(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】車両のエアベント装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/26 20060101AFI20220118BHJP
F16K 11/10 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B60H1/26 611A
F16K11/10 Z
(21)【出願番号】P 2017255018
(22)【出願日】2017-12-28
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 将太
(72)【発明者】
【氏名】夏井 宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】吉川 直利
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-019611(JP,U)
【文献】特開2014-121969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/26
F16K 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室に対して設けられるエアベント装置であって、
前記車室の内外での通気を可能にする開口部
として第一開口部および第二開口部が形成される本体と、
前記開口部を閉じる閉部材と
して、前記第一開口部を開閉するように可動可能に設けられる第一閉部材と、前記第二開口部を開閉するように可動可能に設けられる第二閉部材と、
前記第一開口部の周囲を囲うように設けられた第一リブ部および前記第二開口部の周囲を囲うように設けられた第二リブ部の中の少なくとも一方のリブ部と、
前記本体を可動するアクチュエータと、
前記アクチュエータによる前記本体の可動を制御する制御部と、
を有し、
前記閉部材は、前記本体の外面において前記開口部の上側に取り付けられ、前記開口部を開閉するように可動可能に設けられ、
前記本体は、前記開口部を
初期位置から外側および内側へ傾けるように前記車両に対して可動可能に設けら
れ、
前記第一閉部材と前記第二閉部材とは、前記本体についての異なる傾斜角度において各々の開口部を開き、
前記制御部は、
前記車両の状態に応じて前記本体を、少なくとも初期位置、初期位置から外側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部の中の少なくとも一方を開く位置と、初期位置から内側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部を開き難くする位置、の間で切り替える、
車両のエアベント装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記本体を、初期位置、外側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部の中の一方のみを開く位置、外側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部の双方を開く位置、内側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部を開き難くする位置、の間で切り替える、
請求項1記載の車両のエアベント装置。
【請求項3】
前記本体の外面には、前記開口部の周囲に、少なくとも前記開口部の左右両側および下側を囲うリブ部が形成され、
前記リブ部の先端周縁が前記閉部材と接することにより前記閉部材は前記開口部を閉じる、
請求項1または2記載の車両のエアベント装置。
【請求項4】
前記閉部材は、可撓材料により、前記リブ部の先端周縁より一回り大きなサイズの板状に形成される、
請求
項3記載の車両のエアベント装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記車両のドアロックを解除した開状態、
前記車両の空調装置が外気を導入する状態、
前記車両が停車している状態、
前記車両のシフトレバーがパーキングレンジに設定されている状態、および
風により前記車両が傾斜していない状態、
の中の少なくとも一つの状態において、前記本体を可動させて外側の傾斜位置に設定する、
請求項
1から4
のいずれか一項記載の車両のエアベント装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記車両のドアロックを施錠した閉状態、
前記車両の空調装置が外気を導入しない内気循環の状態、
前記車両が走行している状態、
前記車両のシフトレバーがドライブレンジに設定されている状態、
前記車両がアイドリングしながら停車している状態、
前記車両が悪路を走行している場合、
