(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄コロイドおよび関連組成物を生成するための方法ならびに使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/295 20060101AFI20220118BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220118BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220118BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220118BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K31/295
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61P7/06
(21)【出願番号】P 2018517847
(86)(22)【出願日】2016-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2016074022
(87)【国際公開番号】W WO2017060441
(87)【国際公開日】2017-04-13
【審査請求日】2019-10-07
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518160355
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,ジョナサン・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ファリア,ヌーノ・ジョルジ・ロドリゲス
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-520856(JP,A)
【文献】特表2011-529954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07C 51/00
C01G 49/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物を製造する方法であって、該方法が、以下の工程:
該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の水混和性非水性溶媒中におけるコロイド状懸濁液を混合して該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を集塊させ、ここにおいて、該水混和性非水性溶媒は、以下の、アセトン、アセトニトリル、ブタノール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、エタノール、エチルアミン、エチレングリコール、グリセロール、メタノール、メチル ジエタノールアミン、1-プロパノール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-プロパノール、プロピレングリコールおよびトリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物、からなる群から選択される;
該集塊したカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を回収し;そして
該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を乾燥させて該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物を生成し、ここで、該カルボキシレート配位子は、1種類以上のジカルボキシレート配位子を含む;
ここにおいて、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が、三次元ポリマー構造を有し、該カルボキシレート配位子が、該配位子の一部が正式の金属-配位子結合により
固相中に組み込まれるように、非化学量論的に該水酸化第二鉄のオキソまたはヒドロキシ基に置き換わっている、
ここにおいて、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を回収のために、超遠心分離または限外濾過を用いる必要がない、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該水混和性非水性溶媒が、エタノール、メタノールおよび/またはアセトンから選択される方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の三次元ポリマー構造が、該カルボキシレート配位子による該オキソもしくはヒドロキシ基の置換が実質的にランダムであるような構造である方法。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか1項に記載の方法であって、該方法が、さらに第二鉄イオンおよび1種類以上のカルボン酸配位子またはカルボキシレート配位子の溶液を混合し、該溶液のpHを増大させて該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄のコロイド状懸濁液の形成を引き起こす最初の工程を含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、該pHが、アルカリの添加により上昇し、場合により該アルカリが、水酸化ナトリウムである方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の方法であって、該pHが、pH7.0~9.0まで上昇する方法。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の方法であって、該pHが、7.4~8.5まで上昇する方法。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物が、アジペートおよびタルタレート配位子またはタルタレートおよびスクシネート配位子またはスクシネートおよびアジペート配位子を含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、該配位子および
第二鉄が、1:1:2(タルタレート:アジペート:Fe)、1:1:2(タルタレート:スクシネート:Fe)、1:6:2(タルタレート:スクシネート:Fe)または1:1:2(スクシネート:アジペート:Fe)のモル比で存在する方法。
【請求項10】
請求項1-9のいずれか1項に記載の方法であって、
第二鉄の濃度が、20mM~1000mMであり、アジペートの濃度が、10mM~150mMであり、タルタレートの濃度が、10mM~500mMである方法。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか1項に記載の方法であって、
第二鉄の濃度が、20mM~80mMであり、アジペートの濃度が、10mM~40mMであり、タルタレートの濃度が、10mM~40mMである方法。
【請求項12】
請求項1-11のいずれか1項に記載の方法であって、第二鉄の濃度が、約40mMであり、アジペートの濃度が、約20mMであり、タルタレートの濃度が、約20mMである方法。
【請求項13】
請求項1-10のいずれか1項に記載の方法であって、第二鉄の濃度が、約200mMであり、アジペートの濃度が、約100mMであり、タルタレートの濃度が、約100mMである方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物が、タルタレート/酒石酸配位子を含む方法。
【請求項15】
請求項1-14のいずれか1項に記載の方法であって、該水混和性非水性溶媒の該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄のコロイド状懸濁液に対する体積比が、1:1~5:1である方法。
【請求項16】
請求項1-15のいずれか1項に記載の方法であって、該水混和性非水性溶媒が、エタノールである方法。
【請求項17】
請求項1-16のいずれか1項に記載の方法であって、該乾燥工程が、45℃において24時間以下の時間がかかる方法。
【請求項18】
請求項1-17のいずれか1項に記載の方法であって、該懸濁液を凝集させ、集塊したカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を回収する工程が、未反応の第二鉄イオン(Fe
3+)、塩化ナトリウムおよび/または1種類以上のカルボン酸配位子もしくはカルボキシレート配位子を該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄から除去する方法。
【請求項19】
請求項1-18のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が、少なくとも10%Fe(w/w)、または少なくとも20%Fe(w/w)の鉄含有量を有する方法。
【請求項20】
請求項1-19のいずれか1項に記載の方法であって、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物が、1~10nmの平均粒径を有する方法。
【請求項21】
請求項1-20のいずれか1項に記載の方法であって、該配位子が、X線回折(XRD)を用いて決定されるように該
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の構造を乱す方法。
【請求項22】
請求項1-21のいずれか1項に記載の方法であって、該
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が、修飾フェリハイドライトと一致する構造を有する方法。
【請求項23】
請求項1-22のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物を製粉または微粒子化する工程を含む方法。
【請求項24】
請求項1-23のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物を、それを1種類以上の薬学的に許容可能な賦形剤と混合することにより配合する工程を含む方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、さらに錠剤またはカプセルを作製することを含む方法。
【請求項26】
請求項1-25のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物が、経口送達のために配合される方法。
【請求項27】
該配位子の一部が正式の金属-配位子結合により該固相中に組み込まれるように該カルボキシレート配位子が非化学量論的に該水酸化第二鉄の該オキソまたはヒドロキシ基に置き換わっている三次元ポリマー構造を有するカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の三次元ポリマー構造が、該カルボキシレート配位子による該オキソもしくはヒドロキシ基の置換が実質的にランダムであるような構造であり、かつ、水中で40mM Feの濃度で分散した際、該材料が、該材料中に存在する総第二鉄の3.0%未満を含む微粒子状第二鉄画分を生成する、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料。
