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特許7008586封着製品の製造装置及び封着製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】封着製品の製造装置及び封着製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 9/24 20060101AFI20220118BHJP
   C03B 33/085 20060101ALI20220118BHJP
   C03B 23/057 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01J9/24 C
C03B33/085
C03B23/057
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018115512
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019220296
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】林 雅博
(72)【発明者】
【氏名】上澤 真澄
(72)【発明者】
【氏名】野村 隆利
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-257814(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0322204(US,A1)
【文献】特開平11-162409(JP,A)
【文献】特表2001-508932(JP,A)
【文献】特開平10-144265(JP,A)
【文献】特開昭55-126943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/24
C03B 33/085
C03B 23/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状をなすガラス基部の端部に棒状のリード部が封着固定されてなるステム部を備えた封着製品の製造装置であって、
前記ガラス基部の材料であるガラス管からなり、所定の封着部にて前記リード部が封着固定された封着済ガラス管から、前記封着部に連なる筒状の不要部を除去することで、前記ステム部を得る除去手段を備え、
前記除去手段は、
前記封着済ガラス管のうち少なくとも前記不要部及び前記封着部の境界部を含む部位を加熱して軟化させる加熱手段と、
前記不要部を前記封着部から遠ざかる方向に移動させることで、前記加熱手段によって軟化した前記封着済ガラス管を引き延ばす引延手段と、
前記引延手段によって前記封着済ガラス管を引き延ばす際に前記不要部内に気体を供給することで、当該不要部の内部を加圧する加圧手段と、
前記引延手段によって引き延ばされた前記封着済ガラス管を前記境界部にて切断し、前記封着部から前記不要部を切離す切断手段とを有することを特徴とする封着製品の製造装置。
【請求項2】
前記加圧手段は、先端部に気体の供給口が形成され、少なくとも前記引延手段によって前記封着済ガラス管を引き延ばす際に前記不要部内に挿通されるエアブローノズルを備えることを特徴とする請求項1に記載の封着製品の製造装置。
【請求項3】
前記エアブローノズルの外周面と前記不要部の内周面との間に設けられ、これらの間を通った、前記供給口から供給された気体の漏れ出しを抑制する漏出抑制手段を有することを特徴とする請求項2に記載の封着製品の製造装置。
【請求項4】
前記切断手段は、前記境界部を加熱するバーナーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の封着製品の製造装置。
【請求項5】
管状をなすガラス基部の端部に棒状のリード部が封着固定されてなるステム部を備えた封着製品の製造方法であって、
前記ガラス基部の材料であるガラス管からなり、所定の封着部にて前記リード部が封着固定された封着済ガラス管から、前記封着部に連なる筒状の不要部を除去することで、前記ステム部を得る除去工程を含み、
前記除去工程は、
前記封着済ガラス管のうち少なくとも前記不要部及び前記封着部の境界部を含む部位を加熱して軟化させる加熱工程と、
前記不要部を前記封着部から遠ざかる方向に移動させることで、前記加熱工程によって軟化した前記封着済ガラス管を引き延ばす引延工程と、
前記引延工程の際に前記不要部内に気体を供給することで、当該不要部の内部を加圧する加圧工程と、
前記引延工程によって引き延ばされた前記封着済ガラス管を前記境界部にて切断し、前記封着部から前記不要部を切離す切断工程とを含むことを特徴とする封着製品の製造方法。
【請求項6】