風により前記車両が傾斜している状態、および
前記車両が傾斜した状態で停車している状態、
の中の少なくとも一つの状態において、前記本体を可動させて内側の傾斜位置に設定する、
請求項1から
5のいずれか一項記載の車両のエアベント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両のエアベント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、エアベント装置が設けられる。特許文献1では、車室のドア後側に、車室の内外での通気を可能にするアウトレットバルブ装置を設ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このように車両の車室に対して設けられるエアベント装置は、ドアの開閉などの際に車室の内圧が高くなることを抑制するために設けられている。このため、一般的にはゴムなどの可撓材料を用いた板材を用いて、エアベント装置の開口部を塞いでいる。
しかしながら、可撓性を有する板材を用いてエアベント装置の開口部を塞いだ場合、エアベント装置が開閉する条件は、板材の柔らかさや厚さ(重さ)などにより物理的に一義的に決まってしまうことになる。このため、車両の状態によっては、エアベント装置が必ずしも望ましい開閉状態にはならない可能性がある。たとえば車外の排気ガスや音の侵入を抑制したい状態であるにもかかわらず、エアベント装置が開いてしまう可能性がある。
【0005】
このように、車両のエアベント装置では、車両の状態に応じて好適に開閉できるようにすることが望まれている。
なお、車両の各種の状態に応じてエアベント装置の開閉を制御するために、板材をアクチュエータにより開閉駆動することが考えられる。しかしながら、この場合には、たとえばドアを閉じる際に、それによる車室の内圧が高くなったことを検出し、その後に開閉の制御を開始することになる。よって、内圧を抑制する制御応答に、必然的な遅れが生じてしまうことになる。ドアを閉じた際の通気開始が、アクチュエータにより開閉駆動をしない場合と比べて、遅れてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両のエアベント装置は、車両の車室に対して設けられるエアベント装置であって、前記車室の内外での通気を可能にする開口部として第一開口部および第二開口部が形成される本体と、前記開口部を閉じる閉部材として、前記第一開口部を開閉するように可動可能に設けられる第一閉部材と、前記第二開口部を開閉するように可動可能に設けられる第二閉部材と、前記第一開口部の周囲を囲うように設けられた第一リブ部および前記第二開口部の周囲を囲うように設けられた第二リブ部の中の少なくとも一方のリブ部と、前記本体を可動するアクチュエータと、前記アクチュエータによる前記本体の可動を制御する制御部と、を有し、前記閉部材は、前記本体の外面において前記開口部の上側に取り付けられ、前記開口部を開閉するように可動可能に設けられ、前記本体は、前記開口部を初期位置から外側および内側へ傾けるように前記車両に対して可動可能に設けられ、前記第一閉部材と前記第二閉部材とは、前記本体についての異なる傾斜角度において各々の開口部を開き、前記制御部は、前記車両の状態に応じて前記本体を、少なくとも初期位置、初期位置から外側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部の中の少なくとも一方を開く位置と、初期位置から内側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部を開き難くする位置、の間で切り替える。
好適には、前記制御部は、前記本体を、初期位置、外側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部の中の一方のみを開く位置、外側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部の双方を開く位置、内側へ傾けて前記第一開口部および前記第二開口部を開き難くする位置、の間で切り替える、とよい。
【0009】
好適には、前記本体の外面には、前記開口部の周囲に、少なくとも前記開口部の左右両側および下側を囲うリブ部が形成され、前記リブ部の先端周縁が前記閉部材と接することにより前記閉部材は前記開口部を閉じる、とよい。
【0010】
好適には、前記閉部材は、可撓材料により、前記リブ部の先端周縁より一回り大きなサイズの板状に形成される、とよい。
【0012】
好適には、前記制御部は、前記車両のドアロックを解除した開状態、前記車両の空調装置が外気を導入する状態、前記車両が停車している状態、前記車両のシフトレバーがパーキングレンジに設定されている状態、および風により前記車両が傾斜していない状態、の中の少なくとも一つの状態において、前記本体を可動させて外側の傾斜位置に設定する、とよい。
【0013】
