(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】スプリンクラー設備の配管構造
(51)【国際特許分類】
A62C 35/68 20060101AFI20220118BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A62C35/68
F16L1/00 D
(21)【出願番号】P 2018062887
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 章人
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡
(72)【発明者】
【氏名】昆野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓介
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-155974(JP,A)
【文献】特開2005-337(JP,A)
【文献】特開平8-24359(JP,A)
【文献】特開2007-130195(JP,A)
【文献】特開平6-304264(JP,A)
【文献】特開平5-68721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
F16L 1/00,37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダー本体部の一端に設けられて、給水上流側の給水配管に接続される主管接続部と、該ヘッダー本体部に複数設けられた分岐接続部とを有し、該主管接続部を介して該給水配管から供給された水を該分岐接続部により複数の経路に分岐するヘッダーと、
湾曲可能な可撓性を有し、前記分岐接続部に一端が接続される枝配管と、
継手本体部における給水上流側の一端に設けられて、前記枝配管の他端に接続される枝管接続部と、該継手本体部における給水下流側の他端に設けられたヘッド接続部とを有するヘッド継手と、
前記ヘッド接続部に接続されるスプリンクラーヘッドと、を備え、
前記分岐接続部および前記枝管接続部のそれぞれは、前記枝配管との接続状態で自身に対する該枝配管の相対的な回転を許容する枝管接続機構を有し、
前記枝管接続機構は、該枝管接続機構が設けられた前記分岐接続部または前記枝管接続部を前記枝配管の内側へ差し込むことで該枝配管を機械的に抜け止めするワンタッチ接続構造である
ことを特徴とするスプリンクラー設備の配管構造。
【請求項2】
前記ヘッダーは、前記主管接続部に接続された前記給水配管に対する前記ヘッダー本体部の回転を許容するヘッダー接続機構を有している請求項1記載のスプリンクラー設備の配管構造。
【請求項3】
前記ヘッダー接続機構は、前記ヘッダー本体部と前記主管接続部とを嵌め合わせることで該主管接続部に対して該ヘッダー本体部を機械的に抜け止めするワンタッチ接続構造である請求項2記載のスプリンクラー設備の配管構造。
【請求項4】
前記ヘッダーは、前記主管接続部が上向きになると共に前記ヘッダー本体部から突出する前記分岐接続部が横向きになる姿勢で設置されている請求項1~3の何れか一項に記載のスプリンクラー設備の配管構造。
【請求項5】
前記ヘッド継手は、前記スプリンクラーヘッドとの接続状態で前記継手本体部に対する該スプリンクラーヘッドの相対的な回転を許容するよう構成されている請求項1~4の何れか一項に記載のスプリンクラー設備の配管構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、散水により消火を図るスプリンクラー設備の配管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備は、給水源に繋がる給水配管に接続したヘッダーに複数の枝配管を接続することで複数の経路に分岐させた後、天井裏に敷設した枝配管の先端に取り付けたエルボに、スプリンクラーヘッドを接続した配管構造となっている(例えば、特許文献1参照)。近年、枝配管としては、他の配管や設備との干渉を回避し得る自由度を向上できると共に狭い天井裏において施工できることから、金属や樹脂の直管に替えて、湾曲変形させることが可能な可撓性を有する可撓管が採用されている。
【0003】
