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特許7008506アルミニウム製押出扁平多穴管及び熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】アルミニウム製押出扁平多穴管及び熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/40 20060101AFI20220118BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20220118BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20220118BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
F28F1/40 B
F28D1/053 A
F28F1/02 B
F28F21/08 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2017547881
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2016082021
(87)【国際公開番号】W WO2017073715
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-07
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2015213131
(32)【優先日】2015-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深田 紗代
(72)【発明者】
【氏名】法福 守
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】槙原 進
【審判官】山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-185885(JP,A)
【文献】特開2014-1868(JP,A)
【文献】特開2012-107841(JP,A)
【文献】特開2014-1882(JP,A)
【文献】特開平9-182928(JP,A)
【文献】特開2010-112671(JP,A)
【文献】特開平8-178568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/02
F28D 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
該冷媒通路の該上部壁面にのみ、管長さ方向に延長する突条が形成されており、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅が、0.45~2mmであり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とする蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項2】
前記突条の頂部が弧状又は円弧状であることを特徴とする請求項1記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項3】
各々の前記冷媒通路の前記上部壁面に形成されている前記突条の数が、~4であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項4】
押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
該冷媒通路の該下部壁面にのみ、管長さ方向に延長する突条が形成されており、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅が、0.45~2mmであり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とする蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項5】
前記突条の頂部が弧状又は円弧状であることを特徴とする請求項4記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項6】
各々の前記冷媒通路の前記下部壁面に形成されている前記突条の数が、~4であることを特徴とする請求項4又は5いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項7】
押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
複数の該冷媒通路は、上部壁面にのみ管長さ方向に延長する突条が形成されている上部壁面突条形成冷媒通路と、下部壁面にのみ管長さ方向に延長する突条が形成されている下部壁面突条形成冷媒通路と、の組み合わせであり、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅が、0.45~2mmであり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、該冷媒通路の横幅に対する該上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とする蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項8】
前記突条の頂部が弧状又は円弧状であることを特徴とする請求項7記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項9】
前記上部壁面突条形成冷媒通路の数と前記下部壁面突条形成冷媒通路の数の比が、2:8~8:2であることを特徴とする請求項7又は8いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項10】
前記上部壁面突条形成冷媒通路と前記下部壁面突条形成冷媒通路とが交互に繰り返されていることを特徴とする請求項7又は8いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項11】
各々の前記冷媒通路の前記上部壁面又は前記下部壁面に形成されている前記突条の数が、~4であることを特徴とする請求項7~10いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管。
【請求項12】
列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、請求項1~3いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器。
【請求項13】
列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、請求項4~6いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器。
【請求項14】
列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
複数の該扁平多穴管が、請求項1~3いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管と、請求項4~6いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管と、の組み合わせであり、
気相側に、請求項1~3いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管が配置されており、且つ、液相側に、請求項4~6いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管が配置されていること、
を特徴とする熱交換器。
【請求項15】
