配線では、注入した直流パルス信号が該コンデンサに吸収されて消失するか、信号振幅が低下するため、引用文献1に記載の敷設検査器では、コンセントの中性線極Nと接地線極Eの配線が正敷設であるか誤敷設であるかを精度よく判定することはできない。
【0021】
上記特許文献2に記載された配線チェッカーを用いて配線検査を行う場合、電圧側と接地線との間に抵抗(高抵抗素子RH、低抵抗素子RL)が介在するため、測定回路のスイッチをオンにしたとき、この抵抗直列回路を介して漏洩電流が生じ、漏電遮断機が作動する危険性がある。
【0022】
また、特許文献2に記載された配線チェッカーをT-T接地方式の商用電源ラインの配線検査に用いる場合、接地抵抗Reが小さいと、接地抵抗による電圧の差分も小さくなるため、コンセントの誤配線の有無を精度よく正確に判定することは困難である。さらに、特許文献2に記載された配線チェッカーをT-N接地方式の商用電源ラインの配線検査に用いる場合、接地抵抗による電圧の差分はほぼ無くなるため、コンセントの誤配線の有無を判定することはできない。
【0023】
上記特許文献3に記載された配線接続判定装置は、中性線極Nにトランス接続部を介在させパルス性電圧信号を注入するものであるが、中性線極Nと接地線極Eとの間の電圧信号には、パルス性電圧信号の周波数帯域を含んだ広い周波数帯域にわたる地電圧Veが常に重畳される。このため、ノッチフィルタやローパスフィルタ等を用いて中性線極Nと接地線極Eとの間の電圧信号から地電圧Veの影響を適正に除去し、中性線極Nにトランス接続部を介在させて注入した単発正負のパルス性電圧信号の極性を正確に検出することは困難である。よって、特許文献3に記載された配線接続判定装置を用いても、中性線極Nと接地線極Eとの配線が正しいか逆であるかを精度よく正確に判別することはできない。
【0024】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、新規敷設工事、増設工事等に伴う配線接続の検査に際して、どのような接地工事の種類であっても、漏電遮断器を作動させることなく、配線接続の正誤判定を精度よく正確に、且つ効率よく行える配線接続検査方法および配線接続検査システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の課題を解決するために、第1の発明は、活電線と中性線と接地線を含む商用電力ラインの基端側と、該商用電力ラインの屋内引込配線側とにおける配線接続の正誤を検査する配線接続検査方法において、前記商用電力ラインで供給される商用交流電源電圧の変化点を基準として、該商用交流電圧信号の周波数とは異なる周波数の基準クロック信号を生成し、該基準クロック信号に同期した交流電圧信号を検査用信号として生成する検査用信号生成ステップと、前記検査用信号を、当該商用電力ラインの基端側における中性線または接地線の何れか一方に注入する検査用信号注入ステップと、前記商用電力ラインで供給される商用交流電源電圧の変化点を基準として、前記基準クロック信号と同期した同期クロック信号を生成する同期クロック信号生成ステップと、前記屋内引込配線側における中性線と接地線との間の電圧信号から商用交流電源電圧の周波数を除去して、検査用信号に基づく周波数成分を抽出した抽出信号を取得する抽出信号取得ステップと、前記抽出信号取得ステップにて取得した抽出信号と、前記同期クロック信号生成ステップにて生成した同期クロック信号との極性が、同一サイクル内で一致しているか否かに基づいて、中性線と接地線との配線接続の正誤を判定する配線接続判定ステップと、前記配線接続判定ステップによる判定結果を報知する検査結果報知ステップと、を行うことを特徴とする。
【0026】
上記の課題を解決するために、第2の発明は、活電線と中性線と接地線を含む商用電力ラインの基端側と、該商用電力ラインの屋内引込配線側とにおける配線接続の正誤を検査する配線接続検査システムにおいて、前記商用電力ラインの基端側にて用いる第1装置と、当該商用電力ラインの屋内引込配線側にて用いる第2装置とから成り、前記第1装置は、前記商用電力ラインで供給される商用交流電源電圧の変化点を基準として、該商用交流電圧信号の周波数とは異なる周波数の基準クロック信号を生成し、該基準クロック信号に同期した交流電圧信号を検査用信号として、当該商用電力ラインの中性線または接地線の何れか一方に注入する検査用信号注入手段を備え、前記第2装置は、前記商用電力ラインで供給される商用交流電源電圧の変化点を基準として、前記基準クロック信号と同期した同期クロック信号を生成する同期クロック信号生成手段と、前記屋内引込配線側における中性線と接地線との間の電圧信号から商用交流電源電圧の周波数を除去して、検査用信号に基づく周波数成分を抽出した抽出信号を取得する抽出信号取得手段と、前記抽出信号取得手段により取得した抽出信号と、前記同期クロック信号生成手段により生成した同期クロック信号との極性が、同一サイクル内で一致しているか否かに基づいて、中性線と接地線との配線接続の正誤を判定する配線接続判定手段と、前記配線接続判定手段による判定結果を報知する検査結果報知手段と、を備える、ことを特徴とする。
【0027】
また、第2の発明において、前記配線接続判定手段は、前記同期クロック信号を用いて前記抽出信号を同期整流することにより整流信号とする同期整流回路と、前記整流信号を積分して判定用直流電圧信号を生成する積分回路と、前記判定用直流電圧信号による測定電圧値と、予め定めた判定基準電圧値とを対比することに基づいて、中性線と接地線との配線接続の正誤を判定する判定回路と、で構成しても良い。
【0028】
また、第2の発明において、前記第1装置の検査用信号注入手段は、前記商用電力ラインの中性線より検査用信号を注入するものとし、前記第2装置の抽出信号取得手段は、接地線の電位を基準とした中性線の電位レベル変化を抽出信号として取得するものとし、前記第2装置の同期整流回路は、前記同期クロック信号のオフ時またはオン時に前記抽出信号を反転させる全波整流により、正極側もしくは負極側が反転された整流信号にするものとし、前記第2装置の判定回路は、前記判定用直流電圧信号による測定電圧値が判定基準電圧値よりも高い場合に中性線と接地線との配線接続を正常と判定し、前記判定用直流電圧信号による測定電圧値が判定基準電圧値よりも低い場合に中性線と接地線との配線接続を誤りと判定するものでも良い。
【0029】
また、第2の発明において、前記第2装置の配線接続判定手段は、中性線と接地線との配線接続の正誤を判定不能であった場合、前記同期クロック信号生成手段により、同期クロック信号の位相を90度進ませた、または90度遅らせた補正同期クロック信号を生成させるようにしても良い。
【0030】
また、第2の発明において、検査する配線対象は、前記屋内引込配線側の中性線と接地線が接続される接地線極E付きコンセントへの接続配線とし、前記第2装置には、接地線極E付きコンセントの中性線極Nと接地線極Eに、それぞれ差し込まれる栓刃を設けても良い。
【0031】
また、第2の発明において、検査する配線対象は、前記屋内引込配線側の中性線と接地線が接続される分電盤とし、前記第2装置には、前記分電盤内の配線と接触可能な一対の接触端子を設けても良い。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、どのような接地工事の種類であっても、漏電遮断器を作動させることなく、配線接続の正誤判定を精度よく正確に、且つ効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る配線接続検査方法を適用した配線接続検査システムの概略構成図である。
図2】(a)は、3線が電源コンセントに正しく接続されているT-T接地方式の商用電力ラインを配線チェッカーで検査する場合の説明図である。(b)は、中性線と接地線が電源コンセントに誤接続されているT-T接地方式の商用電力ラインを配線チェッカーで検査する場合の説明図である。
図3】配線チェッカーの親機から中性線または接地線へ注入する検査用信号の一例を示す波形図である。