枝配管として用いられる可撓管は、現場に搬入された後、コイル状に丸めるように巻かれ、この巻いた姿で天井裏に運び込まれる。枝配管は、天井裏に設置されたヘッダーに対して一端を接続した後、そのまま延ばすと円環が連なるようになって経路が長くなるので、コイルのねじれに応じて、コイル状になった他端を回転させながら延ばして敷設される。そして、枝配管に対してねじ等により接続されるエルボに取り付けられたスプリンクラーヘッドを下向き姿勢になるように調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、スプリンクラー設備の設置件数が増加しているものの、スプリンクラー設備を設置できる専門知識や技能等の高度な技術力を有する作業者が減少し、技術力が低い作業者が増加している傾向にある。そのため、作業者の技術力の高低に左右されずに容易に施工でき、かつ施工性に優れるスプリンクラー設備が社会的に求められている。前述した可撓管からなる枝配管の施工は、コイル部分を回転させてねじれを解消する作業が面倒であり、またコイル部分を回転するために天井裏での取り回しにスペースが必要になってしまう。また、枝配管における巻いた姿のねじれに由来して、スプリンクラーヘッドを下向き姿勢にするための調節が難しいなど、従来のスプリンクラー設備は、設置作業の施工性が悪い。特に、ヘッダーと枝配管との接続や枝配管と継手との接続などの接続作業には、作業者に高度な技術力が必要であり、技術力が低い作業者は、施工することが難しく、また施工を任せることもできない。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、作業者の技術力に左右されずに容易に施工でき、かつ施工性に優れたスプリンクラー設備の配管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のスプリンクラー設備の配管構造は、
ヘッダー本体部の一端に設けられて、給水上流側の給水配管に接続される主管接続部と、該ヘッダー本体部に複数設けられた分岐接続部とを有し、該主管接続部を介して該給水配管から供給された水を該分岐接続部により複数の経路に分岐するヘッダーと、
湾曲可能な可撓性を有し、前記分岐接続部に一端が接続される枝配管と、
継手本体部における給水上流側の一端に設けられて、前記枝配管の他端に接続される枝管接続部と、該継手本体部における給水下流側の他端に設けられたヘッド接続部とを有するヘッド継手と、
前記ヘッド接続部に接続されるスプリンクラーヘッドと、を備え、
前記分岐接続部および前記枝管接続部のそれぞれは、前記枝配管との接続状態で自身に対する該枝配管の相対的な回転を許容する枝管接続機構を有し、
前記枝管接続機構は、該枝管接続機構が設けられた前記分岐接続部または前記枝管接続部を前記枝配管の内側へ差し込むことで該枝配管を機械的に抜け止めするワンタッチ接続構造であることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、枝管接続機構によって、枝配管がヘッダーの分岐接続部に対して回転可能であるので、天井において枝配管の施工を容易に行うことができる。また、枝管接続機構によって、ヘッド継手が枝配管に対して回転可能であるので、天井においてスプリンクラーヘッドを適切な姿勢で容易に設置することができる。更に、枝配管をヘッダーおよびヘッド継手の両方にワンタッチで接続することができるので、枝配管、ヘッダーおよびヘッド継手の組み付け作業を容易に、かつ効率的に行うことができる。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記ヘッダーは、前記主管接続部に接続された前記給水配管に対する前記ヘッダー本体部の回転を許容するヘッダー接続機構を有していることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、給水配管に対してヘッダー本体部が回転可能であるから、ヘッダー本体部に設けられた分岐接続部の向きを変えることができ、枝配管を所定位置まで伸ばす作業を容易に、かつ効率的に行うことができる。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記ヘッダー接続機構は、前記ヘッダー本体部と前記主管接続部とを嵌め合わせることで該主管接続部に対して該ヘッダー本体部を機械的に抜け止めするワンタッチ接続構造であることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、主管接続部とヘッダー本体部とをワンタッチで接続することができるので、ヘッダーの組み付け作業を容易に、かつ効率的に行うことができる。