(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-02-14
(54)【発明の名称】弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュール
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20220118BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20220118BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20220118BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20220118BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H03H9/145 D
H03H9/25 A
H03H9/25 C
H03H9/64 Z
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
(21)【出願番号】P 2021086641
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2021-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】李 鉄
【審査官】橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/099963(WO,A1)
【文献】特開2004-056295(JP,A)
【文献】特開2020-043386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145
H03H 9/25
H03H 9/64
H03H 9/17
H03H 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板の上に設けられ、前記配線基板と電気的に接続されたデバイスチップと、
前記配線基板と前記デバイスチップの間に空間を残しつつ、前記デバイスチップを封止する封止樹脂と、を備え、
前記デバイスチップは、前記配線基板に対向する主面に、
配線パターンと、
前記配線パターンが設けられた領域である配線領域に周期的に形成された複数の電極と、
前記配線領域のうち、前記複数の電極よりも前記配線領域の外縁に近い位置に、前記配線パターンから突出して設けられた液体侵入防止パターンと、を有
し、
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンから略垂直に伸びる第1部分と、前記第1部分の先端から前記デバイスチップの外縁方向に伸びる第2部分と、を有する弾性波デバイス。
【請求項2】
前記複数の電極は、弾性表面波を励起する共振器と、前記共振器に隣接する反射器と、を有し、
前記液体侵入防止パターンは、前記弾性表面波の伝搬方向と直交する直交方向と非平行に設けられた請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記配線パターンは、バンプパッドと、前記バンプパッドを前記複数の電極に電気的に接続する配線部分と、を有し、前記液体侵入防止パターンは前記配線部分から突出して設けられた請求項1又は2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記配線パターンは、バンプパッドと、前記バンプパッドを前記複数の電極に電気的に接続する配線部分と、を有し、前記液体侵入防止パターンは前記バンプパッドから突出して設けられた請求項1又は2に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記共振器と前記反射器の間の領域を通過する弾性表面波の伝搬方向に直交する線上に前記第1部分がある、請求項2に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記液体侵入防止パターンは平面視で屈曲した形状を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンの1つの辺に複数形成された請求項1から6のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンのうち、前記複数の電極の弾性表面波の伝搬方向と略垂直をなす辺にのみ設けられた請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンより細く形成された請求項1から8のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記デバイスチップは、圧電基板と、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスからなる支持基板と、が接合された基板を有する請求項1から9のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項11】
前記封止樹脂は熱硬化性樹脂である請求項1から10のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項12】
複数の弾性表面波共振器を有するバンドパスフィルタが形成された第2デバイスチップを備えた請求項1から11のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項13】
