(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】室温架橋で作製した微細繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 6/96 20060101AFI20220203BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20220203BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20220203BHJP
D01D 5/04 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
D01F6/96
C08G59/50
B01D39/16 A
D01D5/04
(21)【出願番号】P 2018551923
(86)(22)【出願日】2017-04-06
(86)【国際出願番号】 US2017026396
(87)【国際公開番号】W WO2017177033
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-11
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】シェノイ, サレッシュ, ラックスマン
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234581(JP,A)
【文献】国際公開第2011/052175(WO,A1)
【文献】特開2009-291754(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0256873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00-41/04
C08G59/00-59/72
D01D1/00-13/02
D01F1/00-6/96
9/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細繊維を作製するための方法であって、前記方法が、
ポリマー成分を備える工程であって、前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である工程;ならびに
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させ、前記組成物から複数の繊維を形成させて、前記組成物からそれぞれの繊維の全体が形成されるようにする工程、を含み、
前記エポキシが前記ポリマー成分および前記溶媒と30℃未満の温度で組み合わせて、
前記複数の繊維を30℃未満の温度で形成させて、前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシは、30℃未満の温度で反応する、方法。
【請求項2】
前記エポキシが、前記ポリマー成分および前記溶媒と室温で組み合わされ、前記組成物の温度を室温より上に上げることなく、前記複数の繊維を形成させ、前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシが室温で反応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させること、および前記組成物から複数の繊維を形成させることが、同時に実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させ、前記組成物から複数の繊維を形成させる工程は、
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを混合する工程;
前記4-ビニルピリジン含有ポリマーとエポキシとを反応させる工程;ならびに
前記溶媒の少なくとも一部を除去する工程
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が前記複数の微細繊維を30℃までの周囲温度を有する条件で
1日
と22日の間
の期間保存することをさらに備え、前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシが保存の間に前記複数の微細繊維において反応する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月6日に出願された米国特許仮出願番号第62/318,951号明細書の利益を主張するものであり、この明細書は参照により、本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
他の各種物質と混合またはブレンドしたポリマー材料を想定している、微細繊維(fine fiber)技術は公知である。これら微細繊維物質の多くのものは、末端の多くの濾過用途には十分な性能を有するが、極端な温度および/または湿度での用途においては、繊維加工および製造における改良がさらに必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書の開示は、エポキシおよびポリマー成分を含む組成物から形成される、微細繊維または微細繊維のためのコーティングを作製するユニークな方法を提供する。そのエポキシは、少なくとも二官能性である。そのポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む。いくつかの実施形態においては、その組成物は、4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒を含む。いくつかの実施形態においては、そのポリマー成分が、熱を加えなくても、エポキシと結合する。その組成物にはさらに、溶媒を含むことができ、その溶媒の少なくとも一部は、繊維の形成またはコーティングの際に除去することができる。
【0004】
本明細書の開示はさらに、微細繊維も提供するが、その繊維のすべてが、エポキシおよび4-ビニルピリジン含有ポリマーを含むポリマー成分を含む組成物から形成される。
【0005】
本明細書の開示はさらに、本明細書に記載された微細繊維を含む、フィルター媒体も提供する。
【0006】
本明細書においては、「微細(fine)」繊維は、10ミクロン未満の平均繊維直径を有する。このことは、典型的には、本明細書に開示の複数の繊維のサンプルが、10ミクロン未満の平均繊維直径を有するということを意味する。ある種の実施形態においては、そのような繊維が、5ミクロンまで、2ミクロンまで、1ミクロンまで、0.8ミクロン、または0.5ミクロンまでの平均直径を有する。ある種の実施形態においては、そのような繊維が、少なくとも0.05ミクロン、または少なくとも0.1ミクロンの平均直径を有する。
【0007】
本明細書においては、「室温(room temperature)」は、62゜F~78゜F、またはより好ましくは、65゜F~75゜Fである。ある種の実施形態においては、室温が72゜Fである。
【0008】
「含む(comprises)」という用語およびそれの関連語は、それらの用語が明細書および特許請求の範囲に表れた場合、限定的な意味を有さない。そのような用語は、記述された工程もしくは要素、または複数の工程もしくは要素の群を含むが、いかなる他の工程もしくは要素、または複数の工程もしくは要素の群を排除するものではないことを意味すると理解されよう。「からなる(consisting of)」という用語は、その「からなる(consisting of)」というフレーズの後に続くものを含み、かつそれに限定されるということを意味する。したがって、「からなる(consisting of)」という用語は、そこの列記された要素が、必要とされるかまたは必須であり、他のいかなる要素も存在しなくてよいということを示している。「実質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、そのフレーズの後に列挙されたいかなる要素も含み、かつその列記された要素のための開示の中に特定された活性または作用を妨げないか、または寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「実質的に~からなる(consisting essentially of)」というフレーズは、そこに列挙された要素は必要または必須であるが、他の要素は任意であり、列記された要素の活性または作用にそれらが物質的に影響をおよぼすか否かに応じて、存在させても、存在させなくてもよいということを意味する。
【0009】
「好ましい(preferred)」または「好ましくは(preferably)」という用語は、ある種の環境において、その開示された実施形態がある種の便益を与えることができるということを示す。しかしながら、同一の環境またはその他の環境で、他の実施形態も好ましいということはあり得る。さらには、一つまたは複数の好ましい実施形態を取り上げたということが、他の実施形態は役に立たないということを意味する訳でもなく、本開示の範囲から、他の実施形態を排除しようという意図がある訳でもない。
【0010】
本明細書においては、不定冠詞の「a」や「an」、および定冠詞の「the」という用語は、単数の実体のみを指そうとするのではなく、説明のために使用され得る具体例のタイプ全体を含む。「a」や「an」、および「the」という用語は、「少なくとも1種の(at least one)」という用語と、言い換え可能に使用される。
【0011】
列記された項目の前にある、「少なくとも1種の(at least one of)」、および「少なくとも1種の~を含む(comprises at least one of)」というフレーズは、その列挙項目のいずれか一つ、ならびに、その列挙項目の二つ以上の任意の組合せを示す。
【0012】
本明細書で使用するとき、「または(or)」という用語は、一般的に、それが通常使用される感覚で使用され、特に明確に断らない限り、「および/または(and/or)」も含まれる。「および/または(and/or)」という用語は、列挙された要素の一つもしくは全部、または列挙された要素の任意の二つ以上の組合せを意味する。
【0013】
本明細書においてはさらに、すべての数値は、「約(about)」という用語、好ましくは「正確に(exactly)」という用語で修飾されるとみなされる。測定された量に関連して、本明細書で使用される「約(about)」という用語は、測定の対象と使用した測定装置の精度とに対応したレベルの注意を払って、測定を実施した当業者によって予想されるように、測定量における変動を示す。
【0014】
本明細書においてはさらに、終点によって記述した数値範囲には、その範囲内に包含されるすべての数値とともに、その両端も含まれる(たとえば、1~5といった場合、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5、などが含まれる)。本明細書においては、ある数字「まで(up to ~)」(たとえば、50まで)には、その数(たとえば、50)も含まれる。
【0015】
表題はすべて、読者の便宜のためにあるのであって、特に断らない限り、その表題の後に続く本文の意味を限定するために使用されるべきではない。
【0016】
先に示した、本明細書の開示の要約は、開示される実施形態のそれぞれを記載したり、本明細書に開示のすべての実施例を表したりすることを意味するのではない。以下における記述は、説明のための実施形態をより具体的に例示するものである。本明細書を通じて、いくつかの場所で、例を列挙して案内をしているが、それらの例は、各種組み合わせて使用することもできる。それぞれの場合において、列記されたリストは、代表的な群として提供されたものであって、他を排除するためのリストと解釈してはならない。
