(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】インクジェットヘッドのクリーニング装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220118BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/01 301
(21)【出願番号】P 2017201329
(22)【出願日】2017-10-17
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】松永 克彦
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0021409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルが複数配列されたノズル列と、該ノズル列に対応する部分が開口され、前記ノズル列のインク吐出面の周囲に設けられたノズルガードとを有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、
前記インク吐出面に接触することなく移動して前記ノズルガードの表面に付着したインクを払拭する第1のワイプブレードと、
前記インク吐出面に接触しながら移動して前記インク吐出面に付着したインクを払拭する第2のワイプブレードと、
前記第1のワイプブレードおよび前記第2のワイプブレードのうちの前記第1のワイプブレードのみを用い、かつ前記ノズル列からインクを吐出させることなく前記インクジェットヘッドのクリーニングを行う第1のクリーニング動作と、前記第1のワイプブレードおよび前記第2のワイプブレードのうちの少なくとも前記第2のワイプブレードを用い、かつ前記ノズル列からインクを吐出させて前記インクジェットヘッドのクリーニングを行う第2のクリーニング動作とを選択的に切り替えて制御するクリーニング制御部と
、
前記第1のワイプブレードに対して前記第2のワイプブレードを回動させる回動機構とを備え、
前記クリーニング制御部が、前記第2のクリーニング動作を行う場合には、前記第1のワイプブレードと前記第2のワイプブレードとが並んで配置されるように前記回動機構を制御し、
前記第1のクリーニング動作を行う場合には、前記第2のワイプブレードが前記インク吐出面から退避するように前記回動機構を制御するインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項2】
前記第2のワイプブレードの幅が、前記第1のワイプブレードの幅よりも狭い請求項
1記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【請求項3】
前記クリーニング制御部が、前記第2のクリーニング動作を行う場合において、前記第1のワイプブレードおよび前記第2のワイプブレードの両方を用いるよう制御する請求項1
または2記載のインクジェットヘッドのクリーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出するノズルが複数配列されたノズル列を有するインクジェットヘッドのクリーニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙またはフィルムなどからなる印刷媒体を搬送しつつ、インクジェットヘッドから印刷媒体に対してインクを吐出して印刷を施すインクジェット印刷装置が提案されている。
【0003】
インクジェット印刷装置においては、ノズルのインク吐出口にインクが固着したり、用紙から発生した紙粉がインクジェットヘッドのノズルのインク吐出口に付着したりすることがある。ノズルのインク吐出口にインクが固着したり紙粉が堆積したりした場合、ノズルからのインクの吐出方向の乱れや不吐出などの吐出不良が発生することがある。このような吐出不良を低減するために、インクジェット印刷装置では、インクジェットヘッドのクリーニングを行う(特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
インクジェットヘッドに対するクリーニング動作の一つとして、インクジェットヘッドのノズルからインクを強制的に吐出させる、いわゆるパージを行った後、ワイプブレードによってノズルのインク吐出口上を払拭する一連の動作が知られている。これによりノズルのインク吐出口に固着したインクとともに、ノズルのインク吐出口上の紙粉等がワイプブレードにより除去される。
【0005】
また、もう一つのクリーニング動作として、上述したパージを行うことなく、ワイプブレードによってインク吐出口を払拭する動作がある。このクリーニング動作は、たとえば大量の紙に対して印刷を行うロングラン印字を行う場合などにおいて、インクジェットヘッドに付着したインクやゴミを簡易的に排除する際に用いられる動作である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-228151号公報
