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特許7008508カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置
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  • 特許-カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220118BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20220118BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20220118BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G03F7/031
G03F7/029
G03F7/004 502
G03F7/004 504
G03F7/004 505
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017550961
(86)(22)【出願日】2017-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2017034555
(87)【国際公開番号】W WO2018062105
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2016193104
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢実
(72)【発明者】
【氏名】大庭 正幹
(72)【発明者】
【氏名】田尻 亘
(72)【発明者】
【氏名】山縣 秀明
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-102431(JP,A)
【文献】特開2014-026279(JP,A)
【文献】特開2016-141770(JP,A)
【文献】国際公開第2016/010036(WO,A1)
【文献】特開2010-156879(JP,A)
【文献】特開2014-137466(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104493(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/080947(WO,A1)
【文献】特開2014-134763(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050738(WO,A1)
【文献】特開2017-027029(JP,A)
【文献】特開2017-125972(JP,A)
【文献】特開2016-218353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G03F 7/031
G03F 7/029
G03F 7/004
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、アルカリ可溶性樹脂{但し、下記の化学式1で表される構造単位および化学式2で表される構造単位を含むアルカリ可溶性樹脂
【化1】
(前記化学式1で、R1は、水素、ヘテロ原子を含むか含まない炭素数1~12の脂肪族炭化水素、またはヘテロ原子を含むか含まない炭素数6~12の芳香族炭化水素であり、nは、1~500の整数であり、前記化学式2で、R2は、水素または炭素数1~12のアルキル基であり、R3は、炭素数2~20の線形アルキル基、または炭素数2~20の分枝状アルキル基であり、mは、1~500の整数である。)を除く。}と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記光開始剤が、下記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含有し、
更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤のフェノール性水酸基を加熱により脱離可能な保護基で保護した潜在性ヒンダードフェノール系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種である酸化防止剤を含有する、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【化2】
(一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、Rは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基であり、Zは、水素原子又は-(C=O)Rであり、Rは酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基であり、Rは、炭素数1~10の炭化水素基である。)
【請求項2】
前記光開始剤が、カルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物を2種以上含む、請求項1に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項3】
前記光開始剤が、更に、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物を含む、請求項1又は2に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項4】
前記光開始剤が、更に、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【化3】
(一般式(2)において、Rc’が直鎖状アルキル基と環状アルキル基とを組み合わせた炭素数6~10のアルキル基であり、Rが炭素数1~4のアルキル基であり、Zは、水素原子、ニトロ基又は-(C=O)Rd’であり、Rd’は酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基である。)
【請求項5】
前記光開始剤が、更に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項6】
前記光開始剤が、更に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物とを含有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項7】
前記光開始剤が、更に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(2)で表されるジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物とを含有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【化4】
(一般式(2)において、Rc’が直鎖状アルキル基と環状アルキル基とを組み合わせた炭素数6~10のアルキル基であり、Rが炭素数1~4のアルキル基であり、Zは、水素原子、ニトロ基又は-(C=O)Rd’であり、Rd’は酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基である。)
【請求項8】
更に分散剤を含有し、当該分散剤が、下記一般式(I)で表される構造を含みアミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である重合体を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【化5】
(一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基、Qは、直接結合又は2価の連結基、Rは、炭素数1~8のアルキレン基、-[CH(R)-CH(R)-O]-CH(R)-CH(R)-又は-[(CH-O]-(CH-で示される2価の有機基、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい鎖状又は環状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)
【請求項9】
前記分散剤が、前記一般式(I)で表される構造を含みアミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である重合体であって、且つ、酸価が1mgKOH/g以上18mgKOH/g以下である、請求項8に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【請求項10】
前記色材が、亜鉛フタロシアニン顔料と、下記一般式(ii)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物のモノ、ジ、トリおよびテトラアニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンとCd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、Zn,Fe,Ni,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属のイオンを含む黄色色材と、を含有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物。
【化6】
(上記一般式(ii)中、R 31 はそれぞれ独立して、OH、NH 、NH-CN、アシルアミノ、アルキルアミノ、またはアリールアミノであり、R 32 はそれぞれ独立して、-OHまたは-NH である)
【請求項11】
基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項1乃至10のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物からなる着色層である、カラーフィルタ。
【請求項12】
前記請求項11に記載のカラーフィルタを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。また、最近においては、自発光により視認性が高い有機ELディスプレイのような有機発光表示装置も、次世代画像表示装置として注目されている。これらの画像表示装置の性能においては、さらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
これらの液晶表示装置や有機発光表示装置には、カラーフィルタが用いられる。例えば液晶表示装置のカラー画像の形成は、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。その際の光源としては、従来の冷陰極管のほか、白色発光の有機発光素子や白色発光の無機発光素子が利用される場合がある。また、有機発光表示装置では、色調整などのためにカラーフィルタを用いる。
【0003】
近年の傾向として、画像表示装置の省電力化が求められており、バックライトの利用効率を向上させるためにカラーフィルタの高輝度化が特に求められている。特にモバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)では大きな課題である。
【0004】
ここで、カラーフィルタは、一般的に、基板と、基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように基板上に形成された遮光部とを有している。
カラーフィルタにおける着色層の形成方法としては、例えば、分散剤等により色材を分散してなる色材分散液にバインダー樹脂、光重合性化合物及び光開始剤を添加してなる着色樹脂組成物をガラス基板に塗布して乾燥後、フォトマスクを用いて露光し、現像を行うことによって着色パターンを形成し、加熱することによりパターンを固着して着色層を形成する。これらの工程を、各色ごとに繰り返してカラーフィルタを形成する。
【0005】
カラーフィルタにおいても、高輝度化の要求が高まりを見せる中で、従来と比べカラーフィルタの着色層における色材濃度が高くなることで、相対的に光重合に必要な成分が少なくなりパターニングが難しくなってきている。さらにカラーフィルタの生産性を向上させるため、パターニングに必要な積算露光量を減少させることを求められており、パターニングに必要な硬化性をいかに確保するかが大きな課題となっている。
【0006】
高感度を達成し得る着色樹脂組成物を得る方法として、オキシムエステル系の光開始剤を用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、カルバゾール骨格を含んだ特定の構造を有するオキシムエステル化合物が提案されている。また、特許文献2には、フルオレン骨格にカルボニル基を介さずオキシムエステル基が結合した特定の構造を有するオキシムエステルフルオレン化合物が提案されている。また、特許文献3には、ジフェニルスルフィド骨格又はカルバゾール骨格を含み、オキシムエステル基にシクロアルキル基を含んだ特定の置換基を有するオキシムエステル化合物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3992725号公報
【文献】特表2015-523318号公報
【文献】中国特許出願公開第103293855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、オキシムエステル系の光開始剤を用いた従来の着色樹脂組成物は、輝度が不十分になる傾向がある。特に、従来の感度が高いオキシムエステル系の光開始剤は輝度を低下し易い傾向があった。一方で、比較的輝度が良好になり易いオキシムエステル系の光開始剤は感度が低く、オキシムエステル系光開始剤による感度と輝度に与える影響はトレードオフの関係がみられた。そのため、高感度を達成することができ、更に高輝度な着色層を形成可能な着色樹脂組成物が求められている。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、輝度が向上した着色層を形成可能で、良好な感度を有するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、当該カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有するカラーフィルタ、及び当該カラーフィルタを用いた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、色材と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記光開始剤が、下記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含有する。
【0011】
【化1】
(一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、Rは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基であり、Zは、水素原子又は-(C=O)Rであり、Rは酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基であり、Rは、炭素数1~10の炭化水素基である。)
【0012】
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物からなる着色層である。
また、本発明は、前記本発明に係るカラーフィルタを有する、表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、輝度が向上した着色層を形成可能であり、良好な感度を有するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、当該カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を用いて形成された着色層を有するカラーフィルタ、及び当該カラーフィルタを用いた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び、表示装置について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
本明細書において、特に断りのない限り、色度座標x、yは、C光源を使用して測色したJIS Z8701のXYZ表色系におけるものである。
【0016】
I.カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、色材と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有し、
前記光開始剤が、下記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含有する。
【0017】
【化2】
(一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、Rは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基であり、Zは、水素原子又は-(C=O)Rであり、Rは酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基であり、Rは、炭素数1~10の炭化水素基である。)
【0018】
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、光開始剤として前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を用いることにより、輝度が向上した着色層を形成可能であり、良好な感度を有する。また、本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、現像残渣の発生が抑制されたものであり、着色層をパターニングする際に、同時に着色層に所望の微小孔を形成し易いというメリットがある。
【0019】
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物が、光開始剤として前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を用いることにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
着色層の輝度の低下は、光開始剤の反応残基による着色が一因となる場合がある。従来、感度は高くなるものの着色層の輝度が不十分になるオキシムエステル系の開始剤は、例えばカルバゾール骨格を有するなど、光開始剤の反応残基が着色し易い構造を有していたと推定される。それに対して、本発明に用いられる前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物は、反応残基が着色原因になり難い透過率の高い構造を有するため、反応残基による着色層の着色が抑制され、その結果、輝度が向上した着色層を形成することができると考えられる。
また、本発明に用いられる前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物は、フルオレン骨格を有し、カルボニル基を介して、オキシムエステル基を有することから、当該構造の共役系は、輝度に悪影響を与えることなく、露光時の吸収強度を向上させる構造であることにより、感度が良好となることが推定される。更に、本発明に用いられる前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物は、メチルラジカルを発生する光重合開始剤であり、炭素数が多いアルキルラジカルやアリールラジカルを発生する光重合開始剤に比べてラジカル移動が速やかに起こることから、良好な感度を有すると考えられる。
また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物又はその反応残基がアルカリ現像時のアルカリ水溶液に対して高い親和性を有し易いことから、現像残渣が抑制され易いと推定される。
