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  • 特許-トンネル用防水シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】トンネル用防水シート
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
E21D11/38 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018044850
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019157471
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 知
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-147821(JP,A)
【文献】実開平03-065798(JP,U)
【文献】特開2014-224430(JP,A)
【文献】特開平06-050917(JP,A)
【文献】特開平06-336755(JP,A)
【文献】実開昭53-041830(JP,U)
【文献】特開2017-117146(JP,A)
【文献】特開平06-129192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0053036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの一次覆工と二次覆工の間に配設されるトンネル用防水シートであって、
二次覆工のコンクリート打設高さを示すマーキングがシートに印刷されていることを特徴とするトンネル用防水シート。
【請求項2】
前記マーキングは同一柄もしくは同一色のマーキングが所定のコンクリート打設高さ毎に配置され、任意の間隔に異なる柄または色が配置され、異なる柄または色毎に防水シートを切断して使用することができることを特徴とする、請求項1に記載のトンネル用防水シート。
【請求項3】
前記マーキングに蛍光塗料を使用することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のトンネル用防水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル用防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
NATM工法で施工した山岳トンネルでは、トンネル覆工の周囲に防水シートを設けて、トンネル内部に水が浸透しないようにする。
NATM工法は、地山にコンクリートを吹付けた後の吹付けコンクリート(一次覆工)面に防水シートを固定し、防水シート面と所定間隔でセントルと呼ばれる型枠を配置し、覆工空間を形成し、その覆工空間にコンクリートを打設して覆工コンクリート(二次覆工)を構築する。
覆工空間にコンクリート打設する際は、セントルの天端部や側壁部に設けた打設孔等の開口部にコンクリート打設管を挿入して、コンクリートを圧送して行われる。
さらに、覆工空間に流し込んだコンクリートは、打設孔や検査窓からバイブレーターをコンクリートへ挿入して締め固めする必要がある。バイブレーターは、バイブレーターの出力により締固めが可能な範囲があり、適切な間隔で挿入する必要がある。そのため、コンクリートの圧送は、所定のコンクリート打設高さ毎に圧送を止め、水平垂直方向共に所定の間隔でバイブレーターを挿入し、適切にコンクリートの締固め作業をする必要がある。
従来は、コンクリート打設高さは鋼製のセントルを内側から木槌で打撃し、その音の違いから充填高さの確認をしていた。この確認方法は、打撃を行わないと確認することが出来無いため時間がかかり、施工が煩雑となる、
また、検査窓から覆工空間の視認することができるが、正確な高さを確認することは出来ない。
特許文献1では、セントルにコンクリートの充填を感知するセンサを配置し、充填状況を把握できる装置が開示されているが、多数のセンサをセントル型枠に配置して、それらを制御する装置、PC、ディスプレイ等が必要となるだけではなく、センサはコンクリートに触れるため、セントルをコンクリートから脱型した後に、清掃を丹念に行わないと正確な計測を行うことが出来ない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-030900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、覆工空間内のコンクリート打設高さの管理を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1.トンネルの一次覆工と二次覆工の間に配設されるトンネル用防水シートであって、 二次覆工のコンクリート打設高さを示すマーキングがシートに印刷されていることを特徴とするトンネル用防水シート。