図4】配線チェッカーの子機が電源コンセントより受信する検出電圧信号の一例を示す波形図である。
図5】(a)は、図2(a)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける商用交流電源電圧波形と商用交流電源電圧波形ゼロクロス位置と同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。(b)は、図2(a)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1と整流信号S2と判定用直流電圧信号S3の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。(c)は、図2(a)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける同期クロック信号CLK-Sと寄生容量Ceの影響が加わった抽出信号S1と整流信号S2と判定用直流電圧信号S3の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。
図6】(a)は、図2(b)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける商用交流電源電圧波形と商用交流電源電圧波形ゼロクロス位置と同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。(b)は、図2(b)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1と整流信号S2と判定用直流電圧信号S3の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。(c)は、図2(b)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける同期クロック信号CLK-Sと寄生容量Ceの影響が加わった抽出信号S1と整流信号S2と判定用直流電圧信号S3の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。
図7】(a)は、3線が電源コンセントに正しく接続されているT-N接地方式の商用電力ラインを配線チェッカーで検査する場合の説明図である。(b)は、中性線と接地線が電源コンセントに誤接続されているT-N接地方式の商用電力ラインを配線チェッカーで検査する場合の説明図である。
図8】(a)は、図7(a)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける商用交流電源電圧波形と商用交流電源電圧波形ゼロクロス位置と同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。(b)は、図7(a)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1と整流信号S2と判定用直流電圧信号S3の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。(c)は、図7(a)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける同期クロック信号CLK-Sと寄生容量Ceの影響が加わった抽出信号S1と整流信号S2と判定用直流電圧信号S3の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。
図9】(a)は、図7(b)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける商用交流電源電圧波形と商用交流電源電圧波形ゼロクロス位置と同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。(b)は、図7(b)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1と整流信号S2と判定用直流電圧信号S3の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。(c)は、図7(b)の配線検査に適用した配線チェッカーにおける同期クロック信号CLK-Sと寄生容量Ceの影響が加わった抽出信号S1と整流信号S2と判定用直流電圧信号S3の時間軸を合わせて併記した信号波形図である。
図10】(a)は、3線が分電盤に正しく接続されているT-T接地方式の商用電力ラインを配線チェッカーで検査する場合の説明図である。(b)は、中性線と接地線が分電盤内で誤接続されているT-T接地方式の商用電力ラインを配線チェッカーで検査する場合の説明図である。
図11】(a)は、3線が分電盤に正しく接続されているT-N接地方式の商用電力ラインを配線チェッカーで検査する場合の説明図である。(b)は、中性線と接地線が分電盤内で誤接続されているT-N接地方式の商用電力ラインを配線チェッカーで検査する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、配線接続検査方法を適用した配線接続検査システムの概略構成を示す。
【0035】
配線チェッカー1は、配線接続検査システムを構成するもので、商用電力ラインの基端側から検査用信号を注入する第1装置としての親機10と、商用電力ラインの末端側から検査用信号を抽出する第2装置としての子機20から成る。本発明に係る配線接続検査システムを実施するとき、親機10と子機20は使用する場所が物理的に離れているため、別体(着脱可能な分離構造を含む)として構成する。
【0036】
配線チェッカー1による検査対象の商用電力ライン30は、柱上トランスTRの二次側と接続される活電線30L及び中性線30N、大地に接続される接地線30Eで構成され、屋内に引き込まれて配電盤50を介して電源コンセント40に接続される。図1に示す商用電力ライン30の接地線30Eにおいては、便宜上、B種接地抵抗、D種接地抵抗及びその間の大地抵抗を合算して接地抵抗Re(一般的に100Ω以下)として示す。また、商用電源ライン30の漏洩電流等によって数ボルトの地電圧Veが生じている場合がある。さらに、屋内における中性線と接地線(例えば、後述する屋内配電用中性線32Nと屋内配電用接地線32E)とを隣接させて配線すると、2線間に寄生容量Ceが生じる場合がある。
【0037】
そして、活電線30Lは後述する屋内配線を介して電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続され、活電極差込口Lとなる。中性線30Nは後述する屋内配線を介して電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続され、中性極差込口Nとなる。接地線30Eは後述する屋内配線を介して電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続され、接地極差込口Eとなる。これら屋内配線の接続が適正に行われていれば、配線接続は正常であるが、これら屋内配線の接続が適正に行われていなければ誤接続となる。
【0038】
屋内配線は、例えば、配電盤50を介して行う。活電線30Lは屋内引込み活電線31Lを介して配電盤50の活電線用ブレーカ51Lの基端側端子に接続され、活電線用ブレーカ51Lの他方の端子は屋内配電用活電線32Lを介して電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続される。中性線30Nは屋内引込み中性線31Nを介して配電盤50の中性線用ブレーカ51Nの基端側端子に接続され、中性線用ブレーカ51Nの他方の端子は屋内配電用中性線32Nを介して電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続される。接地線30Eは屋内引込み接地線31Eを介して配電盤50の接地用の中継端子52に接続され、接地用の中継端子52は屋内配電用接地線32Eを介して電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続される。