【請求項28】
鉄欠乏性貧血、鉄欠乏症および慢性疾患の貧血を処置する方法における使用のための、請求項27に記載のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料を含む鉄補給錠剤、カプセルまたは粉末。
【請求項29】
経口送達のために配合されている、請求項28に記載の鉄補給錠剤、カプセル
または粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄(carboxylate ligand modified ferric iron hydroxide)を生成するための方法に、特に非水系溶媒を用いるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄コロイドを回収するための方法に関する。本発明は、さらに、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を含む鉄補給剤および組成物ならびに鉄欠乏性貧血を処置する方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経口鉄補給および強化によるかなりの世界的な努力にもかかわらず、鉄欠乏症は、世界で最も一般的かつ広範囲にわたる栄養障害のままである。この失敗に関する重要な理由は、鉄欠乏症に取り組むためには、経口鉄補給が十分に許容され、安価、安全かつ有効である必要があることである。しかし、現在利用可能な製剤は、これらの基準の少なくとも1つを欠いている。単純な第一鉄[Fe(II)]塩類は、これらが費用がかからず、かつ鉄が十分に吸収されるため、最も一般的に用いられている。しかし、これらは、十分に許容されず、実際には全身感染率を高めるようであり、結腸の共生細菌に対する望ましくない変化を誘導し、腸上皮の炎症促進性シグナル伝達を増大させる可能性がある。第二鉄[Fe(III)]の一部の形態(例えばピロリン酸第二鉄)は、腸管内腔においてFe(II)よりも安全であり、よりよく許容されると考えられているが、それらは十分に吸収されないという欠点を有する。
【0003】
先行技術の鉄補給剤の例として、国際公開第2005/094203号(Navinta)および国際公開第2005/000210号(Chromaceutical)は、静脈内投与される鉄補給剤としての使用のためのグルコン酸ナトリウム第二鉄複合体(Ferrlecit(商標))を作製するためのプロセスに関する。これらの高分子量鉄糖類複合体は、新しく沈殿した水酸化鉄粒子の表面がグルコネート分子でコートされ、続いて二次複合体の集塊した混合物を形成する際に形成される。米国特許出願公開第2005/0256328号(Justus & Hanseler)も、静脈内送達のための類似のグルコン酸第二鉄複合体を記載している。国際公開第2004/07444号および米国特許出願公開第2008/0274210号(Globoasia LLC)は、化学量論的クエン酸第二鉄配位錯体に基づくホスフェート結合物質を記載している。
【0004】
国際公開第2008/096130号(Medical Research Council)は、食物性カルボン酸配位子がオキソ水酸化鉄構造中に非化学量論的に組み込まれているように合成的に修飾されているオキソ水酸化第二鉄コロイドを記載している。鉱物相が乱されているこれらのコロイド性配位子修飾オキソ水酸化鉄は、フェリチン核(天然の鉄の食物性の源)を模しており、従ってヒトにおいて副作用がほとんどまたは全くなく十分に吸収され、安全かつ有効な経口鉄補給剤を提供する。国際公開第2008/096130号において記載されている配位子修飾オキソ水酸化第二鉄は、1:1:2 T:A:Feのモル比のアジペート(A)およびタルタレート(T)カルボキシレート配位子で修飾された水酸化鉄のナノ粒子を含む(水酸化鉄アジペートタルタレートまたは“IHAT”、http://www.rsc.org/chemistryworld/2014/12/solving-iron-solubility-problem-profile-mrcを参照)。これらの材料は、代替の安全な鉄送達剤であることが示されており、ヒトにおけるそれらの吸収は、血清中の鉄の増大(P<0.0001)および直接的なインビトロでの細胞取り込み(P=0.001)と相関していたが、胃での可溶性とは相関していなかった。IHATはまた、ヒトにおいて硫酸Fe(II)に対して約80%の相対生物学的利用能を示し、齧歯類モデルにおいて、IHATは、ヘモグロビンの充填(repleting)において硫酸Fe(II)と同等であった。さらに、IHATは、腸粘膜において蓄積せず、そして硫酸Fe(II)とは異なり、有益な微生物叢を促進した。細胞モデルにおいて、IHATは、硫酸/アスコルビン酸Fe(II)よりも14倍毒性が低く、それ自体は、細胞およびマウスモデルにおいて最小限の急性腸毒性を有し、鉄欠乏性貧血の処置において有効性を示す(Pereira et al., Nanoparticulate iron (III) oxo-hydroxide delivers safe iron that is well absorbed and utilised in humans, Nanomedicine, 10(8): 1877-1886, 2014)。IHATおよび鉄欠乏症を処置するためのその使用を記載している他の論文は、Aslam, et al., Ferroportin mediates the intestinal absorption of iron from a nanoparticulate ferritin core mimetic in mice (FASEB J. 28(8): 3671-8, 2014)およびPowell et al., A nano-disperse ferritin-core mimetic that efficiently corrects anaemia without luminal iron redox activity (Nanomedicine. 10(7): 1529-38, 2014)を含む。
【0005】
IHAT材料は、国際公開第2008/096130号において、第二鉄イオンおよび有機酸を、構成要素の水溶液のpHをそれらが可溶性であるpHからポリマー性配位子修飾オキソ水酸化第二鉄が形成されるより高いpHまで上げることにより共沈させることにより生成されている。次いで、沈殿は、45℃において4~14日間のオーブン乾燥または-20℃および0.4mbarにおいてより長い期間の凍結乾燥のどちらかにより乾燥させられ、それにより鉄補給剤としての配合に適した配位子修飾オキソ水酸化第二鉄を生成する。しかし、広く用いられる補給剤としてのIHATの成功は、材料が安価に大規模に生成されるようにこれらの材料の生成のために用いられる方法を向上させる必要性が当該技術において存在することを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2005/094203号
【文献】国際公開第2005/000210号
【文献】米国特許出願公開第2005/0256328号
【文献】国際公開第2004/07444号
【文献】米国特許出願公開第2008/0274210号
【文献】国際公開第2008/096130号
【非特許文献】
【0007】
【文献】http://www.rsc.org/chemistryworld/2014/12/solving-iron-solubility-problem-profile-mrc
【文献】Pereira et al., Nanoparticulate iron (III) oxo-hydroxide delivers safe iron that is well absorbed and utilised in humans, Nanomedicine, 10(8): 1877-1886, 2014
【文献】Aslam, et al., Ferroportin mediates the intestinal absorption of iron from a nanoparticulate ferritin core mimetic in mice (FASEB J. 28(8): 3671-8, 2014)
【文献】Powell et al., A nano-disperse ferritin-core mimetic that efficiently corrects anaemia without luminal iron redox activity (Nanomedicine. 10(7): 1529-38, 2014)
【発明の概要】
【0008】
大まかには、本発明は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を生成するための方法に対する、特にカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄コロイドを回収および精製するための方法に対する向上に関する。一般に、カルボキシレート配位子は、1以上のジカルボキシレート配位子、例えばタルタレート、アジペートおよび/またはスクシネートを含む。
【0009】
有望なインビボでの生物学的利用能および耐容性の証拠にもかかわらず、大規模に実現可能かつ安価な製造プロセスの欠如は、カルボキシレート配位子修飾オキソ水酸化第二鉄コロイドの普及した使用に対する障害である。遠心分離または濾過は、回収のために用いられることができるが、コロイドの小さい大きさ(Dv0.9(すなわち90%)<10nm)のため、超遠心分離または限外濾過が、用いられなければならないと考えられ、それは、製造規模では非経済的であるという欠点を有する。従って、今までに製造された乾燥粉末は、まず小さいコロイドの分散物を合成し、次いで水を蒸発させることにより回収されていた。しかし、この戦略は、長々しい乾燥工程を必要とし(典型的には45℃において約1週間を必要とする)、それがエネルギー集約的であり望ましくない粒子の集塊を促進するという結果を伴い、すなわち、材料の一部は、一度水中に戻されても再分散しない可能性があり、それは、腸での生物学的利用能を低減する。加えて、先行技術のプロセスは、可溶性反応産物(例えばNaCl)および鉄コロイドとの未結合のカルボキシレート配位子の回収をもたらし、結果的に、粉末中の鉄含有率(%w/w)は、それが全ての未使用の反応材料により希釈されるため、低減する。一方で、そのような低い鉄含有率は、大きな丸剤塊が投与される必要があり、それは患者のコンプライアンスに負の影響を及ぼし得るため、経口鉄補給において欠点である。一方で、未使用の反応材料は、鉄コロイド粒子が分散したままであることに寄与し、従って鉄の生物学的利用能および吸収を促進することが予想され得る。理想的な状況は、未使用の反応材料を除去し、かつカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の粒子をそれらが生物学的に利用能である形態で保持することにより、これらの矛盾する目的の両方を満たすことであろう。
【0010】