複数の音響薄膜共振器を有するバンドパスフィルタが形成された第2デバイスチップを備えた請求項1から11のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを備えたモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールに関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、弾性波デバイスを開示する。当該弾性波デバイスは、弾性波デバイスと基板の間に中空部を形成するとともに、その中空部に外部から封止樹脂が侵入することを阻止するダムを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面視においてIDT(Interdigital Transducer)電極および接続部を囲むようにダムを形成することで、封止樹脂が弾性波デバイスの電極配置部分に進入することを抑制し得る。しかしながら、ダムは大きなパターンであり、ダムの形成によってデザインエリアが減ったり、デバイスが大型化したりする。また、ダムが金属パターンである場合、カップリングによってデバイスの特性に影響を及ぼしてしまう。さらに、デバイスチップの外縁に沿って形成されるダムでは、封止樹脂の侵入を抑制するために一定の高さが必要となるので、製造が容易ではない。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、弊害なく又は弊害を減らしつつ、封止樹脂が電極にまで侵入することを抑制する弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる弾性波デバイスは、
配線基板と、
前記配線基板の上に設けられ、前記配線基板と電気的に接続されたデバイスチップと、
前記配線基板と前記デバイスチップの間に空間を残しつつ、前記デバイスチップを封止する封止樹脂とを備え、
前記デバイスチップは、前記配線基板に対向する主面に、
配線パターンと、
前記配線パターンが設けられた領域である配線領域に周期的に形成された複数の電極と、
前記配線領域のうち、前記複数の電極よりも前記配線領域の外縁に近い位置に、前記配線パターンから突出して設けられた液体侵入防止パターンと、を有し、
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンから略垂直に伸びる第1部分と、前記第1部分の先端から前記デバイスチップの外縁方向に伸びる第2部分と、を有する。
【0007】
前記複数の電極は、弾性表面波を励起する共振器と、前記共振器に隣接する反射器と、を有し、前記液体侵入防止パターンは、前記弾性表面波の伝搬方向と直交する直交方向と非平行に設けられたことが、本開示の一形態とされる。
【0008】
前記配線パターンは、バンプパッドと、前記バンプパッドを前記複数の電極に電気的に接続する配線部分と、を有し、前記液体侵入防止パターンは前記配線部分から突出して設けられたことが、本開示の一形態とされる。
【0009】
前記配線パターンは、バンプパッドと、前記バンプパッドを前記複数の電極に電気的に接続する配線部分と、を有し、前記液体侵入防止パターンは前記バンプパッドから突出して設けられたことが、本開示の一形態とされる。
【0010】
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンから略垂直に伸びる第1部分と、前記第1部分の先端から前記デバイスチップの外縁方向に伸びる第2部分と、を有することが、本開示の一形態とされる。
【0011】
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンから略垂直に伸びる第1部分と、前記第1部分の先端から前記デバイスチップの外縁方向に伸びる第2部分と、を有し、前記共振器と前記反射器の間の領域を通過する弾性表面波の伝搬方向に直交する線上に前記第1部分があることが、本開示の一形態とされる。
【0012】
前記液体侵入防止パターンは屈曲した形状を有することが、本開示の一形態とされる。
【0013】
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンの1つの辺に複数形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0014】
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンのうち、前記複数の電極の弾性表面波の伝搬方向と略垂直をなす辺にのみ設けられたことが、本開示の一形態とされる。
【0015】
前記液体侵入防止パターンは、前記配線パターンより細く形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0016】
前記デバイスチップは、圧電性基板と、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスからなる基板と、が接合された基板を有することが、本開示の一形態とされる。
【0017】
前記封止樹脂は熱硬化性樹脂であることが、本開示の一形態とされる。
【0018】
複数の弾性表面波共振器を有するバンドパスフィルタが形成された第2デバイスチップを備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0019】
複数の音響薄膜共振器を有するバンドパスフィルタが形成された第2デバイスチップを備えたことが、本開示の一形態とされる。
【0020】
前記の弾性波デバイスを備えるモジュールが、本開示の一形態とされる。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、弊害なく又は弊害を減らしつつ、封止樹脂が電極にまで侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態1における弾性波デバイスの断面図である。
【
図2】実施の形態1におけるデバイスチップの主面を示す図である。
【
図3】実施の形態1におけるデバイスチップの一部拡大図である。
【
図4】実施の形態1における封止樹脂の例を示す図である。
【
図5】実施の形態1における配線パターンと複数の電極の例を示す図である。
【
図6】比較例に係る封止樹脂の侵入を示す図である。
【
図7】実施の形態2におけるデバイスチップの一部拡大図である。
【
図8】実施の形態3におけるデバイスチップの一部拡大図である。
【
図9】実施の形態4におけるデバイスチップの一部拡大図である。
【
