(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】冷却衣服製造装置
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A41D13/005 106
(21)【出願番号】P 2019038493
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000130732
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】橘高 薫
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6284090(JP,B1)
【文献】特開2018-078058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却衣服を製造する冷却衣服製造装置であって、
前記冷却衣服が、
服地と、
この服地の少なくとも一面に、縫い付け糸で、縫い付けられた分水ホースと、
この分水ホースの一端、または他端の少なくとも一方に設けた給水用開口部に連結された給水用連結部と、を備え、
前記分水ホースは、その一端から他端への長手方向に直交する外周部分に、この分水ホースの前記給水用開口部の開口面積よりも、開口面積の小さな通水孔が、複数形成された構成とし、
前記縫い付け糸は、前記服地の一面側において、前記分水ホースの長手方向と直交する外周部分を覆うと共に、当該縫い付け糸の両側が、同じ縫い針用開口部を介して前記服地の他面側に通された状態であり、この縫い付け糸の、前記分水ホースの、前記長手方向に直交する外周部分を覆った部分で、この分水ホースの表面を窪ませ、この分水ホースの長手方向に直交する外周部分を、前記服地の一面側に拘束させた
ものであり、
前記服地を保持して、この服地を移動させる機構と、
この機構に保持された前記服地に前記分水ホースを縫い付けるミシン機構と、を備え、
前記ミシン機構は、
前記縫い付け糸が、その針孔に通されるミシン針と、
このミシン針に対して前記服地の反対側に配置された針板と、
この針板の前記ミシン針とは反対側に配置される釜と、
この釜内に配置されるとともに、前記分水ホースが巻きつけられるボビンと、を有し、
前記針板には、
前記ミシン針が貫通する第1の貫通孔と、
前記ボビンから前記分水ホースを、前記服地側に引き出す第2の貫通孔と、
これらの第1、第2の貫通孔間を繋ぐ連通孔と、を設けた冷却衣服
製造装置。
【請求項2】
前記冷却衣服は、前記分水ホースの、前記長手方向における所定間隔部分で、前記縫い付け糸によって、この分水ホースの表面を窪ませ、同部分において、この分水ホースの長手方向に直交する外周部分を、前記服地の一面側に拘束させた請求項1に記載の冷却衣服
製造装置。
【請求項3】
前記冷却衣服は、前記分水ホースの、前記長手方向における所定間隔部分で、この分水ホースの表面を窪ませた状態で拘束した前記縫い付け糸は、連続的な糸状態とした請求項1又は請求項2に記載の冷却衣服
製造装置。
【請求項4】
前記冷却衣服の前記服地には、第1、第2の縫い針用開口部が、分水ホースの長手方向に沿って所定間隔で設けられ、前記服地の他面側における、前記第1の縫い針用開口部と、前記第2の縫い針用開口部間には、前記縫い付け糸が、前記分水ホースの長手方向にそって直線的に配置された請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の冷却衣服
製造装置。
【請求項5】
前記冷却衣服は、前記分水ホースとして、中空糸膜を用いた請求項1から4のいずれか一つに記載の冷却衣服
製造装置。
【請求項6】
前記冷却衣服の前記服地の一面側に前記給水用連結部を配置するとともに、この給水用連結部は、前記分水ホース、前記縫い付け糸とともに接着剤で前記服地に取り付けた請求項1から5のいずれか一つに記載の冷却衣服
製造装置。
【請求項7】
前記連通孔の幅は、前記縫い付け糸の直径よりも大きく、前記分水ホースの直径よりも小さくした請求項1から6のいずれか一つに記載の冷却衣
服製造装置。
【請求項8】
前記
第2の貫通孔の前記服地側の開口縁には、面取り加工を設けた請求項
1から7
のいずれか一つに記載の冷却衣服製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却衣服製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着用者の発汗を前提とすることなく身体を冷却することができる冷却衣服が提案されている。