好適には、前記制御部は、前記車両のドアロックを施錠した閉状態、前記車両の空調装置が外気を導入しない内気循環の状態、前記車両が走行している状態、前記車両のシフトレバーがドライブレンジに設定されている状態、前記車両がアイドリングしながら停車している状態、前記車両が悪路を走行している場合、風により前記車両が傾斜している状態、および前記車両が傾斜した状態で停車している状態、の中の少なくとも一つの状態において、前記本体を可動させて内側の傾斜位置に設定する、とよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、本体の外面についての開口部の上側に取り付けられて、開口部を開閉するように可動可能に設けられた閉部材を用いて、開口部を閉じる。よって、たとえば車室の内圧が高くなると、それに基づいて開口部が即座に開くことができる。開閉を制御する場合における応答遅れなどが生じない。
しかも、エアベント装置の本体は、開口部を傾けるように車両に対して可動可能に設けられている。よって、本体を可動させて開口部を傾けることにより、車室の内外において圧力差が生じていない状態での、閉部材による開口部の閉塞状態を変化させることができる。車両の状態に応じて、好適に開閉を調整することができる。
たとえば、開口部を、傾ける前の初期状態から外側へ傾くように本体を可動可能とすることにより、本体を可動させた状態では、閉部材と本体との間を開けることができる。これにより、車室の内外において圧力差が生じていない場合でも、車室の内外で通気可能となる。
この他にもたとえば、開口部を、傾ける前の初期状態から内側へ傾くように本体を可動可能とすることにより、本体を可動させた状態では、開口部の上に閉部材を乗せるようにすることができる。これにより、車室の内外において圧力差が生じている場合でも、閉部材と本体との間が空き難くなる。
しかも、閉部材は、本体の外面についての開口部の上側に取り付けられている。よって、本体を可動させていない状態においては閉部材により開口部を閉じることができ、閉部材による開口部の閉塞機能を損なわない。
このように本体を可動可能とすることにより、たとえば遮音性能と通気性能とを高いレベルで両立させることなどが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明のエアベント装置が適用される自動車の説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係るエアベント装置の構成の説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係るエアベント装置の本体の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明のエアベント装置10が適用される自動車1の説明図である。自動車1は、車両の一例である。
図1の自動車1は、車体2を有する。車体2には、乗員がドア3を開閉して乗降する車室4が画成される。
ところで、乗降のためにドア3を閉じる開閉する場合、ドア3の開閉により車室4の内圧が高くなることがある。この車室4の内圧上昇を抑制するために、自動車1には、エアベント装置10が設けられる。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態に係るエアベント装置10の構成の説明図である。
図2のエアベント装置10は、本体11、第一閉部材19、第二閉部材20、アクチュエータ21、制御部23、センサ群22、を有する。
【0020】
図3は、
図2の本体11を外側から見た正面図である。
また、
図2において本体11は、縦断面図により図示されている。
【0021】
本体11は、略矩形形状の枠部12、枠部12の内側を塞ぐ板状の閉塞部13、枠部12の外周に沿って形成されるフランジ部14、を有する。本体11は、たとえばフランジ部14が乗員室の側面と重なる状態で、車室4の側面に形成された貫通孔5に嵌められる。
図2において本体11の左側が車室側となる内側であり、右側が車外となる外側である。また、
図1では、エアベント装置10の本体11は、車体2の側面についての、後バンパー部材6の内側となる位置に設けられている。
板状の閉塞部13は、
図2に示すように、枠部12についての内側に沿って、外下側へ向けて若干傾斜した段付き形状に形成される。これにより、略矩形形状の枠部12の内側は閉塞される。車室4は、車外から隔離された空間となり得る。
板状の閉塞部13には、第一開口部15、第二開口部16、が開設される。第一開口部15は、板状の閉塞部13の上部において略四角形形状に形成される。第二開口部16は、板状の閉塞部13の下部において略四角形形状に形成される。第一開口部15と第二開口部16とは、板状の閉塞部13において上下方向に並べて形成される。
【0022】
板状の閉塞部13の外面には、第一リブ部17、第二リブ部18、が立設される。
