(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】フォークリフト用PCa床版運搬据付治具及びそれを用いたPCa床版の運搬据付方法
(51)【国際特許分類】
B66F 9/12 20060101AFI20220203BHJP
B66F 9/18 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
B66F9/12 E
B66F9/12 G
B66F9/12 U
B66F9/18 U
(21)【出願番号】P 2017135355
(22)【出願日】2017-07-11
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】塚本 啓治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀哉
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇行
(72)【発明者】
【氏名】梅本 洋平
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-131595(JP,U)
【文献】実開平06-014193(JP,U)
【文献】特開平01-181691(JP,A)
【文献】実開昭57-013599(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第00053009(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォークリフトのフォークに装着され、
PCa床版の運搬と据付の際の位置調整するためのフォークリフト用
PCa床版運搬据付治具であって、
前記
PCa床版を吊り下げ支持可能な強度を有するフレームと、このフレームを前記フォークに装着するための装着手段と、前記フレームに取り付けられて前記
PCa床版を吊り下げ支持する吊下げ手段と、前記フレーム又は前記フォークと前記
PCa床版との間に介装されて前記
PCa床版を押圧固定する押圧手段と、を備え
、
前記押圧手段は、揺動自在のヒンジ
と、前記PCa床版と当接する部分にコンクリートより表面硬度が低い枕木を有してPCa床版の振動による撓み角度の変動に追随して揺動可能に押圧し、
前記吊下げ手段は、吊り下げ長さ調整機構を有し
、前記PCa床版の上面に装着された吊りフックを介して前記PCa床版を吊り下げ支持すること
を特徴とするフォークリフト用
PCa床版運搬据付治具。
【請求項2】
請求項1に記載のフォークリフト用
PCa床版運搬据付治具を用いて、
前記フォークリフトで前記PCa床版を揚重して前記
PCa床版を
シールドトンネル内の閉鎖された空間を運搬するとともに
シールドトンネル底面の溝の所定の
据付位置に据え付ける
PCa床版の運搬据付方法であって、
前記フォークリフト用運搬据付治具を前記フォークリフトに装着する治具装着工程と、
前記治具装着工程で吊上げた前記PCa床版を前記フォークリフトの前記フォークで揚重して前記据付位置まで運搬する床版運搬工程と、
前記床版運搬工程で所定の据付位置まで運搬した前記PCa床版を前記据付位置に据え付ける床版据付工程と、を備え、
前記床版運搬工程では、前記吊下げ手段で前記
PCa床版を吊り上げつつ前記押圧手段で前記部材を押圧固定して運搬し、
前記床版据付工程では、前記据付位置直前まで前記フォークリフトで前記PCa床版を下降させて、その後、前記吊下げ手段
の前記吊り下げ長さ調整機構で前記据付位置の微調整を行って前記PCa床版を据え付けること
を特徴とする
PCa床版の運搬据付方法。
【請求項3】
前記床版運搬工程では、既設の前記PCa床版間の間詰めコンクリートを打設する間隔に前記PCa床版との間に緩衝材及び鉄板を敷設して前記フォークリフトで前記既設のPCa床版上を走行して運搬すること
を特徴とする請求項2に記載のPCa床版の運搬据付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトのフォークに装着されてフォークリフトで部材を運搬するとともに、そのまま所定の位置に部材を正確に設置するための治具、及びそれを用いた部材運搬据付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドトンネル内の閉鎖された空間において、PCa床版(プレキャスト床版)やセグメントなどの各種資材を運搬する際は、レールを敷設した上、そのレール上を走行する門型クレーンや門型架設機を用いて運搬していた。
【0003】
PCa床版をシールドトンネル内に設置する場合は、先ず、従来の工法では、シールドトンネルの坑口からPCa床版を設置している場所近傍まで、複数枚のPCa床版をトレーラーや台車などの運搬車両で運搬する。そして、当該設置場所近傍に複数枚のPCa床版をクレーン等の揚重機を用いて荷降ろしして複数枚積み上げ、その後、門型クレーンや門型架設機を用いて、積み上げストックしたPCa床版のヤマから設置場所までPCa床版を1枚ずつ移送して、据え付け(敷設し)ていた。このため、PCa床版の盛り替え(揚重や運搬する機械装置を変えること)作業等に労力や時間を要していた。
