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特許7008488ハイブリッド車両の振動制御装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の振動制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/17 20160101AFI20220118BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20220118BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20220118BHJP
   B60K 6/54 20071001ALI20220118BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220118BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220118BHJP
【FI】
B60W20/17
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/54
B60L15/20 J
B60L50/16
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2017232260
(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公開番号】P2018095246
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】10-2016-0169476
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 成 在
(72)【発明者】
【氏名】魚 禎 秀
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-195951(JP,A)
【文献】特開2014-217215(JP,A)
【文献】米国特許第04490841(US,A)
【文献】特開2003-108151(JP,A)
【文献】特開2008-125225(JP,A)
【文献】特開2017-105442(JP,A)
【文献】特開2008-167612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 10/30
B60W 20/00 - 20/50
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンとモータとから発生された動力が、エンジンクラッチを介して車軸に選択的に伝達されるように構成されたハイブリッド車両の振動制御方法であって、
前記エンジンの位置に基づいてエンジン速度(engine speed)を計算する段階と、
前記エンジンの位置に基づいて基準角(reference angle)を設定する段階と、
前記基準角に基づいて離散ウォルシュフーリエ変換(WDFT、Walsh-based Discrete Fourier Transform)を行うためのウィンドウを設定する段階と、
前記エンジン速度、前記基準角、及び前記ウィンドウに基づいて前記離散ウォルシュフーリエ変換を行って振幅スペクトル(amplitude spectrum)及び位相スペクトル(phase spectrum)を計算する段階と、
前記振幅スペクトルに基づいて制御対象周波数(control target frequency)を選定する段階と、
前記制御対象周波数の振幅及び位相を補償する段階と、
前記制御対象周波数の補償された振幅及び位相に基づいて基準信号を生成する段階と、
前記エンジン速度及びエンジン負荷(engine load)に基づいて前記基準信号の振幅比を決定する段階と、
前記基準信号に前記振幅比及びエンジントルク(engine torque)を反映して指令トルク(command torue)を計算する段階と、
前記指令トルクの逆位相トルクを計算する段階と、
前記エンジン負荷に基づいて前記逆位相トルクを補正する段階と、
前記補正された逆位相トルクを発生させるように前記モータの作動を制御する段階と、
を含むことを特徴とするハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項2】
前記逆位相トルクを補正する段階は、
前記エンジン負荷が設定された負荷より大きければ、前記逆位相トルクに設定されたオフセットを適用して前記逆位相トルクを減少させる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項3】
前記制御対象周波数を選定する段階は、
前記エンジン速度及び前記エンジン負荷に基づいて基準スペクトル(reference spectrum)を設定する段階と、
前記基準スペクトルと前記振幅スペクトルとを比較して前記制御対象周波数を選定する段階と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項4】
前記基準スペクトルは、周波数別基準値の集合であり、
特定の周波数に対応する基準値より前記特定の周波数に対応する振幅が大きい場合、前記特定の周波数が前記制御対象周波数に選定されることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項5】
前記制御対象周波数の振幅は、前記制御対象周波数にスケールファクター(scale factor)を適用して補償されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項6】