図10】実施の形態5におけるデバイスチップの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0024】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における弾性波デバイスの断面図である。弾性波デバイス1は配線基板2を備えている。一例によれば、配線基板2は樹脂を含む多層基板である。別の例によれば、配線基板2は複数の誘電体層からなる低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)多層基板である。配線基板2の内部にコンデンサ又はインダクタ等の受動素子を形成してもよい。
【0025】
図1の例では、配線基板2は部品実装面である上面に複数の導電性パッド2bを備えている。配線基板2の下面は例えばマザー基板への取り付け面である。配線基板2の下面には複数の導電性パッド2cが設けられている。導電性パッド2bと導電性パッド2cは対応するものどうしが内部導体2a又はビアホール導体で接続される。
【0026】
配線基板2の上には、配線基板2と電気的に接続されたデバイスチップ3がある。デバイスチップ3は表面弾性波デバイスチップである。デバイスチップ3は、圧電材料で形成された圧電基板3aを備えている。一例によれば、圧電基板3aは、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムまたは水晶などの圧電単結晶で形成された基板である。別の例によれば、圧電基板3aは、圧電セラミックスで形成された基板である。さらに別の例によれば、圧電基板3aは、圧電基板と支持基板とが接合された基板である。支持基板は、例えば、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスで形成された基板である。
【0027】
一例によれば、圧電基板3aは機能素子が形成される基板である。例えば、デバイスチップ3の配線基板2に対向する面である主面(下面)において、受信フィルタと送信フィルタとが形成される。
【0028】
受信フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、受信フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタである。
【0029】
送信フィルタは、所望の周波数帯域の電気信号が通過し得るように形成される。例えば、送信フィルタは、複数の直列共振器と複数の並列共振器からなるラダー型フィルタである。
【0030】
図1には、デバイスチップ3の主面に、配線パターン3bと、周期的に形成された複数の電極3cとが形成された例が示されている。一例によれば複数の電極3cは櫛歯状の電極指であるIDT電極である。給電側のリード端子からIDT電極に高周波電界を印加することで弾性表面波を励起し、弾性表面波を圧電作用によって高周波電界に変換することによってフィルタ特性を得ることができる。
【0031】
配線パターン3bと導電性パッド2bはバンプ4によって電気的に接続されている。バンプ4は、例えばAu、導電性接着剤又は半田である。
【0032】
弾性波デバイス1は封止樹脂5を備えている。封止樹脂5は、配線基板2とデバイスチップ3の間に空間6を残しつつ、デバイスチップ3を封止する。一例によれば、配線基板2にデバイスチップ3を実装し、その後デバイスチップの上にデバイスチップ3にまたがるように樹脂シートをのせる。一例によれば、樹脂シートは液状のエポキシ樹脂をシート化したものである。別の例によれば、樹脂シートは、エポキシ樹脂とは異なるポリイミドなどの合成樹脂とすることができる。樹脂シートの上面にポリエチレンテレフタレート(PET)を材料とする保護フィルムを設けたり、樹脂シートの下面にポリエステルを材料とするベースフィルムを設けたりすることができる。
【0033】
デバイスチップ3の上に樹脂シートをのせることで、樹脂シートがデバイスチップ3に仮固定される。そして、デバイスチップ3、樹脂シート及び配線基板2を有する構造を、少なくとも樹脂シートの軟化温度まで加熱した上ローラと下ローラの間を通することで、樹脂シートがデバイスチップ3の側面と配線基板2の上面に充填される。これは熱ローララミネート法と呼ばれる。
図1に示すようなラミネートができる方法であれば、熱ローララミネート法以外の方法を採用してもよい。
【0034】
その後、樹脂シートを完全に硬化させるために、プレス形成工程へと処理を進める。例えば、樹脂の硬化温度まで加熱された上金型と下金型を有するプレス機によって、樹脂シートを配線基板2の方向に押圧することで、空間6のエアーの膨張を抑制しつつ、樹脂を硬化させる。
【0035】
この例によれば、樹脂シートを一旦軟化温度まで加熱昇温させてから加圧変形させてデバイスチップ3の外面と配線基板2の上面に密着させた後に、硬化温度まで加熱昇温させて形状を固定することで、封止樹脂5が形成される。封止樹脂5は例えば、空間6を気密空間とし、配線基板2に対するデバイスチップ3の固定力を補強する。
図1の例では、空間6は、デバイスチップ3の主面と配線基板2の上面と封止樹脂5によって囲まれた気密空間である。配線基板2に実装するデバイスチップの数は2つ以上とすることができる。一例によれば、封止樹脂5は熱硬化性樹脂である。
【0036】
図2は、デバイスチップ3の主面の構成例を示す図である。この例では、デバイスチップ3は、主面に、配線パターン3b、3dを備えている。配線パターンは、銀、アルミニウム、銅、チタン、パラジウムなどの適宜の金属もしくは合金により形成される。別の例によれば、配線パターンは、複数の金属層を積層してなる積層金属膜により形成される。例えば、配線パターンの厚みは150nmから400nmである。
【0037】
配線パターンが設けられた領域は配線領域を構成している。
図2では、配線領域10は破線で囲まれた矩形領域である。配線パターンはこの配線領域10の中に形成され配線領域10の外に形成されない。配線領域10には、複数の電極3cが周期的に形成されている。複数の電極3cによって弾性表面波フィルタ(SAWフィルタ)が提供されている。複数の電極3cは、例えば、トランスバーサル型SAWフィルタ、又は、反射器を有するSAW共振器型フィルタを構成する。
【0038】
図2の例では、配線パターン3bはバンプパッドであり、配線パターン3dはバンプパッドを複数の電極3cに電気的に接続する配線部分である。配線パターンの形状と、分布は、設計に応じて任意の変形が可能である。
【0039】
