(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20220118BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61F13/49 310
A61F13/15 355B
A61F13/15 311Z
(21)【出願番号】P 2018544706
(86)(22)【出願日】2017-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2017032634
(87)【国際公開番号】W WO2018070158
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2016202382
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】腰島 美和
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-118986(JP,A)
【文献】特開2009-153913(JP,A)
【文献】特開2009-034209(JP,A)
【文献】特開2008-154998(JP,A)
【文献】特開2015-104606(JP,A)
【文献】特開2012-126140(JP,A)
【文献】特開2015-192862(JP,A)
【文献】特開2015-058226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 - 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面1f,2f同士が互いに対面ないし接する一対のシート1,2と、
前記一対のシート1,2の前記第1面1f,2fの間に配置され、かつ、互いに離間して配置された複数の弾性部材Fと、
前記一対のシート1,2の第1面1f,2fにおいて前記一対のシート1,2が接着剤を介することなく互いに溶着構造で接合され、かつ、前記弾性部材Fを保持し、前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する方向Dpに延び、前記
複数の弾性部材Fのうち互いに隣り合う弾性部材F間において前記伸縮方向Dfに互いに離間した複数の接合部3と、
前記弾性部材Fが収縮している状態において前記複数の接合部3の間に現れる複数の襞Pとを備え、前記各接合部3は、
前記各弾性部材Fの前記交差する方向Dpの両側に配置された複数の強接合部3sと、
前記各弾性部材Fのうち互いに隣り合う弾性部材Fの間において、かつ、前記複数の強接合部3sのうち互いに隣り合う強接合部3sの間に配置された弱接合部3wとを包含し、前記弱接合部3wにおける前記一対のシート1,2同士の接合強度は前記強接合部3sにおける前記一対のシート1,2同士の接合強度よりも小さい、伸縮シート。
【請求項2】
請求項1において、
前記強接合部3sの長さLsよりも前記弱接合部3wの長さLwの方が大きい、伸縮シート。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、
前記強接合部3sの厚さTsよりも前記弱接合部3wの厚さTwの方が大きい、伸縮シート。
【請求項4】
請求項1もしくは2に記載の伸縮シートを有する着用物品であって、前記着用物品は着用者の肌に接する肌面と、その反対側の非肌面とを有し、
前記肌面および/または非肌面において前記襞Pが突出している、着用物品。
【請求項5】
請求項1、2もしくは3に記載の伸縮シートの製造装置であって、製造装置は
前記一対のシート1,2の間に前記弾性部材Fが配置された状態となるように、前記一対のシート1,2および前記弾性部材Fを搬送するアンビルロール50と、
前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに溶着すると共に前記一対のシートで前記弾性部材Fを保持させる溶着装置70とを備え、
前記アンビルロール50は、前記アンビルロール50の外周面51に形成され前記アンビルロール50の幅方向Sに延びる突条52を複数備え、
前記各突条52は前記強接合部3sを生成するための複数の高突条部52Hと、前記弱接合部3wを生成するための複数の低突条部52Lとを包含し、
前記高突条部52Hおよび低突条部52Lは前記幅方向Sに間欠的に設けられ、
