(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20220118BHJP
A62C 3/10 20060101ALI20220118BHJP
B63C 9/125 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A62B35/00 A
A62C3/10
B63C9/125 100
(21)【出願番号】P 2018160844
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390019301
【氏名又は名称】高階救命器具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】三橋 綾史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 祐樹
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511726(JP,A)
【文献】特開2005-343392(JP,A)
【文献】特開2013-52221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00-99/00
A62C 2/00-99/00
B63C 9/125
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右肩ベルト部と左肩ベルト部と右腿ベルト部と左腿ベルト部と前記右肩ベルト部に一端が固定された右胸ベルトと前記左肩ベルト部に一端が固定された左胸ベルトと前記右胸ベルトと前記左胸ベルトとのそれぞれに設けられて、互いに着脱可能に設けられた連結具と、を具備するハーネス型安全帯と、
逆U字形状を有し、着用者の首の後ろから両胸に掛けて着用する膨張式救命胴衣であって、前記ハーネス型安全帯に着脱可能に設けられた膨張式救命胴衣と、
を具備し、
前記膨張式救命胴衣は、
気体が充填されることで膨らむ気室部材と、
前記気室部材の気室に気体が充填されていない状態で当該気室部材を内部に保持するカバー部材と、
を具備し、
前記カバー部材は、前記右肩ベルト部及び前記左肩ベルト部に沿って着脱可能に固定されており、
前記カバー部材は、前記気室部材の気室内に気体が充填されて膨らむことで開き、
前記気室部材の両端部のそれぞれは、幅方向の外側が前記カバー部材に固定され、
前記気室部材の前記気室内に気体が充填されて膨張した際に、当該気室部材は、前記カバー部材との固定部分よりも内側に向かって膨張することを特徴とする着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯。
【請求項2】
前記カバー部材は、幅方向の内側が開口することを特徴とする請求項1記載の着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯。
【請求項3】
前記カバー部材は、幅方向の外側が開口することを特徴とする請求項1記載の着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯。
【請求項4】
前記膨張式救命胴衣は、
前記カバー部材の両端部が固定された救命胴衣用腰ベルトと、
前記救命胴衣用腰ベルトと前記カバー部材の首の後ろの部分とを接続する背ベルトと、
をさらに具備することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯。
【請求項5】
前記カバー部材の両端部のそれぞれは、前記右肩ベルト部と前記左肩ベルト部との前記胸ベルトよりも下に着脱可能に固定されることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯に関する。
【背景技術】
【0002】
海、湖沼、河川における水難事故において、水難者の安全を確保するための救命胴衣(ライフジャケット)として、ガスなどの気体によって気室部材を膨張させる膨張式救命胴衣がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような膨張式救命胴衣は、水難事故が発生する前の通常時には気室部材が萎んでいるため、港湾や河川敷などの水辺で作業を行う作業者(着用者とも言う)が着用するのに適している。
【0004】
また、高所作業において、作業者の落下防止のためにハーネス型安全帯が用いられている。
【0005】
このため、水辺で高所作業を行うためには、作業者はハーネス型安全帯と膨張式救命胴衣との両方を着用しなくてはならない。
【0006】
なお、落石防護用救命胴衣に墜落防止用安全帯を一体型に構成したものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-193105号公報
【文献】特開2015-140505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、水辺で高所作業を行う作業者は、膨張式救命胴衣とハーネス型安全帯との両方を着用しなくてはならないが、膨張式救命胴衣とハーネス型安全帯とを個別に脱着するのは煩雑であるという問題がある。
また、構造によっては膨張式救命胴衣の背ベルトがハーネス型安全帯の背中に設けられたD環に干渉してしまい、ハーネス型安全帯の墜落防止性能に影響を及ぼす恐れがある。
【0009】
このため、膨張式救命胴衣をハーネス型安全帯に一体的に固定する方法も考えられるものの、単体で使用可能な膨張式救命胴衣は、首が脱落しないように顎下において端部同士が近接して配置されたV字形状の開口となる形状を有するため、このような膨張式救命胴衣をハーネス型安全帯に固定すると、膨張式救命胴衣によってハーネス型安全帯の胸ベルトが覆われてしまい、胸ベルトの操作が困難になり、ハーネス型安全帯の脱着が煩雑になるという問題がある。
【0010】
また、膨張式救命胴衣の胸部の端部をハーネス型安全帯の肩ベルト部に固定すると、膨張式救命胴衣の両端部が離れてしまい、着用者の顎下に空間が形成され、気室部材が膨張した際に顎下に気室部材が配置され難い。着用者の顎下に膨張した気室部材が配置されないと着用者の顎を確実に浮かすことができず、着用者の浮遊姿勢が安定した後傾とならずに垂直に近い浮遊姿勢となり、着用者の口元を水面から離すことができなくなってしまう。
【0011】
また、膨張式救命胴衣をハーネス型安全帯に固定して一体化してしまうと、水辺以外の作業でハーネス型安全帯を単体で利用できず、作業性が低下してしまうと共に、別途、単体のハーネス型安全帯だけを用意する必要があり、高コストになってしまうという問題がある。
【0012】
このため、ハーネス型安全帯に着脱可能で、且つハーネス型安全帯に装着した際に着用者を安全に保護することができる最適化された膨張式救命胴衣が望まれている。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑み、膨張式救命胴衣をハーネス型安全帯に着脱可能としてハーネス型安全帯を単体で利用することができ、作業性を向上してコストを低減することができると共に、膨張式救命胴衣が固定されたハーネス型安全帯を作業者が容易に脱着することができ、且つ膨張式救命胴衣によって着用者の浮遊姿勢を安定させて安全に保護することができる着脱式の膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明の態様は、右肩ベルト部と左肩ベルト部と右腿ベルト部と左腿ベルト部と前記右肩ベルト部に一端が固定された右胸ベルトと前記左肩ベルト部に一端が固定された左胸ベルトと前記右胸ベルトと前記左胸ベルトとのそれぞれに設けられて、互いに着脱可能に設けられた連結具と、を具備するハーネス型安全帯と、逆U字形状を有し、着用者の首の後ろから両胸に掛けて着用する膨張式救命胴衣であって、前記ハーネス型安全帯に着脱可能に設けられた膨張式救命胴衣と、を具備し、前記膨張式救命胴衣は、気体が充填されることで膨らむ気室部材と、前記気室部材の気室に気体が充填されていない状態で当該気室部材を内部に保持するカバー部材と、を具備し、前記カバー部材は、前記右肩ベルト部及び前記左肩ベルト部に沿って着脱可能に固定されており、前記カバー部材は、前記気室部材の気室内に気体が充填されて膨らむことで開き、前記気室部材の両端部のそれぞれは、幅方向の外側が前記カバー部材に固定され、前記気室部材の前記気室内に気体が充填されて膨張した際に、当該気室部材は、前記カバー部材との固定部分よりも内側に向かって膨張することを特徴とする着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯にある。
