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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】防水板
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20220118BHJP
   E05F 15/63 20150101ALI20220118BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E05F15/63
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018076147
(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公開番号】P2019183515
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000154288
【氏名又は名称】株式会社富士精工本社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】熊田 学
(72)【発明者】
【氏名】豊田 健司
【審査官】芝沼 隆太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-2667(JP,A)
【文献】特開2015-52226(JP,A)
【文献】特開2006-152692(JP,A)
【文献】特開2005-180131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
9/00
9/02
9/06- 9/18
9/40- 9/50
9/56- 9/92
E02B 7/20- 7/54
8/02- 8/04
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
退避位置と防水可能な稼働位置との間で稼働退避動作される扉板と、前記扉板を稼働退避動作する駆動機構と、を有し、
前記駆動機構には、その駆動シャフトに連結されて、可搬回転駆動源からの回転駆動力を前記駆動シャフトに伝達するとともに、前記駆動シャフトの回転を稼働方向と退避方向とで切り替える稼働退避操作部が設けられ、
前記稼働退避操作部が、前記駆動シャフトに回転自在に連結される稼働回転接続部と、前記稼働回転接続部に逆回転自在に連結される退避回転接続部と、を備え、
前記扉板の稼働退避動作時に、前記稼働回転接続部と前記退避回転接続部とのいずれか一方を選択して前記可搬回転駆動源を接続し、同方向に回転することで稼働動作または退避動作可能とされることを特徴とする防水板。
【請求項2】
前記稼働退避操作部が、近接配置された前記稼働回転接続部または前記退避回転接続部のいずれかを隠蔽するとともに、隠蔽した側に前記可搬回転駆動源の回転部材が連結できないように切り替え可能とする連結切替規制部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の防水板。
【請求項3】
前記稼働退避操作部には、前記連結切替規制部による前記稼働回転接続部と前記退避回転接続部との切り替えに連動して、前記可搬回転駆動源を接続可能な側を表示するかまたは隠蔽される切替表示が設けられることを特徴とする請求項2に記載の防水板。
【請求項4】
前記稼働退避操作部において、
前記稼働回転接続部が、
前記駆動シャフトに回転駆動力を伝達する駆動ギアに連結された稼働回転接続ギアと、
前記稼働回転接続ギアを回転自在に支持する稼働回転接続軸と、
前記稼働回転接続軸の一端に設けられ前記扉板の稼働動作時に前記可搬回転駆動源の回転部材を接続可能とする稼働回転接続端と、
を有し、
前記退避回転接続部が、
前記稼働回転接続ギアに連結された退避回転接続ギアと、
前記退避回転接続ギアを回転自在に支持する退避回転接続軸と、
前記退避回転接続軸の一端に設けられ前記扉板の退避動作時に前記可搬回転駆動源の回転部材を連結可能とする退避回転接続端と、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防水板。
【請求項5】
前記連結切替規制部が、前記稼働回転接続部を覆う退避位置と前記退避回転接続部を覆う稼働位置との間を切り替えて移動可能な覆板部を有することを特徴とする請求項2に記載の防水板。
【請求項6】
前記稼働退避操作部が、前記扉板の稼働退避動作開始から前記稼働回転接続軸における積算回転数を表示する回転数表示部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の防水板。
【請求項7】
前記回転数表示部が、表示する前記稼働回転接続軸の積算回転数が、前記扉板の稼働退避動作終了近傍であることを表示する動作終了予告表示を備えたことを特徴とする請求項6に記載の防水板。
【請求項8】
前記稼働回転接続端および前記退避回転接続端が同一形状とされて、前記可搬回転駆動源の回転部材が対応して接続可能な形状とされ、これらが凹凸形状に設定されることを特徴とする請求項4に記載の防水板。
【請求項9】
前記可搬回転駆動源が可搬電動機とされることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の防水板。
【請求項10】
前記稼働退避操作部が、退避状態の前記扉板で覆われない位置に設けられることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の防水板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水板に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や、駐車場等の出入口などには、水害時において浸水を防止するために、防水扉(防水板)装置を設置することがある。
【0003】
例えば起立式の防水扉(防水板)を起立させる駆動機構として、特許文献1には、手動で駆動させる機構が開示されている。また特許文献2には、モータにより駆動させる機構が開示されており、さらに、手動により駆動させることも可能な機構であることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-265998号公報