前記低突条部52Lの高さH1は高突条部52Hの高さH2よりも低い、製造装置。
【請求項6】
請求項5において、前記低突条部52Lの前記幅方向Sの長さL1が前記高突条部52Hの前記幅方向Sの長さL2よりも長い、製造装置。
【請求項7】
請求項5において、前記低突条部52Lの高さH1が前記高突条部52Hの高さH2に比べ、2~30μm低い、製造装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記アンビルロール50の前記突条52は、前記アンビルロール50の周方向Rに延び、前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する搬送溝Gを複数本備え、
前記搬送溝Gは前記幅方向Sの両側の前記高突条部52Hで定義されている、製造装置。
【請求項9】
請求項5において、
前記溶着装置は前記一対のシート1,2および弾性部材Fを介して前記突条52に対向し超音波エネルギーが付与される超音波ホーン71を有する超音波溶着装置である、製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伸縮シート、それを用いた着用物品および伸縮シートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮シートの構造として、2枚のシート間に複数本の弾性部材を挟み込み、弾性部材の伸縮方向と交差する方向に延びる接合部において、2枚のシート同士を溶着すると共に、2枚のシート間に弾性部材を固定した構造は公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】JP2014-198180 A(フロントページ)
【発明の概要】
【0004】
前述のような伸縮シートは接合部において、シート同士および各シートと弾性部材とを固定するため、接合部におけるシートの少なくとも一部を加熱溶融している。この溶融した部位は、溶融していない部位に比べて裂けやすい。この裂けやすい接合部は、通常、隣り合う接合部同士の間に襞を明瞭に形成するため連続的または断続的に長く延びており、シートが長い接合部に沿って破断するおそれがある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、弾性部材がシートにしっかりと固定されており、しかも接合部が裂けにくい伸縮シート、着用物品および伸縮シートの製造装置を提供することである。
【0006】
本発明の伸縮シートは、第1面1f,2f同士が互いに対面ないし接する一対のシート1,2と、
前記一対のシート1,2の前記第1面1f,2fの間に配置され、かつ、互いに離間して配置された複数の弾性部材Fと、
前記一対のシート1,2の第1面1f,2fにおいて前記一対のシート1,2が接着剤を介することなく互いに溶着構造で接合され、かつ、前記弾性部材Fを保持し、前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する方向Dpに延び、前記複数の弾性部材Fのうち互いに隣り合う弾性部材F間において前記伸縮方向Dfに互いに離間した複数の接合部3と、
前記弾性部材Fが収縮している状態において前記複数の接合部3の間に現れる複数の襞Pとを備え、前記各接合部3は、
前記各弾性部材Fの前記交差する方向Dpの両側に配置された複数の強接合部3sと、
前記各弾性部材Fのうち互いに隣り合う弾性部材Fの間において、かつ、前記複数の強接合部3sのうち互いに隣り合う強接合部3sの間に配置された弱接合部3wとを包含し、前記弱接合部3wにおける前記一対のシート1,2同士の接合強度は前記強接合部3sにおける前記一対のシート1,2同士の接合強度よりも小さい。
【0007】
本シートの発明によれば、各弾性部材の両側に強接合部が配置され、強接合部の間に弱接合部が配置される。この強接合部では各弾性部材のシートへの固定の確実性が高く、弱接合部ではシートの溶融が抑制されており、シート本来の引き裂き強度の低下が抑制される。そのため、接合部に沿ってシートが破断することが抑制される。
また、弱接合部はシートの溶融が抑制される。そのため、伸縮シートが柔らかくなる。
【0008】
更に、弱接合部を設けることで、弾性部材をシートに固定している部位の両側の強接合部でのシール時の面圧を高めることができ、弾性部材を確実にシートに固定することができる。
【0009】