【0039】
本実施形態に係る配線チェッカー1は、どのような接地工事の種類であっても、漏電遮断器を作動させることなく、中性極差込口Nと接地極差込口Eの配線接続の正誤判定を精度よく正確に、且つ効率よく行うことができる。なお、本実施形態の配線チェッカー1は、中性極差込口Nと接地極差込口Eの配線接続検査機能のみを備えるものとしたが、公知既存の配線チェッカーと同様、活電極差込口Lも含めた接続判定機能を備える構成としても良い。
【0040】
先ず、配線チェッカー1の親機10は、各種の制御及び処理を実行するCPU11と、一定の周波数でクロック信号をCPU11へ出力する発振回路12と、分周器13(例えば、CPU11内の機能として構成)と、検査用信号注入手段14と、電源エッジ検出回路15を備える。電源エッジ検出回路15は、配電盤50における活電線用ブレーカ51Lの基端側端子と、配電盤50における中性線用ブレーカ51Nの基端側端子とから、商用交流電源電圧信号を取得し、商用交流電源電圧の変化点を検出する。分周器13は、電源エッジ検出回路15で検出した商用交流電源電圧の変化点を発振開始位置として、発振回路12のクロック信号から基準クロック信号CLK-Oを生成する。検査用信号注入手段14は、基準クロック信号CLK-Oに同期した交流電圧信号を検査用信号として屋内引込み中性線31Nまたは屋内引込み接地線31Eの何れか一方に注入する。なお、基準クロック信号CLK-Oは、商用電力ライン30で供給される商用交流電源電圧の周波数とは異なる周波数であり、商用交流周波数およびその高調波ノイズ成分と容易に分離できる周波数(例えば、2.4kHz)であることが望ましい。また、検査用信号は、漏電遮断器を作動させない低い電流に抑制しておくことが望ましい。
【0041】
上記検査用信号注入手段14は、注入電圧波形生成回路14aとトランス接続部14bから成る。注入電圧波形生成回路14aは、基準クロック信号CLK-Oに同期した交流電圧信号をトランス接続部14bに出力するもので、トランス接続部14bは、注入電圧波形生成回路14aからの注入電圧波形に準じた誘導信号を屋内引込み中性線31Nないし屋内引込み接地線31Eに発生させる。
【0042】
一方、配線チェッカー1の子機20は、電源エッジ検出回路21と、CPU22と、発振回路23と、同期クロック信号生成手段24と、抽出信号取得手段25と、配線接続判定手段26と、検査結果報知手段27を備える。電源エッジ検出回路21は、電源コンセント40における活電極差込口Lと中性極差込口Nとの間の商用交流電源電圧から変化点を検出する。CPU22は、子機20の制御及び処理を実行する。発振回路23は、一定周波数のクロック信号をCPU22へ出力する。同期クロック信号生成手段24(CPU22内の機能として構成)は、電源エッジ検出回路21で検出した商用交流電源電圧の変化点を発振開始位置として発振回路23のクロック信号を分周し、同期クロック信号CLK-Sを生成する。抽出信号取得手段25は、電源コンセント40における中性極差込口Nと接地極差込口Eとの間の電圧信号から商用交流電源電圧の周波数を除去して、検査用信号に基づく周波数成分を抽出した抽出信号を取得する。検査結果報知手段27は、抽出信号と同期クロック信号との極性が同一サイクル内で一致しているか否かに基づいて、屋内引込み中性線31Nから電源コンセント40までの屋内配線および屋内引込み接地線31Eから電源コンセント40までの屋内配線における配線接続の正誤を判定する。
【0043】
上記電源エッジ検出回路21は、電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続される活電線極用栓刃251Lより活電線極電位送信ライン252Lを介して、活電線極電位を取得する。また、電源エッジ検出回路21は、コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続される中性線極用栓刃251Nより中性線極電位送信ライン252Nを介して、中性線極電位を取得する。電源エッジ検出回路21は、商用交流電源電圧波形の変化点(例えば、ゼロクロス位置)を基準電位としたコンパレータで構成された比較器を備え、取得した活電線極電位と中性線極電位から商用交流電源電圧波形の変化点を検出する。
【0044】
上記同期クロック信号生成手段24は、分周器を備え、発振回路23からのクロック信号を分周し、電源エッジ検出回路21から通知される商用交流電源電圧波形の変化点を発振開始位置として基準クロック信号CLK-Oと同じ周波数の同期クロック信号CLK-Sを生成する。また、同期クロック信号生成手段24は、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませた、または90度遅らせた補正同期クロック信号CLK-S′を生成できる。補正同期クロック信号CLK-S′の生成は、後述するように、中性線Nと接地線Eの配線が適正な配線状態か、または誤った配線状態か判定不能であった場合に行う。
【0045】
上記抽出信号取得手段25は、コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続される中性線極用栓刃251Nから中性線極電位送信ライン252Nを介して、中性線極電位を取得する。また、抽出信号取得手段25は、コンセント40の接地線用刃受け40Eより接地線極電位送信ライン252Eを介して、接地線極電位を取得する。例えば、屋内引込み中性線31Nに検査用信号を注入した場合、抽出信号取得手段25は、屋内引込み接地線31Eの接地線極電位を基準とした中性線極電位の変化を検出電圧信号として受信する。また、抽出信号取得手段25は、検査用信号の周波数(例えば、2.4kHz)を中心周波数とする6次のバンドパスフィルタで構成された帯域通過フィルタを備え、検出電圧信号から商用交流電源電圧の周波数を除去して、検査用信号に基づく周波数成分を抽出した抽出信号を取得する。
【0046】
上記配線接続判定手段26は、同期整流回路26aと、積分回路26bと、A/D変換回路26cと、判定回路26d(CPU22内に構築)を備える。同期整流回路26aは、同期クロック信号生成手段24からの同期クロック信号CLK-Sを基に、抽出信号取得手段25からの抽出信号に対して全波整流を行う。積分回路26bは、同期整流回路26aからの信号を積分して判定用直流電圧信号とする。A/D変換回路26cは、積分回路26bからの判定用直流電圧信号の電圧値をデジタル信号に変換する。判定回路26dは、A/D変換回路26cからの測定電圧値とメモリ22aに記憶している判定基準電圧値とに基づいて、中性極差込口Nと接地極差込口Eとに対する配線が正常であるか誤りであるかを判定する。
【0047】
同期整流回路26aは、例えば、同期クロック信号CLK-Sのオン(またはオフ)に同期して抽出信号を反転させる全波整流機能を有する。したがって、親機10の検査用信号注入手段14から屋内引込み中性線31Nに注入された検査用信号が、正しく中性線極用栓刃251Nより受信されていれば、抽出信号取得手段25が取得した抽出信号の負極側が同期整流回路26aにて反転された整流信号となる。一方、親機10の検査用信号注入手段14から屋内引込み中性線31Nに注入された検査用信号が誤って接地線極用栓刃251Eに受信されていれば抽出信号取得手段25が取得した抽出信号の極性が反転する。すなわち、屋内引込み中性線31Nから電源コンセント40までの屋内配線および屋内引込み接地線31Eから電源コンセント40までの屋内配線が誤接続であれば、抽出信号取得手段25が取得した抽出信号の正極側が同期整流回路26aにて反転された整流信号となる。
【0048】
積分回路26bは、同期整流回路26aにて全波整流された整流信号を積分して判定用直流電圧信号を生成するものである。したがって、親機10の検査用信号注入手段14から屋内引込み中性線31Nに注入された検査用信号が、正しく中性線極用栓刃251Nより受信されていれば、積分回路26bにより正の判定用直流電圧信号が生成される。一方、親機10の検査用信号注入手段14から屋内引込み中性線31Nに注入された検査用信号が誤って接地線極用栓刃251Eに受信されていれば(屋内引込み中性線31Nから電源コンセント40までの屋内配線および屋内引込み接地線31Eから電源コンセント40までの屋内配線が誤接続であれば)、積分回路26bにより負の判定用直流電圧信号が生成される。
