(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20220118BHJP
H01J 37/244 20060101ALI20220118BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20220118BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01J37/22 502Z
H01J37/244
H01J37/28 B
H01J37/22 502L
H01J37/09 Z
(21)【出願番号】P 2018013455
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 秀則
(72)【発明者】
【氏名】数森 啓悦
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩志
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-069772(JP,A)
【文献】実開昭50-143466(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0076503(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/244
H01J 37/28
H01J 37/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が配置される試料室と、
光電子増倍管を有し、前記試料からの信号を検出する検出器と、
前記試料室の内部を撮影する光学カメラと、
前記試料室の内部に特別光を照射する第1照明器と、
前記試料室の内部に一般光を照射する第2照明器と、
前記光電子増倍管の動作中に前記第1照明器を動作させ、前記光電子増倍管の非動作中に前記第2照明器を動作させる制御部と、
を含
み、
前記特別光は、近赤外領域の波長を有する光であり、
前記一般光は、可視光領域の波長を有する光である、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記制御部は、前記光電子増倍管の電源のオン又はオフに応じて、前記第1照明器又は前記第2照明器を動作させる、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子線装置において、
前記制御部は、前記電源がオン状態の場合に前記第2照明器を動作させずに前記第1照明器を動作させ、前記電源がオフ状態の場合に前記第2照明器を動作させる、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の荷電粒子線装置において、
前記制御部は、前記電源がオフになった時点から遅延時間が経過した後に、前記第2照明器を動作させる、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の荷電粒子線装置において、
開閉動作可能な仕切り部材であって、閉状態のときに前記試料への荷電粒子線の照射を遮断し、開状態のときに前記試料への荷電粒子線の照射を遮断しない仕切り部材を更に含み、
前記電源のオン及びオフは、前記仕切り部材の開動作及び閉動作に連動し、
前記制御部は、前記電源のオン及びオフに連動して、前記第1照明器又は前記第2照明器を動作させる、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項
1から請求項5のいずれか一項に記載の荷電粒子線装置において、
前記制御部は、カラー画像表示を優先させるモードでは、前記光電子増倍管の電源をオフすると共に、前記第2照明器を動作させる、
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置における試料室の内部を観察するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡等の荷電粒子線装置は、荷電粒子ビームを用いて観察を行う装置である。例えば、走査型電子顕微鏡においては、電子線が試料に照射され、その試料から発生した二次電子が、検出器で捕獲されて電界によって加速されて蛍光板に照射される。蛍光板から発生した光が、光電子増倍管によって増幅されて電気信号に変換され、これにより、二次電子像が形成される。通常、走査型電子顕微鏡に使用される光電子増倍管は、300~650nmの波長を有する光を検出する。但し、蛍光塗料から発生する光は、その材質にもよるが、応答性等も考慮されて波長のピークが400nm近傍にある。