驚くべきことに、我々は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄コロイドのエタノールでの回収は、これらの問題の全てを克服し、そして配合に適した合成された鉄材料から乾燥粉末を製造するための迅速で安価なプロセスを提供することを見出した。この乾燥材料は、そのコロイド性の特性を保持しており、療法的補給のために単一のカプセル、錠剤または粉末として与えられることができるために十分に濃縮されており、一方で未使用の反応材料を除去している。下記の実験は、水混和性非水性溶媒、例えばエタノールを用いることにより回収された材料は、適切な溶解速度を有し、ある場合には、対応するオーブン乾燥された材料よりも急速に溶解することも示している。他の水混和性非水性溶媒、特にメタノールおよびアセトンのような非水性溶媒は、類似の結果を提供することができることが分かった。本発明者らは、これらの方法が、先行技術の方法と比較してより小さい一次粒径を有し、従って腸細胞内のリソソーム条件下でより容易に溶解し、従って向上した経口送達による生物学的利用能を有するカルボキシレート配位子修飾オキソ水酸化第二鉄材料を生成することを見出した。これらの特性は、静脈内材料は循環中で急速に溶解(これは重大な患者の毒性を引き起こすであろうため)しないために十分に安定である必要があるため、静脈内送達のための鉄補給剤、例えば国際公開第2005/094203号、国際公開第2005/000210号および米国特許出願公開第2005/0256328号において開示されている鉄補給剤とは異なることは、特筆されるべきである。
【0011】
加えて、その方法は、材料のカルボキシレート含有量における低減をもたらすため、この作用は、重量百分率ベースでの材料中に存在する総鉄含有量を増大させることである。最後に、カルボキシレート含有量における低減にもかかわらず、その方法は、乾燥した材料のある割合の凝集および/または集塊が低減する材料を製造するのを助ける。
【0012】
従って、第1側面において、本発明は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物を製造する方法を提供し、その方法は、以下の工程を含む:
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の水混和性非水性溶媒中におけるコロイド状懸濁液を混合してカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を集塊させ;
集塊したカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を回収し;そして
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を乾燥させてカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物を生成し、ここで、カルボキシレート配位子は、1種類以上のジカルボキシレート配位子を含む。
【0013】
好ましくは、水混和性非水性溶媒は、エタノール、メタノールおよび/またはアセトンから選択される。
その方法は、場合により経口送達のための錠剤またはカプセル中のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物のさらなる工程を含むことができる。
【0014】
さらなる側面において、本発明は、本明細書で記載される方法により得ることができるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物を含む鉄補給錠剤、カプセルまたは粉末を提供する。
【0015】
さらなる側面において、本発明は、配位子の一部が正式の金属-配位子結合により固相中に組み込まれるように、カルボキシレート配位子が非化学量論的に水酸化第二鉄のオキソまたはヒドロキシ基に置き換わっている三次元ポリマー構造を有するカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料を提供し、ここで、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の三次元ポリマー構造は、カルボキシレート配位子によるオキソもしくはヒドロキシ基の置換が実質的にランダムであるような構造であり、かつ/またはここで、水中で分散した際、材料は、材料中に存在する総第二鉄の3.0%未満を含む微粒子状第二鉄画分を生成する。
【0016】
さらなる側面において、本発明は、鉄欠乏性貧血、鉄欠乏症および慢性疾患の貧血を処置する方法における使用のための本発明のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物またはカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料を含む鉄補給錠剤、カプセルまたは粉末を提供する。これらの材料および組成物は、好ましくは経口送達のために配合される。
【0017】
本発明の態様は、ここで、例として、かつ限定ではなく、添付の図を参照して記載されるであろう。しかし、本発明の様々なさらなる側面および態様が、本開示を考慮して当業者には明らかであろう。
【0018】
“および/または”は、本明細書で用いられる場合、他方を伴うかまたは伴わない2つの明記された特徴または構成要素のそれぞれの特定の開示として受け取られるべきである。例えば、“Aおよび/またはB”は、(i)A、(ii)Bならびに(iii)AおよびBのそれぞれの特定の開示として、あたかもそれぞれが本明細書において個々に述べられたかのように受け取られるべきである。
【0019】
文脈が別途指示しない限り、上記で述べられた特徴の記載および定義は、本発明の特定の側面または態様に一切限定されず、記載されている全ての側面および態様に等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(実施例1に従って生成された)IHAT分散物のサイズ分布。
【
図2-1】(実施例2に従って)オーブン乾燥により回収されたIHAT粉末のX線ディフラクトグラム。上のトレースは、NaClおよびKClのトレースの当てはめによるフルスケールを示す(重要なピークは、x軸において開始する縦線により示されている)。下のトレースは、乱された(disrupted)フェリハイドライトベースラインの拡大されたXRDパターンを示しており、それは、塩化カリウム/ナトリウムおよびアジピン酸ナトリウムからの鋭い回折ピークに加えて約33°2-シータにおける下にある(underlying)広い拡散したピークの存在を示しており、それは、修飾フェリハイドライトと一致している。
【
図2-2】(実施例2に従って)オーブン乾燥により回収されたIHAT粉末のX線ディフラクトグラム。上のトレースは、NaClおよびKClのトレースの当てはめによるフルスケールを示す(重要なピークは、x軸において開始する縦線により示されている)。下のトレースは、乱された(disrupted)フェリハイドライトベースラインの拡大されたXRDパターンを示しており、それは、塩化カリウム/ナトリウムおよびアジピン酸ナトリウムからの鋭い回折ピークに加えて約33°2-シータにおける下にある(underlying)広い拡散したピークの存在を示しており、それは、修飾フェリハイドライトと一致している。
【
図3】未結合の配位子および反応産物(例えばNaCl)が(実施例3に従って)限外濾過により除去されたIHAT粉末のX線ディフラクトグラム。トレースは、32~33°2-シータ付近に中心がある1つの非常に広く拡散した回折‘ピーク’の存在を示しており、それは、修飾フェリハイドライトと一致している。
【
図4】(
図2において示されている)通常のIHATと比較してNaClおよびKClのトレースの低減(排除ではないが)を示している、(実施例4に従う)エタノールでの回収後に生成されたIHAT粉末のX線ディフラクトグラム。重要なNaClおよびKClのピークは、x軸において開始する縦線により示されている。
【
図5】フェリハイドライトXRDベースラインの限外濾過された(上)、エタノールで回収された(中央)、そして通常の(下)IHAT粉末に関する重ね合わせ。全ての3つのスペクトルは、あるレベルのフェリハイドライトの混乱を示しているが、エタノールでの回収は、フェリハイドライトのピークの減衰により示されるように、結果として追加の混乱および結晶子サイズの低減をもたらした。
【
図6】(実施例4に従って)エタノールで回収されたIHATの明視野分析(上、右および左)、回折パターン(左下)およびスポットEDX(右下)。明視野分析は、XRDにより同定される主な広いピークと一致する0.29および0.15nm付近に中心のある2つの広い選択された範囲の電子回折環を与える非常にきめの細かいナノ結晶質材料の集塊物を示している。対応するEDXスペクトルは、Fe、O+C、Na、KおよびClを示している。全体として、これらの発見は、配位子修飾フェリハイドライトと一致する。
【
図7】
図6において示されている領域のFe、OおよびCのEELSエッジ(edges)(x軸はeV単位)ならびにEEL分析後のビームで変化した標本のTEM画像(右下)。EELスペクトルは、オーブン乾燥により収集された材料に関する先行する配位子修飾フェリハイドライトのスペクトルと一致しており(第二鉄+有機性配位子で変化した炭素および酸素のエッジ、Pereira et al., Nanomedicine, 10(8): 1877-1886, 2014参照)、EELスペクトルを収集するために必要とされる長期の暴露後に記録されたTEM画像は、ビーム損傷の際の標本のナノ結晶性の性質を確証している(やはりオーブン乾燥により収集された材料に関して以前に観察されている;Pereira et al., Nanomedicine, 10(8): 1877-1886, 2014)。
【
図8】通常の(上)、エタノールで回収された(中央)、および限外濾過された(下)IHAT材料の時間の経過にわたるインビトロリソソーム溶解。
【
図9】集塊物の存在(上)を示す、(実施例2に従う)オーブン乾燥の後元の濃度まで水中で再懸濁されたIHATのサイズ分布。遠心分離による凝集体の除去は、コロイド状画分(下)のサイズ決定を可能にする。
【
図10】限外濾過された、エタノールで回収された、またはオーブン乾燥された(すなわち通常の)IHATをそれらの元の鉄濃度まで再懸濁した後の相分布。3種類の乾燥材料は、同じIHAT懸濁液(40mM Fe;pH 7.42)から生成された。
【
図11】水中でその元の濃度(40mM)まで再懸濁された、エタノールで回収されたIHAT(実施例4)のサイズ分布。
図8における状況とは異なり、再懸濁の際に集塊物が存在しなかったことを特筆する。それぞれの個々のトレースは、分析の複製(N=3)に対応する。
【
図12】水中で再懸濁されて40mM Feまで戻された、アセトンで回収されたIHAT(実施例6)のサイズ分布(平均DV
0.5=4.0nm)。それぞれの個々のトレースは、分析の複製(N=3)に対応する。
【
図13】水中で再懸濁されて40mM Feまで戻された、メタノールで回収されたIHAT(実施例5)のサイズ分布(平均DV
0.5=4.8nm)。それぞれの個々のトレースは、分析の複製(N=3)に対応する。
【
図14a】(a)エタノール処理、(b)オーブン乾燥および(c)限外濾過を用いて回収されたIHATのTEM画像。画像は、エタノールで回収された材料が最も微細に粒状になっており、従って最も非晶質であり、より小さい結晶子サイズを有していたことを示している。オーブン乾燥および限外濾過により回収された材料は、区別がつかなかった。
【