また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、着色層をパターニングする際に、同時に着色層に所望の微細な孔を形成しやすい。着色層形成のため、より高感度な光開始剤を使用する場合、ラジカル発生後、未露光部までラジカルが移動してしまい、露光部分の内部にある未露光部の形状を保ちつつ、かつ未露光部周辺部をビリツキなく形成することは困難である。そのため、従来の感光性樹脂組成物では、細線パターンを形成可能な高感度の光開始剤を使用すると、細線パターンの直線性は良好であっても、微小孔を形成することは困難であった。また、後述する比較例2に示すように、比較的感度の低い光開始剤を使用すると、微小孔を形成することができても、残膜率が低下するといった問題がある。それに対し、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物では、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を用いることにより微小孔を形成しやすい。特に、光開始剤の含有量や、組み合わせて用いる酸化防止剤の含有量を調整することにより、より容易に良好な形状の微小孔を形成することができる。本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、着色層に所望の微細な孔を形成しやすいため、例えば、反射型カラーフィルタを形成するために、TFT基板上に着色層を形成し、同時に当該着色層に導通のためのスルーホールを形成する用途にも適している。
さらに、本発明に用いられる前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物は、フルオレン骨格にカルボニル基を介してオキシムエステル基を有することにより、フルオレン骨格にカルボニル基を介さずオキシムエステル基が結合した構造を有するオキシムエステル化合物に比べ、結晶性が低下するため、溶剤溶解性及び溶剤再溶解性が向上し、他の成分との相溶性が良好になる。溶剤溶解性及び溶剤再溶解性、並びに他の成分との相溶性が向上した光開始剤を用いることにより、細線パターンの直線性が向上したり、微小孔のビリツキが抑制されやすくなる。
また、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物は熱分解温度が高いため、塗膜加熱時のアウトガスの発生を抑制することができる。そのため、レジストの信頼性が高く、例えば塗膜上に更に、導電膜等の別の層を積層する場合に、積層した層のアウトガスによる損傷を抑制することができる。
【0020】
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、色材と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の着色樹脂組成物の各成分について、本発明に特徴的な前記光開始剤から順に詳細に説明する。
【0021】
[光開始剤]
<一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物>
本発明に用いられる光開始剤は、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含有する。
【0022】
前記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である。溶剤溶解性及び他の成分との相溶性の点から、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基であることが好ましい。当該アルキル基は、直鎖、分岐鎖、環状、又はこれらの組合せのアルキル基のいずれであってもよい。当該アルキル基としては、例えば、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でも、炭素数2~6のアルキル基であることが好ましく、炭素数2~4のアルキル基であることがより好ましく、更に好ましくは炭素数2~4の直鎖アルキル基である。
【0023】
前記一般式(1)において、Rは、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基である。
前記Rにおける炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。前記アルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状と環状の組み合わせであっても良い。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。前記アルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基などを挙げることができる。前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基などを挙げることができる。Rにおける炭化水素基としては、中でも炭素数1~14の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数7~8のアラルキル基、及び炭素数6~10のアリール基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより更に好ましい。また、Rにおける炭化水素基は、炭素数が2以上であると、着色層に微小孔を形成する場合に、微小孔の形状を向上する点から好ましい。また、Rにおける炭化水素基は、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基等の環状及び直鎖状アルキル基を含む構造であると、溶剤溶解性や相溶性の点から好ましい。
また、前記Rにおいては、前記炭化水素基が前記2価の連結基を含むことにより、溶剤溶解性や相溶性を向上することができる。前記2価の連結基としては、中でも、溶剤溶解性を向上する点から、チオエーテル結合(-S-)、又はエーテル結合(-O-)であることが好ましい。前記Rにおいて、前記炭化水素基が前記2価の連結基を含む場合は、前記2価の連結基を介して前記炭化水素基がオキシムエステル基の炭素原子と結合していてもよいし、前記炭化水素基の炭素原子がオキシムエステル基の炭素原子と直接結合していてもよい。前記Rにおいて、前記炭化水素基が前記2価の連結基を含み、且つ前記炭化水素基の炭素原子がオキシムエステル基の炭素原子と直接結合する場合としては、例えば、前記Rが、炭化水素基同士を前記2価の連結基で結合した基である場合が挙げられる。炭化水素基同士を前記2価の連結基で結合した基としては、例えば、メチルチオメチル基などのアルキルチオアルキル基、アリールチオアルキル基等のチオエーテル結合(-S-)を含む構造;メトキシメチル基、メトキシシクロへキシル基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基等のエーテル結合(-O-)を含む構造;アセチルメチル基、ベンゾイルメチル基、アシルアルキル基等のカルボニル結合(-CO-)を含む構造;等が挙げられる。
【0024】
前記一般式(1)において、Zは、水素原子又は-(C=O)Rであり、Rは酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基である。
前記Rにおける酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基としては、例えば、前記Rで説明した炭化水素基、前記Rで説明した炭化水素基が、エーテル結合(-O-)、カルボニル結合(-CO-)等の酸素原子を含む連結基及びチオエーテル結合(-S-)等の硫黄原子を含む連結基から選択される少なくとも1種の連結基を更に含んだ基が挙げられ、中でも炭素数1~14の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~10のアルキル基、炭素数7~8のアラルキル基、及び炭素数6~10のアリール基がより好ましく、炭素数6~10のアリール基がより更に好ましい。
また、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基における複素環としては、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、フロフラン環、チエノフラン環などが挙げられる。前記Rにおける前記炭化水素基又は前記複素環基は、現像性の点から、炭素数1~10であることが好ましい。
前記Zは、中でも、現像性及び輝度の観点からは、水素原子であることが好ましい。一方で、前記Zが-(C=O)Rであることにより、溶剤溶解性や相溶性を向上することができる。
【0025】
前記一般式(1)において、Rは、炭素数1~10の炭化水素基である。炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、前記Rで説明した炭化水素基のうち、炭素数1~10のものが挙げられる。前記Rは、中でも感度が向上する点から、炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0026】
前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物の分子量は、特に限定はされないが、光開始剤の含有量の低減の点から、1,000以下であることが好ましく、更に800以下であることが好ましい。
【0027】
前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物としては、例えば、R及びRが共に炭素数1~4のアルキル基であり、Rが炭素数1~4のアルキル基であり、Zが水素原子であり、Rが炭素数1~4のアルキル基である化合物;R及びRが共に炭素数1~6のアルキル基であり、Rが直鎖状アルキル基と環状アルキル基とを組み合わせた炭素数4~10のアルキル基であり、Zが水素原子であり、Rが炭素数1~4のアルキル基である化合物;R及びRが共に水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、Rが炭素数1~4のアルキル基であり、Zが-(C=O)Rであり、Rが炭素数6~10のアリール基であり、Rが炭素数1~4のアルキル基である化合物;等が好適なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物としては、下記化合物(1-1)~(1-4)から選ばれる少なくとも一種がより好適なものとして挙げられる。
【0029】
【化3】
【0030】
前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物は、例えば、特表2012―526185号公報を参照し、ジフェニルスルフィド又はその誘導体に代えて、フルオレン又はその誘導体を用い、使用する材料に応じて溶剤、反応温度、反応時間、精製方法等を適宜選択することにより、合成できる。
【0031】
本発明の着色樹脂組成物は、前記光開始剤が、カルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物を2種以上含むことが、輝度を向上した着色層を形成可能であり、感度が良好で、パターン形成の際の線幅の調整が容易な点から好ましい。カルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物は、反応残基が着色原因になり難いため、着色層の輝度の低下を抑制することができる。また、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含み、感度の異なる2種以上のオキシムエステル化合物を適宜選択して組み合わせることにより、良好な感度を維持しつつ、パターン形成の際の線幅を調整することができる。本発明の着色樹脂組成物がカルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物を2種以上含む場合、少なくとも1種以上の前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含めばよく、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を2種以上含んでもよいし、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物とは異なるカルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物を組み合わせて含んでもよい。
【0032】
中でも、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物とを組み合わせて用いることが、輝度、現像性、及び感度を大きく低下させることなく、微小孔の形状を向上しやすい点から好ましい。
ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物としては、例えば下記一般式(2)で表されるオキシムエステル化合物を好適に用いることができる。
【0033】
【化4】
(一般式(2)において、Rc’及びRは、それぞれ独立に、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭素数1~14の炭化水素基であり、Zは、水素原子、ニトロ基又は-(C=O)Rd’であり、Rd’は酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基である。)
【0034】
前記一般式(2)におけるRc’及びRのチオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭素数1~14の炭化水素基としては、例えば、前記一般式(1)のRにおけるチオエーテル結合(-S-)、エーテル結合(-O-)及びカルボニル結合(-CO-)から選択される少なくとも1種の2価の連結基を含んでいてもよい炭化水素基のうち、炭素数1~14のものと同様のものが挙げられる。前記一般式(2)におけるRc’としては、前記一般式(1)のRとして好ましく用いられるものを、同様に好ましく用いることができる。前記一般式(2)におけるRとしては、中でも感度が向上する点から、炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
前記一般式(2)におけるZは、水素原子、ニトロ基又は-(C=O)Rd’であり、Rd’は酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい炭化水素基、又は、窒素原子を含まず、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも1種を含む複素環基であり、当該Rd’としては、例えば、前記一般式(1)におけるRと同様のものが挙げられる。前記Zは、中でも、現像性及び輝度の観点から、水素原子又は-(C=O)Rd’であることが好ましく、輝度の点からは水素原子であることがより好ましい。
【0035】
前記一般式(2)で表されるオキシムエステル化合物の分子量は、特に限定はされないが、光開始剤の含有量の低減の点から、1,000以下であることが好ましく、更に800以下であることが好ましい。
【0036】
前記一般式(2)で表されるオキシムエステル化合物としては、例えば、Rc’が直鎖状アルキル基と環状アルキル基とを組み合わせた炭素数6~10のアルキル基であり、Zが水素原子であり、Rが炭素数1~4のアルキル基である化合物;Rc’が直鎖状アルキル基と環状アルキル基とを組み合わせた炭素数6~10のアルキル基であり、Zが-(C=O)Rd’であって、当該Rd’が窒素原子を含まず、硫黄原子を含む複素環基であり、Rが炭素数1~4のアルキル基である化合物;等が好適なものとして挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
前記一般式(2)で表されるオキシムエステル化合物としては、下記化合物(2-1)~(2-2)から選ばれる少なくとも一種がより好適なものとして挙げられる。
【0038】
【化5】
【0039】
前記一般式(2)で表されるオキシムエステル化合物は、例えば、特表2012―526185号公報を参照して合成できる。
【0040】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、光開始剤として、上述したオキシムエステル化合物とは異なるその他の光開始剤を更に組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の着色樹脂組成物に用いられる光開始剤には、光重合開始剤の他に連鎖移動剤が含まれる。
【0041】
<その他の光開始剤>
その他の光開始剤としては、例えば、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を包含するカルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物とは異なるオキシムエステル系光開始剤、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤等が挙げられる。
中でも、より輝度を向上しつつ、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上したり、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する点、及び微小孔の形状を向上する点から、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種を更に組み合わせて用いることが好ましい。中でも、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤を更に組み合わせて用いることが、微小孔を形成する際に、孔の端部のビリツキが抑制されて寸法精度が良好な微小孔を形成し易い点から好ましい。アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤は他の開始剤と比較して熱分解温度が高いため、プリベーク時の加熱による副反応が起こりにくいことにより、ビリツキが抑制されると考えられる。
「直線性が向上する」とは、着色組成物を塗布した後の現像工程において形成される着色層の端部の凹凸が少なく、直線状または略直線状に形成されることをいう。また、「ビリツキ」とは、パターン端部の直線乃至曲線が不均一となって寸法精度が悪化する不具合をいう。
【0042】
また、微小孔の形状を向上し、ビリツキを抑制する点からは、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種と、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物とを組み合わせて用いることが好ましく、更に、後述する酸化防止剤を組み合わせて用いることがより好ましい。
【0043】
α-アミノケトン系光開始剤は、塗膜表面から中間を硬化させる性質を有し、塗膜深部硬化性を抑制し易いことから、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせると塗膜深部硬化性を向上する傾向が高い点から好ましい。
α-アミノケトン系光開始剤としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(イルガキュア379EG、BASF社製)等が挙げられる。
α-アミノケトン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、及び、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノンが、残膜率が向上する点から好ましく、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、微小孔のビリツキを抑制する点からより好ましい。
【0044】
ビイミダゾール系光開始剤は、塗膜深部を硬化させるという性質を有し、塗膜表面硬化性を抑制し易く、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせると塗膜表面硬化性を向上する傾向が高い点から好ましい。
ビイミダゾール系光開始剤としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス(4-エトキシカルボニルフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-ブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4,6-トリブロモフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール等を挙げることができる。
ビイミダゾール系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、メルカプト系連鎖移動剤と組み合わせて用いることが塗膜硬化性向上する点から好ましい。
【0045】
チオキサントン系光開始剤としては、例えば、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等が挙げられる。
チオキサントン系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2,4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンを用いることが、ラジカル発生の転移が向上する点から好ましい。
