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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
H01L21/304 651B
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648G
H01L21/304 651L
H01L21/304 651M
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017233600
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019102698
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博史
(72)【発明者】
【氏名】安田 周一
(72)【発明者】
【氏名】金松 泰範
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036012(JP,A)
【文献】特開2016-162847(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056746(WO,A1)
【文献】特開2014-099583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持工程と、
溶質と揮発性を有する溶媒とを含む第1処理液を、前記基板の上面に供給する第1処理液供給工程と、
前記基板を加熱することにより、前記基板の上面に供給された前記第1処理液から、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることによって、前記第1処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面にパーティクル保持層を形成する保持層形成工程と、
前記パーティクル保持層を剥離する剥離液を前記基板の上面に供給することによって、前記パーティクル保持層を前記基板の上面から剥離して除去する保持層除去工程と、
前記パーティクル保持層を前記基板上から除去した後、前記基板の中心部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させながら第2処理液を前記基板の上面に供給することによって、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去工程と、
前記残渣除去工程の後、前記基板の上面への前記第2処理液の供給を継続しながら前記基板の回転を減速させることによって、前記基板の上面を覆う前記第2処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記基板を加熱して前記基板の上面に接する前記第2処理液を蒸発させることによって前記基板の上面と前記液膜との間に、前記液膜を保持する気相層を形成する気相層形成工程と、
前記気相層上で前記液膜を移動させることによって、前記液膜を構成する前記第2処理液を前記基板の上面から排除する液膜排除工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記基板の下面に対向するヒータユニットを用いて前記基板を加熱する加熱工程をさらに含み、
前記加熱工程が、前記保持層形成工程において前記溶媒の少なくとも一部を揮発させるために、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する第1加熱工程と、前記気相層形成工程において前記気相層を形成するために、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する第2加熱工程とを含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記加熱工程において前記ヒータユニットの温度が一定であり、
前記加熱工程の実行中に、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する距離変更工程をさらに含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記距離変更工程が、前記第1加熱工程において前記基板の下面と前記ヒータユニットとが離間した位置関係になるように、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する工程と、前記第2加熱工程において前記基板の下面と前記ヒータユニットとが接触する位置関係になるように、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する工程とを含む、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記距離変更工程が、前記保持層形成工程で形成される前記パーティクル保持層の膜厚に応じて、前記第1加熱工程における前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する工程をさらに含む、請求項3または4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1処理液に含まれる前記溶質である溶質成分は、変質温度以上に加熱する前では前記剥離液に対して不溶性であり、かつ、前記変質温度以上に加熱することによって変質し、前記剥離液に対して可溶性になる性質を有し、
前記保持層形成工程では、前記基板の上面に供給された前記第1処理液の温度が前記変質温度未満の温度になるように前記基板が加熱される、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記保持層形成工程では、前記基板の上面に供給された前記第1処理液の温度が前記溶媒の沸点未満になるように前記基板が加熱される、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記剥離液が、前記溶媒に対する相溶性を有している、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記液膜排除工程が、前記気相層が形成された後、前記基板上の前記液膜に気体を吹き付けて前記第2処理液を部分的に排除することによって、前記液膜の中央領域において前記液膜に穴を開ける穴開け工程と、前記穴を前記基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で前記液膜を移動させることによって、前記液膜を構成する前記第2処理液を前記基板外に排除する穴広げ工程とを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板を水平に保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持されている基板の中心部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットと、
溶質および揮発性を有する溶媒を含む第1処理液であって、前記溶媒の少なくとも一部が揮発することによって固化または硬化して前記基板の上面にパーティクル保持層を形成する前記第1処理液を、前記基板の上面に供給する第1処理液供給ユニットと、
前記基板の下面に対向し、前記基板を加熱するヒータユニットと、
前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離する剥離液を供給する剥離液供給ユニットと、
前記基板の上面に第2処理液を供給する第2処理液供給ユニットと、
前記基板回転ユニット、前記第1処理液供給ユニット、前記ヒータユニット、前記剥離液供給ユニットおよび前記第2処理液供給ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、水平に保持された前記基板の上面に、前記第1処理液供給ユニットから前記第1処理液を供給する第1処理液供給工程と、前記ヒータユニットで前記基板を加熱することにより前記基板の上面に供給された前記第1処理液から前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることによって、前記第1処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面に前記パーティクル保持層を形成する保持層形成工程と、前記剥離液供給ユニットから前記剥離液を前記基板の上面に供給することによって、前記パーティクル保持層を前記基板の上面から剥離して除去する保持層除去工程と、前記パーティクル保持層を前記基板上から除去した後、前記基板回転ユニットを用いて前記基板を回転させながら前記第2処理液供給ユニットから前記第2処理液を前記基板の上面に供給することによって、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去工程と、前記残渣除去工程の後、前記基板の上面への前記第2処理液の供給を継続しながら前記基板回転ユニットによって前記基板の回転を減速させることによって、前記基板の上面を覆う前記第2処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記ヒータユニットで前記基板を加熱して前記基板の上面に接する前記第2処理液を蒸発させることによって、前記基板の上面と前記液膜との間に、前記液膜を保持する気相層を形成する気相層形成工程と、前記気相層上で前記液膜を移動させることによって、前記液膜を構成する前記第2処理液を前記基板の上面から排除する液膜排除工程とを実行するようにプログラムされている、基板処理装置。
【請求項11】
前記コントローラが、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する加熱工程を実行するようにプログラムされており、
前記加熱工程が、前記保持層形成工程において前記溶媒の少なくとも一部を揮発させるために、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する第1加熱工程と、前記気相層形成工程において前記気相層を形成するために、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する第2加熱工程とを含む、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更するために前記ヒータユニットを前記基板保持ユニットに対して相対的に昇降させるヒータ昇降ユニットをさらに含み、
前記コントローラが、前記加熱工程において前記ヒータユニットの温度が一定になるように前記ヒータユニットを制御し、かつ、前記加熱工程の実行中に、前記ヒータ昇降ユニットを制御して、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する距離変更工程を実行するようにプログラムされている、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記距離変更工程が、前記第1加熱工程において前記基板の下面と前記ヒータユニットとが離間した位置関係になるように、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する工程と、前記第2加熱工程において前記基板の下面と前記ヒータユニットとが接触する位置関係となるように、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する工程とを含む、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記コントローラが、前記距離変更工程において、前記保持層形成工程で形成される前記パーティクル保持層の膜厚に応じて前記第1加熱工程における前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する工程を、実行するようにプログラムされている、請求項12または13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第1処理液に含まれる前記溶質である溶質成分は、変質温度以上に加熱する前では前記剥離液に対して不溶性であり、かつ、前記変質温度以上に加熱することによって変質し、前記剥離液に対して可溶性になる性質を有し、
前記コントローラが、前記保持層形成工程において、前記基板の上面に供給された前記第1処理液の温度が前記変質温度未満の温度になるように、前記ヒータユニットに前記基板を加熱させるようにプログラムされている、請求項1014のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記コントローラが、前記保持層形成工程において、前記基板の上面に供給された前記第1処理液の温度が前記溶媒の沸点未満になるように、前記ヒータユニットに前記基板を加熱させるようにプログラムされている、請求項1015のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記剥離液が、前記溶媒に対する相溶性を有している、請求項1016のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板の上面に向けて気体を供給する気体供給ユニットをさらに含み、