【0004】
例えば、特許文献1には、シールドトンネル内の円形空間の下半部に平坦面を設けるべくPCa床版を敷設する際に、門型クレーン13を用いてプレキャストPC床版5(PCa床版)などを移動することが開示されている(特許文献1の明細書の段落[0017]、図面の
図3~5等参照)。
【0005】
しかし、このような門型クレーンや門型架設機を用いて資材等を運搬することは、(1)架設機の組み払しのための大きなスペースが必要であり、大断面の坑道でなければ、架設機を用いることが困難であるという問題があった。また、(2)レール(軌条)上を架設機が走行するため縦横断線形が複雑に変化する箇所や、縦横断勾配のきつい箇所では用いることができないという問題もあった。
【0006】
そこで、特許文献2には、本願出願人が提案した、前輪と後輪と、前輪を旋回操作可能な旋回操舵部と、走行面との高さを調節する伸縮調節脚部と、伸縮調節脚部に連結される脚本体と、水平枠部により形成された門型枠体部と、ガイド杆と、ガイド杆に対し移動可能にして取り付けられた操作杆と、操作杆に対し移動可能にして取り付けられた床版吊り上げ用の吊り上げ装置を有する床版架設装置が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0016]~[0030]、図面の
図1、
図2等参照)。
【0007】
特許文献2に記載の床版架設装置は、建築制限のあるトンネル内などの道路幅が狭く、平面線形での作業が厳しい狭所での床版架設作業についても、また、内部が螺旋状をなし、作業に際しては曲面走行で作業を行わなければならないトンネル内にあっても、さらには、トンネル内などにおいて縦断勾配がきつい箇所であってもスムーズに走行して床版を設置できるとされている。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の床版架設装置は、前述の大断面の坑道でなければ、架設機の組み払しが困難であるという問題は解決されてはおらず、小規模シールドトンネル内では、使用が困難であるという問題があった。また、このような架設装置や門型クレーン等を用いて、PCa床版(プレキャストPC床版)などの正確な位置に据付する必要がある部材を据え付ける場合は、PCa床版等の部材をトンネルの坑口から架設機の位置までトレーラーもしくは台車により運搬した上、架設機に盛り替えを行ってからする必要があった。このため、盛り替え作業等に労力や時間を要し、コストアップの要因となっていた。
【0009】
その上、大型で複雑な架設装置であるため、組み払しの費用やレールや架設機などの仮設機材のリース費用が嵩むという問題もあった。さらに、動力の付いた架設機をレール(軌条)上で走行させるためには、労働基準監督署への申請が必要であり、そのための計画や書類作成の時間をさらに要し、この点もコストアップの要因となっていた。
【0010】
一方、フォークリフトのフォークに装着して使用する治具としては、特許文献3に、建築用パネルの建て込み施工治具が開示されている。この特許文献3に記載の建築用パネルの建て込み施工治具は、フォークリフトBのフォーク13に装脱可能なベース部材2の先端に、断熱パネルの長手方向一端下部に移入可能で、その移入状態でのフォークリフトBの前進及びフォーク13の上昇により断熱パネルPを垂直に立て起こし可能な自由回転ローラ3が取り付けられているとともに、ベース部材2の上面部には、パネル表面を吸着する吸着パッド7を備えたパネル把持部材4を吸着パッド7が作用姿勢と非作用姿勢とに切替えられるように位置変更可能に設けられている(特許文献3の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0014]~[0025]、図面の
図2、
図5~7等参照)。
【0011】
しかし、特許文献3に記載の建築用パネルの建て込み施工治具は、シールドトンネル内においてPCa床版などのコンクリート製の部材の運搬・据付にそのまま使用できるものではなかった。つまり、特許文献3に記載の建築用パネルの建て込み施工治具をフォークリフトのフォークに装着して、フォーク上にコンクリート製の部材を乗せて運搬すると、振動や衝撃によりコンクリート製の部材が損傷してしまうという問題があった。また、特許文献3に記載の建築用パネルの建て込み施工治具は、PCa床版などのコンクリート製の部材の敷設(据付)にはそのまま利用できないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001-182494号公報
【文献】特開2016-166453号公報