具体的には、肩の上に貯水タンクを装着し、この貯水タンクに送水ホースの一端を接続し、次に、この送水ホースの中部を身体部分で蛇行させ、その後、この送水ホースの他端を前記貯水タンクに接続した構成となっている。
また、送水ホースにはポンプが介在され、このポンプを駆動することで、前記貯水タンク内の冷却水を、貯水タンク、送水ホースの一端、中部、他端、貯水タンク内へと循環させる構成となっている(これに類似する先行文献としては、例えば下記特許文献1が存在する)。
【0003】
また、長い紐などを、縫い付け糸でチドリ状に縫い付ける技術も知られているので、その技術を利用し、前記送水ホースを服地に縫い付けることも考えられる(これに類似する先行文献としては、例えば下記特許文献2が存在する)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-20140号公報
【文献】特開平4-97774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような構成で、ポンプを駆動し、前記貯水タンク内の冷却水を、送水ホースの一端、中部、他端、貯水タンク内へと循環させている状態において、一部の冷却水が、送水ホース通水孔から流出し、服を濡らし、その部分に風が通過すると、そこで気化熱が奪われ、その結果として身体冷却を行うことができるようになっている。
つまり、着用者の発汗を前提とすることなく、送水ホースの通水孔から流出する冷却水を気化させ、この気化熱で、身体を冷却することができるような構成となっている。
【0006】
しかしながら、このように送水ホースの通水孔から冷却水を流出させる構成とした場合で、長期使用や、洗濯などによって、送水ホースが製造時の配置状態からずれた状態になると、前記送水ホースの通水孔も大きくずれた状態となり、その結果、身体の適切な部分に冷却水を供給することが出来ず、長期にわたる快適な冷却作用が損なわれる。
【0007】
このように送水ホースが製造時の配置状態からずれた状態になる原因としては、例えば、
図19、
図20に示すように、送水ホースaを上糸bと下糸cで服地dに縫い付ける場合、上糸bは、服地dの一面においてチドリ状に覆い、また、この上糸bを、服地dの他面側において下糸cで保持しただけの状態となるからである。
つまり、上糸bをチドリ状に配置すると、送水ホースaを上糸bと下糸cで服地dに強固に固定することが出来ず、単に、服地dに保持しただけの状態となるので、長期使用や、洗濯などによって、送水ホースが製造時の配置状態からずれた状態になると、前記送水ホースの通水孔も大きくずれた状態となり、その結果、身体の適切な部分に冷却水を供給することが出来ず、長期にわたる快適な冷却作用が損なわれることになるのである。
【0008】
そこで、本発明は、長期にわたる快適な冷却作用の維持が出来るようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明の冷却衣服は、服地と、この服地の少なくとも一面に、縫い付け糸で、縫い付けられた分水ホースと、この分水ホースの一端、または他端の少なくとも一方に設けた給水用開口部に連結された給水用連結部とを備え、前記分水ホースは、その一端から他端への長手方向に直交する外周部分に、この分水ホースの前記給水用開口部の開口面積よりも、開口面積の小さな通水孔が、複数形成された構成とし、前記縫い付け糸は、前記服地の一面側において、前記分水ホースの長手方向と直交する外周部分を覆うと共に、当該縫い付け糸の両側が、同じ縫い針用開口部を介して前記服地の他面側に通された状態であり、この縫い付け糸の、前記分水ホースの、前記長手方向に直交する外周部分を覆った部分で、この分水ホースの表面を窪ませ、この分水ホースの長手方向に直交する外周部分を、服地の一面側に拘束させた構成としたものである。
また、前記分水ホースの、前記長手方向における所定間隔部分で、縫い付け糸によって、この分水ホースの表面を窪ませ、同部分において、この分水ホースの長手方向に直交する外周部分を、服地の一面側に拘束させたものである。
さらに、前記分水ホースの、前記長手方向における所定間隔部分で、この分水ホースの表面を窪ませた状態で拘束した縫い付け糸は連続的な糸状態としたものである。
また、前記服地には、第1、第2の縫い針用開口部が、分水ホースの長手方向に沿って所定間隔で設けられ、前記服地の他面側における、第1の縫い針用開口部と、第2の縫い針用開口部間には、縫い付け糸が、分水ホースの長手方向にそって直線的に配置された構成としたものである。
さらに、前記分水ホースとして、中空糸膜を用いたものである。
