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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】パレット位置修正棒
(51)【国際特許分類】
   B65G 7/02 20060101AFI20220118BHJP
   B65D 19/38 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B65G7/02 A
B65D19/38 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017150463
(22)【出願日】2017-08-03
(65)【公開番号】P2019026456
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 吉希
【審査官】福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-180608(JP,U)
【文献】実開昭61-166000(JP,U)
【文献】実開平05-081198(JP,U)
【文献】実開平4-106181(JP,U)
【文献】登録実用新案第3023857(JP,U)
【文献】登録実用新案第3109851(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 7/02
B65D 19/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットの位置を修正するためのパレット位置修正棒において、
把持部と、把持部の下部に位置する棒本体部と、棒本体部の下部に固定された係止爪部とを備えており、
前記係止爪部は、前記棒本体部の下端部から前方に張り出す平面部と、前記平面部の先端から前記係止爪部の先端に向かって薄くなる傾斜面部とを備え、
前記傾斜面部の先端角部は面取りされており、
前記係止爪部の底部には、表面が曲面からなる凸状の座面が形成されており、
前記棒本体部は、前記係止爪部から立ち上がる立上部と、前記立上部の上端から後方斜め上に向けて立ち上がる第一傾斜部と、前記第一傾斜部の上端から後方斜め上に向けて立ち上がる第二傾斜部とを備えている
ことを特徴とするパレット位置修正棒。
【請求項2】
パレットの位置を修正するためのパレット位置修正棒において、
把持部と、把持部の下部に位置する棒本体部と、棒本体部の下部に固定された係止爪部とを備えており、
前記係止爪部は、前記棒本体部の下端部から前方に張り出す平面部と、前記平面部の先端から前記係止爪部の先端に向かって薄くなる傾斜面部とを備え、
前記傾斜面部の先端角部は面取りされており、
前記係止爪部の底部には、表面が曲面からなる凸状の座面が形成されており、
前記係止爪部の幅寸法は、前記パレットの底面部に形成された補強リブの配置ピッチよりも大きい
ことを特徴とするパレット位置修正棒。
【請求項3】
前記係止爪部が前記パレットの下方に挿入されて、前記パレット位置修正棒が立った状態で、把持部が80cm~120cmの高さ範囲に位置する
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のパレット位置修正棒。
【請求項4】
前記立上部に対する前記第一傾斜部の傾斜角度は、18±5度の範囲内であり、
前記第一傾斜部に対する前記第二傾斜部の傾斜角度は、12±5度の範囲内である
ことを特徴とする請求項に記載のパレット位置修正棒。
【請求項5】
パレットの位置を修正するためのパレット位置修正棒において、
把持部と、把持部の下部に位置する棒本体部と、棒本体部の下部に固定された係止爪部とを備えており、
前記係止爪部は、前記棒本体部の下端部から前方に張り出す平面部と、前記平面部の先端から前記係止爪部の先端に向かって薄くなる傾斜面部とを備え、
前記傾斜面部の先端角部は面取りされており、
前記係止爪部の底部には、表面が曲面からなる凸状の座面が形成されており、
前記係止爪部と前記把持部を平面上に接地させて、前記パレット位置修正棒を寝かせた際の当該パレット位置修正棒の高さ寸法が、前記パレットのフォークポケットの高さ寸法より小さい
ことを特徴とするパレット位置修正棒。
【請求項6】
パレットの位置を修正するためのパレット位置修正棒において、
把持部と、把持部の下部に位置する棒本体部と、棒本体部の下部に固定された係止爪部とを備えており、