【0003】
また、走査型電子顕微鏡には、各種の分析用のアタッチメント(例えば、EDS、WDS、EBSD、イオン銃等)が取り付けられる場合がある。この場合、一般的には、アタッチメントが最適な位置に配置されるように、試料室内の試料の位置やアタッチメントの位置が作業者によって確認される。その確認のために、試料室の内部を観察することができる光学カメラが用いられる。また、光学カメラによる観察のために照明が用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、白色LED、青色LED及び赤外LEDが、カメラによる観察のための照明として用いられることが記載されている。特許文献1に記載の装置においては、各LEDは操作者の指示によって切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光電子増倍管を用いた観察中においては(例えば、二次電子像の観察中においては)、光学カメラによる観察用の照明として、光電子増倍管の検出外の波長を有する光を用いなければ、その光も信号として検出されてしまい、DCレベルが上昇してしまう。また、光が強すぎて光電子増倍管が破壊される場合もあり得る。そのため、通常、750~1400nmの波長域を有する近赤外ランプが、光学カメラによる観察用の照明ランプとして用いられる。しかし、近赤外ランプの照明では、光学カメラによって撮影された試料室内部の画像は単色の画像となるので、観察者にとって、試料、その他の移動部材及びアタッチメントの区別がつきにくい。従って、近赤外ランプは、試料室内部の状況の観察に必ずしも適しているとはいえない。
【0007】
また、光学カメラによる観察用の照明ランプとして、可視光ランプを用いることが考えられる。可視光ランプを用いることで、鮮明なカラー画像が得られる。この場合、観察者は、カラー画像によって試料室内部の状況を観察して試料や他の部材の位置関係を設定し、その後、光電子増倍管に対する可視光の影響を防止するために可視光ランプを消灯し、光電子増倍管を用いた観察(例えば二次電子像の観察)を行うことになる。しかし、光電子増倍管を用いた観察中に位置関係を変更する場合、光電子増倍管に対する可視光の影響を防止するために、光電子増倍管を用いた観察を一旦終了してから可視光ランプを点灯させて位置関係を設定する必要があり、その作業が煩雑となる。
【0008】
本発明の目的は、荷電粒子線装置において、光電子増倍管を用いた観察中においても試料室の内部を表す画像が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、試料が配置される試料室と、光電子増倍管を有し、前記試料からの信号を検出する検出器と、前記試料室の内部を撮影する光学カメラと、前記試料室の内部に特別光を照射する第1照明器と、前記試料室の内部に一般光を照射する第2照明器と、前記光電子増倍管の動作中に前記第1照明器を動作させ、前記光電子増倍管の非動作中に前記第2照明器を動作させる制御部と、を含むことを特徴とする荷電粒子線装置である。
【0010】
上記の構成によれば、光電子増倍管の動作中においては、特別光が試料室の内部に照射され、その特別光が照らされた状態の試料室の内部が光学カメラによって撮影される。これにより、特別光の照射の下で撮影された試料室内部を表す画像が得られる。光電子増倍管が非動作中においては、一般光が試料室の内部に照射され、その一般光が照らされた状態の試料室の内部が光学カメラによって撮影される。これにより、一般光の照射の下で撮影された試料室内部を表す画像が得られる。上記の構成によれば、光電子増倍管の動作中においても、観察者は、特別光の照射の下で撮影された画像によって、試料室の内部を観察することができる。例えば、特別光は、光電子増倍管の検出外の波長を有する光であり、一般光は、光電子増倍管が検出可能な波長を有する光である。それ故、光電子増倍管の動作中においても、一般光が光電子増倍管に入射することで発生し得る問題の発生を回避しつつ、試料室の内部を表す画像を得ることができる。
【0011】
前記制御部は、前記光電子増倍管の電源のオン又はオフに応じて、前記第1照明器又は前記第2照明器を動作させてもよい。
【0012】
前記制御部は、前記電源がオン状態の場合に前記第2照明器を動作させずに前記第1照明器を動作させ、前記電源がオフ状態の場合に前記第2照明器を動作させてもよい。
