(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-28
(54)【発明の名称】ボンディングの際の半導体チップの加熱条件設定方法及び非導電性フィルムの粘度測定方法ならびにボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20220118BHJP
H01L 21/603 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
H01L21/60 311S
H01L21/60 311T
H01L21/603 C
H01L21/603 B
(21)【出願番号】P 2019544590
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2018034203
(87)【国際公開番号】W WO2019065309
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2019-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2017187921
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 智宣
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
(72)【発明者】
【氏名】永井 訓
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 吉浩
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 治
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/056619(WO,A1)
【文献】特開2015-056500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60-607
H01L 21/50-52
H01L 21/56
H05K 13/00-08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性フィルムを用いて半導体チップをボンディングする際の半導体チップの加熱条件設定方法であって、
各種の温度上昇率における非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化を示す粘度特性マップと、同一の温度上昇率で加熱開始温度を変化させた場合の非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化を示す加熱開始温度特性マップと、のいずれか一方または両方に基づいて加熱開始温度と温度上昇率とを設定し、
粘度特性マップは、
ボンディングステージとボンディングツールの間に非導電性フィルムを挟みこんで一定の荷重で押圧した状態で、各種の温度上昇率で非導電性フィルムの温度を上昇させながら、ボンディングツールの降下量を測定し、ボンディングツールの降下量に基づいて非導電性フィルムの粘度を算出し、各種の温度上昇率における非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化特性として出力したものであり、
加熱開始温度特性マップは、
ボンディングステージとボンディングツールの間に非導電性フィルムを挟みこんで一定の荷重で押圧した状態で、各種の加熱開始温度から同一の温度上昇率で非導電性フィルムの温度を上昇させながら、ボンディングツールの降下量を測定し、ボンディングツールの降下量に基づいて非導電性フィルムの粘度を算出し、同一の温度上昇率で加熱開始温度を変化させた場合の非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化特性として出力したものであり、
非導電性フィルムの粘度Vの算出を以下の式により行い、
V=2*π*F*H
5/3*Q*(-dH/dt)(2*π*H
3+Q)
Fは、非導電性フィルムの押圧荷重であり、
Hは、非導電性フィルムの厚さであり、
Qは、非導電性フィルムの体積であり、
-dH/dtは、ボンディングツールの降下量であること、
を特徴とする加熱条件設定方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の加熱条件設定方法であって、