【文献】特開平11-334090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、インクジェットヘッドのインク吐出面には、その表面を保護するためにノズルガードと呼ばれる保護部材が設けられる。ノズルガードは、インクジェットヘッドのノズル列に対応する部分に開口を有する枠状の部材から構成されるものであり、ノズル列のインク吐出面の周囲に設けられるものである。
【0008】
このようなノズルガードを有するインクジェットヘッドに対して、インクジェットヘッドと同程度の幅の平板状のワイプブレードを用いて、上述したパージを行うクリーニング動作を行った場合、ワイプブレードによってノズルガードを払拭することはできるが、ワイプブレードがノズル吐出面に接触しないので、ノズルガードの開口部分にインクが大量に残り、インクが捌けるのに長い時間がかかってしまい、メンテナンス時間の拡大に繋がる。
【0009】
一方、ノズルガードの開口の幅よりも狭い幅の凸形状のワイプブレードをインク吐出面に接触させて払拭することによってインク吐出面をクリーニングする方法もあるが、この場合、上述したパージを行わないクリーニング動作を行うと、クリーニング動作の際にワイプブレードに塗布されるワイプ液が、ワイプブレードによってノズル内に押し込まれて詰まってしまい、インクの吐出不良が発生することが分かった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み、インクジェットヘッドのクリーニング方法の最適化とメンテナンス時間の短縮を図ることができるインクジェットヘッドのクリーニング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置は、インクを吐出するノズルが複数配列されたノズル列と、そのノズル列に対応する部分が開口され、ノズル列のインク吐出面の周囲に設けられたノズルガードとを有するインクジェットヘッドのクリーニング装置であって、インク吐出面に接触することなく移動してノズルガードの表面に付着したインクを払拭する第1のワイプブレードと、インク吐出面に接触しながら移動してインク吐出面に付着したインクを払拭する第2のワイプブレードと、第1のワイプブレードおよび第2のワイプブレードのうちの第1のワイプブレードのみを用い、かつノズル列からインクを吐出させることなくインクジェットヘッドのクリーニングを行う第1のクリーニング動作と、第1のワイプブレードおよび第2のワイプブレードのうちの少なくとも第2のワイプブレードを用い、かつノズル列からインクを吐出させてインクジェットヘッドのクリーニングを行う第2のクリーニング動作とを選択的に切り替えて制御するクリーニング制御部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置は、インク吐出面に接触することなく移動してノズルガードの表面に付着したインクを払拭する第1のワイプブレードと、インク吐出面に接触しながら移動してインク吐出面に付着したインクを払拭する第2のワイプブレードとを備える。
【0013】
そして、第1のワイプブレードおよび第2のワイプブレードのうちの第1のワイプブレードのみを用い、かつノズル列からインクを吐出させることなくインクジェットヘッドのクリーニングを行う第1のクリーニング動作と、第1のワイプブレードおよび第2のワイプブレードのうちの少なくとも第2のワイプブレードを用い、かつノズル列からインクを吐出させてインクジェットヘッドのクリーニングを行う第2のクリーニング動作とを選択的に切り替えて制御する。
【0014】
したがって、第1のクリーニング動作を選択した場合には、インクを吐出させることなく第1のワイプブレードを用いてクリーニング動作を行うので、ノズルガードの開口部分にインクを残すことなく、ノズルガードの表面を迅速にクリーニングすることができ、メンテナンス時間を短縮することができる。
【0015】
また、第2のクリーニング動作を選択した場合には、第2のワイプブレードをインク吐出面に接触させてクリーニング動作を行うので、インク吐出面に固着したインクおよびゴミなどを適切に取り除くことができ、かつインクを吐出させてクリーニング動作を行うので、インクとワイプ液とが混合されるため、ワイプ液がノズルに押し込まれて詰まるのを防止することができる。
【0016】
すなわち、本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置によれば、第1のクリーニング動作と第2のクリーニング動作を選択的に切り替えて制御することによって、インクジェットヘッドのクリーニング方法の最適化とメンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す図
【
図4】
図3に示すインクジェットヘッドのA-A線断面の一部を示す図
【
図8】第1のクリーニング動作の際における第1のワイプブレードとインクジェットヘッドとの位置関係を示す図
【
図9】第2のクリーニング動作の際における第1のワイプブレードおよび第2のワイプブレードとインクジェットヘッドとの位置関係を示す図
【
図10】
