(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】原反ロールの表皮の切断方法および装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/00 20060101AFI20220118BHJP
B26D 1/04 20060101ALI20220118BHJP
B26D 7/08 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B26D3/00 603Z
B26D1/04 Z
B26D7/08 Z
(21)【出願番号】P 2018513142
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2017015113
(87)【国際公開番号】W WO2017183553
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2016082653
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 悦朗
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-049152(JP,A)
【文献】特開平08-231090(JP,A)
【文献】特開平08-040426(JP,A)
【文献】特開2007-290859(JP,A)
【文献】特開平07-187158(JP,A)
【文献】特開平08-113399(JP,A)
【文献】特開平04-044940(JP,A)
【文献】実開平06-081915(JP,U)
【文献】米国特許第06227088(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/00
B26D 1/04
B26D 7/08
B65H 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反Sの基端Sbから先端Seまでが巻かれた原反ロールRの少なくとも最外周の原反Sを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する方法であって、
前記最外周の原反Sを構成する表皮Rsが前記原反ロールRの一部として巻かれたままの状態で、前記表皮Rsの内周側の原反Sから前記表皮Rsの幅方向Wの第1縁部R1を前記原反ロールRの径方向Zに離間させて前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δを生じさせる離間工程と、
前記空隙Δに対応する前記表皮Rsの部位を前記第1縁部R1から前記表皮Rsの前記幅方向Wの第2縁部R2に向かう第1幅方向W1に変位させる変位工程と、
前記変位工程の実行中に、第1カッタ11を前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって移動させながら、前記表皮Rsを前記幅方向Wの全幅にわたって切断する切断工程とを
備え、
前記離間工程において、前記原反ロールRの外周面R1および端面から離れた原点位置に配置された前記侵入具5の先端が前記空隙Δに向かい合い、
前記侵入具5は先端から侵入用エアA2を空隙Δに向かって吐出する移動ブロワ50を構成し、
前記変位工程は、前記空隙Δに向かってエアを吹き出す前記移動ブロワ50が第1幅方向W1にエアを吹き出しながら、前記第1カッタ11と共に前記第1幅方向W1に移動することにより実行される、原反ロールの表皮の切断方法。
【請求項2】
原反Sの基端Sbから先端Seまでが巻かれた原反ロールRの少なくとも最外周の原反Sを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する方法であって、
前記最外周の原反Sを構成する表皮Rsが前記原反ロールRの一部として巻かれたままの状態で、前記表皮Rsの内周側の原反Sから前記表皮Rsの幅方向Wの第1縁部R1を前記原反ロールRの径方向Zに離間させて前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δを生じさせる離間工程と、
前記離間工程の後に前記表皮Rsの前記第1縁部R1と前記内周側の前記原反Sとの間の前記空隙Δに侵入具5を侵入させる侵入工程と、
前記空隙Δに向かってエアを吹き出す侵入具5の先端から侵入用エアA2を空隙Δに向かって吐出する移動ブロワ50がエアを吹き出しながら、侵入具5が前記第1カッタ11と共に前記第1幅方向W1に移動することにより、前記空隙Δに対応する前記表皮Rsの部位を前記第1縁部R1から前記表皮Rsの前記幅方向Wの第2縁部R2に向かう第1幅方向W1に変位させる変位工程と、
前記離間工程の後の前記変位工程の実行中に、第1カッタ11を前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって移動させながら、前記表皮Rsを前記幅方向Wの全幅にわたって切断する切断工程とを備える、原反ロールの表皮の切断方法。
【請求項3】
請求項1もしくは2の方法において、前記切断工程の前に、前記第1縁部R1における前記第1カッタ11の周方向の両側において前記表皮Rsを押さえ具12で前記原反ロールRの前記径方向Zの中央側に向かって押し付け、この押し付けた状態で前記切断工程を実行する、原反ロールの表皮の切断方法。
【請求項4】
請求項
1において、
前記離間工程の後に前記表皮Rsの前記第1縁部R1と前記内周側の前記原反Sとの間の前記空隙Δに侵入具5を侵入させる侵入工程を更に備える、原反ロールの表皮の切断方法。
【請求項5】
原反Sの基端Sbから先端Seまでが巻かれた原反ロールRの少なくとも最外周の原反Sを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する方法であって、
前記最外周の原反Sを構成する表皮Rsが前記原反ロールRの一部として巻かれたままの状態で、前記表皮Rsの内周側の原反Sから前記表皮Rsの幅方向Wの第1縁部R1を前記原反ロールRの径方向Zに離間させて前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δを生じさせる離間工程と、
前記空隙Δに対応する前記表皮Rsの部位を前記第1縁部R1から前記表皮Rsの前記幅方向Wの第2縁部R2に向かう第1幅方向W1に変位させる変位工程と、
前記変位工程の実行中に、第1カッタ11を前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって移動させながら、前記表皮Rsを前記幅方向Wの全幅にわたって切断する切断工程とを
備え、
ここにおいて、前記原反は不織布からなり、
