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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】外観検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
G01N21/88 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018022060
(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公開番号】P2019138762
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】小山 正巳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智夫
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 法仁
(72)【発明者】
【氏名】安永 浩治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲治
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-102208(JP,A)
【文献】特開2003-138468(JP,A)
【文献】特開2012-018082(JP,A)
【文献】特開平06-058745(JP,A)
【文献】特開2007-240512(JP,A)
【文献】特開2008-128811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の外観から前記被検体の異常対象物を検出する外観検査装置であって、
所定波長帯域の光を前記被検体に上方から照射する第1の照明と、
前記所定波長帯域から離れた波長帯域の光を前記被検体に対してローアングルで照射する第2の照明と、
前記第1の照明と前記第2の照明の反射光を検出する撮像手段と、
前記被検体を載置可能なステージと、
前記ステージの載置面に沿うX軸、前記ステージの載置面に拡がる平面に沿い前記X軸と直交するY軸および前記ステージの載置面と直交するZ軸の各軸方向に前記ステージを移動させる移動機構と、
前記X軸、前記Y軸および前記Z軸の各軸周りに前記ステージを回転させる回転機構と、
を備え、
前記回転機構と前記移動機構は、前記第2の照明が光を照射する前記被検体上の領域を変更すること、
を特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記第2の照明は、前記被検体の表面と概略平行となる前記ローアングルで光を照射すること、
を特徴とする請求項1記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記撮像手段と接続され、前記撮像手段から入力されたデータを画像処理する処理装置を備え、
前記処理装置は、
前記データに含まれる前記異常対象物の像を検出するスキャン部と、
前記スキャン部の検出結果に基づき、前記異常対象物の像の位置とアノテーション情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
を有すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記処理装置に接続され、前記撮像手段の撮像結果を画面に表示する表示装置を備え、
前記処理装置は、
前記撮像結果のデータを、前記第1の照明の波長帯域のデータと前記第2の照明の波長帯域のデータとに分離するデータ分離部と、
前記分離された両データをグレースケールに各々変換する変換部と、
前記変換部で変換された前記両データのうち、一方の前記データを色反転させる反転部と、
前記反転部により反転させた前記一方のデータと、他方のデータとを合成して画像データを生成する生成部と、
を有し、
前記表示装置は、前記画像データを画面に表示すること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記表示装置は、
前記異常対象物を示す位置に当該異常対象物のアノテーション情報を表示すること、
を特徴とする請求項4記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記第1の照明及び前記第2の照明による光の照射前に、前記被検体に白色光を照射する白色照明を備えたこと、