【0015】
ここで、前記カバー部材は、幅方向の内側が開口することが好ましい。
【0016】
また、前記カバー部材は、幅方向の外側が開口することが好ましい。
【0017】
また、前記膨張式救命胴衣は、前記カバー部材の両端部が固定された救命胴衣用腰ベルトと、前記救命胴衣用腰ベルトと前記カバー部材の首の後ろの部分とを接続する背ベルトと、をさらに具備することが好ましい。
【0018】
また、前記カバー部材の両端部のそれぞれは、前記右肩ベルト部と前記左肩ベルト部との前記腰ベルトよりも下に着脱可能に固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、膨張式救命胴衣をハーネス型安全帯に着脱可能とすることで、ハーネス型安全帯を単体で着用することができ作業性を向上することができると共にコストを低減することができる。また、膨張式救命胴衣をハーネス型安全帯に固定することで、ハーネス型安全帯の着脱を行うのと同時に膨張式救命胴衣の着脱を行うことができるため、膨張式救命胴衣とハーネス型安全帯とのそれぞれを着脱するのに比べて着脱を容易に行うことができる。さらに、膨張式救命胴衣のカバー部材は、ハーネス型安全帯の右肩ベルト部及び左肩ベルト部に沿って固定されるため、膨張式救命胴衣がハーネス型安全帯の胸ベルト及び連結具を覆うことがなく、ハーネス型安全帯の着脱を容易に行うことができる。また、膨張式救命胴衣がハーネス型安全帯に固定された際に、カバー部材の両端部が着用者の中心線から離れた位置に配置されていても、気室部材の両端部の外側をカバー部材に固定することで、気室部材を着用者の中心線に向かって膨張することができ、着用者の顎下の浮力を確保して、着用者の浮遊姿勢を安定して後傾にすることができ、口元の水面からの距離を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態1に係る着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯を示す背面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るハーネス型安全帯のハーネス型安全帯の正面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係るハーネス型安全帯を着用者が装着した正面図及び背面図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る膨張式救命胴衣の正面図及び背面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る膨張式救命胴衣の気室部材を広げた状態及び膨張させた状態の正面図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係る膨張式救命胴衣を着用者が着用した正面図及び気室部材を膨張させた図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係る膨張式救命胴衣を固定したハーネス型安全帯を着用者が着用した正面図及び気室部材を膨張させた図である。
【
図9】比較例となる従来の膨張式救命胴衣とハーネス型安全帯とを着用者が着用した図である。
【
図10】本発明の実施形態2に係る膨張式救命胴衣の正面図及び背面図である。
【
図11】本発明の実施形態2に係る膨張式救命胴衣の気室部材を広げた状態及び膨張させた状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯を示す正面図であり、
図2は、着脱可能な膨張式救命胴衣を備えたハーネス型安全帯を示す背面図である。
【0023】
図示するように、ハーネス型安全帯10と膨張式救命胴衣40とを有する。ここで、ハーネス型安全帯についてさらに
図3及び
図4を参照して説明する。なお、
図3は、ハーネス型安全帯の正面図であり、
図4は、着用者がハーネス型安全帯を着用した正面図及び背面図である。
【0024】
図3及び
図4に示すように、ハーネス型安全帯10を構成する2本のベルト11、12は、ハーネス型安全帯10を装着する着用者1の背面上部においてバックル13によって交差された状態で保持されている。
【0025】
このようなバックル13によって保持された2本のベルト11、12は、バックル13から上方に延設された一方のベルト11と、バックル13から下方に延設された他方のベルト12とが環状となるように縫い合わされている。このバックル13とバックル13よりも上方のベルト11とバックル13よりも下方のベルト12とによって環状に形成された部分が着用者1の右肩に掛けられる右肩ベルト部14となっている。
【0026】
同様に、バックル13から上方に延設された他方のベルト12と、バックル13から下方に延設された一方のベルト11とが環状になるように縫い合わされている。このバックル13とバックル13よりも上方のベルト12とバックル13よりも下方のベルト11とによって環状に形成された部分が着用者1の左肩に掛けられる左肩ベルト部15となっている。
【0027】
また、右肩ベルト部14を形成した一方のベルト11の端部と他方のベルト12とは、互いに縫い付けられた部分よりも下側の端部のそれぞれに連結具16、17が設けられている。ベルト11には、端部を連結具16に通して折り返し、ベルト11を重ねた状態で維持するリング18が設けられている。ベルト11には、本実施形態では、2つのリング18が設けられているが、リング18の数は限定されるものではなく、1つであってもよく、また3つ以上であってもよい。このようにベルト11にリング18を設けることによってベルト11の長さが調整可能となっている。
【0028】
また、連結具16、17は、互いに着脱可能なものであり、ベルト11、12が互いに縫い付けられた部分よりも下側において右肩ベルト部14を形成した一方のベルト11の他端部と他方のベルト12の他端部とを連結具16、17によって接続することで環状に形成される。このようにベルト11、12によって環状に形成された部分が右腿ベルト部19となっている。すなわち、ベルト11、12が互いに縫い付けられた部分よりも下側の一方のベルト11の連結具16を着用者の後方から股下を通して前方に移動させ、移動させた連結具16を縫い付けられた部分よりも下側の他方のベルト12の連結具17と着用者1の前面で装着することで右腿ベルト部19が着用者1の右腿に装着される。
【0029】