前記離間工程および前記変位工程は、複数のフック14fを外周に有する一対の係合ローラ14が前記不織布の表面に係合しながら前記第1縁部R1から前記第2縁部R2まで回転して移動することにより前記表皮Rsの前記内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じることにより実行される、原反ロールの表皮の切断方法。
【請求項6】
請求項5の方法において前記原反Sは
周方向に伸縮性を有し、
前記一対の係合ローラ14は、各係合ローラ14の側面14s同士が互いに対面するように配置され、かつ、前記一対の係合ローラ14の前記側面14s同士の距離が前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって拡がるように配置され、
このように配置された一対の係合ローラ14が前記第1縁部R1から前記第2縁部R2まで回転しながら移動することにより前記離間工程および変位工程が実行される、原反ロールの表皮の切断方法。
【請求項7】
請求項1の方法において、前記原反Sは非通気性の樹脂フィルムからなり、
前記離間工程は前記第1縁部R1において前記表皮Rsを吸引することにより前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じることにより実行される、原反ロールの表皮の切断方法。
【請求項8】
長さ方向に伸縮性を有する原反Sの基端Sbから先端Seまでが巻かれた原反ロールRの少なくとも最外周の原反Sを構成する表皮Rsを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する装置であって、
側面14s同士が前記原反ロールRの周方向に互いに離間して配置され、前記表皮Rsの幅方向Wの第1縁部R1から第2縁部R2まで回転しながら移動する一対の係合ローラ14と、
前記一対の係合ローラ14の間に配置された第1カッタ11と、
前記一対の係合ローラ14が前記表皮Rsに係合しながら回転して前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じるように、かつ、前記第1カッタが前記表皮Rsを幅方向Wに切断するように、前記一対の係合ローラ14および前記第1カッタ11を前記幅方向Wに移動させる移動装置4とを備える、原反ロールの表皮の切断装置。
【請求項9】
請求項8の切断装置において、前記一対の係合ローラ14は、各係合ローラ14の前記側面14s同士が互いに対面するように配置され、かつ、前記一対の係合ローラ14の前記側面14s同士の距離が前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって拡がるように前記幅方向Wに対し前記一対の係合ローラ14が斜めに配置されている、原反ロールの表皮の切断装置。
【請求項10】
請求項8もしくは9において、前記係合ローラは前記表皮Rsに係合する複数のフック14fを外周に有する、原反ロールの表皮の切断装置。
【請求項11】
請求項9において、前記係合ローラ14は表面にゴムもしくはウレタン系樹脂の層を有する、原反ロールの表皮の切断装置。
【請求項12】
請求項
8~11のいずれか1項の切断装置において、前記空隙Δに向かってエアを吹き出し、前記移動装置4に搭載された移動ブロワ50を更に備える、原反ロールRの表皮Rsの切断装置。
【請求項13】
請求項
8~12のいずれか1項の装置において、前記第1縁部R1における前記第1カッタ11の両側において前記表皮Rsを前記原反ロールRの径方向Zの中央に向かって押し付ける一対の押さえ具12を更に備える、原反ロールの表皮の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂フィルム、不織布などの原反がロール状に巻かれた原反ロールの表皮の切断方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、紙オムツやナプキンなどの使い捨て着用物品の多くの素材は原反ロールから切り出されたシート状物である。かかるシート状物を生成する際、原反ロールから原反を巻き出す。原反ロールの最外周の1周分の表皮の部分は、輸送中に汚れたり損傷し易く、そのため、除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】JP08-40426A(要約)
【文献】JP06-81915U(要約)
【発明の概要】
【0004】
前記物品の加工は概ね全自動で行われ生産性を向上させている。しかし、前記先行文献では樹脂フィルムや不織布からなる原反の表皮を切断する方法を開示していない。
【0005】
したがって、本発明の目的は自動化に寄与する、原反ロールの表皮の切断方法および装置を提供することである。
【0006】
本発明方法は、原反Sの基端Sbから先端Seまでが巻かれた原反ロールRの少なくとも最外周の原反Sを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する方法であって、
前記最外周の原反Sを構成する表皮Rsが前記原反ロールRの一部として巻かれたままの状態で、前記表皮Rsの内周側の原反Sから前記表皮Rsの幅方向Wの第1縁部R1を前記原反ロールRの径方向Zに離間させて前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δを生じさせる離間工程と、
前記空隙Δに対応する前記表皮Rsの部位を前記第1縁部R1から前記表皮Rsの前記幅方向Wの第2縁部R2に向かう第1幅方向W1に変位させる変位工程と、
前記変位工程の実行中に、第1カッタ11を前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって移動させながら、前記表皮Rsを前記幅方向Wの全幅にわたって切断する切断工程とを備える。
【0007】
本発明方法において、まず、離間工程において表皮Rsの内周側の原反Sと表皮Rsとの間に空隙Δが形成され、次いで、前記空隙Δに対応する表皮Rsの部位が第1幅方向W1に変位する。したがって、第1幅方向W1に第1カッタ11が移動することで、前記表皮Rsを切断することができ、切断の自動化が可能になる。
本発明において、表皮の内周側の原反と前記表皮との間に生じる空隙Δとは、原反ロールの表層部に生じる空隙を意味する。前記表層部とは前記表皮およびその内側の第2層目以上の層を含み、空隙を形成する前記表皮および前記表皮に近い層を意味する。
すなわち、前記表皮のみを前記表皮よりも内周側の原反から離間させて空隙Δを生じさせてもよいし、あるいは、前記表皮を含む2層以上の外周側の層を前記外周側の層よりも内周側の層から離間させて空隙Δを生じさせてもよい。