を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記第1の照明及び前記第2の照明が照射する光が前記撮像手段に到達するまでの光路を囲う遮光カバーが設けられたこと、
を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の外観検査装置。
【請求項8】
前記撮像手段の高さを調整する高さ調整機構を備え、
前記遮光カバーは、蛇腹を有すること、
を特徴とする請求項記載の外観検査装置。
【請求項9】
異なる画素数の撮像素子群を有し、又は開放絞り値若しくは焦点距離が異なるレンズを有する複数の前記撮像手段を備えること、
を特徴とする請求項記載の外観検査装置。
【請求項10】
前記第1の照明は、赤色光又は赤外線を照射し、
前記第2の照明は、青色光又は紫外線を照射すること、
を特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体の外観を検査する外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の撮像手段によって被検体を撮像し、画像検査する外観検査装置が知られている。この外観検査装置は、被検体に付着した異物を検出したり、被検体の傷や凸凹、干渉縞の有無などの表面状態を検出したりする目的で使用される。以下、異物及び表面状態を異常対象物と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-133052号公報
【文献】特開2012-154707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異常対象物には、照明光を反射させ易い種類、及び照明光を吸収又は透過する種類がある。照明光を吸収又は透過する種類に対して、相対的に照明光を反射させ易い種類の異常対象物を高反射異常対象物と呼び、照明光を反射させ易い種類に対して、相対的に照明光を吸収又は透過する種類の異常対象物を低反射異常対象物と呼ぶ。被検体によっては、高反射異常対象物と低反射異常対象物の両方が存在する場合があり、また、高反射異常対象物と低反射異常対象物の何れか存在するか不明な場合もある。しかし、従来の外観検査装置では、このような高反射異常対象物と低反射異常対象物の両方を同時に検出することができず、被検体の検査効率を向上させることに限界があった。
【0005】
本実施形態は、上述の課題を解決すべく、1回の撮像で被検体上の高反射異常対象物と低反射異常対象物を検査することができる外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本実施形態に係る外観検査装置は、被検体の外観から前記被検体の異常対象物を検出する外観検査装置であって、所定波長帯域の光を前記被検体に上方から照射する第1の照明と、前記所定波長帯域から離れた波長帯域の光を前記被検体に対してローアングルで照射する第2の照明と、前記第1の照明と前記第2の照明の反射光を検出する撮像手段と、前記被検体を載置可能なステージと、前記ステージの載置面に沿うX軸、前記ステージの載置面に拡がる平面に沿い前記X軸と直交するY軸および前記ステージの載置面と直交するZ軸の各軸方向に前記ステージを移動させる移動機構と、前記X軸、前記Y軸および前記Z軸の各軸周りに前記ステージを回転させる回転機構と、を備え、前記回転機構と前記移動機構は、前記第2の照明が光を照射する前記被検体上の領域を変更すること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る外観検査装置の構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る処理装置の機能ブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る外観検査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る処理装置の作用を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る外観検査装置の作用を示す図であり、低反射の異常対象物の検出について説明するための図である。
図6】第1の実施形態に係る外観検査装置の作用を示す図であり、光を反射する異常対象物の検出について説明するための図である。
図7】第1の実施形態の変形例に係る処理装置の機能ブロック図である。