第一リブ部17は、略四角形形状の第一開口部15の左右両側および下側を囲うように略コの字形状に形成される。第一リブ部17についての左右両側の部分は、上側を頂点とする略三角形形状に形成される。これにより、第一リブ部17についての左右両側の部分は、上側で小さく、下側になるにつれて大きくなる傾斜面に形成される。第一リブ部17についての下側の部分は、左右両側の部分の下端と同じ高さに形成される。
第二リブ部18は、略四角形形状の第二開口部16の左右両側および下側を囲うように略コの字形状に形成される。第二リブ部18についての左右両側の部分は、上側を頂点とする略三角形形状に形成される。これにより、第二リブ部18についての左右両側の部分は、上側で小さく、下側になるにつれて大きくなる傾斜面に形成される。第二リブ部18についての下側の部分は、左右両側の部分の下端と同じ高さに形成される。
そして、本実施形態では、第一リブ部17についての左右両側の部分による傾斜面と、第二リブ部18についての左右両側の部分による傾斜面とは、鉛直方向に対して同じ角度で傾斜している。
なお、第一リブ部17は、第一開口部15の周囲全体を囲うように形成されてもよい。第二リブ部18は、第二開口部16の周囲全体を囲うように形成されてもよい。
【0023】
第一閉部材19は、ゴムなどの可撓材料を用いて、第一リブ部17の先端周縁より一回り大きいサイズの略四角形の板状に形成される。そして、略四角形の板状の第一閉部材19の上縁部分は、第一開口部15の上側において閉塞部13の外面に固定される。これにより、第一閉部材19は、自重で垂れ下がった状態において第一リブ部17の先端周縁と全体的に接し、第一リブ部17とともに第一開口部15を外側から塞ぐことができる。また、第一閉部材19の下縁部分が外側へ撓むことにより、第一閉部材19と第一リブ部17との間に空間が形成される。この隙間を通じて、車室4の内外が通気可能になる。
第二閉部材20は、ゴムなどの可撓材料を用いて、第二リブ部18の先端周縁より一回り大きいサイズの略四角形の板状に形成される。そして、略四角形の板状の第二閉部材20の上縁部分は、第二開口部16の上側において閉塞部13の外面に固定される。これにより、第二閉部材20は、自重で垂れ下がった状態において第二リブ部18の先端周縁と全体的に接し、第二リブ部18とともに第二開口部16を外側から塞ぐことができる。また、第二閉部材20の下縁部分が外側へ撓むことにより、第二閉部材20と第二リブ部18との間に空間が形成される。この隙間を通じて、車室4の内外が通気可能になる。
たとえば、ドア3の開閉により車室4の内圧が高くなると、それによる内外圧力差により第一閉部材19および第二閉部材20が外側へ撓む。これにより、車室4から空気を外へ逃がして、車室4の内圧が大きく上昇してしまうことを抑制できる。
【0024】
ところで、このようにゴムなどの可撓材料を用いた板状の閉部材19,20を用いて開口部15,16を閉塞した場合、エアベント装置10が開閉する条件は、板材の柔らかさ、厚さ、重さなどにより物理的に一義的に決まってしまうことになる。このため、自動車1の状態によっては、エアベント装置10が必ずしも望ましい開閉状態にはならない可能性がある。たとえば車外の排気ガスや音の侵入を抑制したい状態であるにもかかわらず、エアベント装置10が開いてしまう可能性がある。
このように、自動車1のエアベント装置10では、自動車1の状態に応じて好適に開閉できるようにすることが望まれている。たとえばドア3を閉じる際には好適に開き、その他の場合にはなるべく閉じるようにすることが望まれる。閉部材19,20について厳しい条件が求められる。
なお、自動車1の各種の状態に応じてエアベント装置10の開閉を制御するために、閉部材19,20をアクチュエータにより開閉駆動することが考えられる。しかしながら、この場合には、たとえばドア3を閉じる際に、それによる車室4の内圧が高くなったことをセンサで検出し、その後に開閉制御を開始することになる。よって、内圧を抑制する際において、必然的な制御応答の遅れが生じてしまうことになる。ドア3を閉じた際の通気開始が、アクチュエータ21により開閉駆動をしない上述した場合と比べて、遅れてしまう可能性がある。
【0025】
そこで、本実施形態では、エアベント装置10の本体11を、車体2に対して可動可能に設ける。具体的には、
図2に示すように、枠部12の下側を中心として、本体11を内側方向および外側方向へ揺動可能に設ける。本体11は、車体2の側面に沿って立つ初期位置から、車室4の内側へ傾いた内倒位置と、初期位置から車室4の外側へ傾いた外倒位置とに、可動する。
【0026】
アクチュエータ21は、本体11を駆動する。
【0027】
センサ群22は、自動車1の状態を検出する。センサ群22には、たとえばドアロックの解除や施錠を検出するセンサ、空調装置の動作モードを検出するモードセンサ、自動車1の走行や停止の状態を検出する振動センサやカメラ、車体2の傾斜状態を検出する角度センサなどがある。
