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特許7008426燃料の部分酸化のための方法、及びその方法を適用するための装置
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  • 特許-燃料の部分酸化のための方法、及びその方法を適用するための装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】燃料の部分酸化のための方法、及びその方法を適用するための装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20220118BHJP
   H05H 1/26 20060101ALI20220118BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20220118BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C01B3/38
H05H1/26
B01J19/08 E
B01J19/12 C
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017085674
(22)【出願日】2017-04-24
(65)【公開番号】P2018048058
(43)【公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-04-08
(31)【優先権主張番号】201630537
(32)【優先日】2016-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】517133998
【氏名又は名称】ブループラズマ パワー,エス.エル.
【氏名又は名称原語表記】Blueplasma Power, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マリオ アラヤ ブレネス
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-024770(JP,A)
【文献】特表2009-511247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0187372(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02501865(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0141182(US,A1)
【文献】特表2003-507321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209573(US,A1)
【文献】国際公開第2011/119274(WO,A1)
【文献】特開2008-168284(JP,A)
【文献】特開2004-285187(JP,A)
【文献】特開2010-184197(JP,A)
【文献】国際公開第2005/104181(WO,A1)
【文献】特表2006-507509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 6/34
B01J 10/00 - 12/02
B01J 14/00 - 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入流体の酸化還元反応を含むタイプの燃料の部分酸化のための方法であって、
1.第1のステップでは、流体燃料(9)及び酸化流体(10)を含む流入流体(4)が装置に導入され、前記流体燃料(9)及び前記酸化流体(10)は、本体(2)に到着すると、前記流入流体(4)と共に渦流を開始させるプラズマトーチへと接線方向に入射し、
2.第2のステップでは、前記渦流が、固定ベッド(7)と循環ベッド(6)との間に存在する空間を通って光反応器に沿って循環を開始し、
3.第3のステップでは、前記渦流が前記流入流体(4)と共に循環するため、その外縁が触媒を含む前記固定ベッド(7)に衝突し、一方でその内縁は循環ベッド(6)の分子と衝突し、これにより、広大な乱流を伴う渦巻き状に循環する流体の特性を呈し、
4.第4のステップでは、広大な乱流を有する渦巻き状の流体が前記循環ベッド(6)の回転を誘発し、これにより、高度にイオン化され、均一な分子分布を有し、混合ガスと呼ばれる単一の混合ガスを形成し、
5.第5のステップでは、前記混合ガスが前記循環ベッド中に存在するプラズマトーチの強い熱を吸収し、前記混合ガス中で酸化還元化学反応が起こり、得られるガスを生成し、
前記プラズマトーチは、前記固定ベッドの少なくとも1つの触媒と相互作用するときに増加する触媒作用を生じる紫外線を投射する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料の部分酸化のための方法であって、