【0046】
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤は、熱による黄変が少ないという性質を有するため、輝度向上に適しているものの、一般的に感度が低く十分な硬化性が得られない場合がある。しかしながら、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせると全体的な塗膜硬化性を向上し、微小孔を形成する際に、孔の端部のビリツキが抑制されて寸法精度が良好な微小孔を形成し易い点から好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤としては、例えば、ベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、3,4-ジメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-フェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-エチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを用いることが、塗膜硬化性が向上する点から好ましい。
【0047】
メルカプト系連鎖移動剤は反応の遅いラジカルからラジカルを受け取り反応を早めるという性質を有し、特に、ビイミダゾール系光開始剤と組み合わせると反応速度を向上する傾向が高い点から好ましい。
メルカプト系連鎖移動剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾイミダゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸エチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、およびテトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
メルカプト系連鎖移動剤としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、2-メルカプトベンゾチアゾールを用いることが、反応速度が向上する点から好ましい。
【0048】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の合計含有量は、本発明の効果が損なわれない限り特に制限はないが、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上12.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下の範囲内である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み露光部分が現像時に溶出することを抑制し、一方上記上限値以下であると、得られる着色層の黄変性が強くなって輝度が低下することを抑制できる。
なお、固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能モノマー等も含まれる。
【0049】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上8.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上6.0質量%以下の範囲内である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み露光部分が現像時に溶出することを抑制し、一方上記上限値以下であると、得られる着色層の黄変性が強くなって輝度が低下することを抑制できる。
【0050】
また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、光開始剤がカルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物2種以上を含む場合、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を包含するカルバゾール骨格を有しないオキシムエステル化合物2種以上の合計含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、0.1質量%以上12.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下の範囲内であることが、これらの光開始剤との併用効果を十分に発揮させる点から好ましい。
【0051】
また、本発明に用いられる光開始剤として、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物に、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物を組み合わせる場合、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.1質量%以上4.0質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上3.0質量%以下の範囲内であることが、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物との併用効果を十分に発揮させる点から好ましい。
【0052】
本発明に用いられる光開始剤として、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物に、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物を組み合わせる場合、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物との比率は、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物100質量部に対して、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物が10質量部以上150質量部以下であることが好ましく、更に15質量部以上120質量部以下であることが、輝度及び感度の点から好ましい。微小孔を形成し易くする点からは、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物100質量部に対して、前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物が10質量部以上70質量部以下であることが好ましく、15質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0053】
また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、光開始剤が更に前記その他の光開始剤を含む場合は、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物及び前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物の合計含有量は、本発明に用いられる光開始剤の合計100質量部中に、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることが更に好ましい。
一方で、前記その他の光開始剤との併用効果を十分に発揮させる点から、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物及び前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物の合計含有量は、本発明に用いられる光開始剤合計100質量部中に、95質量部以下であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましい。
【0054】
本発明に用いられる光開始剤として、更に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、これらの合計含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、0.1質量%以上4.0質量%以下、さらに0.5質量%以上2.0質量%以下の範囲内であることが、これらの光開始剤との併用効果を十分に発揮させる点から好ましい。
【0055】
[色材]
本発明において、色材は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料、分散可能な染料、及び染料を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
なお、以下においてカラーインデックス名を記載する場合、カラーインデックス名のうち番号のみが異なるものを列挙するときは、当該番号のみを列挙する場合がある。
【0056】
C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、168、175、185;
C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、193、194、202、206、207、208、209、215、216、220、224、226、242、243、245、254、255、264、265;
C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60;
C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59;
C.I.ピグメントブラウン23、25;
C.I.ピグメントブラック1、7。
【0057】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0058】
例えば、カラーフィルタの基板上に、本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を用いて遮光層のパターンを形成する場合には、インク中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機顔料、或いは、シアニンブラックなどの有機顔料を使用できる。
【0059】
上記分散可能な染料としては、染料に各種置換基を付与して溶剤に不溶化することにより分散可能となった染料や、溶解度の低い溶剤と組み合わせて用いることにより分散可能となった染料や、溶剤に可溶性の染料をカウンターイオンと塩形成して不溶化(レーキ化)したレーキ色材が挙げられる。このような分散可能な染料と、分散剤とを組み合わせて用いることにより当該染料の分散性や分散安定性を向上することができる。
なお、目安として、10gの溶剤(又は混合溶剤)に対して染料の溶解量が100mg以下であれば、当該溶剤(又は混合溶剤)において、当該染料が分散可能であると判定することができる。
【0060】
前記染料としては、従来公知の染料の中から適宜選択することができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料などを挙げることができる。具体的には例えば、C.I.ソルベントイエロー4、14、15、24、82、88、94、98、162、179;
C.I.ソルベントレッド45、49;
C.I.ソルベントオレンジ2、7、11、15、26、56;
C.I.ソルベントブルー35、37、59、67;
C.I.アシッドレッド50、52、289;
C.I.アシッドバイオレット9、30;
C.I.アシッドブルー19;等を挙げることができる。
【0061】
青色着色層を形成する場合には、高輝度化の点から、中でも、トリアリールメタン系染料、キサンテン系染料、及びシアニン系染料の少なくとも1種が好ましく、耐熱性が高い点から、中でも、トリアリールメタン系染料及びキサンテン系染料から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本発明においては、カラーフィルタの輝度を向上できる点から、トリアリールメタン系染料を有するレーキ色材を含むことが好ましく、中でも、トリアリールメタン系塩基性染料と、ポリ酸アニオンとを含むことが好ましい。
【0062】
本発明において、前記レーキ色材は、耐熱性及び耐光性に優れ、カラーフィルタの高輝度化を達成する点から、中でも、下記一般式(i)で表される色材であることが、分子会合状態を形成しており、より優れた耐熱性を示す点で好ましい。
【0063】
【化6】
(一般式(i)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。Bc-はc価のポリ酸アニオンを表す。R~Rは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、RiiとRiii、RivとRが結合して環構造を形成してもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR~R及びArはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
a及びcは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。複数あるeは同一であっても異なっていてもよい。)
【0064】
前記一般式(i)で表される色材のカチオン部は、国際公開第2012/144521号公報に記載の一般式(i)で表される色材のカチオン部と同様であってよい。
前記一般式(i)におけるAは、N(窒素原子)と直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)が含まれていてもよいものである。Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないため、カチオン性の発色部位が有する色調や透過率等の色特性は、連結基Aや他の発色部位の影響を受けず、単量体と同様の色を保持することができる。
Aにおいて、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基は、Nと直接結合する末端の炭素原子がπ結合を有しなければ、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、末端以外の炭素原子が不飽和結合を有していてもよく、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、Nが含まれていてもよい。例えば、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基等が含まれていてもよく、水素原子が更にハロゲン原子等に置換されていてもよい。
また、Aにおいて上記脂肪族炭化水素基を有する芳香族基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基を有する、単環又は多環芳香族基が挙げられ、置換基を有していてもよく、O、S、Nが含まれる複素環であってもよい。
中でも、骨格の堅牢性の点から、Aは、環状の脂肪族炭化水素基又は芳香族基を含むことが好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基としては、中でも、有橋脂環式炭化水素基が、骨格の堅牢性の点から好ましい。有橋脂環式炭化水素基とは、脂肪族環内に橋かけ構造を有し、多環構造を有する多環状脂肪族炭化水素基をいい、例えば、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,2]オクタン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン等が挙げられる。有橋脂環式炭化水素基の中でも、ノルボルナンが好ましい。また、芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環を含む基が挙げられ、中でも、ベンゼン環を含む基が好ましい。
原料入手の容易さの観点からAは2価以上4価以下が好ましく、2価以上3価以下が好ましく、更に2価が好ましい。例えば、Aが2価の有機基の場合、炭素数1以上20以下の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基や、キシリレン基等の炭素数1以上20以下のアルキレン基を2個置換した芳香族基等が挙げられる。
【0065】
~Rにおけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、炭素数1以上20以下の直鎖又は分岐状アルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1以上8以下の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1以上5以下の直鎖又は分岐のアルキル基であることが、製造及び原料調達の容易さの点から、より好ましい。中でも、R~Rにおけるアルキル基がエチル基又はメチル基であることが特に好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
~Rにおけるアリール基は、特に限定されない。例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0066】
iiとRiii、RivとRが結合して環構造を形成しているとは、RiiとRiii、RivとRが窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。環構造は特に限定されないが、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
【0067】
中でも、化学的安定性の点からR~Rとしては、各々独立に、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、フェニル基、又は、RiiとRiii、RivとRが結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成していることが好ましい。
【0068】
~Rはそれぞれ独立に上記構造をとることができるが、中でも、色純度の点からRが水素原子であることが好ましく、さらに製造および原料調達の容易さの点からRii~Rがすべて同一であることがより好ましい。
【0069】
Arにおける2価の芳香族基は特に限定されない。芳香族基は、炭素環からなる芳香族炭化水素基の他、複素環基であってもよい。芳香族炭化水素基における芳香族炭化水素としては、ベンゼン環の他、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の縮合多環芳香族炭化水素;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環式炭化水素が挙げられる。当該鎖状多環式炭化水素においては、ジフェニルエーテル等のように鎖状骨格中にO、S、Nを有していてもよい。一方、複素環基における複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピロン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ-ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。
【0070】
芳香族基が有していてもよい置換基としては、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0071】
Arは炭素数が6以上20以下の芳香族基であることが好ましく、炭素数が10以上14以下の縮合多環式炭素環からなる芳香族基がより好ましい。中でも、構造が単純で原料が安価である点からフェニレン基やナフチレン基であることがより好ましい。
【0072】
1分子内に複数あるR~R及びArは、同一であっても異なっていてもよい。複数あるR~R及びArがそれぞれ同一である場合には、発色部位が同一の発色を示すため、発色部位の単体と同様の色が再現でき、色純度の点から好ましい。一方、R~R及びArのうち少なくとも1つを異なる置換基とした場合には、複数種の単量体を混合した色を再現することができ、所望の色に調整することができる。
【0073】
前記一般式(i)で表される色材のアニオン(Bc-)は2価以上のポリ酸アニオンである。
ポリ酸アニオンとしては、中でも、高輝度で耐熱性や耐光性に優れる点から、タングステン(W)及びモリブデン(Mo)の少なくとも1種を含むポリ酸アニオンであることが好ましく、少なくともタングステンを含み、且つモリブデンを含んでいてもよいポリ酸アニオンであることが、耐熱性の点からより好ましい。
【0074】