【0013】
前記制御部は、前記電源がオフになった時点から遅延時間が経過した後に、前記第2照明器を動作させてもよい。
【0014】
荷電粒子線装置は、開閉動作可能な仕切り部材であって、閉状態のときに前記試料への荷電粒子線の照射を遮断し、開状態のときに前記試料への荷電粒子線の照射を遮断しない仕切り部材を更に含み、前記電源のオン及びオフは、前記仕切り部材の開動作及び閉動作に連動し、前記制御部は、前記電源のオン及びオフに連動して、前記第1照明器又は前記第2照明器を動作させてもよい。
【0015】
前記特別光は、近赤外領域の波長を有する光であり、前記一般光は、可視光領域の波長を有する光であってもよい。
【0016】
前記制御部は、カラー画像表示を優先させるモードでは、前記光電子増倍管の電源をオフすると共に、前記第2照明器を動作させてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、荷電粒子線装置において、光電子増倍管を用いた観察中においても試料室の内部を表す画像が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る荷電粒子線装置を示す図である。
【
図4】照明部の制御の概略を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る荷電粒子線装置について説明する。荷電粒子線装置は、荷電粒子ビームを用いて観察を行う装置である。
図1には、荷電粒子線装置の一例としての走査型電子顕微鏡(SEM)10が示されている。走査型電子顕微鏡10は、試料に電子線を照射し、その試料から発生した二次電子を検出することで二次電子像を形成する装置である。以下では、荷電粒子線装置の一例として走査型電子顕微鏡について説明するが、本実施形態は、走査型電子顕微鏡以外の荷電粒子線装置に適用されてもよい。
【0020】
走査型電子顕微鏡10は、内部に試料が配置される試料室12と、試料に電子線を照射する電子線照射部14と、試料から発生した二次電子を検出する二次電子検出器16と、二次電子検出器16に電力を供給する電源18と、試料室12の内部を観察するための撮影装置20と、制御装置22と、表示装置24とを含む。また、
図1には示されていないが、走査型電子顕微鏡10は、試料室12内部に配置される試料を交換するための交換室、及び、試料室12の内部や交換室の内部を減圧するための真空排気系(真空ポンプ等を含む)を含む。なお、試料の交換は、ロッドを用いた手動式の交換であってもよいし、自動式の交換であってもよい。
【0021】
試料室12の内部には、ステージ26が配置されている。試料28は、ステージ26上に配置されてステージ26によって保持される。ステージ26は、例えば、x軸、y軸及びz軸の三次元方向(平面方向と高さ方向)に移動可能なステージであってもよいし、二次元方向(平面方向)に移動可能なステージであってもよい。また、ステージ26は、試料28を保持した状態で試料28を傾斜させることが可能な構成を有していてもよい。
【0022】
電子線照射部14は、電子線を発生させる電子銃30と、電子銃30と試料28との間の経路に配置された開閉動作可能な仕切り弁32と、コイル群(偏向コイルや走査コイルを含む)と、レンズ群(集束レンズや対物レンズを含む)とを含む。例えば、電子線照射部14の各構成として公知の構成が用いられる。仕切り弁32は、例えばゲートバルブ等のバルブである。仕切り弁32が閉じた状態(閉状態)では、電子銃30と試料28との間の経路が仕切り弁32によって塞がれるので、試料28への電子線の照射が遮断される。つまり、仕切り弁32が閉じた状態では、電子銃30から発生した電子線は、仕切り弁32に照射されるので、電子線は試料28に照射されない。仕切り弁32が開いた状態(開状態)では、電子銃30と試料28との間の経路は仕切り弁32によって塞がれないので、電子銃30から発生した電子線は、仕切り弁32によって遮断されずに試料28に照射される。電子線は、集束レンズや対物レンズによって試料28の表面上に集束され、走査コイルによって試料28上で走査される。電子線の照射によって試料28から二次電子が放出される。
【0023】