図1に示すインクジェット印刷装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【
図11】
図1に示すインクジェット印刷装置のクリーニング動作を説明するためのフローチャート
【
図12】クリーニング動作時における搬送機構およびクリーニング部の移動を説明するための図
【
図13】その他の実施形態のブレードユニットの概略構成を示す斜視図
【
図14】その他の実施形態のブレードユニットの概略構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置の一実施形態を用いたインクジェット印刷装置について詳細に説明する。本実施形態のインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドのクリーニング装置に特徴を有するものであるが、まずは、インクジェット印刷装置全体の構成について説明する。
図1は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の概略構成図である。なお、
図1に矢印で示す上下左右が、実際のインクジェット印刷装置1における上下左右方向とする。
【0019】
本実施形態のインクジェット印刷装置1は、
図1に示すように、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、クリーニング部40とを備えている。
【0020】
給紙部10は、紙またはフィルムなどの印刷媒体Pが積載される給紙台11と、給紙台11に積載された印刷媒体Pを上部より一枚ずつ繰り出して後述するレジストローラ15に向かって搬送し、レジストローラ15に突き当てる1次給紙ローラ12と、1次給紙ローラ12により送り出された印刷媒体Pを所定の用紙間隔を空けて画像形成部20へ引き渡すレジストローラ15とを備えている。
【0021】
1次給紙ローラ12は、ピックアップローラ13および給紙ローラ14を備えている。ピックアップローラ13および給紙ローラ14は、
図1における反時計回りに回転し、これにより給紙台11から繰り出された印刷媒体Pがレジストローラ15まで搬送される。そして、印刷媒体Pの先端がレジストローラ15に当接した後、予め設定されたタイミングでレジストローラ15が回転し、印刷媒体Pが画像形成部20に向けて搬送される。
【0022】
画像形成部20は、4つのラインヘッド26と、用紙搬送機構21とを備えている。ラインヘッド26は、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に延設されるものであり、用紙搬送機構21によって搬送される印刷媒体Pに対してインクを吐出して印刷を施すものである。4つのラインヘッド26は、
図1に示すように、印刷媒体Pの搬送経路に沿って所定の間隔を空けて配列されている。4つのラインヘッド26は、それぞれ異なる色(例えばブラック、シアン、マゼンタおよびイエロー)のインクを吐出するものである。
【0023】
各ラインヘッド26は、
図2に示すように、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に3つのインクジェットヘッド27が等間隔で配置されたヘッド列を2列有し、その2列のヘッド列が上記直交する方向に半ピッチ分だけずれるように配置されて構成されている。
【0024】
各インクジェットヘッド27は、
図3に示すように、印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向に沿って配置された複数のノズル28aからなるノズル列28を有し、そのノズル列28の各ノズル28aからインクを吐出するものである。
【0025】
また、各インクジェットヘッド27は、ノズル列28を保護するためのノズルガード29を有している。
図4は、
図3に示すインクジェットヘッド27のA-A断面の一部を模式的に示した図である。
図3および
図4に示すように、ノズルガード29は、ノズル列28に対応する部分に開口29aを有する枠状の部材から構成されるものであり、ノズル列28のインク吐出面28bの周囲に設けられている。なお、インク吐出面28bとは、ノズル列28を構成する各ノズル28aのインク吐出口が並ぶ面のことをいう。
【0026】
図1に戻り、用紙搬送機構21は、用紙搬送ベルト22、駆動ローラ23および従動ローラ24,25などを備えたものである。用紙搬送機構21は、給紙部10から搬送された印刷媒体Pを用紙搬送ベルト22に吸引または静電吸着させた状態で、一定の速度を維持しながら印刷媒体Pをラインヘッド26の下まで搬送し、印刷媒体Pに対してラインヘッド26により印刷が施された後、印刷済の印刷媒体Pを排紙部30まで搬送するものである。
【0027】
用紙搬送ベルト22は、駆動ローラ23および従動ローラ24,25に掛け渡される環状のベルトである。用紙搬送ベルト22は、可塑性を有し、印刷媒体Pとの間に適度な摩擦力を発生させるゴムまたは樹脂などの材料により構成される。従動ローラ24,25は、駆動ローラ23とともに用紙搬送ベルト22を支持するものであり、用紙搬送ベルト22を介して駆動ローラ23に従動する。