a)前記固定ベッドの少なくとも1つの触媒と相互作用するときに増加する触媒作用を生じる紫外線を投射するプラズマトーチシステムを含み、
b)前記光反応器の本体内での流入流体の滞留時間が10秒未満であり、
c)前記流体燃料の酸化は、750℃未満の温度で起こり、電力消費は前記流体燃料に含まれる炭素1kg当たり1kWh未満であり、
d)前記流入流体を加熱する前段階も含み、
e)前記酸化流体をプロトン化する前段階を含み、
f)前記流体燃料は、少なくとも1つの酸化されていない炭素原子の分子を含み、
g)前記酸化流体は、空気、酸素が豊富な空気、酸素、二酸化炭素、水蒸気又はプロトン化された蒸気、のような酸素を供給する少なくとも1つの反応性流体を含み、
h)前記固定ベッド(7)の触媒は、以下の元素の少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
・鉄II及びIII、銅、ニッケル、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、石英、モリブデン、コバルト、バナジウム及びタングステン
【請求項3】
光反応器を含むことを特徴とする、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
1.1つ又は複数の入口開口部及び1つ又は複数の出口開口部を有し、管状構造を有する本体(2)と、
2.プラズマトーチを生成する成分と、
3.プラズマトーチを有する循環ベッド(6)と、
4.前記光反応器の本体の内壁に結合された固定ベッド(7)と、
5.前記固定ベッド中の1つ以上の触媒と、
を備え、
請求項1又は2に記載の方法を実行可能に構成されている、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
前記装置は、更に、
二重ジャケットの間にある空間(3)を使用した前記光反応器の一部である熱交換器を備え、これにより熱交換器は、得られるガスが前記流入流体に熱を与えるよう、前記光反応器自体に組み込まれることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
プロトン化器(10)をさらに備える装置。
【請求項6】
請求項4記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
脱プロトン化器(9)をさらに備える装置。
【請求項7】
請求項3記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
前記光反応器の本体の内壁に結合された前記固定ベッド(7)に、壁、又はその形成部分に結合される一連の突出部(8)が設けられていることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項3記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
前記プラズマトーチは、脱プロトン化された蒸気を含むガスから生成されることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項3記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
前記光反応器の本体が管状、円筒形又は円錐台形であり、
前記プラズマトーチのインジェクタが、最も大きな断面を有するその端部にあることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項3記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、管状構造を有する前記光反応器の本体が、その経路に沿って、前記酸化流体に含まれる炭素1kg当たり最小0.1cmで最大5cmの平均内径を有する断面を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項3記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
管状構造を有する前記光反応器の本体が、前記酸化流体に含まれる炭素1kg毎に、最小長さは0.4cmであり、最大長さは17cmであることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項7記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
前記突出部(8)は、前記光反応器のダクトの内壁に隣接し且つその内壁に沿う直線状の開通チャネルを存在させることなく、前記光反応器の本体(2)の内周全体を覆うように分布していなければならないことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
前記突出部(8)の高さは、前記光反応器の前記ダクトの平均内径の3%~40%であることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項3記載の、燃料プロセスの部分酸化の適用のための装置であって、