図14b】(a)エタノール処理、(b)オーブン乾燥および(c)限外濾過を用いて回収されたIHATのTEM画像。画像は、エタノールで回収された材料が最も微細に粒状になっており、従って最も非晶質であり、より小さい結晶子サイズを有していたことを示している。オーブン乾燥および限外濾過により回収された材料は、区別がつかなかった。
【
図14c】(a)エタノール処理、(b)オーブン乾燥および(c)限外濾過を用いて回収されたIHATのTEM画像。画像は、エタノールで回収された材料が最も微細に粒状になっており、従って最も非晶質であり、より小さい結晶子サイズを有していたことを示している。オーブン乾燥および限外濾過により回収された材料は、区別がつかなかった。
【
図15】エタノールでの回収の前(“オリジナル”;実施例7に従う)および後(“再懸濁;実施例8に従う)の濃縮されたエタノール性IHATの相分布。実験の詳細は、実施例9において提供されている。
【
図16】エタノールでの回収の前(“オリジナル”;実施例7に従う)および後(“再懸濁;実施例8に従う)の濃縮されたエタノール性IHATのサイズ分布。実験の詳細は、実施例9において提供されている。それぞれの個々のトレースは、3つの分析の複製の平均(N=3;標準偏差の棒が示されている)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の生成
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄は、適切な第二鉄[Fe(III)]塩を溶解させ、次いでポリマー性水酸化鉄の形成を誘導することにより特定の条件下で生成されることができ、ここで、カルボキシレート配位子のある割合は、正式の金属-鉄(M-L)結合により固相中に組み込まれた状態になり、すなわち、配位子(L)の全てが単純にバルク材料中に捕捉または吸着されるわけではない。材料中の金属イオンの結合は、物理的分析技法、例えばX線回折(XRD)を用いて決定されることができ、それは、鉱物相の混乱を、一次粒子中の配位子の組み込みの結果もたらされる増大した非晶質によるピークのシフトおよびバンドの広がりにより示している。
【0022】
本明細書で開示されるカルボキシレート配位子修飾水酸化鉄において、正式の金属イオン-配位子結合の存在は、材料を他の製品、例えば微粒子状結晶質水酸化鉄がマルトースから形成された糖の殻により取り囲まれており、従って単に水酸化鉄および糖のナノレベルでの混合物である“鉄ポリマルトース”(Maltofer)(Heinrich (1975); Geisser and Mueller (1987); Nielsen et al (1994;米国特許第3,076,798号);米国特許出願公開第2006/0205691号)と区別する1つの特徴である。
【0023】
加えて、本発明のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄は、非化学量論的配位子組み込みにより修飾された固相金属ポリオキソ水酸化物である。これは、それらを当該技術で十分に報告されている(国際公開第03/092674号、国際公開第06/037449号)化学量論的である数多くの金属-配位子の古典的配位錯体と区別する。一般に可溶性であるが、そのような錯体は、過飽和の点において溶液から沈殿する可能性があり(例えばトリマルトール第二鉄、Harvey et al. (1998)、国際公開第03/097627号;クエン酸第二鉄、国際公開第04/074444号、米国特許出願公開第2008/0274210号および酒石酸第二鉄、Bobtelsky and Jordan (1947))、場合により、ヒドロキシル基の化学量論的結合さえも含み得る(例えば、水酸化第二鉄糖類、米国特許第3,821,192号)。
【0024】
修飾がない場合、本明細書で用いられるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の一次粒子は、酸化第二鉄のコアおよび水酸化第二鉄の表面を有し、異なる学問分野内で金属酸化物または金属水酸化物と呼ばれる可能性がある。用語‘オキソヒドロキシ’または‘オキソ水酸化物’の使用は、オキソまたはヒドロキシ基の割合に一切言及せずにこれらの事実を認識することが意図されている。本明細書で記載されるように、本発明のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄は、金属水酸化物の一次粒子のレベルで変化しており、配位子の少なくとも一部が一次粒子の構造中に導入されており、すなわちこれは、配位子による一次粒子のドーピングまたは混入をもたらす。これは、コアの構造がそれほど変化していない鉄糖類複合体のような金属オキソ水酸化物および有機分子のナノ混合物の形成と、対比されることができる。
【0025】
本明細書で記載されるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料の一次粒子は、一般に沈殿により生成される。用語“沈殿”の使用は、しばしば沈降または遠心分離により溶液から分離される材料の凝集体または集塊物の形成を指す。ここで、用語“沈殿”は、集塊物または懸濁状態で不溶性部分として残っている他の固相材料を(それらが微粒子状、コロイド状もしくは半コロイド状(sub-colloidal)および/またはナノ粒子もしくはさらに小さいクラスターであろうとなかろうと)含む全ての固相材料の形成を記載することが、意図されている。
【0026】
本発明において、一般に臨界沈殿pHより上で形成される三次元のポリマー性構造を有するカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄への言及がなされる可能性がある。本明細書で用いられる際、これは、記載されたように配位子の組み込みは偶然の一致によるものを除いて非化学量論的であるため、材料の構造が規則的な反復する単量体単位を有する厳密な意味でのポリマー性であることを示していると受け取られるべきではない。特定の理論により束縛されることを望むわけでは一切ないが、本発明者らは、カルボキシレート配位子種は固相構造中に形成している二次元オキソ水酸化鉄鎖のオキソまたはヒドロキシ基に置き換わることにより導入され、次いでそれが架橋して三次元構造を形成し、そうして配位子が固相秩序における変化をもたらすと信じている。ある場合、例えば本明細書で例示される第二鉄材料の製造において、配位子種は、固相材料中の全体的な秩序を低下させる様式での配位子分子によるオキソまたはヒドロキシ基の置換により、固相構造中に導入されることができる。これは、なお全体的な形態において1以上の再現性のある物理化学的特性を有する固体カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄をもたらすが、その材料は、例えば対応する未修飾の金属オキソ水酸化物の構造と比較してより非晶質な性質を有する。より無秩序または非晶質な構造の存在は、当業者により、当該技術において周知の技法を用いて容易に決定されることができる。1つの典型的な技法は、透過型電子顕微鏡法(TEM)である。高解像度透過型電子顕微鏡法は、材料の結晶パターンが視覚的に評価されることを可能にする。それは、一次粒径および構造(例えば面間隔d)を示し、非晶質および結晶質材料の間の分布に関する一部の情報を与え、そして材料が修飾された場合でさえも2線(2-line)フェリハイドライト様構造と一致する構造を有することを示すことができる。この技法を用いれば、上記の化学が、組み込まれた配位子を含まない対応する材料と比較して、本明細書で記載される材料の非晶質相を増大させることは、明らかである。これは、高角度環状暗視野収差補正走査型透過電子顕微鏡法を用いると、高いコントラストが達成される一方で解像度を維持し、従って材料の一次粒子の表面ならびにバルクが可視化されることを可能にするため、特に明らかである可能性がある。
【0027】
加えて、または、代わりに、配位子修飾の際に、例えばリソソームアッセイにおいて説明されるように、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の溶解の速度論が、組み込まれた配位子を含まない対応する材料と比較して加速される。鉄補給または強化のために用いられる材料に関して有用に調節され得る特性の例は、以下の特性を含む:溶解(速度およびpH依存性)、吸着および吸収特徴、反応性-不活性、融点、耐熱性、粒径、表面電荷、密度、光吸収/反射特性、圧縮性、色ならびに封入(encapsulation)特性。補給剤または強化剤(fortificants)の分野に特に関連する特性の例は、溶解プロフィール、吸着プロフィールまたは再現性のある元素比の1以上から選択される物理化学的特性である。これに関連して、特性または特徴は、エタノールでの回収に関する複製実験が好ましくは±20%、より好ましくは±10%の標準偏差の範囲内、さらにもっと好ましくは±5%の限界の範囲内で再現性がある場合に、再現性がある可能性がある。
【0028】
固体配位子修飾ポリオキソ-ヒドロキシ金属イオン材料の溶解プロフィールは、プロセスの異なる段階、すなわち溶解または再懸濁により表されることができる。溶解という用語は、物質の固体から可溶性相への移行を記載するために用いられている。
【0029】
本発明において、本明細書で記載されるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料は、先行技術の材料、例えばオーブン乾燥または限外濾過により製造されたIHATと、材料が水中で再懸濁された際に向上した分散特性を有する点において異なる。これは、下記の実施例において記載されているプロトコルを用いて評価されることができ、ここで、材料の懸濁液の均質な分割量が採取され、次いで可溶性、ナノ粒子状および微粒子状第二鉄画分が遠心分離(微粒子状画分が沈降する)および限外濾過(可溶性相がフィルターを通過する)により分離される。形成されるあらゆる遠心分離可能な相は、遠心分離(例えば13000rpmで10分間;ベンチトップ型遠心分離機)により溶液から分離されることができる。上清画分中の鉄濃度は、誘導結合プラズマ光学発光分光法(ICP-OES)により決定されることができる。上清中の可溶性の鉄およびコロイド状の鉄(遠心分離不能な粒子)を区別するために、例えばVivaspin 3,000 Da分子量カットオフポリエーテルスルホン膜を用いる限外濾過が、用いられることができ、画分が、再度ICP-OESにより分析される。
【0030】
それらが乾燥させられた後、本発明のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料が水中で40mM Feにおいて分散させられた際、それらは、少量の微粒子状画分を生成するかまたは実質的に微粒子状画分を生成せず、第二鉄の相分布は、可溶性材料およびナノ粒子状画分の間であり、例えば、それらは、材料中に存在する鉄総量の5.0%、4.0%、3.0%、2.0%、1.5%、1.0%、0.5%または0.25%未満を有する微粒子状第二鉄画分を含有し、好ましくは実質的に微粒子状の鉄を含有しないであろう。これは、分散して総鉄含有量の約5~10%を含有する微粒子状第二鉄画分を生成する対応するオーブン乾燥された材料と対比されることができる。
【0031】