たとえば、最外周の原反(表皮)のみを最外周から第2層目の原反から前記径方向に離間させて、前記表皮と前記第2層目の原反との間に空隙Δを生じさせてもよい。一方、前記表皮を含む2層の原反(表皮および最外周から第2層目の原反)を最外周から第3層目の層から前記径方向に離間させて、前記2層の原反と前記第3層目の原反との間に空隙Δを生じさせてもよい。
【0008】
本発明装置は第1の局面において、長さ方向に伸縮性を有する原反Sの基端Sbから先端Seまでが巻かれた原反ロールRの少なくとも最外周の原反Sを構成する表皮Rsを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する装置であって、
側面14s同士が前記原反ロールRの周方向に互いに離間して配置され、前記表皮Rsの幅方向Wの第1縁部R1から第2縁部R2まで回転しながら移動する一対の係合ローラ14と、
前記一対の係合ローラ14の間に配置された第1カッタ11と、
前記一対の係合ローラ14が前記表皮Rsに係合しながら回転して前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じるように、かつ、前記第1カッタが前記表皮Rsを幅方向Wに切断するように、前記一対の係合ローラ14および前記第1カッタ11を前記幅方向Wに移動させる移動装置4とを備える。
【0009】
この局面においては、一対の係合ローラが表皮に係合しながら回転して表皮の内周側の原反と表皮との間に空隙Δが生じ、この空隙Δに対応する表皮Rsの部位が第1幅方向W1に変位する。前記部位の変位に応じて第1カッタ11が表皮を幅方向Wに切断することができる。したがって、切断の自動化が可能になる。
【0010】
本第1局面における「係合」とは、係合ローラの外周面に設けたフックが不織布等に引っ掛かって係合する場合の他に、係合ローラのゴム質の外周面がフィルムに大きな摩擦力で接する場合も含む。
【0011】
本発明装置は第2の局面において、樹脂フィルムからなる原反Sの基端Sbから先端Seまでが巻かれた原反ロールRの少なくとも最外周の原反Sを構成する表皮Rsを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する装置であって、
前記原反ロールRの幅方向Wの第1縁部R1において、前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じるように前記表皮Rsを吸着するバキュームパッド10と、
前記空隙Δに侵入する侵入具5と、
前記侵入具5の先端よりも後方に配置された第1カッタ11と、
前記第1カッタ11が前記表皮Rsを前記幅方向Wに切断するように前記侵入具5および前記第1カッタ11を前記幅方向Wに移動させる移動装置4とを備える。
【0012】
第2の局面においては、バキュームパッド10が表皮Rsを吸着して生じた空隙Δに侵入具5が侵入して前記空隙Δに対応する表皮Rsの部位が第1幅方向W1に変位する。前記空隙Δの生じた部位において第1カッタ11が表皮を切断しながら第1幅方向W1に移動して、表皮が全幅にわたって切断される。したがって、切断の自動化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明にかかる表皮の除去方法の実施例1を示す工程図である。
【
図4】
図4は除去システムの全体を示す概略正面図である。
【
図5】
図5は移動装置を示す一部断面した概略斜視図である。
【
図6】
図6は第1(本)切断装置の実施例を示す一部断面した概略側面図である。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、第1(本)切断装置および押さえ具を原点位置で示す一部断面した概略正面図および概略側面図である。
【
図8】
図8Aは移動ブロワを示す概略平面図、
図8Bはバキュームパッドが上昇した状態で示す第1切断装置の一部断面した概略側面図である。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、それぞれ、第1切断工程を示す第1切断装置の同側面図である。
【
図10】
図10は第1切断装置の別の実施例を示す一部断面した概略側面図である。
【
図11】
図11Aおよび
図11Bは、それぞれ、第1(本)切断装置および押さえ具を示す一部断面した概略正面図および概略側面図である。
【
図12】
図12Aは移動ブロワを示す概略平面図、
図12Bはバキュームパッドが上昇した状態で示す第1切断装置の一部断面した概略側面図で、
図12Cは同平面図である。
【
図14】
図14Aは係合ローラの一部を示す拡大図、
図14Bは別の係合ローラによる離間工程を示す係合ローラの正面図である。
【
図15】
図15は前記第1切断装置の別の実施例を有する除去システムの全体を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明方法において好ましくは、前記変位工程は、前記空隙Δに向かってエアを吹き出す移動ブロワ50がエアを吹き出しながら、前記第1カッタ11と共に前記第1幅方向W1に移動することにより実行される。
【0015】
この場合、エアの吹き出しにより前記空隙Δを確保することができ、切断の信頼性が向上する。
【0016】
好ましくは、前記切断工程の前に、前記第1縁部R1における前記第1カッタ11の周方向の両側において前記表皮Rsを押さえ具12で前記原反ロールRの前記径方向Zの中央側に向かって押し付け、この押し付けた状態で前記切断工程を実行する。
【0017】
樹脂フィルムや不織布などの原反は一般に腰が弱く(剛性が小さく)、第1カッタが接触すると原反に変形が生じこの変形が切断を妨げる要因となる。かかる観点から、切断が開始される際に押さえ具12が第1縁部R1を第1カッタ11の周方向の両側において押さえていることで、切断を容易にかつ正確に実行することができる。
【0018】
好ましくは、前記離間工程の後に前記表皮Rsの前記第1縁部R1と前記内周側の前記原反Sとの間の前記空隙Δに侵入具5を侵入させる侵入工程を更に備える。
【0019】
この場合、空隙Δに前記第1カッタ11よりも前方において侵入具5を侵入させる。そのため、第1カッタ11による切断前に前記空隙Δが確保され、表皮を容易に切断することができる。
【0020】
好ましくは、前記原反は不織布からなり、
前記離間工程および前記変位工程は、複数のフック14fを外周に有する一対の係合ローラ14が前記不織布の表面に係合しながら前記第1縁部R1から前記第2縁部R2まで回転して移動することにより、前記表皮Rsの前記内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じることにより実行される。
【0021】
この場合、不織布にフックが係合(引っ掛かり)した状態で係合ローラが回転する。これにより、不織布が捲り上がり空隙Δが生じる。したがって、不織布からなる原反を容易に切断することができる。