列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、請求項7~11いずれか1項記載の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏平多穴管の流体通路内部を水平方向に流通するような構造を有するエバポレータやコンデンサなどのルームエアコン等の空調機器や自動車用エアコンに用いられる熱交換器を構成するアルミニウム製押出扁平多穴管及びそれを用いる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンに代表される空調機器や冷凍機器等における蒸発器や凝縮器等の熱交換器では、オールアルミニウム製の熱交換器が多く用いられている。このようなオールアルミニウム製の熱交換器は、アルミニウム製の一対のヘッダに、アルミニウム製の押出扁平多穴管が多数列配置されて挿入固定され、それらの多数の扁平多穴管に、アルミニウム製の放熱フィンが多数固定されて構成されている。
【0003】
従来より、冷房専用空調用熱交換器では、伝熱性能の向上を目的として、このようなアルミニウム製押出扁平多穴管に、管内の伝熱面積を増加させるために、管の長さ方向に延びる冷媒通路内に、突条を形成させることが行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている扁平管は、流体通路内部に、曲面に形成された溝縁部と、曲面に形成された溝底部と、該溝底部と上記溝縁部とに間に形成された直線部を備えている。
【0005】
また、特許文献2に開示されている扁平管には、第1流体が流通する複数の流体通路が形成された扁平形状の熱交換チューブであって、各流体通路の壁面には、流体通路の流通方向に沿って延びる少なくとも1つの突条が形成され、突条の基端が位置する壁面には突条に沿って延びる溝が設けられている。
【0006】
また、特許文献3に開示されている扁平管では、管長さ方向に延びる複数の流体通路が、仕切り壁を介して管幅方向に並んで形成されており、両平坦壁における管幅方向の両端の流体通路を除いた各流体通路に臨む部分の内面に、流体通路の長さに延びる1つの凸条を形成し、仕切り壁の両側面に、流体通路の長さ方向に延びる1つの凸条が形成されており、仕切り壁に形成された凸条の高さを、両平坦壁における管幅方向の両端の流体通路を除いた各流体通路に臨む部分に形成された凸条の高さよりも低くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-154495号公報
【文献】特開2007-322007号公報
【文献】特開2010-255864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、冷暖房空調用熱交換器では、特許文献1~3の扁平管のように、管内の冷媒通路の壁面に、管長さ方向に延びる突条を形成させると、突条が流動抵抗となって圧力損失が増大し、蒸発性能が低下するという問題があった。
【0009】
従って、本発明の目的は、突条による流動抵抗の増大を抑制し、且つ、伝熱性能が高いアルミニウム製押出扁平多穴管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、以下の本発明によって解決される。
すなわち、本発明(1)は、押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
該冷媒通路の該上部壁面にのみ、管長さ方向に延長する突条が形成されており、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅が、0.45~2mmであり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とする蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管を提供するものである。
【0011】
また、本発明(2)は、押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
該冷媒通路の該下部壁面にのみ、管長さ方向に延長する突条が形成されており、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅が、0.45~2mmであり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とする蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管を提供するものである。
【0012】
また、本発明(3)は、押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
複数の該冷媒通路は、上部壁面にのみ管長さ方向に延長する突条が形成されている上部壁面突条形成冷媒通路と、下部壁面にのみ管長さ方向に延長する突条が形成されている下部壁面突条形成冷媒通路と、の組み合わせであり、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅が、0.45~2mmであり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、該冷媒通路の横幅に対する該上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とする蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管を提供するものである。
【0013】
また、本発明(4)は、列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、(1)の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器を提供するものである。
【0014】
また、本発明(5)は、列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、(2)の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器を提供するものである。
【0015】
また、本発明(6)は、列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
複数の該扁平多穴管が、(1)の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管と、(2)の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管と、の組み合わせであり、
気相側に、(1)の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管が配置されており、且つ、液相側に、(2)の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管が配置されていること、
を特徴とする熱交換器を提供するものである。
【0016】
また、本発明(7)は、列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、(3)の蒸発器用アルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、突条による流動抵抗の増大を抑制し、且つ、伝熱性能が高いアルミニウム製押出扁平多穴管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の形態例の模式的な斜視図である。
図2図1中のアルミニウム製押出扁平多穴管を、冷媒通路の開口側から見た拡大図である。
図3図2中のA部分の拡大図である。
図4図3中の突条及び突条間平坦部の拡大図である。
図5】本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の形態例を、冷媒通路の開口側から見た模式図である。
図6】本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の形態例を、冷媒通路の開口側から見た模式図である。
図7】本発明の第一の形態の熱交換器の形態例の模式的な斜視図である。