前記係止爪部は、前記棒本体部の下端部から前方に張り出す平面部と、前記平面部の先端から前記係止爪部の先端に向かって薄くなる傾斜面部とを備え、
前記傾斜面部の先端角部は面取りされており、
前記係止爪部の底部には、表面が曲面からなる凸状の座面が形成されており、
前記係止爪部の先端部に、前記係止爪部の張出方向に沿ったスリットが形成されている
ことを特徴とするパレット位置修正棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレットの位置を修正するパレット位置修正棒に関する。
【背景技術】
【0002】
重量物の搬送移動や方向転換を容易に行うための工具として、特許文献1に示すような梃子棒があった。この梃子棒は、軸部と、軸部の先端部から鈍角に延出する板状に形成される鉄板ヘラと、支点部に設けられた車輪と、鉄板ヘラの表面に設けられたゴム製板材とを備えている。この梃子棒は、キャスター付きのATMや金庫等の重量物の方向転換や据付、持ち上げ搬送移動などに用いられる。
【0003】
ところで、荷物を積載したパレットをトラックに積み込むことがあるが、パレットの位置修正に特化した位置修正棒があった。図13に示すように、位置修正棒100は、鉄製の棒材を折り曲げて形成されている。位置修正棒100は、把持部101と棒本体部102と、支持板部103とを備えている。把持部101は、棒材を三角形状に折り曲げて形成されており、棒本体部102の上部に設けられている。棒本体部102は、下端部が横方向(左右方向)の斜め下に折り曲げられていて、把持部101と棒本体部102は同一平面状に形成されている。支持板部103は、棒本体部102の下部に設けられている。支持板部103は、棒材の先端部を板状に潰すとともに前側に折り曲げて形成されている。支持板部103の表面は、平面状に形成されている。このような位置修正棒100では、支持板部103の底部を支点として、支持板部103の先端でパレットを持ち上げ、位置修正棒100を回転させることで、パレットの位置を修正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-96984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の梃子棒は、パレットの位置修正を行うには、車輪が不要であり構成が複雑である。また、梃子棒は、鉄板ヘラの表面にゴム製板材を取り付け、重量物の底面が傷付き難い構成としているが、パレットの位置修正に用いた際には、鉄板ヘラの先端がパレットの底面に傾斜して当接するため、パレットの底面が傷付いてしまう問題があった。また、図13の位置修正棒100においても、支持板部103の表面が平面状になっており、先端角部が直角になっているので、パレットの底面が傷付いてしまう。また、トラックに荷物を積載したパレットを積み込んだ状態で、パレットの位置修正を行うと、トラックの荷室の床面も傷付いてしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、パレットの位置修正の際にパレットや荷室床面が傷付くことを抑制できるパレット位置修正棒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明は、パレットの位置を修正するためのパレット位置修正棒において、把持部と、把持部の下部に位置する棒本体部と、棒本体部の下部に固定された係止爪部とを備えており、前記係止爪部は、前記棒本体部の下端部から前方に張り出す平面部と、前記平面部の先端から前記係止爪部の先端に向かって薄くなる傾斜面部とを備え、前記傾斜面部の先端角部は面取りされており、前記係止爪部の底部には、表面が曲面からなる凸状の座面が形成されており、前記棒本体部は、前記係止爪部から立ち上がる立上部と、前記立上部の上端から後方斜め上に向けて立ち上がる第一傾斜部と、前記第一傾斜部の上端から後方斜め上に向けて立ち上がる第二傾斜部とを備えていることを特徴とするパレット位置修正棒である。
【0008】
このような構成によれば、パレット位置修正棒を傾けてパレットを持ち上げた際に、係止爪部の傾斜面部がパレットの底面に面接触するので、パレットの底面に局所的な力がかかり難くパレットの底面が傷付き難い。さらに、傾斜面部の先端角部が面取り加工されているので、パレットの底面に刺さることはない。また、係止爪部の座面は、曲面にて構成されているので、荷室床面に刺さり難く、したがって、床面が傷付き難い。さらに、作業者は前記把持部を後方斜め下に引きつつ下方に押し付けることで、パレットを浮かせることができるので、作業を行い易い。