前記コントローラが、前記気相層が形成された後、前記気体供給ユニットから前記基板に気体を吹き付けて前記基板上の前記液膜の前記第2処理液を部分的に排除することによって、前記液膜に穴を開ける穴開け工程と、前記穴を前記基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で前記液膜を移動させることによって、前記液膜を構成する前記第2処理液を前記基板外に排除する穴広げ工程とを前記液膜排除工程において実行するようにプログラムされている、請求項1017のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等の基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
枚葉式の基板処理装置による基板処理では、基板が1枚ずつ処理される。詳しくは、スピンチャックによって基板がほぼ水平に保持される。そして、基板の上面を洗浄する洗浄工程が実行された後、基板の上面を乾燥するために基板を高速回転させるスピンドライ工程が行われる。
洗浄工程では、基板に付着した各種汚染物、前工程で使用した処理液やレジスト等の残渣、あるいは各種パーティクルなど(以下「パーティクル」と総称する場合がある。)が除去される。具体的には、洗浄工程では、脱イオン水(DIW)などの洗浄液を基板に供給することにより、パーティクルが物理的に除去されたり、パーティクルと化学的に反応する薬液を基板に供給することにより、当該パーティクルが化学的に除去されたりする。
【0003】
しかし、基板上に形成されるパターンの微細化および複雑化が進んでいるため、パーティクルを物理的、あるいは化学的に除去することが容易でなくなりつつある。
そこで、基板の上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給し、当該処理液を固化または硬化させた膜(以下「パーティクル保持層」という。)を形成した後、当該パーティクル保持層を除去する手法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-197717号公報
【文献】特開2016-21597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1方法では、溶解処理液を基板の上面に供給することによって、パーティクル保持層を基板の上で溶解させるため、溶解しつつあるパーティクル保持層からパーティクルが脱落して、基板に再付着するおそれがある。そのため、パーティクル除去率が、期待するほど高くならない。
しかも、パーティクルの除去のために用いた溶解処理液や溶解処理液を洗い流すためのリンス液は、パターン内部に入り込むので、パターン内部に入り込んだ液体をスピンドライ工程において充分に除去できない場合は、表面張力がパターンに作用する。この表面張力により、パターンが倒壊するおそれがある。
【0006】
詳しくは、パターン内部に入り込んだリンス液の液面(空気と液体との界面)は、パターン内に形成される。そのため、液面とパターンとの接触位置に、液体の表面張力が働く。この表面張力が大きい場合には、パターンの倒壊が起こりやすい。典型的なリンス液である水は、表面張力が大きいために、スピンドライ工程におけるパターンの倒壊が無視できない。
【0007】
そこで、水よりも表面張力が低い低表面張力液体であるイソプロピルアルコール(Isopropyl Alcohol: IPA)を用いる手法が提案されている(たとえば、下記特許文献2を参照)。具体的には、基板の上面にIPAを供給することによって、パターンの内部に入り込んだ水をIPAに置換し、その後にIPAを除去することで基板の上面を乾燥させる。しかし、パターン内部に入り込んだ水を置換したIPAの表面張力がパターンに作用する時間が長い場合やパターンの強度が低い場合はパターンの倒壊が起こり得る。
【0008】
そこで、この発明の1つの目的は、基板の上面からパーティクルを良好に除去することができ、かつ、基板の上面を良好に乾燥することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一実施形態は、基板を水平に保持する基板保持工程と、溶質と揮発性を有する溶媒とを含む第1処理液を、前記基板の上面に供給する第1処理液供給工程と、前記基板を加熱することにより、前記基板の上面に供給された前記第1処理液から、前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることによって、前記第1処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面にパーティクル保持層を形成する保持層形成工程と、前記パーティクル保持層を剥離する剥離液を前記基板の上面に供給することによって、前記パーティクル保持層を前記基板の上面から剥離して除去する保持層除去工程と、前記パーティクル保持層を前記基板上から除去した後、前記基板の上面に第2処理液を供給することによって、前記基板の上面を覆う前記第2処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記基板を加熱して前記基板の上面に接する前記第2処理液を蒸発させることによって前記基板の上面と前記液膜との間に、前記液膜を保持する気相層を形成する気相層形成工程と、前記気相層上で前記液膜を移動させることによって、前記液膜を構成する前記第2処理液を前記基板の上面から排除する液膜排除工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0010】
この方法によれば、保持層形成工程において、第1処理液が固化または硬化されることによって、パーティクル保持層が基板の上面に形成される。第1処理液が固化または硬化される際に、パーティクルが基板から引き離される。引き離されたパーティクルはパーティクル保持層中に保持される。そのため、保持層除去工程において、基板の上面に剥離液を供給することで、パーティクルを保持した状態のパーティクル保持層を基板の上面から剥離して除去することができる。
【0011】
また、この方法によれば、液膜形成工程において基板の上面を覆う第2処理液の液膜が形成される。そして、気相層形成工程において、基板を加熱することによって、その液膜と基板の上面との間に第2処理液が蒸発した気体からなる気相層が形成される。この気相層上に第2処理液の液膜が保持される。この状態で第2処理液の液膜を排除することによって、第2処理液の表面張力による基板の上面のパターンの倒壊を抑制または防止できる。気相層は、第2処理液との界面が基板の上面のパターン外に位置するように形成されることが好ましい。これにより、基板の上面のパターンに第2処理液の表面張力が働くことを回避でき、表面張力が働かない状態で第2処理液の液膜を基板外に排除できる。
【0012】
以上により、基板の上面からパーティクルを良好に除去することができ、かつ、基板の表面を良好に乾燥することができる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板の下面に対向するヒータユニットを用いて前記基板を加熱する加熱工程をさらに含む。そして、前記加熱工程が、前記保持層形成工程において前記溶媒の少なくとも一部を揮発させるために、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する第1加熱工程と、前記気相層形成工程において前記気相層を形成するために、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する第2加熱工程とを含む。
【0013】
この方法によれば、保持層形成工程および気相層形成工程において共通のヒータユニットを使用することができる。したがって、基板を加熱するためのユニットを複数設ける必要がない。
この発明の一実施形態では、前記加熱工程において前記ヒータユニットの温度が一定である。そして、前記基板処理方法が、前記加熱工程の実行中に、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する距離変更工程をさらに含む。
【0014】
ヒータユニットの温度変化に要する時間は、基板の温度変化に要する時間と比較して長い。そのため、加熱工程において、ヒータユニットの温度を変更して基板を加熱する場合、ヒータユニットが所望の温度に変化するまで待たなければ基板が所望の温度に達しない。したがって、基板処理に要する時間が長くなるおそれがある。
ヒータユニットから基板に伝達される熱量は、基板の下面とヒータユニットとの間の距離に応じて変化する。そこで、ヒータユニットの温度を一定に保った状態で、基板の下面とヒータユニットとの間の距離を変更することによって、基板の温度を所望の温度に変化させることができる。したがって、ヒータユニットの温度変化に要する時間を削減することができる。ひいては、基板処理に要する時間を削減することができる。
【0015】
基板の下面とヒータユニットとの間の距離が短いほど、基板に伝達される熱量が大きくなり、基板の温度上昇の度合が大きくなる。たとえば、第1加熱工程では、基板の下面とヒータユニットとが離間した位置関係になるように基板の下面とヒータユニットとの間の距離を変更し、第2加熱工程では、基板の下面とヒータユニットとが接触する位置関係になるように基板の下面とヒータユニットとの距離を変更すれば、第2加熱工程における基板の温度を第1加熱工程における基板の温度よりも高く設定することができる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記距離変更工程が、前記保持層形成工程で形成される前記パーティクル保持層の膜厚に応じて、前記第1加熱工程における前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する工程をさらに含む。
第1加熱工程では、加熱によって溶媒が揮発し、パーティクル保持層が収縮する。基板上からパーティクルを良好に除去するためには、第1加熱工程において、パーティクル保持層を所望の収縮率で収縮させることが好ましい。パーティクル保持層の収縮率とは、第1加熱工程開始直前の基板上の第1処理液の厚さに対する第1加熱工程後のパーティクル保持層の厚さの割合のことである。パーティクル保持層を所望の収縮率で収縮させるために必要な加熱温度は、パーティクル保持層の膜厚によって異なる。そこで、保持層形成工程で形成される予定のパーティクル保持層の膜厚に応じて基板の下面とヒータユニットとの間の距離を変更することで、加熱温度をパーティクル保持層の膜厚に応じた温度に調整することができる。それによって、パーティクル保持層の膜厚にかかわらず、パーティクル保持層が所望の収縮率で収縮させることができる。その結果、パーティクルを良好に除去することができる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記第1処理液に含まれる前記溶質である溶質成分が、変質温度以上に加熱する前では前記剥離液に対して不溶性であり、かつ、前記変質温度以上に加熱することによって変質し、前記剥離液に対して可溶性になる性質を有する。そして、前記保持層形成工程では、前記基板の上面に供給された前記第1処理液の温度が前記変質温度未満の温度になるように前記基板が加熱される。
【0018】
この方法によれば、保持層形成工程では、第1処理液の温度が変質温度未満の温度になるように基板が加熱されてパーティクル保持層が形成される。そのため、パーティクル保持層は、剥離液に対して難溶性ないし不溶性であるものの、当該剥離液によって剥離が可能である。したがって、保持層除去工程では、当該基板の上面に形成されたパーティクル保持層を、剥離液によって溶解させることなく、パーティクルを保持した状態のパーティクル保持層を、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0019】
その結果、パーティクルを保持した状態のパーティクル保持層を基板の上面から剥離することにより、パーティクルを高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
この発明の一実施形態では、前記保持層形成工程では、前記基板の上面に供給された前記第1処理液の温度が前記溶媒の沸点未満になるように前記基板が加熱される。
【0020】
この方法によれば、保持層形成工程における加熱後のパーティクル保持層中に溶媒を残留させることができる。そのため、その後の保持層除去工程において、パーティクル保持層中に残留した溶媒と、供給された剥離液との相互作用によって、パーティクル保持層を基板の上面から剥離しやすくすることができる。すなわち、パーティクル保持層中に剥離液を浸透させて、基板との界面まで到達させることにより、パーティクル保持層を基板の上面から浮かせて剥離させることができる。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記剥離液が、前記溶媒に対する相溶性を有していてもよい。保持層形成工程において、パーティクル保持層中に溶媒を適度に残留させておくと、当該溶媒に対して相溶性の剥離液がパーティクル保持層中に浸透し、基板との界面にまで到達し得る。それにより、パーティクル保持層を基板の上面から浮かせて剥離させることができる。