従って、本発明は、配位子の一部が正式の金属-配位子結合により固相中に組み込まれるように、カルボキシレート配位子が非化学量論的に水酸化第二鉄のオキソまたはヒドロキシ基に置き換わっている三次元ポリマー構造を有するカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料を提供し、ここで、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の三次元ポリマー構造は、カルボキシレート配位子によるオキソもしくはヒドロキシ基の置換が実質的にランダムであるような構造であり、かつここで、水中で分散した際、材料は、材料中に存在する総第二鉄の3%未満を含む微粒子状第二鉄画分を生成する。
【0032】
本明細書で開示されるカルボキシレート配位子修飾水酸化鉄において、カルボキシレート配位子は、カルボキシレートイオンまたは対応するカルボン酸の形態の1、2、3もしくは4またはより多くのカルボキシレート配位子であることができる。一般に、配位子は、ジカルボン酸配位子であり、式HOOC-R1-COOH(またはそのイオン化形態)により表されることができ、ここで、R1は、場合により置換されたC1-10アルキル、C1-10アルケニルまたはC1-10アルキニル基である。R1がC1-10アルキル基、より好ましくはC2-6アルキル基である配位子の使用が、好ましい。R1基の好ましい任意の置換基は、例えばリンゴ酸中に存在するような1個以上のヒドロキシル基を含む。これらの配位子は、カルボン酸、例えばアジペート/アジピン酸、タルタレート/酒石酸、グルタレート/グルタル酸、マレエート/リンゴ酸、スクシネート/コハク酸、アスパルテート/アスパラギン酸、ピメレート/ピメリン酸、シトレート/クエン酸、ラクテート/乳酸またはベンゾエート/安息香酸を含む。一部の好ましい材料、例えばIHATの製造において、2種類の異なる配位子、例えばアジペート/アジピン酸およびタルタレート/酒石酸が、用いられる。配位子の好ましい組み合わせの他の例は、タルタレート/酒石酸およびスクシネート/コハク酸を含む。特に好ましい材料は、配位子およびFe(III)の以下のモル比を用いて形成される:
【0033】
【0034】
特定の理論により束縛されることを望むわけでは一切ないが、本発明者らは、IHATにおいて、一次粒子の水酸化鉄構造の混乱に関して最も原因となっているのは、タルタレート/酒石酸配位子であると信じている(Nanomedicine, 10(8): 1877-1886, 2014)。この観察を考慮して、さらなる態様において、カルボキシレート配位子修飾水酸化鉄は、唯一のカルボキシレート配位子としてのタルタレート/酒石酸により修飾されることができる。
【0035】
第二鉄イオン(単数または複数)のカルボキシレート配位子に対する比率は、本明細書で開示される方法に従って変動することができ、材料の1以上の特性を変動させる可能性がある。一般に、M:Lの有用な比率は、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1および1:1~1:2、1:3、1:4、1:5または1:10、好ましくは4:1~1:1であろう。例として、好ましいIHAT材料において、第二鉄イオンの濃度は、20mM~80mMであることができ、アジペートの濃度は、10mM~40mMであり、タルタレートの濃度は、10mM~40mMである。IHATの合成において、約40mMの第二鉄の濃度が、20mMアジピン酸および20mM酒石酸と共に用いられた。あるいは、特に構成要素の異なる比率が用いられる場合、第二鉄の濃度は、20mM~500または1000mMであることができ、アジペートの濃度は、10mM~150mMであることができ、タルタレートの濃度は、10mM~250mMであることができる。
【0036】
タルタレート/酒石酸を唯一のカルボキシレート配位子として用いる材料の場合、またはアジペートがその最大水中濃度(例えば室温で150mM)で頭打ちされている(capped)場合、下限80mM、100mMおよび120mM~250mM、350mM、500mMおよび1000mMの上限のより高い濃度の第二鉄イオンが、場合により20mM~250mMまたは500mMの濃度のタルタレート/酒石酸との組み合わせで用いられることができる。
【0037】
本発明は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料の形成においてヒドロキシ表面基およびオキソ架橋を提供することができる濃度で水酸化物イオンを形成するあらゆる方法を用いることができる。例は、アルカリ溶液、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび重炭酸ナトリウムを含むが、それらに限定されない。
【0038】
本発明の方法は、直径約1nm~20nmの(粒子体積の百分率としての)サイズ分布を有する粒子の懸濁液を生成し、(体積ベースの分布における)粒子の大部分は、直径約2nm~10nmのサイズ分布を有する。与えられたサイズ範囲内で、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄のナノ粒子の少なくとも75%がその範囲内の平均直径を有すること、より好ましくはカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄のナノ粒子の少なくとも90%がその範囲内の平均直径を有することが、好ましい。コロイド状懸濁液の水力学的粒径は、例えばZetasizer Nano-ZS(Malvern Instruments、英国)を用いる動的光散乱法(DLS)により決定されることができる。非水性溶媒で回収された材料中の結晶子サイズにおける低減は、動的光散乱法により決定されるには、この技法は再分散した粒子における周囲の水の殻の大きさも捕捉するため、微妙すぎる。代わりに、TEMまたはXRD(フェリハイドライトバンドの減衰および/またはシフト)が、用いられるべきである。
【0039】
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の混合および沈殿の正確な条件は、固体材料の望ましい特徴に依存して変動するであろう。典型的な変数は、以下のものである:
(1)開始pH(すなわち、金属イオンおよび配位子種が混合されるpH)。これは、一般にヒドロキシの重合が開始するpHとは異なるpHであろう。好ましくは、それは、より酸性のpH、より好ましくは2のpH未満である。
【0040】
(2)カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の重合が開始するpH。これは、常に開始pHのそれとは異なるpHである。好ましくは、それはより酸性度が低いpHであり、最も好ましくは1.5または2のpHより高い。
【0041】
(3)最終pH。これは、常に沈殿を促進すると考えられ、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の集塊を促進することができ、好ましくはヒドロキシの重合が開始するpHよりも高いpHであろう。この場合、7.0~9.0、より具体的には7.4~8.5の最終pHが、好ましい。
【0042】
(4)カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の重合の開始から反応の完了までのpH変化の速度。これは、24時間の期間内に、好ましくは1時間の期間内に、最も好ましくは20分間の期間内に起こるであろう。
【0043】
(5)金属イオンおよび配位子種の濃度。OHの濃度はヒドロキシの重合の間のpHにより確立されるが、系における総金属イオンおよび総配位子種の濃度は、混合物中の開始する量および最終溶液体積により固定されるであろう。典型的には、これは、両方の金属イオンに関して10-6モル濃度を超えると考えられ、より好ましくは、それは、10-3モル濃度を超えるであろう。金属イオンおよび配位子種の濃度は、独立しており、最終材料の1以上の望ましい特徴に関して選択される。
【0044】
(6)溶液相。この研究に関する好ましい溶液は、水性であり、最も好ましくは、水である。
(7)温度。好ましい温度は、0℃より上かつ100℃未満であり、典型的には室温(20℃~30℃)~50℃または100℃、最も典型的には室温である。
【0045】
(8)イオン強度。電解物、例えば(それに限定されないが)塩化カリウムおよび塩化ナトリウムが、手順において用いられることができる。従って、溶液のイオン強度は、上記の(1)~(8)において概説されている構成要素および条件のみまたはさらなる電解質の添加に由来するイオン強度からの範囲であることができ、それは、10%(w/v)まで、好ましくは2%まで、最も好ましくは1%未満であることができる。
【0046】
沈殿した材料の分離後、それは、場合によりさらなる配合の前に乾燥させられることができる。しかし、乾燥した製品は、いくらかの水を保持し、水和カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の形態であることができる。当業者には、固相の回収に関する本明細書で記載された段階のいずれにおいても、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄と混ざり合うが一次粒子を修飾しない賦形剤が、添加されることができ、それは、材料の意図される機能のために配合を最適化するために用いられることは、明らかであろう。
【0047】
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の精製および回収
本発明の方法は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物、特に鉄含有量がオーブン乾燥が用いられる場合にもたらされる含有量よりも大きい配合物の大規模生産を可能にする。その方法は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が未反応の出発物質、例えば遊離の未反応の配位子、未反応の第二鉄イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよび/または塩化物イオン、ならびに副産物、例えば塩類から分離されることも可能にし、それは、先行技術のオーブン乾燥法では不可能である。
【0048】
本発明のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄は、一般に少なくとも10%Fe(w/w)の鉄含有量を有し、少なくとも15%Fe(w/w)の鉄含有量、または少なくとも20%Fe(w/w)の鉄含有量、または少なくとも25%Fe(w/w)の鉄含有量、または少なくとも30%Fe(w/w)の鉄含有量を有することができる。鉄含有量のより低いレベルは、一般に過剰な未反応の配位子または材料の合成の結果もたらされる塩の存在による。カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を含む最終配合物の鉄含有量の選択は、ある範囲の要因に依存すると考えられ、オーブン乾燥された材料と比較してより高い鉄含有量は、例えば投与の容易さを向上する、または患者のコンプライアンスを助けるためのカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を含有する錠剤またはカプセルの大きさの低減の補助において有利であることができる。合成における配位子と同じまたは異なる配位子(単数または複数)を含む賦形剤が、有利な配合特性、例えば(それに限定されないが)凝集もしくは集塊の防止を提供するために、または製造における粉末の流動特性を変化させるために、または製造における打錠を助けるために、最終製品と混合されることができるであろうことは、当業者には明らかであろう。
