(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】携帯端末装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220118BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220118BHJP
【FI】
A61L2/10
G06T7/00 510A
(21)【出願番号】P 2020096048
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2020-06-02
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】714005982
【氏名又は名称】株式会社コンフォートビジョン研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】黒木 義彦
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1774748(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0093412(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106686164(CN,A)
【文献】特開2006-337195(JP,A)
【文献】中国実用新案第212935949(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107320743(CN,A)
【文献】国際公開第2016/183075(WO,A1)
【文献】特開2006-157381(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111228529(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
G06T 7/00
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象物に波長200nm以上400nm未満の紫外線を照射するための紫外線LEDユニットと、
該紫外線LEDユニットから照射された前記紫外線を紫外線照射部分として撮像するイメージセンサユニットと、
該イメージセンサユニットにより撮像された前記紫外線照射部分をデータ変換して画像データとするイメージセンサ部と、
該イメージセンサ部により前記画像データとされた紫外線照射部分が画像情報として表示される表示タッチパネルユニットとを備え
、
前記表示タッチパネルユニットには、前記紫外線照射部分の画像情報が蓄積され、前記紫外線照射部分が移動して照射されてきた部分を軌跡として視認できるように表示する表示領域が表示されることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記紫外線LEDユニットから照射される紫外線に対して生体に対して許容される距離が最小許容距離として記憶され、該最小許容距離に前記生体における顔または目または虹彩または瞳孔または皮膚の有無を認識する生体認識判定部と、
前記最小許容距離に前記生体における顔または目または虹彩または瞳孔または皮膚が含まれていない時のみ前記紫外線を照射する紫外線照射制御部とをさらに備えたことを特徴とする請求項
1に記載の携帯端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射および紫外線撮像機能を有する携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気清浄や物品の殺菌清浄を目的とした細菌やウイルスを不活性化するための紫外線の利用が行われている。特に、波長200nmから400nm程度の紫外線が、細菌やウイルスを不活性化することが一般的に知られている。波長250nmから280nmや、波長350nmから380nmの紫外線により、捕獲された細菌やウイルスを不活性化するということも知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような細菌やウイルスを不活性化する目的としての紫外線を照射する方法として、スイッチを押した時のみ波長200nmから400nmの紫外線を照射する携帯用の紫外線照射装置も知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6317495号