図8】異常対象物の位置及び異常対象物のアノテーション情報の表示を示す図である。
図9】第2の実施形態に係る放射線検査装置の構成の一例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る処理装置の機能ブロック図である。
図11】第2の実施形態の外観検査装置の作用を示す図である。
図12】他の実施形態に係る外観検査装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
(構成)
以下、第1の実施形態に係る外観検査装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る外観検査装置の構成の一例を示す図である。図1に示す外観検査装置は、被検体1を撮影することで、被検体1の外観を画像検査し、異常対象物Fを検出する。被検体1は外観検査されるワークである。ここでは、一例として被検体1を、平坦面を有する平板とする。異常対象物Fは、被検体1の表面に付着した埃等の異物、被検体1の表面の汚れ、又は被検体1の表面の凹凸や傷である。凹凸や傷は、縁が被検体1の表面から隆起する傾向がある。
【0010】
この外観検査装置は、ステージ2、照明3a、照明3b、撮像手段4、処理装置5及び表示装置6を備える。ステージ2は、被検体1を載置可能な載置面21を有する載置台である。このステージ2に載置された被検体1が検査対象であり、撮影及び画像処理により異常対象物Fの存在が検査される。
【0011】
照明3aは、載置面21上方に設けられ、光軸が載置面21に高入射角で向けられている。換言すると、照明3aの光は、ステージ2上の被検体1の表面に高入射角で向けられる。この照明3aは、ステージ2上の被検体1を照光する。即ち、高入射角は、大部分の光が被検体1の表面に当たり、大部分の反射光が載置面21上方の撮像手段4に向かう程度である。この照明3aは、例えばLEDであり、所定波長帯の単色光を照射する。所定波長帯の単色光は、例えば、照明3bの光に対して相対的に散乱し難い長波長を有することにより透過性の高い赤色光又は赤外線である。この照明3aは、例えば赤色LEDや赤外線LEDである。
【0012】
この照明3aは、同軸落射照明とすることができる。例えば、外観検査装置は、撮像手段4の撮影光軸上にハーフミラーを有する。ハーフミラーは、反射面を照明3aに向け、照明3aの光を載置面21に反射させる。またハーフミラーは、入出射面を載置面21と撮像手段4に向け、照明3aが出射して載置面21上の被検体1から反射してきた光を撮像手段4に向けて透過させる。また、照明3aは、被検体1を斜め上方から照光するリング式照明であり、ステージ2に被さるように設けられ、被検体1からの反射光はリング開口から撮像手段4に入射する。
【0013】
尚、この外観検査装置は、同軸落射照明及びリング式照明の両方の照明3aを備えているが、同軸落射照明単体、リング式照明単体、ドーム式照明単体、又は同軸落射照明に加えてドーム式照明又はリング式照明の併設等の複数種類の組み合わせで照明3aを備えるようにしてもよい。尚、ドーム式照明は、天頂に開口を有するドーム型であり、ステージ2に被さるように設けられ、被検体1からの反射光は天頂の開口から撮像手段4に入射する。
【0014】
照明3bは、ステージ2の側方に設けられ、光軸がローアングルで載置面21に向けられている。この照明3bは、被検体1を避け、被検体1の異常対象物Fを照光する。即ち、光軸とステージ2上の被検体1の表面とが概略平行で、照明3bの光軸の高さは、被検体1の表面より高く、被検体1上の異常対象物Fよりも低い範囲であることが望ましいが、被検体1の表面で反射した光の大部分が載置面21の上方の撮像手段4から逸れた方向に反射する角度であればよい。光軸が平行である場合、照明3bに近い高反射異常対象物F2の検出精度が向上し、被検体1からの反射光が撮像手段4から逸れる角度範囲では、高反射異常対象物F2の検出範囲が拡大する。
【0015】
この照明3bは、照明3aの波長帯域とは離れた波長帯域の単色光を照射する。例えば、この照明3bの単色光は、照明3aの光を相対的に長波長とすることが望ましいため、照明3aの光に対して相対的に散乱し易い短波長を有することにより透過性の低い青色光又は紫外線である。この照明3bは、例えば青色LEDである。
【0016】
撮像手段4は、CCDやCMOS等の撮像素子を含み構成されたカメラであり、載置面21の上方に設けられ、照明3aが出射して被検体1で反射した光、及び照明3bが出射して異常対象物Fで反射した光を検出する。撮像手段4には、レンズ41と、照明3a及び照明3bが照射する光が撮像手段4に到達するまでの光路を囲う遮光カバー42が設けられている。