【文献】特開2007-308936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防水扉を手動で防水可能となる稼働位置まで駆動させるには大きな労力が必要であり、大型の防水扉に用いることが困難であった。また、急な出水・増水時に対応して防水扉を手動で駆動させることも困難であった。
【0006】
一方で、モータにより駆動させる場合には、大型の防水扉であっても高速に稼働させることが可能であるが、モータ設置個所に浸水してしまった場合や、停電が発生してモータが駆動できない場合に、防水扉を稼働駆動させることができなくなる恐れがあった。また、モータ設置のため導入コストが高くなり、さらに、モータ等のメンテナンスが必要となり、その維持費も高くなっていた。
さらに、急な出水・増水時に落ち着いて対応することは難しいと予想され、緊急時に適確な動作で、確実に作動可能な防水扉が求められていた。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、メンテナンスが簡単で、低コストで緊急時にもミスを防止して確実に動作させることが可能で、かつ、大型化可能な防水扉を提供するという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、退避位置と防水可能な稼働位置との間で稼働退避動作される扉板と、前記扉板を稼働退避動作する駆動機構と、を有し、
前記駆動機構には、その駆動シャフトに連結されて、可搬回転駆動源からの回転駆動力を前記駆動シャフトに伝達するとともに、前記駆動シャフトの回転を稼働方向と退避方向とで切り替える稼働退避操作部が設けられ、
前記稼働退避操作部が、前記駆動シャフトに回転自在に連結される稼働回転接続部と、前記稼働回転接続部に逆回転自在に連結される退避回転接続部と、を備え、
前記扉板の稼働退避動作時に、前記稼働回転接続部と前記退避回転接続部とのいずれか一方を選択して前記可搬回転駆動源を接続し、同方向に回転することで稼働動作または退避動作可能とされることにより、退避位置となっている扉板を稼働動作させる際に、前記稼働回転接続部を選択して可搬回転駆動源を接続し、あらかじめ設定された方向に回転させるだけで、扉板を稼働位置にすることができる。この際、モータ等の駆動源を駆動機構として防水板に組み込む必要がないので、設置コストを削減して、メンテナンス作業に必要な時間や手間を削減することができる。同時に、また、可搬回転駆動源が防水板に組み込まれた構成とはなっていないため、急な出水時にもモータが水没することがなく、緊急時に動作できないといった不具合の発生を防止することができる。さらに、稼働退避動作において、前記稼働回転接続部と前記退避回転接続部とを選択していずれか一方を回転させるだけでいずれかの動作をおこなうことが可能となり、緊急浸水対応時など、作業者があわててしまいミスの発生しやすい状況でも、確実に稼働動作をさせることが可能となる。また、稼働動作と退避動作とに必要な回転方向を同じ方向となるように設定してあることにより、冷静でない状態の作業者であっても、駆動におけるミスを無くすことが可能となる。
【0009】
本発明の前記稼働退避操作部が、近接配置された前記稼働回転接続部または前記退避回転接続部のいずれかを隠蔽するとともに、隠蔽した側に前記可搬回転駆動源の回転部材が連結できないように切り替え可能とする連結切替規制部を備えたことにより、連結切替規制部が稼働動作時に退避回転接続部を隠蔽する(覆う)ことで、この退避回転接続部に可搬回転駆動源の回転部材を接続できない状態を維持し、また、連結切替規制部が退避動作時に稼働回転接続部を隠蔽する(覆う)ことで、この稼働回転接続部に可搬回転駆動源の回転部材を接続できない状態を維持することができる。これにより、緊急浸水対応時など、作業者があわててしまいミスの発生しやすい状況でも、ミスの発生を確実に防止して、稼働退避動作をさせることが可能となる。
【0010】
本発明の前記稼働退避操作部には、前記連結切替規制部による前記稼働回転接続部と前記退避回転接続部との切り替えに連動して、前記可搬回転駆動源を接続可能な側を表示するかまたは隠蔽される切替表示が設けられることにより、連結切替規制部が、前記稼働回転接続部と前記退避回転接続部との一方を隠蔽する際に、対応する切替表示の一方が連動して隠蔽される。これにより、稼働動作あるいは退避動作のいずれかを選択する際に、可搬回転駆動源の回転部材を接続可能な側を切替表示によって明示して、緊急浸水対応時など、作業者があわててしまいミスの発生しやすい状況でも、ミスの発生を確実に防止して、稼働退避動作をさせることが可能となる。
【0011】
本発明において、前記稼働退避操作部において、
前記稼働回転接続部が、
前記駆動シャフトに回転駆動力を伝達する駆動ギアに連結された稼働回転接続ギアと、
前記稼働回転接続ギアを回転自在に支持する稼働回転接続軸と、
前記稼働回転接続軸の一端に設けられ前記扉板の稼働動作時に前記可搬回転駆動源の回転部材を接続可能とする稼働回転接続端と、
を有し、
前記退避回転接続部が、
前記稼働回転接続ギアに連結された退避回転接続ギアと、
前記退避回転接続ギアを回転自在に支持する退避回転接続軸と、
前記退避回転接続軸の一端に設けられ前記扉板の退避動作時に前記可搬回転駆動源の回転部材を連結可能とする退避回転接続端と、
を有することにより、扉板を稼働駆動させる際には、可搬回転駆動源の回転部材を稼働回転接続端に接続して、この稼働回転接続端を回転させる。すると、稼働回転接続端の設けられた稼働回転接続軸が回転し、この回転駆動力は、稼働回転接続軸に連結された稼働回転接続ギアから駆動ギアに伝わり、駆動ギアに連結された駆動シャフトが回転駆動される。このとき、退避回転接続ギアは、稼働回転接続ギアに連結されているため、退避回転接続軸が稼働回転接続軸と逆方向に回転する。
同様に、扉板を退避駆動させる際には、可搬回転駆動源の回転部材を退避回転接続端に接続して、この回転接続端を回転させる。すると、退避回転接続端の設けられた退避回転接続軸が回転し、この回転駆動力は、退避回転接続軸に連結された退避回転接続ギアから稼働回転接続ギアに伝わり、稼働回転接続ギアから駆動ギアに伝わり、動ギアに連結された駆動シャフトが回転駆動される。このとき、退避回転接続軸は、稼働駆動時の稼働回転接続軸と同じ方向に回転されており、退避回転接続軸は、稼働駆動時と逆方向に回転している。