前記基準信号を生成する段階は、
前記制御対象周波数の前記補償された振幅及び位相に基づいて逆離散ウォルシュフーリエ変換(IWDFT、Inverse Walsh-based discrete Fourier Transform)を行う段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項7】
前記制御対象周波数の位相に補償位相を適用して前記制御対象周波数の位相を補償する段階を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項8】
前記ウィンドウは、前記エンジンの気筒数及び行程数に応じて決定されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項9】
前記エンジン負荷は、前記エンジンに流入する空気量に基づいて計算されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項10】
前記エンジントルクは、加速ペダルの位置値及び前記ハイブリッド車両の速度に基づいて計算されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項11】
前記エンジンは、2気筒4行程エンジンであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項12】
エンジンとモータとから発生された動力が、エンジンクラッチを介して車軸に選択的に伝達されるように構成されたハイブリッド車両の振動制御方法であって、
前記モータの位置に基づいてモータ速度を計算する段階と、
前記モータの位置に基づいて基準角を設定する段階と、
前記基準角に基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行うためのウィンドウを設定する段階と、
前記モータ速度、前記基準角、及び前記ウィンドウに基づいて前記離散ウォルシュフーリエ変換を行って振幅スペクトル及び位相スペクトルを計算する段階と、
前記振幅スペクトルに基づいて制御対象周波数を選定する段階と、
前記制御対象周波数の振幅にスケールファクターを適用し、前記制御対象周波数の位相に補償位相を適用して前記制御対象周波数の振幅及び位相を補償する段階と、
前記制御対象周波数の補償された振幅及び位相に基づいて逆離散ウォルシュフーリエ変換を行って基準信号を生成する段階と、
エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて前記基準信号の振幅比を決定する段階と、
前記基準信号に前記振幅比及びエンジントルクを反映して指令トルクを計算する段階と、
前記指令トルクの逆位相トルクを計算する段階と、
前記エンジン負荷に基づいて前記逆位相トルクを補正する段階と、
前記補正された逆位相トルクを発生させるように前記モータの作動を制御する段階と、
を含むことを特徴とするハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項13】
前記逆位相トルクを補正する段階は、
前記エンジン負荷が設定された負荷より大きければ、前記逆位相トルクに設定されたオフセット(offset)を適用して前記逆位相トルクを減少させる段階を含むことを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項14】
前記制御対象周波数を選定する段階は、
前記エンジン速度及び前記エンジン負荷に基づいて基準スペクトルを設定する段階と、
前記基準スペクトルと前記振幅スペクトルとを比較して前記制御対象周波数を選定する段階とを含むことを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項15】
前記基準スペクトルは、周波数別基準値の集合であり、
特定の周波数に対応する基準値より前記特定の周波数に対応する振幅が大きい場合、前記特定の周波数が前記制御対象周波数に選定されることを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項16】
前記ウィンドウは、前記エンジンの気筒数及び行程数に応じて決定されることを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項17】
前記エンジン負荷は、前記エンジンに流入する空気量に基づいて計算されることを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項18】
前記エンジントルクは、加速ペダルの位置値及び前記ハイブリッド車両の速度に基づいて計算されることを特徴とする請求項12に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項19】
前記エンジンは、2気筒4行程エンジンであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の振動制御方法。
【請求項20】
エンジンとモータとから発生された動力が、エンジンクラッチを介して車軸に選択的に伝達されるように構成されたハイブリッド車両の振動制御装置であって、
前記エンジンの位置を検出するエンジン位置検出部と、
前記エンジンに流入する空気量を検出する空気量検出部と、
加速ペダルの位置値を検出する加速ペダル位置検出部と、
前記ハイブリッド車両の速度を検出する車速検出部と、
前記エンジンの位置、前記空気量、前記加速ペダルの位置値、及び前記ハイブリッド車両の速度に基づいてモータの作動を制御するように設定されたプログラムによって動作する制御器と、
を含むが、