また、前記服地の一面側に給水用連結部を配置するとともに、この給水用連結部は、分水ホース、縫い付け糸とともに接着剤で服地に取り付けたものである。
さらに、この冷却衣服を製造する冷却衣服製造装置は、服地を保持して、この服地を移動させる機構と、この機構に保持された服地に分水ホースを縫い付けるミシン機構とを備え、前記ミシン機構は、前記縫い付け糸が、その針孔に通されるミシン針と、このミシン針に対して前記服地の反対側に配置された針板と、この針板の前記ミシン針とは反対側に配置される釜と、この釜内に配置されるとともに、前記分水ホースが巻きつけられるボビンとを有する構成としたものである。
服地を移動させる機構は、例えば、XY駆動機構、通常の送り歯の機構などでも構わない。
また、前記針板には、ミシン針が貫通する第1の貫通孔と、前記ボビンから分水ホースを、服地側に引き出す第2の貫通孔と、これらの第1、第2の貫通孔間を繋ぐ連通孔とを設けたものである。
さらに、前記連通孔の幅は、縫い付け糸の直径よりも大きく、分水ホースの直径よりも小さくしたものである。
また、前記第2の貫通孔の服地側の開口縁には、面取り加工を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、服地と、この服地の少なくとも一面に、縫い付け糸で、縫い付けられた分水ホースと、この分水ホースの一端、または他端の少なくとも一方に設けた給水用開口部に連結された給水用連結部とを備え、前記分水ホースは、その一端から他端への長手方向に直交する外周部分に、この分水ホースの前記給水用開口部の開口面積よりも、開口面積の小さな通水孔が、複数形成された構成とし、前記縫い付け糸は、前記服地の縫い針用開口部を介して、前記服地の他面側から、この服地の一面側に導かれ、次に、分水ホースの、前記長手方向に直交する外周部分を覆い、その後、前記縫い針用開口部を介して、前記服地の他面側に導かれた状態とし、この縫い付け糸の、前記分水ホースの、前記長手方向に直交する外周部分を覆った部分で、この分水ホースの表面を窪ませ、この分水ホースの長手方向に直交する外周部分を、服地の一面側に拘束させた構成としたものである。
したがって、分水ホースは、縫い付け糸の、分水ホースの長手方向に直交する外周部分を覆った部分で、この分水ホースの表面を窪ませ、この分水ホースの長手方向に直交する外周部分を、服地の一面側に拘束させた構成となるので、分水ホースは、服地に強固に縫い付けられた状態となり、その結果、長期使用や、洗濯などによって、分水ホースが製造時の配置状態からずれた状態になることは少なく、長期にわたる快適な冷却作用の維持が出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる冷却衣服用冷却装置を装着した冷却衣服の正面図
【
図5】同冷却衣服に装着した分水ホースの端部部分の平面図
【
図6】同冷却衣服に装着した分水ホースの端部部分の側面図
【
図7】同冷却衣服に装着した分水ホースの端部部分の断面図
【
図8】同冷却衣服に装着した分水ホースの端部部分の断面図
【
図9】同冷却衣服に装着した冷却衣服用冷却装置の制御ブロック図
【
図14】同冷却衣服における分水ホースの拡大断面図
【
図15】同冷却衣服に装着した分水ホースの端部部分の断面図
【
図16】本発明の一実施形態にかかる冷却衣服製造装置の平面図
【
図18】同冷却衣服製造装置の動作状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
図1は、本一実施形態にかかる冷却衣服用冷却装置を装着した冷却衣服の正面図、
図2は、この冷却衣服の背面図である。
【0013】
図1、
図2において、1は冷却衣服で、正面側の服地2と、背面側の服地3と、左右の袖4部分からなる。
背面側の服地3の側部には、冷却水供給部5、冷却水分岐部6が設けられた送水ホース7が縦方向に装着されている。
【0014】
具体的には、前記冷却水供給部5は冷却衣服1の下部まで延長され、その後、冷却衣服1外へと延長され、その延長部分に連結具8が装着されている。
また、冷却水分岐部6は、送水ホース7の他端側に設けられているが、本実施形態では、送水ホース7の他端側を分岐し、冷却衣服1の正面側の服地2の左右上部、および、冷却衣服1の背面側の服地3の左右上部の、合計4ケ所に、冷却水分岐部6が配置されている。
【0015】
送水ホース7の冷却水供給部5に連結した連結具8は、連結具9を介してポンプ10、給水パイプ11が接続され、給水パイプ11は、例えば市販の飲料水ボトル12内に挿入され、その状態で、飲料水ボトル12にキャップ部13を回して螺合させれば、給水パイプ11、ポンプ10は飲料水ボトル12に固定される。
