(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ポリペプチドを発現する宿主細胞を選択するための発現構築物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220118BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220118BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220118BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20220118BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220118BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K14/705 ZNA
C12P21/02 C
C12Q1/06
G01N33/48 M
G01N33/53 N
(21)【出願番号】P 2016554490
(86)(22)【出願日】2015-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2015054331
(87)【国際公開番号】W WO2015128509
(87)【国際公開日】2015-09-03
【審査請求日】2018-02-05
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-07
(32)【優先日】2014-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510168852
【氏名又は名称】イクノス サイエンシズ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】アイビシャー―グミ,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】モレッティ,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ベルシンガー,マルタン
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】松野 広一
【審判官】田村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/151605(WO,A1)
【文献】特表2009-537124(JP,A)
【文献】国際公開第2009/059235(WO,A2)
【文献】NORTON P. A.,Nucleic Acids Res.,22(19)(1994),p.3854-3860
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15, C07K14, C12P21/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
BIOSIS/MEDLINE/CAplus/EMBASE(STN)
Uniprot/PDB/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’方向に、
プロモーターと、
目的のポリペプチドをコードする第1のエクソンと、
イントロン内のスプライスドナー部位とスプライスアクセプター部位との間に第1の停止コドンが位置する、スプライスドナー部位、イントロンおよびスプライスアクセプター部位と、
改変もしくは非改変非免疫グロブリン膜貫通領域から選択される膜貫通領域をコードする第2のエクソンと、
第2の停止コドンと、
ポリ(A)部位と
を含む発現構築物であって、
前記非免疫グロブリン膜貫通領域は、配列番号173のマウスB7-1膜貫通領域であり、
宿主細胞に侵入すると、前記第1および第2のエクソンが転写されることにより、目的のポリペプチドが発現され、所定割合の目的のポリペプチドが宿主細胞膜上に表面表示される、発現構築物。
【請求項2】
前記イントロンがポリ(A)部位を含む、請求項
1に記載の発現構築物。
【請求項3】
前記イントロンのスプライスアクセプター部位がポリ(Y)トラクトを含み、ポリ(Y)トラクトのY含量が、それにおけるピリミジン塩基の数を変更することにより改変される、請求項1
または2に記載の発現構築物。
【請求項4】
少なくとも1つの分岐点領域を含み、前記少なくとも1つの分岐点領域の配列が、分岐点領域の共通配列CTRAYY(配列番号347)に関して改変されている、請求項1から
3のいずれか一項に記載の発現構築物。
【請求項5】
イントロンのスプライスドナー部位の共通配列が改変されている、請求項1から
4のいずれか一項に記載の発現構築物。
【請求項6】
目的のポリペプチドが抗体重鎖またはその断片を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の発現構築物。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の発現構築物をコードするポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項
7に記載の1つまたは複数のポリヌクレオチドを含むクローニングまたは発現ベクター。
【請求項9】
請求項
8に記載の1つまたは複数のクローニングまたは発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項10】
抗体重鎖の発現のための請求項
6に記載の発現構築物をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および抗体軽鎖の発現のための発現構築物をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む、請求項
9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
抗体重鎖の発現のための請求項
6に記載の発現構築物をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、scFV-Fcの発現のための請求項
5に記載の発現構築物をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および抗体軽鎖の発現のための発現構築物をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む、請求項
9に記載の宿主細胞。
【請求項12】
ポリペプチドを産生する方法であって、培養物中で請求項
9から
11のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養することと、培養物から発現したポリペプチドを単離することとを含む、方法。
【請求項13】
目的のポリペプチドを発現する宿主細胞を選択する方法であって、
(i)請求項1に記載の発現構築物を宿主細胞にトランスフェクトすることと、
(ii)目的のポリペプチドを発現するのに適した条件下で宿主細胞を培養することと、
(iii)目的のポリペプチドの細胞膜発現を検出することと、
(iv)所望の発現レベルで細胞膜の表面上に目的のポリペプチドを表示する宿主細胞を選択することと
を含む、方法。
【請求項14】
目的のヘテロ多量体ポリペプチドを発現する宿主細胞を選択する方法であって、
(i)目的の第1のポリペプチドをコードする少なくとも1つの請求項1に記載の発現構築物および目的の第2のポリペプチドをコードする請求項1に記載の発現構築物を宿主細胞にコトランスフェクトすることと、
(ii)目的のヘテロ多量体ポリペプチドを発現するのに適した条件下で宿主細胞を培養することと、
(iii)目的のヘテロ多量体ポリペプチドの細胞膜発現を検出することと、
(iv)所望の発現レベルで細胞膜の表面上に所望の目的のヘテロ多量体ポリペプチドを表示する宿主細胞を選択することと
を含む、方法。
【請求項15】
二重特異性抗体を発現する宿主細胞を選択する方法であって、
(i)抗体重鎖をコードする請求項1に記載の発現構築物、scFV-Fcをコードする請求項1に記載の発現構築物および抗体軽鎖をコードする発現構築物を宿主細胞にコトランスフェクトすることと、
(ii)二重特異性抗体を発現するのに適した条件下で宿主細胞を培養することと、
(iii)二重特異性抗体の細胞膜発現を検出することと、
(iv)所望の発現レベルで細胞膜の表面上に所望の二重特異性抗体を表示する宿主細胞を選択することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的スプライシングを用いて真核細胞の表面上に目的の分泌タンパク質の一部を発現させるための発現構築物および方法に関する。本発明はまた、目的のタンパク質の膜発現レベルを検出することによって所望のレベルの目的の分泌タンパク質を発現する細胞を選択する方法に関する。本発明はさらに、目的のヘテロ多量体タンパク質の膜発現レベルを検出することによる目的の分泌ヘテロ多量体タンパク質を発現する細胞の選択に関する。
【背景技術】
【0002】
真核細胞においてタンパク質を産生するために、このタンパク質をコードするDNAがメッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、これが次にタンパク質に翻訳されなければならない。mRNAは、まず核内でイントロンおよびエクソンを含むmRNA前駆体として転写される。mRNA前駆体の成熟mRNAへの成熟中に、イントロンは、スプライセオソームと呼ばれる細胞機構によって切除(「スプライス」)される。エクソンは、ともに融合し、mRNAは、その5’末端におけるいわゆるCAPおよびその3’末端におけるポリアデニル化(ポリ(A))尾部の付加により修飾される。成熟mRNAは、細胞質に輸出され、タンパク質の翻訳のための鋳型としての役割を果たす。
【0003】
選択的スプライシングは、同じ転写物が、異なる成熟mRNAおよび場合によって異なるタンパク質をもたらす異なる仕方でスプライスされうることを述べる用語である。この機序は、天然ではタンパク質の発現レベルを変化させるために、または発生中の特定のタンパク質の活性を改変するために用いられる(Cooper TA & Ordahl CP (1985)、J Biol Chem、260巻(20号)、11140~8頁)。選択的スプライシングは、通常多くの因子の複雑な相互作用により制御される(Orengo JPら、(2006) Nucleic Acids Res、34巻(22号)、e148頁)。
【0004】
選択的スプライシングは、同じDNA鋳型から2つ(またはそれ以上)の異なるRNA転写物の産生を可能にする。これは、同じタンパク質またはポリペプチドの2つ(またはそれ以上)のイソ型を産生させるために用いることができる。本明細書を通して、タンパク質およびポリペプチドという用語は同義で用いられるものとする。
【0005】
天然においては、これは、例えば、ヒト免疫系における活性化B細胞による抗体産生の過程中に用いられる高度に制御された過程である。抗体の大部分は、細胞外空間に分泌されるが、産生された抗体の一部は、分泌経路から膜結合イソ型の形で外細胞膜に転送される。
【0006】
膜結合イソ型は、細胞外空間に分泌される抗体と同じアミノ酸配列および構造を有する。差異は、膜貫通ドメインを含む膜貫通領域を有する分泌抗体の重鎖のC末端伸長部である。B細胞では、このドメインは、約40~75アミノ酸の間の長さを有しうる(Major JGら、(1996) Mol. Immunol. 33巻、179~87頁)。
【0007】
組換えポリペプチドの生成のための発現システムは、当技術分野で周知である。医薬製剤に用いられるポリペプチドおよびタンパク質の製造のために、CHO、BHK、NS0、Sp2/0、COS、HEKおよびPER.C6などの哺乳類宿主細胞が一般的に用いられている。治療用タンパク質の大規模製造のために、高産生細胞株(high producer cell line)を作製しなければならない。目的のポリペプチドをコードする遺伝子による宿主細胞株のトランスフェクションの後に、異なる特性を有する多くのクローンが得られ、選択される。それは、例えば、選択マーカー、遺伝子増幅および/またはリポーター分子を用いることによって通常行われる。所望の特性を有する適切なクローン、例えば高産生クローンの選択は、時間がかかり、定型的な作業にならないことが多いため、費用がかかる過程である。
【0008】
二重特異性抗体のようなヘテロ多量体タンパク質の発現のためには、適切な宿主細胞株の作製は、より複雑なものとなる。多量体を構成するタンパク質サブユニットは、別個の細胞株中で発現されて、次に多量体タンパク質への結合のために寄せ集められる可能性もあるし、あるいは異なるサブユニットが同じ細胞株中で発現される可能性もある。同じ細胞株におけるサブユニットの発現は、すべてのタンパク質サブユニットが正しい形に結合するとは限らず、異なる種が混合した物が生ずるという不都合を伴う。二重特異性抗体の作製に関して、所望のヘテロ二量体ではなくかなりのレベルのホモ二量体が生成することが一般的であり、これが二重特異性抗体の産生収率に著しい影響を及ぼす。不要なホモ二量体は、様々な精製技術により除去が可能であるが、下流の処理で浪費される時間と費用を低減するためにヘテロ二量体をホモ二量体より高いレベルで発現させる宿主細胞株を有することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、目的の産物を高レベルで発現する細胞クローンを選択するために、すなわち、量的選択のために用いることができる発現システムが必要である。所望の質の目的の産物、例えば、目的のヘテロ多量体タンパク質を発現する細胞クローンを選択すること、すなわち、質的選択ができる必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、目的の可溶性ポリペプチドの選択的スプライシングによる発現のための発現構築物または一連の構築物に関し、可溶性ペプチドの一部は、細胞外空間に分泌され、一部は、細胞の外膜上に表示される。
【0011】
本発明はまた、所望のレベルの目的のポリペプチドをそれらの外膜上に表示する、本発明による1つまたは複数の構築物を含む宿主細胞の選択の方法を含む。
【0012】
本発明はさらに、本発明による1つまたは複数の構築物を含む細胞上の目的のヘテロ多量体タンパク質の膜表示を検出することによる目的の分泌ヘテロ多量体タンパク質を発現する細胞の選択に関する。
【0013】
第1の態様では、本発明は、5’から3’方向に、
プロモーターと、
目的のポリペプチドをコードする第1のエクソンと、
イントロン内のスプライスドナー部位とスプライスアクセプター部位との間に第1の停止コドンが位置する、スプライスドナー部位、イントロンおよびスプライスアクセプター部位と、
修飾免疫グロブリン膜貫通領域または非免疫グロブリン膜貫通領域である膜貫通領域をコードする第2のエクソンと、
第2の停止コドンと
ポリアデニル化部位と
を含む発現構築物であって、宿主細胞に侵入すると、第1および第2のエクソンが転写されることにより、目的のポリペプチドが発現され、所定割合の目的のポリペプチドが宿主細胞の外膜上に表示される、発現構築物を提供する。
【0014】
本発明の別の態様によれば、構築物の第2のエクソンによりコードされる膜貫通領域は、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22個のアミノ酸残基を含む。
【0015】
本発明の別の態様によれば、構築物の第2のエクソンによりコードされる膜貫通領域は、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26個以下のアミノ酸残基を含む。
【0016】
とりわけ、膜貫通領域は、17~29個の間の残基、19~26個の間の残基または21~24個の残基を含みうる。
【0017】
本発明によれば、修飾免疫グロブリン膜貫通領域または修飾非免疫グロブリン膜貫通領域は、天然に存在する免疫グロブリンまたは非免疫グロブリン膜貫通領域の任意の修飾型でありうる。
【0018】
発明者らは、多様なグループの膜貫通領域についてその特性が改変され、とりわけ細胞膜へのそれらの組込み、ひいては目的のポリペプチドの表示がモジュレートされるように、それらを改変した。とりわけ、膜貫通領域における非疎水性残基の数が1つまたは複数の残基分減少または増加され、加えて膜貫通領域のサイズが増加または減少されるように、膜貫通領域のアミノ酸組成を変更することができる。
【0019】
本発明の発明者らは、非免疫グロブリン膜貫通領域、例えば、マウスB7-1膜貫通領域(配列番号173)の使用が、IgG1膜貫通領域を使用する場合に認められるレベルと比較して高いレベルの細胞膜発現をもたらすことを驚くべきことに見いだした。
【0020】
発明者らは、ACLV1(NP_001070869.1)配列番号174、ANTR2(NP_477520.2)配列番号175、CD4(NP_000607.1)配列番号176、RTPRM(NP_002836.3)配列番号177、TNR5(NP_001241.1)配列番号178、ITB1(NP_596867.1)配列番号179、IGF1R(NP_000866.1)配列番号181、1B07(NP_005505.2)配列番号180、TRMB(NP_000352.1)配列番号182、IL4RA(NP_000409.1)配列番号183、LRP6(NP_002327.2)配列番号184、GpA(NP_002090)配列番号185、PTCRA(NP_001230097.1)配列番号186といった他の膜貫通領域ならびにこれらの膜貫通領域の改変型も試験し、これらが本発明による構築物に用いるのに適することを示した。
【0021】
本発明の別の態様によれば、第1の停止コドンは、イントロンのスプライスドナー部位の3’に位置する。
【0022】
一実施形態では、本発明はまた、ポリペプチドの大部分を可溶性の状態で発現させながら、細胞選択を可能にするのに十分な量のポリペプチドが細胞膜上に表示されるように、所定の構築物について認められるスプライス比を変化させる方法を提供する。
【0023】
発明者らは、特許請求された発現構築物の様々な成分を試験して、それらが目的のタンパク質の膜表示をモジュレートすることを可能にした。
【0024】
本発明によれば、可溶性ポリペプチドの発現のレベルは、本明細書で述べる発現構築物のイントロンにポリ(A)部位を含めることにより増大させることができる。
【0025】
本発明の態様によれば、構築物は、プロモーターと第1のエクソンとの間に位置する構成的イントロンを含みうる。
【0026】
本発明によれば、細胞膜上に表示される目的のタンパク質の量を増加または減少させるためにスプライスアクセプターおよびスプライスドナーの強度を修正することができる。
【0027】
とりわけ、構築物に存在するスプライスドナー部位の配列と共通スプライスドナー部位配列(C/A)AGGT(A/G)AGT(配列番号345)との同一性%または類似性%を低下または増大させることにより、スプライスドナー部位の共通配列を改変することができる。
【0028】
さらなる実施形態では、スプライスドナーの強度を低下させるためにスプライスドナー部位の共通配列を改変する。スプライスドナー部位の共通配列は、代替コドンの使用により、例えば、リシンのAAAコーディングをリシンのAAGコーディングに置き換えることにより改変しうる。これにより、膜発現のレベルが低下する。逆に、共通スプライスドナー部位配列(C/A)AGGT(A/G)AGT(配列番号345)に対するスプライスドナー部位の同一性%または類似性%を増大させることにより、構築物におけるスプライスドナー部位の強度が増大し、膜発現のレベルが増大する。
【0029】
本発明の態様によれば、スプライスドナー部位は、第1のエクソンの3’末端およびイントロンの5’末端と重なり、イントロンのスプライスアクセプター部位は、イントロンの3’末端に位置する。
【0030】
本発明の態様によれば、第1の停止コドンは、スプライスドナー部位の3’ に位置する。
【0031】
発現構築物のイントロンは、スプライスアクセプター部位に含まれたポリ(Y)トラクトを任意選択で含む。発現構築物のイントロンのスプライスアクセプター部位に含まれたポリ(Y)トラクトのY含量を改変しうる。ポリ(Y)トラクトにおけるピリミジン塩基(Ys)の数を変更することにより、目的のポリペプチドの細胞膜発現を減少または増加させることができる。細胞による高レベルの膜発現を有する目的のポリペプチドについては、ポリ(Y)トラクトにおけるYsの数を減少させることにより、膜発現のレベルが低下する。細胞による低レベルの膜発現を有するポリペプチドについては、ポリ(Y)トラクトにおけるYsの数を増加させることにより、膜発現のレベルが増大する。
【0032】
とりわけ、スプライスアクセプター部位のポリ(Y)含量を変化させることにより、スプライスアクセプター部位の強度を低下させ、目的のポリペプチドの膜表示を減少させるために、スプライスアクセプターのポリ(Y)含量を減少させることができる。
【0033】
あるいは、スプライスアクセプター部位のポリ(Y)含量を変化させることにより、スプライスアクセプター部位の強度を増大させ、目的のポリペプチドの膜表示を増加させるために、スプライスアクセプターのポリ(Y)含量を増加させることができる。
【0034】
上記で概説した改変に加えて、膜表示ポリペプチドをもたらす選択的スプライシング事象は、分岐点領域のDNA(およびしたがってRNA)配列を改変することによる影響も受けうる。分岐点領域のヌクレオチドは、5’スプライス部位におけるイントロンの第1のヌクレオチドを攻撃することによりスプライス事象を開始し、それに伴ってラリアット中間体を形成する。共通配列(CTRAYY配列番号347)に対して分岐点領域の配列を変化させることは、スプライス事象の開始の有効性に対して、またそれとともに分泌ポリペプチド対膜表示ポリペプチドの比に対して影響を与えうる。
【0035】
さらに、イントロンの長さがスプライス比に影響を及ぼしうる。エクソンの直接上流のイントロンが短縮された場合、CD44に選択的エクソンを含む可能性が増大することが実証された(Bell M.、Cowper A.、Lefranc M.、Bell J.およびScreaton G.(1998) Influence of Intron Length on Alternative Splicing of CD44、Mol Cell Biol。 18巻(10号)、5930~5941頁)。したがって、構築物を改変するさらなる手段は、膜表示ポリペプチドの割合を増加させるために選択的スプライシング構築物におけるイントロンの長さを短くすることまたはその逆である。
【0036】
スプライス事象に影響を及ぼすさらなる機構は、エクソンの包含またはスキッピングをもたらすRNA結合タンパク質の共発現である。例えば、CUG-BP(Uniprot受託番号:Q5F3T7)およびmuscle-blind like 3(MBNL)(Uniprot受託番号:Q5ZKW9)タンパク質は、EGFPおよびdsREDを発現する構築物におけるスプライス比に影響を及ぼすことが示された(Orengoら、2006)。
【0037】
したがって、本発明はまた、エクソンの包含またはスキッピングをもたらすRNA結合タンパク質をコードする発現性ORFを含むさらなる改変構築物を提供する。また、方法は、エクソンの包含もしくはスキッピングをもたらすRNA結合タンパク質をコードする発現性ORFを含む、本発明による構築物および/またはそのようなORFを含む別個の構築物の共トランスフェクションを包含する。
【0038】
さらに大部分の膜タンパク質は、細胞表面に到達する前に小胞体(ER)およびゴルジ装置を通過する。ERからの輸出は、ER出口の部位から出芽するコートマー複合体II(COPII)輸送小胞によって媒介される選択的過程である。COPII輸送小胞の成分と膜固定タンパク質の細胞質ドメインにおける線状二酸、疎水性および芳香族モチーフまたは構造モチーフを有する短いアミノ酸配列との相互作用は、ER出口部位におけるカーゴタンパク質を濃縮し、COPII小胞内へのカーゴの動員を増強させる。これらの短い線状または構造アミノ酸配列モチーフは、ER輸出シグナルと呼ばれる。
【0039】
したがって、目的のタンパク質の膜表示を調節する別のアプローチは、膜貫通領域と融合した目的のポリペプチドのER通過を修正するために、ER輸出シグナルを含めることまたは含めないことである。ER輸出を増大させるために構築物内に含まれるER輸出シグナルの修正は、低い半減期または他の安定性もしくは分解の問題を有するタンパク質の膜表示を増加させるのに有用であり、また逆も同様である。
【0040】
本発明の発明者らは、細胞膜上に表示される目的のポリペプチドの量が可溶性ポリペプチドの発現レベルに正比例することを見いだした。したがって、高力価の目的のポリペプチドを発現する宿主細胞は、低力価のポリペプチドを発現する宿主細胞よりも多くのポリペプチドを膜上に表示する。これにより、高生産性組換え宿主細胞の直接的な同定および単離がされうる。
【0041】
本発明の態様では、発現構築物によりコードされるポリペプチドは、タンパク質多量体、例えば、組換え抗体またはその断片のようなヘテロ多量体ポリペプチドの一部でありうる。抗体断片は、Fab、Fd、Fv、dAb、F(ab’)2およびscFvからなるリストから選択されてもよい。好ましい実施形態では、発現構築物により発現されるポリペプチドは、抗体重鎖またはその断片でありうる。
【0042】
本発明のさらなる態様では、発現構築物は、宿主細胞における二重特異性抗体の発現のために用いられうる。一実施形態では、発現するポリペプチドは、抗体重鎖である。あるいは、発現するポリペプチドは、抗体Fc領域に連結された抗体の断片である。抗体断片は、Fab、Fd、Fv、dAb、F(ab’)2およびscFvからなるリストから選択されうる。好ましくは、抗体断片は、FabまたはscFvである。より好ましくは、抗体断片は、scFvである。二重特異性抗体の発現を達成するために、抗体軽鎖の発現のための別個の発現構築物も提供されうる。抗体重鎖および抗体断片-Fcをコードする発現構築物と抗体軽鎖をコードする発現構築物との宿主細胞における共発現は、二重特異性抗体の発現をもたらす。上で述べたように、宿主細胞における二重特異性抗体の発現は、所望のヘテロ二量体の他に多くの不要なホモ二量体種をもたらす。本発明の好ましい実施形態では、これらの二重特異性抗体成分の細胞膜表示は、ヘテロ二量体抗体を主に発現する宿主細胞の直接的な選択を可能にする。
【0043】
本発明はまた、ポリペプチドの大部分を可溶性の状態で発現させながら、細胞選択を可能にするのに十分な量のポリペプチドが細胞膜上に表示されるようにスプライス比を改変する方法を提供する。
【0044】
本発明のこの態様によれば、方法は、目的のポリペプチドの膜表示を測定することと、次に目的のポリペプチドを発現する細胞のより適切な選択を可能にするために膜表示を増加または減少させるために目的のポリペプチドの観測された膜表示に基づいて構築物の成分を修正することとを含む。
【0045】
本発明はまた、目的のタンパク質または目的のタンパク質を含むヘテロ多量体タンパク質の膜発現レベルを検出することによる細胞の選択を含む、本発明による少なくとも1つの構築物を含む細胞を選択する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の選択的スプライシング構築物の概略図である。ポリペプチドの選択的スプライシングは、2つのスプライス産物を生じさせる。スプライス産物1については、2つの最終アミノ酸グリシン(G)およびリシン(K)をコードするコドンは、mRNAに組み込まれ、ポリペプチドは、細胞から分泌される。スプライス産物2については、ポリペプチドは、2つのアミノ酸GおよびKを含まずに、任意選択の連結領域、膜貫通ドメインおよび任意選択の小細胞内ドメインから構成される膜貫通領域により拡張され、得られたポリペプチドは、分泌されずに、細胞の外膜上に提示される。
【
図2】異なる膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした(ctrl)。異なる選択的スプライシング構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした対照細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(A~D)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(E)ならびに染色の平均蛍光(G)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(H)。
【
図3】IgG4抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG4抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした(IgG4)。選択的スプライシング構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、分泌IgG4抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした対照細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(A)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(B)ならびに染色の平均蛍光(D)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(C)。