【0017】
この撮像手段4は、照明3aの光を受光する撮像素子と照明3bの光を受光する撮像素子とを有する。照明3aの光を受光する撮像素子は、受光面に照明3aの光の波長帯域を透過させる同色のフィルタを有する。照明3bの光を受光する撮像素子は、受光面に照明3bの光の波長帯域を透過させる同色のフィルタを有する。この撮像手段4は、各画素値に照明3aの光の強度情報と照明3bの光の強度情報とを有する画像データを出力することになる。この強度情報は、デジタル化されて階調値に変換されて出力される。照明3aが赤色光を出射し、照明3bが青色光を出射する場合、撮像手段4はカラーカメラでよい。この撮像手段4は、入光した反射光を各RGBの光強度に応じて画素毎にRGBの各階調値を有する画像データに変換し、当該画像データを出力する。
【0018】
処理装置5は、撮像手段4と接続されており、撮像手段4から入力された画像データを画像処理する。画像処理によって生成される画像データは、低反射異常対象物F1と高反射異常対象物F2を同一の画像データに同一の表現態様で同時に表示する。図2は、処理装置5の構成を示すブロック図である。この処理装置5は、データ分離部51、変換部52、反転部53、及び生成部54を有する。
【0019】
典型的には、この処理装置5は、所謂コンピュータ、及び当該コンピュータとバス、入出力インターフェース及び信号線で接続されたコントローラであり、CPU、HDD又はSSDといったストレージ及びRAMを備える。ストレージはプログラムを記憶し、RAMはプログラムが展開され、またデータが一時的に記憶され、CPUはプログラムを処理する。コントローラは、CPUから出力される制御信号に従って、照明3a、3bに電力を供給し、また撮像手段4に撮影処理を実行させ、撮像手段4から画像データを取り込む。或いは、処理装置5は、ハードウェアロジックによってデータ分離部51、変換部52、反転部53、及び生成部54を備えてもよい。
【0020】
データ分離部51は、CPUを含み構成され、撮像手段4から入力された画像データを、照明3aの波長帯域のみの単色画像データと、照明3bの波長帯域のみの単色画像データとに分離する。このデータ分離部51は、照明3aの波長帯域の階調値を各画素に残し、それ以外の色の階調値をゼロ或いは破棄する。これにより、照明3aの波長帯域のデータが生成される。また、このデータ分離部51は、照明3bの波長帯域の階調値を各画素に残し、それ以外の色の階調値をゼロ或いは破棄する。これにより、照明3bの波長帯域のデータが生成される。このように分離された画像データを分離データと称する。
【0021】
例えば、照明3aが赤色を出射し、照明3bが青色を出射した場合、各画素の赤色の階調値を残して、各画素の青色と緑色の階調値をゼロにすれば、照明3aの波長帯域の分離データが生成され、各画素の青色の階調値を残して、各画素の赤色と緑色の階調値をゼロにすれば、照明3bの波長帯域の分離データが生成される。
【0022】
尚、撮像手段4のソフトウェアが照明3aの波長帯域のみの単色画像データと、照明3bの波長帯域のみの単色画像データとを別々に保存する場合には、既に分離データが存在しているためにデータ分離部51は不要である。例えば、照明3aが赤色を出射し、照明3bが青色を出射し、更に撮像手段4がカラーカメラであって、撮像手段4のソフトウェアが赤色の画像データと青色の画像データを別々に保存している場合には、データ分離部51は不要である。
【0023】
変換部52は、CPUを含み構成され、分離データをグレースケールに変換する。反転部53は、CPUを含み構成され、グレースケールに変換された分離データの一方を白黒反転させる。生成部54は、CPUを含み構成され、反転部53により反転させた分離データと、他方の分離データとを合成した画像データを生成する。
【0024】
表示装置6は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといったモニタである。表示装置6は、処理装置5と接続されており、処理装置5から出力された画像データを画面に表示する。
【0025】
(動作)
