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特許7008530容器殺菌装置および容器殺菌装置を備えた充填設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】容器殺菌装置および容器殺菌装置を備えた充填設備
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20220203BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20220203BHJP
   B65B 55/04 20060101ALI20220203BHJP
   B65B 55/08 20060101ALI20220203BHJP
   B65B 55/10 20060101ALI20220203BHJP
   A61L 101/20 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/18
A61L2/20
B65B55/04 A
B65B55/08 A
B65B55/10 A
B65B55/10 E
B65B55/10 Z
A61L101:20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018026555
(22)【出願日】2018-02-19
(65)【公開番号】P2019141192
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生杉 浩一
(72)【発明者】
【氏名】福田 直晃
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137071(JP,A)
【文献】米国特許第06517776(US,B1)
【文献】特許第6166441(JP,B1)
【文献】実開昭61-196750(JP,U)
【文献】特開2018-104031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
A61L 2/18
A61L 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に挿入可能な挿入体と、
殺菌用流体を前記容器内に供給する殺菌用流体供給手段と、
前記挿入体に設置されて前記殺菌用流体の供給と順次または同時に殺菌用の紫外線を照射する紫外線光源と、
前記紫外線光源を覆い前記殺菌用流体から当該紫外線光源を遮蔽する遮蔽カバーと、を備え、
前記殺菌用流体供給手段は、前記挿入体内に形成されて挿入体の先端部に開口される流体通路を備え、
前記流体通路と、容器内面と前記挿入体との間に形成される殺菌通路との間で殺菌用流体が流送される
ことを特徴とする容器殺菌装置。
【請求項2】
前記挿入体に、前記紫外線光源を所定の温度範囲に保持する光源温度制御部が設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の容器殺菌装置。
【請求項3】
前記殺菌用流体は酸性ガスまたは酸性ミストである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の容器殺菌装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の容器殺菌装置を備えた
ことを特徴とする充填設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌用流体と紫外線を使用する容器殺菌装置およびこの容器殺菌装置を備えた充填設備に関する。
【背景技術】
【0002】
内容液の充填前の容器や、容器成形前のプリフォーム体に、紫外線光源から照射された紫外線を、導光手段により容器内に導き、容器の内面を殺菌する装置がある。また、紫外線光源として小型のLED発光素子が市販されており、これを利用した殺菌装置が特許文献1や特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6166441号公報
【文献】特開2017-143971号公報
【文献】特表2015-504824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献3は、容器内に挿入された噴霧管から、蒸発した過酸化水素水を容器内に噴射するもので、微生物の殺菌力を高めるため、過酸化水素水と紫外線放射との組合せを提案している。特許文献3ではステップIIで過酸化水素水で容器を殺菌した後、ステップIIIにおいて紫外線放射を行い、酸性条件と紫外線によりヒドロキシラジカル(・OH)が生成されるように構成している。