前記エンジンの位置に基づいてエンジン速度を計算し、前記エンジンの位置に基づいて基準角を設定し、前記基準角に基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行うためのウィンドウを設定し、前記エンジン速度、前記基準角、及び前記ウィンドウに基づいて前記離散ウォルシュフーリエ変換を行って振幅スペクトル及び位相スペクトルを計算し、前記振幅スペクトルに基づいて制御対象周波数を選定し、前記制御対象周波数の振幅にスケールファクターを適用し、前記制御対象周波数の位相に補償位相を適用し前記制御対象周波数の振幅及び位相を補償し、前記制御対象周波数の補償された振幅及び位相に基づいて逆離散ウォルシュフーリエ変換を行って基準信号を生成し、前記エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて前記基準信号の振幅比を決定し、前記基準信号に前記振幅比及びエンジントルクを反映して指令トルクを計算し、前記指令トルクの逆位相トルクを計算し、前記エンジン負荷に基づいて前記逆位相トルクを補正し、前記補正された逆位相トルクを発生させるように前記モータの作動を制御することを特徴とするハイブリッド車両の振動制御装置。
【請求項21】
前記モータの位置を検出するモータ位置検出部を更に含み、
前記制御器は、前記モータの位置に基づいてモータ速度を計算し、前記モータの位置に基づいて基準角を設定することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の振動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の振動制御装置及び方法に係り、より詳しくは、制御対象周波数を適切に選定することによって制御装置の演算負荷を節減し、効率的な振動制御を可能にしたハイブリッド車両の振動制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両(hybrid electric vehicle)は、内燃機関(internal combustion engine)とバッテリ電源とを共に使用し、内燃機関の動力とモータの動力とを効率的に組み合わせて使用する。周知のように、ハイブリッド車両は、エンジンの機械的エネルギーとバッテリの電気エネルギーとを共に用い、エンジンとモータとの最適作動領域を用いることはもちろん、制動時にはエネルギーを回収するので、燃費向上及び効率的なエネルギーの利用が可能である。
【0003】
具体的には、ハイブリッド車両は、エンジンクラッチを接合したり解除したりして、モータのトルクのみを用いるEVモード(electric vehicle mode)、エンジンのトルクを主トルクとしつつモータのトルクを補助トルクとして用いるHEVモード(hybrid electric vehicle mode)、及びハイブリッド車両の制動時あるいは慣性走行時に、制動及び慣性エネルギーをモータによる発電により回収してバッテリを充電する回生制動モード(regenerative braking mode)などの走行モードによる運行を提供する。
【0004】
一方、ハイブリッド車両の動力系から発生する振動には様々な要因があり、これらは、大部分の振動周波数範囲から周波数分析法を利用して振動成分を抽出して解析される。従来の周波数分析は、帯域通過フィルタを用いたアナログ方法が使用されて制御対象周波数を選定することによって行われており、周波数帯域における各ポイントの振幅に基づいて振動成分を抽出した。
【0005】
しかし、従来の分析法は、エンジン固有の振動成分とノイズ成分の区分が明確でなく、過度の振動抑制によって、制御効率及びエネルギー管理に負の影響を及ぼすことがあった。また、特定の周波数成分に対しての基準信号のみを生成し、該基準信号に基づいて特定の周波数成分のみに対応する振動信号と、同期化された同期信号と、に基づく振動のみが制御でき、附加的に誘発され得る他の周波数成分に対する振動の制御ができないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-167612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであって、本発明が解決しようとする課題は、制御対象周波数を選定することによって、制御器の演算負荷を軽減し、効率的な振動制御が可能なハイブリッド車両の振動制御装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例によるハイブリッド車両(hybrid electric vehicle)の振動制御方法は、エンジンの位置に基づいてエンジン速度(engine speed)を計算する段階と、エンジンの位置に基づいて基準角(reference angle)を設定する段階と、基準角に基づいて離散ウォルシュフーリエ変換(WDFT、Walsh-based Discrete Fourier Transform)を行うためのウィンドウ(window)を設定する段階と、エンジン速度、基準角、及びウィンドウに基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行って振幅スペクトル(amplitude spectrum)及び位相スペクトル(phase spectrum)を計算する段階と、振幅スペクトルに基づいて制御対象周波数(control target frequency)を選定する段階と、制御対象周波数の振幅を補償する段階と、制御対象周波数の振幅及び位相に基づいて基準信号を生成する段階と、エンジン速度及びエンジン負荷(engine load)に基づいて基準信号の振幅比を決定する段階と、基準信号に振幅比及びエンジントルク(engine torque)を反映して指令トルク(command torue)を計算する段階と、指令トルクの逆位相トルクを計算する段階と、エンジン負荷に基づいて逆位相トルクを補正する段階と、補正された逆位相トルクを発生させるようにモータの作動を制御する段階と、を含むことを特徴とする。