なお、ポンプ10部分には、
図9で示す制御回路部14、操作部15、電池16が設けられ、操作部15の操作により、ポンプ10の起動、起動量制御、停止が行えるようになっている。
つまり、送水ホース7の冷却水供給部5から冷却水分岐部6側に、ポンプ10によって冷却水を供給することが出来るようになっている。
【0016】
再び、
図1、
図2に戻って説明を進めると、前記送水ホース7の4ケ所の冷却水分岐部6には、複数の分水ホース17が連結されている。
この点を、さらに詳細に説明すると、送水ホース7の4ケ所の冷却水分岐部6には、それぞれ、複数の分水ホース17の給水用開口部である一端側給水部17aと他端側給水部17bが連結されている。
つまり、分水ホース17の直径を、前記送水ホース7の直径よりも小径としているので、送水ホース7の4ケ所の冷却水分岐部6に、それぞれ、複数の分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17bを連結することが出来るのである。
【0017】
分水ホース17は、中空糸膜によって形成されており、
図3、
図4に示すように、分水ホース17の長手方向に直交する外周部分には、この分水ホース17の前記一端側給水部17aと他端側給水部17bの開口面積よりも、開口面積の小さな通水孔17cが、複数形成されている。
つまり、分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17bは、上述のごとく、送水ホース7の冷却水分岐部6に連結され、これら一端側給水部17aと他端側給水部17bから供給された冷却水は、通水孔17cから分水ホース17外へと流出することになる。
すなわち、中空糸膜によって形成された分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17b間が、分水ホース17における出水部17dとなっており、この出水部17dが、正面側の服地2と、背面側の服地3に蛇行されて配置されているので、冷却衣服1の全面に冷却水を供給することが出来るのである。
【0018】
前記分水ホース17について、さらに説明を行うと、この分水ホース17は、中空糸膜といわれる外径が0.5~0.8mmのものを用いており、その外周面には、開口径が0.4ミクロン以下の無数の通水孔17cが設けられている。
さらに詳しく説明すると、前記分水ホース17の外周部に設けた各通水孔17cは、
図3に示すように、この分水ホース17の外周方向において、隣接する他の通水孔17cとは独立しているが、同分水ホース17の長手方向において、少なくとも一部が重なった状態となっている。つまり、中空糸膜には、無数の通水孔17cが形成されているのである。
この状態を、本実施形態では、上述のごとく、分水ホース17の長手方向に直交する外周部分に、この分水ホース17の前記一端側給水部17aと他端側給水部17bの開口面積よりも、開口面積の小さな通水孔17cが、複数形成されていると表現している。
このように、一般的には液体のフィルターなどに用いられていた中空糸膜を分水ホース17として活用したことが本実施形態の特徴の一つである。
【0019】
なお、本実施形態では、送水ホース7の冷却水供給部5を冷却衣服1の下方、冷却水分岐部6を上方に配置し、この上方の冷却水分岐部6に分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17bを連結したので、前記出水部17dは、一端側給水部17aと他端側給水部17bよりも下方において冷却衣服1に蛇行状態で配置されたこととなる。
【0020】
次に、前記ポンプ10部分について説明する。
図9に示すように、操作部15の正転用のスイッチ18を閉じれば、制御部19によってスイッチング素子21、22を介してポンプ10が正転し、逆に、操作部15の逆転用のスイッチ23を閉じれば、制御部19によってスイッチング素子24、25を介してポンプ10が逆転するようになっている。
また、正転、逆転の強さは、操作部15のボリューム26によって調整される。
つまり、ボリューム26の調整により、ポンプ10への通電量を調整することができるので、それに合わせて正転、逆転の強さを調整することが出来る。
また、本実施形態では、ポンプ10の間欠駆動でも、十分に分水ホース17の通水孔17cからジワリと冷却水が滲み出る状態となるので、ポンプ10の電力消費を低減することができる。
【0021】
次に、本実施形態の冷却衣服1の製造について、その主要部分を説明する。