【0028】
制御部23は、センサ群22により検出された自動車1の状態に応じて、アクチュエータ21を用いた本体11の駆動を制御して、本体11の姿勢を位置決めする。
【0029】
次に、自動車1の状態に応じてエアベント装置10の本体11を駆動する制御について、具体例を説明する。
【0030】
制御部23は、以下に説明する特段の制御を必要としない通常の状態では、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を初期位置に位置決めする。この場合、第一閉部材19および第二閉部材20は各々の自重と車室4の内圧とのバランスに基づいて、内圧が高くなる場合などにおいて第一開口部15および第二開口部16を開くことができる。
【0031】
そして、自動車1の状態として図示外のドアロックの解除がセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を外倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19と第一リブ部17との間に空間が形成され、第二閉部材20と第二リブ部18との間に空間が形成される。よって、その後にドア3が開閉され、ドア3を閉じる際においても、事前に開いた第一開口部15および第二開口部16から、車室4に閉じ込められる空気を逃がすことができる。第一閉部材19および第二閉部材20を開き難くなるように、たとえば重く形成していたとしても、車室4の内圧が高くならないようにできる。また、事前に第一開口部15および第二開口部16が開いているので、ドア3の開閉の際に閉部材19,20とリブ部17,18とが当たる音が発生し難くなる。
【0032】
自動車1が停車している状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を外倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19と第一リブ部17との間に空間が形成され、第二閉部材20と第二リブ部18との間に空間が形成される。よって、停車中の車内の空気を換気することができる。
【0033】
自動車1の図示外のシフトレバーがパーキングレンジに設定されている状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を外倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19と第一リブ部17との間に空間が形成され、第二閉部材20と第二リブ部18との間に空間が形成される。よって、パーキング中の車内の空気を換気することができる。
【0034】
自動車1が風圧により傾斜していない状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を外倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19と第一リブ部17との間に空間が形成され、第二閉部材20と第二リブ部18との間に空間が形成される。よって、傾斜していない車内の空気を換気することができる。
【0035】
また、自動車1の状態としてドアロックの施錠がセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を内倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19が第一リブ部17の上に乗るようになり、第二閉部材20が第二リブ部18の上に乗るようになる。よって、第一開口部15および第二開口部16は、初期位置に本体11がある場合よりも開き難くなる。車室4から空気が漏れ出し難くなる。第一閉部材19および第二閉部材20を開き易くするように、たとえば軽く形成していたとしても、車室4から空気が漏れ出難くなる。
【0036】
自動車1の空調装置が外気を導入しない内気循環の状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を内倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19は第一リブ部17の上に乗るようになり、第二閉部材20は第二リブ部18の上に乗るようになる。よって、第一開口部15および第二開口部16から、車室4の空気が漏れ出し難くなる。
【0037】
自動車1が走行している状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を内倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19は第一リブ部17の上に乗るようになり、第二閉部材20は第二リブ部18の上に乗るようになる。よって、走行中に、第一開口部15および第二開口部16から、車室4の外の空気が流れ込み難くなる。また、第一開口部15および第二開口部16が開き難くなるため、車外音が車内に入り込み難くなる。また、エグゾーストの排気圧力変動(低音)により閉部材19,20が揺れて浮いてしまうことが起き難くなる。