配線領域10の中には、配線パターンから突出して設けられた液体侵入防止パターン6、7が設けられている。液体侵入防止パターン6、7は、複数の電極3cよりも配線領域10の外縁に近い位置に設けられる。液体侵入防止パターンは、封止樹脂の液体成分が配線領域10の内側に進入したときに、当該液体成分が複数の電極3cに到達することを阻止又は抑制するものである。そのため、液体侵入防止パターンは、配線領域10の外縁と、複数の電極3cの間にある。
図2の例では、液体侵入防止パターン6は、配線パターン3d(配線部分)から突出して設けられ、図中左側から配線領域10の内側に侵入する液体成分が複数の電極3cに到達することを防ぐ。液体侵入防止パターン7は、配線パターン3b(バンプパッド)から突出して設けられ、図中上側から配線領域10の内側に進入する液体成分が複数の電極3cに到達することを防ぐ。
図2の配線パターンと、複数の電極と、液体侵入防止パターンのレイアウトは例示であり、任意の変形が可能である。
【0040】
図3は、液体侵入防止パターンの形状例を示す図である。複数の電極3cは、弾性表面波を励起する共振器31と、共振器に隣接する反射器32と、を有している。弾性表面波の伝搬方向はy方向である。液体侵入防止パターン6は、配線パターン3dから略垂直に伸びる第1部分6Aと、第1部分6Aの先端からデバイスチップの外縁方向に伸びる第2部分6Bと、を有する。これにより、封止樹脂5の液体成分がx負方向から配線パターン3dに沿って配線領域10に侵入したときに、当該液体成分は第1部分6Aと第2部分6Bによってせき止められ、当該液体成分が複数の電極3cまで到達することを防止できる。ここで、弾性表面波の伝搬方向はy方向である。そのため、第1部分6Aは、y方向と直交する直交方向であるx方向と非平行に設けられている。仮に第1部分がx方向と平行に設けられると、その第1部分は液体成分をせき止めることに寄与しない。よって、第1部分は、x方向と非平行に設ける必要がある。
【0041】
図3の例では、共振器31と反射器32の間の領域を通過する弾性表面波の伝搬方向に直交する線上に第1部分6Aがある。これにより、共振器31と反射器32の間に、液体成分が侵入することを防止できる。
【0042】
図4は、封止樹脂が配線領域10の中に入り込んだ例を示す図である。この例では、封止樹脂の液体成分5bが、配線パターン3dの段差、すなわち配線パターン3dの側面に沿って配線領域10の中に侵入している。仮に、液体侵入防止パターン6がなければ、液体成分5bが複数の電極3cにまで到達し、IDTのスペースに侵入し得る。しかしながら実施の形態1に係る弾性波デバイスでは、液体侵入防止パターン6がその液体成分5bをせき止め、液体成分5bが複数の電極3cに到達することを防止している。
【0043】
さらに、
図2に示す液体侵入防止パターン7は、配線パターン3bに沿って配線領域10の中に入り込んだ液体成分をせき止め、液体成分が複数の電極3cに到達することが防止される。
【0044】
図2、3の例では液体侵入防止パターンは平面視で屈曲した形状を有する。これにより相当量の液体成分が配線領域10に侵入しても液体侵入防止パターンで液体成分をせき止めることができる。
図2、3の例では、液体侵入防止パターン6が第1部分6Aと第2部分6Bを有するが、第2部分を省略してもよい。すなわち、液体侵入防止パターンを直線的な形状としてもよい。
【0045】
一例によれば、液体侵入防止パターンは、配線パターンより細く形成することができる。液体侵入防止パターンを細くすることは、設計自由度を高める。よって液体侵入防止パターンを例えばIDTの近くに設けることができる。また、液体侵入防止パターンを小さくすることで、液体侵入防止パターンが弾性波デバイスの特性に与える影響を小さくすることができる。
【0046】
液体侵入防止パターンは、配線パターンと同一プロセスで形成することができる。同一プロセスで配線パターンと液体侵入防止パターンを形成することは、プロセスの簡素化を可能とする。別の例によれば、液体侵入防止パターンを複数の電極3cと同じ材料で、複数の電極3cと同時に形成することができる。この場合、IDTと液体侵入防止パターンは同じ材料で形成される。さらに別の例によると、液体侵入防止パターンは絶縁体で形成することができる。この場合、液体侵入防止パターンが、弾性波デバイスの特性に与える影響を無くす又は小さくすることができる。
【0047】
一例によれば、液体侵入防止パターンは、配線パターンのうち、複数の電極の弾性表面波の伝搬方向と略垂直をなす辺にのみ設けることができる。すなわち、
図4の例では、配線パターンのうち、弾性表面波の伝搬方向であるy方向と垂直をなすx軸に平行又は略平行な辺にのみ、液体侵入防止パターンを設けることができる。
図4の左側又は右側からx正方向又はx負方向に液体成分が進み、配線領域の中に入ると、その液体成分は複数の電極の間にまで容易に到達し、デバイスチップへの悪影響が大きい。よって、この場合、配線パターンのうちx軸と略平行な辺に液体侵入防止パターンを設けることが効果的である。
【0048】
図5は、配線パターンのレイアウト例を示す図である。配線パターンは白色の部分である。このように複雑な配線パターンに液体侵入防止パターンを設けるには、液体侵入防止パターンを小さくする必要がある。
図5の任意の位置に液体侵入防止パターンを設けて液体成分が複数の電極に到達することを防止できる。
【0049】
図6は、比較例に係る弾性波デバイスの一部拡大図である。この比較例では、液体侵入防止パターンがないので、封止樹脂の液体成分5bが配線パターン3dに沿って配線領域に侵入し、当該液体成分5bがIDTのスペースにまで到達してしまう。
【0050】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係るデバイスチップ主面の構成例を示す図である。配線パターン3dに共振器31と反射器32が接している。液体侵入防止パターン6は、液体成分が、反射器32に到達することを防止する。
【0051】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係るデバイスチップ主面の構成例を示す図である。上側の配線パターン3dに液体侵入防止パターン6が接続され、下側の配線パターン3dに液体侵入防止パターン8が接続されている。これにより、図中左側からx正方向に液体成分が進むことを抑制できる。
【0052】
実施の形態4.