【文献】特開2016-193045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、空気清浄を目的としてある程度大量の空気の流量を想定しているため、装置が大型となり、携帯して使用することは困難である。すなわち、身の回りの物品を簡便に殺菌清浄することには適していない。また特許文献2では、紫外線照射装置としての小型化は実現しているものの、目に見えない紫外線の性質上、実際に照射している状態を確認することができない。すなわち、紫外線の照射状況を表示により確認することができず過剰な照射や照射の不足を招きやすいという問題がある。このように紫外線の照射を確認できないことは、生体に対して過度に照射しているかもしれないという状態を生じるおそれがあり、安全上の対応が求められている。このように従来技術では、身の回りの物品に付着した細菌やウイルスを簡便かつ安全に操作状況を確認しながら不活性化する方法が無かった。
【0006】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、携帯可能かつ紫外線照射の状況を確認でき、安全性にも考慮した携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明では、撮影対象物に波長200nm以上400nm未満の紫外線を照射するための紫外線LEDユニットと、該紫外線LEDユニットから照射された前記紫外線を紫外線照射部分として撮像するイメージセンサユニットと、該イメージセンサユニットにより撮像された前記紫外線照射部分をデータ変換して画像データとするイメージセンサ部と、該イメージセンサ部により前記画像データとされた紫外線照射部分が画像情報として表示される表示タッチパネルユニットとを備えたことを特徴とする携帯端末装置を提供する。
【0008】
好ましくは、前記表示タッチパネルユニットには、前記紫外線照射部分の画像情報が蓄積され、前記紫外線照射部分が移動して照射されてきた部分を軌跡として表示する表示領域が表示される。
【0009】
好ましくは、前記紫外線LEDユニットから照射される紫外線に対して生体に対して許容される距離が最小許容距離として記憶され、該最小許容距離に前記生体における顔または目または虹彩または瞳孔または皮膚の有無を認識する生体認識判定部と、前記最小許容距離に前記生体における顔または目または虹彩または瞳孔または皮膚が含まれていない時のみ前記紫外線を照射する紫外線照射制御部とをさらに備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、携帯可能かつ紫外線照射の状況を確認でき、安全性にも考慮した携帯端末装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】操作状態を示す本発明の携帯端末装置の表面の図である。
【
図4】本発明の信号処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0013】
図1は本発明の携帯端末装置1の裏面を示している。この裏面には、携帯端末装置1に
おいて紫外線を照射する紫外線LEDと紫外線を一定の広がりとするための照射レンズのユニットである紫外線LEDユニット2と、その近傍に紫外線および可視光(通常光)に感度を有するイメージセンサおよび撮像レンズのユニットであるイメージセンサユニット3が配されている。ここで紫外線LEDユニット2による照射領域はイメージセンサユニット3の撮影領域に含まれる。
【0014】
図2は本発明の携帯端末装置1の表面を示している。この表面には、表示パネル
69(後述)の表面に透明なタッチパネル
66(後述)を貼り合わせた表示タッチパネルユニット4が配されている。表示パネル
69にはアプリケーションプログラムの動作状態を示す表示がされている。表示パネル
69には紫外線照射を開始または停止するための紫外線照射制御スイッチ5が表示されていて、図の状態では紫外線照射状態(紫外線照射制御スイッチ5が、タッチパネル
66を介して指でタッチされている状態)を示している。また、図の例では、撮影されて紫外線が照射されるべき撮影対象物31(図の例ではパソコン)が撮像されて表示6として表示タッチパネルユニット4に表示されている。また、紫外線が照射された部分は、上述したイメージセンサユニット3を介して本体内部の信号処理回路53(後述)によって、特定の色として通常光での撮像画像(表示6)に合成されて、蓄積表示されて表示領域7として表示される。この表示領域7は、紫外線が照射されてきた領域を軌跡として表示しているものである。また、表示部4にはメニュースイッチ8が表示されていて、その操作により携帯端末装置1のアプリケーションプログラム初期設定値の入力や終了ができる。
【0015】
本発明の携帯端末装置1から撮影対象物31に照射される紫外線は、上述した紫外線LEDユニット2から現時点の紫外線照射経路32(
図2の破線部分)を通り、現時点の紫外線照射部分33として撮影対象物31に照射される。携帯端末装置1の使用者は、現時点の紫外線照射部分33を移動させて撮影対象物31に対して紫外線を照射する(例えば
図2の矢印方向)。
【0016】