また、接合部が交差方向Dpに延びているため、襞が明瞭に連続して形成されやすく、手触りのよい柔軟な伸縮シートが得られるだろう。
【0010】
一方、本発明の伸縮シートの製造装置は、前記一対のシート1,2の間に前記弾性部材Fが配置された状態となるように、前記一対のシート1,2および前記弾性部材Fを搬送するアンビルロール50と、
前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに溶着すると共に前記一対のシートで前記弾性部材Fを保持させる溶着装置70とを備え、
前記アンビルロール50は、前記アンビルロール50の外周面51に形成され前記アンビルロール50の幅方向Sに延びる突条52を複数備え、
前記各突条52は前記強接合部3sを生成するための複数の高突条部52Hと、前記弱接合部3wを生成するための複数の低突条部52Lとを包含し、
前記高突条部52Hおよび低突条部52Lは前記幅方向Sに間欠的に設けられ、
前記低突条部52Lの高さH1は高突条部52Hの高さH2よりも低い。
【0011】
本製造装置の発明によれば、低突条部のシートに負荷される圧力は、高突条部のそれよりも小さい。そのため、低突条部では一対のシートが柔かい状態で互いに溶着される。したがって、柔かな風合いの弱接合部を得易い。
一方、前記圧力の高い高突条部では一対のシートが互いに確実に溶着される。したがって、弾性部材Fを高接合部において安定して保持し得る。
【0012】
前記伸縮シートを用いた本発明の着用物品は、着用者の肌に接する肌面と、その反対側の非肌面とを有し、
前記肌面および/または非肌面において前記襞Pが突出している。
【0013】
かかる着用物品は、風合いが良かったり、蒸れが防止されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明が適用される着用物品の一例を展開して示す平面図である。
【
図2】
図2Aは実施例1にかかるA部(伸縮シート)の拡大平面図、
図2Bは同実施例1の伸縮シートの拡大断面図である。
【
図3】
図3(a)は伸縮シート強接合部を含む断面を線図で示す拡大断面図、
図3(b)は弾性ストランドの断面図、
図3(c)は溶着前の状態を示す一対のシートの断面図、
図3(d)は伸縮シートの弱接合部を含む断面を線図で示す拡大断面図である。
【
図4】
図4Aは本発明の製造装置を示すレイアウト図、
図4BはB部を拡大した概念図、
図4CはC部を拡大した側面図である。
【
図5】
図5はアンビルロールを導入装置側から見た概略斜視図である。
【
図6】
図6はアンビルロールを下方から見た概略斜視図である。
【
図7】
図7はアンビルロールの一部を切り出して示す拡大した斜視図である。
【
図9】
図9はアンビルロールの突条の部位で断面したホーンおよびアンビルロールの拡大断面図である。
【0015】
図3(a),(c)および(d)において、不織布シートの部位はグレーで示した。
図2Aにおいて弱接合部にはドット模様を付し、強接合部には斜線を付した。
図5および
図6は高突条部および低突条部の高さの相違を示していない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好的な伸縮シートでは、前記強接合部3sの長さLsよりも前記弱接合部3wの長さLwの方が大きい。
【0017】
かかる伸縮シートを製造する装置においては、前記低突条部52Lの前記幅方向Sの長さL1が前記高突条部52Hの前記幅方向Sの長さL2よりも長い。
【0018】
これらの場合、長い弱接合部は本発明の前記効果を高めるだろう。一方、強接合部が短くなっても弾性部材Fのシートへの固定力は低下しにくいだろう。
【0019】
好的な伸縮シートでは、前記強接合部3sの厚さTsよりも前記弱接合部3wの厚さTwの方が大きい。なお、厚さTs,Twは、各接合部の平均的厚さ又は最も薄い部位の厚さ同士を比較するのが好ましいだろう。
【0020】
かかる伸縮シートを得る好的な製造装置においては、前記低突条部52Lの高さH1が前記高突条部52Hの高さH2に比べ、1~50μm低い。
【0021】
これらの場合、柔軟な弱接合部が得られると共に、弾性部材Fを安定的に固定する強接合部が得られるだろう。
【0022】
一対のシートの厚さにもよるが、低突条部52Lの高さと高突条部52Hの高さの差Δ(
図8B)は、3~40μmがより好ましく、5~30μmが最も好ましい。高さの差Δが小さすぎると、柔軟な弱接合部が得られず、差Δが大きすぎると、弱接合部においてシート同士が接合されにくくなる。