【0010】
また、本発明は、パレットの位置を修正するためのパレット位置修正棒において、把持部と、把持部の下部に位置する棒本体部と、棒本体部の下部に固定された係止爪部とを備えており、前記係止爪部は、前記棒本体部の下端部から前方に張り出す平面部と、前記平面部の先端から前記係止爪部の先端に向かって薄くなる傾斜面部とを備え、前記傾斜面部の先端角部は面取りされており、前記係止爪部の底部には、表面が曲面からなる凸状の座面が形成されており、前記係止爪部の幅寸法は、前記パレットの底面部に形成された補強リブの配置ピッチよりも大きいことを特徴とするパレット位置修正棒である。このような構成によれば、係止爪部は、パレットの底面部の補強リブに当接するので、パレットの底面が変形し難い。
【0011】
さらに、本発明に係るパレット位置修正棒では、前記係止爪部が前記パレットの下方に挿入されて、前記パレット位置修正棒が立った状態で、把持部が80cm~120cmの高さ範囲に位置するものが好ましい。このような構成によれば、把持部が作業員の腹部の高さに位置するので、力を入れやすくなる。したがって、作業を行い易い。
【0012】
また、本発明に係るパレット位置修正棒では、前記立上部に対する前記第一傾斜部の傾斜角度は、18±5度の範囲内であり、前記第一傾斜部に対する前記第二傾斜部の傾斜角度は、12±5度の範囲内であるものが好ましい。このような構成によれば、棒本体部の傾斜角度が大き過ぎないので、作業員が把持部に加えた力を係止爪部に効率的に伝達することができる。
【0013】
さらに、本発明は、パレットの位置を修正するためのパレット位置修正棒において、把持部と、把持部の下部に位置する棒本体部と、棒本体部の下部に固定された係止爪部とを備えており、前記係止爪部は、前記棒本体部の下端部から前方に張り出す平面部と、前記平面部の先端から前記係止爪部の先端に向かって薄くなる傾斜面部とを備え、前記傾斜面部の先端角部は面取りされており、前記係止爪部の底部には、表面が曲面からなる凸状の座面が形成されており、前記係止爪部と前記把持部を平面上に接地させて、前記パレット位置修正棒を寝かせた際の当該パレット位置修正棒の高さ寸法が、前記パレットのフォークポケットの高さ寸法より小さいことを特徴とするパレット位置修正棒である。このような構成によれば、フォークポケットの空間を有効利用でき、トラック内にパレット位置修正棒の収容スペースを設ける必要がない。
【0014】
また、本発明は、パレットの位置を修正するためのパレット位置修正棒において、把持部と、把持部の下部に位置する棒本体部と、棒本体部の下部に固定された係止爪部とを備えており、前記係止爪部は、前記棒本体部の下端部から前方に張り出す平面部と、前記平面部の先端から前記係止爪部の先端に向かって薄くなる傾斜面部とを備え、前記傾斜面部の先端角部は面取りされており、前記係止爪部の底部には、表面が曲面からなる凸状の座面が形成されており、前記係止爪部の先端部に、前記係止爪部の張出方向に沿ったスリットが形成されていることを特徴とするパレット位置修正棒である。このような構成によれば、フォークポケットの底部の凹部に係止爪部を引っ掛けて、パレットを移動させる際に、フォークポケットの底部の凹部の幅寸法が、係止爪部の幅寸法より小さい場合であっても、係止爪部を凹部に挿入して係止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るパレット位置修正棒によれば、パレットの位置修正の際にパレットや荷室床面が傷付くことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒を示した斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒を示した側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒の係止爪部を示した側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒の係止爪部を示した正面図である。
図5】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒の係止爪部を斜め下方から見上げた斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒の係止爪部を示した斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒をパレットのフォークポケットに収容した状態を示した断面図である。