紫外線に関する安全基準については、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:アメリカ合衆国産業衛生専門官会議)やJIS Z8812(有害紫外放射の測定方法)等が知られている。これらによれば、細菌やウイルスの不活性化を可能としつつ人体に好ましくない作用を生じさせない許容照度を、例として波長253.7nmでは、照射時間1分であれば1W /(m^2)、照射時間1秒であれば60W /(m^2)としている。
【0017】
本発明における紫外線照射強度はこうした安全基準を遵守して設定される。さらに特に人体の眼は直接紫外線が照射された場合結膜炎や角膜炎を起こすことがあり、また皮膚は長時間の集中照射で炎症を起こすことがあるため、本発明では一定の距離より接近したこうした生体が存在していない場合にのみ、上述した制約された時間の範囲で紫外線を短時間のパルスとして照射する機構を有している。この機構を実現するため本発明では、顔や目、虹彩、瞳孔、皮膚等のパターンを学習した生体情報を第2の記憶部56(後述)に記憶しており、それらのパターンをイメージセンサユニット52(後述)による撮像画像の中から撮像のフレームごとに探索する信号処理を生体認識判定部60(後述)において実行する。
【0018】
ここで、顔の認識については多くのヒトの通常の顔画像を入力とするニューラルネットワークによる機械学習により現在比較的容易に高精度の学習を行うことができる。しかしそれは、両方の眉毛や目、鼻、口などの通常の配置をパターンとした学習となるため、例えば顔の左右いずれか半分を画面の横方向いっぱいに接近して撮像するような場合や顔を上下逆さまに撮像するような場合ではパターン情報が失われ顔として認識されないことがあることから、通常の顔の認識だけで紫外線照射の可否を判定することは安全とは言えない。そこで本発明は、紫外線照射において特に安全対策が重要となる目と皮膚について配慮を重ねるものであり、様々な接近および回転撮像画像として、顔のみならず、目の全体や、虹彩、瞳孔のパターン、また、皮膚の色やテキスチャーのパターン等多くを学習し、これらを生体として判定できるようにしたものである。
【0019】
このようにして考慮すべき紫外線照射における生体までの距離は紫外線LEDユニット2から生体までの距離であり、この距離は前述のようにイメージセンサユニット3と紫外線LEDユニット2を近傍に配していることから、イメージセンサユニット3から撮影対象物31までの距離Lによって代用される。この距離Lを取得するには複数の方法があり、イメージセンサユニット3として撮影距離測定機能を内蔵したものを用いることでその撮影距離測定機能によって距離Lを取得する方法または、イメージセンサユニット3の近傍に距離センサを設置しその出力である距離情報をイメージセンサユニット3での撮像画像と対応づける信号処理によって距離Lを取得する方法または、イメージセンサユニット3で撮像された生体のパターンと既知の生体のパターンとの大きさの比率から計算によって距離Lを取得する方法などがある。
【0020】
距離Lを取得する1番目の方法としては、例えばオートフォーカス機能の備わったイメージセンサユニットでは、微小にレンズを光軸方向に動かすことにより合焦点の画像をもたらす焦点距離を取得することができるのでその焦点距離から、被写体までの距離を一般的なレンズの式を用いて計算にて求めることができる。さらにイメージセンサユニットにレーザーやLED光源を含めたものがあり、その光源から発した光が対象物で反射し,イメージセンサーに届くまでの光の飛行時間を検出することで,対象物までの距離を画素ごとに測定する方法を利用することもできる。
【0021】
距離Lを取得する2番目の方法としては、上記の光の飛行時間を原理とするものや、赤外線を照射しその反射強度の変化から距離を求めるもの等、様々な距離センサを用いることができる。
【0022】
距離Lを取得する3番目の方法としては、例えばヒトの虹彩の大きさはおよそ11mmから12mm程度であるように、生体には標準的な大きさの範囲が存在することから、様々な大きさや角度で学習した既知の生体のパターンがイメージセンサユニット3で撮像された画像の中に見出された後、その生体までの距離は後述する撮影対象の大きさと撮影距離の関係の式を用いて計算により求めることができる。
【0023】
以上のように本発明は、紫外線照射対象の領域に第1の記憶部55に記憶した初期設定値Lminより接近した顔や皮膚等の生体が含まれていないことを生体認識判定部60において判定し、その判定を条件に紫外線照射制御部61が紫外線照射部62を制御し、紫外線LED駆動回路64が紫外線LEDユニット63を駆動して、時間tの紫外線照射を行うものである。この時間tは、より生体に対する安全に寄与することを目的として、生体認識判定部60が撮像のフレームごとに生体を認識することからその撮像のフレームレートを60Hzとした場合の1フレーム期間である16ms程度と同等あるいはそれ以下すなわち、1乃至16ms程度の短時間であることが望ましい。
【0024】