なお、複数のフックとしては雄面ファスナがローラの外周面に巻かれていてもよい。
【0022】
好ましくは、前記原反Sは前記周方向に伸縮性を有し、
前記一対の係合ローラ14は、各係合ローラ14の側面14s同士が互いに対面するように配置され、かつ、前記一対の係合ローラ14の前記側面14s同士の距離が前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって拡がるように配置され、
このように配置された一対の係合ローラ14が前記第1縁部R1から前記第2縁部R2まで回転しながら移動することにより前記離間工程および変位工程が実行される。
【0023】
この場合、互いに対面する一対の係合ローラが互いに傾いて配置されている、このような配置の係合ローラは回転しながら表皮が係合ローラ間に寄せられるような剪断応力を表皮に与える。そのため、伸縮性を有する表皮が一対の係合ローラ間で原反ロールの表面において湾曲して突出する。これにより、空隙Δが生じる。したがって、切断の信頼性が高まる。
【0024】
好ましくは、前記原反Sは非通気性の樹脂フィルムからなり、
前記離間工程は前記第1縁部R1において前記表皮Rsを吸引することにより前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じることにより実行される。
【0025】
この場合、非通気性の樹脂フィルムを吸引することにより前記空隙Δが生じる。したがって、切断の信頼性が高まる。
【0026】
本発明装置の第1の局面において、好ましくは、前記一対の係合ローラ14は、各係合ローラ14の前記側面14s同士が互いに対面するように配置され、かつ、前記一対の係合ローラ14の前記側面14s同士の距離が前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって拡がるように前記幅方向Wに対し前記一対の係合ローラ14が斜めに配置されている。
【0027】
この場合、前述のように、伸縮性を有する原反の表皮が一対の係合ローラ間で湾曲して突出する。したがって、空隙Δが生じ易い。
【0028】
好ましくは、前記係合ローラは前記表皮Rsに係合する複数のフック14fを外周に有する。
この場合、係合ローラ14の外周に設けられたフックが表皮Rsに係合して、空隙Δを生成する。
【0029】
好ましくは、前記係合ローラ14は表面にゴムもしくはウレタン系樹脂の層を有する。
この場合、係合ローラ14の表面のゴムやウレタン樹脂の層が表皮Rsに大きな摩擦力を与え、そのため、空隙Δが生成される。
【0030】
本発明装置の第1または第2局面において、好ましくは、前記空隙Δに向かってエアを吹き出し、前記移動装置4に搭載された移動ブロワ50を更に備える。
この場合、移動ブロワ50が空隙Δに向かってエアを吹き出しながら第1幅方向W1に移動する。そのため、空隙Δが切断中に連続的に確保される。
【0031】
好ましくは、前記第1縁部R1における前記第1カッタ11の両側において前記表皮Rsを前記原反ロールRの径方向Zの中央に向かって押し付ける一対の押さえ具12を更に備える。
【0032】
この場合、第1カッタによる切断が開始される際に、第1カッタの両側において、表皮が押さえ具により押さえられている。そのため、切断を容易かつ正確に実行することができる。
【0033】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【実施例】
【0034】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0035】
以下、本発明の実施例1が図面にしたがって説明される。
本実施例1にかかるシステムの説明に先立って、原反ロールRの表皮の除去方法の概略が説明される。
【0036】
図1(a)および
図6に示すように、表皮の除去方法が適用される原反ロールRは、原反Sの先端Seが原反ロールRの外周面Rfに例えばテープTなどで仮止めされている。すなわち、
図1(a)の原反ロールRは原反Sの基端Sbから先端Seまでが巻かれ先端Seが外周面Rfに仮止めされている。表皮Rsを除去する際に原反Sを2箇所の被カット部C1,C2において切断するが、前記テープTで覆われていない原反Sの部位が切断されてもよい。
【0037】
表皮の除去方法は、
図1(b)の第1切断工程、
図1(c)~(f)の引き出し工程、
図1(h)の第2切断工程および
図1(i)の廃棄工程を備える。
【0038】
図1(b)の第1切断工程では、原反ロールRの最外周の第1被カット部C1において、前記原反ロールRの最外周の原反Sを
図6の幅方向Wの全幅にわたって切断する。
【0039】
図1(c),(d)の引き出し工程では、前記第1切断工程において前記原反Sの前記切断された
図1(b)の一対の端S11,S12のうち前記基端Sbに連なる第1端S11を
図1(c)の原反ロールRから引き出す。前記引き出し工程の際に前記原反ロールRは第1の周方向D1に回転される。
【0040】
図1(h)の第2切断工程では、前記第1被カット部C1よりも前記基端Sbに近い第2被カット部C2において前記原反Sを幅方向W(
図6)の全幅にわたって切断する。前記第1被カット部C1から前記第2被カット部C2までの前記原反Sの長さは前記原反ロールRの最外周の1周分よりも大きい長さである。
図1(g)~(i)の前記第2切断工程において、前記引き出された前記第1端S11(
図1(b))に連なる前記原反Sの部分が前記第2被カット部C2において切断される。
なお、第1被カット部C1から第2被カット部C2までが最外周の1周分よりも長いので、当然に、先端Seから第2被カット部C2までは最外周の1周分よりも長い。
【0041】
図1(c)~(g)および(i)の廃棄する工程では、前記原反ロールRの中空部Rcが装着された巻出ローラ9(
図4)を回転駆動しながら、
図1(b)の前記第1被カット部C1から前記先端Seまでの原反Sの第1の切レ端S1、並びに、前記第1被カット部C1から
図1(h)の第2被カット部C2までの原反Sの第2の切レ端S2を引き出し装置3で引き出す。
【0042】
前記第2切断工程の後に、
図1(j)の原反ロールRを前記第1の周方向D1とは反対の第2の周方向D2に回転させる。この回転により、原反Sから加工品を得るために、原反ロールRの新しい先端の位相の初期設定がなされる。
【0043】
つぎに、除去システムの概略が説明される。
図4において、除去システムは第1切断装置1、第2切断装置2、引き出し装置3、巻出ローラ9、センサ91および制御装置100を備える。制御装置100はセンサ91からの入力等に応じてシステム全体の動作を制御する。
【0044】