なお、制御部23は、自動車1の速度が所定速度以上である場合において、本体11を内倒状態に位置決めしてもよい。また、自動車1の速度が高いほど、本体11を内側へ大きく内倒させるようにしてもよい。
【0038】
自動車1のシフトレバーがドライブレンジに設定されている状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を内倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19は第一リブ部17の上に乗るようになり、第二閉部材20は第二リブ部18の上に乗るようになる。よって、走行中に、第一開口部15および第二開口部16から、車室4の外の空気が流れ込み難くなる。また、走行中に他車などとすれ違い、そのすれ違により外気の圧力が変動する場合でも、第一開口部15および第二開口部16が開き難くなる。
【0039】
自動車1がアイドリングしながら停車している状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を内倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19は第一リブ部17の上に乗るようになり、第二閉部材20は第二リブ部18の上に乗るようになる。よって、第一開口部15および第二開口部16が不用意に開いて、アイドリング中の排気ガスが車室4の内側へ流れ込み難くなる。また、アイドリング中の排気音が、車室4の内側へ流れ込み難くなる
【0040】
自動車1が悪路を走行している状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を内倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19は第一リブ部17の上に乗るようになり、第二閉部材20は第二リブ部18の上に乗るようになる。よって、第一開口部15および第二開口部16が不用意に開いて、悪路を走行している最中に車室4の空気が漏れ出たり、外気やほこりが車室4の内側へ流れ込んだりし難くなる。
【0041】
風により自動車1が傾斜している状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を内倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19は第一リブ部17の上に乗るようになり、第二閉部材20は第二リブ部18の上に乗るようになる。よって、第一開口部15および第二開口部16が不用意に開いて、傾斜した状態において車室4の空気が漏れ出たり、外気が車室4の内側へ流れ込んだりし難くなる。
【0042】
自動車1が傾斜した状態で駐停車している状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を内倒状態に位置決めする。これにより、
図2に示すように、第一閉部材19は第一リブ部17の上に乗るようになり、第二閉部材20は第二リブ部18の上に乗るようになる。よって、第一開口部15および第二開口部16が不用意に開いて、傾斜した状態において車室4の空気が漏れ出たり、アイドリング中の排気ガスや外気が車室4の内側へ流れ込んだりし難くなる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、本体11の外面についての開口部15,16の上側に取り付けられて、可撓材料により可撓可能に形成され、自重で垂れ下がった状態において開口部15,16を閉じるように下縁部分が揺動可能に設けられた閉部材19,20を用いて、開口部15,16を閉じる。よって、たとえば車室4の内圧が高くなると、それに基づいて開口部15,16が即座に開くことができる。制御応答遅れなどは生じ難い。
しかも、エアベント装置10の本体11は、開口部15,16を傾けるように自動車1に対して可動可能に設けられている。よって、本体11を可動させて開口部15,16を傾けることにより、車室4の内外において圧力差が生じていない初期状態での、閉部材19,20による開口部15,16の閉塞状態を変化させることができる。
【0044】
たとえば、開口部15,16を、傾ける前の初期状態から外側へ傾くように本体11を可動可能とすることにより、本体11を可動させた状態では、閉部材19,20の下縁部分と本体11との間を開けることができる。これにより、車室4の内外において圧力差が生じていない場合でも、車室4の内外で通気可能となる。
この他にもたとえば、開口部15,16を、傾ける前の初期状態から内側へ傾くように本体11を可動可能とすることにより、本体11を可動させた状態では、開口部15,16の上に閉部材19,20を乗せるようにすることができる。これにより、車室4の内外において圧力差が生じている場合でも、閉部材19,20の下縁部分と本体11との間が空き難くなる。
