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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】チタン含有材料の細粒の凝集
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/047 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
C01G23/047
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2018560485
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 AU2017050475
(87)【国際公開番号】W WO2017197467
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】2016901885
(32)【優先日】2016-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】517385368
【氏名又は名称】イルカ・リソーシズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・グレン・バーナード
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・マクスウェル・ブルティテュード-ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・ダブリュ・フランクリン
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0226365(US,A1)
【文献】特表2004-528162(JP,A)
【文献】特表昭56-501522(JP,A)
【文献】特表2008-542190(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105271390(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00 - 23/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に二酸化チタンである材料の細粒の微小凝集体であって、前記細粒は、前記微小凝集体内で多糖類ガムまたはセルロース誘導体によって結合され、前記微小凝集体は、前記微小凝集体が塩素プロセスのものと均等な高温気流条件に曝露されるときに、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体が前記細粒の有効な主要バインダーであるように、275350℃の温度範囲で加熱されており
前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体は、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびポリアニオン性セルロース(PAC)の1種以上であり、
前記微小凝集体のサイズが、125~5,000μmである、微小凝集体。
【請求項2】
前記微小凝集体は、0.1~2時間にわたって前記温度範囲で加熱されている、請求項1に記載の微小凝集体。
【請求項3】
各細粒粒子は、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体の帯状体によって少なくとも2個の他の細粒粒子に結合され、それにより、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体は、前記微小凝集体内で前記粒子を強固に結合する、帯状体が交錯した網目を形成する、請求項1または2に記載の微小凝集体。
【請求項4】
前記帯状体は、前記それぞれの結合された細粒粒子のサイズよりも実質的に小さいそれぞれの最小厚みを有する、請求項に記載の微小凝集体。
【請求項5】
小厚みが0.1~10μmの範囲である、請求項に記載の微小凝集体。
【請求項6】
小厚みが0.5~5μmの範囲である、請求項に記載の微小凝集体。
【請求項7】
各帯状体は、その末端のそれぞれにおいて、扇状に広がって前記それぞれの細粒粒子を接点の延長線に沿って接合する、請求項のいずれか一項に記載の微小凝集体。
【請求項8】
前記微小凝集体内で結合された前記細粒粒子は、10~250μmの範囲のサイズである、請求項1~のいずれか一項に記載の微小凝集体。
【請求項9】
多糖類ガムまたはセルロース誘導体の比率は、前記細粒および多糖類ガムまたはセルロース誘導体の総重量に対して2~10%の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の微小凝集体。
【請求項10】
前記細粒は、ルチルまたは合成ルチルである、請求項1から9のいずれか一項に記載の微小凝集体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の微小凝集体を含む粒子状材料。
【請求項12】
主に二酸化チタンである材料の細粒を凝集させる方法であって、
前記細粒を微小凝集体に形成するステップであって、前記細粒は、前記微小凝集体内で多糖類ガムまたはセルロース誘導体によって結合される、ステップと、
前記微小凝集体が塩素プロセスのものと均等な高温気流条件に曝露されるときに、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体が前記細粒の有効な主要バインダーであるように、前記微小凝集体を275350℃の温度範囲で加熱するステップと
を含み、
前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体は、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびポリアニオン性セルロース(PAC)の1種以上であり、
形成された前記微小凝集体は、125~5,000μmのサイズである、方法。
【請求項13】
記温度範囲における前記微小凝集体の前記加熱は、0.1~2時間にわたる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
それぞれの形成された微小凝集体において、各細粒粒子は、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体の帯状体によって少なくとも2個の他の細粒粒子に結合され、それにより、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体は、前記微小凝集体内で前記粒子を強固に結合する、帯状体が交錯した網目を形成する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記帯状体は、前記それぞれの結合された細粒粒子のサイズよりも実質的に小さいそれぞれの最小厚みを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
小厚みが0.1~10μmの範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
小厚みが0.5~5μmの範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