【0023】
好ましい製造装置においては、前記アンビルロール50の前記突条52は、前記アンビルロール50の周方向Rに延び、前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する搬送溝Gを複数本備え、
前記搬送溝Gは前記幅方向Sの両側の前記高突条部52Hで定義されている。
【0024】
この場合、搬送溝Gにより弾性部材Fを安定して搬送することができる。また、弾性部材Fが搬送溝Gに入り込んだ状態で、一対のシートが弾性部材Fに固定される。そのため、弾性部材Fに重なるシートの部位において、接触圧力が過大になるのを防止できる。
【0025】
好ましくは、前記溶着装置は前記一対のシート1,2および弾性部材Fを介して前記突条52に対向し超音波エネルギーが付与される超音波ホーン71を有する超音波溶着装置である。
【0026】
超音波による熱溶着時に、ホーンはシートに接触する摩擦熱によりシートを加熱する。そのため、低突条部52Lにおいて接触圧力が小さくても、低突条部52Lにおけるシールの信頼性が低下するおそれはない。
【0027】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【0028】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【実施例】
【0029】
伸縮シートの実施例の説明に先立って、伸縮シートが用いられた使い捨て着用物品の構造の一例が説明される。
【0030】
着用物品を展開して示す
図1において、着用物品90は吸収性本体92および前後の一対の胴回り部材91,91を備える。吸収性本体92は一対の胴回り部材91,91に架設され股部92aを形成する。
【0031】
本着用物品90は、前記股部92aが前記胴回り方向Xに平行な仮想のライン(line)において2つに折られた状態で着用される。これにより、前記一対の胴回り部材91,91の胴回り方向Xの端部同士が互いに重なる。
【0032】
前記前後の各胴回り部材91は、
図2Aおよび
図2Bに明示する伸縮シート10を包含する。前記伸縮シート10は、それぞれ、弾性部材F、第1シート1および第2シート2が互いに積層された積層体を包含する。
【0033】
前記第1シート1および第2シート2は、通気性を有する不織布で構成されている。前記弾性部材Fは、前記第1シート1と第2シート2との間に挟まれており、前記胴回り方向Xに伸縮する。
【0034】
前記着用物品90(
図1)の伸縮シート10は着用者の肌に接する肌面11と、その反対側の非肌面12とを有する。
【0035】
つぎに、前記伸縮シート10の実施例1が説明される。
まず、弾性部材Fが伸張した状態について説明する。
【0036】
図2Bのように、前記一対のシート1,2は第1面1f,2f同士が互いに対面ないし接する。複数本の前記各弾性部材Fは前記一対のシート1,2の前記第1面1f,2fの間に配置され、かつ、
図2Aの破線で示すように互いに離間して配置されている。
【0037】
図2Aおよび
図2Bのように、前記一対のシート1,2同士は複数の接合部3において、接着剤を介することなく、互いに溶着(構造)により接合されている。本例の場合、前記各接合部3において前記一対のシート1,2が前記弾性部材Fに溶着されていることで、前記各弾性部材Fは前記各接合部3において前記一対のシート1,2に固定されている。
【0038】
前記各接合部3は
図2Bの前記一対のシート1,2の第1面1f,2fにおいて前記一対のシート1,2が互いに溶着されていることで構成(溶着構造で接合)されている。前記接合部3は
図2Aの前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する(例えば直交する)方向Dpに延び、前記伸縮方向Dfに互いに離間している。
【0039】
弾性部材Fは、線状または索状であってもよい。例えば、
図3(b)に示すように、弾性部材Fは、複数の糸ゴム(繊維状弾性体)F1が束状に集合したマルチストランドであってもよい。糸ゴムF1の材質としては、例えば、ポリウレタンが挙げられる。
【0040】
前記弾性部材Fの収縮力により
図3(a),(d)に示すように、前記伸縮シート10は前記弾性部材Fが収縮した状態で、多数の襞Pを形成する。以下、弾性部材Fの収縮した状態の伸縮シート10について説明する。