図8】本発明の第一の形態の熱交換器の形態例の模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管について、図1図3を参照して説明する。図1は、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の形態例の模式的な斜視図である。図2は、図1中のアルミニウム製押出扁平多穴管を、冷媒通路の開口側から見た拡大図である。図3は、図2中のA部分の拡大図である。図4は、図3中の突条及び突条間平坦部の拡大図である。
【0020】
図1図3中、アルミニウム製押出扁平多穴管1aは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。アルミニウム製押出扁平多穴管1aの外壁は、平坦な上部外壁9aと、平坦な下部外壁10aと、アルミニウム製押出扁平多穴管1aの管長さ方向に対して垂直な面で切ったときの断面視で円弧状の外部側壁11a、11aと、からなる。アルミニウム製押出扁平多穴管1aの管長さ方向に対して垂直な面で切ったときの断面視で、上部外壁9aと下部外壁10aの壁面は平行である。
【0021】
アルミニウム製押出扁平多穴管1aは、冷媒の流路となる冷媒通路2aを複数有する。冷媒通路2aは、管長さ方向17に延びている。なお、管長さ方向17は、アルミニウム製押出扁平多穴管1aの押出方向である。
【0022】
冷媒通路2aは、対向する上部壁面3a及び下部壁面4aと、対向する側壁面5a及び側壁面6aと、からなる。各々の冷媒通路2aは、隔壁8aで区画されることにより、管内に複数形成されている。そして、アルミニウム製押出扁平多穴管1aでは、冷媒通路2aには、上部壁面3aにのみ、管長さ方向に延びる突条7aが形成されている。よって、管長さ方向に対して垂直な面で切った断面における冷媒流路2aの形状は、上側の辺に、内側に向けて突起が形成されている略矩形状の形状である。
【0023】
冷媒通路2aでは、図3に示すように、突条の高さ15は、冷媒通路の縦幅14の5~25%、特に好ましくは冷媒通路の縦幅14の5~20%、より好ましくは冷媒通路の縦幅14の10~20%である。
【0024】
冷媒通路2aでは、図4に示すように、冷媒通路の横幅20に対する突条7aの1/2高さ(符号43で示す位置)における横幅42の比が、0.05~0.30、好ましくは0.10~0.20であり、且つ、冷媒通路の横幅20に対する上部壁面3aの突条間平坦部72の1つ当たりの横幅41の比が、0.20以下、好ましくは0.05~0.15である。
【0025】
冷媒通路2aでは、図4に示すように、突条7aの頂部73の形状は、冷媒通路2aに向かって張り出す弧状又は円弧状である。
【0026】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
該冷媒通路の該上部壁面にのみ、管長さ方向に延長する突条が形成されており、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とするアルミニウム製押出扁平多穴管である。
【0027】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、アルミニウム又はアルミニウム合金の押出成形により作製された扁平管であり、管内に多数の冷媒通路を有する多穴管である。本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、冷媒の流路となる冷媒通路を複数有する。冷媒通路は、管長さ方向、言い換えると、押出方向に延びている。
【0028】
冷媒通路は、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる。つまり、冷媒の流路は、管長さ方向に延びる上部壁面、下部壁面、一方の側壁面及び他方の側壁面により四方を囲まれている。そして、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管では、冷媒通路には、上部壁面にのみ、管長さ方向に延びる突条が形成されている。よって、管長さ方向に対して垂直な面で切った断面における冷媒通路の形状は、上側の辺に、内側に向けて突起が形成されている略矩形状の形状である。なお、冷媒通路の略矩形状の形状の四隅は、角があってもよいし(90°であってもよいし)、あるいは、弧状であってもよい。
【0029】
言い換えると、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、管内に、隔壁で区画された管長さ方向に延びる複数の冷媒通路を有し、その冷媒通路の上部壁面にのみ突条が形成されている。
【0030】
また、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の外壁は、平坦な上部外壁と、平坦な下部外壁と、押出扁平多穴管の管長さ方向に垂直な面で切った断面視で円弧状の外部側壁と、からなる。
【0031】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の各々の冷媒通路の上部壁面に形成されている突条の数は、好ましくは1~4、特に好ましくは2~3、より好ましくは1である。なお、図2及び図3に示す形態例では、各々の冷媒通路の上部壁面に形成されている突条の数は2である。
【0032】
突条の高さは、冷媒通路の縦幅の5~25%、好ましくは冷媒通路の縦幅の5~20%、特に好ましくは冷媒通路の縦幅の10~20%である。なお、突条の高さとは、図3に示すように、上部壁面の壁面位置線(符号16で示す点線)から突条の頂点までの長さ(符号15)を指し、また、冷媒通路の縦幅とは、図3に示すように、上部壁面の壁面位置線(符号16)から下部壁面の壁面位置線(突条が形成されていない方の壁面では、壁面位置線は壁面に重なる。)までの長さ(符号14)を指す。
【0033】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、冷媒通路の横幅に対する突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30、好ましくは0.10~0.20であり、且つ、冷媒通路の横幅に対する上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下、好ましくは0.05~0.15である。なお、突条の1/2高さにおける横幅とは、図4に示すように、突条の高さ(符号15)に対し1/2の高さに相当する位置(符号43)の突条の横幅(符号42)を指す。また、上部壁面の突条間平坦部とは、図4に示すように、突条と突条の間に存在する上部壁面の平坦な部分のことであり、曲面となっている突条の裾部(符号71)は含まれない。よって、上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅とは、隣り合う突条のうちの一方の突条の裾部の終点(符号44a)から他方の突条の裾部の終点(符号44b)までの長さを指す。冷媒通路の横幅に対する突条の1/2高さにおける横幅の比が、上記範囲未満だと、突条が薄くなり過ぎて製造が困難になり、また、上記範囲を超えると、冷媒の圧力損失が大きくなり過ぎる。また、冷媒通路の横幅に対する上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、上記範囲を超えると、熱交換性能が向上し難くなる。
【0034】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、突条の頂部の形状は、冷媒通路に向かって張り出す弧状又は円弧状である。なお、本発明において、「突条の頂部の形状が、冷媒通路に向かって張り出す弧状又は円弧状」であるとは、アルミニウム製押出扁平多穴管を、管長さ方向に対して垂直な面で切ったときの断面において、突条の頂部の輪郭が、冷媒通路に向かって張り出す弧状又は円弧状であることを指す(以下においても同じ。)