同様に、左肩ベルト部15を形成した他方のベルト12と一方のベルト11とは、互いに縫い付けられた部分よりも下側の端部のそれぞれに連結具20、21が設けられている。ベルト12には、端部を連結具20に通して折り返し、ベルト12を重ねた状態で維持するリング22が設けられている。ベルト12には、本実施形態では、2つのリング22が設けられているが、リング22の数は限定されるものではなく、1つであってもよく、また3つ以上であってもよい。このようにベルト12にリング22を設けることによってベルト12の長さが調整可能となっている。
【0030】
また、連結具20、21は、互いに着脱可能なものであり、互いに縫い付けられた部分よりも下側において左肩ベルト部15を形成した一方のベルト11の端部と他方のベルト12の端部との先端同士を連結具20、21によって接続することで環状に形成される。この環状に形成された部分が左腿ベルト部23となっている。すなわち、互いに縫い付けられた部分よりも下側の他方のベルト12の連結具20を着用者の後方から股下を通して前方に移動させ、移動させた連結具20を縫い付けられた部分よりも下側の一方のベルト11の連結具21と着用者の前面で装着することで左腿ベルト部23が着用者1の左腿に装着される。
【0031】
なお、右腿ベルト部19を形成する連結具16、17、及び、左腿ベルト部23を形成する連結具20、21の材料は特に限定されず、例えば、樹脂製や金属製のものを用いることができる。
【0032】
また、
図3及び
図4(b)に示すように、右腿ベルト部19となる縫い付けられた部分よりも下方のベルト11と、左腿ベルト部23となる縫い付けられた部分よりも下方のベルト12とには、尻当てベルト24の両端部が縫い付けられている。
【0033】
さらに、バックル13よりも下のベルト11、12と尻当てベルト24とには、これらベルト11、12と尻当てベルト24とで囲まれた開口を塞ぐように設けられた背当て布25が縫い付けられている。背当て布25は、本実施形態では、メッシュ生地で形成されている。もちろん、背当て布25は、メッシュ生地に限定されるものではない。
【0034】
また、右肩ベルト部14には、右胸ベルト26の一端が固定されており、左肩ベルト部15には、左胸ベルト27の一端が固定されている。右胸ベルト26及び左胸ベルト27のそれぞれの右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15への固定は、本実施形態では、右胸ベルト26の端部を折り返して環状になるように縫い付け、右胸ベルト26の端部に設けられた環に右肩ベルト部14を挿通することで行われている。また、左胸ベルト27も同様に、左胸ベルト27の端部を折り返して環状になるように縫い付け、左胸ベルト27の端部に設けられた環に左肩ベルト部15を挿通することで固定されている。すなわち、右胸ベルト26及び左胸ベルト27は、それぞれ右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に沿って上下方向に移動可能になっている。このように右胸ベルト26及び左胸ベルト27を右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に沿って上下方向に移動可能となるように固定することで、右胸ベルト26及び左胸ベルト27の位置を着用者1に合わせて調整することができる。もちろん、右胸ベルト26及び左胸ベルト27のそれぞれの右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15への固定方法は、上述したものに限定されるものではなく、例えば、右胸ベルト26及び左胸ベルト27の端部のそれぞれを右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に直接縫い付けるようにしてもよい。これにより、右胸ベルト26及び左胸ベルト27が救命胴衣の気室の浮力で上方向に移動し、救命胴衣がずり上がり、浮力姿勢が垂直に近づくことがなくなるため、浮力姿勢を安定させることができる。
【0035】
また、右胸ベルト26の他端及び左胸ベルト27の他端のそれぞれには、互いに着脱可能な胸ベルト用連結具28、29が設けられている。すなわち、右胸ベルト26と左胸ベルト27とは、胸ベルト用連結具28、29によって接続及び分離することができる。このような胸ベルト用連結具28、29の材料は特に限定されず、例えば、樹脂製や金属製のものを用いることができる。ただし、胸ベルト用連結具28、29は、樹脂製のものを用いるのが好ましい。これにより、軽量化すると共にコストを低減することができる。
【0036】
右胸ベルト26には、端部を胸ベルト用連結具28に通して折り返し、右胸ベルト26を重ねた状態で維持するリング30が設けられている。このように右胸ベルト26にリング30を設けることによって右胸ベルト26の長さが調整可能となっている。同様に、左胸ベルト27には、端部を胸ベルト用連結具29に通して折り返し、左胸ベルト27を重ねた状態で維持するリング31が設けられている。このように左胸ベルト27にリング31を設けることによって左胸ベルト27の長さが調整可能となっている。
【0037】
ここで、本実施形態の膨張式救命胴衣40についてさらに
図5~
図6を参照して説明する。なお、
図5は、膨張式救命胴衣の正面図及び背面図であり、
図6は、膨張式救命胴衣の気室部材を広げた状態及び膨張させた状態を示す正面図である。また、
図7は、膨張式救命胴衣を着用者が着用した正面図及び気室部材を膨張させた図であり、
図8は、膨張式救命胴衣を固定したハーネス型安全帯を着用者が着用した正面図及び気室部材を膨張させた図である。
【0038】
図示するように、膨張式救命胴衣40は、首の後ろから両胸に掛けて着用する逆U字形状を有するものであり、膨張式救命胴衣40は、気室部材50とカバー部材60と救命胴衣用腰ベルト70と背ベルト80とを具備する。
【0039】
図6に示すように、気室部材50は、内部に気室51が設けられた袋状体であり、気室51に気体が充填されることで膨張するようになっている。
【0040】
このような気室部材50は、逆U字形状を有し、着用者1の右胸上に配置される右胸部52と、左胸上に配置される左胸部53と、右胸部52と左胸部53との間に設けられて首の周りに配置される首部54と、を具備する。
【0041】
右胸部52と左胸部53とは、中央部に比べて幅広となるように設けられている。そして、右胸部52と左胸部53と首部54とで形成される首が内部に配置される空間はV字形状に形成される。つまり、
図6(a)に示すように、気室51に気体が充填されていない状態で右胸部52と左胸部53とは少なくとも一部が互いに重なるように形成されており、気室51内に気体を充填した際には、
図6(b)に示すように、右胸部52と左胸部53とは内側の面同士が互いに当接するように形成されている。
【0042】
また、気室部材50は、自動開栓式ガス充填装置55と、補助送気装置56と、ホイッスル57と、反射部58と、を具備する。
【0043】
自動開栓式ガス充填装置55は、右胸部52の外周に固定されている。自動開栓式ガス充填装置55は、水の接触を感知する感知素子を内部に有し、感知素子が水を感知することにより圧縮された気体が保持された気体供給部55aを開栓して、気体供給部55aから気室51内に気体を充填して気室部材50を膨張させる。また、自動開栓式ガス充填装置55には、紐が設けられており、着用者1が紐を引くことで、圧縮された気体が保持された気体供給部55aを開栓して気体供給部55aから気室51内に気体を充填して気室部材50を膨張させることも可能である。気体供給部55aとしては、二酸化炭素(CO2)が充填されたガスボンベなどを用いることができる。なお、本実施形態では、気室51内に気体を充填する開栓式ガス充填装置として、自動開栓式ガス充填装置55を用いたが、開栓式ガス充填装置は、自動式であってもよく、手動式であってもよい。また、開栓式ガス充電装置は、右胸部52に設けられていても、左胸部53に設けられていても、右胸部52及び左胸部53の両側に設けられていてもよい。