【0009】
前記逆位相トルクを補正する段階は、エンジン負荷が設定された負荷より大きければ、逆位相トルクに設定されたオフセット(offset)を適用して逆位相トルクを減少させる段階を含むことができる。
【0010】
前記制御対象周波数を選定する段階は、エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて基準スペクトル(reference spectrum)を設定する段階と、基準スペクトルと振幅スペクトルとを比較して制御対象周波数を選定する段階と、を含むことが好ましい。
【0011】
前記基準スペクトルは、周波数別基準値の集合であり、特定の周波数に対応する基準値より特定の周波数に対応する振幅が大きい場合、特定の周波数が制御対象周波数に選定されることを特徴とする。
前記制御対象周波数の振幅は、制御対象周波数にスケールファクター(scale factor)を適用して補償されることができる。
【0012】
前記基準信号を生成する段階は、
制御対象周波数の振幅及び位相に基づいて逆離散ウォルシュフーリエ変換(IWDFT、Inverse Walsh-based discrete Fourier Transform)を行う段階を更に含むことを特徴とする。
【0013】
前記制御対象周波数の位相に補償位相を適用して制御対象周波数の位相を補償する段階を更に含むことができる。
前記ウィンドウは、エンジンの気筒数及び行程数に応じて決定されることが好ましい。
前記エンジン負荷は、エンジンに流入する空気量に基づいて計算されることができる。
【0014】
前記エンジントルクは、加速ペダルの位置値及びハイブリッド車両の速度に基づいて計算されることができる。
前記エンジンは、2気筒4行程エンジンであることが好ましい。
【0015】
本発明の他の実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法は、モータの位置に基づいてモータ速度を計算する段階と、モータの位置に基づいて基準角を設定する段階と、基準角に基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行うためのウィンドウを設定する段階と、モータ速度、基準角、及びウィンドウに基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行って振幅スペクトル及び位相スペクトルを計算する段階と、振幅スペクトルに基づいて制御対象周波数を選定する段階と、制御対象周波数にスケールファクターを適用して制御対象周波数の振幅を補償する段階と、制御対象周波数の振幅及び位相に基づいて逆離散ウォルシュフーリエ変換を行って基準信号を生成する段階と、エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて基準信号の振幅比を決定する段階と、基準信号に振幅比及びエンジントルクを反映して指令トルクを計算する段階と、指令トルクの逆位相トルクを計算する段階と、エンジン負荷に基づいて逆位相トルクを補正する段階と、補正された逆位相トルクを発生させるようにモータの作動を制御する段階と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
前記逆位相トルクを補正する段階は、エンジン負荷が設定された負荷より大きければ、逆位相トルクに設定されたオフセットを適用して逆位相トルクを減少させる段階を含むことができる。
【0017】
前記制御対象周波数を選定する段階は、エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて基準スペクトルを設定する段階と、基準スペクトルと振幅スペクトルとを比較して制御対象周波数を選定する段階とを含むことが好ましい。
【0018】
前記基準スペクトルは、周波数別基準値の集合であり、特定の周波数に対応する基準値より特定の周波数に対応する振幅が大きい場合、特定の周波数が制御対象周波数に選定されることを特徴とする。
【0019】
前記制御対象周波数の位相に補償位相を適用して制御対象周波数の位相を補償する段階を更に含むことができる。
前記ウィンドウは、エンジンの気筒数及び行程数に応じて決定されることが好ましい。
前記エンジン負荷は、エンジンに流入する空気量に基づいて計算されることができる。
【0020】
前記エンジントルクは、加速ペダルの位置値及びハイブリッド車両の速度に基づいて計算されることを特徴とする。
前記エンジンは、2気筒4行程エンジンであることが好ましい。
【0021】
本発明の一実施例によるハイブリッド車両の振動制御装置は、エンジンの位置を検出するエンジン位置検出部、エンジンに流入する空気量を検出する空気量検出部、加速ペダルの位置値を検出する加速ペダル位置検出部、ハイブリッド車両の速度を検出する車速検出部、並びにエンジンの位置、空気量、加速ペダルの位置値、及びハイブリッド車両の速度に基づいてモータの作動を制御するように設定されたプログラムによって動作する制御器を含み、エンジンの位置に基づいてエンジン速度を計算し、エンジンの位置に基づいて基準角を設定し、基準角に基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行うためのウィンドウを設定し、エンジン速度、基準角、及びウィンドウに基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行って振幅スペクトル及び位相スペクトルを計算し、振幅スペクトルに基づいて制御対象周波数を選定し、制御対象周波数にスケールファクターを適用して制御対象周波数の振幅を補償し、制御対象周波数の振幅及び位相に基づいて逆離散ウォルシュフーリエ変換を行って基準信号を生成し、エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて基準信号の振幅比を決定し、基準信号に振幅比及びエンジントルクを反映して指令トルクを計算し、指令トルクの逆位相トルクを計算し、エンジン負荷に基づいて逆位相トルクを補正し、補正された逆位相トルクを発生させるようにモータの作動を制御することを特徴とする。
