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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】水門開閉装置及びその油圧駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/36 20060101AFI20220118BHJP
   E02B 7/26 20060101ALI20220118BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
E02B7/36
E02B7/26 Z
E02B7/20 109
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020125430
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2021-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241290
【氏名又は名称】豊国工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高畑 勝義
(72)【発明者】
【氏名】稲摩 丈弘
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-50019(JP,A)
【文献】特開2010-13842(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111549735(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/36
E02B 7/26
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水門を開閉する水門開閉装置であって、
前記水門の扉体に連結されて、該扉体を昇降させる油圧モータと、
ポンプ及び該ポンプを駆動する電動機を含み、吐出量及び吐出方向を制御可能な油圧源と、
前記油圧モータと前記ポンプとを接続する閉回路と、
該閉回路に接続される密閉タンクと、
前記油圧モータから漏れる作動油を貯留する補助タンクと、
前記補助タンクの作動油を加圧して前記密閉タンクに供給するチャージポンプと、を備えることを特徴とする水門開閉装置。
【請求項2】
前記油圧モータの前記扉体の下降時における吐出側と前記密閉タンクとを接続する自重降下管路と、該自重降下管路に設けられる流量制御弁と、を含む自重降下装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の水門開閉装置。
【請求項3】
前記チャージポンプの吐出管路に接続されるアキュムレータを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の水門開閉装置。
【請求項4】
前記油圧モータの出力軸を制動するブレーキ機構を備え、前記チャージポンプ又は前記アキュムレータからの油圧によって前記ブレーキ機構による制動を解除することを特徴とする請求項3に記載の水門開閉装置。
【請求項5】
前記閉回路に並列に配置された少なくとも2つの前記油圧源を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の水門開閉装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水門開閉装置に使用される油圧駆動ユニットであって、
前記油圧モータと、該油圧モータに連結される減速機と、該減速機に隣接して配置される前記密閉タンクと、該密閉タンクに隣接して配置される前記油圧源及び前記チャージポンプとが一体化されていることを特徴とする油圧駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水門を開閉する水門開閉装置及びその油圧駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、河川、運河、ダムに設けられる水門設備の扉体を開閉するには、扉体に連結された電動機を開閉方向に駆動させることで、扉体を昇降させている。また、大規模な災害の発生時、例えば、高潮、局地的な豪雨等による洪水の発生や地震等による津波の発生時には、迅速に水門を閉鎖する必要がある。ここで、水門とは、河川に設けられる水門だけでなく、樋門、堰、防潮ゲート、閘門、あるいは、ダムの取水又は放流設備、制水設備などゲート全般を意味するものとする。
【0003】
このような、迅速に水門を閉鎖するための装置として、油圧モータの回転駆動によって、扉体を昇降させる水門開閉装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、扉体を昇降させるために油圧モータを使用する一方、災害により停電が発生するなどして動力電源が喪失した状態では、油圧モータを油圧ポンプとして使用して、扉体の自重降下速度を調整するようにした自重降下機能付きの水門開閉装置(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5112195号公報
【文献】特許第5314791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の水門開閉装置では、油圧モータをピストンモータとして使用した場合、油圧モータの低圧側を一定圧力以上に維持する必要がある。扉体自重の負荷により油圧モータが回される場合では、油圧モータ内のキャビテーションを防止するために、あるいは、ピストンをカムリングに押し付けるために、油圧モータの入力側(低圧側)に約1MPa程度の圧力(チャージ圧又はブースト圧)をかける必要がある。
【0006】