【0049】
上記のように、本発明の方法は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄のコロイド状懸濁液を水混和性非水性溶媒、一般にエタノール、メタノールもしくはアセトン、またはそれらの混合物と混合することを含む。好ましい態様において、水混和性非水性溶媒は、エタノールである。好都合には、水混和性非水性溶媒のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄のコロイド状懸濁液に対する体積比は、1:1~5:1である。本発明者らは、水混和性非水性溶媒の添加は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を集塊させてそれが過剰な反応産物、例えば上記の組み込まれていない配位子から分離され、次いで例えば遠心分離または濾過により回収されることを可能にすることを見出した。材料が回収されたら、それは、乾燥させられることができる。乾燥工程において、用いられる時間および/または温度は、一般に先行技術のオーブン乾燥よりも短く、そして低く、好ましくは、乾燥工程は、45℃において24時間以下の時間がかかる。水混和性非水性溶媒の他の例が、https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_water-miscible_solventsにおいて記載されている。
【0050】
従って、ある側面において、本発明は、エタノール、メタノールおよび/もしくはアセトン以外の水混和性非水性溶媒またはそれらの混合物、特に非毒性である、または一般に安全と認められる(Generally Regarded As Safe)(G.R.A.S.)水混和性非水性溶媒を用いることができる。これは、水混和性非水性溶媒が以下の溶媒を含むことを意味する:アセトン、アセトニトリル、ブタノール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルスルホキシド、エタノール、エチルアミン、エチレングリコール、グリセロール、メタノール、メチル ジエタノールアミン、1-プロパノール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-プロパノール、プロピレングリコールおよびトリエチレングリコール、ならびにそれらの混合物。
【0051】
本発明のさらなる利点は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が、一般に少なくとも先行技術の材料と同じくらい非晶質であり、少なくとも同じくらい結晶子サイズが小さいことであり、これは、水混和性非水性溶媒の急速な乾燥が、水性懸濁液が先行技術のより遅いアプローチを用いて乾燥させられた場合に起こるであろうコロイドの老化(ageing)プロセスを短縮するためである。一般に、これらの老化プロセスは、材料の結晶化度を増大させ、または結晶子サイズを増大させ、または非晶質を低減する。特定の理論により束縛されることを望むわけでは一切ないが、本発明者らは、非晶質カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が、良好な経口生物学的利用能のために必要であると信じている。
図14は、水混和性非水性溶媒を用いるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が、オーブン乾燥または限外濾過を用いて回収された材料よりも微細に粒状になっており、従ってより非晶質であったことを示している。従って、本発明の材料は、おそらくオーブン乾燥または限外濾過を用いて製造された先行技術の材料と比較して向上したインビボでの生物学的利用能を有する。
【0052】
乾燥後、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物は、一般に1~20nm、より好ましくは1~10nmの平均粒径を有するであろう。
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を例えば経口送達用の形態で配合する前に、その方法は、1以上の追加の処理工程を含むことができる。これらの例は、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物を製粉または微粒子化することを含む。次いで、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物は、1種類以上の薬学的に許容可能な賦形剤と混合されることができ、次いで、例えば錠剤またはカプセルを作製することにより、経口送達用の最終形態において形成されることができる。
【0053】
配合および使用
本発明の方法により製造されるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄は、補給剤として、特に療法用鉄補給剤としての使用のために配合されることができる。これは、その配合物が、1種類以上の薬学的に許容可能な賦形剤、キャリヤー、緩衝剤、安定化剤または当業者に周知の他の材料と混合されることができることを意味する。そのような材料は、非毒性であるべきであり、かつ鉄補給に関するカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の有効性に干渉するべきでない。
【0054】
キャリヤーまたは他の構成要素の正確な性質は、組成物の投与の方法または経路(この場合は一般に胃腸送達、特に経口送達による)に関連する可能性がある。経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末、ゲルまたは液体形態であることができる。ある場合には、材料は、直接経口摂取されることができ、一方で他の態様において、それらは、食品または飲料との混合に適した形態で提供されてこの方法で摂取されることができる。後者は、強化と呼ばれ得るが、補給剤および補給という用語は、本明細書においてこれならびに通常の補給の実施をカバーするように含まれている。
【0055】
錠剤は、有効物質を錠剤の形成およびそれが対象により摂取された後のその溶解を可能にするための構成要素と共に圧縮することにより形成される。従って、錠剤は、固体のキャリヤー、例えばゼラチンもしくはアジュバントもしくはキャリヤー、圧縮性剤(compressibility agent)および/または流動剤を含むことができる。本発明において、錠剤の形態での鉄補給剤は、1種類以上のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄(例えば錠剤の5~60%(w/w)を形成する)および1種類以上の増量剤、崩壊剤、潤滑剤、滑剤および結合剤(例えば錠剤の残りの40~95%(w/w)を形成する)を含むことができる。加えて、錠剤は、場合により、例えば急速放出もしくは持続放出のどちらかのために錠剤の溶解を改変するための1種類以上のコーティング、および/または錠剤の味を偽装するためもしくは対象が経口摂取することをより容易にするための1種類以上のコーティングを含むことができる。
【0056】
一般に、カプセルは、有効物質をゼラチン性の外被中に包むことにより形成される。錠剤と同様に、カプセルは、外被またはその上に提供されるコーティングの特性に依存して急速放出または持続放出のために設計されることができる。有効物質の放出は、外被により収容される有効物質の粒径(単数または複数)を改変することにより制御されることもできる。カプセルは、一般に殻が固いか、または殻が柔らかいかのどちらかである。殻が固いカプセルは、典型的には有効物質を封入するためにゼラチンを用いて作製され、押出成形または回転楕円体形成(spheronisation)のようなプロセスにより形成されることができる。殻が固いカプセルは、2個の半分の殻を一緒に密封して最終的なカプセルを形成することにより形成されることができる。殻が柔らかいカプセルは、一般に有効成分を油または水中で懸濁し、次いで液体の滴の周囲に外被を形成することにより形成される。カプセルの他の構成要素は、ゲル化剤、植物性多糖類、例えばカプセルの硬さを調節するための可塑剤、着色剤、保存剤、崩壊剤、潤滑剤およびコーティングを含む。
【0057】
個人に与えられる予定である本発明に従って用いられるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄は、好ましくは“予防的有効量”または“療法上有効量”(場合によっては予防は療法と考えられ得るが)で投与され、これは、個人に対する利益を示すために十分である。投与される実際の量ならびに投与の速度および時間経過は、処置されているものの性質および重症度に依存するであろう。処置の処方、例えば投与量等の決定は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、処置されるべき障害、個々の患者の状態、送達の部位、投与の方法および開業医に既知の他の要因を考慮する。上記で言及された技法およびプロトコルの例は、Remington’ s Pharmaceutical Sciences, 第20版, 2000, Lippincott, Williams & Wilkinsにおいて見付けられることができる。組成物は、処置されるべき病気に応じて、単独で、または他の処置との組み合わせで、同時にまたは連続的にのどちらでも投与されることができる。
【0058】
例として、鉄補給剤は、一般に1日あたり100mg Fe~250mg Feの用量で、しばしば1日3回(t.d.s.)50mg Fe~80mg Fe(例えば60mg Fe)の用量で投与される。1回の投与は、持続放出配合物を用いて可能である可能性がある。予防的補給は、より低い用量を用いる可能性があるが、可能な限り高い百分率の有効薬剤(鉄)を含有するあらゆる用量を有することが、これは、用量(カプセル、丸剤等)の大きさを最小限にするであろうため、望ましい。この側面において、本発明は、配合物の非有効成分、例えば未反応の配位子を最小限にし、有効鉄材料が経口送達用量において十分に濃縮されることを可能にする。
【0059】
カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄は、栄養的または医学的利益のための補給剤として用いられることができる。この領域において、3つの主な例が存在する:
(i)療法用(処方)補給剤、それは、一般に鉄欠乏性貧血、鉄欠乏症および慢性疾患の貧血を含む適応症の処置のために経口投与される。本発明のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の療法的投与は、他の療法と、例えばエリスロポエチンの同時使用と合わせられることができる。
【0060】
(ii)栄養補給剤(自己処方/購入される補給剤)、それは通常は経口送達用である。
(iii)強化剤。これらは、(購入の前に食品に添加される点で)伝統的な形態またはより最近の強化剤の形態、例えば摂取の時点で食品に(塩または胡椒のように)添加される‘Sprinkles’であることができる。
【0061】