【0022】
前記モータの位置を検出するモータ位置検出部を更に含み、制御器は、モータの位置に基づいてモータ速度を計算し、モータの位置に基づいて基準角を設定することができる。
【発明の効果】
【0023】
上述のように、本発明の実施例によれば、離散ウォルシュフーリエ変換を用いて制御器の演算負荷を節減することができる。また、制御対象周波数を選定することによって、効率的な振動制御が可能である。さらに、エンジンの高負荷時、逆位相トルクに設定されたオフセットを適用して逆位相トルクを減少させることによって、ハイブリッド車両のエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例によるハイブリッド車両を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施例によるハイブリッド車両の振動制御装置のブロック図である。
図3】本発明の一実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法のフローチャートである。
図4】本発明の一実施例による基準角及びウィンドウを設定する方法を説明するためのグラフである。
図5】本発明の一実施例によるウォルシュ関数を示すグラフである。
図6】離散フーリエ変換を行った場合の振幅スペクトル及び位相スペクトルを示すグラフである。
図7】本発明の一実施例による離散ウォルシュフーリエ変換を行った場合の振幅スペクトル及び位相スペクトルを示すグラフである。
図8】本発明の一実施例による離散ウォルシュフーリエ変換と離散フーリエ変換の実行結果を比較したグラフである。
図9】本発明の一実施例による基準スペクトルを示すグラフである。
図10】本発明の一実施例による逆位相トルクを示すグラフである。
図11】本発明の一実施例による制御対象周波数の振幅が低減された状態を示すグラフである。
図12】本発明の他の実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化されてもよい。
本発明を明確に説明するために不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素には同一の参照符号を付す。
また、図面に示された各構成は、説明の便宜のために任意に示したものであって、本発明は、必ずしも図示したところに限定されない。
【0026】
図1は、本発明の一実施例によるハイブリッド車両を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施例によるハイブリッド車両は、エンジン10と、モータ20と、エンジンクラッチ30と、変速機40と、バッテリ50と、HSG(hybrid starter and generator)60と、差動ギヤ装置70と、ホイール80と、制御器100と、を含む。
【0027】
エンジン10は、燃料を燃焼させて動力を生成するものであって、たとえばガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなど多様なエンジンを使用できる。エンジン10は、2気筒4行程エンジンであってもよい。2気筒エンジンは、エンジン10の大きさを減少させて燃費を向上させることが可能であるが、振動が大きくなるという問題点があるので、後述する本発明の振動制御が行われる。
【0028】
モータ20は、変速機40とバッテリ50との間に配置され、バッテリ50の電気を利用して動力を生成する。
エンジンクラッチ30は、エンジン10とモータ20との間に配置され、エンジン10とモータ20とを選択的に連結する。
【0029】
ハイブリッド車両は、エンジンクラッチ30を接合したり解除したりして、モータ20のトルクのみを用いるEVモード、エンジン10のトルクを主トルクとしつつモータ20のトルクを補助トルクとして用いるHEVモード、ハイブリッド車両の制動あるいは慣性による走行時に制動及び慣性エネルギーをモータ20の発電により回収してバッテリ50を充電する回生制動モード、などの走行モードの運行を提供する。
【0030】
ハイブリッド車両の動力伝達は、エンジン10とモータ20とから発生された動力が変速機40の入力軸に選択的に伝達され、変速機40の出力軸から出力された動力が差動ギヤ装置70を経由して車軸に伝達される。車軸がホイール80を回転させることによって、エンジン10及び/又はモータ20から発生された動力によってハイブリッド車両が走行する。
バッテリ50は、EVモード及びHEVモードでモータ20に電気を供給し、回生制動モードでモータ20を介して回収された電気により充電される。
【0031】
HSG60は、エンジン10を起動したり、エンジン10の出力によって発電したりすることができる。
制御器100は、エンジン10、モータ20、エンジンクラッチ30、変速機40、バッテリ50、及びHSG60の作動を制御する。制御器100は、設定されたプログラムによって動作する1つ以上のプロセッサによって実現可能であり、前記設定されたプログラムは、後述する本発明の実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法に含まれている各段階を行うための一連の命令を含むものとしてもよい。