特許文献1に記載された水門開閉装置では、油圧モータと別置きされた油圧駆動システムで閉回路によって、油圧源と油圧モータとを接続することで、回路の構成機器が減るため、抵抗による発熱が抑えられる。しかし、ダムに設置される水門などで、扉体が昇降する高さ(揚程)が高い設備では、扉体を連続して開閉する際、水門開閉装置の作動が長くなり、作動油が閉回路内を循環し続けることで、作動油の温度が上昇し、熱が蓄積される。このため、閉回路内を冷却するために、例えば、フラッシング回路を設けている。しかしながら、この場合、冷却に必要な作動油を貯留するために大容量のタンクが必要になり、また、タンクがオープン構造であるので、必要な油量に対して余裕を持たせるために空隙が必要になる。さらに、作動油が河川、ダム湖等に流出して汚染しないようにオープン構造のタンク容量に応じたオイルパン、防油堤等の漏油対策が必要となることで配置するスペースが広くなる。
【0007】
特許文献2に記載された水門開閉装置では、自重降下時の作動油をオープン構造のタンクに一旦戻して冷却すると共に、油圧モータのチャタリング(異音、振動)を防止するために、油圧モータの回転により発生する油圧でブースト圧用油圧モータを回転させて、この回転により、ブースト圧用油圧モータと連結されるブースト圧用油圧ポンプが駆動して、チャージ圧を有する作動油を油圧モータの入力側(低圧側)に供給している。この場合、作動油をオープン構造のタンクに一旦戻すため、チャージ圧を有する作動油を油圧モータの入力側(低圧側)に供給するには、扉体の自重降下でタンクに流入する作動油以上の流量がないと回路に圧力が発生しないので、ブースト圧用油圧ポンプは、流入量以上の作動油を吐出する必要があるため容量が大きくなる。
【0008】
また、油圧回路を閉回路とした自重降下機能付きの水門開閉装置では、重量物である扉体を高速で降下させる際、通常、流量調整弁によって、流量を絞ることで安定した速度で扉体を自重降下させているが、落下エネルギーが流量調整弁の絞りにより熱エネルギーに変換され、作動油が閉回路内を循環し続けることで、作動油の温度が急激に上昇する。このため、作動油をタンクに一旦戻して循環させて冷却するか、オイルクーラ又はフラッシング回路等の冷却設備が必要になる。
一方、流量調整弁を設けずに、閉回路を流れる作動油の流量によって、開閉操作用の油圧ポンプ及びサーボモータを回転させて、サーボモータを発電機として回生電流による回生抵抗(ダイナミックブレーキ)で自重降下させることができるが、扉体の開閉速度に対して自重降下速度が高速となるので、所要出力が大きくなり、自重降下時で発生する出力以上のサーボモータとサーボアンプとに接続する回生電流の抵抗器が必要となる。このため、機器が大きくなり、コストがかかる。
【0009】
さらに、既存の水門設備の老朽化や自重降下機能の追加要請等により、水門開閉装置を交換する場合、設置スペースの関係から水門開閉装置の小型化の要求もある。
【0010】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、油圧回路として閉回路を採用しつつ、作動油の温度上昇を抑制して小型化、軽量化が可能な水門開閉装置及びその油圧駆動ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の態様)
以下に示す発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0012】
(1)水門を開閉する水門開閉装置であって、前記水門の扉体に連結されて、該扉体を昇降させる油圧モータと、ポンプ及び該ポンプを駆動する電動機を含み、吐出量及び吐出方向を制御可能な油圧源と、前記油圧モータと前記ポンプとを接続する閉回路と、該閉回路に接続される密閉タンクと、前記油圧モータから漏れる作動油を貯留する補助タンクと、前記補助タンクの作動油を加圧して前記密閉タンクに供給するチャージポンプと、を備える水門開閉装置(請求項1)。
本項に係る水門開閉装置において、油圧モータから漏れた作動油は補助ポンプに貯留され、また、密閉タンク内に予め作動油を貯留させており、この密閉タンクを油圧モータの、扉体の降下時における吸込側に接続することで、チャージポンプは、油圧モータ及び油圧源のポンプから漏れた作動油の量以上を補助タンクから吸込んで、密閉タンクに吐出し、密閉タンクから作動油を油圧モータの吸込側に供給することで、閉回路内の作動油の流量を保つことができる。これにより、チャージポンプによる吐出量が抑えられ、チャージポンプを小型化することができる。また、補助タンク内の貯留量は、密閉タンク内の作動油によって閉回路内が冷却されることから、僅かな作動油の量だけでよいので、補助タンクを小さくすることができる。その結果、水門開閉装置の構造を小型化することができる。
さらに、水門開閉装置の構造を小型化することで、水門開閉装置の重量が抑えられ、小型化により操作室の拡張による重量増加もなくなるので、水門開閉装置を既設の水門設備に設置させても、重量増加による水門設備の耐震補強が不要となり、コストを抑えることができる。
【0013】
(2)上記(1)項において、前記油圧モータの前記扉体の下降時における吐出側と前記密閉タンクとを接続する自重降下管路と、該自重降下管路に設けられる流量制御弁と、を含む自重降下装置を備える水門開閉装置(請求項2)。
本項に係る水門開閉装置において、自重降下装置によって、油圧モータと密閉タンクとを閉じた油圧回路で接続することできる。これにより、自重降下管路に流れた作動油が密閉タンク内に流入されることで、密閉タンク内に貯留された作動油が閉じた油圧回路内に流れ循環するので、作動油の入れ替えが容易であり、密閉タンク内に貯留された作動油によって、閉じた油圧回路の冷却効果を得ることができる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)項において、前記チャージポンプの吐出管路に接続されるアキュムレータを備える水門開閉装置(請求項3)。
本項に係る水門開閉装置において、アキュムレータを設けることで、災害等により停電が発生するなどして動力電源が喪失した際、水門開閉装置側で作業員の人力によって、扉体を自重降下させることができる。
【0015】
(4)上記(3)項において、前記油圧モータの出力軸を制動するブレーキ機構を備え、前記チャージポンプ又は前記アキュムレータからの油圧によって前記ブレーキ機構による制動を解除する水門開閉装置(請求項4)。
本項に係る水門開閉装置において、チャージポンプ又はアキュムレータからの油圧によって、ブレーキ機構が油圧モータの出力軸を制動又は解放させることができる。