これにより、退避駆動時の退避回転接続軸の回転方向と、稼働駆動時の稼働回転接続軸の回転方向とを、同じ方向に設定して、稼働退避動作をおこなうことが可能となる。
【0012】
また、本発明において、前記連結切替規制部が、前記稼働回転接続部を覆う退避位置と前記退避回転接続部を覆う稼働位置との間を切り替えて移動可能な覆板部を有することにより、作業者が覆板部の位置を一見するだけで、それ以上の確認動作をおこなうことなく、して、退避回転接続端と稼働回転接続端とのいずれか一方を選択して、可搬回転駆動源の回転部材の接続する側を判別し、退避動作と稼働動作とのいずれかをおこなうことが可能となる。
【0013】
また、前記稼働退避操作部が、前記扉板の稼働退避動作開始から前記稼働回転接続軸における積算回転数を表示する回転数表示部を備えたことにより、退避位置から稼働位置まで、あるいは、稼働位置から退避位置まで扉板を駆動する際に、可搬回転駆動源からの駆動動作が終了するまでに対する駆動割合を正確に表示することができる。特に、大型の防水板においては、可搬回転駆動源が駆動シャフトの回転状態にたいして、低トルク高回転数として設定された場合など、駆動終了までに必要な時間が長いため、このような表示によって、可搬回転駆動源からの駆動力伝達がどのくらいおこなわれたか、つまり、動作終了に対する駆動力伝達の到達度を認識することが可能となる。これにより、動作終了時を予測することができるため、動作終了時に、適切な駆動状態で可搬回転駆動源を停止し、駆動シャフトが過回転することで生じる不具合発生を防止することができる。また、動作終了時を予測することができることにより、可搬回転駆動源からの駆動力伝達終了、つまり、可搬回転駆動源を稼働退避操作部へ接続している状態終了までの残り時間を正確に予測することができる。
【0014】
また、前記回転数表示部が、表示する前記稼働回転接続軸の積算回転数が、前記扉板の稼働退避動作終了近傍であることを表示する動作終了予告表示を備えたことにより、動作終了時を容易に予測することができるため、動作終了時に、適切な駆動状態で可搬回転駆動源を停止し、駆動シャフトが過回転することで生じる不具合発生を容易に防止することができる。また、動作終了時を予測することができることにより、可搬回転駆動源からの駆動力伝達終了、つまり、可搬回転駆動源を稼働退避操作部へ接続している状態終了までの残り時間を簡便に予測することができる。
【0015】
また、前記稼働回転接続端および前記退避回転接続端が同一形状とされて、前記可搬回転駆動源の回転部材が対応して接続可能な形状とされ、これらが凹凸形状に設定されることにより、稼働回転接続端と可搬回転駆動源の回転部材、および、退避回転接続端と可搬回転駆動源の回転部材を、容易に接続して、確実に駆動力を伝達することが可能となる。また、稼働回転接続端および退避回転接続端が同一形状とされることで、一台の可搬回転駆動源の回転部材を備えるだけで、稼働回転接続端および退避回転接続端の双方を回転させることが可能となる。
なお、例えば、可搬回転駆動源の回転部材をインパクトレンチのソケットとし、稼働回転接続端および退避回転接続端が互いに同一寸法で、ソケットに対応する形状のボルトヘッドとすること、あるいは、可搬回転駆動源の回転部材をインパクトレンチのヘキサゴンソケットとし、稼働回転接続端および退避回転接続端が互いに同一寸法で、ソケットに対応する形状の角穴付きボルトヘッドとすることなどが可能である。
また、可搬回転駆動源の回転部材を動力工具等のソケットとすることで、可搬回転駆動源が使用できない場合でも、対応する形状ソケットとされるソケットレンチ等を用いて、手動で防水板を駆動することができる。
さらに、可搬回転駆動源の回転部材と、稼働回転接続端および退避回転接続端がこれに対応して回転駆動可能な形状であれば、これらの形状に限定されるものではない。
【0016】
本発明においては、前記可搬回転駆動源が可搬電動機とされることにより、モータおよび二次電池などの電源を有する動力工具、例えば、インパクトレンチ、電動ドライバーなど、従来からある工具等を活用することができる。
ができる。
【0017】
また、前記稼働退避操作部が、退避状態の前記扉板で覆われない位置に設けられることにより、扉板が退避位置とされた状態から稼働動作させる際に、障害なく可搬回転駆動源の回転部材を稼働退避操作部に対して接続することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メンテナンスが簡単で、低コストで緊急時にもミスを防止して確実に動作させることが可能で、かつ、大型化可能な防水板を提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る防水板の第1実施形態における起倒操作部を示す平面図である。
図2】本発明に係る防水板の第1実施形態における起倒操作部を示す説明図である。
図3】本発明に係る防水板の第1実施形態における起倒操作部を示す側断面図である。
図4】本発明に係る防水板の第1実施形態における連結切替規制部の動作を示す平面図である。
図5】本発明に係る防水板の第1実施形態における可搬回転駆動源を示す正面図である。
図6】本発明に係る防水板の第1実施形態を示す全体構成平面図である。
図7図6におけるvii-vii線矢視相当拡大断面説明図である。
図8図6におけるヒンジの動作説明図である。
図9図7におけるix-ix線矢視相当拡大断面図である。
図10図7におけるx-x線矢視相当拡大断面図である。
図11】本発明に係る防水板の実施形態の回転部材における他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る防水板の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における防水板における起倒操作部を示す平面図であり、図5は、本実施形態における可搬回転駆動源を示す正面図であり、図6は、本実施形態における防水板を示す平面図であり、図において、符号100は、起倒操作部であり、符号10は、防止扉である。
【0021】
本実施形態に係る防水板(防水扉)10は、図6に示すように、略水平な倒伏位置(退避位置)と略鉛直な起立位置(稼働位置)との間で揺動して起倒動作される扉板21と、扉板21を起倒動作(稼働退避動作)する駆動機構50と、駆動機構50の起倒操作部(稼働退避操作部)100を介して接続可能とされる可搬回転駆動源190(図5)と、を有する。