【0035】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の管幅方向の両端には、冷媒通路を有する。そして、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の管幅方向の両端の冷媒通路には、上部壁面に、突条が形成されていてもよいし、突条が形成されていなくてもよい。
【0036】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、蒸発器において、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されている扁平多穴管に比べ、突条による冷媒通路の断面積の減少が小さいので流動抵抗の増大が抑制される。また、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されていない扁平多穴管では、冷媒が冷媒通路の下部壁面に集中し、冷媒通路の上部側面を濡らさないいわゆるドライアウトと呼ばれる現象が生じ、ドライアウト発生部では熱交換が極端に低下する。それに対し、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管では、冷媒が上部壁面によく濡れるようになるため、上部壁面での熱交換が維持されるとともに、下部壁面における冷媒の液膜厚さが小さくなるので流通抵抗が増加し難い。このようなことから、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、蒸発器において、流動抵抗の増大が抑制され、且つ、優れた伝熱性能を示すので、蒸発器の熱交換器用の伝熱管として好適である。
【0037】
本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の形態例を、冷媒通路の開口側から見た模式図である。
【0038】
図5中、アルミニウム製押出扁平多穴管1bは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。アルミニウム製押出扁平多穴管1bの外壁は、平坦な上部外壁9bと、平坦な下部外壁10bと、アルミニウム製押出扁平多穴管1bの管長さ方向に対して垂直な面で切ったときの断面視で円弧状の外部側壁11b、11bと、からなる。アルミニウム製押出扁平多穴管1bの管長さ方向に対して垂直な面で切ったときの断面視で、上部外壁9bと下部外壁10bの壁面は平行である。
【0039】
アルミニウム製押出扁平多穴管1bは、冷媒の流路となる冷媒通路2bを複数有する。冷媒通路2bは、管長さ方向に延びている。なお、管長さ方向は、アルミニウム製押出扁平多穴管1bの押出方向である。
【0040】
冷媒通路2bは、対向する上部壁面3b及び下部壁面4bと、対向する側壁面5b及び側壁面6bと、からなる。各々の冷媒通路2bは、隔壁8bで区画されることにより、管内に複数形成されている。そして、アルミニウム製押出扁平多穴管1bでは、冷媒通路2bには、下部壁面4bにのみ、管長さ方向に延びる突条7bが形成されている。よって、管長さ方向に対して垂直に切った断面における冷媒流路2bの形状は、下側の辺に、内側に向けて突起が形成されている略矩形状の形状である。
【0041】
本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
該冷媒通路の該下部壁面にのみ、管長さ方向に延長する突条が形成されており、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とするアルミニウム製押出扁平多穴管である。
【0042】
本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、アルミニウム又はアルミニウム合金の押出成形により作製された扁平管であり、管内に多数の冷媒通路を有する多穴管である。本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、冷媒の流路となる冷媒通路を複数有する。冷媒通路は、管長さ方向、言い換えると、押出方向に延びている。
【0043】
冷媒通路は、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる。つまり、冷媒の流路は、管長さ方向に延びる上部壁面、下部壁面、一方の側壁面及び他方の側壁面により四方を囲まれている。そして、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管では、冷媒通路には、下部壁面にのみ、管長さ方向に延びる突条が形成されている。よって、管長さ方向に対して垂直に切った断面における冷媒通路の形状は、下側の辺に、内側に向けて突起が形成されている略矩形状の形状である。なお、冷媒通路の略矩形状の形状の四隅は、角があってもよいし(90°であってもよいし)、あるいは、弧状であってもよい。
【0044】
言い換えると、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、管内に、隔壁で区画された管長さ方向に延びる複数の冷媒通路を有し、その冷媒通路の下部壁面にのみ突条が形成されている。
【0045】
また、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の外壁は、平坦な上部外壁と、平坦な下部外壁と、押出扁平多穴管の管長さ方向に対して垂直な面で切った断面視で円弧状の外部側壁と、からなる。
【0046】
本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の各々の冷媒通路の下部壁面に形成されている突条の数は、好ましくは1~4、特に好ましくは2~3、より好ましくは1である。なお、図5に示す形態例では、各々の冷媒通路の下部壁面に形成されている突条の数は2である。
【0047】
突条の高さは、冷媒通路の縦幅の5~25%、好ましくは冷媒通路の縦幅の5~20%、特に好ましくは冷媒通路の縦幅の10~20%である。なお、突条の高さとは、下部壁面の壁面位置線から突条の頂点までの長さを指し、また、冷媒通路の縦幅とは、下部壁面の壁面位置線から上部壁面の壁面位置線(突条が形成されていない方の壁面では、壁面位置線は壁面に重なる。)までの長さを指す。
【0048】
本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、冷媒通路の横幅に対する突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30、好ましくは0.10~0.20であり、且つ、冷媒通路の横幅に対する下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下、好ましくは0.05~0.15である。なお、突条の1/2高さにおける横幅とは、突条の高さに対し1/2の高さに相当する位置の突条の横幅を指す。また、下部壁面の突条間平坦部とは、突条と突条の間に存在する下部壁面の平坦な部分のことであり、曲面となっている突条の裾部は含まれない。よって、下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅とは、隣り合う突条のうちの一方の突条の裾部の終点から他方の突条の裾部の終点までの長さを指す。冷媒通路の横幅に対する突条の1/2高さにおける横幅の比が、上記範囲未満だと、突条が薄くなり過ぎて製造が困難になり、また、上記範囲を超えると、冷媒の圧力損失が大きくなり過ぎる。また、冷媒通路の横幅に対する下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、上記範囲を超えると、熱交換性能が向上し難くなる。
【0049】
本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、突条の頂部の形状は、冷媒通路に向かって張り出す弧状又は円弧状である。
【0050】
本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の管幅方向の両端には、冷媒通路を有する。そして、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の管幅方向の両端の冷媒通路には、下部壁面に、突条が形成されていてもよいし、突条が形成されていなくてもよい。