前記加圧工程では、先端部に気体の供給口が形成されたエアブローノズルが前記不要部内に挿通され、前記供給口から前記不要部内に気体が供給されることを特徴とする請求項5に記載の封着製品の製造方法。
【請求項7】
前記加圧工程では、前記エアブローノズルの外周面と前記不要部の内周面との間に、これらの間を通った、前記供給口から供給された気体の漏れ出しを抑制する漏出抑制手段が配置されることを特徴とする請求項6に記載の封着製品の製造方法。
【請求項8】
前記切断工程では、所定のバーナーにより前記境界部を加熱して前記封着済ガラス管を切断することにより、前記封着部から前記不要部を切離すことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の封着製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状のガラス基部にリード部が封着固定されてなるステム部を備えた封着製品の製造装置及び封着製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
管状をなすガラス基部の端部内周に導電性金属などからなる棒状のリード部が封着固定されてなるステム部を備えた封着製品として、蛍光灯等の放電ランプや電子管などが知られている。このような封着製品は、例えば、次のような手法によって製造される。
【0003】
まず、前記ガラス基部の材料であるガラス管の内部にリード部を配置した状態で、バーナー等によってガラス管を加熱して軟化させる。その後、軟化したガラス管を小径化することでガラス管に封着部を形成し、この封着部をリード部の外周全周に密着させることにより、ガラス管にリード部を封着固定する。つまり、いわゆるシュリンクシールによってガラス管にリード部を封着固定する。これにより、封着部にてリード部が封着固定されてなる封着済ガラス管が得られる。尚、ガラス管の小径化は、例えば、ガラス管を引き延ばしたり、ガラス管内に負圧を供給したりすることによって行われる。また、封着済ガラス管は、封着部の一端に連なり最終的にガラス基部の一部を構成する筒状部と、封着部の他端に連なり最終的に除去される不要部とを備えた構成となっている。
【0004】
封着済ガラス管を得た後、封着済ガラス管から前記不要部を除去する。不要部を除去する手法としては、例えば、バーナー等により封着部及び不要部の境界部を含む部位を加熱して軟化させた上で、封着部から離れる方向に不要部を移動させることにより封着済ガラス管を引き延ばしていき、最終的に封着部から不要部を引き切る手法がある。
【0005】
しかしながら、上記の手法では、図8に示すように、不要部101の一部(引き延ばされたガラス)がリード部102の周囲に付着して残ってしまうおそれがある。このような不要部101は、リード部102に対する通電阻害を生じさせたり、リード部102の周囲に配置される部品の邪魔となったりするおそれがある。そのため、このような不要部101を除去する必要がある。
【0006】
従前における不要部101の除去手法としては、例えば、図9に示すように、所定のカッタなどを用いて不要部101の周囲に刻み目103を入れた上で、不要部101を鎚104などで叩くこと等によって、リード部102から不要部101を剥がして取り除く手法(前者の手法)が提案されている。また、図10に示すように、リード部102の外周に予め所定の非融着剤105を塗布しておくことでリード部102に対する不要部101の直接的な付着を防止しつつ、リード部102の周囲に残った(非融着剤105に付いた)不要部101を、リード部102の外周面に沿って筒状の除去具106を移動させることでしごき取るといった手法(後者の手法)も提案されている(例えば、特許文献1等参照)。後者の手法では、不要部101の除去後に、リード部102から非融着剤105を取り除く処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭47-51537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前者の手法では、不要部101を除去する際に、封着部に欠けが生じてしまったり、カッタ等によってリード部102に傷がついてしまったりするおそれがある。封着部に欠けが生じてしまうと、充填される気体などのリークが封着製品において生じてしまうおそれがあり、リード部102に傷がついてしまうと、導通不良が発生してしまうおそれがある。さらに、前者の手法では、カッタ等の定期的なメンテナンスや交換が必要であり、製造コストの増大を招いてしまうおそれがある。
【0009】