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記ヘッダーは、前記主管接続部が上向きになると共に前記ヘッダー本体部から突出する前記分岐接続部が横向きになる姿勢で設置されていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、ヘッダーの占める水平スペースを抑えることができると共に、横向きに伸ばされる枝配管の施工を容易に、かつ効率的に行うことができる。
【0011】
請求項5に係る発明では、前記ヘッド継手は、前記スプリンクラーヘッドとの接続状態で前記継手本体部に対する該スプリンクラーヘッドの相対的な回転を許容するよう構成されていることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、スプリンクラーヘッドの向きを調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスプリンクラー設備の配管構造によれば、作業者の技術力に左右されずに、容易に、かつ効率的に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の好適な実施例に係るスプリンクラー設備の配管構造を概略的に示す平面図である。
【
図2】実施例のスプリンクラー設備の配管構造を概略的に示す側面図である。
【
図4】実施例のヘッダーを示す断面図であり、(a)は主管接続部を分解した状態を示し、(b)は主管接続部を組み付けた状態の要部を示す。
【
図5】(a)は、実施例のヘッダーの分岐接続部を側面から示す拡大図であり、(b)は分岐接続部を拡大して示す断面図である。
【
図6】実施例のヘッド継手およびスプリンクラーヘッドについて、組み付けた状態を示す側面図である。
【
図7】実施例のヘッド継手およびスプリンクラーヘッドについて、分解した状態を示す側面図である。
【
図8】(a)は実施例のヘッド継手の枝管接続部を側面から示す拡大図であり、(b)は枝管接続部を拡大して示す断面図である。
【
図9】実施例のヘッド継手のヘッド接続部を示す断面図であり、(a)は継手本体部とヘッド接続部とを分解した状態を示し、(b)は継手本体部とヘッド接続部とを組み付けた状態を示す。
【
図10】実施例のファスナーを、
図6のA-A線に対応する部位で切断して示す断面図であり、継手本体部(ヘッド接続部)および本体フランジ部(取付フランジ部)を二点鎖線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るスプリンクラー設備の配管構造につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0015】
図1および
図2に示すように、実施例に係るスプリンクラー設備の配管構造は、給水上流側の給水配管10に接続するヘッダー12と、ヘッダー12に接続する枝配管14と、枝配管14に接続するヘッド継手16と、ヘッド継手16に接続するスプリンクラーヘッド18とを備えている。配管構造は、建築物の天井に設けられており、金属等の直管からなる給水配管10から供給された水をヘッダー12において複数(実施例では4系統)の経路に分岐している。また、ヘッダー12から分岐した枝配管14の先端には、放水口を下に向けたスプリンクラーヘッド18がヘッド継手16を介して接続されており、各枝配管14を通った水がヘッド継手16を介してスプリンクラーヘッド18から散布される。なお、天井には、複数のスプリンクラーヘッド18が所定間隔をあけて並べて配置されており、実施例では、同じヘッダー12に繋がる4つのスプリンクラーヘッド18が、ヘッダー12を中心とする四角形の角に位置するように配置されている(
図1参照)。なお、
図2の符号52は、スプリンクラーヘッド18が通る天井の開口を目隠しするカバーであり、スプリンクラーヘッド18に取り付けられる。
【0016】
図3および