少なくともタングステン(W)を含むポリ酸アニオンにおいて、タングステンとモリブデンとの含有比は特に限定されないが、特に耐熱性に優れる点から、タングステンとモリブデンとのモル比が100:0~85:15の範囲内であることが好ましく、100:0~90:10の範囲内であることがより好ましい。
ポリ酸アニオン(Bc-)は、上記のポリ酸アニオンを1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができ、2種以上組み合わせて用いる場合には、ポリ酸アニオン全体におけるタングステンとモリブデンとのモル比が上記範囲内であることが好ましい。
【0075】
前記一般式(i)で表される色材は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他のカチオンやアニオンを含んだ複塩となっていてもよい。このようなカチオンの具体例としては、他の塩基性染料のほか、アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基などアニオンと塩形成可能な官能基を含んだ有機化合物や、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン等の金属イオンが挙げられる。また、アニオンの具体例としては、酸性染料のほか、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオンや、無機酸のアニオン等が挙げられる。上記無機酸のアニオンとしては、リン酸イオン、硫酸イオン、クロム酸イオン、タングステン酸イオン(WO 2-)、モリブデン酸イオン(MoO 2-)等のオキソ酸のアニオン等が挙げられる。
なお、一般式(i)で表される色材は、例えば、国際公開第2012/144520号パンフレットを参考にして調製することができる。
【0076】
また、緑色着色層を形成する場合には、亜鉛フタロシアニン顔料であるC.I.ピグメントグリーン59(PG59)やC.I.ピグメントグリーン58(PG58)に、更に黄色色材を組み合わせた緑色色材を好ましく用いることができる。
【0077】
PG59やPG58等の亜鉛フタロシアニン顔料と組み合わせて用いられる黄色色材としては、中でもC.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料が好ましい。C.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料としては、具体的には、少なくとも1種のゲスト化合物のホストとして働く下記一般式(ii)またはそれの互変異性構造の1つに従うアゾ化合物のモノ、ジ、トリおよびテトラアニオンと金属Li,Cs,Mg,Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、特に好適にはNa,K,Ca,Sr,Ba,Zn,Fe,Ni,Cu,MnおよびLaに相当する金属錯体を挙げることができる。このようなC.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料を用いると輝度が向上する点から好ましい。
【0078】
【化7】
(上記一般式(ii)中、R31はそれぞれ独立して、OH、NH、NH-CN、アシルアミノ、アルキルアミノ、またはアリールアミノであり、R32はそれぞれ独立して、-OHまたは-NHである)
【0079】
中でも、黄色色材が、前記一般式(ii)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物のモノ、ジ、トリおよびテトラアニオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンとCd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、Zn,Fe,Ni,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属のイオンを含むことが、輝度を向上し、且つ、コントラストを向上する点から好ましい。
2種類以上の金属イオンを含むことにより色材の結晶成長が抑制され微粒化が可能となり、更に、後述する分散剤とを組み合わせて用いることから、色材分散液中で微粒化され、コントラストが向上した着色層を形成できると推察される。
【0080】
一般式(ii)中のアシルアミノ基におけるアシル基としては、例えば、アルキルカルボニル基、フェニルカルボニル基、アルキルスルホニル基、フェニルスルホニル基、アルキル、フェニル、又はナフチルで置換されていても良いカルバモイル基、アルキル、フェニル、又はナフチルで置換されていても良いスルファモイル基、アルキル、フェニル、又はナフチルで置換されていてもよいグアニル基等が挙げられる。前記アルキル基は炭素数1~6であることが好ましい。また前記アルキル基は、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン、-OH、-CN、-NH、及び/又は、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、前記フェニル基及びナフチル基は、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン、-OH、-CN、-NH、-NO、炭素数1~6のアルキル基、及び/又は炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい。
一般式(ii)中のアルキルアミノ基におけるアルキル基としては、炭素数1~6であることが好ましい。前記アルキル基は、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン、-OH、-CN、-NH、及び/又は、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい。
一般式(ii)中のアリールアミノ基におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、これらのアリール基は、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン、-OH、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、-NH、-NOおよび-CNなどで置換されていてもよい。
【0081】
前記一般式(ii)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物において、R31としては、それぞれ独立に、-OH、-NH、-NH-CN、又はアルキルアミノであることが、色相の点から好ましく、2つのR31はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
前記一般式(ii)において、2つのR31は、中でも色相の点から、両方とも-OHである場合、両方とも-NH-CNである場合、又は、1つが-OHで1つが-NH-CNである場合が更に好ましく、両方とも-OHである場合がより更に好ましい。
【0082】
また、前記一般式(ii)で表されるアゾ化合物及びそれの互変異性構造のアゾ化合物において、R32としては、色相の点から、両方とも-OHである場合がより好ましい。
【0083】
Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、Zn,Fe,Ni,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属のイオンを含む場合の、当該少なくとも2種の金属としては、中でも、2価又は3価の陽イオンになる金属を少なくとも1種含むことが好ましく、Ni,Cu,およびZnからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、更に、少なくともNiを含むことが好ましい。
更に、Niと、更に、Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、Zn,Fe,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを含むことが好ましく、より更に、Niと、更に、Zn,Cu,AlおよびFeからなる群から選択される少なくとも1種の金属とを含むことが好ましい。中でも特に、前記少なくとも2種の金属としては、NiとZnであるか、又は、NiとCuであることが好ましく、中でも亜鉛フタロシアニン顔料との親和性の点から、NiとZnであることが好ましい。
【0084】
Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、Zn,Fe,Ni,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属のイオンを含む場合の、少なくとも2種の金属の含有割合は適宜調整されれば良い。
中でも、Niと、更に、Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、Zn,Fe,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の金属との含有割合は、Ni:その他の前記少なくとも1種金属が97:3~10:90のモル比で含むことが好ましく、更に、90:10~10:90のモル比で含むことが好ましい。
中でも、NiとZnとをNi:Znが90:10~10:90のモル比で含むことが好ましく、70:30~10:90のモル比で含むことが更に好ましい。中でも、亜鉛フタロシアニン顔料と組み合わせた場合に、着色力が高まって、微小孔中の現像残渣を抑制し易い点から、NiとZnの比率においてZnがNiより多く含まれることが好ましく、NiとZnとをNi:Znが40:60~10:90のモル比で含むことが更に好ましい。
或いは、NiとCuとをNi:Cuが97:3~10:90のモル比で含むことが好ましく、96:4~20:80のモル比で含むことが更に好ましい。
【0085】
Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、Zn,Fe,Ni,CuおよびMnからなる群から選択される少なくとも2種の金属のイオンを含む場合に、C.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料は、更に、前記特定の金属のイオンとは異なる金属イオンを含んでいても良い。例えば、Li,Cs,Mg,Na,K,Ca,Sr,Ba,およびLaからなる群から選択される少なくとも1種の金属イオンを含んでいても良い。
【0086】
C.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料において、少なくとも2種の金属のイオンを含む態様としては、共通した結晶格子中に少なくとも2種の金属のイオンが含まれる場合と、別の結晶格子中に各々1種ずつの金属のイオンが含まれる結晶が凝集している場合が挙げられる。中でも、共通した結晶格子中に少なくとも2種の金属のイオンが含まれる場合が、よりコントラストが向上する点から好ましい。なお、共通した結晶格子中に少なくとも2種の金属のイオンが含まれる態様か、別の結晶格子中に各々1種ずつの金属のイオンが含まれる結晶が凝集している態様であるかは、例えば特開2014-12838号公報を参照してX線回折法を用いて適宜判断することができる。
【0087】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10nm~100nmの範囲内であることが好ましく、15nm~60nmであることがより好ましい。色材の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明に係る色材分散液を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
【0088】
本発明に用いられる、色材は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販の色材を微細化処理して用いても良い。
【0089】
色材の合計含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3質量%~65質量%、より好ましくは4質量%~60質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0μm~5.0μm)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、保存安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、色材の合計含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、15質量%~65質量%、より好ましくは25質量%~60質量%の割合で配合することが好ましい。
【0090】
[アルカリ可溶性樹脂]
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられるアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基、通常カルボキシ基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、並びにエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0091】
カルボキシ基を有する構成単位を有するアクリル系共重合体、及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂は、例えば、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを、公知の方法により(共)重合して得られた(共)重合体である。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0092】
アルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂に、嵩高い基である炭化水素環を有することにより、得られた着色層の耐溶剤性、特に着色層の膨潤が抑制されるとの知見を得た。作用については未解明であるが、着色層内に嵩高い炭化水素環が含まれることにより、着色層内における分子の動きが抑制される結果、塗膜の強度が高くなり溶剤による膨潤が抑制されるものと推定される。
このような炭化水素環としては、置換基を有していてもよい環状の脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族環、及びこれらの組み合わせが挙げられ、炭化水素環がカルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基等の置換基を有していてもよい。中でも、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する。
炭化水素環の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン(ジシクロペンタン)、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族環;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環や、下記化学式(A)に示されるカルド構造等が挙げられる。
【0093】
【化8】
【0094】
また、アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(B)で表されるマレイミド構造を有するのも好ましい。
【0095】
【化9】
(一般式(B)において、Rは、置換されていてもよい炭化水素環である。)
【0096】
アルカリ可溶性樹脂が、前記一般式(B)で表されるマレイミド構造を有する場合、炭化水素環に窒素原子を有するため、後述する一般式(I)で表される構成単位を有する重合体である塩基性分散剤との相溶性が非常によく、現像残渣の抑制効果が向上する。
前記一般式(B)のRにおける、置換されていてもよい炭化水素環の具体例としては、前記炭化水素環の具体例と同様のものが挙げられる。
【0097】
炭化水素環として、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する点から好ましい。
また、前記化学式(A)に示されるカルド構造を含む場合には、着色層の硬化性が向上し、耐溶剤性(NMP膨潤抑制)が向上する点から特に好ましい。
【0098】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂において、カルボキシ基を有する構成単位とは別に、上記炭化水素環を有する構成単位を有するアクリル系共重合体を用いることが、各構成単位量を調整しやすく、上記炭化水素環を有する構成単位量を増加して当該構成単位が有する機能を向上させやすい点から好ましい。
カルボキシ基を有する構成単位と、上記炭化水素環とを有するアクリル系共重合体は、前述の“共重合可能なその他のモノマー”として炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることにより調製することができる。
前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせる炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどが挙げられ、現像後の着色層の断面形状が加熱処理においても維持される効果が大きい点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
また、現像残渣の抑制効果の点からは、前記炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、前記マレイミド構造を有するモノマーと、スチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0099】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂はまた、側鎖にエチレン性二重結合を有することが好ましい。エチレン性二重結合を有する場合には、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と光重合性化合物等が架橋結合を形成し得る。本発明で用いられる前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせることにより、硬化膜の膜強度がより向上して現像耐性が向上し、また、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れるようになる。
アルカリ可溶性樹脂中に、エチレン性二重結合を導入する方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシ基に、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法や、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性二重結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法などが挙げられる。
【0100】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0101】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることが好ましく、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0102】
アルカリ可溶性樹脂は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
【0103】
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、良好なパターンが得られる点から、モノマー全量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、現像後のパターン表面の膜荒れ等を抑制する点から、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記下限値以上であると得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が十分であり、また、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記上限値以下であると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れが起こり難い傾向がある。
【0104】