【0016】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1項において、前記閉回路に並列に配置された少なくとも2つの前記油圧源を備える水門開閉装置(請求項5)。
本項に係る水門開閉装置において、閉回路に並列に配置された少なくとも2つ油圧源を設けることで、一方の油圧源が動作不能になっても、他方の油圧源によって、扉体を開閉させることができる。
【0017】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1項に記載の水門開閉装置に使用される油圧駆動ユニットであって、前記油圧モータと、該油圧モータに連結される減速機と、該減速機に隣接して配置される前記密閉タンクと、該密閉タンクに隣接して配置される前記油圧源及び前記チャージポンプとが一体化されている油圧駆動ユニット(請求項6)。
本項に係る油圧駆動ユニットにおいて、油圧モータ、減速機、密閉タンク、油圧源及びチャージポンプを一体化させたことで、水門設備の配置をコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る水門開閉装置及びその油圧駆動ユニットによれば、扉体の自重降下時のキャビテーションを防止すると共に、水門開閉装置の構造を小型化、軽量化することで、既設の水門設備を補強することなく設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る水門開閉装置の構成を示す概略図である。
図2図1に示す油圧駆動ユニットを水門開閉機に連結した状態を示す概略図である。
図3図1に示す油圧駆動ユニットの概略図であり、(a)は正面図であり、(b)は平面図であり、(c)は側面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る水門開閉装置に採用した油圧回路図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る水門開閉装置の構成を示す概略図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る水門開閉装置に採用した油圧回路図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る水門開閉装置の構成を示す概略図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る水門開閉装置に採用した油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第1実施形態に係る水門開閉装置を図1図4に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態に係る水門開閉装置は、河川、運河、ダム等に設置される水門を開閉させるものであり、災害等により停電が発生するなどして動力電源が喪失した場合でも、扉体を自重によって降下させることができるものである。なお、以下の説明では、一例として、1モータ・1ドラム型のワイヤロープ式水門開閉装置について説明するが、1モータ・2ドラム型又は2モータ・2ドラム型等の他の形式の水門開閉装置にも同様に適用することができる。
【0021】
第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、図1に示すように、水門を構成する左右一対の門柱5,5間に扉体3が昇降自在に支持されている。左右一対の門柱5,5の片側には、ワイヤロープ13を巻き取る及び引き出すためのドラム9が設けられている。ドラム9は、後述する油圧駆動ユニット7(図2及び図3参照)と連結されている。ドラム9は、図1及び図2に示すように、回転軸9bと一体的に連結され、回転軸9bにはドラムギヤ9aが一体的に連結されている。後述する油圧駆動ユニット7の減速機23の出力軸23aは、ピニオンギヤ23bに連結される(図2参照)。そして、ドラムギヤ9aとピニオンギヤ23bとが噛み合っており、回転軸9bと減速機23の出力軸23aとが相互に回転トルクを伝達するように構成されている。扉体3の左右上部には、ワイヤロープ13が巻回されている複数のシーブ11a,11bが設けられている(図1参照)。シーブ11aは、門柱5側に固定される定滑車であり、シーブ11bは、扉体3側に固定される動滑車である。ここで、ワイヤロープ13の一端は、ドラム9が配置されていない門柱5の上端に係止され、ワイヤロープ13の他端がドラム9に巻回されている。これにより、ドラム9を開方向に回転駆動させることで、ワイヤロープ13が巻き取られて、扉体3がシーブ11bと共に上昇し、一方、ドラム9を閉方向に回転駆動させることで、ワイヤロープ13が引き出されて、扉体3が降下するように構成される。
【0022】
さらに、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aは、図1図3に示すように、油圧モータ21と、減速機23と、油圧源25と、チャージ圧源27と、密閉タンク29とを備える。油圧モータ21は、減速機23に連結される出力軸21aを有し、減速機23と一体的に連結されている。減速機23は、油圧モータ21の回転を減速させ、トルクを増加させるものである。油圧モータ21と減速機23との間には、油圧モータ21の出力軸21aの回転運動を拘束及び解放するためのブレーキ機構31(図1及び図4参照)が設けられる。ブレーキ機構31は、油圧モータ21及び減速機23と一体的に連結されている。これにより、油圧モータ21、減速機23及びブレーキ機構31が一体的に連結されたユニットとして構成される。ブレーキ機構31は、メカニカルブレーキであり、チャージ圧源27と接続され、バネの付勢力により、油圧モータ21の出力軸21aを制動させ、チャージ圧源27から供給される作動油の圧力によって、バネの付勢力に抗して、油圧モータ21の出力軸21aの制動が解除される。
【0023】