【0005】
特許文献3のように、2つのステップにわたって殺菌作業を行うと、装置の大型化や殺菌する工程の煩雑化を招き、過酸化水素水の殺菌効果の低下、紫外線照射による殺菌効果の低下を招く虞があった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決して、装置をコンパクト化できるとともに、殺菌工程の単純化と殺菌効率の向上を行うことができる容器殺菌装置、およびこの容器殺菌装置を備えた充填設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る容器殺菌装置は、容器内に挿入可能な挿入体と、殺菌用流体を前記容器内に供給する殺菌用流体供給手段と、前記挿入体に設置され前記殺菌用流体の供給と順次または同時に殺菌用の紫外線を照射する紫外線光源と、前記紫外線光源を覆い前記殺菌用流体から当該紫外線光源を遮蔽する遮蔽カバーと、を備え、前記殺菌用流体供給手段は、前記挿入体内に形成されて挿入体の先端部に開口される流体通路を備え、前記流体通路と、容器内面と前記挿入体との間に形成される殺菌通路との間で殺菌用流体が流送されることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、殺菌用流体供給手段と紫外線光源の二つの殺菌手段を使用して、順次または同時に容器内面を殺菌するように構成したので、容器殺菌装置をコンパクトに構成することができる。また紫外線と殺菌用流体とにより、反応性が高く酸化力が強いヒドロキシルラジカルが生成され、容器内の殺菌や有害物の除去(残留殺菌用流体の分解)を効果的に行うことができる。さらに遮蔽カバーにより、紫外線光源を殺菌用流体から保護することができ、紫外線光源の寿命を延ばすことができる。また、殺菌用流体供給手段は、挿入体内に形成されて挿入体の先端部に開口される流体通路を備え、流体通路と、容器内面と挿入体との間に形成される殺菌通路との間で殺菌用流体が流送される。上記構成によれば、挿入体に形成した流体通路を使用して、殺菌通路に殺菌用流体を供給または排出することにより、容器殺菌装置をコンパクトに構成することができる。
【0010】
また上記構成において、前記挿入体に、前記紫外線光源を所定の温度範囲に保持する光源温度制御部が設けられることが好ましい。このように紫外線光源を温度管理することにより、紫外線の出力を安定して保持することができる。
【0011】
さらにまた上記構成において、殺菌用流体は、腐食性を有する酸性ガスまたは酸性ミストであることが好ましい。
【0012】
本発明に係る充填設備は、上記構成のいずれかに記載の容器殺菌装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器内面の殺菌に、殺菌用流体の供給と紫外線照射の二つの殺菌手段を順次または同時に使用することができる。したがって、殺菌装置をコンパクト化できるとともに、容器を殺菌する工程の単純化と殺菌効率の向上を図ることができる。また、挿入体に形成した流体通路を使用して、殺菌通路に殺菌用流体を供給または排出することができる。したがって、殺菌装置をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る容器殺菌装置の実施例を示す構成図である。
図2】挿入体を示す側面部分断面図である。
図3図2に示すA-A端面図である。
図4A】容器殺菌装置における挿入体の挿脱、紫外線照射、殺菌用流体の供給の動作1を示すタイミングチャートである。
図4B】容器殺菌装置における挿入体の挿脱、紫外線照射、殺菌用流体の供給の動作2を示すタイミングチャートである。
図4C】容器殺菌装置における挿入体の挿脱、紫外線照射、殺菌用流体の供給の動作3を示すタイミングチャートである。
図5A】本発明に係る容器殺菌装置を具備した紙パック容器充填設備を示すブロック図である。
図5B】本発明に係る容器殺菌装置を具備した成形充填設備を示すブロック図である。
図6】他の容器殺菌装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施例1]
以下、本発明の実施例を図1図3に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、容器Pを間欠的に殺菌部11に搬送する容器搬送部12と、殺菌部11に搬送された容器P内に、上面の開口部を介して挿入・離脱される挿入体10と、この挿入体10を容器Pに挿入・離脱する殺菌挿入部13と、挿入体10に設けられた紫外線光源14と、紫外線光源14に殺菌に必要な出力の紫外線を照射するための電力を供給する光源用電源15と、容器P内に殺菌用流体Gを流送する流体供給部(殺菌用流体供給手段)16と、紫外線光源14の温度を所定範囲に制御する光源温度制御部17と、これら容器搬送部12、殺菌挿入部13、光源用電源15と、流体供給部16および光源温度制御部17をそれぞれ制御する殺菌用コントローラ18とを具備している。