【0022】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記保持層除去工程の後でかつ前記液膜形成工程の前に、前記パーティクル保持層に含まれる前記溶質である溶質成分に対する溶解性を有する残渣除去液を前記基板の上面に供給することによって、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去工程をさらに含む。
【0023】
この方法によれば、残渣除去液が、パーティクル保持層を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する。そのため、パーティクル保持層の残渣を残渣除去液に溶解させて、基板の上面から除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記残渣除去液が、前記第2処理液と同種の液体である。そのため、液膜形成工程において、基板の上面に残渣処理液を第2処理液に置換する時間を削減することができる。したがって、基板処理に要する時間を短縮することができる。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記液膜排除工程が、前記気相層が形成された後、前記基板上の前記液膜に気体を吹き付けて前記第2処理液を部分的に排除することによって、前記液膜の中央領域において前記液膜に穴を開ける穴開け工程と、前記穴を前記基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で前記液膜を移動させることによって、前記液膜を構成する前記第2処理液を前記基板外に排除する穴広げ工程とを含む。
【0025】
この方法によれば、液膜の中央領域に形成された穴を基板の外周に向かって広げることによって、基板上から液膜が排除される。そのため、第2処理液の液滴が基板上に残留することを抑制または防止できる。したがって、基板の上面を良好に乾燥させることができる。
この発明の一実施形態は、基板を水平に保持する基板保持ユニットと、溶質および揮発性を有する溶媒を含む第1処理液であって、前記溶媒の少なくとも一部が揮発することによって固化または硬化して前記基板の上面にパーティクル保持層を形成する前記第1処理液を、前記基板の上面に供給する第1処理液供給ユニットと、前記基板の下面に対向し、前記基板を加熱するヒータユニットと、前記基板の上面に、前記パーティクル保持層を剥離する剥離液を供給する剥離液供給ユニットと、前記基板の上面に第2処理液を供給する第2処理液供給ユニットと、前記第1処理液供給ユニット、前記ヒータユニット、前記剥離液供給ユニットおよび前記第2処理液供給ユニットを制御するコントローラとを含む基板処理装置を提供する。
【0026】
そして、前記コントローラが、水平に保持された前記基板の上面に、前記第1処理液供給ユニットから前記第1処理液を供給する第1処理液供給工程と、前記ヒータユニットで前記基板を加熱することにより前記基板の上面に供給された前記第1処理液から前記溶媒の少なくとも一部を揮発させることによって、前記第1処理液を固化または硬化させて、前記基板の上面に前記パーティクル保持層を形成する保持層形成工程と、前記剥離液供給ユニットから前記剥離液を前記基板の上面に供給することによって、前記パーティクル保持層を前記基板の上面から剥離して除去する保持層除去工程と、前記パーティクル保持層を前記基板上から除去した後、前記第2処理液供給ユニットから前記基板の上面に前記第2処理液を供給することによって、前記基板の上面を覆う前記第2処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記ヒータユニットで前記基板を加熱して前記基板の上面に接する前記第2処理液を蒸発させることによって、前記基板の上面と前記液膜との間に、前記液膜を保持する気相層を形成する気相層形成工程と、前記気相層上で前記液膜を移動させることによって、前記液膜を構成する前記第2処理液を前記基板の上面から排除する液膜排除工程とを実行するようにプログラムされている。
【0027】
この構成によれば、保持層形成工程において、第1処理液が固化または硬化されることによって、パーティクル保持層が基板の上面に形成される。第1処理液が固化または硬化される際に、パーティクルが基板から引き離される。引き離されたパーティクルはパーティクル保持層中に保持される。そのため、保持層除去工程において、基板の上面に剥離液を供給することで、パーティクルを保持した状態のパーティクル保持層を、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0028】
また、この構成によれば、液膜形成工程において基板の上面を覆う第2処理液の液膜が形成される。そして、気相層形成工程において、基板を加熱することによって、その液膜と基板の上面との間に第2処理液が蒸発した気体からなる気相層が形成される。この気相層上に第2処理液の液膜が保持される。この状態で第2処理液の液膜を排除することによって、第2処理液の表面張力による基板の上面のパターンの倒壊を抑制または防止できる。気相層は、第2処理液との界面が基板の上面のパターン外に位置するように形成されることが好ましい。これにより、基板の上面のパターンに第2処理液の表面張力が働くことを回避でき、表面張力が働かない状態で第2処理液の液膜を基板外に排除できる。
【0029】
以上により、基板の表面からパーティクルを良好に除去することができ、かつ、基板の上面を良好に乾燥することができる。
この発明の一実施形態では、前記コントローラが、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する加熱工程を実行するようにプログラムされている。そして、前記加熱工程が、前記保持層形成工程において前記溶媒の少なくとも一部を揮発させるために、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する第1加熱工程と、前記気相層形成工程において前記気相層を形成するために、前記ヒータユニットを用いて前記基板を加熱する第2加熱工程とを含む。
【0030】
この構成によれば、保持層形成工程および気相層形成工程において共通のヒータユニットを使用することができる。したがって、基板を加熱するためのユニットを複数設ける必要がない。
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更するために前記ヒータユニットを前記基板保持ユニットに対して相対的に昇降させるヒータ昇降ユニットをさらに含む。そして、前記コントローラが、前記加熱工程において前記ヒータユニットの温度が一定になるように前記ヒータユニットを制御し、かつ、前記加熱工程の実行中に、前記ヒータ昇降ユニットを制御して、前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する距離変更工程を実行するようにプログラムされている。
【0031】
ヒータユニットの温度変化に要する時間は、基板の温度変化に要する時間と比較して長い。そのため、加熱工程において、ヒータユニットの温度を変更して基板を加熱する場合、ヒータユニットが所望の温度に変化するまで待たなければ基板が所望の温度に達しない。したがって、基板処理に要する時間が長くなるおそれがある。
ヒータユニットから基板に伝達される熱量は、基板の下面とヒータユニットとの間の距離に応じて変化する。そこで、ヒータユニットの温度を一定に保った状態で、基板の下面とヒータユニットとの間の距離を変更することによって、基板の温度を所望の温度に変化させることができる。したがって、ヒータユニットの温度変化に要する時間を削減することができる。ひいては、基板処理に要する時間を削減することができる。
【0032】
基板の下面とヒータユニットとの間の距離が短いほど、基板に伝達される熱量が大きくなり、基板の温度上昇の度合が大きくなる。たとえば、第1加熱工程では、基板の下面とヒータユニットとが離間した位置関係になるように基板の下面とヒータユニットとの間の距離を変更し、第2加熱工程では、基板の下面とヒータユニットとが接触する位置関係になるように基板の下面とヒータユニットとの距離を変更すれば、第2加熱工程における基板の温度を第1加熱工程における基板の温度よりも高く設定することができる。
【0033】
この発明の一実施形態では、前記コントローラが、前記距離変更工程において、前記保持層形成工程で形成される前記パーティクル保持層の膜厚に応じて前記第1加熱工程における前記基板の下面と前記ヒータユニットとの間の距離を変更する工程を、実行するようにプログラムされている。
第1加熱工程では、加熱によって溶媒が揮発し、パーティクル保持層が収縮する。基板上からパーティクルを良好に除去するためには、第1加熱工程において、パーティクル保持層を所望の収縮率で収縮させることが好ましい。パーティクル保持層の収縮率とは、第1加熱工程開始直前の基板上の第1処理液の厚さに対する第1加熱工程後のパーティクル保持層の厚さの割合のことである。パーティクル保持層を所望の収縮率で収縮させるために必要な加熱温度は、パーティクル保持層の膜厚によって異なる。そこで、保持層形成工程で形成される予定のパーティクル保持層の膜厚に応じて基板の下面とヒータユニットとの間の距離を変更することで、加熱温度をパーティクル保持層の膜厚に応じた温度に調整することができる。それによって、パーティクル保持層の膜厚にかかわらず、パーティクル保持層が所望の収縮率で収縮させることができる。その結果、パーティクルを良好に除去することができる。
【0034】
この発明の一実施形態では、前記第1処理液に含まれる前記溶質である溶質成分は、変質温度以上に加熱する前では前記剥離液に対して不溶性であり、かつ、前記変質温度以上に加熱することによって変質し、前記剥離液に対して可溶性になる性質を有する。そして、前記コントローラが、前記保持層形成工程において、前記基板の上面に供給された前記第1処理液の温度が前記変質温度未満の温度になるように、前記ヒータユニットに前記基板を加熱させるようにプログラムされている。
【0035】
この構成によれば、保持層形成工程では、第1処理液の温度が変質温度未満の温度になるように基板が加熱されてパーティクル層が形成される。そのため、パーティクル保持層は、剥離液に対して難溶性ないし不溶性であるものの、当該剥離液によって剥離が可能である。したがって、保持層除去工程では、当該基板の上面に形成されたパーティクル保持層を、剥離液によって溶解させることなく、パーティクルを保持した状態のパーティクル保持層を、基板の上面から剥離して除去することができる。
【0036】
その結果、パーティクルを保持した状態のパーティクル保持層を、基板の上面から剥離することにより、パーティクルを高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層の残渣が基板の上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
この発明の一実施形態では、前記コントローラが、前記保持層形成工程において、前記基板の上面に供給された前記第1処理液の温度が前記溶媒の沸点未満になるように、前記ヒータユニットに前記基板を加熱させるようにプログラムされている。
【0037】
この構成によれば、保持層形成工程における加熱後のパーティクル保持層中に溶媒を残留させることができる。そのため、その後の保持層除去工程において、パーティクル保持層中に残留した溶媒と、供給された剥離液との相互作用によって、パーティクル保持層を基板の上面から剥離しやすくすることができる。すなわち、パーティクル保持層中に剥離液を浸透させて、基板との界面まで到達させることにより、パーティクル保持層を基板の上面から浮かせて剥離させることができる。
【0038】
この発明の一実施形態では、前記剥離液が、前記溶媒に対する相溶性を有していている。保持層形成工程においてパーティクル保持層中に溶媒を適度に残留させておくと、当該溶媒に対して相溶性の剥離液がパーティクル保持層中に浸透し、基板との界面に到達し得る。それにより、パーティクル保持層を基板の上面から浮かせて剥離させることができる。
【0039】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記パーティクル保持層に含まれる前記溶質である溶質成分に対する溶解性を有する残渣除去液を前記基板の上面に供給する残渣除去液供給ユニットをさらに含む。そして、前記コントローラが、前記保持層除去工程の後でかつ前記液膜形成工程の前に、前記残渣除去液供給ユニットから、前記基板の上面に前記残渣除去液を供給することによって、前記パーティクル保持層を除去した後の前記基板の上面に残る残渣を除去する残渣除去工程を実行するようにプログラムされている。
【0040】
この構成によれば、残渣除去液が、当該パーティクル保持層を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する。そのため、パーティクル保持層の残渣を残渣除去液に溶解させて、基板の上面から除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記第2処理液供給ユニットが前記残渣除去液供給ユニットとして機能する。この構成によれば、液膜形成工程で用いる第2処理液供給ユニットを、残渣除去工程でも使用することができる。そのため、残渣除去工程と液膜形成工程とで基板の上面に液体を供給するユニットを変更することなく、残渣除去工程とその後の液膜形成工程とを連続して実行することができる。したがって、基板処理に要する時間を短縮することができる。