油圧源25は、吐出量及び吐出方向を制御可能な、ACサーボモータと定容量形ポンプとを組み合わせたものからなる。油圧源25は、三相誘導モータ及びインバータと定容量形ポンプとからなるもの、又は、三相誘導モータと可変容量形ポンプとからなるものとすることができる。油圧源25は、図1及び図4に示すように、後述する閉回路45に並列に配置され(図4では、2つの油圧源25a,25bが設けられている)、ポンプ37a,37bと、電動機39a,39bとから構成される。ポンプ37a,37bは、作動油を2方向に吐出可能であり、電動機39a,39bの回転数を可変させることで、作動油の吐出量を制御可能なポンプである。ポンプ37a,37bは、ドレンライン38a,38bを介して補助タンク71と接続されている。電動機39a,39bは、正逆回転可能なサーボモータであり、ポンプ37a,37bの軸部に連結される回転軸43a,43bを有する。電動機39a,39bは、三相電源で作動されるものであり、操作盤33と電気的に接続され、操作盤33によって動作制御されている。油圧モータ21と油圧源25a,25bのポンプ37a,37bとは、図4を参照して、閉じた油圧回路(閉回路)45によって接続されている。具体的には、油圧モータ21の一方のポート(図4の紙面左側)と油圧源25のポンプ37a,37bの一方のポート(図4の紙面左側)とを連通経路47a及び接続経路49a,50aで接続し、油圧モータ21の他方のポート(図4の紙面右側)と油圧源25のポンプ37a,37bの他方のポート(図4の紙面右側)とを連通経路47b及び接続経路49b、50bで接続することで、閉回路45として構成され、この閉回路45によって、油圧モータ21と油圧源25a,25bとが接続される。その結果、作動油が閉回路45内を循環するように構成される。また、昇降用の回路(閉回路45)内の構成機器を減らすことができ、抵抗による発熱を抑えられる。
【0024】
閉回路45は、図4に示すように、フラッシング機構57と、リリーフ弁59と、第1及び第2チェック弁61,61と、第1及び第2電磁切替弁63,63とを備える。フラッシング機構57は、チャージ圧以上の余剰の作動油を補助タンク71に戻すものであり、フラッシング弁57a及びフラッシング用リリーフ弁57bから構成されている。フラッシング弁57aは、油圧モータ21の連通経路47aと連通経路47bとの間に配置される。フラッシング用リリーフ弁57bは、第1ライン65aを介してフラッシング弁57aと接続され、第2ライン65bを介して補助タンク71と接続されている。
【0025】
チャージ圧源27は、油圧モータ21及びブレーキ機構31に作動油を供給するものであり、補助タンク71と、チャージポンプ73と、電動機75とから構成される。補助タンク71、チャージポンプ73及び電動機75は、一体的に連結されたユニットとして構成される。補助タンク71は、解放型又は密閉型のタンクであり、吸込管路77を介してチャージポンプ73に接続される。吸込管路77には、油圧フィルタ77aが設けられている。また、補助タンク71は、油圧モータ21から漏れた作動油を貯留するために、第1接続ライン79aを介して油圧モータ21と接続され、ブレーキ機構31から戻る作動油を貯留するために、第2接続ライン79bを介してブレーキ機構31と接続され、第3接続ライン79cを介してチャージポンプ73の吐出管路85と接続される。第1接続ライン79aには、チェック弁81が設けられている。第3接続ライン79cには、リリーフ弁83が設けられている。チャージポンプ73は、吐出管路85の第1経路85aを介してブレーキ機構31に接続され、吐出管路85の第2経路85bを介して後述する密閉タンク29に接続される。吐出管路85の第1経路85aには、電磁切替弁87a及びチェック弁87bが設けられ、第2経路85bには、チェック弁89aが設けられている。電動機75は、チャージポンプ73の軸部に連結される出力軸75a(図4参照)を有する。電動機75は、通常状態時、操作盤33の制御電源(単相電源)で作動でき、一方、停電時、無停電電源装置(単相電源)、小型のポータブル発電機の単相電源、又は、バッテリの直流電源によって作動でき、操作盤33と電気的に接続され、操作盤33によって動作制御されている。
【0026】
密閉タンク29は、油圧モータ21の、扉体3の降下時における吸込側に作動油を送るために所定量の作動油を貯留したものであり、互いに接続された、細長い略円筒状を呈する2つの密閉タンク29a,29bから構成される。2つの密閉タンク29a,29b内には、扉体3の自重によって、扉体3が完全に降下するまで、油圧モータ21と密閉タンク29とを接続する閉じた油圧回路に循環して、冷却に必要な作動油が貯留されている。ここで、図3を参照して、2つの密閉タンク29a,29bは、減速機23の上部に隣接して配置される。そして、2つの密閉タンク29a,29bのそれぞれの上部には、2つの油圧源25のそれぞれが隣接して配置され、2つの密閉タンク29a,29bに架けるようにチャージ圧源27が隣接して配置されている。これにより、油圧モータ21、減速機23、油圧源25、チャージ圧源27及び密閉タンク29a,29bは、それぞれが一体化した油圧駆動ユニット7として構成される(図2及び図3参照)。
【0027】
密閉タンク29(29a,29b)は、図4に示すように、閉回路45に接続されている。具体的には、密閉タンク29aは、自重降下装置97を介して油圧モータ21の連通経路47aと接続されている。一方、密閉タンク29bは、接続ライン99を介して油圧モータ21の連通経路47b、及び、油圧源25の接続経路49b,50bと連通されている。この構成により、密閉タンク29と油圧モータ21とは、閉じた油圧回路で接続されることとなる。密閉タンク29bは、排出管路119を介して補助タンク71と接続されている。排出管路119には、安全弁119aが設けられている。自重降下装置97は、密閉タンク29aと油圧モータ21の連通経路47aとを接続する自重降下管路101と、自重降下管路101に設けられた流量調整弁(流量制御弁)101a、仕切弁101b、リリーフ弁101c、電磁切替弁101d及びチェック弁101eとを備えている。流量調整弁101aは、扉体3の自重降下時、その開度を制御することにより、扉体3の降下速度を適宜変更させることができる。接続ライン99には、仕切弁99a及びチェック弁99bが設けられており、閉回路45の圧力が密閉タンク29に作用しない構造となっている。