前記プラズマトーチは、非移送電気アークプラズマから得られ、かつ、以下のグループの元素又は化合物の少なくとも1つを含むイオン化流体を生成することを特徴とする装置。
・空気、酸素、窒素、水素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、水、水蒸気又はプロトン化された蒸気
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の名称が示すように、本発明は、A)流体燃料及び酸化流体からガスを得る方法、B)開示された方法を適用するための装置、及び、C)最終的に得られるガスを含む。
【0002】
この方法は、流体の酸化還元反応を含む。その液体を、ここでは流入流体と呼ぶ。
【0003】
この流入流体は2つのグループの試薬流体を含む。
a)1つは燃料であり、液体又は気体の形態の少なくとも1つの流体燃料を含む。
b)他方は酸化剤であり、流体又は気体の形態の少なくとも1つの酸化流体を含む。
【0004】
この反応は、少なくとも1つの熱交換器、イオン化ガスを発生させる少なくとも1つの発生器、好ましくは熱プラズマ発生器、流体を酸化させるための少なくとも1つのプロトン化器(プロトン付与器)、流体燃料のための少なくとも1つの任意の脱プロトン化器、及び少なくとも1つの光反応器を有する装置において生ずる。光反応器は、好ましくは管状であり、その内壁は、少なくとも1種の触媒を含む固定ベッドであり、その中心部を通して、好ましくは紫外線を放出するイオン化ガス流を有する循環流体ベッドがある。
【0005】
本発明に適用可能な、プラズマトーチとして知られているイオン化ガスの流れを生成する様々なタイプの熱プラズマがある。従って、例えば、マイクロ波、誘導/高周波、電気アーク及び誘電体バリア放電によって動作するものがあり、そのうち、出願人は、直流、又は交流に基づく誘導による非移送電気アーク又はそれらの組合せが好適と考える。最後の2つは、少なくとも以下のグループの元素又は化合物の少なくとも1つに基づいて、高温でイオン化したガスの流れを伴うトーチを介して紫外線を投射する能力を有する。
・酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、窒素、空気、ヘリウム、又はアルゴン、及びプロトン化された蒸気
【0006】
本明細書では、「流入流体」を、装置に導入され、2つの化合物グループを含む流体と定義する。
a)第1のグループは、流体燃料と呼ばれ、少なくとも1つの非酸化炭素原子の分子を含む少なくとも1つの流体燃料を含む。
b)第2のグループは、酸化流体と呼ばれ、空気などの酸素、酸素が豊富な空気、酸素、二酸化炭素又は蒸気のような酸素を提供するであろう少なくとも1つの反応性流体を含む。
【0007】
得られるガスは、流体燃料の炭素原子の部分酸化を引き起こす反応から生じるガスであり、得られるガスの大部分は、それぞれの場合に使用される酸化流体の量によるが、一酸化炭素及び水素、又は二酸化炭素及び水素である。
【0008】
関連する技術分野は、エネルギー生産方法及びデバイスの分野である。
【背景技術】
【0009】
熱プラズマトーチとして知られているイオン化ガス流による部分酸化の従来のシステムは、酸素、及び、例えば炭化水素、バイオマス、固体有機廃棄物、及び熱分解ガスのような、気体、液体、又は固体の形態の少なくとも1つの燃料を提供する少なくとも1つの試薬が通過する高熱を発生させるため、内部に少なくとも1つのプラズマトーチを有する反応器を使用し、合成ガスを生成するのが目的の場合は一酸化炭素及び水素を生成し、水素を生成するのが目的の場合は二酸化炭素及び水素を生成する。
【0010】
熱を発生させるためのプラズマトーチによる部分酸化のための前記従来のシステムは、一般に、少なくとも1つの反応器、反応器内の熱プラズマトーチ、及び試薬を供給する方法を含む。これらの反応器は、通常、プラズマトーチのイオン化ガス及び流入流体が通常通過する金属又はセラミック容器を含む。
【0011】
これの従来のシステムでは、プラズマトーチに関し、反応器内で異なる速度及び異なる距離で流れが作られるので、燃料と酸化剤の全ての分子がプラズマトーチと接触するのではないし、全ての分子について滞留時間が全て同一ではない。このため、一定量の未反応燃料(URF)を発生する。以下では、未反応燃料をその略語で称する。
【0012】
上記の問題を防止するために、出願人は、プラズマトーチの近傍に反応器の壁を近づけて、トーチのイオン化ガスの周りを流入流体が循環するときに、流入流体の部分酸化を生じさせるフリーラジカルの伝搬が生じるようにすることを試みた。しかし、プラズマトーチが作動する高温のために反応器の壁の劣化が加速的に進む。このため、反応器の壁が冷却されることがあるが、その効率が低下してしまう。一方、このシステムにおいて、もし我々が、壁を冷却させるために流入流体をより速く循環させて壁がダメージを受けるのを防ぐ場合、URFの部分は増加し、プロセスの効率も低下する。
【0013】