2.前記マーキングは同一柄もしくは同一色のマーキングが所定のコンクリート打設高さ毎に配置され、任意の間隔に異なる柄または色が配置され、異なる柄または色毎に防水シートを切断して使用することができることを特徴とする、1に記載のトンネル用防水シート。
3.前記マーキングに蛍光塗料を使用することを特徴とする、1または2に記載のトンネル用防水シート。
【発明の効果】
【0006】
本願発明のトンネル用防水シートによれば、トンネル二次覆工コンクリートの打設高さ管理を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に関わる、トンネル構造を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に関わる、施工状況を示す概観図である。
図3】本発明の実施形態に関わる、施工状況を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に関わる、防水シートを示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に関わる、印刷装置を示す概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明のトンネル用防水シートによれば、コンクリートの打設高さ管理を容易に行うことができる。
本発明のトンネル用防水シートには、二次覆工のコンクリート打設高さを示すマーキングがシートに印刷されている。一次覆工が完了した後に一次覆工面に防水シートを固定すると、マーキング位置が打設高さとなる。
セントルを配置したあと、防水シートとセントルの間には、覆工空間が形成され、覆工空間にコンクリートを打設する際は、防水シートに印刷されたマーキング毎にバイブレーターをかけ締固め作業を行えば良い。
作業員はコンクリートを打設する際に、防水シートに印刷されたマーキングを視認しながらコンクリートの圧送量を調整できるため、打設高さの管理が容易となる。
【0009】
以下、図を用いて説明する。
図1は、本発明のトンネル用の防水シート4を用いたトンネル1の施工時の状況を示す断面図であり、二次覆工のコンクリートの打設途中の状況である。
本実施例はトンネルの掘削方法として一般的なNATM工法で施工した場合を例に説明する。先ず、地山Gを掘削してトンネル1を形成する。掘削方法は、発破または、掘削機械によって掘削する。
掘削後は直ちにアーチ状の鋼製支保工(図示せず)を建て込み、鋼製支保工を配設した状態でトンネル壁面にコンクリートを吹き付けることで一次覆工2を形成する。
一次覆工2の形成後、防水シート4を一次覆工2に沿って張設していく。防水シート4の固定方法は公知の方法で行えばよく、特開昭58-127900号公報や、特開2006-70656号公報などに開示されているものを使用して高所作業車などを用いて施工を行う。
防水シート4を固定した後に、セントル型枠5を配置して覆工空間3を形成し、二次覆工のコンクリート31の打設を開始する。コンクリートの打設は、セントル型枠5に予め取り付けれられた配管からコンクリートが流し込まれ、セントル型枠5に設けられた開口からバイブレーターを挿入して締め固め作業を行う。この時、コンクリートの打設作業を行う作業員は、開口からコンクリートの流し込まれる量(コンクリート打設高さ)を管理する必要があり、防水シート4に記されたマーキング41を視認しながら流し込むコンクリートの量を調整することで容易に打設高さを管理することができる。
【0010】
図2は、防水シート4を固定する時の施工状況を示した図である。帯状のシートをトンネル1の大きさに合わせて予め所定の長さに切断した防水シート4を中央部に向けて両端から巻いた状態で施工場所に持ち込む。
まずトンネル1の天端11から固定し、防水シート4の両端巻いた状態から、徐々に展開しながら固定する。この作業をトンネル1のトンネル軸方向に繰り返し行い、防水シート4の隣接する端部を溶着することでトンネル1の全体を防水シート4で覆うことができる。
【0011】
防水シート4を固定した後、セントル型枠5を所定の箇所に配置して形成した覆工空間3にコンクリートを流し込み、二次覆工を形成する。
図3は、コンクリート打設時の状況の詳細を示す斜視図である。
覆工空間3にコンクリートを流し込む際は防水シート4に記されたマーキング41を目印にしてコンクリート量(打設高さ)を管理する。セントル型枠5に設けられた開口51から作業員はコンクリート量を直接視認することができる。その後、開口51からバイブレーター6を挿入してコンクリートの締固め作業を行う。締固め作業が完了したら、再度コンクリートを覆工空間3に流し込む。その際は、下層の施工と同様にマーキング41を視認しながらコンクリート量を管理する。これを順次繰り返して二次覆工を形成する。