二次電子検出器16は、例えば、シンチレータ(蛍光体)と、ライトガイドと、光電子増倍管(PMT)とを含み、試料28から放出された二次電子を検出する。二次電子検出器16の各構成として、例えば、公知の構成が用いられる。光電子増倍管は、例えば、300~650nmの波長を有する光を検出する。例えば、二次電子検出器16の前面に正の高電圧(例えば+10kV)を印加することで、試料28から放出された二次電子をシンチレータに衝突させる。こうして捕獲された電子は光に変換され、ライトガイドを通じて光電子増倍管に導かれ、光電子増倍管にて光の強度に応じた光電子に変換される。変換後の光電子は、光電子増倍管に含まれるダイノードに衝突する。各ダイノードの間には500~1000V程度の高電圧(HV)が印加されており、これにより、最初に検出された二次電子が増倍される。その増倍された二次電子が最終的に信号電流として取り出されて制御装置22に出力される。二次電子検出器16には電源18が接続されており、その電源18によって、光電子増倍管に高電圧(HV)が印加される。
【0024】
撮影装置20は、試料室12の内部を撮影するための光学カメラと、試料室12の内部を照らすための照明部とを含む。撮影装置20の構成については後で詳しく説明する。
【0025】
制御装置22は、走査型電子顕微鏡10の各部の動作を制御する装置である。制御装置22は、例えば、電子線照射部14の制御(電子線の照射や走査等の制御)、仕切り弁32の開閉動作の制御、ステージ26の移動や傾斜の制御、電源18の制御(光電子増倍管への電圧印加の制御)等を行う。また、制御装置22は、照明制御部34と画像処理部36とを含む。
【0026】
照明制御部34は、撮影装置20の動作を制御する機能を有する。具体的には、照明制御部34は、撮影装置20に含まれる各照明ランプのオン及びオフを制御する。具体的な制御については後で詳しく説明する。
【0027】
画像処理部36は、二次電子検出器16(光電子増倍管)から出力された電気信号に基づいて二次電子像を生成する機能を有する。制御装置22は、その二次電子像を表示装置24に表示させる。
【0028】
また、撮影装置20による撮影によって生成された画像データが、撮影装置20から制御装置22に出力される。制御装置22は、その画像を表示装置24に表示させる。なお、撮影装置20によって得られた画像と二次電子像は、同じ表示装置に表示されてもよいし、それぞれ異なる表示装置に表示されてもよい。
【0029】
制御装置22は、例えば、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。具体的には、制御装置22は、1又は複数のCPU等のプロセッサを備えている。当該1又は複数のプロセッサが、図示しない記憶装置に記憶されているプログラムを読み出して実行することで、制御装置22の機能が実現される。例えば、制御装置22は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)によって構成されてもよい。別の例として、制御装置22の各部は、プロセッサや電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア資源により実現されてもよい。その実現においてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。更に別の例として、制御装置22の各部は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によって実現されてもよい。
【0030】
以下、
図2を参照して、撮影装置20の構成について詳しく説明する。
図2には、撮影装置20の断面が示されている。
【0031】
試料室12の壁面には開口部12aが形成されており、試料室12の内部が真空状態に維持されるように、その開口部12aにフランジ38が取り付けられている。開口部12aは、観察者が試料室12の内部を観察したい位置に形成される。フランジ38には、窓部40が取り付けられている。窓部40は、例えば、アクリルやガラス等の透明部材によって構成されている。窓部40が、フランジ38に対する真空シールとして機能する。このような構成によって、試料室12の内部を真空状態に維持した状態で、観察者は、窓部40を介して、大気側から試料室12の内部を観察することができる。
【0032】
撮影装置20は、撮影手段としての光学カメラ42と、光学カメラ42と窓部40との間に配置されたレンズ44と、光学カメラ42に接続された基板46と、基板46に接続されたケーブル48と、試料室12の内部を照らす照明部50とを含む。また、撮影装置20は、光学カメラ42、レンズ44及び照明部50を内部に収容する内ケース52と、内ケース52及び基板46を内部に収容する外ケース54とを含む。撮影装置20を構成する各部は一体化されていてもよいし、それぞれ別体であってもよい。