全ての形式においてであるが特に強化剤に関して、その後の配合、例えば保護用コーティング(例えば脂質)の添加が、材料をその意図される用途に適合性にするために必要である可能性がある。加えて、これらの補給形態のいずれも、配位子(単数または複数)のような同時配合される材料(単数または複数)の使用によるかまたは前記の材料の捕捉/封入によるかまたは単に前記の材料の同時送達による材料内への組み込みのいずれかにより、同時配合されることができる。
【0062】
本明細書で記載されるように、本発明のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の1つの特定の適用は、鉱質欠乏症、例えば鉄欠乏症の処置のための適用である。
例として、本明細書で開示されるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄は、疑われ得る、または標準的な血液学的および臨床化学技法により診断され得る鉄欠乏症または鉄欠乏性貧血の予防または処置における使用のために個人に鉄を送達するために用いられることができる。鉄欠乏症および鉄欠乏性貧血は、例えば不十分な栄養摂取により、もしくは過度の鉄の喪失により孤立して起こる可能性があり、またはそれらは、ストレス、例えば妊娠もしくは授乳と関係している可能性があり、またはそれらは、疾患、例えば炎症性障害、癌および腎不全と関係している可能性がある。加えて、慢性疾患の貧血と関係する低減した赤血球生成が、全身性の鉄の有効な送達により改善または修正され得ること、および鉄のエリスロポエチンまたはその類似体との同時送達が、低減した赤血球生成活性の克服において特に有効であり得ることの証拠が存在する。従って、さらなる例として、本明細書で開示される第二鉄組成物は、鉄を慢性疾患の貧血におけるような最適以下の赤血球生成活性の処置における使用のために個人に送達するために用いられることができる。慢性疾患の貧血は、腎不全、癌および炎症性障害のような病気と関係している可能性がある。上記で特筆されたように、鉄欠乏症は、これらの障害においても一般的に起こる可能性があり、従って、鉄補給による処置は、鉄欠乏症単独および/または慢性疾患の貧血に取り組むことができるということになる。
【実施例】
【0063】
材料および方法
遠心分離
集塊物の回収は、Mistral 6000遠心分離機上で4500rpmにおいて遠心分離または限外濾過により実施された。相の種分類(speciation)は、ベンチトップ型遠心分離機上で13000rpmにおいて実施された。
【0064】
相の種分類
懸濁液の均質な分割量(1mL)が、収集され、エッペンドルフチューブに移された。形成されたあらゆる遠心分離可能な相が、遠心分離(13000rpmにおいて10分間;ベンチトップ型遠心分離機)により溶液から分離された。次いで、上清画分中の鉄濃度が、誘導結合プラズマ光学発光分光法(ICP-OES)により決定された。上清中の可溶性の鉄およびコロイド状の鉄(遠心分離不能な粒子)を区別するために、さらなる0.7mLの分割量が、限外濾過され(Vivaspin 3,000 Da分子量カットオフポリエーテルスルホン膜)、再度ICP-OESにより分析された。
【0065】
TEM
試料は、メタノール中で分散させ、直接孔開(holey)炭素TEM支持フィルム(Cu-グリッド)上に滴下し(drop-cast)、空気乾燥させることによりTEMのために調製された。試料は、CM200 FEG-TEMにおいて分析された。
【0066】
XRD
試料は、押し砕かれ、標準的なプラスチック製試料ホルダー中に装填された。回折データは、Bruker D8回折計により、Cu Kα放射を用いて、Vantec検出器を用いて収集された。走査範囲は、5~75度2θであり、0.15°のステップサイズを用いた;収集に関する合計時間は、試料あたり14時間であった。
【0067】
乾燥粉末の再懸濁
上記の実施例に従って製造された粉末は、UHP水中で最初のFe濃度(約40mM)まで再懸濁され、粒径分布(体積ベース)が、動的光散乱法により決定された。
【0068】
リソソーム溶解アッセイ
模擬されたリソソーム条件下での溶解速度が、10mMクエン酸、0.15M NaCl溶液中でpH5.0±0.1において決定された。Fe材料は、約1mMのFe濃度においてアッセイ溶液に添加され、室温で360分間インキュベートされた。相の種分類が、上記に従って実施された。
【0069】
実施例1:水酸化鉄アジペートタルタレート(IHAT)懸濁液の合成
2.7g KCl、0.90g酒石酸および0.88gアジピン酸が、240mLのddH
2Oを含有するビーカーに添加された。混合物は、構成要素の全てが溶解するまで撹拌された。次いで、100mLの第二鉄溶液が、添加された(60mL ddH
2O中200mM FeCl
3.6H
2O、0.5mL濃HCl)。溶液中の鉄の終濃度は、40mMであり、KClは、0.9%w/vであり、pHは、2.0未満であった。NaOHが、(ddH
2O中で調製された5M NaOH溶液から)この混合物に一定に攪拌しながら7.4<pH<8.5が達成されるまで滴加された。これは、結果として小さいコロイド(
図1参照)を含む懸濁液をもたらし、それは集塊物を含んでいなかった。そのプロセスは、室温(20~25℃)で実施された。
【0070】
実施例2:IHAT懸濁液のオーブン乾燥(比較例)
実施例1におけるように製造された懸濁液が、オーブン中で45℃において空気乾燥された。乾燥は、典型的には約1週間を必要とした(乾燥される体積に応じて4~14日間)。乾燥した材料は、手により製粉され、またはボールミルにより微粒子化された。
【0071】
実施例3:限外濾過されたIHAT懸濁液のオーブン乾燥
IHAT以外の反応産物および未結合の配位子画分が、IHAT懸濁液から、限外濾過(PES膜を用いた20mL容量の限外濾過膜;3000MWCOカットオフ)を通して除去された。限外濾過は、20mLのIHAT懸濁液(実施例1におけるように製造された)を移し、2mL未満のコロイド状濃縮物が残るまで4500RPMで遠心分離することにより実施された。次いで、限外濾過液(非コロイド性の種を含有する)が、廃棄され、濃縮物は、ddH2Oで20mLまで希釈された。この懸濁液が、再度4500rpmにおいて限外濾過され、結果として得られた限外濾過液も、廃棄された。最後に、カルボキシレートを含まないコロイド状濃縮物が、ペトリ皿に移され、オーブン中で45℃において乾燥させられた(3日間)。
【0072】
実施例4:エタノールでの回収
実施例1において製造されたIHATの懸濁液が、エタノールで1:2の割合(15mL IHAT + 30mLエタノール)で希釈された。エタノールの添加は、結果としてコロイドの即時の集塊をもたらし、結果として生じた集塊物が、4600rpmで10分間遠心分離された。次に、上清が、廃棄され、ペレット(集塊したIHATを含有する)が、オーブン中で45℃において24時間乾燥させられた。
【0073】
実施例5:メタノールでの回収
手順は、メタノールが用いられたこと以外はエタノールでの回収における手順と同じであった。
【0074】
実施例6:アセトンでの回収
手順は、アセトンが用いられたこと以外はエタノールでの回収における手順と同じであった。
【0075】
実施例7:濃縮IHAT懸濁液(200mM鉄)の合成
15.01gの酒石酸および14.61gのアジピン酸が、800mLのddH2Oを含有するビーカーに添加された。混合物は、構成要素の全てが溶解するまで撹拌され、適度に加熱された。一度カルボキシレート溶液が室温に戻ったら、200mLの第二鉄溶液(200mL ddH2O中54.06g FeCl3.6H2O)が、それに添加された。結果として得られた溶液中の鉄の終濃度は、200mMであり、pHは、1.5未満であった。次いで、NaOHが、(ddH2O中で調製された5M NaOH溶液から)この混合物に、一定に攪拌しながら7.8<pH<8.5が達成されるまで滴加された。これは、結果として暗い色の懸濁液をもたらした。このプロセスは、室温(20~25℃)において実施された。
【0076】
実施例8:濃縮IHATのエタノールでの回収
実施例7において製造されたIHATの懸濁液が、2Lのエタノールで希釈された。エタノールの添加は、結果としてコロイドの即時の集塊をもたらし、結果として生じた集塊物が、4600rpmで10分間遠心分離された。次に、上清が廃棄され、ペレット(集塊したIHATを含有する)が、オーブン中で45℃において24時間乾燥させられた。
【0077】
実施例9:エタノール沈殿により回収された濃縮IHATの特性付け
実施例7におけるように製造された最終懸濁液の分割量が、1:5(約30mM)に希釈され、粒径および相分布に関して特性付けられた後、エタノール沈殿が行われた(
図15および16;図の説明文において“オリジナル”と呼ばれている)。上記の(実施例8に従う)懸濁液のエタノールでの回収およびオーブン乾燥の後、粉末の一部が、約30mM(50mLの水中0.3682g)に再懸濁された。次いで、この懸濁液が、粒径および相分布に関して特性付けられ(
図15および16;図の説明文において“再懸濁”と呼ばれている)、これは、材料がその元の大きさおよび相分布まで再懸濁されたことを示している。乾燥粉末の鉄含有量は、22.4±0.4%(w/w)であると決定された。
【0078】
結果
前の開示に従う水酸化鉄アジペートタルタレート(IHAT)が、小さいオキソ水酸化鉄コロイドの懸濁液として製造された(
図1;実施例1)。これらの材料は、フェリハイドライトベースの粒子であり、ここで、水酸化鉄の鉱物相は、大部分がタルタレート配位子により乱されている(
図2)。今までのところ、乾燥IHAT材料は、(実施例2の通りに)単に懸濁液から水を蒸発させることにより製造されていた。しかし、これは、長くエネルギー的にコストのかかるプロセスである。また、上記のように、最終的な粉末における未結合のカルボキシレート配位子の‘捕捉’は、低い鉄含有量を有する配合物をもたらす(すなわち大きい丸剤が、必要とされる)。あるいは、限外濾過が、未結合の可溶性種を乾燥前に除去し(
図2)、結果として鉄含有量を増大させる(表1)ために用いられることができるが、これも、コストのかかる戦略であり、それは、容易にスケールアップされることができない。
【0079】
対照的に、本明細書で開示されるエタノールでの回収プロセスは、迅速かつ安価なプロセスであり、それはまた、材料中に存在する未結合の種のレベルを低減し(
図4)、それらの鉄含有量を増大させる(表1)。決定的に重要なことだが、カルボキシレート装填における低減にもかかわらず、エタノールで回収された材料の鉱物相(すなわちフェリハイドライト)は、乱されたままであり(
図5~7)、結晶子は、非常に小さい(
図14)。鉱質の混乱は、オキソ水酸化鉄材料の化学的不安定性における増大をもたらし、それは、それらの生物学的に利用可能な鉄を放出する能力につながっている。従って、エタノールで回収されたIHATの鉱物相の十分な混乱が、インビトロリソソーム溶解アッセイによりさらに確証された。これは、オーブン乾燥、限外濾過された、およびエタノールで回収されたIHAT材料の溶解速度は、類似の特性を有するが、本発明の材料は、対応するオーブン乾燥された材料よりも急速に溶解し(
図8)、これはそれらのさらに小さい一次結晶子サイズに帰せられることを示した。
【0080】
【0081】
既存のオーブン乾燥プロセス(実施例2)の長い乾燥時間は、水中に戻された際に再懸濁せず(
図9)、従って生物学的に利用可能な鉄の源ではない不可逆的な凝集体の望ましくない画分の形成にもつながる。対照的に、再水和された際、エタノールでの回収材料は、それらの元の大きさ(
図11)まで完全に再懸濁する(