各帯状体は、その末端のそれぞれにおいて、扇状に広がって前記それぞれの細粒粒子を接点の延長線に沿って接合する、請求項1417のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記形成ステップは、前記加熱前または前記加熱と同時に、単一の装置内で混合と一緒に凝集を行う連続式高剪断ミキサー内で実施される、請求項1217のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記微小凝集体内で結合された前記細粒粒子は、10~250μmの範囲のサイズである、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
多糖類ガムまたはセルロース誘導体の比率は、前記細粒および多糖類ガムまたはセルロース誘導体の総重量に対して2~10%の範囲である、請求項1220のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
主に二酸化チタンである材料の細粒の微小凝集体であって、前記細粒は、前記微小凝集体内において、多糖類ガムまたはセルロース誘導体を含む帯状体によって結合され、前記帯状体は、前記それぞれの結合された細粒粒子のサイズよりも実質的に小さいそれぞれの最小厚みを有し
前記微小凝集体は、275~350℃の温度範囲で加熱されており、
前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体は、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびポリアニオン性セルロース(PAC)の1種以上であり、
前記微小凝集体のサイズが、125~5,000μmである、微小凝集体。
【請求項23】
各細粒粒子は、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体の帯状体によって少なくとも2個の他の細粒粒子に結合され、それにより、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体は、前記微小凝集体内で前記粒子を強固に結合する、帯状体が交錯した網目を形成する、請求項22に記載の微小凝集体。
【請求項24】
小厚みが0.1~10μmの範囲である、請求項22または23に記載の微小凝集体。
【請求項25】
小厚みが0.5~5μmの範囲である、請求項24に記載の微小凝集体。
【請求項26】
各帯状体は、その末端のそれぞれにおいて、扇状に広がって前記それぞれの細粒粒子を接点の延長線に沿って接合する、請求項2225のいずれか一項に記載の微小凝集体。
【請求項27】
多糖類ガムまたはセルロース誘導体の比率は、前記細粒および多糖類ガムまたはセルロース誘導体の総重量に対して2~10%の範囲である、請求項2226のいずれか一項に記載の微小凝集体。
【請求項28】
前記細粒は、ルチルまたは合成ルチルを含む、請求項22から27のいずれか一項に記載の微小凝集体。
【請求項29】
請求項2228のいずれか一項に記載の微小凝集体を含む粒子状材料。
【請求項30】
主に二酸化チタンである材料の細粒を凝集させる方法であって、前記細粒を微小凝集体に形成するステップであって、前記細粒は、多糖類ガムまたはセルロース誘導体の帯状体によって結合される、ステップと、
前記微小凝集体を275~350℃の温度範囲で加熱するステップとを含み、
前記帯状体は、前記それぞれの結合された細粒粒子のサイズよりも実質的に小さいそれぞれの最小厚みを有し
前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体は、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびポリアニオン性セルロース(PAC)の1種以上であり、
形成された前記微小凝集体は、125~5,000μmのサイズである、方法。
【請求項31】
それぞれの形成された微小凝集体において、各細粒粒子は、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体の帯状体によって少なくとも2個の他の細粒粒子に結合され、それにより、前記多糖類ガムまたはセルロース誘導体は、前記微小凝集体内で前記粒子を強固に結合する、帯状体が交錯した網目を形成する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
小厚みが0.1~10μmの範囲である、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
小厚みが0.5~5μmの範囲である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
各帯状体は、その末端のそれぞれにおいて、扇状に広がって前記それぞれの細粒粒子を接点の延長線に沿って接合する、請求項3033のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記形成ステップは、前記加熱前または前記加熱と同時に、単一の装置内で混合と一緒に凝集を行う連続式高剪断ミキサー内で実施される、請求項3034のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記細粒は、ルチルまたは合成ルチルを含む、請求項1221および3035のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
塩素プロセスであって、前記プロセスへの二酸化チタン含有供給材料は、請求項1~10および22から28のいずれか一項に記載の微小凝集体を含む、塩素プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、チタン含有材料の細粒の凝集に関し、主に二酸化チタンである材料、例えばルチルおよび合成ルチルの凝集を特に対象とする。
【0002】
対象とする用途の1つは、チタン鉱を塩素化(本明細書では顔料塩素化プロセスとも称する)によって処理する塩素プロセス(塩素顔料プロセスと称されることも多い)へのルチルまたは合成ルチル原料の細粒成分の凝集であり、本明細書において詳細に検討する主題はこれに関連する。
【0003】
本明細書における合成ルチル(SR)とは、主に二酸化チタンであり、チタン含有量が高くなるように含チタン鉱、例えばイルメナイトを処理することによって得られた材料を意味する。
【0004】
本明細書に関連して、「処理することによって得られる」とは、物理的処理、湿式製錬処理もしくは乾式製錬処理またはこれらの組合せによって得られる材料を含む。
【背景技術】
【0005】
塩素プロセスでは、チタン鉱供給原料(例えば、ルチル、合成ルチル、イルメナイトまたはチタンスラグ)を、炭素および塩素ガスを用いて塩素化することにより、四塩化チタンTiClとすることが必要である。TiClは、蒸留により精製される。次いで、後処理において、TiClを酸素炎またはプラズマで酸化することによって純粋なTiOを得るか、または還元を例えばMgで行うことにより、金属チタンを得ることが可能である。チタン顔料塩素化装置の原料に細粒物質(<100μm)が存在すると、塩素プロセスの生産性に関して問題となることが知られている。例えば、典型的な合成ルチルは、5~10%の細粒物質を含み、これは、四塩化チタンにほとんどまたは全く変換されることなくチタン顔料塩素化装置から吹き飛び(エルトリエーションと呼ばれることが多い)、その結果として塩素化装置からかなりの量のチタンが消失する可能性があり、それに伴い残留物の廃棄費用も増大する。そのため、通常、塩素化装置の作業者が合成ルチル原料に対して支払う用意がある最高価格には、SR細粒の含有率および塩素化装置からのチタン回収率に基づく違約条項および/または隠れた価格構造が組み込まれている。したがって、通常、SR細粒は、SR製造業者にとって収益損失となる。
【0006】