制御装置100は第1,第2および第3制御部101,102,103を備える。後述するように、前記第1,第2および第3制御部101,102,103は、それぞれ、巻出ローラ9の回転、第2切断装置2の動作および第1切断装置1の動作などを制御する。
【0045】
センサ91は1個又は複数設けられ、原反ロールRからの光や超音波などの情報を制御装置100に出力してもよい。制御装置100は前記情報に基づいて、原反ロールRの詳細な外径、巻き方向、原反Sの先端Seの位置および/または
図6のテープTの位置を検出してもよい。
【0046】
図6の第1切断装置1は第1カッタ11を備える。一方、
図3Aの第2切断装置2は第2カッタ21を備える。引き出し装置3は吸引装置31を備える。
【0047】
図4において、巻出ローラ9は原反ロールRの中空部Rcが装着され、図示しないモータにより第1および第2の周方向D1,D2に回転駆動される。
【0048】
図6の第1カッタ11は前記巻出ローラ9に装着された前記原反ロールRの最外周の第1被カット部C1(
図1(b))において、前記原反ロールRの最外周の原反Sを
図6の幅方向Wの全幅にわたって切断する。
【0049】
図2(a)~(e)に示すように、吸引装置31は前記原反Sの切断された端を負圧により吸引して前記原反ロールRから引き出す。前記吸引装置31は吸引口30を有する。前記吸引口30が前記第2カッタ21よりも前記巻出ローラ9(
図4)から離れた
図2(d)~(g)の遠位の位置Pfと、前記第2カッタ21よりも前記巻出ローラ9に近づいた
図2(a)~(c)の近位の位置Pnとを往復移動するように、
図4の前記吸引装置31が構成されていると共に第2制御部102により制御される。
【0050】
図2(f)の第2カッタ21は前記吸引装置31で引き出された前記原反Sを第2被カット部C2において
図6の幅方向Wの全幅にわたって切断する。
【0051】
図2(a)の除去システムはエアブロワ32を備える。エアブロワ32は前記第2カッタ21と前記巻出ローラ9(
図4)との間に配置され、前記原反Sの切断された端S11をエアーA1の吹き出しにより前記原反ロールRから離す。
【0052】
つぎに、第1切断装置の一例の概略が説明される。
図6に示す第1切断装置1は、例えば、樹脂フィルムからなる原反Sの原反ロールRの表皮Rsを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する装置である。前記樹脂フィルムは非通気性で紙オムツの吸収性本体のバックシートなどを構成してもよい。
「非通気性」とは、全く通気しないフィルムの他に、バックシートのように微細な開口等により僅かな通気性を備えることを含み、バキュームパッドで吸着できる程度の非通気性であればよいことを意味する。
【0053】
前記第1切断装置1は、バキュームパッド10、侵入具5、前記第1カッタ11および移動装置4を備える。前記移動装置4は前記第1カッタ11が前記表皮Rsを前記幅方向Wに切断できるように、前記侵入具5、バキュームパッド10および前記第1カッタ11などを前記幅方向Wに移動させる。
【0054】
図9Aのように、前記バキュームパッド10は前記原反ロールRの幅方向Wの第1縁部R1に配置され、前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じるように前記表皮Rsを吸着する。
【0055】
図9Aおよび
図9Bのように、侵入具5は前記空隙Δに侵入する。第1カッタ11は前記侵入具5の先端よりも若干後方に配置されている。
【0056】
前記侵入具5は移動ブロワ50を構成する。前記移動ブロワ50は前記空隙Δに向かって
図8Aの侵入用エアA2を吹き出すもので、前記移動装置4(
図6)に搭載されている。なお、侵入用エアA2の吹き出しは制御装置100と図示しない弁により制御されている。
【0057】
図7Aおよび
図7Bに示すように、第1切断装置1は押さえ具12を備える。押さえ具12は前記第1縁部R1における前記第1カッタ11から離れた両側において前記表皮Rsを前記原反ロールRの径方向Zの中央に向かって押し付ける。
【0058】
つぎに、
図4の第1および第2切断装置1,2の構造が説明される。
前記第1切断装置1および第2切断装置は、それぞれ、第1および第2外径設定装置61,62を有する。前記第1外径設定装置61には第1切断装置の移動装置4が搭載されている。前記第2外径設定装置62には第2切断装置2および引き出し装置3が搭載されている。
【0059】
前記第1および第2外径設定装置61,62は、それぞれ、第1および第2切断装置1,2の径方向Zの位置が原反ロールRの実際の外径に応じた位置となるように構成されている。これらの設定装置61,62の構造の一例が第1外径設定装置61を代表して説明される。
【0060】
前記第1外径設定装置61はモータMにより駆動される
図5のネジシャフト63を有する。このネジシャフト63に螺合するメネジ体64に可動フレーム65が取り付けられている。なお、モータMを設けずに手動設定されてもよい。
さらに、
図4の巻出ローラ9がロボットアームに設けてある場合など、原反ロールRを支持する巻出ローラ9の位置を制御できる場合は、外径設定装置61,62を省略して、第1および第2切断装置1,2が径方向Zへ移動不能に配置されてもよい。
【0061】
つぎに、
図4~
図6にしたがって移動装置4が説明される。
移動装置4は
図6の二点鎖線で示す原点位置から実線で示す移動端位置まで、第1切断装置1の主たる要素を移動させる。
【0062】
図5に示すように、移動装置4は可動フレーム65に固定された一対の端部プレート46と、前記一対の端部プレート46,46間に架設された3本の互いに平行なロッド47と、スライダ43とを備える。スライダ43は周知のリニアモータによりロッド47に沿って往復動する構造であってもよい。
【0063】
前記スライダ43には移動部48が固定され、
図6の前記移動部48には前記第1カッタ11および侵入具5が固定されている。また、前記移動部48にはエアシリンダ16を介してタッチセンサ15およびバキュームパッド10が取り付けられている。
【0064】
図8Bに示すように、前記タッチセンサ15はエアシリンダ16の上昇動作で径方向Zに移動し、原反ロールRに接触して原反ロールRに接触した信号を制御装置100に出力する。このとき、バキュームパッド10も原反ロールRの表皮Rsに接触する。
【0065】
前記接触後、
図9Aのバキュームパッド10は表皮Rsを負圧吸着し、この負圧吸着の状態で前記エアシリンダ16が下降動作し、表皮Rsを原反ロールRの内層から引き離す。これにより、空隙Δが生じる。
【0066】
つぎに、第1切断装置1の詳細が説明される。
図4の第1切断装置1は巻出ローラ9よりも上方で表皮Rsを切断できるように巻出ローラ9よりも上方に配置されている。
【0067】