【0028】
なお、図示省略したが、本実施形態のインクジェット印刷装置1は、クリーニング動作の際、用紙搬送機構21を上下方向に昇降させる昇降機構を備えている
【0029】
排紙部30は、排紙台31を備えており、画像形成部20において印刷の施された印刷済の印刷媒体Pを排紙台31に順次ストックするものである。
【0030】
クリーニング部40は、各ラインヘッド26の各インクジェットヘッド27のクリーニングを行うものである。クリーニング部40は、図示省略した駆動モータなどにより、
図1に示す退避位置と待機位置(
図12B参照)との間を移動可能に構成されている。また、クリーニング部40は、クリーニング動作を行う場合には、後述のクリーニング位置(
図12C参照)に配置される。クリーニング動作時におけるクリーニング部40の移動については、後で詳述する。
【0031】
クリーニング部40は、複数のワイパユニット41を備えている。本実施形態においては、各ラインヘッド26を構成するインクジェットヘッド27毎にそれぞれワイパユニット41が設けられている。
図5は、1つのインクジェットヘッド27に対して設けられるワイパユニット41の概略構成を示す図である。
図5においては、矢印Xの方向がノズル列28の長さ方向(印刷媒体Pの搬送方向に直交する方向)である。
【0032】
ワイパユニット41は、
図5に示すように、ブレードユニット42と、ブレード搬送ベルト43と、従動ローラ44,45と、駆動ローラ46と、ワイプ液貯留部47とを備えている。
【0033】
ブレードユニット42は、インクジェットヘッド27に付着したインクを払拭する後述する第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51を備えたものである。ブレードユニット42は、ブレード搬送ベルト43に取り付けられており、駆動ローラ46の回転によるブレード搬送ベルト43の移動にともなって、
図5における矢印Y方向(時計回り)に移動し、これによりインクジェットヘッド27のノズル列28の長さ方向に沿って移動する。
【0034】
ブレード搬送ベルト43は、駆動ローラ46および従動ローラ44,45に掛け渡される環状のベルトである。従動ローラ44,45は、駆動ローラ46とともにブレード搬送ベルト43を支持するものであり、ブレード搬送ベルト43を介して駆動ローラ46に従動する。従動ローラ44,45は、インクジェットヘッド27の長さ方向の両端部近傍に配置され、駆動ローラ46は、従動ローラ44と従動ローラ45の中間位置の下方に配置されている。
【0035】
ワイプ液貯留部47は、ワイプ液が貯留されるものである。ワイプ液は、インク吐出面28bおよびノズルガード29の表面に付着された固着物(インク成分、印刷媒体表面のケバおよび粉を含む)を溶解させる液体である。ワイプ液としては、水及び界面活性剤を含む水性溶媒を用いることが好ましい。界面活性剤としては、たとえば脂肪酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、α-スルホ脂肪酸エステルナトリウム、アルキル燐酸エステルナトリウム等のアニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、等のカチオン性界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、等のノニオン性界面活性剤;アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、等の両性界面活性剤を用いることができる。また、高分子系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤等も用いることができる。これらのなかでもポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることが好ましく、そのHLB値は11~17、アルキル基の炭素数は8~15、エチレンオキサイドの付加モル数は6~25であることがより好ましい。
【0036】
また、ワイプ液には、さらに増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤としては、水溶性高分子系増粘剤、粘土鉱物系増粘剤を用いることができる。水溶性高分子系増粘剤としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子を用いることができる。天然高分子としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガントガム、コーンスターチ、コンニャクマンナン、寒天等の植物系天然高分子;プルラン、キサンタンガム、デキストリン等の微生物系天然高分子;ゼラチン、カゼイン、にかわ等の動物系天然高分子、を用いることができる。