【0018】
(容器搬送部)
容器Pは、図1図3に示すように、たとえば平面視が矩形状で平面が開放された紙パック容器である。容器搬送部12は、容器Pを順次、間欠的に殺菌部11に搬送するコンベヤ装置21と、殺菌部11に搬送された容器Pを検出する容器センサ22と、容器センサ22の検出信号に基づいて殺菌用コントローラ18により制御される容器搬送制御部23とを具備し、容器搬送制御部23によりコンベヤ装置21のコンベヤ駆動モータ24が制御される。なお、容器Pの処理速度が速い(処理量が多い)場合には、連続搬送される容器Pに追従して挿入体10や殺菌挿入部13などを連続的に移動させるように構成してもよい。もちろん、容器Pと挿入体10や殺菌挿入部13などを円形経路に沿って移動させ、円形経路の搬送中に挿入体10を容器Pに挿入して殺菌するロータリ式に構成することもできる。
【0019】
なお、容器Pは、紙パック容器に替えて、ペットボトルなどの樹脂製容器、ガラス製容器、スチール製容器、アルミ製容器、紙とアルミ箔の複合材容器、ブロー成型前のプリフォーム体であってもよい。
【0020】
(挿入体)
図2図3に示すように、挿入体10は、本体部30と、本体部30の四つの外側面および下端面にそれぞれ所定間隔をあけて設置された複数の紫外線光源14と、本体部30の上端部外周に配置されて殺菌用流体Gを挿入体10と容器Pとの間の殺菌通路31に吹き込む複数の流体ノズル32と、本体部30の軸心部に形成されて下端面(先端部)に開口され殺菌用流体Gを流送、回収する流体通路33と、すべての紫外線光源14を覆い殺菌用流体Gから遮蔽する遮蔽カバー34と、本体部30に冷却媒体を供給する光源温度制御部17の冷却通路35と、を具備している。
【0021】
本体部30は、平面視の断面が容器P内と相似形で小さい四角柱に形成されている。これにより、容器P内面と挿入体10の間に略一定の殺菌通路31を形成して、挿入体10が容器P内に挿入・離脱可能となっている。そして本体部30は、材質として耐食性の高いステンレス鋼などの金属や、セラミックスが使用される。ここで、本体部30を容器本体の断面形状に対応して、円柱形や多角柱形に形成することもできる。
【0022】
紫外線光源14は、ここではLED光源が使用される。これら紫外線光源14は小型化が可能で容器P内に挿入可能な小型の光源であればよく、ガス放電ディバイスなどであってもよい。また隣接する紫外線光源14は、所定の隙間をあけて本体部30の表面に設置されている。そして本体部30の表面の露出を避けて結露などによる腐食を防止するために、紫外線光源14と紫外線光源14の間の本体部30の表面に外装材36が取付けられている。この外装材36には、使用状況に合わせて、断熱材やヒータなどを内在した加熱部材、断熱材と加熱部材との組合せから選択される。
【0023】
殺菌用流体Gは、腐食性を有する酸性ガスまたは酸性ミストなどの酸化剤であり、種類として過酸化物、塩素化合物、アルキル化剤などのガス、ミスト、液体である。またガスの例としては、オゾン、過酸化水素、過酢酸、酸化エチレン、ホルムアルデヒド、酸化プロピレンなどの単独ガスまたは2種類以上の混合ガスが使用される。
【0024】
また流体通路33の内周面に内装材37が全面にわたって設けられている。この内装材37は、断熱材や耐食材のコーティング層からなり、回収された殺菌用流体Gの結露による腐食を防止することができる。なお、結露防止のために、内装材37にヒータなどが内在された加熱部材を設けることもできる。
【0025】
なお、ここで流体通路33は、軸心部に1本を形成したが、小径断面の流体通路33を複数本、軸心方向に沿って形成することもできる。
【0026】
遮蔽カバー34は、殺菌効果の高い波長260nm付近の紫外線の透過を許容し、かつ殺菌用流体Gに対する耐食性(耐酸性)が高い材質が選択される。たとえば石英ガラスやフッ素樹脂、サファイヤガラス、フッ化カルシウム(蛍石)などである。この遮蔽カバー34により、流体通路33の開口部を除く下端面と周囲側面がそれぞれ覆われる。また、遮蔽カバー34と紫外線光源14の間や、外装材36と遮蔽カバー34との間に、それぞれ空隙が形成され、空隙の断熱効果により遮蔽カバー34の表面の結露が防止されている。さらに遮蔽カバー34は、本体部30との取付部にゴム製シール材(ゴムフランジ)を介在させて、遮蔽カバー34の空隙部のシール性を確保している。