【0041】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板の上面に向けて気体を供給する気体供給ユニットをさらに含む。そして、前記コントローラが、前記気相層が形成された後、前記気体供給ユニットから前記基板に気体を吹き付けて前記基板上の前記液膜の前記第2処理液を部分的に排除することによって、前記液膜に穴を開ける穴開け工程と、前記穴を前記基板の外周に向かって広げ、前記気相層上で前記液膜を移動させることによって、前記液膜を構成する前記第2処理液を前記基板外に排除する穴広げ工程とを前記液膜排除工程において実行するようにプログラムされている。
【0042】
この構成によれば、液膜の中央領域に形成された穴を基板の外周に向かって広げることによって、基板上から液膜が排除される。そのため、第2処理液の液滴が基板上に残留することを抑制または防止できる。したがって、基板の上面を良好に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための模式的な平面図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの模式図である。
図3図3は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図4図4は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図5A図5Aは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5B図5Bは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5C図5Cは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5D図5Dは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5E図5Eは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5F図5Fは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5G図5Gは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5H図5Hは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5I図5Iは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5J図5Jは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5K図5Kは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5L図5Lは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図5M図5Mは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
図6A図6Aは、前記基板処理におけるパーティクル保持層の様子を説明するための図解的な断面図である。
図6B図6Bは、前記基板処理におけるパーティクル保持層の様子を説明するための図解的な断面図である。
図7A図7Aは、前記乾燥工程において基板上から液膜が排除される際の基板の上面の周辺の模式的な断面図である。
図7B図7Bは、前記乾燥工程において基板上から液膜が排除される際の基板の上面の周辺の模式的な断面図である。
図7C図7Cは、前記乾燥工程において基板上から液膜が排除される際の基板の上面の周辺の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための模式的な平面図である。基板処理装置1は、シリコンウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。図1を参照して、基板処理装置1は、処理流体で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを含む。
【0045】
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。処理流体には、後述する、第1処理液、第2処理液、リンス液、剥離液、残渣除去液等の液体や不活性ガス等の気体が含まれる。
【0046】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。処理ユニット2は、スピンチャック5と、処理カップ8と、第1移動ノズル15と、第2移動ノズル16と、固定ノズル17と、第3移動ノズル18と、下面ノズル19と、ヒータユニット6とを含む。
スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させる。スピンチャック5は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットの一例である。基板保持ユニットは、基板ホルダともいう。スピンチャック5は、複数のチャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、電動モータ23とを含む。
【0047】
スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面には、複数のチャックピン20が周方向に間隔を空けて配置されている。複数のチャックピン20は、基板Wの周端に接触して基板Wを把持する閉状態と、基板Wの周端から退避した開状態との間で開閉可能である。また、開状態において、複数のチャックピン20は、基板Wの周端から離間して把持を解除する一方で、基板Wの周縁部の下面に接触して、基板Wを下方から支持する。
【0048】
処理ユニット2は、複数のチャックピン20を開閉駆動するチャックピン駆動ユニット25をさらに含む。チャックピン駆動ユニット25は、たとえば、スピンベース21に内蔵されたリンク機構27と、スピンベース21外に配置された駆動源28とを含む。駆動源28は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。
回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸22の上端部は、スピンベース21の下面中央に結合されている。平面視におけるスピンベース21の中央領域には、スピンベース21を上下に貫通する貫通孔21aが形成されている。貫通孔21aは、回転軸22の内部空間22aと連通している。
【0049】
電動モータ23は、回転軸22に回転力を与える。電動モータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、基板Wが回転軸線A1のまわりに回転される。以下では、回転軸線A1を中心とした径方向の内方を単に「径方向内方」といい、回転軸線A1を中心とした径方向の外方を単に「径方向外方」という。電動モータ23は、基板Wを回転軸線A1のまわりに回転させる基板回転ユニットに含まれる。
【0050】
処理カップ8は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード11と、複数のガード11によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ12と、複数のガード11と複数のカップ12とを取り囲む円筒状の外壁部材13とを含む。この実施形態では、2つのガード11(第1ガード11Aおよび第2ガード11B)と、2つのカップ12(第1カップ12Aおよび第2カップ12B)とが設けられている例を示している。
【0051】
第1カップ12Aおよび第2カップ12Bのそれぞれは、上向きに開放された溝状の形態を有している。第1ガード11Aは、スピンベース21を取り囲む。第2ガード11Bは、第1ガード11Aよりも径方向外方でスピンベース21を取り囲む。第1カップ12Aは、第1ガード11Aによって下方に案内された液体を受け止める。第2カップ12Bは、第1ガード11Aと一体に形成されており、第2ガード11Bによって下方に案内された液体を受け止める。
【0052】
図1を再び参照して、処理カップ8は、チャンバ4内に収容されている。チャンバ4には、チャンバ4内に基板Wを搬入したり、チャンバ4内から基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
図2を再び参照して、第1移動ノズル15は、基板Wの上面に向けて第1処理液を供給(吐出)する第1処理液供給ユニットの一例である。第1移動ノズル15から吐出される第1処理液は、溶質と、揮発性を有する溶媒とを含む。第1処理液は、溶媒の少なくとも一部が揮発して固化または硬化することによって、基板Wの上面に付着していたパーティクルを当該基板Wから引き離して保持するパーティクル保持層を形成する。
【0053】
ここで「固化」とは、たとえば、溶媒の揮発に伴い、分子間や原子間に作用する力等によって溶質が固まることを指す。「硬化」とは、たとえば、重合や架橋等の化学的な変化によって、溶質が固まることを指す。したがって、「固化または硬化」とは、様々な要因によって溶質が「固まる」ことを表している。
第1処理液の溶質として用いられる樹脂は、たとえば、所定の変質温度以上に加熱前は水に対して難溶性ないし不溶性で、変質温度以上に加熱することで変質して水溶性になる性質を有する樹脂(以下「感熱水溶性樹脂」と記載する場合がある。)である。
【0054】
感熱水溶性樹脂は、たとえば、所定の変質温度以上(たとえば、200℃以上)に加熱することで分解して、極性を持った官能基を露出させることによって、水溶性を発現する。
第1処理液の溶媒としては、変質前の感熱水溶性樹脂に対する溶解性を有し、かつ揮発性を有する溶媒を用いることができる。ここで「揮発性を有する」とは、水と比較して揮発性が高いことを意味する。第1処理液の溶媒としては、たとえば、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)が用いられる。
【0055】
第1移動ノズル15は、第1処理液を案内する第1処理液配管40に接続されている。第1処理液配管40に介装された第1処理液バルブ50が開かれると、第1処理液が、第1移動ノズル15の吐出口から下方に連続的に吐出される。
第1移動ノズル15は、第1ノズル移動ユニット31によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル15は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第1移動ノズル15は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。第1移動ノズル15は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ8の外方に位置する。第1移動ノズル15は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0056】
第1ノズル移動ユニット31は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸に結合されて水平に延びるアームと、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニットとを含む。回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させる。さらに、回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第1移動ノズル15はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第1移動ノズル15が水平方向および鉛直方向に移動する。
【0057】
第2移動ノズル16は、基板Wの上面に向けて剥離液を供給(吐出)する剥離液供給ユニットの一例である。剥離液は、第1処理液が形成するパーティクル保持層を基板Wの上面から剥離するための液である。剥離液は、第1処理液に含まれる溶媒との相溶性を有する液体を用いることが好ましい。
剥離液は、たとえば、水系の剥離液である。水系の剥離液としては、剥離液は、DIWには限られず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、アルカリ水溶液等が挙げられる。アルカリ水溶液としては、SC1液(アンモニア過酸化水素水混合液)、アンモニア水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級水酸化アンモニウムの水溶液、コリン水溶液等が挙げられる。
【0058】
この実施形態では、第2移動ノズル16は、SC1液を案内するSC1液配管41に接続されている。SC1液配管41に介装されたSC1液バルブ51が開かれると、剥離液としてのSC1液が、第2移動ノズル16の吐出口から下方に連続的に吐出される。