上記のような外観検査装置の動作の一例を図3のフローチャートに示す。以下、照明3aが赤色光を照射し、照明3bが青色光を照射し、画像データが赤色のRデータと青色のBデータとに分離される例を採り説明する。まず、ステージ2の載置面21に被検体1を載置し(ステップS1)、処理装置5によりコントローラを介して照明3a及び照明3bをオンにし、ステージ2上の被検体1を照明3a、3bの光を同時に照射する(ステップS2)。そして、撮像手段4で照明3a、照明3bを起源とする反射光を受光する(ステップS3)。
【0026】
次に、撮像手段4により、入光した反射光を検出して画像データに生成し(ステップS4)、処理装置5に出力する。そして、図4に示すように、データ分離部51により、入力された画像データから分離データを生成する(ステップS5)。変換部52により分離データのうちの一方(例えばRデータ)をグレースケールに変換し(ステップS6)、このグレースケールデータを反転部53により、白黒反転する(ステップS7)。また、変換部52により、他方の分離データ(例えばBデータ)をグレースケールに変換する(ステップS8)。生成部54は、グレースケールに変換され、一方は白黒反転された両分離データを合成して画像データを生成し(ステップS9)、表示装置6に合成した画像データを出力する。表示装置6は、処理装置5から入力された画像データを画面に表示する(ステップS10)。
【0027】
(作用)
図5及び図6は、本実施形態に係る外観検査装置の作用を示す図である。図5は、低反射異常対象物F1の検出について説明するための図である。図6は、高反射異常対象物F2の検出について説明するための図である。
【0028】
まず、照明3aの波長帯域と照明3bの波長帯域を隔離しており、また外観検査装置は遮光カバー42によって外光を制限しているので、これら波長帯域を跨ぐ各波長帯域を含んだ外光が撮像手段4に入光することが抑制されている。そのため、撮像手段4の画像データから照明3aの波長帯域のみの画像データと照明3bの波長帯域のみの画像データとを分離することは容易となっている。
【0029】
図5に示すように、被検体1の表面に、黒色カーボンなどの低反射異常対象物F1がある場合、照明3aは、被検体1の表面と低反射異常対象物F1を照光する。低反射異常対象物F1からの反射光は、被検体1の表面からの反射光と比べて少ない。そのため、照明3aの波長帯域のみの画像データ内では、低反射異常対象物F1に相当する画像領域が暗く、その周囲は明るい画像領域となる。しかも、照明3aの波長帯域が長波長であると、低反射異常対象物F1からの反射光はより少なくなり、低反射異常対象物F1の画像領域とその周囲とは、よりコントラストが高くなる。
【0030】
一方、図6に示すように、被検体1の表面に、糸くず、埃などの光を反射する高反射異常対象物F2がある場合、照明3bは、被検体1の表面の高反射異常対象物F2をターゲットに照光する。ローアングルで照光する照明3bは、被検体1を照光しないか、被検体1を照光したとしても、被検体1からの反射光の多くは撮像手段4に入光しない。そのため、照明3bの波長帯域のみの画像データ内では、高反射異常対象物F2に相当する画像領域が明るく、その周囲は暗い画像領域となる。しかも、照明3bの波長帯域が照明3aと比べて短波長であると、高反射異常対象物F2からの反射光はより多くなり、高反射異常対象物F2の画像領域とその周囲とは、よりコントラストが高くなる。
【0031】
そして、両画像データが異常対象物Fを表現する際、一方は異常対象物Fを明るく表現し、他方は異常対象物Fを暗く表現しているので、グレースケール化して一方を白黒反転することで、双方の種類の異常対象物Fが同一の明るさ表現で画像に現れるため、低反射異常対象物F1も高反射異常対象物F2も同一画像データ内で同時に把握することが容易となる。
【0032】
また、被検体1の表面状態が異常となる部分はその周囲が平坦であるのに対し、うねりや凸凹等が生じており、照明3bの反射光を受光して得られる画像は、凸部分の片側が明るく、他方側が暗くなる等により、画像上に影が現れ、表面状態を判別することができる。
【0033】
このように、検出したい異常対象物Fによって、照射する光の波長帯域及び照射アングルを異ならせており、光に対する反射の性質が違っても、1回の撮像で同時に異物、表面状態、及びそれらの種類を検出することができる。
【0034】
(効果)
上記のように、本実施形態の外観検査装置は、被検体1の外観から被検体1の異常対象物Fを検出する外観検査装置であって、所定波長帯域の光を被検体1に上方から照射する照明3aと、所定波長帯域から離れた波長帯域の光を被検体1に対してローアングルで照射する照明3bと、照明3aと照明3bの反射光を検出する撮像手段4と、を備えるようにした。
【0035】