一部の鉱物砂堆積物は、多量のイルメナイト細粒を含むため、これらを処理することにより得られる合成ルチルは、顔料塩素化装置に適した供給原料とならない。
【0007】
既に提案されている鉱物チタンの凝集技法には、微粒化したTiO含有材料、粘結性瀝青炭および水溶性バインダーの混合物を団鉱化(coking)して複合凝集粒子を調製するプロセスが含まれるが、このプロセスは許容できないことが分かっている。なぜなら、顔料塩素化プロセス自体が還元的塩素化であるため、原料中でTiO含有材料に対して特定の比率で炭素が存在しなければならず、これは、複合体に強度を発現させるのに適していない可能性があるためである。加えて、炭素が塩素化過程で攻撃を受けるため、完全に塩素化が起こる前に凝集体が破壊され、したがって細粒サイズとなった材料がやはり気流に随伴して消失する。
【0008】
既に提案されている他のプロセスでは、チタン含有材料の微粒子のペレットを押出成形する際にバインダーとしてアスファルトの水中エマルジョンを利用する。しかしながら、このプロセスは、ペレットから水を除去すると共に有機物質を炭素に変換するために1000℃でゆっくりと硬化させることが必要である。硬化により、粒子の細孔内および粒子周囲のバインダーが固化して良好な結合が形成される。バインダーとチタン含有材料との間に化学結合は存在しない。このプロセスは、1000℃で硬化させることに加えて、押出された材料を崩して必要とされる原料のサイズに近い範囲のサイズにするさらなるステップが必要である。
【0009】
国際特許公開(特許文献1)は、含チタン細粒材料を凝集させるプロセスであって、鉱物の細粒をバインダーおよび水と混合することによって凝集体を生成し、次いでこれを乾燥および焼結させるプロセスを開示している。幅広いバインダーが提案されているが、具体的に例示されているのは、ベントナイトおよびリグノスルホン酸塩のみである。焼結ステップは、含チタン粒子を直接結合させると共にバインダーを除去すると言われている。
【0010】
(特許文献2)は、塩素プロセスに使用するためのチタニアスラグ原料を凝集した粒子またはペレットを開示しており、有機バインダー等の多様なバインダーを利用している。好ましいバインダーは、コーンスターチゲルであるが、Peridurという名称の市販品であるカルボキシメチルセルロースも例示されている。ペレットは、その後のか焼または他の高温処理なしに、例えば80℃の空気中で乾燥させることが好ましい。あるいは、ペレットは、より高い温度、通常、約160℃~200℃、さらには250℃で処理することができ、それによってペレットの乾燥および硬質化が達成される。
【0011】
一般に、凝集ステップでは、下流のプロセスに悪影響を与えることになる元素が凝集体に取り込まれないことが望ましい。さらに、凝集体は、凝集時およびその後に続く乾燥装置への移送時における破損を最小限に抑えるために妥当な初期強度(落下試験)と、移送、貯蔵および積み込み時における破損に対する耐性を確保するための妥当な乾燥強度(落下試験)と、乾燥圧潰(または圧縮)強度とが求められる。加えて、顔料塩素化プロセスに適用するために、凝集体は、900~1000℃の温度で運転される顔料塩素化装置に供給した場合に凝集体が崩壊しないことを確実にするように高い耐熱衝撃性を有していなければならない。
【0012】
SR細粒の凝集に関する問題の1つは、SRの製造に使用されるイルメナイトの種類によって影響を受ける可能性がある粒子の大きい多孔性および表面積(1.39~2.09m/g)である。
【0013】
鉄鉱細粒を凝集するためのプロセスに多糖類ガムおよびセルロース誘導体を使用することが記載されているが、一般に、これらの開示では、幅広い多糖類のいずれかを他の材料と一緒にバインダー系に採用することが提案されており、鉄鉱ペレットの高温焼成で完結している。
【0014】
例えば、(特許文献3)には、水溶性ビニル付加ポリマーおよび多糖類の油中水型エマルジョンを含む鉄含有材料を凝集するための組成物が提案されている。提案されている多糖類には、加工デンプン、セルロースおよび変性セルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、糖類およびガム類(キサンタン等の生化学的に合成されたヘテロ多糖類を含む)が含まれる。このプロセスを適用することが可能な鉄鉱として、鉄チタン鉱であるイルメナイトが述べられているが、実施例は、タコナイト鉱のみである。
【0015】
(特許文献4)も同様に鉄鉱粒子の凝集に焦点を当てている。ここで、バインダー系は、主成分である加工された天然デンプンを、結合調節剤としての水分散性ポリマーと一緒に含む。結合調節剤として列挙されている多くの候補には、水分散性セルロース誘導体およびキサンタンガム等の天然ガムが含まれる。この場合、ペレットは、1200~1300℃で焼成される。
【0016】
米国特許公開(特許文献5)に提案されている凝集体調製ステップでは、幅広い材料から選択された高分子バインダー、特にデンプン、セルロースおよびCMC等のセルロース誘導体ならびにキサンタンガムを添加した後、粒子材料の表面を陰性にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第90/010073号
【文献】米国特許第7,931,886号明細書
【文献】米国特許第4,751,259号明細書
【文献】米国特許第5,306,327号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0035188号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、主に二酸化チタンであり、かつ原料に最小粒子サイズが求められるプロセスに適した微小凝集体を提供すること、およびさらに二酸化チタン含有材料の細粒を凝集するためのプロセスを提供することである。本発明のプロセスは、高温、すなわち1000℃以上の範囲で処理するステップを含まないことが好ましい。
【0019】
本明細書におけるいずれの先行技術の参照も、その先行技術が任意の法域における普遍的かつ一般的な知識の一部を構成すること、またはその先行技術と他の先行技術の一部との組合せを当業者が当然予期できることを自認または示唆するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
驚くべきことに、TiO含有材料の細粒が、特定の有効な多糖類、好ましくは有効な多糖類ガムおよびセルロース誘導体を主要バインダーとして使用し、初期結合を有する微小凝集塊を250~600℃の温度範囲で熱処理することにより、許容される初期強度、許容される乾燥強度および高い耐熱衝撃性を示し、それらが塩素プロセスにおいて曝露される雰囲気等の雰囲気中で構造を維持することが可能である有用な微小凝集体に形成され得ることが見出された。バインダーの中でも、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびポリアニオン性セルロース(PAC)が特に興味深い。
【0021】
したがって、本発明は、第1の態様において、主に二酸化チタンである材料の細粒の微小凝集体であって、細粒は、微小凝集体内で多糖類ガムまたはセルロース誘導体によって結合され、微小凝集体は、微小凝集体が塩素プロセスのものと均等な高温気流条件に曝露されるときに、多糖類ガムまたはセルロース誘導体が細粒の有効な主要バインダーであるように、250~600℃の温度範囲で加熱されている、微小凝集体を提供する。
【0022】
その第1の態様において、本発明は、上述の本発明の微小凝集体を含む粒子状材料も提供する。
【0023】
