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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】リアスポイラー
(51)【国際特許分類】
   B62D 37/02 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B62D37/02 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018015769
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131078
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207653
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】足立 亮一
(72)【発明者】
【氏名】三ツ尾 一孝
(72)【発明者】
【氏名】小西 圭祐
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-074888(JP,U)
【文献】特開平02-041988(JP,A)
【文献】特開平02-310181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に備えたリアスポイラーであって、
前記リアスポイラーは、本体部と、前記本体部の両側に配置され、前記車体後部に固定された取付部と、を有し、
前記本体部は、前記車体の幅方向を軸線方向とする軸部により前記取付部に回動可能に支持され、
前記軸部を中心に回動することにより、前記本体部が倒伏状態と起立状態に切換え可能とし、
前記本体部を倒伏状態で保持する方向に付勢力を付与する付勢手段を備え、
前記取付部には、前記付勢手段が収容される収容凹部を備えたことを特徴とするリアスポイラー。
【請求項2】
前記付勢手段は、巻回部と、前記巻回部の一端から延びた第1の腕片と、前記巻回部の他端から延びた第2の腕片とを備えたねじりコイルばねとし、
前記巻回部と前記第1の腕部は、前記収容凹部に収容され、前記第2の腕片は前記本体部の側面に係止されることを特徴とする請求項1記載のリアスポイラー。
【請求項3】
前記本体部に風受け部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のリアスポイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部に設けるリアスポイラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、自動車の後方部の上面の左右に立設した一対の取付用脚部と、一対の取付用脚部に上下方向に摺動可能に取り付けた第1のウイングと、第1のウイングが上方に位置するように付勢した弾性部材と、第1のウイングの上方に積合させ一対の取付用脚部の上端に固定した第2のウイングとを備え、自動車の停車時又は低速走行時には第1のウイングと第2のウイングとが密着して積合された状態となり、一定以上の高速走行になると弾性部材の弾性力に抗して第1のウイングが下方に摺動して第2のウイングと離間し、二枚のウイングの抗力を自動車のボディに付与する自動車用リアウイング(例えば特許文献1)が提案されている。
【0003】
また、メインウイングとサブウイングとの間隙に設けられた空気流路としてのスロットにプラズマアクチュエータによって誘起された気流がメインウイングを流れることで、サブウイングの下面を流れる気流をサブウイングから剥離させる車両用整流装置(例えば特許文献2)が提案されている。具体的には、電気的に気流を誘起させることによりスロットを流れる気流を任意に加速し、サブウイングの下面を流れる気流を剥離させ、低速走行時のダウンフォースを維持しながら高速走行時の空気抵抗を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-234462号公報
【文献】特開2010-158977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の自動車用リアウイングは、自動車の後方のボディの上面と第2ウイングとの間に風が通過可能な間隙が常に形成されているため、低速走行時であってもダウウンフォースが発生してしまうという問題があった。また、特許文献2の車両用整流装置では電気的機構を必要とするため、構造が複雑になるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、簡単な構成により、低速走行時は伏倒位置にありダウンフォースの発生を抑え、高速走行時に起立して車体にダウンフォースを発生させるリアスポイラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車体後部に備えたリアスポイラーであって、前記リアスポイラーは、本体部と、前記本体部の両側に配置され、前記車体後部に固定された取付部と、を有し、前記本体部は、前記車体の幅方向を軸線方向とする軸部により前記取付部に回動可能に支持され、前記軸部を中心に回動することにより、前記本体部が倒伏状態と起立状態に切換え可能とし、前記本体部を倒伏状態で保持する方向に付勢力を付与する付勢手段を備え、前記取付部には、前記付勢手段が収容される収容凹部を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記付勢手段は、巻回部と、前記巻回部の一端から延びた第1の腕片と、前記巻回部の他端から延びた第2の腕片とを備えたねじりコイルばねとし、前記巻回部と前記第1の腕部は、前記収容凹部に収容され、前記第2の腕片は前記本体部の側面に係止されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記本体部に風受け部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、走行時の風圧による外力によって、高速走行時のダウンフォースを発生させることができる。