【0049】
A/D変換回路26cは、積分回路26bにて生成されたアナログの判定用直流電圧信号を適宜なサンプリング周波数でデジタル値に変換するものである。なお、同期整流回路26aにて、同期クロック信号CLK-Sのオンに同期して抽出信号の極性をカットする半波整流を行った場合には、積分回路26dにより得られる判定用直流電圧信号の絶対値が小さくなるので、A/D変換回路26cによりデジタル値に変換された判定用直流電圧信号の測定電圧値の絶対値も小さくなる。
【0050】
判定回路26dは、A/D変換回路26cにより変換された判定用直流電圧信号の測定電圧値と、メモリ22aに記憶している判定基準電圧値(例えば、0V)とを比較する。測定電圧値が判定基準電圧値よりも高い場合(積分回路26bにより正の判定用直流電圧信号が生成された場合)には、中性線Nと接地線Eとの配線接続を正常と判定する。一方、測定電圧値が判定基準電圧値よりも低い場合(積分回路26bにより負の判定用直流電圧信号が生成された場合)には、中性線Nと接地線Eとの配線接続を誤りと判定する。
【0051】
なお、判定回路26dにおける配線接続の正誤判定は、必ずしも測定電圧値が判定基準電圧値よりも高い場合を正常、測定電圧値が判定基準電圧値よりも低い場合を誤りと判定するのではない。例えば、親機10の検査用信号注入手段14によって検査用信号を屋内引込み接地線31Eに注入した場合、検査用信号が正しく接地線極用栓刃251Eより受信されていれば、積分回路26bにより負の判定用直流電圧信号が生成される。一方、検査用信号が誤って中性線極用栓刃251Nより受信されていれば、積分回路26bにより正の判定用直流電圧信号が生成される。この場合、判定回路26dは、測定電圧値が判定基準電圧値よりも低い場合に中性線Nと接地線Eとの配線接続を正常と判定し、測定電圧値が判定基準電圧値よりも高い場合に中性線Nと接地線Eとの配線接続を誤りと判定する必要がある。このように、判定回路26dにおける配線接続の正誤判定は、検査用信号の注入箇所、抽出信号取得手段25や同期整流回路26a等の構成に応じた正誤判定アルゴリズムを判定回路26dに設定しておく必要がある。
【0052】
また、本実施形態の配線チェッカー1においては、子機20のCPU22によって判定回路26dを構成するものとしたので、A/D変換回路26cを設けて判定用直流電圧信号をデジタル値に変換する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、判定回路26dを、コンパレータ等のアナログ回路で構成すれば、積分回路26dにより生成された判定用直流電圧信号をそのまま判定回路26dに入力して用いることができる。
【0053】
検査結果報知手段27は、配線接続判定手段26の判定回路26dによる配線接続の判定結果を検査結果として報知するもので、表示パネルやランプ等の可視表示機器、あるいは合成音声出力機能やブザー等の可聴報知機器を用いて構成することができる。
【0054】
次に、配線チェッカー1(親機10及び子機20)による判定動作について、具体的な例を用いて説明する。
【0055】
図2(a),(b)に示す商用電力ライン30は、接地線の露出導電性部分を大地に直接接続するT-T接地方式であり、中性極差込口NにはB種接地(系統接地)工事が適用され、接地極差込口EにはD種接地(機器接地)工事が適用される。T-T接地方式の商用電源ライン30においては、中性極差込口Nと接地極差込口Eとの間に接地抵抗Reが介在すると共に、配電システムからの漏洩電流等に起因した広い周波数帯域に及ぶ地電圧Veが常に発生している。また、屋内配電用中性線32Nと屋内配電用接地線32Eを隣接させて配線すると、2線間に寄生容量Ceが生じる(図2中、破線で示す)。
【0056】
上記T-T接地方式の商用電源ライン30は、屋内の配電盤50を介して電源コンセント40に接続されるものである。例えば、柱上トランスTRの二次側と接続される基端側の活電線30Lは、屋内引込み活電線31Lを介して配電盤50の活電線用ブレーカ51Lに接続される。同様に、基端側の中性線30Nは屋内引込み中性線31Nを介して配電盤50の中性線用ブレーカ51Nに、接地線30Eは屋内引込み接地線31Eを介して配電盤50の中継端子52に、それぞれ接続される。
【0057】
図2(a)の配線では、活電線用ブレーカ51Lの他方端子は屋内配電用活電線32Lを介して電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続される。中性線用ブレーカ51Nの他方端子は屋内配電用中性線32Nを介して電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続される。接地用の中継端子52は屋内配電用接地線32Eを介して電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続される。すなわち、商用電源ライン30の活電線30Lは電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続されて活電極差込口Lとなる。同様に、中性線30Nは電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続されて中性極差込口Nとなり、接地線30Eは電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続されて接地極差込口Eとなる。これが適正な配線状態である。
【0058】
一方、図2(b)の配線では、活電線用ブレーカ51Lの他方端子は屋内配電用活電線32Lを介して電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続される。しかし、中性線用ブレーカ51Nの他方端子は屋内配電用中性線32Nを介して電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに、接地用の中継端子52は屋内配電用接地線32Eを介して電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続される。すなわち、商用電源ライン30の活電線30Lは電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続されて活電極差込口Lとなるが、中性線30Nと接地線30Eは相互に逆の接続となる。具体的には、中性線30Nは電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続されて中性極差込口N(形状と位置は接地極差込口Eのまま)となり、接地線30Eは電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続されて接地極差込口E(形状と位置は中性極差込口Nのまま)となる。これは誤った配線状態である。
【0059】
まず、適正な配線状態の商用電源ライン30の検査を配線チェッカー1により行う場合を、図2(a)に基づき説明する。
【0060】
先ず、親機10の電圧測定コード15Lを配電盤50の活電線用ブレーカ51Lに、電圧測定コード15Nを配電盤50の中性線用ブレーカ51Nに接続する。親機10による検査用信号の注入は、電源エッジ検出回路15にて取得した商用交流電源電圧(AC100V、60Hz)波形のゼロクロス位置を注入開始位置として、屋内引込み中性線31Nまたは屋内引込み接地線31Eの何れか一方から行う。図2(a)に示す配線検査では、屋内引込み中性線31Nから検査用信号を注入するものとしたが、屋内引込み接地線31Eから検査用信号を注入(図2(a)中、破線で示す)しても良い。
【0061】