【0017】
以下の図面を参照すれば、本明細書の開示が、より完全に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】
図1A-Bは実施例1から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図1A)または温水浸漬後(
図1B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図1B】
図1A-Bは実施例1から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図1A)または温水浸漬後(
図1B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図2A】
図2A-Bは実施例2から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図2A)または温水浸漬後(
図2B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図2B】
図2A-Bは実施例2から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図2A)または温水浸漬後(
図2B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図3A】
図3A-Bは実施例3から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図3A)または温水浸漬後(
図3B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図3B】
図3A-Bは実施例3から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図3A)または温水浸漬後(
図3B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図4A】
図4A-Bは実施例4から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図4A)または温水浸漬後(
図4B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図4B】
図4A-Bは実施例4から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図4A)または温水浸漬後(
図4B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図5A】
図5A-Bは実施例5から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図5A)または温水浸漬後(
図5B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図5B】
図5A-Bは実施例5から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図5A)または温水浸漬後(
図5B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図6A】
図6A-Bは実施例6から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図6A)または温水浸漬後(
図6B)に保持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図6B】
図6A-Bは実施例6から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図6A)または温水浸漬後(
図6B)に保持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図7A】
図7A-Bは実施例7から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図7A)または温水浸漬後(
図7B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【
図7B】
図7A-Bは実施例7から得られた微細繊維および基材で、エタノール浸漬後(
図7A)または温水浸漬後(
図7B)に維持されている、微細繊維層効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書の開示は、ポリマー成分およびエポキシから形成される、微細繊維物質を作製するためのユニークな方法を提供するが、そのポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む。そのエポキシは、少なくとも二官能性である。いくつかの実施形態においては、そのポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて、組成物を形成させる。いくつかの実施形態においては、その組成物から複数の繊維を形成させることができる。その組成物から、それぞれの繊維の全体(entirety of each fiber)を調製することができる。いくつかの実施形態においては、その組成物を使用して、微細繊維をコーティングすることができる。
【0020】
いくつかの実施形態においては、その組成物は、4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒を含む。
【0021】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせ、その組成物の温度を30℃よりも高くしなくても、その組成物を用いて繊維を形成させたり、繊維をコーティングしたりする。
【0022】
ポリマー成分
本明細書で使用するとき、「ポリマー成分(polymer component)」という用語は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む。そのポリマー成分は、任意選択的に、微細繊維の作製に使用するのに適した、他の繊維形成性ポリマー物質を含む。
【0023】
その4-ビニルピリジン含有ポリマーは、たとえば、ポリ(4-ビニルピリジン)ホモポリマー、4-ビニルピリジンコポリマー、またはそれらの混合物であってよい。本明細書においては、「コポリマー(copolymer)」という用語には、2種またはそれ以上の異なったモノマーから作製されたポリマーが含まれ、ターポリマー、テトラポリマーなども含まれる。
【0024】
フリーラジカル重合によって重合することが可能な各種のモノマーが、4-ビニルピリジンコポリマーの中で、4-ビニルピリジンのためのコモノマーとして使用することができる。たとえば、その4-ビニルピリジン含有ポリマーが、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキル、アクリロニトリル、およびそれらの組合せを含むモノマーとのコポリマーであってもよい。(メタ)アクリル酸アルキルは、アクリル酸アルキルとメタクリル酸アルキルとを含む。
【0025】
各種の4-ビニルピリジンコポリマーとしては、以下のものが挙げられる:スチレンと4-ビニルピリジンとのコポリマー、(メタ)アクリル酸アルキルと4-ビニルピリジンとのコポリマー、およびアクリロニトリルと4-ビニルピリジンとのコポリマー。(メタ)アクリル酸アルキルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどが挙げられる。コポリマーは、4-ビニルピリジンモノマーと他のモノマーとを組み合わせて、それを、反応混合物中でフリーラジカル重合させることによって、作製することができる。たとえば、4-ビニルピリジンモノマーと、スチレン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸、メタクリル酸アルキル(たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなど)、アクリル酸アルキル(たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなど)、塩化ビニル、酢酸ビニルなど、またはそれらの組合せ(たとえば、それらの混合物またはコポリマー)とを、反応混合物中で、組み合わせることによって、コポリマーを作製することができる。たとえば、ポリ(4-ビニルピリジン)と、スチレン、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキルなどとを、反応混合物の中で組み合わせることによって、ブロックコポリマーを作製することもできる。
【0026】
いくつかの実施形態においては、そのポリマー成分には、4-ビニルピリジン含有ポリマーに加えて、微細繊維の作製に使用するのに適した、繊維形成性ポリマー物質を含んでいてもよい。いくつかの実施形態においては、それらのその他の繊維形成性ポリマー物質が、4-ビニルピリジン含有ポリマーよりも低いガラス転移温度(Tg)を有する。例としては、ナイロン、ポリアミドターポリマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、またはそれらの組合せ(たとえば、それらの混合物またはコポリマー)が挙げられる。
【0027】
「ナイロン」という用語は、すべての長鎖合成ポリアミドの一般名である。典型的には、ナイロンの命名法には、一連の数字が含まれていて、たとえばナイロン-6,6では、その出発物質がC6ジアミンとC6二酸であることを表している(一番目の数字がC6ジアミンを表し、二番目の数字がC6ジカルボン酸化合物を表している)。また別なナイロンは、少量の水の存在下にε-カプロラクタムを重縮合させることによって作製することができる。この反応によって、ナイロン-6(環状ラクタム(ε-アミノカプロン酸とも呼ばれる)から作製)が形成されるが、これは直鎖状のポリアミドである。さらには、ナイロンコポリマーも考えられる。ナイロン物質の例としては、以下のものが挙げられる:ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、さらにはナイロン-6、ナイロン-6,6およびナイロン-6,10のターポリマー;またはそれらの組合せ(たとえば、それらの混合物またはコポリマー)。
【0028】
コポリマーは、各種のジアミン化合物、各種の二酸化合物、および各種の環状ラクタム構造物を、反応混合物の中で組み合わせ、次いで、ポリアミド構造の中にモノマー物質がランダムの位置しているナイロンを形成させることにより、作製することができる。たとえば、ナイロン-6,6-6,10物質は、ヘキサメチレンジアミンと、C6二酸およびC10二酸のブレンド物とから、製造されたナイロンである。ナイロン-6-6,6-6,10は、ε-アミノカプロン酸と、ヘキサメチレンジアミンと、C6二酸およびC10二酸物質のブレンド物とを共重合させることによって製造されたナイロンである。
【0029】