【0033】
光学カメラ42は、例えば、CCD(Charged-coupled devices)やCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)等の撮像素子を有し、試料室12の内部の観察対象に焦点が合わされた状態で内ケース52に固定されている。光学カメラ42として、少なくとも可視光から近赤外光までの波長領域の観察が可能な撮像素子が用いられる。光学カメラ42によって撮影された画像のデータは、ケーブル48を介して制御装置22に出力され、その画像は表示装置24に表示される。照明部50は、互いに波長の異なる複数の照明ランプを含む。各照明ランプは、試料室12の内部を照らすように、光学カメラ42及びレンズ44の周囲に取り付けられている。外ケース54は、フランジ38や試料室12の内部への外部光の照射を遮蔽するように取り付けられている。
【0034】
以下、
図3を参照して、照明部50の構成について詳しく説明する。
図3には、
図2において照明部50を矢印Aの方向から見たときの照明部50の構成が示されている。
【0035】
照明部50は、光学カメラ42による観察用の照明器であり、一例として、複数の近赤外ランプ50aと、複数の可視光ランプ50bとを含む。近赤外ランプ50aは、二次電子検出器16に含まれる光電子増倍管の検出外の波長を有する光を照射する第1照明器である。具体的には、近赤外ランプ50aは、特別光として近赤外領域の波長(例えば750~1400nmの波長域)を有する光を照射する。可視光ランプ50bは、一般光として可視光領域の波長を有する光を照射する第2照明器である。各近赤外ランプ50aと各可視光ランプ50bは、例えばLEDである。もちろん、LED以外の光源が各ランプとして用いられてもよい。複数の近赤外ランプ50aと複数の可視光ランプ50bは、光学カメラ42とレンズ44を囲むように、光学カメラ42とレンズ44の周囲に配置されている。各近赤外ランプ50aと各可視光ランプ50bは、試料室12の内部に光を照射するように、試料室12の内部に向けられた状態で配置されている。近赤外ランプ50aから出射した近赤外光(近赤外領域の波長を有する光)は、窓部40を介して試料室12の内部に照射される。同様に、可視光ランプ50bから出射した可視光(可視光領域の波長を有する光)は、窓部40を介して試料室12の内部に照射される。例えば、試料28やその周囲の部材等に向けて撮影装置20が配置された場合、試料28や周囲の部材等が、近赤外光や可視光によって照らされる。
【0036】
図3に示す例では、照明部50は、4個の近赤外ランプ50aと4個の可視光ランプ50bとを含む。例えば、上下方向に2個ずつ近赤外ランプ50aが配置されており、左右方向に2個ずつ可視光ランプ50bが配置されている。もちろん、この配置は一例に過ぎず、上下方向に2個ずつ可視光ランプ50bが配置され、左右方向に2個ずつ近赤外ランプ50aが配置されてもよい。また、各ランプの数は一例に過ぎず、照明部50は、1又は複数の近赤外ランプ50aと、1又は複数の可視光ランプ50bとを含んでいればよい。また、1又は複数の近赤外ランプ50aと1又は複数の可視光ランプ50bとが、交互に配置されてもよい。近赤外ランプ50aの数と可視光ランプ50bの数は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0037】
以下、
図4を参照して、照明部50の制御の概略について説明する。
図4には、その制御の概略が示されている。
【0038】
走査型電子顕微鏡10によって二次電子像の観察が行われているとき、すなわち、二次電子検出器16に含まれる光電子増倍管に高電圧(HV)が印加されているときは(
図4中のYES)、近赤外ランプ50aから近赤外光が試料室12の内部に照射され(
図4中の近赤外ランプON)、可視光ランプ50bは消灯する(
図4中の可視光ランプOFF)。これにより、光学カメラ42による撮影によって単色画像が生成され、その単色画像が表示装置24に表示される。
【0039】
一方、走査型電子顕微鏡10によって二次電子像の観察が行われていないとき、すなわち、光電子増倍管に高電圧(HV)が印加されていないときは(
図4中のNO)、近赤外ランプ50aは消灯し(
図4中の近赤外ランプOFF)、可視光ランプ50bから可視光が試料室12の内部に照射される(