ボンディングは、半導体チップに形成された金属バンプを溶融させて基板あるいは他の半導体チップの電極との間で合金を形成することにより半導体チップを基板または他の半導体チップに接合し、非導電性フィルムを熱硬化させて半導体チップと基板あるいは他の半導体チップとの間の隙間を充填するものであり、
加熱開始温度と温度上昇率の設定は、金属バンプの溶融開始温度よりも低い温度で非導電性フィルムの粘度が硬化粘度以上となる加熱開始温度と温度上昇率の組み合わせを選択すること、
を特徴とする加熱条件設定方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の加熱条件設定方法であって、
設定した加熱開始温度と温度上昇率とに基づいて、半導体チップを加熱するヒータへの温度指令を設定する加熱条件設定方法。
【請求項4】
ボンディング装置を用いた非導電性フィルムの粘度測定方法であって、
ボンディングステージとボンディングツールの間に非導電性フィルムを挟みこんで一定の荷重で押圧した状態で、所定の温度上昇率で非導電性フィルムの温度を上昇させながら、ボンディングツールの降下量を測定し、
ボンディングツールの降下量に基づいて非導電性フィルムの粘度Vを以下の式により算出し、
V=2*π*F*H
5/3*Q*(-dH/dt)(2*π*H
3+Q)
Fは、非導電性フィルムの押圧荷重であり、
Hは、非導電性フィルムの厚さであり、
Qは、非導電性フィルムの体積であり、
-dH/dtは、ボンディングツールの降下量であること、
を特徴とする非導電性フィルムの粘度測定方法。
【請求項5】
ボンディング装置であって、
非導電性フィルムが載置されるボンディングステージと、
前記ボンディングステージと共に前記非導電性フィルムを挟み込むボンディングツールと、
前記ボンディングツールを上下方向に駆動するボンディングヘッドと、
前記ボンディングヘッドに内蔵されたヒータと、
前記ボンディングヘッドの高さと前記ヒータの出力とを調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ボンディングヘッドを降下させて前記非導電性フィルムを一定の荷重で押圧した状態で、前記ヒータによって所定の温度上昇率で前記非導電性フィルムの温度を上昇させながら、前記ボンディングツールの降下量を測定し、
前記ボンディングツールの降下量に基づいて前記非導電性フィルムの粘度Vを以下の式により算出し、
V=2*π*F*H
5/3*Q*(-dH/dt)(2*π*H
3+Q)
Fは、非導電性フィルムの押圧荷重であり、
Hは、非導電性フィルムの厚さであり、
Qは、非導電性フィルムの体積であり、
-dH/dtは、ボンディングツールの降下量であること、
を特徴とするボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングの際の半導体チップの加熱条件設定方法及びボンディング装置を用いた非導電性フィルムの粘度測定方法およびボンディング装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを樹脂封止する際の樹脂を上下で挟み込んで加熱して加熱溶融させ、その際の樹脂の広がりを検出することにより、樹脂の粘度を測定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、円柱状の試料を平行平板で挟み込んで荷重を加えた際の厚さの変化に基づいて試料の粘度を測定する方法が知られている(非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】白石裕等、「貫入法、平行板変形-回転法の組合せによる広域粘度計の開発」、日本金属学会詩第60巻第2号(1996)、184頁から191頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電極に金属バンプを形成した半導体チップを反転させ、金属バンプを溶融させて基板の電極との間で合金を形成することにより半導体チップを基板に接合するフリップチップボンディングが用いられている。このボンディングでは、半導体チップと基板との間の隙間を充填するために熱硬化性の非伝導性フィルム(以下、NCFという)が用いられている。NCFは、半導体チップの金属バンプの上に貼り付けられており、半導体チップを加熱した際、金属バンプが溶融する前に軟化して半導体チップと基板との間に入り込み、更に温度を上げると熱硬化を開始する。そして、NCFが熱硬化を開始した後に金属バンプが溶融して基板の電極との間に合金を作ることによって半導体チップが基板に接合される。
【0007】