図8Bの前記第1カッタ11は例えば周知の超音波カッタであってもよい。前記第1カッタ11はアーム11aを介して前記移動部48に固定されている。前記第1カッタ11の刃先は侵入具5の貫通スリット51内に入り込んでいる。
【0068】
図7Aおよび
図7Bに示すように、前記原点位置において前記侵入具5は原反ロールRの外周面Rfおよび端面から若干離れた位置に配置されている。一方、
図9Aおよび
図9Bのように、原反ロールRから表皮Rsが離れた際には、前記侵入具5の先端は前記空隙Δに向き合う。
【0069】
図8Aの二点鎖線で示すように、前記侵入具5は先端から侵入用エアA2を空隙Δ(
図9A)に向かって吐出する移動ブロア50を構成している。なお、侵入具5内には図示しないエア源に連なるエア通路やエアのノズルが形成されている。
【0070】
図9Bに示すように、前記第1カッタ11、侵入具5および移動ブロア50は前記移動部48の移動により第1幅方向W1に移動する。この移動により、前記空隙Δが表皮Rsと原反ロールRの内側層との間に確保される。同時に、前記移動により、第1カッタ11は表皮Rsのみを切断する。
【0071】
つぎに、
図5~
図7Bの第1切断装置1の押さえ具12が説明される。
図5の押さえ具12はブラケット12bにエアシリンダ12aを介してプレート12pが径方向Zに駆動するように構成されている。本例の場合プレート12pの先端には摩擦力の大きい一対の押さえ部12cが配置されている。なお、一対の押さえ部12cは一対のフリーローラなどで構成されていてもよい。
【0072】
図7Aのように、各押さえ部12cは前記第1カッタ11に対し周方向の両側に配置され、第1カッタ11による切断中に原反ロールRの表皮Rsを原反ロールRに向かって押さえる。すなわち、
図7Bの押さえ部12cは第1カッタ11による切断が開始される直前から前記表皮Rsの引き出し前の間において、原反ロールRの径方向Zの中心に向かって移動しており、表皮Rsを押さえる。
【0073】
つぎに、
図2~
図4の第2切断装置2および引き出し装置3が説明される。
図4の前記第2切断装置2および引き出し装置3は巻出ローラ9よりも下方で、かつ、前記第1切断装置1から周方向に90°程度離れた下方の位置に配置されている。
【0074】
図3Aにおいて、前記引き出し装置3は負圧源に接続された収納室33を有する。前記収納室33には偏平な筒状の吸引パイプ34が
図3Aの近位の位置Pnと
図3Bの遠位の位置Pfとの間を往復移動できるように設けられている。
【0075】
図3Bの前記収納室33の吸引口30側には第2切断装置2が配置されている。第2切断装置2はアンビル22と、2つの移動可能なローラ23,24および2つの固定ローラ25,26とを備える。
【0076】
図4の第1制御部101は前記第1切断装置1による
図1(b)の切断後、
図1(c)~(f)の前記第2カッタ21による切断前まで前記巻出ローラ9(
図4)を前記原反ロールRと共に第1の周方向D1に回転させ、
図1(g)、(h)の前記第2カッタ21による切断後に前記巻出ローラ9(
図4)を前記原反ロールRと共に前記第1の周方向D1とは反対の第2の周方向D2に回転させる。
【0077】
図4の第2制御部102は前記第2カッタ21による切断の前において、
図2(a)~(c)のように、前記吸引口30が前記近位の位置Pnとなるように、かつ、
図2(d)~(g)の前記第2カッタ21による切断の際に前記吸引口30が前記遠位の位置Pfとなるように、前記吸引装置31を制御する。
【0078】
以下、第1切断工程後に表皮Rsを廃棄する方法の詳細について説明する。
【0079】
図1(b)の第1切断工程の後、
図1(c)~(f)の前記引き出し工程の際に前記原反ロールRを第1の周方向D1に回転させる。前記第1の周方向D1は原反Sから加工品を生成するための巻出方向に設定されている。
図6の前記原反ロールRは前記巻出ローラ9により水平軸線Hのまわりに回転自在に支持されている。
図1(c)~(f)の前記第1の周方向D1に回転させる工程において、前記原反Sの前記切断された前記第1端S11が上方から下方に向かうように前記原反ロールRを前記第1の周方向D1に回転させる。
【0080】
図2(a)に示すように、前記第1端S11が吸引口30に近づく前にエアブロワ32から第1端S11が捲れ上がる方向にエアーを吹き出す。同時に、
図3Aの収納室33および吸引パイプ34内の狭い通路内を負圧にして、
図2(b)のように第1端S11をローラ23に沿って吸引パイプ34内に吸引する。
【0081】
図2(c)に示すように、吸引パイプ34内に原反Sの一部が吸い込まれると、近位の位置Pnの吸引パイプ34が
図2(d)の遠位の位置Pfに移動する。この移動後、
図2(e)のように、ローラ23がローラ25に接近し、ニップローラ24がローラ26との間で原反Sを挟み付ける。
【0082】
その後、
図2(f)および
図1(h)のように、第2カッタ21が第2被カット部C2において表皮Rsから基端Sbに連なる原反Sを切断する。前記切断後にニップローラ24,26によるニップが解除され
図1(d)および
図1(h)の切レ端S1,S2が
図3Bの収納室33内に吸引して収納される。
なお、
図1(a)の前記原反Sの前記先端Seから
図1(i)の前記第2被カット部C2までの前記原反Sの長さは、前記原反ロールRの最外周の1周分の長さよりも大きい。
【0083】
図2(g)および
図1(i)から
図1(j)に示すように、前記第2切断工程の後に前記原反ロールRを前記第1の周方向D1とは反対の第2の周方向D2に回転させる。前記表皮Rsが切断除去された原反ロールRの先端は、後続の加工工程で必要とされる所定位置に設定される。
【0084】
つぎに、
図6の前記第1切断装置1による切断方法の一例の詳細が説明される。
本例において、本例の切断方法は、原反ロールRの最外周の原反Sのみを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する方法であって、以下に説明する押さえ工程、離間工程、侵入工程、変位工程および切断工程を包含する。
【0085】
前記押さえ工程では、
図7Aおよび
図7Bに示す押さえ具12の一対の押さえ部12cが原反ロールRに押し付けられる。これにより、原反ロールRの表皮Rsは前記第1縁部R1において径方向Zおよび第1幅方向W1に位置ズレしにくい安定した状態が保たれる。
【0086】
すなわち、前記切断工程の前に、前記第1縁部R1における前記第1カッタ11の周方向の両側において前記表皮Rsを押さえ具12の一対の押さえ部12cで前記原反ロールRの前記径方向Zの中央側に向かって押し付ける。この押し付けた状態で前記切断工程が実行される。なお、押さえ工程は離間工程に先立って実行される。
【0087】
離間工程では
図1(a)の前記最外周の原反Sを構成する表皮Rsが前記原反ロールRの一部として巻かれたままの状態で、