典型的には、4-ビニルピリジン含有ポリマーの量は、重量パーセント(重量%)で表される。典型的には、溶媒に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量は、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーである。典型的には、溶媒に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量は、10重量%まで、20重量%まで、30重量%まで、40重量%まで、45重量%まで、50重量%まで、55重量%まで、60重量%まで、65重量%まで、70重量%まで、80重量%まで、または90重量%までである。いくつかの実施形態においては、溶媒に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量が、5重量%~10重量%の範囲である。いくつかの実施形態においては、溶媒に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量が、8重量%である。
【0030】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを含めた組成物の合計重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量が、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーである。典型的には、組成物の合計重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量が、5重量%まで、10重量%まで、20重量%まで、30重量%まで、40重量%まで、45重量%まで、50重量%まで、55重量%まで、60重量%まで、65重量%まで、70重量%まで、80重量%まで、または90重量%までである。
【0031】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分の合計重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量が、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーである。いくつかの実施形態においては、ポリマー成分の合計重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量が、40重量%まで、45重量%まで、50重量%まで、55重量%まで、60重量%まで、65重量%まで、70重量%まで、80重量%まで、または90重量%までである。いくつかの実施形態においては、ポリマー成分の合計重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量が、30重量%~50重量%の範囲、または40重量%~50重量%の範囲である。
【0032】
典型的には、ポリマー成分中のポリマー固形分の合計重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量は、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーである。典型的には、ポリマー成分中のポリマー固形分の合計重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの量は、40重量%まで、50重量%まで、60重量%まで、70重量%まで、80重量%まで、90重量%まで、または100重量%までである。典型的には、4-ビニルピリジン含有ではないポリマーを存在させるのなら、その量は、40重量%まで、50重量%まで、60重量%まで、または70重量%までである。
【0033】
溶媒
ある種の実施形態においては、その組成物は、4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒を含む。いくつかの実施形態においては、4-ビニルピリジン含有ポリマー、および、存在させるなら、他のポリマー成分のポリマーが、溶媒の中に少なくとも部分的に溶解する。いくつかの実施形態においては、4-ビニルピリジン含有ポリマー、および、存在させるなら、他のポリマー成分のポリマーが、溶媒の中に分散される。いくつかの実施形態においては、エポキシが、溶媒の中に少なくとも部分的に溶解する。
【0034】
いくつかの実施形態においては、その溶媒の特に好ましい例が、エタノールである。4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒の特に好ましい例が、エタノールである。使用することが可能な他のプロトン性溶媒としては、たとえば、メタノール、酢酸などが挙げられる。いくつかの実施形態においては、その溶媒が、非プロトン性溶媒、たとえば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキソラン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、またはそれらの混合物である。
【0035】
いくつかの実施形態においては、その溶媒が、溶液相における反応を抑制することができる。溶液相の中での反応を抑制することが可能な溶媒は、4-ビニルピリジンと錯体を形成することができる。溶液相の中で反応を抑制することができる溶媒としては、たとえば、非プロトン性溶媒が挙げられる。たとえば、その溶媒がジオキソランであってよい。ジオキソランは、溶液相の中では反応を抑制するが、その溶媒を除去した後、たとえば、繊維の紡糸の際には、反応が進行するであろう。
【0036】
たとえば静電紡糸(electrospinning)によって微細繊維を形成させるような場合も含めて、いくつかの実施形態においては、そのポリマー成分が、その溶媒または溶媒ブレンド物に溶解できるような、溶媒または溶媒ブレンド物を選択するのが好ましい場合がある。
【0037】
エポキシ
そのエポキシは、少なくとも二官能性である。好適なエポキシとしては、以下のものが挙げられる:1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル;ビスフェノールAジグリシジルエーテル;ビスフェノールFエポキシ樹脂;ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂;改質ビスフェノールAエポキシ樹脂;臭素化エポキシ樹脂(Dow Chemicalsから、商品名D.E.F.として入手可能なものを含む);エポキシノボラック樹脂(Dow Chemicalsから商品名D.E.N.として販売されているものを含む);エポキシフェノールノボラック樹脂(Hunstman Chemicalsから商品名EPNとして販売されているものを含む);エポキシクレゾールノボラック樹脂(Huntsman Chemicalsから商品名ECNとして販売されているものを含む);二官能性脂環式エポキシ樹脂(Huntsman Chemicalsから商品名ARALDITE CYとして販売されているものを含む);グリシジルアミン-タイプの多官能エポキシ樹脂(Huntsman Chemicalsから商品名ARALDITE MYとして販売されているものを含む);Momentive Chemicalsから、商品名EPON、EPI-REZ、EPIKOTE、EPONOL、EPONEXとして販売されているエポキシ樹脂;または、それらの組合せ(たとえば、それらの混合物またはコポリマー)。
【0038】
微細繊維の形成またはコーティング
本明細書に開示の微細繊維は、以下の工程を含む方法によって調製することができる:ポリマー成分を備える工程であって、そのポリマー成分は4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;溶媒を備える工程;エポキシを備える工程であって、そのエポキシは、少なくとも二官能性である、工程;ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程;ならびにその組成物から複数の繊維を形成させる工程。ある種の実施形態においては、その組成物からそれぞれの繊維の全体が形成される。
【0039】
本明細書に開示のコーティングされた微細繊維は、以下の工程を含む方法によって調製することができる:ポリマー成分を備える工程であって、そのポリマー成分は4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;溶媒を備える工程;エポキシを備える工程であって、そのエポキシは、少なくとも二官能性である、工程;プリフォームされた繊維を備える工程;ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程;ならびにその組成物を用いてその繊維をコーティングする工程。コーティングされる繊維は、各種の微細繊維形成性-ポリマー物質から作製することができる。適切な例としては、以下のものが挙げられる:ポリ(4-ビニルピリジン)、ナイロン、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリアミドターポリマー651など、またはそれらの組合せ(たとえば、それらの混合物またはコポリマー)。所望により、ポリマーの各種組合せを使用することができる。たとえば、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、エアロゾル付着法など、各種の適切な方法によって、繊維をコーティングすることができる。
【0040】
ある種の実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて組成物を形成させ、その組成物の温度を上げることなく、その組成物から繊維を形成させるか、またはその組成物を用いて繊維をコーティングする。いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて組成物を形成させ、外部熱源から熱を直接加えることなく、その組成物から繊維を形成させるか、またはその組成物を用いて繊維をコーティングする。ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせる場合には、それらが室温であるのが好ましい。繊維をコーティングする場合には、その組成物を用いてその繊維をコーティングするときに、繊維を室温とすることができる。繊維をその組成物から形成させるか、またはその組成物を用いてコーティングするときに、その組成物が室温であるのが好ましい。いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて組成物を形成させ、繊維をその組成物から形成させるかまたはそれを用いてコーティングするが、その際に、ポリマー成分;溶媒;エポキシ;ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを含めた組成物;および/または繊維の温度を室温より高く上げない。いくつかの実施形態においては、組成物を形成させるときの、ポリマー成分、溶媒、および/またはエポキシの温度が、30℃まで、40℃まで、50℃まで、60℃まで、70℃まで、または80℃までである。いくつかの実施形態においては、得られる組成物の温度が、30℃より上、40℃より上、50℃より上、60℃より上、70℃より上、または80℃より上には上がらないようにして、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせる。いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを含めた組成物から繊維を形成させるか、またはそれらを用いてコーティングするが、その組成物の温度および/または形成されるかまたはコーティングされる繊維の温度を、30℃より上、40℃より上、50℃より上、60℃より上、70℃より上、または80℃より上には上がらないようにする。