【0051】
本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、凝縮器において、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されている扁平多穴管に比べ、突条による冷媒通路の断面積の減少が小さいので流動抵抗の増大が抑制される。また、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されていない扁平多穴管では、冷媒通路の下部壁面に凝縮した冷媒が蓄積していくと冷媒通路の下部壁面では凝縮が起こり難くなるのに対して、冷媒通路の下部壁面に突条が形成されている場合には、冷媒通路の下部壁面に凝縮した冷媒が蓄積していっても突条部の先端が冷媒に埋没せず、気相に突き出しているので、この気相に突き出した部分で凝縮が継続するため、優れた伝熱性能を示す。このようなことから、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、凝縮器において、突条による流動抵抗の増大を抑制し、且つ、優れた伝熱性能を示すので、凝縮器の熱交換器用の伝熱管として好適である。
【0052】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管について、図6を参照して説明する。図6は、本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の形態例を、冷媒通路の開口側から見た模式図である。
【0053】
図6中、アルミニウム製押出扁平多穴管1cは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる。アルミニウム製押出扁平多穴管1cの外壁は、平坦な上部外壁9cと、平坦な下部外壁10cと、アルミニウム製押出扁平多穴管1cの管長さ方向に対して垂直な面で切ったときの断面視で円弧状の外部側壁11c、11cと、からなる。アルミニウム製押出扁平多穴管1cの管長さ方向に対して垂直な面で切ったときの断面視で、上部外壁9cと下部外壁10cの壁面は平行である。
【0054】
アルミニウム製押出扁平多穴管1cは、冷媒の流路となる冷媒通路21c、22cを複数有する。冷媒通路21c、22cは、管長さ方向に延びている。なお、管長さ方向は、アルミニウム製押出扁平多穴管1c押出方向である。
【0055】
冷媒通路21cは、対向する上部壁面31c及び下部壁面41cと、対向する側壁面51c及び側壁面61cと、からなる。また、冷媒通路22cは、対向する上部壁面32c及び下部壁面42cと、対向する側壁面52c及び側壁面62cと、からなる。各々の冷媒通路21c、22cは、隔壁8cで区画されることにより、管内に複数形成されている。そして、アルミニウム製押出扁平多穴管1cでは、冷媒通路が、上部壁面31cにのみ、管長さ方向に延びる突条71cが形成されている冷媒通路21c(上部壁面突条形成冷媒通路)と、下部壁面42cにのみ、管長さ方向に延びる突条72cが形成されている冷媒通路22c(下部壁面突条形成冷媒通路)と、の組み合わせである。よって、管長さ方向に対して垂直に切った断面における上部壁面突条形成冷媒通路21cの形状は、上側の辺に、内側に向けて突起が形成されている略矩形状の形状であり、また、管長さ方向に対して垂直に切った断面における下部壁面突条形成冷媒通路22cの形状は、下側の辺に、内側に向けて突起が形成されている略矩形状の形状である。
【0056】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、押出成形により作製された、アルミニウム又はアルミニウム合金製の扁平多穴管であり、
扁平多穴管内部に、管長さ方向に延長し、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる冷媒通路を複数有し、
複数の該冷媒通路は、上部壁面にのみ管長さ方向に延長する突条が形成されている上部壁面突条形成冷媒通路と、下部壁面にのみ管長さ方向に延長する突条が形成されている下部壁面突条形成冷媒通路と、の組み合わせであり、
該突条の高さが、該冷媒通路の縦幅の5~25%であり、
該冷媒通路の横幅に対する該突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30であり、該冷媒通路の横幅に対する該上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であり、且つ、該冷媒通路の横幅に対する該下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下であること、
を特徴とするアルミニウム製押出扁平多穴管である。
【0057】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、アルミニウム又はアルミニウム合金の押出成形により作製された扁平管であり、管内に多数の冷媒通路を有する多穴管である。本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、冷媒の流路となる冷媒通路を複数有する。冷媒通路は、管長さ方向、言い換えると、押出方向に延びている。
【0058】
冷媒通路は、対向する上部壁面及び下部壁面と、対向する一対の側壁面と、からなる。つまり、冷媒の流路は、管長さ方向に延びる上部壁面、下部壁面、一方の側壁面及び他方の側壁面により四方を囲まれている。そして、本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、上部壁面にのみ管長さ方向に延長する突条が形成されている上部壁面突条形成冷媒通路と、下部壁面にのみ管長さ方向に延長する突条が形成されている下部壁面突条形成冷媒通路と、を有する。よって、管長さ方向に対して垂直な面で切った断面における上部壁面突条形成冷媒通路の形状は、上側の辺に、内側に向けて突起が形成されている略矩形状の形状であり、また、管長さ方向に対して垂直な面で切った断面における下部壁面突条形成冷媒通路の形状は、下側の辺に、内側に向けて突起が形成されている略矩形状の形状である。なお、上部壁面突条形成冷媒通路及び下部壁面突条形成冷媒通路の略矩形状の形状の四隅は、角があってもよいし(90°であってもよいし)、あるいは、弧状であってもよい。
【0059】
言い換えると、本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、管内に、隔壁で区画された管長さ方向に延びる複数の冷媒通路を有し、それらの冷媒通路は、上部壁面にのみ突条が形成されている冷媒流路と、下部壁面にのみ突条が形成されている冷媒通路と、の組み合わせである。
【0060】
また、本発明の第三のアルミニウム製押出扁平多穴管の外壁は、平坦な上部外壁と、平坦な下部外壁と、押出扁平多穴管の管長さ方向に対して垂直な面で切った断面視で円弧状の外部側壁と、からなる。
【0061】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の各々の冷媒通路の上部壁面又は下部壁面に形成されている突条の数は、好ましくは1~4、特に好ましくは2~3、より好ましくは1である。なお、図6に示す形態例では、各々の冷媒通路の上部壁面又は下部壁面に形成されている突条の数は2である。
【0062】
突条の高さは、冷媒通路の縦幅の5~25%、好ましくは冷媒通路の縦幅の5~20%、特に好ましくは冷媒通路の縦幅の10~20%である。なお、上部壁面突条形成冷媒通路においては、突条の高さとは、上部壁面の壁面位置線から突条の頂点までの長さを指し、また、冷媒通路の縦幅とは、上部壁面の壁面位置線から下部壁面の壁面位置線までの長さを指す。また、下部壁面突条形成冷媒通路においては、突条の高さとは、下部壁面の壁面位置線から突条の頂点までの長さを指し、また、冷媒通路の縦幅とは、下部壁面の壁面位置線から上部壁面の壁面位置線までの長さを指す。