【0028】
次に、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aを用いて、動力電源が喪失していない通常の状態において扉体3を昇降させる方法、及び、動力電源が喪失した状態(停電時)において扉体3を自重降下させる方法を図4に基づいて説明する。
まず、動力電源が喪失していない通常の状態において、扉体3を昇降させる方法について説明する。扉体3を昇降させないときには、ブレーキ機構31が油圧モータ21の出力軸21aを拘束して扉体3をその自重で降下させないようしている。このため、扉体3を昇降させるときには、作業者が操作盤33を操作して、チャージ圧源27の電動機75を回転駆動させて、この回転駆動により、電動機75と連結されるチャージポンプ73を駆動させて、補助タンク71から作動油を吸込み、吐出管路85の第1経路85bを介して、作動油を密閉タンク29及び油圧モータ21の連通経路47bに供給して、チャージ圧を作用させる。
【0029】
続いて、操作盤33の制御により、油圧源25の電動機39a,39bに通電して、サーボロック状態とする。そして、閉回路45の第1及び第2電磁切替弁63,63を開状態とすると共に、段階的に電動機39a,39bの回転を上げながら、吐出管路85の第1経路85aに設けられた電磁切替弁87aを開状態にし、油圧モータ21の出力軸21aに対するブレーキ機構31の拘束を解除して、油圧モータ21を駆動可能な状態にさせる。そして、電動機39a,39bの回転駆動により、ポンプ37a,37bが駆動されて、閉回路45内の作動油を、扉体3の上昇方向(図4の矢印参照)、すなわち、油圧源25のポンプ37a,37bの一方(図4の紙面左側)から接続経路49a,50a及び連通経路47aを介して油圧モータ21の一方のポート(図4の紙面左側)に供給される方向に送油することで、扉体3が上昇するようになる。一方、閉回路45内の作動油を、扉体3の降下方向(図4の矢印参照)、すなわち、油圧源25のポンプ37a,37bの他方(図4の紙面右側)から接続経路49b、50b及び連通経路47bを介して油圧モータ21の他方のポート(図4の紙面右側)に供給される方向に送油することで、扉体3が降下するようになる。ここで、作動油が油圧モータ21に流れるとき、油圧モータ21から漏れる作動油が第1接続ライン79aを介して、チャージ圧源27の補助タンク71に流れる。その結果、油圧モータ21と油圧源25との間を循環する作動油の流量が減少することとなる。作動油の減少分は、チャージ圧源27のチャージポンプ73が駆動されていることで、補助タンク71内の作動油を吸込み、吐出管路85の第2経路85bを介して密閉タンク29aに作動油を供給する。その結果、密閉タンク29a内の作動油が密閉タンク29bに流れ、密閉タンク29b内の作動油が接続ライン99を介して油圧モータ21に供給される。これにより、油圧モータ21によって生じる作動油の減少分を補うことができる。
【0030】
そして、作動油の循環によって、油圧モータ21の出力軸21aの回転駆動力が、減速機23の出力軸23aから、ピニオンギヤ23b、ドラムギヤ9a、回転軸9bを介してドラム9に伝達する。その結果、ドラム9によって、ワイヤロープ13を巻き取り、又は、引き出することで、扉体3を昇降させることができる。
【0031】
一方、災害等により停電が発生するなどして動力電源が喪失した場合、油圧源25が回転駆動できなくなるが、ブレーキ機構31によって、油圧モータ21の出力軸21aが拘束されているので、扉体3が意図せず自重降下を開始することはない。災害時の停電などに、三相電源を喪失したときには、操作盤33、チャージ圧源27の電動機75は、無停電電源装置や小型のポータブル発電機等の単相電源を用いることで作動させることができる。ここで、扉体3を自重降下させる際には、油圧モータ21が、扉体3の自重降下速度を適宜速度に調整する油圧制動装置としての油圧ポンプとして機能する。
【0032】
作業者が、操作盤33にて、扉体3を自重降下させるために適宜操作することで、チャージ圧源27の電動機75が回転駆動して、この回転駆動により、電動機75と連結されるチャージポンプ73を駆動させて、補助タンク71から作動油を吸込み、吐出管路85の第1経路85bを介して、密閉タンク29及び油圧モータ21の連通経路47bに作動油を供給して、チャージ圧を作用させる。また、閉回路45の第1及び第2電磁切替弁63,63は閉状態のままであり、自重降下装置97の電磁切替弁101dが開状態となる。そして、吐出管路85の第1経路85aに設けられた電磁切替弁87aが開状態となり、吐出管路85の第1経路85aを介して、作動油をブレーキ機構31に供給する。これにより、油圧モータ21の出力軸21aに対するブレーキ機構31の拘束が解除され、扉体3の自重降下が開始される。
【0033】
続いて、扉体3の自重降下に伴って、ドラム9に巻き取られたワイヤロープ13が引き出されて、ドラム9の回転軸9bから、ドラムギヤ9a、ピニオンギヤ23b、減速機23の出力軸23aを介して、油圧ポンプとして機能する油圧モータ21の出力軸21aが回転する。油圧モータ21の出力軸21aの回転に伴って、油圧モータ21が連通経路47bから吸込み、連通経路47aから作動油を吐出させる。そして、吐出された作動油は、自重降下装置97の自重降下管路101に流れる。このとき、油圧モータ21の吸込側(連通経路47b)が負圧となるので、チャージ圧源27(チャージポンプ73)によって、作動油を一定以上の圧力(チャージ圧)を油圧モータ21の吸込側にかけると共に、油圧モータ21から漏れる作動油を補うために、油圧モータ21から漏れる以上の作動油の流量を吐出している。
【0034】
そして、自重降下管路101に流れた作動油は、流量調整弁101a及び電磁切替弁101dを介して、密閉タンク29a内に流れる。このとき、自重降下管路101に流れる作動油の流量が流量調整弁101aにより絞られ制限されるため、油圧モータ21の出力軸21aの回転が制限されることとなる。これにより、ドラム9の回転軸9bの回転も制動させるので、扉体3の自重降下速度を安定させることができる。また、自重降下管路101内の作動油の圧力が予め設定された圧力より高くなった場合、自重降下装置97のリリーフ弁101cにより、自重降下管路101内の作動油を密閉タンク29aに流すことができる。