本発明は、その第1の態様において、主に二酸化チタンである材料の細粒を凝集させる方法であって、細粒を微小凝集体に形成するステップであって、細粒は、微小凝集体内で多糖類ガムまたはセルロース誘導体によって結合される、ステップと、微小凝集体が塩素プロセスのものと均等な高温気流条件に曝露されるときに、多糖類ガムまたはセルロース誘導体が細粒の有効な主要バインダーであるように、微小凝集体を250~600℃の温度範囲で加熱するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0024】
本明細書における「主要」バインダーとは、多糖類ガムまたはセルロース誘導体が、他の目的のための他の構成成分を有するバインダー組成物の構成成分であり得るが、このような他の構成成分とは無関係に、微小凝集体内の粒子を結合する主要な材料が、主に多糖類ガムまたはセルロース誘導体から構成されることを意味する。
【0025】
「有効な」主要バインダーとは、微小凝集体の大部分が移送および輸送に耐え、塩素プロセスのものと均等な高温気流条件に曝露されたときに物理的に無傷のままであることを意味する。
【0026】
本明細書では、塩素プロセスにおけるものと均等な例示的な高温気流条件が実施例4で説明される。
【0027】
微小凝集体は、各細粒粒子が多糖類ガムまたはセルロース誘導体の帯状体によって少なくとも2個の他の細粒粒子に結合され、それにより、多糖類ガムまたはセルロース誘導体が、微小凝集体の粒子を強固に結合する、帯状体が交錯した網目を形成する、構造を呈し得る。
【0028】
本発明は、第2の態様において、主に二酸化チタンである材料の細粒の微小凝集体であって、細粒は、微小凝集体内において、多糖類ガムまたはセルロース誘導体を含む帯状体によって結合され、帯状体は、それぞれの結合された細粒粒子のサイズよりも実質的に小さい最小厚みのそれぞれの長手方向に中央の領域を有する、微小凝集体を提供する。
【0029】
本発明は、その第2の態様において、主に二酸化チタンである材料の微小凝集体を含む粒子状材料であって、細粒は、微小凝集体内で多糖類ガムまたはセルロース誘導体の帯状体によって結合され、帯状体は、それぞれの結合された細粒粒子のサイズよりも実質的に小さい最小厚みのそれぞれの長手方向に中央の領域を有する、粒子状材料も提供する。
【0030】
その第2の態様において、本発明は、主に二酸化チタンである材料の細粒を凝集させる方法であって、細粒を微小凝集体に形成するステップであって、細粒は、多糖類ガムまたはセルロース誘導体の帯状体によって結合される、ステップを含み、帯状体は、それぞれの結合された細粒粒子のサイズよりも実質的に小さい最小厚みのそれぞれの長手方向に中央の領域を有する、方法を提供する。
【0031】
本明細書における微小凝集体または粒子に関する「サイズ」とは、微小凝集体または粒子が通過することができる篩の円形の開口部のサイズを意味する。
【0032】
本発明は、第3の態様において、塩素プロセスであって、このプロセスへの二酸化チタン含有供給材料は、本発明の第1および/または第2の態様による微小凝集体を含む、塩素プロセスをさらに提供する。
【0033】
帯状体は、例えば、その長手方向に中央の領域において、最小厚みが0.1~10μmの範囲、より好ましくは0.5~5μmの範囲であり得る。各帯状体は、その末端のそれぞれにおいて、扇状に広がってそれぞれの細粒粒子を接点の延長線に沿って接合し得る。これらの帯状体の扇状に広がった部分は、他の帯状体の他の扇状に広がった部分と互いに結合することができる。
【0034】
本発明の各態様において、特に興味深い(但し非限定的な)多糖類ガムとしては、キサンタンガムが挙げられ、特に興味深い(但し非限定的な)セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびポリアニオン性セルロース(PAC)が挙げられる。
【0035】
特に興味深い細粒は、ルチル細粒および合成ルチル細粒であるが、他の興味深い細粒としては、チタンスラグ、イルメナイトおよびルコクシンの細粒が挙げられる。
【0036】
CMCは、塩素プロセスの原料として好適な合成ルチルまたは他の二酸化チタン微小凝集体の製造に好ましい主要バインダーである。高粘度ポリアニオン性セルロース(PAC-HV)は、好適であるが、乾燥細粒にとってそれほど好ましくない一方、CMCは、湿潤細粒にとって特に好ましい。
【0037】
本発明の各態様において、微小凝集体は、好ましくは、前記加熱前または前記加熱と同時に連続式高剪断ミキサー内で形成される。好適なこの種のミキサーは、Hosokawa Micron B.V製の「Flexomix」である。このミキサーは、垂直軸を中心に1500~4500rpmの範囲の高速で回転するミキシングブレードを囲む縦型の円筒形胴部から構成される。高剪断ミキサー処理は、単一の装置で混合処理と一緒に凝集ステップを行うものである。高剪断ミキサーは、粒子サイズが100~1200μmである微小凝集体を生成する。
【0038】
連続式高剪断ミキサーにおいて、細粒、粉末状バインダーおよび水は、一定の比率で、頂部のミキサー注入口(粉末用)および霧化ノズル(水用)を介して、高度に乱流化した循環流れに供給され、この循環流れによってミキサー上部において供給された材料の空気中懸濁物が生成し、ここから、粒子サイズ分布が狭い(これは後段の乾燥プロセスに好ましい)湿潤した凝集体が生成する。ミキサー内の滞留時間は、通常、約1秒間であり得、湿潤微小凝集体は、連続的に流動床乾燥装置へ送り出される。流動床乾燥装置は、好ましくは、後凝集(その結果としてより大きい凝集体が生成することになる)を最小限に抑えるように設計されている。
【0039】
好ましくは、微小凝集体は、最終用途前にか焼されず、または他に先行技術の凝集プロセスで一般に行われているように600℃超、例えば1000℃前後で熱処理されない。この場合、このような処理は、主要バインダーにより付与されている結合を物質的に劣化させる傾向がある。形成ステップは、好ましくは、低温形成ステップであり、すなわち20℃~100℃、より好ましくは10~70℃の温度で行われる。前記加熱ステップの好ましい温度は、275~350℃であり、標的温度付近での処理時間は、好ましくは、0.1~2時間、より好ましくは0.25~1時間の範囲である。
【0040】
1種以上の実施形態において、形成ステップおよび加熱ステップは、実質的に同時に実施することができる。
【0041】
加熱ステップを行うことにより、流動塔または流動床反応装置における微小凝集体の劣化が低減され、したがって吹き飛びまたはエルトリエーションが低減されることが見出された。この加熱ステップは、通常であれば起こる構造の劣化を起こすことなく、多糖類またはセルロース構造から、反応性を有するH単位および/またはOH単位をさらに除去することができる。したがって、塩素に結合する反応性部位が減少し、結合している帯状体の破断が低減するため、塩素プロセスにおける微小凝集体の寿命が一層延長される。
【0042】
好ましくは、微小凝集体は、125~5,000μm、より好ましくは125~1,500μmのサイズである。
【0043】
微小凝集体内で結合された細粒粒子は、通常、10~250μm、より好ましくは20~125μmの範囲のサイズであり得る。
【0044】
多糖類ガムまたはセルロース誘導体の比率は、好ましくは、細粒および多糖類ガムの総重量に対して2~10%の範囲、より好ましくは3~6%の範囲である。
【0045】
最適な含水率は、通常、細粒および水の総質量に対して6~25%の範囲であり、凝集技法の影響を受けやすい。例えば、単純に手作業で塊を形成して細粒を凝集させる場合、20~25%の範囲の含水率が必要である一方、高剪断ミキサーで凝集させる場合、6~17%の範囲の含水率が必要である。
【0046】