現在の技術水準では、より高い効率を達成するため、URFの割合を減少させ、更に反応器の壁をプラズマトーチの温度よりもはるかに低い温度に維持するために、燃料及び酸化剤がプラズマトーチの周りに導入される特許がある。これらのうちのいくつかは、部分酸化の代わりに水蒸気改質という用語を使用し、一酸化炭素又は二酸化炭素で殆どが水素である部分的に酸化されたガスについては、合成ガスという用語を使用する。
【0014】
Foret Plasma Lab..LLCという会社は、2015年10月20日の米国特許第9,163,584号を通じてこの方向での努力をしてきた。この特許は、渦流として流れる圧縮空気バーナー内の燃料を改質するタービンに接続されたプラズマトーチを有するセラミック材料の円筒状反応器を開示している。Foret Plasma Lab..LLCは、2009年11月24日の米国特許第7,622,693号によって、誘導プラズマトーチを備えた垂直切頭(truncated)円錐反応器も開示しており、この反応器では、原料は、最大径を有する頂部から最も小さい直径を有する底部に向かって渦流として流入する。同社は、2014年7月31日の米国公開特許第2014/0209573号において、前の特許と同一のものを開示しているが、それは、反応器の外部から加えられた誘導プラズマと、円柱状又は円錐台状の円錐形反応器内の中心部分に挿入さ流入するガスが後者の周囲の渦流として回転するようにすることで、れた電極を有する電気アークプラズマの組み合わせを用いて、発電所に供給する合成ガスを生成することを目的としている。
【0015】
Igor Matveev氏は、2011年7月に、プラズマトーチのイオン化ガスの循環方向とは反対の方向に循環する試薬(燃料及び酸化剤)を含む三重渦流を含む装置を用いたプラズマトーチによる水蒸気改質に関する米国特許第7,973,262 B2を付与された。
【0016】
Hynergreen Technologies SAは、2007年12月に出願された特許PCT/2007/141350において、誘電体バリア放電を有する誘導プラズマを介して燃料を低温及び大気圧の蒸気で改質することができる方法を開示している。ここでは、そのカソードは殆ど認知できない粗さを有する鋼鉄製(steel)シリンダであり、500℃以下の温度及び大気圧下で、3~15kHzの周波数の15~30kWhの電力を印加して約0.006m/時間の変換を達成し、プラズマにより約0.0002m/kWhを、15.7分の滞留時間で消費する。
【0017】
Alter NRG Corp.という会社は、2015年8月に米国特許第9,005,320号を付与され、高さ中央にプラズマトーチ用の入口を有する垂直円筒形装置を開示している。Platinumという会社は、米国特許第6,680,137号明細書において、Alter NRGと同様の反応器を開示し、熱回収を含み、反応器の内面1平方メートルあたり約4.54kgのメタンの変換を達成したと宣言している。
【0018】
Plasco社は、CA2424805特許において、水蒸気又は酸素を用いた燃料改質のための2ステップ光反応器を開示している。この反応器では、第1のステップでは、第2のステップでプラズマトーチを適用して部分酸化を生成してシステム内でより多くの合成ガスを得るため、灰又は炭素が抽出される。
【0019】
米国特許第20150252274号において、Siemens社は、低温蒸気を使用して光反応器の壁を冷却し、これにより燃料ガスをプラズマトーチに近づけるプラズマ反応器を開示している。ドレクセル大学は、2011年の米国特許第7,867,457号において、燃料ガスの部分酸化プロセスを加速するために、プラズマトーチを有する円筒型反応器内で生じる可能性のある異なる形態の乱気流を新規性として強調している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
大気圧に近い圧力で、750℃未満の温度で、10秒未満の滞留時間で、流体燃料に含まれる炭素1kg当たり1kWh未満を消費しながら、流入燃料が、単一経路で流体燃料の部分酸化を達成し、得られたガスは80%以上変換されることが理想的であろう。
【0021】
現在の技術水準は、燃料改質においてこれらの条件を達成するための経済的かつ実用的な解決策を見出さず、これは正確に本発明によって達成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の方法の目的では、流体燃料及び酸化流体を含む流入流体は、酸化還元反応が強制的に起こるよう、光反応器を含む装置内で一連の条件及び接触を受け、これにより、流体燃料の炭素原子の部分酸化が生成され、それぞれの場合に使用される酸化流体の量に応じて、主に一酸化炭素及び水素、又は二酸化炭素と水素とを含むガスが得られる。
【0023】