また、後者の手法では、非融着剤105を塗布したり、取り除いたりするといった面倒で手間のかかる工程を行わなければならず、生産性の低下を招いてしまうおそれがある。さらに、除去具106の内径はリード部102の外径とほぼ同一とする必要があるところ、リード部102の外径は種々異なるため、リード部102の外径に合わせた多数の除去具106を用意しなければならず、製造コストが増大してしまうおそれがある。加えて、除去具106によって不要部101をしごき取る際に、リード部102へと過大な負荷が加わってしまい、リード部102の変形や破損が生じてしまうことも考えられる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、封着部やリード部における破損や変形をより確実に防止しつつ、不要部の除去を非常に容易に行うことができ、生産性の向上や製造コストの低減を図ることができる封着製品の製造装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.管状をなすガラス基部の端部に棒状のリード部が封着固定されてなるステム部を備えた封着製品の製造装置であって、
前記ガラス基部の材料であるガラス管からなり、所定の封着部にて前記リード部が封着固定された封着済ガラス管から、前記封着部に連なる筒状の不要部を除去することで、前記ステム部を得る除去手段を備え、
前記除去手段は、
前記封着済ガラス管のうち少なくとも前記不要部及び前記封着部の境界部を含む部位を加熱して軟化させる加熱手段と、
前記不要部を前記封着部から遠ざかる方向に移動させることで、前記加熱手段によって軟化した前記封着済ガラス管を引き延ばす引延手段と、
前記引延手段によって前記封着済ガラス管を引き延ばす際に前記不要部内に気体を供給することで、当該不要部の内部を加圧する加圧手段と、
前記引延手段によって引き延ばされた前記封着済ガラス管を前記境界部にて切断し、前記封着部から前記不要部を切離す切断手段とを有することを特徴とする封着製品の製造装置。
【0013】
上記手段1によれば、不要部を除去する際には、まず、加熱手段によって、封着済ガラス管のうち少なくとも封着部及び不要部の境界部を含む部位を加熱して軟化させる。その上で、引延手段によって軟化した封着済ガラス管を引き延ばしつつ、その引き延ばし中に、加圧手段によって不要部内を加圧する。そして、切断手段によって封着済ガラス管を境界部にて切断し、封着部から不要部を切離すことで、不要部が除去される。不要部の除去により、ステム部が得られる。
【0014】
上記手段1によれば、加圧手段による不要部内の加圧により、不要部の内面に対しリード部から離間させる方への圧力が付与される。そのため、引き延ばされた封着済ガラス管(不要部)がリード部に付着してしまうことをより確実に防止できる。従って、カッタや除去具等を用いてリード部に付着した不要部を取り除く場合に懸念される、リード部に傷がついてリード部の導通不良が発生してしまったり、リード部に変形や破損が生じてしまったりするといった事態をより確実に防止することができる。また、リード部に付着した不要部を除去するためのカッタや除去具等は特段必要ないため、製造コストの増大抑制を図ることができる。
【0015】
さらに、加圧手段を用いることから、リード部に非融着剤を塗布するといった従前の手法と比して、リード部に対する不要部の付着を極めて容易に防止することができる。また、リード部から非融着剤を取り除くための工程を不要とすることができる。これらの結果、面倒で手間のかかる工程を行うことなく、リード部に対する不要部の付着を防止することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0016】
加えて、切断手段によって封着部から不要部を切離す際には、引き延ばしや加圧によって薄肉となった封着済ガラス管を切断すればよい。従って、封着部へと無理に負荷をかけずとも封着済ガラス管を比較的容易に切断することができる。これにより、強引な切断に起因して封着部に欠け等が生じてしまうことを抑制できる。その結果、封着製品において、充填される気体などのリークが生じてしまうことをより確実に防止できる。
【0017】
手段2.前記加圧手段は、先端部に気体の供給口が形成され、少なくとも前記引延手段によって前記封着済ガラス管を引き延ばす際に前記不要部内に挿通されるエアブローノズルを備えることを特徴とする手段1に記載の封着製品の製造装置。
【0018】
上記手段2によれば、不要部内にエアブローノズルを挿通し、当該エアブローノズルの先端部に形成された供給口から不要部内へと気体を供給することで、不要部内を加圧することができる。従って、不要部内の加圧を効率的かつ容易に行うことができ、生産性をより向上させることができる。
【0019】
手段3.前記エアブローノズルの外周面と前記不要部の内周面との間に設けられ、これらの間を通った、前記供給口から供給された気体の漏れ出しを抑制する漏出抑制手段を有することを特徴とする手段2に記載の封着製品の製造装置。
【0020】