【文献】特開2007-8592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ランプシールドなどの小規模且つ縦横断面における急勾配を有するトンネルにおいても使用することができるとともに、部材を損傷することなく運搬と据付の作業をつづけて正確に行うことができるフォークリフト用運搬据付治具及びそれを用いた部材運搬据付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載のフォークリフト用運搬据付治具は、フォークリフトのフォークに装着され、PCa床版の運搬と据付の際の位置調整するためのフォークリフト用PCa床版運搬据付治具であって、前記PCa床版を吊り下げ支持可能な強度を有するフレームと、このフレームを前記フォークに装着するための装着手段と、前記フレームに取り付けられて前記PCa床版を吊り下げ支持する吊下げ手段と、前記フレーム又は前記フォークと前記PCa床版との間に介装されて前記PCa床版を押圧固定する押圧手段と、を備え、前記押圧手段は、揺動自在のヒンジと、前記PCa床版と当接する部分にコンクリートより表面硬度が低い枕木を有してPCa床版の振動による撓み角度の変動に追随して揺動可能に押圧し、前記吊下げ手段は、吊り下げ長さ調整機構を有し、前記PCa床版の上面に装着された吊りフックを介して前記PCa床版を吊り下げ支持することを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載のPCa床版の運搬据付方法は、請求項1に記載のフォークリフト用PCa床版運搬据付治具を用いて、前記フォークリフトで前記PCa床版を揚重して前記PCa床版をシールドトンネル内の閉鎖された空間を運搬するとともにシールドトンネル底面の溝の所定の据付位置に据え付けるPCa床版の運搬据付方法であって、前記フォークリフト用運搬据付治具を前記フォークリフトに装着する治具装着工程と、前記治具装着工程で吊上げた前記PCa床版を前記フォークリフトの前記フォークで揚重して前記据付位置まで運搬する床版運搬工程と、前記床版運搬工程で所定の据付位置まで運搬した前記PCa床版を前記据付位置に据え付ける床版据付工程と、を備え、前記床版運搬工程では、前記吊下げ手段で前記PCa床版を吊り上げつつ前記押圧手段で前記部材を押圧固定して運搬し、前記床版据付工程では、前記据付位置直前まで前記フォークリフトで前記PCa床版を下降させて、その後、前記吊下げ手段の前記吊り下げ長さ調整機構で前記据付位置の微調整を行って前記PCa床版を据え付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1~3に記載の発明によれば、大型の門型クレーンや架設機を使用せずにフォークリフトによる部材の運搬・据付が可能となる。このため、ランプシールドなどの小規模且つ縦横断面における急勾配を有するトンネルにおいても使用することができるだけでなく、レール材等の仮設資材のリース料が嵩むことがなく安価となる。その上、フォークリフト1台で運搬と据付を続けて行うことができるため、部材の揚重手段の盛替等が必要なくなり、作業時間を短縮してコストダウンを達成することができる。
【0019】
また、請求項1~3に記載の発明によれば、吊下げ手段で部材を吊り下げつつ、押圧手段で部材を押圧固定して運搬するので、部材の振動によるバタつきを抑えて部材を損傷することなく運搬することができる。その上、フォークリフトのフォークの上下動だけでなく、吊下げ手段で部材の高さ調整などの位置調整が可能であり据付作業を正確に行うことができる。それに加え、1台のフォークリフトで運搬と据付をつづけて行うことができるため、極めて作業効率が良く、その点でも作業時間を短縮してコストダウンを達成することができる。
その上、請求項1~3に記載の発明によれば、押圧手段が揺動自在なヒンジを有しているので、運搬する部材がコンクリート部材などの引張力に弱い特性のある部材であっても、部材の撓み変動に追随して運搬中の振動で損傷させるおそれが少なくなる。
さらに、請求項1~3に記載の発明によれば、吊下げ手段が吊り下げ長さ調整機構を有しているので、左右の水平の微調整や位置調整が極めて正確に素早くできるため、さらに作業効率向上させて、作業時間の短縮によるコストダウンを達成することができる。
【0022】
特に、請求項2,3に記載の発明によれば、運搬時には、吊下げ手段で前記部材を吊り上げつつ前記押圧手段で前記部材を押圧固定して運搬するので、部材の振動によるバタつきを抑えて部材を損傷することなく運搬することができる。また、請求項2,3に記載の発明によれば、据付時には、吊下げ手段で吊り降ろして部材の水平及び据付位置の高さ調整を行うので、左右の水平の微調整や位置調整が極めて正確に素早くできるため、さらに作業効率向上させて、作業時間の短縮によるコストダウンを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具をフォークリフトに装着した状態を示すフォークリフトに向かって斜め前方から撮った正面写真である。