屋内引込み中性線31Nより注入した検査用信号波形の一例(2.4kHz)を図3に示す。この検査用信号が電源コンセント40に印加され、屋内のコンセント40の中性線用刃受け40Nに中性線極用栓刃251Nを接続すると共に、コンセント40の接地線用刃受け40Eに接地線極用栓刃251Eを接続した子機20によって受信される。子機20が受信するN-E間電圧信号の一例を図4に示す。このような信号波形となるのは、屋内配電用中性線32Nと屋内配電用接地線32Eとの間に生じる寄生容量Ceと、接地抵抗Reと配電システムの漏洩電流等の影響によって、電源の公称周波数を基準とする広い周波数帯域に及ぶ数ボルトの地電圧Veが重畳されるためである。
【0062】
子機20による検査が開始されると、子機20は電源エッジ検出回路21によって電源コンセント40の活電線用刃受け40Lおよび中性線用刃受け40Nから得られる商用交流電源電圧波形の変化点であるゼロクロス位置を検出する。同期クロック信号生成手段24は、電源エッジ検出回路21から通知されたゼロクロス位置を発振開始位置として同期クロック信号CLK-Sを生成する。同時に、子機20は抽出信号取得手段25によって、電源コンセント40の中性線用刃受け40Nおよび接地線用刃受け40Eから得られるN-E間電圧信号から不要な周波数成分を取り除く。これにより、N-E間電圧信号から検査用信号の周波数帯域(2.4kHz)と同じ周波数帯のみを取り出した抽出信号S1を取得する。この抽出信号S1は、配線接続判定手段26の同期整流回路26aへ入力される。この同期整流回路26aは、同期クロック信号CLK-Sに基づく整流処理を行い、整流信号S2を生成して積分回路26bへ供給する。
【0063】
図5(a)に、商用交流電源電圧波形と商用交流電源電圧波形ゼロクロス位置と同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1の時間軸を合わせて併記した信号波形の一例を示す。抽出信号S1は、接地抵抗Reや地電圧Veの影響により、親機10により注入された検査用信号S1よりも歪んでしまうため、同期クロック信号CLK-Sのオン・オフに確実に同期した交流信号となっていない。しかしながら、図5(b)に示す整流信号S2のように、主に負極側のサイクルが反転されている。更に、この整流信号S2を積分回路26bにて積分すると、同期クロック信号CLK-Sに対してランダムに極性変動を繰り返す地電圧Veの影響成分を減衰させることができ、判定用直流電圧信号S3のように、検査用信号の極性に準じたほぼ直流のプラス電圧信号となる。この判定用直流電圧信号S3をA/D変換回路26cにてデジタル値に変換すると、ほぼ一定のプラス電圧値(測定電圧値)として得られる。
【0064】
次に、図5(a)に寄生容量Ceの影響が加わったときに抽出信号S1を取得した場合を図5(c)に示す。この場合、図5(a)の抽出信号S1に比べて位相が90進んだ抽出信号S1となり、図5(c)に示す判定用直流電圧信号S3のように、ほぼ一定のゼロ電圧値として変化しない。この状態では、屋内配電用中性線32Nと屋内配電用接地線32Eの配線が適正な配線状態か誤った配線状態かを、判定回路26dが判定できない。このような判定不能の場合、判定回路26dから同期クロック信号生成手段24へ、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませる指示を出す。これにより、同期クロック信号生成手段24から同期整流回路26aには、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませた補正同期クロック信号CLK-S′が供給されるようになる。同期整流回路26aが補正同期クロック信号CLK-S′を用いて抽出信号S1の同期整流を行うと、図5(b)に示す判定用直流電圧信号S3と同様に、主に負極側のサイクルが反転される。すなわち、寄生容量Ceの影響で判定不能となる場合には、補正同期クロック信号CLK-S′を用いることで、検査用信号の極性に準じた直流値(ほぼ一定のプラス電圧値)として判定用直流電圧信号S3を得られる。
【0065】
上記のようにして得られた判定用直流電圧信号S3は、A/D変換回路26cにてデジタル値(測定電圧値)に変換された後、判定回路26dへ供給される。判定回路26dは、予め定めた判定基準電圧値(例えば、0V)と測定電圧値とを比較し、配線接続の判定を行う。屋内引込み中性線31Nが配電盤50の中性線用ブレーカ51Nおよび屋内配電用中性線32Nを経て電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続され、中性極差込口Nとなっていれば、商用電源ライン30の中性線30Nから電源コンセント40までの屋内配線は適正である。屋内引込み接地線31Eが配電盤50の中継端子52および屋内配電用接地線32Eを経て電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続され、接地極差込口Eとなっていれば、商用電源ライン30の接地線30Eから電源コンセント40までの屋内配線は適正である。中性線30Nと接地線30Eの屋内配線が共に適正であれば、測定電圧値が判定基準電圧値よりも高くなるので、判定回路26dは、配線接続を正常と判定できる。そして、その判定結果が検査結果報知手段27によって検査員らに知らされる。
【0066】
次に、誤った配線状態の商用電源ライン30の検査を配線チェッカー1により行う場合を、図2(b)に基づき説明する。
【0067】
誤配線の商用電源ライン30においても、親機10より、屋内引込み中性線31Nまたは屋内引込み接地線31Eの何れか一方へ検査用信号を注入し、この検査用信号を子機20で抽出することで検査を行う。ただし、図2(b)の商用電源ラインでは、屋内引込み中性線31Nが配電盤50の中性線用ブレーカ51Nおよび屋内配電用中性線32Nを経て電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続され、接地極差込口Eとなっている。また、屋内引込み接地線31Eが配電盤50の中継端子52および屋内配電用接地線32Eを経て電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続され、中性極差込口Nとなっている。このような誤配線の商用電源ライン30で配線チェッカー1による検査が開始されると、抽出信号取得手段25によって取得される抽出信号S1の極性は、親機10から注入された検査用信号と逆になる。
【0068】
したがって、抽出信号取得手段25によりN-E間電圧信号から不要な周波数成分を取り除き、検査用信号の周波数帯域(2.4kHz)のみを取り出した抽出信号S1を、配線接続判定手段26の同期整流回路26aにて整流処理すると、図6(a),(b)に示すように、整流信号S2は主に正極側のサイクルが反転される。このため、整流信号S2を積分回路26bにて積分した判定用直流電圧信号S3は、ほぼ直流のマイナス電圧信号となり、A/D変換回路26cにてデジタル値に変換すると、ほぼ一定のマイナス電圧値として得られる。
【0069】
次に、図6(a)に寄生容量Ceの影響が加わったときに抽出信号S1を取得した場合を図6(c)に示す。この場合、図6(a)の抽出信号S1に比べて位相が90進んだ抽出信号S1となり、図6(c)に示す判定用直流電圧信号S3のように、ほぼ一定のゼロ電圧値として変化しない。この状態では、屋内配電用中性線32Nと屋内配電用接地線32Eの配線が適正な配線状態か誤った配線状態かを、判定回路26dが判定できない。このような判定不能の場合、判定回路26dから同期クロック信号生成手段24へ、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませる指示を出す。これにより、同期クロック信号生成手段24から同期整流回路26aには、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませた補正同期クロック信号CLK-S′が供給されるようになる。同期整流回路26aが補正同期クロック信号CLK-S′を用いて抽出信号S1の同期整流を行うと、図6(b)に示す判定用直流電圧信号S3と同様に、主に負極側のサイクルが反転される。すなわち、寄生容量Ceの影響で判定不能となる場合には、補正同期クロック信号CLK-S′を用いることで、検査用信号の極性に準じた直流値(ほぼ一定のマイナス電圧値)として判定用直流電圧信号S3を得られる。