上記手段3によれば、漏出抑制手段(例えば、エアブローノズル及び不要部間に配置されたOリングなど)によって、エアブローノズルの先端部から供給された気体が、不要部とエアブローノズルとの間を通って漏れ出してしまうことを抑制できる。これにより、不要部内の加圧をより効率的に行うことができ、生産性を一層向上させることができる。
【0021】
手段4.前記切断手段は、前記境界部を加熱するバーナーであることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の封着製品の製造装置。
【0022】
上記手段4によれば、切断手段は、境界部を加熱するバーナーであり、封着済ガラス管を境界部にて焼切ることができる。従って、リード部に破損等が生じてしまうことをより確実に防止しつつ、封着部から不要部を容易に切離すことができる。
【0023】
手段5.管状をなすガラス基部の端部に棒状のリード部が封着固定されてなるステム部を備えた封着製品の製造方法であって、
前記ガラス基部の材料であるガラス管からなり、所定の封着部にて前記リード部が封着固定された封着済ガラス管から、前記封着部に連なる筒状の不要部を除去することで、前記ステム部を得る除去工程を含み、
前記除去工程は、
前記封着済ガラス管のうち少なくとも前記不要部及び前記封着部の境界部を含む部位を加熱して軟化させる加熱工程と、
前記不要部を前記封着部から遠ざかる方向に移動させることで、前記加熱工程によって軟化した前記封着済ガラス管を引き延ばす引延工程と、
前記引延工程の際に前記不要部内に気体を供給することで、当該不要部の内部を加圧する加圧工程と、
前記引延工程によって引き延ばされた前記封着済ガラス管を前記境界部にて切断し、前記封着部から前記不要部を切離す切断工程とを含むことを特徴とする封着製品の製造方法。
【0024】
上記手段5によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0025】
手段6.前記加圧工程では、先端部に気体の供給口が形成されたエアブローノズルが前記不要部内に挿通され、前記供給口から前記不要部内に気体が供給されることを特徴とする手段5に記載の封着製品の製造方法。
【0026】
上記手段6によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0027】
手段7.前記加圧工程では、前記エアブローノズルの外周面と前記不要部の内周面との間に、これらの間を通った、前記供給口から供給された気体の漏れ出しを抑制する漏出抑制手段が配置されることを特徴とする手段6に記載の封着製品の製造方法。
【0028】
上記手段7によれば、上記手段3と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0029】
手段8.前記切断工程では、所定のバーナーにより前記境界部を加熱して前記封着済ガラス管を切断することにより、前記封着部から前記不要部を切離すことを特徴とする手段5乃至7のいずれかに記載の封着製品の製造方法。
【0030】
上記手段8によれば、上記手段4と同様の作用効果が奏されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】冷陰極放電管の概略構成を示す断面模式図である。
図2】製造装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】冷陰極放電管の製造工程を示すフローチャートである。
図4】加熱工程における封着済ガラス管などを示す一部破断模式図である。
図5】加圧引延工程における封着済ガラス管などを示す一部破断模式図である。
図6】切断工程における封着済ガラス管などを示す一部破断模式図である。
図7】整形工程における封着済ガラス管などを示す一部破断模式図である。
図8】従来手法を用いた場合において、リード部に不要部が付着することを説明するための断面模式図である。
図9】リード部から不要部を除去する従来手法を説明するための一部破断模式図である。
図10】リード部から不要部を除去する従来手法を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態における封着製品としての冷陰極放電管1は、ガラスからなる直管状のバルブ2と、当該バルブ2の両端に設けられたリード部3とを備えている。
【0033】
バルブ2は、内周面に蛍光被膜が形成されたものであり、本実施形態では、バルブ2における各端部側の部分によって管状のガラス基部4が構成されている。ガラス基部4は、主としてリード部3を保持する土台として機能する部位である。ガラス基部4の端部には、リード部3の外周面全周に密着する比較的小径の封着部5が形成されている。この封着部5において、リード部3はガラス基部4に対し封着固定されている。本実施形態では、ガラス基部4とこれに封着固定されたリード部3によってステム部6が構成されている。バルブ2の両端部は、ステム部6によって封止された状態となっており、バルブ2内には、少なくともアルゴンやネオン等の希ガスと微量の水銀とが封入されている。