【0041】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせる場合に、ポリマー成分中のポリマー固形分の重量の、エポキシの重量に対する比率が、(1:0.4)から(1:1.5)(wt:wt)までの間である。たとえば、ある種の実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせる場合に、ポリマー成分中のポリマー固形分の重量の、エポキシの重量に対する比率が、(1:0.4)(wt:wt)、(1:0.6)(wt:wt)、(1:0.8)(wt:wt)、(1:1)(wt:wt)、または(1:1.5)(wt:wt)である。
【0042】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせるときに、4-ビニルピリジン含有ポリマーのエポキシに対するモル比が、(1:0.1)から(1:1.5)までの間である。たとえば、ある種の実施形態においては、4-ビニルピリジン含有ポリマーのエポキシに対するモル比が、(1:0.125)、(1:0.18)、(1:0.25)、または(1:0.3)である。
【0043】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせる場合に、4-ビニルピリジンの重量の、エポキシの重量に対する比率が、(1:0.4)から(1:1)(wt:wt)までの間である。たとえば、ある種の実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせるときに、4-ビニルピリジンの重量の、エポキシの重量に対する比率が、(1:0.4)(wt:wt)、(1:0.6)(wt:wt)、(1:0.8)(wt:wt)、または(1:1)(wt:wt)である。
【0044】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせるときに、4-ビニルピリジンのエポキシに対するモル比が、(1:0.1)から(1:1.5)までの間である。たとえば、ある種の実施形態においては、4-ビニルピリジンのエポキシに対するモル比が、(1:0.125)、(1:0.18)、(1:0.25)、または(1:0.3)である。
【0045】
ある種の実施形態においては、4-ビニルピリジン含有ポリマー成分の中の反応性基(たとえば、N)の、エポキシ中の反応性基(たとえば、グリシジルエーテル)に対するモル比が、(1:0.2)から(1:3)までの間である。たとえば、ある種の実施形態においては、アルコキシ反応性基対アルコキシ基のモル比が、(1:0.25)、(1:0.36)、(1:0.5)、または(1:0.06)である。
【0046】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分と溶媒とを組み合わせた後で、エポキシを組み入れる。いくつかの実施形態においては、ポリマー成分と溶媒とを組み合わせた溶液を生成させた後で、エポキシを組み入れる。
【0047】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分と溶媒を混合してから、加熱する。その溶媒は、4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒とすることができる。いくつかの実施形態においては、その混合物を、溶液が形成されるまで、加熱する。いくつかの実施形態においては、ポリマー成分と溶媒とを、30℃まで、40℃まで、50℃まで、60℃まで、70℃まで、80℃まで、または100℃まで加熱する。
【0048】
いくつかの実施形態においては、4-ビニルピリジン含有ポリマーと溶媒とを混合してから、加熱する。その溶媒は、4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒とすることができる。いくつかの実施形態においては、その混合物を、溶液が形成されるまで、加熱する。いくつかの実施形態においては、その混合物を、30℃まで、40℃まで、50℃まで、60℃まで、70℃まで、80℃まで、または100℃まで加熱する。そのポリマー成分に、微細繊維を作製するために使用するのに適したまた別の繊維形成性ポリマー物質が含まれている場合には、4-ビニルピリジン含有ポリマーと溶媒とを加熱した後に、任意選択的に、この他の繊維形成性ポリマー物質を添加してもよい。
【0049】
あらかじめ加熱した場合には、ポリマー成分と溶媒を冷却した後で、そのポリマー成分および溶媒をエポキシと組み合わせる。ポリマー成分および溶媒は、室温にまで冷却するのが好ましい。いくつかの実施形態においては、そのポリマー成分および溶媒を、30℃まで、40℃まで、50℃まで、60℃まで、70℃まで、または80℃までの温度にまで冷却するのがよい。
【0050】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて組成物を形成させる工程およびその組成物から複数の繊維を形成させる工程は、次の工程を含む:エポキシ、溶媒、および4-ビニルピリジン含有ポリマーを含むポリマー成分を混合する工程;4-ビニルピリジン含有ポリマーとエポキシとを反応させておく工程;および溶媒の少なくとも一部を除去する工程。いくつかの実施形態においては、4-ビニルピリジン含有ポリマーとエポキシとを、少なくとも1時間(60分間)、少なくとも2時間(120分間)、少なくとも3時間(180分間)、または少なくとも4時間(240分間)かけて反応させておいた後に、その溶媒の少なくとも一部を除去する。組成物からの調製により得られた繊維は、ポリマー成分およびエポキシを含むが、任意選択的に、溶媒の少なくとも一部を含んでもよい。
【0051】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせることにはさらに、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを混合する時点に存在する、周囲温度および/または相対湿度を調節することも含まれる。いくつかの実施形態においては、その周囲温度が、少なくとも60゜F、少なくとも70゜F、少なくとも72゜F、または少なくとも75゜Fであってよい。いくつかの実施形態においては、その周囲温度を、70゜Fまで、72゜Fまで、75゜Fまで、80゜Fまで、または85゜Fまでとするのがよい。いくつかの実施形態においては、その相対湿度(これは、水蒸気の分圧の、同一の温度における水の平衡蒸気圧に対する比率である)は、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、または少なくとも20%であってよい。いくつかの実施形態においては、その相対湿度が、10%まで、12%まで、15%まで、20%まで、30%まで、40%まで、50%まで、80%まで、または90%までであってよい。
【0052】
いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて組成物を形成させる工程と、その組成物から複数の繊維を形成させる工程とが同時に実施される。いくつかの実施形態においては、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程と、その組成物を用いて繊維をコーティングする工程とが同時に実施される。
【0053】
いくつかの実施形態においては、繊維を形成またはコーティングした後で、その繊維を保存してもよい。いくつかの実施形態においては、貯蔵の際に存在する周囲温度および/または相対湿度を、調節することも可能である。いくつかの実施形態においては、繊維を、たとえば、少なくとも60゜F、少なくとも70゜F、少なくとも72゜F、もしくは少なくとも75゜Fおよび/または、70゜Fまで、72゜Fまで、75゜Fまで、80゜Fまで、もしくは85゜Fまでの周囲温度を有する条件下で保存するのがよい。いくつかの実施形態においては、繊維を、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも12%、少なくとも15%、少なくとも18%、もしくは少なくとも20%および/または10%まで、12%まで、15%まで、20%まで、30%まで、40%まで、50%まで、80%まで、もしくは90%までの相対湿度を有する条件下で保存するのがよい。
【0054】
いくつかの実施形態においては、たとえば、ポリマー成分、溶媒、およびエポキシを混合する時点で存在するか、および/または繊維を貯蔵する際に存在する周囲温度および/または相対湿度が調節できない場合には、それらの繊維を、使用するまでにより長い期間保存しておくか、ポリマー成分合計重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの重量を高くするか、および/またはエポキシの重量に対する4-ビニルピリジン含有ポリマーの重量を高くしておいてもよい。
【0055】
ある種の実施形態においては、本明細書に開示の微細繊維が、エタノール浸漬試験において、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%の、「維持された微細繊維層効率」(fine fiber layer efficiency retained)を示す。
【0056】
ある種の実施形態においては、本明細書に開示の微細繊維が、温水浸漬試験において、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%の、「維持された微細繊維層効率」を示す。
【0057】
ここに開示の微細繊維は、広く各種の技術、たとえば、静電紡糸法、遠心すなわち回転紡糸法、湿式紡糸法、乾式紡糸法、溶融紡糸法、押出紡糸法、直接紡糸法、ゲル紡糸法などを用いて作製することができる。
【0058】
微細繊維は、たとえば、静電紡糸または溶融紡糸による成形の間に、サポート層の上に捕集することができる。そのサポート層は、繊維状物質、メタルメッシュなども含め、各種の多孔質物質のいずれであってもよい。典型的には、サポート層のために使用される繊維状物質は、天然繊維および/または合成繊維から作製される。ある種の実施形態においては、そのサポート層は、少なくとも5ミクロン、または少なくとも10ミクロンの平均直径を有する繊維を含む。ある種の実施形態においては、そのサポート層には、250ミクロンまでの平均直径を有する繊維を含むことができる。ある種の実施形態においては、そのサポート層が、少なくとも0.005インチ(125ミクロン)の厚み、多くの場合、少なくとも0.01インチ(250ミクロン)の厚みである。ある種の実施形態においては、そのサポート層が、0.03インチ(750ミクロン)までの厚みである。ある種の実施形態においては、そのサポート層が、100グラム以上のGurley剛性を有する。
【0059】
微細繊維物質の層が、透過性の粗い繊維状媒体の層(すなわち、サポート層)の第一の表面の上に、繊維の層として配されるのが好ましい。さらに、透過性の粗い繊維状物質の第一の層の第一の表面の上に配された微細繊維物質の第一の層が、50ミクロン以下、より好ましくは30ミクロン以下、さらにより好ましくは20ミクロン以下、最も好ましくは10ミクロン以下の、全体の厚み(overall thickness)を有するのが好ましい。典型的かつ好ましくは、その微細繊維層の厚みが、その層を作製するために使用された微細繊維の平均直径の、1~20倍の範囲内(多くの場合1~8倍、より好ましくは5倍以下)の厚みである。ある種の実施形態においては、その微細繊維層が、少なくとも0.05μmの厚みを有する。いくつかの実施形態においては、その微細繊維層が、200ミクロン未満の厚みを有する。