【
図4】選択的スプライシング技術を用いた細胞膜上に表示された二重特異性抗体の特異的検出を示す図である。細胞は、トランスフェクションの1日後に染色した。Fc断片(scFv-FcおよびHC)は、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトFcガンマ特異抗体を用いて検出した(A~C、J~L)。カッパ軽鎖は、マウス抗ヒトカッパLC APC標識抗体を用いて検出した(D~F、M~O)。scFv-Fcの染色は、FITC標識プロテインAを用いて実施した。トランスフェクト細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示した。第1のトランスフェクションカクテル(A、D、G)については、非トランスフェクト細胞について得られたプロファイルは、オーバーレイ(黒色の線)として示した。他のすべて実験(B、C、E、FおよびH~R)については、陰性対照(膜貫通ドメインを含まないトランスフェクト細胞について得られたプロファイル)は、オーバーレイ(破線)として示した。
【
図5】一過性トランスフェクションの6日後の分泌BEAT(登録商標)およびscFv-Fcホモ二量体分子の力価を示す図である。
【
図6】異なる膜貫通領域および発現構築物の異なる改変を含むIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした(対照)。
【
図7】CHO-S細胞にトランスフェクトしたIgG1抗体の表示および分泌のための異なる選択的スプライシング構築物の標準化発現レベルを示す図である。上清は、Octet QK装置およびプロテインAバイオプローブを用いて解析した(標準HC:選択的スプライシングを用いない対照)。
【
図8】B7-1膜貫通領域およびスプライスアクセプターのポリ(Y)トラクトの異なるY含量を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした(ctrl)。異なる選択的スプライシング構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(A~G)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(H)ならびに染色の平均蛍光(J)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(I)。
【
図9】B7-1膜貫通領域およびスプライスドナーの共通配列の改変を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした(ctrl)。異なる選択的スプライシング構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(A~C)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(D)ならびに染色の平均蛍光(F)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(E)。
【
図10】22~23個の疎水性アミノ酸の異なる膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陽性対照として、B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする選択的スプライシング構築物をトランスフェクトし((A)における塗りつぶされたヒストグラム)、陰性対照として、CHO-S細胞を、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした((A)における重ね合わせの黒色の線)。異なる膜貫通ドメインを用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(B~G)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(H)ならびに染色の平均蛍光(I)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(G)。
【
図11】疎水性、極性および荷電残基を含む21~24個の疎水性アミノ酸の異なる膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陽性対照として、B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする選択的スプライシング構築物をトランスフェクトし((A)における塗りつぶされたヒストグラム)、陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした((A)における重ね合わせの黒色の線)。異なる膜貫通ドメインを用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(B~H)。PTCRA膜貫通ドメインを用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(I)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(J)ならびに染色の平均蛍光(L)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(K)。
【
図12】PTCRA膜貫通ドメインにおける疎水性残基数の変動を有するPTCRA膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陽性対照として、B7-1膜貫通領域および野生型PTCRA膜貫通ドメインを用いた分泌および膜表示IgG1をコードする選択的スプライシング構築物をトランスフェクトし((A)における塗りつぶされたヒストグラム)、陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした((A)における重ね合わせの黒色の線)。PTCRA膜貫通ドメインの異なる修飾を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、野生型PTCRA膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(B~H)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(I)ならびに染色の平均蛍光(K)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(J)。
【
図13】疎水性、極性および荷電残基を含む17~19疎水性アミノ酸の異なる膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陽性対照として、B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする選択的スプライシング構築物をトランスフェクトし((A)における塗りつぶされたヒストグラム)、陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした((A)における重ね合わせの黒色の線)。異なる膜貫通ドメインを用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(B~D)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(E)ならびに染色の平均蛍光(G)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(F)。
【
図14】疎水性、極性および荷電残基を含む26~27個の疎水性アミノ酸の異なる膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陽性対照として、B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする選択的スプライシング構築物をトランスフェクトし((A)における塗りつぶされたヒストグラム)、陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした((A)における重ね合わせの黒色の線)。異なる膜貫通ドメインを用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(B~E)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(F)ならびに染色の平均蛍光(H)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(G)。
【
図15】短縮または伸長B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陽性対照として、野性型B7-1膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする選択的スプライシング構築物をトランスフェクトし((A)における塗りつぶされたヒストグラム)、陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした((A)における重ね合わせの黒色の線)。異なる膜貫通ドメインを用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、B7-1野性型膜貫通ドメインを含むB7-1膜貫通領域を用いた構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(B~E)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(F)ならびに染色の平均蛍光(H)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いて一過性発現の4日後に決定した(G)。
【
図16】異なる細胞質ゾル側末端を含むB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陽性対照として、B7-1細胞質ゾル側末端を含むB7-1膜貫通領域を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする選択的スプライシング構築物をトランスフェクトし((A)における塗りつぶされたヒストグラム)、陰性対照として、CHO-S細胞を、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした((A)における重ね合わせの黒色の線)。異なる細胞質ゾル側末端を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、B7-1細胞質ゾル側末端を含むB7-1膜貫通領域を用いた構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(B~N)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(O)ならびに染色の平均蛍光(Q)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(P)。
【
図17】異なる細胞質ゾル側末端を含むM1M2膜貫通領域を用いたIgG1抗体の表示および分泌のために選択的スプライシング構築物をトランスフェクトしたCHO-S細胞の染色プロファイルを示す図である。解析は、トランスフェクションの翌日に実施した。陽性対照として、M1M2細胞質ゾル側末端を含むM1M2膜貫通領域を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする選択的スプライシング構築物をトランスフェクトし((A)における塗りつぶされたヒストグラム)、陰性対照として、CHO-S細胞に、分泌IgG1抗体をコードする非スプライシング構築物をトランスフェクトした((A)における重ね合わせの黒色の線)。B7-1細胞質ゾル側末端を含むM1M2膜貫通領域を用いた分泌および膜表示IgG1をコードする構築物をトランスフェクトした細胞について実施した染色は、塗りつぶされたヒストグラムとして示し、M1M2細胞質ゾル側末端を含むM1M2膜貫通領域を用いた構築物をトランスフェクトした細胞の染色は、重ね合わせの黒色の線として含める(B)。選択的スプライシング構築物および対照の染色細胞の百分率(C)ならびに染色の平均蛍光(E)を決定するためにヒストグラムを用いた。分泌抗体の力価は、Octet装置を用いてトランスフェクションの4日後に決定した(D)。
【
図18】BEAT二重特異性抗体の3つのサブユニットのアセンブリ変異体を示す図である。
【
図19】
図19は、選択された安定細胞プールのデュアルカッパ軽鎖(LC)およびFc断片の染色の後に得られたドットプロットの例を示す図である。細胞膜上の染色により検出される可能な分子は、右に示される。Fc断片は、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトFcガンマ特異抗体を用いて検出した。カッパ軽鎖は、マウス抗ヒトカッパLC APC標識抗体を用いて検出した。
【
図20】選択的スプライシングベクターをトランスフェクトした安定プールの表面染色と分泌プロファイルとの間の相関関係を示す図である。プロットしたQ6
*およびQ7
*の百分率は、100%が全生産性細胞集団(Q8を除く)であることを意味する。
【
図21】細胞選別の前の安定細胞プールの表面染色の後に得られたドットプロットを示す図である。染色には、細胞表面上に表示されるバインダーの検出のための可溶性標的1および2を用いている。細胞膜上の染色により検出される可能な分子は、対応する象限に示される。
【
図22】
図22は、14日流加培養物の上清中に検出されたBEAT(登録商標)分子の割合とそれらの細胞表面上にBEAT(登録商標)表現型を表示している細胞の割合との間の相関関係を示す図である。
【
図23】選択的スプライシング構築物をトランスフェクトした選択された安定細胞プールについて得られた測定表面Fcプロファイルの例を示す図である。細胞膜上に存在するIgGは、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトFcガンマ特異抗体を用いて検出した。生存細胞をFSC対SSCドットプロットにおいてゲーティングして(Aにおけるg1)、供試選択的スプライシングプールの蛍光分布を表示した(塗りつぶされたヒストグラム、B)。選択的スプライシング構築物を欠くIgG分泌クローンの染色を陰性対照として用い、オーバーレイ(破線)として示す。
【
図24】回分法の実施中にアッセイした分泌細胞の表面染色強度と発現レベルとの間の相関関係を示す図であり、補足バッチの1日目における表面強度とIgG力価との間の相関関係(A)および1日目における表面強度と対数期中(1~3日目)に測定したqPとの間の相関関係(B)を示す。
【
図25】1日目における表面染色強度が7日目における蓄積分泌IgGを予測するものであることを示す図である。
【
図26】IgG表面表示による高生産性細胞の選択を示す図である。フローサイトメトリー細胞選別によりそれらの膜上に「低」、「中」および「高」密度のIgGを表示する細胞を選択した(A)。選別の2週間後に表面蛍光の分布を決定し(B)、保管クローンの比生産性を補足バッチにおいて評価した(C)。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、ポリペプチド、とりわけヘテロ多量体ポリペプチドの細胞膜発現のための発現構築物および方法を提供する。特に、目的のタンパク質は、宿主細胞における選択的スプライシングを用いた組換え抗体もしくはその断片または二重特異性抗体でありうる。細胞膜表示のレベルは、組換え宿主細胞におけるポリペプチドの分泌レベルを示し、ヘテロ二量体抗体については、細胞膜表示は、分泌プロファイル、すなわち、ヘテロ二量体またはホモ二量体発現も示すものである。
【0048】
本明細書で同義で用いる「発現構築物」または「構築物」という用語は、発現させるべきポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列ならびにプロモーター配列および場合によってはエンハンサー配列のようなその発現を制御する配列を含むシス作用転写制御エレメントの任意の組合せを含む。遺伝子の発現、すなわち、その転写および転写産物の翻訳を制御する配列は、一般的に調節ユニットと呼ばれる。調節ユニットの大部分は、遺伝子のコード配列の上流に位置し、それに作動可能に連結している。発現構築物は、ポリ(A)部位を含む下流3’非翻訳領域も含みうる。
【0049】
本発明の調節ユニットは、発現させるべき遺伝子に作動可能に連結している、すなわち、転写ユニットか、または例えば、異種遺伝子の5’-非翻訳領域(5’UTR)のような介在DNAによってそれから分離されている。好ましくは、発現構築物は、ベクターへの発現構築物の挿入および/またはベクターからのその切除を可能にするために1つまたは複数の適切な制限部位が両端に隣接する。したがって、本発明による発現構築物は、発現ベクター、とりわけ哺乳類発現ベクターの構築に用いることができる。
【0050】
「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列」という用語は、本明細書で用いられる場合、遺伝子、好ましくはポリペプチドを発現する異種遺伝子をコードするDNAを含む。
【0051】
「異種コード配列」、「異種遺伝子配列」、「異種遺伝子」、「組換え遺伝子」または「遺伝子」という用語は、同義で用いる。これらの用語は、宿主細胞、好ましくは哺乳類細胞において発現させ、さらなる使用のために収集しようとする組換えポリペプチド、とりわけ組換え異種タンパク質産物をコードするDNA配列を意味する。遺伝子の産物は、ポリペプチド、糖ペプチドまたはリポ糖ペプチドでありうる。異種遺伝子配列は、宿主細胞において天然に存在する可能性がなく、同じまたは異なる種の生物体に由来し、遺伝学的に改変されていてもよい。あるいは、異種遺伝子配列は、宿主細胞において天然に存在する。
【0052】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、同義で用いられ、隣接残基のアルファアミノ基およびカルボキシ基間のペプチド結合により他のものに連結されている一連のアミノ酸残基を含む。
【0053】
「プロモーター」という用語は、本明細書で用いられる場合、RNAポリメラーゼがDNAに結合し、RNA合成を開始することを誘導することによって転写の開始を媒介する、遺伝子の上流に一般的に位置する調節DNA配列を定義するものである。本発明で用いるプロモーターは、例えば、高レベルの発現をもたらすウイルス、哺乳類、昆虫および酵母プロモーター、例えば、哺乳類サイトメガロウイルスもしくはCMVプロモーター、SV40プロモーターまたは真核細胞における発現に適する当技術分野で公知の任意のプロモーターを含む。本発明の発現構築物に用いるのに特に適するプロモーターは、SV40プロモーター、ヒトtkプロモーター、MPSVプロモーター、マウスCMV、ヒトCMV、ラットCMV、ヒトEF1アルファ、チャイニーズハムスターEF1アルファ、ヒトGAPDH、MYC、HYKおよびCXプロモーターを含むハイブリッドプロモーター、転写因子結合部位の転位に基づく合成プロモーターからなるリストから選択しうる。本発明の特定の好ましいプロモーターは、マウスCMVプロモーターである。
【0054】
「5’非翻訳領域(5’UTR)」という用語は、mRNA前駆体または成熟mRNAの5’末端における非翻訳セグメントを意味する。成熟mRNAでは、5’UTRは、一般的にその5’末端に7-メチルグアノシンキャップを有し、スプライシング、ポリアデニル化、細胞質へのmRNA輸出、翻訳機構によるmRNAの5’末端の同定ならびに分解に対するmRNAの防護などの多くの過程に関与する(Cowling VH (2010) Biochem J、425巻、295~302頁)。
【0055】
「イントロン」という用語は、転写され、mRNA前駆体に存在するが、それぞれイントロンの5’および3’末端におけるスプライスドナー部位およびスプライスアクセプター部位の配列に基づいてスプライシング機構により切除され、したがって、成熟mRNA転写物には存在しない核酸非コード配列のセグメントを意味する。一般的に、イントロンは、3’スプライス部位の20~50ヌクレオチド上流の間に位置する、分岐点と呼ばれる内部部位を有する。本発明で用いるイントロンの長さは、50~10000ヌクレオチド長の間でありうる。短縮イントロンは、50以上のヌクレオチドを含みうる。全長イントロンは、10000を超えるヌクレオチドを含みうる。本発明の発現構築物に用いるのに適するイントロンは、合成もしくは人工イントロン;または-グロビン/IgGキメライントロン、-グロビンイントロン、IgGイントロン、マウスCMV第1イントロン、ラットCMV第1イントロン、ヒトCMV第1イントロン、Ig可変領域イントロンおよびスプライスアクセプター部位(Bothwellら、(1981) Cell、24巻、625~637頁;US5,024,939)、ニワトリTNT遺伝子のイントロンならびにEF1アルファの第1イントロンもしくはそれらの改変型等の天然に存在するイントロンからなるリストから選択しうる。
【0056】
本発明に用いるイントロンは、異なるイントロンに由来するスプライスアクセプターおよびスプライスドナー部位を有しうる。例えば、イントロンは、ヒトIgGイントロンに由来するスプライスドナー部位、例えば、ighg1遺伝子のスプライスドナー部位およびニワトリcTNTイントロン4に由来するスプライスアクセプター部位を含みうる。
【0057】
好ましい実施形態では、イントロンは、ヒトIgGイントロンに由来するスプライスドナー部位およびニワトリcTNTイントロン4に由来するスプライスアクセプター部位を含む。より好ましくは、ヒトIgGイントロンに由来するスプライスドナー部位ならびにニワトリTNTイントロン4(配列番号69)およびニワトリTNTイントロン4に由来する構築物(配列番号70~78)からなる群から選択されるスプライスアクセプターを含むイントロンである。
【0058】
「エクソン」という用語は、mRNAに転写され、スプライシングの後に成熟mRNAに保持されている核酸配列のセグメントを意味する。
【0059】
「スプライス部位」という用語は、切断され、かつ/または対応するスプライス部位にライゲートされるのに適する、真核細胞のスプライシング機構により認識されうる特定の核酸配列を意味する。スプライス部位は、mRNA前駆体転写物に存在するイントロンの切除を可能にする。一般的にスプライス部位の5’部分は、スプライスドナー部位と呼ばれ、3’側の対応するスプライス部位は、スプライスアクセプター部位と呼ばれる。スプライス部位という用語は、例えば、天然に存在するスプライス部位、加工されたスプライス部位、例えば、合成スプライス部位、カノニカルもしくはコンセサススプライス部位、および/または非カノニカルプライス部位、例えば、隠れスプライス部位を含む。本発明の発現構築物に用いるのに適するスプライスドナーまたはアクセプター部位は、-グロビン/IgGキメライントロンに由来するスプライスドナーおよびアクセプター、-グロビンイントロンに由来するスプライスドナーおよびアクセプター、IgGイントロンに由来するスプライスドナーおよびアクセプター、マウスCMV第1イントロンに由来するスプライスドナーおよびアクセプター、ラットCMV第1イントロンに由来するスプライスドナーおよびアクセプター、ヒトCMV第1イントロンに由来するスプライスドナーおよびアクセプター、Ig可変領域イントロンおよびスプライスアクセプター配列に由来するスプライスドナーおよびアクセプター(Bothwellら、(1981) Cell、24巻、625~637頁;US5,024,939)、ニワトリTNT遺伝子のイントロンに由来するスプライスドナーおよびアクセプターならびにEF1アルファ遺伝子の第1イントロンまたはそれらの融合構築物に由来するスプライスドナーおよびアクセプターからなるリストから選択されうる。好ましい実施形態では、スプライスドナー部位は、ヒトIgGイントロンに由来し、スプライスアクセプター部位は、ニワトリTNTイントロン4(配列番号69)およびニワトリTNTイントロン4に由来する構築物(配列番号70~78)からなる群から選択される。
【0060】
スプライスドナー領域の共通配列という用語は、本明細書で用いられる場合、「Molecular Biology of the Cell」(Albertsら、Garland Publishing、New York 1995)に記載されているように配列(C/A)AGGU(A/G)AGU(下線を引いた配列はイントロンの一部である)配列番号345を意味する。
【0061】
スプライスアクセプター領域の共通配列という用語は、本明細書で用いられる場合、「Molecular Biology of the Cell」(Albertsら、Garland Science、New York 2002)に記載されているように配列CTRAYY---ポリ(Y)トラクト---NCAGG(下線を引いた配列はイントロンの一部である;イタリック体:分岐点領域)配列番号346を意味する。
【0062】
「停止コドン」という用語は、タンパク質合成の終結を示す3つの停止コドン(TAA(RNA:UAA)、TAG(RNA:UAG)およびTGA(RNA:UGA)のいずれか1つを意味する。不完全な終結効率または停止コドンの「漏れ」を避けるために、2つ、3つまたは多数の停止コドンを用いて、タンパク質合成の終結を示しうる。
【0063】
「膜貫通領域」という用語は、核酸配列によりコードされ、任意選択の細胞外部分、膜貫通ドメインおよび任意選択の細胞質ゾル側末端を含むポリペプチドまたはタンパク質を意味する。膜貫通ドメインは、膜内で熱力学的に安定であり、疎水性アミノ酸から主として構成された膜貫通タンパク質の単一膜貫通アルファらせんを通常含む任意の三次元タンパク質構造である。膜貫通ドメインの長さは、平均して21アミノ酸であるが、4アミノ酸から48アミノ酸まで変化しうる(Baeza-Delgadoら、2012)。膜貫通領域は、アミノ酸の任意選択のN末端細胞外連結伸長部および膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通領域は、C末端細胞質アミノ酸伸長部または細胞内ドメインをさらに含みうる。例えば、ヒトighg1遺伝子に見いだされる膜貫通領域は、アミノ酸の連結伸長部とそれに続く2つのドメインM1およびM2から構成されている(この膜貫通領域は、「M1M2」または「IgG1膜貫通領域」と呼ぶこととする)。本発明において有用な膜貫通領域は、ヒト血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)遺伝子(SwissprotエントリP16234)、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体(SwissprotエントリP07306)、ヒトおよびマウスB7-1(ヒト:SwissprotエントリP33681およびマウス:SwissprotエントリQ00609)、ヒトICAM-1(SwissprotエントリP05362)、ヒトerbb1(SwissprotエントリP00533)、ヒトerbb2(SwissprotエントリP04626)、ヒトerbb3(SwissprotエントリP21860)、ヒトerbb4(SwissprotエントリQ15303)、FGFR1(SwissprotエントリP11362)、FGFR2(SwissprotエントリP21802)、FGFR3(SwissprotエントリP22607)、FGFR4(SwissprotエントリP22455)のようなヒト線維芽細胞増殖因子受容体、ヒトVEGFR-1(SwissprotエントリP17948)、ヒトVEGFR-2(SwissprotエントリP35968)、ヒトエリスロポエチン受容体(SwissprotエントリP19235)、ヒトPRL-R、プロラクチン受容体(SwissprotエントリP16471)、ヒトEphA1、エフリンA型受容体1(SwissprotエントリP21709)、ヒトインスリン(SwissprotエントリP06213)、インスリン様増殖因子1受容体(IGFR1、SwissprotエントリP08069、配列番号181)、ヒト受容体様タンパク質チロシンホスファターゼ(SwissprotエントリQ12913、P23471、P23467、P18433、P23470、P23469、P23468)、ヒトニューロピリン(SwissprotエントリPO14786)、ヒト主要組織適合性遺伝子複合体クラスII(アルファおよびベータ鎖)、ヒトインテグリン(アルファおよびベータファミリー)、ヒトシンデカン、ヒトミエリンタンパク質、ヒトカドヘリン、ヒトシナプトブレビン-2(SwissprotエントリP63027)、ヒトグリコフォリン-A(GpA、SwissprotエントリP02724、配列番号185)、ヒトBnip3(SwissprotエントリQ12983)、ヒトAPP(SwissprotエントリP05067)、アミロイド前駆体タンパク質(SwissprotエントリP0DJI8)、ヒトT細胞受容体アルファ遺伝子(PTCRA、SwissprotエントリPQ6ISU1、配列番号186)およびT細胞受容体ベータ、CD3ガンマ(SwissprotエントリP09693)、CD3デルタ(SwissprotエントリP04234)、CD3ゼータ(SwissprotエントリP20963)およびCD3イプシロン(CD3E、SwissprotエントリP07766、配列番号197)、ヒトセリン/トレオニンプロテインキナーゼ受容体R3(ACVL1、SwissprotエントリP37023、配列番号174)、ヒト炭疽菌毒素受容体2(ANTR2、SwissprotエントリP58335、配列番号175)、ヒトT細胞表面糖タンパク質CD4(CD4、SwissprotエントリP01730、配列番号176)、ヒト受容体型チロシンプロテインホスファターゼミュー(PTPRM、SwissprotエントリP28827、配列番号177)、ヒト腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5(TNR5、SwissprotエントリP25942、配列番号178)、ヒトインテグリンベータ-1(ITB1、SwissprotエントリP05556、配列番号179)、ヒトHLAクラスI組織適合性抗原、B-7アルファ鎖(SwissprotエントリP01889、配列番号180)、ヒトトロンボモデュリン(TRBM、SwissprotエントリP07204、配列番号182)、ヒトインターロイキン-4受容体サブユニットアルファ(IL4RA、SwissprotエントリP24394、配列番号183)、ヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6、SwissprotエントリO75581、配列番号184)、ヒト高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ(FCERA、SwissprotエントリP12319、配列番号194)、ヒトキラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL2(KI2L2、SwissprotエントリP43627、配列番号195)、ヒトサイトカイン受容体共通サブユニットベータ(IL3RB、SwissprotエントリP32927、配列番号196)、ヒトインテグリンアルファ-IIb(ITA2B、SwissprotエントリP08514、配列番号198)、ヒトT細胞特異的表面糖タンパク質CD28(CD28、SwissprotエントリP10747、配列番号199)の膜貫通領域を含むが、これらに限定されない。