これにより、1回の撮像で同時に異なる種類の異常対象物Fを検出することができる。即ち、低反射異常対象物F1に対しては被検体1の上方から照射することで、低反射異常対象物F1とその背景となる被検体1とのコントラストを鮮明にするとともに、高反射異常対象物F2に対しては、ローアングルで照射することで、被検体1の反射を低減させることで高反射する高反射異常対象物F2のコントラストを鮮明にしている。そして、異常対象物Fの種類に応じて波長帯域の異なる照明3a、3bを用いているので、撮像手段4の受光光が分別可能であり、いずれの異常対象物Fかを検出することができる。特に、照明3bは、被検体1の表面と概略平行となるローアングルで光を照射するようにしたので、被検体1の表面上の異常対象物Fに照射し、被検体1の反射をより抑えることで、当該表面上の異常対象物Fの検出精度を向上させることができる。
【0036】
この照明3a、3bの各照射光は、波長帯域が分離可能な程度に離れて異なっていれば、いずれの色の光を照射してもよく、いずれの異常対象物Fをも検出可能となる。従って、例えば、照明3aは、赤色光又は赤外線を照射し、照明3bは、青色光又は紫外線を照射するようにしてもよい。または、照明3aは、青色光又は紫外線を照射し、照明3bは、赤色光又は赤外線を照射するようにしてもよい。また、一方が緑色光を照射し、他方が赤色光若しくは青色光を照射するようにしてもよい。更に他の色の光を照射するようにしてもよい。
【0037】
特に、この外観検査装置では、照明3bの光を短波長の青色光又は紫外線としたので、微小な高反射異常対象物F2に対しても照射させやすく、より精度良く反射異物F2を検出することができる。一方で、照明3aの光を照明3bと異なる長波長である赤色又は赤外線としているので、低反射異常対象物F1も区別しやすくなり、より精度良く低反射異常対象物F1を検出することができる。
【0038】
このような外観検査装置の用途としては、以下が例示される。
(a)塗装面、メッキ面の傷、ムラの検査
(b)プラスチック、ゴム成形部品の表面のヒゲ、凹凸の検査
(c)ガラス板、プラスチック板の表面に付着した埃や傷の検査
(d)切削加工や糸鋸作業等におけるケガキ線の証明
(e)凹凸エンボス等の傷、ムラの検査
(f)シリコンウエハの異物、傷の検査
(g)溶接線の形状判断や溶接時に発生するスパッタの有無
(h)食品内部の果汁成分部の凝固や空気含入の検査
【0039】
また、処理装置5に接続され、撮像手段4の撮像結果を画面に表示する表示装置6を備え、処理装置5は、撮像結果のデータを、照明3aの波長帯域のデータと照明3bの波長帯域のデータとに分離するデータ分離部51と、分離された両データをグレースケールに各々変換する変換部52と、変換部52で変換された両データのうち、一方のデータを色反転させる反転部53と、反転部53により反転させた一方のデータと、他方のデータとを合成して画像データを生成する生成部54と、を有し、表示装置6は、画像データを画面に表示するようにした。
【0040】
これにより、波長帯域が異なっても同じ画像処理アルゴリズムで処理することができ、且つ、異常対象物Fの有無を容易に把握することができる。
【0041】
また、照明3a及び照明3bが照射する光が撮像手段4に到達するまでの光路を囲う遮光カバー42を設けるようにした。これにより、撮像手段4に外光が入るのを抑制することができるので、異常対象物Fの検出精度を向上させることができる。
【0042】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の変形例を図7及び図8を用いて説明する。第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
図7は、処理装置5の機能ブロック図である。図7に示すように、処理装置5は、画像上で異常対象物Fの位置を特定するスキャン部55、異常対象物Fのアノテーション情報を記憶する記憶部56を有する。
【0044】
典型的には、このスキャン部55は、分離データを二値化して異常対象物Fの画素値と周囲の画素値を区分けして異常対象物Fの画素値を有する座標を特定したり、分離データのエッジ抽出により急峻に画素値が変化する座標を特定したりすればよい。そして、スキャン部55は、特定した座標を起点に輪郭抽出を行い、輪郭線内の中心座標を異常対象物Fの位置として特定すればよい。
【0045】