生体認識判定部60による生体認識とその判定に基づき紫外線照射制御部61と紫外線照射部62による紫外線照射は、紫外線照射制御スイッチ5が押されている間、次に述べる停止機構が動作する場合を除き繰り返して行われる。その停止機構は、生体への安全性をさらに向上することを目的として、カウンタCによってT時間以上スイッチが押され続けた場合に紫外線照射を停止する機構である。このカウンタCのカウント周波数を例えば1KHzとし、その周期すなわち1msごとに1カウント増加するものとし、この時間Tの例はC=60000からC=300000に対応する時間すなわち1乃至5分程度が望ましい。
【0025】
こうした紫外線パルス照射時間t、生体までの最小許容距離Lmin、照射時間の制約を与えるカウンタCの初期値0と最大値Cmaxの値は初期設定値として第1の記憶部55(後述)に記憶しておく。
【0026】
撮影対象の大きさと撮影距離の関係は次の式から求めることができる。
レンズから被写体までの距離=撮影対象の範囲の横方向の大きさ×レンズの焦点距離/撮像素子の横方向の大きさ
【0027】
ここで、例として撮影対象の範囲の横方向の大きさいっぱいにちょうど横方向300mmの物体の全体が映っているときにレンズの焦点距離が4mmで撮像素子の横方向の大きさが6mmであったとすると、そのレンズから被写体までの距離は200mmであることがわかる。この計算方法を、前述した紫外線の照射距離すなわち距離Lを、イメージセンサユニット3で撮像された生体のパターンと第2の記憶部56に記憶された既知の生体のパターンとの大きさの比率から取得する計算方法として用いることができる。
【0028】
紫外線照射のための紫外線LEDユニット2におけるレンズの画角は、紫外線照射の領域がイメージセンサユニット3により撮像される範囲の中で確認しやすいように、イメージセンサユニット3の撮像の画角に対して、その1/5乃至2/3程度の範囲と設定することが望ましい。
【0029】
さらに前述した紫外線照射の可能性のある対象領域に一定以上の大きさの瞳孔や虹彩や目や顔や皮膚などの生体が含まれないことの判定は、より安全のため紫外線照射の範囲だけではなく撮像の全領域すなわち撮像の画角横方向および縦方向の全体に対して実行される。
【0030】
以上のような安全に対する考え方は、紫外線強度を生体に直接接近照射しても安全な基準の範囲としつつ、さらに安全のため、紫外線照射強度を二乗で減衰させる効果のある生体までの紫外線の照射距離すなわち距離Lを十分に確保しようとするものである。その許容される距離Lの最小値すなわち生体までの最小許容距離Lminは、例として60cm程度とすることが望ましい。
【0031】
図3は携帯端末装置1の機能ブロック図である。携帯端末装置1は、イメージセンサ部51、記憶部54、制御部
58、紫外線照射部62、タッチパネル部65、表示部68を有しており、それらの主な機能と関連は次のとおりである。
【0032】
イメージセンサ部51は、携帯端末装置1内においてイメージセンサユニット3の位置近傍に内蔵され、主に通常光による撮像および紫外線による撮像と信号処理を行うもので、通常光また紫外線を撮像するイメージセンサ機能ユニット52と、紫外線を特定の色として通常光による撮像画像に合成する信号処理回路53を有している。これにより、表示タッチパネルユニット4には紫外線で照射された(されてきた)部分が他の部分と区別できる形で表示領域7として視認できるようになる。ここでイメージセンサ機能ユニット52は、イメージセンサとレンズを含めたユニットであるイメージセンサユニット3を含む。
【0033】
記憶部54は、携帯端末装置1内に内蔵され、主に初期設定値や生体情報またイメージセンサ部51で撮像された画像フレームを記憶するものである。記憶部54は第1の記憶部55~第3の記憶部57を有している。第1の記憶部55は、初期設定値を記憶するためのものである。第2の記憶部56は、顔や目、虹彩、瞳孔、皮膚等のパターンを学習した生体情報を記憶するためのものである。第3の記憶部57は、通常光および紫外線による撮像情報を一時記憶するフレームメモリとしての役割を果たすものである。
【0034】
制御部58は、携帯端末装置1内に内蔵され、主にユーザーの操作に対応した制御やイメージセンサ部51で撮像された画像に対する認識や紫外線照射の制御を行うものである。この制御部58は、紫外線照射制御スイッチ5が押された時間をカウントするカウンタ部59、画像において生体までの最小許容距離Lmin以内に生体等が含まれるかどうかを認識し判定する生体認識判定部60、紫外線LEDユニット2からの紫外線の照射時間をt時間として制御するための紫外線照射制御部61を有している。
【0035】
紫外線照射部62は、携帯端末装置1内において紫外線LEDユニット2の位置近傍に内蔵され、主に制御部58で制御された信号によって紫外線を照射するもので、紫外線を照射する紫外線LED機能ユニット63とその駆動回路である紫外線LED駆動回路64を有している。ここで、紫外線LED機能ユニット63は紫外線LEDとレンズを含めたユニットである紫外線LEDユニット2を含む。
【0036】