【0064】
好ましい実施形態では、本発明に用いる膜貫通領域は、ヒトB7-1膜貫通領域、マウスB7-1膜貫通領域、PDGFR膜貫通領域、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体膜貫通領域およびerbb-2膜貫通領域からなる群から選択される。マウスB7-1膜貫通領域がより好ましく、配列番号66に示すマウスB7-1膜貫通領域が最も好ましい。
【0065】
免疫グロブリン膜貫通領域は、ヒト免疫グロブリン遺伝子IGHA1(NCBIアクセスコード:M60193)、IGHA2(NCBIアクセスコード:M60194)、IGHD(NCBIアクセスコード:K02881)、IGHE(NCBIアクセスコード:X63693)、IGHG1(NCBIアクセスコード:X52847)、IGHG2(NCBIアクセスコード:AB006775)、IGHG3(NCBIアクセスコード:D78345)、IGHG4(NCBIアクセスコード:AL928742)、IGHGP(NCBIアクセスコード:X52849)、IGHM(NCBIアクセスコード:X14940)に由来する膜貫通領域ならびにマウス免疫グロブリン遺伝子IGHA1(NCBIアクセスコード:K00691)、IGHD(NCBIアクセスコード:J00450)、IGHE(NCBIアクセスコード:X03624、U08933)、IGHG1(NCBIアクセスコード:J00454、J00455)、IGHG2A(NCBIアクセスコード:J00471)、IGHG2B(NCBIアクセスコード:J00462、D78344)、IGHG3(NCBIアクセスコード:X00915、V01526)、IGHM(NCBIアクセスコード:J00444)に由来する膜貫通領域を含む。
【0066】
本発明の一実施形態では、用いる膜貫通領域は、免疫グロブリン遺伝子によりコードされる膜貫通領域を含まない非免疫グロブリン膜貫通領域、とりわけ、ヒト免疫グロブリン遺伝子IGHA1(NCBIアクセスコード:M60193)、IGHA2(NCBIアクセスコード:M60194)、IGHD(NCBIアクセスコード:K02881)、IGHE(NCBIアクセスコード:X63693)、IGHG1(NCBIアクセスコード:X52847)、IGHG2(NCBIアクセスコード:AB006775)、IGHG3(NCBIアクセスコード:D78345)、IGHG4(NCBIアクセスコード:AL928742)、IGHGP(NCBIアクセスコード:X52849)、IGHM(NCBI)アクセスコード:X14940)によりコードされる膜貫通領域を含まず、マウス免疫グロブリン遺伝子IGHA1(NCBIアクセスコード:K00691)、IGHD(NCBIアクセスコード:J00450)、IGHE(NCBIアクセスコード:X03624、U08933)、IGHG1(NCBIアクセスコード:J00454、J00455)、IGHG2A(NCBIアクセスコード:J00471)、IGHG2B(NCBIアクセスコード:J00462、D78344)、IGHG3(NCBIアクセスコード:X00915、V01526)、IGHM(NCBIアクセスコード:J00444)によりコードされる膜貫通領域を含まない非免疫グロブリン膜貫通領域である。
【0067】
「ポリ(Y)トラクト」という用語は、イントロンの分岐点とイントロン-エクソン境界との間に見いだされるひと続きの核酸を意味する。このひと続きの核酸は、多数のピリミジン塩基CまたはTを意味する、多数のピリミジン(Ys)を有する。
【0068】
「3’非翻訳領域(3’UTR)」という用語は、mRNA前駆体または成熟mRNAの3’末端における非翻訳セグメントを意味する。成熟mRNAでは、この領域は、ポリ(A)尾部を有し、mRNA安定性、翻訳開始およびmRNA輸出などに多くの役割を有することが公知である(Jia Jら、(2013) Curr Opin Genet Dev、23巻(1号)、29~34頁)。
【0069】
「エンハンサー」という用語は、本明細書で用いられる場合、遺伝子の同一性、遺伝子に対する該配列の位置または該配列の配向と無関係に遺伝子の転写を促進するように作用するヌクレオチド配列を定義するものである。本発明のベクターは、任意選択でエンハンサーを含む。
【0070】
「ポリアデニル化シグナル」、「ポリ(A)シグナル」または「ポリ(A)」または「ポリ(A)部位」という用語は、mRNA転写物に存在する核酸配列であって、ポリ(A)ポリメラーゼが存在する場合に、ポリ(A)シグナルの10~30塩基下流に位置するポリアデニル化部位でmRNA転写物をポリアデニル化することを可能にする配列を意味する。多くのポリ(A)シグナルが当技術分野で公知であり、本発明において有用でありうる。例としては、ヒト変異型成長ホルモンポリ(A)シグナル、SV40後期ポリ(A)シグナルおよびウシ成長ホルモンポリ(A)シグナルがある。
【0071】
「機能的に連結した」および「作動可能に連結した」という用語は、同義で用い、2つ以上のDNAセグメント間、とりわけ発現させるべき遺伝子配列とそれらの発現を制御する配列との間の機能的関係を意味する。例えば、シス作用転写制御エレメントの組合せを含む、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞または他の発現システムにおけるコード配列の転写を刺激またはモジュレートする場合、コード配列に作動可能に連結している。転写遺伝子配列に作動可能に連結したプロモーター調節配列は、転写配列に物理的に隣接している。
【0072】
「配向」は、所定のDNA配列におけるヌクレオチドの順序を意味する。例えば、別のDNA配列に対して反対の方向のDNA配列の配向は、配列が得られたDNAにおける基準点と比較したとき、別の配列に関する該配列の5’から3’への順序が逆である配向である。そのような基準点は、元のDNAにおける他の特定のDNA配列の転写方向および/または当該配列を含む複製可能ベクターの複製起点を含みうる。
【0073】
「核酸配列相同性」または「ヌクレオチド配列相同性」という用語は、本明細書で用いられる場合、最大の配列同一性百分率を達成するために、配列を整列させ、必要な場合にギャップを導入した後の比較配列のヌクレオチド配列と同一である候補配列のヌクレオチドの百分率を含む。したがって、配列同一性は、2つのヌクレオチド配列のヌクレオチドの位置の類似性を比較するのに一般的に用いられる標準的な方法によって判定されうる。
【0074】
「発現ベクター」という用語は、本明細書で用いられる場合、適切な宿主細胞へのトランスフェクションにより、宿主細胞内の適切な発現レベルの組換え遺伝子産物をもたらす単離および精製DNA分子を含む。組換えまたは遺伝子産物をコードするDNA配列に加えて、発現ベクターは、DNAコード配列のmRNAへの効率のよい転写および宿主細胞株におけるmRNAのタンパク質への効率のよい翻訳に必要である調節DNA配列を含む。
【0075】
「宿主細胞」または「宿主細胞株」という用語は、本明細書で用いられる場合、培養物中で成長し、所望の組換え産物タンパク質を発現しうる、任意の細胞、とりわけ哺乳類細胞を含む。
【0076】
組換えポリペプチドおよびタンパク質は、原核生物(例えば、大腸菌(E. coli))、真核生物(例えば、酵母、昆虫、脊椎動物、哺乳類)およびin vitro発現システムのような様々な発現システムで産生されうる。タンパク質ベースの生物製剤の大規模生産のための最も一般的に用いられる方法は、DNAベクターのトランスフェクションによる宿主細胞への遺伝物質の導入に依拠している。ポリペプチドの一過性発現は、宿主細胞の一過性トランスフェクションにより達成されうる。宿主細胞ゲノムへのベクターDNAの組込みは、安定にトランスフェクトされている細胞株をもたらし、そのような安定な細胞株の増殖は、ポリペプチドおよびタンパク質の大規模生産に用いてもよい。
【0077】
選択的スプライシングにより真核細胞中で複数のポリペプチドを産生させる方法は、WO2005/089285に記載されている。2種の異なる発現カセットが単一プロモーターの制御下にあり、発現カセットは、それらの選択的スプライシングおよび所望の比率の2つ以上の独立遺伝子産物としての発現を可能にするスプライス部位を有する。
【0078】
しかし、本発明者らは、2つの完全に独立したタンパク質が産生され、したがって、原形質膜結合変異体は、可溶性ポリペプチド変異体の所望の産物の質を示さないので、そのようなアプローチは、可溶性ポリペプチド変異体および原形質膜結合変異体の発現に限定されることを見いだした。
【0079】
異種タンパク質を発現する真核細胞を選択する方法ならびに選択的にスプライシングする可能性のある核酸からの可溶性ポリペプチド変異体および原形質膜結合変異体の発現は、WO2007/131774に記載されている。原形質膜結合変異体は、それを発現する細胞に結合され、成功裏にトランスフェクトされた細胞を単離するためのマーカーとして用いられうる。
【0080】
しかし、本発明者らは、膜表示ポリペプチドに対する可溶性ポリペプチドの発現の比を制御する手段が存在しないので、そのようなアプローチは限定的なものであることを見いだした。選択的スプライシングは、上で述べたように、ポリペプチドの異なる変異体を発現させうる方法であるが、選択的スプライシング機構は、非常に多様であるので、スプライシング比を制御する能力がなければ、発現するポリペプチド変異体の量も多様となる。
【0081】
したがって、発現ポリペプチドの一部が細胞膜上に発現するように転送される細胞発現システムは、可溶性ポリペプチドの力価を低減させてきた。ポリペプチドの細胞膜発現は、高発現クローンを単離するための有用なマーカーであるが、細胞膜上に発現するポリペプチドの量の何らかの形の制御がない場合、可溶性ポリペプチドの力価は、かなり低減しうる。さらに、2つのポリペプチドが同じ培養条件下で同じレベルで発現することはなく、したがって、1つのポリペプチドの可溶性および細胞膜発現のために開発された方法がすべてのポリペプチドに適することはありそうもない。
【0082】
上述の選択的スプライシングアプローチとは対照的に、本出願人らは、細胞クローン選択を可能にするのに十分な量のポリペプチドの細胞膜発現を可能にしながら、発現する可溶性ポリペプチドの量を最適化するために発現構築物の成分を改変しうる、可溶性および細胞膜表示ポリペプチドの両方の発現のための選択的スプライシングアプローチを設計した。
【0083】
抗体重鎖の発現のための本発明の例示的な発現構築物において、IgG1重鎖定常領域は、分泌重鎖のオープンリーディングフレームを終結させる停止コドンの上流の弱いスプライスドナーを含む。膜貫通領域がスプライシングの後にIgG1重鎖のオープンリーディングフレームを含む枠内にあるように、スプライスアクセプター部位および膜貫通領域をコードするDNA配列に続いて、停止コドンおよび停止コドンの3’側に位置するポリ(A)部位がある。得られた選択的オープンリーディングフレームは、それぞれ停止コドンおよびポリ(A)部位により終結される。出願人らは、この発現構築物を改変することにより、それらがスプライス比、およびしたがって、可溶性ポリペプチド対膜表示ポリペプチドの量を変化させうることを見いだした。
【0084】
これらの改変は、例えば、異種膜貫通領域の使用を含みうる。IgG1の天然に存在する膜貫通領域は、ひと続きの連結アミノ酸ならびにドメインM1およびM2により構成されている。非免疫グロブリン膜貫通領域である膜貫通領域によるIgG1膜貫通領域の置換により、例えば、マウスB7-1膜貫通領域による置換により、膜表示ポリペプチドの量を増加させうる。実施例2の
図2に示すように、一過性にトランスフェクトした細胞のほぼ40%が膜表示IgG1について陽性であり、これは、IgG1膜貫通領域を含む構築物でトランスフェクトした細胞の百分率(20%まで)と比べて有意な増加である。天然IgG1膜貫通領域の使用がIgG1の細胞膜表示のために最も効果的であって、異種膜貫通領域の使用はそうでないことが予想されることから、そのような結果は、驚くべきことである。好ましくは、本発明の発現構築物に用いる膜貫通領域は、ヒト血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)遺伝子、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体、ヒトおよびマウスB7-1、ヒトICAM-1、ヒトerbb1、ヒトerbb2、ヒトerbb3、ヒトerbb4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4のようなヒト線維芽細胞増殖因子受容体、ヒトVEGFR-1、ヒトVEGFR-2、ヒトエリスロポエチン受容体、ヒトPRL-R、プロラクチン受容体、ヒトEphA1、エフリンA型受容体1、ヒトインスリン、IGF-1受容体、ヒト受容体様タンパク質チロシンホスファターゼ、ヒトニューロピリン、ヒト主要組織適合性遺伝子複合体クラスII(アルファおよびベータ鎖)、ヒトインテグリン(アルファおよびベータファミリー)、ヒトシンデカン、ヒトミエリンタンパク質、ヒトカドヘリン、ヒトシナプトブレビン-2、ヒトグリコフォリン-A、ヒトBnip3、ヒトAPP、アミロイド前駆体タンパク質、ヒトT細胞受容体アルファ(PTCRA)およびT-細胞受容体ベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3ゼータおよびCD3イプシロンの膜貫通領域からなる群から選択される膜貫通領域を含む。好ましい実施形態では、本発明に用いる膜貫通領域は、ヒトB7-1膜貫通領域、マウスB7-1膜貫通領域、PDGFR膜貫通領域、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体膜貫通領域およびerbb-2膜貫通領域からなる群から選択される。マウスB7-1膜貫通領域がより好ましく、配列番号66に示すマウスB7-1膜貫通領域が最も好ましい。
【0085】
分泌ポリペプチド対膜表示ポリペプチドとの量のスプライス比を変化させるためのさらなる改変は、膜貫通領域をコードするエクソンの上流のポリピリミジン(ポリ(Y))トラクトにおけるピリミジン塩基の数を変更すること、ならびに/またはスプライスドナーおよびアクセプターの共通配列を改変することを含む。ピリミジン塩基(Ys)の数を減少させることは、スプライス比を分泌タンパク質の方にシフトさせることが実施例3で示された。ピリミジン塩基が構築物に含まれていない場合、目的のタンパク質の表面発現は存在しない。スプライス比を細胞膜発現から離れる方向にシフトさせるそのような機構は、細胞膜上で強く発現するが、より弱い可溶性発現を示すタンパク質には有用であろう。ポリ(Y)トラクトにおけるピリミジン塩基の数は、0~30塩基の間を含みうる。好ましくは、ポリ(Y)トラクトは、20個以下のピリミジン塩基、より好ましくは15個以下の塩基、さらにより好ましくは10個以下の塩基を含みうる。
【0086】
膜表示タンパク質の量の増加は、可溶性ポリペプチドの力価に負の影響を及ぼしうるので、発明者らは、膜表示ポリペプチドの量に影響を及ぼすことなく宿主細胞における可溶性ポリペプチド発現を増加させうる発現構築物の改変を開発した。イントロンにおけるポリ(A)部位の付加は、有意なレベルの細胞膜表示を維持しながら、可溶性ポリペプチド力価を最大50%増加させることが見いだされた(M1M2膜貫通領域について)。本発明のさらなる実施形態では、ポリ(A)部位は、発現構築物のイントロンに位置する。
【0087】
本発明のある態様では、発現構築物は、ポリペプチド多量体およびタンパク質、例えば、抗体もしくはその断片または二重特異性抗体もしくはその断片に適している。
【0088】
「抗体」という用語は、本明細書において、全抗体および任意のその抗原結合断片またはその単鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合により相互連結した少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、またはその抗原結合断片を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略記する)および重鎖定常領域からなっている。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインからなっている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略記する)および軽鎖定常領域からなっている。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLからなっている。VHおよびVL領域は、配列が超可変性であり、かつ/または抗原認識に関与し、かつ/または構造的に定義されたループを通常形成し、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性の領域と、これを区切る、フレームワーク領域(FRもしくはFW)と呼ばれる、より保存的である領域と、にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置された3つのCDRおよび4つのFWから構成されている:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4。FW1、FW2、FW3およびFW4のアミノ酸配列は、すべてが一緒になって、本明細書で述べたVHまたはVLの「非CDR領域」または「非延長CDR領域」を構成する。
【0089】
重および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主の組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介しうる。
【0090】
抗体は、定常領域によって遺伝学的に決定される、アイソタイプとも呼ばれる、クラスに分類される。ヒト定常軽鎖は、カッパ(Cκ)およびラムダ(C)軽鎖と分類される。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)またはイプシロン(ε)と分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと定義する。IgGクラスは、治療の目的のために最も一般的に用いられる。ヒトでは、このクラスは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブクラスを含む。
【0091】
「Fab」または「Fab領域」という用語は、本明細書で用いられる場合、VH、CH1、VLおよびCL免疫グロブリンドメインを含むポリペプチドを含む。Fabは、単独でのこの領域、または全長抗体もしくは抗体断片の中でのこの領域を意味する。
【0092】
「Fc」または「Fc領域」という用語は、本明細書で用いられる場合、最初の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。したがって、Fcは、IgA、IgDおよびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにIgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインに対する柔軟ヒンジN末端ドメインを指す。IgAおよびIgMについては、Fcは、J鎖を含みうる。IgGについては、Fcは、免疫グロブリンドメインCガンマ2およびCガンマ3(C2およびC3)ならびにCガンマ1(C1)とCガンマ2(C2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変化しうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、そのカルボキシ末端に対する残基C226またはP230を含むと通常定義され、ここでナンバリングは、EUナンバリングシステムに従っている。ヒトIgG1については、Fc領域は、そのカルボキシ末端に対する残基P232を含むと本明細書で定義され、ここでナンバリングは、EUナンバリングシステムに従っている(Edelman GMら、(1969) Proc Natl Acad Sci USA、63巻(1号)、78~85頁)。Fcは、単独でのこの領域、またはFcポリペプチド、例えば、抗体の中でのこの領域を意味しうる。
【0093】
「全長抗体」という用語は、本明細書で用いられる場合、可変および定常領域を含む、抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を含む。例えば、ヒトおよびマウスを含む大部分の哺乳動物では、IgGクラスの全長抗体は、四量体であり、2つの免疫グロブリン鎖の2つの同一の対からなっており、各対が1つの軽および1つの重鎖を有し、各軽鎖は、免疫グロブリンドメインVLおよびCLを含み、各重鎖は、免疫グロブリンドメインVH、CH1(C1)、CH2(C2)およびCH3(C3)を含む。一部の哺乳動物、例えば、ラクダおよびラマでは、IgG抗体は、2つの重鎖のみからなり、各重鎖は、Fc領域に結合した可変ドメインを含みうる。
【0094】
抗体断片は、(i)FabおよびFab-SHを含む、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)単一可変部からなるdAb断片(Ward ESら、(1989) Nature、341巻、544~546頁)、(v)2つの連結されたFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片、(vi)VHドメインおよびVLドメインが、2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成しうるペプチドリンカーにより連結されている、単鎖Fv分子(scFv)(Bird REら、(1988) Science 242:423~426頁;Huston JSら、(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85:5879~83頁)、(vii)二重特異性単鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)、(viii)遺伝子融合により構築された「ダイアボディ」または「トリアボディ」、多価または多重特異性断片(Tomlinson I & Hollinger P (2000) Methods Enzymol. 326巻、461~79頁;WO94/13804号;Hollinger Pら、(1993) Proc Natl Acad Sci USA、90巻、6444~48頁)ならびに(ix)同じまたは異なる抗体に遺伝学的に融合させたscFv(Coloma MJ & Morrison SL (1997) Nature Biotech、15巻(2号)、159~163頁)を含むが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で述べる発現構築物により発現されうる抗体およびその断片は、AXL、Bc12、HER2、HER3、EGF、EGFR、VEGF、VEGFR、IGFR、PD-1、PD-1L、BTLA、CTLA-4、GITR、mTOR、CS1、CD3、CD16、CD16a、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD28、CD30、CD32b、CD33、CD38、CD40、CD52、CD64、CD79、CD89、CD137、CD138、CA125、cMet、CCR6、MUCI、PEM抗原、Ep-CAM、EphA2、17-1a、CEA、AFP、HLAクラスII、HLA-DR、HSG、IgE、IL-12、IL-17a、IL-18、IL-23、IL-1アルファ、IL-1ベータ、GD2-ガングリオシド、MCSP、NG2、SK-I抗原、Lag3、PAR2、PDGFR、PSMA、Tim3、TF、CTLA4、TL1A、TIGIT、SIRPa、ICOS、Trem12、NCR3、HVEM、OX40、VLA-2および4-1BBからなる群から選択される抗原に結合しうる。
【0096】
二重特異性またはヘテロ二量体抗体は、多年にわたり当技術分野で利用可能であった。しかし、そのような抗体の作製は、所望の二重特異性抗体の産生収率を著しく低減させ、産物の均一性を達成するための高度な精製処置を必要とする、誤対合副産物の存在をしばしば伴う。免疫グロブリン重鎖の誤対合は、その大部分がCH3ドメインホモ二量体の2つのサブユニット間の人工の相補的ヘテロ二量体インターフェースの設計によるヘテロ二量体化のために抗体重鎖を遺伝子操作する、いくつかの合理的な設計戦略を用いることによって低減することができる。加工されたCH3ヘテロ二量体ドメイン対の最初の報告は、ヘテロ二量体Fc部分を作製するための「空洞中突起(protuberance-into-cvity)」アプローチを記載したCarterらによって行われた(US5,807,706;「穴中ノブ(knobs-into-holes)」;Merchant AMら、(1998) Nat Biotechnol、16巻(7号)、677~81頁)。代替設計が最近策定され、WO2007110205に記載されているモジュールのコア組成を改変することによる新規CH3モジュール対の設計またはWO2007147901もしくはWO2009089004に記載されているモジュール間の相補的塩架橋の設計を含む。CH3遺伝子組換え戦略の欠点は、これらの技術が依然としてかなりの量の望ましくないホモ二量体の生成をもたらすことである。主としてヘテロ二量体が生成する二重特異性抗体を作製するためのより好ましい技術は、PTC公開番号:WO2012/131555に記載されている。二重特異性抗体は、多くの標的、例えば、腫瘍細胞上にある標的および/またはエフェクター細胞上にある標的に対して作製しうる。好ましくは、二重特異性抗体は、AXL、Bcl2、HER2、HER3、EGF、EGFR、VEGF、VEGFR、IGFR、PD-1、PD-1L、BTLA、CTLA-4、GITR、mTOR、CS1、CD3、CD16、CD16a、CD19、CD20、CD22、CD25、CD27、CD28、CD30、CD32b、CD33、CD38、CD40、CD52、CD64、CD79、CD89、CD137、CD138、CA125、cMet、CCR6、MUCI、PEM抗原、Ep-CAM、EphA2、17-1a、CEA、AFP、HLAクラスII、HLA-DR、HSG、IgE、IL-12、IL-17a、IL-18、IL-23、IL-1アルファ、IL-1ベータ、GD2-ガングリオシド、MCSP、NG2、SK-I抗原、Lag3、PAR2、PDGFR、PSMA、Tim3、TF、CTLA4、TL1A、TIGIT、SIRPa、ICOS、Trem12、NCR3、HVEM、OX40、VLA-2および4-1BBからなる群から選択される2つの標的に結合しうる。
【0097】