図4中の可視光ランプON)。これにより、光学カメラ42による撮影によってカラー画像が生成され、そのカラー画像が表示装置24に表示される。
【0040】
以下、
図5を参照して、照明部50の制御の詳細について説明する。
図5には、照明部50の制御のシーケンスの一例が示されている。横軸は時間軸を示している。
【0041】
まず、制御装置22は、電子銃30をオンすることで電子銃30から電子線を発生させる。二次電子像の観察前の段階においては、制御装置22は、仕切り弁32を閉じた状態に維持する。こうすることで、電子銃30と試料28との間の経路が仕切り弁32によって塞がれるので、電子銃30から試料28への電子線の照射が仕切り弁32によって遮断される。なお、二次電子像の観察前の段階であっても、制御装置22は、電子銃30から電子線を発生させる。これにより、電子銃30から電子線が継続的に発生し、仕切り弁32の開閉動作によって、試料28への電子線の照射の有無が制御される。もちろん、二次電子像の観察が行われていない場合、制御装置22は、電子銃30をオフすることで電子銃30からの電子線の発生を停止させてもよい。
【0042】
次に、二次電子像の観察の指示(二次電子像による測定の指示)が走査型電子顕微鏡10に与えられた場合、制御装置22は、仕切り弁32を開く。例えば、観察者が走査型電子顕微鏡10を操作することで、二次電子像の観察の指示を与える。
図5に示す例では、時点t1で仕切り弁32が開いた状態となっている。仕切り弁32が開くと、電子銃30から発生した電子線は仕切り弁32によって遮断されないため、電子線は試料28に照射される。試料28に電子線が照射されることで、試料28から二次電子が発生する。
【0043】
制御装置22は、仕切り弁32を開けたことに連動させて、電源18をオンすることで、二次電子検出器16に含まれる光電子増倍管に対して電源18から高電圧(HV)を印加する。
図5に示す例では、時点t1で高電圧(HV)がオン状態になって光電子増倍管に印加されている。これにより、試料28から発生した二次電子が二次電子検出器16によって検出され、その検出結果としての二次電子像が表示装置24に表示される。
【0044】
光電子増倍管に対して高電圧(HV)を印加する前の時点、すなわち、時点t1よりも前の時点では、照明制御部34は、各近赤外ランプ50aをオフ状態(消灯状態)に維持し、各可視光ランプ50bをオン状態(点灯状態)に維持する。こうすることで、試料室12の内部に対して近赤外光は照射されずに可視光が照射され、光学カメラ42によってカラー画像が撮影され、そのカラー画像が表示装置24に表示される。観察者は、カラー画像によって試料室12の内部を観察することができる。なお、時点t1よりも前の時点でカラー画像の表示が不要な場合、照明制御部34は、各可視光ランプ50bをオフ状態(消灯状態)に維持してもよい。例えば、観察者が走査型電子顕微鏡10を操作して、可視光ランプ50bの消灯を指示した場合、照明制御部34は、各可視光ランプ50bをオフ状態に維持する。
【0045】
照明制御部34は、光電子増倍管に対する高電圧(HV)の印加に連動させて、各近赤外ランプ50aをオン状態(点灯状態)にし、各可視光ランプ50bをオフ状態(消灯状態)にする。これにより、各近赤外ランプ50aが点灯し、各可視光ランプ50bが消灯する。
図5に示す例では、時点t1で、近赤外ランプ50aがオン状態となって、近赤外光が照明部50から試料室12の内部に照射され、可視光ランプ50bがオフ状態となる(消灯する)。こうすることで、試料室12の内部に対して可視光は照射されずに近赤外光が照射され、光学カメラ42によって単色画像が撮影される。その単色画像が表示装置24に表示される。
図5に示す例では、時点t1以降、単色画像が生成されて表示装置24に表示される。光電子増倍管に対する高電圧(HV)の印加に連動させて各可視光ランプ50bをオフ状態(消灯状態)にすることで、可視光が光電子増倍管に入射することで発生し得る問題(DCレベルの上昇や光電子増倍管の破壊等)の発生を回避することができる。また、近赤外ランプ50aを点灯させることで、観察者は、二次電子像の観察中であっても、単色画像によって試料室12の内部を観察することができる。
【0046】
二次電子像の観察の終了の指示(二次電子像による測定の終了の指示)が走査型電子顕微鏡10に与えられた場合、制御装置22は、仕切り弁32を閉じる。例えば、観察者が走査型電子顕微鏡10を操作することで、観察の終了の指示を与える。