図4に示すように、ヘッダー12は、ヘッダー本体部20の一端に設けられ、給水配管10に接続される主管接続部22と、ヘッダー本体部20に複数設けられた分岐接続部24とを有している。ヘッダー12は、主管接続部22を介して給水配管10からヘッダー本体部20に受け入れた水を、ヘッダー本体部20に設けられた複数(実施例では4箇所)の分岐接続部24によって複数の経路に分岐する。ヘッダー12は、下端(他端)が閉塞する円筒形に形成されたヘッダー本体部20の上端(一端)に主管接続部22が設けられ、複数の分岐接続部24が主管接続部22より下側に位置してヘッダー本体部20の周面から突出するように形成されている。ヘッダー12には、ヘッダー本体部20の給水上下流方向へ離れると共に給水上下流方向の同一ライン上に並べて配置された2つの分岐接続部24,24が、ヘッダー本体部20を挟んで対称な周方向の位置関係で2組設けられている。ヘッダー12は、下向きに延在する給水配管10の下端に主管接続部22が接続されて、主管接続部22が上向きになると共にヘッダー本体部20から突出する分岐接続部24が横向きになる姿勢で設置される(
図2参照)。また、ヘッダー12は、給水配管10に対してヘッダー本体部20が回転可能に構成されており、ヘッダー12の上端に接続される給水配管10に対してヘッダー本体部20を上下の軸周りに回転して、分岐接続部24の向きを変更可能になっている。
【0017】
図4に示すように、主管接続部22は、ヘッダー本体部20と別体に形成されており、給水配管10とねじ接続される主管取付部26と、ヘッダー本体部20と嵌め合わせて接続される本体取付部28とを備えている。また、主管接続部22とヘッダー本体部20との間には、主管接続部22(給水配管10)に対するヘッダー本体部20の回転を許容するヘッダー接続機構が設けられている。主管接続部22とヘッダー本体部20とは、ヘッダー接続機構によって、主管接続部22の本体取付部28とヘッダー本体部20との嵌め合いにより機械的に抜け止めされて、ワンタッチ接続される。
【0018】
図4に示すように、主管接続部22は、給水上流側(上側)に形成された主管取付部26と比べて給水下流側(下側)に形成された本体取付部28の内径および外径が大きく形成された円筒形状である。主管接続部22は、主管取付部26の内周面が、給水配管10に形成された雄ねじがねじ込まれる雌ねじになっている。本体取付部28には、ロック溝部30が内周面全周に亘って凹状に形成されており、ロックリング32がロック溝部30に配置されている。ロックリング32は、Cリングのように端が繋がっていない円環状に形成された金属等からなる部材であり、本体取付部28の内周面に沿って周方向へ回転可能な状態でロック溝部30に保持されている。ロック溝部30は、給水下流側に延在するロック案内面31が、給水上流側から下流側へ向かうにつれて内方へ傾くように形成され、ロック案内面31に当たったロックリング32を内方へ向けて縮径するように案内する。また、本体取付部28には、内周面全周に亘る凹状のシール溝部34が、ロック溝部30よりも給水上流側に形成されている。シール溝部34には、ゴム等の弾力性がある材料からなる円環形状のシール部材36が配置されている。シール部材36は、例えばOリング等の汎用品を用いることができ、本体取付部28の内周面に沿って周方向へ回転可能な状態で、シール溝部34に保持されている。
【0019】
図4に示すように、ヘッダー本体部20には、給水上流側の開口全周に亘って鍔状に外方へ張り出した係止部38が設けられ、係止部38を含む上端部を主管接続部22の本体取付部28の内側に差し込んで、主管接続部22と接続される。より具体的には、ヘッダー本体部20の上端部を本体取付部28の給水下流側の開口から挿入すると、係止部38によってロックリング32が外方へ押し開かれ、ロックリング32を乗り越えた係止部38の挿入が許容される。係止部38がロックリング32を乗り越えると、ロックリング32が係止部38の外径よりも縮径すると共に、係止部38がシール部材36の内側に嵌まり、シール部材36が係止部38の外周面に押し当てられる。これにより、主管接続部22とヘッダー本体部20との間が封止された状態で両者が接続する。主管接続部22とヘッダー本体部20との接続状態では、主管接続部22に対して回転可能に保持されたロックリング32およびシール部材36の回転、あるいはロックリング32およびシール部材36に対するヘッダー本体部20の摺動が許容されて、主管接続部22に対してヘッダー本体部20の相対的な回転が可能である。
【0020】