さらなる態様では、本発明は、上述のように発現構築物または発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、ヒトまたは非ヒト細胞でありうる。通常、宿主細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞および酵母細胞からなる群から選択される。好ましい宿主細胞は、哺乳類細胞である。哺乳類宿主細胞の好ましい例は、ヒト胚腎細胞(Graham FLら、(1977) J. Gen. Virol. 36巻、59~74頁)、MRC5ヒト線維芽細胞、983Mヒト黒色腫細胞、MDCKイヌ腎細胞、Sprague-Dawleyラットから単離されたRF培養ラット肺線維芽細胞、B16BL6マウス黒色腫細胞、P815マウスマスト細胞腫細胞、MT1A2マウス乳腺癌細胞、PER:C6細胞(Leiden、Netherlands)およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または細胞株(Puck TTら、(1958)、J. Exp. Med. 108巻、945~955頁)を含み、これらに限定されない。
【0098】
とりわけ好ましい実施形態では、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞または細胞株である。適切なCHO細胞株は、例えば、CHO-S(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)、CHO K1(ATCC CCL-61)、CHO pro3-、CHO DG44、CHO P12またはdhfr-CHO細胞株DUK-BII(Urlaub G & Chasin LA (1980) PNAS 77巻(7号)、4216~4220頁)、DUXBIl(Simonsen CC & Levinson AD (1983) PNAS 80巻(9号)、2495~2499頁)またはCHO-K1SV(Lonza、Basel、Switzeland)を含む。
【0099】
さらなる態様では、本開示は、宿主細胞に上述の発現構築物または発現ベクターをトランスフェクトすることと、宿主細胞を培養することと、目的のポリペプチドの細胞膜発現を検出することと、所望の細胞膜発現を有する宿主細胞クローンを選択することとを含む、目的のポリペプチドを発現する宿主細胞を選択する方法を提供する。さらなるステップにおいて、目的のポリペプチドを宿主細胞から回収しうる。ポリペプチドは、好ましくは異種、より好ましくはヒトポリペプチドである。実施例で示すように、目的のポリペプチドの細胞膜発現のレベルは、発現した可溶性ポリペプチドのレベルに正比例する。したがって、これにより、高レベルの目的のポリペプチドを発現する宿主細胞クローンの定量的選択が可能となる。
【0100】
好ましい実施形態では、本発明は、宿主細胞に上述の発現構築物または発現ベクターをトランスフェクトすることと、宿主細胞を培養することと、目的の多量体タンパク質の細胞膜発現を検出することと、所望の細胞膜発現を有する宿主細胞クローンを選択することとにより多量体タンパク質、好ましくはヘテロ二量体抗体を発現する宿主細胞を選択するin vitroでの方法を提供する。さらなるステップにおいて、目的の多量体タンパク質、例えば、ヘテロ二量体抗体を宿主細胞から回収しうる。実施例で示すように、不要のホモ二量体抗体種と比べてより多くのヘテロ二量体抗体を表示する宿主細胞は、容易に選択されうる。すなわち、宿主細胞クローンの定量的な選択を可能にするものであってもよい。
【0101】
発現構築物または発現ベクターを本発明による宿主細胞にトランスフェクトするために、所定の宿主細胞型に適切である場合、当技術分野で周知のもののような任意のトランスフェクション技術、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム共沈法、カチオンポリマー媒介トランスフェクション、リポフェクションを用いてもよい。本発明の発現構築物または発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞は、一過性に又は安定にトランスフェクトされた細胞株であると解釈されることに留意されたい。したがって、本発明によれば、本発現構築物または発現ベクターは、エピソーム的に保持する、すなわち一過性にトランスフェクトすることができ、あるいは宿主細胞のゲノムに安定に組み込む、すなわち安定にトランスフェクトすることができる。
【0102】
一過性トランスフェクションは、ベクター上選択マーカーの任意の選択圧の不適用によって特徴付けられる。一般的にトランスフェクション後2日から最大10日の間継続する一過性発現実験では、トランスフェクトされた発現構築物または発現ベクターは、エピソームエレメントとして保持され、まだゲノムに組み込まれていない。すなわち、トランスフェクトされたDNAは、通常宿主細胞ゲノムに組み込まれない。宿主細胞は、トランスフェクトDNAを失う傾向があり、トランスフェクトDNAを失った細胞は、一過性トランスフェクト細胞プールの培養により集団中でトランスフェクト細胞よりも過剰に成長する傾向がある。したがって、発現は、トランスフェクション直後の期間中に最も強く、時間とともに低下する。好ましくは、本発明による一過性形質移入体は、トランスフェクション後2日から10日までの期間までの選択圧が存在しない細胞培養物中に維持されている細胞と理解される。
【0103】
本発明の好ましい実施形態では、宿主細胞、例えば、CHO宿主細胞は、本発明の発現構築物または発現ベクターで安定にトランスフェクトされる。安定トランスフェクションは、ベクターDNAのような新たに導入された外来DNAが、通常はランダム非相同的組換え事象によって、ゲノムDNAに組み込まれた状態になることを意味する。ベクターDNAのコピー数と同時に遺伝子産物の量は、ベクター配列が宿主細胞のDNAへの組込みの後に増幅された細胞株を選択することによって増加させることができる。したがって、そのような安定組込みは、遺伝子増幅のための選択圧のさらなる増加にさらされることにより、CHO細胞における二重微小染色体を生じさせる可能性がある。さらに、安定トランスフェクションは、例えば、ゲノム組込みに際して不必要にされる細菌コピー数制御領域のような組換え遺伝子産物の発現に直接関連しないベクター配列部分の喪失をもたらしうる。したがって、トランスフェクト宿主細胞は、発現構築物または発現ベクターの少なくとも一部または種々の部分をゲノムに組み込んだ。
【0104】
さらなる態様では、本開示は、哺乳類宿主細胞からの異種ポリペプチドの発現のための上述の発現構築物または発現ベクターの使用、とりわけ、哺乳類宿主細胞からの異種ポリペプチドのin vitroでの発現のための上述の発現構築物または発現ベクターの使用を提供する。好ましい実施形態では、上述の発現構築物または発現ベクターは、哺乳類宿主細胞からのヘテロ二量体抗体のin vitroでの発現のために用いる。
【0105】
本発明で述べる発現構築物は、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する組換え宿主細胞を選択する方法に用いられうる。好ましくは、目的のタンパク質は、抗体である。該方法は、
(i)
(a)5’から3’方向に、
プロモーターと、
抗体重鎖をコードするエクソンと、
イントロン内のスプライスドナー部位とスプライスアクセプター部位との間に第1の停止コドンが位置する、スプライスドナー部位、イントロンおよびスプライスアクセプター部位と、
改変免疫グロブリン膜貫通領域または改変もしくは非改変非免疫グロブリン膜貫通領域から選択される膜貫通領域をコードする第2のエクソンと、
第2の停止コドンと、
ポリ(A)部位と
を含む発現構築物と、
(b)抗体軽鎖をコードする発現構築物と
を宿主細胞に共トランスフェクトすること、
(ii)トランスフェクト宿主細胞を抗体の発現に適する条件下で培養することと、
(iii)抗体の細胞膜発現を検出すること、ならびに
(iv)細胞膜の表面上に抗体を表示する宿主細胞を選択すること
を含む。
【0106】
さらに、上述の方法は、scFv-Fcをコードする第3の発現構築物により、またはマウスB7-1膜貫通領域のような非免疫グロブリン膜貫通領域のスプライシングを用いてscFv-Fcをコードする第3の発現構築物により宿主細胞が共トランスフェクトされている、二重特異性抗体を発現する組換え宿主細胞の選択に用いられうる。
【0107】
所望の宿主細胞の選択は、当技術分野で公知の方法により行うことができる。そのような方法は、蛍光、ELISA、ウエスタンブロッティング、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、ラジオイムノアッセイまたは目的のタンパク質を認識し、それに結合するアプタマーなどの抗体もしくは特定の分子を用いることによる方法を含む。好ましくは、宿主細胞の膜上に表示された目的のタンパク質は、蛍光プローブにより検出され、または蛍光標識に連結され、したがって、蛍光活性化細胞選別もしくはFACSを用いた選択が可能になる。
【0108】
タンパク質の発現および回収は、当業者に公知の方法により行ってもよい。
【0109】
さらなる態様では、本開示は、障害の治療用の医薬の調製のための上述の発現構築物または発現ベクターの使用を提供する。
【0110】
さらなる態様では、本開示は、障害の治療用の医薬として使用するための上述の発現構築物または発現ベクターを提供する。
【0111】
さらなる態様では、本開示は、遺伝子治療に使用するための上述の発現構築物または発現ベクターを提供する。
実施例
【実施例1】
【0112】
ベクターのクローニング
導入
調製した選択的スプライシング構築物は、ヒトighg1遺伝子のスプライスドナー配列を含んでいた。イントロン(スプライスアクセプター部位を含む)は、ニワトリcTNTイントロン4に由来していたが、エクソンは、ighg1遺伝子の膜貫通領域(以下ではM1M2と呼ぶ)、T細胞受容体アルファ(PTCRA)の膜貫通領域、またはマウスB7-1遺伝子に由来していた。いくつかの構築物において、マウスB7-1膜貫通ドメインは、天然に存在する膜貫通ドメインおよびこれらの改変を含む、他の膜貫通ドメインにより置換した。さらに、B7-1膜貫通領域におけるB7-1細胞質ゾル側末端は、ER輸出シグナルを含むまたは含まないいくつかの他の細胞質ゾル側末端により置換した。
【0113】
IgG1またはIgG4フォーマットの全長抗体の発現のために、重および軽鎖の同時の発現が必要であった。すべてのサブユニットは、共トランスフェクション戦略を用いて別個のプラスミドを用いて発現させた。選択的スプライシング構築物は、IgG1またはIgG4重鎖の発現のために用いた。IgG1またはIgG4の軽鎖は、同じ発現ベクターの主鎖にクローニングしたが、選択的スプライシングを用いなかった。
【0114】
社内で作製された二重特異性抗体フォーマット(BEAT(登録商標)technology;WO2012/131555号に記載)の発現のために、重鎖、軽鎖およびscFv-Fcの3種の異なるサブユニットを細胞にトランスフェクトしなければならなかった。二重特異性抗体フォーマットの膜表示のための最善の戦略を評価するために、重鎖およびscFv-Fcの発現のためにスプライスおよび選択的スプライシング構築物をクローニングした。軽鎖は、同じ発現ベクターの主鎖にクローニングしたが、選択的スプライシングを用いなかった。表1にこの実施例で作製したすべての構築物を要約する。
【0115】
【表1】
*示した配列は、DNA配列については非スプライスORFの最後の5アミノ酸から発現構築物の末端まで、タンパク質配列については同じアミノ酸から融合膜貫通領域までに及ぶ。ただしGSC314(配列番号48)、GSC315(配列番号294)、GSC5607(配列番号296)、GSC5644(配列番号49)、GSC5608(配列番号51)、GSC5540(配列番号302)、GSB59(配列番号79)(完全なORF配列)を除く。
【0116】
材料および方法
LB培養プレート
500mlの水を16gのLB寒天(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)(1リットルのLBは10gのトリプトン、5gの酵母エキスおよび10gのNaClを含む)と混合し、沸騰させた。冷却後、それぞれの抗生物質を溶液に加え、これを平板化した(アンピシリンプレートは100g/mlおよびカナマイシンプレートは50g/ml)。
【0117】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
すべてのPCRは、50lの最終容積中1lのdNTP(各dNTPについて10mM;Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)、2単位のPhusion(登録商標)DNAポリメラーゼ(Finnzymes Oy、Espoo、Finland)、25nmolのプライマーA(Microsynth、Balgach、SwitzerlandまたはOperon、Ebersberg、Germany)、25nmolのプライマーB(Microsynth、Balgach、SwitzerlandまたはOperon、Ebersberg、Germany)、10lの5×HF緩衝液(7.5mM MgCl2、Finnzymes、Espoo、Finland)、1.5lのジメチルスルホキシド(DMSO、Finnzymes、Espoo、Finland)および1~3lの鋳型(10~20ng)を用いて実施した。用いたすべてのプライマーを表2に示す。
【0118】
PCRは、98℃で3分間の最初の変性により開始し、その後、35サイクルの98℃での30秒の変性、プライマーに固有の温度(GC含量による)での30秒のアニーリングおよび72℃での2分の延長を行った。72℃で10分間の最終延長は、冷却し、4℃に維持する前に行った。
【0119】
【0120】
制限消化
すべての制限消化のために、約1gのプラスミドDNA(NanoDrop、ND-1000分光光度計(Thermo Scientific、Wilmington、DE、USA)により定量した)を10~20単位の各酵素、4lの対応する10× NEBuffer(NEB、Ipswich、MA、USA)と混合し、容積を滅菌H2Oで40lとした。反応物を酵素に必要な温度で1時間インキュベートした。
【0121】
主鎖の各予備消化の後、1単位のウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP;NEB、Ipswich、MA、USA)を加え、混合物を37℃で30分間インキュベートした。
【0122】
PCRクリーンアップ
消化を可能にするために、Macherey Nagel Extract IIキット(Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)またはGel and PCR clean-upキット(同じキットの新たな商標名)を用いて40μlの溶出緩衝液を用いて製造業者の取扱説明書に従って制限消化の前にすべてのPCR断片を精製した。このプロトコールは、DNA試料の緩衝液を交換するためにも用いた。
【0123】
DNA抽出
ゲル電気泳動は、1~2%アガロースゲルを用いて実施した。これらは、必要量のUltraPure(商標)アガロース(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)および1×トリス酢酸EDTA緩衝液(TAE、pH8.3;Bio RAD、Munich、Germany)を用いて調製した。DNAの染色のために1lのGel Red Dye(Biotum、Hayward、CA、USA)を100mlのアガロースゲルに加えた。サイズマーカーとして、2lの1kb DNAラダー(NEB、Ipswich、MA、USA)を用いた。電気泳動は、125ボルトで約1時間行った。
【0124】
目的のバンドをアガロースゲルから切り取り、Extract IIキット(Macherey-Nagel、Oensingen、Switzerland)もしくはGel and PCR clean-upキット(同じキットの新たな商標名)を用いて、またはQiaquick Gel抽出キット(Qiagen、Hilden、Germany)を用いて40μlの溶出緩衝液を用いて製造業者の取扱説明書に従って精製した。
【0125】
ライゲーション
各ライゲーションのために、4lのインサートを1lのベクター、400単位のリガーゼ(T4 DNAリガーゼ、NEB、Ipswich、MA、USA)および1lの10×リガーゼ緩衝液(T4 DNAリガーゼ緩衝液;NEB、Ipswich、MA、USA)と混合し、UHP水を用いて10l最終容積まで満たした。混合物を室温で1~2時間インキュベートした。
【0126】
ライゲーション産物のコンピテント細菌への形質転換
ライゲーション産物の形質転換のために、コンピテント細菌「TOP10」(One Shot(登録商標)TOP10コンピテント大腸菌;Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)を用いた。25~50lの細菌を氷上で5分間解凍した。次いで、3~5lのライゲーション産物をコンピテント細菌に加え、42℃で1分間の短時間熱ショックの前に氷上で20~30分間インキュベートした。次いで、500lのS.O.C培地(Invitogen、Carlsbad、CA、USA)を各チューブごとに加え、撹拌しながら37℃で1時間インキュベートした。最後に、細菌をアンピシリンまたはカナマイシンを含むLBプレート(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)上にのせ、37℃で終夜インキュベートした。
【0127】
プラスミドの小規模調製
小規模調製のために、形質転換した細菌のコロニーを2.5mlのLBおよびアンピシリンまたはカナマイシン中で37℃、200rpmで6~16時間増殖させた。DNAは、大腸菌用プラスミド精製キット(NucleoSpin QuickPureもしくはNucleoSpin Plasmid(Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)またはQiagen QuickLyse Miniprep(Qiagen))を用いて製造業者の取扱説明書に従って抽出した。
【0128】
小規模調製によるプラスミドDNAは、NanoDrop ND-1000分光光度計(Thermo Scientific、Wilmington、DE、USA)を用いて、260nmにおける吸光度を測定し、1.8から2の間でなければならなかったOD260nm/OD280nmの比を評価することによって1回定量した。試料を配列の確認のためにFasteris SA(Plan-les-Quates、Switzerland)に送る前に対照消化を実施した。
【0129】
プラスミドの中規模調製
中規模調製のために、形質転換した細菌を200mlのLBおよびアンピシリン(またはカナマイシン)中で37℃で終夜増殖させた。次いで、培養物を725gで20分間遠心分離し、プラスミドを市販のキット(NucleoBond Xtra Midi;Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて製造業者の取扱説明書に記載されたプロトコールに従って精製した。
【0130】
中規模調製によるプラスミドDNAは、NanoDrop ND-1000分光光度計を用いて、260nmにおける吸光度を測定し、制限消化により確認された1.8から2の間でなければならなかったOD260nm/OD280nmの比を評価することによって3回定量した。次いで試料を配列決定のために送った(Fasteris SA、Plan-les-Ouates、Switzerland)。
【0131】
プラスミドの大規模調製
大規模調製のために、形質転換した細菌を500mlのLBおよびアンピシリン(またはカナマイシン)中で37℃で終夜増殖させた。培養物を725gで20分間遠心分離し、プラスミドを市販のキット(NucleoBond PC500またはNucleoBond Xtra Maxi;Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて製造業者の取扱説明書に記載されたプロトコールに従って精製した。
【0132】
大規模調製によるプラスミドDNAは、NanoDrop ND-1000分光光度計を用いて、260nmにおける吸光度を測定し、制限消化により確認された1.8から2の間でなければならなかったOD260nm/OD280nmの比を評価することによって3回定量した。次いで試料を配列決定のために送った(Fasteris SA、Plan-les-Ouates、Switzerland)。
【0133】
プラスミドのギガレベルの調製
ギガレベルの調製のために、形質転換した細菌を1500mlのLBおよびアンピシリン(またはカナマイシン)中で37℃で終夜増殖させた。培養物を725gで20分間遠心分離し、プラスミドを市販のキット(NucleoBond PC10000;Macherey Nagel、Oensingen、Switzerland)を用いて製造業者の取扱説明書に記載されたプロトコールに従って精製した。
【0134】
ギガレベルの調製によるプラスミドDNAは、NanoDrop ND-1000分光光度計を用いて、260nmにおける吸光度を測定し、制限消化により確認された1.8から2の間でなければならなかったOD260nm/OD280nmの比を評価することによって3回定量した。次いで試料を配列決定のために送った(Fasteris SA、Plan-les-Ouates、Switzerland)。
【0135】
結果
IgG1抗体の重鎖のクローニング
本特許に用いたIgG1重鎖をコードする遺伝子は、GeneArt(Regensburg)によりチャイニーズハムスター細胞における発現のために最適化された。重鎖の可変部および定常部は、GeneArtにより2つの異なるプラスミドで提供された。受領後、GeneArt構築物を水に可溶化し、重鎖定常領域および重鎖可変領域をKpnIおよびApaI酵素を用いて一緒にクローニングした。この作業は、外部CROにより実施され、融合産物がGlenmarkに引き渡された。この融合構築物の配列決定の後、理論配列と比較した重鎖定常領域の配列の変化がFc領域のCH2ドメインに特定された(EEMTKとDELTK)。メガプライマーPCRによりこの領域を変更するようにプライマーを設計し、オープンリーディングフレームの5’および3’側の好都合な制限部位を同時に導入した。
【0136】
プライマーGlnPr497(配列番号2)およびGlnPr498(配列番号3)を用いた第1のPCRを元の構築物について実施した。得られたアンプリコン(304bps)は、鋳型として第2のプライマーGlnPr501および元の構築物を用いた、第2のPCRに種々の濃度でメガプライマーとして用いた。最終PCR産物をゲル精製し、シャトルベクターpCR-blunt(Zero Blunt(登録商標)PCR Cloning Kit、Invitrogen、LifeTechnologies)にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、インサート配列は正しかったが、オープンリーディングフレームの5’および3’側の制限部位が欠落していたと思われた。したがって、インサートを、プライマーGlnPr501(配列番号4)およびGlnPr498(配列番号3)ならびにより高いアニーリング温度(64℃)を用いて再増幅した。アンプリコンをゲル精製し、pCR-blunt(Zero Blunt(登録商標)PCR Cloning Kit、Invitrogen、LifeTechnologies)にクローニングした。正しい制限パターンを有する1つの小規模調製物を、制限酵素HindIIIおよびXbaIを用いてシャトルベクター、pSEL1にサブクローニングするために選択した。小規模調製物のスクリーニングの後、大規模調製物を生成させた。この大規模調製物のインサートを制限酵素XbaIおよびHindIIIを用いて再び切断し、同じ酵素を用いて開き、CIPで処理した、プラスミドpGLEX41(GSC281、配列番号304)の主鎖にクローニングした。pGLEX41は、発現のための標準的な自社製ベクターであり、マウスCMVプロモーターとそれに続く構成的にスプライスされたイントロン、マルチクローニングサイト(MCS)およびSV40ポリ(A)配列からなる発現カセットを含む。小規模調製物のスクリーニングの後、pGLEX41_HCの大規模調製物を生成させ、プラスミドバッチ番号GSC314を付与した。同じDNAのさらなる中規模調製物またはギガレベルの調製物は、プラスミドバッチ番号GSC314a、GSC314b、GSC314c、GSC314dおよびGSC314eを付与した(これらのすべての調製物は、DNA配列決定により同一であることが確認され、GSC314プラスミド(配列番号48)と呼ぶものとする)。
【0137】
IgG1抗体の膜表示重鎖用の選択的スプライシング発現ベクターのクローニング
IgG1フォーマット抗体の重鎖のコード領域を、プライマーGlnPr1518(配列番号11)、GlnPr1519(配列番号12)およびGlnPr1520(配列番号13)ならびに鋳型としてのプラスミドpGLEX41_HC(GSC314、配列番号48)を用いたPCRにより増幅した。得られたPCR産物は、アンプリコンの5’末端および3’末端におけるNheI制限部位を含んでおり、ighg1遺伝子(配列番号65)のNCBIデータベース入力の最後の40bpsならびにHindIII制限部位を正確に含めるために改変した。3’末端の改変は、IgG1重鎖の定常部のC末端領域における天然スプライスドナー部位を再構成するために行った。PCR産物は、制限酵素NheIおよびHindIIIを用いて切断し、同じ酵素およびCIPedを用いて切断したpGLEX41(GSC281、配列番号304)にクローニングした。得られたベクターは、pGLEX41_HC-AS(プラスミドバッチ番号GSC3836、配列番号287)と呼び、制限消化および配列解析により確認した。
【0138】
ニワトリトロポニン(cTNT)イントロン番号4(配列番号69)を、その配列を含む自社製プラスミド(GSC2819、配列番号67)からプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr1517(配列番号10)を用いて増幅した。トロポニンは、心筋および胚骨格筋においてのみ発現する。90%を超えるmRNAが初期胚心および骨格筋においてエクソンを含むのに対して、成体における>95%のmRNAがエクソンを除外する(Cooper & Ordahl (1985) J Biol Chem、260巻(20号)、11140~8頁)。プライマーは5’末端にHindIII部位、3’末端側にAgeI部位とBstBI部位とを加えた。アプリコンをゲル精製し、HindIIIおよびBstBIを用いて消化し、同じ酵素およびCIPedを用いて開いたベクターpGLEX41_HC-IgAS(GSC3836、配列番号287)にクローニングした。得られたベクターは、pGLEX41_HC-cTNTイントロン4(プラスミドバッチ番号GSC3848、配列番号289)と呼び、制限消化および配列解析により確認した。
【0139】
ヒトighg1遺伝子の膜貫通領域(M1M2)をコードする配列をプラスミドGlnPr1521(配列番号14)およびGlnPr1522(配列番号15)を用いてアセンブルした。これらのプライマーは、部分的に重複しており、PCRを用いて二本鎖DNAに完成させた。平滑末端PCR産物をpCR-blunt(Zero Blunt(登録商標)PCR Cloning Kit、Invitrogen、LifeTechnologies)にクローニングし、プラスミドpCRblunt-M1M2を得て配列決定により確認した。インサートをプライマーGlnPr1523(配列番号16)およびGlnPr1524(配列番号17)を用いて再増幅して、M1M2膜貫通ドメイン配列を完全なものにした。アンプリコンをゲル精製し、AgeIおよびBstBIを用いて消化し、ベクターpGLEX41_HC-cTNTイントロン4(GSC3848、配列番号289)にクローニングした。得られたプラスミドをpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2と命名し、大規模調製物規模で産生させ、プラスミドバッチ番号GSC3899を付与し、配列解析により確認した(配列番号36)。
【0140】
発現抗体と膜表示抗体との間のスプライス比を増加させるために、膜貫通領域をコードするエクソンの上流のポリ(Y)トラクトにおけるピリミジンの数を減少させた。このために、I4(0Y)断片(配列番号70)を、プライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr1649(配列番号18)を用いて自社製ベクター(GSC3469、配列番号68)から増幅した。アンプリコンを制限酵素HindIIIおよびAgeIを用いて消化し、主鎖を同じ酵素を用いて開き、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)の主鎖にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_HC-I4(0Y)-M1M2-M1M2-M1M2を調製し、バッチ番号GSC4398を付与し、配列決定により確認した(配列番号37)。
【0141】
ポリ(A)を、IgG1をコードするエクソンと膜貫通領域をコードする選択的エクソンとを分離するイントロンに導入した。SV40ポリ(A)シグナルを自社製ベクター(GSC3469、配列番号305)からプライマーGlnPr1650(配列番号19)およびGlnPr1651(配列番号20)を用いて増幅した。アンプリコンを制限酵素ClaIを用いて消化し、ClaIおよびCIPedを用いて消化したベクターpGLEX41_HC14-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)にクローニングし、I4(ポリA)イントロン(配列番号71)を得た。小規模調製物のスクリーニングおよびインサートの正しい配向の確認の後、pGLEX41_HC-I4(ポリA)-M1M2-M1M2-M1M2中規模調製物を調製し、バッチ番号GSC4401を付与し、配列決定により確認した(配列番号38)。