半合成高分子としては、例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系半合成高分子;ヒドロキシエチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、シクロデキストリン等のデンプン系半合成高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール等のアルギン酸系半合成高分子;ヒアルロン酸ナトリウム、を用いることができる。合成高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリN- ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド等のビニル系合成高分子;ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリウレタンを用いることができる。粘土鉱物系の増粘剤としては、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト等のスメクタイト系粘土鉱物を用いることができる。これらのなかでも、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いることが好ましい。
【0037】
さらに、ワイプ液には、上記の成分に加え、任意に、水溶性有機溶剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等を適宜含むことができる。ワイプ液の粘度は、23℃において5~200mPa・sであることが好ましく、10~100mPa・sであることがより好ましい。
【0038】
そして、インクジェットヘッド27のクリーニング動作を行う際には、ブレード搬送ベルト43によってブレードユニット42がワイプ液貯留部47の位置まで移動し、これによりブレードユニット42の第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51に対してワイプ液が塗布される。そして、ブレードユニット42は、ワイプ液が塗布された状態でインクジェットヘッド27の下方まで移動し、インクジェットヘッド27のノズル列28の長さ方向に移動することによって、インクジェットヘッド27をワイプ液によって払拭する。
【0039】
図6は、ブレードユニット42の構成を示す斜視図である。ブレードユニット42は、
図6に示すように、第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51を備えている。本実施形態においては、第2のワイプブレード51の幅が、第1のワイプブレード50の幅よりも狭くなるように形成されている。なお、ここでいう幅とは、ノズル列28の長さ方向(
図6のX方向)に直交する方向(
図6のZ方向)の幅である。
【0040】
より具体的には、第1のワイプブレード50は、インクジェットヘッド27のノズルガード29の幅と同等またはノズルガード29の幅よりも広い幅で形成されている。これに対し、第2のワイプブレード51は、ノズルガード29の開口29aの幅よりも狭い幅で形成されている。第1のワイプブレード50の幅と第2のワイプブレード51の幅を上述したように設定することによって、第1のワイプブレード50によってノズルガード29の表面を払拭することができ、第2のワイプブレード51によってインク吐出面28bを払拭することができる。
【0041】
第1のワイプブレード50は、第1の支持部材52に設けられており、第2のワイプブレード51は、第2の支持部材53に設けられている。そして、第2の支持部材53の第2のワイプブレード51が設けられた側とは反対側の端部53aは、第1の支持部材52に対して回動軸53bを介して接続されている。そして、第2の支持部材53は、第1の支持部材52に対して回動軸53b周り(
図6の矢印R方向)に回動し、これにより第2のワイプブレード51は、
図6に示す退避位置と
図7に示すクリーニング位置との間を移動する。第2のワイプブレード51を回動させる回動機構としては、第1の支持部材52自体にモータなどを設けるようにしてもよいし、第2の支持部材53を円形ギアなどから構成し、その第2の支持部材53と勘合する円形ギアを別個に設け、その別個に設けられた円形ギアをモータによって回転させるようにしてもよい。
【0042】
そして、本実施形態においては、第1のワイプブレード50のみを用いてクリーニングを行う第1のクリーニング動作と、第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51の両方を用いてクリーニングを行う第2のクリーニング動作とを選択的に切替可能に構成されている。
【0043】
図8は、第1のクリーニング動作の際における第1のワイプブレード50とインクジェットヘッド27との位置関係を示す図である。第1のクリーニング動作の場合には、第2のワイプブレード51がインク吐出面28bから退避するように回動機構が制御され、
図6に示したように第2のワイプブレード51は退避位置に配置され、
図8に示すように第1のワイプブレード50のみがインクジェットヘッド27のノズルガード29の表面に接触するように配置される。そして、ブレードユニット42が、インクジェットヘッド27のノズル列28の長さ方向に移動することにより、第1のワイプブレード50によってノズルガード29の表面に付着したインクが払拭される。