また、適切な速度でリアスポイラーを切替えることができる。また、外観に優れたリアスポイラーを提供することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、付勢手段をねじりコイルばねとした場合にも、外観に優れたリアスポイラーを提供することができる。
【0012】
請求項3の構成によれば、所望の外力を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1を示すリアスポイラーにおいて本体部が倒伏位置にある状態を示す斜視図である。
図2】同上、本体部が起立位置にある状態を示す斜視図である。
図3】同上、図2の拡大斜視図である。
図4】同上、倒伏位置にある本体部の断面図である。
図5】同上、起立位置にある本体部の断面図である。
図6】同上、本体部の異なる形態を示す断面図である。
図7】同上、本体部の異なる形態を示す断面図である。
図8】同上、軸部付近を示す断面図である。
図9】同上、図8とは異なる形態の軸部付近を示す断面図である。
図10】同上、図8とは異なる形態の軸部付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明のリアスポイラーの実施例について説明する。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0015】
図1図10は本発明の実施例1を示す。図1図3において、自走式四輪車両の車体1の後部上面には、リアスポイラー2が設けられ、そのリアスポイラー2は車体1の車幅方向(図中、X方向)に長く形成された本体部3と、この本体部3の車幅方向における右側面部4と左側面部5にそれぞれ隣接して設けた右側取付部6と左側取付部7とを有し、右側取付部6と左側取付部7が車体1に取り付けられている。このリアスポイラー2は走行時において車体1にダウンフォースを付与する。尚、リアスポイラー2はABS樹脂や繊維強化プラスチックなどから形成される。
【0016】
本体部3は、上面部3Aを右側面部4及び左側面部5から中央部分へと下方に凹設した婉曲状に形成されるとともに、前端部8を右側面部4及び左側面部5から中央部分へと車体1後方に凹設した湾曲状に形成されている。以上の構成から、本体部3の車両前後方向の断面形状は、前端部8から後端部3Bにかけて厚みを増して形成された略三角形状となるとともに、本体部3の厚みは、右側面部4及び左側面部5から中心部分へと薄くなるように形成されているため、後述する倒伏位置での車体1前方からの空気抵抗を抑えた形状となっている。
【0017】
右側取付部6と左側取付部7は、それぞれ本体部3の右側面部4及び左側面部5と対向する箇所から車幅方向外向きへと下向きに傾斜しているとともに、前端部6A、7Aから後端部6B、7Bにかけて上向きに傾斜して形成されており、車体1前方からの空気抵抗を抑えた形状となっている。
【0018】
前記本体部3は、前端部8に車幅方向に沿って風受け部9が形成されている。風受け部9は、車体1の上面を後方に向かって流動する走行風Fによる外力を受けるものである。風受け部9の形態としては、図4に示すように本体部3の前端部8に傾斜部10を備えたものや、図6に示すように本体部3の前端部8に凹部11を備えたものや、図7に示すように本体部3の前端部8から底面部12の前方にかけて切欠部13を形成して、本体部3の前端部8と車体1との間に隙間14を備えたものや、これらを組み合わせたものや、本体部3の前端部8で走行風Fを受ける形状であればこれらに限定されるものではない。前記傾斜部10は、前端部8の上端から下端にかけて後傾して形成されたものである。
【0019】
本体部3の右側面部4と左側面部5のそれぞれの後端と、右側取付部6と左族面部7との間には、それぞれ右側軸部15と左側軸部16を備えている。右側軸部15と左側軸部16によって、本体部3は、前端部8が右側軸部15と左側軸部16より前方に位置して、本体部3が車体1後部と平行となるように倒れた伏倒位置と、前端部8が右側軸部15と左側軸部16より後方に来るまで本体部3が後傾する起立位置の間にて車体1の前後方向(図中、Y方向)に回動自在となっている。
【0020】
右側軸部15と左側軸部16は、図8に示すように左側取付部7と本体部3の左側面部5とを軸部材17を連続して貫通させて、右側取付部6と本体部3の右側面部4とを軸部材18を連続して貫通させたものや、図9に示すように左側取付部7、本体部3、右側取付部6とを軸部材19で連続して貫通させたものや、図10に示すように左側取付部7に左側凹部20を備え、本体部3の左側面部5に左側凹部20に嵌合可能な左側凸部21を備え、右側取付部6に右側凹部22を備え、本体部3の右側面部4に右側凹部22に嵌合可能な右側凸部23を備えたものとしてもよく、図10の構成に左側取付部7と本体部3の左側面部5、右側取付部6と本体部3の右側取付部6とをそれぞれ磁石等による非接触式継手24を介して回動自在に備えたものとを組み合わせたものでもよい。また、図10に示す凸部と凹部による嵌合構造については、本体部3側に凸部を備え、左側取付部5及び右側取付部6に凹部を備えた嵌合構造としてもよい。