図10は冷却衣服1の正面側の服地2と、背面側の服地3を裁断した状態を示す。
【0022】
図11に示すように、まず、巻糸状態の分水ホース17を、正面側の服地2の左上(A点)に縫い付けし、Cのエリアは分水ホース17を縫い付けしない。次に、Cのエリアを通過したところで、巻糸を下方へと蛇行させながら、同時に縫い付け、その後、下方から、上方へと蛇行させながら、同時に縫い付け(
図5に縫い付け糸27を示している)、これを繰り返して、正面側の服地2の左側ゾーンを完成させ、次に、正面側の服地2の右側ゾーンに移行させる。
【0023】
その後、連続的に、背面側の服地3の右側ゾーンに移行させ、次に、背面側の服地3の左側ゾーンに移行させ、B点へとたどり着き、分水ホース17の配置を行う。
つまり、分水ホース17の配置は、A点からB点へと一筆書で行うので、装着作業が効率的に行える。
【0024】
その後、
図12に示すように正面側の服地2と、背面側の服地3を、連結生地38で分離すれば、正面側の服地2の左右上部に、複数の分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bが存在することになる。
また、背面側の服地3の左右上部にも、複数の分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bが存在することになる。
なお、各分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bは正面側の服地2と、背面側の服地3には、糸止めされておらず、自由に動かすことが出来る状態となっている。
【0025】
この状態で、
図5、
図6に示すように連結具28(給水用連結部の一例)内に、分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bを挿入し、次に、
図7、
図8に示すように、連結具28の開口部29から接着剤30を注入する。
つまり、接着剤30によって複数の分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bを連結具28とともに、正面側の服地2と、背面側の服地3に、固定するのである。
【0026】
この時、複数の分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bが接着剤30によって目詰まりしないようにするためには、分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bは、連結具28の外(
図5あるいは
図8の右側)へと十分に引き出しておき、接着剤30が硬化後に連結部20からはみ出した部分を切断する。
また、分水ホース17は上述のごとく中空糸膜で形成したものであり、その外周面の通水孔17cは極めて小さな開口面積であるので、ここから、粘性のある接着剤30が、分水ホース17内へと侵入することはなく、この部分での目詰まりは発生しない。
【0027】
そして、最後に
図5において連結具28の連結部20外周に、送水ホース7の冷却水分岐部6を、弾性変形させながら押し込んで、送水ホース7の冷却水分岐部6に、分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bを連結する。
【0028】
以上の構成において動作説明を行う。
先ず、使用者は、
図1の冷却衣服1を装着する。
次に、給水パイプ11を、例えば市販の飲料水ボトル12内に挿入し、その状態で、飲料水ボトル12にキャップ部13を回して螺合させれば、給水パイプ11、ポンプ10は飲料水ボトル12に固定される。
その後、操作部15の正転用のスイッチ18を閉じれば、制御部19によってスイッチング素子21、22を介してポンプ10が正転し、これにより、飲料水ボトル12内の冷却水は、送水ホース7の冷却水供給部5、冷却水分岐部6、分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17bを介し、冷却衣服1に蛇行状態で配置した分水ホース17の出水部17dに形成されている無数の通水孔17cから、冷却衣服1の正面側の服地2と、背面側の服地3部分に、ジワリと流出し、ここで外気、風などによって気化する。
【0029】
つまり、使用者は、汗をかいていない状況でも、冷却衣服1部分における冷却水の気化熱により、効果的な冷却が行えることになる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、ポンプ10としては、冷却水を、送水ホース7の冷却水供給部5から冷却水分岐部6まで単に送るだけで良いので、電力消費を低減することができる。