【0063】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、冷媒通路の横幅に対する突条の1/2高さにおける横幅の比が、0.05~0.30、好ましくは0.10~0.20であり、冷媒通路の横幅に対する上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下、好ましくは0.05~0.15であり、且つ、冷媒通路の横幅に対する下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、0.20以下、好ましくは0.05~0.15である。なお、突条の1/2高さにおける横幅とは、突条の高さに対し1/2の高さに相当する位置の突条の横幅を指す。また、上部壁面の突条間平坦部とは、突条と突条の間に存在する下部壁面の平坦な部分のことであり、曲面となっている突条の裾部は含まれない。よって、上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅とは、隣り合う突条のうちの一方の突条の裾部の終点から他方の突条の裾部の終点までの長さを指す。また、下部壁面の突条間平坦部とは、突条と突条の間に存在する下部壁面の平坦な部分のことであり、曲面となっている突条の裾部は含まれない。よって、下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅とは、隣り合う突条のうちの一方の突条の裾部の終点から他方の突条の裾部の終点までの長さを指す。冷媒通路の横幅に対する突条の1/2高さにおける横幅の比が、上記範囲未満だと、突条が薄くなり過ぎて製造が困難になり、また、上記範囲を超えると、冷媒の圧力損失が大きくなり過ぎる。また、冷媒通路の横幅に対する上部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、上記範囲を超えると、熱交換性能が向上し難くなる。また、冷媒通路の横幅に対する下部壁面の突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が、上記範囲を超えると、熱交換性能が向上し難くなる。
【0064】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、突条の頂部の形状は、冷媒通路に向かって張り出す弧状又は円弧状である。
【0065】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の管幅方向の両端には、冷媒通路を有する。そして、本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の管幅方向の両端の冷媒流路には、上部壁面又は下部壁面に、突条が形成されていてもよいし、上部壁面及び下部壁面のいずれにも突条が形成されていなくてもよい。
【0066】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管では、上部壁面突条形成冷媒通路の数と、下部壁面突条形成冷媒通路の数の比は、好ましくは2:8~8:2である。
【0067】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管では、上部壁面突条形成冷媒通路と下部壁面突条形成冷媒通路とが、交互に繰り返されていることが、好ましい。
【0068】
本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、蒸発器及び凝縮器において、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されている扁平多穴管に比べ、伝熱性能が高いので、本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管は、突条による流動抵抗の増大を抑制し、且つ、優れた伝熱性能を示すため、蒸発器及び凝縮器の熱交換器用の伝熱管として好適である。
【0069】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、及び本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管を構成するアルミニウム材としては、A1000系の純アルミニウムや、Mnを0.3~1.4質量%、Cuを0.05~0.7質量%を含有するA3000系アルミニウム合金が挙げられる。
【0070】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、及び本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の管幅は、適宜選択されるが、好ましくは10~50mm、特に好ましくは10~30mmである。なお、押出扁平多穴管の管幅とは、管長さ方向に対して垂直な方向の押出扁平多穴管の幅のことであり、図1中、符号18に示す長さである。
【0071】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、及び本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の厚みは、適宜選択されるが、好ましくは1~5mm、特に好ましくは1~3mmである。なお、押出扁平多穴管の厚みとは、図1中、符号19に示す長さであり、押出扁平多穴管の管長さ方向に対して垂直な面で切った断面における上部外壁から下部外壁までの長さである。
【0072】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、及び本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、押出扁平多穴管の厚みに対する冷媒通路の縦幅の比は、適宜選択されるが、好ましくは0.4~0.85、特に好ましくは0.5~0.8である。
【0073】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、及び本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、冷媒通路の横幅は、適宜選択されるが、好ましくは0.45~2mm、特に好ましくは0.5~1mmである。なお、冷媒通路の横幅とは、図3中、符号20に示す長さであり、冷媒通路の一方の側壁面から他方の側壁面までの長さである。
【0074】
本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管、及び本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管において、冷媒通路の数は、適宜選択されるが、好ましくは5~30個、特に好ましくは8~20個である。
【0075】
本発明の第一の形態の熱交換器について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、本発明の第一の形態の熱交換器の形態例の模式図であり、熱交換器の斜視図である。また、図8は、本発明の第一の形態例の熱交換器の他の形態例の模式図であり、熱交換器の正面図である。
【0076】
図7中、熱交換器30aでは、複数のアルミニウム製押出扁平多穴管1aが、列配置されて、ヘッダ25a、25b内に冷媒の流路が繋がるように、両端がヘッダ25a、25bに挿入固定されており、列配置されたアルミニウム製押出扁平多穴管1aの間に、コルゲート加工されたアルミニウム製の放熱フィン35が複数固定されて、構成されている。また、ヘッダ25aの上側には、冷媒26の導入口28が付設されており、且つ、ヘッダ25aの下側には、冷媒26の排出口29が付設されている。つまり、導入口28はベッダ25aの一端側に、排出口29はベッダ25aの他端側に配置されている。なお、ヘッダ25a及びヘッダ25bの内側には、冷媒がヘッダ内をショートカットして流れないように、仕切が設けられている。また、導入口28がベッダ25aと25bのいずれか一方の上側に配置され、排出口29がヘッダ25aと25bの他方の下側に配置されていてもよい。図7は、熱交換器30aが凝縮器として作動する場合を示しているが、熱交換器30aが蒸発器として作動する場合は、導入口28と排出口29が逆になる。つまり、熱交換器30aが蒸発器として作動する場合は、ヘッダ25aの下側から冷媒が導入され、ヘッダ25aの上側から冷媒が排出される。