主管接続部22からヘッダー本体部20が相対的に抜ける方向に力が加わると、係止部38に押されたロックリング32がロック案内面31の傾斜により内方へ付勢されることになる。これにより、係止部38がロックリング32に引っ掛かって、主管接続部22からヘッダー本体部20の抜け出しが規制される。実施例では、主管接続部22のロック溝部30(ロック案内面31)およびロックリング32、ヘッダー本体部20の係止部38によって、主管接続部22とヘッダー本体部20とをワンタッチ接続すると共に両者の相対的な回転を許容するヘッダー接続機構が構成されている。このように、ヘッダー接続機構は、ヘッダー本体部20と主管接続部22とを嵌め合わせることで該主管接続部22に対して該ヘッダー本体部20を機械的に抜け止めするワンタッチ接続構造になっている。
【0021】
図4(a)に示すように、ヘッダー12には、4つの分岐接続部24が設けられているが、何れも構成が同じである。
図5に示すように、分岐接続部24は、ヘッダー本体部20から突出するように一体的に形成された円筒形状であり、ロック溝部30が外周面全周に亘って凹状に形成されている。実施例の分岐接続部24は、給水上下流方向に離して設けられた2条のロック溝部30,30を備え、ロック溝部30のそれぞれにロックリング32が配置されている。ロック溝部30には、給水下流側に延在するロック案内面31が、給水上流側から下流側へ向かうにつれて外方へ傾くように形成され、ロック案内面31に当たったロックリング32を外方へ向けて拡開するように案内する。ロックリング32は、分岐接続部24の外周面に沿って周方向へ回転可能な状態でロック溝部30に保持されている。分岐接続部24は、外周面全周に亘って凹状に形成されたシール溝部34を備え、シール部材36がシール溝部34に配置されている。シール部材36は、分岐接続部24の外周面に沿って周方向へ回転可能な状態で、シール溝部34に保持されている。実施例の分岐接続部24には、給水上下流方向に離して配置された2条のロック溝部30,30の間に2条のシール溝部34,34が設けられ、シール溝部34のそれぞれにシール部材36が配置されている。なお、ロックリング32およびシール部材36は、前述と同様である。
【0022】
図5(b)に示すように、分岐接続部24は、枝配管14の内側に差し込む(分岐接続部24の外側に枝配管14を嵌め込む)ことで、枝配管14の内周面によってロックリング32が内方へ押されて縮径し、ロックリング32を乗り越えて枝配管14の嵌め込みが許容される。枝配管14がロックリング32を乗り越えると、枝配管14の内周面にシール部材36が当たり、分岐接続部24と枝配管14との間が封止された状態で両者が接続する。分岐接続部24と枝配管14との接続状態では、分岐接続部24に対して回転可能に保持されたロックリング32およびシール部材36の回転、あるいはロックリング32およびシール部材36に対して枝配管14が摺動することで、分岐接続部24を軸とした枝配管14の相対的な回転が許容される。分岐接続部24から枝配管14が相対的に抜ける方向に力が加わると、枝配管14の内周面に押されたロックリング32がロック案内面31の傾斜により外方へ付勢されることになる。これにより、ロックリング32が枝配管14の内周面にくさびのように引っ掛かって、分岐接続部24からの枝配管14の抜け出しが規制される。このように、実施例では、分岐接続部24のロック溝部30(ロック案内面31)およびロックリング32によって、分岐接続部24と枝配管14とをワンタッチ接続すると共に両者の相対的な回転を許容する枝管接続機構が構成されている。
【0023】
ヘッダー12は、合成樹脂や金属あるいはこれらの複合により構成することができるが、軽量にする観点から合成樹脂を主体とすることが好ましい。実施例のヘッダー12は、ヘッダー本体部20および分岐接続部24が、ロックリング32およびシール部材36を除いて、合成樹脂によって一体的に形成された成形品であり、例えば、耐熱性や耐薬品性に優れ、難燃剤を添加しなくても自己消化性を有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などにガラス繊維などの繊維強化材が入ったもの等がスプリンクラー設備用として好適である。また、主管接続部22は、鋳鉄などの金属素材を用いることが好ましい。
【0024】