【0031】
また、送水ホース7の冷却水分岐部6まで送付された冷却水は、この冷却水分岐部6に連結された複数の分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17bから分水ホース17の内へと流れ込み、次に、各分水ホース17の出水部17dに存在する複数の通水孔17cから流出することになる。
この時、出水部17dは冷却衣服1部分に、広く蛇行させているので、身体の広いエリアに冷却水を適量供給することができ、その結果として、冷却効果の高いものとなる。
つまり、本実施形態では、冷却水を、送水ホース7の冷却水供給部5から冷却水分岐部6までポンプ10で送れば、その後は、大気に解放状態となっている分水ホース17の通水孔17cから冷却水自身の重力や、小さな通水孔17cが形成する毛細管現象も作用し、分水ホース17外へと流出することになるので、ポンプ10としての電力消費を抑制することが出来るのである。
一例として、本実施形態では、単3電池を2本直列にした3V電池16使用でも、8時間以上の使用も可能となる。
【0032】
さらに、各分水ホース17の直径は、前記送水ホース7の直径よりも小径とし、この分水ホース17には、その長手方向に直交する外周部分に、この分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17bの開口面積よりも、開口面積の小さな、複数の通水孔17cが形成された構成としたものであるので、分水ホース17から流出する冷却水は、広い範囲に、少量で、しかも、ジワリと滲み出る状態となるので、身体の一部での大きな水濡れ感が無く、快適な冷却が行えるものとなる。
【0033】
なお、使用環境にもよるが、本実施形態では、1時間で250ccの冷却水を使用する状態となっているので、飲料水ボトル12としては、市販の飲料水容器をそのまま、キャップ部13に結合するようにしている。
そして、この冷却水がなくなれば、飲料水ボトル12内に水道水を入れることでも簡単に継続使用が行えることになる。
【0034】
なお、逆転用のスイッチ23は、分水ホース17内に、前回の冷却水が残り、また、空気も存在する状態となり、いわゆる空気かみ状態となった場合に、ポンプ10を逆転させ、分水ホース17内の空気かみ状態を解消するために用意している。
【0035】
また、このような冷却衣服1は、屋外の高温環境下で使用されることが多く、例えば、分水ホース17の一部が塵埃などによって目詰まりしても、本実施形態では、継続的な冷却動作を継続することが出来る。
つまり、本実施形態では、送水ホース7の冷却水分岐部6に、各分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17bを連結したものであるので、各分水ホース17の一端側給水部17aと他端側給水部17bの両方から出水部17dへと冷却水が供給されるようになり、その結果として、分水ホース17の一部に目詰まりが発生しても、その目詰まり部の一端側給水部17a側には、一端側給水部側17aから、また、目詰まり部の他端側給水部17b側には、他端側給水部17b側から冷却水が供給され、長期的に安定した冷却効果を発揮することが出来るようになるのである。
【0036】
次に、本実施形態の最も特徴的な部分について説明する。
本実施形態では、
図5、
図13~
図15に示すように、服地2、3の、それぞれの少なくとも一面に、縫い付け糸27で分水ホース17を縫い付けている。縫い付け糸27は、服地2、3の一面側(例えば、裏面)において、分水ホース17の長手方向と直交する外周部分を覆うと共に、この縫い付け糸17の両側が同じ縫い針用開口部31を介して服地2、3の他面側(例えば、表面)に通されている。
すなわち、前記縫い付け糸27は、これらの図に示すように、前記服地2、3の縫い針用開口部31を介して、前記服地2、3の他面側から、この服地2、3の一面側に導かれ、次に、分水ホース17の、前記長手方向に直交する外周部分を覆い、その後、前記縫い針用開口部31を介して、前記服地2、3の他面側に導かれた状態とされている。
そして、この縫い付け糸27の、前記分水ホース17の、前記長手方向に直交する外周部分を覆った部分で、この分水ホース17の表面を、
図14のように窪ませ、この分水ホース17の長手方向に直交する外周部分を、服地2、3の一面側に拘束させた。
【0037】