ところが、NCFの種類によっては、加熱の際の硬化が遅れ、NCFが軟化状態で金属バンプの溶融が開始されてしまう場合がある。この場合、軟化したNCFの流動により、溶融した金属バンプが流されてしまい、半導体チップと基板とを接合する合金の形状が歪んでしまい、半導体チップと基板とを好適に接合できない場合がある。
【0008】
このため、好適なボンディングを行うためには、温度に対するNCFの粘度の変化特性を知ることが重要である。しかし、温度に対するNCFの粘度の変化特性は、NCFの加熱速度、加熱開始温度等様々な要因で大きく変化する。このため、NCFの加熱速度、加熱開始温度等の様々なパラメータを変化させてボンディング試験を行い、ボンディングの際の半導体チップの加熱条件を決定することが必要であり、ボンディングの条件設定に時間が掛かってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、短時間でボンディングの際の加熱条件を設定可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加熱条件設定方法は、非導電性フィルムを用いて半導体チップをボンディングする際の半導体チップの加熱条件設定方法であって、各種の温度上昇率における非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化を示す粘度特性マップと、同一の温度上昇率で加熱開始温度を変化させた場合の非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化を示す加熱開始温度特性マップとのいずれか一方または両方に基づいて加熱開始温度と温度上昇率を設定し、粘度特性マップは、ボンディングステージとボンディングツールの間に非導電性フィルムを挟みこんで一定の荷重で押圧した状態で、各種の温度上昇率で非導電性フィルムの温度を上昇させながら、ボンディングツールの降下量を測定し、ボンディングツールの降下量に基づいて非導電性フィルムの粘度を算出し、各種の温度上昇率における非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化特性として出力したものであり、加熱開始温度特性マップは、ボンディングステージとボンディングツールの間に非導電性フィルムを挟みこんで一定の荷重で押圧した状態で、各種の加熱開始温度から同一の温度上昇率で非導電性フィルムの温度を上昇させながら、ボンディングツールの降下量を測定し、ボンディングツールの降下量に基づいて非導電性フィルムの粘度を算出し、同一の温度上昇率で加熱開始温度を変化させた場合の非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化特性として出力したものであり、
非導電性フィルムの粘度Vの算出を以下の式により行い、
V=2*π*F*H5/3*Q*(-dH/dt)(2*π*H3+Q)
Fは、非導電性フィルムの押圧荷重であり、
Hは、非導電性フィルムの厚さであり、
Qは、非導電性フィルムの体積であり、
-dH/dtは、ボンディングツールの降下量であること、を特徴とする。
【0012】
本発明の加熱条件設定方法において、ボンディングは、半導体チップに形成された金属バンプを溶融させて基板あるいは他の半導体チップの電極との間で合金を形成することにより半導体チップを基板または他の半導体チップに接合し、非導電性フィルムを熱硬化させて半導体チップと基板あるいは他の半導体チップとの間の隙間を充填するものであり、加熱開始温度と温度上昇率の設定は、金属バンプの溶融開始温度よりも低い温度で非導電性フィルムの粘度が硬化粘度以上となる加熱開始温度と温度上昇率の組み合わせを選択することとしてもよい。
【0014】
本発明の加熱条件設定方法において、設定した加熱開始温度と温度上昇率とに基づいて、半導体チップを加熱するヒータへの温度指令を設定してもよい。
【0015】
これにより、本発明の加熱条件設定方法は、短時間でボンディングの際の加熱条件を設定可能とすることができる。
【0016】
本発明の粘度測定方法は、ボンディング装置を用いた非導電性フィルムの粘度測定方法であって、ボンディングステージとボンディングツールの間に非導電性フィルムを挟みこんで一定の荷重で押圧した状態で、所定の温度上昇率で非導電性フィルムの温度を上昇させながら、ボンディングツールの降下量を測定し、ボンディングツールの降下量に基づいて非導電性フィルムの粘度Vを以下の式により算出し、
V=2*π*F*H
5
/3*Q*(-dH/dt)(2*π*H
3
+Q)
Fは、非導電性フィルムの押圧荷重であり、
Hは、非導電性フィルムの厚さであり、
Qは、非導電性フィルムの体積であり、