【0022】
図7は、図6におけるvii-vii線矢視相当拡大断面説明図であり、図8は、図6におけるヒンジの動作説明図であり、図9は、図7におけるix-ix線矢視相当拡大断面図であり、図10は、図7におけるx-x線矢視相当拡大断面図である。
扉板21は、図6に示すように、図示しない建物の通路を横断する長方形に形成されており、縦横に組み合わせる補強材22、22…が裏面に付設されている。扉板21は、ヒンジ30、30…を介し、建物の通路に設置するケース40の上面に起倒自在に装着されている。
【0023】
ケース40は、上部開放の箱形のケース本体41を通路の床面FLに埋設して構成されており、ケース40の前面側には、パッキン45a付きの扉枠45、45が左右に立設されている。なお、ケース本体41の前部上端縁には、縁材43が付設されている。また、ケース本体41の後部には、補強材42が付設され、前後の支持材44a、44aを介し、点検用の蓋板44が開閉自在に装着されている。
【0024】
ケース本体41の前端面には、パッキン収納レール41a1を介してパッキン41aが内向きに突設されている(図7図8)。なお、パッキン41aは、両端を扉枠45、45のパッキン45a、45aに連続させることにより、全体として上部開放のコ字状に形成されている。また、扉枠45、45は、通路の両側の図示しない壁に付設されている。
【0025】
各ヒンジ30は、扉板21側の補強板25に取り付ける可動ヒンジ31、31と、補強ブロック41cを介してケース40の前部に立設する固定ヒンジ32とを備えている(図6図8)。可動ヒンジ31、31、固定ヒンジ32は、リンク33、33を介して相対回転自在に連結されており(図7図8)、可動ヒンジ31、31、リンク33、33は、それぞれ固定ヒンジ32の両側に配設されている。
【0026】
固定ヒンジ32には、前部から上部後方に向って斜め上向きに湾曲し、さらに前向きに折り返すフック状のガイド孔32aが形成されている。可動ヒンジ31、31の先端部は、ローラ31bを有するヒンジピン31aを介して連結されており、ローラ31bは、ガイド孔32aに沿って転動することができる。また、各リンク33の両端は、連結ピン33a、33bを介し、それぞれ可動ヒンジ31の基部、固定ヒンジ32の前部下方に対して回転自在に連結されている。そこで、扉板21は、ヒンジ30、30…を介し、床面FLに倒伏する退避状態または待機状態(図7図8の各実線)と、床面FLに対して垂直に起立し、パッキン41a、45a、45aを介して扉枠45、45に密着する稼働状態または使用状態(図7の二点鎖線)との間に前後に起倒動作(稼働退避動作)させることができる。
【0027】
各ヒンジ30は、扉板21の起立動作の開始時において(図8の矢印K1方向、同図の二点鎖線)、可動ヒンジ31、31が扉板21とともに連結ピン33aを中心として回転し、ヒンジピン31a、ローラ31bがガイド孔32aに沿って後方に移動することによりリンク33、33が後方に揺動し(同図の矢印K2方向)、可動ヒンジ31、31を介して扉板21を一時的に後退させることができる。ただし、ガイド孔32aは、連結ピン33aを中心とするヒンジピン31aの旋回軌跡に比し、後方に長く伸びているものとする。また、扉板21は、ほぼ垂直にまで起立(起立位置)すると、ヒンジピン31a、ローラ31bがガイド孔32aの上部に沿って前進し、リンク33、33が連結ピン33bを中心にして前方に揺動することにより、前方に平行移動するようにして扉枠45、45に密着させることができる。
【0028】
ケース40の後部には、駆動機構50が組み込まれている(図6図7)。
駆動機構50は、可搬回転駆動源190が起倒操作部(稼働退避操作部)100を介して接続可能とされる共通の駆動シャフト110、ギアユニット52、個別のギアユニット54、54、55、55を組み合わせて構成されている。駆動モータ51の軸端には、カップリング51bを介してギアユニット52が連結されている。ギアユニット52の両軸形の出力軸52b、52bは、それぞれ自在継手53a、連結軸53、自在継手53bを介してギアユニット54に連結されている。
【0029】
各ギアユニット54の出力軸は、カップリング54cを介してギアユニット55に連結されており、各ギアユニット55の出力軸には、スプロケット56が装着されている。なお、ギアユニット52、各ギアユニット54には、所定の減速比のギア機構が組み込まれており、各ギアユニット55には、ウォームギア機構が組み込まれている。各ギアユニット54は、支持ブロック54dを介してケース本体41の底面に設置されており、各ギアユニット55は、ケース40の補強板46上に設置されている。
【0030】
駆動レバー11、11、チェーン12、12は、扉板21の左右両端部に対応するようにして、ケース40の左右に各1組が配設されている。各駆動レバー11は、左右一対の連結板11c、11cを介して両端のロッド11a、11bを連結して形成されている。ロッド11aは、ピン11a1を介して扉板21の下方のブラケット11d、11dに回転自在に連結されており、ピン11a1は、駆動レバー11の揺動中心となっている。なお、ブラケット11d、11dは、共通のベース板11d1を介し、ケース40の補強板46上に立設されている。
【0031】
ロッド11bの先端には、軸11b1を介してローラ11e、11eが回転自在に装着されている(図7図9)。各ローラ11eは、止めねじ11e1、座金11e2を介して軸11b1に外れ止めされており、軸11b1には、ロッド11b、ローラ11eの間にスペーサ11e3が装着されている。なお、扉板21の裏面には、補強材22、22を介して各駆動レバー11のローラ11e、11eが係合する係合レール23、23が付設され、ローラ11e、11eに対応して補強材22、22の間に別の係合レール24が付設されている。そこで、ローラ11e、11eは、係合レール23、23と係合レール24との間に形成される隙間内を前後に転動することができる。
【0032】