【0060】
ここに開示の微細繊維は、静電紡糸(electrostatic spinning、すなわちelectrospinning)プロセスを使用して、作製することができる。微細繊維を形成させるのに好適な静電紡糸装置は、その中に微細繊維形成性溶液が収容されているリザーバーと、エミッティングデバイス(一般的に、複数のオフセットホールを含む回転部分からなっている)とを含む。静電場の中でそれが回転するにつれて、エミッティングデバイス上の溶液の液滴が、静電場によって、捕集媒体に向かって加速される。エミッターに面するが、それから空間的に離れたところに、グリッドがあって、その上に捕集媒体(すなわち、サポート層すなわち基材)が配置されている。そのグリッドの間を通して、空気を引き込むことができる。適切な静電電圧電源の手段によって、エミッターとグリッドとの間に、高電圧の静電電位が維持される。サポート層が、エミッターとグリッドとの間に位置していて、繊維を捕集する。
【0061】
具体的には、グリッドとエミッターとの間の静電電位が、材料に電荷を与え、それによって、液体が細い繊維としてそれから放出されて、グリッドに向かって引き出され、それらがグリッドに到達して、基材の上に捕集される。溶液中のポリマーの場合においては、基材へ向かって飛行中に、溶媒の一部が繊維から揮散する。溶媒が引き続き蒸発し、繊維が冷えてくると、微細繊維が、その基材繊維に接合される。静電場の強度を選択して、ポリマー物質が、エミッターから捕集媒体へ向けて加速される際に、その加速が、そのポリマー物質が極めて細いミクロ繊維またはナノ繊維構造になるのに十分となるようにする。捕集媒体の進行速度を増減させることによって、放出された繊維の形成媒体の上への堆積量を増減させることが可能となり、それによって、その上に堆積されるそれぞれの層の厚みを制御することが可能となる。
【0062】
別な方法として、微細繊維を形成させるための静電紡糸装置を、ペンダントドロップ装置、すなわちポリマー溶液を充填したシリンジとすることも可能である。シリンジに取り付けた針に高電圧を印加して、所定のポンプ速度でポリマー溶液をポンプ押出しする。ポリマー溶液の液滴が針から出てくるにつれて、静電場の影響を受けて、それがTaylorコーンを形成する。十分に高い電圧では、そのTaylorコーンから、ジェットが放出され、それが、延伸されて、微細繊維が形成され、コレクターとして機能する回転マンドレルに取り付けられた媒体の上に堆積する。静電紡糸プロセスでは通常、固形分濃度(ポリマー規準)5~20%のポリマー溶液を使用する。
【0063】
フィルター媒体およびフィルター要素
本明細書に開示の微細繊維を成形して、フィルター媒体のようなフィルター構造体とすることができる。そのような構造体においては、開示された微細繊維物質が、フィルター基材(すなわち、濾過基材)の上に配される(典型的には、それらが、その上に形成され、付着する)。フィルター基材としては天然繊維および合成繊維の基材が使用できる。例としては、以下のものが挙げられる:スパンボンドまたはメルトブローン法によるサポートまたはファブリック、合成繊維、セルロース系材料、およびガラス繊維の織布および不織布。押出加工および穿孔の両方を行ったプラスチックスクリーン様の材料が、フィルター基材の別な例であって、たとえば、有機ポリマーの限外濾過(UF=ultra-filtration)および精密濾過(MF=micro-filtration)用の膜である。合成の不織布の例としては以下のものが挙げられる:ポリエステル不織布、ナイロン不織布、ポリオレフィン(たとえば、ポリプロピレン)不織布、またはそれらをブレンドした不織布。シート様の基材(たとえば、セルロース系および/または合成の不織ウェブ)は、フィルター基材の典型的な形態である。しかしながら、フィルター材料の形状および構造は、典型的には、設計エンジニアにより、特定の濾過用途に合わせて選択される。
【0064】
本明細書の開示に従うフィルター媒体の構成には、第一の表面を有する、透過性の粗い繊維状物質(すなわち、媒体または基材)の層を含むことができる。微細繊維媒体の第一の層が、透過性の粗い繊維状媒体の層の第一の表面の上に配されているのが好ましい。
【0065】
透過性の粗い繊維状物質の層には、少なくとも5ミクロン、より好ましくは少なくとも12ミクロン、さらにより好ましくは少なくとも14ミクロンの平均直径を有する繊維を含んでいるのが好ましい。その粗い繊維が、50ミクロン以下の平均直径を有するのが好ましい。
【0066】
さらに、その透過性の粗い繊維状物質は、好ましくは260グラム/(メートル)2(g/m2)以下、より好ましくは150g/m2以下の目付け(basis weight)を有する媒体を含んでいる。その透過性の粗い繊維状物質は、好ましくは少なくとも0.5g/m2、より好ましくは少なくとも8g/m2の目付けを有する媒体を含んでいる。その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層の厚みは、好ましくは少なくとも0.0005インチ(12ミクロン)、より好ましくは少なくとも0.001インチである。その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層の厚みが、0.030インチ以下であるのが好ましい。典型的かつ好ましくは、その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層の厚みが、0.001インチ~0.030インチ(25~800ミクロン)である。その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層が、少なくとも2メートル/分(m/min)のFrazier透過度(差圧設定:水柱0.5インチ)を有するのが好ましい。その第一の透過性の粗い繊維状媒体の層が、900m/min以下のFrazier透過度(差圧設定:水柱0.5インチ)を有するのが好ましい。
【0067】
好ましい構成においては、その透過性の粗い繊維状物質の第一の層が、Frazier透過度試験によって、その構成物の残りの部分とは分けて評価した場合に、少なくとも1m/min、好ましくは少なくとも2m/minの透過度を示すであろう材料を含む。好ましい構成においては、その透過性の粗い繊維状物質の第一の層が、Frazier透過度試験によって、その構成物の残りの部分とは分けて評価した場合に、900m/min以下、典型的かつ好ましくは2m/min~900m/minの透過度を示すであろう材料を含む。本明細書において、効率または低効率フラットシート(LEFS=Low Efficiency Flat Sheet)の効率に言及した場合には、特に断らない限り、その言及は、本明細書に記載したようにして、ASTM-1215-89に従い、0.78ミクロン(μ)の単分散ポリスチレン球状粒子を用い、20フィート/分(fpm、6.1m/min)で測定した効率を意味する。
【0068】
これらの実施形態において、微細繊維の層は、濾過基材の上に複数の微細繊維を形成させ、それによってフィルター媒体を形成させることにより製造することができる。そのフィルター媒体(すなわち、微細繊維層プラス濾過基材)から、次いで、たとえば、フラットパネルフィルター、カートリッジフィルター、またはその他の濾過構成要素も含めた、フィルター要素(すなわち、濾過要素)を製造することができる。そのようなフィルター要素の例は、以下の特許に記載されている:米国特許第6,746,517号明細書;米国特許第6,673,136号明細書;米国特許第6,800,117号明細書;米国特許第6,875,256号明細書;米国特許第6,716,274号明細書;および米国特許第7,316,723号明細書。しかしながら、フィルター材料の形状および構造は、典型的には、設計エンジニアにより、特定の濾過用途に合わせて選択される。
【0069】
例示的な、繊維を作製するための方法の実施形態
1.微細繊維を作製するための方法であって、前記方法が、
ポリマー成分を備える工程であって、前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である、工程;ならびに
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物から複数の繊維を形成させて、前記組成物からそれぞれの繊維の全体が形成されるようにする工程
を含む方法。
2.微細繊維を作製するための方法であって、前記方法が、
ポリマー成分を備える工程であって、前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である、工程;ならびに
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物の温度を80℃より上に上げることなく、前記組成物から複数の繊維を形成させて、前記組成物からそれぞれの繊維の全体が形成されるようにする工程
を含む方法。
3.前記組成物の温度を80℃より上、または30℃より上に上げることなく前記複数の繊維が形成される、実施形態1~2のいずれかに記載の方法。
4.前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを室温で組み合わせ、前記組成物の温度を上げることなく、前記複数の繊維を形成させる、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
5.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーが、ポリ(4-ビニルピリジン)ホモポリマー、4-ビニルピリジンコポリマー、またはそれらの混合物を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
6.前記4-ビニルピリジン含有コポリマーが、4-ビニルピリジンと、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキル、もしくはアクリロニトリル、またはそれらの組合せを含むコモノマーとのコポリマーを含む、実施形態5に記載の方法。
7.前記エポキシが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂、改質ビスフェノールAエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、二官能性脂環式エポキシ樹脂、もしくはグリシジルアミン-タイプの多官能エポキシ樹脂、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
8.前記ポリマー成分がさらに、ナイロン、ポリアミドターポリマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、もしくはポリウレタン、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
9.前記ポリマー成分がナイロンを含み、さらに、前記ナイロンが、ナイロン-6;ナイロン-6,6;ナイロン-6,10;もしくはナイロン-6、ナイロン-6,6およびナイロン-6,10のターポリマー;またはそれらの組合せを含む、実施形態8に記載の方法。
10.前記溶媒が、プロトン性溶媒を含む、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