締固め作業は打設高さ50cm毎に行うことが多く、マーキング41の間隔は50cmであることが良い。打設高さは使用するコンクリートや施工条件等に応じて決められるものであるので、限定されるものではない。
また、コンクリートの打設高さの管理はトンネル肩部13より下、トンネル脚部12で行うことが多いので、マーキング41はトンネル脚部12の範囲にあれば良い。
さらに、マーキング41はトンネル軸方向に連続していなくてもよく、例えば、マーキング41が印刷された防水シート4とマーキング41の印刷されていない防水シート4を交互に使用しても、コンクリートの打設高さ管理には支障はない。
【0012】
図4には防水シート4に印刷したマーキング41の実施例を示す。
防水シート4は帯状のシートを、施工するトンネルの断面形状に合わせた長さにする必要がある。図4(a)の場合、防水シート4を所定の長さに切断した後に、防水シート4の両端部にマーキング41を打設高さの間隔に印刷していく。実施例では0.5m毎にマーキング41を記した。
マーキング41は覆工空間内の視認性を向上させるため、蛍光塗料や蓄光塗料を使用するのが良い。覆工空間内は照明など設置されず、外部からの照明に頼る他ないため、暗所である。そのため、蛍光塗料を使用してマーキングすることで視認性を向上させることができる。
【0013】
前述の通り、防水シート4はトンネルの断面形状に合わせた長さにする必要がある。防水シート4を切断した後に印刷をする場合、製造工程が煩雑となる場合がある。切断前から、0.5m間隔のマーキング41を記した場合、防水シート4の切断箇所は0.5m毎にしか切断することが出来なくなる。
そこで、コンクリート打設高さを0.5mで管理する場合、図4(b)のように、2重線マーキング41a、波線マーキング41bはそれぞれ0.5m間隔で記し、2重線マーキング41aと波線マーキング41bの間隔を0,25m間隔で記せば、0.25m間隔で防水シート4を切断することができる。図3(b)の場合は、端部に2重線マーキング41aが位置する場合を示しており、打設高さの管理時は2重線マーキング41aを目印にしてコンクリートの打設高さを管理すればよく、図示はしないが、波線マーキング41bが端部に位置する場合は波線マーキング41bを目印にしてコンクリートの打設高さを管理する。
実施例では、防水シート4を0.25m毎に切断できる場合を示したが、0.1m間隔で切断したい場合は0.1m間隔で異なる柄または色のマーキングを印刷し、0.5m毎に同一の柄または色のマーキングを印刷すればよく、その間隔は任意に設定すればよい。
【0014】
図5には防水シート4へのマーキング41の印刷方法の実施例として印刷装置7を示す。印刷装置7は印刷用回転体8と防水シート4を支持するための支持用回転体9を備え、架台71により回転体を支持する。
印刷用回転体の円周はマーキング間隔またはマーキング間隔の倍数とする。
図5に示す印刷装置7は、図4bに示す2重線マーキング41a、波線マーキング42bを印刷する場合の装置である。印刷用回転体8にはスタンプ部81a、81bを備える。スタンプ部81は例えば発泡ゴムを使用してインキを染み込ませる。回転体内部、スタンプ部81の裏側にはインキ補充機構を備えてもよい。スタンプ部81aは2重線の形状、スタンプ部81bは波線とした。
印刷用回転体8、支持用回転体9の間に防水シート4を通過させて印刷を行う。そのため、空回転を防ぐため、回転体は摩擦を得られるように表面の全部または一部がゴム等の摩擦の大きい素材でで覆われるのがよい。
印刷用回転体8の全周は0.5mであり、スタンプ部81a、81bを等間隔の0.25mとなるように配置する。印刷用回転体8と支持用回転体9の離隔は防水シート4を挟み込む用に調整する。
防水シート4を印刷用回転体8と支持用回転体9の間に通し、印刷用回転体8が回転し、スタンプ部81が防水シート4に接触することでマーキングされ、スタンプ部81aとスタンプ部81bが交互に防水シート4に交互に且つ、0.25m間隔でマーキングされ、図3(b)に示す防水シート4を作成することができる。
印刷の方法は上記の方法で実施することを限定するものではなく、例えば防水シート4を展開した状態で静置して、その上部に印刷用回転体8を回転させることでも印刷することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 トンネル
2 一次覆工
3 二次覆工
4 防水シート
41 マーキング
5 セントル型枠
6 バイブレーター
7 印刷装置
図1
図2
図3
図4
図5