図8】トラックの荷室にパレットと荷物を積み込んだ状態を示した後面図である。
図9】(a)は本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒をパレットに設置した状態を示した斜視図、(b)はパレットを持ち上げた状態を示した斜視図である。
図10】(a)は本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒をパレットに設置した状態を示した要部側面図、(b)はパレットを持ち上げた状態を示した要部側面図である。
図11】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒を用いてパレットを移動させる状態を示した斜視図である。
図12】本発明の実施形態に係るパレット位置修正棒の係止爪部の変形例を示した斜視図である。
図13】(a)は従来の位置修正棒を示した斜視図、(b)は要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。かかるパレット位置修正棒は、図8に示すように、トラックの荷室2内に積み込まれたパレット3の位置修正を行うためのものである。パレット3の上には荷物4が積載されている。荷室2の床5には、ローラ6が車両の前後方向に間隔をあけて配置されている。パレット3は、ローラ6の上に載置されて、前後に移動可能に支持されている。荷物4は、パレット3上に積まれて、荷室2内に収納されている。荷物4と荷室2の壁7との間には、緩衝材9が介設されている。なお、荷物4と天井8との間の距離が短い場合は、荷物4と天井8との間にも緩衝材を介設するのが好ましい。
【0018】
パレット位置修正棒1は、図1および図2に示すように、把持部10と、棒本体部20と、係止爪部30とを備えている。
【0019】
把持部10は、作業者が把持する部位である。把持部10は、鋼製の棒材を三角形状に折り曲げて形成されている。把持部10は、棒本体部20の上端から二股に分岐する斜辺11,11と、斜辺11,11の上端を連結する水平辺12とを備えている。なお、把持部10の形状は、前記構成に限定されるものではない。たとえば、1本の直線部の上端から水平辺が両側に張り出すT字形状であってもよい。
【0020】
棒本体部20は、把持部10の下部に位置する部位であって、棒本体部20の下端には、係止爪部30が取り付けられている。棒本体部20は、鋼製の棒材を折り曲げて形成されている。棒本体部20は、立上部21と、第一傾斜部22と、第二傾斜部23とを備えている。
【0021】
立上部21は、係止爪部30から立ち上がっている。係止爪部30の表面(後記する平面部31)に対して直角である。立上部21の高さ寸法Haは、略200mmである。第一傾斜部22は、立上部21の上端から後方斜め上に向けて立ち上がっている。第一傾斜部22は、立上部21に対して後方に18度傾斜している。なお、立上部21に対する第一傾斜部22の傾斜角度θaは、18±5度(13~23度)の範囲であるのが好ましい。第一傾斜部22の高さ寸法(係止爪部30を水平にした状態での、傾斜した第一傾斜部22の上端高さから下端高さを減じた寸法)Hbは、略600mmである。第二傾斜部23は、第一傾斜部22の上端から後方斜め上に向けて立ち上がっている。第二傾斜部23は、第一傾斜部22に対して後方に12度傾斜している。なお、第一傾斜部22に対する第二傾斜部23の傾斜角度θbは、12±5度(7~17度)の範囲であるのが好ましい。第二傾斜部23は、側方から見て把持部10と直線状に形成されている。第二傾斜部23の高さ寸法と把持部10の高さ寸法を合わせた寸法(係止爪部30を水平にした状態での、傾斜した把持部10の上端高さから第二傾斜部23の下端高さを減じた寸法)Hcは、略300mmである。
【0022】
係止爪部30は、図3乃至図6に示すように、パレット3を下側から押し上げる部位である。係止爪部30は、パレット3の下方の隙間Sに挿入されて、パレット3の下面に係止される(図10参照)。係止爪部30は、平面矩形形状を呈しており、四隅は曲線形状に面取りされている。すなわち、係止爪部30の角部は曲面に形成されている。係止爪部30の上面には、平面部31と傾斜面部32とが形成されている。係止爪部30の幅寸法Wは、略70mmであって、従来の係止部よりも広くなっている。係止爪部30の幅寸法Wは、パレット3の底面部に形成された補強リブ(図示せず)の配置ピッチよりも大きく設定されている。