-dH/dtは、ボンディングツールの降下量であることを特徴とする。
【0017】
本発明のボンディング装置は、非導電性フィルムが載置されるボンディングステージと、ボンディングステージと共に非導電性フィルムを挟み込むボンディングツールと、ボンディングツールを上下方向に駆動するボンディングヘッドと、ボンディングヘッドに内蔵されたヒータと、ボンディングヘッドの高さとヒータの出力とを調整する制御部と、を備え、制御部は、ボンディングヘッドを降下させて非導電性フィルムを一定の荷重で押圧した状態で、ヒータによって所定の温度上昇率で非導電性フィルムの温度を上昇させながら、ボンディングツールの降下量を測定し、ボンディングツールの降下量に基づいて非導電性フィルムの粘度Vを以下の式により算出し、
V=2*π*F*H
5
/3*Q*(-dH/dt)(2*π*H
3
+Q)
Fは、非導電性フィルムの押圧荷重であり、
Hは、非導電性フィルムの厚さであり、
Qは、非導電性フィルムの体積であり、
-dH/dtは、ボンディングツールの降下量であること、を特徴とする。
【0018】
これにより、ボンディング装置を利用して簡便に非導電性フィルムの粘度を測定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、短時間にボンディングの際の加熱条件を設定可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における半導体チップの加熱条件設定方法を示すフローチャートである。
【
図2】ボンディング装置によって非導電性フィルム(NCF)の粘度測定を行っている状態を示す説明図である。
【
図5】選択した加熱開始温度と温度上昇率とに基づくNCFの温度の時間変化とヒータ温度指令値とを示すグラフである。
【
図6】
図5で設定したヒータ温度指令値によってボンディングをした場合の半導体チップ、NCFの温度の時間変化とNCFの粘度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら実施形態の加熱条件設定方法について説明する。
図1に示すように実施形態の加熱条件設定方法は、
図1のステップS101に示す粘度特性マップ生成ステップと、
図1のステップS102に示す加熱開始温度特性マップ生成ステップと、
図1のステップS103に示す加熱温度、温度上昇率選択ステップと、
図1のステップS104に示すヒータ温度指令設定ステップとを含んでいる。
【0022】
最初に
図2、3を参照しながら粘度特性マップ生成ステップについて説明する。
図2に示すように、NCF40の粘度の測定はボンディング装置100を用いて行う。
【0023】
図2に示すように、ボンディング装置100は、表面に半導体チップ32を真空吸着するボンディングステージ10と、半導体チップ31を真空吸着するボンディングツール24と、ボンディングヘッド20と、制御部90とを含んでいる。ボンディングヘッド20は、ベース21と、ベース21に取り付けられるヒートブロック22と、ベース21を上下方向に駆動する駆動部25を含んでいる。ボンディングツール24は、ヒートブロック22に真空吸着で固定されている。ボンディングステージ10には半導体チップ32を加熱するヒータ12が内蔵され、ヒートブロック22には半導体チップ31を加熱するヒータ23が内蔵されている。ヒータ12、23にはヒータ12、23への供給電力を調整するコントローラ14、26が接続されている。制御部90は、内部にCPUとメモリとを備えるコンピュータである。
【0024】
ボンディングヘッド20の駆動部25は、制御部90の指令に基づいてボンディングツール24を上下方向に駆動すると共に、ボンディングツール24の高さと、ボンディングツール24の押圧荷重Fを制御部90に出力する。ヒートブロック22には、ヒートブロック22の温度を検出する温度センサ91が取り付けられている。また、ボンディング装置100には、NCF40の温度を検出する温度センサ92が取り付けられている。温度センサ92は、例えば、非接触式の温度検出器でもよい。温度センサ91、92の取得した温度データは、制御部90に入力される。
【0025】
図2に示すように、ボンディングステージ10の上に半導体チップ32を真空吸着し、その上に厚さHのNCF40を載置する。また、ボンディングツール24の表面に半導体チップ31を真空吸着させる。そして、制御部90は、ボンディングヘッド20を降下させて半導体チップ31をNCF40の上に接しさせ、半導体チップ31、32の間にNCF40を挟み込む。これにより、NCF40は、半導体チップ31、32を介してボンディングステージ10とボンディングツール24との間に挟みこまれる。そして、制御部90は、ボンディングヘッド20をわずかに降下させて、NCFを一定の押圧荷重Fで押圧する。この際、ボンディングステージ10の温度は温度TBであり、半導体チップ31の温度は温度T0である。