分水ホース17は、上述のごとく、その一端から他端への長手方向に直交する外周部分に、この分水ホース17の給水用開口部(一端側給水部17a、他端側給水部17b)の開口面積よりも、開口面積の小さな通水孔17cが、複数形成された、いわゆる中空糸膜といわれるものであり、合成樹脂よりなり、しかも、無数の通水孔17cを有する弾性を持った管状態であるので、上記縫い付け糸27の張力調整により、外周部を容易に窪ませた状態にすることができる。
また、このような縫い付け糸27による服地2、3への拘束は、分水ホース17の長手方向における所定間隔(例えば、1から5mm)部分において行われているので、分水ホース17は、服地2、3に強固に縫い付けられた状態となり、その結果、長期使用や、洗濯などによって、分水ホース17が製造時の配置状態からずれた状態になることは少なく、長期にわたる快適な冷却作用の維持が出来るようになる。
【0038】
なお、分水ホース17の表面を窪ませた状態で拘束した縫い付け糸27は、
図13~
図15に示すように連続的な糸状態としており、これは後述するミシン機構により製造されるからである。
つまり、ミシン機構により製造される場合、服地2、3には、縫い針用開口部31が、分水ホース17の長手方向に沿って所定間隔で設けられ、前記服地2、3の他面側における、縫い針用開口部31と、次の縫い針用開口部31間には、縫い付け糸27が、分水ホース17の長手方向にそって直線的に配置された状態となる。
また、このように分水ホース17の表面を窪ませた状態で拘束した縫い付け糸27は、分水ホース17を下糸、縫い付け糸27を上糸として、分水ホース17を服地2、3に縫い付けた状態としたものである。つまり、分水ホース17を服地2、3に縫い付ける糸が縫い付け糸27だけとなるので、ほつれ対策も容易なものとなる。
【0039】
この点を、
図19、
図20の従来例を参考に説明すると、この従来例では、送水ホースaを上糸bと下糸cで服地dに縫い付けているので、下糸cの最後を、
図20のように服地dの下から上に取り出し、この状態で、接着剤eで上糸bとともに固定しなければならず、非常に生産性の悪いものとなる。
つまり、下糸cを服地dの下で放置しておくと、それが抜けてしまい、その結果、この下糸cにかかった上糸bは上方へと大きく広がり、その結果、送水ホースaの保持が出来なくなってしまう。
したがって、上糸bと下糸cで、送水ホースaを服地dに縫い付ける場合には、上述のごとく、下糸cの最後を、
図20のように服地dの下から上に取り出し、この状態で、接着剤eで上糸bとともに固定しなければならず、非常に生産性の悪いものとなるのである。
【0040】
これに対して、本実施形態では、分水ホース17を下糸、縫い付け糸27を上糸として、分水ホース17を服地2、3に縫い付けた状態、つまり、分水ホース17を服地2、3に縫い付ける糸が縫い付け糸27だけとなる。
このため、
図15に示すように、連結具28内に、分水ホース17の、一端側給水部17aと他端側給水部17bを挿入し、次に、
図7、
図8に示すように、連結具28の開口部29から接着剤30を注入すれば、服地2、3に連結具28、分水ホース17だけでなく、上糸として用いた縫い付け糸27も接着剤30で固定することができ、生産性が高くなるのである。
【0041】
また、本実施形態では、この縫い付け糸27の、前記分水ホース17の、前記長手方向に直交する外周部分を覆った部分で、この分水ホース17の表面を、
図14のように窪ませ、この分水ホース17の長手方向に直交する外周部分を、服地2、3の一面側に拘束させた状態としている。
この状態で、分水ホース17は、上述のごとく、その一端から他端への長手方向に直交する外周部分に、この分水ホース17の給水用開口部(一端側給水部17a、他端側給水部17b)の開口面積よりも、開口面積の小さな通水孔17cが、複数形成された、いわゆる中空糸膜といわれるものであり、合成樹脂よりなり、しかも、無数の通水孔17cを有する弾性を持った管状態であるので、上記縫い付け糸27の張力調整により、外周部を容易に窪ませた状態にしている。
つまり、縫い付け糸27の個々の拘束箇所において、縫い付け糸27は、分水ホース17の無数の通水孔17cに接した状態となるので、左右にずれ難い状態ともなり、この点でも、縫い付け糸27による服地2、3への分水ホース17の保持、拘束状態が安定するものとなる。
【0042】
次に、冷却衣服1を製造する冷却衣服製造装置について説明する。
この冷却衣服製造装置は、服地2、3を保持して、この服地2、3をXY方向(例えば、服地2、3を平面視して上下左右)に移動させるXY駆動機構と、このXY駆動機構に保持された服地2、3に分水ホース17を縫い付け糸27によって縫い付けるミシン機構とを備えている。