【0142】
ガストリンターミネーター配列を、pGLEX41(GSC281、配列番号304)と同じ一般的主鎖を共有するが、異なるプロモーターを有する自社製ベクター(GSC23、配列番号306)のSV40ポリ(A)シグナルにあらかじめ付加した。SV40ポリ(A)とガストリンターミネーターとの融合物をプラスミド命名法で「SV40ter」(配列番号306)と呼んだ。GSC23(配列番号306)の発現カセット(プロモーター+コード配列)を、SV40ポリ(A)シグナルを除いてpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M1(GSC3899、配列番号36)の発現カセット(すなわち、プロモーターおよびコード配列)により置き換えた。インサートを制限酵素BstBIおよびNruIを用いて切り取り、同じ酵素で消化し、CIPで処理したGSC23(配列番号306)の主鎖にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、プラスミドpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2-SV40terの中規模調製物を調製し、プラスミドバッチ番号GSC4402を付与し、配列決定により確認した(配列番号39)。
【0143】
別の好ましい構築物は、イントロンにポリ(A)シグナルをガストリンターミネーターとともに含む。I4(SV40ter)の配列は、配列番号77に示す。
【0144】
ヒトT細胞受容体アルファ膜貫通ドメイン(PTCRA)を用いたIgG1抗体の膜表示重鎖用の選択的スプライシング発現ベクターのクローニング
選択的スプライシング構築物におけるM1M2膜貫通領域をヒトT細胞受容体アルファ(PTCRA)遺伝子の膜貫通ドメインに置き換えるために、相補的プライマーGlnPr1799(配列番号28)およびGlnPr1735(配列番号26)をインサート断片の作製に用いた。これらのプライマーは、部分的に重複しており、PCRを用いて二本鎖DNAに完成させた。インサート断片をAgeIおよびBstBIを用いて切断し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)の主鎖にクローニングした。インサートの一部が、得られた小規模調製物から欠落していたので、この小規模調製物についてプライマーGlnPr1799(配列番号28)およびGlnPr269(配列番号1)を用いて新たな増幅を実施した。増幅されたインサート断片をAgeIおよびBstBIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4(0Y)-M1M2-M1M2-M1M2(GSC4398、配列番号37)の主鎖にクローニングした。1つの小規模調製物を配列決定により確認し、プライマーGlnPr1840(配列番号31)およびGlnPr269(配列番号1)を用いた別のPCRに用いた。アンプリコンをAgeIおよびBstBIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)、pGLEX41_HC-I4(0Y)-M1M2-M1M2-M1M2(GSC4398、配列番号37)、pGLEX41_HC-I4(ポリA)-M1M2-M1M2-M1M2(GSC4401、配列番号38)およびpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2-SV40ter(GSC4402、配列番号39)の主鎖にクローニングした。ライゲーションにより、それぞれ中規模調製物pGLEX41_HC-I4-PTCRA(GSC5854、配列番号40)、pGLEX41_HC-I4(0Y)-PTCRA(GSC5855、配列番号41)、pGLEX41_HC-I4(ポリA)-PTCRA(GSC5857、配列番号42)およびpGLEX41_HC-I4-PTCRA-SV40ter(GSC5856、配列番号43)がそれぞれ得られた。すべての中規模調製物を配列決定により検証した。
【0145】
M1M2-PTCRA融合構築物を用いたIgG1抗体の膜表示重鎖用の選択的スプライシング発現ベクターのクローニング
M1M2-PTCRA融合構築物をコードするインサートは、GeneArt_Seq32(配列番号64)という名称でGeneArtに発注した。この断片は、T細胞受容体アルファサブユニット(PTCRA)の膜貫通ドメインにより置換された膜貫通ドメインを除いて、IgG1重鎖の正規のM1M2膜貫通領域を含む。GeneArtにより提供されたプラスミドを制限酵素AgeIおよびBstBIを用いて切断し、精製したインサートは、同じ酵素で消化し、CIPで処理した、pGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)、pGLEX41_HC-I4(0Y)-M1M2-M1M2-M1M2(GSC4398、配列番号37)、pGLEX41_HC-I4(ポリA)-M1M2-M1M2-M1M2(GSC4401、配列番号38)およびpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2-SV40ter(GSC4402、配列番号39)の主鎖にそれぞれライゲートした。ライゲーションにより、中規模調製物pGLEX41_HC-I4-M1M2-PTCRA-M1M2(GSC6030、配列番号44)、pGLEX41_HC-I4(0Y)-M1M2-PTCRA-M1M2(GSC6048、配列番号45)、pGLEX41_HC-I4(ポリA)-M1M2-PTCRA-M1M2(GSC6047、配列番号46)およびpGLEX41_HC-I4-M1M2-PTCRA-M1M2-SV40ter(GSC6046、配列番号47)が得られた。すべての中規模調製物を配列決定により確認した。
【0146】
第1のM1M2-PTCRA融合物を作製したところ、これらの構築物は、IgG1の膜表示を可能にし、イントロンの改変に関して、天然M1M2構築物と同じ挙動を示した(実施例3における
図6参照)。
【0147】
膜貫通領域における膜貫通ドメインの改変の影響の正しい解析を可能にするために、さらなる構築物pGLEX41_HC-I4-M1M2-PTCRA-M1M2_correctedを設計した。
【0148】
この構築物について、融合PCRを実施した。cTNT4イントロンの一部およびM1M2膜貫通領域のM1M2細胞外部分をプラスミドpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)からプライマーGlnPr1285(配列番号259)およびGlnPr2378(配列番号221)を用いて増幅した。M1M2膜貫通領域の細胞質ゾル側末端ならびにSV40ポリ(A)シグナルを同じ鋳型からプライマーGlnPr2379(配列番号222)およびGlnPr1650(配列番号19)を用いて増幅した。プライマーGlnPr2378(配列番号221)およびGlnPr2379(配列番号222)は、修正PTCRA膜貫通ドメインを生成する2つのPCR産物の重複末端の生成を可能にした。次いで、これらの2つの第1のPCR産物の重複PCRをプライマーGlnPr1285(配列番号259)およびGlnPr1650(配列番号19)を用いて実施した。得られた融合PCR産物をAgeIおよびBstBIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_HC-I4-M1M2-PTCRA-M1M2_correctedを生成させ、プラスミドバッチ番号GSC11206を付与し、配列決定により確認した(配列番号284)。
【0149】
マウスB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の膜表示重鎖用の選択的スプライシング発現ベクターのクローニング
膜貫通領域をマウスB7-1遺伝子の膜貫通領域に変えるために、融合PCRを実施した。最初に、マウスB7-1膜貫通領域をコードする配列を社内構築物(GeneArt_Seq43としてGeneArtに発注した、配列番号66)からプライマーGlnPr2100(配列番号33)およびGlnPr2101(配列番号34)を用いてPCRにより増幅した。ベクターpGLEX41_HC-I4(0Y)-B7-B7-B7のクローニングのために、cTNT-I4(0Y)をコードする断片を鋳型pGLEX41_HC-I4(0Y)-M1M2-M1M2-M1M2(GSC4398、配列番号37)からプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2102(配列番号35)を用いてPCRにより増幅した。マウスB7-1膜貫通領域をコードする配列を社内構築物(GeneArt_Seq43としてGeneArtに発注した、配列番号66)からプライマーGlnPr2100(配列番号33)およびGlnPr2101(配列番号34)を用いてPCRにより増幅した。両PCR産物をプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2100(配列番号33)を用いて融合させた。得られたPCR産物をBstBIおよびHindIIIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、pGLEX41_HC-I4(0Y)-B7-B7-B7の中規模調製物を生成させ、バッチ番号GSC7057を付与し、制限消化および配列決定により確認した(配列番号53)。
【0150】
ベクターpGLEX41_HC-I4(ポリA)-B7-B7-B7のクローニングのために、cTNT-I4(ポリA)をコードする断片を鋳型pGLEX41_HC-I4(ポリA)-M1M2-M1M2-M1M2(GSC4401、配列番号38)からプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2099(配列番号32)を用いてPCRにより増幅した。マウスB7-1膜貫通領域をコードする配列を社内構築物(GeneArt_Seq43としてGeneArtに発注した、配列番号66)からプライマーGlnPr2100(配列番号33)およびGlnPr2101(配列番号34)を用いてPCRにより増幅した。両PCR産物をプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2100(配列番号33)を用いて融合させた。得られたPCR産物をBstBIおよびHindIIIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、得られたpGLEX41_HC-I4(ポリA)-B7-B7-B7中規模調製物にバッチ番号GSC7058を付与し、制限消化および配列決定により確認した(配列番号54)。
【0151】
ベクターpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7のクローニングのために、cTNT-I4を鋳型pGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)からプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2099(配列番号32)を用いてPCRにより増幅した。マウスB7-1膜貫通領域をコードする配列を社内構築物(GeneArt_Seq43としてGeneArtに発注した、配列番号66)からプライマーGlnPr2100(配列番号33)およびGlnPr2101(配列番号34)を用いてPCRにより増幅した。両PCR産物をプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2100(配列番号33)を用いて融合させた。得られたPCR産物をBstBIおよびHindIIIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、得られたpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7中規模調製物にバッチ番号GSC7056を付与し、制限消化および配列決定により確認した(配列番号55)。
【0152】
ベクターpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7-SV40terのクローニングのために、pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7構築物の場合と同じPCR産物を用い、HindIIIおよびBstBIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2-SV40ter(GSC4402、配列番号39)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、得られたpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7-SV40ter中規模調製物にバッチ番号GSC7059を付与し、制限消化および配列決定により確認した(配列番号56)。
【0153】
マウスB7-1膜貫通領域を用いたIgG1抗体の分泌および膜表示重鎖のスプライス比のさらなる低下
マウスB7-1膜貫通領域を用いたキメラタンパク質の膜表示が高度に効率的であることが示された(Chou W-Cら、(1999) Biotechnol Bioeng、65巻、160~9頁;Liao K-Wら、(2001) Biotechnol Bioeng、73巻、313~23頁)。スプライスアクセプターのポリ(Y)トラクトにおけるYsの量を0に減少させることにより、細胞膜上の表示抗体の量が著しく低下したことも本明細書で示された(実施例3における
図6F参照)。
【0154】
イントロンのポリ(Y)トラクトにおけるピリミジンの量の減少の効果を評価するために、PCR融合によりいくつかの構築物を生成させた。
【0155】
【0156】
第1のPCRにより、改変イントロンを含む社内主鎖から所望のイントロンを増幅することが可能であった。各構築物について用いたプライマーおよび鋳型を表3に示す。第2のPCR(すべての構築物に共通)により、構築物pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)からプライマーGlnPr2101(配列番号34)およびGlnPr2100(配列番号33)を用いてB7-1膜貫通ドメインを増幅することが可能であった。これらのPCR産物の精製の後、イントロンおよび膜貫通ドメインを、プライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2100(配列番号33)を用いたオーバーラッピングエクステンションPCRにより融合させた。次いで、精製PCR産物をHindIIIおよびBstBIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)の主鎖にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物を構築物のそれぞれについて生成させ、配列決定により検証した。各構築物に割り当てられたプラスミドバッチ番号は、以下の通りである。
【0157】
【0158】
スプライシングを減少させる別の方法は、スプライスドナー部位を弱めることであった。スプライスドナーは、イントロンの5‘末端を定める共通配列によって特徴付けられる。したがって、スプライスドナーコンセサスのDNA配列が遺伝子により発現されるタンパク質配列に対する影響を伴わずに改変された、2つの構築物を設計した。
【0159】
改変3’末端配列を有するIgG1重鎖を増幅するPCRを、SD_CCC構築物についてはプライマーGlnPr1518(配列番号11)およびGlnPr2161(配列番号313)を、SD_GGC構築物についてはプライマーGlnPr1518(配列番号11)およびGlnPr2160(配列番号314)を用いて鋳型pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)について実施した。PCRをNheIおよびHindIIIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)の主鎖にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_HC-SD_CCC-I4-B7-B7-B7(プラスミドバッチ番号GSC9764、配列番号58)およびpGLEX41_HC-SD_GGC-I4-B7-B7-B7(プラスミドバッチ番号GSC9765、配列番号57)を生成させ、配列決定により確認された。構築物pGLEX41_HC-SD_GGC-I4-B7-B7-B7のイントロン配列を配列番号78に示す。
【0160】
疎水性残基のみを有する同様の長さの膜貫通ドメインによるB7-1膜貫通ドメインの置換
膜表示に対する膜貫通ドメインの影響を評価するために、いくつかの構築物を設計した。主として疎水性残基を含む膜貫通らせんは、表面表示の安定化のために有利であると考えられ、したがって、第1のアプローチとして、B7-1膜貫通領域のB7-1膜貫通ドメインを疎水性残基のみを含む他のタンパク質の膜貫通ドメインにより置換した。さらに、膜貫通らせんの長さが表面表示に対して影響を与えうるので、これらの第1の構築物は、B7-1膜貫通ドメインと同様の長さを有する膜貫通ドメインのみから構成されていた。これらの膜貫通ドメインの配列および特性を表4に要約する。
【0161】
【0162】
【0163】
膜貫通ドメインの3’末端を改変するプライマーを用いたcTNTイントロン4の一部の2ステップPCR増幅によって異なる膜貫通ドメインを作製した。鋳型は、常にpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)構築物であった。各構築物について、第1ラウンドのPCRは、表5に示す各プライマーを用いて実施した。この第1ラウンドのPCR産物のクリーンアップの後、第2ラウンドのPCRを表5に示すプライマーを用いて実施した。クリーンアップの後、これらのPCR産物をAgeIおよびClaIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)にライゲートした。小規模調製物レベルでの配列の確認の後、各種の構築物の中規模調製物を生成させ、以下のGSC番号をこれらのプラスミドバッチに割り当てた。
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-ACVL1-B7 GSC11213(配列番号81)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-ANTR2-B7 GSC11214(配列番号82)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-CD4-B7 GSC11210(配列番号83)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-PTPRM-B7 GSC11205(配列番号84)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-TNR5-B7 GSC11217(配列番号85)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-ITB1-B7 GSC11756(配列番号86)
【0164】
すべての中規模調製物を配列決定により確認した。
【0165】
荷電および/または極性残基を含む同様の長さの膜貫通ドメインによるB7-1膜貫通ドメインの置換
疎水性残基のみを含む膜貫通ドメインが表面表示に対する影響を有さない(実施例4における
図10参照)ので、B7-1膜貫通ドメインと同様の長さを有するが、1つまたは複数の荷電および/または極性残基を含む他の膜貫通ドメインを選択した。これらの膜貫通ドメインの配列および特性を表6に要約する。
【0166】
【0167】
【0168】
表7に示す名称を有する、各種膜貫通ドメイン(PTCRAを除く)をGeneArtに発注した。受領した時点に、GeneArt構築物を水に再懸濁し、次いでAgeIおよびClaIで消化した。得られたインサートを同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物を生成させ、以下のバッチ番号を付与した。
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-1B07-B7 GSC11296(配列番号87)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-IGF1R-B7 GSC11295(配列番号88)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-TRBM-B7 GSC11390(配列番号89)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-IL4RA-B7 GSC11391(配列番号90)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-LRP6-B7 GSC11392(配列番号91)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-GpA-B7 GSC11397(配列番号92)
【0169】
構築物pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA-B7については、2ステップPCRを実施した。B7-1膜貫通領域のB7-1細胞外部分を含むcTNTイントロンをプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2380(配列番号223)ならびに鋳型としてのpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)を用いて増幅した。得られたPCR産物をプライマーGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2381(配列番号224)を用いて再増幅した。プライマーGlnPr2380(配列番号223)およびGlnPr2381(配列番号224)により、PTCRA膜貫通ドメインをB7-1膜貫通領域のB7-1細胞外部分に融合させることができた。得られたPCR産物をClaIおよびAgeIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)に再クローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA-B7を調製した。それにバッチ番号GSC11204を付与し、配列決定により確認した(配列番号93)。
【0170】
PTCRA膜貫通ドメインにおける荷電残基の改変
PTCRA膜貫通ドメインは、21アミノ酸長であり、そのうちの3アミノ酸は、荷電残基である。これらの荷電残基の存在は、表面表示システムにおけるこの特定の膜貫通ドメインの相対的な不良な性能の説明となりうる(実施例4における
図11参照)。したがって、これらの残基の疎水性アミノ酸バリンへの突然変異は、表面表示に関して有益でありうる。
【0171】
【0172】
PTCRA膜貫通ドメインにおける非突然変異および突然変異荷電残基のすべての可能な組合せを、鋳型としてのpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)を用い、フォワードプライマーとしてのGlnPr1516(配列番号9)および各種構築物について表8に記載したリバースプライマーを用いて2ステップPCRにより作製した。第1ラウンドのPCRの後、PCR産物をクリーンアップし、フォワードプライマーとしてのGlnPr1516(配列番号9)および表8に記載したリバースプライマーを用いて第2ラウンドのPCRを実施した。得られたPCR産物をクリーンアップし、ClaIおよびAgeIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、陽性構築物を中規模調製物規模で調製し、配列決定により確認した。それぞれの構築物のバッチ番号は、以下の通りである。
pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA_R8V-B7 GSC11216(配列番号94)
pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA_K13V-B7 GSC11203(配列番号95)
pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA_D18V-B7 GSC11211(配列番号96)
pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA_R8V_K13V-B7 GSC11212(配列番号97)
pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA_R8V_D18V-B7 GSC11398(配列番号98)
pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA_K13V_D18V-B7 GSC11208(配列番号99)
pGLEX41_HC-I4-B7-PTCRA_R8V_K13V_D18V-B7 GSC11291(配列番号100)
【0173】
荷電および/または極性残基を含む、異なる長さの膜貫通ドメインによるB7-1膜貫通ドメインの置換
膜貫通ドメインにおける荷電および残基の存在が表面表示を消失させない(実施例4における
図12参照)ことから、B7-1膜貫通ドメインより短くもしくは長く、今回は1つもしくは複数の荷電および/または極性残基を含む膜貫通ドメインを用いて膜貫通ドメインの長さを評価した。これらの膜貫通ドメインの配列および特性を表9に要約する。
【0174】
【0175】
【0176】
各種膜貫通ドメインを表10に示す名称でGeneArtに発注した。受領した時点に、GeneArt構築物を水に再懸濁し、次いでAgeIおよびClaIで消化した。得られたインサートを同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物を生成させ、以下のバッチ番号を付与した。
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-FCERA-B7 GSC11297(配列番号101)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-KI2L2-B7 GSC11298(配列番号102)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-IL3RB-B7 GSC11393(配列番号103)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-CD3E-B7 GSC11394(配列番号104)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-ITA2B-B7 GSC11395(配列番号105)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-CD28-B7 GSC11396(配列番号106)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-M1M2-B7 GSC11389(配列番号107)
【0177】
B7-1膜貫通ドメイン長の改変
表面表示に対する膜貫通長の影響を評価するために、B7-1膜貫通ドメイン配列の中央部における疎水性残基を除去または追加することにより、B7-1膜貫通ドメインの種々の変異体を作製した。
【0178】
【0179】
この目的のために、プライマーのアニーリングを実施した。B7-1膜貫通ドメインの各変異体について、それらの3’末端においてアニールするプライマーを発注した。各構築物について用いたプライマー対を表11に示す。プライマーをアニールさせ、次いで、PCRにより配列を完全なものにした。クリーンアップの後、得られたPCR産物を、SfoIおよびAgeIで直接消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)主鎖にクローニングするか、またはpCR-blunt(Zero Blunt(登録商標)PCR Cloningキット、Invitrogen、LifeTechnologies)シャトルベクターにライゲートした(アニーリング産物が非常に短いので、直接ライゲーションがすべての産物に対して功を奏するとは限らなかった)。第2の状況において、小規模調製物は、pCR-blunt(Zero Blunt(登録商標)PCR Cloningキット、Invitrogen、LifeTechnologies)へのアニール産物のライゲーションの後に得られたコロニーから抽出した。配列の確認の後に、陽性の小規模調製物をSfoIおよびAgeIで消化し、得られた断片を同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)主鎖にライゲートしクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、各構築物について中規模調製物を調製した。GSCバッチ番号をこれらの中規模調製物に下記のように付与し、調製物を配列決定により確認した。