【
図2】同上のフォークリフト用運搬据付治具をフォークリフトに装着した状態で斜め後方から撮った背面写真である。
【
図3】同上のフォークリフト用運搬据付治具の構成をフォークリフトに装着した状態で示す側面図である。
【
図4】同上のフォークリフト用運搬据付治具を示す正面図である。
【
図5】
図3のフォークリフト用運搬据付治具の端面図であり、左半分がA-A線端面図、右半分がB-B線端面図である。
【
図6】
図3のフォークリフト用運搬据付治具の端面図であり、左半分がC-C線端面図、右半分がD-D線端面図である。
【
図7】同上のフォークリフト用運搬据付治具をフォークリフトに装着してPCa床版を敷設する状況を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るフォークリフト用運搬据付治具及びそれを用いた部材運搬据付方法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
<フォークリフト用運搬据付治具>
先ず、
図1~
図6を用いて、本発明の実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具について説明する。運搬・据付を行う部材としてコンクリート部材であるPCa床版S1を例示して説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具1をフォークリフトFLに装着した状態を示すフォークリフトFLに向かって斜め前方から撮った正面写真であり、
図2は、フォークリフト用運搬据付治具1をフォークリフトFLに装着した状態で斜め後方から撮った背面写真である。
【0027】
また、
図3は、フォークリフト用運搬据付治具1の構成をフォークリフトFLに装着した状態で示す側面図であり、
図4は、同上のフォークリフト用運搬据付治具1を示す正面図である。そして、
図5は、
図3の端面図であり、左半分がA-A線端面図、右半分がB-B線端面図であり、
図6は、
図3の左半分がC-C線端面図、右半分がD-D線端面図である。
【0028】
本実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具1は、治具本体である鋼製フレーム10と、この鋼製フレーム10にPCa床版S1を吊り下げ支持する吊下げ手段2と、PCa床版S1に当接して押圧固定する押圧手段3など、から構成されている。また、鋼製フレーム10には、鋼製フレーム10をフォークリフトFLのフォークf1に装着するための装着手段4も設けられている。
【0029】
(鋼製フレーム)
鋼製フレーム10は、一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる平面視矩形枠状のフレームであり、PCa床版S1を吊り下げ支持するのに必要な強度を有している。この鋼製フレーム10は、
図1、
図2に示すように、H形鋼(H300×150×6.5/9)からなる3本の横桁11と、その横桁11の上端部に取り付けられた背面で接合された溝形鋼(C150×75×6.5/10)からなる2本の縦桁12など、から日の字状に組み合わされてボルト接合されている。
【0030】
これらの3本の横桁11のうち、
図4に示すように、前後の2本の横桁11の上面には、鋼製フレーム10を吊り上げてフォークリフトFLに装着する際に使用する左右一対の吊上げプレート11aが上方へ向け突設されている。また、
図6に示すように、中央の横桁11の下面には、種々の資材を吊り下げるための左右一対の吊下げプレート11bが下方に向け突設されている。
【0031】
また、
図1~
図3に示すように、縦桁12の溝形鋼の間には、吊下げ手段2の一般構造用圧延鋼材(SS400)のプレートからなる吊下げ金具20が介装されて、縦桁12の上端面にボルト接合されている。
【0032】
なお、各横桁11には、
図1、
図2、
図4等に示すように、部材の曲げ座屈等を防ぐために補剛プレート(スチフナー)が溶接されており、各縦桁12には、横桁11と接合する部分に座屈防止用のプレートが取り付けられている。
【0033】
(吊下げ手段)
吊下げ手段2は、
図1~
図3等に示すように、前述の吊下げ金具20と、この吊下げ金具20の孔に装着されたシャックル21と、このシャックル21に取り付けられたチェーンブロックやレバーブロック(登録商標)などの吊り下げ長さ調整機構22など、から構成されている。この吊下げ手段2は、PCa床版S1にアンカー等を介して装着された吊りフックを吊り下げて支持する機能を有している。
【0034】
勿論、吊り下げ長さ調整機構22は、チェーンブロックやレバーブロック(登録商標)などに限られず、電動ホイストなどの電動の吊り下げ長さ調整機構であっても構わない。要するに、本発明に係る吊り下げ長さ調整機構は、チェーンやワイヤロープなどの線材を巻き上げ及び巻き出し等が自在でその線材の長さを調整することができるものであればどのような機構であっても構わない。