【0044】
また、補助送気装置56は、左胸部53に設けられており、気室51内の圧力が低下した場合などに、着用者1が息を吹き込むためのものである。補助送気装置56の内部には、特に図示していない逆止弁が設けられており、気室51内の気体が漏れ出ないようになっている。また、補助送気装置56には、気体供給部55aから供給された過剰な気体を外部に排出するオーバープレッシャーバルブを備えていてもよい。これにより、気室51内に過剰な気体が供給されることによる気室部材50の破裂を防止することができる。なお、補助送気装置56は、右胸部52に設けられていても、左胸部53に設けられていても、右胸部52及び左胸部53の両側に設けられていてもよい。
【0045】
ホイッスル57は、例えば、呼子笛等からなり、右胸部52の外周に収納されている。ホイッスル57は、落下防止対策として右胸部52と紐57aによって接続されている。
【0046】
反射部58は、反射板又は反射布からなり、気室部材50の前面であって、右胸部52及び左胸部53の上部にそれぞれ貼付されている。
【0047】
このような気室部材50が収容されるカバー部材60は、
図5に示すように、逆U字形状を有する後面カバー部61と前面カバー部62とを有する。カバー部材60の後面カバー部61と前面カバー部62とは、互いに重なり合わせた状態で互いの一辺同士が縫い付けられることで一体化している。本実施形態では、後面カバー部61と前面カバー部62とは、内側の一辺が互いに縫い付けられることで、外側が開口して設けられている。すなわち、カバー部材60は、着用者1の胸の上で相対向する内側ではなく、外側が開口する。なお、カバー部材60は、本実施形態では、後面カバー部61と前面カバー部62との一辺同士を縫い付けるようにしたが、特にこれに限定されず、1枚の布を折り曲げることで後面カバー部61と前面カバー部62とを一体としたものであってもよい。
【0048】
このようなカバー部材60の内部には、気室51内に気体が充填されていない萎んだ状態の気室部材50が折りたたまれて収容されている。すなわち、カバー部材60の後面カバー部61と前面カバー部62との間に萎んだ状態の気室部材50が挟まれている。
【0049】
また、前面カバー部62の一端部には、透過性を有する窓62aが設けられており、カバー部材60の内部の気室部材50への気体供給部55aの装着状態が外部から視認できるようになっている。
【0050】
後面カバー部61と前面カバー部62との互いに縫い付けられた一辺とは反対側の他辺の開口は、開閉可能となっている。具体的には、
図5に示すように、気室部材50(
図6参照)の気室51内に気体が充填されていない萎んだ状態では、気室部材50がカバー部材60から飛び出さないようにカバー部材60の開口は閉じられており、
図6に示すように、気室部材50の気室51内に気体が充填されて膨張する力によってカバー部材60は開口して後面カバー部61と前面カバー部62とが広がる。本実施形態では、後面カバー部61と前面カバー部62との開口は、図示しない面ファスナーによって開閉可能となっている。なお、カバー部材60の開口を閉じるのは面ファスナーに限定されず、気室部材50の気室51内に気体が充填されて膨張する力によって開口するもの、例えば、スナップボタン等の留め具であってもよい。
【0051】
このようなカバー部材60は、
図1及び
図2に示すように、ハーネス型安全帯10に着脱可能に固定されるようになっている。具体的には、
図5に示すように、後面カバー部61には、右肩ベルト部14に固定される右上部取付部63及び右下部取付部64と、左肩ベルト部15に固定される左上部取付部65と左下部取付部66とを有する。
【0052】
右上部取付部63は、右肩ベルト部14の上部に固定されるものであり、カバー部材60に固定された2つのベルト63a、63bで構成されている。2つのベルト63a、63bのそれぞれは、カバー部材60の後面カバー部61に基端部が固定され、先端が後面カバー部61の幅方向両側、すなわち、内側及び外側に向かって突出して設けられている。
【0053】
右上部取付部63を構成する2つのベルト63a、63bの先端部には、特に図示していないが、互いに着脱可能な面ファスナーが設けられており、
図2に示すように、2つのベルト63a、63bの先端同士を右肩ベルト部14の裏側、すなわち、右肩ベルト部14の膨張式救命胴衣40とは反対面側で固定することで、右肩ベルト部14に固定される。
【0054】
左上部取付部65も同様に、2つのベルト65a、65bで構成されており、2つのベルト65a、65bの先端同士を左肩ベルト部15の裏側、すなわち、左肩ベルト部15の膨張式救命胴衣40とは反対面側で固定することで、左肩ベルト部15に固定される。
【0055】
なお、本実施形態では、右上部取付部63及び左上部取付部65のそれぞれを構成する2つのベルト63a、63b及び65a、65bの先端同士を面ファスナーで固定するようにしたが、特にこれに限定されず、着脱可能な連結具を用いてもよい。ただし、右上部取付部63と左上部取付部65とは、右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15の首の近くの上部側に設けられているため、右上部取付部63及び左上部取付部65は、ハーネス型安全帯10及び膨張式救命胴衣40の自重によって着用者1の肩に押しつけられる。このため、右上部取付部63及び左上部取付部65に金属や樹脂などの連結具を用いると着用者1が肩に異物感や痛みを感じてしまう虞がある。したがって、右上部取付部63及び左上部取付部65には凹凸の少ない面ファスナーを用いることが好ましい。これにより、右上部取付部63及び左上部取付部65に大きな凹凸が形成されるのを抑制して、着用者1が肩に異物感や痛みを感じるのを低減することができる。
【0056】
また、右下部取付部64は、右肩ベルト部14の下部に固定されるものであり、カバー部材60に固定された2つのベルト64a、64bで構成されている。2つのベルト64a、64bのそれぞれは、カバー部材60の後面カバー部61に基端部が固定され、先端が後面カバー部61の幅方向両側、すなわち、内側及び外側に向かって突出して設けられている。
【0057】
右下部取付部64を構成する2つのベルト64a、64bのそれぞれの先端部には、互いに連結可能な取付部用連結具67が設けられており、
図2に示すように、2つのベルト64a、64bの先端の取付部用連結具67同士を右肩ベルト部14の裏側、すなわち、右肩ベルト部14の膨張式救命胴衣40とは反対面側で連結することで、右下部取付部64は、右肩ベルト部14に固定される。
【0058】
左下部取付部66も同様に、2つのベルト66a、66bで構成されており、2つのベルト66a、66bのそれぞれの先端部には、互いに連結可能な取付部用連結具68が設けられている。そして、
図2に示すように、左下部取付部66を構成する2つのベルト66a、66bの先端の取付部用連結具68同士を左肩ベルト部15の裏側、すなわち、左肩ベルト部15の膨張式救命胴衣40とは反対面側で固定することで、左下部取付部66は左肩ベルト部15に固定される。
【0059】
なお、