第2移動ノズル16は、第2ノズル移動ユニット32によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第2移動ノズル16は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第2移動ノズル16は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。第2移動ノズル16は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ8の外方に位置する。第2移動ノズル16は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0059】
第2ノズル移動ユニット32は、第1ノズル移動ユニット31と同様の構成を有している。すなわち、第2ノズル移動ユニット32は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸および第2移動ノズル16に結合されて水平に延びるアームと、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニットとを含む。
固定ノズル17は、基板Wの上面に向けてリンス液を供給(吐出)するリンス液供給ユニットとしての一例である。
【0060】
リンス液は、例えば、DIWである。リンス液としては、DIW以外にも、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水等が挙げられる。
この実施形態では、固定ノズル17は、DIWを案内するDIW配管42に接続されている。DIW配管42に介装されたDIWバルブ52が開かれると、DIWが、固定ノズル17の吐出口から下方に連続的に吐出される。前述したように、DIWは剥離液としても機能するため、固定ノズル17は、基板Wの上面に向けて剥離液を供給(吐出)する剥離液供給ユニットとしても機能する。
【0061】
第3移動ノズル18は、基板Wの上面に向けて第2処理液を供給(吐出)する第2処理液供給ユニットとしての機能と、基板Wの上面に向けて窒素ガス(Nガス)等の気体を供給(吐出)する気体供給ユニットとしての機能とを有する。
第2処理液は、たとえば、水よりも表面張力の低い低表面張力液体である。低表面張力液体としては、基板Wの上面および基板Wに形成されたパターンと化学反応しない(反応性が乏しい)有機溶剤を用いることができる。より具体的には、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2-ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液を低表面張力液体として用いることができる。また、低表面張力液体は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよい。たとえば、IPA液と純水との混合液であってもよいし、IPA液とHFE液との混合液であってもよい。
【0062】
第3移動ノズル18から吐出される気体は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスは、基板Wの上面およびパターンに対して不活性なガスのことであり、例えばアルゴン等の希ガス類であってもよい。第3移動ノズル18から吐出される気体は、空気であってもよい。
第3移動ノズル18は、鉛直方向に沿って第2処理液を吐出する中心吐出口70を有している。第3移動ノズル18は、鉛直方向に沿って直線状の気体を吐出する線状流吐出口71を有している。さらに、第3移動ノズル18は、水平方向に沿って第3移動ノズル18の周囲に放射状に気体を吐出する水平流吐出口72を有している。また、第3移動ノズル18は、斜め下方向に沿って、第3移動ノズル18の周囲に放射状に気体を吐出する傾斜流吐出口73を有している。
【0063】
線状流吐出口71から吐出された気体は、基板Wの上面に垂直に入射する線状気流を形成する。水平流吐出口72から吐出された気体は、基板Wの上面に平行で、かつ基板Wの上面を覆う水平気流を形成する。傾斜流吐出口73から吐出された気体は、基板Wの上面に対して斜めに入射する円錐状プロファイルの傾斜気流を形成する。
第3移動ノズル18には、IPA配管44および複数の窒素ガス配管45A,45B,45Cが接続されている。IPA配管44に介装されたIPAバルブ54が開かれると、IPAが、第3移動ノズル18の中心吐出口70から下方に連続的に吐出される。
【0064】
第1窒素ガス配管45Aに介装された第1窒素ガスバルブ55Aが開かれると、第3移動ノズル18の線状流吐出口71から下方に窒素ガスが連続的に吐出される。第2窒素ガス配管45Bに介装された第2窒素ガスバルブ55Bが開かれると、第3移動ノズル18の水平流吐出口72から水平方向に窒素ガスが連続的に吐出される。第3窒素ガス配管45Cに介装された第3窒素ガスバルブ55Cが開かれると、第3移動ノズル18の傾斜流吐出口73から斜め下方向に窒素ガスが連続的に吐出される。
【0065】
第1窒素ガス配管45Aには、第1窒素ガス配管45A内を流れる窒素ガスの流量を正確に調節するためのマスフローコントローラ56が介装されている。マスフローコントローラ56は、流量制御バルブを有している。また、第2窒素ガス配管45Bには、第2窒素ガス配管45B内を流れる窒素ガスの流量を調節するための流量可変バルブ57Bが介装されている。また、第3窒素ガス配管45Cには、第3窒素ガス配管45C内を流れる窒素ガスの流量を調節するための流量可変バルブ57Cが介装されている。さらに、窒素ガス配管45A,45B,45Cには、それぞれ、異物を除去するためのフィルタ58A,58B,58Cが介装されている。
【0066】
第3移動ノズル18の中心吐出口70から吐出されるIPAは、第2処理液(低表面張力液体)でもあり、残渣除去液でもある。残渣除去液とは、第1処理液の溶質に対する溶解性を有する液体のことである。そのため、第3移動ノズル18は、基板Wの上面に向けて残渣除去液を供給(吐出)する残渣処理液供給ユニットとしても機能する。
第1処理液の溶質として感熱水溶性樹脂を用いる場合、残渣除去液として、変質前の感熱水溶性樹脂に対する溶解性を有する液体を用いることができる。第1処理液の溶質として感熱水溶性樹脂を用いる場合、残渣除去液として用いられる液体は、たとえばIPAである。残渣除去液は、水系の剥離液との相溶性を有する液体であることが好ましい。
【0067】
第3移動ノズル18は、第3ノズル移動ユニット33によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第3移動ノズル18は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第3移動ノズル18は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。第3移動ノズル18は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ8の外方に位置する。より具体的には、第3移動ノズル18は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0068】
第3ノズル移動ユニット33は、第1ノズル移動ユニット31と同様の構成を有している。すなわち、第3ノズル移動ユニット33は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸と、回動軸および第3移動ノズル18に結合されて水平に延びるアームと、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニットとを含む。
ヒータユニット6は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット6は、基板Wの下面に下方から対向する対向面6aを有する。
【0069】
ヒータユニット6は、プレート本体60と、複数の支持ピン61と、ヒータ62とを含む。プレート本体60は、平面視において、基板Wよりも僅かに小さい。複数の支持ピン61は、プレート本体60の上面から突出している。プレート本体60の上面と、複数の支持ピン61の表面とによって対向面6aが構成されている。ヒータ62は、プレート本体60に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ62に通電することによって、対向面6aが加熱される。そして、ヒータ62には、給電線63を介して、ヒータ通電ユニット64から電力が供給される。
【0070】
ヒータユニット6は、スピンベース21の上方に配置されている。処理ユニット2は、ヒータユニット6をスピンベース21に対して相対的に昇降させるヒータ昇降ユニット65を含む。ヒータ昇降ユニット65は、たとえば、ボールねじ機構と、それに駆動力を与える電動モータとを含む。
ヒータユニット6の下面には、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びる昇降軸30が結合されている。昇降軸30は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔21aと、中空の回転軸22とを挿通している。昇降軸30内には、給電線63が通されている。ヒータ昇降ユニット65は、昇降軸30を介してヒータユニット6を昇降させることによって、下位置および上位置の間の任意の中間位置にヒータユニット6を配置できる。ヒータユニット6が下位置に位置するとき、対向面6aと基板Wの下面との間の距離は、たとえば、15mmである。
【0071】
ヒータユニット6は、スピンベース21に対して相対的に昇降(移動)するので、基板Wの下面とヒータユニット6の上面との間の距離が変化する。すなわち、ヒータ昇降ユニット65は、距離変更ユニットとして機能する。
下面ノズル19は、中空の昇降軸30を挿通し、さらに、ヒータユニット6を貫通している。下面ノズル19は、基板Wの下面中央に臨む吐出口を上端に有している。下面ノズル19には流体配管43が接続されている。流体配管43に介装された流体バルブ53が開かれると、基板Wの下面に向けて処理流体が連続的に吐出される。
【0072】
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備えており、所定のプログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。より具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、プログラムが格納されたメモリ3Bとを含み、プロセッサ3Aがプログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0073】
特に、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、電動モータ23、ノズル移動ユニット31,32,33、ヒータ通電ユニット64、ヒータ昇降ユニット65、チャックピン駆動ユニット25およびバルブ類50,51,52,53,54,55A,55B,55C,56,57B,57C等の動作を制御する。バルブ類50,51,52,53,54,55A,55B,55C,56,57B,57Cが制御されることによって、対応するノズルからの流体の吐出の有無や吐出流量が制御される。
【0074】
図4は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図であり、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。図5A図5Mは、前記基板処理を説明するための図解的な断面図である。
未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(S1)。そして、複数のチャックピン20が閉状態にされる。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。
【0075】
そして、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を下位置に配置する。ヒータ通電ユニット64は、基板処理の間、常時、通電されている。そのため、基板Wは、搬送ロボットCRによって搬出されるまでの間、ヒータユニット6によって加熱され続ける(加熱工程)。また、加熱工程において、ヒータユニット6の温度は一定(たとえば195℃)に維持される。加熱工程の実行中にヒータ昇降ユニット65がヒータユニット6を昇降させることによって、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離が変更される(距離変更工程)。
【0076】
次に、図5Aを参照して、第1処理液供給工程が実行される(S2)。第1処理液供給工程は、たとえば、2.4秒の間に実行される。第1処理液供給工程では、まず、電動モータ23(図2参照)がスピンベース21を回転させる。これにより、基板Wが回転される。第1処理液供給工程では、スピンベース21は、所定の第1処理液供給速度で回転される。第1処理液供給速度は、たとえば、10rpmである。