【0021】
右側取付部6及び左側取付部7には、付勢手段としてのねじりコイルばね25が収納されている。ねじりコイルばね25は、本体部3を倒伏位置に保持させる付勢力を付与するものである。尚、起立位置にある本体部3の底面部12は軸部材17から垂直方向に延びた仮想線M(図5参照)から車両後方へと角度αだけ後傾しており、走行風Fを効果的に浮けるために角度αは0°<α<90°とするのが好ましい。ねじりコイルばね25は、巻回部26と、第1の腕片27と、第2の腕片28とを一体的に備えている。巻回部26は金属製の線材を環状に巻回して形成されたものであり、第1の腕片27は巻回部26の一端から接線方向に延びた金属製の線材であり、第2の腕片28は巻回部26の他端から接線方向に延びた金属製の線材である。第1の腕片27は、巻回部26に対して第2の腕片28と反対側に位置している。また、右側取付部6における右側面部4と対向する面と、左側取付部7における左側面部5と対向する面には、それぞれねじりコイルばね25の巻回部26と第1の腕片27が収容可能な収容凹部Cが形成されており、ねじりコイルばね25が収容可能な構造となっている。
【0022】
ねじりコイルばね25の取付構造としては、巻回部26の内部に軸部材17を挿通し、第1の腕片27が右側取付部6に形成された収容凹部Cに固定され、第2の腕片28が本体部3の右側面部4に固定される。第1の腕片27と第2の腕片28の固定構造としては、第1の腕片27の先端と、第2の腕片28の先端には、それぞれ略L型に屈曲された第1の係止部29と第2の係止部30とを備えており、第1の係止部29と第2の係止部30は対向している。そして、第1の係止部29は収容凹部Cに備えた係止凸部31に係止されて、第2の係止部30は右側面部4に備えた係止凸部32に係止される。同様に、ねじりコイルばね25の第1の腕片27が左側取付部7に形成された収容凹部Cに固定され、第2の腕片28が左側面部5に固定される。すなわち、第1の係止部29は収容凹部Cに備えた係止凸部31に係止され、第2の係止部30は左側面部5に備えた係止凸部32に係止される。このように、ねじりコイルばね25は、右側面部4と右側取付部6との間、左側面部5と左側取付部7との間にそれぞれ設けられている。このねじりコイルばね25によって、軸部材17を回転軸として第2の腕片28を車両前方へと回動させようとする付勢力が付与されているため、本体部3は倒伏位置に保持される。
【0023】
以上の構成のリアスポイラー2の作用について説明する。車両停止時では、本体部3は付勢手段25により倒伏位置に保持される。車両が前進走行すると、車体1に走行方向後方へと流れる走行風Fが発生する。以下の走行とは、車両前進のことを示すものとする。
【0024】
図4に示すように低速走行時では、本体部3の前端部8に受ける走行風Fによる外力よりも、付勢手段25による付勢力のほうが大きいため、本体部3は倒伏位置に保持される。
【0025】
図5に示すように高速走行時において、本体部3の前端部8に受ける前記外力が付勢力よりも大きくなると、本体部3は付勢力に抗しながら起立位置へと回動し、本体部3の底面部12で走行風Fを受け、車体1にダウンフォースが発生する。そして、車両の走行速度が低下して低速走行となると、付勢手段25による付勢力により、本体部3は倒伏位置に戻る。
【0026】
この場合、低速走行時では、本体部3が倒伏位置に保持され車体1に発生するダウンフォースが抑えられ、高速走行時では、起立位置にある本体部3によって車体1に生じるダウンフォースを増加させて、高速走行時における安定性を向上させることができる。
【0027】
このように本実施例では、請求項1に対応して、車体1後部に備えたリアスポイラー2であって、リアスポイラー2は、本体部3と、本体部3の両側に配置され、車体1後部に固定された取付部である右側取付部6と左側取付部7と、を有し、本体部3は、車体1の幅方向を軸線方向とする軸部である右側軸部15と左側軸部16により右側取付部6と左側取付部7に回動可能に支持され、右側軸部15と左側軸部16を中心に回動することにより、本体部3が倒伏状態と起立状態に切換え可能とすることにより、走行時の風圧による外力によって、高速走行時のダウンフォースを発生させることができる。
【0028】
このように本実施例では、請求項2に対応して、本体部3を倒伏状態で保持する方向に付勢力を付与する付勢手段25を備えることにより、適切な速度でリアスポイラー2を切替えることができる。
【0029】
このように本実施例では、請求項3に対応して、本体部3に風受け部9が形成されていることにより、前端部8の抵抗が増加し、所望の外力を受けることができる。
【0030】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、起立位置にある本体部3を角度αに保持する機構を備えたものとしてもよい。また、付勢手段については、本実施例のねじりコイルばね25に限定されるものではなく、また、第1の腕片27と第2の腕片28の固定構造も、本実施例の構造に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 車体
2 リアスポイラー
3 本体部
6 右側取付部(取付部)
7 左側取付部(取付部)
9 風受け部
15 右側軸部(軸部)
16 左側軸部(軸部)
25 ねじりコイルばね(付勢手段
26 巻回部
27 第1の腕片
28 第2の腕片
C 収容凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10