【0070】
上記のようにして得られた判定用直流電圧信号S3は、A/D変換回路26cにてデジタル値(測定電圧値)に変換された後、判定回路26dへ供給される。判定回路26dは、予め定めた判定基準電圧値(例えば、0V)と測定電圧値とを比較し、測定電圧値が判定基準電圧値よりも低いことから、配線接続を誤りと判定する。すなわち、商用電源ライン30の中性線30Nから電源コンセント40までの屋内配線および接地線30Eから電源コンセント40までの屋内配線に誤りがあると判定できる。そして、その判定結果が検査結果報知手段27によって検査員らに知らされる。
【0071】
上述した商用電源ライン30は、T-T接地方式であったが、本実施形態に係る配線チェッカー1による配線検査は、その他の接地方式の電源ラインに対しても適用可能である。例えば、図7(a)のように、中性極差込口Nと接地極差込口Eとが基端側の共用接地極にて一つに纏められている接地方式(以下、T-N接地方式という)の場合にも適用可能である。T-N接地方式の商用電源ライン30′の場合、中性線30Nと接地線30Eはほぼ同電位となるが、線材自体の抵抗成分により、数ミリボルトの地電圧Veが重畳する場合がある。また、屋内配電用中性線32Nと屋内配電用接地線32Eを隣接させて配線すると、2線間に寄生容量Ceが生じる(図7中、破線で示す)。
【0072】
T-N接地方式の商用電源ライン30′は、屋内の配電盤50を介して電源コンセント40に接続されるものである。例えば、柱上トランスTRの二次側と接続される基端側の活電線30Lは、屋内引込み活電線31Lを介して配電盤50の活電線用ブレーカ51Lに接続される。同様に、基端側の中性線30Nは屋内引込み中性線31Nを介して配電盤50の中性線用ブレーカ51Nに、接地線30Eは屋内引込み接地線31Eを介して配電盤50の中継端子52に、それぞれ接続される。
【0073】
図7(a)の配線では、活電線用ブレーカ51Lの他方端子は屋内配電用活電線32Lを介して電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続される。中性線用ブレーカ51Nの他方端子は屋内配電用中性線32Nを介して電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続される。接地用の中継端子52は屋内配電用接地線32Eを介して電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続される。すなわち、商用電源ライン30′の活電線30Lは電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続されて活電極差込口Lとなる。同様に、屋内引込み中性線31Nは電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続されて中性極差込口Nとなり、屋内引込み接地線31Eは電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続されて接地極差込口Eとなる。これが適正な配線状態である。
【0074】
一方、図7(b)の配線では、活電線用ブレーカ51Lの他方端子は屋内配電用活電線32Lを介して電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続される。しかし、中性線用ブレーカ51Nの他方端子は屋内配電用中性線32Nを介して電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに、接地用の中継端子52は屋内配電用接地線32Eを介して電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに、それぞれ接続される。すなわち、商用電源ライン30′の活電線30Lは電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続されて活電極差込口Lとなるが、中性線30Nと接地線30Eは相互に逆の接続となる。具体的には、中性線30Nは電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続されて中性極差込口N(形状と位置は接地極差込口Eのまま)となり、接地線30Eは電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続されて接地極差込口E(形状と位置は中性極差込口Nのまま)となる。これは誤った配線状態である。
【0075】
まず、適正な配線状態の商用電源ライン30′の検査を配線チェッカー1により行う場合を、図7(a)に基づき説明する。
【0076】
先ず、親機10の電圧測定コード15Lを配電盤50の活電線用ブレーカ51Lに、電圧測定コード15Nを配電盤50の中性線用ブレーカ51Nに接続する。親機10による検査用信号の注入は、電源エッジ検出回路15にて取得した商用交流電源電圧(AC100V、60Hz)波形のゼロクロス位置を注入開始位置として、屋内引込み中性線31Nまたは屋内引込み接地線31Eの何れか一方より行う。図7(a)に示す配線検査では、屋内引込み中性線31Nより検査用信号を注入するものとしたが、屋内引込み接地線31Eから検査用信号を注入(図7(a)中、破線で示す)しても良い。この検査用信号が電源コンセント40に印加され、屋内の電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに中性線極用栓刃251Nを、接地線用刃受け40Eに接地線極用栓刃251Eを、それぞれ接続した子機20によって受信される。
【0077】
子機20による検査が開始されると、子機20は電源エッジ検出回路21によって電源コンセント40の活電線用刃受け40Lおよび中性線用刃受け40Nから得られる商用交流電源電圧波形の変化点であるゼロクロス位置を検出する。同期クロック信号生成手段24は、電源エッジ検出回路21から通知されたゼロクロス位置を発振開始位置として同期クロック信号CLK-Sを生成する。同時に、子機20の抽出信号取得手段25によって、電源コンセント40の中性線用刃受け40Nおよび接地線用刃受け40Eから得られるN-E間電圧信号から不要な周波数成分が取り除から、検査用信号の周波数帯域(2.4kHz)の抽出信号S1を取得する。この抽出信号S1は、配線接続判定手段26の同期整流回路26aへ入力される。この同期整流回路26aにて、同期クロック信号CLK-Sに基づく整流処理が行われて、整流信号S2として積分回路26bへ供給される。
【0078】
図8(a)に、商用交流電源電圧波形と商用交流電源電圧波形ゼロクロス位置と同期クロック信号CLK-Sと抽出信号S1の時間軸を合わせて併記した信号波形の一例を示す。抽出信号S1は、同期クロック信号CLK-Sのオン・オフに同期したサイクルの交流波形となっており、図8(b)に示す整流信号S2としては、負極側のサイクルのみが反転されている。よって、この整流信号S2を積分回路26bにて積分した判定用直流電圧信号S3は、ほぼ直流のプラス電圧信号となり、A/D変換回路26cにてデジタル値に変換すると、ほぼ一定のプラス電圧値として得られる。
【0079】