11.前記溶媒が、エタノールを含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
12.前記溶媒が、非プロトン性溶媒を含む、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
13.前記非プロトン性溶媒が、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、DMF、DMSO、もしくはアセトン、またはそれらの混合物を含む、実施形態12に記載の方法。
14.さらに、前記ポリマー成分と前記溶媒とを組み合わせる工程、ならびに前記ポリマー成分と前記溶媒とを加熱、次いで冷却する工程、その後での、前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせる工程、をさらに含む、実施形態1~13のいずれかに記載の方法。
15.前記ポリマー成分および前記溶媒を、室温にまで冷却する、実施形態14に記載の方法。
16.前記溶媒が、4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない、実施形態2~15のいずれかに記載の方法。
17.前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程および、前記組成物から複数の繊維を形成させる工程は、
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを混合する工程;
前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシを反応させる工程;および
前記溶媒の少なくとも一部を除去する工程、
を含む、実施形態1~16のいずれかに記載の方法。
18.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシとを、少なくとも1時間(60分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17に記載の方法。
19.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシとを、少なくとも2時間(120分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17または18のいずれかに記載の方法。
20.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシとを、少なくとも3時間(180分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17~19のいずれかに記載の方法。
21.前記溶媒が、エタノールである、実施形態1~20のいずれかに記載の方法。
22.前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程および、前記組成物から複数の繊維を形成させる工程が、同時に実施される、実施形態1~21のいずれかに記載の方法。
23.前記組成物から複数の繊維を形成させる工程は、繊維を静電紡糸する工程を含む、実施形態1~22のいずれかに記載の方法。
24.前記ポリマー成分が、ポリマー固形分を規準にして、少なくとも20重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、実施形態1~23のいずれかに記載の方法。
25.前記ポリマー成分が、ポリマー固形分を規準にして、少なくとも30重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、実施形態1~24のいずれかに記載の方法。
26.4-ビニルピリジン含有ポリマーのエポキシに対するモル比が、(1:0.1)から(1:1.5)までの間である、実施形態1~25のいずれかに記載の方法。
【0070】
例示的な、コーティングされた繊維を作製するための方法の実施形態
1.コーティングされた微細繊維を作製するための方法であって、前記方法が、
ポリマー成分を備える工程であって、前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である、工程;
繊維を備える工程;ならびに
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物を用いて前記繊維をコーティングする工程
を含む方法。
2.コーティングされた微細繊維を作製するための方法であって、前記方法が、
ポリマー成分を備える工程であって、前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である、工程;
繊維を備える工程;ならびに
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物の温度または前記繊維の温度を80℃より上に上げることなく、前記組成物を用いて前記繊維をコーティングする工程
を含む方法。
3.前記組成物の温度を上げることなく、または前記繊維の温度を80℃より上、または30℃より上に上げることなく、前記繊維をコーティングする、実施形態1または2のいずれかに記載の方法。
4.前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを、室温で組み合わせ、前記組成物の温度を上げることなく、または前記繊維の温度を室温より上に上げることなく、前記繊維をコーティングする、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
5.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーが、ポリ(4-ビニルピリジン)ホモポリマー、4-ビニルピリジンコポリマー、またはそれらの混合物を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
6.前記4-ビニルピリジン含有コポリマーが、4-ビニルピリジンと、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキル、もしくはアクリロニトリル、またはそれらの組合せを含むコモノマーとのコポリマーを含む、実施形態5に記載の方法。
7.前記エポキシが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂、改質ビスフェノールAエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、二官能性脂環式エポキシ樹脂、もしくはグリシジルアミン-タイプの多官能エポキシ樹脂、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
8.前記ポリマー成分がさらに、ナイロン、ポリアミドターポリマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、もしくはポリウレタン、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
9.前記ポリマー成分がナイロンを含み、さらに、前記ナイロンが、ナイロン-6;ナイロン-6,6;ナイロン-6,10;もしくはナイロン-6、ナイロン-6,6およびナイロン-6,10のターポリマー;またはそれらの組合せを含む、実施形態8に記載の方法。
10.前記溶媒が、プロトン性溶媒を含む、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
11.前記溶媒が、エタノールを含む、実施形態1~10のいずれかに記載の方法。
12.前記溶媒が、非プロトン性溶媒を含む、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
13.前記非プロトン性溶媒が、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、DMF、DMSO、もしくはアセトン、またはそれらの混合物を含む、実施形態12に記載の方法。
14.さらに、前記ポリマー成分と前記溶媒とを組み合わせる工程、ならびに前記ポリマー成分と前記溶媒とを加熱、次いで冷却する工程、その後での、前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせる工程、をさらに含む、実施形態1~13のいずれかに記載の方法。
15.前記ポリマー成分および前記溶媒を、室温にまで冷却する、実施形態14に記載の方法。
16.前記溶媒が、4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない、実施形態2~15のいずれかに記載の方法。
17.前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物を用いて前記繊維をコーティングする工程に、
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを混合する工程;
前記4-ビニルピリジン含有ポリマーとエポキシとを反応させる工程;および
前記溶媒の少なくとも一部を除去する工程、
を含む、実施形態1~16のいずれかに記載の方法。
18.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーとエポキシとを、少なくとも1時間(60分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17に記載の方法。
19.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーとエポキシとを、少なくとも2時間(120分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17または18のいずれかに記載の方法。
20.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーとエポキシとを、少なくとも3時間(180分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17~19のいずれかに記載の方法。
21.前記溶媒が、エタノールである、実施形態1~20のいずれかに記載の方法。
22.前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物を用いて前記繊維をコーティングする工程を同時に実施する、実施形態1~21のいずれかに記載の方法。
23.前記組成物を用いて前記繊維をコーティングする工程が、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、またはエアロゾル付着法を含む、実施形態1~22のいずれかに記載の方法。
24.前記ポリマー成分が、ポリマー固形分を規準にして、少なくとも20重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、実施形態1~23のいずれかに記載の方法。
25.前記ポリマー成分が、ポリマー固形分を規準にして、少なくとも30重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、実施形態1~24のいずれかに記載の方法。
26.4-ビニルピリジン含有ポリマーのエポキシに対するモル比が、(1:0.1)から(1:1.5)までの間である、実施形態1~25のいずれかに記載の方法。