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-B7(18)-B7 GSC11677(配列番号108)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-B7(20)-B7 GSC11679(配列番号109)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-B7(24)-B7 GSC11484(配列番号110)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-B7(26)-B7 GSC11292(配列番号111)
【0180】
B7-1膜貫通領域における細胞質ゾル側末端の改変
細胞質ゾル側末端(ER輸出シグナルを含むまたは含まない)は、表面表示に対する影響を有しうるので、改変細胞質ゾル側末端を有するいくつかの構築物を設計した。これらの細胞質ゾル側末端の配列および特性を表12に要約する。
【0181】
【0182】
異なる構築物の長さに応じて異なるクローニング戦略を適用した。最初の構築物は、細胞質ゾル側末端を改変するプライマーを用いたB7-1細胞外および膜貫通ドメインを含むcTNTイントロン4のPCR増幅により作製した。
【0183】
【0184】
用いたプライマー対を表13に記載し、用いた鋳型は、pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)であった。精製PCR産物を表13に記載の酵素で消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物を生成させ、以下のバッチ番号を付与した。
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-B7-6His GSC11207(配列番号112)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-B7-KCFCK GSC11209(配列番号113)
pGLEX41_GBR200HC-I4-B7-B7-GATlnoER GSC11483(配列番号118)
【0185】
すべての中規模調製物を配列決定により確認した。
【0186】
M1M2細胞質ゾル側末端をB7-1膜貫通領域に融合させるために、融合PCRを実施した。B7-1細胞外および膜貫通ドメインを含むcTNTイントロン4を鋳型としてのpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)を用いてGlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr2391(配列番号234)により増幅した。SV40ポリ(A)シグナルを含むM1M2細胞質ゾル側末端を、鋳型としてのpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)を用いてプライマーGlnPr2390(配列番号233)およびGlnPr1650(配列番号19)により増幅した。クリーンアップの後、両PCR産物を、GlnPr1516(配列番号9)およびGlnPr1650(配列番号19)をプライマーとして用いた第3のPCRで融合させた。得られたPCR産物をクリーンアップし、SfoIおよびBstBIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_HC-I4-B7-B7-M1M2を生成させ、バッチ番号GSC11758を付与し、配列決定により確認した(配列番号114)。
【0187】
一部の構築物について、プライマーのアニーリングの戦略を選択した。各細胞質ゾル側末端について、それらの3’末端においてアニールするプライマーを発注した。各構築物について用いたプライマー対を表14に記載する。プライマーをアニールさせ、次いで、PCRにより配列を完全なものにした。クリーンアップの後、得られたPCR産物を、SfoIおよびBstBIで直接消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)主鎖にクローニングするか、またはpCR-bluntシャトルベクター(Zero Blunt(登録商標)PCR Cloningキット、Invitrogen、LifeTechnologies)にライゲートした(アニーリング産物が非常に短いので、直接ライゲーションがすべての産物に対して功を奏するとは限らなかった)。第2の状況において、小規模調製物は、pCR-blunt(Zero Blunt(登録商標)PCR Cloningキット、Invitrogen、LifeTechnologies)へのアニール産物のライゲーションの後に得られたコロニーから抽出した。配列の確認の後に、陽性の小規模調製物をSfoIおよびBstBIで消化し、得られた断片を同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)主鎖にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、各構築物について中規模調製物を調製した。GSCバッチ番号を表14に記載したようにこれらの中規模調製物に付与し、調製物を配列決定により確認した。
【0188】
【0189】
最後に、最終構築物について、表15に記載した配列名を有する、配列をGeneArtに発注した。受領した時点に、GeneArt構築物を水に再懸濁し、次いでSfoIおよびBstBIで消化した。得られたインサートを同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物を生成させ、下表に詳述したバッチ番号を付与した。
【0190】
【0191】
B7-1細胞質ゾル側末端の影響をさらに評価するために、M1M2膜貫通ドメインの細胞質ゾル側末端をB7-1細胞質ゾル側末端により置換した。この目的のために、B7-1細胞質ゾル側末端を有するM1M2膜貫通ドメインをGeneArt_Seq82(配列番号264)としてGeneArtに発注した。GeneArt構築物をClaIおよびBstBIで消化し、インサートを、同じ酵素で消化し、CIPで処理した主鎖pGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_HC-M1M2-M1M2-B7を生成させ、プラスミドバッチ番号GSC11294を付与し、配列決定により確認した(配列番号125)。
【0192】
IgG1抗体の軽鎖の発現のためのベクターのクローニング
軽鎖インサート(0704970pGA4)を有するGeneArtから提供されたクローニングベクターを、プライマーGlnPr501(配列番号4)およびGlnPr502(配列番号5)を用いたPCRの鋳型として用いた。これらのプライマーは、軽鎖のオープンリーディングフレームを増幅し、オープンリーディングフレームにHindIII制限部位5’およびXbaI制限部位3’を付加する。アンプリコンをXbaIおよびHindIIIで消化し、XbaIおよびHindIIIを用いて切断したシャトルベクターにライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、ギガレベルの調製物を生成させ、これを配列決定および消化により確認した。IgG1フォーマットの抗体の軽鎖のコード領域をこのギガレベルの調製物からXbaIおよびHindIIIで切断し、同じ酵素で開き、CIPで処理したプラスミドpGLEX41(GSC281、配列番号304)の主鎖にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、pGLEX41_LCの大規模調製物を生成させ、バッチ番号GSC315(配列番号294)を付与し、配列決定により確認した。その後、同じDNAのいくつかのバッチを中規模調製物またはギガレベルの調製物レベルで生成させ、バッチ番号GSC315a、GSC315b、GSC315c、GSC315dおよびCGC315eを付与した(すべてのこれらの調製物が配列決定により確認されたので、それらを以下でGSC315プラスミドと呼ぶものとする(配列番号294))。
【0193】
IgG4抗体の軽鎖の発現のためのベクターのクローニング
IgG4重鎖をコードする配列をGlenmarkにおいて作製し、シャトルベクターで受け取った。IgG4重鎖コード配列をプライマーGlnPr1488(配列番号328)およびGlnPr1452(配列番号327)を用いたPCRにより増幅した。精製後、得られたPCR産物をプライマーGlnPr1494(配列番号260)およびGlnPr1452(配列番号327)を用いて再増幅した。これらの2ラウンドのPCRにより、リーダーペプチドが改変され、コード配列の両末端に制限部位が付加される。得られたPCR産物を精製し、シャトルベクターpCR-blunt(Zero Blunt(登録商標)PCR Cloningキット、Invitrogen、LifeTechnology)にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、陽性クローンをSpeIおよびClaIで消化して、IgG4重鎖コード配列を抽出した。得られたインサートをNheIおよびBstBIで消化し、CIPで処理したpGLEX41(GSC281、配列番号304)にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、ギガレベルの調製物pGLEX41_IgG4-HCを生成させ、プラスミドバッチ番号GSB59を付与し、配列決定により確認した(配列番号79)。
【0194】
B7-1膜貫通領域の発現を可能にする選択的スプライシングによるIgG4抗体の重鎖の発現のためのベクターのクローニング
膜結合IgG4の発現のための選択的スプライシングカセットの付加のために、IgG4重鎖のコード配列をプライマーGlnPr1494(配列番号260)およびGlnPr2294(配列番号261)を用いたPCRによりpGLEX41_IgG4-HC(GSB59、配列番号79)を鋳型として用いて増幅した。得られたPCR産物をクリーンアップし、SpeIおよびHindIIIで消化し、NheIおよびHindIIIで消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)主鎖にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_IgG4-HC-B7-B7-B7を調製し、これにプラスミドバッチ番号GSC11218を付与し、配列決定により確認した(配列番号80)。
【0195】
IgG4抗体の軽鎖の発現のためのベクターのクローニング
IgG4軽鎖をコードする配列をGlenmarkにおいて作製し、シャトルベクターで受け取った。3種のプライマーGlnPr1487(配列番号325)、GlnPr1491(配列番号326)およびGlnPr1494(配列番号260)を用いた単一ラウンドのPCRを用いて、リーダーペプチドを交換し、制限部位をコード配列の両末端に付加した。PCR産物をSpeIおよびClaIで消化し、NheIおよびBstBIで開き、CIPで処理したpGLEX41(GSC281、配列番号304)主鎖にライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_IgG4-LCを生成させ、プラスミドバッチ番号GSC3704を付与し、配列決定により確認した(配列番号319)。
【0196】
BEAT(登録商標)二重特異性抗体の分泌重鎖の発現のためのベクターのクローニング
二重特異性抗体の重鎖を二重特異性BEAT(登録商標)フォーマットの一部としてGlenmarkにおいて作製した。2ラウンドのPCRを用いて、コザック配列、シグナルペプチドおよびフランキング制限部位を付加した。第1ラウンドにおいて、プライマーGlnPr1726(配列番号24)およびGlnPr1500(配列番号7)を用いて鋳型を増幅した。PCR産物を精製し、プライマーGlnPr1500(配列番号7)およびGlnPr1725(配列番号23)を用いた第2ラウンドのPCRの鋳型として用いた。得られたアンプリコンを精製し、制限酵素SpeIおよびClaIを用いて切断した。このインサートを、NheIおよびBstBIを用いて開き、CIPで処理した主鎖pGLEX41(GSC281、配列番号304)にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、pGLEX41_BEAT-HC-Hisを中規模調製物規模で生成させ、バッチ番号GSC5607(配列番号296)を付与した。配列決定管理および制限消化により、プラスミドを確認した。このプラスミドは、鋳型配列からのHisタグの除去のためのプライマーGlnPr1725(配列番号23)およびGlnPr1760(配列番号27)を用いた改変PCRの鋳型として用いた。アンプリコンをSpeIおよびClaIで消化し、制限酵素NheIおよびBstBIを用いて開き、CIPで処理した、ベクターpGLEX41(GSC281、配列番号304)の主鎖にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、中規模調製物pGLEX41_BEAT-HCにプラスミドバッチ番号GSC5644を付与し、配列決定により確認した(配列番号49)。
【0197】
二重特異性BEAT(登録商標)抗体の膜表示重鎖用の選択的スプライシング発現ベクターのクローニング
BEAT重鎖をコードする鋳型ベクター(GSC5644、配列番号49)をプライマーGlnPr1800(配列番号29)およびGlnPr1725(配列番号23)を用いて増幅した。精製産物を制限酵素SpeIおよびHindIIIを用いて消化し、酵素NheIおよびHindIIIを用いて開き、CIPで処理したベクターpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、大規模調製物pGLEX41_BEAT-HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2にプラスミドバッチ番号GSC5537(配列番号50)を付与し、制限消化および配列決定により確認した。
【0198】
表面表示のためにB7-1膜貫通領域を用いるために、構築物pGLEX41_BEAT-HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC5537、配列番号50)のインサートをSacIおよびHindIIIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)に再クローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、大規模調製物pGLEX41_BEAT-HC-I4-B7-B7-B7を生成させ、プラスミドバッチ番号GSC10488を付与し、配列決定により確認した(配列番号321)。
【0199】
二重特異性抗体の分泌scFv-Fc用の発現ベクターのクローニング
scFv-Fc配列を二重特異性BEAT(登録商標)フォーマットの一部として社内で開発した。増幅は、プライマーGlnPr1690(配列番号22)、GlnPr1689(配列番号21)およびGlnPr1502(配列番号8)を用いて実施した。これらのプライマーは、コザック配列、シグナルペプチドおよび制限部位をアンプリコンに付加する。PCR産物をプライマーGlnPr1689(配列番号21)およびGlnPr1502(配列番号8)を用いて再増幅し、得られたアンプリコンをNheIおよびClaIを用いて消化した。このインサート断片を、NhelおよびBstBIを用いて切断し、CIPで処理した主鎖pGLEX41(GSC281、配列番号304)とライゲートした。小規模調製物のスクリーニングの後、バッチ番号GSC5608(配列番号51)を有する中規模調製物pGLEX41_scFv-Fcを生成させ、制限消化および配列決定により確認した。
【0200】
二重特異性抗体の膜表示scFv-Fc用の選択的スプライシング発現ベクターのクローニング
scFvをコードする鋳型ベクター(GSC5608、配列番号51)をプライマーGlnPr1801(配列番号30)およびGlnPr1689(配列番号21)を用いて増幅した。精製産物をNheIおよびHindIIIで消化し、同じ酵素を用いて開き、CIPで処理したベクターpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC3899、配列番号36)にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、プラスミドバッチ番号GSC5538(配列番号52)を有する中規模調製物pGLEX41_scFv-Fc-I4-M1M2-M1M2-M1M2を生成させ、制限消化および配列決定により確認した。
【0201】
表面表示のためにB7-1膜貫通領域を用いるために、構築物pGLEX41_scFv-Fc-I4-M1M2-M1M2-M1M2(GSC5537、配列番号50)のインサートをNheIおよびHindIIIで消化し、同じ酵素で消化し、CIPで処理したpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(GSC7056、配列番号55)に再クローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、大規模調製物pGLEX41_scFv-Fc-I4-B7-B7-B7を生成させ、プラスミドバッチ番号GSC10487を付与し、配列決定により確認した(配列番号323)。
【0202】
二重特異性抗体の軽鎖用の発現ベクターのクローニング
軽鎖配列を二重特異性BEAT(登録商標)フォーマットの一部として社内で構築した。増幅は、プライマーGlnPr1689(配列番号21)、GlnPr1727(配列番号25)およびGlnPr1437(配列番号6)を用いて実施した。これらのプライマーは、シグナルペプチド、コザック配列およびフランキング制限部位をアンプリコンに付加する。アンプリコンを精製し、制限酵素ClaIおよびNheIを用いて消化し、NheIおよびClaIで開き、CIPで処理したシャトルベクターの主鎖にクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、大規模調製物を調製し、配列決定により検証した。二重特異性構築物の軽鎖をコードするこのシャトルベクターを制限酵素NheIおよびClaIを用いて消化し、NheIおよびBstBIで開き、CIPしたベクターpGLEX41(GSC281、配列番号304)にインサートをクローニングした。小規模調製物のスクリーニングの後、pGLEX41_BEAT-LCの中規模調製物を調製し(プラスミドバッチ番号GSC5540、配列番号302)、プラスミドを制限消化および配列決定により確認した。
【実施例2】
【0203】
翻訳産物の表面表示および特異的検出
導入
実施例1では、分泌タンパク質またはC末端膜貫通領域(TM)を有する同じタンパク質をコードする、同じDNA鋳型からの2つの異なるmRNAの発現をもたらす選択的スプライシング構築物のクローニングを述べた。定義の項で詳述したように、膜貫通領域は、任意選択のリンカー、膜貫通ドメインおよび任意選択の細胞質ゾル側末端を含む。これらの構築物は、標的タンパク質の効率的な分泌を維持しながら、この技術を細胞膜上にタンパク質の一部を表示するために用いることができるかどうかを判定するためにCHO-S細胞にトランスフェクトした。IgG1サブクラスの抗体、IgG4サブクラスの抗体およびBEAT(登録商標)フォーマットの二重特異性抗体の3種のタンパク質をこの実験に用いた。
【0204】
材料および方法
トランスフェクション
懸濁CHO-S細胞に、50mlバイオリアクターチューブ(Tubespins、TPP)方式でポリエチレンイミン(JetPEI(登録商標)、Polyplus-transfection、Illkirch、France)を用いて発現ベクターをトランスフェクトした。この目的のために、対数増殖期細胞を5mLのOptiMEM培地(#31985-047、Invitrogen)またはCD-CHO培地(#10743-011、Life Technologies)中に2 E6個細胞/mLの密度で播種した。JetPEI(登録商標):DNA複合体を細胞に3(μg/μg)の重量比で加えた。細胞懸濁液中の最終DNA濃度は、2.5μg/mLであった。振盪しながら(200rpm)37℃で5時間インキュベートした後、5mLの新鮮な培養培地を細胞懸濁液に加えた。次いで、細胞を振盪プラットフォーム上で37℃、5%CO2および80%湿度でインキュベートした。
【0205】
表面染色
細胞の表面染色をトランスフェクション後1日目に実施した。合計1 E5個の細胞を収集し、96ウエルプレートの丸底ウエルに移した。細胞を洗浄緩衝液(PBS中2%FBS)で2回洗浄し、次いで、検出抗体を含む100μLの洗浄緩衝液に再懸濁した。カッパ軽鎖の特異的検出は、マウス抗ヒトカッパ軽鎖APC標識抗体(#561323、BD Pharmingen)を用いて実施し、赤色レーザー(640nm)により励起し、スペクトル範囲661/19nmで検出した。重鎖およびscFv-Fcの両方は、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトFcガンマ特異抗体(#12-4998-82、eBioscience)を用いて、青色レーザー(488nm)により励起し、スペクトル範囲583/26nmで検出した。scFv-Fcは、FITC標識プロテインA(#P5145、Sigma)を用いて、青色レーザーにより488nmで励起し、スペクトル範囲525/30で特異的に検出した。暗所で室温で20分間インキュベートした後、細胞を洗浄緩衝液で1回洗浄し、フローサイトメトリー解析のために200μLの洗浄緩衝液に再懸濁した。細胞をGuavaフローサイトメーター(Merck Millipore)またはFACSCalibur(Becton Dickinson)を用いて解析した。分泌分子の一過性発現レベルは、Octet QK機器(Fortebio、Menlo Park、CA)およびプロテインAバイオセンサーを用いてトランスフェクション後4~6日目に測定した。
【0206】
結果
IgG1抗体発現のために、軽鎖を発現する発現ベクターpGLEX41_LC(配列番号294)およびそれぞれpGLEX41_HC-I4-B7-B7-B7(配列番号55)、pGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(配列番号36)、pGLEX41_HC-I4-PTCRA(配列番号40)またはpGLEX41_HC-I4-M1M2-PTCRA-M1M2_corrected(配列番号284)という名称の第2のベクターを用いて、材料および方法の項で述べたようにCHO-S細胞をトランスフェクトした。対照として、分泌重鎖をコードする非スプライシング構築物を用いた(配列番号48)。
【0207】
トランスフェクションの後、細胞を材料および方法の項で述べたように染色し、フローサイトメトリーにより解析した。分泌型の軽鎖および重鎖を発現する陰性対照(膜貫通領域の選択的スプライシングを用いない)は、低い強度の表面染色をもたらしたにすぎず(染色細胞の百分率については
図2Aにおける塗りつぶされていないヒストグラムおよび
図2E参照)、IgG1の比較的に高い分泌レベルを有した(
図2F参照)。これと対照的に、M1M2領域を含む構築物(配列番号36)をトランスフェクトした細胞は、細胞膜上に抗体を表示する有意な陽性集団を示した(
図2Bにおける塗りつぶされたヒストグラム参照)。PTCRA膜貫通領域(
図2C参照;配列番号40)による全M1M2膜貫通領域の交換、またはPTCRAの膜貫通ドメイン(
図2D参照;配列番号284)によるM1M2の膜貫通ドメインの特異的交換は、陽性であるが、弱く染色された細胞の集団をもたらした。マウスB7-1膜貫通領域(
図2A参照;配列番号55)は、驚くべき高いレベルの染色を示し、集団の40%が膜表示IgG1について陽性であった。
【0208】
選択的スプライシング、したがって、全産生抗体の一部の膜結合発現は、分泌IgGの力価に負の影響を有すると思われる。それにもかかわらず、M1M2膜貫通領域(PTCRA膜貫通ドメインと組み合わされた場合にも)およびとりわけB7-1膜貫通領域は、選択的スプライシングを用いない対照構築物の分泌レベルの最大80%のレベルをもたらした(
図2F参照)。
【0209】
IgG4抗体発現のために、軽鎖を発現する発現ベクターpGLEX41_IgG4-LC(配列番号319)および膜表示のためにB7-1膜貫通領域の選択的スプライシングを用いる、重鎖をコードする第2のベクター(配列番号80)を用いて、材料および方法の項で述べたようにCHO-S細胞をトランスフェクトした。対照として、分泌IgG4重鎖をコードする非スプライシング構築物を用いた(配列番号79)。
【0210】
トランスフェクションの後、細胞を材料および方法の項で述べたように染色し、フローサイトメトリーにより解析した。分泌型の軽鎖および重鎖を発現する陰性対照(膜貫通領域の選択的スプライシングを用いない)は、陰性集団のみをもたらし(
図3A参照)、約6μg/mLのIgG4の実質的分泌レベルを有していた(
図3C参照)。これと対照的に、B7-1領域を含む構築物(配列番号80)をトランスフェクトした細胞は、発現レベルが選択的スプライシングを用いた場合と用いない場合で同様のレベルに維持されていた(
図3C参照)と同時に、細胞膜上に抗体を表示する有意な陽性集団を示した(ヒストグラムについては
図3Aを、染色の百分率については
図3Bを参照)。
【0211】
二重特異性抗体が膜貫通領域(TM)を介して細胞膜上に表示されうるかどうかを検討するために、二重特異性抗体をコードする実施例1で述べた選択的スプライシング構築物をCHO細胞において一過性に発現させた。選択的スプライシング構築物は、この実施例でモデルタンパク質として用いた、社内で開発され、WO2012/131555に記載されている二重特異性抗体フォーマット(「BEAT(登録商標)」と呼ぶ)をコードする。BEAT分子は、IgG重鎖(「重鎖」)、カッパ軽鎖(「軽鎖」)および重鎖定常領域に融合したscFv(「scFv-Fc」)の三量体である。scFv-FcのFc断片のみがプロテインAに結合することができるように、重鎖のプロテインA結合部位を無効にした。該分子の設計および重鎖プロテインA結合部位の遺伝子組換えにより、三量体のすべてのサブユニットの特異的検出が可能であった。細胞膜上の表示は、重鎖もしくはscFv-Fcの選択的スプライシング構築物をトランスフェクトすることにより、または両選択的スプライシング構築物をトランスフェクトすることにより、達成された。単一細胞の表面上に表示された膜結合BEAT二重特異性抗体は、フローサイトメトリーにより特異的に検出された。
【0212】
以下では、正規の発現構築物をコードするベクターは、pGLEX41_BEAT-HC(配列番号49)を「pHC」に、pGLEX41_BEAT-LC(配列番号302)を「pLC」に、pGLEX41_scFv-Fc(配列番号51)を「pScFv-Fc」と略称する。HCに膜貫通領域を付加する選択的スプライシング構築物は、「pHC-M1M2」(pGLEX41_BEAT-HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2;配列番号50)と呼び、scFv-Fcに膜貫通領域を付加する構築物は、「pScFv-Fc-M1M2」(pGLEX41_scFv-Fc-I4-M1M2-M1M2-M1M2;配列番号52)と呼ぶ。BEAT抗体の3つのサブユニットをコードする発現ベクターは、選択的スプライシング発現構築物または正規の発現構築物を用いて異なる組合せで共トランスフェクトした。表16に実施したトランスフェクションおよび細胞膜上に表示されると予測された種を要約する。
【0213】
【0214】
トランスフェクション後1日目に得られたフローサイトメトリープロファイルを
図4AおよびBに示す。第1のトランスフェクションカクテル(pHC+pScFv-Fc+pLC)は、細胞膜表示のための膜貫通領域を有する構築物を含まなかった。したがって、このトランスフェクションについて得られたプロファイル(
図4A、D、G)は、当実験の陰性対照とみなされ、ヒストグラムに破線分布として示す。
【0215】
ベクターpScFv-Fc-M1M2単独のトランスフェクションは、抗Fc(重鎖を検出する)およびプロテインA染色について陽性細胞のみをもたらした(
図4K、N、Q)。この場合、軽鎖は細胞膜上に検出されず、アッセイの特異性が実証された。ベクターpHC-M1M2およびpLCの共トランスフェクションは、抗Fcおよびカッパ軽鎖染色について陽性細胞をもたらしたが、プロテインA結合は、観測することができなかった(
図4L、O、R)。これは、プロテインA結合部位がBEAT分子の重鎖サブユニットにおいて無効にされたという事実と一致していた。したがって、抗ヒトFcガンマ抗体は、重鎖に対して特異的でなく、scFv-Fcも認識したが、軽鎖の検出は、我々が重鎖の発現について結論をくだすことを可能にするものであった。
【0216】
すべての3サブユニットをコードするプラスミドカクテルを用いて実施したトランスフェクションは、用いた選択的スプライシング構築物と無関係に、少なくとも1つの膜貫通領域を有するBEAT構築物の発現を示した(