【0035】
(押圧手段)
押圧手段3は、
図5等に示すように、ボルトで接合された上下一対の鋼製プレートからなる枕木固定金具30と、この枕木固定金具30の下端面に取り付けられたヒンジ31と、このヒンジ31の下端に取り付けられた枕木32など、から構成されている。
【0036】
この押圧手段3は、各フォークf1に前後一対計4箇所装着され、前述の吊下げ手段2でPCa床版S1を吊り上げつつ、PCa床版S1とフォークf1との間に枕木32を介在させることでPCa床版S1を押圧して固定する機能を有している。
【0037】
この枕木固定金具30は、上下一対の鋼製プレートでフォークf1を挟み込んで挟持することでヒンジ31を介して枕木32を固定する機能を有している。
【0038】
また、ヒンジ31は、支持するPCa床版S1の短手方向に沿って揺動自在となるように取り付けられており、フォークリフトFLの運搬時の振動によりPCa床版S1が撓んだ場合でも、その傾斜角度の変動に追随可能となっている。このため、PCa床版S1が振動で撓んでも枕木32がずれるおそれが少なく、運搬中の振動でPCa床版S1を損傷させるおそれも少ない。勿論、ヒンジ31は、PCa床版S1の長手方向に沿って揺動自在となるように取り付けられていてもよいことは云うまでもない。要するに、本発明に係るヒンジは、支持する部材の振動等による撓みに追随して揺動可能に構成されていればよい。
【0039】
そして、PCa床版S1と当接する部分にコンクリートより表面硬度が低い木製の枕木32を使用することで、コンクリート製のPCa床版S1に傷を付けるおそれがないだけでなく、安価で且つ繰り返し使用可能とすることができる。
【0040】
(装着手段)
装着手段4は、3本の横桁11のそれぞれの横桁11の下端に左右一対ずつボルト接合されたフォーク固定金具40と、フォークf1に対する前後のズレを防止するズレ止め金具41など、から構成されている。
【0041】
このフォーク固定金具40は、厚さ12mm程度のプレートの上面が切削加工されて装着するフォークf1の傾斜面に応じて下端面が水平面となるように構成されている。このため、フォークf1の傾斜面とプレートの上面の傾斜面とにより、鋼製フレーム10がフォークf1に沿って後方へズレることがない。
【0042】
また、ズレ止め金具41は、
図2、
図3に示すように、2本の鋼製のL形アングル(L75×75×9)をボルトで結合した金具であり、フォークf1の基端部に後方の横桁11を掛け止めて、鋼製フレーム10全体が、フォークf1に沿って前方へズレることを防止する機能を有している。
【0043】
<部材運搬据付方法>
次に、
図1、
図2、
図7を用いて、本発明の実施形態に係る部材運搬据付方法について説明する。前述の本発明の実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具1を用いて、コンクリート部材であるPCa床版S1を運搬して据え付ける場合を例示して説明する。
【0044】
(1)治具装着工程
先ず、本発明の実施形態に係る部材運搬据付方法では、前述のフォークリフト用運搬据付治具1をフォークリフトFLに装着する治具装着工程を行う(図示せず)。
【0045】
具体的には、クレーンなどの揚重機を用いて、フォークリフト用運搬据付治具1を吊上げプレート11aを利用して吊り上げた状態で、装着手段4のフォーク固定金具40にフォークリフトFLのフォークf1を挿入してボルトを締めて装着する。
【0046】
(2)床版吊上工程
次に、本実施形態に係る部材運搬据付方法では、前工程でフォークリフトFLに装着したフォークリフト用運搬据付治具1に床版を吊り上げる床版吊上工程を行う(図示せず)。
【0047】
具体的には、先ず、予め埋設された雌ネジ等を利用して吊りフックをPCa床版S1に装着する。そして、
図2に示すように、その吊りフックにチェーンブロックやレバーブロック(登録商標)などの吊り下げ長さ調整機構22のフックを掛け止めて吊り上げる。このとき、吊り下げ長さ調整機構22による吊上げは、押圧手段3の枕木32がPCa床版S1に当接し、PCa床版S1がある程度撓んで押圧力が掛かるまでとする。
【0048】
(3)床版運搬工程
次に、
図1、
図7に示すように、本実施形態に係る部材運搬据付方法では、前工程で吊上げたPCa床版S1をフォークリフトFLのフォークf1で揚重して所定の据付位置まで運搬する床版運搬工程を行う。
【0049】
具体的には、新設のPCa床版S1を持ち上げたまま、フォークリフトFLで既設のPCa床版S1上を走行して運搬する。このとき、既設のPCa床版S1同士の間には、PCa床版S1同士を一体化するため間詰めコンクリートを打設する間隔が存在するため、フォークリフトFLで走行できるように、PCa床版S1間に亘って鉄板SPを敷設する(
図8参照)。
【0050】
また、鉄板SPでPCa床版S1に傷が付かないように、鉄板SPとPCa床版S1との間にベニア板などの緩衝材を敷く(