【0077】
図8中、熱交換器30bでは、複数のアルミニウム製押出扁平多穴管1aが、列配置されて、ヘッダ25a、25b内に冷媒の流路が繋がるように、両端がヘッダ25a、25bに挿入固定されており、列配置されたアルミニウム製押出扁平多穴管1aが、アルミニウム製押出扁平多穴管1aの管長さ方向に一定の間隔を開けて多数配置されたプレート状の放熱フィン45のスリットに嵌合されて固定されることにより、構成されている。また、ヘッダ25aの上側には、冷媒26の導入口28が付設されており、且つ、ヘッダ25aの下側には、冷媒26の排出口29が付設されている。つまり、導入口28はベッダ25aの一端側に、排出口29はベッダ25aの他端側に配置されている。なお、ヘッダ25a及びヘッダ25bの内側には、冷媒がヘッダ内をショートカットして流れないように、仕切が設けられている。また、導入口28がベッダ25aと25bのいずれか一方の上側に配置され、排出口29がヘッダ25aと25bの他方の下側に配置されていてもよい。図8は、熱交換器30bが凝縮器として作動する場合を示しているが、熱交換器30bが蒸発器として作動する場合は、導入口28と排出口29が逆になる。つまり、熱交換器30bが蒸発器として作動する場合は、ヘッダ25aの下側から冷媒が導入され、ヘッダ25aの上側から冷媒が排出される。
【0078】
熱交換器30a及び熱交換器30bでは、冷媒26は、導入口28からヘッダ25a内に供給され、次いで、アルミニウム製押出扁平多穴管1a内の冷媒通路内を通り、ヘッダ25b内に流れ込み、次いで、アルミニウム製押出扁平多穴管1a内の冷媒通路内を通り、ヘッダ25a内に流れる込むことを繰り返し、最終的に、排出口29から排出される。
【0079】
本発明の第一の形態の熱交換器は、列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器である。
【0080】
本発明の第一の形態の熱交換器は、複数の本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管と、複数の放熱フィンと、有する。本発明の第一の形態の熱交換器において、放熱フィンは、アルミニウム又はアルミニウム合金製である。
【0081】
本発明の第一の形態の熱交換器では、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管が複数、上部外壁の平坦面が上に向くようにして、一定の間隔を開けて、列配置されている。また、本発明の第一の形態の熱交換器では、列配置された本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管に、複数の放熱フィンが固定されている。
【0082】
放熱フィンとしては、コルゲート加工されたコルゲートフィン、平板状のプレートフィンが挙げられる。また、コルゲートフィンとしては、芯材(例えば、A3000系芯材)の両面にろう材がクラッドされているブレージングシート材と、ろう材がクラッドされていないベアフィン材と、が挙げられる。
【0083】
本発明の第一の形態の熱交換器では、列配置されている複数の本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の両端は、一対のヘッダに、冷媒の流路が繋がるように挿入固定されている。一方のヘッダに、冷媒の導入口と排出口が付設されるか、あるいは、一方のヘッダに冷媒の導入口が付設され且つ他方のヘッダに冷媒の排出口が付設される。冷媒の導入口と冷媒の排出口は、通常、熱交換の効率化の観点から、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管及び放熱フィンからなるコア部の対角又は一方の上下に付設される。
【0084】
本発明の第一の形態の熱交換器において、放熱フィンが、コルゲートフィンの場合、熱交換器のコア部は、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管とコルゲートフィンとが交互に積層されている構造となる。そして、コルゲート加工されたブレージングシート材を用いて熱交換器を製造する場合、例えば、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の上部外壁と下部外壁の表面にバインダ及びKZnF等のフラックスの混合物を塗布した後、押出扁平多穴管とコルゲート加工されたブレージングシート材とを交互に積層し、押出扁平多穴管の両端を一対のヘッダに挿入し、ヘッダに冷媒導入口及び冷媒排出口を取り付け、ろう付け加熱することにより、熱交換器を製造する。また、コルゲート加工されたベアフィン材を用いて熱交換器を製造する場合、例えば、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の上部外壁と下部外壁の表面にSi粉末等のろう材、バインダ及びKZnF等のフラックスの混合物を塗布した後、押出扁平多穴管とコルゲート加工されたベアフィン材とを交互に積層し、押出扁平多穴管の両端を一対のヘッダに挿入し、ヘッダに冷媒導入口及び冷媒排出口を取り付け、ろう付け加熱することにより、熱交換器を製造する。
【0085】
本発明の第一の形態の熱交換器において、放熱フィンが、プレートフィンの場合、熱交換器のコア部は、一定の間隔を開けて列配置されている本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管が、押出扁平多穴管の管長さ方向に一定の間隔を開けて多数配置されているプレートフィンに嵌め込まれた構造である。そして、例えば、プレートフィンに本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管を嵌合させるためのスリットを形成させた後、スリットが形成された多数のプレートフィンを一定間隔を開けて配置させ、プレートフィンのスリットに押出扁平多穴管を嵌合させ、押出扁平多穴管の両端を一対のヘッダに挿入し、ヘッダに冷媒導入口及び冷媒排出口を取り付けることにより、熱交換器を製造する。
【0086】
本発明の第二の形態の熱交換器は、列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器である。
【0087】
本発明の第二の形態の熱交換器と本発明の第一の形態の熱交換器とでは、用いられている押出扁平多穴管が、前者は、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管であるのに対し、後者は、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管である点が異なること以外は両者は同様である。
【0088】
本発明の第三の形態の熱交換器は、列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
複数の該扁平多穴管が、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管と、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管と、の組み合わせであり、
気相側に、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管が配置されており、且つ、液相側に、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管が配置されていること、
を特徴とする熱交換器である。
【0089】
本発明の第三の形態の熱交換器と本発明の第一の形態の熱交換器とでは、用いられている押出扁平多穴管が、前者は、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管と本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管の組み合わせであるのに対し、後者は、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管である点が異なること以外は、両者は同様である。