各駆動レバー11の連結板11c、11cには、チェーン12の両端が連結されている(図7図10)。連結板11c、11cの中間部には、上下のピン11c1、11c1を介して連結ブロック11f、11fが回転自在に取り付けられている。なお、下方のピン11c1は、連結板11c、11cの下向きの突出部分に配置されており、ピン11c1、11c1は、それぞれ止めリング11c2、11c2を介して抜け止めされている。また、各連結ブロック11fは、メタルブッシュ11f1、11f1を介してピン11c1に回転自在に装着されており、スペーサ11f2、11f2を介して連結板11c、11c間に正しく位置決めされている。なお、一方の連結ブロック11fには、チェーン12の一端が直接連結されており、他方の連結ブロック11fには、テンション調整用のターンバックル11gと、連結金具11hとを介してチェーン12の他端が連結されている。
【0033】
各チェーン12は、ケース40の前後に配設するスプロケット57、56に掛けられており、スプロケット57は、ケース40の補強板46上のブラケット58を介して支持されている。そこで、チェーン12、12は、駆動レバー11、11を駆動機構50に連結し、個別のスプロケット56、56、個別のギアユニット55、55、54、54、共通のギアユニット52を介して共通の駆動シャフト110に連結され、起倒操作部100を介して可搬回転駆動源190から回転駆動された共通の駆動シャフト110によって駆動レバー11、11を一斉に前後に揺動させることができる。
【0034】
起倒操作部(稼働退避操作部)100は、駆動シャフト110に連結されて、可搬回転駆動源190からの回転駆動力を駆動シャフト110に伝達するとともに、駆動シャフト110の回転を起立方向と倒伏方向とで切り替え可能とされる。
【0035】
図2は、本実施形態における防水板における起倒操作部を示す説明図であり、図3は、起倒操作部を示す側断面図であり、図4は、起倒操作部における連結切替規制部の動作を示す平面図である。
起倒操作部100は、図1図3に示すように、駆動シャフト110に回転自在に連結される起立回転接続部(稼働回転接続部)120と、起立回転接続部120に逆回転自在に連結される倒伏回転接続部(退避回転接続部)130と、連結切替規制部140と、回転数表示部150と、を備える。
起倒操作部100は、図6に示すように、倒伏状態の扉板21で覆われない位置に設けられる。また、起倒操作部100は、蓋板44と分離されたカバー101を有し、後述するように起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とが露出可能にされている。
【0036】
起立回転接続部120が、起立回転接続ギア(稼働回転接続ギア)121と、起立回転接続ギア121を回転自在に支持する起立回転接続軸(稼働回転接続軸)122と、起立回転接続軸122の一端に設けられ扉板21の起立動作時に可搬回転駆動源190の回転部材191を接続可能とする起立回転接続端(稼働回転接続端)123と、を有する。
【0037】
倒伏回転接続部130は、起立回転接続ギア121に連結された倒伏回転接続ギア(退避回転接続ギア)131と、倒伏回転接続ギア131を回転自在に支持する倒伏回転接続軸(退避回転接続軸)132と、倒伏回転接続軸132の一端に設けられ扉板21の倒伏動作時に可搬回転駆動源190の回転部材191を連結可能とする倒伏回転接続端(退避回転接続端)133と、を有する。
【0038】
起立回転接続ギア121と倒伏回転接続ギア131とは、互いに噛合した平歯車とされ、ほぼ等しい歯数に設定される。
起立回転接続ギア121は、図3に示すように、起立回転接続軸122と平行な軸152に取り付けられたギア151に噛合し、軸152に取り付けられたカサ歯車155、カサ歯車155に噛合するカサ歯車115、軸152と直交してカサ歯車115が取り付けられた軸112、軸112に取り付けられたギア117を介して、駆動シャフト110に取り付けられた駆動ギア111に連結されている。
【0039】
起立回転接続軸122と倒伏回転接続軸132と軸152とはいずれも略鉛直方向に平行状態に配置され、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とは、起倒操作部100の表側のカバー101から露出するように近接配置されている。
【0040】
起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とは、同一形状かつ互いに同一寸法で、可搬回転駆動源190の回転部材191が対応して接続可能な形状とされている。
具体的には、起立回転接続端123が、起立回転接続軸122と同軸とされてボルトヘッドのように六角断面あるいは四角断面を有する形状倒される。この際、起立回転接続端123の径方向寸法が、起立回転接続軸122の径方向寸法よりも小さく設定されることができる。
【0041】
同様に、倒伏回転接続端133が、倒伏回転接続軸132と同軸とされてボルトヘッドのように六角断面あるいは四角断面を有する形状倒される。この際、倒伏回転接続端133の径方向寸法が、倒伏回転接続軸132の径方向寸法よりも小さく設定されることができる。
【0042】
起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とは、同一水平面位置となるようにカバー101から突出して設けられる。なお、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とは、同一水平面位置であればカバー101よりもケース40の縁材43下側位置として設けられてもよい。
【0043】
起立回転接続端123に可搬回転駆動源190の回転部材191を接続して回転させた場合、その駆動力が、起立回転接続ギア121、ギア151、軸152、カサ歯車155、カサ歯車115、軸112、ギア117を介して、駆動シャフト110に取り付けられた駆動ギア111に伝達される。
このとき、倒伏回転接続ギア131は、起立回転接続ギア121と逆方向に回転するが、駆動シャフト110の回転には寄与しない。
【0044】
また、倒伏回転接続端133に可搬回転駆動源190の回転部材191を接続して回転させた場合、その駆動力が、倒伏回転接続ギア131、起立回転接続ギア121、ギア151、軸152、カサ歯車155、カサ歯車115、軸112、ギア117を介して、駆動シャフト110に取り付けられた駆動ギア111に伝達される。
したがって、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とを、同一方向に回転駆動させることで、起立動作、および倒伏動作をおこなうことができる。
【0045】