これを行うために、当該方法の間、流入流体は、光反応器の内部に沿った渦流で、2つのベッドの間で循環する。2つのベッドとは、光反応器の本体の内壁に結合され、障壁と突出部を有することのある固定ベッドと、光反応器の中心を通って回転し、好ましくは熱プラズマシステムからのイオン化ガスの流れを有する循環ベッドである。従って、流入流体は、広大な乱流と均一な分子分布を有する雲を形成する。この雲は、イオン化したガスからの強い熱に晒され、プラズマトーチからの紫外光の効果を受けると、固定ベッド中の少なくとも1種の触媒の作用により活性化され不均一な光触媒作用を生じさせ、そして、流体燃料中と、750℃未満の温度、10秒未満の滞留時間、大気圧に近い圧力、流体燃料中に含まれる炭素1kg当たり1kWh未満の消費により流体燃料の部分酸化を生じさせる酸化流体との間で酸化還元反応を生じさせる。これにより、流入流体が得られたガスに80%変換された結果が得られる。
【0024】
固定ベッドからの触媒は、以下のグループからの混合物又は合金中の少なくとも1種の純粋な物質を含む。
・鉄II及びIII、銅、ニッケル、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、石英、モリブデン、コバルト、バナジウム及びタングステン
【0025】
酸化還元反応によって得られたガスを得るために光反応器内で流体燃料及び酸化流体が受ける影響は本質的に以下の3つであり、互いに相乗作用を生じさせ、互いを拡大することができる。
【0026】
(1)渦流の中で循環することにより、流入流体により生じる効果
その渦流は、広大な乱流及び均一な分子分布を有し、光反応器の本体の内壁に固定された固定ベッド上に任意に存在することのある突出部に衝突したときに増大する。当該渦流は、プラズマトーチからのイオン化ガスの一部への回転を誘発し、高度にイオン化され均一な分子分布を有する単一の混合流体を形成するまで、イオン化ガスの中心の周囲で、イオン化ガスの中心に沿って、かつイオン化ガスの中心に向かって圧力を与える雲を形成し、分子と複数個所で接触する。
【0027】
(2)フリーラジカルを伝播させる効果
フリーラジカルは、イオン化ガスを含む循環流体ベッドと接触する流入流体により生成される。イオン化ガスは、好ましくは、還元される傾向を増大させるために予めプロトン化された酸化流体、酸化される傾向を増加させるために予め脱プロトン化された流体燃料を有する。
【0028】
(3)光触媒作用のために、プラズマトーチからのイオン化ガス流によって生成された紫外線からの放射によって増加した前述のポイントの効果
光触媒作用は、固定ベッドからの少なくとも1つの触媒により活性化される。固定ベッドは、前述したように、以下のグループからの混合物または合金の1つの純粋な物質を含む。
・鉄II及びIII、銅、ニッケル、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、石英、モリブデン、コバルト、バナジウム及びタングステン
【0029】
上述の効果によれば、特にそれらが同時に生じる場合には、特殊で驚くべき技術的及び経済的条件が得られ、改質方法として一般に知られている燃料の部分酸化方法における収益性を最適化され、現在の技術水準が向上する。
【0030】
流入流体の80%超を、10秒未満の滞留時間で、大気圧に近い圧力で、750℃未満の温度で、燃料に含まれる炭素1kg当たり1kWh未満を消費しながら、光反応器で得られるガスに変換するため、本発明の主題である方法は以下のステップを含む。
【0031】
1.第1のステップでは渦流を開始させるために、流体燃料及び酸化流体を含む流入流体は、光反応器の本体に、イオン化ガス流の接線方向に導入される。任意的には、流入流体は、光反応器の本体に入る際に予め加熱されてもよい。
2.第2のステップでは、流入流体によって形成された渦が、固定ベッドと循環ベッドとの間の空間内の光反応器に沿って循環し始める。
3.第3のステップでは、流入流体が渦流の形で循環するので、その外側部分は、光反応器の内壁に結合された固定ベッド及び前記固定ベッド上の任意の突出部に衝突し、一方、その内側部分は、高温のイオン化ガス流を含む循環ベッドの分子と衝突し、従って、渦巻き状で拡大する乱流を伴い循環する高温の流体の特性を呈する。
4.第4のステップでは、広大な乱流を伴う螺旋状流体は、イオン化ガス流の回転を誘発し、高度にイオン化され均質な分子分布を有する単一の混合ガスを形成する。この単一混合ガスは、以下では混合ガスと呼ばれる。
5.第5のステップでは、混合ガスがイオン化ガス流の強い熱を吸収して、得られたガスを生成する化学酸化還元反応を生じる。
【0032】
該方法は、イオン化ガス流が紫外線を照射するプラズマトーチシステムから来た場合に最適化することができる。これは、固定ベッド中の少なくとも1つの触媒と相互作用するときに増加する非常に高い光触媒効果を生じるからである。
【0033】
得られるガスは、容量として、大部分が一酸化炭素、水素及び二酸化炭素、及び少量の炭化水素及び当該方法の他の副生物を含む合成ガスである。
【0034】
得られるガス中の一酸化炭素又は二酸化炭素の割合の量は変化し、流入流体中に存在する酸化流体の量に応じて、大部分又は少量であり得る。流入流体に存在する酸化流体の割合が高いほど、得られるガス中の二酸化炭素の割合が高くなる。
【0035】