【0077】
そして、第1ノズル移動ユニット31が第1移動ノズル15を、中央位置に配置する。そして、第1処理液バルブ50が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて、第1移動ノズル15から第1処理液が供給される。基板Wの上面に供給された第1処理液は、遠心力によって、基板Wの上面の全体に行き渡る。余剰の第1処理液は、遠心力によって基板Wから径方向外方に排除される。
【0078】
基板Wに第1処理液を一定時間供給した後、第1処理液を固化または硬化させて、基板Wの上面にパーティクル保持層100(図5C参照)を形成する保持層形成工程が実行される(S3)。保持層形成工程では、まず、第1処理液バルブ50が閉じられる。これにより、第1移動ノズル15からの第1処理液の供給が停止される。そして、第1ノズル移動ユニット31によって第1移動ノズル15が退避位置に移動される。
【0079】
図5Bを参照して、保持層形成工程では、まず、基板W上の第1処理液の液膜の厚さを適切な厚さにするために、遠心力によって基板Wの上面から第1処理液の一部を排除するスピンオフ工程が実行される。
スピンオフ工程では、電動モータ23が、スピンベース21の回転速度を所定のスピンオフ速度に変更する。スピンオフ速度は、たとえば、300rpm~1500rpmである。スピンベース21の回転速度は、300rpm~1500rpmの範囲内で一定に保たれてもよいし、スピンオフ工程の途中で300rpm~1500rpmの範囲内で適宜変更されてもよい。スピンオフ工程は、たとえば、30秒の間に実行される。
【0080】
図5Cを参照して、保持層形成工程では、スピンオフ工程後に、基板W上の第1処理液の溶媒の一部を揮発させるために、基板Wを加熱する(基板Wに対する加熱を強める)第1加熱工程が実行される。
第1加熱工程では、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を近接位置に配置する。近接位置は、下位置と上位置との間の位置である。ヒータユニット6が近接位置に位置するとき、対向面6aが基板Wの下面に非接触である。ヒータユニット6が近接位置に位置するとき、対向面6aは、基板Wの下面から所定距離(たとえば4mm)だけ下方に離隔している。第1加熱工程は、たとえば、60秒の間で実行される。第1加熱工程では、電動モータ23が、スピンベース21の回転速度を所定の第1加熱時速度に変更する。第1加熱時速度は、たとえば、1000rpmである。
【0081】
第1加熱工程では、基板W上の第1処理液の温度が溶媒の沸点未満となるように、基板Wが加熱されることが好ましい。第1処理液を、溶媒の沸点未満の温度に加熱することにより、先に説明したように、パーティクル保持層100中に溶媒を残留させることができる。そして、パーティクル保持層100中に残留した溶媒と、剥離液との相互作用によって、当該パーティクル保持層100を、基板Wの上面から剥離しやすくできる。
【0082】
第1加熱工程では、基板W上の第1処理液の温度が溶媒の沸点未満となることに加えて、基板W上の第1処理液の温度が感熱水溶性樹脂の変質温度未満となるように、基板Wが加熱されることが好ましい。第1処理液を変質温度未満の温度に加熱することにより、当該感熱水溶性樹脂を水溶性に変質させずに、基板Wの上面に、水系の剥離液に対して難溶性ないし不溶性のパーティクル保持層100を形成することができる。
【0083】
第1加熱工程が実行されることによって、第1処理液が固化または硬化されて、基板W上にパーティクル保持層100が形成される。図6Aに示すように、パーティクル保持層100が形成される際に、基板Wの上面に付着していたパーティクル101が、当該基板Wから引き離されて、パーティクル保持層100中に保持される。
第1処理液は、パーティクル101を保持できる程度に固化または硬化すればよい。第1処理液の溶媒が完全に揮発する必要はない。また、パーティクル保持層100を形成する「溶質成分」とは、第1処理液に含まれる溶質そのものであってもよいし、溶質から導かれるもの、たとえば、化学的な変化の結果として得られるものであってもよい。
【0084】
図5Dおよび図5Eに示すように、保持層形成工程の後、基板Wの上面に剥離液を供給することによって基板Wの上面から、パーティクル保持層100を剥離して除去する保持層除去工程が実行される(S4)。保持層除去工程では、第1剥離液としてDIWが基板Wの上面に供給される第1剥離液供給工程と、第2剥離液としてSC1液が供給される第2剥離液供給工程とが実行される。
【0085】
図5Dを参照して、第1剥離液供給工程では、電動モータ23が、スピンベース21の回転速度を所定の第1剥離液速度に変更する。第1剥離液速度は、たとえば、800rpmである。そして、ヒータ昇降ユニット65が、ヒータユニット6を下位置に移動させる。そして、DIWバルブ52が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて固定ノズル17からDIWが供給される。基板Wの上面に供給されたDIWは、遠心力によって、基板Wの上面の全体に行き渡る。余剰のDIWは、遠心力によって基板Wから径方向外方に排除される。第1剥離液供給工程は、たとえば、60秒間継続される。
【0086】
図5Eを参照して、第2剥離液供給工程では、電動モータ23が、スピンベース21の回転速度を所定の第2剥離液速度に変更する。第2剥離液速度は、たとえば、800rpmである。そのため、第2剥離液供給工程では、第1剥離液供給工程における基板Wの回転速度が維持される。そして、第2ノズル移動ユニット32が、第2移動ノズル16を中央位置に移動させる。そして、DIWバルブ52が閉じられ、その一方で、SC1液バルブ51が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて第2移動ノズル16からSC1液が供給される。基板Wの上面に供給されたSC1液は、遠心力によって、基板Wの上面の全体に行き渡って、基板W上のDIWを置換する。余剰のSC1液は、遠心力によって基板Wから径方向外方に排除される。第2剥離液供給工程では、ヒータユニット6は下位置に維持されている。
【0087】
DIWおよびSC1液は、ともに、溶媒としてのPGEEとの相溶性を有する。しかも、感熱水溶性樹脂をその変質温度未満に加熱して形成されたパーティクル保持層100は、前述したように、水系の剥離液であるDIWやSC1液に対して難溶性ないし不溶性である。そのため、これらの剥離液は、パーティクル保持層100中に残留するPGEEとの相互作用によって、当該パーティクル保持層100を形成する溶質成分を溶解させることなく、パーティクル保持層100中に浸透する。そして、剥離液は、基板Wとの界面に達する。これにより、図6Bに示すように、パーティクル101を保持したままのパーティクル保持層100が、基板Wの上面から浮いて剥離する。
【0088】
基板Wの上面から剥離したパーティクル保持層100は、基板Wの回転による遠心力の働きによって、剥離液とともに、基板Wの上面の周縁から排出される。すなわち、基板Wの上面から、剥離したパーティクル保持層100が除去される。
DIWは、SC1液よりも、剥離液としての効果は低い。しかし、DIWは、SC1液に先立って供給されて、パーティクル保持層100中に浸透することで、当該パーティクル保持層100中に残留するPGEEの少なくとも一部と置換する。そして、DIWは、次工程で供給されるSC1液の、パーティクル保持層100中への浸透を補助する働きをする。
【0089】
そのため、剥離液としては、SC1液の供給に先立って、DIWを供給するのが好ましいが、DIWの供給(第1剥離液供給工程)は、省略されてもよい。すなわち、剥離液としては、SC1液のみを用いてもよい。
図5Fを参照して、保持層除去工程の後、基板W上の剥離液をリンス液で置換するリンス工程が実行される(S5)。リンス工程は、たとえば、60秒の間で実行される。
【0090】
リンス工程では、電動モータ23が、スピンベース21の回転速度を所定のリンス速度に変更する。リンス速度は、たとえば、800rpmである。そのため、リンス工程では、第2剥離液供給工程における基板Wの回転速度が維持される。そして、SC1液バルブ51が閉じられて、第2ノズル移動ユニット32が第2移動ノズル16を退避位置に移動させる。そして、DIWバルブ52が再び開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて固定ノズル17からDIWが供給される。基板Wの上面に供給されたDIWは、遠心力によって、基板Wの上面の全体に行き渡り、基板W上のSC1液が置換される。余剰のDIWは、遠心力によって基板Wから径方向外方に排除される。
【0091】
図5Gを参照して、リンス工程の後に残渣除去液としてのIPAを基板W上に供給することによって、パーティクル保持層100を除去した後の基板Wの上面に残る残渣を除去する残渣除去工程が実行される(S6)。残渣除去工程は、たとえば、60秒の間で実行される。
残渣除去工程では、電動モータ23が、スピンベース21の回転速度を所定の残渣除去速度に変更する。残渣除去速度は、たとえば、300rpmである。そして、DIWバルブ52が閉じられる。そして、第3ノズル移動ユニット33が第3移動ノズル18を中央位置に移動させる。そして、IPAバルブ54が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面に向けて第3移動ノズル18からIPAが供給される。基板Wの上面に供給されたIPAは、遠心力によって、基板Wの上面の全体に行き渡り、基板W上のDIWが置換される。余剰のIPAは、遠心力によって基板Wから径方向外方に排除される。
【0092】
残渣除去工程では、ヒータ昇降ユニット65は、ヒータユニット6を近接位置に配置する。これにより、DIWからIPAへの置換効率が向上される。残渣除去工程では、第2窒素ガスバルブ55Bも開かれる。これにより、第3移動ノズル18の水平流吐出口72から窒素ガス等の気体が放射状に吐出され、基板Wの上面が水平気流82で覆われる(上面被覆工程)。水平流吐出口72からの窒素ガスの吐出は、中心吐出口70からのIPAの吐出よりも先に開始されることが好ましい。水平流吐出口72からの窒素ガスの吐出流量は、たとえば100リットル/分程度である。基板Wの上面が窒素ガスの水平気流82で覆われているので、チャンバ4の内壁から跳ね返った液滴や雰囲気中のミスト等が基板Wの上面に付着することを抑制または防止できる。
【0093】
図5Hを参照して、残渣除去工程の後、基板Wの上面への第2処理液(低表面張力液体)としてのIPAの供給が継続されることによって、IPAの液膜150が形成される液膜形成工程が実行される(S7)。液膜形成工程は、たとえば、15.4秒の間に実行される。
詳しくは、基板Wの回転を減速して停止させ、基板Wの上面に第2処理液としてのIPAの厚い液膜150が形成される(第2処理液パドル工程)。基板Wの回転は、この例では、残渣除去速度から段階的に減速される(減速工程、漸次減速工程、段階的減速工程)。より具体的には、基板Wの回転速度は、300rpmから、50rpmに減速されて所定時間維持され、その後、10rpmに減速されて所定時間維持され、その後、0rpm(停止)に減速されて所定時間維持される。
【0094】
一方、第3移動ノズル18は、回転軸線A1上に保持され、引き続き、基板Wの上面の回転中心に向けて中心吐出口70から第2処理液としてのIPAを吐出し、かつ水平流吐出口72から不活性ガスを吐出して水平気流82を形成する。中心吐出口70からのIPAの吐出は、液膜形成工程の全期間において継続される。すなわち、基板Wの回転が停止しても、有機溶剤の吐出が継続される。このように、基板Wの回転の減速から停止に至る全期間においてIPAの供給が継続されることにより、基板Wの上面の至るところでIPAが失われることがない。また、基板Wの回転が停止した後もIPAの供給が継続されることにより、基板Wの上面に厚い液膜150を形成できる。
【0095】
ヒータユニット6の位置は、残渣除去工程(S6)のときと同じ位置であり、たとえば、近接位置である。これにより、基板Wは、対向面6aからの輻射熱によって予熱される(基板予熱工程)。チャックピン20は、基板Wの回転が停止した後、その停止状態が保持されている間に、閉状態から開状態へと切り換わる。それにより、チャックピン20が、基板Wの周縁部下面を下方から支持し、基板Wの上面周縁部から離れた状態となるので、基板Wの上面全域が開放される。
【0096】
次に、図5Iを参照して、ヒータユニット6で基板Wを持ち上げた状態で、すなわち、対向面6aを基板Wの下面に接触させた状態で、基板Wを加熱することによって、液膜150と基板Wの上面との間に気相層を形成する気相層形成工程が実行される(S9)。気相層形成工程は、たとえば、20秒の間に実行される。
気相層形成工程において、ヒータ昇降ユニット65は、ヒータユニット6を上位置まで上昇させる。これによって、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとが接触する位置関係になった状態で、ヒータユニット6を用いて基板Wが加熱される(第2加熱工程)。