【0032】
ここで説明したハイブリッド車両は、本発明の技術的思想が適用可能なハイブリッド車両の一例を説明したものであって、本発明の技術的思想は、図1に示されたハイブリッド車両だけに限られるものでなく、多様なハイブリッド車両に適用することが可能である。
【0033】
図2は、本発明の一実施例によるハイブリッド車両の振動制御装置を示すブロック図である。
図2に示すように、本発明の実施例によるハイブリッド車両の振動制御装置は、データ検出部90と、制御器100と、モータ20と、を含むことができる。
データ検出部90は、エンジン位置検出部91と、モータ位置検出部92と、空気量検出部93と、加速ペダル位置検出部94と、車速検出部95と、を含むことができる。データ検出部90は、ハイブリッド車両を制御するための検出部(例えば、ブレーキペダル位置検出部など)を更に含んでもよい。
【0034】
エンジン位置検出部91は、エンジン10の位置を検出し、これに対する信号を制御器100に伝達する。エンジン位置検出部91は、クランクシャフトの回転角度を検出するクランクシャフト位置センサ(crankshaft position sensor)であってもよい。制御器100は、エンジン10の位置に基づいてエンジン速度を計算することができる。
【0035】
モータ位置検出部92は、モータ20の回転位置を検出し、これに対する信号を制御器100に伝達する。モータ位置検出部92は、モータ20の回転子の回転角度を検出するレゾルバ(resolver)であってもよい。制御器100は、モータ20の回転位置に基づいてモータ速度(motor speed)を計算することができる。
【0036】
空気量検出部93は、エンジン10に流入する空気量を検出し、これに対する信号を制御器100に伝達する。制御器100は、空気量に基づいてエンジン負荷を計算することができる。
【0037】
加速ペダル位置検出部94は、加速ペダルの位置値(加速ペダルが押圧された程度)を検出し、これに対する信号を制御器100に伝達する。加速ペダルが完全に押圧された場合には、加速ペダルの位置値が100%であり、加速ペダルが押圧されていない場合には、加速ペダル位置値が0%である。
【0038】
車速検出部95は、ハイブリッド車両の速度を検出し、これに対する信号を制御器100に伝達する。制御器100は、加速ペダルの位置値及びハイブリッド車両の速度に基づいてエンジントルクを計算することができる。
【0039】
制御器100は、データ検出部90によって検出されたデータに基づいてモータ20の作動を制御することによって、エンジン10の振動を制御することができる。
以下、図3図11を参照して、本発明の一実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法を詳細に説明する。
【0040】
図3は、本発明の一実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法のフローチャートであり、図4は、本発明の一実施例による基準角及びウィンドウを設定する方法を説明するためのグラフであり、図5は、本発明の一実施例によるウォルシュ関数を示すグラフであり、図6は、離散フーリエ変換を行った場合の振幅スペクトル及び位相スペクトルを示すグラフであり、図7は、本発明の一実施例による離散ウォルシュフーリエ変換を行った場合の振幅スペクトル及び位相スペクトルを示すグラフであり、図8は、本発明の一実施例による離散ウォルシュフーリエ変換と離散フーリエ変換の実行結果を比較したグラフであり、図9は、本発明の一実施例による基準スペクトルを示すグラフであり、図10は、本発明の一実施例による逆位相トルクを示すグラフであり、図11は、本発明の一実施例による制御対象周波数の振幅が低減された状態を示すグラフである。
【0041】
図3に示すように、制御器100は、エンジン10の位置に基づいてエンジン速度を計算する(S101)。制御器100は、エンジン位置検出部91によって検出されたエンジン10の位置を受信し、エンジン10の位置を微分することによって、エンジン速度を計算することができる。図4に示すように、エンジン10が2気筒4行程エンジンの場合は、エンジン10が2回転する間に両方のシリンダで各々1回ずつの爆発が発生する。
【0042】
制御器100は、エンジン10の位置に基づいて基準角を設定する(S102)。基準角は、後述する離散ウォルシュフーリエ変換を行うための開始時点を意味する。例えば、図4に示すように、制御器100は、第1シリンダ10aの上死点(TDC)と下死点(BDC)との間の角度を基準角に設定することができる。これとは異なり、第2シリンダ10bの上死点(TDC)と下死点(BDC)との間の角度を基準角に設定してもよい。
【0043】
制御器100は、基準角に基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行うためのウィンドウを設定する(S103)。ウィンドウは、エンジン10の諸元(気筒数及び行程数)に応じて決定される。エンジン10が2気筒4行程エンジンの場合、エンジン10が2回転する間に両方のシリンダで各々1回ずつ爆発が発生するので、ウィンドウは720度に設定される。周波数の側面からみると、ウィンドウ内で2回のピーク(peak)があるので、エンジン10が2回転する間の2回の爆発は周波数2Hzと示される。
【0044】