タッチパネル部65は、携帯端末装置1内において表示タッチパネルユニット4の位置近傍に内蔵され、主にユーザーの操作を入力するインターフェースとなるもので、表示パネル69の表面に設置された透明なタッチパネル66とその表面に触れた場所の座標値を取得して結果を制御部58に返す回路すなわち座標値取得回路67を有している。すなわち、表示パネル69に表示されたメニューやスイッチをユーザーが操作のためタッチしようとするとユーザーの指はタッチパネル66に触れることとなりその座標値を取得することでそれらメニューやスイッチの操作を処理することが可能となる。
【0037】
表示部68は、携帯端末装置1内において表示タッチパネルユニット4の位置近傍に内蔵され、主に携帯端末装置1のアプリケーションプログラムによる撮像画像また紫外線の照射領域やメニュー等を表示するものであり、表示パネル69と表示パネル69を駆動する表示駆動回路70を有している。
【0038】
図4は携帯端末装置1の処理の流れを示すフローチャートである。本処理は携帯端末装置1上のアプリケーションプログラムによって行われ、以下にそのステップについて説明する。
【0039】
はじめに、初期値設定読み出しステップS1において、あらかじめ初期設定として記憶部54の第1の記憶部55に記憶した紫外線照射時間t、生体までの最小許容距離Lmin、カウンタの初期値C=0、カウンタの最大値Cmaxを読み込む。ここで、カウンタの初期値C=0は携帯端末装置1の工場出荷時に固定値として記憶しておくものであるが、紫外線照射時間t、生体までの最小許容距離Lmin、カウンタの最大値Cmaxはユーザーが携帯端末装置1のアプリケーションプログラムのメニュースイッチ8を操作することでユーザーの環境に合わせて入力することができる。ただし前述のように、tは1乃至16ms、Lminは60cm、Cmaxは60000乃至300000を推奨する旨はユーザーに携帯端末装置1のアプリケーションプログラムのメニュースイッチ8の操作の際メッセージとして伝えられる。
【0040】
次に紫外線照射スイッチ判定ステップS2において、タッチパネル部65における座標値取得回路67にてタッチパネル66を介して紫外線照射制御スイッチ5が押されているかどうかの状態の判定を行う。このスイッチの状態すなわち判定の結果がOnなら、次のステップとしてカウンタ値加算ステップS5に進み、Offなら終了スイッチ判定ステップS3に進む。
【0041】
カウンタ値加算ステップS5では、紫外線照射制御スイッチ5が押された時間をカウントする制御部58のカウンタ部59によってカウンタCの値を1つ加算する。
【0042】
カウンタ値最大値判定ステップS6では、カウンタCの値がCmaxを超えているかどうかを判定し、超えているすなわち結果がYesなら処理は撮像および画像表示ステップS4に進み、結果がNoなら撮像ステップS7に進む。ここで、結果がYesということは、カウンタCがCmaxを超えているということなので、安全のため紫外線の照射は行わず、使いやすさのため撮像画像の表示は継続し、ユーザーには携帯端末装置1のアプリケーションプログラムによって、プログラムを一旦終了することを促すメッセージを表示する。ユーザーはプログラムを一旦終了し、必要に応じて再度プログラムを起動することによりカウンタCは、第1の記憶部55に記憶された初期値C=0によって初期化され、通常の使用状態に戻ることができる。
【0043】
撮像ステップS7では、イメージセンサ部51のイメージセンサ機能ユニット52におけるイメージセンサユニット3よる撮像を行う。これにより、撮影対象物31の撮像画像がイメージセンサ部51の信号処理回路53に渡される。
【0044】
生体認識判定ステップS8では、制御部58の生体認識判定部60において、撮像ステップS7で撮像された画像について、第2の記憶部56に記憶された生体情報を用いて、イメージセンサ機能ユニット52のイメージセンサユニット3から撮影対象物31までの距離Lの中で最小許容距離Lmin以内に生体が含まれているかどうかの生体認識判定を行う。この距離Lは前述のように紫外線LEDユニット2から撮影対象物31までの距離と同等である。この認識判定結果として、Lmin以内に生体が含まれている場合すなわちYesの場合に、処理は合成画像表示ステップS11に進み、Noの場合に、紫外線照射ステップS9に進む。
【0045】
紫外線照射ステップS9では、紫外線照射部62の紫外線LED機能ユニット63における紫外線LEDユニット2を紫外線照射制御部61で制御しつつ紫外線LED駆動回路64により駆動することにより紫外線をt時間のパルスとして照射する。これにより、紫外線は撮影対象物31に照射される。また、紫外線照射制御部61により、ステップS8により最小許容距離Lmin以内に生体がある場合には紫外線LEDユニット2から紫外線は照射されない。
【0046】
通常光撮像と紫外線撮像および合成ステップS10では、イメージセンサ部51における信号処理回路53において、通常光と紫外線の撮像および合成処理を行い合成画像を生成するとともに通常光と紫外線の撮像画像情報を記憶部54の第3の記憶部57に記憶する。