枝配管14は、湾曲変形可能な可撓性を有する可撓管が用いられている。また、枝配管14は、力を加えていない状態において、径方向へ曲げたり、直線状に伸ばしたりした形状を保つことができる形状保持性を有していることが望ましい。枝配管14としては、合成樹脂や金属、あるいはこれらの複合材料などを用いることができるが、軽量化と耐熱性とを両立させる観点から、例えば、アルミニウム(バリア層)を内層ポリエチレン(母材)と外層ポリエチレン(保護層)の間に接着性樹脂を介してサンドイッチ状に挟んで構成されたアルミ複合ポリエチレン管が好ましい。枝配管14は、ヘッダー12の分岐接続部24およびヘッド継手16の枝管接続部42と接続するために、端末をねじ加工するなど、特に加工を必要としない。
【0025】
図6および
図7に示すように、ヘッド継手16は、給水上流側の開口と給水下流側の開口との向きが90°変わるエルボであり、実施例では、給水上流側と比べて給水下流側が長くなっている。ヘッド継手16は、継手本体部40における給水上流側の一端に設けられ、横向きに敷設される枝配管14の給水下流端(他端)と接続される枝管接続部42と、継手本体部40における給水下流側の他端に設けられ、下向きに設置されるスプリンクラーヘッド18と接続されるヘッド接続部44とを有している。継手本体部40とヘッド接続部44との接続機構は、スプリンクラーヘッド18との接続状態で継手本体部40に対するスプリンクラーヘッド18の相対的な回転を許容するよう構成されている。
【0026】
図8に示すように、枝管接続部42は、分岐接続部24と同様の構成であり、分岐接続部24と給水上下流方向の向きが変わっている。枝管接続部42は、円筒形状であり、ロック溝部30が外周面全周に亘って凹状に形成されている。実施例の枝管接続部42は、給水上下流方向に離して設けられた2条のロック溝部30,30を備え、ロック溝部30のそれぞれにロックリング32が配置されている。ロック溝部30には、給水上流側に延在するロック案内面31が、給水下流側から上流側へ向かうにつれて外方へ傾くように形成され、ロック案内面31に当たったロックリング32を外方へ向けて拡開するように案内する。ロックリング32は、枝管接続部42の外周面に沿って周方向へ回転可能な状態でロック溝部30に保持されている。また、枝管接続部42は、外周面全周に亘って凹状に形成されたシール溝部34を備え、シール部材36がシール溝部34に配置されている。実施例の枝管接続部42には、給水上下流方向に離して配置された2条のロック溝部30,30の間に2条のシール溝部34,34が設けられ、シール溝部34のそれぞれにシール部材36が配置されている。なお、ロックリング32およびシール部材36は、前述と同様である。分岐接続部24と同様に、枝管接続部42のロック溝部30(ロック案内面31)およびロックリング32によって、枝管接続部42と枝配管14とをワンタッチ接続すると共に両者の相対的な回転を許容する枝管接続機構が構成されている。なお、枝管接続部42における枝配管14の嵌め込みおよび抜け止め構造は、分岐接続部24と同様であるので説明を省略する。
【0027】
図9に示すように、ヘッド接続部44は、継手本体部40と別体に形成されており、継手本体部40に嵌め合わせて接続される継手取付部46と、スプリンクラーヘッド18とねじ接続されるヘッド取付部48とを備えている。ヘッド接続部44は、継手取付部46が給水上流側(上側)に形成されると共に、ヘッド取付部48が給水下流側(下側)に形成された円筒形状である。継手取付部46には、外周面全周に亘る凹状のシール溝部34が2条形成されている。シール溝部34には、ゴム等の弾力性がある素材からなる円環形状のシール部材36が配置されている。シール部材36は、例えばOリング等の汎用品を用いることができ、継手取付部46の外周面に沿って周方向へ回転可能な状態で、シール溝部34に保持されている。ヘッド取付部48の内周面は、スプリンクラーヘッド18の上端部に形成された雄ねじがねじ込まれる雌ねじになっている。継手本体部40には、給水下流側の開口全周に亘って鍔状に外方へ張り出した本体フランジ部41が設けられ、継手本体部40の内側に差し込まれる継手取付部46の根元において鍔状に外方へ張り出す取付フランジ部45と本体フランジ部41とが突き当たる。取付フランジ部45と本体フランジ部41とを挟んで取り付けられるファスナー50(
図10)によって、継手本体部40とヘッド接続部44とが相対的に回転可能な状態で接続される。
【0028】