【0044】
図9は、第2のクリーニング動作の際における第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51とインクジェットヘッド27との位置関係を示す図である。第2のクリーニング動作の場合には、
図7に示すように第2のワイプブレード51がクリーニング位置に移動し、第1のワイプブレード50と第2のワイプブレード51とが並んで配置されるように回動機構が制御される。そして、
図9に示すように、第2のワイプブレード51がインクジェットヘッド27のインク吐出面28bの接触するように配置され、かつ第1のワイプブレード50がインクジェットヘッド27のノズルガード29の表面に接触するように配置される。そして、ブレードユニット42が、インクジェットヘッド27のノズル列28の長さ方向に移動することにより、第2のワイプブレード51によってインク吐出面28bに付着したインクが払拭され、かつ第1のワイプブレード50によってノズルガード29の表面に付着したインクが払拭される。
【0045】
本実施形態においては、上述したように第1のワイプブレード50に対して第2のワイプブレード51を回動させる回動機構を設け、その回動機構を制御することによって、使用するワイプブレードを切り替えるようにしたので、より狭いスペースでワイプブレードの切り替えを行うことができ、装置の小型化を図ることができる。
【0046】
また、本実施形態においては、第2のクリーニング動作において、第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51の両方を用いてクリーニングを行うようにしたので、ノズルガード29の表面とインク吐出面28bの表面の両方を同時にクリーニングすることができ、メンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態においては、第2のクリーニング動作の場合、第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51による払拭動作の前に、パージが行われる。パージとは、ノズル28aの詰まりを防止するために、ノズル28aから少量の捨てインクを吐出させる動作である。捨てインクを吐出させる方法としては、通常の印刷動作と同様にノズル28a内のインクを加圧するようにしてもよいし、ノズル28a内のインクを吸引する機構を設け、吸引によって捨てインクをノズル28aから吐出させるようにしてもよい。このように第2のクリーニング動作の際にパージを行うことによってインクとワイプ液とが混ざり合うので、上述したようなノズル28aにワイプ液が詰まることによるインク吐出不良を防止することができる。
【0048】
なお、図示省略したが、クリーニング部40は、クリーニング動作の際には、インクジェットヘッド27と第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51との位置関係が、
図8および
図9に示すような位置関係となるように、ブレードユニット42を上下方向に昇降させる昇降機構を備えている。
【0049】
図10は、本実施形態のインクジェット印刷装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。本実施形態のインクジェット印刷装置1は、
図10に示すように、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する制御部60を備えている。
【0050】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えている。制御部60は、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶されたプログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって、給紙部10、用紙搬送機構21、ラインヘッド26および排紙部30を制御し、これにより印刷媒体Pを搬送し、印刷媒体Pに対してラインヘッド26からインクを吐出させて印刷を施す。
【0051】
また、制御部60は、クリーニング制御部61を備えている。クリーニング制御部61は、クリーニング部40を制御することによって、上述した第1のクリーニング動作および第2のクリーニング動作を行うものである。
【0052】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置1のクリーニング動作について、
図11に示すフローチャートおよび
図12を参照しながら説明する。
【0053】
まず、クリーニング制御部61は、クリーニング部40をクリーニング位置まで移動させる(S10)。
【0054】
具体的には、クリーニング動作を開始する前の状態では、
図1に示すように用紙搬送機構21は印刷位置に配置され、クリーニング部40は退避位置に配置されている。この状態から、クリーニング制御部61は、