上に述べたように、特に興味深い多糖類ガムとしては、キサンタンガムが挙げられる。キサンタンガムは、粘度に対する相互の相乗効果を示すことが知られており、したがって類似の相互特性を示す他の多糖類ガムも同様に興味深いものであり得る。
【0047】
多糖類ガムであるキサンタンガムは、細菌であるキサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas Campestris)が分泌する多糖類であり、グルコース、マンノースおよびグルクロン酸を2.0:2.0:1.0のモル比で含む五糖類の繰り返し単位から構成される。
【0048】
多糖類であるセルロース誘導体CMCは、厳しい制御条件下において、アルカリセルロースをモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることにより生成する半屈曲性のアニオン性セルロースエーテルポリマーである。これは、ヒドロキシル基(-OH)の一部がカルボキシメチル基(-CHCOOH)で置換されたセルロースの化学的誘導体である一方、PACは、天然セルロースを化学変性することにより調製される高純度かつ高置換度のアニオン性セルロースエーテルの1種である。CMCおよびPACの製造プロセスの違いは、ラジカル化ステップおよびPACの置換度が高いことである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】実施例1の手順に従い、バインダーとしてCMCを用いて形成された合成ルチルの微小凝集体の一部の代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、本明細書に記載する熱衝撃試験(常温の原料が、900~1000℃で運転される塩素化装置に導入される塩素プロセスを模擬するために1000℃まで急激に加熱することを含む)に付す前に観察したものである。
図2】実施例1の手順に従い、バインダーとしてCMCを用いて形成された合成ルチルの微小凝集体の一部の代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、本明細書に記載する熱衝撃試験(常温の原料が、900~1000℃で運転される塩素化装置に導入される塩素プロセスを模擬するために1000℃まで急激に加熱することを含む)に付す前に観察したものである。
図3】実施例1の手順に従い、バインダーとしてCMCを用いて形成された合成ルチルの微小凝集体の一部の代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、本明細書および直前に記載した任意の熱衝撃試験に付した後に観察したものである。
図4】実施例1の手順に従い、バインダーとしてCMCを用いて形成された合成ルチルの微小凝集体の一部の代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、本明細書および直前に記載した任意の熱衝撃試験に付した後に観察したものである。
図5】実施例2の手順に従って形成した複数種の微小凝集体試料およびこれらの形成に用いた元の合成ルチル細粒の粒子サイズ分布(PSD)をグラフに表したものである。
図6図5に示した試料と同一の試料を熱衝撃試験に付した後の粒子サイズ分布(PSD)をグラフに表したものである。
図7】実施例2の手順に従い、それぞれバインダーとしてキサンタンガム、高粘度PAC(PAC-PV)およびCMCを用いて形成した乾燥微小凝集体および加熱後の微小凝集体の一部のSEM画像をそれぞれ対にしたものである。
図8】実施例2の手順に従い、それぞれバインダーとしてキサンタンガム、高粘度PAC(PAC-PV)およびCMCを用いて形成した乾燥微小凝集体および加熱後の微小凝集体の一部のSEM画像をそれぞれ対にしたものである。
図9】実施例2の手順に従い、それぞれバインダーとしてキサンタンガム、高粘度PAC(PAC-PV)およびCMCを用いて形成した乾燥微小凝集体および加熱後の微小凝集体の一部のSEM画像をそれぞれ対にしたものである。
図10】実施例3の手順に従って形成した複数種の微小凝集体試料およびこれらの形成に用いた元の合成ルチル細粒の粒子サイズ分布(PSD)をグラフに表したものである。
図11図10に示した試料と同一の試料を熱衝撃試験に付した後の粒子サイズ分布(PSD)をグラフに表したものである。
図12】実施例3の手順に従い、それぞれバインダーとしてキサンタンガム、高粘度PAC(PAC-PV)およびCMCを用いて形成した乾燥微小凝集体および加熱後の微小凝集体の一部のSEM画像をそれぞれ対にしたものである。
図13】実施例3の手順に従い、それぞれバインダーとしてキサンタンガム、高粘度PAC(PAC-PV)およびCMCを用いて形成した乾燥微小凝集体および加熱後の微小凝集体の一部のSEM画像をそれぞれ対にしたものである。
図14】実施例3の手順に従い、それぞれバインダーとしてキサンタンガム、高粘度PAC(PAC-PV)およびCMCを用いて形成した乾燥微小凝集体および加熱後の微小凝集体の一部のSEM画像をそれぞれ対にしたものである。
図15図14に対応する、すなわちCMCバインダーを用いた場合の(但しバインダーの添加量がより高い)一連のSEM画像である。
図16】実施例4において試験に供した試料の1種である、300℃で加熱した後の微小凝集体のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
実施例1
合成ルチル細粒(≦125μm)を微小凝集体に形成した。すなわち、ペレットを取り出し易くするための傾斜した滑り面を有する、上面および底面が平らな小型の円筒形のプラスチック製金型を用いて造粒を行った。得られたペレットは、およその厚みが8mm、最大径が17mm、最小径が15mmであった。乾燥後のペレットの平均重量は、2.6g±0.2gであった。
【0051】
様々なバインダーを試験に供した。混合方法は、使用するバインダーに応じて変化させた。粉末状バインダーの場合、最初に所要量の粉末を合成ルチル(SR)細粒(100g)と一緒に小型のプラスチック製ミキシングボウル内で十分に混合した。次いで、この混合物に水(30g)を撹拌しながら加えた。必要に応じて水を段階的に増量しながら、混合物が、満足なペレットを形成するために必要とされる粘稠性を有すると判断されるまで水を添加することにより最終混合物を調整した。通常、追加される水は、SR細粒100g当たり1~2gの範囲であり、バインダーが4~8%のペレットを形成するために必要な量はそれのみであった。
【0052】
液体バインダーの場合、清浄なミキシングボウルに所要量を秤量し、十分な水を加えて水およびバインダーの総量を30gとした後、連続的に撹拌しながらSR細粒(100g)を加えた。水に液体バインダーを加えて30gとすることにより得られる混合物は、全て満足なペレットを形成するには水分が多過ぎることが分かった。
【0053】
液体バインダー中の水の量に関し、細粒100g当たり添加される水の総量が30gと算出されたとしても、この混合物は、一般に水分が多過ぎる。幾つかの例、特にバインダーがより多量に添加される例では、水の量を、満足なペレットを得るために必要な量として算出された量よりも大幅に減らす必要があった。
【0054】
ブレンドした材料から十分な量をすくって金型から溢れるように詰め、次いで金属のへらを用いて材料を金型内に押し付けることによってペレットを形成した。余分な材料を、へらの端を使って金型から掻き取り、金型を迅速に叩きつけてペレットを取り出した。
【0055】
ペレットが金型から容易に取り出せることもバインダーの機能の一部とした。幾つかのバインダーを用いるとペレットが非常に容易かつきれいに取り出すことができ、他のバインダーを用いると材料が容易に取り出せないかまたは金型が破損するという難点が生じた。一般に、初期強度が良好なペレットは、初期強度がほとんどまたは全くないものと比較して作業が容易であった。