【0090】
そして、本発明の第三の形態の熱交換器では、気相側に、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管が配置されており、且つ、液相側に、本発明の第二の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管が配置されている。なお、気相側及び液相側とは、熱交換器が凝縮器として用いられる場合である図7及び図8中の熱交換器30a、30bでは、気相側とは、上側、すなわち、冷媒の導入口寄りの位置であり、液相側とは、下側、すなわち、冷媒の排出口寄りの位置である。また、熱交換器が蒸発器として用いられる場合、気相側とは、上側、すなわち、冷媒の排出口寄りの位置であり、液相側とは、下側、すなわち、冷媒の導入口寄りの位置である。
【0091】
本発明の第四の形態の熱交換器は、列配置されている複数の扁平多穴管と、該扁平多穴管に固定されている複数の放熱フィンと、を有し、
該扁平多穴管が、本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管であること、
を特徴とする熱交換器である。
【0092】
本発明の第四の形態の熱交換器と本発明の第一の形態の熱交換器とでは、用いられている押出扁平多穴管が、前者は、本発明の第三の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管であるのに対し、後者は、本発明の第一の形態のアルミニウム製押出扁平多穴管である点が異なること以外は、両者は同様である。
【0093】
空調機器は、蒸発器用熱交換器と凝縮器用熱交換器の間にコンプレッサと膨張弁とを配管で結んだものが用いられる。そして、空調機器では、コンプレッサ→凝縮器用熱交換器(放熱)→膨張弁→蒸発器用熱交換器(吸熱)→コンプレッサーの順に冷媒が流れることにより、熱交換が行われる。一般的には気相の冷媒がコンプレッサにより圧縮されて温度が上昇し、気相の状態で凝縮用熱交換器に導入され、放熱されると冷媒は凝縮して液相に変化する。そして、液相になった冷媒を膨張弁を通過させ、急激に減圧させて蒸発器用熱交換器に導入すると周囲の熱を吸収しながら気相に変化し蒸発器用熱交換器から排出される。気相になった冷媒はコンプレッサで圧縮されるというサイクルを繰り返すことで熱交換が行われる。従って、凝縮器用熱交換器にあっては、導入口側は気相側となり、排出口側が液相側となる。反対に蒸発器用熱交換器にあっては、導入口側は液相側となり、排出口側が気相側となる。
【0094】
空調機器が、自動車用エアコンに用いられる場合は、室内機用熱交換器を蒸発器用熱交換器とし、室外機用熱交換器を凝縮器用熱交換器とすることで冷房運転を行うことができる。暖房運転は、室内機用熱交換器とは別に、高温のラジエータ冷却水を流通させた放熱用熱交換器を配置することにより行うことができる。
【0095】
空調機器が、室内用空調に用いられる場合、熱交換器は、凝縮器用熱交換器と蒸発器用熱交換器の両方として用いられる。室内機用熱交換器を凝縮器用熱交換器とし、室外機用熱交換器を蒸発器用熱交換器とすることで暖房運転を行い、また、室内機用熱交換器を蒸発器用熱交換器とし、室外機用熱交換器を凝縮器用熱交換器とすることで冷房運転を行うことができる。
【0096】
そのため、本発明の第一の形態の熱交換器は、特に蒸発において、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されている扁平多穴管に比べ、突条による流動抵抗の増大を抑制し、且つ、伝熱性能が優れているので、蒸発器用の熱交換器として、好適である。また、本発明の第二の形態の熱交換器は、凝縮において、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されている扁平多穴管に比べ、突条による流動抵抗の増大を抑制し、且つ、伝熱性能が優れているので、凝縮器用の熱交換器として、好適である。また、本発明の第三の形態の熱交換器は、蒸発及び凝縮のいずれにおいても、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されている扁平多穴管に比べ、突条による流動抵抗の増大を抑制し、且つ、伝熱性能が優れているので、蒸発器及び凝縮器用の熱交換器として、好適である。また、本発明の第四の形態の熱交換器は、蒸発及び凝縮のいずれにおいても、冷媒通路の上部壁面と下部壁面の両壁面に突条が形成されている扁平多穴管に比べ、突条による流動抵抗の増大を抑制し、且つ、伝熱性能が優れ、製造において上部壁面にのみ突条が形成されている伝熱管と、下部壁面にのみ突条が形成されている伝熱管との区別を行う手間が省けるため、蒸発器及び凝縮器用の熱交換器として、好適である。
【0097】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例
【0098】
(実施例及び比較例)
アルミニウム材として、A1100を用いて、表1及び表2に示す寸法諸言の扁平多穴管を押出成形し、押出扁平多穴管を作製した。なお、実施例1A、比較例1B及び比較例1Cは、上部壁面にのみ突条が形成されており、実施例2A、比較例2B及び比較例2Cは、下部壁面にのみ突条が形成されており、実施例3A、比較例3B及び比較例3Cは、上部壁面にのみ突条が形成されている冷媒流路と、下部壁面にのみ突条が形成されている冷媒通路と、が交互に繰り返されており、比較例4は上部壁面及び下部壁面のいずれにも突条は形成されておらず、比較例5は上部壁面及び下部壁面のいずれにも突条が形成されている。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
<性能評価>
上記のようにして作製した押出扁平多穴管を、表3に示す条件で伝熱性能の測定を行った。扁平多穴管の流体通路に冷媒を所定の流量で流し、扁平多穴管の外側に冷媒の流通方向と反対方向に水を流して熱交換させ、冷媒の蒸発および凝縮時の熱伝達率αと圧力損失ΔPを測定した。その結果を表4及び表5に示す。なお、α/ΔP相対比は、比較例4のα/ΔPを「1」とした場合の相対比である。
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
本発明の実施例1A、2A及び3Aは、いずれも、冷媒流量が変化しても、比較例4を基準としたときの熱伝達率α/圧力損失ΔPの相対比が、蒸発の場合で2以上、凝縮の場合で1.2以上であり、圧力損失に対する熱交換性能が向上していた。
【0106】
これらに対して、冷媒通路の横幅に対する突条の1/2高さにおける横幅の比が大きい比較例1B、2B及び3B、並びに冷媒通路の横幅に対する突条間平坦部1つ当たりの横幅の比が大きい比較例1C、2C及び3Cにおいては、冷媒流量によっては、比較例4を基準としたときの熱伝達率α/圧力損失ΔPの相対比が、蒸発の場合で2以上、凝縮の場合で1.2以上にならない場合があった。
【符号の説明】
【0107】
1a、1b、1c アルミニウム製押出扁平多穴管
2a、2b、21c、22c 冷媒通路
3a、3b、31c、32c 上部壁面
4a、4b、41c、42c 下部壁面
5a、5b、51c、52c 一方の側壁
6a、6b、61c、62c 他方の側壁
7a、7b、71c、72c 突条
8a、8b、8c 隔壁
9a、9b、9c 上部外壁
10a、10b、10c 下部外壁
11a、11b、11c 外部側壁
14 冷媒通路の縦幅
15 突条の高さ
16 上部壁面の壁面位置線
17 管長さ方向(押出方向)
18 押出扁平多穴管の管幅
19 押出扁平多穴管の厚み
20 冷媒通路の横幅
25a、25b ヘッダ
26 冷媒
28 導入口
29 排出口
30a、30b 熱交換器
35、45 放熱フィン
41 突条間平坦部の横幅
42 突条の1/2高さにおける横幅
43 突条の1/2高さの位置
44a、44b 突条の裾部の終点
71 突条の裾部
72 突条間平坦部
73 突条の頂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8