【0034】
リード部3は、導電性の金属により形成されており、本実施形態では、中心に貫通孔の形成された円筒形状とされている。リード部3は、製品の段階では電極や通電経路として機能し、冷陰極放電管1の製造時にはバルブ2内のガス交換に用いられる。また、リード部3のうちバルブ2外に位置する端部(不図示)は、プレス処理等により閉塞された状態となっており、その結果、バルブ2内の気密性が確保されている。さらに、各リード部3は図示しない外部リードを介して電圧が印加されるようになっており、リード部3へと電圧を印加することで、冷陰極放電管1が発光するようになっている。
【0035】
上述した冷陰極放電管1は、製造装置10により製造することができる。製造装置10は、図2に示すように、ステム部製造装置20を備えており、ステム部製造装置20は、封着装置30及び除去装置40を備えている。
【0036】
封着装置30は、バルブ2(ガラス基部4)の材料であるガラス管からなり、封着部5にてリード部3が封着固定された封着済ガラス管7(図4等参照)を得るためのものである。封着装置30は、前記ガラス管の内部にリード部3を配置した状態で、当該ガラス管の所定部位を加熱して軟化させるとともに、当該ガラス管の軟化部分を小径化させてリード部3の外周に密着させる機能を有する。前記ガラス管の小径化は、例えば、前記ガラス管内が十分に低い気圧となるように前記ガラス管内を排気する(つまり、ガラス管内に負圧を供給する)こと等によってなされる。前記ガラス管における小径化した部分は、固化することで封着部5となり、その結果、封着部5にてリード部3が封着固定されてなる封着済ガラス管7が得られる。封着済ガラス管7は、最終的にバルブ2やガラス基部4を構成することとなる製品部8と、封着部5に連なる不要部9とを備えた構成となっている(図4等参照)。
【0037】
除去装置40は、封着済ガラス管7から不要部9を除去することで、ステム部6を得るためのものである。除去装置40は、引延手段としての第一回転チャック41及び第二回転チャック42、加熱手段としての引延用バーナー43、加圧手段としてのガラス管加圧装置44、切断手段としての切断用バーナー45及び整形用バーナー46を備えている。
【0038】
第一回転チャック41及び第二回転チャック42は、封着済ガラス管7を支持するとともに、支持した封着済ガラス管7を回転させたり、引き延ばしたりする機能を有する。第一回転チャック41及び第二回転チャック42は、それぞれ開閉動作可能に構成されており、図4に示すように、第一回転チャック41は、封着済ガラス管7における封着部5以外の製品部8を把持可能であり、第二回転チャック42は、封着済ガラス管7の不要部9を把持可能である。
【0039】
また、第一回転チャック41及び第二回転チャック42は、図示しない回転手段によって同期回転可能に構成されており、支持した封着済ガラス管7をその中心軸を回転軸として回転させることが可能である。
【0040】
さらに、第二回転チャック42は、第一回転チャック41に近接する前方位置と、第一回転チャック41から遠ざかる退避位置との間で進退動作可能に構成されている。第一回転チャック41及び第二回転チャック42によって封着済ガラス管7を支持した上で、第二回転チャック42を前方位置から退避位置の方(第一回転チャック41から離間する方)へと移動させることにより、封着済ガラス管7へと引き延ばし力を付与することができるようになっている。
【0041】
引延用バーナー43は、封着済ガラス管7のうち少なくとも不要部9及び封着部5の境界部を含む部位を加熱して軟化させるためのものである。引延用バーナー43は、封着済ガラス管7に近接する加熱時位置と、封着済ガラス管7から離間する退避位置との間を移動可能とされている。
【0042】
ガラス管加圧装置44は、不要部9内へと所定の気体(不活性ガスであり、本実施形態ではアルゴン)を供給し、不要部9内を加圧するものである。ガラス管加圧装置44は、エアブローノズル44aと、当該エアブローノズル44aに対し気体を供給する図示しないコンプレッサとを備えている。尚、前記コンプレッサから供給される気体の種別は、適宜変更してもよい。
【0043】
エアブローノズル44aは、少なくとも先端部が不要部9内に挿通可能な形状とされており、その中心部には、前記コンプレッサから気体が供給される気体流路44bが貫通形成されている。気体流路44bの内径は、リード部3の外径よりも十分に大きなものとされており、気体流路44bへとリード部3を挿通した状態において、エアブローノズル44aの内周面(気体流路44bを形成する面)とリード部3の外周面との間には十分に広い隙間が形成されるようになっている。そして、気体流路44bへとリード部3を挿通した状態において、前記コンプレッサから気体流路44bへと供給された気体は、前記隙間へと流入するようになっている。また、気体流路44bは、エアブローノズル44aの先端部に形成された供給口44cにて開口しており、前記コンプレッサから供給された気体は供給口44cから噴出するように構成されている。