限界は、全ての一酸化炭素が二酸化炭素に変換されるときに設定され、この時点で、流入流体中の酸化流体の割合が増加すると、生成されるのは、水素もまた酸化して蒸気に変換する燃焼である。
【0036】
開示された方法を実施するための装置は、光反応器を有し、光反応器は、以下のものを有する。
・1つ以上の入口開口部及び1つ又は複数の出口開口部を有する本体であって、管状の形状を有する本体
・高温のイオン化ガス流を生成し注入するシステム
・イオン化したガス、好ましくは熱プラズマを有する循環ベッド
・光反応器の本体の内壁に結合された固定ベッドであって、突出部と呼ばれる部分的な障壁を任意に含み、前記内壁又はその形成部分に固定される固定ベッド
・固定ベッドの触媒
【0037】
この装置は、以下のものをも備えることができる。
【0038】
・独立しているか、又は好ましくは光反応器自体に組み込まれ、得られたガスが流入流体に熱を提供する熱交換器
・酸化流体のプロトン化器及び流体燃料用の任意の脱プロトン化器(両方とも、好ましくは熱交換器の前に配置される)。
【0039】
管状構造を有する光反応器は、好ましくは、ドラム状、円筒状又は円錐台状の形状を有し、この場合、より大きい直径の基部上にイオン化ガス流インジェクタ、好ましくは熱プラズマを有する。
【0040】
光反応器の大きさに関して、その本体は、その通路に沿って、平均内径が、その内部を循環する流体燃料に含まれる炭素1kg当たり少なくとも0.1cmで最大5cmであるダクトの断面を有する。それは、0.4cm~1.5cmの好ましい範囲を有し、流体燃料に含まれる炭素1kgにつき最小長さは0.4cmであり、最大長さは17cmであり、好ましい範囲は2cm~8cmである。
【0041】
固定ベッドは、光反応器の本体の内壁に接合され、突出部が適用可能であればそれに固定される。
【0042】
突出部は、任意の幾何学的形状であってよく、その分布は、流入流体が循環する領域とその出口を連通している光反応器のダクトの内壁に沿って直線状に開いたチャネルがなくても、光反応器の本体の内周全体を覆うような分布でなければならない。その高さは光反応器のダクトの平均直径の3%~40%でなければならず、好ましい範囲は15%~25%である。
【0043】
熱交換器は、光反応器から独立していてもよいし、好ましくは、反応器の本体を囲むカバー又はジャケットとして組み入れられ、それらの間に空間を残して二重ジャケット熱交換器に変えてもよい。この場合、とりわけ、熱伝達のための以下の可能な経路を有する。
【0044】
(1)混合ガスと光反応器の本体内で得られたガスを循環させることにより、光反応器の内壁に熱を伝達する。それを二重ジャケットと二重ジャケットと隣接する壁との間を循環する流入流体に伝達する。これは、二重ジャケット熱交換器で発生し、それらの流体の循環は好ましくは対向流である。
【0045】
(2)流入流体を、イオン化ガス流が循環するダクトに導入することによって、流れの周りで渦流として移動し、直接熱交換を引き起こす。
【0046】
(3)そして、光反応器は、イオン化ガスが、中空の中央領域へ向けて且つイオン化ガスが循環する光反応器に沿って流入流体が通過することによって熱交換器の延長部となる。
【0047】
固定ベッドの触媒は、少なくとも1つの純粋な化合物、又は合金であり、その主成分は、少なくとも以下のグループからのものである。
・鉄II及びIII、銅、ニッケル、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、石英、モリブデン、コバルト、バナジウム及びタングステン
【0048】
光反応器は、好ましくは、主成分がセラミック、又は金属、又はその両方の組合せであるグループからの少なくとも1つの化合物を含む材料で製造される。好ましいものはタングステン、鋼鉄/鉄及び石英である。
【0049】
イオン化ガス発生器に関して、我々は、直流に基づく非移送電気アーク熱プラズマ又は交流に基づく誘導熱プラズマ、あるいはその両方の組み合わせが好適と考える。すべては、以下のグループの元素又は化合物の少なくとも1つに基づいて生成された高温のイオン化ガスを有するプラズマトーチで紫外線を投影する能力を用いて行われる。
・酸素、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気、窒素、空気、ヘリウム又はアルゴン、及び、好ましくはプロトン化された蒸気
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、本発明の主題である方法が実施される装置の概念図を示しており、本体(2)を有する光反応器(1)を示すと共に、酸化流体がプロトン化器(10)を通過し燃料流体が脱プロトン化器(9)を通過した後に、流入流体が反応器の内部に到達して、熱プラズマのイオン化ガス流(5)の接線方向に入射し、循環ベッド(6)と固定ベッド(7)との間を渦流で循環し、固定ベッド(7)の突出部(8)と衝突するまで、流入流体(4)が循環する、二重ジャケットの間の空間(3)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