【0027】
なお、遮蔽カバー34内の空隙部に乾燥用エアを封入したり、または乾燥用エアを循環させることもでき、これにより遮蔽カバー34の表面の結露が効果的に防止される。
【0028】
また遮蔽カバー34の表面に、酸化チタンなどの光触媒層を形成することもできる。たとえば殺菌用流体Gが過酸化水素ガスである場合、紫外線によりヒドロキシルラジカル化するが、光触媒によりヒドロキシルラジカルの発生量を増大させ、殺菌効果を増加させることができる。また光触媒により、紫外線を吸収する酸性の水滴を分解して、紫外線光源14の紫外線の減衰を防止することができる。
【0029】
上記容器殺菌装置の実施例では、殺菌用流体Gの漏出による他の機器や装置類の腐食を防止するために、図1に仮想線で示すように、挿入体10および殺菌挿入部13を含む容器殺菌装置を覆う防食カバー61が設けられている。この防食カバー61の配置域内の雰囲気ガスが吸引、排出または吸引、浄化、循環されている。そして防食カバー61内の雰囲気が負圧に保持されることにより、殺菌用流体Gの漏出が防止される。また仮想線で示すように、容器Pの開口部を覆う漏出防止蓋62を設けて、殺菌用流体Gが容器P外に漏出するのを防止することができ、殺菌用流体Gが液体の場合に、特に有効である。
【0030】
(光源温度制御部)
冷却通路35は、紫外線光源14がLED光源の場合、紫外線を長時間照射すると、LED光源の発熱により温度が上昇し出力が低下するため、LED光源を冷却する必要がある。一方、LED光源を過剰に冷却すると、LED光源の周辺部材に結露が発生し、腐食の原因となったり、紫外線が水分に吸収されて紫外線量が低下する。このため、紫外線光源14の温度を一定範囲に保持する光源温度制御部17が設けられる。すなわち図1に示すように、光源温度制御部17は、本体部30の紫外線光源14近傍に、熱電対などの光源用温度センサ41を設けている。そして光源用温度センサ41の検出値に基づいて、光源用温度コントローラ40により冷媒循環ポンプ42を駆動制御するとともに冷媒冷却装置43を操作する。さらに冷媒タンク44から冷却通路35の往路穴35aから復路穴35bに温度制御された冷却媒体を供給し循環させる。
【0031】
なお、冷却媒体による冷却方法として、たとえば冷却エアを使用する空冷と、冷却水等が使用される水冷がある。それぞれを単独で用いることができるが、空冷と水冷を併用することもできる。また通電により冷却/加熱可能なペルチェ素子などと併用することもできる。
【0032】
ここで、紫外線光源14がLED光源の場合、たとえば20℃±5℃となるように制御される。これにより、長時間の紫外線照射により紫外線光源14の出力が低下することがなく、長時間の運転でも安定した紫外線出力を得ることができる。
【0033】
また、光源温度制御部17では、光源用温度センサ41によりLED光源の温度を測定し、光源温度制御部17でLED光源の照度を計算して、照度が規定値以下とならないように光源用電源15と冷媒循環ポンプ42により冷却機能を調整することもある。この冷却機能の調整では、たとえばLED光源の温度が低い場合には、LED光源の電流量を一時的に増大させて温度を上昇させる。LED光源の温度が高い場合には、冷却媒体による冷却能力を上げるなどによって調整される。さらに、殺菌用流体Gが温かいときに、遮蔽カバー34の表面が結露してしまうこともある。その際も光源温度制御部17によって、温度制御することで結露を防止することができる。
【0034】
(殺菌挿入部)
殺菌挿入部13は、図1に示すように、支持部材51に沿って一対の昇降レール52が敷設され、昇降レール52に昇降体53が昇降自在に案内されている。また支持部材51には、昇降レール52に平行なねじ軸55を回転駆動する昇降モータ54が設けられ、昇降体53には、ねじ軸55に螺合する雌ねじ部材56が設けられている。そして昇降体53と挿入体10が連結部材57で連結されている。また昇降モータ54には、挿入体10の挿入位置を検出する挿入センサ(ロータリエンコーダまたは非接触検出器)58が設けられている。したがって、挿入センサ58の検出信号に基づいて、殺菌用コントローラ18の制御信号により挿入制御部50を介して昇降モータ54が駆動制御され、ねじ軸55および雌ねじ部材56を介して挿入体10が容器P内に挿入、離脱される。
【0035】
(殺菌動作)
次に本発明の容器殺菌装置の動作を、図4Aを参照して説明する。
【0036】