【0071】
例示的な、繊維の実施形態
1.微細繊維であって、前記繊維のすべてが、組成物を含み、前記組成物が、4-ビニルピリジン含有ポリマーとエポキシ(前記エポキシは、少なくとも二官能性である)との反応生成物を含む、微細繊維。
2.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーが、ポリ(4-ビニルピリジン)ホモポリマー、4-ビニルピリジンコポリマー、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の微細繊維。
3.前記4-ビニルピリジンコポリマーが、4-ビニルピリジンと、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキル、もしくはアクリロニトリル、またはそれらの組合せを含むコモノマーとのコポリマーを含む、請求項2に記載の微細繊維。
4.前記エポキシが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂、改質ビスフェノールAエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、二官能性脂環式エポキシ樹脂、もしくはグリシジルアミン-タイプの多官能エポキシ樹脂、またはそれらの組合せを含む、請求項1~3のいずれかに記載の微細繊維。
5.前記組成物がさらに、ナイロン、ポリアミドターポリマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、もしくはポリウレタン、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~4のいずれかに記載の微細繊維。
6.前記組成物がナイロンを含み、さらに、前記ナイロンが、ナイロン-6;ナイロン-6,6;ナイロン-6,10;もしくはナイロン-6、ナイロン-6,6およびナイロン-6,10のターポリマー;またはそれらの組合せを含む、実施形態5に記載の微細繊維。
7.前記ポリマー成分が、ポリマー固形分を規準にして、少なくとも20重量%の前記4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、実施形態1~6のいずれかに記載の微細繊維。
8.前記ポリマー成分が、ポリマー固形分を規準にして、少なくとも30重量%の前記4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、実施形態1~7のいずれかに記載の微細繊維。
9.4-ビニルピリジン含有ポリマーのエポキシに対するモル比が、(1:0.1)から(1:1.5)までの間である、実施形態1~8のいずれかに記載の微細繊維。
【0072】
例示的な、フィルター媒体およびフィルター要素の実施形態
1.フィルター媒体であって、本明細書に開示の前記実施形態のいずれかに記載の複数の前記繊維を含む、フィルター媒体。
2.液体濾過媒体であって、本明細書に開示の前記実施形態のいずれかに記載の複数の前記繊維を含む、液体濾過媒体。
3.空気濾過媒体であって、本明細書に開示の前記実施形態のいずれかに記載の複数の前記繊維を含む、空気濾過媒体。
4.濾過基材をさらに含み,前記複数の繊維が前記基材の上に配されて、微細繊維層を形成する、実施形態1に記載のフィルター媒体。
5.前記微細繊維層が、200ミクロン以下の厚みを有する、実施形態4に記載のフィルター媒体。
6.前記濾過基材が、不織布基材を含む、実施形態4または5のいずれかに記載のフィルター媒体。
7.前記微細繊維層が、静電紡糸層であり、前記濾過基材が、セルロース系、セルロース/合成ブレンド物、または合成の不織布を含む、実施形態4~6のいずれかに記載のフィルター媒体。
8.前記濾過基材が、ポリエステル不織布、ポリオレフィン不織布、およびブレンドされた不織布の少なくとも1種を含む、実施形態4~7のいずれかに記載のフィルター媒体。
9.前記濾過基材が、スパンボンドサポートを含む、実施形態4~8のいずれかに記載のフィルター媒体。
10.フィルター要素であって、実施形態4~9のいずれか一つに記載のフィルター媒体を含むフィルター要素。
【0073】
例示的な、プロダクト-バイ-プロセス(product-by-process)の実施形態
1.微細繊維であって、
ポリマー成分を備える工程であって前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である、工程;
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物からそれぞれの繊維の全体が形成されるようにして、前記組成物から複数の繊維を形成させる工程
を含む方法によって調製される微細繊維。
2.微細繊維であって、
ポリマー成分を備える工程であって、前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である、工程;
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物の温度を80℃より上に上げることなく、前記組成物からそれぞれの繊維の全体が形成されるようにして、前記組成物から複数の繊維を形成させる工程
を含む方法によって調製される微細繊維。
3.コーティングされた微細繊維であって、
ポリマー成分を備える工程であって、前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である、工程;
繊維を備える工程;
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物を用いて前記繊維をコーティングする工程
を含む方法によって調製されるコーティングされた微細繊維。
4.コーティングされた微細繊維であって、
ポリマー成分を備える工程であって、前記ポリマー成分は、4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、工程;
溶媒を備える工程;
エポキシを備える工程であって、前記エポキシは、少なくとも二官能性である工程;
繊維を備える工程;ならびに
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程、および前記組成物の温度または前記繊維の温度を80℃より上に上げることなく、前記組成物を用いて前記繊維をコーティングする工程
を含む方法によって調製されるコーティングされた微細繊維。
5.前記溶媒が、プロトン性溶媒を含む、実施形態1~4のいずれかに記載の微細繊維。
6.前記溶媒が、エタノールを含む、実施形態1~5のいずれかに記載の微細繊維。
7.前記溶媒が、非プロトン性溶媒を含む、実施形態1~6のいずれかに記載の微細繊維。
8.前記非プロトン性溶媒が、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、DMF、DMSO、もしくはアセトン、またはそれらの混合物を含む、実施形態7に記載の微細繊維。
9.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーが、ポリ(4-ビニルピリジン)ホモポリマー、4-ビニルピリジンコポリマー、またはそれらの混合物を含む、実施形態1~8のいずれかに記載の微細繊維。
10.前記4-ビニルピリジン含有コポリマーが、4-ビニルピリジンと、スチレン、(メタ)アクリル酸アルキル、もしくはアクリロニトリル、またはそれらの組合せを含むコモノマーとのコポリマーを含む、実施形態9に記載の微細繊維。
11.前記エポキシが、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂、改質ビスフェノールAエポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、二官能性脂環式エポキシ樹脂、もしくはグリシジルアミン-タイプの多官能エポキシ樹脂、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~10のいずれかに記載の微細繊維。
12.前記ポリマー成分がさらに、ナイロン、ポリアミドターポリマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール(PVA)、もしくはポリウレタン、またはそれらの組合せを含む、実施形態1~11のいずれかに記載の微細繊維。
13.前記ポリマー成分がナイロンを含み、さらに、前記ナイロンが、ナイロン-6;ナイロン-6,6;ナイロン-6,10;もしくはナイロン-6、ナイロン-6,6およびナイロン-6,10のターポリマー;またはそれらの組合せを含む、実施形態12に記載の微細繊維。
14.前記方法が、前記ポリマー成分と前記溶媒とを混合する工程、ならびに前記ポリマー成分と前記溶媒とを加熱、次いで冷却する工程、その後での、前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせる工程、をさらに含む、実施形態1~13のいずれかに記載の微細繊維。
15.前記ポリマー成分および前記溶媒を、室温にまで冷却する、実施形態14に記載の微細繊維。
16.前記溶媒が、4-ビニルピリジンとは錯体を形成しない、実施形態1~15のいずれかに記載の微細繊維。
17.前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程および、前記組成物から複数の繊維を形成させる工程は、
前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを混合する工程;
前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシを反応させる工程;および
前記溶媒の少なくとも一部を除去する工程
を含む、実施形態1~16のいずれかに記載の微細繊維。
18.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシとを、少なくとも1時間(60分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17に記載の微細繊維。
19.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシとを、少なくとも2時間(120分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17または18のいずれかに記載の微細繊維。
20.前記4-ビニルピリジン含有ポリマーと前記エポキシとを、少なくとも3時間(180分間)かけて反応させ、その後で、前記溶媒の少なくとも一部を除去する、実施形態17~19のいずれかに記載の微細繊維。
21.前記溶媒が、エタノールである、実施形態1~20のいずれかに記載の微細繊維。
22.前記ポリマー成分、前記溶媒、および前記エポキシを組み合わせて、組成物を形成させる工程および、前記組成物から複数の繊維を形成させる工程が、同時に実施される、実施形態1~21のいずれかに記載の微細繊維。
23.前記組成物から複数の繊維を形成させる工程は、繊維を静電紡糸する工程を含む、実施形態1~22のいずれかに記載の微細繊維。
24.前記ポリマー成分が、ポリマー固形分を規準にして、少なくとも20重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、実施形態1~23のいずれかに記載の微細繊維。
25.前記ポリマー成分が、ポリマー固形分を規準にして、少なくとも30重量%の4-ビニルピリジン含有ポリマーを含む、実施形態1~24のいずれかに記載の微細繊維。