詳しくは、ヒータユニット6が上位置まで上昇させられる過程で、チャックピン20から対向面6aに基板Wが渡され、対向面6aによって基板Wが支持される(ヒータユニット接近工程、ヒータユニット接触工程)。そして、IPAバルブ54が閉じられて、中心吐出口70からのIPAの吐出が停止される。スピンベース21の回転は停止状態で維持されている。第3移動ノズル18(中心吐出口70)は基板Wの回転中心の上方に位置している。
【0097】
基板Wの上面からの熱を受けた液膜150では、基板Wの上面との界面において蒸発が生じる。それによって、基板Wの上面と液膜150との間に、IPAの気体からなる気相層が生じる。したがって、液膜150は、基板Wの上面の全域において、気相層上に支持された状態となる。
次に、気相層上で液膜150を移動させることによって、液膜150を構成するIPAを基板Wの上面から排除する液膜排除工程が実行される(S9およびS10)。液膜排除工程では、穴開け工程(図5J参照)と、穴広げ工程(図5K参照)とが実行される。
【0098】
まず、図5Jを参照して、液膜排除工程では、第1移動ノズル15の線状流吐出口71から基板Wの中心に向けて垂直に小流量(第1流量。たとえば5リットル/分)で気体(たとえば窒素ガス)の線状気流81を吹き付けることによって、液膜150の中央領域に小さな穴151を開ける穴開け工程が実行される(S9)。線状気流81は小流量であるため、液膜150に小さな穴151を開ける際に液膜150での液跳ねが防止または抑制することができる。基板Wの回転は停止状態のままであり、したがって、静止状態の基板W上の液膜150に対して穴開け工程が行われる。
【0099】
次に、図5Kを参照して、液膜排除工程では、穴151を基板Wの外周に向かって広げ、気相層上で液膜150を移動させることによって、液膜150を構成する第2処理液を基板W外に排除する穴広げ工程が実行される(S10)。
液膜150の穴開けの直後から(すなわち、ほぼ同時に)、基板Wの急加熱が始まる。それにより、窒素ガスによる穴開けによって液膜150の外方への移動が始まると、基板Wの加熱が速やかに(ほぼ同時に)開始され、それによって、液膜150は止まることなく基板Wの外方へと移動していく。
【0100】
より具体的には、穴開けされて液膜150がなくなった中央領域では、液膜150が存在しているその周囲の領域に比較して、基板Wの温度が速やかに上昇する。それによって、穴151の周縁において基板W内に大きな温度勾配が生じる。すなわち、穴151の周縁の内側が高温で、その外側が低温になる。この温度勾配によって、気相層上に支持されている液膜150が低温側、すなわち、外方に向かって移動を始め、それによって、液膜150の中央の穴151が拡大していく。
【0101】
こうして、基板Wの加熱により生じる温度勾配を利用して、基板W上の液膜150を基板W外へと排除できる(加熱排除工程)。より具体的には、基板Wの上面において、パターンが形成された領域内の液膜150は、温度勾配によるIPAの移動によって排除できる。
そして、図5Lに示すように、マスフローコントローラ56が、線状流吐出口71から吐出される不活性ガスの流量を増量する。これにより、大流量(第2流量。たとえば80リットル/分)の窒素ガスが基板Wの中心に吹き付けられ、液膜150の中央の穴151がさらに広げられる(気体排除工程、液膜移動工程)。流量の増加に応じて、流速も増加する。窒素ガス流量の増加により、基板Wの上面の外周領域まで移動した液膜150がさらに基板W外へと押しやられる。基板Wの回転は停止状態に保持される。
【0102】
具体的には、温度勾配によって穴151が広がっていく過程で、窒素ガスの流量を増加させることで、液膜150の移動が停止することを回避して、液膜150の基板W外方に向かう移動を継続させることができる。温度勾配を利用する液膜150の移動だけでは、基板Wの上面の周縁領域で液膜150の移動が止まってしまうおそれがある。そこで、窒素ガスの流量を増加させることで、液膜150の移動をアシストでき、それによって、基板Wの上面の全域から液膜150を排除できる。
【0103】
第2窒素ガスバルブ55Bは開状態に保持されている。そのため、基板Wの上面は、水平流吐出口72から吐出される窒素ガスが形成する水平気流82で覆われている。したがって、基板Wの上面に液滴やミスト等の異物が付着することを抑制または防止しながら、基板W上の液膜150を排除できる。
液膜150が排除された後、図5Mに示すように、スピンドライ工程が実行される(S11)。まず、ヒータ昇降ユニット65がヒータユニット6を下位置に配置する。その過程で基板Wがチャックピン20によって支持される。基板Wがチャックピン20に支持されると、チャックピン駆動ユニット25がチャックピン20を閉状態にして、チャックピン20に基板Wを把持させる。そして、マスフローコントローラ56が線状流吐出口71から吐出される不活性ガスの流量を低減する。これにより、中流量(たとえば15リットル/分)の窒素ガスが基板Wの中心に吹き付けられる。その状態で、電動モータ23は、スピンベース21の回転を高速な乾燥回転速度(たとえば800rpm)まで加速される。これにより、遠心力によって、基板Wの表面の液成分を完全に振り切ることができる。
【0104】
スピンドライ工程では、水平気流82の形成が継続されている。そのため、基板Wの上面は窒素ガス気流によって覆われているので、周囲に飛び散って跳ね返った液滴や周囲のミストが基板Wの上面に付着することを回避できる。
スピンドライ工程では、図5Mに二点鎖線で示すように、第3窒素ガスバルブ55Cを開き、傾斜流吐出口73から窒素ガスを吐出させてもよい。傾斜流吐出口73から吐出される窒素ガスが形成する傾斜気流83は、基板Wの上面にぶつかって、基板Wの上面に平行な外方へと向きを変える。
【0105】
スピンドライ工程の後は、スピンベース21の回転が停止され、窒素ガスバルブ55A~55Cが閉じられて、第3移動ノズル18からの窒素ガスの吐出が停止される。そして、第3ノズル移動ユニット33は、第3移動ノズル18を退避させる。さらに、チャックピン駆動ユニット25は、チャックピン20を開状態にする。これにより、基板Wは、チャックピン20に載置された状態となる。その後、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する基板搬出工程が実行される(S12)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0106】
図7Aおよび図7Bは、基板Wの上面における気相層の形成を説明するための図解的な断面図である。基板Wの上面には、微細なパターン161が形成されている。パターン161は、基板Wの上面に形成された微細な凸状の構造体162を含む。構造体162は、絶縁体膜を含んでいてもよいし、導体膜を含んでいてもよい。また、構造体162は、複数の膜を積層した積層膜であってもよい。ライン状の構造体162が隣接する場合には、それらの間に溝が形成される。この場合、構造体162の幅W1は10nm~45nm程度、構造体162同士の間隔W2は10nm~数μm程度であってもよい。構造体162の高さTは、たとえば50nm~5μm程度であってもよい。構造体162が筒状である場合には、その内方に孔が形成されることになる。
【0107】
液膜形成工程(S7)では、図7Aに示すように、基板Wの上面に形成された液膜150は、パターン161の内部(隣接する構造体162の間の空間または筒状の構造体162の内部空間)を満たしている。
気相形成工程(S8)では、ヒータユニット6と基板Wとが接触した状態で基板Wが加熱され、第2処理液の沸点(IPAの場合は82.4℃)よりも高い温度(110℃~150℃)となる。それにより、基板Wの上面に接している第2処理液が蒸発し、第2処理液の気体が発生して、図7Bに示すように、気相層152が形成される。気相層152は、パターン161の内部を満たし、さらに、パターン161の外側に至り、構造体162の上面162Aよりも上方に液膜150との界面155を形成している。この界面155上に液膜150が支持されている。この状態では、有機溶剤の液面がパターン161に接していないので、液膜150の表面張力に起因するパターン倒壊が起こらない。
【0108】
基板Wの加熱によって有機溶剤が蒸発するとき、液相の有機溶剤はパターン161内から瞬時に排出される。そして、形成された気相層152上に液相の有機溶剤が支持され、パターン161から離隔させられる。こうして、有機溶剤の気相層152は、パターン161の上面(構造体162の上面162A)と液膜150との間に介在して、液膜150を支持する。
【0109】
図7Cに示すように、基板Wの上面から浮上している液膜150に亀裂153が生じると、乾燥後にウォータマーク等の欠陥の原因となる。そこで、この実施形態では、基板Wの回転を停止した後に有機溶剤の供給を停止して、基板W上に厚い液膜150を形成して、亀裂の発生を回避している。ヒータユニット6を基板Wに接触させるときには、基板Wの回転が停止しているので、液膜150が遠心力によって分裂することがなく、したがって、液膜150に亀裂が生じることを回避できる。さらに、ヒータユニット6の出力および基板Wとの接触時間を調節して、有機溶剤の蒸気が液膜150を突き破って吹き出さないようにし、それによって、亀裂の発生を回避してもよい。より具体的には、ヒータユニット6を基板Wから離隔させることで基板Wの過熱を回避し、それによって、液膜150に亀裂が生じることを回避してもよい。
【0110】
気相層152上に液膜150が支持されている状態では、液膜150に働く摩擦抵抗は、零とみなせるほど小さい。そのため、基板Wの上面に平行な方向の力が液膜150に加わると、液膜150は簡単に移動する。この実施形態では、液膜150の中央に穴開けし、それによって、穴151の縁部での温度差によってIPAの流れを生じさせて、気相層152上に支持された液膜150を移動させて排除している。
【0111】
この実施形態の基板処理では、図4に示すように、第1処理液供給工程と、保持層形成工程と、保持層除去工程と、液膜形成工程と、気相層形成工程と、液膜排除工程とがこの順番で実行される。保持層形成工程において、第1処理液が固化または硬化されることによって、パーティクル保持層100が基板Wの上面に形成される。第1処理液が固化または硬化される際に、パーティクル101が基板Wから引き離される。引き離されたパーティクル101はパーティクル保持層100中に保持される。そのため、保持層除去工程において、基板Wの上面に剥離液を供給することで、パーティクル101を保持した状態のパーティクル保持層100を基板Wの上面から剥離して除去することができる。
【0112】
また、液膜形成工程において基板Wの上面を覆うIPA(第2処理液)の液膜150が形成される。そして、気相層形成工程において、基板Wを加熱することによって、その液膜150と基板Wの上面との間に第2処理液が蒸発した気体からなる気相層152が形成される。この気相層152上に第2処理液の液膜150が保持される。この状態で第2処理液の液膜150を排除することによって、第2処理液の表面張力による基板Wの上面のパターン161の倒壊を抑制または防止できる。気相層152は、第2処理液との界面が基板Wの上面のパターン161外に位置するように形成されることが好ましい。これにより、基板Wの上面のパターン161に第2処理液の表面張力が働くことを回避でき、表面張力が働かない状態で第2処理液の液膜150を基板W外に排除できる。
【0113】
以上により、基板Wの上面からパーティクルを良好に除去することができ、かつ、基板Wの上面を良好に乾燥することができる。
この実施形態によれば、加熱工程が、保持層形成工程においてヒータユニット6を用いて基板Wを加熱する第1加熱工程と、気相層形成工程においてヒータユニット6を用いて基板Wを加熱する第2加熱工程とを含む。この方法によれば、保持層形成工程および気相層形成工程において共通のヒータユニット6を使用することができる。したがって、基板Wを加熱するためのユニットを複数設ける必要がない。
【0114】
この実施形態によれば、加熱工程においてヒータユニット6の温度が一定である。そして、加熱工程の実行中に、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離が変更される(距離変更工程)。
ヒータユニット6の温度変化に要する時間は、基板Wの温度変化に要する時間と比較して長い。そのため、加熱工程において、ヒータユニット6の温度を変更して基板Wを加熱する場合、ヒータユニット6が所望の温度に変化するまで待たなければ基板Wが所望の温度に達しない。したがって、基板処理に要する時間が長くなるおそれがある。
【0115】
ヒータユニット6から基板Wに伝達される熱量は、基板Wの下面とヒータユニット6との間の距離に応じて変化する。そこで、ヒータユニット6の温度を一定に保った状態で、基板Wの下面とヒータユニットとの間の距離を変更することによって、基板の温度を所望の温度に変化させることができる。したがって、ヒータユニット6の温度変化に要する時間を削減することができる。ひいては、基板処理に要する時間を削減することができる。
【0116】
基板Wの下面とヒータユニット6との間の距離が短いほど、基板Wに伝達される熱量が大きくなり、基板Wの温度上昇の度合が大きくなる。たとえば、第1加熱工程では、基板Wの下面とヒータユニット6とが離間した位置関係になるように基板Wの下面とヒータユニット6との間の距離を変更し、第2加熱工程では、基板Wの下面とヒータユニット6とが接触する位置関係になるように基板Wの下面とヒータユニット6との距離を変更すれば、第2加熱工程における基板Wの温度を第1加熱工程における基板Wの温度よりも高く設定することができる。