【0035】
続いて、密閉タンク29a内に流れた作動油によって、密閉タンク29a内に予め貯留された作動油が密閉タンク29bに流れる。そして、密閉タンク29bに流れた作動油によって、密閉タンク29b内に予め貯留された作動油が接続ライン99を介して、油圧モータ21の吸込側経路(連通経路47b)に流れる。このように、扉体3の自重降下の際、油圧モータ21の吐出側経路(連通経路47a)からの作動油は、自重降下装置97及び密閉タンク29を介して吸込側経路(連通経路47b)に流れる、すなわち、閉じた油圧回路内を循環することとなる。これにより、密閉タンク29a,29bにより、閉じた油圧回路内を冷却させながら、扉体3を最後まで自重降下させることができる。
【0036】
上記構成を有する水門開閉装置1Aによれば、次のような作用効果を得ることができる。
第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、災害により停電が発生するなどして動力電源が喪失した場合に扉体3を自重降下させるとき、自重降下装置97の自重降下管路101に設けられた流量調整弁101aによって、作動油の流量を絞ることで発熱が生じる。しかしながら、油圧モータ21と密閉タンク29とが、自重降下装置97によって、閉じた油圧回路で接続されており、密閉タンク29内には、扉体3の自重によって、油圧モータ21と密閉タンク29とを接続する閉じた油圧回路に循環して、冷却に必要な作動油が貯留されている。このため、密閉タンク29内の作動油が閉じた油圧回路に流れることで、閉じた油圧回路内を冷却することができる。また、密閉タンク29(29a,29b)は、扉体3の昇降用回路(閉回路45)内に設けられていないため、チャージ圧(例えば、1MPaの圧力)に耐えられる強度を有すればよいので、コストを抑えることができる。
【0037】
第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、油圧モータ21から漏れた作動油の油量以上を供給させれば、チャージ圧を作用させることができ、また、密閉タンク29で冷却させることから補助タンク71内の油量はわずかでよいので、補助タンク71を小型化することができる。また、チャージポンプ73は油圧モータ21から漏れた作動油、及び、扉体3の昇降時の油圧ポンプ37a,37bから漏れた作動油の油量以上を吐出させればよいので、小さな出力で作動油を吐出することができ、チャージポンプ73を小型化することができる。さらに、チャージポンプ73を駆動させる電動機75の出力が小さくなるため、単相モータや直流モータを用いることができことで、無停電電源装置や小型のポータブル発電機の単相電源やバッテリの直流電源を用いて作動することができる。その結果、チャージ圧源27全体として小型化とすることができる。これにより、油圧駆動ユニット7の重量が抑えられ、既設の水門設備に油圧駆動ユニット7を設置しても、水門設備の補強が不要となり、コストを抑えることができる。
【0038】
第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、自重降下装置97によって、密閉タンク29と油圧モータ21とを閉じた油圧回路で接続しているため、チャージポンプ73は油圧モータ21から漏れた作動油の油量以上を吐出することで、油圧モータ21の吸込側に一定以上の圧力(チャージ圧)をかけることでき、キャビテーションの発生を防ぐことができる。
【0039】
第1実施形態に係る水門開閉装置1Aの油圧駆動ユニット7は、2つの密閉タンク29a,29bが減速機23の上部に隣接して配置され、2つの密閉タンク29a,29bのそれぞれの上部に2つの油圧源25のそれぞれが隣接して配置され、2つの密閉タンク29a,29bに架けるようにチャージ圧源27が隣接して配置されていることで、それぞれが一体化したものとなる。これにより、油圧源25及びチャージ圧源27の配置場所が不要となり、コンパクトに配置することができる。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態に係る水門開閉装置1Bを図5及び図6を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態に係る水門開閉装置1Aに対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0041】
第2実施形態に係る水門開閉装置1Bは、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aに対して、チャージ圧源27に接続されるアキュムレータ107を備えていることで相違しており、他の構成は同一である。
具体的には、図5及び図6に示すように、チャージ圧源27には、アキュムレータ107が備えられている。アキュムレータ107は、水門開閉装置1B側で作業員の手動による扉体3の自重降下を行う場合に、チャージポンプ73の補助として設けられ、チャージポンプ73によって加圧された作動油を蓄えている。アキュムレータ107は、接続ライン109及び吐出管路85の第1経路85aを介して、ブレーキ機構31に接続され、接続ライン109及び吐出管路85の第2経路85bを介して、チャージポンプ73及び密閉タンク29(29a)に接続されている。また、アキュムレータ107は、排出ライン111を介して補助タンク71と接続されている。ここで、アキュムレータ107に蓄えられた作動油が補助タンク71に入るので、補助タンク71は、アキュムレータ107の容量に応じた容量となる。接続ライン109には、手動で切替操作可能な電動切替弁109aと、仕切弁109bとを備え、排出ライン111には、閉仕切弁111aを備えている。
【0042】
次に、第2実施形態に係る水門開閉装置1Bを用いて、扉体3を自重降下させる方法を図6に基づいて説明する。なお、動力電源が喪失していない通常の状態において扉体3を昇降させる方法は、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aと同様であるため省略する。