ヘッド継手16は、合成樹脂や金属あるいはこれらの複合により構成することができるが、軽量にするために合成樹脂を主体とすることが好ましい。実施例のヘッド継手16は、継手本体部40および枝管接続部42が、ロックリング32およびシール部材36を除いて合成樹脂によって一体的に形成された成形品であり、例えば、耐熱性や耐薬品性に優れ、難燃剤を添加しなくても自己消化性を有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などにガラス繊維などの繊維強化材が入ったもの等がスプリンクラー設備用として好適である。また、ヘッド接続部44は、鋳鉄などの金属素材を用いることが好ましい。
【0029】
前述した「ワンタッチ接続」とは、2つの接続対象のうちの一方を他方に相対的に嵌めるだけで、2つの接続対象のうちの一方または両方に設けられた接続機構が他方に引っ掛かったり、他方に食い込んだり、他方を絞り込んだりするなどの機械的な方式によって2つの接続対象同士が抜け止めされる接続態様をいう。従って、「ワンタッチ接続」は、接着剤や溶着などの化学的な方式による接続や、2つの接続対象のうちの一方を他方へねじ込むねじ接続や、配管バンドによるバンド接続などの一方を他方に嵌め込んだ後に別の固定具により接続する態様よりも、接続対象同士を簡単に接続することができ、また、接着剤や溶着装置や工具や固定具などの別のものを用意する必要もない。「ワンタッチ接続」は、2つの接続対象の接続の仕方が直感的に判り易く、技術力や経験がない作業者であっても、2つの接続対象を容易に、かつ効率的に接続することができる。なお、実施例において、主管接続部22とヘッダー本体部20とを接続するヘッダー接続機構、枝配管14と分岐接続部24とを接続する枝管接続機構、枝配管14とヘッド継手16の枝管接続部42とを接続する枝管接続機構の構成要素は、基本的に同じであるので、同じ機能を有する部位および部材には同じ名称および同一の符号を付して説明している。
【0030】
次に、前述した配管構造の施工について説明する。枝配管14、ヘッド継手16およびスプリンクラーヘッド18は、工場で予め組み立てられたアッセンブリーとして、建築物の施工現場に搬入される。施工現場に搬入されたアッセンブリーは、現場において枝配管14をコイル状に丸めるように巻いて、この巻いた姿で、天井に升目状に組まれた軽量鉄骨からなるフレーム材の升目から挿入して、天井裏へ運び込まれる。ここで、枝管接続機構によって、枝配管14がヘッド継手16の枝管接続部42にワンタッチ接続されるので、枝配管14およびヘッド継手16の組み付け作業に作業者の高い技術力や経験を必要とせず、作業者の質に左右されずに多様な作業者によって容易に行うことができる。また、接着剤の塗布やねじ加工などの接続のための処理を枝配管14および/またはヘッド継手16に施す必要はなく、ヘッド継手16の枝管接続部42を枝配管14の内側に相対的に差し込むだけで接続できるので、効率的であり、施工性に優れている。
【0031】
ヘッダー12は、主管接続部22とヘッダー本体部20とが別々に建築物の施工現場に搬入される。まず、主管接続部22の主管取付部26を、給水配管10の下端にねじ切り加工により予め形成されたねじにねじ込み、主管接続部22を給水配管10の下端にねじ接続する(
図3参照)。ヘッダー本体部20の上端部を、主管接続部22の本体取付部28に差し込み、ヘッダー接続機構によって、主管接続部22とヘッダー本体部20とを組み付ける。この際、ヘッダー接続機構によって、主管接続部22とヘッダー本体部20とがワンタッチ接続されるので、主管接続部22とヘッダー本体部20との組み付け作業に作業者の高い技術力や経験を必要とせず、作業者の質に左右されずに多様な作業者によって容易に行うことができる。また、接着剤の塗布やねじ加工などの接続のための処理を主管接続部22および/またはヘッダー本体部20に施す必要はなく、主管接続部22とヘッダー本体部20とを嵌め合わせるだけで接続できるので、効率的であり、施工性に優れている。ここで、ヘッダー12は、主管接続部22を上向きにすると共に分岐接続部24を横向きにした縦姿勢で設置しているので、ヘッダー12の占める水平スペースを抑えることができる。また、横向きに伸ばすように設置される枝配管14が、横向きの分岐接続部24から無理なく延びることになるので、枝配管14の施工を容易に、かつ効率的に行うことができる。
【0032】