図9Aの前記表皮Rsの内周側の原反Sから前記幅方向Wの第1縁部R1において表皮Rsを前記原反ロールRの径方向Zに離間させて前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δを生じさせる。
【0088】
本例の場合、前記原反Sは非通気性の樹脂フィルムからなり、前記離間工程は前記第1縁部R1において例えば前記表皮Rsを吸引することにより前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じることにより実行される。
【0089】
より具体的には前記離間工程は以下のように実行される。
図7Bのタッチセンサ15およびバキュームパッド10がエアシリンダ16の作動により
図8Bの原反ロールRの表皮Rsに接触するまで径方向Zに移動する。タッチセンサ15により前記接触を確認するとバキュームパッド10が負圧により表皮Rsを吸着する。この後、前記エアシリンダ16の作動により
図9Aのようにバキュームパッド10が原反ロールRから離れる径方向Zに移動する。これにより、前記空隙Δが生じる。
【0090】
侵入工程では、
図9Bのように、前記離間工程の後に前記第1縁部R1において前記表皮Rsと前記内周側の前記原反Sとの間に前記侵入具5および第1カッタ11を侵入させる。この侵入工程および変位工程において、前記侵入具5は前記空隙Δを第1幅方向W1に進みながら移動ブロワ50からエアを第1幅方向W1に吐出し続ける。
【0091】
前記変位工程は、前記表皮Rsと前記原反Sの離間した部位を
図6の前記第1縁部R1から前記表皮Rsの前記幅方向Wの第2縁部R2に向かう第1幅方向W1に変位させる。
【0092】
本例の場合、前記変位工程は、
図9Bの前記空隙Δに向かってエアを吹き出す侵入具5の移動ブロワ50がエアを吹き出しながら、侵入具5が前記第1カッタ11と共に前記第1幅方向W1に移動することにより実行される。
【0093】
前記切断工程では前記変位工程の実行中に、第1カッタ11を前記第1縁部R1から
図6の前記第2縁部R2に向かって移動させながら、前記表皮Rsを前記幅方向Wの全幅にわたって切断する。
【0094】
より具体的には前記変位工程および切断工程は以下のように実行される。
図6のスライダ43に搭載された侵入具5および第1カッタ11が
図6の二点鎖線で示す原点位置から実線で示す移動端位置までスライダ43と共に移動する。この移動により、
図9Bのように、第1カッタ11の前方に配置された移動ブロワ50がエアを吹き出しながら前記空隙Δを確保した状態で第1カッタ11の刃が表皮Rsに接触して表皮Rsが
図6の幅方向Wの全幅にわたって切断される。
【0095】
なお、前記切断後、前記侵入具5および第1カッタ11はスライダ43と共に二点鎖線で示す原点位置に復帰する。
【0096】
以下、
図10~
図15にしたがって実施例2が説明される。
図15に示すように、本実施例の全体構成は
図4と同様であり、以下、
図4の実施例と相違する構造について主に説明する。
図10の本実施例2の第1切断装置1は前記実施例1のバキュームパッド10(
図6)に代えて係合ローラ14を有する。原反Sは例えば通気性および長さ方向に伸縮性を有する不織布であり、たとえば、紙オムツの外装材として用いられる。
【0097】
図10の第1切断装置1は、係合ローラ14、第1カッタ11、移動装置4および押さえ具12などを備える。
図11Aのように、一対の係合ローラ14は側面14s同士が前記原反ロールRの周方向W(
図10)に互いに離間して配置され、
図10の前記表皮Rsの幅方向Wの第1縁部R1から第2縁部R2まで回転しながら移動する。
図12Cのように、前記一対の係合ローラ14の間には、第1カッタ11が配置されている。
図10の前記一対の係合ローラ14が前記表皮Rsに係合しながら回転するように、かつ、前記カッタが前記原反Sを幅方向Wに切断するように、移動装置4は前記一対の係合ローラ14および前記第1カッタ11を前記幅方向Wに移動させる。
【0098】
図12Cの前記一対の係合ローラ14は、各係合ローラ14の前記側面14s同士が互いに対面するように配置され、かつ、前記一対の係合ローラ14の前記側面14s同士の距離が
図10の前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって拡がるように前記幅方向Wに対し
図12Cの前記一対の係合ローラ14が斜めに配置されている。
本実施例の場合、
図14Aのように、前記係合ローラ14は前記表皮Rsに係合する複数のフック14fを外周に有する。
【0099】
つぎに、
図12Bの押当て機構8が説明される。
押当て機構8は係合ローラ14を原反ロールRの表皮Rsに押し当てるための機構である。前記押当て機構8は押当てシリンダ81および揺動リンク82を有する。揺動リンク82はピボット軸80を中心に揺動可能で、一端に押当てシリンダ81の先端が連結され、他端に前記係合ローラ14が回転可能に取り付けられている。したがって、実線および二点鎖線で示すように、係合ローラ14は押当てシリンダ81の伸縮により上下に揺動する。また、
図13Aおよび
図13Bのように、係合ローラ14が原反ロールRに接触している際には、押当てシリンダ81の伸縮により、係合ローラ14が原反ロールRの外表面の表皮Rsに押し付けられる。
【0100】
第1切断装置1は
図10の二点鎖線で示す原点位置から実線で示す移動端位置まで前記移動装置4により移動される。すなわち、
図11Aのスライダ43の駆動により移動部48に搭載された
図11Bの第1カッタ11、係合ローラ14および押当て機構8は第1幅方向W1に始端から終端まで移動する。この移動中に、後述する各工程が実行される。
なお、その他の構成は
図1~
図9の実施例1と同様であり、同一部分もしくは相当部分に同一符号を付して、その詳しい説明および図示を省略する。
【0101】
つぎに、
図10の前記第1切断装置1による切断方法の一例の詳細が説明される。
本例において、本例の切断方法は、原反ロールRの最外周の原反Sのみを前記原反Sの幅方向Wの全幅にわたって切断する方法であって、以下に説明する押さえ工程、離間工程、侵入工程、変位工程および切断工程を包含する。
【0102】
前記押さえ工程では、
図11Aおよび
図11Bに示す押さえ具12の一対の押さえ部12cが原反ロールRに押し付けられる。これにより、原反ロールRの表皮Rsは前記第1縁部R1において径方向Zおよび第1幅方向W1に位置ズレしにくい安定した状態が保たれる。
【0103】
すなわち、前記切断工程の前に、前記第1縁部R1における前記第1カッタ11の周方向の両側において前記表皮Rsを押さえ具12の一対の押さえ部12cで前記原反ロールRの前記径方向Zの中央側に向かって押し付ける。この押し付けた状態で前記切断工程が実行される。なお、押さえ工程は離間工程に先立って実行される。