【0044】
さらに、エアブローノズル44aのうち少なくとも不要部9に挿通される部位の外周には、漏出抑制手段としてのOリング44dが設けられている。Oリング44dは、弾性変形可能なゴムや樹脂等によって形成されており、その内周部分全周がエアブローノズル44aの外周面に接触している。また、Oリング44dは、エアブローノズル44aが不要部9に挿通された状態において、エアブローノズル44aの外周面と不要部9の内周面との間に配置される。Oリング44dによって、エアブローノズル44aの外周面と不要部9の内周面間に形成される通気面積を減少させることができ、これらの間を通った気体の漏れ出しを抑制可能である。尚、Oリング44dは、不要部9へとエアブローノズル44aを挿通した状態において、その外周部分全周が不要部9の内周面に接触するものであってもよいし、接触しないものであってもよい。Oリング44dが不要部9の内周面に接触しないものであっても、Oリング44dの存在により前記通気面積の減少が図られるため、気体の漏れ出し抑制が図られる。勿論、気体の漏れ出し抑制という面では、Oリング44dの外周部分全周が不要部9の内周面に接触するように構成することが好ましい。
【0045】
加えて、本実施形態におけるエアブローノズル44aは、第二回転チャック42と同期して動作するようになっている。すなわち、エアブローノズル44aは、第二回転チャック42の回転に合わせて回転動作し、第二回転チャック42の進退動作に合わせて前方位置と退避位置との間で進退動作する。尚、エアブローノズル44aは、必ずしも第二回転チャック42と同期動作するものである必要はなく、第二回転チャック42とは独立して動作するものであってもよい。
【0046】
切断用バーナー45は、封着済ガラス管7を封着部5及び不要部9の境界部にて切断して、封着部5から不要部9を切離すためのものである(図6参照)。切断用バーナー45は、封着済ガラス管7に近接する加熱時位置と、封着済ガラス管7から離間する退避位置との間を移動可能に構成されている。
【0047】
整形用バーナー46は、切断用バーナー45によって切断された封着済ガラス管7の被切断部分を加熱することで、被切断部分の形状を整えるためのものである(図7参照)。整形用バーナー46は、封着済ガラス管7に近接する加熱時位置と、封着済ガラス管7から離間する退避位置との間を移動可能に構成されている。
【0048】
次に、冷陰極放電管1の製造工程について説明する。冷陰極放電管1の製造工程は、図3に示すように、封着済ガラス管7を得るための封着工程P1と、封着済ガラス管7から不要部9を切離すための除去工程P2とを含む。尚、封着工程P1及び除去工程P2は、前記ガラス管の一端部及び他端部のそれぞれを対象として行われるが、どちらが対象であっても同様の工程が行われるため、以下では、前記ガラス管の一端部を対象として行われる工程について説明する。
【0049】
まず、封着工程P1においては、封着装置30によって、封着部5にてリード部3が封着固定されてなる封着済ガラス管7を得る。
【0050】
次いで、除去工程P2において、得られた封着済ガラス管7から不要部9を除去する。除去工程P2は、支持工程P21、加熱工程P22、引延工程及び加圧工程に相当する加圧引延工程P23、切断工程P24及び整形工程P25を含む。尚、除去工程P2の開始時に、第二回転チャック42、引延用バーナー43、エアブローノズル44a、切断用バーナー45及び整形用バーナー46は、それぞれ退避位置に配置された状態とされる。
【0051】
支持工程P21では、第一回転チャック41により製品部8を把持するとともに、第二回転チャック42により不要部9を把持することで、封着済ガラス管7を支持する(図4参照)。ここで、第二回転チャック42によって不要部9を把持する際に、第二回転チャック42は、退避位置から前方位置へと前進移動した上で不要部9を把持する。また、第二回転チャック42とともにエアブローノズル44aが前進移動して前方位置へと配置される。これにより、不要部9内にエアブローノズル44aの少なくとも先端部とOリング44dとが配置されるとともに、気体流路44bへとリード部3が挿通された状態となる。この状態になると、前記コンプレッサから気体流路44bへと供給される気体は、エアブローノズル44aの内周面(気体流路44bを形成する面)とリード部3の外周面との間の隙間を通って供給口44cから噴出可能となる。尚、支持工程P21において、必ずしもエアブローノズル44aを不要部9内に配置する必要はなく、少なくとも加圧引延工程P23においてエアブローノズル44aが不要部9内に配置されていればよい。