【0023】
平面部31は、パレット3を持ち上げる前の状態で係止爪部30をパレット3の下方の隙間に挿入したときに、水平になる面である。平面部31は、立上部21に対して直交する面であり、棒本体部20の下端部から前方と後方の両方に張り出している。平面部31の、立上部21の軸芯位置から前方への張出し寸法Daは、略40mmであり、後方への張出し寸法Dbは、略20mmである。平面部31には、立上部21が肉盛溶接されている。平面部31上には、立上部21の下端部を囲むように肉盛部34が形成されている。
【0024】
傾斜面部32は、平面部31の前端(先端)から連続した面であり、係止爪部30の前端(先端)に向かうに連れて表面高さが低くなるように傾斜している。つまり、係止爪部30は、前端に向かうに連れて薄くなっている。傾斜面部32の張出し水平寸法Dcは、略20mmである。係止爪部30の平面部31と傾斜面部32を合わせた長さ寸法Dは、略80mmである。傾斜面部32の前端部(先端部)の上隅角部(先端角部33)は、面取り加工されている。面取り加工は曲面状に為されるのが好ましい。
【0025】
係止爪部30の底部には、座面35が形成されている。座面35は、パレット位置修正棒1でパレット3の位置修正を行う際に、床5に接地する部分である。座面35は、表面が曲面からなる凸状に形成されている。座面の凸端部36は、立上部21の延長上に配置されている。座面35は、凸端部36を頂部にして、周縁部に向かって係止爪部30が薄くなるように傾斜している。凸端部36の下端から平面部31の表面までが係止爪部30の厚さ寸法Hdとなる。係止爪部30の厚さ寸法Hdは、略15mmとなっている。
【0026】
以上の構成のパレット位置修正棒1では、係止爪部30から把持部10の水平辺12までの高さ寸法H(図2参照)は、1115mmとなっており、作業員Pの腹部に相当する高さになっている。パレット位置修正棒1の高さ寸法は、80cm~120cmの範囲にあるのが好ましい。このような寸法であれば、標準的な身長の作業員の腹部の高さに把持部10が位置するようになっている。
【0027】
図7に示すように、パレット位置修正棒1は、係止爪部30と把持部10を平面上に接地させて寝かせた際の高さ寸法が、パレット3のフォークポケット3aの内空高さ寸法より小さい。つまり、パレット位置修正棒1は、フォークポケット3aの内部に収容可能な形状となっている。
【0028】
次に、パレット位置修正棒1を用いてパレット3の位置修正を行う工程を説明する。パレット3の位置修正は、図8に示すように、トラックの荷室2内に積み込まれた状態で行う。パレット3は、ローラ6の上に載置されており、床5とパレット3との間には隙間Sが形成されている。
【0029】
パレット3の位置修正を行うに際しては、図9の(a)に示すように、まず、パレット3の後方から、パレット3の下方の隙間Sに係止爪部30を挿入する。パレット位置修正棒1は、立上部21が鉛直になるように配置する。このとき、把持部10の水平辺12は、作業員Pの腹部の高さに位置している。図10の(a)に示すように、係止爪部30の平面部31は、パレット3の底面に面接触している。また、係止爪部30の底部の座面35は、凸端部36が床5に接触している。
【0030】
その後、図9の(b)に示すように、作業員Pが把持部10の水平辺12を把持して、下方に押し付けつつ後方に引く(後方斜め下方に引っ張る)。このとき、把持部10は、作業員Pの腹部に位置しているので、力を入れやすい。また、体重をかけ易い態勢であるので、荷物が重くてもパレット3を容易に持ち上げることができる。把持部10を後方斜め下に引くと、図10の(b)に示すように、係止爪部30は、座面35の凸端部36を支点として後方に傾斜して、係止爪部30の傾斜面部32がパレット3の底面に面接触する。このように、パレット3の底面に傾斜面部32が面接触していると、荷重の集中を防止でき、底面の破損を防止することができる。また、傾斜面部32の先端角部33が面取り加工されているので、パレット3の底面に刺さることはない。さらに、係止爪部30の幅寸法は、パレット3の底面部の補強リブの配置ピッチより大きいので、傾斜面部32は、少なくとも一つ以上の補強リブに接することとなる。よって、底面の素材が変形し難くなり、底面が破損するのを防止することができる。