【0041】
前記シート1,2は、例えば多数の熱可塑性の繊維11が積層された熱可塑性の不織布であってもよい。
【0042】
図3(a)の襞Pは、
図2Aの前記弾性部材Fが収縮している状態において、前記一対のシート1,2が
図3(a)のように方向Dvに突出して形成されている。
【0043】
すなわち、
図2Aの互いに隣り合う接合部3同士の間および弾性部材F同士の間で定義された領域α1において、
図3(a),(d)の前記一対のシート1,2の互いに対面する非接着の部位同士が互いに同一の直交方向Dvに突出して、前記複数の各襞Pが形成されている。
【0044】
図2Aに示すように、前記複数の接合部3は互いに平行な直線状に形成され、これにより、
図3(a)の前記複数の各襞Pは前記互いに平行な接合部3同士の間に明瞭に形成されるとともに、
図2Aのように、互いに平行な直線状に形成されている。
【0045】
図3(a)の拡大断面で示すように、例えば前記襞Pを形成する互いに対面する部位の少なくとも一部において、前記一対のシート1,2の第1面1f,2f同士が互いに接触していてもよい。
【0046】
また、
図3(a)に示すように、前記襞Pにおいて一対のシート1,2の第1面1f,2fは境界が判然とせぬ程に互いに密着していてもよい。逆に、襞Pにおいて
図3(a)の一対のシート1,2の第1面1f,2fは完全に離間していてもよい。
【0047】
図2Aにおいて、前記各接合部3は複数の強接合部3s、弱接合部3wおよび固定部3fを有する。
【0048】
図2Aにおいて、前記強接合部3sには斜線が施されている。前記強接合部3sは前記各弾性部材Fの、前記交差する方向Dpの両側に配置されている。
【0049】
前記弱接合部3wにはドット模様が施されている。前記弱接合部3wは、前記各弾性部材Fのうち互いに隣り合う弾性部材Fの間において、かつ、前記複数の強接合部3sのうち互いに隣り合う強接合部3sの間に配置されている。
【0050】
前記弱接合部3wにおける前記一対のシート1,2同士の接合強度は、前記強接合部3sにおける前記一対のシート1,2同士の接合強度よりも小さい。かかる接合強度は各接合部3s,Swの単位面積または単位長さ当たりの接合部を引き裂くのに必要な引張力で測定されてもよい。
【0051】
接合強度の差は、例えば、
図3(a)、(d)のように、強接合部3sと弱接合部3wの厚さの差となって表われるであろう。すなわち、前記強接合部3sの厚さTsよりも前記弱接合部3wの厚さTwの方が大きい。シート1,2同士を強く圧着するほど溶着が強固となり、溶着が強固である程、シート1,2が溶着時に溶けるからである。
【0052】
図2Aにおいて、ブランクで示す固定部3fは、前記強接合部3sよりも接合力が弱くてもよいし強くてもよい。また、固定部3fは前記弱接合部3wよりも接合力が弱くてもよいし強くてもよい。弾性部材Fをシート1,2に固定できればよいからである。
【0053】
図2Aの前記固定部3fにおいて、各シート1,2は弾性部材Fに溶着されていてもよいし、不織布の繊維の一部または全部が弾性部材Fに絡み付いたような状態で固定されていてもよい。
【0054】
図1の胴回り部材91,91の両端部またはその近傍において、前記弾性部材Fが
図2Bの一対のシート1,の間に固定される場合、
図2Aの前記固定部3fを必要としない。
【0055】
図2Aに示すように、前記強接合部3sの長さLsよりも前記弱接合部3wの長さLwの方が大きい。
【0056】
つぎに、前記伸縮シート10の製造装置の一例が説明される。
図4Aの製造装置はアンビルロール50、導入装置60および溶着装置70などを備える。
【0057】
前記導入装置60はアンビルロール50に弾性部材Fを案内しながら導入する。また、前記アンビルロール50には前記弾性部材Fの導入位置よりも上流において第1シート1が導入され、前記弾性部材Fの導入位置よりも下流において第2シート2が導入される。前記アンビルロール50は一対のシート1,2の間に前記弾性部材Fが配置された状態となるように、前記一対のシート1,2および弾性部材Fを搬送する。
【0058】
前記溶着装置70は前記アンビルロール50と協働して前記一対のシート1,2を互いに溶着すると共に前記一対のシート1,2を前記弾性部材Fに溶着して前記一対のシート1,2で弾性部材Fを保持させる。本例の場合、溶着装置70は前記溶着を超音波エネルギーで行う超音波溶着装置である。
【0059】
前記溶着装置70は、