可搬回転駆動源190は、図5に示すように、可搬電動機、例えば、モータおよび二次電池などの電源を有して可搬状態で駆動可能な動力工具、例えば、インパクトレンチ、電動ドライバーなどとされることができ、その回転駆動方向が、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133との駆動方向と一致するように設定されている。
【0046】
可搬回転駆動源190は、起倒操作部100の近傍に備え付けられていればよく、扉板21を配置した場所にとらわれることなく水没しない状態で備えておくことができる。
可搬回転駆動源190の回転部材191は、従来からあるインパクトレンチのソケットとされることができ、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133に接続可能な形状・寸法とされている。
【0047】
あるいは、本実施形態においては、可搬回転駆動源190の回転部材191をインパクトレンチのヘキサゴンソケットとし、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133が互いに同一寸法で、このソケットに対応する形状の角穴付きボルトヘッドとすることも可能である。
【0048】
さらに、可搬回転駆動源190の回転部材191と、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133とが、対応して回転駆動可能な形状として設定されていれば、これらの形状に限定されるものではない。
例えば、回転部材191と、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133とが、対応可能な凹凸形状とされることができ、具体的には、図11(a)に示すように、回転部材191をマイナスドライバ-形状とし、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133とをマイナスネジのヘッドとする、あるいは、図11(b)に示すように、回転部材191をプラスドライバ-形状とし、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133とをプラスネジのヘッドとするなど、互いに対応した凹形状と凸形状とを有する構成とすることができる。
【0049】
このように、可搬回転駆動源190を動力工具等とし、その回転部材191をソケットとすることで、あらかじめ用意した可搬回転駆動源190が使用できない場合でも、対応する形状ソケットを有する他の動力工具を活用する、あるいは、対応する形状ソケットとされるソケットレンチ等の工具等を活用して手動で防水扉を駆動することが可能となる。
【0050】
連結切替規制部140は、近接配置された起立回転接続端123または倒伏回転接続端133のいずれかを覆うとともに、覆った側に可搬回転駆動源190の回転部材191が連結できないように切り替え可能とされている。
連結切替規制部140は、図1に示すように、倒伏回転接続端133を覆う起立位置と、図4に示すように、起立回転接続端123を覆う倒伏位置との間を切り替えて移動可能な覆板部141を有する。
【0051】
覆板部141は、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133との上側近傍に離間して配置されている輪郭矩形状の板体とされている。
覆板部141は、矩形状の長手方向が起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とを結ぶ水平方向と直交する方向に延在し、その一端には、移動規制部142が接続されている。また、覆板部141の矩形状長手方向の一辺には、その一部に平板状の覆板部141から上向きに折り曲げられた折り曲げ辺141aが形成されている。
【0052】
移動規制部142は、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とを結ぶ水平方向に形成された2本の平行な長穴部143,143を有し、この長穴部143,143をそれぞれ貫通してカバー101表面から上向きに突出した支持部144,144によって、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とを結ぶ水平方向にスライド可能に支持されている。
【0053】
長穴部143,143は、少なくとも起立回転接続端123と倒伏回転接続端133との水平方向距離よりも長い寸法として形成され、本実施形態では、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とを結ぶ水平方向に対して、直交する向きに、オフセット状態として配置されている。
移動規制部142の輪郭形状も、この長穴部143,143の配置に対応して、2つの矩形を長手方向にずらして接続した形状とされている。
【0054】
長穴部143,143が、支持部144,144に対して摺動することで、長穴部143,143の長さに対応した距離だけ、移動規制部142がスライド可能となる。これにより、この移動規制部142に固定接続された覆板部141が、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133との上側近傍位置を覆うようにスライド可能とされている。
【0055】
このとき、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133とのうち、覆板部141に覆われた側となるいずれか一方は、覆板部141にじゃまされて、可搬回転駆動源190の回転部材191が接続できないようになり、起立回転接続端123と倒伏回転接続端133との駆動切り替えを、容易に判別することができる。
【0056】
また、起倒操作部100は、起立回転接続端123の近傍となるカバー101表面に「上昇」等の切替表示128を設け、また、倒伏回転接続端133との近傍となるカバー101表面に「下降」等の切替表示138を設けることができる。
これらの切替表示128,138は、連結切替規制部140の覆板部141が、図1に示すように、倒伏回転接続端133を覆うとともに、起立回転接続端123が露出した起立位置にある場合には、この「上昇」の切替表示128が露出して「下降」の切替表示138が覆われており、また、覆板部141が、図4に示すように、倒伏回転接続端133が露出するとともに、起立回転接続端123が覆われた倒伏位置である場合には、この「上昇」の切替表示128が覆われて「下降」の切替表示138が露出した状態となる位置に設けられる。