図4B、C、J、E、F、M、H、I、P)。染色は、軽鎖およびscFv-Fc、ならびにFc断片(重鎖およびscFv-Fc)について陽性であり、すべての予測された種が細胞膜上に存在していたことが示された。したがって、完全に折りたたまれた多量体が細胞膜上に存在しており、多量体タンパク質の発現についてのリポーターシステムの有効性が確認された。驚くべきことに、膜貫通領域の位置を問わず、すべての種が検出された。膜貫通領域(TM)が重鎖(HC)およびscFv-Fcサブユニットの両方(
図4B、E、H)に、HCのみ(
図4C、F、I)にまたはscFv-Fcのみ(
図4J、M、P)に結合していたかどうかに差は認められなかった。
【0217】
したがって、ここに示したアプローチは、細胞膜上に表示されたヘテロ二量体(例えば、重鎖+scFv-Fcサブユニット+軽鎖)とホモ二量体(重鎖+軽鎖またはscFv-Fcホモ二量体)との間の区別を可能にする。二重特異性抗体のような多量体タンパク質の発現との関連において、この情報の質は、途方もなく有用である。
【0218】
分泌BEATおよびscFv-Fcホモ二量体の濃度をトランスフェクション後6日目にプロテインAバイオセンサーを用いてOctet QK機器により測定した。結果を
図5に示す。予想通り、得られる産物(重鎖-軽鎖ホモ二量体)がプロテインAに結合しないので、発現ベクターpHC-M1M2-pLCを用いたトランスフェクションではプロテインAバイオセンサーを用いて発現を測定することができなかった。発現ベクターpScFv-Fc-M1M2用いたトランスフェクションでは、分泌産物のみをもたらす対照トランスフェクションと比較して、より低い発現レベルが観測された。選択的スプライシング構築物を用いたすべてのトランスフェクションでは、BEAT分子またはscFv-Fcホモ二量体を上清中に検出することができた。これにより、BEATヘテロ二量体がすでに実証したように細胞膜上に表示されただけでなく、細胞の分泌経路を用いて成功裏に分泌されことも確認される。より重要なことに、選択的スプライシング構築物を用いて得られた発現レベルは、対照(pHC+pScFv-Fc+pLC)と同等であった。分泌レベルに対する有意な影響がこの実験構成で測定されなかったことから、これは、ほんのわずかのタンパク質が表面表示のために分泌経路から逸脱したことを示唆するものであった。
【0219】
要約
これらの結果に基づいて、選択的スプライシング構築物が産生された抗体の一部を選択的スプライシングにより細胞膜に成功裏に偏向させたと結論することができる。表面染色は、PTCRA膜貫通ドメインを含む構築物で低かったが、染色は、M1M2膜貫通領域を含む構築物をトランスフェクトした細胞で高く、B7-1膜貫通領域を含む構築物でさらにより高かった。シグナル強度に加えて、M1M2膜貫通領域がB細胞の進化中の抗体の効率的な膜表示のために選択され、したがって、免疫グロブリンの膜表示のための最も効率的な構築物であることを考慮すると、染色されうる細胞集団の百分率は、B7-1構築物によるトランスフェクションで驚くべきほど高かった。
【0220】
分泌抗体の一部が細胞膜に転送された場合、全体的な抗体発現レベルが低下したが、種々の構築物において非スプライス対照の発現レベルの約80%が達成された。
【0221】
BEAT(登録商標)構築物の例により実証されたように、本発明の選択的スプライシング構築物を用いて2つを超えるサブユニットを有する分子も細胞膜上に表示することに成功することができた。これらの構築物は、膜貫通領域をほんのわずかの発現タンパク質に融合させた。二重特異性抗体(BEAT)を例として用いた場合、分泌タンパク質のみをもたらす対照トランスフェクションと比較して分泌レベルの有意な差を認めることができなかった。発現レベルに対する選択的スプライシングの影響が全くなかった、またはごくわずかな影響があったという所見により、該技術は、産業上の利用に受け入れることができるものである。さらに、本明細書で述べたアプローチによって細胞膜上に表示された多量体の特異的検出が可能であったことを示すことができた。驚くべきことに、分泌タンパク質の表面表示または発現レベルに対する影響を伴うことなく、膜貫通領域を重鎖もしくはscFv-Fcにまたは両サブユニットに付加することができた。
【0222】
選択的スプライシングにより細胞膜上に表示された多量体分子が特定の細胞の分泌多量体タンパク質の産物組成を反映するので、この技術は、単一細胞レベルでの分泌プロファイルのサイトメトリーに基づく定性的予測を可能にするものであろう。これは、実施例5において実証される。
【実施例3】
【0223】
イントロン配列の改変による細胞表面表示および発現力価のモジュレーション
導入
実施例2で実証されたように、膜貫通領域の選択的スプライシングにより、さもなければ正常に分泌される抗体の一部が細胞表面に転送される。それにもかかわらず、分泌過程のこの改変は、抗体の分泌レベルに対する負の影響を有しうる。分泌抗体と膜表示抗体との間のスプライシング比を微調整することは、非スプライス抗体構築物(選択的スプライシング膜貫通領域を含まない)で認められる発現レベルに回復する助けとなりうる。これは、以下の実施例で実証される。
【0224】
材料および方法
トランスフェクション
懸濁CHO-S細胞に、50mlバイオリアクターチューブ(Tubespins、TPP)方式でポリエチレンイミン(JetPEI(登録商標)、Polyplus-transfection、Illkirch、France)を用いて発現ベクターをトランスフェクトした。この目的のために、対数増殖期細胞を5mLのOptiMEM培地(#31985-047、Invitrogen)中に2 E6個細胞/mLの密度で播種した。JetPEI(登録商標):DNA複合体を細胞に3(μg/μg)の重量比で加えた。細胞懸濁液中の最終DNA濃度は、2.5μg/mLであった。振盪しながら(200rpm)37℃で5時間インキュベートした後、5mLの新鮮な培養培地を細胞懸濁液に加えた。次いで、細胞を振盪プラットフォーム上で37℃、5%CO2および80%湿度でインキュベートした。
【0225】
表面染色
細胞の表面染色をトランスフェクション後1日目に実施した。合計1 E5個の細胞を収集し、96ウエルプレートの丸底ウエルに移した。細胞を洗浄緩衝液(PBS中2%FBS)で2回洗浄し、次いで、検出抗体を含む100μLの洗浄緩衝液に再懸濁した。重鎖の特異的検出は、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG抗体(#512-4998-82、eBioscience)を用いて、青色レーザー(488nm)により励起し、スペクトル範囲583/26nmで実施した。暗所で室温で20分間インキュベートした後、細胞を洗浄緩衝液で1回洗浄し、フローサイトメトリー解析のために200μLの洗浄緩衝液に再懸濁した。細胞をGuavaフローサイトメーター(Merck Millipore)またはFACSCalibur(Becton Dickinson)を用いて解析した。分泌分子の一過性発現レベルは、Octet QK機器(Fortebio、Menlo Park、CA)およびプロテインAバイオセンサーを用いてトランスフェクション後4~6日目に測定した。
【0226】
結果
軽鎖を発現する発現ベクターpGLEX41_LC(配列番号294)およびM1M2膜貫通ドメイン(配列番号36~39)、PTCRA膜貫通ドメイン(配列番号40~43)、M1M2-PTCRA融合膜貫通ドメイン(配列番号44~47)またはB7-1膜貫通ドメイン(配列番号53~56)を含む、重鎖をコードし、改変型のイントロンを含む第2のベクターを用いて、材料および方法の項で述べたようにCHO-S細胞をトランスフェクトした。対照として、選択的スプライシングを用いない分泌重鎖を用いた(配列番号48)。
【0227】
トランスフェクションの後、細胞を材料および方法の項で述べたように染色し、フローサイトメトリーにより解析した。実施例2で既に認められたように、分泌型の軽鎖および重鎖を発現する陰性対照(膜貫通領域の選択的スプライシングを用いない)は、低い割合の染色細胞(
図6参照)しかもたらさなかった一方で、相当なレベルのIgG1分泌もたらした(
図7参照)。これと対照的に、M1M2領域(配列番号36、
図6A)およびB7-1膜貫通ドメイン(配列番号55、
図6M)を含む構築物をトランスフェクトした細胞は、細胞膜上に抗体を表示する有意な陽性集団を示した。PTCRA膜貫通ドメイン(配列番号40、
図6E)またはM1M2-PTCRA融合膜貫通ドメイン(配列番号44、
図6I)を含む場合、陽性集団が弱く染色された。
【0228】
イントロンのポリ(Y)トラクトにおけるY含量の減少は、スプライスアクセプターを弱めることが示されたので、スプライス比を分泌抗体側へとシフトさせるために導入した。表示の成功をもたらす両膜貫通領域(M1M2およびB7-1)について、イントロンのポリ(Y)トラクトにおけるYを含まない構築物(配列番号37および配列番号53)は、細胞の表面染色を示さなかった(
図6BおよびN参照)。これは、スプライシングの比が分泌抗体側へとほとんどシフトしたことを示唆するものであった。
【0229】
マウス免疫グロブリンμ一次転写物のイントロンにおける付加的なポリ(A)部位の存在は、選択的スプライシング事象に影響を及ぼし、より高い割合の分泌産物(Galliら、1987)およびより低い膜表示抗体をもたらすことが示された。この所見に基づいて、スプライス比を抗体分泌側へとシフトさせるためにSV40ポリ(A)を分泌ポリペプチドの停止コドンの3’およびイントロンの分岐点の5’に導入した。イントロンにおけるSV40ポリ(A)部位の付加により、抗体の分泌レベルは、最初のI4構築物と比較してM1M2構築物で有意に増加した(
図7参照)。同時に、M1M2構築物の膜表示抗体の割合(
図6C参照)が増加した。B7-1細胞の染色が既に非常に高かったので、膜表示に対するポリ(A)の影響に関する結論を引き出すことはできなかった(
図6O参照)。
【0230】
発現カセットに近接する他のスプライスアクセプターによる異常なスプライス事象を避けるために、ガストリンターミネーター部位(mRNA転写を終結させると報告された)を発現カセットのポリ(A)部位の3’に直接導入した。ガストリンターミネーター構築物は、とりわけM1M2構築物についての膜表示抗体の割合を増加させた(
図6D)が、分泌レベルの有意な増加をもたらさなかった。再び、B7-1細胞について結論を引き出すことはできなかった(
図6P)。
【0231】
選択的スプライシング、したがって、全産生抗体の一部の膜結合発現は、全体の分泌IgG力価に負の影響を有すると思われる。それにもかかわらず、M1M2膜貫通領域(PTCRA膜貫通ドメインと組み合わせても)およびとりわけB7-1膜貫通領域は、選択的スプライシングを用いない対照構築物の分泌レベルの最大80%のレベルをもたらした(
図7参照)。さらに、イントロンにおけるポリ(A)シグナルの付加は、細胞膜上の有意な染色を維持すると同時に、IgG分泌に有利であることがわかった。他方でガストリンターミネーターはそれぞれの参照構築物と比較して、分泌に対し軽微な影響しか示さなかった(
図7参照)。
【0232】
以前の実験で、イントロン配列の種々の改変は、構築物の膜貫通領域に無関係に、選択的スプライシングの効率に対する同様な影響を示した。したがって、選択的スプライス比および抗体分泌レベルに対するイントロン配列の改変の影響をさらに明らかにするために、B7-1膜貫通領域を選択した。その理由は、それが最高レベルの染色をもたらしたからである。
【0233】
細胞表面表示抗体の量を減少させ、対照構築物の発現レベルに回復させるために、分泌産物側へとスプライス比を変化させた。すなわち、スプライスドナーおよびスプライスアクセプター部位を弱めた。スプライスアクセプターの共通配列に存在するポリ(Y)トラクトは、スプライスアクセプター強度に重要な役割を果たすことが公知である(ポリ(Y)トラクトが短いほど、スプライスアクセプター部位が弱くなる)。先行する実験で、ポリ(Y)トラクトにおけるY含量のゼロへの完全な減少が抗体の表面表示を消失させることが示された。天然ニワトリTNTイントロン4ポリ(Y)トラクトは、27個のYを含む。それらのポリ(Y)トラクトにおける減少した数のYを含む改変イントロンを有する一連の構築物を前述のCHO-S細胞にトランスフェクトした(配列番号53、55、59~63)。表面染色およびOctet装置およびプロテインAバイオセンサーを用いた発現レベルの推定の後に、抗体の細胞表面表示に対するポリ(Y)トラクトの影響を明確に確認することができ、ポリ(Y)トラクトにおけるYが9個未満であった場合、染色細胞の百分率(
図8A、B、C、D、E、F、G、H参照)ならびに染色強度(
図8A、B、C、D、E、F、G、J参照)が劇的に減少した。残念ながら、細胞表面表示のこの減少は、全体的な発現レベルに影響を及ぼさず、発現レベルは、すべての構築物で対照より低いままであった(
図8I参照)。
【0234】
スプライシング比を分泌産物側に高める他の方法は、スプライスドナーのDNA配列を変化させることによって、選択的にスプライシングしたイントロンの5’末端におけるスプライスドナーの強度を低下させることである。元の構築物と同じアミノ酸配列をコードする2種のDNA構築物(SD_CCC、配列番号58およびSD_GGC、配列番号57)を同じアミノ酸をコードする選択的コドンを利用して作製することができた。スプライスドナーの共通配列(SD_CCC、配列番号58)の第1の改変は、染色細胞の百分率、染色の強度または発現レベルに対する効果をもたらさなかった(
図9参照)が、第2の改変(SD_GGC、配列番号57)は、表面表示(百分率と強度の両方、
図9C、DおよびF参照)の劇的な減少を示した。この表面表示の減少は、選択的膜貫通ドメインを含まない対照のレベルまでの、発現力価の明らかな増加と相関していた(
図9E参照)。さらに、天然ニワトリTNTイントロン4配列と比較した場合、細胞表面表示が劇的に減少したが、膜貫通ドメインを含まない対照と比較した場合、有意な染色を観測することができた(
図9C参照)。
【0235】
要約
ガストリンターミネーターは、とりわけM1M2構築物について細胞膜上のIgGに陽性に染色された細胞の割合を増加させたが、標準構築物と比較して分泌IgGのより高い発現をもたらさなかった。イントロンにおける付加的なポリ(A)の挿入は、構築物M1M2における膜表示抗体の割合を増加させた(B7-1については結論を引き出すことができなかった)。付加的なポリ(A)を含むM1M2構築物は、高いレベルの分泌IgGも示した(非スプライス対照構築物の発現の最大80%)。
【0236】
ポリ(Y)トラクトの減少は、スプライスアクセプターを弱め、膜表示スプライス変異体の発現を減少させると予測された。これは、すべての4種の基礎構築物(M1M2、PTCRA、M1M2-PTCRAおよびB7-1)について確認することができた。さらに、表面表示のレベルは、B7-1膜貫通ドメインを用いた実施例により示されたように、ポリ(Y)トラクトの長さと直接相関することが認められた。ポリ(Y)トラクトにおける最小限5Yがこの状況における有意な表面染色に必要であることが見いだされた。同時に、分泌抗体の発現レベルの増加を観測することができなかった。したがって、選択的スプライシングの移動は、分泌産物の蓄積に恩恵をもたらさなかった。予期しないことに、スプライスドナーの共通配列の特定の改変が、分泌抗体のレベルを増加させると同時に、表面染色のレベルを低下させた。表面表示のレベルは、かなり低かったが、対照構築物と比較して依然として有意であり、分泌レベルは、対照と同じであることが見いだされた。
【0237】
発明者らは、選択的スプライシング事象の頻度がスプライスドナー部位の強度によって決定されることを考慮した。対応するスプライスアクセプターが十分に強い(ポリ(Y)トラクトにおけるYが5個を超える)場合、選択的スプライシングは、膜貫通領域を含む構築物をコードする選択的mRNAの形成、およびしたがって、膜表示を引き起こす。ポリ(Y)トラクトにおけるYの量を5Y未満に低くすることによってスプライスアクセプターが弱められる場合、非スプライスmRNA、およびしたがって、分泌レベルに対する影響は認められないが、スプライシング事象は、効率がより低くなり、選択的mRNA前駆体が分解されうる。これと一致するものとして、スプライスアクセプターが弱められた後により低い膜表示が観測されたが、分泌レベルに対する影響は認められなかった。他方でスプライスドナーの強度を低下させることにより、選択的スプライシング事象の頻度が低下しうる。結果として、より多くのmRNAが非スプライスmRNAの分泌産物をコードすること、分泌抗体の観測される増加をもたらす。強いスプライスアクセプターは、mRNAの効率的な選択的スプライシングをもたらすが、弱いスプライスドナーに起因してより低い頻度であり、これは、観測される有意であるが、弱い膜表示の説明となりうる。
【0238】
要約すると、スプライスドナーおよび/またはスプライスアクセプター配列の改変により、表面表示のレベルおよび選択的スプライシングを用いずに発現させた抗体の分泌レベルまでの抗体の分泌レベル両方の調節が可能であった。したがって、提示した構築物は、選択的スプライシングの効率を調節することによって所望のレベルまでの表示および分泌レベルの微調整を可能にするものである。
Galli GI、Guise J、Tucker PW、Nevins JR (1988)、Poly(A) site choice rather than splice site choice governs the regulated production of IgM heavy-chain RNAs、Proc Natl Acad Sci USA、4月、85巻(8号)、2439~43頁
【実施例4】
【0239】
細胞表面表示への膜貫通領域の影響
導入
細胞により産生される抗体の一部の膜表示のための選択的スプライシングシステムは、膜貫通領域の特性によって改変される可能性がある。例えば、膜貫通ドメインの長さおよび構造が膜表示の有効性に影響を及ぼしうることを推測することができよう。さらに、膜貫通領域の細胞質ゾル側末端は、ER輸出シグナルの存在または非存在によって細胞表面表示に影響を及ぼしうる。以下の実施例では、我々は、膜貫通ドメインのアミノ酸組成も、その長さも、膜貫通領域の細胞質ゾル側末端も、表面表示および分泌に対する重大な影響を有しないことを示す。
【0240】
材料および方法
トランスフェクション
懸濁CHO-S細胞に、50mlバイオリアクターチューブ(Tubespins、TPP)方式でポリエチレンイミン(JetPEI(登録商標)、Polyplus-transfection、Illkirch、France)を用いて発現ベクターをトランスフェクトした。この目的のために、対数増殖期細胞を5mLのOptiMEM培地(#31985-047、Invitrogen)中に2 E6個細胞/mLの密度で播種した。JetPEI(登録商標):DNA複合体を細胞に3(μg/μg)の重量比で加えた。細胞懸濁液中の最終DNA濃度は、2.5μg/mLであった。振盪しながら(200rpm)37℃で5時間インキュベートした後、5mLの新鮮な培養培地を細胞懸濁液に加えた。次いで、細胞を振盪プラットフォーム上で37℃、5%CO2および80%湿度でインキュベートした。
【0241】
表面染色
細胞の表面染色をトランスフェクション後1日目に実施した。合計1 E5個の細胞を収集し、96ウエルプレートの丸底ウエルに移した。細胞を洗浄緩衝液(PBS中2%FBS)で2回洗浄し、次いで、検出抗体を含む100μLの洗浄緩衝液に再懸濁した。重鎖の特異的検出は、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG抗体(#512-4998-82、eBioscience)を用いて、青色レーザー(488nm)により励起し、スペクトル範囲583/26nmで検出した。暗所で室温で20分間インキュベートした後、細胞を洗浄緩衝液で1回洗浄し、フローサイトメトリー解析のために200μLの洗浄緩衝液に再懸濁した。細胞をGuavaフローサイトメーター(Merck Millipore)またはFACSCalibur(Becton Dickinson)を用いて解析した。分泌分子の一過性発現レベルは、Octet QK機器(Fortebio、Menlo Park、CA)およびプロテインAバイオセンサーを用いてトランスフェクション後4~6日目に測定した。
【0242】
結果
軽鎖を発現する発現ベクターpGLEX41_LC(配列番号294)および異なる膜貫通領域を含む重鎖をコードする第2のベクターを用いて、材料および方法の項で述べたようにCHO-S細胞をトランスフェクトした。対照として、選択的スプライシングを用いない分泌重鎖を用い(配列番号48)、B7-1膜貫通領域を含む構築物(配列番号55)を陽性対照として用いた。
【0243】
トランスフェクションの後、細胞を材料および方法の項で述べたように染色し、フローサイトメトリーにより解析した。
【0244】
膜貫通ドメインの長さおよび組成
細胞表面表示および抗体分泌レベルに対する膜貫通ドメインの影響を解析するために、B7-1膜貫通ドメインを疎水性残基のみを含む同様の長さ(22~23アミノ酸)の膜貫通ドメイン(配列番号81~86参照)により置き換えた。膜貫通ドメインの交換は、抗体の細胞表面表示または分泌に対する影響を有さなかった(
図10参照)。
【0245】
B7-1膜貫通ドメインを、疎水性残基だけでなく、極性または荷電残基も含む同様の長さ(21~24アミノ酸)の膜貫通ドメイン(配列番号87~93参照)により置き換えた場合、PTCRAに由来する膜貫通ドメイン(配列番号93)を除いて、表面表示または分泌に対する影響は認められなかった。この膜貫通ドメインは、細胞表面上に産物を示す細胞の割合を変化させることなく、分泌レベルに対するいかなる影響も伴わずに産物の表面密度を劇的に低下させた(
図11H、J、KおよびL参照)。
【0246】
膜貫通ドメインは、疎水性脂質相により囲まれている。膜の疎水性環境中にイオン性基を挿入するエネルギーコストは、非常に高く、したがって、膜貫通ドメインにおける荷電アミノ酸に対する強いバイアスがあるはずである(WhiteおよびWimley、1999)。膜貫通らせんの統計解析により、膜貫通ドメインが、とりわけ膜貫通領域の疎水性コアにおいて、主として疎水性アミノ酸残基により構成されていることが確認された(Beza-Delgado、2012)。この所見に基づいて、我々は、観測された弱い染色強度に対するPTCRA膜貫通ドメインにおける3つの荷電残基(R8、K13およびD18、番号付けは膜貫通らせんの始めから始める)の影響を確認することを望んだ。種々の荷電残基をバリンアミノ酸(膜貫通ドメインにおける4つの最も高頻度のアミノ酸のうちの1つ(Baeza-Delgadoら、2012))と交換した、いくつかのPTCRA構築物を設計し、CHO-S細胞にトランスフェクトした(配列番号94~100)。これらのトランスフェクションの結果により、表面染色強度に対する荷電残基の影響が確認された。単一アミノ酸R8V(配列番号94)、K13V(配列番号95)またはD18V(配列番号96)の突然変異は、表面表示抗体の密度を有意に増加させたが、抗体の分泌レベルに対して有意な影響を与えなかった(
図12B、C、DおよびJ参照)。単一突然変異の結果から予期された通り、2つの突然変異荷電残基の組合せ(R8VおよびK13V(配列番号97)、R8VおよびD18V(配列番号98)またはK13VおよびD18V(配列番号99))は、表面表示のレベルおよびPTCRAの膜貫通ドメインと同様の分泌レベルを示した(
図12E、F、GおよびJ参照)。最後に、すべての3つの荷電残基のバリンへの突然変異(配列番号100)は、予期された通り、対照と比較して高い表面表示を引き起こした。予期しないことに、分泌抗体の発現レベルならびに染色細胞の百分率は、この構築物でわずかにより低かった(
図12HおよびJ)。分泌および染色レベルの低下の原因は、現在のところ不明である。
【0247】
B7-1膜貫通ドメインを、疎水性残基だけでなく、極性または荷電残基も含むより短い膜貫通ドメイン(17~19アミノ酸)(配列番号101~103)により置き換えた場合、異なる効果を確認することができた。結果は、
図13に示される。FCERA(配列番号101)およびKI2L2(配列番号102)の膜貫通ドメインは、染色細胞の百分率に軽微な有害効果をもたらした(
図13B、CおよびE)が、FCERAに由来する膜貫通ドメインのみが染色の強度に対して負の影響を与えた(
図13CおよびG)。さらに、両膜貫通ドメイン(FCERAおよびKI2L2)は、分泌レベルに対する軽微な好ましい効果をもたらした(
図13F)。他方でIL3RBに由来する膜貫通ドメイン(配列番号103)については、染色細胞の百分率および分泌レベルに関してはB7-1参照構築物と比較して変化が認められず(
図13D、E、F)、染色強度のわずかな低下のみが認められた(
図13G)。これにより、短い膜貫通ドメインが産物の表面表示の微調整のためのツールとなる可能性があるということとなる。
【0248】
B7-1膜貫通ドメインを、疎水性残基だけでなく、極性または荷電残基も含むより長い膜貫通ドメイン(配列番号104~107)により置き換えた場合、B7-1膜貫通ドメインを含む参照構築物と比較して染色細胞の百分率に対する影響も、染色強度に対する影響も認められなかった(
図14B、C、D、E、FおよびH参照)。それにもかかわらず、分泌は、B7-1を含む場合よりすべてのこれらの膜貫通ドメインを含む場合の方がわずかに良好であった(
図14G参照)。
【0249】
1つの膜貫通ドメインから別のものに切り替えずに膜貫通ドメインの長さの影響をより明確な方法で評価するために、改変されたB7-1膜貫通ドメインを含む構築物を設計した。いくつかの疎水性アミノ酸をB7-1膜貫通ドメインの疎水性中心から除去またはそれに付加した(配列番号108~111)。B7-1を18アミノ酸(配列108)に短縮することは、染色細胞の百分率に関して有益であったが、染色強度に関してわずかに有害であった(
図15B、FおよびH参照)。3つの他の構築物(それぞれ20(配列番号109)、24(配列番号110)および26(配列番号111)アミノ酸)は、染色細胞の百分率または染色強度に有意な影響を及ぼさなかった(
図14C、D、E、FおよびH参照)。分泌レベルに関しては、膜貫通ドメインの長さを短縮することは、有益であることがわかったが、伸長膜貫通ドメインを含む構築物は、天然B7-1を含む構築物と同等の分泌レベルを示した(
図14G参照)。
【0250】
一般的に、染色強度は、より長い膜貫通ドメインと比較してわずかに低減しうるが、染色細胞の百分率および抗体の分泌に関しては、より短い膜貫通ドメインが好ましいと思われる。
【0251】
細胞質ゾル側末端
文献で、B7-1細胞質ゾル側末端における構造的非線状ER輸出シグナルの存在が示唆されている(Linら、2013)。著者らは、細胞表面に向けての膜貫通タンパク質の細胞質ゾルドメインにおけるER輸送シグナルの存在は、細胞表面上のタンパク質の量に対する正の影響を有しうることを見いだした。高い代謝回転を有するタンパク質の場合、ERから膜への加速輸出が原形質膜からのタンパク質分解性切断を補いうる。
【0252】
ER輸出シグナルが我々のシステムにおける膜表示に関連するかどうかを評価するために、B7-1細胞質ゾル側末端を、ER輸出シグナルを含むことが公知のいくつかの膜貫通タンパク質およびER輸出シグナルを含まない欠失変異体の細胞質ゾル側末端により置き換えた(配列番号112~124)。
【0253】
図16Pに示すように、ER輸出シグナルの非存在は、分泌抗体のレベルに関してはわずかに有利であることがわかったが、染色細胞の百分率(
図16B~NおよびO)および染色強度(
図16B~NおよびQ)は、有意な影響を受けなかった。したがって、我々の膜表示抗体は、速やかな代謝回転を受けない可能性がある。
【0254】
これらの構築物に加えて、M1M2膜貫通ドメインにおけるB7-1細胞質ゾル側末端によるM1M2細胞質ゾル側末端の交換を実施した(配列番号125)。
図17Eに示すように、この交換は、蛍光の強度をわずかに増大させたが、染色細胞の百分率(
図17C)に対しても、分泌レベル(
図17D)に対しても影響を及ぼさなかった。
【0255】
要約
総合すると、データから、我々の選択的スプライシングシステムにおける膜貫通ドメインの長さまたはアミノ酸組成は、抗体の分泌レベルおよび細胞膜上の産物表示に対して軽微な影響を与えたにすぎなかったことが示唆される。選択的スプライシングシステムの微調整に用いられる可能性がある、分泌産物と膜表示産物との比のわずかな変化が認められた。構築物のすべてが、抗体の有意な表面表示を、および適切な分泌レベルシフトも、もたらした。興味深いことに、細胞表面表示の蛍光レベルに対する膜貫通ドメインの大きな影響が認められた。疎水性アミノ酸の存在または非存在は、平均蛍光の制御を可能にするものであったが、分泌レベルまたは細胞表面表示を示す細胞の百分率に影響を及ぼさなかった。
【0256】
細胞質側末端におけるER輸出シグナルは、対照抗体の細胞表面表示に必要でないことが見いだされた。グリシン-アラニンリンカーおよび6ヒスチジンからなる最小細胞質側末端またはB7-1末端の最初の5アミノ酸は、細胞表面表示のために十分なものであった。これは、速やかな代謝回転を受ける他の抗体またはタンパク質については異なる可能性がある。したがって、細胞質ゾル側末端は、目的のタンパク質の表面表示を調節するための興味深いツールでありうる。
【0257】
総合すると、実施例2~4からのデータから、表面表示レベルおよび分泌レベルは、選択的スプライシングおよび膜結合タンパク質の膜組込みに関与する種々の配列による影響を受けることが示唆される。スプライスドナー部位の特定の改変により、対照非選択的スプライシング構築物と同じ分泌レベルを回復することができた(実施例3の