図2Bの前記伸縮シート10における前記2枚の不織布シート1,2の複数の接合部3に振動エネルギーを与えて、前記2枚の不織布シート1,2および弾性部材Fを溶着する。
【0060】
より具体的には、
図5の前記アンビルロール50は前記接合部3(
図3)に対応する多数の突条52を外周面51に有する。突条52はアンビルロール50の幅方向Sに延びる。
【0061】
図4Aの前記溶着装置70はホーン71を有する。ホーン71は超音波エネルギーが付与されるもので、前記一対のシート1,2および弾性部材Fを介して
図4Cの突条52に対向する。
【0062】
図4Cにおいて、前記シート1,2の流れ方向に沿った前記ホーン71の幅W1は前記突条52の幅W2よりも大きくてもよい。また、ホーン71に対し、一時的に又は常時、複数本の突条52が同時に対向するように設定されてもよい。
【0063】
図5および
図6に示すように、前記アンビルロール50は複数本の搬送溝Gを有する。各搬送溝Gは各突条52に形成され、前記各突条52を横断するように前記アンビルロール50の周方向Rに延び、前記弾性部材Fが入り込んだ状態で前記弾性部材Fを搬送する。前記搬送溝Gはアンビルロール50の径方向の中心に向かって凹んでいる。
【0064】
図9に示すように、前記搬送溝Gの大きさは、弾性部材Fの一部が溝内に収容され、残部が溝からハミ出るように設定されてもよい。搬送溝Gの断面積は自然長の弾性部材Fの断面積よりも小さくてもよい。
【0065】
なお、
図5~
図8Cにおいて、シート1,2は図示されていないが、
図9に模式的に示すように、シート1,2は弾性部材Fを挟むように配置される。
【0066】
図4Aの導入装置60は、第1ロール(規定ロール)61および第2ロール(案内ロール)62を備える。
図5の前記第1および第2ロール61,62は、各々、第1および第2案内溝G1、G2を複数本有していてもよい。各第1案内溝G1は、前記弾性部材Fが巻かれ前記各弾性部材Fを案内する。
図6の前記第2案内溝G2は前記第1ロール61の前記各第1案内溝G1から導出された前記各弾性部材Fが巻かれ、この弾性部材Fを前記アンビルロール50の前記各搬送溝Gに案内する。
【0067】
前記第1および第2ロール61,62はフリーローラであってもよいし、前記アンビルロール50に同期して回転駆動されてもよい。また、第1および第2ロールを設けなくてもよい。
【0068】
図7に明示するように、前記各突条52は、複数の前記搬送溝G、低突条部52Lおよび高突条部52Hを有する。すなわち、前記各突条52は前記強接合部3sを生成するための複数の高突条部52Hと、前記弱接合部3wを生成するための複数の低突条部52Lとを包含する。なお、構造を理解し易くするために、
図7、
図8B、
図8Cおよび
図9において、各突条部52L,52Hの高さや搬送溝Gの深さは誇張して図示されている。
【0069】
図7において、前記高突条部52Hおよび低突条部52Lは前記アンビルロール50の幅方向Sに間欠的に設けられている。
図8Aにおいて、ドット模様を付した前記低突条部52Lの前記幅方向Sの長さL1は、斜線を付した前記高突条部52Hの前記幅方向Sの長さL2よりも長い。
【0070】
図8Bの前記低突条部52Lの高さH1は高突条部52Hの高さH2よりも低い。前記低突条部52Lの高さH1が前記高突条部52Hの高さH2に比べ、例えば4~20μm低い。
【0071】
前記搬送溝Gは前記幅方向Sの両側の前記高突条部52Hで定義されている。すなわち、高突条部52Hの一部がV字状に削り取られて、2つの高突条部52H、52Hの間に搬送溝Gが形成されている。
【0072】
つぎに、前記伸縮シート10の製造方法の一例が説明される。
【0073】
図4Aに示すように、アンビルロール50の上流部分に第1シート1が導入される。前記第1シート1が導入されたアンビルロール50の第1シート1上には導入装置60から弾性部材Fが導入される。前記弾性部材Fは
図4Cの搬送溝Gに第1シート1(
図4A)と共に入り込んだ状態で搬送される。一方、前記ホーン71に対面するアンビルロール50の部位には、
図4Aの第2シート2が導入される。
【0074】
前記第1シート1、弾性部材Fおよび第2シート2がホーン71と突条52との間を通過する際に、前記ホーン71がアンビルロール50に向かう方向に超音波振動する。これにより、シート1,2同士が互いに溶着されると共に、シート1,2が弾性部材Fに溶着される。こうして、伸縮シート10が生成される。