なお、これらの切替表示128,138は、「上昇」「下降」等の文字ではなく、矢印、あるいは、扉板21におけるそれぞれの状態を示すデザイン、図形、色、盛り上がり形状、切欠き形状などとしてもよい。
【0057】
回転数表示部150は、図1図4に示すように、扉板21の起倒動作開始から起立回転接続軸122における積算回転数を表示するものとされる。具体的には、起立回転接続軸122に対して、起立回転接続ギア121およびギア151を介して連結される軸152の回転数を検出するものとされる。
あるいは、駆動シャフト110における積算回転数を表示する構成、あるいは、駆動シャフト110に連結された他の軸における積算回転数を表示する構成とすることもできる。
【0058】
回転数表示部150は、図示しないエンコーダの回転数検出手段により、軸152の回転数を検出し、積算した回転数を表示部150aに表示する。
表示部150aは、カバー101の表面で、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133の近傍に配置されている。
回転数表示部150は、実際の積算回転数を表示してもよいし、起倒動作の開始から終了までを模式的に表示可能なインジケータなどとすることもできる。
【0059】
回転数表示部150には、表示する積算回転数が、扉板21の起倒動作終了近傍であることを表示する動作終了予告表示150bを有することができる。回転数表示部150が実際の積算回転数を表示する場合には、例えば残り2000回程度とされる積算回転数を表示部150a近傍に表示してもよいし、あるいは、回転数表示部150がインジケータとされた場合には、例えば残り2000回程度とされた際に、インジケータの表示色を変化させる等の機構を有することもできる。
【0060】
本実施形態における防水扉10は、次のようにして扉板21を起倒させることができる。
【0061】
床面FL上に倒伏した倒伏位置とされる待機状態の扉板21を起立させるときは、まず、所定位置に配備されていた可搬回転駆動源190(図5)を用意する。
そして、起倒操作部100における連結切替規制部140の覆板部141が、図1に示すように、倒伏回転接続端133および「下降」の切替表示を覆うとともに、起立回転接続端123および「上昇」の切替表示が露出した起立位置にあることを確認する。
【0062】
なお、覆板部141が、図4に示すように、倒伏回転接続端133および「下降」の切替表示が露出するとともに、起立回転接続端123および「上昇」の切替表示が覆われた倒伏位置である場合には、折り曲げ辺141aを操作して移動規制部142を起立位置にスライドさせて、起立回転接続端123を露出させる。
【0063】
次いで、可搬回転駆動源190の回転部材191を起立回転接続端123に接続して、あらかじめ設定された起立回転方向に回転駆動する。
すると、可搬回転駆動源190の回転駆動力が、起立回転接続ギア121、ギア151、軸152、カサ歯車155、カサ歯車115、軸112、ギア117を介して、駆動シャフト110に取り付けられた駆動ギア111に伝達されて、駆動シャフト110が起立方向(正方向)に回転する。
【0064】
このとき、回転数表示部150において、動作終了予告表示150bの参照しながら終了時点を見定めて表示部150aの積算回転数を確認しつつ、可搬回転駆動源190による回転駆動をおこなう。
【0065】
すると、駆動機構50において、駆動シャフト110を介してチェーン12、12を正方向に走行駆動することにより(図7の矢印K3方向)、駆動レバー11、11を前方に起立させる(同図の矢印K4方向)。そこで、駆動レバー11、11は、それぞれ先端のローラ11e、11eを介し、扉板21の裏面の係合レール24に係合しながら前方に移動し、扉板21の後部を上方に押し上げることができる。その後、駆動レバー11、11は、さらに前方に揺動することにより、扉板21を最終的に使用状態にまで起立させて扉枠45、45に密着させることができる(図7の二点鎖線)。
【0066】
このとき、回転数表示部150において、積算回転数を確認して所定の値となって、扉板21が起立位置となったことが確認できたら、可搬回転駆動源190による回転駆動を停止し、可搬回転駆動源190と起立回転接続端123との接続を解除する。
【0067】
また、使用状態の扉板21を倒伏させるときは、起倒操作部100における連結切替規制部140の覆板部141が、図4に示すように、倒伏回転接続端133および「下降」の切替表示が露出するとともに、起立回転接続端123および「上昇」の切替表示が覆われて隠蔽された倒伏位置であることを確認する。
【0068】
なお、覆板部141が、図1に示すように、倒伏回転接続端133および「下降」の切替表示を覆って隠蔽するとともに、起立回転接続端123および「上昇」の切替表示が露出した起立位置にある場合には、移動規制部142を起立位置にスライドさせて、倒伏回転接続端133を露出させる。
【0069】
次いで、可搬回転駆動源190の回転部材191を倒伏回転接続端133に接続して、あらかじめ設定された倒伏回転方向に回転駆動する。このとき、倒伏回転接続端133の倒伏回転方向は、起立回転接続端123の起立回転方向と同じ方向となるように設定されている。
つまり、可搬回転駆動源190の回転駆動方向は起立動作(稼働動作)および倒伏動作(退避動作)のいずれにおいても同方向となるように設定されている。
【0070】
すると、可搬回転駆動源190の回転駆動力が、倒伏回転接続端133、起立回転接続ギア121、ギア151、軸152、カサ歯車155、カサ歯車115、軸112、ギア117を介して、駆動シャフト110に取り付けられた駆動ギア111に伝達されて、駆動シャフト110が倒伏方向(逆方向)に回転する。
【0071】
このとき、回転数表示部150において、動作終了予告表示150bの参照しながら終了時点を見定めて表示部150aの積算回転数を確認しつつ、可搬回転駆動源190による回転駆動をおこなう。
【0072】