この容器殺菌方法は、挿入体10が容器P内に挿入される挿入工程、および挿入体10が挿入の限界位置で停止される停止工程、ならびに前記挿入体10が容器P内から離脱される離脱工程の少なくとも一つで、A.容器内に殺菌用流体を供給すること、B.前記挿入体に設けられた紫外線光源から殺菌用の紫外線を容器内に照射すること、をAからBに順次、またはBからAに順次、あるいはAとBとを同時に行うものである。下記の容器殺菌方法では、挿入工程と停止工程と離脱工程で、AとBとを同時に行う殺菌動作を採用している。
【0037】
(1)容器Pが殺菌部11に停止されると、容器センサ22の検出信号に基づいて、殺菌用コントローラ18の制御信号により、挿入制御部50が操作されて挿入体10が下降され容器P内に挿入される(挿入工程)。
【0038】
(2)挿入体10が容器P内に挿入されると、挿入の限界位置(下降端)までの間で、挿入センサ58の検出信号に基づいて殺菌用コントローラ18の制御信号により、光源用電源15がオンされて紫外線光源14から紫外線が容器Pの内面に照射されると共に、流体供給部16がオンされて流体ノズル32から殺菌通路31に殺菌用流体Gが供給される。
【0039】
(3)殺菌用流体Gは、殺菌通路31から容器P内の底部に送られ、さらに本体部30の開口部から流体通路33に回収される。この時、殺菌通路31では、殺菌用流体Gの酸性条件と紫外線の照射により、反応性が高く酸化力が強いヒドロキシルラジカル(・OH)が生成される。これにより容器Pの内面が効果的に殺菌される。
【0040】
(4)殺菌挿入部13により挿入体10が挿入の限界位置に達した停止工程において、挿入体10が殺菌に必要な所定の時間だけ停止され、殺菌用流体Gの供給と紫外線の照射による容器P内の殺菌が継続される(停止工程)。その後、挿入体10が上昇されて容器P内から離脱される(離脱工程)。挿入体10の上昇途中で挿入センサ58の検出信号に基づいて殺菌用コントローラ18の制御信号により、光源用電源15がオフされて紫外線の照射が停止されると共に、流体供給部16がオフされて殺菌用流体Gの供給が停止される。
【0041】
(他の殺菌動作)
図4Aでは、挿入工程、停止工程、離脱工程でそれぞれ紫外線の照射と殺菌用流体Gの供給を同時に行ったが、図4Bに示すように、挿入工程、停止工程、離脱工程で、最初に殺菌用流体Gを供給し、所定時間後に紫外線を照射し、殺菌用流体Gの供給と紫外線の照射とを、一部で重複して行うこともできる。また図4Cに示すように、最初に殺菌用流体Gを供給し、所定時間後に殺菌用流体Gの供給を停止した後、紫外線の照射を開始してもよい。これは紫外線の照射と殺菌用流体Gの供給が重複しなくても、殺菌用流体Gが殺菌通路31に十分に残留しており、紫外線の照射によりヒドロキシルラジカル(・OH)の生成を行うことができるためである。さらに紫外線の照射と殺菌用流体Gの供給とを交互に複数回繰り返して行うこともできる。さらにまた、最初に紫外線を照射し、その後に殺菌用流体Gを供給しても、殺菌効果が期待できる。
【0042】
なお、図4A図4Cでは、挿入工程~離脱工程にわたって紫外線の照射と殺菌用流体Gの供給を行ったが、十分に殺菌効果が得られる場合には、挿入工程、停止工程、離脱工程、挿入工程と停止工程、停止工程と離脱工程、挿入工程と離脱工程のいずれかで、紫外線の照射と殺菌用流体Gの供給を行ってもよい。すなわち、挿入体10が容器P内に挿入される挿入工程および前記挿入体10が容器P内から離脱される離脱工程の少なくとも一つで、A.容器P内に殺菌用流体Gを供給すること、B.挿入体10に設けられた紫外線光源から殺菌用の紫外線を容器内に照射すること、をAからBに順次、またはBからAに順次、あるいはAとBとを同時に行うことができる。
【0043】
また、図4A図4Cでは、挿入体10が容器P内に挿入される(挿入開始)と同時に紫外線の照射を開始しているが、挿入工程の開始時、すなわち挿入体10の容器P内への挿入前で挿入(下降)動作の開始と同時に、殺菌用流体Gの供給や紫外線の照射を開始してもよい。また、離脱工程の完了時、すなわち挿入体10の容器P外への離脱後で離脱(上昇)動作が完了するまで、殺菌用流体Gの供給や紫外線の照射を継続してもよい。
【0044】
さらに、上記停止工程を挿入体10の挿入の限界位置としたが、挿入工程の途中や離脱工程の途中の一方または両方に設定することができる。この場合、たとえば肩部のあるような容器で、挿入体10の挿入途中または離脱途中で、殺菌に多くの時間が必要な場合に効果がある。
【0045】
(実施例の効果)