図2に示すように、右下部取付部64は、ハーネス型安全帯10の右肩ベルト部14の右胸ベルト26が接続された部分よりも下側に固定される位置に設けられ、左下部取付部66は、左肩ベルト部15の左胸ベルト27が接続された部分よりも下側に固定されるように設けられている。右下部取付部64及び左下部取付部66を胸ベルトよりも下側の右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に固定することで、気室部材50を膨張させて着用者1を水に浮かせた際に、右下部取付部64及び左下部取付部66が右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15を上側に移動するのを胸ベルトによって規制することができる。したがって、右下部取付部64及び左下部取付部66が右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15を上側に移動することを防止して、着用者1の姿勢が垂直に近づき難くすることができ、着用者1の口元を水面から離すことができ、安全性を向上することができる。なお、右下部取付部64及び左下部取付部66を右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15の胸ベルトが接続された部分よりも上側に固定してもよいが、この場合、気室部材50を膨張させて着用者1を水に浮かせた際に、右下部取付部64及び左下部取付部66が右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15を上側に移動し、ハーネス型安全帯10の右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15の下方、すなわち、胸ベルトよりも下側と膨張式救命胴衣40とが離れてしまい、着用者1の浮遊姿勢が垂直に近くなり、着用者1の口元が水面に近づくため好ましくない。さらに、右下部取付部64及び左下部取付部66を胸ベルトに固定しても良いが、胸ベルトは、胸ベルト用連結具28、29によって分離可能となっているため、胸ベルトを分離した際に胸ベルトが環状の右下部取付部64及び左下部取付部66から不意に抜けてしまう虞があり、抜けたまま着用すると安全性が低下するため好ましくない。本実施形態では、右下部取付部64及び左下部取付部66のそれぞれは、右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に固定されるため、右下部取付部64及び左下部取付部66が右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15から不意に抜けてしまうのを防止して、安全性を向上することができる。
【0060】
また、右下部取付部64及び左下部取付部66は、ハーネス型安全帯10及び膨張式救命胴衣40の自重によって着用者1に押しつけられ難いため、凹凸が形成されていても異物感及び痛みを感じ難い。したがって、右下部取付部64及び左下部取付部66は、着脱し易い取付部用連結具67、68によって固定するのが好ましい。これにより、操作性を向上して着脱性を向上することができる。
【0061】
また、カバー部材60の最上部には、背ベルト80の一端が固定されている。また、カバー部材60の両方の下端部には、救命胴衣用腰ベルト70が固定されている。背ベルト80の他端は、救命胴衣用腰ベルト70に固定されている。本実施形態では、
図1に示すように、背ベルト80及び救命胴衣用腰ベルト70は、カバー部材60の後面カバー部61に縫い付けられて固定されている。また、救命胴衣用腰ベルト70の両端部には、互いに着脱可能な連結具71が設けられており、着用者1の胸部分に着用することができる。もちろん、救命胴衣用腰ベルト70は、端部を連結具71に通して折り返し、救命胴衣用腰ベルト70を重ねた状態で維持するリング(図示なし)が設けられており、リングによって救命胴衣用腰ベルト70の長さが調整可能となっている。
【0062】
このような膨張式救命胴衣40では、救命胴衣用腰ベルト70及び背ベルト80を設けることによって、膨張式救命胴衣40をハーネス型安全帯10に固定することなく、
図7に示すように、膨張式救命胴衣40を単体で着用者1が着用することができる。ちなみに、膨張式救命胴衣40に救命胴衣用腰ベルト70及び背ベルト80が設けられていないと、膨張式救命胴衣40を単体で着用者1が着用した場合、膨張式救命胴衣40を首だけで支えることになるため、着用者1を安全に浮遊させることができないため、使用することはできない。
【0063】
このようなカバー部材60の後面カバー部61と前面カバー部62との間に気室51に気体が充填されていない気室部材50が収容される。
【0064】
ここで、
図6に示すように、気室部材50は、カバー部材60に固定されている。本実施形態の気室部材50は、右胸部52の下端部をカバー部材60に固定する右胸固定部90と、左胸部53の下端部をカバー部材60に固定する左胸固定部91と、首部54をカバー部材60に固定する首固定部92と、によってカバー部材60に固定されている。
【0065】
右胸固定部90は、ベルトからなり、一端部がカバー部材60に固定され、他端部が右胸部52の下端部の幅方向の外側に固定されている。ここで、右胸部52の幅方向とは、右胸部52と左胸部53との並び方向のことである。また、右胸固定部90の他端部が右胸部52の幅方向の外側に固定されているとは、右胸固定部90が右胸部52の幅方向の中央よりも外側、すなわち、左胸部53とは反対側に固定されていることを言う。また、右胸部52の幅方向の中央とは、右胸部52の最も広い部分における中央のことである。これにより、右胸固定部90によって右胸部52の下端部は、外側がカバー部材60に固定されている。このため、気室部材50の気室51内に気体が充填されて気室部材50が膨張した際に、
図6(b)に示すように、右胸部52は右胸固定部90よりも内側、すなわち、着用者1の中心線側に向かって膨張する。つまり、右胸部52が右胸固定部90よりも内側に膨張するとは、右胸部52の右胸固定部90よりも外側よりも内側の方が大きく膨張することを言う。このように、右胸部52の右胸固定部90よりも内側に向かって膨張させることで、
図7(b)及び
図8(b)に示すように、着用者1の顎下に気室部材50を配置して、着用者1の顎下の浮力を確保することができ、着用者1を正しい姿勢で水に浮かせることができる。なお、右胸固定部90の一端部は、本実施形態では、後面カバー部61に固定されている。これは、膨張式救命胴衣40を単体で着用者1が着用した際に、救命胴衣用腰ベルト70は後面カバー部61に固定されているため、
図7(b)に示すように、気室部材50が膨張した際に後面カバー部61が幅方向にずれ難く、膨張した気室部材50の右胸部52が着用者1の中心線から外側に向かってずれ難いからである。また、膨張式救命胴衣40をハーネス型安全帯10に固定した状態では、後面カバー部61は、右肩ベルト部14に固定されるため、
図8(b)に示すように、気室部材50が膨張した際に後面カバー部61が幅方向にずれ難く、膨張した気室部材50の右胸部52が着用者1の中心線から外側に向かってずれ難いからである。
【0066】
左胸固定部91は、ベルトからなり、一端部がカバー部材60に固定され、他端部が左胸部53の下端部の幅方向の外側に固定されている。ここで、左胸部53の幅方向とは、右胸部52及び左胸部53の並び方向のことである。また、左胸固定部91の他端部が左胸部53の外側に固定されているとは、左胸固定部91が左胸部53の幅方向の中央よりも外側、すなわち、右胸部52とは反対側に固定されていることを言う。また、左胸部53の幅方向の中央とは、左胸部の最も広い部分における中央のことである。これにより、左胸固定部91によって左胸部53の下端部は、外側がカバー部材60に固定されている。このため、気室部材50の気室51内に気体が充填されて気室部材50が膨張した際に、左胸部53は左胸固定部91よりも内側、すなわち、着用者1の中心線側に向かって膨張する。つまり、左胸部53が左胸固定部91よりも内側に膨張するとは、左胸部53の左胸固定部91よりも外側より内側の方が大きく膨張することを言う。このように、左胸部53の左胸固定部91よりも内側に向かって膨張させることで、