【0047】
合成画像表示ステップS11では、ステップS10で生成された合成画像を表示部68において表示駆動回路70を用いて表示タッチパネルユニット4の表示パネル69に表示する。その結果、紫外線照射部分33が表示パネル69に表示6における表示領域7として表示される。これにより、使用者は紫外線が照射されている箇所について、表示タッチパネルユニット4を介して視認できるようになる。そして、ステップS2に戻り、上述した動作が繰り返される。
【0048】
終了スイッチ判定ステップS3では、携帯端末装置1のアプリケーションプログラムのメニュースイッチ8の操作により表示される終了スイッチの状態を判定する。終了スイッチが最終的に押された場合すなわちYesの場合に、本アプリケーションプログラムの処理を終了し、Noの場合、処理は紫外線照射スイッチ判定ステップS2に進む。
【0049】
なお、繰り返し行われる合成画像表示ステップS11にて、紫外線照射部分33の位置が前回の合成画像表示ステップS11による紫外線照射部分33と異なっている場合、紫外線照射の表示を通常の撮像画像に合成して表示領域7として蓄積表示される(つまり紫外線が照射された箇所が軌跡として表示領域7として表示タッチパネルユニット4に表示される)。この動作は、以下のようにして行われる。
【0050】
紫外線および通常光の1フレーム等1単位時刻前の撮像領域を例えば32画素×32画素程度のような小領域に分割する。動画撮影の連続性から連続するフレームにおける同一の被写体は撮像された画像の中で近傍に存在するので、現時刻の撮像領域において前記小領域はその小領域を中心に含む探索領域として例えば128画素×128画素程度に含まれると想定することが可能である。
【0051】
こうして、1単位時刻前の前記小領域をテンプレートとして、現時刻の前記探索領域の中で、画素情報の違いを距離として探索マッチングすることにより最も近い領域を見つけることで、同一被写体の移動を把握することができる。
【0052】
前記探索マッチングの方法としては、RGB色ごとの差分を前記小領域の画素数分の総和を距離とする方法や、RGB色ごとの相関を距離とする方法があり任意に選択することができる。
【0053】
以上のように通常の可視光の画像によって連続するフレーム間の同一被写体の移動が把握された状態において現時点の紫外線照射部分33に対するイメージセンサ出力を表示領域7のように蓄積表示する方法について、次に説明する。
【0054】
イメージセンサユニット3の出力に含まれる紫外線部分を分かりやすく表示するために、特定の色として例えば紫色を割り当て、イメージセンサユニット3による通常光の撮像画像に対して一定の透明度をもって加算合成して表示する。このとき後の利用のため、イメージセンサユニット3の通常光部分および紫外線部分の出力を第3の記憶部57すなわちフレームメモリに記憶する。
【0055】
こうして、前述の連続フレーム間で同一被写体の移動が把握されており、1単位時刻前の紫外線LEDユニット2により照射された紫外線部分が通常光による撮像画像とともに撮像第3の記憶部57に記憶されているので、現時刻のイメージセンサユニット3の紫外線部分の出力である画素情報を、第3の記憶部57に記憶された移動が把握されている同一被写体の1単位時刻前のイメージセンサユニット3の紫外線部分の出力である画素情報に信号処理回路53によって加算し表示することで、紫外線照射部分の表示領域7を表示することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
民生機器として普及している携帯端末装置に既に備わっている通常の可視光の撮像機能、画像表示機能、タッチパネル機能の技術を活用し、新たに紫外線LEDと紫外線に感度を持つイメージセンサおよび信号処理技術の追加により、簡便かつ安全に細菌やウイルスの不活性化を実現する装置を普及する貢献に結びつけることができる。
【符号の説明】
【0057】
1携帯端末装置
2紫外線LEDユニット
3イメージセンサユニット
4表示タッチパネルユニット
5紫外線照射制御スイッチ
6表示
7表示領域
8メニュースイッチ
31撮影対象物
32紫外線照射経路
33紫外線照射部分
51イメージセンサ部
52イメージセンサ機能ユニット
53信号処理回路
54記憶部
55第1の記憶部
56第2の記憶部
57第3の記憶部
58制御部
59カウンタ部
60生体認識判定部
61紫外線照射制御部
62紫外線照射部
63紫外線LED機能ユニット
64紫外線LED駆動回路
65タッチパネル部
66タッチパネル
67座標値取得回路
68表示部
69表示パネル
70表示駆動回路
S1初期設定読み出しステップ
S2紫外線照射スイッチ判定ステップ
S3終了スイッチ判定ステップ
S4撮像および画像表示ステップ
S5カウンタ値加算ステップ
S6カウンタ値最大値判定ステップ
S7撮像ステップ
S8生体認識判定ステップ
S9紫外線照射ステップ
S10通常光撮像と紫外線撮像および合成ステップ
S11合成画像表示ステップ