【0052】
続く加熱工程P22では、引延用バーナー43を加熱時位置へと移動させた上で、第一回転チャック41及び第二回転チャック42の回転により封着済ガラス管7を回転させつつ、引延用バーナー43によって封着済ガラス管7のうち少なくとも不要部9及び封着部5の境界部を含む部位を加熱する(図4参照)。これにより、封着済ガラス管7のうち少なくとも前記境界部を含む部位の全周が軟化した状態とされる。
【0053】
次いで、加圧引延工程P23において、封着済ガラス管7の加熱及び回転を維持した状態で、前記コンプレッサから気体流路44bへと気体を供給するとともに、第二回転チャック42を退避位置の方へと徐々に移動させていく。これにより、供給口44cから不要部9内へと気体が供給されて不要部9内が加圧されつつ、不要部9が封着部5から遠ざかる方向に移動していき、加熱により軟化した封着済ガラス管7が引き延ばされていく(図5参照)。加圧及び引き延ばしにより、封着済ガラス管7のうち少なくとも不要部9及び封着部5の境界部は薄肉とされる。尚、仮に加圧時に封着済ガラス管7の引き延ばしを行わないこととした場合、不要部9が封着部5側へと膨張して、膨張した不要部9が封着部5へと覆い被ってしまうといった事態が生じ得るが、本実施形態では、加圧時に封着済ガラス管7を引き延ばすため、このような事態の発生をより確実に防止することができる。その結果、続く切断工程P24における封着済ガラス管7の切断を容易に行うことが可能である。
【0054】
次の切断工程P24では、引延用バーナー43を退避位置へと移動させるとともに、切断用バーナー45を加熱時位置へと移動させた上で、封着済ガラス管7を回転させながら、切断用バーナー45によって封着済ガラス管7における封着部5及び不要部9の境界部を加熱するとともに、第二回転チャック42を徐々に退避位置の方へと移動させていく(図6参照)。これにより、封着済ガラス管7は、引き延ばされつつ前記境界部にて焼切られ、その結果、封着部5から不要部9が切離されることとなる。尚、不要部9の切離し後、第二回転チャック42は、退避位置へと移動した上で不要部9の把持を解除する。把持の解除された不要部9は、例えば、図示しない不要部用ホッパなどに投入される。
【0055】
最後に整形工程P25において、切断用バーナー45を退避位置へと移動させるとともに、整形用バーナー46を加熱時位置へと移動させた上で、第一回転チャック41の回転により封着済ガラス管7(製品部8)を回転させながら、整形用バーナー46によって封着済ガラス管7における被切断部分を加熱する。これにより、被切断部分を軟化させつつ、角や突起のない滑らかな表面形状となるように被切断部分が整形される。
【0056】
尚、除去工程P2の後に、アニール工程を設け、図示しないバーナー等によって、ガラス基部4及びリード部3の接触部分を加熱することで、ガラス基部4等の残留応力を除去することとしてもよい。
【0057】
また、冷陰極放電管1の製造工程は、リード部3を通してバルブ2内の排気及び希ガス等の充填(すなわちガス交換)を行い、その後、リード部3を閉塞してバルブ2内を封止する工程を含む。このような工程を経ることにより、冷陰極放電管1を製造することができる。
【0058】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ガラス管加圧装置44による不要部9内の加圧により、不要部9の内面に対しリード部3から離間させる方への圧力が付与される。そのため、引き延ばされた封着済ガラス管7(不要部9)がリード部3に付着してしまうことをより確実に防止できる。従って、カッタや除去具等を用いてリード部3に付着した不要部9を取り除く場合に懸念される、リード部3に傷がついてリード部3の導通不良が発生してしまったり、リード部3に変形や破損が生じてしまったりするといった事態をより確実に防止することができる。また、リード部3に付着した不要部9を除去するためのカッタや除去具等は特段必要ないため、製造コストの増大抑制を図ることができる。
【0059】
さらに、ガラス管加圧装置44を用いることから、面倒で手間のかかる工程を行うことなく、リード部3に対する不要部9の付着を防止することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0060】
加えて、切断用バーナー45によって封着部5から不要部9を切離す際には、引き延ばしや加圧によって薄肉となった封着済ガラス管7を切断すればよい。従って、封着部5へと無理に負荷をかけずとも封着済ガラス管7を比較的容易に切断することができる。これにより、強引な切断に起因して封着部5に欠け等が生じてしまうことを抑制できる。その結果、冷陰極放電管1において、充填される気体などのリークが生じてしまうことをより確実に防止できる。