図7(b)及び
図8(b)に示すように、着用者1の顎下に気室部材50を配置して、着用者1の顎下の浮力を確保することができ、着用者1を正しい姿勢で水に浮かせることができる。なお、左胸固定部91の一端部は、後面カバー部61に固定されている。これは上述した右胸固定部90と同様に、後面カバー部61には、救命胴衣用腰ベルト70が固定されていると共に、後面カバー部61がハーネス型安全帯10の左肩ベルト部15に固定されるため、後面カバー部61は、幅方向にずれ難く、膨張した気室部材50の左胸部53が着用者1の中心線から外側に向かってずれ難いからである。
【0067】
首固定部92は、ベルトからなり、一端がカバー部材60に固定され、他端部が首部54の内側に固定されている。首固定部92の一端は、カバー部材60の後面カバー部61に固定されている。これにより、着用者1の首と首部54との間に空間が生じ難く、着用者1の後頭部を首部54によって支えることができる。
【0068】
このように、
図6(b)に示すように、右胸固定部90の下端部と左胸固定部91の下端部との外側をカバー部材60に固定することによって、気室部材50の気室51内に気体を充填して膨張させた際に、カバー部材60の下端部同士が離れた位置にあっても、右胸部52、左胸部53及び首部54によって形成される空間をV字形状に、すなわち、右胸部52と左胸部53との両端部の内面同士を互いに当接させた状態とすることができる。
【0069】
すなわち、膨張式救命胴衣40を単体で使用する場合、
図7(a)に示すように、救命胴衣用腰ベルト70によってカバー部材60の両端部が着用者1の中心線よりも外側に離れた位置に配置されても、気室部材50は両端部において外側が右胸固定部90及び左胸固定部91によってカバー部材60に固定されることで、
図7(b)に示すように気室部材50が膨張した際に、気室部材50は、カバー部材60との固定部分である右胸固定部90及び左胸固定部91よりも内側に向かって膨張することで、気室部材50を着用者1の顎下に配置して、着用者1の顎下の浮力を確保することができる。
【0070】
ちなみに、気室部材50の両端部において、その内側が右胸固定部90及び左胸固定部91によってカバー部材60に固定されていると、右胸部52及び左胸部53の端部同士が離れてしまい、着用者1の顎下に空間が形成されてしまう。このように着用者1の顎下に気室部材50が配置されないと顎を確実に浮かすことができずに、着用者1の浮遊姿勢が安定せずに垂直に近い浮遊姿勢になり、口元を水面から離すことができなくなってしまう。
【0071】
本実施形態では、カバー部材60の端部同士が離れていても、気室部材50は両端部において外側が右胸固定部90及び左胸固定部91によってカバー部材60に固定されることで、気室部材50が膨張した際に、気室部材50を着用者1の顎下に配置して、着用者1の顎下の浮力を確保することができ、着用者1を後傾の斜めに浮遊させて、口元を水面から離すことができる。
【0072】
また、本実施形態の膨張式救命胴衣40は、カバー部材60の着用者1の首に接触する内側とは反対側の外側が開口するため、開口に設けられた面ファスナー等が着用者1の首に接触することがない。したがって、膨張式救命胴衣40を着用した際の擦れが生じることがない。
【0073】
また、本実施形態の膨張式救命胴衣40は、
図1、
図2及び
図8に示すように、カバー部材60の右上部取付部63及び右下部取付部64を右肩ベルト部14に固定すると共に、左上部取付部65及び左下部取付部66を左肩ベルト部15に取り付けることで、ハーネス型安全帯10に装着される。すなわち、膨張式救命胴衣40は、ハーネス型安全帯10を介して着用者1に固定することができるため、膨張式救命胴衣40の救命胴衣用腰ベルト70を着用者1が適切な長さで装着する必要がない。もちろん、膨張式救命胴衣40をハーネス型安全帯10に装着した場合であっても、膨張式救命胴衣40の救命胴衣用腰ベルト70を着用者1に適切な長さで装着すれば、さらに安全性を高めることができる。
【0074】
そして、右下部取付部64を右肩ベルト部14に取り付けると共に、左下部取付部66を左肩ベルト部15に取り付けることで、膨張式救命胴衣40は、右肩ベルト部14と左肩ベルト部15とに沿って配置される。したがって、膨張式救命胴衣40のカバー部材60の両端部は、右肩ベルト部14と左肩ベルト部15との間隔だけ離れた状態で配置される。このため、膨張式救命胴衣40によってハーネス型安全帯10の胸ベルト及び胸ベルト用連結具28、29が覆われることがなく、膨張式救命胴衣40を固定したハーネス型安全帯10を着用者1が容易に脱着することができる。すなわち、
図9に示すように、両端部が互いに固定された従来周知の膨張式救命胴衣140を用いる場合、膨張式救命胴衣140によってハーネス型安全帯10の胸ベルト及び胸ベルト用連結具28、29が覆われてしまい、ハーネス型安全帯10の脱着が煩雑になる。また、従来周知の膨張式救命胴衣140をハーネス型安全帯10に固定しない場合、ハーネス型安全帯10の胸ベルトとは別に、救命胴衣用腰ベルト70を適切な長さで装着しなくてはならず、着用者1は、膨張式救命胴衣140の脱着及びハーネス型安全帯10の脱着が煩雑になる。
【0075】
本実施形態では、膨張式救命胴衣40は、ハーネス型安全帯10の右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に沿って固定されるため、ハーネス型安全帯10の胸ベルト及び胸ベルト用連結具28、29が膨張式救命胴衣40によって覆われることがなく、膨張式救命胴衣40を固定したハーネス型安全帯10を着用者1が容易に脱着することができる。また、ハーネス型安全帯10を着用者1が脱着するだけで、同時に膨張式救命胴衣40も脱着することが可能なため、脱着を容易にして作業性を向上することができる。
【0076】
そして、本実施形態では、膨張式救命胴衣40の両端部を右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に固定することで、膨張式救命胴衣40のカバー部材60の両端部が離れた位置に配置されていても、本実施形態では、気室部材50は、両端部において外側が右胸固定部90及び左胸固定部91によってカバー部材60に固定されているため、気室部材50の気室51内に気体を充填した際に、気室部材50の両端部をカバー部材60に固定された右胸固定部90及び左胸固定部91よりも内側に膨張させることができる。したがって、気室部材50の右胸部52と左胸部53とを着用者1の中心線に向かって膨張させて、右胸部52と左胸部53との内面同士を当接させると共に当接させた状態を維持することができ、気室部材50にV字形状の空間を形成して、着用者1の顎下に気室部材50を配置して、着用者1の顎下の浮力を確保することができる。したがって、着用者1の浮遊姿勢を後傾として、口元を水面から離すことができ、安全性を向上することができる。ちなみに、気室部材50の両端部においてその内側をカバー部材60に固定してしまうと、本実施形態のように、カバー部材60の両端部を右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に固定した場合には、気室部材50が膨張した際に右胸部52と左胸部53とが着用者1の中心線から外側に向かって膨張し、着用者1の顎下に気室部材50が配置されずに着用者1の顎下の浮力を確保することができない。このため、着用者1を正しい姿勢で浮かすことができず、口元が水面と近くなり、安全性が低下してしまう。
【0077】