つまり、周波数2Hzに対応する1次振動成分(当業界では「C1」という)がエンジン10の爆発によって発生する振動の主要成分となり得る。1次振動成分のハーモニック成分(C0.5、C1.5、C2、C2.5、C3、及びC3.5)も振動の原因となり得る。本明細書では、ハーモニック成分(C0.5、C1.5、C2、C2.5、C3、及びC3.5)が考慮されたものを例示したが、これに限定されない。即ち、エンジン10の振動を制御するために他のハーモニック成分(C4、C4.5、及びC5など)が更に考慮されてもよい。
【0045】
制御器100は、エンジン速度、基準角、及びウィンドウに基づいて離散ウォルシュフーリエ変換を行って振幅スペクトル(M(C0.5)~M(C3.5))及び位相スペクトル(θ(C0.5)~θ(C3.5))を計算する(S104)。
【0046】
以下、離散ウォルシュフーリエ変換を離散フーリエ変換(DFT、Discrete Fourier Transform)と比較して説明する。
周波数スペクトルの計算時、離散フーリエ変換が使用できる。
【0047】
N個の離散信号x[n](n=1,2,…,及びN)が与えられる時、x[n]の離散フーリエ変換は、数1のように定義される。
【数1】
【0048】
また、上記数式1は、数2のように表現される。
【数2】
【0049】
上記離散フーリエ変換を用いて、分析対象信号x[n]に対して特定の周波数(k)に対する周波数スペクトル分析を行うと、特定の周波数(k)の大きさは、数3のように計算される。
【数3】
【0050】
また、特定の周波数(k)の位相は、数4のように計算される。
【数4】
【0051】
周波数スペクトルの分析時に離散フーリエ変換を用いる場合、三角関数を制御器100で演算処理すると制御器100の負荷が大きくなり、特に連続的な信号をリアルタイムで高速処理するためには多くの処理容量が消費される。
したがって、本発明の一実施例によるハイブリッド車両の振動制御装置は、制御器100の演算負荷を軽減できるように、離散ウォルシュフーリエ変換を用いて周波数スペクトルを分析することが好ましい。
【0052】
図5に示すように、ウォルシュ関数(Walsh function)は、単位時間あたりゼロ交差(zero crossing)数の増加の順に配列される。ウォルシュ関数は、m=2n(n=1,2,3,・・・)個の関数で1つの集合をなす。
【0053】
図5には、m=8の場合のウォルシュ関数を示している。ウォルシュ関数は、フーリエ関数と同様、正弦対称と余弦対称との特性を有する2つの関数で構成されており、正弦対称のウォルシュ関数の集合をSAL関数といい、余弦対称のウォルシュ関数の集合をCAL関数という。つまり、数2の正弦波成分をSAL関数に代替し、余弦波成分をCAL関数に代替してもよい。x[n]の離散ウォルシュフーリエ変換は、数5のように定義される。
【0054】
【数5】
ウォルシュ関数は1または-1の値のみを有するので、単純な加算演算及び減算演算で周波数スペクトル分析を行うことができる。
【0055】
例えば、周波数1Hzの成分に対する離散ウォルシュフーリエ変換は、数6のように表現される。
【数6】
【0056】
つまり、離散ウォルシュフーリエ変換を用いて、分析対象信号x[n]に対して特定の周波数(k)に対する周波数スペクトル分析を行うと、特定の周波数(k)の大きさは、数7のように計算される。
【数7】
【0057】
また、特定の周波数(k)の位相は、数8のように計算される。
【数8】
【0058】
図6図8に示すように、離散フーリエ変換を行って計算された振幅スペクトル及び位相スペクトルと、離散ウォルシュフーリエ変換を行って計算された振幅スペクトル及び位相スペクトルと、が互いにほぼ類似していることを確認することができる。
【0059】
したがって、本発明の一実施例による振動制御方法は、離散フーリエ変換の代わりに離散ウォルシュフーリエ変換を行って振幅スペクトル及び位相スペクトルを計算する。離散フーリエ変換を行って振幅スペクトル及び位相スペクトルを計算する場合には、制御器100の演算負荷が大きくなるが、離散ウォルシュフーリエ変換で行う場合は、振幅スペクトル及び位相スペクトルを迅速に計算することができる。
【0060】
制御器100は、エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて基準スペクトル(Ref(C0.5)~Ref(C3.5))を設定する(S105)。制御器100は、エンジン位置検出部91の信号に基づいてエンジン速度を計算し、空気量検出部93の信号に基づいてエンジン負荷を計算することができる。
【0061】
基準スペクトルは、特定の周波数を制御対象周波数に選定するか否かを判断するための周波数別基準値(Ref(C0.5)~Ref(C3.5))の集合である。例えば、制御器100は、エンジン速度及びエンジン負荷に応じた基準スペクトルが設定されているマップテーブルを用いて基準スペクトルを設定することができる。図9に示すように、1次振動成分に対応する基準値(Ref(C1))と、2次振動成分に対応する基準値(Ref(C2))とが互いに異なって設定される。
【0062】
制御器100は、基準スペクトルと振幅スペクトルとを比較して制御対象周波数を選定する(S106)。特定の周波数に対応する基準値(Ref)より特定の周波数に対応する振幅(M)が大きい場合は、特定の周波数が制御対象周波数に選定される。図9に示すように、C1に対応する基準値(Ref(C1))よりC1に対応する振幅(M(C1))が大きい場合、C1が制御対象周波数に選定される。
【0063】
C2に対応する基準値(Ref(C2))よりC2に対応する振幅(M(C2))が小さい場合、C2は制御対象周波数に選定されない。C3に対応する基準値(Ref(C3))よりC3に対応する振幅(M(C3))が大きい場合、C3は制御対象周波数に選定される。
【0064】