災害により停電が発生するなどして動力電源が喪失した場合、作業員が電動切替弁109aを手動操作で開状態にすることで、アキュムレータ107の作動油を接続ライン111及び吐出管路85の第1経路85aを介して、ブレーキ機構31に供給する。これにより、油圧モータ21の出力軸21aに対するブレーキ機構31の拘束が解除され、扉体3の自重降下が開始される。
【0043】
扉体3の自重降下に伴って、ドラム9に巻き取られたワイヤロープ13が引き出されて、ドラム9の回転軸9bから、ドラムギヤ9a、ピニオンギヤ23b、減速機23の出力軸23aを介して、油圧ポンプとして機能する油圧モータ21の出力軸21aが回転する。油圧モータ21の出力軸21aの回転に伴って、油圧モータ21が連通経路47bから吸込み、連通経路47aから作動油を吐出させる。そして、吐出された作動油は、自重降下装置97の自重降下管路101に流れる。このとき、油圧モータ21の吸込側(連通経路47b)が負圧となるので、アキュムレータ107によって、作動油を一定以上の圧力(チャージ圧)を油圧モータ21の吸込側にかけると共に、油圧モータ21から漏れる作動油を補うために、油圧モータ21から漏れる以上の作動油の流量を吐出している。これにより、キャビテーションの発生を防ぎつつ、油圧モータ21によって生じる作動油の減少分を補うことができる。
【0044】
そして、吐出された作動油が流量調整弁101a及び電磁切替弁101dを介して、密閉タンク29a内に流れる。このとき、自重降下管路101に流れる作動油の流量が流量調整弁101aにより絞られ制限されるため、油圧モータ21の出力軸21aの回転が制限されることとなる。これにより、ドラム9の回転軸9bの回転も制動させるので、扉体3の自重降下速度を安定させることができる。また、自重降下管路101内の作動油の圧力が予め設定された圧力より高くなった場合、自重降下装置97のリリーフ弁101cにより、自重降下管路101内の作動油を密閉タンク29aに流すことができる。そして、密閉タンク29a内に予め貯留された作動油が密閉タンク29bに流れ、密閉タンク29bに流れた作動油によって、密閉タンク29b内に予め貯留された作動油が接続ライン99を介して、油圧モータ21の吸込側経路(連通経路47b)に流れる。このように、扉体3の自重降下の際、油圧モータ21の吐出側経路(連通経路47a)からの作動油は、自重降下装置97及び密閉タンク29を介して吸込側経路(連通経路47b)に流れるので、作動油は、閉じた油圧回路内を循環することとなる。これにより、閉じた油圧回路内を冷却させながら、扉体3を最後まで自重降下させることができる。
【0045】
以上、上記構成を有する水門開閉装置1Bによれば、次のような作用効果を得ることができる。
作業員が、自ら電動切替弁109aを手動操作で開状態にすることで、アキュムレータ107の作動油が油圧モータ21及びブレーキ機構31に供給されるので、油圧モータ21へのチャージ及びブレーキ機構31の解放を行うことができる。このため、チャージポンプ73及び電動機75を使用しなくても、扉体3を自重降下させることができる。なお、この他は、第2実施形態に係る水門開閉装置1Bは、上述の第1実施形態に係る水門開閉装置1Aと同様の作用効果を奏することができる。
【0046】
次に、本発明の第3実施形態に係る水門開閉装置1Cを図7及び図8を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態に係る水門開閉装置1Aに対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0047】
本発明の第3実施形態に係る水門開閉装置1Cは、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aに対して、密閉タンク29の構成、及び、自重降下装置97が備えられていない点で相違しており、他の構成は同一である。
具体的には、本発明の第3実施形態に係る水門開閉装置1Cは、図7及び図8に示すように、動力電源が喪失していない通常の状態において扉体3を昇降させるためのみのものである。
【0048】
密閉タンク29(29c)は、1つの密閉タンクで構成され、接続ライン99を介して油圧モータ21の流通経路47b、及び、油圧源25の接続経路49b,50bと連通されている。密閉タンク29cは、排出管路119を介して補助タンク71と接続されている。排出管路119には、安全弁119aが設けられている。
【0049】
次に、第3実施形態に係る水門開閉装置1Cを用いて、扉体3を昇降させる方法を図8に基づいて説明する。
扉体3を昇降させないときには、ブレーキ機構31が油圧モータ21の出力軸21aを拘束して扉体3をその自重で降下させないようしている。このため、扉体3を昇降させるときには、作業者が操作盤33を操作して、チャージ圧源27の電動機75を回転駆動させて、この回転駆動により、電動機75と連結されるチャージポンプ73を駆動させて、補助タンク71から作動油を吸込み、吐出管路85の第1経路85bを介して、作動油を密閉タンク29c及び油圧モータ21の連通経路47bに供給して、チャージ圧を作用させる。
【0050】
続いて、操作盤33の制御により、油圧源25の電動機39a,39bに通電して、サーボロック状態とする。そして、閉回路45の第1及び第2電磁切替弁63,63を開状態とすると共に、段階的に電動機39a,39bの回転を上げながら、吐出管路85の第1経路85aに設けられた電磁切替弁87aを開状態にし、油圧モータ21の出力軸21aに対するブレーキ機構31の拘束を解除して、油圧モータ21を駆動可能な状態にさせる。そして、電動機39a,39bの回転駆動により、ポンプ37a,37bが駆動されて、閉回路45内の作動油を、扉体3の上昇方向(図8の矢印参照)、すなわち、油圧源25のポンプ37a,37bの一方(図8の紙面左側)から接続経路49a,50a及び連通経路47aを介して油圧モータ21の一方のポート(図8の紙面左側)に供給される方向に送油することで、扉体3が上昇するようになる。一方、閉回路45内の作動油を、扉体3の降下方向(図8の矢印参照)、すなわち、油圧源25のポンプ37a,37bの他方(図8の紙面右側)から接続経路49b、50b及び連通経路47bを介して油圧モータ21の他方のポート(図8の紙面右側)に供給される方向に送油することで、扉体3が降下するようになる。ここで、作動油が油圧モータ21に流れるとき、油圧モータ21から漏れる作動油が第1接続ライン79aを介して、チャージ圧源27の補助タンク71に流れる。その結果、油圧モータ21と油圧源25との間を循環する作動油の流量が減少することとなる。作動油の減少分は、チャージ圧源27のチャージポンプ73が駆動されていることで、補助タンク71内の作動油を吸込み、吐出管路85の第2経路85bを介して密閉タンク29cに作動油を供給する。その結果、密閉タンク29c内の作動油が接続ライン99を介して油圧モータ21に供給される。これにより、油圧モータ21によって生じる作動油の減少分を補うことができる。