図12Aに示すように、用紙搬送機構21を下降させて待機位置へ移動させる。次いで、クリーニング制御部61は、
図12Bに示すように、クリーニング部40を左方向に移動させて用紙搬送機構21上の待機位置に移動させる。そして、クリーニング制御部61は、用紙搬送機構21を上昇させて、用紙搬送機構21およびクリーニング部40を
図12Cに示すクリーニング位置に移動させる。
【0055】
次に、クリーニング制御部61は、第1のクリーニング動作および第2のクリーニング動作のいずれかを選択する(S12)。第1のクリーニング動作または第2のクリーニング動作の選択については、ユーザが図示省略した入力部を用いて設定入力するようにしてもよいし、クリーニング制御部61が自動的に選択するようにしてもよい。
【0056】
具体的には、たとえば第1のクリーニング動作は、上述したようにノズルガード29の表面に付着したインクを払拭する動作である。印刷動作を長い時間継続した場合、ノズルガード29の表面には一定量のインクが付着し続けるため、定期的に払拭することが望ましい。したがって、第1のクリーニング動作については、予め一定期間または一定の印刷枚数などを設定しておき、クリーニング制御部61が、その一定期間毎または一定の印刷枚数毎に、定期的に第1のクリーニング動作を行うように自動的に制御するようにしてもよい。
【0057】
一方、第2のクリーニング動作は、インク吐出面28bに付着したインクを払拭する動作である。すなわち、インクの吐出に直接関連したクリーニング動作であるため、たとえばインクの吐出不良が生じた場合に、ユーザによる設定入力に応じて、クリーニング制御部61が第2のクリーニング動作を行うように制御するようにしてもよい。または、クリーニング制御部61が、インクジェット印刷装置1の装置立ち上げ時に、第2のクリーニング動作を行うように自動的に制御するようにしてもよい。
【0058】
そして、第1のクリーニング動作が選択された場合には、クリーニング制御部61は、ブレードユニット42を制御して第2の支持部材53を回動させ、第2のワイプブレード51を
図6に示す退避位置に移動させる(S14)。
【0059】
次いで、クリーニング制御部61は、ワイパユニット41の駆動ローラ46を回転させることによってブレード搬送ベルト43を移動させ、これによりブレードユニット42をワイプ液貯留部47まで移動させる。ブレードユニット42は、ワイプ液貯留部47内のワイプ液に浸されてワイプ液が塗布された後、インクジェットヘッド27の端部の下方のクリーニング初期位置まで移動する(S16)。
【0060】
そして、クリーニング制御部61は、ワイパユニット41の昇降機構を制御することによってブレードユニット42を上方に移動させ、第1のワイプブレード50とインクジェットヘッド27との位置関係が、
図8に示すような位置関係となるように制御する。
【0061】
次に、クリーニング制御部61は、第1のワイプブレード50のみがインクジェットヘッド27のノズルガード29の表面に接触した状態で、駆動ローラ46を回転させることによってブレード搬送ベルト43によりブレードユニット42を移動させ、これにより第1のワイプブレード50によってノズルガード29の表面に付着したインクを払拭する(S18)。そして、クリーニング制御部61は、インクの払拭が完了した後、ブレードユニット42を下方に移動させ、再びクリーニング初期位置まで移動させて第1のクリーニング動作を終了する。
【0062】
一方、第2のクリーニング動作が選択された場合には、クリーニング制御部61は、まず、パージを行う(S20)。具体的には、上述したようにノズル28aの詰まりを防止するために、ノズル28aから少量の捨てインクを吐出させる。
【0063】
次に、クリーニング制御部61は、ブレードユニット42を制御して第2の支持部材53を回動させ、第2のワイプブレード51を
図7に示すクリーニング位置に移動させる(S22)。
【0064】
次いで、クリーニング制御部61は、ワイパユニット41の駆動ローラ46を回転させることによってブレード搬送ベルト43を移動させ、これによりブレードユニット42をワイプ液貯留部47まで移動させる。ブレードユニット42は、ワイプ液貯留部47内のワイプ液に浸されてワイプ液が塗布された後、インクジェットヘッド27の端部の下方のクリーニング初期位置まで移動する(S24)。
【0065】
そして、クリーニング制御部61は、ワイパユニット41の昇降機構を制御することによってブレードユニット42を上方に移動させ、第1のワイプブレード50および第2のワイプブレード51とインクジェットヘッド27との位置関係が、
図9に示すような位置関係となるように制御する。
【0066】
次に、クリーニング制御部61は、第1のワイプブレード50がインクジェットヘッド27のノズルガード29の表面に接触し、かつ第2のワイプブレード51がインクジェットヘッド27のインク吐出面28bの接触した状態で、駆動ローラ46を回転させることによってブレード搬送ベルト43によりブレードユニット42を移動させ、これにより第1のワイプブレード50によってノズルガード29の表面に付着したインクを払拭し、かつ第2のワイプブレード51によってインク吐出面28bに付着したインクを払拭する。(S26)。そして、クリーニング制御部61は、インクの払拭が完了した後、ブレードユニット42を下方に移動させ、再びクリーニング初期位置まで移動させて第2のクリーニング動作を終了する。