【0104】
図10の二点鎖線で示すように、前記第1切断装置1は原反ロールRの第1縁部R1側の位置で待機する。この位置においては、
図12Bの押当シリンダ81により揺動リンク82を介して係合ローラ14が径方向Zに原反ロールRの表皮Rsよりも突出した状態に維持されてもよい。
【0105】
この状態でタッチセンサ15がエアシリンダ16の作動により
図12Bの原反ロールRの表皮Rsに接触するまで径方向Zに移動する。タッチセンサ15により前記制御装置100(
図15)が第1切断装置1と原反ロールRとの位置関係を確認した後、前記タッチセンサ15は
図11Bの元の位置に復帰する。
【0106】
離間工程では
図1(a)の前記最外周の原反Sを構成する表皮Rsが前記原反ロールRの一部として巻かれたままの状態で、
図13Aおよび
図13Bの前記表皮Rsの内周側の原反Sから前記幅方向Wの第1縁部R1において表皮Rsを前記原反ロールRの径方向Zに離間させて前記表皮Rsの内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δを生じさせる。
【0107】
より詳しくは、前記原反は不織布からなり、前記離間工程は、
図14Aの複数のフック14fを外周に有する一対の係合ローラ14が前記不織布の表面に係合しながら、
図13Aの前記第1縁部R1から第1幅方向W1に向かって回転して移動し、表皮Rsを引っ掛けて剥がすことにより前記表皮Rsの前記内周側の原反Sと前記表皮Rsとの間に空隙Δが生じることにより実行される。
【0108】
ここで、前記一対の係合ローラ14は、
図12Cの各係合ローラ14の側面14s同士が互いに対面するように配置され、かつ、前記一対の係合ローラ14の前記側面14s同士の距離が前記第1縁部R1から第1幅方向W1に向かって拡がるように配置されている場合、係合ローラ14は前記フック14fに代えて、表面にゴムもしくはウレタン系樹脂の層を有していてもよい。
前記原反Sが前記周方向に伸縮性を有する場合、前述のように配置された一対の係合ローラ14は前記第1縁部R1から前記第2縁部R2に向かって回転しながら移動することにより前記離間工程を実行する。
【0109】
すなわち、
図12Cのように、互いに斜めに配置された一対の係合ローラ14,14は、第1幅方向W1に回転移動する際に、係合ローラ14に沿った斜めの方向W14に表皮Rsを手繰り(たぐり)寄せる。そのため、
図14Bのように、一対の係合ローラ14,14間の表皮Rsは原反ロールRの内側の層から離れ、空隙Δが生じる。
【0110】
侵入工程では、
図13Bのように、前記離間工程の後に前記第1縁部R1において前記表皮Rsと前記内周側の前記原反Sとの間に前記侵入具5および第1カッタ11を侵入させる。この侵入工程および変位工程において、前記侵入具5は前記空隙Δを第1幅方向W1に進みながら移動ブロワ50からエアを第1幅方向W1に吐出し続ける。
【0111】
前記変位工程は、前記空隙Δに対応する前記表皮Rsの部位を
図10の前記第1縁部R1から前記表皮Rsの前記幅方向Wの第2縁部R2に向かう第1幅方向W1に変位させる。
【0112】
本例の場合、前記変位工程は、前記係合ローラ14の回転移動により表皮Rsを剥がすことに加え、
図13Bの前記空隙Δに向かってエアを吹き出す侵入具5の移動ブロワ50がエアを吹き出しながら、侵入具5が前記第1カッタ11と共に前記第1幅方向W1に移動することにより実行される。
【0113】
前記切断工程では前記変位工程の実行中に、第1カッタ11を前記第1縁部R1から
図10の前記第2縁部R2に向かって移動させながら、前記表皮Rsを前記幅方向Wの全幅にわたって切断する。
【0114】
前記実施例では第1カッタ11が超音波カッタであったが、第1カッタ11は鋭利なローラとアンビルなどで構成されてもよい。前記離間工程や第1切断工程を実行するための装置は対象となる原反Sの種別に応じて選択されるのが好ましい。
【0115】
前記離間工程では表皮Rsのみを原反ロールから引き離して、第1切断工程で表皮Rsのみを切断した。しかし、前記バキュームパッド10で不織布からなる表皮Rsおよび内層の原反を吸引したり、前記係合ローラのフックで表皮Rsおよびその内層の原反を引っ掛けてもよい。この場合、表皮を含む2層の原反が切断されて除去される。具体的には、表皮および最外周から第2層目の原反からなる2層の原反を内周側の原反(最外周から第3層目の原反)から離間させて、前記2層の原反と前記第3層目の原反との間に空隙Δを生じさせてもよい。この場合、前記表皮を含む2層の原反(表皮および前記第2層目の原反)が前記第1切断工程で切断される。
本発明において、表皮の内周側の原反と前記表皮との間に生じる空隙Δとは、原反ロールの表層部に生じる空隙を意味する。したがって、前記各実施例のように前記表皮のみを前記表皮よりも内周側の原反から離間させて空隙Δを生じさせてもよいし、あるいは、前記表皮を含む2層以上の外周側の層を前記外周側の層よりも内周側の層から離間させて空隙Δを生じさせてもよい。
【0116】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、原反ロールの表皮はテープなどではなく粘着剤や接着剤で原反ロールに付着されていてもよい。
移動装置はリニアモータではなく、ベルトなどで往復動してもよい。
押さえ具は必ずしも必要としない。押さえ具の押さえ部としては、ゴム板の他にフリーローラであってもよい。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の方法および装置は使い捨てパンツ、オムツ、生理用品などの使い捨て着用物品の生産の他、種々の原反ロールに利用できる。
【符号の説明】
【0118】
1:第1切断装置 10:バキュームパッド 11:第1カッタ 12:押さえ具
13:ブロワ 15:タッチセンサ 16:エアシリンダ
2:第2切断装置 21:第2カッタ 22:アンビル 23~26:ローラ
3:引き出し装置 30:吸引口 31:吸引装置 32:エアブロワ
4:移動装置 43:スライダ
5:侵入具 50:移動ブロワ 51:貫通スリット
61,62:外径設定装置
8:押当機構 80:ピボット軸 81:押当シリンダ 82:揺動リンク
9:巻出ローラ 91:センサ
100:制御装置 101:第1制御部 102:第2制御部 103:第3制御部
C1:第1被カット部 C2:第2被カット部
D1:第1の周方向 D2:第2の周方向 H:水平軸線
Pf:遠位の位置 Pn:近位の位置
R:原反ロール R1:第1縁部 R2:第2縁部 Rc:中空部 Rf:外周面
Rs:表皮
S1:第1の切レ端 S2:第2の切レ端 S11:第1端 S12:第2端
S:原反 Sb:基端 Se:先端
T:テープ W:幅方向 W1:第1幅方向 Z:径方向 Δ:空隙