図5に示す例では、時点t2で仕切り弁32が閉じた状態となっている。仕切り弁32が閉じると、電子銃30から発生した電子線は仕切り弁32によって遮断されるため、電子線は試料28に照射されない。従って、試料28から二次電子は発生せず、二次電子像は生成されない。
【0047】
制御装置22は、仕切り弁32を閉じたことに連動させて、電源18をオフすることで、二次電子検出器16に含まれる光電子増倍管に対する電源18からの高電圧(HV)の印加を停止する。
図5に示す例では、時点t2で高電圧(HV)がオフ状態なって、光電子増倍管への高電圧(HV)の印加が停止している。
【0048】
照明制御部34は、光電子増倍管に対する高電圧(HV)の印加停止に連動させて、各近赤外ランプ50aをオフ状態(消灯状態)にし、各可視光ランプ50bをオン状態(点灯状態)にする。これにより、各可視光ランプ50bが点灯し、各近赤外ランプ50aが消灯する。こうすることで、試料室12の内部に対して近赤外光は照射されずに可視光が照射され、光学カメラ42によってカラー画像が撮影される。そのカラー画像が表示装置24に表示される。これにより、観察者は、カラー画像によって試料室12の内部を観察することができる。
【0049】
照明制御部34は、高電圧(HV)の印加が停止した時点t2から遅延時間Δtが経過した時点t3で、各可視光ランプ50bをオン状態にして各可視光ランプ50bを点灯させてもよい。これにより、時点t3以降においては、カラー画像が撮影されて表示装置24に表示される。光電子増倍管に対する高電圧(HV)の印加を停止した時点t2から、光電子増倍管に印加される電圧が完全にゼロ(0)になるまでに時間を要する場合があり、その時間が遅延時間Δtとして設定されている。遅延時間Δtは、例えば1~2秒である。もちろん、光電子増倍管や電源18の特性に応じて遅延時間Δtが変わる場合があり、その場合には、その特性に応じた遅延時間Δtが設定される。時点t2から遅延時間Δtが経過した時点t3まで各可視光ランプ50bをオフ状態に維持しておくことで、光電子増倍管に印加される電圧が完全にゼロになる前に、可視光が光電子増倍管に入射することを防止することができる。
【0050】
照明制御部34は、時点t2から時点t3までの間、各近赤外ランプ50aをオン状態(点灯状態)に維持してもよい。こうすることで、その期間中においては、単色画像が撮影されて表示装置24に表示される。もちろん、照明制御部34は、光電子増倍管への高電圧(HV)の印加が停止された時点t2で、各近赤外ランプ50a及び各可視光ランプ50bの両方をオフ状態(消灯状態)に維持してもよい。この場合、時点t2から時点t3の間においては、単色画像及びカラー画像のいずれも表示装置24に表示されない。
【0051】
以上の動作をまとめると、時点t1から時点t2までの期間においては、仕切り弁32が開いた状態となって電子線が試料28に照射されると共に、光電子増倍管に高電圧(HV)が印加される。それ以外の期間においては、仕切り弁32が閉じた状態となって電子線が試料28に照射されず、また、光電子増倍管に高電圧(HV)が印加されない。また、時点t1から時点t3までの期間においては、近赤外ランプ50aが点灯して可視光ランプ50bが消灯し、これにより、単色画像が撮影されて表示装置24に表示される。時点t1よりも前の期間、及び、時点t3よりも後の期間においては、近赤外ランプ50aが消灯して可視光ランプ50bが点灯し、これにより、カラー画像が撮影されて表示装置24に表示される。
【0052】
以上のように、本実施形態では、光学カメラ42による観察用の照明ランプとして、近赤外ランプ50aと可視光ランプ50bが用いられる。二次電子像の観察中においては、近赤外ランプ50aによって試料室12の内部を照らすことで、観察者は、二次電子像の観察中であっても、試料室12の内部を単色画像によって観察することができる。二次電子像を観察していないときには、可視光ランプ50bによって試料室12の内部を照らすことで、観察者は、試料室12の内部をカラー画像によって観察することができる。
【0053】
また、光電子増倍管に対して高電圧(HV)を印加しているときは近赤外ランプ50aを点灯して可視光ランプ50bを消灯することで、試料室12の内部を表す単色画像を表示しつつ、可視光が光電子増倍管に入射することで発生し得る問題(DCレベルの上昇や光電子増倍管の破壊等)の発生を回避することができる。
【0054】