【0026】
制御部90は、駆動部25によって押圧荷重Fが一定に成るように調整しながら、コントローラ26を調節してヒータ23への通電電力を増加させ、所定の温度上昇率でNCF40の温度を上昇させて行く。NCF40の温度が上昇するとNCF40が軟化して高さHが減少し、ボンディングツール24が降下してくる。制御部90は、ボンディングヘッド20の降下量によって高さHの変化を検出する。
【0027】
ここで、NCF40に加えている押圧荷重をF(N)、NCF40の厚さをH(m)、時間をt(sec)、試料のNCF40の体積をQ(m3)とすると、NCF40の粘度V(Pa・S)は、以下の式によって算出することができる(例えば、非特許文献1参照)。
V=2*π*F*H5/3*Q*(-dH/dt)(2*π*H3+Q) ---- (式1)
【0028】
制御部90は、温度上昇率をA(℃/s)として、NCF40の温度をT0から上昇させ、ボンディングツール24の高さが減少する度に(式1)により、NCF40の粘度Vを算出していく。すると、
図3の実線aに示すような特性カーブが得られる。
図3の実線aに示すように、NCF40は、温度が上昇すると軟化して粘度Vは硬化粘度Vs以下まで低下する。そこから、更に温度を上げて行くと、NCF40の熱硬化が始まり、温度T1で硬化粘度Vsを超える。その後、熱硬化によりNCF40の粘度は、急速に上昇する。
【0029】
温度上昇率をA(℃/s)よりも大きいB(℃/s)として、同様の試験を行うと、一点鎖線bに示すように、NCF40は、温度の上昇により軟化した後、熱硬化により温度T2(T2>T1)で硬化粘度Vsを超え、その後、粘度Vは急速に上昇する。同様に、温度上昇率がC(℃/s)(C>B)の場合には、二点鎖線cに示すように、NCF40は、熱硬化により温度T3(T3>T2)で硬化粘度Vsを超え、温度上昇率がD(℃/s)(D>C)の場合には、丸プロット線dに示すように温度T4(T4>T3)で硬化粘度Vsを超える。
【0030】
このように、NCF40を加熱すると、温度上昇率が大きくなるほど、熱硬化により粘度Vが硬化粘度Vsを超える温度が高くなってくる。
【0031】
粘度特性マップ50は、
図3に示す実線a、一点鎖線b,二点鎖線c、丸プロット線dのように、各種の温度上昇率における非導電性フィルムの温度に対する粘度Vの変化特性を示す線を一つのグラフに纏めたマップである。
図3の温度TWは、金属バンプ、例えば、はんだ金属バンプの溶融開始温度を示す。これについては、後で説明する。
【0032】
次に
図4を参照しながら、加熱開始温度特性マップ60について説明する。NCF40の粘度測定方法は、先に説明した粘度特性マップの生成の場合と同様なので、説明は省略する。
【0033】
図4は、加熱開始温度特性マップ60の一例を示している。
図4に示す二点鎖線cは、先に説明した
図3の二点鎖線cと同様、加熱開始温度がT0、温度上昇率がC(℃/s)の場合のNCF40の温度対するNCF40の粘度Vの変化を示している。
図4に示す三角プロット線c1は、加熱開始温度がT01(T01>T0)で、温度上昇率が二点鎖線cと同様のC(℃/s)の場合のNCF40の温度対するNCF40の粘度Vの変化を示している。また、
図4に示す×プロット線c2は、加熱開始温度がT02(T02>T01)で、温度上昇率が二点鎖線cと同様のC(℃/s)の場合のNCF40の温度対するNCF40の粘度Vの変化を示している。
【0034】
図4に示すように、加熱開始温度が高くなるほど、粘度Vが硬化粘度Vsを超える温度が低くなって来る。このように、加熱開始温度特性マップは、
図4に示す二点鎖線c、三角プロット線c1、×プロット線c2のように、同一の温度上昇率で加熱開始温度を変化させた場合の非導電性フィルムの温度に対する粘度の変化特性を示す線を一つのグラフに纏めたマップである。
【0035】
次に、
図1のステップS103に示す、加熱開始温度、温度上昇率の選択について説明する。
【0036】
半導体チップ31に形成された金属バンプを溶融させて基板の電極との間で合金を形成することにより半導体チップ31を基板に接合し、NCF40を熱硬化させて半導体チップ31と基板との間の隙間を充填するボンディングを行う場合、金属バンプが溶融する前にNCF40が軟化して半導体チップ31と基板との間に入り込み、NCF40が熱硬化を開始した後に金属バンプが溶融して基板の電極との間に合金を作ることが重要である。このため、加熱開始温度と温度上昇率は、金属バンプの溶融開始温度TWよりも低い温度でNCF40の粘度Vが硬化粘度Vs以上となる加熱開始温度と温度上昇率の組み合わせとすることが必要である。