【0031】
また、係止爪部30の底部の座面35は、凸端部36からずれた曲面部が床5に接触している。このように、パレット3を持ち上げた状態でパレット位置修正棒1を所望の方向に回転させると、係止爪部30の座面35の接触点を中心として係止爪部30が回転する。これによって、パレット3が移動して位置修正が行われる。このとき、係止爪部30の座面35は、曲面状に形成されているので、回転させても床5に刺さり難く、傷付き難い。
【0032】
パレット3を持ち上げた状態で、作業員Pは、それ程しゃがまなくて済むので、パレット位置修正棒1を押さえたままで、緩衝材9を押さえることもできる。これによって、パレット3の位置修正中に緩衝材9がずれるのを防止することができる。
【0033】
次にパレット位置修正棒1を用いて、ローラ6上のパレット3を後方に引っ張る作業を説明する。図11に示すように、パレット3を作業員Pが引っ張るに際しては、係止爪部30をフォークポケット3a内に挿入して、係止爪部30の先端部を、フォークポケット3aの底面の凹部に挿し込む。凹部は、パレット3の補強リブにて区画されて複数形成されている。係止爪部30は、パレット3の幅方向中央に近い位置の凹部に挿し込むのが好ましい。
【0034】
係止爪部30を凹部に挿し込んだ状態で、作業員Pが把持部10を把持して持ち上げると、棒本体部20の把持部10側が引き上げられて、立上部21がフォークポケット3aの開口端部の上縁に当接する。ここで、パレット位置修正棒1は、係止爪部30と立上部21の二点でフォークポケット3aを押さえることになるので、パレット3に固定された状態となる。この状態で、作業員Pがパレット位置修正棒1を引っ張るので、パレット位置修正棒1がパレット3から外れることはない。したがって、安定した状態でパレット3を移動させることができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るパレット位置修正棒1によれば、パレット3の位置修正の際にパレット3や荷室の床5が傷付くことを抑制することができる。さらに、パレット位置修正棒1は、以下の作用効果を得ることもできる。
【0036】
また、棒本体部20は、立上部21と第一傾斜部22と第二傾斜部23とを備えているので、把持部10の高さを引っ張り易い位置(作業員の腹部の高さ)に配置できるので、パレット位置修正棒1に力を加え易く、作業を行い易い。さらに、第一傾斜部22と第二傾斜部23は、適度な角度で傾斜しているので、把持部10に加えた力が逃げることなく、係止爪部30に効率的に伝達される。
【0037】
さらに、パレット位置修正棒1は、フォークポケット3aの内部に収容可能であるので、フォークポケットの空間を有効利用できる。したがって、トラック内にパレット位置修正棒1の収容スペースを別途に設ける必要がない。
【0038】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、係止爪部30は、矩形平面形状を呈しているが、これに限定されるものではない。図12に示すように、たとえば係止爪部30の先端部に、スリット37を形成してもよい。スリット37は、係止爪部30の張り出し方向に延在しており、フォークポケット3a(図11参照)の底部に形成された補強リブが挿入可能な幅寸法を有している。このようなスリット37を形成すれば、係止爪部30の幅が、フォークポケット3aの底部の凹部の幅よりも広い場合であっても、補強リブがスリット37に入り込むことで、係止爪部30を凹部に挿入することができる。これによって、パレット3を引っ張る作業を行うことができる。
【0039】
また、前記実施形態では、立上部21は、係止爪部30の平面部31に直交しているが、これに限定されるものではなく、傾斜していてもよい。さらに、棒本体部20は、立上部21と第一傾斜部22と第二傾斜部23とを備えているが、他の形状であってもよい。たとえば直線状であってもよいし、さらに多くの傾斜部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 パレット位置修正棒
3 パレット
3a フォークポケット
10 把持部
20 棒本体部
21 立上部
22 第一傾斜部
23 第二傾斜部
30 係止爪部
31 平面部
32 傾斜面部
33 先端角部
35 座面
36 凸端部
37 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13