【0067】
上述したような第1のクリーニング動作または第2のクリーニング動作が終了した後、クリーニング制御部61は、用紙搬送機構21を下降させた後、クリーニング部40を右方向に移動させて退避位置まで移動させる(S28)。その後、用紙搬送機構21は上昇し、再び印刷位置に移動した後、印刷動作が行われる。
【0068】
上記実施形態のインクジェット印刷装置1によれば、第1のクリーニング動作を選択した場合には、インクを吐出させることなく第1のワイプブレード50を用いてクリーニング動作を行うので、ノズルガード29の開口部分にインクを残すことなく、ノズルガード29の表面を迅速にクリーニングすることができ、メンテナンス時間を短縮することができる。
【0069】
また、第2のクリーニング動作を選択した場合には、第2のワイプブレード51をインク吐出面28bに接触させてクリーニング動作を行うので、インク吐出面28bに固着したインクおよびゴミなどを適切に取り除くことができ、かつインクを吐出させてクリーニング動作を行うので、インクとワイプ液とが混合されるため、ワイプ液がノズル28に押し込まれて詰まるのを防止することができる。
【0070】
すなわち、第1のクリーニング動作と第2のクリーニング動作を選択的に切り替えて制御することによって、インクジェットヘッドのクリーニング方法の最適化とメンテナンス時間の短縮を図ることができる。
【0071】
なお、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、第1のワイプブレード50の形状を矩形としたが、これに限らず、第1のワイプブレード50の形状はノズルガード29の表面を払拭可能な形状であればよく、たとえば
図13および
図14に示すように、矩形のインクジェットヘッド27側の一辺に凹部50aを形成するようにしてもよい。凹部50aのZ方向の幅は、ノズルガード29の開口29aのZ方向の幅と同等であることが好ましい。
【0072】
また、上記実施形態のインクジェット印刷装置1においては、第1のワイプブレード50と第2のワイプブレード51とを一体的に構成することによって、第2のクリーニング動作の際に第1のワイプブレード50と第2のワイプブレード51を同時に使用できるように構成したが、必ずしもこのような構成に限らず、たとえば第1のワイプブレード50と第2のワイプブレード51とを別個の機構として設けるようにしてもよい。
【0073】
そして、第1のクリーニング動作の場合には、第1のワイプブレード50のみをノズル列28の長さ方向に移動させることによってノズルガード29の表面を払拭し、第2のクリーニング動作の場合には、第2のワイプブレード51のみをノズル列28の長さ方向に移動させることによってインク吐出面28bの表面を払拭するようにしてもよい。
【0074】
本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置においては、第1のワイプブレードに対して第2のワイプブレードを回動させる回動機構を有することができ、クリーニング制御部は、第2のクリーニング動作を行う場合には、第1のワイプブレードと第2のワイプブレードとが並んで配置されるように回動機構を制御し、第1のクリーニング動作を行う場合には、第2のワイプブレードがインク吐出面から退避するように回動機構を制御することができる。
【0075】
本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置において、第2のワイプブレードの幅は、第1のワイプブレードの幅よりも狭いことが好ましい。
【0076】
本発明のインクジェットヘッドのクリーニング装置において、クリーニング制御部は、第2のクリーニング動作を行う場合において、第1のワイプブレードおよび第2のワイプブレードの両方を用いるよう制御することが好ましい。
【符号の説明】
【0077】
1 インクジェット印刷装置
10 給紙部
11 給紙台
12 1次給紙ローラ
13 ピックアップローラ
14 給紙ローラ
15 レジストローラ
20 画像形成部
21 用紙搬送機構
22 用紙搬送ベルト
23 駆動ローラ
24,25 従動ローラ
26 ラインヘッド
27 インクジェットヘッド
28 ノズル列
28a ノズル
28b インク吐出面
29 ノズルガード
29a 開口
30 排紙部
31 排紙台
40 クリーニング部
41 ワイパユニット
42 ブレードユニット
43 ブレード搬送ベルト
44,45 従動ローラ
46 駆動ローラ
47 ワイプ液貯留部
50 第1のワイプブレード
50a 凹部
51 第2のワイプブレード
52 第1の支持部材
53 第2の支持部材
53a 端部
53b 回動軸
60 制御部
61 クリーニング制御部
P 印刷媒体