【0075】
ここで、
図9に拡大して示すように、一対のシート1,2は、前記突条52の高突条部52Hまたは低突条部52Lとホーン71との間を紙面に直交する方向に通過する。
【0076】
図9において高突条部52Hにおいては、ホーン71が第2シート2に比較的大きい圧力で接する。したがって、高突条部52Hは一対のシート1,2が強固に超音波溶着された
図2Aの強接合部3sを弾性部材Fの伸縮方向Dfに断続的に生成する。
【0077】
一方、
図9において、低突条部52Lにおいては、ホーン71が第2シート2に比較的小さい圧力で接する。したがって、低突条部52Lは一対のシート1,2が緩く超音波溶着された
図2Aの弱接合部3wを弾性部材Fの伸縮方向Dfに断続的に生成する。
【0078】
また、
図9の搬送溝Gにおいては一対のシート1,2および弾性部材Fが突条52とホーン71との間を通過する。弾性部材Fは一対のシート1,2と共に搬送溝Gに逃げ、そのため、ホーン71が第2シート2に比較的小さい圧力で接する。したがって、弾性部材Fは昇温するが、過熱が防止され、溶断されるのを防止し得る。
【0079】
図4Aの前記伸縮シート10の製造は、弾性部材F、第1シート1および第2シート2に搬送方向の張力が付与された展開状態で行われる。そのため、ホーン71で溶着された直後の伸縮シート10は
図2A、
図2Bのような展開状態で生成され、この状態において伸縮シート10には襞が現れていない。
【0080】
その後、
図4Aの伸縮シート10は下流に搬送され、搬送方向に張力が付与されない状態となる。この状態では
図4Bのように、伸縮シート10に襞Pが現れる。
【0081】
こうして生成された襞Pは、
図1の肌面98において露出して突出していてもよいし、その反対の非肌面において露出して突出していてもよい。
【0082】
つぎに、他の例について
図10A~
図10Cを用いて説明する。
図10A~
図10Cにおいては接合部3の全域にわたってドット模様を付しているが、各接合部3は図示しない強接合部3sおよび弱接合部3wを有する。
【0083】
図10Aは実施例2を示す。
本実施例では、接合部3は複数の第1接合部31と第2接合部32とを備える。前記各第1接合部31は前記弾性部材Fの伸縮方向Dfに交差する第1方向D1に延びる。複数の第2接合部32は前記伸縮方向Dfおよび第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる。
【0084】
なお、
図10Bのように接合部3は互いに交差せずに屈曲していてもよい。
また、
図10Cに示すように、各接合部3は不連続であってもよい。
【0085】
以上他の実施例の着用物品1のその他の構造および製造方法は前記実施例1と同様であり、同一部分または相当部分に同一符号を付して、その詳しい説明および図示を省略する。
【0086】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、伸縮シートは着用物品以外の製品に適用されてもよい。
また、前記実施例1では前記強接合部3sの長さLsよりも前記弱接合部3wの長さLwの方が大きい場合について説明した。これに代えて本発明の伸縮シートは、弱接合部の長さが強接合部の長さと同じ場合であってもよく、あるいは強接合部の長さよりも小さい場合であってもよい。いずれの場合も弱接合部が破断され難いので、接合部が連続して長く破断することが防止される。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明はオムツ型およびパンツ型の使い捨て着用物品に好適に用いることのできる伸縮シートおよびその製造装置に適用し得る。
【符号の説明】
【0088】
1,2:一対のシート 10:伸縮シート 1f,2f:第1面
3:接合部 3s:強接合部 3w:弱接合部 3f:固定部 31:第1接合部
32:第2接合部
50:アンビルロール 51:外周面
52:突条 52H:高突条部 52L:低突条部
60:導入装置 61:第1ロール(規定ロール) 62:第2ロール(案内ロール)
70:溶着装置 71:ホーン
D1:第1方向 D2:第2方向 Df:伸縮方向 Dp:交差する方向
F:弾性部材
G:搬送溝 G1:第1案内溝 G2:第2案内溝
H1,H2:高さ L1,L2:長さ Ls,Lw:長さ
S:幅方向 Ts,Tw:厚さ
P:襞 W1~W2:幅 α1:領域