また、アルカリ可溶性樹脂としてより好ましく用いられる、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂において、エポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物はカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量に対して、10質量%~95質量%であることが好ましく、15質量%~90質量%であることがより好ましい。
【0105】
カルボキシ基含有共重合体の好ましい重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~50,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000~20,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下する場合があり、50,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
なお、カルボキシ基含有共重合体の上記重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により測定することができる。
【0106】
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物、不飽和基含有モノカルボン酸、及び酸無水物は、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0107】
アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点から、酸価が50mgKOH/g以上のものを選択して用いることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が70mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、中でも、70mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であることが好ましい。
なお、本発明において酸価はJIS K 0070に従って測定することができる。
【0108】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、本発明で用いられる前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせることにより、硬化膜の膜強度が向上して現像耐性が向上し、基板との密着性に優れるといった効果を得る点から、100~2000の範囲であることが好ましく、特に、140~1500の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、2000以下であれば現像耐性や密着性に優れている。また、100以上であれば、前記カルボキシ基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。本発明で用いられる前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を前述した含有量と組み合わせて用いることが好ましい。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、上記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(1)で表される。
【0109】
数式(1)
エチレン性不飽和結合当量(g/mol)=W(g)/M(mol)
(数式(1)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性樹
脂W(g)中に含まれるエチレン性二重結合のモル数(mol)を表す。)
【0110】
上記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0111】
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5質量%~60質量%、さらに好ましくは10質量%~40質量%の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、充分なアカリ現像性が得られ、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、現像時に膜荒れやパターンの欠けを抑制できる。
【0112】
[光重合性化合物]
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる光重合性化合物は、前記光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が好適に用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0113】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能(メタ)アクリレートが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0114】
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる上記光重合性化合物の含有量は、特に制限はないが、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して光重合性化合物は好ましくは5質量%~60質量%、さらに好ましくは10質量%~40質量%の範囲内である。光重合性化合物の含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み、露光部分が現像時の溶出を抑制でき、また、光重合性化合物の含有量が上記上限値以下であるとアルカリ現像性が十分である。
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる上記光重合性化合物の含有量と前記光開始剤との含有割合は、優れた硬化性、残膜率の点、更には、電気信頼性が向上する点から、上記光重合性化合物100質量部に対して、前記光開始剤の合計含有割合が5質量部以上であることが好ましく、更に10質量部以上であることが好ましく、40質量部以下であることが好ましく、更に30質量部以下であることが好ましい。
【0115】
[溶剤]
本発明に用いられる溶剤としては、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。溶剤は単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸イソブチル、酪酸n-ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ-ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N-ヘプタン、N-ヘキサン、N-オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中ではグリコールエーテルアセテート系溶剤、カルビトールアセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤が他の成分の溶解性の点で好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、及び、3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0116】
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。該溶剤を含むカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55質量%~95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65質量%~88質量%の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0117】
[分散剤]
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において、前記色材は、分散剤により溶剤中に分散させて用いられることが好ましい。本発明において分散剤は、従来公知の分散剤の中から適宜選択して用いることができる。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、均一に、微細に分散し得る点から、高分子分散剤が好ましい。
【0118】
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシ基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシ基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
【0119】
高分子分散剤としては、中でも、前記色材を好適に分散でき、分散安定性が良好である点から、主鎖又は側鎖に窒素原子を含み、アミン価を有する高分子分散剤が好ましく、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体からなる高分子分散剤であることが、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。
3級アミンを有する繰り返し単位は、前記色材と親和性を有する部位である。3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体からなる高分子分散剤は、通常、溶剤と親和性を有する部位となる繰り返し単位を含む。3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体としては、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部と、溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体であることが、耐熱性に優れ、高輝度となる塗膜を形成可能となる点で好ましい。
【0120】
3級アミンを有する繰り返し単位は、3級アミンを有していれば良く、該3級アミンは、ブロックポリマーの側鎖に含まれていても、主鎖を構成するものであっても良い。
中でも、側鎖に3級アミンを有する繰り返し単位であることが好ましく、中でも、主鎖骨格が熱分解し難く、耐熱性が高い点から、下記一般式(I)で表される構造であることが、より好ましい。
【0121】
【化10】
(一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基、Qは、2価の連結基、Rは、炭素数1~8のアルキレン基、-[CH(R)-CH(R)-O]-CH(R)-CH(R)-又は-[(CH-O]-(CH-で示される2価の有機基、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよい鎖状又は環状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1~18の整数、yは1~5の整数、zは1~18の整数を示す。)
【0122】
上記一般式(I)の2価の連結基Qとしては、例えば、炭素数1~10のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、炭素数1~10のエーテル基(-R’-OR”-:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、得られたポリマーの耐熱性や溶剤として好適に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、Qは、-COO-基又は-CONH-基であることが好ましい。
【0123】
上記一般式(I)の2価の有機基Rは、炭素数1~8のアルキレン基、-[CH(R)-CH(R)-O]-CH(R)-CH(R)-又は-[(CH-O]-(CH-である。上記炭素数1~8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
上記Rとしては、分散性の点から、炭素数1~8のアルキレン基が好ましく、中でも、Rがメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
【0124】
上記一般式(I)のR、Rが互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5~7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。
【0125】
上記一般式(I)で表される繰り返し単位としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート等、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも分散性、及び分散安定性が向上する点でジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを好ましく用いることができる。
【0126】
前記3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部において、一般式(I)で表される構成単位は、3個以上含まれることが好ましい。中でも、分散性、及び分散安定性を向上する点から、3~100個含むことが好ましく、3~50個含むことがより好ましく、更に3~30個含むことがより好ましい。
【0127】
前記3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部(以下、Aブロックと記載することがある。)と溶剤親和性を有するブロック部(以下、Bブロックと記載することがある。)を有するブロック共重合体における、溶剤親和性を有するブロック部としては、溶剤親和性を良好にし、分散性を向上する点から、前記一般式(I)で表される構成単位を有さず、前記一般式(I)と共重合可能な構成単位を有する溶剤親和性ブロック部を有する。本発明においてブロック共重合体の各ブロックの配置は特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
前記Bブロックは、国際公開第2016/104493号のBブロックと同様であってよい。
【0128】
溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、色材分散性が向上する範囲で適宜調整すればよい。中でも、溶剤親和性部位と色材親和性部位が効果的に作用し、色材の分散性を向上する点から、溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、10~200であることが好ましく、10~100であることがより好ましく、更に10~70であることがより好ましい。
【0129】
溶剤親和性のブロック部は、溶剤親和性部位として機能するように選択されれば良く、溶剤親和性のブロック部を構成する繰り返し単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
本発明の分散剤として用いられるブロック共重合体において、前記一般式(I)で表される構成単位のユニット数mと、溶剤親和性のブロック部を構成する他の構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.01~1の範囲内であることが好ましく、0.05~0.7の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0130】
また、中でも、本発明において分散剤は、前記一般式(I)で表される構造を含みアミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である重合体が、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。
アミン価が上記範囲内であることにより、粘度の経時安定性や耐熱性に優れると共に、アルカリ現像性や、溶剤再溶解性にも優れている。分散剤のアミン価が高いと、分散性および分散安定性が向上し、また、溶剤溶解性及び溶剤再溶解性が向上し、他の成分との相溶性が良好になり、着色層の細線パターンの直線性が向上したり、微小孔のビリツキが抑制されやすくなる。本発明において、分散剤のアミン価は、中でも、アミン価が80mgKOH/g以上であることが好ましく、90mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、溶剤再溶解性の点から、分散剤のアミン価は、110mgKOH/g以下であることが好ましく、105mgKOH/g以下であることがより好ましい。
アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS-K7237に定義された方法により測定することができる。当該方法により測定した場合には、分散剤中の有機酸化合物と塩形成しているアミノ基であっても、通常、当該有機酸化合物が解離するため、分散剤として用いられるブロック共重合体そのもののアミン価を測定することができる。
【0131】
本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像残渣の抑制効果の点から、下限としては、1mgKOH/g以上であることが好ましい。中でも、現像残渣の抑制効果がより優れる点から、分散剤の酸価は2mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止でき、着色層の細線パターンの直線性が向上したり、微小孔のビリツキが抑制されやすくなる点から、分散剤の酸価の上限としては、18mgKOH/g以下であることが好ましい。中でも、現像密着性、及び溶剤再溶解性が良好になる点から、分散剤の酸価は、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。
本発明に用いられる分散剤においては、塩形成前のブロック共重合体の酸価が1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。現像残渣の抑制効果が向上するからである。また、塩形成前のブロック共重合体の酸価の上限としては18mgKOH/g以下であることが好ましいが、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。現像密着性、及び溶剤再溶解性が良好になるからである。
【0132】
また、本発明において、分散剤のガラス転移温度は、現像密着性が向上する点から、30℃以上であることが好ましい。すなわち、分散剤が、塩形成前ブロック共重合体であっても、塩型ブロック共重合体であっても、そのガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましい。分散剤のガラス転移温度が低いと、特に現像液温度(通常23℃程度)に近接し、現像密着性が低下する恐れがある。これは、当該ガラス転移温度が現像液温度に近接すると、現像時に分散剤の運動が大きくなり、その結果、現像密着性が悪化するからと推定される。ガラス転移温度が30℃以上であることによって、現像時の分散剤の分子運動が抑制されることから、現像密着性の低下が抑制されると推定される。
分散剤のガラス転移温度は、現像密着性の点から中でも32℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。一方、精秤が容易など、使用時の操作性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
本発明における分散剤のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することにより求めることができる。
また、ブロック部及びブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)は下記式で計算することができる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ブロック部はi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用することができる。
【0133】
色材濃度を高め、分散剤含有量が増加すると、相対的にバインダー量が減少することから、着色樹脂層が現像時に下地基板から剥離し易くなる。分散剤がカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックを含み、前記特定の酸価及びガラス転移温度を有することにより、現像密着性が向上する。酸価が高すぎると、現像性に優れるものの、極性が高すぎて却って現像時に剥離が生じ易くなると推定される。