ここで、図1の装置を使用して、発明を実施する多くの方法のうちの1つに過ぎない本発明の一実施形態を説明する。温度は摂氏で示される。
【0052】
意図された特許は、流体燃料の部分酸化のための方法であって、その流入流体のために、予め脱プロトン化された流体燃料と予めプロトン化された酸化流体とを含む流入流体が装置内に導入される。
【0053】
その装置は、光反応器(1)を順に以下のものを有する。
・1つ又は複数の入口開口部及び1つ又は複数の出口開口部を備え、好ましくは円筒形又は円錐台形の管状構造を有し、循環すると本体から熱を吸収する流入流体(4)が導入される空間(3)が生成されるように二重ジャケットによって覆われている、本体(2)。
・好ましくは熱プラズマから得られるイオン化ガス流(5)を含むイオン化ガスを生成し注入するためのシステム(熱プラズマのインジェクタは、好ましくは最大断面を有する本体の端部にある)
?イオン化したガスを含む循環ベッド(6)
・突出部(8)と呼ばれる、部分的な障壁を任意に含むことができる光反応器の本体の内壁に結合され固定ベッド(7)(突出部(8)は内壁に固定されるか、又はその形成部分に固定される)。
・固定ベッドの中の触媒であり、少なくとも1つの純粋な混合物又は化合物を備え、その主な要素が、鉄II及びIII、銅、ニッケル、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、石英、モリブデン、コバルト、バナジウム又はタングステンからなるグループの1つである触媒。
・酸化流体用のプロトン化装置(10)と、任意には流体燃料用の脱プロトン化装置(9)(両方とも、熱交換器の前に配置される)。
【0054】
本体は、流入流体(4)が本体の壁に接触して循環するときに熱交換器として働く空間(3)を形成する二重ジャケット内に閉じ込められ、その内面において突出部(8)を有する固定ベッドと結合している。
【0055】
本体(2)の内部には、流入流体(4)が固定ベッド(7)と循環ベッド(6)との間で渦流で循環するようにされた循環ベッド(6)がある。
【0056】
この方法は、流入流体の通過とともに開始され、そのうち流体燃料に対応する部分が既に脱プロトン化装置(10)を通過し、酸化流体に対応する部分は脱プロトン化装置(9)を通過している。
【0057】
プロトン化及び脱プロトン化操作の後、流入流体は、光反応器の二重ジャケットの間の空間(3)を通って循環し、そこで本体(2)の壁に接触して循環することで加熱される。
【0058】
流入流体(4)は、それが本体の上部及び光反応器の内部を通って入るまで、二重ジャケットの空間(3)を通って底部から上方に循環し始め、熱プラズマのイオン化ガス流(5)の接線方向に入り、光反応器内において、渦流及び広大な乱流として上方から下方へと循環し始める。すなわち、流入流体は、その内側において、プラズマトーチのイオン化ガス流を有する循環ベッド(6)、その外側において固定ベッド(7)及び突出部(8)の周りを循環し、密閉接触する。
【0059】
このように循環することにより、プラズマトーチからのイオン化ガスは、均一な分子分布を有する高度にイオン化ミスト又は雲を形成する単一の混合ガスになるまで、流体燃料及び酸化流体と混合され、次のような効果を奏する。
【0060】
(1)渦流として循環流入することにより、流入流体によって生成される効果
この渦流は、広大な膨大な乱流及び均一な分子分布を有し、突出部と衝突したときに増大する。その渦流は、イオン化ガス中の回転を誘発し、それを循環ベッド(6)に向けて回転させ、イオン化ガスの中心の周囲において、その中心に沿って、且つその中心に向かって圧力をかける雲を形成し、単一の混合流体又は高度にイオン化され均質な分子分布を有する気体を形成するまで、分子と複数接触を生成する。
【0061】
(2)流入流体中のフリーラジカルを伝播させる効果
フリーラジカルは、イオン化ガスを含む循環流体ベッドと接触することによって生成される。イオン化ガスでは、好ましくは酸化流体は還元される傾向を増加させるために予めプロトン化され、流体燃料は、酸化される傾向を増大させるために予め脱プロトン化されている。
【0062】
(3)イオン化ガス流がプラズマトーチによって生成されるとき、固定ベッドの少なくとも1つの触媒と相互作用するときにその光触媒作用によって増加する紫外線の照射により混合ガス中に生成される効果。上述したように、固定ベッドは、以下のグループの中の、少なくとも1つの純粋な物質、混合物又は合金の形式の、少なくとも1つの純粋な物質を備える。
・鉄II及びIII、銅、ニッケル、アルミナ、二酸化チタン、二酸化ケイ素、石英、モリブデン、コバルト、バナジウム及びタングステン
【0063】
記載された3つの効果は、流体燃料を部分的に酸化し、得られるガスをもたらす。このプロセス及び装置は、前述の効果を生じさせ、それにより、750℃未満の温度、200ミリバールの圧力、0.2秒の滞留時間、及び天然ガスの1kg当たり0.5kWhの消費を引き起こす部分酸化プロセスを得る。
図1