図9参照)が、表面染色は、B7-1膜貫通領域を用いた場合に有意に減少した。他方で、M1M2膜貫通領域を用いる場合にイントロンにSV40(A)を付加することにより、分泌および表面表示レベルの両方が増加した(実施例3の
図6および7参照)。さらに、18または20アミノ酸に短縮させたB7-1のようなB7-1膜貫通ドメインの改変(
図15参照)は、分泌レベルおよび表面表示レベルの両方に対する正の影響を有していた。最後に、6HisまたはKCFCKのようなER輸出シグナルを含まない細胞質ゾル側末端によりB7-1細胞質ゾル側末端を置き換えることによっても表面表示および分泌レベルの両方が改善された。最後に、発現に対する発現カセットの末端におけるガストリンターミネーターの影響は、正であり、イントロンに配置した場合、より有利でありうる。したがって、これらの種々の特徴を兼ね備えた構築物は、より有利であり、細胞選択のために望まれる高いダイナミックレンジの細胞表面表示及び最善の分泌レベルの両方をもたらしうる。
【0258】
これらの構築物の主鎖は、pGLEX41(GSC281、配列番号304)であり、非スプライスORFの最後の5アミノ酸から発現構築物の末端までの配列は、DNA配列ならびにFehler! Ungultiger Eigenverweis auf Textmarkeにおけるタンパク質配列と同じ、融合膜貫通領域を含むアミノ酸から始まるタンパク質配列として示す。
【0259】
【表18】
*示した配列は、非スプライスORFの最後の5アミノ酸から発現構築物の末端までに及ぶ
【0260】
出版物:
Lin Y.、Chen B.、Wei-Cheng Lu W. Chien-I Su C.、Prijovich Z.、Chung W.、Wu P.、Chen K.、Lee, I.、Juan T.およびRoffler, S. (2013). The B7-1 Cytoplasmic Tail Enhaces Intracellular Transport and Mammalian Cell Surface Display of Chimeric Proteins in the Absence of a Linear ER Export Motif PLoS One. 9月20日、8巻(9号)
Baeza-Delgado, C1、Marti-Renom, MA、Mingarro, I. (2012). Structure-based statistical analysis of transmembrane helices. Eur Biophys J. 2013年3月、42巻(2~3号)、199~207頁
White, SHおよびWimley、 WC (1999). Membrane protein folding and stability: physical principles. Annu Rev Biophys Biomol Struct.、28巻、319~65頁。
【実施例5】
【0261】
表面表示のための選択的スプライシングを用いた産物分泌の定性的予測
導入
細胞のトランスフェクションは、組換えタンパク質発現のための安定細胞株の樹立のための最初のステップである。多くの理由(不均質な初期細胞集団、ゲノムにおけるプラスミドが組み込まれる遺伝子座が異なること、翻訳後機構が異なることおよび発現のえぴジェネティックな調節)のために、このステップは、一般的に、発現および分泌レベルに関してだけでなく、タンパク質フォールディング、グリコシル化および他の翻訳後修飾のような産物の質の特性に関しても不均質な細胞集団を生じさせる。二重特異性抗体は、すべての可能な組合せでアセンブルしうる最大4つの異なるサブユニット(2つの重鎖および2つの軽鎖)により構成されている。プラスミド組込み、転写および翻訳の調節ならびにERにおけるフォールディングの有効性次第で、特定のクローンは、不要の副産物の代わりに正しくアセンブルされた産物を好ましくは分泌しうる。この所望の分泌パターンを有するクローンの選択は、分泌タンパク質の広範なスクリーニングおよび特性評価を必要とする。目的の産物および最小限の副産物を産生する細胞株を得るために必要なスクリーニングの量を低減することは、大きな進歩であろう。
【0262】
選択的スプライシング技術を用いて細胞膜表示のために分泌タンパク質の一部を分泌経路から逸脱させることができることが先に実施例2~4で実証された。細胞膜上に表示されたタンパク質の特異的検出がフローサイトメトリーによって可能であることも示された。
【0263】
この実施例の目的は、細胞膜上の産物パターン表示がクローンの分泌プロファイルを予測するものであることを実証することであった。この目的のために、実施例2で提示したヘテロ三量体二重特異性BEAT(登録商標)抗体をモデルとして用いた。該分子は、以下において「標的1」および「標的2」と呼ばれる2つの異なる可溶性分子に結合する。
図18の構造Aで、分子の概略図を確認することができる。それは、下文で「BEAT」と略記する。トランスフェクション後、BEAT分子だけでなく、「標的1」に結合する単一特異性重鎖-軽鎖二量体も分泌される。この分子は、Fabホモ二量体(「Fab-DIM」と略記)と呼ばれる。第2の副産物は、「標的2」に結合する単一特異性scFv-Fcホモ二量体(「scFv-Fc-DIM」と略記)である。これらの副産物は、
図18における構造BおよびCとして確認することができる。
【0264】
発現ベクターpGLEX41_BEAT-HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(配列番号50)、pGLEX41_scFv-Fc-I4-M1M2-M1M2-M1M2(配列番号52)およびpGLEX41_BEAT-LC(配列番号302)を用いた、またはpGLEX41_BEAT-LC(配列番号302)、pGLEX41_scFv-Fc-I4-B7-B7-B7(配列番号323)およびpGLEX41_BEAT-HC-I4-B7-B7-B7(配列番号321)を用いた細胞の安定トランスフェクション後、クローンを表面染色によりスクリーニングした。それに続き細胞の表面の表現型を特徴付けるための2つのアプローチを行った。最初に軽鎖およびFc断片の二重表面染色を実施した。この染色は、すべての産生された種の検出を可能にするとは限らなかった(BEATとFab-DIMとの区別をしない)が、単一特異性混入物scFv-Fc-DIMを検出した。この方法は、すべての種類のBEAT分子に普遍的に適用できる。第2のアプローチは、より特異的であり、それぞれの結合アームの検出のための可溶性標的を必要とした。この場合、すべての3つの可能な産物が表面染色により明確に検出された。組換えプールおよびクローンは、それぞれ限界希釈法およびフローサイトメトリー細胞選別により得られた。回分または流加培養を実施し、上清中に蓄積された産物をキャピラリー電気泳動により解析した。最終的に上清中で測定された分泌プロファイル(BEAT、Fab-DIMまたはscFv-Fc-DIM断片)を組換え細胞の細胞膜上に表示された産物プロファイルと比較した。
【0265】
材料および方法
安定プールの確立
安定トランスフェクトCHO細胞は、二重特異性ヘテロ二量体BEATの発現のための前述のベクターpGLEX41_BEAT-HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(「pHC-M1M2」と略記;配列番号50)、pGLEX41_scFv-Fc-I4-M1M2-M1M2-M1M2(「pscFv-Fc-M1M1」と略記;配列番号52)およびpGLEX41_BEAT-LC(「pLC」と略記;配列番号302)ならびにそれぞれ抗生物質ピューロマイシンおよびジェネティシンに対する耐性を付与するタンパク質の発現のための2つの自社開発ベクターのコトランスフェクションにより作製した。懸濁CHO-S細胞に、50mlバイオリアクター方式でポリエチレンイミン(JetPEI(登録商標)、Polyplus-transfection、Illkirch、France)を用いて線状化ベクターをトランスフェクトした。この目的のために、対数増殖期細胞を5mLのOptiMEM培地(#31985-047、Invitrogen)中に2 E6個細胞/mLの密度で播種した。JetPEI(登録商標):DNA複合体を細胞に3(μg/μg)の重量比で加えた。2.5μg/mLの最終DNA濃度を細胞に加えた。振盪しながら(200rpm)37℃で細胞をJetPEI(登録商標):DNA複合体とともに5時間インキュベートした後、5mLの培養培地PowerCHO2(#BE12-771Q、Lonza)を細胞懸濁液に加えた。次いで、細胞を振盪プラットフォーム上で37℃、5%CO2および80%湿度でインキュベートした。トランスフェクションの1日後に細胞を、安定なプールの増殖を可能にする濃度のピューロマイシン(#P8833-25mg、Sigma)およびジェネティシン(#11811-098、Gibco)を含む選択培地中に各種濃度(0.7、0.5および0.4 E5個細胞/mL)で96ウエルプレートに播種した。静的条件下での14日間の選択の後に15の生産性安定プールをウエルから採取し、TubeSpinバイオリアクター中に拡大した。
【0266】
組換えクローンの確立
クローンは、二重特異性ヘテロ二量体BEATの発現のための前述のベクターpGLEX41_BEAT-HC-I4-B7-B7-B7(「pHC-B7」と略記、配列番号321)、pGLEX41_scFv-Fc-I4-B7-B7-B7(「pscFv-Fc-B7」と略記、配列番号323)およびpGLEX41_BEAT-LC(「pLC」と略記、配列番号302)ならびにそれぞれ抗生物質ピューロマイシンおよびジェネティシンに対する耐性を付与するタンパク質の発現のための2つの自社開発ベクターのコトランスフェクションにより作製した。トランスフェクションおよび安定な形質転換体の選択は、前述のように実施した。静的条件下での14日間の選択の後にすべての安定な形質転換体を収集し、プールし、動的条件(オービタル振盪)下で1週間にわたり継代した。単一細胞選別は、パルスプロセシングにより細胞ダブレットを除外した生存細胞においてゲーティングすることによりFACSAriaIIを用いて実施した。
【0267】
細胞表面上に表示された産物のLCおよびFc染色
安定細胞上の軽鎖(LC)およびFc断片の二重表面染色は、実施例2で詳細に述べたように回分播種後2日目に実施した。手短かに述べると、合計1 E5個の細胞を収集し、96ウエルプレートの丸底ウエルに移した。細胞を洗浄緩衝液(2%FBSを含むPBS)で2回洗浄し、次いで100μLの検出抗体中に再懸濁した。カッパ軽鎖の特異的検出は、マウス抗ヒトカッパLC APC標識抗体(#561323、BD Pharmingen)を用いて実施し、Fc断片は、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトFcガンマ特異抗体(#12-4998-82、eBioscience)を用いて検出した。暗所で室温で20分間のインキュベーションの後、細胞を洗浄緩衝液で1回洗浄し、フローサイトメトリー解析のために200μLに再懸濁した。細胞は、Guavaフローサイトメーター(Merck Millipore)を用いて解析した。
【0268】
細胞表面上に表示された特異的バインダーの染色
この染色のために、細胞表面上に表示された分子の結合アームの検出のための可溶性標的を用いた。手短かに述べると、合計1 E5個の細胞を収集し、96ウエルプレートの丸底ウエルに移した。細胞を洗浄緩衝液(2%FBSを含むPBS)で2回洗浄し、次いで100μLのビオチニル化標的1およびHisタグ付き標的2の混合物に再懸濁した。暗所で室温で20分間のインキュベーションの後、細胞を洗浄緩衝液で2回洗浄し、APCとコンジュゲートしたストレプトアビジン(#554067、BD Pharmingen)およびPEで標識した抗Hisタグ抗体(#IC050、RD Systems)を含む100μLの混合物に再懸濁した。暗所で室温で20分間のインキュベーションの後、細胞を洗浄緩衝液で1回洗浄し、Guavaフローサイトメーター(Merck Millipore)を用いたフローサイトメトリー解析のために200μLに再懸濁した。
【0269】
細胞分泌プロファイルの解析
組換えプールは、補足増殖培地(PowerCHO2、2mM L-グルタミン、8mM Glutamax(Life Technologies、Carlsbad、CA)、15%Efficient Feed A(Life Technologies)、15%Efficient Feed B(Life Technologies))中0.5 E6個細胞/mLの細胞密度でTubeSpinsに播種した。クローンは、増殖培地(PowerCHO2、2mM L-グルタミン)中0.5 E6個細胞/mLの細胞密度でTubeSpinsに播種し、ActiCHO Feed A&Bフィード、(#U050-078、PAA Laboratories GmbH)の供給を毎日実施した。回分または流加培養の14日目に上清を遠心分離により収集し、0.2μmシリンジフィルター(#99722、TPP)を用いてろ過した。粗上清を直接分析するか、またはStreamline Protein Aビーズ(#17-1281-02、GE)を用いて精製した。タンパク質をCaliper LabChip GXIIタンパク質アッセイを用いて解析した。異なる種をそれらの分子量により同定し、各産物の割合を決定する。
【0270】
結果
pHC-M1M2、pScFv-Fc-M1M2およびpLC構築物を用いたトランスフェクションの後に合計15の安定プールが得られた。これらのプールの分泌プロファイルを測定するために補足バッチを開始した。プールにおける軽鎖およびFc断片(scFv-Fcおよび重鎖)の二重表面染色をバッチ播種後2日目に実施した。
図19に補足バッチの2日目に二重染色により測定したプールの1つの表面プロファイルの例を示す。ドットプロットは、カッパLC染色の強度(y軸)対ヒトFc染色の強度(x軸)を示す。象限は、陰性染色細胞と陽性染色細胞との間の限界を任意に確定するものである。象限Q8は、細胞膜上にタンパク質を発現しない細胞、例えば、非産生細胞の亜集団の割合を示す。Q7は、Fc断片について陽性であるが、カッパLCについて陰性であり、したがって、細胞膜上にscFv-Fc-DIMを示す細胞に対応する細胞の割合である。Q6における二重陽性細胞は、細胞膜上にLcおよびFc断片の両方、例えば、BEATまたはFab-DIM分子を表示する細胞である。
【0271】
解析により、33.8%の非産生細胞(Q8)、50.3%のscFv-Fc-DIM分泌体(Q7)および15.8%の潜在的なBEATまたはFab-DIM分泌体(Q6)の不均質な細胞集団が示された。表面染色と分泌産物との相関を計算することができるために、生産性集団のみを考慮に入れた。したがって、生産性細胞の割合(Q6+Q7)内のBEATおよびFab-DIM産生細胞の割合ならびにscFv-Fc-DIM産生細胞の割合を非産生細胞の割合Q8を除いて再計算した(この割合をQ6
*およびQ7
*と呼ぶものとする)。例えば、
図17に示す解析において、集団を以下のように計算した。
Q6
*=Q6/(Q6+Q7)=23.9%およびQ7
*=Q7/(Q6+Q7)=76.1%。
この解析を15のすべての生産性安定プールについて実施し、
図20に示す相関に用いた。
【0272】
BEAT、Fab-DIMおよびscFv-Fc-DIM産生細胞の割合は、選択的スプライシングによる細胞膜上の種の表示に応じた表面染色によって明らかにすることができた。次いで、結果を解析プールの実際の分泌プロファイルと比較した。この目的のために、15の生産性安定プールの上清を14日目にプロテインAにより精製し、各分泌分子を分子量により同定し、Caliper LabChip GXIIタンパク質アッセイにより定量した。これらの精製条件下では、Fab-DIM分子がプロテインA結合部位を欠いているので、プロテインA結合種のみ、すなわち、BEATおよびscFv-Fc-DIM分子が上清から精製されることを注意すべきである。
図20に分泌分子の百分率と表面染色により同定された対応する細胞の割合との間の関係を示す。
【0273】
データから、表面表示および分泌プロファイルがBEATおよびscFv-Fc-DIM分泌の両方について高度に相関(R2=0.9)していることがわかる。しかし、関係の性質は、線形性でない。線形回帰の欠如は、この実験で実施した表面染色ではBEATとFab-DIMとが区別されず、その一方で、精製分泌産物がFab-DIMの割合を除くものであるという事実により説明することができる。上清中の分泌BEATおよびscFv-Fc-DIMの百分率は、わずかに過大評価される可能性がある。それにもかかわらず、実験により、特定の分子の表面表示について陽性の細胞の割合が高いほど、上清中のこの分子の割合が高くなることが明らかに実証された。この例では、供試安定プールが20%より高い百分率の陽性細胞を含んでいた場合、分泌BEAT分子の割合が直線的に増加した。75%を超える二重陽性細胞(Q6)を含む安定プールの選択により、90%を超える所望のBEAT分子を産生する分泌細胞集団の選択が可能である。二重陽性表現型を有するクローン集団、例えば、LCおよびFc表面染色の両方について陽性の細胞集団の100%について、約100%に近い、より高い割合のBEAT分泌を期待することは、妥当である。
【0274】
方法の感度を高くし、表面表示と分泌パターンとの間の直線関係を実証すために、可溶性標的を検出試薬として含む異なる検出方法を適用した。この方法ですべての3つの可能な産物がそれらの結合パターンによって明確に同定される。
図21に細胞選別の前に測定したプールの表面プロファイルの例を示す。ドットプロットは、標的1に対するバインダーの細胞表面密度(y軸)対標的2に対するバインダーの細胞表面密度(x軸)を示す。象限は、陰性染色細胞と陽性染色細胞との間の任意限界を確定するものである。Q1は、標的1結合について陽性であるが、標的2結合ついて陰性の細胞の割合であり、したがって、細胞膜上にFab-DIMを示す細胞に対応する。Q2における二重陽性細胞は、細胞膜上に標的1および2に対する両バインダーを表示する細胞であり、したがって、膜上にBETAを表示する細胞に対応する。Q3は、標的2バインダーのみ、したがって、scFv-Fc-DIMに対応するバインダーを表示する細胞である。象限Q4は、細胞膜上にタンパク質を発現しない細胞、例えば、非産生細胞の亜集団の割合を表す。これらの細胞は抗体の分泌に寄与しなかったので、それらを解析から除外した。
【0275】
pHC-B7、pScFv-Fc-B7およびpLC構築物によるトランスフェクション後のフローサイトメトリー細胞選別により得られたすべての生産性クローン(28)をこのアプローチを用いて解析した。前述のように、BEAT、Fab-DIMおよびscFv-Fc-DIM産生細胞の割合は、選択的スプライシングによる細胞膜上の種の表示に応じた表面染色によって明らかにすることができた。各クローンの実際の分泌プロファイルは、流加培養の14日目にCaliper LabChip GXIIタンパク質アッセイにより上清中で直接測定した。
【0276】
図22に上清中に検出されたBEAT分子の割合とそれらの細胞表面上にBEAT表現型を表示する細胞の割合(Q2の%)との間の相関を示す。この特異的染色を用いて、良好な線形相関(R
2=0.8)が得られた。データから、BEAT分子を分泌するクローンの能力は、細胞膜上で検出された産物パターンにより予測することができることが明確に示された。
【0277】
結論
この実施例では、細胞膜表示と組み合わせた選択的スプライシング技術は、単一細胞の分泌プロファイルの定性的予測のための有効なリポーターシステムであることが実証された。LCおよびFc表面検出に基づく一般的検出方法または分子の可溶性標的を含む産物特異染色法を用いてトランスフェクト細胞の細胞膜表示パターンと実際の分泌プロファイルとの間の明らかな相関が見いだされた。該アプローチは、回分または流加培養中の細胞の能力の時間のかかるスクリーニングも、分泌産物の収集、精製および広範な特性評価も必要としない。
【0278】
結論として、ここで述べたリポーターシステムは、ヘテロ三量体分子の特定の分泌プロファイルを有する細胞クローンの信頼できる高処理スクリーニングツールを提供する。
【0279】
分泌プロファイルの定性的予測に加えて、特定の細胞クローンの分泌レベルの定量的予測は、細胞株の開発の目的のために非常に興味深いものである。以下の実施例では、選択的スプライシングアプローチ用いた膜結合、表面表示産物のレベルがクローンの分泌レベルと相関していたかどうかを検討した。
【実施例6】
【0280】
表面表示のための選択的スプライシングを用いた分泌レベルの定量的予測
導入
細胞株の開発プロセスの主要な課題は、例えば、良質の組換えタンパク質の高分泌速度を得るための、高能力クローンの時間効果的な選択である。選択的スプライシングによる発現タンパク質の一部の細胞膜表示がクローンの実際の定性的分泌プロファイルを示すことが上で実証された。この実施例では、細胞膜表示のレベルがクローンの分泌レベルと定量的に相関すること、および表面表示の強度に基づいて高生産性細胞を選択することができることを実証すこととする。
【0281】
材料および方法
安定細胞株の開発
安定トランスフェクトCHO細胞は、ヒト化IgG1抗体の発現のためのベクターpGLEX41_HC-I4-M1M2-M1M2-M1M2(配列番号36)およびpGLEX41_LC(配列番号294)ならびにそれぞれ抗生物質ピューロマイシンおよびジェネティシンに対する耐性を付与するタンパク質の発現のための2つの自社開発ベクターのコトランスフェクションにより作製した。
【0282】
懸濁CHO-S細胞に、50mlバイオリアクター方式でポリエチレンイミン(JetPEI(登録商標)、Polyplus-transfection、Illkirch、France)を用いて線状化ベクターをトランスフェクトした。この目的のために、対数増殖期細胞を5mLのOptiMEM培地(#31985-047、Invitrogen)中に2 E6個細胞/mLの密度で播種した。JetPEI(登録商標):DNA複合体を細胞に3(μg/μg)の重量比で加えた。2.5μg/mLの最終DNA濃度を細胞に加えた。振盪しながら(200rpm)37℃で細胞をJetPEI(登録商標):DNA複合体とともに5時間インキュベートした後、5mLの培養培地PowerCHO2(#BE12-771Q、Lonza)を細胞懸濁液に加えた。次いで、細胞を振盪プラットフォーム上で37℃、5%CO2および80%湿度でインキュベートした。トランスフェクションの1日後に細胞を、4μg/mLピューロマイシン(#P8833-25mg、Sigma)および400μg/mLジェネティシン(#11811-098、Gibco)を含む選択培地中各種濃度(0.7、0.5および0.4 E5個細胞/mL)で96ウエルプレートに播種した。静的条件下での14日間の選択の後に15の生産性安定プールをウエルから採取し、発現レベルの評価のためにTubeSpinバイオリアクター中に拡大した。
【0283】
発現レベルの評価
補足バッチを2mM L-グルタミン、8mM Glutamax、15%Efficient Feed A(#A1023401、Invitrogen)および15%Efficient FeedB(#A1024001、Invitrogen)を添加したPowerCHO2(#BE12-771Q、Lonza)中に0.5E6個細胞/mLの細胞密度で播種した。生存細胞数(VCC)および生存能をGuavaフローサイトメーターのViaCountアッセイを用いて1、3および7日目にモニターした。IgG力価をOctet QK機器を用いて1、3および7日目に測定した。安定プールの比生産性qPを1日目から3日目の間に以下の式により計算した。
【0284】
【数1】
式中、
qP=比分泌速度または生産性[pg/細胞/日]
IgG=3日目および1日目のIgG力価「pg/mL」
t=培養時間[日]
VCC
meand1-d3=1日目から3日目までの平均生存細胞数[細胞/mL]。
【0285】
細胞膜上の表示IgGsの定量は、以下に述べるように対数増殖期中1日目に実施した。
【0286】
細胞の染色
安定プール上のFc断片の染色は、バッチ播種後1日目に実施した。手短かに述べると、合計1 E5個の細胞を収集し、96ウエルプレートの丸底ウエルに移した。細胞を洗浄緩衝液(PBS中2%FBS)で2回洗浄し、次いで、100μLの検出抗体に再懸濁した。Fc断片の特異的検出は、PEコンジュゲートヤギ抗ヒトFcガンマ特異抗体(#12-4998-82、eBioscience)を用いて実施した。暗所で室温で20分間インキュベートした後、細胞を洗浄緩衝液で1回洗浄し、フローサイトメトリー解析のために200μLに再懸濁した。細胞をGuavaフローサイトメーターを用いて解析した。
【0287】
フローサイトメトリー細胞選別
クローンは、前述のように確立した安定形質転換体の不均質なプール(「安定細胞株の開発」の項参照)からフローサイトメトリー細胞選別により得た。この目的のために、Fc断片の表面染色を前述のプロトコールに従って実施した。選別は、パルスプロセシングにより細胞ダブレットを除外した生存細胞においてゲーティングすることによりFACSAria IIを用いて実施した。3つのゲートを表面蛍光強度(「低」、「中」および「高」)に従って定義し、単一細胞を200μLのクローニング培地を含む96ウエルプレートに分配した。静的条件下での2週間の増殖の後、細胞を動的条件下で拡大し、選択されたクローンの能力を前述のように評価した。
【0288】
結果
安定プールの表面染色プロファイルの解析を
図23に示す。領域g1(
図23、プロファイルA)におけるゲーティングされた生存細胞の表面蛍光をヒストグラム(
図23、プロットB)として表示し、分布の平均蛍光(平均[RFU])を計算した。平均蛍光は、細胞膜上に発現したIgGレベルの尺度として用いた。この解析は、すべての得られた安定プールについて実施し、表面IgGのレベルを上清において測定した分泌IgGの実際のレベルと比較した。
【0289】
図24に補足バッチの1日目に測定したすべての安定プールの表面蛍光強度と分泌レベルとの間の相関を示す。良好な相関(R
2>0.8)が表面IgG発現と力価との間(
図24、プロットA)ならびに表面IgG発現と比生産性との間(
図24、プロットB)に認められた。データは、選択的にスプライスされた膜貫通IgGの表面発現が安定トランスフェクト細胞の実際の分泌レベルをレポートしたことを実証している。同様の良好な相関(R
2>0.8)が1日目のプールの表面蛍光と7日間回分工程における容積生産性との間に認められた(
図25参照;このバッチでは、7日目が静止期の終了に対応する)。データは、回分工程の終了時のプールの能力が、検出された表面IgG発現により早期に予測することができたことを示している。回分工程では、細胞の生理的状態は、変化しつつある培地環境によって連続的に変化している。したがって、選択的スプライシングによるリポーターIgGの表面表示と回分工程における実際の分泌レベルとの間の相関は、細胞の生理的状態(対数増殖または静止)および回分工程段階(増殖または生産)と無関係である。
【0290】
仮説を検証するために細胞表面上に表示された抗体の密度に従ったフローサイトメトリー細胞選別によりクローンを得た。この目的のために、安定プールを、抗ヒトFc PE標識抗体を用いて表面IgGについて染色した。細胞の表面蛍光に従って3つの領域を定義し(「低」、「中」および「高」)、単一細胞をそれに応じて96ウエルプレートにクローニングした。ゲーティング戦略は、
図26Aに示す。約2週間後にクローンを増殖させ、選別された表現型がクローニング後に実際に得られたことを確認するために細胞の表面強度を再び測定した。すべてのクローンの表面強度の分布は、
図26Bで確認することができる。3つの異なる選別群の表面IgG分布が予測された表現型「低」、「中」および「高」と対応していたので、全体的に選別は成功であった。例えば、おそらく選別の前の染色のアーチファクトのため、高い表面蛍光を示す「低」群におけるいくつかの外れ値が検出された。得られたクローンの能力をその後、補足バッチで評価した。
図26Cに各群の比生産性qPの分布を示す。元のプールのqPも4連で評価し、図に対照として示す。最良の能力が「高」表面蛍光群内で明確に認められ、qPの中央値は、約10pg/細胞/日であった。元のプール(約5pg/細胞/日)と比較して、生産性は、2~6倍有意に改善され、最良のクローンは、30pg/細胞/日超に達した。対照的に「低」および「中」カテゴリーのクローンは、全般的に低パーフォーマーであり、qPの中央値は、0pg/細胞/日に近かった。いくつかの外れ値は、>20pg/細胞/日に達したが、これらの表現型は、フローサイトメトリーにより検出されたIgGの高い表面密度も示していた。
【0291】
結論
この実施例では、細胞膜上に選択的スプライシングにより発現するIgGのレベルが組換え細胞の実際の分泌レベルをレポートするものであることが実証された。産物の特異的に検出後の細胞膜蛍光は、上清中の蓄積IgG濃度およびトランスフェクト安定細胞のqPと相関する。また該相関は、回分生産工程の段階にかかわりなく、有効であったことが実証された。総合すると、これらのデータにより、組換え細胞の定量的分泌レベルは、本明細書で述べた選択的スプライシング表面表示リポーターシステムにより予測することができることが示された。これは、フローサイトメトリー細胞選別を用いて細胞表面上に表示されたIgGの密度に従ってクローンを選択することによって確認された。実際、高産生細胞をこのアプローチを用いて選択することができ、産業上適切な比生産性を示すクローンを時間効率的に得ることができた。
【配列表】