すると、駆動機構50において、駆動シャフト110を介してチェーン12、12を逆方向に走行させ(図7の矢印K3の反対方向)、駆動レバー11、11を後方に揺動させればよい(同図の矢印K5方向)。このときの駆動レバー11、11は、それぞれローラ11e、11eが係合レール23、23に係合して後方に転動することにより、使用状態の扉板21を待機状態にまで積極駆動することができる(同図の実線)。
【0073】
以上の説明において、ヒンジ30、30…は、それぞれヒンジピン31aを介して可動ヒンジ31、31、固定ヒンジ32を相対回転自在に連結し、ガイド孔32aやリンク33、33、ローラ31bを有しない一般的な形式としてもよい。
【0074】
さらに、駆動機構50は、共通のギアユニット52を手動操作可能とし、電動操作、手動操作の双方可能形としてもよい。すなわち、駆動機構50は、蓋板44を取り外し、適当な手動ハンドルを介してギアユニット52を手動操作することにより、スプロケット56、56、チェーン12、12を介して駆動レバー11、11を前後に揺動させ、扉板21を手動により起倒させることができる。なお、駆動機構50は、起倒操作部100に可搬回転駆動源190を接続するかわりに、手動工具を接続して操作することもできる。
【0075】
また、チェーン12は、ローラチェーンに限らず、リンクチェーン、ブロックチェーン、ワイヤ、ベルト等の任意の索状体を使用することができ、このときのスプロケット56、57は、索状体に適合する形状に変更すればよい。なお、駆動レバー11、チェーン12は、扉板21の左右両端部を含む任意の位置に対応するように、任意の複数組を配設して、その全部を同期して駆動してもよい。
【0076】
本実施形態における防水扉10の起倒操作部100においては、扉板21を起倒動作させる際に、起立回転接続端123または倒伏回転接続端133のいずれかを選択し、接続した可搬回転駆動源190を同じ方向に回転させるだけで、扉板21を動作させることができる。したがって、この際、可搬回転駆動源190の回転方向を設定して配備しておくだけで、モータ等の駆動源を駆動機構として防水扉に組み込むことなく、起倒動作をおこなうことができる。これにより、設置コストを削減して、メンテナンスフリーとすることができる。同時に、また、可搬回転駆動源190が防水扉10に組み込まれた構成とはなっていないため、急な出水時にもモータが水没することがなく、緊急時に動作できないことがない。また、緊急浸水対応時など、作業者があわててしまいミスの発生しやすい状況でも、確実に動作をさせることが可能となる。
【0077】
さらに、連結切替規制部140の覆板部141をスライドさせて、起立回転接続端123を覆う倒伏位置と倒伏回転接続端133を覆う起立位置との間を切り替えることで、起立回転接続端123または倒伏回転接続端133のいずれかを選択して可搬回転駆動源190を接続することができる。同時に、可搬回転駆動源190を接続させないようにすることもできる。これにより、緊急浸水対応時など、作業者があわててしまいミスの発生しやすい状況でも、ミスの発生を確実に防止して、起倒動作をさせることが可能となる。
【0078】
可搬回転駆動源190がインパクトレンチとされ、回転部材191がそのソケットとされ、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133が対応して接続回転可能なボルトヘッド形状とされることで、起立回転接続端123および倒伏回転接続端133を同一寸法・形状とすることができ、可搬回転駆動源190を切り替えてどちらも回転させることができる。さらに、形状さえ合致すれば、他の動力工具や、手動用のソケットレンチなどを適用することも可能となる。このため、非常時に駆動することになる防水扉10において、動作確実性を向上させることが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態として、建物の通路の床面を大壇して設置され起上するタイプの防水扉を示したが、これ以外にも、スイングタイプ、スライドタイプの防水扉にも適応することができる。
【0080】
スイングタイプの具体例としては、略鉛直として回転自在に立設された駆動シャフトを中心として、壁面の開口部を解放閉鎖可能に設けられた扉板が水平面内方向に揺動可能とされるとともに、扉板と隣接する壁面位置に稼働退避操作部が配置される構成を例示することができる。
このタイプでは、稼働回転接続端と退避回転接続端との間で切り替えて可搬回転駆動源を接続し、扉板が壁面の開口部を解放した退避位置と、扉板が壁面の開口部を閉鎖した稼働位置との間で、扉板を駆動させることが可能である。
【0081】
スライドタイプの具体例としては、略鉛直として回転自在に立設された駆動シャフトによって、壁面の開口部を解放閉鎖可能なように扉板が水平方向に進退可能とされるとともに、扉板と隣接する壁面位置に稼働退避操作部が配置される構成を例示することができる。
このタイプでは、稼働回転接続端と退避回転接続端との間で切り替えて可搬回転駆動源を接続し、扉板が壁面の開口部を解放した退避位置と、扉板が壁面の開口部を閉鎖した稼働位置との間で、扉板を駆動させることが可能である。
【0082】
以上に示した稼働退避操作部において、切替表示として、扉板の動作が識別できるように、「閉」「開」とするか、あるいは、文字ではなく、図形、色、盛り上がり形状、切欠き形状など、動作が容易に区別できるように設定されていればよく、限定されない。
【符号の説明】
【0083】
10…防水扉(防水板)
21…扉板
50…駆動機構
100…起倒操作部(稼働退避操作部)
101…カバー
110…駆動シャフト
120…起立回転接続部(稼働回転接続部)
121…起立回転接続ギア(稼働回転接続ギア)
122…起立回転接続軸(稼働回転接続軸)
123…起立回転接続端(稼働回転接続端)
128,138…切替表示
130…倒伏回転接続部(退避回転接続部)
131…倒伏回転接続ギア(退避回転接続ギア)
132…倒伏回転接続軸(退避回転接続軸)
133…倒伏回転接続端(退避回転接続端)
152…軸
151…ギア
155…カサ歯車
115…カサ歯車
112…軸
117…ギア
111…駆動ギア
140…連結切替規制部
141覆板部
141a…折り曲げ辺
142…移動規制部
143…長穴部
144…支持部
150…回転数表示部
150a…表示部
190…可搬回転駆動源
191…回転部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11