【0051】
そして、油圧モータ21の出力軸21aの回転駆動力が、減速機23の出力軸23aから、ピニオンギヤ23b、ドラムギヤ9a、回転軸9bを介してドラム9に伝達する。これにより、ドラム9によって、ワイヤロープ13を巻き取り、又は、引き出すことで、扉体3を昇降させることができる。
【0052】
上記構成を有する水門開閉装置1Cによれば、次のような作用効果を得ることができる。
第3実施形態に係る水門開閉装置1Cでは、扉体3が昇降する高さ(揚程)が高い設備で連続して運転する時間が長い場合でも、チャージポンプ73から供給される作動油によって、密閉タンク29c内の作動油が閉回路45内に流れ、その作動油が閉回路45内を循環することで、閉回路45内を冷却させることができる。
【0053】
第3実施形態に係る水門開閉装置1Cでは、密閉タンク29cは、吐出管路85の第2経路85bを介してチャージ圧源27(チャージポンプ73)と接続されており、第2経路85bには、密閉タンク29cからチャージ圧源27への作動油の流れを防ぐチェック弁89aが設けられているため、密閉タンク29cとチャージ圧源27とが閉じた油圧回路で接続されている。このため、密閉タンク29cの圧力が逃げることがなく、密閉タンク29cの圧力を維持することができる。また、密閉タンク29cは、タンク内に余分な空隙が必要なく、小型化することができる。これにより、油圧駆動ユニット7の重量が抑えられ、既設の水門設備に油圧駆動ユニット7を設置しても、水門設備の補強が不要となり、コストを抑えることができる。なお、万一、密閉タンク29cから作動油が漏れた場合、密閉タンク29cは、閉じた油圧回路であり、作動油が漏れ続けることがないため、オープン構造の補助タンク71の容量に余裕を持たせただけの小容量のオイルパン、防油堤等で作動油を河川、ダム湖等に流出しないように防止すればよい。
【0054】
なお、本発明の第1~第3実施形態に係る水門開閉装置1A,1B,1Cにおいて、水門開閉装置1A,1B,1Cがワイヤロープ式であるが、チェーン式、ラック式等の他の水門開閉装置であってもよい。
【0055】
本発明の第1~第3実施形態に係る水門開閉装置1A,1B,1Cにおいて、油圧モータ21、減速機23、油圧源25、チャージ圧源27及び密閉タンク29は、それぞれが一体化した油圧駆動ユニット7として構成されているが、例えば、密閉タンク29やチャージ圧源27を減速機23から分離又は着脱可能に取り付けてもよく、分離した油圧駆動ユニット7であってもよい。また、減速機23の出力軸23aのトルクによっては、減速機23を設けずに、油圧モータ21の出力軸21aを直接ピニオンギヤ23b若しくは回転軸9bに接続するようにしてもよい。
【0056】
本発明の第1~第3実施形態に係る水門開閉装置1A,1B,1Cにおいて、ブレーキ機構31は、油圧モータ21と減速機23と一体的に連結されているが、油圧モータ21及び減速機23から分離して配置してもよい。
【0057】
本発明の第1及び第2実施形態に係る水門開閉装置1A,1Bでは、密閉タンク29(29a,29b)が2つ設けられ、本発明の第3実施形態に係る水門開閉装置1Cでは、密閉タンク29(29c)が1つ設けられているが、密閉タンク29の設置数は適宜変更することができる。
【0058】
本発明の第1~第3実施形態に係る水門開閉装置1A,1B,1Cにおいて、密閉タンク29(29b,29c)は、接続ライン99を介して、油圧モータ21の吸込側(連通経路47b)に接続されているが、閉回路45にシャトル弁等を設けて、閉回路45、すなわち、油圧モータ21の吐出側(連通経路47a)及び吸込側(連通経路47b)に接続されてもよい。
【0059】
本発明の第1及び第2実施形態に係る水門開閉装置1A,1Bにおいて、流量調整弁(流量制御弁)101aは、自重降下管路101に1つ設けられているが、流量調整弁101aの個数を適宜変更して自重降下速度を可変させることができる。
【0060】
本発明の第1~第3実施形態に係る水門開閉装置1A,1B,1Cでは、油圧を用いているが、他の液圧を用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B,1C…水門開閉装置、3…扉体、21…油圧モータ、25a,25b…油圧源、29…密閉タンク、37a,37b…ポンプ、39a,39b…電動機、45…閉回路、71…補助タンク、73…チャージポンプ
【要約】
【課題】油圧回路として閉回路を採用しつつ、作動油の温度上昇を抑制して小型化、軽量化が可能な水門開閉装置及びその油圧駆動ユニットを提供する。
【解決手段】水門を開閉する水門開閉装置1Aは、水門の扉体3に連結されて、扉体3を昇降させる油圧モータ21と、ポンプ37a,37b及びポンプ37a,37bを駆動する電動機39a,39bを含み、吐出量及び吐出方向を制御可能な油圧源25a,25bと、油圧モータ21とポンプ37a,37bとを接続する閉回路45と、閉回路45に接続される密閉タンク29と、油圧モータ21から漏れる作動油を貯留する補助タンク71と、補助タンク71の作動油を加圧して密閉タンク29に供給するチャージポンプ73と、を備える。これにより、密閉タンク29内の作動油が閉回路45内に流れるため、閉回路45を冷却することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8