【0037】
まず、
図3に示す粘度特性マップ50を用いて加熱開始温度と温度上昇率の組み合わせを選択する場合について説明する。
図4のTWは、金属バンプの溶融開始温度である。加熱開始温度がT0の場合、温度上昇率がA(℃/s)、B(℃/s)の場合、実線a、一点鎖線bに示すように、金属バンプの溶融開始温度TWよりも低い温度T01,T02でNCF40の粘度Vが硬化粘度Vs以上となるので、加熱開始温度T0、温度上昇率A、Bは採用可能な組み合わせである。一方、温度上昇率が(℃/s)、D(℃/s)の場合、二点鎖線c、丸プロット線dに示すように、温度が金属バンプの溶融開始温度TWよりも高くならないとNCF40の粘度Vが硬化粘度Vs以上にならない。このため、金属バンプの溶融状態とNCFの流動状態とが重なり、NCF40の流動によって溶融した金属バンプが電極上から流れてしまい、好適な接合ができない。このため、加熱開始温度T0、温度上昇率C、Dは採用不可能な組み合わせである。
【0038】
ここで、温度上昇率は高いほど、ボンディングのタスクタイムを短くできるので、採用可能な加熱開始温度と温度上昇率の組み合わせの内、温度上昇率の大きい方の組み合わせを選択する。
【0039】
つまり、
図4の粘度特性マップから、金属バンプの溶融開始温度TWよりも低い温度で粘度Vが硬化粘度Vs以上になる加熱開始温度と温度上昇率との組み合わせを選び、その中で、温度上昇率の一番高い組み合わせを加熱条件として選択する。
【0040】
また、温度上昇率がより大きいC(℃/s)でボンディングを行う場合の加熱条件は、
図4に示す加熱開始温度特性マップ60を参照して、金属バンプの溶融開始温度TWよりも低い温度で粘度Vが硬化粘度Vs以上になる加熱開始温度と温度上昇率との組み合わせである、加熱開始温度がT02、温度上昇率C(℃/s)の組み合わせを加熱条件として選択する。
【0041】
以上の説明では、
図4に示す加熱開始温度特性マップ60に記載された線に基づいて加熱条件を選択するようにしたが、これに限らず、例えば、三角プロット線c1と、×プロット線c2とを補間して加熱開始温度をT02よりも少し低い温度に設定してもよい。
【0042】
以上説明したように、実施形態の加熱条件設定方法は、多くの加熱条件により試験ボンディングを行う必要がなくなるので短時間に加熱条件の設定を行うことができる。
【0043】
次に、
図1のステップS104に示すように、選択した加熱開始温度と温度上昇率に基づいて、ヒータ23の温度指令を設定するステップについて説明する。
【0044】
図5(a)は、加熱開始温度としてT02、温度上昇率C(℃/s)の場合の半導体チップ31あるいはNCF40の時間に対する温度上昇を示すカーブである。ヒータ23への温度指令と半導体チップ31あるいはNCF40の温度上昇との間には、時間遅れがある。この時間遅れは、予め行った試験等で数値モデルの構成、パラメータ設定をしておく。そして、その設定パラメータと数値モデルを用いて
図5(a)のような温度変化となるようなヒータ23への温度指令を
図5(b)のように、生成する。そして、ボンディングの際には、
図5(b)に示す温度指令によってヒータ23を制御する。この結果、
図6に示すように、NCF40の粘度Vが硬化粘度Vsに到達した直後に金属バンプが溶融するような効率的なボンディング条件とすることができる。このように、本実施形態の加熱条件設定方法によれば、短時間にボンディング条件の設定を行える。
【0045】
以上の説明は、粘度特性マップ50を用いて加熱開始温度と温度上昇率の組み合わせを選択する場合、加熱開始温度特性マップ60に記載された線に基づいて加熱条件を選択する場合について説明したが、このように、いずれか一方のマップを用いて加熱開始温度と温度上昇率の組み合わせを選択することに限らず、両方のマップを用いて加熱開始温度と温度上昇率の組み合わせを選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 ボンディングステージ、12 ヒータ、14,26 コントローラ、20 ボンディングヘッド、21 ベース、22 ヒートブロック、23 ヒータ、24 ボンディングツール、25 駆動部、31,32 半導体チップ、50 粘度特性マップ、60 加熱開始温度特性マップ、90 制御部、91,92 温度センサ、100 ボンディング装置。