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  • 特許-シールドマシンの後続設備の配置方法 図1
  • 特許-シールドマシンの後続設備の配置方法 図2
  • 特許-シールドマシンの後続設備の配置方法 図3
  • 特許-シールドマシンの後続設備の配置方法 図4
  • 特許-シールドマシンの後続設備の配置方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】シールドマシンの後続設備の配置方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
E21D9/06 301Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018036097
(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2019151983
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飯村 英之
(72)【発明者】
【氏名】相田 宗行
(72)【発明者】
【氏名】三好 新
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-98883(JP,A)
【文献】特開2009-235694(JP,A)
【文献】特開昭61-106897(JP,A)
【文献】特開平11-217999(JP,A)
【文献】特開2007-314939(JP,A)
【文献】特開平2-183088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0194957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの立坑からシールドマシンを発進させて少なくとも2つのトンネルを構築するときのシールドマシンの後続設備の配置方法であって、
前記2つのトンネルのうち最初に構築する第1のトンネルはシールドマシンの後方に後続設備を牽引せず立坑近傍の地上ヤード又は前記立坑内に設けた作業床上に仮置きした状態で到達させた後、
前記後続設備を前記第1のトンネル内に配置した状態からシールドマシンに牽引されて第2のトンネルを構築すること
を特徴とするシールドマシンの後続設備の配置方法。
【請求項2】
前記後続設備が前記第2のトンネル構築のためのシールドマシンによって牽引される順序で第1のトンネル内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のシールドマシンの後続設備の配置方法。
【請求項3】
前記後続設備は軌条を移動可能な複数の台車と設備とによって構成され、
前記設備は前記台車に搭載されていることを特徴とする請求項2に記載のシールドマシンの後続設備の配置方法。
【請求項4】
前記後続設備が前記第2のトンネル構築のためのシールドマシンによって牽引される際、前記第1のトンネルの前記軌条が前記第2のトンネル内に敷設した軌条と連続していることを特徴とする請求項3に記載のシールドマシンの後続設備の配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドマシンの後続設備の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド工法は、地中に立坑と呼ばれる空間を構築し、立坑内に架台や発進用エントランス、反力壁といった諸設備を設け、架台上部でシールドマシンを組み立て、シールドマシンの後続設備を設置後、マシンを発進させる。
後続設備は、シールド掘進やセグメント組み立て、裏込め注入といったシールド工法の一連の施工に必要な設備であり、例えば泥水や泥土を圧送するためのポンプや操作のための運転室、動力となるパワーユニット等、適用するシールドマシンの要求性能や規模に応じて必要な設備が適切に計画・配置される。
【0003】
これら後続設備はシールドマシンに牽引される後続台車上に搭載されることで、シールドマシンと連動してトンネル内に敷設された軌条上を走行することができる。しかし、少なくともトンネルが全ての後続台車を収納できる程度の延長に達するまでは、立坑近傍の地上ヤードや立坑内に設けた作業床に仮置きされる。この仮置きの間、シールドマシンと各後続設備とは、変形に対して柔軟な素材のケーブルや管によって接続され、シールドマシンの掘進に応じて、仮置きしておいたこれらケーブルや管を順次送り出したり、シールドマシンを一時停止させた上で、延長用のケーブルや管などを接続する。