図7参照)。勿論、ベニア板に追加して、又はベニア板代わりに緩衝材としてゴム板や樹脂板などを敷いてもよいことは云うまでもない。
【0051】
本工程では、前述のように、フォークリフト用運搬据付治具1で吊下げ手段2でPCa床版S1を吊り下げつつ、押圧手段3でPCa床版S1を押圧固定した状態で運搬する。このため、フォークリフト用運搬据付治具1は、PCa床版S1の振動によるバタつきを抑えて部材を損傷することなく運搬することができる。
【0052】
(4)床版据付工程
次に、
図7に示すように、本実施形態に係る部材運搬据付方法では、前工程で所定の据付位置まで運搬したPCa床版S1を所定の位置に据え付ける床版据付工程を行う。
【0053】
具体的には、フォークリフトFLのフォークf1を降ろして行き、据付位置となるシールドトンネル底面の溝に当接する直前でフォークf1を停止する。
【0054】
そして、吊り下げ長さ調整機構22でチェーン等を巻出してPCa床版S1の水平を確保しつつ吊り降ろしていく。このとき、バール等を用いてシールドトンネル底面の溝に対する左右の微調整も行う。
【0055】
これにより、左右の水平の微調整や位置調整が極めて正確に行えるとともに、PCa床版S1を正確な据付位置に素早く短時間に設置することが可能となる。よって、作業効率向上させて、作業時間の短縮によるコストダウンを達成することができる。
【0056】
最後に、吊り下げ長さ調整機構22のフックを外すとともに、PCa床版S1のフックも取り外して床版の運搬据付作業が終了する。
【0057】
そして、フォークリフトFLにフォークリフト用運搬据付治具1を装着したまま、(2)床版吊上工程~(4)床版据付工程を繰り返すことで次々にPCa床版S1を運搬して正確な位置に設置していくことができる。
【0058】
以上説明した本実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具1及びそれを用いた本実施形態に係る部材運搬据付方法によれば、大型の門型クレーンや架設機を使用せずにフォークリフトFLによるPCa床版S1の運搬・据付が可能となる。このため、ランプシールドなどの小規模且つ縦横断面における急勾配を有するトンネルにおいても使用することができるだけでなく、レール材等の仮設資材のリース料が嵩むことがなく安価となる。その上、フォークリフトFL1台で運搬と据付を続けて行うことができるため、揚重手段の盛替等が必要なくなり、作業時間を短縮してコストダウンを達成することができる。
【0059】
また、本実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具1及び部材運搬据付方法によれば、吊下げ手段2でPCa床版S1を吊り下げつつ、押圧手段3でPCa床版S1を押圧固定して運搬する。このため、PCa床版S1の振動によるバタつきを抑えて部材を損傷することなく運搬することができる。
【0060】
その上、本実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具1及び部材運搬据付方法によれば、フォークリフトFLのフォークf1の上下動だけでなく、吊下げ手段2でPCa床版S1の高さ調整及び左右の位置調整が可能であり据付作業を正確に行うことができる。それに加え、1台のフォークリフトFLで運搬と据付をつづけて行うことができるため、極めて作業効率が良く、その点でも作業時間を短縮してコストダウンを達成することができる。
【0061】
以上、本発明の本実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具及びそれを用いた本実施形態に係る部材運搬据付方法について詳細に説明した。しかし、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0062】
特に、本発明の本実施形態に係るフォークリフト用運搬据付治具及び部材運搬据付方法で運搬・据付を行う部材としてPCa床版を例示して説明したが、梁材、セグメントなどのコンクリート部材だけでなく、鋼製部材や木材などにも適用することができる。要するに、トンネルや橋梁下などの狭隘な空間を運搬して所定の位置に正確に設置することが必要な床材や壁材などの板状材や梁材や管材などの長尺材には、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
FL:フォークリフト
f1:フォーク
S1:PCa床版(部材)
1:フォークリフト用運搬据付治具
10:鋼製フレーム(フレーム)
11:横桁
11a:吊上げプレート
11b:吊下げプレート
12:縦桁
2:吊下げ手段
20:吊下げ金具
21:シャックル
22:(チェーンブロック,レバーブロック(登録商標))吊り下げ長さ調整機構
3:押圧手段
30:枕木固定金具
31:ピポットヒンジ
32:枕木
4:装着手段
40:フォーク固定金具
41:ズレ止め金具
SP:鉄板