上記構成において、流体供給部16により殺菌用流体Gを容器P内に供給する殺菌手段と、紫外線光源14により容器P内に紫外線を照射する殺菌手段とを、順次(交互に)または同時におこなうことができるので、本発明の容器殺菌装置をコンパクトに構成することができ、紫外線と殺菌用流体Gとにより、反応性が高く酸化力が強いヒドロキシルラジカルを生成することができて、容器内の殺菌や残留殺菌用流体の分解を効果的に行うさらに遮蔽カバー34を設けたことにより、殺菌用流体Gを遮蔽して、紫外線光源14の腐食を防止することができ、紫外線光源14の寿命を延ばすことができる。さらにまた、遮蔽カバー34の表面に光触媒層を形成することにより、殺菌用流体Gの凝縮物による紫外線の吸収を防ぎ、またヒドロキシルラジカル化を促進して殺菌効果を増加させることができる。さらに上記実施例により、殺菌用流体Gの使用量を減らすことができるので、殺菌用流体Gの廃棄量が減らせて環境負荷を低減でき、廃棄コストの削減や殺菌用流体Gのコストの削減、容器P内に殺菌用流体Gが残留するリスクの低減、殺菌用流体Gを除去する工程の簡素化などの効果を奏することができる。
【0046】
さらに光源温度制御部17により、紫外線光源14を所定範囲に温度管理するので、紫外線の出力を安定して保持することができる。また、本体部30の流体通路33の内面に、断熱材や耐食材のコーティング層からなる内装材37を設けたことにより、殺菌用流体Gによる腐食を効果的に防止することができる。また内装材37に加熱部材を設けたことにより、殺菌用流体Gの凝縮による露点腐食を防止することができる。
【0047】
さらに本体部30に形成された流体通路33と、容器Pと挿入体10との間に形成される殺菌通路31との間で、殺菌用流体Gを流送することにより、挿入体10をコンパクトに構成することができる。
【0048】
(充填設備1)
図5Aを参照して、本発明に係る容器殺菌装置72を備えた紙パック容器充填設備1を説明する。この充填設備は、紙パック容器Pの形成用紙シートを折り曲げて糊付けし、開口部を開放したパック状に形成する紙パック成形装置71と、容器殺菌装置72と、紙パック容器Pの内面をクリーニングする内面クリーニング装置73と、内容液を紙パック容器Pに充填する充填装置74と、紙パック容器Pの開口部を閉鎖する開口部閉鎖装置75、とが順次配置され、紙パック容器Pに内容液が充填される。内面クリーニング装置73は、殺菌用流体Gが過酸化水素ガスである場合、加熱エアを吹き付けて残留ガスを除去する。開口部閉鎖装置75から送り出された紙パック容器Pは、ラベル塗布装置76によりラベルの塗布や印字が行われ、検査装置77で異物や漏れなどが検査された後、箱詰めされて出荷される。
【0049】
(充填設備2)
図5Bを参照して、本発明に係る容器殺菌装置81を備えた成型充填設備2を説明する。ここで容器Pは、製品容器をブロー成型するためのプリフォーム体Pである。この成型充填設備は、プリフォーム体Pの内面を殺菌する本発明に係る容器殺菌装置81と、プリフォーム体Pをブロー成型して製品容器を形成するブロー成型機82と、製品容器を洗浄する容器洗浄機83と、製品容器に内容液を充填する充填装置84と、製品容器の開口部にキャップを装着するキャッピング装置85と、が順次配置され、プリフォーム体Pが成型された製品容器に内容液を充填することができる。キャッピング装置85から送り出された製品容器は、ラベル塗布装置86でラベルの塗布や印字が行われ、検査装置87で異物や漏れなどが検査された後、箱詰めされて出荷される。
【0050】
[他の実施例]
実施例1において、殺菌用流体Gの供給を殺菌通路31から流体通路33に流送したが、図6に示すように、殺菌用流体Gを流体通路33から容器P内に供給し、殺菌通路31を通って殺菌した後、回収するように構成することもできる。このように、殺菌用流体Gの流送順序は、殺菌用流体Gの性質に応じて適宜選択することができる。図6の構成では、流体通路33の開口部に、拡散部材91を設置する。この拡散部材91は、たとえばセラミック繊維を膜状に形成した拡散膜や、小さいフィンが多数組み合わされた拡散フィンが使用される。この拡散部材91により、殺菌用流体Gを容器P内に均一に吹き付けて効果的な殺菌を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
P 容器/紙パック容器/プリフォーム体
G 殺菌用流体
10 挿入体
11 殺菌部
12 容器搬送部
13 殺菌挿入部
14 紫外線光源
15 光源用電源
16 流体供給部(殺菌用流体供給手段)
17 光源温度制御部
18 殺菌用コントローラ
30 本体部
31 殺菌通路
32 流体ノズル
33 流体通路
34 遮蔽カバー
35 冷却通路
36 外装材
37 内装材
72 容器殺菌装置
81 容器殺菌装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6