【0056】
ペレットをアルミ箔のトレイに載置し、110℃のオーブンで1時間乾燥させた。ペレットをオーブンから取り出した後、放冷し、試験を行う前に最低でも2時間放置した。乾燥強度について、最初の試験を行った後の乾燥強度の変化の有無を7~10日間にわたって監視した。
【0057】
初期強度および乾燥強度を、落下試験を用いて評価した。初期強度を有することは、凝集時および後に続く乾燥装置への移送時の破損を最小限にするのに有用である一方、十分な乾燥強度を有すると、貯蔵および積み込み時の破損に対する耐性が確保される。この方法は、10個のペレットを50cmの高さから鋼板上に落下させることから構成された。落下に耐えたペレットの個数を記録し、耐えたペレットを再び落下させた。2回目の落下に耐えたペレットの個数を記録し、3回目もこの過程を繰り返した。
【0058】
初期強度試験に使用したペレットは廃棄した。
【0059】
圧潰強度も貯蔵および積み込み時の破損に重要であるが、正確に測定することができなかった。次に示す定性的な尺度を採用した。
0 強度なし(力をほとんどまたは全く加えなくてもペレットが崩壊)
1 非常に弱い(ペレットは、手で簡単に潰せる)
2 ペレットは、手で潰せるがある程度の困難を伴う
3 ペレットは、手で潰すことができない
【0060】
報告する圧潰強度、特に1および2の区別は、若干個人の判断による。これは、乾燥後の異なるバインダーの相対的な性能の指標とすることを意図したものである。圧潰強度の高さは、主として微小凝集体の貯蔵時の積み上げに関連する。
【0061】
結果
キサンタンガム
3種のグレードのキサンタンガムを提供した。3種の製品は、純度が異なっており、純度が高いほど製品が高額であった。理論上の最良の製品(油田使用に関して)は、キサンタンCYである。この製品を2、4および8%で試験に供した。他の油田用キサンタンガム(キサンタンPY)および最も安価なグレード(キサンタンTJ)は、添加量2%でのみ試験した。
【0062】
結果を表1に記載する。
【0063】
3種の製品は、全てSR細粒と容易に混ざり合った(グアーガムと同様)。最大の添加比率(8%)では、混合物は、取扱いが困難であった。
【0064】
添加量2%の場合、品質的にも落下試験結果に関しても3種の製品に差は認められなかった。
【0065】
【表1】
【0066】
同様の方式で試験を行った他のバインダーには、セルロースガム、工業用カルボキシメチルセルロース(CMC)、高粘度および低粘度ポリアニオン性セルロース(PAC)、ヒドロキシメチル/ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、水溶性デンプンおよび生デンプン、部分加水分解されたポリアクリル酸、アクリル-スチレンポリマー、スチレン-アクリル共重合体エマルジョン、ビニル/アクリルエマルジョン、PVA(ポリ酢酸ビニル)、塩化第二鉄、塩化第一鉄およびケイ酸ナトリウムが含まれる。
【0067】
良好な初期強度、良好な乾燥強度および良好な圧潰強度を付与することが判明した有望なバインダーは、天然産物または天然産物の誘導体のみを含むものであった。これらは、
・多糖類ガムであるグアーガムおよびキサンタンガム
・セルロース誘導体であるセルロースガム(カルボキシメチルセルロースナトリウム-CMC)、工業用CMCおよびポリアニオン性セルロース
・幾つかのヒドロキシメチル/ヒドロキシプロピルセルロース誘導体
であった。
【0068】
試験に供した合成ポリマーは、いずれも許容できる初期強度を付与しなかった。
【0069】
初期強度、乾燥強度および乾燥圧潰強度が全体的に満足するものであることが判明した微小凝集体、すなわち直前に列挙したバインダーを用いて製造された微小凝集体について、微小凝集体を顔料塩素化プロセス(すなわち「塩素プロセス」または「塩素顔料プロセス」)に使用するための適合性を決定するために、さらに耐高温(熱)衝撃性に関する試験を行った。この目的のために、常温の原料が、900~1000℃で運転される塩素化装置に導入される塩素プロセスを模擬するように熱衝撃試験に付した。微小凝集体をマッフル炉で「即座に」1000℃にして15分間加熱することにより試験を行った。塩素化装置内において支配的な還元条件を模擬するために、ペレットを炭化物の細粒の層で覆い、密閉した坩堝で焼成した。
【0070】
熱処理によって亀裂が生じかつ/または破裂したペレットの個数を耐熱衝撃性の指標と見なした。冷却後、高温強度の目安を得るために無傷のペレットを圧縮試験に付した。
【0071】
高温熱衝撃試験の結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
十分な耐高温熱衝撃性を示した、すなわち1000gを超えたのは、キサンタンガム(>2%)、セルロースガム(4%)、CMC(≧4%)ならびに低粘度および高粘度PAC(8%)のみであったことが分かる。
【0074】
次いで、選択されたペレットまたは微小凝集体の表面領域を走査型電子顕微鏡で観察した。外科用メスで切り出すことにより断面試料を作製した。断面試料の新たに露出した面を上に向けて両面粘着カーボンシール上に載置し、silver DAGで固定した。試料のカーボンコートは行わなかった。Oxford INCA X-Maxエネルギー分散型分析装置(EDS)を取り付けたCarl Zeiss EVO50走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて試料を分析した。
【0075】
図1~4に代表的なSEM画像を添付した。各画像に50μmまたは500μmの目盛りを付記した。図1および2は、バインダーがCMCであるSR微小凝集塊のものであり、熱衝撃試験に付す前に観察したものである。図3および4は、バインダーがCMCであるSR微小凝集塊のものであり、熱衝撃試験に付した後に観察したものである。
【0076】
4つの画像の全てにおいて、合成ルチルの粒子は、それぞれCMCバインダーの架橋または帯状体によって他の2個以上の粒子に結合しており、それにより、CMCバインダーは、微小凝集体内で粒子を強固に結合する、帯状体が交錯した網目を形成する。それぞれの帯状体は、最小厚みが5μm未満であり、各末端において扇状に広がって、接点、すなわち粒子周囲の湾曲した表面線の延長線に沿って各粒子を接合する。これらの帯状体の扇状に広がった部分の一部は、粒子表面上で他の帯状体の1つ以上の他の扇状に広がった部分と接合する。
【0077】
SEMで視認できる帯状体は、界面領域において粒子の複数の細孔内に強固に固定されることにより、粒子と強力な結合を形成することができると推測される。
【0078】
実施例2
合成ルチル細粒(≦105μm)を、Hosokawa Alpine Gear Pelletiserを使用して乾燥微小凝集体に形成、すなわち造粒した。粒子サイズが100~1000μmの幅広い範囲である球形の乾燥ペレットが生成した。
【0079】
この例では、実施例1の結果を採用し、さらなる試験に用いるための各凝集体試料の組の製造に使用するバインダーは、3種類のみとした。これらのバインダーは、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCナトリウム)および高粘度ポリアニオン性セルロース(PAC-HV)とした。バインダーの添加率は、4%とした。
【0080】
図5は、各試料の粒子サイズ分布(PSD)を表し、すなわち各サイズ画分を通過した粒子の累積百分率(各バインダー毎に)を元のSR細粒試料と比較したものである。凝集した試料は、全てSR細粒と比較してPSDが大幅に増加したことが分かる。CMCバインダーの凝集体は、粒子サイズが最も増大し、次いでキサンタンガムおよびPAC-HVの順であった。見た目には、CMC凝集体は、>1mmのサイズの軟質粒子を多量に含んでいた。