また、スキャン部55は、スキャン結果からアノテーション情報を生成する。アノテーション情報としては、異常対象物Fの種類及びサイズが挙げられる。異常対象物Fの種類は、スキャンする分離データによって特定される。即ち、照明3aの波長帯域のみによって成る分離データで特定された異常対象物Fの種類は、低反射異常対象物F1であり、照明3bの波長帯域のみによって成る分離データで特定された異常対象物Fの種類は、高反射異常対象物F2である。サイズに関しては、スキャン部55は、輪郭抽出によって得られた輪郭線内のピクセル数をカウントし、実空間のサイズに変換する。
【0046】
記憶部56は、ストレージを含み構成され、スキャン部55が特定した異常対象物Fの位置とアノテーション情報とを対応付けて記憶する。図8に示すように、画像データに付加された異常対象物Fの位置及びそのアノテーション情報を画面上に表示する。
【0047】
即ち、生成部54は、画像データに、記憶部56に記憶された異常対象物Fを示す位置座標と異常対象物Fのアノテーション情報を画像データに合成し、又は表示装置6は、画像データに、記憶部56に記憶された異常対象物Fを示す位置座標と異常対象物Fのアノテーション情報を画像データにオーバーレイ表示する。
【0048】
このように、処理装置5は、撮像手段4から入力されたデータに含まれる異常対象物Fの像を検出するスキャン部55と、スキャン部55の検出結果に基づき、異常対象物Fの像の位置とアノテーション情報とを対応付けて記憶する記憶部56と、を有することで、異常対象物Fの位置及びアノテーション情報を知ることができる。表示装置6は、異常対象物Fを示す位置に当該異常対象物Fのアノテーション情報を表示するようにしたので、検出された異常対象物Fの把握が容易になる。なお、異常対象物Fが検出された時点でアノテーション情報の表示に代えてエラーを出力しても良い。
【0049】
(第2の実施形態)
(構成)
第2の実施形態を、図9を用いて説明する。第1の実施形態と同一構成及び同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
図9は、第2の実施形態に係る外観検査装置の構成の一例を示す図である。図9に示すように、本実施形態の外観検査装置は、湾曲した板や直方体形状等の被検体1の表面検査に特に有用であり、照明3bとローアングルを成し、照明3aの下方に位置する面を切り替えて各表面を検査する。この外観検査装置は、被検体1を載置するステージ2を移動及び回転させる移動機構7及び回転機構8を更に有する。
【0051】
移動機構7は、ステージ2を並進及び昇降させる。並進方向はX軸方向及びY軸方向である。X軸方向は、ステージ2の載置面21に沿う一方向である。Y軸方向は、ステージ2の載置面21が拡がる平面に沿い、X軸方向と直交する方向である。昇降方向はZ軸方向である。Z軸方向は、ステージ2の載置面21と直交し、換言すると撮像手段4に接離する方向である。移動機構7は、例えば、各X軸、Y軸、Z軸方向に沿って延びるボールネジ機構である。このボールネジ機構は、位置固定のモータと、モータにより軸回転するネジ軸と、ネジ軸と螺合してステージ2と連結されたスライダとで構成される。
【0052】
回転機構8は、ステージ2を回転させ、ステージ2上の被検体1の向きを変更する。回転機構8は、各X軸、Y軸、Z軸周りにステージ2を回転させる。回転機構8は、例えば、各軸でモータ81及び軸方向に延びる回転軸82を有する。回転軸82は、一端がモータ81に連結され、他端がステージ2に連結されており、モータ81の回転により回転軸82が回転し、各軸周りにステージ2が回転する。
【0053】
図10は、処理装置5の機能ブロック図である。処理装置5は、検査領域記憶部57、機構制御部58を有する。検査領域記憶部57は、ストレージを含み構成され、載置面21上の当該被検体1の規定位置と、被検体1の検査領域が記憶されている。規定位置は、照明3a、3bから被検体1の表面が照射される照射範囲にあり、且つ、撮像手段4の真下となる位置である。検査領域は、予め計測した被検体1の外形データから被検体1の外表面が複数の領域に分割されており、各領域に対して検査順序が対応付けられている。例えば、被検体1が直方体形状である場合、検査領域は、被検体1の上面、右側面、左側面、正面、背面であり、この順に検査順序が対応付けられる。
【0054】
機構制御部58は、CPU及びコントローラを含み構成され、移動機構7及び回転機構8を制御し、各検査領域を順番に規定位置に移動させる。すなわち、機構制御部58は、検査領域記憶部57を参照し、図11に示すように、現在の検査領域の中心位置、すなわち規定位置に、次の検査領域の中心位置が位置し、検査領域と照明3bの光とがローアングルを成す角度に向くように、移動機構7及び回転機構8のモータを駆動させる。具体的には、機構制御部58は、規定位置から次の検査領域の中心位置までの移動量及び回転量となる制御信号を生成し、ドライバ回路がその制御信号に基づいて、移動機構7及び回転機構8のモータを駆動させる。