また、膨張式救命胴衣40は、ハーネス型安全帯10に右上部取付部63、右下部取付部64、左上部取付部65、左下部取付部66によって着脱可能としたため、ハーネス型安全帯10を単体でも利用することができる。したがって単体のハーネス型安全帯10と膨張式救命胴衣40が固定されたハーネス型安全帯10との両方を用意する必要がなく、コストを低減することができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の着脱可能な膨張式救命胴衣40を備えたハーネス型安全帯10では、右肩ベルト部14と左肩ベルト部15と右腿ベルト部19と左腿ベルト部23と右肩ベルト部14に一端が固定された右胸ベルト26と左肩ベルト部15に一端が固定された左胸ベルト27と右胸ベルト26と左胸ベルト27とのそれぞれに設けられて、互いに着脱可能に設けられた連結具である胸ベルト用連結具28、29と、を具備するハーネス型安全帯10と、逆U字形状を有し、着用者1の首の後ろから両胸に掛けて着用する膨張式救命胴衣40であって、ハーネス型安全帯10に着脱可能に設けられた膨張式救命胴衣40と、を具備し、膨張式救命胴衣40は、気体が充填されることで膨らむ気室部材50と、気室部材50の気室51に気体が充填されていない状態で当該気室部材50を内部に保持するカバー部材60と、を具備し、カバー部材60は、右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に沿って着脱可能に固定されており、カバー部材60は、気室部材50の気室51内に気体が充填されて膨らむことで開き、気室部材50の両端部のそれぞれは、幅方向の外側がカバー部材60に固定され、気室部材50の気室51内に気体が充填されて膨張した際に、当該気室部材50は、カバー部材60との固定部分である右胸固定部90及び左胸固定部91よりも内側に向かって膨張する。
【0079】
このように、膨張式救命胴衣40をハーネス型安全帯10に着脱可能とすることで、膨張式救命胴衣40が設けられていないハーネス型安全帯10を単体で使用することが可能となり、作業性を向上することができると共に、単体のハーネス型安全帯10を用意する必要がなく、コストを低減することができる。
【0080】
また、膨張式救命胴衣40は、カバー部材60がハーネス型安全帯10の右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に装着されることで、着用者1は、ハーネス型安全帯10を脱着するだけで同時に膨張式救命胴衣40を脱着することができる。したがって、着用者1は、ハーネス型安全帯10と膨張式救命胴衣40との脱着を個別に行う必要がなく、作業性を向上することができる。
【0081】
また、膨張式救命胴衣40は、ハーネス型安全帯10の右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に沿って装着されるため、膨張式救命胴衣40がハーネス型安全帯10の右胸ベルト26、左胸ベルト27、胸ベルト用連結具28、29等を覆うことがない。したがって、着用者1は、膨張式救命胴衣40が固定されたハーネス型安全帯10の右胸ベルト26、左胸ベルト27、胸ベルト用連結具28、29の操作を容易に行うことができ、脱着を容易に行うことができる。
【0082】
また、膨張式救命胴衣40のカバー部材60がハーネス型安全帯10の右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15に沿って固定されることで、カバー部材60の両端部が着用者1の中心線よりも外側に離れた位置に配置されていても、気室部材50の両端部は、その外側がカバー部材60に固定されることで、気室部材50の気室51内に気体が充填されて膨張した際に、気室部材50は、カバー部材60との固定部分である右胸固定部90及び左胸固定部91よりも内側に向かって膨張するため、気室部材50は、着用者1の中心線に向かって膨張して、着用者1の顎下に配置される。したがって、着用者1の顎下の浮力を確保して、着用者1の浮遊姿勢を安定して後傾させることができ、口元の水面からの距離を確保することができ、安全性を向上することができる。
【0083】
また、本実施形態の着脱可能な膨張式救命胴衣40を備えたハーネス型安全帯10では、カバー部材60は、幅方向の外側が開口することが好ましい。これにより、カバー部材60の開口を塞ぐ面ファスナー等が着用者1の首に擦れることがなく、着用性を向上することができる。
【0084】
また、本実施形態の着脱可能な膨張式救命胴衣40を備えたハーネス型安全帯10では、膨張式救命胴衣40は、カバー部材60の両端部が固定された救命胴衣用腰ベルト70と、救命胴衣用腰ベルト70と前記カバー部材60の首の後ろの部分とを接続する背ベルト80と、をさらに具備することが好ましい。このように膨張式救命胴衣40に救命胴衣用腰ベルト70と背ベルト80とを設けることで、膨張式救命胴衣40をハーネス型安全帯10に装着することなく、膨張式救命胴衣40を単体で着用者1が着用することができる。また、着用者1が膨張式救命胴衣40を単体で着用することで、カバー部材60の両端部が着用者1の中心線よりも外側に離れた位置に配置されていても、気室部材50は、着用者1の中心線に向かって膨張させて、着用者1の顎下に配置することができ、着用者1の浮遊姿勢を安定して後傾させることができ、口元の水面からの距離を確保することができ、安全性を向上することができる。
【0085】
また、本実施形態の着脱可能な膨張式救命胴衣40を備えたハーネス型安全帯10では、カバー部材60の両端部のそれぞれは、右肩ベルト部14と左肩ベルト部15との胸ベルトよりも下に着脱可能に固定されることが好ましい。これによれば、気室部材50が膨張して着用者1を浮かせた際に、カバー部材60の両端部が右肩ベルト部14及び左肩ベルト部15を上方にスライド移動するのを胸ベルトによって規制することができる。したがって、膨張式救命胴衣40によって着用者1の浮遊姿勢を安定して後傾に維持することができる。
【0086】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2に係る膨張式救命胴衣の正面図及び背面図であり、
図11は、実施形態2の気室部材を広げた状態及び膨張させた状態を示す正面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0087】
図示するように、本実施形態のカバー部材60は、後面カバー部61と前面カバー部62とを有する。後面カバー部61と前面カバー部62とは重ねた状態で外側の一辺同士が互いに縫い付けられて固定されており、内側が開口するようになっている。また、後面カバー部61と前面カバー部62との開口側の辺には、互いに着脱可能な面ファスナーが設けられており、カバー部材60は気室部材50の膨張する力によって開口する。
【0088】
このようなカバー部材60内に萎んだ状態の気室部材50が収容されている。気室部材50は、右胸固定部90、左胸固定部91及び首固定部92によってカバー部材60に固定されている。
【0089】
右胸固定部90は、ベルトからなり、一端がカバー部材60の後面カバー部61に固定されており、他端が右胸部52の幅方向外側に固定されている。
【0090】
左胸固定部91は、ベルトからなり、一端がカバー部材60の後面カバー部61に固定されており、他端が左胸部53の幅方向外側に固定されている。
【0091】
首固定部92は、カバー部材60の後面カバー部61に固定されている。
【0092】
このような膨張式救命胴衣40であっても上述した実施形態1と同様に、単体であっても使用することができると共に、単体で使用した際に膨張した気室部材50が着用者1の顎下に配置され、着用者1の浮遊姿勢を安定して後傾にすることができ、口元を水面から離すことができる。