図9は、実施の形態4に係るデバイスチップの主面の構成例を示す図である。液体侵入防止パターン6は、屈曲部を備えず、直線的に形成された第1部分6Aのみを有している。この場合、簡素なパターンによって設計自由度を高めることができる。
【0053】
実施の形態5.
図10は、実施の形態5に係るデバイスチップの主面の構成例を示す図である。液体侵入防止パターン6は、配線パターン3dの1つの辺に2つ形成されている。2つの液体侵入防止パターン6によって、液体成分の侵入を確実に抑制することができる。なお、配線パターンの1つの辺に3つ以上の液体侵入防止パターンを設けることができる。
【0054】
ここまでの実施の形態では、1つのデバイスチップに着目して説明したが、別の例によれば、複数のデバイスチップを封止樹脂で封止した弾性波デバイスを提供することができる。例えば、弾性波デバイスは、複数の弾性表面波共振器を有するバンドパスフィルタが形成された第2デバイスチップを備えることができる。さらに別の例によれば、弾性波デバイスは、複数の音響薄膜共振器を有するバンドパスフィルタが形成された第2デバイスチップを備えることができる。さらに別の例によれば、弾性波デバイスは、複数の並列共振器をさらに備えるラダー型フィルタを含むことができる。
【0055】
上述したいずれか1つの弾性波デバイスを有するモジュールを提供することができる。モジュールは、配線基板と集積回路部品ICと弾性波デバイスとインダクタと封止部とを備え得る。一例によれば、集積回路部品ICは、配線基板の内部に実装される。集積回路部品ICは、スイッチング回路とローノイズアンプとを含む。弾性波デバイスは、配線基板の主面に実装される。インダクタも、配線基板の主面に実装される。インダクタはインピーダンスマッチングのために実装される。例えば、インダクタは、Integrated Passive Device(IPD)である。封止部は、弾性波デバイスを含む複数の電子部品を封止する。
【0056】
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が説明されたが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0057】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。
【0058】
特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0059】
本開示で使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0060】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0061】
前後左右、頂底上下、横縦、表裏への言及は、いずれも、記載の便宜を意図する。当該言及は、本開示の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は、例示にすぎない。
【符号の説明】
【0062】
1 弾性波デバイス、 2 配線基板、 3 デバイスチップ、 3a 圧電基板、 3b,3d 配線パターン、 3c 複数の電極、 4 バンプ、 5 封止樹脂、 10 配線領域、 31 共振器、 32 反射器
【要約】
【課題】弊害なく又は弊害を減らしつつ、封止樹脂が電極にまで侵入することを抑制することができる弾性波デバイスとモジュールを提供する。
【解決手段】弾性波デバイスは、配線基板と、前記配線基板の上に設けられ、前記配線基板と電気的に接続されたデバイスチップと、前記配線基板と前記デバイスチップの間に空間を残しつつ、前記デバイスチップを封止する封止樹脂と、を備え、前記デバイスチップは、前記配線基板に対向する主面に、配線パターンと、前記配線パターンが設けられた領域である配線領域に周期的に形成された複数の電極と、前記配線領域のうち、前記複数の電極よりも前記配線領域の外縁に近い位置に、前記配線パターンから突出して設けられた液体侵入防止パターンと、を有する。
【選択図】
図2