次に、図8(a)に寄生容量Ceの影響が加わったときに抽出信号S1を取得した場合を図8(c)に示す。この場合、図8(a)の抽出信号S1に比べて位相が90進んだ抽出信号S1となり、図8(c)に示す判定用直流電圧信号S3のように、ほぼ一定のゼロ電圧値として変化しない。この状態では、屋内配電用中性線32Nと屋内配電用接地線32Eの配線が適正な配線状態か誤った配線状態かを、判定回路26dが判定できない。このような判定不能の場合、判定回路26dから同期クロック信号生成手段24へ、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませる指示を出す。これにより、同期クロック信号生成手段24から同期整流回路26aには、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませた補正同期クロック信号CLK-S′が供給されるようになる。同期整流回路26aが補正同期クロック信号CLK-S′を用いて抽出信号S1の同期整流を行うと、図8(b)に示す判定用直流電圧信号S3と同様に、主に負極側のサイクルが反転される。すなわち、寄生容量Ceの影響で判定不能となる場合には、補正同期クロック信号CLK-S′を用いることで、検査用信号の極性に準じた直流値(ほぼ一定のプラス電圧値)として判定用直流電圧信号S3を得られる。
【0080】
上記のようにして得られた判定用直流電圧信号S3は、A/D変換回路26cにてデジタル値(測定電圧値)に変換された後、判定回路26dへ供給される。判定回路26dは、予め定めた判定基準電圧値(例えば、0V)と測定電圧値とを比較し、配線接続の判定を行う。屋内引込み中性線31Nが配電盤50の中性線用ブレーカ51Nおよび屋内配電用中性線32Nを経て電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続され、中性極差込口Nとなっていれば、商用電源ライン30の中性線30Nから電源コンセント40までの屋内配線は適正である。屋内引込み接地線31Eが配電盤50の中継端子52および屋内配電用接地線32Eを経て電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続され、接地極差込口Eとなっていれば、商用電源ライン30の接地線30Eから電源コンセント40までの屋内配線は適正である。中性線30Nと接地線30Eの屋内配線が共に適正であれば、測定電圧値が判定基準電圧値よりも高いことから、配線接続を正常と判定できる。そして、その判定結果が検査結果報知手段27によって検査員らに知らされる。
【0081】
次に、誤った配線状態の商用電源ライン30′の検査を配線チェッカー1により行う場合を、図7(b)に基づき説明する。
【0082】
誤配線の商用電源ライン30′においても、親機10より、屋内引込み中性線31Nまたは屋内引込み接地線31Eの何れか一方へ検査用信号を注入し、この検査用信号を子機20で抽出することで検査を行う。ただし、図7(b)の商用電源ライン30′では、屋内引込み中性線31Nが配電盤50の中性線用ブレーカ51Nおよび屋内配電用中性線32Nを経て電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続され、接地極差込口Eとなっている。また、屋内引込み接地線31Eが配電盤50の中継端子52および屋内配電用接地線32Eを経て電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続され、中性極差込口Nとなっている。このような誤配線の商用電源ライン30′で配線チェッカー1による検査が開始されると、抽出信号取得手段25によって取得される抽出信号S1の極性は、親機10から注入された検査用信号と逆になる。
【0083】
したがって、抽出信号取得手段25によりN-E間電圧信号から不要な周波数成分を取り除き、検査用信号の周波数帯域(2.4kHz)のみを取り出した抽出信号S1を、配線接続判定手段26の同期整流回路26aにて整流処理すると、図9(a),(b)に示すように、整流信号S2は正極側のサイクルのみが反転される。このため、整流信号S2を積分回路26bにて積分した判定用直流電圧信号S3は、ほぼ直流のマイナス電圧信号となり、A/D変換回路26cにてデジタル値に変換すると、ほぼ一定のマイナス電圧値として得られる。
【0084】
次に、図9(a)に寄生容量Ceの影響が加わったときに抽出信号S1を取得した場合を図9(c)に示す。この場合、図9(a)の抽出信号S1に比べて位相が90進んだ抽出信号S1となり、図9(c)に示す判定用直流電圧信号S3のように、ほぼ一定のゼロ電圧値として変化しない。この状態では、屋内配電用中性線32Nと屋内配電用接地線32Eの配線が適正な配線状態か誤った配線状態かを、判定回路26dが判定できない。このような判定不能の場合、判定回路26dから同期クロック信号生成手段24へ、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませる指示を出す。これにより、同期クロック信号生成手段24から同期整流回路26aには、同期クロック信号CLK-Sの位相を90度進ませた補正同期クロック信号CLK-S′が供給されるようになる。同期整流回路26aが補正同期クロック信号CLK-S′を用いて抽出信号S1の同期整流を行うと、図9(b)に示す判定用直流電圧信号S3と同様に、主に負極側のサイクルが反転される。すなわち、寄生容量Ceの影響で判定不能となる場合には、補正同期クロック信号CLK-S′を用いることで、検査用信号の極性に準じた直流値(ほぼ一定のマイナス電圧値)として判定用直流電圧信号S3を得られる。
【0085】
上記のようにして得られた判定用直流電圧信号S3は、A/D変換回路26cにてデジタル値(測定電圧値)に変換された後、判定回路26dへ供給される。判定回路26dは、予め定めた判定基準電圧値(例えば、0V)と測定電圧値とを比較し、測定電圧値が判定基準電圧値よりも低いことから、配線接続を誤りと判定する。すなわち、商用電源ライン30′の中性線30Nから電源コンセント40までの屋内配線および接地線30Eから電源コンセント40までの屋内配線に誤りがあると判定できる。そして、その判定結果が検査結果報知手段27によって検査員らに知らされる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る配線チェッカー1は、T-T接地方式の商用電源ライン30であってもT-N接地方式の商用電源ライン30′であっても、配電盤50内の漏電遮断器(活電線用ブレーカ51Lおよび中性線用ブレーカ51N)を作動させることなく、配線接続の正誤判定を精度よく正確に、且つ効率よく行うことができる。また、本実施形態の配線チェッカー1は、親機10と子機20における測定回路の大部分をアナログ回路にて構成しているが、各回路構成をデジタル回路に置き換えて構成するようにしても構わない。
【0087】
なお、上述した実施形態の配線チェッカー1における子機20は、電源コンセント40に接続するための活電線用ブレーカ51Lと中性線極用栓刃251Nと接地線極用栓刃251Eを備えるものであることから、商用電源ライン30,30′の基端側から電源コンセント40の間のどこに誤配線があるのかまで知ることはできない。
【0088】
そこで、図10(a),(b)および図11(a),(b)に示す子機20′には、活電線用接触端子281Lと中性線用接触端子281Nと接地線用接触端子281Eを設けておく。かくすれば、屋内引込み活電線31Lや屋内配電用活電線32L、屋内引込み中性線31Nや屋内配電用中性線32Nの任意箇所(例えば、配電盤50から配電された分電盤60内の接続箇所)にて商用交流電源電圧波形のゼロクロス位置を検出できる。同様に、屋内引込み中性線31Nや屋内配電用中性線32N、屋内引込み接地線31Eや屋内配電用接地線32Eの任意箇所(例えば、配電盤50から配電された分電盤60内の接続箇所)にてN-E間電圧を取得できる。なお、子機20′に設ける接触端子としての活電線用接触端子281Lと中性線用接触端子281Nと接地線用接触端子281Eは、テストプローブやテストクリップ等の既製品を用いることができる。また、活電線用接触端子281Lと中性線用接触端子281Nと接地線用接触端子281Eは、それぞれリード線282L,282N,282Eを介して子機20′の電源エッジ検出回路21と抽出信号取得手段25へ接触箇所の電圧信号を供給する。
【0089】