【0093】
また、膨張式救命胴衣40をハーネス型安全帯10に固定することで、ハーネス型安全帯10の胸ベルト及び胸ベルト用連結具28、29が覆われることがない。また、ハーネス型安全帯10に固定した膨張式救命胴衣40の気室部材50が膨張した際に、気室部材50を着用者1の顎下に配置することができ、着用者1の浮遊姿勢を安定して後傾にすることができ、口元を水面から離すことができる。
【0094】
さらに、着用者1がハーネス型安全帯10を着脱するだけで、ハーネス型安全帯10と共に膨張式救命胴衣40を着脱することができるため、膨張式救命胴衣40の着脱を容易にして作業性を向上することができる。
【0095】
(実施例1)
上述した実施形態1の膨張式救命胴衣が固定されたハーネス型安全帯を着用者が着用したものを実施例1とした。
【0096】
(実施例2)
上述した実施形態1の膨張式救命胴衣の右下部取付部及び左下部取付部をハーネス型安全帯の右肩ベルト部及び左肩ベルト部の胸ベルトよりも上方に固定し、それを着用者が着用したものを実施例2とした。
【0097】
(実施例3)
上述した実施形態1の膨張式救命胴衣を単体で着用者が着用し、救命胴衣用腰ベルトを着用者に適正な長さに調整したものを実施例3とした。
【0098】
(実施例4)
上述した実施形態1の膨張式救命胴衣を単体で着用者が着用し、救命胴衣用腰ベルトを最大限に長くしたものを実施例4とした。
【0099】
(実施例5)
上述した実施形態2の膨張式救命胴衣が固定されたハーネス型安全帯を着用者が着用したものを実施例5とした。
【0100】
(実施例6)
上述した実施形態2の膨張式救命胴衣の右下部取付部及び左下部取付部をハーネス型安全帯の右肩ベルト部及び左肩ベルト部の胸ベルトよりも上方に固定し、それを着用者が着用したものを実施例6とした。
【0101】
(実施例7)
上述した実施形態2の膨張式救命胴衣を単体で着用者が着用し、救命胴衣用腰ベルトを着用者に適正な長さに調整したものを実施例7とした。
【0102】
(実施例8)
上述した実施形態2の膨張式救命胴衣を単体で着用者が着用し、救命胴衣用腰ベルトを最大限に長くしたものを実施例8とした。
【0103】
(試験例)
上述した実施例1~8の気室部材の気室内に気体を充填して膨張させた状態で浮遊性能として着用者の水面の垂線方向に対する角度と、水面から口元までの距離とを測定した。この結果を下記表1に示す。なお、着用者の体重は70kgであり、膨張式救命胴衣の基準の浮力は約17kgである。また、着用者の浮遊角度は、着用者を撮影して角度を測定したものであり、プラス(+)が後傾を表し、マイナス(-)が前傾を表している。
【0104】
【0105】
表1に示すように、実施例1~8の何れの場合であっても、着用者1の浮遊姿勢が前傾ではなく後傾となり、且つ口元の水面からの距離を0cm以上とすることができる。
【0106】
特に、実施例1の膨張式救命胴衣を固定したハーネス型安全帯を装着した着用者の浮遊角度が+55度と最も大きな角度とすることができ、口元の水面からの距離を12cmと最も離すことができたため、膨張式救命胴衣の気室部材が着用者の顎下に配置され、着用者の顎を気室部材が確実に浮かしていることが分かる。つまり、実施例3のハーネス型安全帯を用いずに、膨張式救命胴衣を単体で使用した場合よりも、実施例1の膨張式救命胴衣をハーネス型安全帯に装着した場合の方が、浮遊姿勢及び口元の水面からの距離が優れていることが分かった。実施形態5の場合も同様に、実施例7のハーネス型安全帯を用いずに、膨張式救命胴衣を単体で使用した場合よりも、実施例5の膨張式救命胴衣をハーネス型安全帯に装着した場合の方が、浮遊姿勢及び口元の水面からの距離も優れていることが分かった。
【0107】
また、実施例1の膨張式救命胴衣を固定したハーネス型安全帯を着用した着用者の浮遊角度が+55度であったのに対し、実施例2の膨張式救命胴衣の右下部取付部及び左下部取付部をハーネス型安全帯の右肩ベルト部及び左肩ベルト部の胸ベルトよりも上方に固定した場合の+35度よりも大きな角度となることが分かった。これは、実施例1では、膨張式救命胴衣の右下部取付部及び左下部取付部がハーネス型安全帯の胸ベルトよりも下側に固定されていると、右下部取付部及び左下部取付部が胸ベルトによって上方への移動が規制され、膨張式救命胴衣がハーネス型安全帯の背ベルトを引っ張る形になるため、着用者の体全体が浮き上がるような形となるからである。これに対して、実施例2では、右下部取付部及び左下部取付部が肩ベルト上を上方に移動し、結果として膨張式救命胴衣がハーネス型安全帯よりも上方に浮き上がってしまい、膨張式救命胴衣が着用者の首だけを保持するような形になるため、浮力姿勢が垂直に近づいてしまう。このため、実施例1のように、膨張式救命胴衣の右下部取付部及び左下部取付部がハーネス型安全帯の胸ベルトよりも下側に固定するなど、膨張式救命胴衣の右下部取付部及び左下部取付部が、ハーネス型安全帯の肩ベルトを上方に移動しないように固定することで、着用者の安定した浮力姿勢を確保することができる。
【0108】
また、実施例4では、着用者の浮遊角度が最も小さい+10度となり、口元の水面からの距離も最も低い3cmとなっており、実施例8では、浮遊角度は+30度であるものの口元の水面からの距離が4cmと低くなっているため、救命胴衣用腰ベルトの調整の必要性を確認できた。
【0109】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0110】
例えば、上述した各実施形態では、膨張式救命胴衣40として、カバー部材60の幅方向の外側が開く外開き及び内側が開く内開きの構成を例示したが、特にこれに限定されず、前面カバー部62の幅方向中央部が開く中央開きであってもよい。何れの場合であっても、気室部材50の両端部のそれぞれを、幅方向の外側でカバー部材60と固定することで、気室部材50が膨張した際に着用者1の顎下に膨張した気室部材50を配置して浮遊姿勢を安定させることができ、口元の水面からの距離を確保することができる。
【0111】
また、上述した各実施形態では、気室部材50にホイッスル57及び反射部58等を設けるようにしたが、これらホイッスル57及び反射部58は必ずしも必要ではなく、適宜省くことができる。
【0112】
また、本発明のハーネス型安全帯は、上述した各実施形態のハーネス型安全帯10に限定されるものではなく、少なくとも左右の肩ベルト部と左右の胸ベルト部とを有するハーネス型安全帯であれば、その他のベルト部、例えば、腰ベルト部などを有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…着用者、10…ハーネス型安全帯、11、12…ベルト、13…バックル、14…右肩ベルト部、15…左肩ベルト部、16、17…連結具、18…リング、19…右腿ベルト部、20、21…連結具、22…リング、23…左腿ベルト部、24…尻当てベルト、25…背当て布、26…右胸ベルト、27…左胸ベルト、28、29…胸ベルト用連結具、30、31…リング、40…膨張式救命胴衣、50…気室部材、51…気室、52…右胸部、53…左胸部、54…首部、55…自動開栓式ガス充填装置、55a…気体供給部、56…補助送気装置、57…ホイッスル、57a…紐、58…反射部、60…カバー部材、61…後面カバー部、62a…窓、62…前面カバー部、63…右上部取付部、63a、63b…ベルト、64…右下部取付部、64a、64b…ベルト、65…左上部取付部、65a、65b…ベルト、66…左下部取付部、66a、66b…ベルト、67、68…取付部用連結具、70…救命胴衣用腰ベルト、71…連結具、80…背ベルト、90…右胸固定部、91…左胸固定部、92…首固定部