【0134】
以上のことから、本発明において前記分散剤は、前記一般式(I)で表される構造を含みアミン価が40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下である重合体であって、且つ、酸価が1mgKOH/g以上18mgKOH/g以下で、ガラス転移温度が30℃以上であることが、色材分散安定性に優れてコントラストを向上し、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含む着色樹脂組成物とした際に、現像残渣の発生が抑制されながら、溶剤再溶解性に優れ、更に、高い現像密着性を有する点、更には、形状に優れた微小孔を形成し易く、微小孔のビリツキや現像残渣が抑制されやすくなる点から、から好ましい。
【0135】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、一般式(I)で表される構成単位を有するモノマーと共重合可能で、不飽和二重結合とカルボキシ基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物基含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0136】
塩形成前のブロック共重合体中、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の酸価が前記特定の酸価の範囲内になるように適宜設定すればよく、特に限定されないが、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、0.05質量%~4.5質量%であることが好ましく、0.07質量%~3.7質量%であることがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、前記下限値以上であることより、現像残渣の抑制効果が発現され、前記上限値以下であることより現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる。
なお、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は、上記特定の酸価となればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0137】
また、本発明に用いられる分散剤のガラス転移温度を特定の値以上とし、現像密着性が向上する点から、モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上であるモノマーを、合計でBブロック中に75質量%以上とすることが好ましく、更に85質量%以上とすることが好ましい。
【0138】
前記ブロック共重合体において、前記Aブロックの構成単位のユニット数mと、前記Bブロックの構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.05~1.5の範囲内であることが好ましく、0.1~1.0の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0139】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、1000~20000であることが好ましく、2000~15000であることがより好ましく、更に3000~12000であることがより好ましい。
ここで、重量平均分子量は(Mw)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。なお、ブロック共重合体の原料となるマクロモノマーや塩型ブロック共重合体、グラフト共重合体についても、上記条件で行う。
【0140】
このような3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部と溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体の具体例としては、例えば、特許第4911253号公報に記載のブロック共重合体を好適なものとして挙げることができる。
【0141】
上記3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体を分散剤として用いて、前記色材を分散する場合には、色材100質量部に対して、当該3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体の含有量が15質量部~300質量部であることが好ましく、20質量部~250質量部であることがより好ましい。上記範囲内であれば分散性及び分散安定性に優れ、コントラストを向上する効果が高くなる。
【0142】
本発明においては、色材の分散性や分散安定性の点から、前記3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体中のアミノ基のうちの少なくとも一部と、有機酸化合物やハロゲン化炭化水素とが塩を形成したものを分散剤として用いても好ましい(以下、このような重合体を、塩型重合体と称することがある)。
中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体がブロック共重合体であって、前記有機酸化合物がフェニルホスホン酸やフェニルホスフィン酸等の酸性有機リン化合物であることが、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。このような分散剤に用いられる有機酸化合物の具体例としては、例えば、特開2012-236882号公報等に記載の有機酸化合物が好適なものとして挙げられる。
また、前記ハロゲン化炭化水素としては、臭化アリル、塩化ベンジル等のハロゲン化アリル及びハロゲン化アラルキルの少なくとも1種であることが、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。
【0143】
分散剤を用いる場合の含有量としては、色材を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して1質量%~40質量%で用いることができる。更に、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して2質量%~30質量%で配合するのが好ましく、特に3質量%~25質量%の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2質量%~25質量%、より好ましくは3質量%~20質量%の割合で配合することが好ましい。
【0144】
[酸化防止剤]
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含むものであってもよい。本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と組み合わせて酸化防止剤を含むことにより、耐熱性を向上することができ、露光及びポストベーク後の輝度低下を抑制できるため輝度を向上することができ、また、硬化膜に微小孔を形成する際に硬化性を損なうことなく微小孔内の過度なラジカル連鎖反応を制御できるため、所望の形状の微小孔をより容易に形成することができる。
本発明に用いられる酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知のものの中から適宜選択すればよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の点及び微小孔の形状を良好にする点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0145】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、少なくとも1つのフェノール構造を含有し、当該フェノール構造の水酸基の2位と6位の少なくとも1つに炭素原子数4以上の置換基が置換されている構造を有する酸化防止剤を意味する。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:イルガノックス1010、BASF製)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF製)、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF製)、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン(商品名:イルガノックス565、BASF製)、2,2’-チオジエチルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:イルガノックス1035、BASF製)、1,2-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(商品名:イルガノックスMD1024、BASF製)、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル(商品名:イルガノックス1135、BASF製)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(商品名:イルガノックス1520L、BASF製)、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](商品名:イルガノックス1098、BASF製)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:イルガノックス259、BASF製)、1-ジメチル-2-[(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:ADK STAB AO-80、アデカ製)、ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロピオン酸)エチレンビス(オキシエチレン)(商品名:イルガノックス245、BASF製)、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(商品名:イルガノックス1790、BASF製)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP-S、住友化学製)、6,6’-チオビス(2-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF製)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF製)、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル(商品名:スミライザーGM、住友化学製)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール) (商品名:スミライザーWX-R、住友化学製)、6,6'-ジ-tert-ブチル-4,4'-ブチリデンジ-m-クレゾール(商品名:アデカスタブ AO-40、ADEKA製)等が挙げられる。その他ヒンダードフェノール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
【0146】
また、本発明においては、酸化防止剤として、潜在性酸化防止剤を用いても良い。本発明において潜在性酸化防止剤とは、加熱により脱離可能な保護基を有する化合物であって、当該保護基が脱離することにより、酸化防止機能を発現する化合物である。中でも150℃以上で加熱することにより、保護基が脱離しやすくなるものが好ましい。潜在性酸化防止剤は、露光時においては酸化防止機能を持たないため、光開始剤から発生したラジカルを失活せず、感度の低下を抑制し、線幅の細りを抑制し、残膜率を向上し易い。一方、露光後に行われる加熱工程においては、前記保護基が脱離して酸化防止効果が発現するため、色材等の退色が抑制されて、高輝度な着色層が得られる。
本発明において好適に用いられる潜在性酸化防止剤としては、耐熱性の点及び微小孔の形状を良好にする点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のフェノール性水酸基を加熱により脱離可能な保護基で保護した潜在性ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、具体例としては下記化学式(a)~(c)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0147】
【化11】
【0148】
前記潜在性酸化防止剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、特開昭57-111375、特開平3-173843、特開平6-128195、特開平7-206771、特開平7-252191、特表2004-501128の各公報に記載された方法により製造されたフェノール系化合物と、酸無水物、酸塩化物、Boc化試薬、アルキルハライド化合物、シリルクロライド化合物、アリルエーテル化合物等を反応させて得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
前記加熱により脱離可能な保護基としては、例えば、酸無水物、酸塩化物、Boc化試薬、アルキルハライド化合物、シリルクロライド化合物、又はアリルエーテル化合物の反応残基が挙げられ、典型的には、t-ブトキシカルボニル基が挙げられる。
【0149】
酸化防止剤を用いる場合の含有量としては、特に限定されるものではないが、例えば、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して0.1質量%~20質量%で用いることができる。更に、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して0.2質量%~10質量%で配合するのが好ましく、特に0.3質量%~5質量%の割合であることが、前記光開始剤との併用効果を十分に発揮させる点から好ましい。
【0150】
また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含む場合は、前記光開始剤との併用効果を十分に発揮させる点から、前記本発明に用いられる光開始剤の合計100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることが更に好ましい。
一方で、適度な感度維持の点から、前記本発明に用いられる光開始剤の合計100質量部に対して、300質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましい。
【0151】
[任意添加成分]
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、例えば、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0152】
本発明に用いられる色材の質量(P)と、当該色材以外の固形分の質量(V)との比(以下、「P/V比」ということがある)は、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能であればよく、特に限定されないが、0.05以上1.00以下の範囲内であることが好ましく、0.10以上0.80以下の範囲内であることがより好ましく、0.15以上0.75以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.20以上0.70以下の範囲内であることが特に好ましい。当該P/V比が上記範囲であることにより、所望の発色が可能な着色層が形成可能なカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物とすることができ、さらに上記カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物中において、均一に分散することができる。
【0153】
赤色着色樹脂組成物とする場合には、所望の発色の観点から、P/V比は0.50以上であることが好ましく、更に0.60以上であることが好ましく、より更に0.74以上であることが好ましい。また、1.0以下であることが好ましい。
緑色着色樹脂組成物とする場合には、所望の発色の観点から、P/V比は0.46以上であることが好ましく、更に0.56以上であることが好ましく、より更に0.68以上であることが好ましい。また、1.0以下であることが好ましい。
青色着色樹脂組成物とする場合には、所望の発色の観点から、P/V比は0.24以上であることが好ましく、更に0.34以上であることが好ましく、より更に0.41以上であることが好ましい。また、1.0以下であることが好ましい。それぞれ、上記下限値以上であれば、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の色濃度を高くすることができ、カラーフィルタ画素をより高演色、より低膜厚なものとすることができる。また、それぞれ上限値以下であれば保存安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。
【0154】
<カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の製造方法>
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の製造方法は、色材と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、溶剤と、好ましくは分散剤と、酸化防止剤と、所望により用いられる各種添加成分とを含有し、色材が分散剤により溶剤中に均一に分散されうる方法であることがコントラストを向上する点から好ましく、公知の混合手段を用いて混合することにより、調製することができる。
当該樹脂組成物の調製方法としては、例えば、(1)まず溶剤中に、色材と、分散剤とを添加して色材分散液を調製し、当該分散液に、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分を混合する方法;(2)溶剤中に、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し混合する方法;(3)溶剤中に、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、色材を加えて分散する方法;(4)溶剤中に、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを添加して色材分散液を調製し、当該分散液に、更にアルカリ可溶性樹脂と、溶剤と、光重合性化合物と、光開始剤と、所望により用いられる各種添加成分を添加し、混合する方法;などを挙げることができる。
これらの方法の中で、上記(1)及び(4)の方法が、色材の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。
【0155】
色材分散液を調製する方法は、従来公知の分散方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、(1)予め、分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで必要に応じて有機酸化合物を混合して分散剤が有するアミノ基と有機酸化合物との塩形成させる。これを色材と必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(2)分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで、色材及び必要に応じて有機酸化合物と、更に必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(3)分散剤を溶剤に混合、攪拌し、分散剤溶液を調整し、次いで、色材及び必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散液としたのちに、必要に応じて有機酸化合物を添加する方法などが挙げられる。
【0156】
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03mm~2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10mm~1.0mmである。
【0157】
II.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物からなる着色層を有する。