この後続設備を牽引しない状態におけるシールドマシンによる掘進を「初期掘進」、牽引後の掘進を「本掘進」、初期掘進から本掘進への後続設備の再配置等を「段取替え」と呼んでいる。
【0004】
初期掘進の際、立坑を除く地上ヤードにスペースがある場合は、後続設備を地上ヤードの立坑近傍に仮置きするが、特許文献1のように、都市部で地上設備のために広い空間を確保できないような場合は、立坑内に仮設の作業床を複数段設け、これらに後続設備を仮置きする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-279597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、1つの立坑から複数のトンネルを構築する場合、トンネル構築ごとに後続設備を地上ヤードや立坑近傍に配置するのでは、その都度大掛りな段取替えが必要になり、トンネル構築後にマシンに牽引された後続設備を立坑外に一旦搬出し、次のトンネル構築の初期掘進のために、再び地上ヤードや作業床等への配置が必要になる。
さらに、トンネルごとに後続設備を変える場合は、先行のトンネル構築に使用した設備を次のトンネル構築のために全て流用できず、設備の入れ替えや設備配置の順序変更等も合わせて発生する場合がある。
【0007】
本発明は、1つの立坑から複数のトンネルを構築するときの効率的なシールドマシンの後続設備の配置方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明のシールドマシンの後続設備の配置方法は、1つの立坑からシールドマシンを発進させて少なくとも2つのトンネルを構築するときのシールドマシンの後続設備の配置方法であって、前記2つのトンネルのうち最初に構築する第1のトンネルはシールドマシンの後方に後続設備を牽引せず立坑近傍の地上ヤード又は前記立坑内に設けた作業床上に仮置きした状態で到達させた後、前記後続設備を前記第1のトンネル内に配置した状態からシールドマシンに牽引されて第2のトンネルを構築することを特徴とする。
【0009】
本発明のシールドマシンの後続設備の配置方法は、前記後続設備が第2のトンネル構築のためのシールドマシンによって牽引される順序で第1のトンネル内に配置されていても良く、前記後続設備は軌条を移動可能な複数の台車と設備とによって構成され、前記設備は前記台車に搭載されていても良い。
さらに、前記後続設備が前記第2のトンネル構築のためのシールドマシンによって牽引される際、前記第1のトンネルの前記軌条が前記第2のトンネル内に敷設した軌条と連続していても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシールドマシンの後続設備の配置方法によれば、1つの立坑から少なくとも2つのトンネルを構築するとき、全てのトンネル構築に必要なシールドマシンの後続設備を共有し、かつ、第1のトンネル構築のためのシールドマシン発進から到達に至るまで、後続設備を地上ヤード又は立坑内に設けた作業床上に仮置きしたままの状態、いわゆる初期掘進の状態のまま到達させることで、本掘進への後続設備を段取替えを必要としない。
また、第1のトンネルの到達後、第1のトンネル構築に使用した後続設備を直接第1のトンネル内に移動することができる。
また、第1のトンネル内に配置される後続設備が第2のトンネルの構築のためのシールドマシンによって牽引される順序であれば、各設備の入れ替えを行うことが不要となる。
また、仮置きの状態から後続設備を構成する設備がトンネル内の軌条を移動可能な後続台車に搭載されていればより効率的である。
さらに、第一のトンネルと第二のトンネル内に配置される軌条が連続していれば、第二のトンネル構築の際、シールドマシンが後続台車をスムーズに牽引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の立坑と2つのトンネルの断面図である。
図2】本実施形態の第1のトンネル構築のためのシールドマシンの発進準備設備を示す断面図である。
図3】本実施形態の第1のトンネルの到達時点を示す断面図である。
図4】本実施形態の後続設備を第1のトンネル内に配置し、第2のトンネル構築のためのシールドマシンの発進準備設備を示す断面図である。
図5】本実施形態の第2のトンネル構築のためのシールドマシンが後続設備を牽引している状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシールドマシンの後続設備の配置方法に係る本実施形態に基づき、図1乃至図5を用いて詳述する。