制御装置22は、カラー画像表示を優先させるモードでは、電源18をオフにすることで電源18から光電子増倍管への高電圧(HV)の印加を停止すると共に、可視光ランプ50bを点灯させてもよい。例えば、観察者が走査型電子顕微鏡10を操作することで、カラー画像表示を優先させるモードが選択される。
【0055】
上記の実施形態では、照明制御部34は、光電子増倍管に印加される高電圧(HV)のオン及びオフに連動させて、近赤外ランプ50a及び可視光ランプ50bのオン及びオフを制御しているが、仕切り弁32の開閉に連動させて、近赤外ランプ50a及び可視光ランプ50bのオン及びオフを制御してもよい。すなわち、照明制御部34は、仕切り弁32が開いている場合には、近赤外ランプ50aをオンにして点灯させると共に、可視光ランプ50bをオフにして消灯させる。また、照明制御部34は、仕切り弁32が閉じている場合には、近赤外ランプ50aをオフにして消灯させると共に、可視光ランプ50bをオンにして点灯させる。このような制御を行った場合も、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0056】
また、上記の実施形態では、仕切り弁32の開閉動作によって試料28への電子線の照射を制御しているが、仕切り弁32を用いずに、電子銃30のオン及びオフによって試料28への電子線の照射を制御してもよい。具体的には、二次電子像の観察時に、制御装置22は、電子銃30をオンにして電子銃30から電子線を発生させる。電子銃30から発生した電子線は試料28に照射され、試料28から二次電子が発生する。制御装置22は、電子銃30のオンに連動させて、電源18をオンにすることで、電源18から光電子増倍管に高電圧(HV)を印加する。更に、制御装置22は、光電子増倍管に対する高電圧(HV)の印加に連動させて、可視光ランプ50bを消灯し、近赤外ランプ50aを点灯させる。また、二次電子像の観察が行われない場合、制御装置22は、電子銃30をオフにすると共に、電源18をオフにすることで、電源18から光電子増倍管に対する高電圧(HV)の印加を停止させる。更に、制御装置22は、高電圧(HV)の印加停止に連動させて、近赤外ランプ50aを消灯し、可視光ランプ50bを点灯させる。なお、二次電子像の観察が行われない場合、制御装置22は、電子銃30をオフせずにオン状態を維持しつつ、電源18をオフすることで、電源18から光電子増倍管に対する高電圧(HV)の印加を停止させてもよい。このような制御を行った場合も、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0057】
照明制御部34は、可視光ランプ50bが点灯している間、近赤外ランプ50aを消灯させてよいし、近赤外ランプ50aを点灯させてもよい。近赤外ランプ50aと可視光ランプ50bの両方を点灯させた場合、試料室12内の金属等で反射した光の影響が、カラー画像に現れることがある。可視光ランプ50bを点灯させている間、近赤外ランプ50aを消灯させることで、その影響を防止することができる。
【0058】
また、光電子増倍管の検出外の波長を有する光を照射する照明ランプとして、近赤外ランプ以外の照明ランプが用いられてもよい。この場合、近赤外ランプ以外の照明ランプと可視光ランプとが用いられる。
【0059】
上記の実施形態では、光学カメラ42による観察用の照明ランプとして2種類の照明ランプ(近赤外ランプ50aと可視光ランプ50b)が用いられているが、互いに波長の異なる3種類以上の照明ランプが用いられてもよい。この場合も、光電子増倍管に高電圧(HV)が印加されている場合、光電子増倍管の検出外の波長を有する光を照射する照明ランプが点灯し、光電子増倍管が検出可能な波長を有する光を照射する照明ランプが消灯する。こうすることで、上記の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
光電子増倍管以外の検出器が走査型電子顕微鏡10に設けられている場合、照明制御部34は、その検出器のオン及びオフに連動させて、各照明ランプのオン及びオフを制御してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 走査型電子顕微鏡、12 試料室、14 電子線照射部、16 二次電子検出器、18 電源、20 撮影装置、22 制御装置、24 表示装置、28 試料、30 電子銃、32 仕切り弁、34 照明制御部、50 照明部、42 光学カメラ、50a 近赤外ランプ、50b 可視光ランプ。