【0081】
凝集体の高温試験は、手作業で形成したペレットを使用する先に行った手順と同一の手順で行った。すなわち、秤量した凝集体(100g)を小型のセラミック製坩堝に装入した後、加熱処理中の酸化を防ぐために炭素粉末で覆った。坩堝をセラミック製の蓋で覆い、次いで坩堝を予熱しておいた1000℃のマッフル炉に15分間(炉の温度が1000℃に回復してからの時間)装入した。熱処理された凝集体のPSD(図6)は、凝集体がある程度劣化したことを示唆し、その結果として、いずれのバインダーについても装入時の乾燥凝集体と比較するとPSDが低下した。
【0082】
乾燥(装入時の)凝集体および熱処理後の凝集体のXRDパターンは、凝集体の高温試験中にある程度の酸化が起こったことを示した。乾燥凝集体の相構造は、大部分が還元されたルチル(TiO2-x)からルチル(TiO)へ変換された。これは、乾燥凝集体および熱処理された凝集体の炭素含有量からも確認され、表3に示すように、約50%の炭素が凝集体から失われたことが分かる。
【0083】
【表3】
【0084】
凝集体が一部酸化したことに起因して凝集体の強度が低下した可能性があり、これは、全てのバインダーに関して粒子サイズ分布の低下が観測されたことによって示唆される。
【0085】
高温試験を繰り返したところ、最初の高温試験の結果と同様の結果が得られた。各バインダーのPSDは、図6に示した最初の高温試験結果とほぼ同じであった。XRDチャートから、構造が一部酸化してルチルになったことが示唆されたが、ある程度の還元されたルチル相が依然として存在した。
【0086】
図7、8および9は、それぞれバインダーとしてキサンタンガム、PAC-PVおよびCMCを用いた乾燥凝集体および加熱後の凝集体のそれぞれのSEM画像の組である。PACおよびCMCバインダーの図8および9は、図7のキサンタンガムよりも外観が海綿状に「団鉱化」したことが分かる。
【0087】
表4は、図7、8および9のSEMに関するバインダー相のスペクトル分析を示す。この分析は、C、O、NaおよびClがバインダー相中に微量(<5%フルスケールスペクトル:Tr)~少量(5~50%フルスケールスペクトル:Min)~多量(50~100%フルスケールスペクトル:Maj)の範囲で存在することを示唆する。酸素、ナトリウムおよび塩素の大部分は、凝集体を熱処理した際に除去された。酸素の除去には各種バインダーの分解が伴い、それによってセルロース構造から-OHが除去される。
【0088】
【表4】
【0089】
炭素が維持されていることは、還元雰囲気であることと一致しており、熱処理後における帯状体の網目(ここでは主として炭素の帯状体)の完全性の維持に寄与していることは疑いがない。これは、微小凝集体の塩素プロセスにおける有用性に関わる極めて重要な特性である。
【0090】
実施例2から、3種のバインダーの全ては、塩素プロセスの原料として適した二酸化チタン凝集体を生成したと結論付けられる。
【0091】
凝集体を高温試験に付すことにより凝集体がある程度劣化したが、依然として凝集体の85~93%は、粒子サイズが>100μmであった。これは、単に目安にするための試験であり、塩素化装置の条件と直接相関するものではない。凝集体の劣化は、高温試験中に凝集体が一部酸化したか、またはバインダーが不十分であった結果である可能性がある。酸化は、塩素化装置内では起こらないであろう。
【0092】
バインダーを僅かに多く添加する(約6%)ことにより、凝集体の高温強度が増大することが期待されるであろう。
【0093】
実施例3
Hosokawaの試験設備(Doetinchem,Netherlandに所在)で合成ルチル細粒(≦125μm)を乾燥微小凝集体に形成、すなわち造粒した。試験には、Hosokawaの連続式のFX-160 High Shear Mixerおよび回分式流動床乾燥装置を使用した。この装置で生成した乾燥ペレットは、球状の形状であり、粒子サイズが100~1000μmの幅広い範囲であった。
【0094】
この例では、高剪断ミキサーを使用した場合の凝集過程を示すため、およびさらなる試験操作(すなわち実験室規模の塩素化装置における微小凝集体の性能の試験操作)に用いるのに十分な微小凝集体試料を提供するために、実施例1および2の結果を採用して3種類のバインダーのみを使用した。これらのバインダーは、キサンタンガム、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMCナトリウム)および高粘度ポリアニオン性セルロース(PAC-HV)とした。添加したバインダーの比率を実験室規模の試験(実施例2)の4%から6%に増量した。2種のより高量、すなわち6.6および8.8%のCMCバインダー添加剤を用いた試験も行った。合わせて9種の別々の試験を、バインダーの種類、ミキサー排出物の含水率、バインダー添加速度(CMCのみ)、乾燥および湿潤SR細粒について変化させて実施した。凝集の結果を表5に示す。
【0095】
【表5】
【0096】
各試験を行うために、SR細粒、バインダーおよび水を高剪断ミキサーに計量添加し、ミキサー速度を3000rpmとし、ミキサーブレードの設定を+2°として運転した。ミキサー内の滞留時間は、約1秒間とした。湿潤した凝集体の混合物を流動床乾燥装置に送り出し、ここで、微小凝集体を凝集体床の温度が60℃に到達するまで回分式で乾燥させた。次いで、微小凝集体を乾燥装置から排出し、試料を採取し、ふるい分析を行い、嵩密度を測定した。
【0097】
図10は、各試料の粒子サイズ分布(PSD)、すなわち各粒子サイズ画分を通過した粒子の累積百分率(各バインダー毎に)を元の<125μmのSR細粒原料と比較して示す。凝集体試料は、全てSR細粒と比較してPSDが大幅に増大したことが分かるであろう。CMCバインダーおよびPAC-HVバインダーを用いた凝集体は、粒子サイズが最も増大したが、キサンタンガムは、この試験条件下で最も性能が低かった。凝集時の含水率は、Flexomixの成果(粒子サイズが<125μmの微小凝集体の量に基づく)に大きく影響した。Flexomix試験の試験条件下で得られた最良の結果では、「細粒」の数値、すなわち粒子サイズが<125μmである凝集体の重量が<10%に到達した。CMCバインダーの添加速度を6%から8.8%に増加すると、湿潤SR細粒の場合には乾燥凝集体の結果が僅かに向上したが、より低い添加速度で乾燥SR細粒と比較すると、結果は向上しなかった。
【0098】
凝集体の高温試験には、先の実施例において先に用いた手順と同じ手順を用い、すなわち秤量した凝集体(100g)を小型のセラミック製坩堝に装入した後、熱処理中の酸化を防ぐために炭素粉末で覆った。セラミック製の蓋で坩堝を覆い、次いで予熱した1000℃のマッフル炉に15分間(炉の温度が1000℃に回復してからの時間)装入した。凝集体を高温試験に付した結果、凝集体の一部が劣化した(図11および表6)が、これらの試験条件下における最良の結果では、依然として凝集体の86~90%は、>100μmの粒子サイズを有した(CMC)。これは、単に目安にするための試験であり、塩素化装置の条件と直接相関するものではない。凝集体の劣化は、高温試験中に凝集体の一部が酸化したか、またはバインダーが不十分であった結果である可能性がある。実施例2と同様に、XRDパターンは、熱処理試験中に凝集体が若干酸化したことを示し、これは、熱処理された凝集体のPSDの劣化に影響を与えた可能性がある。
【0099】
【表6】
【0100】