【0013】
図1は、本実施形態の立坑とその立坑からシールドマシンを発進して構築する2つのトンネルの断面図を示す。
立坑3は深礎工法により円筒形状に構築された壁体31と底版32とによって形成される。壁体31のリングコンプレッション効果により切支保工を不要としている。
立坑1から発進されたシールドマシンにより、第1のトンネル1および第二のトンネル2が構築されるが、このうち第1のトンネル1は、シールドマシンが後述する後続設備を牽引しない状態(以降、「初期掘進」という。)のまま到達できる延長であり、第2のトンネル2は、シールドマシンが後述する後続設備を牽引した状態(以降、「本掘進」という。)でなければ到達できない延長を有するものとする。
【0014】
図2は、第1のトンネル1構築のためのシールドマシン4の発進準備設備を示す断面図である。
底版32上に発進架台41、発進エントランス42および反力壁43を順次架設した後、複数に分割して搬入した部材を立坑3内に投入してシールドマシン4を組み立て、立坑3の所定の深度に作業床44,44・・・を架設する。
作業床44,44・・・上に、後続設備5を仮置きする。後続設備5は、設備51,51・・・と台車52,52・・・とによって構成され、設備51,51・・・は台車52,52・・・上に搭載される。設備51,51・・・に接続されたケーブル・管類45は、シールドマシン4の各所に配設され、シールドマシン4の発進準備が整う。
この他、流体輸送設備(泥水式シールド工法の泥水循環設備他に相当)や加泥プラント設備(泥土圧式シールド工法の作泥設備他に相当)、裏込め注入設備、セグメント搬送設備等の地上および立坑内設備の説明はここでは省略する。
【0015】
図3は、本実施形態の第1のトンネル1の到達時点を示す断面図である。後続設備5は本掘進への段取り替えを行わず、初期掘進の状態のまま到達される。
【0016】
図4は、本実施形態の後続設備5を第1のトンネル1内に配置し、第2のトンネル2の構築のためのシールドマシン6の発進準備設備を示す断面図である。
第1のトンネル1の構築時に使用した後続設備5を第2のトンネル2の構築のためのシールドマシン6から牽引される順序で第1のトンネル1内の軌条11の上に配置する。軌条11は、第1のトンネル1内には予め敷設しておく。
前記と同様に、底版32上に発進架台61、発進エントランス62および反力壁63を順次架設した後、複数に分割して搬入した部材を立坑3内に投入してシールドマシン6を組み立てる。
【0017】
図5は、本実施形態の第2のトンネル2構築のためのシールドマシン6が後続設備を牽引している状況を示す断面図である。
シールドマシン6によって構築された第2のトンネル2内には順次軌条21を敷設する。軌条21と軌条11とを連続して連結すれば、第1のトンネル1内に配置しておいた後続設備5をシールドマシン6から直接かつ連続的に牽引することができる。
【0018】
本発明のシールドマシンの後続設備の配置方法によれば、1つの立坑から少なくとも2つのトンネルを構築するとき、全てのトンネル構築に必要なシールドマシンの後続設備を共有し、かつ、第1のトンネル構築のためのシールドマシン発進から到達に至るまで、後続設備を立坑近傍の地上ヤード又は立坑内に設けた作業床上に仮置きしたままの状態、いわゆる初期掘進の状態のまま到達させることで、本掘進への後続設備を段取替えを必要としない。
また、第1のトンネルの到達後、第1のトンネル構築に使用した後続設備を直接第1のトンネル内に移動することができる。
また、第1のトンネル内に配置される後続設備が第2のトンネルの構築のためのシールドマシンによって牽引される順序であれば、各設備の入れ替えを行うことが不要となる。
また、仮置きの状態から後続設備を構成する設備がトンネル内の軌条を移動可能な後続台車に搭載されていればより効率的である。
さらに、第一のトンネルと第二のトンネル内に配置される軌条が連続していれば、第二のトンネル構築の際、シールドマシンが後続台車をスムーズに牽引することができる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、トンネルが3つ以上あっても良い。また、第1のトンネル構築時の後続設備が作業床上ではなく、地上ヤード上にあっても良い。
【符号の説明】
【0020】
1 第1のトンネル
2 第2のトンネル
3 立坑
4 シールドマシン(第1のトンネル構築用)
44 作業床
5 後続設備
51 設備
52 台車
6 シールドマシン(第2のトンネル構築用)
7 地上ヤード
図1
図2
図3
図4
図5