制御器100は、制御対象周波数の振幅及び位相を補償することができる(S107)。上述のように、離散ウォルシュフーリエ変換と離散フーリエ変換の実行結果が互いに類似しているものの同一ではないので、制御器100は、制御対象周波数の振幅にスケールファクター(F(C0.5)~F(C3.5))を適用して制御対象周波数の振幅を補償することができる。
【0065】
また、制御器100は、制御対象周波数の位相に補償位相(P(C0.5)~P(C3.5))を適用して制御対象周波数の位相を補償することができる。スケールファクター(F(C0.5)~F(C3.5))及び補償位相(P(C0.5)~P(C3.5))は、離散ウォルシュフーリエ変換と離散フーリエ変換の実行結果を考慮して、当業者が望ましいと判断される値に予め設定することができる。
【0066】
S106段階で2Hz及び6Hzが制御対象周波数に選定されたので、2Hzの補償された振幅は(F(C1)×M(C1))となり、補償された位相は(θ(C1)+P(C1))となる。また、6Hzの補償された振幅は(F(C3)×M(C3))となり、補償された位相は(θ(C3)+P(C3))となる。
【0067】
制御器100は、制御対象周波数の振幅及び位相に基づいて逆離散ウォルシュフーリエ変換を行って基準信号(S)を生成する(S108)。逆離散ウォルシュフーリエ変換は当業者に自明であるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
制御器100は、エンジン速度及びエンジン負荷に基づいて基準信号の振幅比(A)を決定する(S109)。例えば、制御器100は、エンジン速度及びエンジン負荷に応じた振幅比が設定されているマップテーブルを用いて振幅比を決定することができる。マップテーブルには、エンジン10の振動を低減するための振幅比が予め設定されている。
【0069】
制御器100は、基準信号(S)に振幅比(A)及びエンジントルク(TEng)を反映させて指令トルク(TMot=A×S×TEng)を計算する(S110)。
制御器100は、指令トルクの逆位相トルク(-TMot)を計算する(S111)。
制御器100は、逆位相トルク(-TMot)を発生させるようにモータ20の作動を制御してエンジン10の振動を制御することができる。
【0070】
一方、制御器100は、エンジン負荷に基づいて逆位相トルク(-TMot)を補正することができる(S112)。具体的には、図10に示すように、制御器100は、エンジン負荷が設定された負荷より大きければ、逆位相トルクに設定されたオフセットを適用して逆位相トルクを減少させることができる。
【0071】
つまり、エンジンの高負荷時には、低負荷時と比較して、エンジン10の振動が車両に及ぼす影響が小さくなる傾向があるので、逆位相トルクを減少させ、逆位相トルクの減少に応じて残るエネルギーをバッテリ50の充電に使用してハイブリッド車両のエネルギー効率を向上させることができる。設定されたオフセットは、エンジン負荷に基づいて望ましいと判断される値に設定することができる。これにより、モータ20の作動を制御して補正した逆位相トルクを発生するようにエンジン10の振動を制御し、ハイブリッド車両のエネルギー効率を向上させることができる。
本発明の一実施例によれば、図11に示すように、制御対象周波数(例えば、C1及びC3)の振幅が低減されたことを確認することができる。
【0072】
以下、図12を参照して、本発明の他の実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法を説明する。
図12は、本発明の他の実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法のフローチャートである。
図12に示すように、本発明の他の実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法の場合には、エンジン10の位置の代わりにモータ20の位置を用いることを除けば、本発明の一実施例によるハイブリッド車両の振動制御方法と類似している。
【0073】
図12に示すように、制御器100は、モータ20の位置に基づいてモータ速度を計算する(S201)。制御器100は、モータ位置検出部92によって検出されたモータ20の位置を受信し、モータ20の位置を微分することによって、モータ速度を計算することができる。
【0074】
制御器100は、モータ20の位置に基づいて基準角を設定する(S202)。制御器100は、モータ20の極数に応じてモータ位置検出部92の信号を分割することができる。例えば、モータ20が16極モータの場合、モータ位置検出部92の信号を8分割して、特定の時点を基準角に設定することができる。
【0075】
エンジン10とモータ20とがエンジンクラッチ30によって連結された状態で、エンジン10の回転に伴ってモータ20も回転するので、S203~S212段階は、S103~S112段階と同一であるので、それ以上の説明は省略する。
【0076】
上述したように、本発明の実施例によれば、離散ウォルシュフーリエ変換を用いて制御器100の演算負荷を節減することができる。また、制御対象周波数を選定することによって、効率的な振動制御が可能である。更に、エンジンの高負荷時に、逆位相トルクに設定されたオフセットを適用して逆位相トルクを減少させることによって、ハイブリッド車両のエネルギー効率を向上させることができる。
【0077】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0078】
10 エンジン
20 モータ
30 エンジンクラッチ
40 変速機
50 バッテリ
60 HSG
70 差動ギヤ装置
80 ホイール
90 データ検出部
100 制御器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12