このようなXY駆動機構、ミシン機構の大部分は、広く知られたものであるので、説明の煩雑化を避けるために主要部分だけを説明する。
【0043】
先ず、前記ミシン機構は、前記縫い付け糸27が、
図16~
図18に示すようにその針孔32に通されるミシン針33と、このミシン針33に対して前記服地2、3の反対側に配置された針板34と、この針板34の前記ミシン針33とは反対側に配置される釜(図示せず)と、この釜内に配置されるとともに、前記分水ホース17が巻きつけられるボビン(図示せず)とを有する構成となっている。
上述のごとく、分水ホース17を下糸として扱うために、この分水ホース17をボビンに巻きつけているのである。
【0044】
また、針板34には、ミシン針33が貫通する第1の貫通孔35と、前記ボビンから分水ホース17を、服地2、3側に引き出す第2の貫通孔36と、これらの貫通孔35、36間を繋ぐ連通孔37とを設けている。
前記連通孔37の幅は、縫い付け糸27の直径よりも大きく、分水ホース17の直径よりも小さくしている。
また、貫通孔36の服地2、3側の開口縁には、面取り加工を設け、分水ホース17の引き出し時に、この分水ホース17の外表面に傷がつきにくくしている。
【0045】
この冷却衣服製造装置の動作について説明する。
まず、XY駆動機構により、これに保持した服地2、3への分水ホース17の縫い付けパターンに従って、服地2、3をミシン針33の下まで移動させる。
このとき、ミシン針33が一番上、ミシン針33の下に服地2、3、服地2、3の下に針板34、針板34の下に釜が配置された状態となっている。
【0046】
その状態で、
図18のように、ミシン針33を下降させると、このミシン針33は服地2、3の縫い針用開口部31を貫通して、次に針板34の貫通孔35の下まで、その針孔32が下降し、最下点よりも少し上がったところで、縫い付け糸27にたるみをつくり、そのたるみを、回転する釜がすくい、縫い付け糸27をボビンの回りを一回転させる。
このとき、下糸として機能させる分水ホース17の外周に
図13のように縫い付け糸27が巻きつけられた状態となり、これでミシン針33を上昇させると、分水ホース17が貫通孔36から上方へと引き出され、その結果として、
図13のように、服地2、3の下面に、分水ホース17が、縫い付け糸27によって拘束される。
この時、分水ホース17の外周に巻かれた状態の縫い付け糸27は貫通孔36から連通孔37を通り、ミシン針33の部分へと戻ることになる。
そして、このような動作が、
図13に示す縫い付け糸27による、服地2、3への分水ホース17の拘束箇所において連続的に行われる。
つまり、ミシン針33が服地2、3の縫い針用開口部31から上昇すると、XY駆動機構により、これに保持した服地2、3の、次に縫い付け部分がミシン針33の下に来るまで移動させる。
【0047】
なお、ミシン針33が上昇すると、縫い付け糸27には、分水ホース17の外周を
図14に示すように弾性変形させるまで締め付けが図られ、この状態で、XY駆動機構により、これに保持した服地2、3を移動させると、分水ホース17も、次の拘束地点まで引き出されることになる。
【0048】
下糸、上糸を用いた縫い付けミシン機構は極めて一般的であるが、下糸として分水ホース17を活用する点が本実施形態の大きな特徴であり、これにより、上述した多くの効果を上げることができる。
また本発明を特徴とするミシンは、分水ホースの縫製以外にも電線、ヒーター線、ひずみセンサーなどの縫製にも使用できる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明は、高温季において、野外活動や野外業務、あるいは高温環境下での屋内業務などにおいて有効な冷却衣服となる。
【符号の説明】
【0050】
1 冷却衣服
2 正面側の服地
3 背面側の服地
4 袖
5 冷却水供給部
6 冷却水分岐部
7 送水ホース
8 連結具
9 連結具
10 ポンプ
11 給水パイプ
12 飲料水ボトル
13 キャップ部
14 制御回路部
15 操作部
16 電池
17 分水ホース
17a 一端側給水部(給水用開口部)
17b 他端側給水部(給水用開口部)
17c 通水孔
17d 出水部
18 スイッチ
19 制御部
20 連結部
21 スイッチング素子
22 スイッチング素子
23 スイッチ
24 スイッチング素子
25 スイッチング素子
26 ボリューム
27 縫い付け糸
28 連結具(給水用連結部)
29 開口部
30 接着剤
31 縫い針用開口部
32 針孔
33 ミシン針
34 針板
35 第1の貫通孔(貫通孔)
36 第2の貫通孔(貫通孔)
37 連通孔
38 連結生地