【0045】
しかも、閉部材19,20は、可撓材料により可撓可能に形成されて、上縁部分が本体11の外面についての開口部15,16の上側に取り付けられるので、本体11を可動させていない初期状態においては、自重で垂れ下がった状態において開口部15,16を閉じることができる。初期状態において、閉部材19,20による開口部15,16の閉塞機能を損なわない。
このように本体11を可動可能とすることにより、たとえば遮音性能と通気性能とを高いレベルで両立させることなどが可能になる。
【0046】
本実施形態では、本体11の外面には、開口部15,16の周囲に、少なくとも開口部15,16の左右両側および下側を囲うリブ部17,18が形成される。そして、閉部材19,20は、リブ部17,18の先端周縁が閉部材19,20と全体的に接することにより開口部15,16を閉じる。これにより、閉部材19,20は、閉じた状態においてリブ部17,18の先端周縁と線状に接することになる。閉部材19,20は、本体11を傾けた状態においても、本体11を立てた初期状態と同様に開閉し易くなる。
これに対して、閉じた状態の閉部材19,20が、仮にたとえば本体11の外面と面状に接する場合、閉部材19,20の外周部分と本体11とが密着し易くなる。そして、閉部材19,20と本体11とが密着する場合、本体11をたとえば内側へ傾けた状態では、本体11を立てた初期状態よりも開き難くなる。逆に、本体11をたとえば外側へ傾けた状態では、本体11を立てた初期状態よりも完全に閉じ難くなる。本体11を傾けた場合の開閉性能として、本体11を立てた場合と同等のものを得ることが難しくなる。
【0047】
本実施形態では、可撓材料により略板状に形成される閉部材19,20は、リブ部17,18の先端周縁より一回り大きなサイズに形成される。よって、閉部材19,20を可撓材料により略板状に形成しているにもかかわらず、本体11を傾けた状態においても、閉部材19,20が撓んでリブ部17,18の内側へ入り込んだり、はまったりし難くなる。
しかも、閉部材19,20がリブ部17,18の先端周縁より一回り大きなサイズに形成されることにより、閉部材19,20は、本体11の傾斜状態にかかわらず、リブ部17,18の先端周縁と線状に接することができる。
【0048】
上記実施形態では、初期状態において閉部材19,20は自重で垂れ下がった状態において開口部15,16を閉じている。この他にもたとえば、初期状態において自重で垂れ下がる閉部材19,20が開口部15,16との間を開けたり、開口部15,16の上に乗ったりしてもよい。
そして、初期状態において自重で垂れ下がる閉部材19,20が開口部15,16との間を開ける場合において、本体11は、傾けない状態を超えて、開口部15,16の上に閉部材19,20が乗るように開口部15,16を内側へ傾けるように可動可能とされてもよい。
また、初期状態において自重で垂れ下がる閉部材19,20が開口部15,16の上に乗る場合において、本体11は、傾けない状態を超えて、閉部材19,20と開口部15,16との間が開くように開口部15,16を外側へ傾けるように可動可能とされてもよい。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るエアベント装置10について説明する。以下の説明では、主に第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態と共通性を有する構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図4は、本発明の第2実施形態に係るエアベント装置10の本体11の側断面図である。
図4において、第二リブ部18についての左右両側の部分による傾斜面は、第一リブ部17についての左右両側の部分による傾斜面と比べて、鉛直方向に対して大きな角度で傾斜している。
【0051】
よって、
図4に示すように、本体11を車室4の外側へ少し傾けた第一外倒位置では、第一閉部材19が第一リブ部17から離れ、第二閉部材20は第二リブ部18と当接した状態となる。この場合、車室4の内外の圧力差などが無い無負荷状態において、第一開口部15のみが開く。
【0052】
また、本体11を車室4の外側へ更に傾けた第二外倒位置では、第一閉部材19が第一リブ部17から離れ、第二閉部材20が第二リブ部18から離れる。この場合、無負荷状態において、第一開口部15および第二開口部16が共に開く。
【0053】
このように第一開口部15と第二開口部16とは、本体11についての異なる傾斜角度において開くことになる。
【0054】
この場合、制御部23は、自動車1の状態に応じて、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を初期位置、内倒位置、第一外倒位置、または第二外倒位置に位置決めする。自動車1の状態に応じて、通気状態をきめ細かく制御することが可能になる。