【0055】
このように、被検体1を載置可能なステージ2と、ステージ2を回転させる回転機構と、ステージ2を移動させる移動機構7と、を備え、回転機構8と移動機構7は、照明3bが光を照射する被検体1上の領域を変更するようにしたので、検査対象としたい領域が撮像手段4に向いていなくても、当該領域を撮像手段4の方に向けることができ、被検体1の外表面を広範囲に検査することができる。例えば、縁が湾曲した液晶パネルを被検体1としても、その湾曲面の外観を検査することができる。
【0056】
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0057】
例えば、図12に示すように、外観検査装置は、白色照明3cを有していても良い。白色照明3cは、照明3a及び照明3bによる光の照射前に、ステージ2上の被検体1に白色光を照射する。白色照明3cは、例えばリング状の照明とすることができる。白色照明3cを有することにより、被検体1の検査前の準備として、撮像手段4でステージ2上の被検体1を見ながら、ステージ2上の撮影位置の調整をし易くすることができる。
【0058】
また、図12に示すように、外観検査装置は、撮像手段4の高さを調整する高さ調整機構9を有していても良い。「高さ」方向とは、例えばZ軸方向である。高さ調整機構9は、モータ91、一対のプーリ92、ベルト93を有する。プーリ92は回転円盤であり、Z軸方向に所定距離離れて平行に設けられる。ベルト93は、プーリ92間を架橋し長円状になるようにプール92に巻き付けられており、一部が撮像手段4に対して固定されている。モータ91は、モータ軸がプーリ92の回転中心に連結されている。モータ91を駆動するとモータ軸の回転によりプーリ92が回転し、ベルト93が連動し一方向に回転し、撮像手段4が高さ方向に移動する。
【0059】
このように、高さ調整機構9を有することで、撮像手段4の高さを調整でき、撮像手段4の位置合わせが容易になる。例えば、撮像手段4に設けたレンズ41の倍率を変えたときに位置合わせが容易となる。
【0060】
更に、図12に示すように、遮光カバー42は、蛇腹42aを有していても良い。撮像手段4の高さが変わっても、蛇腹42a部分が伸縮するので、撮像手段4に入光する外乱光を遮蔽することができる。
【0061】
また、異なる画素数の撮像素子群を有し、又は開放絞り値若しくは焦点距離が異なるレンズ41を有する複数の撮像手段4を備えるようにしても良い。これにより、要求される被検体1の検査精度に対応することができる。
【0062】
また、図12に示すように、外観検査装置は、送り機構10を有していても良い。送り機構10は、被検体1を順に撮像手段4の下方に送り込む機構である。送り機構10は、モータ101、一対のプーリ102、ベルト103を有する。プーリ102は回転円盤であり、例えばX軸方向に所定距離離れて平行に設けられる。ベルト103は、プーリ102間を架橋し長円状になるようにプール12に巻き付けられており、ベルト103にはステージ2又は被検体1が載置可能になっている。モータ101は、モータ軸がプーリ102の回転中心に連結されている。モータ101を駆動するとモータ軸の回転によりプーリ102が回転し、ベルト103が連動し一方向に回転し、被検体1がX軸方向に移動し、撮像手段4の真下に順に送ることができる。これにより、被検体1の外観検査を連続して行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 被検体
2 ステージ
21 載置面
3a 照明
3b 照明
4 撮像手段
41 レンズ
42 遮光カバー
42a 蛇腹
5 処理装置
51 データ分離部
52 変換部
53 反転部
54 生成部
55 スキャン部
56 記憶部
57 検査領域記憶部
58 機構制御部
6 表示装置
7 移動機構
8 回転機構
81 モータ
82 回転軸
9 高さ調整機構
91 モータ
92 プーリ
93 ベルト
10 送り機構
101 モータ
102 プーリ
103 ベルト
F 異常対象物
F1 低反射異常対象物
F2 高反射異常対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12