【0158】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0159】
(着色層)
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化物からなる着色層である。
着色層は、通常、後述する基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1μm~5μmの範囲であることが好ましい。
【0160】
当該着色層は、例えば、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。なかでもスピンコート法、ダイコート法を好ましく用いることができる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び光重合性化合物等を光重合反応させて硬化塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0161】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。
また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0162】
また、本発明に係るカラーフィルタをカラーフィルタオンアレイ構造とする場合等には、前記現像処理の際に、前記着色層に微小孔を形成してもよい。本発明においては、上述したカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を用いることから、着色層に所望の微小孔を容易に形成することができる。前記微小孔の形状は、用途に応じて適宜選択され、特に限定されないが、本発明においては、例えば、10μm×10μm~30μm×30μm程度の大きさの微小孔を形成することができる。また、微小孔の形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。
着色層に微小孔を形成する方法としては、例えば、着色層を形成する際に用いるフォトマスクとして、細線パターンを形成可能なパターンフォトマスクの開口パターン内に、微小孔を形成するための微小なマスクを配置したパターンフォトマスクを用いる方法が挙げられる。
【0163】
(遮光部)
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0164】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2μm~0.4μm程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5μm~2μm程度で設定される。
【0165】
(基板)
基板としては、後述する透明基板、シリコン基板、及び、透明基板又はシリコン基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。これらの基板上には、別のカラーフィルタ層、樹脂層、TFT等のトランジスタ、回路等が形成されていてもよい。
【0166】
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm~1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や配向突起、柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0167】
III.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0168】
[液晶表示装置]
液晶表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0169】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0170】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0171】
[有機発光表示装置]
有機発光表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0172】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例
【0173】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
なお、以下実施例17、21、24及び30については、参考例とする。
得られた化合物の構造は、核磁気共鳴装置(ブルカー・バイオスピン社、AVANCEIII HD500MHz)を用いて測定した1H-及び13C-NMRスペクトル、並びに、液体クロマトグラフ質量分析装置(島津製作所社、LC-30A、ブルカー・ダルトニクス社、micrOTOFQ2)を用いた質量分析により確認した。
【0174】
(合成例1:化合物Aの合成)
(1)中間体A1の合成
フルオレン0.60mol、水酸化カリウム2.4mol及びよう化カリウム0.06molを窒素雰囲気下で無水ジメチルスルホキシド500mlに溶解させて15℃で維持し、ブロモブタン1.33molを2時間で徐々に加えて反応物を15℃で1時間撹拌した。 その後反応物に蒸溜水2Lを加えて30分程度撹拌した後、ジクロロメタン2Lで生成物を抽出して、抽出した有機層を蒸溜水2Lで2回洗った。次いで、回収した有機層を無水MgSOで乾燥し、溶媒を減圧蒸溜して得た生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒;エチルアセテート:n-ヘキサン=1:20)で精製することにより、下記中間体A1を得た。
【0175】
【化12】
【0176】
(2)中間体A2の合成
前記中間体A1(0.11mol)をジクロロメタン500mlに溶解させて-5℃まで冷却した後、AlCl 0.13molを徐々に加え、反応物の温度が昇温されないように、ジクロロメタン15mlとシクロヘキシル塩化プロピオニル0.13molからなる溶液を1時間で徐々に滴下し、-5℃で1時間撹拌した。 その後反応物を氷水500mlに徐々に注いで30分間撹拌した後、有機層を蒸溜水200mLで洗った。次いで、回収した有機層を減圧蒸溜して得た生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒;エチルアセテート:n-ヘキサン=1:4)で精製することにより、下記中間体A2を得た。
【0177】
【化13】
【0178】
(3)中間体A3の合成
前記中間体A2(0.042mol)をテトラヒドロフラン(THF)200mlに溶解させ、1,4-ジオキサンに溶解された4N HCl25mlと亜硝酸イソブチル0.063molを順に加えて反応物を25℃で6時間撹拌した。 その後反応溶液にエチルアセテート200mlを加えて30分間撹拌して有機層を分離した後、蒸溜水200mlで洗った。次いで、回収した有機層を無水MgSOで乾燥し、溶媒を減圧蒸溜して得た生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒;エチルアセテート:n-ヘキサン=1:4)で精製することにより、下記中間体A3を得た。
【0179】
【化14】
【0180】
(4)化合物Aの合成
前記中間体A3(0.056mol)を窒素雰囲気下でN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)200mlに溶解させて-5℃で維持し、トリエチルアミン0.068molを加えて反応溶液を30分間撹拌した。その後、アセチルクロリド0.068molとN-メチル-2-ピロリジノン10mlからなる溶液を30分間で徐々に加え、反応物が昇温されないように30分間撹拌した。その後蒸溜水200mlを反応物に徐々に加えて30分間撹拌して有機層を分離した。次いで、回収した有機層を無水MgSOで乾燥し、溶媒を減圧蒸溜して得た生成物を、エタノール1Lを使用して再結晶した後乾燥することにより、下記化合物Aを得た。
【0181】
【化15】
【0182】
(合成例2:化合物Bの合成)
(1)中間体B1の合成
合成例1の(1)において、ブロモブタンに代えて同モルのブロモエタンを用い、シリカゲルカラムクロマトグラフィによる精製を行わなかった以外は、合成例1の(1)と同様にして、下記中間体B1を得た。
【0183】
【化16】
【0184】
(2)中間体B2の合成
合成例1の(2)において、中間体A1に代えて同モルの前記中間体B1を用い、シクロヘキシル塩化プロピオニルに代えて同モルの塩化プロピオニルを用いた以外は、合成例1の(2)と同様にして、下記中間体B2を得た。
【0185】
【化17】
【0186】
(3)中間体B3の合成
合成例1の(3)において、中間体A2に代えて同モルの前記中間体B2を用い、シリカゲルカラムクロマトグラフィに代えて、エチルアセテート:n-ヘキサン(1:6)の混合溶媒を使用して再結晶した後乾燥することにより精製した以外は、合成例1の(3)と同様にして、下記中間体B3を得た。
【0187】
【化18】
【0188】
(4)化合物Bの合成
合成例1の(4)において、中間体A3に代えて同モルの前記中間体B3を用いた以外は、合成例1の(4)と同様にして、下記化合物Bを得た。
【0189】
【化19】
【0190】
(合成例3:化合物Cの合成)
合成例2の(2)において、塩化プロピオニルに代えて同モルの塩化ブチリルを用いた以外は、合成例2と同様にして、下記化合物Cを得た。
【0191】
【化20】
【0192】
(合成例4:化合物Dの合成)
(1)中間体D1の合成
9H-フルオレン-2-イル-(フェニル)メタノン0.030molをジクロロメタン45mlに溶解させて-5℃まで冷却し、無水AlCl 0.033molを加えた後、ジクロロメタン9mlと塩化プロピオニル0.033molからなる溶液を反応物の温度が昇温されないように1時間で徐々に加えて-5℃で1時間撹拌した。その後、氷水250gに反応物を徐々に注いで30分間撹拌した後、有機層を分離して、蒸溜水100mlで洗った。次いで、回収した有機層を減圧蒸溜して得た生成物を、トルエン: エチルアセテート(5:1)の混合溶液20mlで再結晶することにより、下記中間体D1を得た。
【0193】
【化21】
【0194】
(2)中間体D2の合成
前記中間体D1(0.010mol)をテトラヒドロフラン(THF)30mlに溶解させ、1,4-ジオキサンに溶解された4N HCl4.5mlと亜硝酸イソペンチル0.015molを順に加えて反応物を25℃で24時間撹拌した。 その後、反応溶液にエチルアセテート20mlと蒸溜水50mlを加えて有機層を抽出した。抽出した有機層を無水MgSOで乾燥し、溶媒を減圧蒸溜して得た生成物を、エタノール: エチルアセテート(5:1)の混合溶媒30mlを使用して再結晶した後乾燥することにより、下記中間体D2を得た。
【0195】
【化22】
【0196】
(3)化合物Dの合成
前記中間体D2(0.006mol)を窒素雰囲気下でエチルアセテート25mlに溶解させて反応物を-5℃で維持し、トリエチルアミン0.007mmolを加えて反応溶液を30分間撹拌した後、アセチルクロリド0.007molとエチルアセテート5mlからなる溶液を、反応物が昇温されないように30分間で徐々に加え、30分間撹拌した。その後、蒸溜水100mlを反応物に徐々に加えて30分程度撹拌し、有機層を分離した。次いで、回収した有機層を無水MgSOで乾燥し、溶媒を減圧蒸溜することにより、下記化合物Dを得た。
【0197】
【化23】
【0198】
(合成例5:化合物Eの合成)
(1)中間体E1の合成
500mlの四口フラスコ中に、ジフェニルチオエーテル0.2molと、粉砕したAlCl 0.22molと、ジクロロエタン150mlとを投入して攪拌し、アルゴンガスを流して氷浴で冷却して温度が0℃まで低下した時に、シクロヘキシル塩化プロピオニル0.22molとジクロロエタン42gからなる溶液を滴下し始め、温度を10℃以下に調整しながら約1.5時間かけて添加した。温度を15℃に上昇して、引き続き2時間攪拌した後、反応液を排出した。
氷400gと濃塩酸65mlとを配合した希塩酸中に、攪拌下で反応液を徐々に投入した後、分液漏斗で下層を分液し、上層を50mlのジクロロエタンで抽出した後、抽出液と下層液とを合わせた。その後、NaHCO 10gと水200gとを配合したNaHCO溶液で洗浄し、更にpH値が中性を呈するまで200mlの水で3回洗浄し、60gの無水MgSOで乾燥して水分を除去した後、回転蒸発によりジクロロエタンを蒸発させた。回転蒸発瓶中に残った固体粉末を石油エーテル200mlに入れ、吸引ろ過を行い、更に150mlの無水エタノールに投入して加熱し、還流した。その後室温まで冷却し、更に氷で2時間冷却し、吸引ろ過した後、50℃のオーブン中で2時間乾燥することにより、下記中間体E1を得た。
【0199】
【化24】
【0200】
(2)中間体E2の合成
500mlの四口フラスコ中に、前記中間体E1 42gと、テトラヒドロフラン400gと、濃塩酸200gと、亜硝酸イソアミル24.2gとを投入して、常温で5時間攪拌した後、反応液を排出した。
反応液を大ビーカーに入れ、水1000mlを加えて攪拌した後、一晩静置することにより分層し、黄色の粘稠状液体を得た。粘稠状液体をジクロロエタンで抽出し、50gの無水MgSOを投入して乾燥した後、吸引ろ過を行い、ろ液を回転蒸発させて溶剤を除去し、油状粘稠物を得た。続いて、該粘稠物を石油エーテル150mlに入れ、攪拌、析出し、吸引ろ過を行って、白色粉末状固体を得た。その後、60℃で5時間乾燥して、下記中間体E2を得た。
【0201】
【化25】
【0202】
(3)化合物Eの合成
1000mlの四口フラスコ中に、前記中間体E2 34gと、ジクロロエタン350mlと、トリエチルアミン12.7gとを投入して攪拌し、氷浴で冷却して、温度が0℃まで低下した時に酢酸クロリド15.7gとジクロロエタン15gからなる溶液を滴下し始め、約1.5時間かけて添加した。引き続いて1時間攪拌した後、冷水500mlを滴下し、分液漏斗で分層した。5%NaHCO溶液200mlで1回洗い、更にpH値が中性を呈するまで200ml水で2回洗い、その後、濃塩酸20gと水400mlとを配合した希塩酸で一1回洗い、続いて200ml水で3回洗った後、100gの無水MgSOで乾燥し、溶剤を回転蒸発させて除去し、粘稠状液体を得た。該粘稠状液体に適量のメタノールを投入して析出した白色固体を、ろ過、乾燥して、下記化合物Eを得た。
【0203】
【化26】
【0204】
(合成例6:化合物Fの合成)
合成例5の(1)において、ジフェニルチオエーテルに代えて、同モルの[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-チエニル-メタノンを用いた以外は、合成例5と同様にして下記化合物Fを合成した。
【0205】
【化27】
【0206】
(合成例7:分散剤(ブロック共重合体A)の製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを-60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部をシリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーのメタクリル酸1-エトキシエチル(EEMA)2.2質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)18.7質量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(EHMA)12.8質量部、メタクリル酸n-ブチル(BMA)13.7質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)9.5質量部、メタクリル酸メチル(MMA)17.5質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA)26.7質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られた前駆体ブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで希釈し固形分30質量%溶液とした。水を32.5質量部加え、100℃に昇温し7時間反応させ、EEMA由来の構成単位を脱保護しメタクリル酸(MAA)由来の構成単位とした。得られたブロック共重合体PGMEA溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含み親溶剤性を有するBブロックとを含むブロック共重合体A(酸価 8mgKOH/g、Tg38℃)を得た。このようにして得られたブロック共重合体Aを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて確認したところ、重量平均分子量Mwは7730であった。また、アミン価は95mgKOH/gであった。
【0207】
(合成例8:アルカリ可溶性樹脂A溶液の合成)
スチレン 40質量部、MMA 15質量部、MAA 25質量部、及びAIBN 3質量部の混合液を、PGMEA 150質量部を入れた重合槽中に、窒素気流下、100℃で、3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で、3時間加熱し、重合体溶液を得た。この重合体溶液の重量平均分子量は、7000であった。
次に、得られた重合体溶液に、グリシジルメタクリレート(GMA) 20質量部、トリエチルアミン0.2質量部、及びp-メトキシフェノール0.05質量部を添加し、110℃で10時間加熱し、反応溶液中に、空気をバブリングさせた。得られたアルカリ可溶性樹脂Aは、スチレンとMMA、MAAの共重合により形成された主鎖にGMAを用いてエチレン性二重結合を有する側鎖を導入した樹脂であり、固形分42.6質量%、酸価74mgKOH/g、重量平均分子量12000であった。ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム-21H(Shodex GPC System-21H)により重量平均分子量を測定した。また酸価の測定方法は、JIS K 0070に基づいて測定した。
【0208】
(合成例9:青色色材αの合成)
(1)中間体1の合成
国際公開第2012/144521号に記載の中間体3及び中間体4の製造方法を参照して、下記化学式(1)で示される中間体1を15.9g(収率70%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):511(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (78.13%、7.48%、7.78%);理論値(78.06%、7.75%、7.69%)
【0209】
【化28】
【0210】
(2)青色色材αの合成
前記中間体1 5.00g(4.58mmol)を水300mlに加え、90℃で溶解させ中間体1溶液とした。次にリンタングステン酸・n水和物 H[PW1240]・nHO(n=30)(日本無機化学工業製)10.44g(3.05mmol)を水100mlに入れ、90℃で攪拌し、リンタングステン酸水溶液を調製した。先の中間体1溶液に調製したリンタングステン酸水溶液を90℃で混合し、生成した沈殿物を濾取し、水で洗浄した。得られたケーキを乾燥して下記化学式(2)で表されるトリアリールメタン系塩基性染料の金属レーキ色材の青色色材αを13.25g得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):510(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (41.55%、5.34%、4.32%);理論値(41.66%、5.17%、4.11%)
【0211】
【化29】
【0212】
(合成例10:Azo誘導体1の調製)
550gの蒸留水の中に、23.1gのジアゾバルビツール酸および19.2gのバルビツール酸を導入した。次いで、水酸化カリウム水溶液を用いてアゾバルビツール酸(0.3モル)となるように調整し、750gの蒸留水と混合した。5gの30%の塩酸を滴下により添加した。その後、38.7gのメラミンを導入した。次いで、0.39モルの塩化ニッケル溶液と0.21モルの塩化亜鉛溶液を混合して添加し、80℃の温度で8時間撹拌した。濾過により顔料を単離し、洗浄し、120℃で乾燥させ、乳鉢で磨砕し、Azo誘導体1(Ni-azo-1、Ni:Zn=65:35(モル比)のazo顔料)を得た。
【0213】
(合成例11:Azo誘導体2の調製)
合成例10のAzo誘導体1の調製において、0.39モルの塩化ニッケル溶液と0.21モルの塩化亜鉛溶液の代わりに、0.42モルの塩化ニッケル溶液と0.18モルの塩化亜鉛溶液を用いた以外は、合成例10と同様にして、Azo誘導体2(Ni-azo-2、Ni:Zn=70:30(モル比)のazo顔料)を得た。
【0214】
(合成例12:Azo誘導体3の調製)