【0055】
そして、たとえば、自動車1が停車している状態であることがセンサ群22により検出された場合、自動車1のシフトレバーがパーキングレンジに設定されている状態であることがセンサ群22により検出された場合、または、自動車1が風圧により傾斜していない状態であることがセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を第一外倒状態に位置決めする。これにより、第一閉部材19と第一リブ部17との間のみに空間が形成され、第二閉部材20と第二リブ部18との間に空間が形成されない。第一開口部15により、ゆっくりとした換気が可能になる。
【0056】
これに対して、自動車1の状態としてドアロックの解除がセンサ群22により検出された場合、制御部23は、アクチュエータ21を用いて本体11を駆動して、本体11を第二外倒状態に位置決めする。これにより、第一閉部材19と第一リブ部17との間と、第二閉部材20と第二リブ部18との間との双方に、空間が形成される。第一開口部15および第二開口部16により、効率的な換気が可能になる。
【0057】
ドア3を閉じた際の車室4の内圧が高くなり難くなる効果を損なうことなく、それ以外の場合には第一開口部15によるゆっくりとした換気により、車室4内の環境が急激に変化しないように換気することができる。
【0058】
本実施形態では、第一閉部材19および第二閉部材20が、本体11についての異なる傾斜角度において第一開口部15および第二開口部16を開く。よって、本体11を可動させて、第一開口部15および第二開口部16の中の一方のみを開いた状態と、双方を開いた状態とに設定することができる。これにより、本体11の傾斜角度を調整して、一方の開口部15,16のみを開いて小さな通気を確保したり、双方の開口部15,16を開いて大きな通気を確保したり、これらを切り替えて通気の最適化を図ることができる。また、車室4の内外の圧力差が小さい場合には、一方の開口部15,16のみを開き、大きい場合には双方の開口部15,16を開くようにできる。圧力差に応じた通気量を確保できる。必要以上の換気を抑制しつつ、圧力差をその大きさにかかわらず早期に解消することができる。
なお、本実施形態では、本体11の外倒位置を複数にしたが、内倒位置を複数にしてもよい。角度が大きい深い内倒位置では、浅い内倒位置と比べて、開口部15,16の上に閉部材19,20が乗るようになる。
【0059】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限られることはなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0060】
たとえば上記実施形態において、制御部23は、自動車1の状態に応じて、本体11を、初期位置、内倒位置、外倒位置などに位置決めされている。
この他にもたとえば、制御部23は、自動車1の状態に応じて、本体11を、その可動範囲内の任意の位置に位置決めしてもよい。
【0061】
上記実施形態では、開口部15,16の各々は、1枚の閉部材19,20により塞がれている。この他にもたとえば、各々の開口部15,16に対して、複数枚の閉部材を重ねて塞ぐようにしてもよい。また、重ねられる複数枚の閉部材は異なる可撓特性に形成されてもよい。
【0062】
上記実施形態では、本体11の略矩形形状の枠部12の内側には、板状の閉塞部13が設けられている。この他にも、枠部12の内側には、板状の閉塞部13の外側となるように、カバー部材を設けてもよい。たとえば第一閉部材19の外側にカバー部材を設けることにより、第一開口部15から音が進入しにくくなる。たとえば第2実施形態の第一外倒位置において、開いた第一開口部15から音が進入し難くなる。第一外倒位置での遮音性能を向上させることができる。
【0063】
上記実施形態では基本的に内燃機関を走行の動力源として使用する自動車を想定しているが、本発明は、モータによる電気的な動力源を使用または併用する自動車においても適用可能である。特にバッテリの蓄電電力を利用して走行する電気自動車では、バッテリの蓄電電力を効率よく且つ無駄を抑えて利用することが求められる。本発明は、たとえば空調装置と連動させて本体11を可動制御することにより、バッテリの蓄電電力の効率的利用に寄与することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…自動車(車両)、2…車体、3…ドア、4…車室、5…貫通孔、6…後バンパー部材、10…エアベント装置、11…本体、12…枠部、13…閉塞部、14…フランジ部、15…第一開口部、16…第二開口部、17…第一リブ部、18…第二リブ部、19…第一閉部材、20…第二閉部材、21…アクチュエータ、22…センサ群、23…制御部