【0117】
この実施形態によれば、第1処理液に含まれる溶質は、感熱水溶性樹脂である。保持層形成工程の第1加熱工程では、基板Wの上面に供給された第1処理液の温度が変質温度未満の温度になるように基板Wが加熱される。
この方法によれば、保持層形成工程では、第1処理液の温度が変質温度未満の温度になるように基板Wが加熱されてパーティクル保持層100が形成される。そのため、パーティクル保持層100は、SC1液やDIW等の剥離液に対して難溶性ないし不溶性であるものの、剥離液によって剥離が可能である。したがって、保持層除去工程では、基板Wの上面に形成されたパーティクル保持層100を剥離液によって溶解させることなく、パーティクル101を保持した状態のパーティクル保持層100を基板Wの上面から剥離して除去することができる。
【0118】
その結果、パーティクル101を保持した状態のパーティクル保持層100を基板Wの上面から剥離することにより、パーティクル101を高い除去率で除去することができる。さらに、パーティクル保持層100の残渣が基板Wの上面に残ったり再付着したりするのを抑制することができる。
この実施形態によれば、保持層形成工程では、基板Wの上面に供給された第1処理液の温度が溶媒の沸点未満になるように基板Wが加熱される。そのため、保持層形成工程の第1加熱工程後のパーティクル保持層100中に溶媒を残留させることができる。そのため、その後の保持層除去工程において、パーティクル保持層100中に残留した溶媒と、供給された剥離液との相互作用によって、パーティクル保持層100を基板Wの上面から剥離しやすくすることができる。すなわち、パーティクル保持層100中に剥離液を浸透させて、基板Wとの界面まで到達させることにより、パーティクル保持層100を基板Wの上面から浮かせて剥離させることができる。
【0119】
この実施形態では、剥離液がSC1液またはDIWであり、第1処理液の溶媒がPGEEであるため、剥離液が溶媒に対する相溶性を有している。保持層形成工程において、パーティクル保持層100中に溶媒を適度に残留させておくと、当該溶媒に対して相溶性の剥離液がパーティクル保持層100中に浸透し、基板Wとの界面にまで到達し得る。それにより、パーティクル保持層100を基板Wの上面から浮かせて剥離させることができる。
【0120】
この実施形態によれば、保持層除去工程の後でかつ液膜形成工程の前に、IPA等の残渣除去液を基板Wの上面に供給することによって、パーティクル保持層100を除去した後の基板Wの上面に残る残渣が除去される(残渣除去工程)。残渣除去液は、パーティクル保持層100を形成する溶質成分を溶解させる性質を有する。そのため、液膜形成工程の前に、パーティクル保持層100の残渣を残渣除去液に溶解させて、基板Wの上面から除去することができる。
【0121】
この実施形態によれは、残渣除去液が、第2処理液と同一の液体である。そのため、液膜形成工程において、基板Wの上面に残渣処理液を第2処理液に置換する時間を削減することができる。したがって、基板処理に要する時間を短縮することができる。
また、第2処理液供給ユニットである第3移動ノズル18が残渣除去液供給ユニットとしても機能する。つまり、液膜形成工程で用いる第3移動ノズル18を、残渣除去工程でも使用することができる。そのため、残渣除去工程と液膜形成工程とで基板Wの上面に液体を供給するユニットを変更することなく、残渣除去工程とその後の液膜形成工程とを連続して実行することができる。
【0122】
この実施形態によれば、液膜排除工程が、穴開け工程と、穴広げ工程とを含む。そのため、液膜排除工程において、液膜150の中央領域に形成された穴151を外周に向かって広げることによって、基板W上から液膜が排除される。そのため、第2処理液の液滴が基板W上に残留することを抑制または防止できる。したがって、基板の上面を良好に乾燥させることができる。
【0123】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、第1加熱工程における基板Wの加熱温度を、保持層形成工程において形成される予定のパーティクル保持層100の厚さ(膜厚)に応じた温度にするために、距離変更工程において、第1加熱工程における基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離を変更してもよい。
【0124】
パーティクル保持層100の膜厚は、基板Wの上面に形成されたパターンの種類(高さ)に応じて設定される。パーティクル保持層100の膜厚は、処理液供給工程における基板回転速度を変更して基板W上の第1処理液の厚さを変更することによって、調整することができる。詳しくは、基板W上の第1処理液の厚さは、基板回転速度が高いほど薄くなるため、パーティクル保持層100の膜厚も、基板回転速度が高いほど薄くなる。
【0125】
また、第1加熱工程では、基板W上の第1処理液が加熱されることによって溶媒が揮発し、それによって、パーティクル保持層100が形成される。溶媒の揮発によってパーティクル保持層100が収縮するため、パーティクル保持層100の膜厚は、第1加熱工程開始直前の基板W上の第1処理液の厚さよりも薄くなる。第1加熱工程開始時の基板W上の第1処理液の液膜の厚さに対する第1加熱工程後のパーティクル保持層100の厚さの割合を、パーティクル保持層100の収縮率という。
【0126】
基板Wの回転によって基板Wの上面の第1処理液が薄くなると、第1加熱工程の開始前に基板W上にパーティクル保持層100が形成されることがある。この場合、収縮率は、第1加熱工程開始時の基板W上のパーティクル保持層100の厚さに対する第1加熱工程後のパーティクル保持層100の厚さの割合である。
パーティクル保持層100の収縮率は、パーティクルの除去効果に影響する。特に、収縮率が大きいほど、良好なパーティクル除去効果が得られる傾向がある。好適なパーティクル除去効果を得るためには、パーティクル保持層100を所望の収縮率で収縮させる必要がある。加熱温度と収縮率との関係は、膜厚の大きさによって異なるため、所望の収縮率でパーティクル保持層100を収縮させるために必要な加熱温度は、膜厚に応じて異なる。
【0127】
そこで、保持層形成工程において形成される予定のパーティクル保持層100の膜厚に応じた温度に基板Wが加熱されるように、第1加熱工程における基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離が予め設定されればよい(距離設定工程)。距離変更工程において、第1加熱工程における基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離が、距離設定工程で予め設定された距離に変更されることによって、溶媒の揮発により形成されたパーティクル保持層100が所定の加熱温度で加熱される。これにより、パーティクル保持層100を所望の収縮率で収縮させることができるので、基板W上からパーティクルを良好に除去することができる。
【0128】
たとえば、基板W上に形成されるパーティクル保持層100の厚さが第1層厚(たとえば30nm)になる回転速度で、第1処理液供給工程において基板Wが回転される場合、本実施形態のように、第1加熱工程におけるヒータユニット6の位置が近接位置に設定される。基板W上に形成されるパーティクル保持層100の厚さが第2層厚(たとえば75nm)になる回転速度で、第1処理液供給工程において基板Wが回転される場合、本実施形態とは異なり、第1加熱工程におけるヒータユニット6の位置が下位置に設定される。
【0129】
ヒータユニット6の温度が195℃である場合、基板Wは、下位置に位置するヒータユニット6によって90℃まで加熱される。ヒータユニット6の温度が195℃である場合、基板Wは、近接位置に位置するヒータユニット6によって110℃まで加熱される。第1処理液の溶質として用いられる感熱水溶性樹脂の変質温度は、200℃であり、第1処理液の溶媒として用いられるPGEEの沸点は、132℃である。そのため、ヒータユニット6の温度が195℃である場合、第1加熱位置が下位置および近接位置、ならびにこれらの間の任意の位置に設定されれば、第1加熱工程において、基板W上の第1処理液の温度が溶媒の沸点未満となり、かつ、基板W上の第1処理液の温度が感熱水溶性樹脂の変質温度未満となるように、基板Wを加熱することができる。
【0130】
また、この態様であれば、ヒータユニット6の温度を195℃等の一定温度に維持しながら、第1加熱位置を適宜変更することによって、基板Wの加熱温度を変更することができる。ヒータユニット6の温度自体を変更する場合、変更途中の温度は、設定温度よりも高温になるオーバーシュート等が起こるため、ヒータユニット6の温度が設定温度になって安定するまでに要する時間が長期化し得る。そこで、ヒータユニット6を一定の温度に保つことで、ヒータユニット6の温度変更に要する時間を低減することができ、より安定的に加熱処理を行うことができる。
【0131】
また、上述の実施形態では、第1処理液の溶質として、感熱水溶性樹脂を用いるとした。しかしながら、第1処理液の溶質として用いられる樹脂は、感熱水溶性樹脂以外の樹脂であってもよい。
第1処理液に含まれる溶質として用いられる感熱水溶性樹脂以外の樹脂は、たとえば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等が挙げられる。第1処理液において、これらの樹脂を用いる場合、溶質として用いる樹脂を溶解し得る任意の溶媒を用いることができる。
【0132】
第1処理液の溶質として感熱水溶性樹脂以外の樹脂は変質温度を有しないので、パーティクル保持層形成工程の第1加熱工程では、第1処理液の溶質として感熱水溶性樹脂を用いた場合のように第1処理液の温度が感熱水溶性樹脂の変質温度未満となる必要はなく、基板W上の第1処理液の温度が溶媒の沸点未満となるように基板Wが加熱されればよい。
第1処理液の溶質として感熱水溶性樹脂以外の樹脂を用いる場合、残渣除去液として、いずれかの樹脂に対する溶解性を有する任意の液体を用いることができる。第1処理液の溶質として感熱水溶性樹脂以外の樹脂を用いる場合、残渣除去液としては、たとえばシンナー、トルエン、酢酸エステル類、アルコール類、グリコール類等の有機溶媒、酢酸、蟻酸、ヒドロキシ酢酸等の酸性液を用いることができる。
【0133】
第1処理液の溶質としては、前述した各種樹脂以外にも、たとえば、樹脂以外の有機化合物や、有機化合物と他の混合物を用いてもよい。あるいは、有機化合物以外の化合物であってもよい。
剥離液としては、水系でない他の剥離液を用いることもできる。その場合には、当該剥離液に難溶性ないし不溶性のパーティクル保持層100を形成する溶質、剥離液に対して相溶性を有し、溶質に対して溶解性を有する溶媒、剥離液に対して相溶性を有し、溶質に対して溶解性を有する残渣除去液等を適宜、組み合わせればよい。
【0134】
また、上述の実施形態では、第2処理液は、水よりも表面張力の低い低表面張力液体であるとした。しかし、第2処理液は、低表面張力液体に限られず、DIWであってもよい。
また、上述の実施形態では、第3移動ノズル18から吐出されるIPAを、第2処理液および残渣処理液として用いるとした。つまり、上述の実施形態では、第2処理液として用いられる液体と、残渣処理液として用いられる液体とが、同一の液体であった。しかし、第2処理液として用いられる液体と、残渣処理液として用いられる液体とが、同一の液体でなくても、同種の液体であれば、残渣除去工程および液膜形成工程に要する時間を短縮することができる。同種の液体とは、液体を主に構成する分子が互いに同じである複数の液体のことをいう。つまり、同種の液体とは、互いに純度の異なるIPA等である。
【0135】
上述の実施形態では、基板Wを保持するスピンチャック5に対してヒータユニット6を昇降させることによって、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離を変更するとした。上述の実施形態とは異なり、ヒータユニット6に対してスピンチャック5を昇降させることによって、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離を変更する構成であってもよいし、ヒータユニット6とスピンチャック5とを相対的に上下動させることによって、基板Wの下面とヒータユニット6の対向面6aとの間の距離を変更する構成であってもよい。
【0136】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0137】
1 :基板処理装置
3 :コントローラ
5 :スピンチャック(基板保持ユニット)
6 :ヒータユニット
15 :第1移動ノズル(第1処理液供給ユニット)
16 :第2移動ノズル(剥離液供給ユニット)
17 :固定ノズル(剥離液供給ユニット)
18 :第3移動ノズル(第2処理液供給ユニット、残渣除去液供給ユニット、気体供給ユニット)
65 :ヒータ昇降ユニット
100 :パーティクル保持層
150 :液膜
151 :穴
152 :気相層
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図5M
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C