合成例10のAzo誘導体1の調製において、0.39モルの塩化ニッケル溶液と0.21モルの塩化亜鉛溶液の代わりに、0.3モルの塩化ニッケル溶液と0.3モルの塩化亜鉛溶液を用いた以外は、合成例10と同様にして、Azo誘導体3(Ni-azo-3、Ni:Zn=50:50(モル比)のazo顔料)を得た。
【0215】
(合成例13:Azo誘導体4の調製)
合成例10のAzo誘導体1の調製において、0.39モルの塩化ニッケル溶液と0.21モルの塩化亜鉛溶液の代わりに、0.18モルの塩化ニッケル溶液と0.42モルの塩化亜鉛溶液を用いた以外は、合成例10と同様にして、Azo誘導体4(Ni-azo-4、Ni:Zn=30:70(モル比)のazo顔料)を得た。
【0216】
(合成例14:Azo誘導体5の調製)
合成例10のAzo誘導体1の調製において、0.39モルの塩化ニッケル溶液と0.21モルの塩化亜鉛溶液の代わりに、0.06モルの塩化ニッケル溶液と0.54モルの塩化亜鉛溶液を用いた以外は、合成例10と同様にして、Azo誘導体5(Ni-azo-5、Ni:Zn=10:90(モル比)のazo顔料)を得た。
【0217】
(合成例15:潜在性酸化防止剤(化合物a)の合成)
下記化学式(3)で表されるフェノール化合物0.01mol、二炭酸ジ-tert-ブチル0.05mol及びピリジン30gを混合し、窒素雰囲気下、室温で4-ジメチルアミノピリジン0.025molを加え、60℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、反応液をイオン交換水150gに注ぎ、クロロホルム200gを加えて油水分離を行った。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、残渣にメタノール100gを加えて晶析を行った。得られた白色粉状結晶を60℃で3時間減圧乾燥させ、前記化学式(a)で表される潜在性酸化防止剤(化合物a)を得た。なお、得られた潜在性酸化防止剤の構造はIR及びNMRで確認した。
【0218】
【化30】
【0219】
(実施例1)
(1)色材分散液1の製造
分散剤として合成例7のブロック共重合体Aを5.1質量部、色材として合成例9で得られた青色色材αを13.0質量部、合成例8で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を固形分換算で5.1質量部、PGMEAを76.8質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液1を得た。
【0220】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物1の製造
上記(1)で得られた色材分散液1を286.1質量部、合成例8で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を固形分換算で8.6質量部、光重合性化合物(商品名アロニックスM-520D、東亞合成(株)社製)を18.2質量部、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を2.0質量部、光開始剤として合成例1で得られた化合物Aを5.1質量部、PGMEAを42.2質量部加え、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物1を得た。
【0221】
(実施例2~13)
実施例1において、光開始剤を表1に示される種類及び量で用いた以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物2~13を得た。
【0222】
なお、実施例8で光開始剤として用いたOXE-01は、オキシムエステル系光開始剤(商品名 イルガキュアOXE-01、BASF製)であり、下記化学式(4)で表される化合物である。
【0223】
【化31】
【0224】
(実施例14)
実施例13において、酸化防止剤としてBHTを用いる代わりに、ビスフェノール系酸化防止剤(アデカスタブ AO-40、ADEKA製)を用いた以外は、実施例13と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物14を得た。
【0225】
(実施例15)
実施例13において、酸化防止剤としてBHTを用いる代わりに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Irg1010、BASF製)を用いた以外は、実施例13と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物15を得た。
【0226】
(実施例16)
実施例13において、酸化防止剤としてBHTを用いる代わりに、合成例15で得られた潜在性酸化防止剤である化合物aを用いた以外は、実施例13と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物16を得た。
【0227】
(実施例17~21)
実施例1において、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光開始剤及び酸化防止剤の添加量を表1に示す量に変えた以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物17~21を得た。
【0228】
(比較例1~3)
実施例21において、光開始剤として、合成例1で得られた化合物Aに代えて、表1に示す光開始剤を用いた以外は、実施例21と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物1~3を得た。
【0229】
比較例1で用いた光開始剤は、下記化学式(5)で表されるOXE-02(BASF製)である。
【0230】
【化32】
【0231】
比較例3で用いた光開始剤は、下記化学式(6)で表される比較化合物Aである。
【0232】
【化33】
【0233】
(実施例22)
実施例13において、色材として青色色材αに代えて、ピグメントレッド254(PR254)を37.2質量部用いた以外は、実施例13と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物22を得た。
【0234】
(比較例4)
実施例22において、光開始剤として合成例1で得られた化合物A、合成例5で得られた化合物E及びIrg819(BASF製)を用いずに、前記化学式(5)で表されるOXE-02(BASF製)を表2に示す量で用い、酸化防止剤(BHT)を用いず、光重合性化合物を20.2質量部用いた以外は、実施例22と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物4を得た。
【0235】
(実施例23)
実施例13において、色材として青色色材αに代えて、ピグメントグリーン59(PG59)を16.48質量部と、合成例10で得られたAzo誘導体1を20.72質量部用いた以外は、実施例13と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物23を得た。
【0236】
(比較例5)
実施例23において、光開始剤として合成例1で得られた化合物A、合成例5で得られた化合物E及びIrg819(BASF製)を用いずに、前記化学式(5)で表されるOXE-02(BASF製)を表2に示す量で用い、酸化防止剤(BHT)を用いず、光重合性化合物を20.2質量部用いた以外は、実施例23と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物5を得た。
【0237】
(実施例24)
実施例13において、色材として青色色材αに代えて、C.I.ソルベントイエロー162を37.2質量部用い、酸化防止剤(BHT)を用いず、光重合性化合物を20.2質量部用いた以外は、実施例13と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物24を得た。
【0238】
(比較例6)
実施例24において、光開始剤として合成例1で得られた化合物A、合成例5で得られた化合物E及びIrg819(BASF製)を用いずに、前記化学式(5)で表されるOXE-02(BASF製)を表2に示す量で用いた以外は、実施例24と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物6を得た。
【0239】
(実施例25)
実施例16において、色材として青色色材αに代えて、ピグメントグリーン58を23.8質量部と、合成例11で得られたAzo誘導体2を13.4質量部用いた以外は、実施例16と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物25を得た。
【0240】
(実施例26)
実施例16において、色材として青色色材αに代えて、ピグメントグリーン58を24.5質量部と、合成例12で得られたAzo誘導体3を12.7質量部用いた以外は、実施例16と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物26を得た。
【0241】
(実施例27)
実施例16において、色材として青色色材αに代えて、ピグメントグリーン58を25.3質量部と、合成例13で得られたAzo誘導体4を11.9質量部用いた以外は、実施例16と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物27を得た。
【0242】
(実施例28)
実施例16において、色材として青色色材αに代えて、ピグメントグリーン58を26.1質量部と、合成例14で得られたAzo誘導体5を11.1質量部用いた以外は、実施例16と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物28を得た。
【0243】
(実施例29)
実施例27において、酸化防止剤として化合物aの代わりに、BHTを用いた以外は、実施例27と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物29を得た。
【0244】
(実施例30)
実施例27において、酸化防止剤の化合物aを用いず、光重合性化合物を20.2質量部用いた以外は、実施例27と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物30を得た。
【0245】
(比較例7)
実施例27において、光開始剤として合成例1で得られた化合物A、合成例5で得られた化合物E及びIrg819(BASF製)を用いずに、前記化学式(5)で表されるOXE-02(BASF製)を表2に示す量で用い、酸化防止剤を用いず、光重合性化合物を20.2質量部用いた以外は、実施例27と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物7を得た。
【0246】
[評価]
各実施例及び各比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、ガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて硬化塗膜が厚さ3.0μmとなるように塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥しガラス基板上に塗膜を形成した。この塗膜に、開口寸法90μm×300μmの独立細線内の中央に20μm×20μmのクロムマスクを配置したパターンフォトマスク(クロムマスク)を介して、超高圧水銀灯を用いて40mJ/cmの紫外線で露光することにより、ガラス基板上に露光後塗膜を形成した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液を現像液としてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し、微小孔を有する独立細線パターン状の塗膜を得た。その後、230℃のクリーンオーブンで25分間ポストベークすることにより、微小孔を有する独立細線パターン状の着色層を形成した。得られた着色層について下記評価を行った。
【0247】
<光学特性評価>
各実施例及び各比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、ガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥しガラス基板上に塗膜を形成した。フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を全面照射し、露光後塗膜を形成した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液を現像液としてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し現像後塗膜を形成した。その後、230℃のクリーンオーブンで25分間ポストベークし、色度は青色色材αを用いた場合は、y=0.083、PR254を用いた場合は、x=0.650、PG59/Azo誘導体を用いた場合は、y=0.610、C.Iソルベントイエロー162を用いた場合はy=0.503、PG58/Azo誘導体を用いた場合はy=0.630となるように硬化塗膜(着色層)を形成した。前記着色層の色度(x、y)及び輝度(Y)をオリンパス製顕微分光測定装置OSP-SP200を用いて測定した。
【0248】
<現像性評価>
[直線性]
露光時に使用したクロムマスクの開口幅90μmに当たる部分の着色層の細線パターンの幅を光学顕微鏡で5箇所測定し、線幅のばらつきをもって直線性を評価した。
A:ばらつきが±0.1μm以内
B:ばらつきが±0.1μm超過±0.3μm以内
C:ばらつきが±0.3μm超過
[残膜率]
前記着色層の形成において、塗膜を形成する過程で、露光後の膜厚(E)及び現像後の膜厚(D)を触針式プロファイラP-16(KLA-Tencor社製)で測定し、現像後膜厚(D)/露光後の膜厚(E)を残膜率として算出した。
なお、現像後膜厚(D)/露光後の膜厚(E)が90%以上であると実使用に適した範囲である。
【0249】
前記着色層を光学顕微鏡により観察し、下記評価基準により、微小孔の形状、ビリツキ及び現像残渣について評価した。
[形状]
A:独立細線パターン内に配置されたクロムマスクの寸法に対して、着色層に形成された微小孔の寸法のズレが絶対値で2%より小さい
B:独立細線パターン内に配置されたクロムマスクの寸法に対して、着色層に形成された微小孔の寸法のズレが絶対値で2%以上6%以下
C:独立細線パターン内に配置されたクロムマスクの寸法に対して、着色層に形成された微小孔の寸法のズレが絶対値で6%より大きく8%以下
D:独立細線パターン内に配置されたクロムマスクの寸法に対して、着色層に形成された微小孔の寸法のズレが絶対値で8%より大きい
なお、寸法のズレは、各辺の寸法のズレの平均値として算出した。
[ビリツキ]
A:着色層に形成された微小孔の周縁部の十点平均粗さが0.1より小さい
B:着色層に形成された微小孔の周縁部の十点平均粗さが0.1以上0.5以下
C:着色層に形成された微小孔の周縁部の十点平均粗さが0.5より大きい
なお、十点平均粗さは、JIS B0601に準拠して測定した。
[現像残渣]
AA:光学顕微鏡による観察で着色層に形成された微小孔内部に着色が観察されず、微小孔周縁部にも透明物が観察されない
A:光学顕微鏡による観察で着色層に形成された微小孔内部に着色が観察されないが、微小孔周縁部に一部透明物が観察される
B:光学顕微鏡による観察で着色層に形成された微小孔内部に着色が観察される
【0250】
表1及び表2中の略称は以下の通りである。
・OXE-01:オキシムエステル系光開始剤(商品名 イルガキュアOXE-01、BASF製)
・OXE-02:オキシムエステル系光開始剤(商品名 イルガキュアOXE-02、BASF製)
・Irg369:α-アミノケトン系光開始剤(イルガキュア369、BASF製)
・Irg907:α-アミノケトン系光開始剤(イルガキュア907、BASF製)
・メルカプト系:メルカプト系連鎖移動剤(2-メルカプトベンゾチアゾール、東京化成製)
・ビイミダゾール系:ビイミダゾール系光開始剤(HABI、黒金化成製)
・DETX:チオキサントン系光開始剤(DOUBLECURE DETX、Double BondChemical製)
・Irg819:アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤(イルガキュア819、BASF製
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
・AO-40:ビスフェノール系酸化防止剤(アデカスタブ AO-40、ADEKA製)
・Irg1010:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガキュア1010、BASF製)
【0251】
【表1】
【0252】
【表2】
【0253】
<結果のまとめ>
光開始剤として、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含有する実施例1~30の感光性着色樹脂組成物は、各々同じ色材を用いた比較感光性着色樹脂組成物に比べ、輝度が向上した着色層を形成可能であることが明らかにされた。また、実施例1~30の着色樹脂組成物は、残膜率が高く、感度が良好であった。実施例1~30の感光性着色樹脂組成物は、細線パターンの直線性に優れ、着色層をパターニングする際に同時に着色層に所望の微小孔を形成し易いことが明らかにされた。また、前記一般式(1)のZが水素原子であるオキシムエステル化合物を用いた実施例1~3は、輝度及び残膜率が高く、前記一般式(1)のZが-(C=O)Rであるオキシムエステル化合物を用いた実施例4は、当該オキシムエステル化合物の溶剤溶解性及び他の成分との相溶性がより良好であり、微小孔の形状がより良好であった。実施例1と実施例2の微小孔の断面を観察して比較したところ、実施例2の方がテーパー角が緩やかであり、微小孔の形状がより良好であった。
また、光開始剤として、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物とを組み合わせて用いることにより、微小孔の形状がより良好となった(実施例1と実施例5との比較、及び実施例2と実施例6~8との比較)。
また、光開始剤として、前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物と、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル化合物とを組み合わせ、更に、α-アミノケトン系光開始剤、ビイミダゾール系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、及びメルカプト系連鎖移動剤から選ばれる少なくとも1種を含有することにより、細線パターンの直線性が向上し、微小孔の形状がより良好となった(実施例5と実施例9~13との比較)。
また、酸化防止剤を含有することにより、微小孔のビリツキがより抑制され、輝度も向上した(実施例1と実施例21との比較、実施例27及び29と実施例30との比較)。酸化防止剤の中でも、潜在性酸化防止剤(化合物a)を用いると微小孔のビリツキがより抑制されながら、酸化防止剤を用いない場合と同等に残膜率が良好であった。一方で、潜在性酸化防止剤ではないヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いた場合、潜在性酸化防止剤を用いた場合よりも輝度がより向上した(実施例27及び29と実施例30との比較)。
一方、光開始剤として前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含有せず、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル化合物を用いた比較例1及び比較例4~7では、同じ色材を用いた実施例に比べて輝度が劣り、細線パターンの直線性に劣り、微小孔を形成することができなかった。
また、光開始剤として前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含有せず、Irg907(α-アミノケトン系光開始剤)を用いた比較例2では、輝度及び残膜率が劣っていた。
光開始剤として前記一般式(1)で表されるオキシムエステル化合物を含有せず、フルオレン骨格にニトロ基を有し、該フルオレン骨格にカルボニル基を介さずにオキシムエステル基が結合する比較化合物Aを用いた比較例3では、輝度及び直線性が劣っていた。比較例3の直線性が劣っていたのは、比較化合物Aの溶剤溶解性及び他の成分との相溶性が劣るためと推定される。
【符号の説明】
【0254】
1 基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置
図1
図2
図3