26.4-ビニルピリジン含有ポリマーのエポキシに対するモル比が、(1:0.1)から(1:1.5)までの間である、実施形態1~25のいずれかに記載の微細繊維。
【実施例】
【0074】
この開示の目的と利点を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例に記載されている特定の物質およびその量、さらにはその他の条件および詳細が、不当にも、この開示を限定すると解釈してはならない。
【0075】
【0076】
試験手順
濾過効率の測定
フィルター媒体(基材+微細繊維)の効率は、低効率フラットシート(LEFS)効率として測定し、報告する。LEFS効率とは、ASTM-1215-89に従って試験したときに、20フィート/分(ft/min)の面速度のときの、0.78ミクロンのラテックス粒子についての除去効率を示す。
【0077】
エタノール浸漬試験
LEFS効率は、基材の上に配された層の形態にある微細繊維のサンプルについて測定する。その測定の後、そのサンプルを、エタノール(190プルーフ)の中に周囲条件下で1分間浸漬させる。そのサンプルを取り出し、乾燥させてから、LEFS効率の再測定を行う。そのサンプルを、米国特許第6,743,273号明細書(「維持された微細繊維層効率(Fine fiber layer efficiency retained)」)に記述されている手順に従って求めた、「維持された微細繊維層効率」の量について評価する。それらの結果は、LEFS効率として、または「維持された微細繊維層効率」としてのいずれかで、報告される。「維持された微細繊維層効率」の量は、元々の微細繊維の量に対するパーセントとして報告され、「維持された微細繊維層効率(fine fiber layer efficiency retained)」と呼ばれる。このパーセントの数字は、達成された架橋度がエタノールによる攻撃/溶解または層間剥離からその微細繊維物質を保護するのに十分であったかどうかの、良好な指標を与える。
【0078】
温水浸漬試験
この試験は、上に述べたエタノール浸漬試験と極めてよく似ているが、ただし、サンプルを温水(140゜F)中に5分間浸漬させるという点で異なっている。そのサンプルを取り出し、乾燥させてから、上に述べたようにして、米国特許第6,743,273号明細書(「Fine fiber layer efficiency retaineed」)に記述されている手順に従って、「維持された微細繊維層効率」の量について評価する。微細繊維層効率の量は、達成された架橋度が温水による攻撃/溶解からその微細繊維物質を保護するのに十分であったかどうかの、良好な指標を与える。
【0079】
調製方法
実施例1
ポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)およびエタノールを含むポリマー混合物を、熱を加えないで(すなわち、いかなる熱の入力もなしで)、機械的撹拌により調製して、8%固形分の溶液を得た。P4VPが完全に溶解したら、機械的撹拌を維持しながら、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)を添加した。ポリ(4-ビニルピリジン)対BADGEの重量比は、(1:0.8)(wt:wt)または(1:1)(wt:wt)であった。4時間放置して、その溶液を反応させ、次いで、ペンダントドロップ静電紡糸技術を使用した、静電紡糸にかけて、濾過基材の上に微細繊維の層を形成させた。この例では、30KV~40KVの電圧を使用して、エミッターから4インチの距離で移動している基材物質の上に微細繊維層を形成させた。その基材は、平均目付け83g/m2、平均厚み0.29mm、および平均Frazier透過度6.7m/minを有するフラットなセルロース媒体(EN848、Hollingsworth & Vose,East Walpole,MA)であった。
【0080】
微細繊維を担持させた基材から切り出した円板について、1日後、3日後、7日後、および18日後に、エタノール浸漬試験および温水浸漬試験を実施した。サンプルは、周囲温度および周囲湿度条件に保存した。後処理(PT)(130℃×10分間)にかけて強制的に反応を完結させたサンプルを、対照サンプルとして使用した。
図1に、エタノール浸漬後および温水浸漬後の、「維持された微細繊維層効率」を示す。
【0081】
実施例2
実施例1をもう一度繰り返した。しかしながら、採用したP4VP対BADGEの比率が、(1:0.4)、(1:0.6)、(1:0.8)、および(1:1)であり、エポキシを添加した後での溶液中における反応時間を減らして3時間とした。周囲温度および周囲湿度条件下で保存しておいたサンプルの円板について、0日後(静電紡糸の直後)、1日後、3日後、7日後、および22日後に、エタノール浸漬試験および温水浸漬試験を実施した。130℃で10分間加熱することにより後処理(PT)したサンプルを、対照サンプルとして使用した。
図2に、エタノール浸漬後および温水浸漬後の、「維持された微細繊維層効率」を示す。
【0082】
実施例3
実施例1および2と同様にして、P4VPとBADGEを用いて混合物を調製した。しかしながら、採用したP4VP対BADGEの比率は、(1:0.6)、(1:0.7)、(1:0.8)、(1:0.9)、および(1;1)であった。それに加えて、P4VPおよび、ジオキソランとエタノールとの溶液(ジオキソラン:エタノールの比=30:70(vol/vol))を含む追加のポリマー混合物を、熱を加えないで(すなわち、いかなる熱の入力もなしで)、機械的撹拌により調製して、8%固形分の溶液を得た。3時間放置して、その溶液を反応させ、次いで、実施例1の記載のようにして、静電紡糸を行った。
【0083】
周囲温度および周囲湿度条件下で保存しておいたサンプルの円板について、0日後(静電紡糸の直後)、1日後、3日後、11日後、および22日後に、エタノール浸漬試験および温水浸漬試験を実施した。さらに、10分間130℃にして後処理(PT)したサンプルを、対照サンプルとして使用した。
図3に、エタノール浸漬後および温水浸漬後の、「維持された微細繊維層効率」を示す。
【0084】
実施例4
ポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)、ポリアミドターポリマー651、およびエタノールを含むポリマー溶液を調製し、60℃に加熱して、8%固形分の溶液を得た。使用した651:P4VPの比率は、(30:70)および(52:48)(wt:wt)であった。冷却して室温としてから、比率P4VP:BADGE=(1:0.8)となるように、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)を添加した。撹拌しながら4時間置いて、その溶液を反応させ、次いで、ペンダントドロップ静電紡糸技術を使用した、静電紡糸にかけて、濾過基材の上に微細繊維の層を形成させた。この例では、40KVの電圧を使用して、エミッターから4インチの距離で基材物質の上に微細繊維層を形成させた。その基材は、平均目付け83g/m2、平均厚み0.29mm、および平均Frazier透過度6.7m/minを有するフラットなセルロース媒体(EN848、Hollingsworth & Vose,East Walpole,MA)であった。
【0085】
微細繊維を担持させた基材から切り出した円板について、0日後、1日後、5日後、13日後、および21日後に、エタノール浸漬試験および温水浸漬試験を実施した。サンプルは、周囲温度および周囲湿度条件に保存した。10分間130℃にして後処理(PT)したサンプルを、対照サンプルとして使用した。
図4に、エタノール浸漬後および温水浸漬後の、「維持された微細繊維層効率」を示す。
【0086】
実施例5
実施例4を繰り返した。しかしながら、使用した651:P4VPのブレンド比は、(30:70)、(52:48)、および(70:30)であった。それに加えて、ポリアミドターポリマー651:P4VP=52:48を含む参照溶液を調製したが、それに対してはBADGEを添加しなかった(すなわち、P4VP:BADGE=(1:0))。
【0087】
周囲温度および周囲湿度条件で保存した円板について、0日後、1日後、3日後、7日後、および21日後に、エタノール浸漬および温水浸漬試験を実施した。10分間130℃にして後処理(PT)したサンプルを、対照サンプルとして使用した。
図5に、エタノール浸漬後および温水浸漬後の、「維持された微細繊維層効率」を示す。
【0088】
実施例6
実施例4をもう一度繰り返した。しかしながら、使用した651:P4VPのブレンド比は、(52:48)、(60:40)、(70:30)、(80:20)、(90:10)、および100:0(P4VPなし)であった。それに加えて、ナイロンターポリマー(ポリアミドターポリマー651)のみを含み、P4VPなし、エポキシ(BADGE)なしの、参照溶液を調製した。
【0089】
周囲温度および周囲湿度条件で保存した円板について、0日後、1日後、5日後、および12日後に、エタノールおよび温水浸漬試験を実施した。10分間130℃にして後処理(PT)したサンプルを、対照サンプルとして使用した。
図6に、エタノール浸漬後および温水浸漬後の、「維持された微細繊維層効率」を示す。
【0090】
実施例7
ポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)、ポリアミドターポリマー651、およびエタノールを含むポリマー溶液を調製し、60℃に加熱して、8%固形分の溶液を得た。651:P4VPの比率は、60:40(wt:wt)であった。冷却して室温としてから、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)を添加して、比率P4VP:BADGE=(1:0.8)または(1:1)となるようにした。撹拌しながら4時間置いて、その溶液を反応させ、次いで、ペンダントドロップ静電紡糸技術を使用した、静電紡糸にかけて、濾過基材の上に微細繊維の層を形成させた。この例では、40KVの電圧を使用して、エミッターから4インチの距離で基材物質の上に微細繊維層を形成させた。その基材は、平均目付け83g/m2、平均厚み0.29mm、および平均Frazier透過度6.7m/minを有するフラットなセルロース媒体(EN848、Hollingsworth & Vose,East Walpole,MA)であった。
【0091】
微細繊維を担持させた基材から切り出した円板について、0日後、1日後、5日後、13日後、および21日後に、エタノール浸漬試験および温水浸漬試験を実施した。それらのサンプルを、周囲温度および周囲湿度条件下か、または温度72゜F、湿度10%~12%の調節室内のいずれかで保存した。10分間130℃にして後処理(PT)したサンプルを、対照サンプルとして使用した。
図7に、エタノール浸漬後および温水浸漬後の、「維持された微細繊維層効率」を示す。
【0092】
本明細書に引用したすべての特許、特許出願、および公刊物は、引用することにより、本明細書に取り入れたものとする。本出願の開示と、引用することにより本明細書に取り入れた文献の開示との間に、何らかの不一致がある場合には、本出願の開示が優先するものとする。誤解が無いように付言すれば、先に挙げた詳細な説明と実施例は、理解を促すためだけのものである。それらから、不必要な限定がもたらされると理解するべきではない。本発明は、開示し、記述したそのままの詳細に限定されるものではなく、当業者に自明である各種の変更も、特許請求項によって定義される本発明の範囲内に含まれるであろう。