図10)。これは、静電反発によりこれらの懸濁液の安定性に寄与するカルボキシレート装填が、エタノールでの回収プロセスにより大きく低減しており、それは、当該技術において通常は粒子を分散させるために必須であると予想されるであろうため、非常に驚くべきことである。従って、その方法は、先行技術のIHAT材料を超えるいくつかの利点を有する材料を製造する:全体として、それは、リソソーム条件下でより容易に溶解し、従ってより生物学的に利用可能であると予想されるカルボキシレート配位子修飾オキソ水酸化第二鉄のさらに小さい一次粒径をもたらす;それは、乾燥した材料のある割合の凝集および/または集塊を防ぐ;そして材料のカルボキシレート含有量における低減は、重量百分率ベースでの材料中に存在する総鉄含有量を増大させる。
【0082】
上記の実験は、他の水混和性非水性溶媒、特にアセトン(
図12)およびメタノール(
図13)が、エタノールの代わりに利用されることができることも、示している。
エタノールで回収されたIHAT中のカルボキシレート含有量
エタノールでの合成の前に、(実施例1に従う)IHATは、アジペートおよびタルタレート両方に関して0.5:1の配位子:鉄比を含んでいた。エタノールで回収された材料(実施例4に従って製造された)のカルボキシレート含有量の分析は、タルタレート:鉄比は0.40:1までしか低下していなかったが、アジペート:鉄比は0.09:1まで低下していたことを示した。特定の理論により束縛されることを望むわけでは一切ないが、エタノールで回収されたIHAT中のカルボキシレート含有量は、アジペートによるよりもタルタレートによるオキソ水酸化鉱質に対する会合および/または修飾のより大きいレベルを示している可能性がある。
【0083】
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1] カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物を製造する方法であって、該方法が、以下の工程:
該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の水混和性非水性溶媒中におけるコロイド状懸濁液を混合して該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を集塊させ;
該集塊したカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を回収し;そして
該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を乾燥させて該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物を生成し、ここで、該カルボキシレート配位子は、1種類以上のジカルボキシレート配位子を含む;
を含む方法。
[態様2] 態様1に記載の方法であって、該水混和性非水性溶媒が、エタノール、メタノールおよび/またはアセトンから選択される方法。
[態様3] 態様1または態様2に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が、三次元ポリマー構造を有し、該カルボキシレート配位子が、該配位子の一部が正式の金属-配位子結合により該固相中に組み込まれるように、非化学量論的に該水酸化第二鉄のオキソまたはヒドロキシ基に置き換わっている方法。
[態様4] 態様1~3のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の三次元ポリマー構造が、該カルボキシレート配位子による該オキソもしくはヒドロキシ基の置換が実質的にランダムであるような構造である方法。
[態様5] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該方法が、さらに第二鉄イオンおよび1種類以上のカルボン酸配位子またはカルボキシレート配位子の溶液を混合し、該溶液のpHを増大させて該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄のコロイド状懸濁液の形成を引き起こす最初の工程を含む方法。
[態様6] 態様5に記載の方法であって、該pHが、アルカリの添加により上昇し、場合により該アルカリが、水酸化ナトリウムである方法。
[態様7] 態様5または態様6に記載の方法であって、該pHが、pH7.0~9.0まで上昇する方法。
[態様8] 態様5~7のいずれか1項に記載の方法であって、該pHが、7.4~8.5まで上昇する方法。
[態様9] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物が、アジペートおよびタルタレート配位子またはタルタレートおよびスクシネート配位子またはスクシネートおよびアジペート配位子を含む方法。
[態様10] 態様9に記載の方法であって、該配位子および第二鉄イオンが、1:1:2(タルタレート:アジペート:Fe)、1:1:2(タルタレート:スクシネート:Fe)、1:6:2(タルタレート:スクシネート:Fe)または1:1:2(スクシネート:アジペート:Fe)のモル比で存在する方法。
[態様11] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、第二鉄イオンの濃度が、20mM~1000mMであり、アジペートの濃度が、10mM~150mMであり、タルタレートの濃度が、10mM~500mMである方法。
[態様12] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、第二鉄イオンの濃度が、20mM~80mMであり、アジペートの濃度が、10mM~40mMであり、タルタレートの濃度が、10mM~40mMである方法。
[態様13] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、第二鉄の濃度が、約40mMであり、アジペートの濃度が、約20mMであり、タルタレートの濃度が、約20mMである方法。
[態様14] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、第二鉄の濃度が、約200mMであり、アジペートの濃度が、約100mMであり、タルタレートの濃度が、約100mMである方法。
[態様15] 態様1~8のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物が、タルタレート/酒石酸配位子を含む方法。
[態様16] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該水混和性非水性溶媒の該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄のコロイド状懸濁液に対する体積比が、1:1~5:1である方法。
[態様17] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該水混和性非水性溶媒が、エタノールである方法。
[態様18] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該乾燥工程が、45℃において24時間以下の時間がかかる方法。
[態様19] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該懸濁液を凝集させ、集塊したカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄を回収する工程が、未反応の第二鉄イオン(Fe3+)、塩化ナトリウムおよび/または1種類以上のカルボン酸配位子もしくはカルボキシレート配位子を該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄から除去する方法。
[態様20] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄が、少なくとも10%Fe(w/w)、または少なくとも20%Fe(w/w)の鉄含有量を有する方法。
[態様21] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄配合物が、1~10nmの平均粒径を有する方法。
[態様22] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該配位子が、X線回折(XRD)を用いて決定されるように該材料の構造を乱す方法。
[態様23] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該材料が、修飾フェリハイドライトと一致する構造を有する方法。
[態様24] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物を製粉または微粒子化する工程を含む方法。
[態様25] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、さらに、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物を、それを1種類以上の薬学的に許容可能な賦形剤と混合することにより配合する工程を含む方法。
[態様26] 態様25に記載の方法であって、さらに錠剤またはカプセルを作製することを含む方法。
[態様27] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物が、経口送達のために配合される方法。
[態様28] 先行する態様のいずれか1項に記載の方法により得ることができるカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物を含む鉄補給錠剤、カプセルまたは粉末。
[態様29] 該配位子の一部が正式の金属-配位子結合により該固相中に組み込まれるように該カルボキシレート配位子が非化学量論的に該水酸化第二鉄の該オキソまたはヒドロキシ基に置き換わっている三次元ポリマー構造を有するカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料であって、該カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄の三次元ポリマー構造が、該カルボキシレート配位子による該オキソもしくはヒドロキシ基の置換が実質的にランダムであるような構造であり、かつ、水中で40mM Feの濃度で分散した際、該材料が、該材料中に存在する総第二鉄の3.0%未満を含む微粒子状第二鉄画分を生成する、カルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料。
[態様30] 鉄欠乏性貧血、鉄欠乏症および慢性疾患の貧血を処置する方法における使用のための、態様28に記載のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄組成物または態様29に記載のカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料を含む鉄補給錠剤、カプセルまたは粉末。
[態様31] 経口送達のために配合されている、態様30に記載の鉄補給錠剤、カプセルもしくは粉末またはカルボキシレート配位子修飾水酸化第二鉄材料。
参考文献:
以下の参考文献は、明確に参照により全ての目的に関してそのまま組み込まれる。
【0084】
【0085】