次に、アッセンブリーの枝配管14をヘッダー12の分岐接続部24に接続する。この際、枝管接続機構によって、枝配管14と分岐接続部24とがワンタッチ接続されるので、枝配管14とヘッダー12との組み付け作業に作業者の高い技術力や経験を必要とせず、作業者の質に左右されずに多様な作業者によって容易に行うことができる。また、接着剤の塗布やねじ加工などの接続のための処理を枝配管14および/またはヘッダー12に施す必要はなく、枝配管14と分岐接続部24とを嵌め合わせるだけで接続できるので、効率的であり、施工性に優れている。コイル状に巻かれた枝配管14をそれぞれ伸ばして、ヘッダー12に繋がる4つのスプリンクラーヘッド18のそれぞれを天井における所定位置に配置する。この際、分岐接続部24を軸として枝配管14の回転が許容されているので、コイル状に巻かれた枝配管14のねじれを、枝配管14を回転することで直すことができ、狭い天井であっても、枝配管14の敷設作業を容易に、かつ効率的に行うことができる。しかも、給水配管10に固定された主管接続部22に対して、枝配管14が繋がる分岐接続部24が設けられたヘッダー本体部20が回転可能に取り付けられているので、スプリンクラーヘッド18の設置位置などに応じて、ヘッダー12の分岐接続部24の向きを簡単に変えることができる。このように、ヘッダー本体部20が給水配管10に対して回転することで、枝配管14を伸ばしてスプリンクラーヘッド18を位置合わせする作業を容易に、かつ効率的にすることができる。
【0033】
スプリンクラーヘッド18が設置位置に到達するまで枝配管14を伸ばした後、スプリンクラーヘッド18の放水口が下向きになるように、スプリンクラーヘッド18の姿勢を整える。この際、枝配管14を軸としてヘッド継手16の回転が許容されているので、ヘッド継手16に接続されたスプリンクラーヘッド18の姿勢を、ヘッド継手16を回転することで直すことができ、狭い天井であっても、スプリンクラーヘッド18の姿勢調整を容易に行うことができる。しかも、スプリンクラーヘッド18は、ヘッド継手16に対して回転が許容されているので、放水口の水平向きを適切に調整することもできる。
【0034】
枝配管14よりも太く、金属の直管で構成されている給水配管10と主管接続部22との接続には、ねじ加工やねじ込み接続作業(ねじ山同士の気密性を高めるためにねじ山にシールテープ等を巻いたり、パイプレンチ等を用いて給水配管10と主管接続部22とを接続したりする等)などには高い技術力や経験が要求される。前述した配管構造によれば、ねじ加工やねじ込み接続作業の必要がなく、主管接続部22へのヘッダー本体部20の取り付け、分岐接続部24への枝配管14の取り付け、枝配管14へのヘッド継手16の取り付けおよびヘッド継手16へのスプリンクラーヘッド18の取り付けの何れも高い技術力や経験を必要としない。従って、前記配管構造によれば、作業者の技術力や経験に左右されず、若年者や外国人などの多様な作業者によっても、現場での施工を容易に行うことができ、かつ施工性を向上することができる。
【0035】
スプリンクラー設備の配管構造は、ヘッダー本体部20、ヘッダー本体部20に複数設けられた分岐接続部24、枝配管14およびヘッド継手16を樹脂から構成することで、軽くすることができる。なお、ヘッド接続部44およびスプリンクラーヘッド18は、金属素材から構成されるものの、部品自体が小さく、当該配管構造全体の重量の増加への影響は少ない。このため、ヘッダー12から敷設される枝配管14等の自重を支えるための配管支持部材(図示せず)の設置数を減らしたり、簡易にしたり、あるいは無くすことが可能となり、現場での施工性をより向上させることができる。
【0036】
(変更例)
前述した実施例に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)ヘッダー接続機構および/または枝管接続機構としては、ワンタッチ接続した後に、ヘッド継手の継手本体部とヘッド接続部との接続機構のように、ファスナー等の固定具によって接続部分を補強してもよい。
(2)実施例では、アッセンブリーを現場に搬入する例を説明したが、現場において組み立ててもよい。
(3)枝配管をコイル状に丸めた姿で現場に搬入してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 給水配管,12 ヘッダー,14 枝配管,16 ヘッド継手,
18 スプリンクラーヘッド,20 ヘッダー本体部,22 主管接続部,
24 分岐接続部,40 継手本体部,42 枝管接続部,44 ヘッド接続部