表7は、9種の試験のそれぞれに関するバインダー相のSEMスペクトル分析を示す。この分析は、実施例2で明らかになったように、C、O、NaおよびClがバインダー相に存在していることを示唆する。酸素、ナトリウムおよび塩素の大部分は、凝集体を熱処理した際に除去され、炭素に富む「細糸」が後に残り、これが粒子を結合している。酸素が除去されることに伴い、各種バインダーが分解し、セルロース構造から-OHが除去される。これらの結果は、実施例2で観測された結果と一致している。
【0101】
湿潤SR細粒を用いた場合にCMCバインダーの添加量を6.6%から8.8%に増加すると、熱処理の結果が僅かに向上したが、より低い添加速度で乾燥SR細粒と比較すると、結果は向上しなかった。
【0102】
【表7】
【0103】
炭素が維持されていることは、還元雰囲気にあることと一致しており、熱処理後における帯状体の網目(ここでは主として炭素の帯状体)の完全性の維持に寄与していることは疑いがない。これは、微小凝集体の塩素プロセスにおける有用性に関する極めて重要な特性である。
【0104】
図12、13および14は、バインダーとして、それぞれキサンタンガム、PAC-HVおよびCMCを用いた乾燥凝集体および熱処理後の凝集体のSEM画像(選択された試験に関する)のそれぞれの組である。図13および14のPAC-HVバインダーおよびCMCバインダーは、図12のキサンタンガムを用いた場合よりも外観が海綿状に「団鉱化」したことが分かり、これは、より高度に「分散した」構造であることを示唆する。
【0105】
他の興味深い観測結果は、乾燥凝集体内のバインダーが、先に観察された(図1~4)ような「細糸」または帯状体型の構造体としてほとんど観察されず、むしろSR細粒粒子が小粒子に凝集する傾向にあった(図15)という点で、CMCバインダーが先の実験室試験と異なって「挙動」したことである。「細糸」または帯状体および粒子の混合物も同様に観察され、これは、熱処理後もそれぞれ個々の細糸/帯状体または粒子としてそのまま残っていた。ミキサー後の凝集体の含水率もバインダー構造に影響を与えるようであり、含水率が低いと(<13.2%)個々のバインダー粒子のみが観察される一方、>13.2%となると個々の粒子および「細糸」の混合物が観察された。この特徴は、含水率14.8%の凝集体を生成する実験室用ミキサーを用いた試験では観察されなかった(実施例2)。Flexomix試験による、含水率が一層高い16%(図15)の場合、個々のバインダー粒子が維持されていた。これは、滞留時間がより長い回分式実験室用ミキサーと比較して、連続方式の混合(約1秒間の滞留時間)を行ったことに起因する可能性がある。
【0106】
実施例3で検討した試験条件に関して、CMCバインダーと、CMCほどではないがPAC-HVバインダーとは、塩素プロセスの原料に適した二酸化チタン(SR)凝集体を製造するのに適しているであろうと結論付けられる。CMCは、湿潤SR細粒の凝集に使用することができる唯一のバインダーである。
【0107】
実施例4
実施例3に従って製造した、合成ルチルがCMCに結合した微小凝集体について、塩素プロセスのチタン顔料塩素化装置の条件を模擬することを意図して(すなわち、その条件と均等な高温気流条件の実験環境下において)、エルトリエーションに関する試験を行った。それぞれ(1)は熱処理せず、(2)および(3)は、300℃および600℃で30分間にわたりそれぞれの標的温度で熱処理し、(4)は1000℃で(先に記載した高温試験手順と同様に)焼成した試料をエルトリエーション試験に付した。参照用として、構造化した合成ルチルおよび微小凝集体の製造に使用される合成ルチル細粒の試料も使用した。
【0108】
エルトリエーション試験では、凝集体約600gを内径80mmの流動塔に装入した。この構成を1000℃に加熱し、NまたはArを用いて、ガス空塔速度を0.22m/s(1000℃)として流動化させた。この試験には、ClもCOも粒状炭素も使用しなかった。床からエルトリエーションされた鉱物細粒粒子は、オフガスの排気口で捕捉し、吹き飛び分(blowover)と表示した。1000℃で30分経過した後、試験を終了し、試料を放冷した。初期および最終床質量ならびに捕捉された吹き飛び分を記録した。上に述べたように、これらの高温気流条件は、塩素プロセスのものと均等である。
【0109】
エルトリエーションによる損失を求めるために、2組の数字:捕捉された吹き飛び分と、初期床および最終床の質量差とを用いた。理論的には、これらの2つの数字は、同じ結果を示すはずである。しかしながら、通常、床質量の差の方が、数値が大きくなる。実際のエルトリエーションによる損失を、その実験条件における反応に起因する質量損失の可能性を除外した後の、吹き飛び分と床の差とによって定められる範囲内にあると仮定した。
【0110】
試験中に(一部が)消散するバインダーを含む微小凝集体の場合、実際のエルトリエーションによる損失の計算は、やや複雑になる。予備的な熱処理(行われた場合)中および/またはエルトリエーション試験中、どの程度のバインダーが消散するかは分かっていない。これには、床の損失および吹き飛び分の両方に関する2つの数値を用いて対処した(表8)。最初の数値は、全ての損失が実際に損失した粒子である(すなわちバインダーは消散しなかった)と仮定する一方、2番目の数値は、バインダーが全て消散したと仮定して算出する。この場合、粒子の損失を求めるために損失量からバインダーの質量を差し引いた。2番目の数値が負である場合(S8の予備焼成した試料のように)、バインダーの一部または全部が予備焼成中に既に消散したことを示唆する。実際の床の損失は、2つの数値間にあると思われる。
【0111】
最初のエルトリエーション試験を窒素雰囲気中で実施したところ、過剰のエルトリエーションによる損失が示された。窒素雰囲気中においてバインダーが崩壊したことが疑われたため、流動化気体をアルゴンに変更した。エルトリエーションによる損失は、確かに幾分向上したが、劇的な改善は見られなかった。しかし、ペレットをエルトリエーション試験に付す前に1000℃で予備焼成しておくかまたは500℃および300℃で予備加熱しておくことにより、実質的な改善が達成された。
【0112】
結果を表8に示す。
【0113】
【表8】
【0114】
エルトリエーションまたは吹き飛び分の低減という意味での最良の結果は、300℃または500℃で熱処理された微小凝集体を用いた場合に得られたことが分かるであろう。熱処理を行わなかったものは、結果が劣っていた。1000℃での焼成は、熱処理より優れていたものの、依然として熱処理の程度がより低いものよりも明らかに劣っていた。1000℃の焼成は、結合を付与する帯状体の質を低下させる可能性がある。表8の結果はまた、500℃による熱処理がむしろ有利であり、300℃が限界点である可能性があることと、実用性および費用の観点からより低い温度で十分であることとを示唆する。
【0115】
図16は、上のエルトリエーション試験の最下段のS8試料を300℃で熱処理した後、流動塔試験に付す前のSEM画像である。
【0116】
この画像には、SR粒子または粒状体を結合したままの相が存在している証拠が示されており、この相は、熱処理後のCMCバインダーの残留物と推測される。SR細粒粒子の大部分は、依然として他のSR粒子と凝集している。海綿状の塊は、バインダーとして用いたCMCナトリウムから誘導されたナトリウム相と考えられる。バインダーは、依然として十分に機能していると結論付けられ、これは、エルトリエーション試験により支持される。実際、この試験では、熱処理によって微小凝集体が強化されたことが確認されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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図15
図16