図10(a)に示すT-T接地方式の商用電源ライン30は適正配線である。屋内配電用活電線32Lは、分電盤60の活電線用ブレーカ61Lを介して電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続される。屋内配電用中性線32Nは、分電盤60の中性線用ブレーカ61Nを介して電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続される。屋内配電用接地線32Eは、分電盤60の中継端子62を介して電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続される。
【0090】
そして、子機20′は、適正に配線された商用電源ライン30における分電盤60から各種電圧信号を取得する。具体的には、子機20′の活電線用接触端子281Lを活電線用ブレーカ61Lに接触させ、中性線用接触端子281Nを中性線用ブレーカ61Nに接触させ、接地線用接触端子281Eを中継端子62に接触させる。かくすれば、子機20′によって、分電盤60からN-E間電圧およびL-N間電圧を取得し、配線検査を行える。子機20′が取得する判定用直流電圧信号S3はプラスの測定電圧値となって判定基準電圧値よりも高いことから、配線接続を正常と判定される。すなわち、基端側の中性線30Nは配電盤50を介して分電盤60の中性線用ブレーカ61Nに接続されており、基端側の接地線30Eは配電盤50を介して分電盤60の中継端子62に接続されている、適正な配線状態と判定される。
【0091】
なお、前述した図2(b)の商用電源ライン30のように、分電盤60と電源コンセント40との間に誤配線があった場合でも、分電盤60から電圧信号を取得する配線検査では、配線状態は正常と判定される。すなわち、子機20′の活電線用接触端子281Lと中性線用接触端子281Nと接地線用接触端子281Eを接触させた検査点よりも基端側の電源ラインに配線誤りが無いことを明確にできる。したがって、子機20で行った電源コンセント40での検査が誤接続判定で、子機20′で行った分電盤60での検査が正常接続判定であれば、分電盤60と電源コンセント40との間に誤配線があることを特定できるので、適正配線への修正作業を効率的に行える。
【0092】
一方、図10(b)に示すT-T接地方式の商用電源ライン30は誤配線である。屋内配電用活電線32Lは、分電盤60の活電線用ブレーカ61Lを介して電源コンセント40の活電線用刃受け40Lに接続される。屋内配電用中性線32Nは、分電盤60の中継端子62を介して電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続される。屋内配電用接地線32Eは、分電盤60の中性線用ブレーカ61Nを介して電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続される。
【0093】
このため、分電盤60の中性線用ブレーカ61Nから電源コンセント40へ接続される屋内配電線は屋内配電用接地線32Eとなり、電源コンセント40の中性線用刃受け40Nに接続されて接地極差込口E(形状と位置は中性極差込口Nのまま)となる。同様に、分電盤60の中継端子62から電源コンセント40へ接続される屋内配電線は屋内配電用中性線32Nとなり、電源コンセント40の接地線用刃受け40Eに接続されて中性極差込口N(形状と位置は接地極差込口Eのまま)となる。
【0094】
したがって、図10(b)に示す誤配線の商用電源ライン30を子機20′によって検査する場合、活電線用接触端子281Lは分電盤60の活電線用ブレーカ61Lに接続されて適正であるが、中性線用接触端子281Nと接地用接触端子281Eは誤った接続となる。すなわち、中性線用接触端子281Nを中性線用ブレーカ61Nに接続すると、それは屋内配電用接地線32Eに接続したこととなる。また、接地線用接触端子281Eを中継端子62に接続すると、それは屋内配電用中性線32Nに接続したこととなる。よって、中性線用接触端子281Nと接地用接触端子281Eからは、本来とは逆極性のN-E間電圧を取得することとなる。このため、抽出信号取得手段25で抽出される抽出信号S1は正常接続時の波形と逆極性になり、判定用直流電圧信号S3はマイナスの測定電圧値となって判定基準電圧値よりも低いことから、配線接続状態を異常と判定できる。
【0095】
このように、任意の箇所から電圧信号を取得できる接触端子を備える子機20′を用いれば、電源コンセント40以外の任意箇所(分電盤60内を含む屋内配電線のあらゆる箇所)で配線接続の検査を行い、誤配線を的確に判定することができ、有用性の高いものとなる。なお、任意箇所に接続できる接触端子と併せて電源コンセント40へ接続できるコンセントプラグ形状の接触端子を備える子機としても良い。
【0096】
また、上述した実施形態の配線チェッカー1における子機20と同様に、子機20′による配線接続判定は、T-N接地方式の商用電源ライン30′に対しても適用可能である。例えば、図11(a)のように、分電盤60内の結線が正常であれば、活電線用接触端子281は活電線用ブレーカ61Lに、中性線用接触端子281Nは中性線用ブレーカ61Nに、接地線用接触端子281Eは中継端子62に、それぞれ接触させる。子機20′の抽出信号取得手段25で抽出される抽出信号S1は正常接続時の波形であるから、判定用直流電圧信号S3はプラスの電圧値となって判定基準電圧値よりも高く、配線接続状態を正常と判定できる。
【0097】
一方、図11(b)のように、誤接続のあるT-N接地方式の商用電源ライン30′に対しても、子機20′による配線接続判定は可能である。この商用電源ライン30′は、基端側の活電線30Lが配電盤50の活電線用ブレーカ51Lを介して分電盤60の活電線用ブレーカ61Lに、中性線30Nが配電盤50の中性線用ブレーカ51Nを介して分電盤60の中継端子62に、接地線30Eが配電盤50の中継端子52を介して分電盤60の中性線用ブレーカ61Nに、それぞれ誤接続された状態である。このため、中性線用ブレーカ61Nから電源コンセント40へ接続される屋内配電線は屋内配電用接地線32Eとなり、中継端子62から電源コンセント40へ接続される屋内配電線は屋内配電用中性線32Nとなる。
【0098】
よって、子機20′で検査する場合、活電線用接触端子281Lは分電盤60の活電線用ブレーカ61Lに接続されて適正であるが、中性線用接触端子281Nと接地用接触端子281Eは誤った接続となる。すなわち、中性線用接触端子281Nを分電盤60の中性線用ブレーカ61Nに接続すると、それは屋内配電用接地線32Eに接続したこととなる。また、接地線用接触端子281Eを分電盤60の中継端子62に接続すると、それは屋内配電用中性線32Nに接続したこととなる。よって、中性線用接触端子281Nと接地用接触端子281Eからは、本来とは逆極性のN-E間電圧を取得することとなる。このため、抽出信号取得手段25で抽出される抽出信号S1は正常接続時の波形と逆極性になるため、判定用直流電圧信号S3はマイナスの測定電圧値となって判定基準電圧値よりも低いことから、配線接続状態を異常と判定できる。
【0099】
すなわち、任意の箇所から電圧信号を取得できる接触端子を備える子機20′を用いた配線チェッカーも、T-T接地方式の商用電源ライン30だけでなく、T-N接地方式の商用電源ライン30′での配線接続検査に利用できるのである。
【0100】
以上、本発明に係る配線接続検査方法を適用した配線接続検査システムの実施形態を添付図面に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない範囲で、公知既存の等価な技術手段を転用することにより実施しても構わない。
【符号の説明】
【0101】
1 配線チェッカー
10 親機(第1装置)
14 検査用信号注入手段
15 電源エッジ検出回路
20 子機(第2装置)
24 同期クロック信号生成手段
25 抽出信号取得手段
26 配線接続判定手段
27 検査結果報知手段
30 商用電源ライン(T-T接地方式)
40 電源コンセント
図1
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