【0061】
また、不要部9内にエアブローノズル44aを挿通し、供給口44cから不要部9内へと気体を供給することで、不要部9内を加圧することができる。従って、不要部9内の加圧を効率的かつ容易に行うことができ、生産性をより向上させることができる。
【0062】
さらに、Oリング44dによって、エアブローノズル44aの先端部から供給された気体が、不要部9とエアブローノズル44aとの間を通って漏れ出してしまうことを抑制できる。これにより、不要部9内の加圧をより効率的に行うことができ、生産性を一層向上させることができる。
【0063】
加えて、切断用バーナー45にて、封着済ガラス管7を前記境界部にて焼切ることができる。従って、リード部3に破損等が生じてしまうことをより確実に防止しつつ、封着部5から不要部9を容易に切離すことができる。
【0064】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0065】
(a)上記実施形態において、ガラス基部4は、バルブ2の一部によって構成されているが、必ずしもバルブ2の一部によって構成されたものである必要はなく、リード部が封着固定された管状のガラスであればよい。従って、バルブ2以外の管状ガラスの一部によってガラス基部を構成してもよい。また、管状ガラスの全部によってガラス基部を構成してもよい(つまり、ガラス基部が単独部品であってもよい)。
【0066】
(b)上記実施形態では、封着製品としての冷陰極放電管1に本発明の技術思想を適用しているが、本発明の技術思想は、ガラス基部にリード部を封着固定してなるステム部を備えた様々な封着製品に適用可能である。従って、例えば、封着製品としての放電ランプに対し、本発明の技術思想を適用してもよい。勿論、本発明の技術思想を、放電ランプや冷陰極放電管といった発光装置以外の封着製品(例えば、電子管やステム部単体など)に適用してもよい。
【0067】
(c)上記実施形態において、リード部3は中心に貫通孔を備えた円筒形状とされているが、リード部の形状はこれに限られるものではなく、貫通孔のない中実棒状や線状(糸状)などであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態において、リード部3は、製品の段階では電極等として機能し、製造段階ではガス交換に用いられているが、リード部の用途については適宜変更可能である。従って、例えば、製品の段階ではリード部が単なる通電経路として機能するようにしてもよい。また、製造段階ではリード部が液体の注入などに用いられるようにしてもよい。
【0069】
(d)上記実施形態では、切断手段として切断用バーナー45が設けられているが、切断手段は封着済ガラス管7を切断可能なものであればよく、例えば、切断手段として所定の刃などを用いてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、引延用バーナー43とは別に切断用バーナー45が設けられているが、引延用バーナー43が切断用バーナー45を兼ねることとしてもよい。すなわち、加熱手段が切断手段を兼ねることとしてもよい。
【0071】
(e)上記実施形態において、ステム部製造装置20は封着装置30及び除去装置40を備えており、除去装置40は、封着装置30によって得られた封着済ガラス管7を対象として不要部9の除去処理を行うように構成されている。これに対し、封着装置30を設けることなく、除去装置40が、別途製造された封着済ガラス管7を対象として不要部9の除去処理を行うように構成してもよい。
【0072】
(f)上記実施形態において、漏出抑制手段はOリング44dによって構成されているが、漏出抑制手段は、エアブローノズル44aの外周面と不要部9の内周面との間からの気体の漏出を抑制可能なものであればよい。従って、例えば、径方向に沿って比較的容易に変形可能な材料(例えば発泡性樹脂など)からなり、エアブローノズル44aの外周に設けられる筒状部材によって漏出抑制手段を構成してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…冷陰極放電管(封着製品)、3…リード部、4…ガラス基部、5…封着部、6…ステム部、7…封着済ガラス管、9…不要部、10…(封着製品の)製造装置、40…除去装置(除去手段)、41…第一回転チャック(引延手段)、42…第二回転チャック(引延手段)、43…引延用バーナー(加熱手段)、44…ガラス管加圧装置(加圧手段)、44a…エアブローノズル、44c…供給口、44d…Oリング(漏出抑制手段)、45…切断用バーナー(切断手段)。
図1
図2
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図10